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黒曜石
079 黒曜石 いつだったか北八ツ麦草峠から白駒池へ樹林の中を歩いていて、ふっと横の溝を見ると黒 いガラス質の結晶が落ちている。さらに歩きながらよく見ると、あるわあるわコブシ大から 10円玉位まで。10個ほど拾って持ち帰った。友人に見せたところ 『これは黒曜石だと思う。火山活動で地中のガラス質が溶けて固まったものだ』 つるつるの表面は美しいが薄く鋭い刃物でもある。私は気泡の少ない1個選び、机上に文鎮と した。その後の調査で私が拾った麦草峠一帯、そして和田峠は黒曜石の産地と判明した。そう なると興味がでる。この石は古代縄文人が斧やナイフや矢尻に利用していた。 そう云えば愛知県や三重県の古墳から、和田峠産の黒曜石の矢尻が出土したと聞いたことが ある。私は深いコメツガの樹林帯の中、小さな湖沼を秘めた北八ツが大好きだ。毎年のように 50年間も通ってきたが、黒曜石に出会ってからまたひとつ北八ツの楽しみが増えた。 私は石を名古屋のデパートの宝石売場に持ち込み、ペンダントに研磨加工をして貰った。 金クサリ共で金8千円かかった。この黒曜石のことをふわく山の会で話したところ、741 高田さんから大きな黒曜石を頂戴した。最近は 黒曜石を拾う人が増え麦草峠の登山道横では 見つからない。どこで拾ったかと聞くと、 茅野市の山仲間を誘って冷山(ツメタヤマ)のあた ←黒 りを探索したところ、中腹で発見したという。 耀 勿論登山道などない。 石 『あそこは初めての人が見つけるのは無理。 もの凄く深い樹林の中に大きな黒曜石が 露出していました』 北八ツの山々はコメツガなど深い針葉樹林に 覆われている。その枯れ枝や苔類が火山岩が堆積した地表を覆う。その岩と岩の透き間は大き な窪地があり、不用意に山の中に入ると落とし穴が待っている。北八ツでは登山道を外れると 危険である。私は冷山で拾うのを諦めた。 ある日、新聞を見ていると一面トップ記事で、長野県長門町鷹山一帯で世界最古で最大級の 黒曜石採掘跡が発見とあった。鷹山は霧ヶ峰高原のすぐ隣り、和田峠や冷山とも近くて 同じ火山地質。標高1300m~1500mの山腹に75もの黒曜石採掘跡があり、調査の結 果は1万年前~3500年前の縄文時代に採掘と判明した。それがはるばる東海地方や 関東、東北まで運ばれたのだ。 ふわく山の会は CL2469 上野さんほか18名 が霧ヶ峰へ1泊2日で出かけた。初日は大雨。 仕方なく長門町鷹山の黒曜石博物館を見学し た。明治大学と長門町が共同で設立したもの。 これが思った以上に充実していた。黒曜石を 研磨加工する体験教室では、美しいペンダント が僅か700円で完成できた。名古屋での 10分の1だった。 和田峠、麦草峠、鷹山 あたり一帯の黒曜石鉱山跡は世界遺産登録へ の運動が盛り上がっている。もちろん石を拾 うのも禁止された。 だが和田峠や和田宿の土産物屋では 非常に高価だが売られている。