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力の実感と意欲的な活用を引き出す 国語科授業の工夫

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力の実感と意欲的な活用を引き出す 国語科授業の工夫
平成21年度 教育論文「一般論文」
力の実感と意欲的な活用を引き出す
国語科授業の工夫
~話し合いの中で得た学びの実感を
確かな力にするために~
(3)白川小学校
橋本ゆかり
目次
1 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
2 主題
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1
3 主題設定について・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
4 研究の仮説・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・2
5 研究の方法・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
6 研究の構想・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3
7 研究の実際・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
(1) 教材『詩「ぼく」』(国語科4年生)及び特設教材『詩「月」』
による仮説①②の検証 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
①
詩「ぼく」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・4
②
詩「月」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・6
単元『物語「一つの花」』(国語科4年生)
(2)
及び特設教材『討論「住むなら都会か田舎か」』による仮説①②の検証・・・・・9
①
物語「一つの花」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・9
②
特設教材
討論「住むなら都会か田舎か」・・・・・・・・・・・・・・・・13
8 研究の成果と課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・18
9 おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・20
1
はじめに
「あけぬればくるるものとハしりながら・・・」それは百人一首の時間だった。読みたがる子ど
もに読み札を読ませていた時のことだ。「それはワでしょ。昨日私が読んだでしょ。みんなもワと
読んだじゃないね。」教室は静まりかえった。『くり返し何度も聞いているのに・・・まだ分から
ないのか。』私は尊大な気持ちになっていた。しかし、しばらくして子どもが上の句を文字で見て
読むのは2回目であり、普段は音声のみで歌を聞いていたということに気づいた。せっかく読みた
いと手を挙げた子どもの意欲をそぐことになった。『これくらい分かるのが当たり前』という私の
考えにこそ無理があったのだ。子どもの側に立てばそこには間違える理由があるのだということに
後になって気がつく、そんなことが何度かあった。国語嫌いの子どもがいるのも発言が偏るのも私
が教師側の立場で授業を組み立てるからかもしれない、教師生活が長くなり子どもから心が離れて
いるのかもしれない、そう感じた。
新学習指導要領の改訂で「確かな学力」は①基礎・基本的な知識・技能②思考力・判断力・表現
力等③学習意欲からなる、と整理されている。意欲は何よりも人を成長させる。意欲を引き出すに
は「できた、やった」という実感に裏付けられた自信が必要だ。今回私はこれまでの長い経験から
くる思いこみの「自信」がなせる「教師側目線」から脱却し、改めて「子どもの目線」に立ち、子
どもが意欲をもって自分たちの成長を自覚しながら学習していくための指導について考え、実践し
た結果をここにまとめた。
2
主題
力の実感と意欲的な活用を引き出す国語科授業の工夫
~話し合いの中で得た学びの実感を確かな力にするために~
3
主題設定について
「国語は分かったか分からんか、分からん。」我がクラスの子どものつぶやきである。「なんて
言よっとね。」問いかけてみた。「算数の方が分かる。はっきりしとる。」この返答に確かにそう
であると思った。算数や体育等はできた、できないがはっきりと自分自身に分かる教科である。し
かし、国語は自身で習得の度合いを判断しにくい所がある。我がクラスでは体育や理科、算数が楽
しい教科にあがっている。理由は体を動かすから(体育)
実験ができるから(理科)
分かったとき
うれしいから(算数) であった。
例えば、体育では逆上がりを練習してその結果できるようになり、その後何度も逆上がりをする
ことでできたことを実感し、それ自体の動きを楽しむ。暫くして充分に逆上がりという動きに満足
すると、より高度な動きを求めて果敢に前転等に挑戦する。「できる」ということはレベルアップ
した変化のある練習のくり返しを生んでいく。国語においても確かな力の実感とそれを使いこなす
満足感を感じられる場を多く作ることで子どもたちは意欲と自信をもって学習し、その結果国語力
はアップするはずなのである。
本主題である国語科での力の実感とは国語科の力である「読む」「書く」「話す」「聞く」「言
語の知識」を習得し、読めなかった漢字が読めた、書けた、そして自分の考えが話せた、友だちの
考えが聞けた、分かった、書いてあることが分かった、自分の考えを書き表すことができた、など
である。
国語科の力を実感するとは、例えば、友だちと何かについて話し合いをした時に相手の言わんと
することを自分の中でそしゃくして説明できるほど理解したり、共感したり、質問したりできるこ
とを自分で感じることができることではないだろうか。つまり相手と言葉でつながった(共感)と
実感すること、心がつながるという人間関係の形成ができたこと、コミュニケーションの手段をひ
とつ取得したということなどである。
意欲的な活用とは、話す力がついたと実感し、話したい、聞きたいという意欲が自ずと湧いてき
た時に機を逃さず力を使うことである。使わなければ力は身に付いてはいかない。鉄棒や縄跳びと
同じである。使いたいという意欲が薄れて消えないうちに実感した力を発揮する場(ここでは話し
合いの場)を設定する。すると、発揮できた満足感から今度はもっと話そう、そのために相手の話
を一言一句漏らさず聞こう、大事なところはメモしよう・・・という意欲と自信に満ちた質の高い
向上スパイラルが生まれると考える。
このような言語活動の繰り返しが新学習指導要領に明記された習得・活用・探究のスパイラルで
あり、生きる力の基盤となるのではないかと考える。心を通わせる力を得ることができれば満足感
や安心感が生まれ心豊かに生きることにもつながるだろう。また、本研究は『意欲的な学び合いを
通して表現力を身につける授業作りをめざす』本校の校内研テーマである「自信をはぐくむ教育活
動の創造」にもつながるものであると考える。よって子どもたちが現代に生きる人間として不可欠
な、人間が人間とつながって生きていくために必要な力、生きる力を身につけた子どもになってく
れることをめざして主題を設定した。
4
研究の仮説
○
仮説①
力の習得を実感させるためには、その時間につける力を子どもに明確に示し、力の
確認をする場(機会)を設定すればよいのではないか。
○
仮説②
力を意欲的に活用につなげるために、つけた力をすぐに発揮できる教材を次の時間
に設定すればよいのではないか。
5
研究の方法
・ 仮説①については、4年国語科『詩教材「ぼく」』及び『物語「一つの花」』において、め
あてをもたせ、「話し合い活動」を行い、「振り返りの場」(自己評価)で力を実感できたか
検証する。
なお、「ぼく」は校内研究(テーマ:自信をはぐくむ教育活動の創造)で、仮説①を検証す
るために授業研を行ったものを含んでいる。
・
仮説②については、「ぼく」の後に『特設詩教材「月」』を、「一つの花」の後に『特設討
論教材「住むなら都会か田舎か」』を設定し、力を「習得した、活用した」と実感できるか検
証する。
6
研究の構想
意欲・自信
質
の
高
い
授
業
力の実感・活用・定着
○
授業・係活動等生活の中での
自主的な国語力の活用
仮説②
力の実感・活用
○
意欲・自信
特設教材
○
詩「月」(木村信子)の授業
仮説①
特設教材
討論「住むなら都会か田舎か」
意欲・自信
力の実感
○
4年国語科教材
○ 4年国語科
単元
詩「ぼく」(木村信子)の授業
物語「一つの花」
言葉に注目して気づきを見つける中で
・読む力
作者の意図を知ることによって
・考えを比べる力
・言葉の持つ意味に気づく(読む)力
をつける。
・言葉から想像する(考える)力
めあての達成度を確認する
・自分の思いを表現する(書く、話す)力
学習のめあてを持つ
・友だちの考えを聞く力
をつける。
学習の見通しを持つ
学習の手順を知る
7
研究の実際 (登場する名前は全て仮名)
(1)
詩「ぼく」(国語科4年生)、特設教材 詩「月」による仮説①②の検証
① 教材 詩「ぼく」(予定1時間扱い 実際は 2 時間)
○
本教材において主に子どもにつけたい力は言葉のもつ意味を考える力である。
子どもたちが本教材で学びの力の獲得を意識できるように次のことを行った。
・
「詩の学習の進め方」を提示・配布して学習の手順の見通しをもたせる。(図1)
・ 子どもたちの自由で多様な考えが出るように個人で考える時間、話し合う時間を
確保する。特に全体の場における発言に抵抗がある子どもたちが自分の考えを出し
て学び合えるようにグループでの学び合いに充分な時間を確保する。
・
学習意欲が出るように子どもの気づきを取り上げて課題を設定する。
・
自分の学びを意識できるように自分の学びをノートに書く時間を設定する。
・ 自分の考えを生かす読みが出来るようにノートや教科書に読みの工夫をメモする
時間を設定する。
・
他の詩の読みに生かせるように「ぼく」での読みの手順や工夫を確認する。
○
五
た
の
か
を
考
え
る
。
(
主
題
を
読
み
と
る
)
図1
作
者
の
言
い
た
い
こ
と
、
作
者
の
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見
、
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ぜ
そ
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題
を
付
け
四
三 二
一
疑 む 言 る 意 ノ 字 す
問 。 葉 。 味 ー は ら
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分 に べ ら
は
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か 一 る 読
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入
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い け
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で
言
気
、
音
視
葉
づ
疑
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写
は
き
問
す
辞 す
」
の
る
る
書
(
内
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。
で
読
疑
容
連
調
み
問
を
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方
)
赤
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の
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行
分
行
書
る
間
か
間
い
。
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ら
に
て
メ
な
書
お
モ
い
き
く
漢
す
込
。
学
習
の
進
め
方
(
詩
の
学
習
に
つ
い
て
)
授業ではまず「気づきを3つ見つける」こ
とを第1とした。
気づきを見つけられなかった子ども3名
見つけて発表した子どもが12名であった。
主な気づきは
Q1なぜ作者は女性なのに「ぼく」なのか。
Q2「たとえば」は、なぜはじめに書いてある
のか。
・「たったひとり」「たったたったひとり」「か
ずにならないくらいのひとり」の変化あるくり返
しに気づいた。
Q3「ぼくという宇宙なんだ」の意味が分から
ない。
だった。
それぞれの気づきや疑問をみんなで考えてい
くことで詩(作者)の意図することをつかんでい
く学習活動を行った。
(図2「ぼく」の授業ノート参照)
「詩の学習の進め方」(参考文献「文学作品の読み方Ⅱ」)
【主な学習展開と発言の分析】
(S1、S2、S3)Q1を考
(敬体は発言、常体はつぶやき)
えることでQ2の答えまで導
T:Q1について考えましょう。なぜ作者は女の人なの
くことができた発言
に「ぼく」なのでしょうか。
S1:自分のことじゃなくて他の人のことを言っている
(S2)教師の言ったことを想
起して考えを述べた発言
んじゃないのかな。
S2:次に「たとえば」があるから私もそう思います。なぜかというと、先生が前に「たとえば」は
話をわかりやすくするときに使うと言っていたので読み手にしっかり聞いてほしいと思って
いるんだと思います。
(S3)辞書を引いて言葉の意
S3:今の意見を詳しく言います。「たとえば」の意味は辞書で
味を確認する発言、S2の発言
引くと「例を挙げると」だから自分のことじゃなくて
を聞いて自分の意見を付け加
みんなに言っているんだ、ということだと思います
えている。
S2:「~なんだ」だから呼びかけていると思います。
T:みんなへの呼びかけなんですね。変化のあるくり
カメラや絵の使用は視覚的
返しの効果は何だろう。
S2:気づきを言います。だんだん場所がクラス、学
で子どもが場面をイメージ
校、地球、宇宙と大きくなるのと反対に自分が小
するために効果的であった。
さくなる感じを表している、と思います。
(カメラと絵を使って場面を説明した。)
S4:「アップと小さくなっていく写真」みたいなのだ。
図2
「ぼくの授業ノート」
反忚がなかった発問。ひとつの
T:その効果は何ですか。
言葉からイメージを広げるこ
S5:自分が小さいことを強調しているということだと
とを学習してきているが、経験
思います。
していないことや、未知の言葉
T:ぼくは「小さい存在」なんですね。ということは、最
については写真や絵などの手
後の「ぼくという宇宙」という言葉でもぼくは小さい
助けが必要。複数の質問で子ど
のかな。それでは、Q3の「ぼくという宇宙」の意味
もの思考が混乱している。
は何だと思いますか。
S:・・・・・・(子どもの思考の停滞)・・・
T:宇宙はどんなイメージですか。
S複数:~大きい、広い、星、月、無限、謎・・・
T:この詩のキーワードは何でしょうか。
S複数:「宇宙」です。
T:キーワードからイメージを膨らませて作者の言いた
いことを考えてみましょう。
(*隣同士、班内での意見交換)
S6:ぼくは小さいけれど大きいということだと思いま
す。
S複数:う~ん、なんか分からん。
S7:ぼくはわたしたち(のこと)で小さいわたしたち
だけれど心には夢が詰まっていて大きいんだよ、と
見つけたキーワードからイメ
ージを膨らませて詩の世界を
想像する学習の手立てを教師
の発問で教える形になった。
(S7)自分と宇宙を比べて
同じ所を探し、つながりを言
葉で表現できた発言。
友だちから「すごい。」と
褒められて活発に発言するよ
うになった。
いっていると思います。
S複数:へえ~、そうなんだ、すごい・・・。
T:この詩はみんなに何か言っていると思うなあ。
S4:みんなを励ましているのかも・・・。
S7:賛成です。わたしたちを忚援している詩だと思います。
S8:読むと元気が出る感じ?
T:みんなが元気がないときに読むと元気が出る詩ですね。木村さんはみんなを忚援しようと思って
この詩を作ったんだね。
【振り返り(力の確認)】
・ ぼくは発表しなかったけれど宇宙に興味があるので自分の中に宇宙があるなんてすごいことだと
思いました。作者に教えてくれてありがとうと言いたいです。みんなのおかげで(詩の意味が)分
かったのでみんなにもありがとうと言いたいです。
・ 私は、はじめは(この詩が)どんな意味かと思ったけれど、今日、みんなの意見を聞いて意味が
分かったので良かったです。
・ 発表はできなかったけれど、(班で話したとき)同じ考えの人がいたのでうれしかったです。今
度は発表したいです。
・ ぼくは気づきをぎりぎり3つ見つけました。気づきを出すことが面白いと思いました。今度はも
っとたくさん気づきを見つけて発表したいです。
・(S1)詩の勉強の仕方が分かったので今度は自分で勉強したいです。
・(S7)私は宇宙のことを「神秘」と言いかえてもいいと思います。それと作者は「自分のことを
大事にしてね。」と言いたかったんだと思います。作者の言いたいことが尐しは分かったと思うの
でうれしかったです。今度詩を勉強するときには気づきを出して作者の言いたいことを見つけたい
です。
【考察】
「もっと」、「次には」、「分かった」という言葉が多く見られた。これは作者の意図を探る学
習の要領が分かり、楽しめた(力の実感)、さらに次への意欲(活用への意欲)を表している言葉
と受け取れる。
しかし、意見交換の時間が短く、発言者が限られていたため、聞く側と話す側に分かれる形にな
った。また、教師の介入も多く、教師の発問に引っ張られた授業展開になったのではないかと懸念
される。これは発問が子どもの思考に即していないからだと考える。
②
特設教材
詩「月」木村信子の授業
(1時間扱い)
本教材は子どもたちが意欲的に課題を見つけ、作者の意図に迫るために設定したもので、本教
材での目標を「ぼく」でつけた「言葉の意味を考え、知る力」を使って自分の力としての定着を
図ることとした。本教材は「ぼく」と同じ作者の作品で指導書に紹介されている。クイズのよう
な書き方で子どもたちの想像力を喚起させ、言葉の意味を考えながら読みを深めことができると
考えられる。そこで題を隠して詩の内容から題を考える学習活動とし、「意欲的に読み進める」
ことを条件とする特設教材として最適なものになると考えた。
子どもたちは詩を視写すると「学習の進め方(詩の学習について)」にそって自主的に学習
し、その後音読を行い、さらに気づきをノートに書き込んだ。(図3)言葉の意味を考え作者の
言いたいことや発見を考える力を確かなものにするために主発問を「詩の題は何でしょう。」と
した。(詩の題を隠して内容を黒板に書いた。)
子どもたちの主な気づき、疑問は次の通りである。
・ 3連の詩
・ひらがなが多い
・きれいな感じの詩
・「あれは~です」のくり返し
・「きがえる」は擬人法
・ ようせいは力がない(うす衣が重いのだから)
・「あれ」は見えるのか
・ うす衣って何か
・題は何か。
・
あれって何だろう
・ キーワードは神様のひみつじゃないか
図3
「月の授業ノート」
・「おりる」だから上にある
【主な学習展開と発言の分析】話し合いは指名なし発言に
(S1)主発問を自分の課題と
より自分たちで可能な限り進めさせた。(敬体は発言、常体は
して見つけた発言(「気づき」
つぶやき)
の中でも課題発見が重要である
T:まず、気づいたことを発表してください。
ことを常に指導したことが奏功し
S1:題はなんだろう、と思いました。
た。)
S2:つなぎます。題について考えました。私は「あれ」と書かれて
いるものが題だと思います。
(S2)題追求の手がか
りとして「あれ」という
わけは「あれ」が3回も使われているからです。
S3:ぼくもそう思います。「あれ」は 降りてくる ものだから上
にある物だと思います。
言葉の意味を考えようと
している発言
(S3、4、5、6)詩の
S4:人じゃないよ。人を「あれ」とは言わないから。
中に出てくる言葉に着目
S5:もしかして太陽じゃないかな。雲かもしれない・・・。
し、考えを深めようとして
S6:太陽や雲は違うと思います。「まい夜」と書かれているからで
いる発言(普段からの「言
す。それからようせいが出てくるからです。「ようせい」が出
てくるのは夜だったと思うからです。
葉を根拠にする」指導が生
きた。)
S8:他の気づきを言っていいですか。キーワードは、
(S8、3)「ぼく」やそれま
「かみさまのひみつ」だと思います。
でに学習した「キーワード」を
S3:ぼくも賛成です。「神様の秘密のもの」という意
考える学習を活用している発言
味じゃないかと思います。
(「課題を見つける力をつける学
T:言葉の省略かな。
習」をするという教師の言葉を意
S1:私は擬人法が使ってあるんじゃないかと思います。
識している。)
S8:他のことで言います。くり返しが多く使ってあり
ます。
T:その効果は何でしょうね。
S7:木村さんが(この詩を)ロマンチックな感じにしたかったんじゃないかと思いました。
S2:題を考える意見を言っていいですか。全部の文が題について言っていると思います。
S3:「いずみ」で「かがみ」で「ひみつ」なものということかなあ・・・。
(*班での意見交換)
(全体の思考が止まったので班での形に切り替えたことで、意見を言えない
子どもが意見を出すことができた。)
S9:題は何かを班で考えたんですが、ぼくたちは星じゃないかと思いました。わけは夜、上にある
ものは星だからです。
(S4)友だちの発言をよく聞き、言
S4:上じゃなくて空でしょ。
葉にこだわったつぶやき(子どもたち
S10:付け加えると、さっきロマンチックとS7さんが
への学びを広げるためにこの場で褒め
言ったのでぼくはその言葉から星を思い浮かべた
(評価し)た。)
からです。
「よく聞いていたね。」と褒めた。)
S11:夜出るものは「月」もあるよ。
T:「かがみ」は昔、丸かったらしいよ。
S3:じゃあ、月かな。
(S4)
(S7)言葉から想像する力を発揮している。
(「ぼく」でのイメージを広げる手立てが生きた。)
S4:ぼくも月だと思います。「ひみつ」はどういう意味か考えたけれど、こうじゃないかと思いま
す。月なら雲に隠れて隠れれば秘密のものという感じになりますよね。だから月だと思います。
S7:わたしも「月」に賛成です。「いずみ」は白い色だから水の感じから木村さんは考えたと思い
ます。
S1:題について言います。まとめると題は「月」だと思い
(S1)題についての意見を聞き、
ます。わけは「いずみ」は光ると水みたいだし、「か
「月」である根拠をまとめて述べ
がみ」は夜出る丸いもので、「ひみつ」は秘密のも
た意見(この場で友だちの考えを聞
のだから隠すので雲で隠れるという意味だからです。
き、まとめて発言したことを褒め(評
どうですか。
価し)た。)
T:「神様」の「秘密」で「神秘」という言葉があります。
S複数:辞書で引いたら「普通の理解の外にあるもの」「普
通では考えられない秘密」とあります。
T:題は「月」です。よく分かったね。自分たちで考えた
(毎時間の辞書の活用が習慣化し
ている。)
今日の授業はどうでしたか。
【振り返り(力の実感)】
・(S7) 私はこの詩を読むとロマンチックな感じがしました。それは月の光にてらされてよう
せいのかがみがわりになるのがロマンチックに思えたからです。それと、この詩はようせいの部
長みたいな人がこそこそ話でわたしたちに話している感じでした。ようせいは神様の部下のよう
な感じがしました。「ぼく」の詩より勉強がよく分かり、面白かったです。
・(S1) 題が「月」だということにとても驚きました。最後に「夜に出る・・・丸い・・白い」
とは書いてないのに分かったということはこの詩を読みとれたことだと思います。わたしは読む
力や課題をつかみ解決する力などたくさんの力がついたので、また図書室で詩を読みたいです。
・(S10)今日の話し合いは自分たちで考えていくので楽しかったです。つないで話す力がつきま
した。詩の勉強も楽しいなあと思いました。今度は課題を自分で出して勉強を進めたいです。
・ わたしもS3さんと同じことを考えていました。でもその先が分からなかったけれどみんなの
話を聞いていたら分かりました。私も今度はみんなのように話し合いに参加したいです。
・ 詩を読み、題を見つけるのは大変でした。いろいろな言葉をさぐって題をさがすことができま
した。題が「月」ということにびっくりしました。立って発表しなかったので今度からはもっと
話し合いに参加したいです。
【考察】
(S1)は発言や振り返りから自分の力を充分に実感し、活用の意欲を高めたことが分かる。
(S4)は言葉にこだわり、イメージを広げることができた。また、友だちの言葉の一つ一つ
を聞き逃さずに考えを軌道修正している。
振り返りで、「友だちの話から分かった」、「題を考えることが面白かった」、という言葉
が多く見られた。「ぼく」で培った言葉へのこだわりや考える力が活用できた子どもが多く見
られた。これは自身で身につけた力を使うことができたことに対する面白さと考える。この活
用の実感は着実に次につながるものと思う。
(2) 「一つの花」(4年国語)、特設教材
る仮説①②の検証
① 物語「一つの花」
討論「住むなら都会か田舎か」によ
本単元において、子どもたちにつけさせたい力は比べて読む力である。また、班での話
し合いを取り入れてグループで全員に司会をさせ、子どもたちの初発の感想の中に出てき
た言葉や疑問、思いを一つずつ検討していき、キーワード(授業の中で中心に考える言葉)
を子どもたちから出た「ひとつだけ」、「コスモス」として授業を組み立てた。
子どもから出た課題の中から
Q1「ゆみ子はなぜひとつだけが口癖になったのか。」
Q2「なぜお父さんはコスモスを見ながら出征したのだろうか。」
Q3「3の場面になぜコスモスがたくさん咲いているのか。」
を学級全体の課題として学習を進めた。
【Q3についての主な学習展開と発言の分析】(敬体は発言、常体はつぶやき)
目標:Q3についての話し合い活動を通して「一つの花」に込められた父親の思いを読みとる。
T:春菜さんが出してくれた課題「Q3」についてみんなの考えを発表してください。
S1:この場面のコスモスはお父さんが出征する時にゆみ子に渡したコスモスだと思います。それを
植えて大きくなって広がったと思います。
S2:質問です。だれが植えたのですか。
S3:お母さんだと思います。まだゆみ子は小さかったからです。
S4:みんなに質問します。教科書の絵には根っこが写っていま
せんよね。
何で根っこがないのに植えたと言えるんですか。
S5:それは絵だから本当かどうか分からないけれどわたしは、
(S4)挿絵にこだわり、
考えている。前時では戦争
中の色と戦後の色、服装、
背景に注目した意見を出し
た。
お父さんは根っこからはとってこないと思います。だからS4
(S4)話題がそれようと
さんの意見に賛成です。
するところで元の話題に戻
S4:話を戻していいですか。誰が植えたかというと、ぼくもお母さ
して発言している。
んだと思います。お母さんが、ゆみ子がお父さんを忘れないよ
うに、思い出すように植えたと思います。
S6:付け加えます。はじめは戦争が終わってすぐだから1本か2本しか植えられなかったと思いま
す。
T:どうやって植えていたと思いますか。想像してみましょう。
S7:「お父さん、ゆみ子を見守っていてくださいね。」といいながら植えたと思います。
S8:ぼくは「お父さんがいてくれたら・・・・でもわたしもゆみ子も今から頑張ります。」と言っ
て植えたと思います。
S9:わたしはつらい時や悲しい時に花を植えたと思います。お母さんがいやなことなんかをお父さ
んに話すようにつぶやきながら植えたと思います。
S5:ゆみ子が大きくなってきたら一緒に植えたんじゃないかと思います。三人で話していたんじゃ
ないかと思います。
S10:お父さんは心の中に生きてい
る!
S複数:そうかあ。・・・賛成です。
(S7)~(S11)
書かれていない情景を前後の場面から想像しながら読み
を深めることができた。
S11:付け加えます。わたしもお父さんの愛に守られて苦労を乗り越えてゆみ子とお母さんは生きて
きたと思いました。
T:お父さんの愛に見守られながらいろいろなことを乗り越えて
6 班ともが同じような考え
二人は頑張って生きてきたんだね。ということはキーワード
だったが、それぞれ自分た
の「コスモス」は何なのでしょうか。考えてみましょう。
ちで自分たちの言葉を用い
(班での意見交換)
て理由を述べることができ
S3:わたしたちの班はみんなが「コスモス」はお父さんだとい
ている。
う意見です。わけは出征する時に死んでしまうかも知れない
という気持ちでお父さんが幸せになってという願いを
込めてコスモスを渡したからです。死んでお父さんはコ
スモスになって二人を見守っていたんだと思います。
S4:質問があります。言っていいですか。お父さんは死
んだんですか。
(S2,4)自分の疑問を思い切
ってぶつけている発言。(「分か
らないことは残さない」という授業
の姿勢が身についてきた。)
S複数:死んだよ。
T:死んだのです。生きていたら出てくるはずですから。1班の意見は「コスモス」はお父さんの形
見という意見ですね。
S13:言っていいですか。ぼくたちの班も1班の意見と似ています。2班ではコスモスはお父さんだ
という意見です。一つだけの小さなお父さんの願いがこもったコスモスを渡して、ゆみ子とお母
さんはそれを忘れずにたくさんのコスモスにしたからです。
(S13)教師の介入を断ち
S14:わたしたちの班も2班と同じでコスモスはお父さんの愛情と
切って自分たちの意見に引
いう意見です。わけは愛情に包まれている様子をたくさんの
き戻している。発言しよう
コスモスで表していると思うからです。
という強い意欲を感じる言
S15:付け加えます。4班でもコスモスはお父さんという意見です。
葉。
わけは出征の場面で勉強したようにお父さんはゆみ子への願
(S17)今までの学習を生
いをコスモスに込めて戦争に行ったからです。
かしている発言。(「よく覚
S16:5班はコスモスは「平和の願い」とか「ゆみ子の幸せ」とい
えていたね。」と褒めたこと
う考えが出ました。わけはお父さんが最後に渡したものが前
で自信をつけた。)(教師の
の場面で勉強したお父さんの願いで、それがコスモスに
観察による)
込められたものだったからです。
S17:6班の意見も同じですが尐し違います。コスモスには
お父さんと作者の願いが込めてあると思います。わけは
題が「一つの花」だからです。前勉強した時に先生が「題
は大切で作者の言いたいことが詰まっている」といって
いたからです。
T:みんなの考えがよく分かりました。ということは、「一つ
の花」という題はとても大切な意味を持っているというこ
とになりますね。それではどうして「一つ」なのかな。「一
つだけの花」でもいいと思うのだけれど・・・。
(隣近所との意見交換)
S9:「だけ」というと増え
ない感じがするからだと
思います。お父さんの願
言 葉の イメ ージを 考え
ている発言。前時での学
習を生かしている発言。
いや愛情はどんどん増えていくのだから題が「一つだけ」
ではいけないと思います。
S8:スタートが「一つ」という意味で後で増えるからです。
S4:付け加えます。(勉強の)はじめにキーワードを決めま
したよね。(注:前時に2つのキーワードから連想するも
のを想像し、ノートに書く活動をしている。)
それが「一つ」と「コスモス」でしたよね。一つのコスモ
図4「一つの花
授業ノート」
スがたくさんのコスモスになることで作者が何かを伝えたいのではないかと思います。だから
「一つだけ」だとコスモスは増えないから作者の伝えたいことが言えなくなるんじゃないです
か。
S10:ぼくはコスモスが一つだった時はたった一つの幸せしかなかったけれどコスモスの数が増える
と同じ数の幸せが増えていったんじゃないかと思いました。だから、最後は「一つだけ」じゃな
いよ、という気持ちが入っていると思います。
S複数:あ~、同じです。
S7:S10 さんの意見を言い換えます。はじめは一つの願いだったのが大きくなってゆみ子を幸せに
したから「一つだけの花」じゃなくて「一つの花」じゃなけりゃいけないと思いました。
T:みんなよく考えていますね、すごいなあ。それでは、作者はこの話でみんなに何を伝えたかった
のでしょうか。
・・・(隣同士での意見交換)・・・
(S7)友だちの考えを聞き自
S1:お父さんの願いが叶ってゆみ子が幸せになってよかっ
分の中でまとめて発言すること
たんだといっていると思います。
で理解を深めようとしている。
S4:お父さんの平和になってほしいという願いが叶った。
(「月」での発言を褒めたことで
S7:違う意見です。平和は大切だから大事にしなさい、だと
言い換え発言の仕方を身につけ
思います。
た。)
S9:付け加えます。戦争はひどくて悲しいものだから平和を大切にしなさい、と言っていると思い
ます。
【振り返りでは】
・(S4)課題は3つだったけれどそれがとても重要で課題を出した人はすごい(わたしもだけど)
と思いました。またいっぱい発表して考えを言いたいです。とくに、今日はS17 さんの意見が
よかったと思いました。
・(S7)S11 さんが「苦労を乗り越えている」というよい意見を出していたのですごいと思い
ました。「一つの花」は「ちいちゃんのかげおくり」と違って最後には尐しずつ心が豊かになっ
ているので良かったです。たくさん手を挙げて言う中で新しい考えが出てきたので、よかったで
す。
・(S18)わたしは初めて読んだ時に、この話でどんなことを想像できるのかなとわくわくしてい
ました。すると、クラスのみんなが色々な意見を出していてこんなにたくさん想像できてよかっ
たです。
・(S15)この話を勉強してお父さんが戦争に行ってもゆみ子とお母さんみたいにくろうを乗りこ
えて生きている人もいるんだなあと思いました。わたしはさか上がりができたことを思い出し
ました。くろうをすればいいことがあるんだなあと思いました。今度はわたしも発表したいで
す。
・(S19)作者の伝えたいことはみんなもやさしくたくましい子になってほしい、そして平和を大
切にしてほしいということだと分かりました。題名は何で「一つの花」で「一つだけ」じゃない
のかなあと思っていましたが、他の人の意見で答えも分かりました。何回も音読したり話し合っ
たりして、分かりました。書くのに時間がかかって言えなかったから次はもっと話し合いで意見
を言いたいです。
・(S20)ぼくはお父さんとお母さんはぜったい、子どもにあいじょうをあたえているんだなと思
いました。それから親は子どもに幸せになってほしいと思っているということも分かりました。
思いをたくしたコスモスの花は弱そうだけれど強い花なんだと思いました。話し合いは面白いな
あと思いました。
【考察】
・ 子どもが出した課題で話し合いが進み、作者の言わんとすることにまで迫ることができた。
教師の介入が尐なく、本時の話し合いは本クラスの話し合いの中でも質の高いものだった。
図5「力の意識調査」
・ 時間が足らずに全員発表はできなかったが、班の意見交換の中で全員発言することができた。
・
この話し合いで話し合うことの面白さを実感できた子どもは 24 名中 23 名(1 名は分からな
い)だった。毎日の音読での充分な内容理解とそれを引き出す適切な課題の賜である。
・ 授業後の意識調査で音読の力や班での話し合いで司会する力がついたことを実感した子ども
が半数以上いることが分かる。(図5)
②
討論「住むなら都会か田舎か」(全1時間)(都会側8名・田舎側12名欠席4名)
「一つの花」で話し合いの中から自分たちが作った課題の答えや作者の考えを見つけ出したことか
らもっと話し合いをしたい(力を実感して使いたい)という子どもたちの欲求が生まれた。そこで更
なる国語の学習への意欲を喚起させ、話し合いで実感したそれぞれの力を活用・定着する場として比
較による物の見方から出される意見を吟味し合うことができるということから討論を設定した。題目
は実態を考えていくつかの候補の中から子どもたちが選んだのが本題目である。
事前に討論内容を予告し自分の考えや裏付けをノートに書いておくように指示した。事前指導とし
て相手を説得するために数字、(新聞)記事、インタビューなどの裏付け(資料)があるとよいこと
を指導した。
なお、討論は指名なし発言により、可能な限り自分たちで進めることとした。(敬体は発言、常体
はつぶやき)
○ 本時の学習における各自の目標と達成度
必ず発表する(9 名)→達成できた(9 名)
しっかり聞いて話が分かるようになる。(1 名)→達成できた(1 名)
説明する力をつける(8 名)→達成できた(5 名)もう尐し(3 名)→もっとつけたい(8 名)
質問されたら相手が分かるように答える。(2 名)→達成できた(1 名)もう尐し(1 名)
○ 学習活動
1
課題に対してどちら(都会か田舎)がよいか選ぶ(事前)
2 自分たちの理由をまとめる(3分)
3 自分たちの理由を発表する(5分×2)
4 相手に対する質問をまとめる
(3分)
5 相手の理由に質問し相手が答える(5分×2)
6 自分たちの意見をまとめる(3分)
7 自分たちの意見を主張する(5分×2)
8
授業の振り返りをノートに書く(発表する。5分)
9 教師が講評する。(1分)
【主な学習展開(学習活動 2,5,7)と発言の分析】
《田舎がいいという理由》(番号は発表内容順、常体はつぶやき、敬体は発表)
1 田舎は空気がきれいです。
普段自分から発言しない愛
(愛子)付け加えます。アレルギーにならないと思います。
質問です。東京も熊本もそう変わらないと思います。
子が付け加えた発言(授業前
に 声 をか けて 自 信 を持 た せ
ですが、排気ガスがありません。
た。)
それにタバコを吸う人も尐ない
です。
いつも環境(6月の東部環境センター見学
2 夜は星がよく見えます。
以来特にごみを減らすこと)に関心を寄せ
3 田舎の方が景色がいいです。
て自分でも実践している圭子の発言
4(圭子)ゴミが出ないし無駄がありません。
5(洋子)野菜を作れます。
私はおばあちゃんの家で野菜をとった
時にうれしかったからです。
6 田舎は思い切って遊べます。
洋子が自分の休日の体験を語っている。
(説得力のある発言の条件を示して指導し
たことを習得できた。)
7 祭りや行事が多いので楽しいからです。
8 田舎は自然が多いです。
どうして自然が多いといいのですか。
小さい時から自然に触れられるからです。
(良子)付け加えます。この前お芋を掘
った時にうれしかったからです。
付け加えで伸び伸びと遊べるからです。
話を聞きながら付け加えのタイ
ミングをはかり、家族でのイモ掘
り体験という裏付けのある良子
の発言。(洋子と同様に説得力の
ある体験を裏付けにすることがで
きた。)
今の意見はさっきも言いました。同じこ
とを言っています。
今の意見に質問です。自然がなくても
遊べると思います。自然の中でどうや
って遊ぶのですか。
虫取り、木登り、鬼ごっこなどです。
鬼ごっこは自然と関係ないと思い
図6「討論の様子」
ます。
広場で遊ぶから関係あると思います。
(明子)
明子さんの話は言いたいことが分かりま
めあてが「説明する力をつ
せん。説明してください。
ける」の徹の発言。(「一
(徹)明子さんの意見を言い換えます。明
つの花」で使った「言い換
子さんは車が通ってないと安心して遊べ
えます」という発言を活用
ると言いたかったんだと思います。
している。)花→徹への力
分かりました。
9 田舎は静かです。
の学びの現れ
質問ですが、なぜ静かだといいのですか。
私は静かだと落ち着くからです。
分かりました。
10 田舎は人が親切だからです。
お尋ねしますが都会にも親切な人はいると思います。
親切な人が都会よりも沢山いるということです。道とか聞いても優しく教えてくれます。
分かりました。
11 都会ではみんなが忙しくていつも自分のことばかりだけれど田舎では気持ちがゆったりしてお年
寄りの人と仲良くできます。だからいろいろなことを教えてもらえるし、楽しいです。
12 人がちゃらちゃらしていないと思います。
どういう意味ですか。
お母さんに聞いたら街にはちゃらちゃら着飾ってぶらぶらしている人がたくさんいる、と言
っていました。だから雰囲気が悪いということで
す。
はい。いいです。
13 (玲子)田舎は都会より物が安いのでくらしやすいで
す。例えばほうれん草は田舎では1束 30 円です。都会
は 200 円くらいすると思います。
14 母に聞いてみたのですが田舎は疲れないからいいです。
それはデパートに行くと目移りしてうろうろしてしま
めあてが「説明する力をつける」
の玲子の発言。自分が祖父宅に行
った際に売られていた野菜を見た
ことを想起した発言。(具体的な
数字の使用が説得力を生むこと(見
学旅行報告新聞で指導)を活用して
いる。)
うからだそうです。私もつい、デパートに行くといろいろ見て歩くのでのんびりしたいからです。
15 田舎は車が尐ないので事故にあいにくいからです。
意見ですが、事故は気をつければあわないと思います。
意見です。事故は気をつけていてもむこうからぶつかってくることがあるとお母さんが言って
いました。だから車が尐ない方が事故にあいにくいと思います。
分かりました。
16 (ひとみ)駄菓子屋さんがあります。わたしは駄菓子が好きなので田舎がいいです。
ひとみさんの意見は個人的な好みで、あまり納得できない意見だと思います。
(ひとみ)分かりました。でもわたしは駄菓子屋さん(がある田舎がいい)という意見です。
17 漁に出られます。だから食べたい時に新鮮な物が食べられて健康にいいです。
田舎は山にもあると思います。
確かに・・・。賛成です。
《都会がいいという理由》
1 スーパーやデパートやお店がたくさんあって便利だからです。
2 都会は病院が多いからです。
どういう意味ですか。詳しく説明してほしいです。
インフルエンザや急な病気になった時にすぐ行けるということです。
救急車があるでしょ。それに田舎なら自分で薬を作ればいいじゃないですか。
ぼくの経験から言いますが、看病してきついのに薬まで作れないと思います。
家族や近所の人が作れるでしょ。それをもらうといいと思います。
そんな知識はないと思います。みんな薬剤師じゃないです。
付け加えですが、薬剤師より医者のほうが詳しいです。それに安心です。
付け加えです。手間がかかるでしょ。いちいち作っていられないと思います。
(晶子)それなら病気にならないようにバランスよく食べて健康な体を作っ
ておけばいいと思います。
健康でもインフルエンザにはなると思います。
(博)初めの話(救急車がある)に戻っているんじゃないですか。
3 電話やテレビの電波をキャッチしやすいと思います。
4 都会は交通の便がいいです。電車やバスがたくさんあります。だから時間に無駄がありません。
5 都会はイベントがあるので都会は楽しいです。
例えばどんなイベントですか。
それはサイン会、握手会、クリスマス会、ハローウインなどです。
都会はお金がかかることばかりです。田舎にはお金がかからないで楽しめる行事がありま
す。
どこでもお祭りはお金がかかると思います。
全体的にということです。
分かりました。
6 (誠)都会は夜でも明るいです。
どういう意味ですか。詳しく説明してください。
意味はお店が遅くまで開いているということです。
それに安心だし怖くないです。心細くもないし。
*例えば部活帰りに一人で帰ると怖いけど明るいと安心だからということです。
暗くなる前に帰ればいいじゃないですか。
それに迎えに来てもらえばいいと思います。
仕事が遅いお父さんは仕方がないでしょ。
自転車で帰ればいいじゃない。
「2」に続いて話題がそれていく
ことを察知し、本題に戻そうとす
る博の発言
(博)明るいことを話しているのに(話の方向が)ずれているんじゃないですか。
僕たちのことを話していたのに大人の話になっていると思うけど・・・。
7 有名人がいるのでいいです。
質問ですがなぜ有名人がいるといいのですか。
会えればうれしいからです。誰でもうれしいと思います。
いつも会えるわけじゃないと思います。うれしいから何なのですか。
(隆)それに興味がある人だけの楽しみだ。みんなにあてはまらないから説得力がない
よ。
付け加えますが、(有名人に)会いたくなったら(都会
へ)行けばいいだけだと思います。理由にならないと思
います。
分かりました。
8 テレビ番組数が多いです。
テレビがあるとゲームもできます。
テレビは田舎でも見られると思います。番組数は同じじゃないん
ですか。
確かにそうですね。
隆の発言に子どもた
ちから納得の声が聞
こえた。事前に説得
するための条件につ
いて指導していたこと
を習得している。
9 都会は遊べるところが多いです。
質問です。例えばどういうところですか。
例えば遊園地やデパートのゲームコーナーです。
(晶子)「遊べるところ」といいますが危ないんじゃないです
か。事件に巻き込まれたと新聞に載っていました。それにゲ
「 説 明 する 力 を つ け
ームコーナーは行っては行けない所じゃないんですか。
る」がめあての晶子の
今の意見に付け加えで、都会は健康にも悪いです。
発言。説得力のある新
聞記事をもってきた。
(隆)健康の話は、今はずれていると思い
ます。遊び場の話です。
(晶子)私は不良がいるから危ないと言っている
んです。
分かりました。
10 不便なところがないです。
不便と思うから不便なんじゃないですか。お尋ねですが何が不便
博の話題からそれない
ように発言を軌道修正
する力に習って出され
た隆の発言 (博→隆へ
の力の学びの現れ)
なのですか。
交通の便利が悪いということです。
それなら分かりました。
【振り返りでは】
・(愛子
めあて:必ず発表する)私は都会がいいと思ったけれど田舎の人の話を聞いていて田舎
がいいのかも知れないと思いました。発表は1回しかしなかったけれど友だちに答えのアドバイ
スをすることができたのでうれしかったです。次はもっと発表できると思います。
・(圭子
めあて:しっかり聞いて話が分かるようになる。)いつもよりみんなの言っていること
が分かりました。しっかり聞けるようになったと思います。次は意見を出します。
・(ひとみ
めあて:必ず発表する)相手が言いたいことがだんだん分かってきました。聞く力が
ついたからだと思います。都会はいいかもしれないけれど私はやっぱり田舎がいいです。わたし
は聞く力がついたから今度は相手を納得させる言い方をしたいと思います。
・(明子
めあて:質問されたら相手が分かるように答える。)普通の勉強よりみんなの意見を
聞くことができて、次に言うことをパパッと考えられて考える力をつけられました。またや
りたいです。
・(徹 めあて:説明する力をつける)前より発表の仕方が分かってきて、発表はたくさんしたけ
れどもっと説得力のある言葉で人を納得させる力をつけたいです。
・(晶子
めあて:説明する力をつける)誠君の「明るい」という意見で私は「ああ、こうい
うのがあるのか。」と思いました。もう私は頭に浮かんだことを「~でしょ。~で~ではな
いでしょ!!!」ともう頭に血が上るほどしゃべっていました・・・。説明する力をもっと
もっとつけたいです。
【考察】
全員が発表することができたが、1時間という限られた時間での討論だったので意見を言い足り
ない子どもが多くいた。これは一つの内容(番号で表示)に複数の意見が出たためである。それは
付け加えながら考えを深めたり、広げたりする場面が友だちからの学びによって増えたと考えられ
る。(例:田舎8)授業後のノートに書かれた子どもたちの考えから、時間があればそれぞれの意
見に対して、さらに深まった考えが出ていたと推察される。
また、話が話題からそれると修正する子どもが出て(都会2・6,9)、教師の発言が減った。
これもまた、教師から子どもへ、子どもから子どもへの学び(聞く力や全体の流れを巨視的に見る
力等)が生まれてきたためと考えられる。
学びや活用の実感は他にも見られる。(振り返り「-」の部分)
授業後のアンケート結果で子どもたちは力をつけたと実感したり、つけたと感じた力を活用
したりすることができたことが分かる。(図7
力の意識調査)
図7
「力の意識調査」
アンケートをとる際に
「聞く力」は友だちの話を聞いて言いたいこ
とが分かる力」
「話し合いの力」は「付け加えや反対意見が
言える力」
「説明する力」は「自分の言ったことを他の
人に分かりやすく伝える力」(裏付けや例え、
易しい言葉の使用など)と説明した。
8
研究の成果と課題
(1)
成果
① 実感した力を使う場をすぐに設定したことにより子どもたちの意欲がある間に力を使い、
定着を図ることができた。さらに子どもがより一層の意欲・自信を持つことができた。
② 教師から学んだことを実感した子どもが他の子どもの学びを導き、授業を質の高いものに
した。
③
全員の「10 分間視写字数」が概ね右肩上がりに増加している。このことからクラス全体
の集中力がついてきたことが分かる。(図 8:10 分間視写字数)
④ 子どもが自分で身に付いた力を活用したいという意欲が生まれ、生活の場にも活用が広が
った。
・ 係活動の時間に話し合いが繰り返される中で様々なアイデアを生かした工夫ある自主
的活動が生まれた。
日刊新聞発行(図 9)
「片付け資料集」作成(図 10)
1日の出来事報告を川柳で表現する。(図 11)
・
⑤
算数の時間に自分の考えを出して積極的に説明するようになった。(図 12)
読みや説明の力をつけるためにくり返し行った辞書を引くことが習慣になった(24 名中
20 名:アンケート調べから)。
図 8 「10 分間視写字数」
図 9 各係の「日刊新聞」
図 10「片付け資料集」
図 11 「川柳」
図 12「算数」
(2) 課題
①
基礎の力の個人差が大きいため、子ども自身がそれぞれにつけたい力が異なり、授業の中での
話し合いにおいて力を実感したり、発揮したりすることができない子どもが見受けられる。その
子どもの意欲を喚起し、力をつけたという実感を持たせるためには、教師の指導に加えて、他の
子どもから学んでいく風土を確立し、授業中にどの子どもも力を発揮できるようにしなければな
らない。そのためには子どもを育てていく子どもを、そして共に学び合う子どもを育てることが
重要である。
②
全員が話し合いに参加するために、力を実感できない子どもの基礎的な力の底上げが必要であ
る。学びの格差が生まれないようにきめ細やかなねばり強い個別指導を心がける必要がある。
③
子どもが飽きないように「振り返り」の形をいくつか考える必要がある。
④
子どもの意欲をそがないような教師自身の言葉かけの工夫がさらに必要である。
8
おわりに
「国語は分かったか分からんか、分からん。」と言っていた子どもたちが授業中に「分かった!」
と言った時の嬉しさは教師経験を幾重にも重ねた私自身でさえ素直に感じられる。今回の研究によ
って、何を学習するのか、どんな力を身につけるのかを主体である子どもにきちんと知らしめ、確
認することの大切さや、どうすれば力がついたということなのかといった達成の形を示し導くこと
が、教師の仕事であるのだと身にしみた。子どもは常に「学びたい」「成長したい」と願っている。
それを自分自身の発問や授業の組み立てのまずさで子どもの思考を停滞させることは許されない。
今まで授業がうまくいかないと『どうして分からないんだろう。』という気持ちが心の底に、実は
あったのだが、授業の停滞はやはり子どものせいではないということであった。さらに今回の検証
授業でもう一つ分かったことがある。教師の表情や態度が授業の流れに大きな影響を及ぼすという
ことだ。教師がタイミングよく褒めたり、うなずいたりするといった、それがちょっとした教師の
反忚であっても子どもはよく覚えている。そして次の授業でまた、褒められ、認められたことを思
い出して、子どもはやる気を起こすのである。子どもの反忚を高いアンテナでキャッチして、子ど
もの思考に沿った意欲あふれる授業が常にできるように努力していきたい。
と同時に、教師の指導で学びを実感した子どもから他の子どもが学び、その学びを次の子どもが
学んでいく風土を確立できるように力を尽くしたい。そしてそれぞれの子どもが係活動や生活の中
に様々な形で身につけた力を生かしていき、生かしたことを授業で活用することで授業が質の高い
ものに洗練されていくといった、言うならば「授業向上スパイラル」を作り上げていきたい。
その日々の小さな努力の積み重ねが生きる力を身につけた子どもの育成につながるものと考え
る。
参考文献:国語の本質が分かる授業⑤「文学作品の読み方Ⅱ」
柴田義松
監修
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