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総会・研修会の記録 - PLANETかながわ

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総会・研修会の記録 - PLANETかながわ
Ⅱ
1
総会・研修会の記録
総会概要
○
日
時
平成 24 年 6 月 22 日(金)
○
会
場
かながわ県民センター
13:00∼16:00
ホール
(1)開会のことば
(2)あいさつ
神奈川県社会教育委員連絡協議会会長
鈴木
眞理
神奈川県教育委員会教育局生涯学習部長
福寿
庸
(議長選出)
(3)議
事
第1号議案
平成 23 年度事業報告並びに会計報告について
第2号議案
県・市町村負担金要項について
第3号議案
平成 24 年度事業計画並びに予算案について
第4号議案
平成 24 年度役員等について
第5号議案
その他
(4)そ の 他
新旧役員あいさつ
(5)健康体操
公益財団法人かながわ健康財団
(6)講
健康運動指導士
肥後梨恵子
演
演
題
講
師
「生涯学習・社会教育の現状と課題について」
文部科学省生涯学習政策局社会教育課課長補佐
(7)閉会のことば
- 7 -
平川
康弘
2
総会における講演
演題
「生涯学習・社会教育の現状と課題について」
講師
文部科学省生涯学習政策局社会教育課課長補佐
平川 康弘
資料の1の「 社会教育行政の意義・役割」と2の「 社会教育施設」については、社会教育
のテーマや法令上の位置づけ、館数であるとか、指導者の数が書いてありますが、こちらのほ
うについては、説明は割愛させていただきますので、お帰りになってご覧いただければと思い
ます。ここで2点だけちょっと説明させていただきたいのが、画面の9ページです。図書館、
博物館の館数というのは増えておりますが、公民館の数というのは減っております。職員につ
いても学芸員、司書は増えているんですが、社会教育主事の数、社会教育委員の数というのは
減っているというデータでございます。専門的職員の数は増えているんですが、専任職員の数
が減り、非常勤化しているというのが各地域の課題ではなかろうかと考えております。司書と
学芸員について平成 24 年度から規則の改正等がありましたので、ちょっと説明をさせていた
だきたいと思います。
司書、学芸員の制度でございますが、司書については皆様ご存知のように、司書の資格を得
るためには大学の養成課程を経て必要な単位を取得して資格を得るという方法と、司書講習を
修了するという方法がございます。大学の養成課程において必要な単位数の取得というのが、
平成24年4月1日から変更になっております。博物館についても変更になってるんですが、こ
れについては、それぞれ学芸員、司書の資質を向上しようという観点から、当時報告書が出さ
れて、法律等の改正がございました。
具体的には、図書館においては、14科目20単位から13科目24単位に、大学の養成課程の変更
がございます。司書講習を修了する方法についても、当時14科目20単位から13科目24単位にと
いうように改正をしております。
そして、学芸員についても司書と同じように大学の養成課程において、必要な単位数を取得
する方法と、資格認定試験に合格するという方法がございますが、こちらについても平成24年
4月1日から大学の養成課程において必要な単位数の取得する方法が8科目12単位から9科目
19単位に変更しております。また、学芸員の資格認定試験に合格するという方法は、必須4科
目、選択2科目だったものが必須8科目、選択が2科目というように変わっております。両方
とも平成24年4月からの改正でございます。
この趣旨は、学芸員を含めた社会教育指導者の質を高めるために、国として研修事業に対し
ての予算を措置しております。39ページ目の画面に出しておりますが、文部科学省が実施して
いる資質向上研修事業の概要というものでございます。平成24年度ですと、約7,300万円の予
算が措置されております。画面左のほうに「資格付与」と書いてありますが、社会教育主事講
習を社会教育実践研究センターと14大学で実施しております。そちらの講習経費と学芸員の資
格認定試験に要する経費です。右手に「研修事業」がありますが、この中で社会教育主事に対
しての研修、それと学芸員、図書館司書の研修について予算を計上し、質の向上を計っている
ところでございます。
- 8 -
文部科学省が実施している資質向上研修事業の概要
(前年度予算額
81百万円)
23年度予定額 81百万円
事業の要旨
社会教育法に基づき、社会教育を行う者に専門的技術的な助言と指導を行う、社会教育に関する専門職員である社会教育主事の資格付与のための講習、及び、
博物館法施行規則に基づき博物館の資料の収集、調査研究や教育普及活動など博物館活動の中核を担う学芸員の資格付与のための認定試験を行う。
また、生涯学習社会を構築する上で重要な役割を担う社会教育主事、学芸員及び司書等の社会教育専門職員を対象に、社会教育に関する専門的・技術的な研
修を実施することにより、地域における社会教育のリーダーとなりうる指導者を対象に研修を実施し,地域住民の社会教育の水準向上,自らの課題を自ら解決する
地域社会の形成に寄与する。
資格付与
事
業
内
社会教育主事を対象とした資質向上研修を実施。
(3)博物館学芸員等専門研修(博物館法第7条)
①博物館職員専門研修
学芸員を対象とした資質向上研修を実施。
②学芸員等在外派遣研修
学芸員等を海外の博物館に派遣し,先進事例の調査を実施。
○博物館法第7条 文部科学大臣及び都道府県の教育委員会は、学芸員及び
学芸員補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うよう努めるものとする。
①図書館司書専門研修
②新任図書館長研修(1箇所)
③図書館地区別研修(12箇所)
○図書館法第7条 文部科学大臣及び都道府県の教育委員会は、司書及び
司書補に対し、その資質の向上のために必要な研修を行うよう努めるものとする。
(5)公民館施設職員等専門研修(第28条の2)
①公民館等施設職員初任者研修
②公民館等施設職員専門研修
③教育メディア指導者養成研修
○社会教育法第 28条の2 第 9条の6の準用。
(6)研修プログラムの検証・評価
改善・反映
検証・評価
社会教育主事、司書及び学芸員の大学における養成
カリキュラム内容について、有識者による検討委員会
を設置し、各大学の養成体制や科目の内容について
確認を行い、各大学で実施する養成カリキュラム
の充実を図る。
・社会教育主事養成カリキュラム実施大学(203大学)
・司書養成カリキュラム実施大学(238大学)
・学芸員カリキュラム実施大学(345大学)
(4)図書館司書等専門研修(図書館法第7条)
優れた社会教育指導者による指導・助言
○社会教育法第 9条の6 社会教育主事及び社会教育主事補の研修は、
任命権者が行うもののほか、文部科学大臣及び都道府県が行う。
②学芸員資格認定試験
学芸員となる資格を有する者と同等以上の学力及び経
験を有しているかの試験を実施する。
(7)養成カリキュラム委員会(新規)
地域社
会
(2)社会教育主事等専門研修(社会教育法第9条の6)
○社会教育法
第9条の5 社会教育主事の講習は,文部科学大臣の
委嘱を受けた大学その他の教育機関が行う。
○博物館法施行規則
第4条第1項 資格認定は、毎年少なくとも各一回,文
部科学大臣が行う。
事業成果
研修事業
○地域住民の社会教育力の水準向上
○自らの課題を解決する地域社会の形成
(1)指導者の養成
①社会教育主事講習(14大学・機関)
社会教育主事の資格を付与する講習を大学等に委嘱
して実施する。
容
国が実施する社会教育主事,司書,学芸員を対象とした研修受
講者の追跡調査を実施し,その成果を元に研修プログラムの改
善を図る。
39
図書館法と博物館法の改正の際にも、文部科学大臣と都道府県教育委員会は研修を行うこと
に努めると法律にも規定されました。こういったことからも、関係職員の研修事業等について
は文科省としても平成25年度の概算要求等においても、必要額を計上していきたいと思ってお
ります。42ページまではデータ的なものもございますので、お帰りになってからご覧いただけ
ればと思っております。
それでは、「生涯学習・社会教育における国と地方の施策」というところで、43ページをご
覧いただきたいと思います。国が行っている生涯学習・社会教育に関する施策、予算等につい
ては、先程の社会教育の関係者の資質向上を図る研修経費等とそれ以外にも44ページにもござ
います「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」というものを展開しておりま
す。こちらについては、平成24年度予算ベースで85億の予算が計上されております。この事業
については実施されている地域の方もいらっしゃるかと思いますが、学校支援地域本部、放課
後子ども教室、家庭教育の支援事業を展開しております。これらの事業につきましては、非常
に好評でそれも含めて、通称「連携補助金」と言っておりますが、各地方公共団体向けの補助
金でございます。各自治体から事業をやりたいということで好評でございまして、予算額を毎
年オーバーして申請がございます。特にこの中で学校支援地域本部事業につきましては、特に
事業展開されているところ、されていないところというものが顕著に現れているという例が見
られます。今回の東日本大震災を受けまして、被災した仙台市の教育委員会から、私どものと
ころに職員1人が来ておりますが、その職員が地元に戻りまして、宮城県の学校の先生に、学
校支援地域本部を実施しているところと、してないところで、どういった変化等があったかを
調べたところ、やはり、学校であるとか社会教育施設が避難所に多くなったんですが、支援本
- 9 -
部を設置しているところについては、日ごろからの地域住民の方と関係者の方との連携もでき
ているということから避難所の運営がスムーズにいったという意見が98%というアンケート結
果も出ております。このようにこの事業というのは学校と地域との連携ということ以外にも、
色々な関係団体との連携があってこそ、成り立っていく事業でございまして、日ごろから支援
本部が置かれているところは、あの東日本大震災が起こっても、スムーズにその地域のコミュ
ニティ等が図られたという事例がございました。
学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業
24年度予算額 8,516百万円の内数 (前年度予算額 9,450百万円の内数)
地域住民等の参画による「学校支援地域本部」「放課後子ども教室」「家庭教育支援」「地域ぐるみの学校安全体制の整備」「スクールヘルスリーダー派
遣」などの教育支援活動を引き続き支援するとともに、各地域の実情に応じたそれぞれの取組を有機的に組み合わせることを可能とし、より充実した教育
支援活動を支援する。
【補助率】
国
1/3
1/3
市町村 1/3
都道府県
都道府県・市町村の委員会の一本化や合同研修の実施など、各地域の実情に応じた教育支援活動を有機的に組み合わせて実施が可能
〈都道府県〉 推進委員会の設置
実施箇所 10,750箇所
○域内の他事業との連携や総合的な教育支援活動の在り方の検討
○コーディネーター・教育活動支援員等の研修の実施
○子どもの健康等に関する指導助言 等
○コーディネーターの配置
○活動内容、運営方法の検討
○支援活動の実施
研修の実施
〈市 町 村〉 運営委員会の設置
【学校の支援活動】
・授業等の学習補助
・教職員の業務補助
・部活動指導補助
・学校行事支援
・学校環境整備
・登下校の見守り など
活動の実施
コーディネーター
・各活動の企画運営の中心となって、学校や地域、地域の
団体等との総合的な調整等を行う
安全管理員、教育活動支援員、
学習アドバイザー、スクールガード・リーダー等
・これまでの経験や知識を活かし、学習の支援や専門性のある活動等の
支援、子どもの安全確保のための見守りや遊び、交流活動等を行う
【放課後等の支援活動】
・活動拠点(居場所)の確保
・放課後等の学習指導
・自然体験活動支援
・文化活動支援 など
放課後等の支援活動(放課後子ども教室)については、
「放課後児童クラブ」と「放課後子どもプラン」として
引き続き連携して実施
【家庭の支援活動】
・家庭教育支援チーム
による相談や支援
・親への学習機会の提供
・親子参加行事支援 など
参画・協力・支援
地域住民等
地域社会全体で様々な教育支援活動を実施し、地域の教育力の向上を図る
44
あとこの中のメニュー事業として、学校支援地域本部以外に放課後子ども教室があります。
こちらについては、放課後の子どもたちの学習支援等を行っていくという事業でございます。
もう一つのメニューとしては、家庭教育の支援ということで、家庭教育のサポーターを置い
て、場合によっては、家庭を訪問して家庭教育の相談にのるとかといった事業を展開しており
ます。
この三つを連携補助金ということで、3年前から実施しておるところでございますが、その
実施状況は48ページをご覧ください。平成23年度ベースではございますが、全国で学校支援地
域本部を設置しているところが2,659本部、放課後子ども教室を実施しているのが9,733教室、
家庭教育支援実施数が335市町村となっております。私どもといたしましては、この支援本部
等について、全小学校区内に展開していきたいと考えておりますが、まだまだ不十分なところ
もございますので、来年度以降も必要な経費等を要求していきたいと考えております。
- 10 -
「学校・家庭・地域の連携による教育支援活動促進事業」 ※1 実施状況
(学校支援地域本部、放課後子ども教室、家庭教育支援)
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
平成23年度
2,359百万円
3,774百万円
4,411百万円
4,631百万円
5,166百万円
−
(2,404百万円)
(2,166百万円)
(2,358百万円)
−
学校支援地域本部
設置数
−
2,176本部
2,405本部
2,540本部
2,659本部
放課後子ども教室
実施数
6,201教室
7,736教室
8,610教室
9,197教室
9,733教室
家庭教育支援
実施数
−
332市町村
194市町村
108市町村
335市町村
実施市町村数
放課後 851市町村
本 部 867 市町村
放課後 1,011市町村
家 庭 332市町村
本 部 1,004市町村
放課後 1,053市町村
家 庭 194市町村
本 部 1,005 市町村
放課後 1,060市町村
家 庭 108市町村
本 部 570市町村
放課後 1,075市町村
家 庭 335市町村
国庫補助額
(委託費) ※2
※1 平成23年度より、学校支援地域本部、放課後子ども教室、家庭教育支援等を総合的に推進する統合メニュー化(22年度以前は個別メニューで実施)
※2 学校支援地域本部については、平成20∼22年度、家庭教育支援については、平成20∼21年度は委託事業として実施(21年度以降は補助事業も併せて実施)
48
あともう一つ、ちょっとページが飛んで恐縮でございますが、55ページをご覧いただければ
と思います。社会教育に関する施策として、これも平成22年度から実施している事業ですが、
「社会教育による地域の教育力強化プロジェクト」、予算額としては平成24年度8,200万円を
計上しております。こちらについては、大きく二つの事業がございます。1番目として、「地
域の社会教育振興に関する相談、支援体制の整備」ということで、これは何かと申しますと、
地域で活躍されている社会教育の関係者を文科省が社会教育アドバイザーとして委嘱し、各地
域の事業へ派遣していくというものです。これに対して、アドバイザーを派遣して欲しいとい
う依頼があったら、旅費と謝金等については、当方のほうで出させていただいて、アドバイザ
ーを派遣するという事業でございます。アドバイザーとして今30数名を委嘱をしておりまして、
今年度につきましても、それ以上の委嘱を考えておりますが、こういった制度があるというの
をご存じない方も多くいらっしゃると思います。各地域で良い事業を展開されている中で、予
算等も厳しいという現状が皆様のほうにもあるかと思いますが、こういった制度を活用してい
ただければ、謝金を削減できるといったメリットがあると思いますので、活用していただけれ
ばと思います。
- 11 -
社会教育による地域の教育力強化プロジェクト
(前年度予算額
24年度予定額
91百万円)
82百万円
官だけではなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財、サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野において、
共助の精神で活動する「新しい公共」を支援する。
官が独占していた領域を「公」に開き、ともに支え合う仕組みを構築することを通じ、「新しい公共」への国民参加割合を26%(「平成21年度国民生活選好度調査」
による)から約5割に拡大する。
【新成長戦略∼「元気な日本」復活のシナリオ∼(平成22年6月18日閣議決定)】
現在、あなたはボランティアやNPO活動、市民活動に参加していますか。
(内閣府「平成21年度国民生活選好度調査」より)
2010年
2020年までに
参加して
いる
26%
参加して い
ない
参加して い
ない
74%
参 加して
いる
約5割に拡大する。
成長戦略実行計画(工程表)より
現
状
◇55.6%が「地域の教育力が以前に比べて低下している」と回答
(地域の教育力に関する実態調査)
◇地方自治体の社会教育関係の経費支出は毎年、前年比5%(教育費全体では年1∼2%)の減少傾向
(地方教育費調査)、社会教育主事数は約10年間で半減、など脆弱化する地方の社会教育体制では
新たな課題解決の活動に取り組むことは困難。
→国として、地域課題解決に役立つ、「新しい社会教育施設像」の提示や「効果的な仕組みづくり」等の
実証が必要
◇全国の図書館のうち、「何らかの障害者サービスを実施」しているのは39%
(日本図書館協会調べ)
◇生涯学習を盛んにしていくため、国や都道府県は「施設サービスの充実(38.5%)」、「情報一元化提供
など入手容易化(26.6%)」、「地域人材(コーディネーター)の育成(26.0%)」を行うことが必要と回答
(生涯学習に関する世論調査)
◇他機関と連携事業を行う公民館は少なく、57.9%が今後は連携した事業の充実が必要と回答
(全国公民館連合調べ)
→社会教育施設における、あらゆる人に対するサービスの充実や、効果的ネットワーク化の推進、情報
提供機能や相談体制の整備などにより、積極的に地域課題解決に関わることが必要
事業の概要
1.地域の社会教育振興に関する相談・支援体制の整備
公民館・図書館・
博物館等の社会
教育施設
各地域で活躍する社会教育分野の実践活動者等を、社会教育アドバイザーとして委嘱し、情報収集・
提供や振興方策の相談等を行うとともに、収集した情報を様々な機会を通して全国に発信する。
行政
学校
企業
2.社会教育による地域協働の仕組みづくり実証的共同研究
社会教育アドバイザーが参画し、様々な機関等が連携して、住民自らが地域課題を解決していく「仕
組みづくり」のための調査研究を行い、地域が課題を解決する力の強化を図る。
NPO
大学・研究機関
社会教育による地域協働の仕組みづくりのための共同研究テーマを国が指定
※5テーマ×3地域で実施
①環境保護 ②人権擁護 ③高齢者支援 ④学校と地域の総合的な活性化
⑤地域における効果的なネットワーク化・人材養成手法の開発
成果:○地域課題解決に役立つ「新しい社会教育施設像」を提示
○地域課題解決の「効果的な仕組みづくり」を実証
「新しい公共」の実現に寄与
55
そして、もう一つの事業です。2番にありますように、「社会教育による地域協働の仕組み
づくり実証的共同研究」です。これは何かと申しますと、公募によりまして、①環境保護、②
人権擁護、③高齢者支援、④学校と地域の総合的な活性化、⑤地域における効果的なネットワ
ーク化・人材養成手法の開発といったようなテーマについて、各地域が地域協働のための仕組
みづくりをしていただくためのモデル事業へ、国が委託をさせていただいているという事業で
ございます。こちらについても、平成23年度ベースで30数団体に委託させていただいておりま
す。例えば、その中でも公民館が中心となって、過疎対策が問題となっている各地域、具体的
には新居浜と、北海道、福島、島根の山間地域の方たちがグループを作って、それぞれの地域
課題の解決に向けての対策を行っていくという事業がございます。
こういった事業について、予算も8,200万円ほどしかございませんので、全地域でやってい
ただくということは無理ですので、公募して良い事業を採択させていただき、今のような良い
事例については、広く全国に情報提供・発信していきたいと考えております。そういった課題
を持たれてる各地域は、それを参考にしながら取組んでいただきたいという趣旨で、この事業
を平成22年度から継続をしております。テーマについても、来年度もほぼ同様のテーマで予算
要求をしていきたいと思っております。
それともう一つ、64ページでございます。平成24年度の予算ベースで約10億の予算がござい
ます。「学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業」、こちらについては別途後程
説明しますが、平成23年度の第3次補正であの震災が起こったあとに、補正予算として約5億
円を計上しております。これは何かと言いますと、被災地においては、子どもたちが転校を余
- 12 -
儀なくされるといったこととか、住民の方が仮設住宅に転居せざるを得ないという状況がござ
いまして、各地方自治体から、そういった子どもたちの学習が遅れているとか、地域住民の方
が新しい地域に行く訳ですから、コミュニティというものが薄れてくるということもございま
す。あと、防災という観点から、これから地域をどういうふうに災害から守っていけば良いん
だとかという課題がございます。そういった課題について、いろいろと地域住民の方が困って
いる中で、何か支援方策がないかということで、昨年の震災を受けて、地域からの要望が多く
ございました。そういったことを受けまして、計上させていただいているのがこの事業でござ
います。
学びを通じた被災地の地域コミュニティ再生支援事業
平成23年度第3次補正予算額 542百万円
平成24年度予算額 1082百万円
地域コミュニティ
地域教育コーディネーター
公民館、図書館等
社会教育施設
(NPO、教員OB、PTA関係者、
自治会関係者 等)
<地域の学びの場をコーディネート>
学校
集会所
連携・協力
外部有識者
専門家等
◆放課後や週末等の児
童・生徒の学習支援
◆地域課題に係る学習会
の実施
・地域ぐるみの防災教育
・震災後の心身の健康
・放射線と健康管理
・土地の権利関係や債務
に関することなどの法律
問題
・家庭教育や子育てに関
すること
・高齢者等のICT活用や世
代間交流の促進による孤
立化の防止
◆スポーツ・レクリエーショ
ン活動の支援
地域住民等
<外部講師やボランティアとして活動を支援>
<学習活動の例>
児童館や福祉
施設など
などの取組を実施
学びを媒介として、地域の人間関係を構築するとともに、身近な課題に自ら対応する能力を育成
住民の自律的な取組を基盤とする地域コミュニティの再生
64
こちらについては、「学習活動の例」というところにございますように、先程申しました、
子どもたちの放課後であるとか、週末の学習支援であるとか、地域の課題に関する学習、地域
ぐるみの防災教育であるとか、震災後の心身の健康、放射線と健康管理などの学習機会、こう
いったものも公民館等が主催して各地域住民の方を集めて、これらの地域の課題を解決するた
めの学習を提供するというものです。あと「スポーツ、レクリエーション活動への支援」とい
った事業を被災地に対しての委託費として計上をしております。こちらの事業について、実は
1次募集を3月末に行いましたが、これからまだ2次、3次募集をしていこうと思っておりま
す。これは先程被災地限定の事業だと申しましたが、例えば避難者の方がその被災3県以外に
移転していたら、そこの県から申請をいただければ対象にもなるというものでございます。
今日も全国社会教育委員連合の方と朝打ち合わせをしてきたんですが、社会教育委員の方も
- 13 -
被災地、例えば釜石市であるとか、仙台市でも社会教育委員の方が中心となって、地域住民の
方たちを呼んで講習会をしてるということを今日聞いてきました。そういった事業に対して、
この事業を申請できないかという相談がございましたので、まさにこの事業の狙いであるとこ
ろは、そういった被災地の方たちへ学びの場を提供しようということが基本というか本来の目
的ですので、釜石市や仙台市での事業というのはまさにこれに合致するので申請してみたらど
うですかという話を、実は今日してきたところでございます。もし神奈川県の中でも被災地に
出向いて、そういった講座等を提供しているとか、例えば図書館でいうと一つの例ですけども、
福島のほうに読み聞かせに行っているという方がいますけれども、そういった方に対しての活
動に対しても支援できる事業です。被災地に対してそういった支援をもしされているのであれ
ば、ご相談いただければ、良い方向で進めていきたいと思っております。今丁度2次募集をし
ており6月末の締め切りでございますが、3次募集もその後しようとしてますので、もしそう
いった取組みをして、こちらのほうで被災地の支援をしたいという方等がいらっしゃいました
ら、気軽にご連絡いただければと思います。情報提供的になりましたが、こういったこともや
っているということです。
続きまして、二つ目のお話をさせていただきます。49ページから「今後の社会教育行政」と
いう資料をつけさせていただいておりますが、平成25年度から5か年の第2期教育振興基本計
画を新たに作成することとなっております。こちらについては、中央教育審議会の教育振興基
本計画部会、そして、並行して生涯学習分科会というところで議論をしております。教育振興
基本計画の今の議論としましては、50ページ、51ページに策定に向けた基本的な考え方という
ことで概要を取りまとめております。
第2期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方(概要)
0.第2期計画のコンセプト
教育成果の保障に向け、明確な成果目標の設定と、それを実現するための具体的かつ体系的な方策を明記すること。
Ⅰ.我が国の教育をめぐる現状と課題
○ 我が国の教育を取り巻く諸情勢の変化
①グローバル化や少子高齢化など社会の急激な変化
②我が国が直面する危機
・厳しさを増す経済環境 ・日本型雇用環境の変容 ・少子高齢化による社会活力の低下 ・人間関係の希薄化
・格差の再生産・固定化 ・豊かさの変容 など
③課題解決への糸口
・様々な日本の強み:豊かな文化・芸術、優れた感性、高い科学技術、勤勉性、協調性、基礎的な知識技能の平均レベルの高さ など
○ 東日本大震災を受けて
①震災の衝撃(我が国が直面する危機の一層の加速化が予想される一方、人の絆の存在を実感)
②震災の教訓
・様々な制約によることなく、すべての子ども・若者が必要な力を安心して身に付けていける環境整備の重要性
・困難に直面しても諦めることなく自ら考え行動する力の重要性 ・つながり(絆)の重要性 ・未来志向の復興・社会づくりの重要性 など
→ 我が国全体で教訓を共有し、必要な方策を検討していくことが必要
○ 今後の社会の方向性と教育の在り方
→ 多様性を基調として様々な人々や自然と共生する成熟社会に適合した新たなモデルの必要性
→ 持続可能で活力のある社会を構築するための「自立、協働、創造」の3つの理念
→ 4つの教育行政の方向性(下記イ∼ニ)実現に向けた条件整備や、東北発の未来型教育モデルづくり促進とその全国的展開が必要
50
- 14 -
昨年末に自立、協働、創造という三つの理念を元にして、基本的な考え方として、51ページ
の丸の三つ目、「今後の教育行政の方向性」として四つの方向性を出しております。一つ目の
イとしては、「社会を生き抜く力の育成」、ロとして「未来への飛躍を実現する人材の養成」、
ハとして「学びのセーフティーネットの構築」、ニとして「絆づくりと活力あるコミュニティ
の形成」と、こういったものを基本的な方向性として、基本計画のほうに盛り込んでいこうと
いうことでまとめられております。これは基本計画部会での議論でございますが、こちらと並
行して、中央教育審議会の生涯学習分科会において今の議論の状況を説明させていただきたい
と思います。
第2期教育振興基本計画の策定に向けた基本的な考え方(概要)
Ⅱ.今後目指すべき教育の姿
○ 現在の教育の評価
・学習意欲の増加、低学力層の割合の減少、グローバル化等に対応した教育の質保証、若者の内向き志向の打破、
規範意識・社会性・体力等の育成などが課題
→ 教育行政の課題として「個々人の多様な強みを引き出すという視点」「学校段階間や学校・社会生活間の接続」
「十分なPDCAサイクル」の不足などが存在
○ 今後の教育政策の遂行に当たって特に留意すべき視点
①教育における多様性の尊重、②教育に対する社会全体の「横」の連携・協働、③生涯学習社会の実現に向けた「縦」の接続、
④国・地方の連携・協働の重要性
○ 今後の教育行政の方向性
→ 縦割りではなく、各学校段階を貫く横断的視点を設定し、全体構造を整理。
イ 社会を生き抜く力の養成 ∼多様で変化の激しい社会での個人の自立と協働∼
・個人や社会の多様性を尊重しつつ、幅広い知識と柔軟な思考力に基づき、主体的に課題を解決したり、他者と
コミュニケーションし、 協働したりしていく能力等が必要 → 必要な知識・能力の確実な修得に向けた条件整備が重要
ロ 未来への飛躍を実現する人材の養成 ∼変化や新たな価値を創造・主導し、社会の各分野を牽引していく人材∼
→ 若い段階で海外に出て外から日本を見る機会の増加、優れた能力と多様な個性を伸ばす環境の醸成、
いろいろな異能な人たちの融合を生みやすい環境の構築、多様な背景の若者たちが切磋琢磨する場の構築などが重要
ハ 学びのセーフティネットの構築 ∼誰もがアクセスできる多様な学習機会を∼
→ 学習へのアクセス機会や、安全安心で質の高い教育環境の整備の確保が重要
ニ 絆づくりと活力あるコミュニティの形成 ∼社会が人を育み、人が社会をつくる好循環∼
→ 学習を通じた多様なネットワーク・協働体制の確立が重要
Ⅲ.今後5年間に実施すべき教育上の方策
PDCAサイクルの実施に向けて、具体的な目標・指標を設定すべく、平成24年より本格的に議論
51
5月8日と18日に会議が開かれております。この中で大きく社会教育・生涯学習の分野で、
この基本計画に盛り込んでいくということの整理として、大きく三つに分けて今議論をしてい
るところでございます。
資料は付けてなくて恐縮なんですが、一つ目は社会教育のあり方、二つ目は社会教育行政の
あり方、そして三つ目として社会教育の人材のあり方ということで、今議論をしております。
こちらについても、どのような方向性で載せるかというのは、まさに議論中で、今お答えする
ということはできませんが、その中で各委員の先生からの意見ということで、一つ目の社会教
育のあり方、今後の社会教育のあり方については、背景として、そもそも社会教育というのは
戦後公民館を中心として、各地域で色々なまちづくりを始め、地域の復興と活性化のために公
- 15 -
民館を拠点として社会教育というものが展開されてきて、国としても公民館の設置等を進めて
きた。社会教育関係者の人件費等の補助制度というのも確立してきたという背景がございます
が、その中で近年皆様ご承知のとおり、地方分権とか三位一体改革等の中で、予算等の制約も
かかってきたということで、社会教育というものが薄れてきたという現状等があるということ
でございますけども、その中で今後の社会教育というものについては、国民の様々な学習ニー
ズを踏まえながら、現代的、社会的課題に対応できる自立した個人とか、コミュニティを形成
するということが今後一層求められているということから、社会全体で教育の向上に取組むと
いうことで、平成20年度から教育基本計画にも盛り込んでいるところでございます。
今後は学校、家庭、地域との連携強化というのが、ますます必要、地域全体としてのコミュ
ニティの再生というものが必要だろうと言われております。その中で今後社会教育の機能、役
割というのをどう考えていくかということで論点整理として出されている意見が、地域社会が
直面する様々な課題に対して、学びを通じて自ら課題を認識して、能動的に参画解決していく
人づくり、コミュニティづくりのためにはどのような方策を講じればよいのか、どのようにし
たら有効なのかということを基本的に考えて、社会教育の機能、役割というものを考えていく
べきだろうと思います。
あと、社会教育の機能、役割を担う人材については、どのような資質が求められていくのか、
今後、それに見合った人材育成等が必要ではなかろうかという議論が社会教育の全般のあり方
として出ております。社会教育行政のあり方ということについて、いろいろなご意見をいただ
いております。行政のあり方につきましては、先程も説明しましたように、現状と課題につき
ましては、まず今の社会教育行政というのは社会教育法に基づいて、自ら例えば公民館とか、
図書館であるとか、自ら事業を行う、自前主義的な取組みというものが行われてきたけれども、
複雑化、多様化する住民のニーズに対応するには、今のこの社会教育行政の仕組みだけでは十
分に対応できなくなっている。片や社会教育行政以外の部局においても、それぞれの分野にお
いて普及啓発であるとか、人材育成の事業等が民間教育事業者とか、大学等が展開していると
いう現状があります。
こうした中、各地方自治体の財政状況の悪化であるとか、三位一体、地方分権等の行政改革
等の取組みも兼ねてまして、地方公共団体の社会教育関係職員、予算については減少してきて
いるという傾向にあります。でも、今後は地域主権の進展とか、新しい公共の理念が広がって
いるという観点から、東日本大震災以降にも、地域の絆の再構築というものが強く求められて
いる中で、国民一人ひとりが持っている資質や能力を伸ばすということであるとか、様々な学
習活動を通じて、地域社会において住民の間に絆を作るために、コミュニティ作りを住民自ら
が自発的、能動的に行っていく機運が高まっております。
そうした中で、具体的な実践につなげていくということで今後、社会教育については、こう
いう観点から、考えていかないといけないと言われております。ここの中では具体的な論点、
対応への意見としまして、社会教育行政は今後どのような機能、役割を果たしていく必要があ
るかということで、国と都道府県、市町村の役割をどう考えるか。それから、今の教育行政と
して、今のスタイルで良いところは守っていかないといけない、そこは堅持していくというも
のもあるので、そういったものはなんだろうかというところで議論がされております。その中
で現代的、社会的な課題への対応ということで、公民館等において趣味、教養の学習というの
- 16 -
も必要だけども、学習のあとの地域のネットワークであるとか、集団作りにつなげていく部分
が弱くなっているので、地域の絆の基礎として社会教育の役割を果たすために、もうちょっと
趣味、教養的なもの以外で現代的課題、地域の課題への積極的な対応が必要となってくるだろ
うと思います。ただ、趣味、教養というものも、各地域によっては当然必要なので、守ってい
く必要があるだろう。そういった趣味、教養的なものと現代的課題等のバランスについてどう
考えていくかという議論がなされております。
そして、地域の課題を自ら発見して解決を図ることのできる自立した市民の育成という観点
では、地域住民も行政と一体となって地域の課題の解決を図るということが、今後求められて
きます。その中で、社会教育というのが、まちづくりとか、環境とか、健康などいろいろな分
野に携わっていくということも、社会教育の役割ではなかろうかというご意見も出ております。
このように地域によって異なる様々な課題に対しては、自ら課題を解決して自立的、自発的に
解決していく手法を確立するということを元に、社会教育行政の見直しというものも議論して
いくべきだという意見が出ております。
そして、社会教育の推進を担う人材のあり方についても、現状として、司書、学芸員の数が
増加しているけれども、社会教育主事、社会教育委員は減っており、未設置の自治体も多くな
っているというのが現状です。しかしながら、社会教育主事、社会教育委員というのは、地域
の社会教育を推進するために重要な役割を担っているということは言うまでもございませんが、
他方では家庭や学校、地域における教育支援活動を実施するに当たって、NPOの方とか社会
教育主事の方以外にも色々な方が活躍されているということがございます。こうした中で、具
体的な今後の方向性として、議論されていますのが、今後多用な主体が連携しながら社会教育
を推進いくためには、どのような役割とか、専門性を持った人材が必要であるかという議論に
たって、意見をいただいております。その中では社会教育の推進に必要な専門性という観点で、
地域の資源をコーディネートする役割がますます重要となっていることから、そのコーディネ
ーターは社会教育主事の方が担っているのですが、様々な時代の変化、社会の流れ等があるの
で、今まで以上に専門的な資質が問われているというのが現状です。
地域で社会教育を進めるためのコーディネーターは必要だけどもその役割を果たす社会教育
主事であるとか、公民館主事というのが必要だと言いながら減ってきているというギャップが
ございます。そういった中で社会教育主事の本来の業務であるとか、今後の社会教育関係者の
専門性をどう具体的に担保していったらいいかという議論がなされております。その中でも社
会教育主事の役割については、地域の人材がリーダーとなって活躍する時に、社会教育主事の
スキルというのが問われるとか、社会教育主事はまちづくり主事などとして他部署と連携しな
がら、地域の資源をどのように活用するかを企画しながらまちづくりにつなげていくことも求
められているのではなかろうかという具体的な意見等も出ております。ただ、その専門的な知
識をどう担保していくのかというところがなかなか難しいところでございますが、そういった
ところも今後基本計画を策定するまでの間にまとめていきたいと思っております。
教育振興基本計画については、8月中に中間報告を出そうとしておりますので、それまでに
生涯学習分科会のほうでも、議論をしていくという流れになっております。こういった生涯学
習分科会の動向もあって、実は、先般6月11日に全国社会教育委員連合の常務理事にお願いし
て、社会教育委員の方と文部科学省の生涯学習政策局長をはじめ幹部との意見交換をさせてい
- 17 -
ただきました。全国から8名の社会教育委員の方がいらっしゃって、いろいろと今後の基本計
画の中に盛り込んでいただきたいことであるとか意見をいただきました。その中でいろいろと
社会教育に関する現状について様々なご意見をいただきましたので、そういった意見も踏まえ
て、基本計画に良い方向で盛り込んでいきたいと思っております。
皆様のほうにも機会があれば、広く意見を伺って、基本計画のほうに盛り込んでいきたいと思
っております。
三つ目は東日本大震災における生涯学習・社会教育の現状、どのような施策を行っているか
ということについて説明をさせていただきたいと思います。資料は61ページでございます。こ
れは平成24年6月1日現在の全国の社会教育施設の被害件数です。体育施設、文化施設等も含
めると、全体で3,397件の被害がございました。そのうち社会教育施設は1,784件で、その内訳
は、公民館が894件、図書館が251件、博物館が236件でございます。災害復旧費の補助制度と
いうのがございまして、建物、土地に対して被災したら、それを現状復旧するという制度がご
ざいます。被害のあった1,784件全てに補助金が交付ができるということではないんですが、
約700の社会教育施設について申請が今きております。
東日本大震災における社会教育施設の被害状況
東日本大震災における社会教育施設の被害状況
1.物的被害件数 3,397件(平成24年6月1日現在)
・公立社会教育施設 1,784件
・公立社会体育施設 1,318件
・公立文化施設
278件
・その他
17県
①公民館 894件 ②図書館 251件 ③博物館 236件
④生涯学習センター 128件 ⑤青少年の家 44件
⑥教育改善集会所 16件 他
○被害件数3,397件 都道県別被害報告件数
北海道
4
青森
41 岩手
山形
40 福島
530 茨城
埼玉
190
千葉
224
東京
山梨
2
長野
4
静岡
372
宮城
521 栃木
224 神奈川
35 愛知
654
272
78
3
秋田
群馬
新潟
24
125
49
(参考)国立大学施設 76件 公立学校施設 6,484件 私立学校施設 1,428件
文化財等 744件 研究施設等 21件
文教施設合計 12,150
陸前高田市立図書館(岩手県)
石巻市雄勝公民館(宮城県)
相馬海浜自然の家(福島県)
61
これは被害の事業費の3分の2を国庫補助することができるという規定でございまして、3
分の1は従来では各地方公共団体のいわゆる持ち出しとなったんですが、今回の東日本大震災
にあっては、その残りの3分の1も各地方の負担とせずに、東日本大震災復興交付税というも
ので交付税措置をしております。よって各地方公共団体が持ち出しして整備を図るというもの
ではなくなっております。
この700施設のうち今500施設等がもう既に整備を完了、若しくは復興中ということで、ある
程度目途が立っておりますが、岩手、宮城の200施設については、地域のまちづくりの計画が
- 18 -
できてないので、こういった社会教育施設をどうするか、復旧するのか、移転するのかという
ことについては結論がまだ出ていないので、方向性が見えない状況です。この200箇所という
のは、被害が甚大で事業計画書も作れない状況であるとか、今は徐々になくなってはきている
んですが、事業者がいないなどの関係で、申請が遅れているというところがこの200のうち数
箇所ございます。こちらについても、平成24年度中に早めに交付して、復旧のほうに取り掛か
っていきたいと思っております。この復旧というのが財務省と我々が一緒に現地に出向いて、
被災状況を見て、補助金の額を決めるということですので、そちらのほうについても、早めに
現地調査に行って、早めの復旧をしたいと思っております。
62ページ以降ですが、こちらのほうも後程ご覧いただきたいと思いますが、東日本大震災を
受けまして、図書館、博物館、公民館等の社会教育施設がどんな取組みをしたのかということ
が書かれております。この①の気仙沼市松岩公民館、避難者数が118人、6月15日現在となっ
ておりますが、これはマックスの時の6月15日現在で書いてますので、今のデータではござい
ません。当時の取組みということで書いておりますので、ご了承ください。この松岩公民館は
元々、地域の自治会が中心となって公民館を作っていったところで、日ごろから公民館の経営
委員会が中心となって公民館を経営してきているという観点から、あの3月11日の震災後に避
難所になって地域住民の方が避難されたけれども、地域住民の方たちの力によって、スムーズ
な運営ができたというところがここに書いてある内容です。それ以外の公民館の活動、取組み
についても事例として記載しております。そして、64ページは先程言いましたが、学びを支援
するという観点で、震災対応として平成23年度に計上している予算でございます。
以上、私のほうからの説明は終わらせていただきたいと思いますが、質問等がございました
らお答えしたいと思います。
(質疑応答)
参加者 図書館の司書についてお伺いしたいんですけれども、専門性や資質を重視されている
というお話だったと思うんですが、大学での必要な単位数が増えたことですとか、職員に対
する研修事業に対して補助が行われているということですけれども、そういった専門性や資
質を高めるということに対して、非常勤の司書が増えているということがあると思います。
正規の司書が減っているという点について文科省ではどう考えているかという点について教
えていただきたい。
平川
文科省が司書の養成が必要だと言いながら、非常勤さんが増えてて、正規職員が減って
いるじゃないかということですね。非常に辛い質問なんですが、予算的な面にもつながって
来るんだと思います。いろいろな業務委託であるとか、非常勤化をしてきているのも、予算
がないからそういうふうにしてきてるというのが、各地域の実態であると思います。これに
ついては、一般的な話しかできないんですが、地方交付税等にも措置をしていると思うんで
すが、こちらについても各現場サイドのほうでは、そういった図書館のほうとか、社会教育
のほうに予算がなかなか回らないという声も聞いております。特に一昨年の「光交付金」で
総務省のほうで予算が措置されたと思うんですが、その時1,000億円のうち、300億円が図書
館のほうに使ってもらったという実態がございまして、その中で色々と私のほうも声を聞い
- 19 -
たんです。非常にそういったものはありがたいと、そういった中で、継続的に人件費も措置
をされるということで、去年、今年と普通交付税でその辺は担保できたということもあって、
ありがたいという地方公共団体図書館の方からの声も聞きました。そういった予算がたくさ
ん確保できればいいんだと思うんですが、今は交付税化されているのに、各自治体の財政当
局からお金が回ってこない。それに対してきちんと文科省としても、社会教育関係予算につ
いては、交付税算定されてるんだから、きちんと使ってください、必要なところに使ってく
ださいということを何年か前にも通知を出しているんですが、地方の財政当局までいってな
いというのも現状なので、そういったことで対応はしたいと考えてはいます。
参加者 資料の41ページに社会教育委員の人数の推移というのがありますが、それによると、
社会教育委員の人数が結構減ってきているということで、先程説明があったように、社会教
育委員以外の方の活躍とか、今まで以上に専門的な知識が必要とされるということで、意図
的に減らされているのか、必然的に減ってきているので、そちらの別の活躍される方のほう
に、趣をおいていらっしゃるのか、そういうところをお聞きしたい。
平川
これは各地方公共団体のほうで委嘱している数を社会教育調査で拾って、調査している
数字です。文科省で意図的に減らしているとかということではないと思います。
鈴木会長 横から変なことを言うかもしれませんが、社会教育委員の数が減っているのは、実
際の数が減っているからというのがまず基本だと思います。ただ、それとは別に文科省がど
う考えているかというのがあって、文科省は社会教育委員なんてくだらないと多分思ってる
んだと思うんです。それはですね、社会教育法第13条の規定。自治体で社会教育関係団体に
補助金を出す場合には社会教育委員会議の意見を聞かなければならないという規定があった
のを、平成20年の改正だったと思うが、社会教育委員会議ではなくて、ほかの組織でも良い
んだというふうに変えた。神奈川県は多分そうなんですね。私もなんか偉そうなことを言う
んですが、神奈川県の生涯学習審議会の委員なんです。それで、県の社会教育委員会議がな
くなってる訳ですね、神奈川県は。凄いことやってるんですね、神奈川県と青森県なんかは。
それは文科省が法律を改正してそういうふうにしているから、社会教育委員会議などいらな
いよねと言って、補助金を出さなければいけないから社会教育委員会議、社会教育委員を置
いているというのは、それも可笑しい話だとは思いますが、しかし、なくても良いね、とい
うような方向へ動かしてるのは文部科学省だと思います。
それと、何か月か前にそれを確認して、それで気になってるんですが、今日の資料の58ペ
ージのところにこの間のどうでも良い小手先のというか、細かいことでいろいろ規制緩和と
かやってます。文部科学省も全体の流れの中で色々なことをやらざるを得なくて、細かいこ
とやってるんですが、その58ページの社会教育委員をどういう人から選べということについ
てのその規制を撤廃して条例にするというのがあるんですが、ここの文言はどこからきてる
のか。「社会教育委員の資格」とあるが、どうして「資格」なんていう言葉を使っているの
かよく分からない。なんかそこのところを「資格」と誰かが多分どこかで書いてしまってい
るんですね。「資格」なんてことは社会教育法の中に書いてないです。何かこの当たりの意
味も良く分からなくて、そのうちにこういう資格を持っていないといけないとかというよう
なことを社会教育主事の資格を持っているほうが望ましいとかいうんだったら、少しは良い
けれども、そうじゃない。なんかそういう細かなところで、きちんと文部科学省は対応する
- 20 -
気があるのかないのか、良く分からない状況になってます。
平川
この地方分権もですね、あの私もつらいところがあるんですが、今まで法令でこうしな
さい、ああしなさいといってきたところについては、国のほうがとやかくいうことではなく
て、そこは地域のほうで必要であったら、そういう人たちを集めるし、必要でなかったら集
めないし、それは地方の判断にやっぱり委ねるべきじゃないかという観点から、法令からな
くしたということがございます。
参加者 今の会長さんのお話と関連するのかなと思いますが、平川さんのお話の中で、様々な
プロジェクトがなかなか周知徹底していない部分があるという言い方をされましたけれども、
私たちとしては文科省があり、県があり、そして市町村がありみたいな形で、来るものを受
けてる訳です。そういう意味でいくと、私たちは今日始めて確認した、こんなのもあったな
と思うんですけれども、平川さんとしては、県がもっとしっかりして欲しい、県の担当等が
その辺をもっと我々に伝えて欲しいなどと思うことはないのでしょうか。
平川
あの我々も、一義的には県のほうに周知してくださいっていって県のほうから各市町村
さんのほうに周知していただく流れというのは、ご理解いただきたいと思うんですが、神奈
川県さんだけでなく、都道府県全体のことだと思いますので、持ち帰らせていただいて、ち
ょっと工夫というか、きちんとつながるような対応をしていきたいと思います。
- 21 -
3
研修会
(1)基調講演
演題
講師
「生涯学習社会における社会教育の指導者について」
文教大学副学長・教授
野島
正也
こんにちは。野島です。どうぞよろしくお願いします。
鈴木会長さんとは、研究者としてずっと一緒にやってきました。非常に親しくしていた
だきまして、そんなこともあって、今日ここでお話をさせていただくことになりました。
私は、埼玉県の所沢というところに住んでいまして、神奈川県は地理的にアウェーとい
うか、そういうところがありますので、やや緊張しながら皆さんの前に立っております。
どうぞよろしくお願いします。
私は以前、川崎市で社会教育委員を4年ほどさせていただきました。ずっと前のことで
す。今日は川崎市の方もご発表ということで、楽しみにしています。
今日お話することですが、3枚のレジュメにまとめました。貴重な時間ですので、大体
それに添ってお話をさせていただきたいと思っています。このレジュメを作る時に考えま
したのは、普段、社会教育委員の先生方や職員の方々は、今日何をするか、明日何をする
かということで非常に現実的で具体的なところで対応されています。なので、この場では、
あえて現実から少し離れたところで社会教育の全体を見ていただくのもいいかなと思って
います。でも、あまり離れすぎると物事は見えてこないということがあると思います。例
えば、ここに水差しがありますが、これをずっと遠くから、200m離れたところで見ると、
水が入った容器なのかなんなのか、よく見えないんですね。なので、遠ければよいという
ものではないんですね。逆にこれをずっと近くで見ると、これもなんだか分からなくなる
んですね。だから一番この水差しの形が良く分かる距離というのは、あるんだろうと思う
んです。そういう点で、今日は社会教育委員の役割について少し離れたところで、しかし
あまり離れすぎないところで、お話ししたいと思っています。
1
社会教育指導者の役割とは
早速なんですが、レジュメの最初のところに社会教育法第3条を書き写してきました。
ちょっと読んでみます。「全ての国民があらゆる機会、あらゆる場所を利用して、自ら実
際生活に即する文化的教養を高め得るような環境を醸成するように努めなければならな
い」。これが公布されたのは1949年、昭和24年です。社会教育法はその年に制定されてい
ます。この社会教育法の成立には特に連合軍総司令部、つまりGHQの下部組織であるC
IEというセクションの意向が非常に強く働いていたんですね。戦争中はどうだったかと
いうと、「教化」といいますが、物事の分別を疑う余地なく正しいものとして教え込まれ
てきた。そのことが結果的に戦争を長引かせることにつながった、とアメリカの人たちは
考えたんですね。なので、戦後に新しい教育のしくみを作る時には、あまりこれが良い、
これが正しいと、決め付ける教育はしないことにしようということになった。そこで、良
- 22 -
い学びの環境を作っておけば、結果的におのずとその場で良い学びが生まれるはずだと。
このように、学びの地盤をちゃんと作っておくことが大切だとする考え方で、この第3条
が作られた訳です。なので、このキーポイントは、「環境を醸成する」という言葉にある
と思うのです。「醸」というのは、醸すという字です。お酒に例えれば、材料を、もろみ
でしょうか、良い環境で寝かせておくと、やがて芳醇な香りのお酒ができてくる訳ですね。
社会教育の制度も、良い学びの環境を作れば結果的に成果が上がってくるという考え方に
立って作られた訳です。
しかし、実際には社会教育は環境を良くしておけば、それで良くなるというものではあ
りません。現実には、きちっと計画を立て、そして、それを実行し、検証していくという
ことが、今の常識で言えば当然のことのように思います。社会教育では第3条の考え方は
たしかに大事なんだけど、現実にはしっかりとした計画を立ててやっていくことが肝心だ
と思います。
よくマネジメントのことでPDCAが言われます。何かをやる時には計画を立て、実行
し、これを検証し、そして次の計画にその成果を活かしていく。こういうことが必要にな
ってきます。社会教育では「環境の醸成」が法制的に基本の考え方であるけれど、現場的
にはしっかりと計画を立ててやっていくということが大事だと思います。
2
住民に親しまれる学習の場の創造
これまでの社会教育の流れの中で、参考になると思われることを二つほどあげておきた
いと思います。
まずは、依然として残る「3割社会教育」という実態について。私が文教大学に勤め始
めたのが、今から35年前なんですが、社会教育の科目を担当することになりました。実は
私の専門は社会教育ではなくて、教育社会学でした。「なんだ同じゃないか」って言われ
ますが、違うんです。教育社会学というのは、教育のことを社会学の方法で研究するもの
です。例えば、教育のことを心理学の方法で研究すれば、教育心理学ということになる訳
です。私はそれまで教育社会学の研究者として、学校教育分野とか、社会教育分野にこだ
わらずに研究を進めてきましたが、大学で社会教育分野の教員としてポジションを得まし
たので、社会教育については知らないことがたくさんあったんです。知らない時にはどう
したらいいか。それは、知ってる人に聞くということですね。あるいは実際を見させてい
ただくことです。できる限り現場に出て行って社会教育の事業などを見させていただいた。
その時によく言われたのが、この「3割社会教育」という言葉です。これは、昔からの方
はご存知だと思いますが、住民の方々が公民館に出かけて、いろいろな活動をしますが、
大体、地域全体の3割の人しか活動に参加していない。他の7割は実際には参加していな
いということなんです。
これは35年前の話です。それでは、今はどうなっているんだろうか。こういう調査は、
皆さんのところでありますか。私は社会調査を結構やっています。それで、東京近郊のあ
る自治体で2回ほど調査をさせていただいたんです。その質問紙の中にこういうのを入れ
- 23 -
ておきました。「あなたは、この1年間で1回でも公民館に行ったことがありますか?た
だし、選挙の投票などは除く」と。そうしましたら、その時の割合が回答者の31%でした。
それから数年経ってからもう1回やったんですが、数値は殆ど変わりませんでした。つま
り、35年前と状況は同じなんですね。あとの7割の人たちは公民館などには行っていない。
社会教育施設というと、公民館施設に限定することはないんですが、そのぐらいまだ社会
教育施設に行ってないということです。この7割の人たちにどうやったら、施設に来ても
らえるか、あるいは事業に参加してもらえるか、これが今の大きな課題だと思います。な
ので、社会教育というのは、施設に来てもらって何ぼの世界というのがあるんだと思いま
すね。まだまだこの課題は残っていると思います。
それからもう一つ。社会教育のことで申し上げたいのは、昔からのことで申しますと、
レジュメに「社会教育のDNA」と書きましたが、DNAという言葉にはあまり意味はあ
りません。昔から持ち合わせている特質というほどの意味です。かつて明治から大正の中
ごろ、大正 10 年までですが、社会教育という言葉を国は用語として使いませんでした。
社会教育の「社会」から社会主義を連想されたくないという思いがどこかにあったと思い
ますが、それで「通俗教育」という言葉を使っていたんです。今ですと、「通俗的」とい
うとあまり良い意味では使いませんが、通俗というのは、世間(俗)に通じるということ。
だから実用的なという意味なんですね。日常生活に役に立つための教育というのが、通俗
教育、社会教育になってます。文部科学省の数年前の課長さんがこのことをよく言われま
した。社会教育は実際に役に立つということが大事ということを繰り返し言われましたが、
社会教育にはその流れというのはやはりあると思います。
役に立つといってもいろいろです。例えば私が住んでいる地域では定期的に市の社会教
育講座の広報紙が戸別配布されます。その中に、家の近くの公民館で「自動車の保守点検
講座」というのがありました、1回だけの講座。いいじゃないですか、これ。私は自家用
車を持っていますが、殆ど自分でボンネットを開けたことがない。皆さんはどうですか。
あまり開けたことがない方もおられるのではないでしょうか。だから車の構造はよく分か
らないんです。でも最低限、そういうことについてある程度知識を持っていたほうが良い
と思うんです。行きたいと思いました。平日だったので、私は勤めの都合で行けませんで
したが、残念だと思いましたね。車の運転はわかっていますから、わからない保守などは
知りたいと思いました。
パソコンについてはどうでしょうか。かつて公民館などでもIT講習会がありました。
子どもたちは、こういう知識には長けているんですが、大人は、仕事などで使っていない
とパソコンはなかなか縁がないのです。なので、最低限のITの操作に慣れ親しんでもら
うという試みですね。大変良いことだと思います。ある時、インタビューで伺った公民館
のサークルの方なんですが、このIT講習会に出られました。サークルで絵手紙をやって
いる人なんですね。70 歳ぐらいの女性の方でした。パソコンを習ってから、インターネ
ットをやるようになって、それでどこどこで作品展とか、催し物があるっていうことが分
かるようになって、いろんなところに出かけて、そこでお友だちができるようになりまし
- 24 -
たって言うんですね。これも一つ役に立つ学びの例だと思います。
それでは、書道などはどうでしょうか。自らの嗜みとしての書道ということはあっても、
あまり人の役に立つものとは思わないかもしれません。例えば、ある方ですが、この方も
年配の女性の方ですが、一人暮らしなんですね。彼女は公民館のサークルに入っていて、
そこに行くことを楽しみにしているんですね。それで、この方がおっしゃるのには、寝て
いて、夜中にポッと目が覚めることがあるんですってね。目が覚めてしまった時は落ち着
かない。そこで、机に向かって硯をすって、筆を運んでいると、段々落ち着いてきて、そ
れでまた寝るとおっしゃるんです。その方にとっては、何かの時に自分で筆をとるという
ことが、もう生活の一部になっている訳ですね。これは、役に立つ書道と言っても良いの
ではないでしょうか。趣味の一つでもあると、それで人との話が広がっていきますね。こ
れもやっぱり「役に立つ」ということだと思います。広い意味で社会教育というのは「役
に立つ」ということが重要なのではないかと思っています。
3
社会教育事業を進めるポイント
ここまでは、今までの社会教育の一つの基本的特徴についてお話ししましたが、現在、
その社会教育を進めるに当たって、極めて現代的な課題というべきものがあります。次に
その主なもの二つについてお話しします。
一つは市民の人生経験、キャリア経験、それに加えて学習の蓄積を活かす事業です。こ
れは学習したことを自分の人生や地域社会の中で活かしていく事業ということです。
生涯学習の理念について、平成18年の暮れに教育基本法の大きな改正がありました。そ
の中で初めて、「生涯学習」について法律で規定が行われました。その箇所を読んでみた
いと思います。「国民一人一人が、自己の人格を磨き、豊かな人生を送ることができるよ
う、その生涯にわたって、あらゆる機会に、あらゆる場所において学習することができ、
その成果を適切に生かすことのできる社会の実現が図られなければならない」。こう書い
てあります。長い文ですが、全体を二つに分けて内容を考えることができます。前半とい
うのは、生涯学習については学習する機会がいろいろ整っているということがとても大事
なことなんだいうことですね。その学習の機会を使って大いに学んでいきましょう。これ
が前半です。後半は、ここは大事なんですが、その成果を適切に生かすことができる社会
を作っていこう。つまり、学んだことをどう生かすかということですね。
その生かし方については、端的にいって課題が二つあります。一つは、人生設計、ライ
フプランニングに生かすことです。つまり学んだことを自分の人生の中にどう生かすかと
いうことがあると思います。その中でみると、趣味の世界なんかはとても大事なんですね。
例えば、60歳、あるいは65歳で退職された方で、今まで趣味といっても、とりたてて何も
なかった人が、何かやってみたいと考えたとします。そこで公民館などの施設に行ってみ
ると、絵を描いてる人とか、写真をやってる人とか、いろいろいますね。そこで絵を描い
てる方に、「どのくらいで、このくらいになるんですか」と聞く訳です。すると、見てい
い絵だなぁと思われる絵が描けるまでに大体10年から15年かかることがわかる。書道でも
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同じかも知れませんね。ひとかどのというか、人が見てたいしたものだと思われるように
なるにはやっぱりそのぐらいの年数がかかる訳です。趣味を持つことで、自分の励みにも
なるし、それを続けるためには、仲間がいなきゃいけないし、先生役もいなきゃいけない。
こうした人生設計というものを念頭において、学んだことを自分の人生でどう生かすかと
いうことを考えていく。
もう一つの生かし方は、本人の個人的な生き方に資するだけじゃなく、地域との関係の
中で生かしていくということです。地域活動との関わりで、社会教育の役割をどう見てい
くのかということです。これが非常に重要になります。例えば、一つの例ですけれど、私
が関わってきた市民大学というのがあります。この市民大学を作る時に、職員の方が、若
いのですが非常に頑固な人で、信念があるんですね。大きなクラスはいらない、定員15名
で、2年制でやろうと。まず15名の市民に入ってもらう、次の年にまた15名入ってもらう。
2年制だから受講生30名で構成する訳ですね。そのうちに15名が卒業します。新しく15名
入ってくる、そういう形で常にその30名の中で15名が先輩の学年として核になる。そうや
って1年学んだ人は、その次の人に教えていくというようなことをやっていく訳です。こ
の市民大学のもう一つの特徴は、趣味に関する講座がないんです。やることは、まず体験
活動ですね。例えば、清掃活動、植林活動、様々なボランティア活動…。館外に出て行っ
て実際にやってみるんですね。それからディスカッションの仕方、ディベート、発表、文
章の書き方についての勉強ですね。こういうようなものを学んで1年が終わるというよう
なものです。それで、15人が卒業していく。その人たちは、その先どうなのかというと、
自らが仲間と一緒に何をやろうかということで、ボランティア活動ですとか、あるいは公
民館まつりの実行委員になっていくんですね。活動していく中で仲間が増えます。例えば、
男性はあまり料理なんか知らない。そこで、調理師で調理の仕事をずっとやってきて退職
された人から料理を習おうという声が起こる。これが地域との関わりを作っていくことに
なる訳です。最初の言いだしっぺは頑固だと申しましたけれど、地域との関わりにどうた
どり着くかがその職員の狙いだったのですね。これがもし50名、100名の募集だったら、
そうはならなかったかも知れない。講座の期間だけ「あぁよかった」ってその先が空いて
しまうかも知れない。講座の先のことを考えて、学びの成果をどう生かすかということが
非常に重要だと思います。
現代的な課題のもう一つですが、レジュメに書きましたが、「地域の学習資源を結んで、
それぞれの良さを生かす事業」です。また文章を読んでみたいと思いますが、教育基本法
第13条、これも改正で新しく入った条文です。今までなかったものです。読んでみます。
「学校、家庭及び地域住民、その他の関係者は、教育におけるそれぞれの役割と責任を自
覚するとともに、相互の連携及び協力に努めるものとする」。こういうことになっていま
す。「その他の関係者」というのは、例えば地域を広く見た時のNPO等の団体ですとか、
そういうものが入ります。それぞれが連携協力してやっていくということが必要だという
ことですね。今までは学校は学校、地域団体は地域団体、社会教育の施設は施設で独自に
やってきた面がたしかにあったと思うのですが、この連携協力というのが極めて重要であ
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るということ。つないでいく、つまりコーディネートということが非常に重要なことにな
るということですね。コーディネートというのは、「つなぐ」とか、「結ぶ」という意味で
すね。あるものとあるものをどうやったら効果的に結べるかということを通して、社会教
育の効果を上げていくことが新しい課題として浮上したものと思います。
ところで私はいま、法律の条文を書き写したものを読みあげましたけれど、昔はよく手
で書き写しました。今はパソコンで書き写しますが、やっぱり書き写すといろいろと覚え
ますね。今は学校教育でもこの「書き写す」ということが、見直されているところがある
んですね。ところが社会教育ですと、パワーポイントなどがあり、それで説明する。説明
を受ける方はこれを一所懸命書き写すなどされれば良いんですけれど、資料として同じも
のが手元に用意されると、それを後で見れば良いんだなんて思うと、結局は記憶に残らな
い。やっぱり「書き写す」、あるいは「ノートテイクする」、こういう習慣というのは必要
だろうと思いますね。私が見てみますと、比較的年配の男性の方がノートをとらない、記
録をとらないですね。講義というのは、そこで話されたことを自分なりに咀嚼して必要な
ところをメモしていく作業を想定しています。なので、実はやり方によっては、講義形式
というのは重要な学習方法だろうと思っています。
4
社会教育事業の基本的スタンス∼学習と交流の3つの柱
さて、次ですが、社会教育の事業に関してです。社会教育行政の中核というのは、社会
教育の事業を行うということです。だから事業がよければ、これはもう社会教育の計画と
しては、有効にそれが働いたということになります。
その社会教育の事業というのは、一体どういうものなのかということなんですが、これ
には教育委員会、社会教育課・生涯学習課というレベルもありますが、ここでは端的に公
民館の事業を例にとって申し上げたいと思います。公民館の事業の実際は大別すると三つ
になります。例えば公民館の職員の方に、「公民館って何をやるところでしょうか」と聞
きますと、「そんなこと言われたって」という答えが返ってくる。普段やってるものを、
改めて何やってるかって聞かれても返答に困るということでしょうが、公民館の事業は基
本的には三つあります。
一つは、学級・講座・教室の開催です。さまざまな学習機会を提供するということです
ね。公民館が予算を持っていて、その予算でやることになります。この企画を立てるのは、
公民館の職員の方です。その企画についてのノウハウは、あとでお話しします。お手元の
レジュメにスコープとシークエンスという言葉を書きました。これは学校教育でも使う言
葉なんですが、スコープというのは「範囲」です。シークエンスというのは「順番」とい
うことです。講座を組む時に、例えば5回の講座があったとします。そうすると1回目で
どういう話をしようか、2回目でどういう話をしようか、これを決めておかなければなり
ません。あまり細かいところに入り込んでもいけないし、あまり広範囲をカバーするのも
どうでしょうか。適度な範囲で内容を束ねる必要があります。これが各回のテーマという
ものなんですね。次に「順番」ですが、テーマが順番よく並んでいると、内容の呑み込み
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がよい訳ですね。学習者が順序よく並んだテーマを見た時は、「こういうことで講座が進
んでいくんだな」ということが分かる訳です。講座で、このスコープとシークエンスをし
っかり作れるということが、大事なことなんです。ところが実際にはそうなっていないこ
ともあります。ここは企画する職員の方の力量が問われるところだろうと私は思っていま
す。
「参加型学習」ということも書きました。これは受講者が単に講義を聴くというだけじ
ゃなくて、そこにいろいろな形で話し合いの学習を入れたり、作業を取り入れた学習を入
れていくことが必要だと思います。
いま、講座のことで思い出したことがあります。余談ですが話をさせてください。ある
時、私は家庭教育学級の講師として公民館に伺いました。いま、家庭教育学級は学校でや
ったり、公民館でやったりします。そこにおばあちゃんが受講生として結構いらっしゃい
ます。「おかあさん」ではなくて「おばあちゃん」なんですね。昔の教育と今の教育はだ
いぶ違う、子どもの育て方も違う、なので、今の教育や子育てについて勉強したいと言っ
てお見えになるんです。だいたい教室の前の席に座って勉強されてます。ある時、私がコ
ーディネートという英語の言葉をカタカナでホワイトボードに書いて説明したことがあり
ま す 。 す る と 、 お ば あ ち ゃ ん が お っ し ゃ る ん で す ね 、「 あ の 、 ス ペ ル は ど う な ん で す
か?」と。何で聞かれたかというと、「あとで辞書を引けば、その意味を確かめられる。
でもカタカナで書かれると、もう辞書は引けない」と言うんですね。すごいなと思いまし
た。こういうことがあったので、レジュメでは、コーディネートはカタカナ、シークエン
ス、スコープもカタカナではなくて、英語のスペルで表記しています。皆さんは、無理し
て辞書を引かなくても結構ですので。
二つ目はサークル活動です。それぞれ自分たちでサークルを作って、指導者を依頼して
活動を続けていくというスタイルの活動のタイプです。多いところですと、300、400のサ
ークルを抱えている公民館もあります。昔は学級や講座で学習グループを作って、終了後
にサークル化していこうというのが基本だったんですね。今はサークルの数が多すぎて、
できるだけサークル化しないようにという思いが働いている公民館もあります。
サークルというのは、自主的に運営している組織です。公民館などの施設利用者を見て
みますと、延べ利用者で1週間に1000人が来館する公民館があるとします。そうしますと、
サークルで来館する方はだいたい900名で、残りが学級・講座での来館者ということにな
ります。多くの方々がサークルで出会い、勉強になった、お友だちができたといって活動
を続けていくというのはとてもすばらしいことだと思います。しかし現実には、「私塾
化」という事態も館によっては起きています。つまり、お稽古事の先生が公民館で営業を
始めるみたいなことが起こっています。指導者ご自身が曜日を設定して、月謝はいくらと
決めています。例えば着物の着付けだったら、「材料は全部私を通して購入してくださ
い」とか、こんなことも出てきます。
公民館の生け花のサークルの会長さんから、指導者の先生から「京都にいる、私の師に
当たるお師匠さんの奥様が亡くなられたので、香典を集めたい」と言われたが、どうした
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いいでしょうかと相談を受けたことがあります。あるいはこんなこともありました。太極
拳のサークルで基礎をきちっと教えてくれるいい先生だなと思ったんですが、もっといろ
いろ教えてもらいたいと要望したら、応用編については、別に料金をもらいますといわれ
たと言います。お金に余裕がある人がドンドン技の難しいのを習っていける。「どうした
らいいでしょうか?」という訳ですね。それで私は申しました。「サークルというのは指
導者中心でやっているものではなくて、サークルとしてのまとまりでやっていますので、
別料金というのは適当ではない。ほかの方法でお願いしますということを太極拳の先生に
言ってください。もしそれで駄目ならば、残念ですが先生に変わってもらうしかないので
はないでしょうか」ということを申し上げました。その後お会いしたら、今では別の先生
にお願いしているということでした。公民館等のサークル活動で大事なのは、自分たちは
何をしたいのか、どういうやり方でやりたいのか、どういうサークルを育てていきたいの
かということだと思います。
三つ目は、公民館まつりなどの各種のイベントです。呼び方はいろいろですが、公民館
まつりは、年に1回ある。そのほかに地域の発表会ですとか、菊の展示会ですとか、音楽
の発表会、絵の発表会とかがありますね。これまで申し上げた学級・講座もサークルも、
決まったスケジュールに基づいて行くんですが、公民館まつりは、公民館に普段行ってな
い人が「ちょっと行ってみようか」ということで行くことになりますので、先程の「3割
社会教育」を解消するという意味では、とても大事なものなんですね。これを活かすには、
実行委員会を作って運営するのがいいです。それは市民参加という点ではとても良いと思
うのですが、市民参加があれば良いのかというと、必ずしもそうでないと私は思ってます。
例えば、一つの例ですが、受付がありますね。受付担当者は来館者にプログラムを渡し
てくれます。私は公民館まつりがあると、結構見て歩くんです。私が行った時に、受付の
担当の人に、市民の方ですが、お友だちが来てたんですね。それで久しぶりに会ったんで
しょうね、話に熱中しているんですよ。だから、チラシはこうやって出しているんですね。
来館者を見ないで。それだったら、置いててもらったほうが来館者はよっぽど気持ちよく
受け取れますよね。
公民館まつりでは部屋を仕切ったりして各サークルが作品の展示をしています。例えば
絵の展示とか。そういう時に部屋のコーナーあたりで番をしている人がいますね。これは
結構大変ですね。段々と飽きてくるんでしょうね。そこにお友だちや知り合いが来るとど
うでしょうか。そのうちにちょっとお茶でもとか、お菓子ありますよ、みたいに、そこで
盛り上がったりする。そうすると、そこに居合わせた来館者は絵を見て、当番の人に「ち
ょっと聞きたいんですけど」と言えないですよね。ギャラリートークという言い方があり
ます。一人で見るんじゃなくて、人と感想を話しながら見て行くといろいろと鑑賞の幅が
広がるということになります。そうした意味でも、サークルの当番の人には余裕を持って
そこにいていただく。当番がそういうようなことにも気を配ってちゃんとやってもらうと、
市民のためになるんですね。公民館まつりもやり方によっては随分と違ってくるというこ
とだと思います。
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もう一つついでに悪口を言いましょうか。バレエのサークル発表がありました。子ども
がやっているバレエですね。公民館まつりの時にホールでバレエの発表をする訳ですが、
終わったらサーとみんな帰るんですね。他の展示などは見向きもしない。指導者がそうい
う気持ちなんです。他のサークルのことに何の関心もないんですね。せっかく公民館に来
たのにこれではもったいないです。他のサークルの展示や実演などいろいろなものを見て
いくというのが大事だと思います。まだまだ、公民館まつりなどのイベントについては、
工夫することがたくさんあると思います。
5
地域課題・生活課題を取り込んだ講座の企画
さて、次の話に進みたいと思います。講座のプログラム作りについてです。まず、講座
を作っていく時に、何を念頭に置いたらいいのか。レジュメにも書きました。教育基本法
の第 12 条第1項にあるように「個人の要望と社会の要請」に応えていくということが課
題になります。そこで「社会の要請」って何だろうか、「個人の要望」のほうははっきり
してるんです。「これやりたい、あれやりたい」、それを講座化していけば良いということ
です。「社会の要請」って何んだろうって考えた時に、それを詰めていくのが社会教育な
んですね。講座を作る時に、今どういうことが地域の課題で、どういうことが生活課題な
んだろうか、こういうことを詰めて考えていく必要があると思います。
地域課題や生活課題を考える時、一つの年代にだけ対応するのは駄目なんですね。幅広
い年代の方々に対応する必要があります。次にいくつか例を出したいと思います。
まずは子育て世代についてです。今の子どもはすくすく育っているか。「マニュアル育
児」、聞いたことがありますか。祖母が一緒に暮らしていないところで、子どもを育てる
ことが非常に多くなりました。祖母に聞けない分、本や雑誌を見たりして子育ての仕方を
いろいろとで学んでいくんですが、本や雑誌は、もちろん間違ったことは書いてないんで
すね。その通り生真面目にやっていくと、段々と面倒くさくなるんですね。疲れてもきま
す。一方、実際に子育てを経験している方は、このあたりで良いんだみたいな、経験則を
もっている訳ですね。なので、ストレスが溜まらないんです。けれど、「マニュアル育
児」っていうのは、ストレスが溜まりやすいというところがあります。これは冗談なのか、
本当なのかよく分からないですけれども、あるお母さんからの相談なんですが、「うちの
赤ちゃんのおしっこが青くないんですけども大丈夫でしょうか」。おしっこの色が青い訳
はないんですけども、テレビで流れている紙オムツのコマーシャルでは、大体おしっこは
ブルーで表現するんですね。それをずっと見てると、赤ちゃんのおしっこはほんとうは青
いのではないかと思うようになるんでしょうね。他に情報がない時に、ちょっとしたこと
で迷うんですね。「本当かな?」と思うようなところがあると思いますね。
「6つのポケット」、「8つのポケット」について。「6つのポケット」というのは、お
父さん、お母さんが子どもにいろんなものを買ってくれる。お父さん方、お母さんの両親
もいろんなものを買ってくれる。少ない年金を工面して買ってくれる。だから、子どもの
ポケットには「6つのポケット」があるっていうんですね。最近は6つじゃない、8つだ
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っていう人もいます。これもアバウトな話なんですけれど、子どものいないおば、おじで
すね。兄弟の子どもが可愛いって言って子どもの好きなものを買ってくれる。だからポケ
ットが2つ増えて8つだっていうんです。それだけ子どもたちはモノを豊富に与えられて
いる訳ですね。ほんとうは「足りない」ということを学んでいくことも大切なのですが、
それがない。例えば正月を前に、親に「何か買ってやろうか」「何が欲しい?」と言われ
ても子どもは困るんですね。何が欲しいと言われても、欲しいものはもう買ってもらって
るから、今更何もいらないということです。昔だったら、買ってもらいたいモノってあり
ましたよね。私たちの年代の男の子だったらグローブだとか。皆さんはどうですか。女の
子だったら何ですかね。リカちゃん人形とか、その年代じゃないかも知れませんが。
「はぐれママ」。子育てをしていく時に地域でお友だちを作りながらやっていくのが普
通なんですけども、その仲間に入れない。入れないということは回りが意地悪をしている
訳では必ずしもないんですね。当の母親に社会性が乏しいというか、仲間に入っていく仕
方を知らないんですね。ちょっとしたきっかけで入れるのにです。
次に現代の子どもたちの問題、つまり「気になる子どもたち」について考えてみたいと
思います。レジュメに「イルカ族」と「イワナ族」という言葉を書きました。「イルカ族」。
イルカは頭の良い動物で、見るところ手や足がない。同じように今の子どもは、頭が良い
しかし、手や足を使う、つまり五感を使っていろいろなことを体験していくことに乏しい。
学校教育の中でも身体活動は大事にしていると思うのですが、十分とはいえない。なので、
やはり社会体験ですとか、自然体験を地域の中でできるだけやっていく必要があるという
ことです。
「イワナ族」。イワナというのは、川魚で上流に棲んでいます。アユなどは下流まで降
りてきますが、イワナは降りてこないんです。そういう性質から、自分たちの縄張りをし
っかり持っていて、他の魚を中に入れない、自分もそこから出て行かない。そういうとこ
ろから、小さな親密圏というか、小さなグループを作って、そこから出ようとしない子ど
もが類推されるわけです。学校のクラスの中では一緒に遊ぶ子と遊ばない子がはっきりし
てしまう。地域では少々違う訳です。
例えば、公民館に土曜子ども教室というのがあって、オカリナ作りをやっている。講師
は公民館の陶芸サークルのお父さんたち、お母さんたちです。オカリナを作り上げると今
度は公民館の音楽サークルの人たちがオカリナの吹き方を教えてくれるんですね。そこに
集まった子どもたちは学年も違うし、学校も違うんです。教室が面白いからといって集ま
ってくるのです。この場合など、公民館はイワナ族にならないように、それなりの対応を
していることになります。携帯電話が普及して、子ども同士が簡単に連絡が取れるように
なると、普段遊ぶ子のネットワークができてしまい、遊ぶ子と遊ばない子の区別がはっき
りしてしまうということもよくあることです。携帯電話の「3回ルール」というのをご存
知ですか。友だち同士で電話しますね。3回呼び出し音が鳴るうちに出ればお友だち、3
回で出ないやつはもうお友だちじゃない。ですから、今の子どもたちは結構人間関係で疲
れているということができるかもしれませんね。
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青年の年代に関して、レジュメに「伸び行く青年、生き方、礼節」と書きました。青年
については、躾がなかなか身についていないということがあるかもしれません。挨拶がし
っかりできるというようなことは必要なんですね。私のゼミの学生の一人が、卒業論文で
地域の祭りについて書きたいと言うんですね。どうしてなのかと聞くと、自分が小さい時
に山車を引いた。どこか途中で篤志家のところで山車が止まって、そこでナシやお菓子の
袋をもらうんです。その時のもらい方というのは、祭りの役職者で長老の人が、そこの家
の人に挨拶をして、そして子どもたちが順番にもらっていく。そういう体験を通して自分
は、世の中にはしきたりとか、礼儀だとか、そういうものがあるんだということを感じと
ったっていうんですね。そんなことで、その学生は地域の祭りが持っている躾力といった
ものを勉強したいと言ってました。若い人には、ボランティアをやりたい、学校以外の人
ともつながっていきたいという思いも相当あると思いますので、そういう思いを社会教育
の中でも生かしていくことが大事だと思います。
中高年と高齢の年代については、レジュメで「人生後半への関心の高まり―離脱要素と
活動要素、時間予算…」と書きました。今までずっと仕事してきた人は、どこかの時期、
多くは定年の時期に仕事から離れていきます。そうすると今まで培ってきた仕事上の技術
などは使えなくなる。同僚の人たちとの人間関係も疎遠になっていく。そこで、この時期
には、新しい生活に向けて、意識的に仕事から離れていかないと、いつまでも未練が残っ
て、次の生活になかなか上手く入っていけない。仕事生活から離れる一方で、新しく活動
するために何が必要なのかを考えていかなければならない。これが活動要素です。新しく
得ていくものもないと充実感は得られません。離れていくものと得ていくもの、どのよう
にうまく入れ替えていくか。こういうことが特に 60 代では非常に大きな課題になってき
ます。
退職後の時間を予算に見立てて「時間予算」、あるいはタイム・バジェットという言い
方があります。退職後の総自由時間は大体10万時間とか、11万時間と言われています。こ
の時間をどうやって上手く使っていくのか。この1年間でこういうことをやりたいと決め
て計画的に時を過ごしていく人と、その日暮らしというか、明日のことは朝起きてみなき
ゃ分からないというような生活をずっとやっていく人の違いは非常に大きいのです。
今、年代を追って、社会的な課題や生活上の課題を見てきましたが、これらを視野に入
れて、社会教育の講座を組み立てていく、あるいは学習サークルを支援していくことが大
切です。社会教育のなかで、地域の友だちづくりをやっていこう、それを通して個人の活
動を地域につなげていこうというという視点が必要だと思います。
6
社会教育事業の洗い出し
次に「社会教育事業の洗い出し」ということについてお話しします。先程申しましたが、
社会的課題や市民ニーズは多様化しています。洗い出しの第1のポイントは、社会的課題
や市民ニーズの多様化や複雑化にどう対応するかということです。エイジレスとか、ジェ
ンダーレスと言いますね。年齢に関わりなく、あるいは性別に関わりなく、社会教育のい
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ろいろな講座や活動に参加していくことが大事だと思います。そういう点では、今まで、
これは青少年向け、これは成人向け、これは高齢者向けというように講座を分けすぎたの
かも知れませんね。分かれていても良いけど、例えば家庭教育学級に、おばあちゃんが参
加したって全然おかしくないのです。男性を主な対象とする料理教室に女性の方が入った
って構わない。女性だから料理ぐらいはよく知ってるでしょうと考えることがおかしいか
も知れません。ずっとキャリアウーマンとしてやってきた方の中には家事が得意でない方
もおられるでしょう。例えば、看護師さんはどうでしょうか。いつも患者さん、患者さん
と、患者さん中心の生活を送ってきた方には、自分で料理するということは二の次であっ
たかも知れません。退職したあと、ちょっとした集まりでご近所の奥さんから、お料理を
持ち合わせましょうと言われたとき、一品の料理も自信がないと、気持ちが引いてしまう
というようなこともあるんです。なので、料理を覚えたい人や好きな人が、男女を問わず、
公民館の料理教室で経験を深めるというのはいいことだと思います。
中高年の方々のコミュニケーション能力の向上という点も大きな課題となっています。
今日も会場にNPOの方もいらっしゃってると思いますが、NPOについて、内閣府が行
った調査に興味深いものがあります。調査の対象となったのはNPOの代表の方です。N
POの代表に、退職してNPOの活動を希望している方々に何を望みますか、と訊いてい
ます。いつくか選択肢が用意してありました。例えば、今までの経験を生すことができる
人に来て欲しいとか。しかし、そう答えた方の比率は低かったです。回答のトップは「人
と上手くやっていける人」でした。つまり、NPOのリーダーの方々にとって、団塊の世
代の人たちが組織に入って困っているのが、彼らが人と上手くやっていけない、どこかで
人と衝突してしまうというようなことのようなのです。
横浜市に拠点を置くNPOで観光案内をしているNPOがあります。そのリーダーの方
ににインタビューさせていただいたことがあります。横浜には隠れた名所もたくさんあり
ますから、そこも案内しようとされています。観光案内の活動をやりたいという方は、特
に男性が多いんだそうです。歴史好きが多いのでしょうか。リーダーがおっしゃるには、
入会した方々にはグループを作っていただいて、1年間、いろいろなところを回って、資
料作りですとか、案内の仕方を勉強してもらうというんですね。「そうですか、1年も下
準備をするんですか」と申し上げましたら、リーダーは、「そうなんですが、一番大事な
のは、1年をかけてグループの中で人と話ができるようになる。つまり自分の考えを人に
伝えたり、また人の話をしっかり聴く、そういうことがちゃんとできるようになるという
ことだと思っています」と言われました。1年かけてグループでのコミュニケーションが
しっかりできるようになってから、いろいろなガイド活動に入っていただくということな
んですね。そういう点では、社会教育のいろいろな講座では、体験を通してコミュニケー
ションの力を高められる参加型の講座に参加していただくというのが非常に良いと思いま
す。
洗い出しの2番目は地域リーダーの養成についてです。一般の市民の方々の地域参加を
進めることも良いのですが、地域のリーダーの養成というのも、非常に重要だと思います。
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それで今日は、「制度疲労」の自己点検を中心にお話しします。例えば、地域の中で非常
に良い仕事をされ、地域に定着している組織というものがいくつかあると思います。具体
的には自治会です。自治会は年月を経る中でリーダーが変わっていくんですが、なかなか
上手く引継ぎされないということがあったり、会員の人たちが自治会の一員としての自覚
を段々なくしていくということがあります。これが「制度疲労」ということです。企画力
も段々弱くなってくるんですね。自分が役員になった時には去年やったこととだいたい同
じことをやれば良いとかね。リーダー、つまり会長を選ぶ時の様子もすっきりしないもの
があります。例えば会長さん、年配の方です。会長の任期が終わる時に、自分は次も会長
やってもいいと思ってるんですが、ところがそれを言って、はしたないと思われてもいや
だ。だから黙っている。回りの人もまたあの人に頼べば良いかということで、「誰々さん
にまた会長をお願いしたらどうでしょう」って言うと、会長は「いや、私はもうずっとや
りましたから、この辺でどなたか他の人に」、と言うんですね。内心は違うんですよ、で
もそう言うんです。そうするとみんながシーンとしちゃう。しばらく沈黙が続いてから、
「やっぱり何々さんにやってもらいましょうよ」、「いや、だめです」。これを繰り返すん
ですね。繰り返して、「じゃ、どうしてもと皆さんがおっしゃるなら、もう1期だけ」と
言って話がまとまるんですね。こういう決まり方が結構あるんです。だから途中で誰かが
「やってもいいですよ」などと言われると困るんですね。ところが実際にそういうことが
出始めてるんです。退職された方々で、今までほとんど地域のためにやってこれなかった
という思いを持って自治会の総会に来て、そんな会長決めの話がでる。シーンとしてる訳
ですね、誰も手をあげない。でも、そのシーンとする間合いが必要だからシーンとなって
るんですね。それはみんな分かってるんです。ところがそういうことを知らない彼は、誰
も会長のなり手がいないんだ、これは大変だ、と思って、「あの―」と手をあげる。「私は
地域のことよく知らないんですが、前の会長さんにいろいろとご指導いただければ、私で
よければやりましょうか」と言う。こう言われると会長さんはまたやるつもりだったんで
すが、やれなくなっちゃうんですね。実際にそういうの見ました。そうしたら、もう一人
の退職された女性の方が「あの―、私も実は退職して2年ぐらいなので地域のことはよく
分かりませんが、その方が会長を引き受けられるなら、私もお手伝いしますよ」と申し出
る。そうやって副会長さんも変わるんですね。ドンドン別に前の会長がいけないっていう
のではないけれども、適当な時期に役員交代をして、しっかりと年間の計画を立てて、み
んなで協力して実行に移していかないと、組織が制度疲労していくんですね。
次に、レジュメに書きましたが、「協議体」「実行体」としての組織についてお話ししま
す。「協議体」というのは、みんなで話し合って決めていこう、ということなんですね。
リーダー一人が方針を決めて、周りがそれに従うということではなくて、組織のメンバー
がみんなで知恵を出し合ってものごとを決めていこうということです。それから「実行
体」。いつも決めるばかりで、うまく実行に移せないのでは困ります。また、実行する時
には効率よくやっていくことが肝心です。例えば、あるイベントがあったとします。自治
会の役員たちが手分けして役割分担をします。でも、その当日はどうしても用事があって
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手伝えないという人がいたらどうでしょうか。「当日お手伝いできない人は、前日までの
準備の役割に回ってもらえませんか」とお願いすれば、イベントの手伝いができるかもし
れません。これも実行の知恵です。このように、組織のなかで話し合いがしっかりできる、
効率よく実行に移せる。こういうことができる地域リーダーを養成することが大事だと思
っています。今、自治会のことばかり申し上げましたが、今日お集まりの方の中には自治
会の役員の方もいらっしゃると思います。PTAを例にとることもできましたが。
洗い出しの3番目ですが、協働型の学習プログラムについてお話しします。組織にはコ
ーディネーターの役割をとる人が必要です。組織の外に向かって、一緒にやりませんかと
声をかけていく。だから、どこに声をかける相手がいるかを知っていないといけない。と
もかく声をかけていくということが、非常に重要だと思います。その時に「私たちはこん
なことをしたいんです」と、提案する趣旨や内容をしっかり相手に伝えることを心がける
必要があります。それがないと交渉も、その結果としての協働は成り立たないのです。
このようなときには、企画の在り方が問われてくると思います。例えば、最近は社会教
育の予算がなかなかつかないということがあって、ある自治体では、今まで各公民館が主
体になって講座を組んでいたものを全部引き上げてしまって、社会教育課とか、生涯学習
課で公民館の講座を一括して組むようになりました。私はその講座に1回講師で呼ばれた
ことがあるんです。市の職員の方から、今度、市民による企画委員会で講座のプログラム
を作ってもらうことになったという説明をいただきました。市民参加です。ところが、プ
ログラムの中身を見たら、7回分の一つ一つの講座の内容が全然バラバラで、全体として
何をねらった講座なのか、見た目では全然分からない。でもその職員の方はこれは良いっ
て言うんです。何故か。市民が自らそういうものを企画したから良いんです、と。これち
ょっとおかしいと思いませんか。企画に予算を付けて、それを提供するのが行政職員の仕
事です。誰が講座に参加するのか。市民ですよね。だから最終的には参加する市民の方々
にとって良いプログラムを提供しなければいけないんです。そこは企画というところが弱
かったんだろうと思いますね。いろいろな方面に声をかける、いろいろな工夫をするとい
うのは良いんですが、どっかで「私たちはこういうことをしたいんです。こういう企画な
んです」ということをしっかり相手に対して提案していくということが大事だと思います。
7
社会教育委員の役割
あと10分しかなくなりまして、申し訳ないんですが、話を少し急ぐことにします。社会
教育委員の役割についての話に移りたいと思います。冒頭にお話ししました社会教育法の
第17条の中に、社会教育委員の役割が書いてあります。しかし、この法律が作られた当時
は、村や町、そういうところに社会教育の専門的知識を持つ職員が配置されていない状態
が非常に多かったんですね。だけど社会教育を進めていくためには、行政に協力して社会
教育を進めていく識者の住民が必要だったんです。これが社会教育委員だったんですね。
だから当時は社会教育委員に社会教育の計画を立てる役割も期待されたわけです。やがて
行政組織の充実が図られ、職員が配置されるようになると、社会教育の計画の主体は社会
- 35 -
教育主事がいる社会教育行政に中心が移ることになっていきました。ところがやはりその
地域でどのような講座が必要なのか、地域住民はどういう講座を組んでほしいと思ってい
るのか、この地域を将来どのような地域にしたいのか、ということになると、地域の事情
に詳しく、住民の側に立って考える社会教育委員の方々に意見を言ってもらわないと、良
い計画ができてこない訳ですね。そういう意味で、社会教育委員が社会教育計画づくりに
参加するということは非常に重要なことだと思っています。
委員が社会教育計画の立案に参加するという場合、社会教育法の中で社会教育委員は
「研究調査」をすると書いてあるんです。いろいろなことを調べて、勉強して、そして計
画に反映させていくということが重要ですね。このほか、社会教育委員の役割としては、
教育委員会の「諮問」の求めに応じることや、自治体が社会教育関係団体に補助金を交付
する場合に、社会教育委員が会議を開いて、補助金の妥当性等について意見を持ち合うこ
とが挙げられます。とくに、自治体が地域の団体に補助金を支出するということは、民間
の団体に公金を支出することですから、そこに市民の良識が反映される必要があり、その
役割を社会教育委員が担うのですから、その役割はたいへん重いものと考えられます。今
後とも社会教育委員の見識がしっかりと発揮され、社会教育事業あるいは生涯学習事業が
健全な方向に発展していくことが期待されます。
おわりに
これからの社会教育の発展のためには、住民と行政が協働して事業を企画して実施する
という考え方が共有される必要があります。そのためには、住民同士が意識の面でバラバ
ラな存在ではうまくいきませんので、住民同士の相互理解、相互信頼ということが求めら
れることになります。住民のネットワークを作るということが、これからの社会では大事
なことになると思っています。これを「好縁社会」と呼ぶことができます。これをもっと
広いところで捉えれば、社会学でいう「社会資本」といってもいいと思います。ソーシャ
ル・キャピタルですね。アメリカで出版された『孤独なボウリング』という本があります。
ハーバード大学教授のロバート・パットナムという人が書いた本なんです。ボウリングと
いうのは掘るボウリングではなくて、玉を転がしてピンを倒すボウリングのことです。タ
イトルが面白いですね。アメリカ社会で、人がボウリングをする時、日本でもそうですけ
ども、友だちなど気の合った人たちと行きますよね。プレイする時には黙々とやってない
ですよね。ゲーム中、いろいろな話をするのも楽しみの一つです。帰りには、ちょっと美
味しいものを食べたり、一杯やったりするじゃないですか。これがボウリングという楽し
み方なんですね。
ところが今のアメリカでも「孤独なボウリング」、1人で行ってボウリングをやり、1
人で帰っていく、そういう人が増えてきている。つまり、日常の楽しみの領域でも、人間
関係を作れない、作ろうとしない。人間関係がだんだんと崩れてきているということなん
です。そういう意味で、今、地域の方々がいろいろな形で周囲の人とつながっていく、趣
味のことでも、スポーツのことでも、地域のことでも何でも良い。人と話ができる。そう
- 36 -
いうところを大事にしていかないといけないんだろうと思いますね。特に、東日本大震災
を経験すると、地域の人たちがお互いに話をし、お互いを知っているという関係を作って
いくということが、非常に重要だと感じています。
最後になりますが、レジュメに「仕合せ」という言葉を書いてみました。最近一つ分か
ったことがあるんです。この「しあわせ」という言葉を辞書で引きますと、「仕合せ」と
もう一つ、「幸せ」という言葉が出てきます。広辞苑を引くと「仕合わせ」のほうがよく
書いてあって、もう一つの「幸せ」のほうを見たら、「しあわせ(仕合せ)」としか書いて
ないんです。元々は仕事の「仕」に「合わせる」なんですね。家に古い辞書で辞海という
のがあって、金田一京助編纂ですが、ためしにそれを見たら、「仕合せ」はあるんですが
「幸せ」はないんですね。ということは、元々は「仕合せ」と書いたんですね。そうなん
です、発見です。なので書きました。そのことはどういうことかというと、仕事の「仕」
というのはいってみれば「活動」ですね。昔は神奈川県でも農家が多かったと思います。
田植えを一緒にやる、それから稲刈りを一緒にやる、お祭りを一緒にやって今年も豊作で
よかったねということで、「仕合せ」になる訳です。だから一緒にやる活動って、人々の
「仕合せ」の源なんですね。ところが今、「幸せ」になってしまうと、なんでもありなん
ですね。旨いラーメをン食べて、美味しいケーキを食べて「幸せ」、一人でゲームをやっ
て「幸せ」ですね。個人個人それぞれが別々に「ひとり幸せ」を求めてゆく。「私、幸せ
だな」と思えば、これも「幸せ」。そうすると私たちの中で、人といろいろなことを一緒
にやっていく「仕合せ」というのが、どこか社会の脇に置きやられているようなところが
あると思います。なので社会教育の力で、こうしたいろいろな活動を通じて、人がつなが
っていくことで、「仕合せ」を作っていかないと、地域の元気というものが生まれてこな
いように私は思います。そういう点で「学び」という切り口から人々の「仕合せ」を作り
だしていく役割を、市民にいちばん近いところにおられる社会教育委員の方々に担ってい
ただき、これからもいろいろな提案をしていっていただきたいと思うのです。
これで終わりとさせていただきます。お聴きいただき、ありがとうございました。
- 37 -
(2)シンポジウム
テーマ
「今、社会教育委員に求められている活動とは何か」
シンポジスト
纐纈
南山
和聖(沼津市社会教育委員会委員長)
〃
大下
勝巳(川崎市社会教育委員会議議長)
〃
布施
助言者
野島
好美(神奈川県教育委員会教育局
足柄上教育事務所社会教育主事兼指導主事)
正也(文教大学副学長・教授)
コーディネーター
纐纈
仁志(神奈川県社会教育委員連絡協議会事務局長)
皆さん、改めまして、こんにちは。後半のシンポジウムということで、進めさせて
いただきたいと思います。私はこの春から県社教連の事務局長を務めております纐纈
と言います。よろしくお願いいたします。
シンポジウムのテーマは、「今、社会教育委員に求められている活動とは何か」と
いうことで、話し合いを進めていきたいと思います。実はこのシンポジウムの形は昨
年、一昨年から、事務局でも、もう少し社会教育委員の本質ですとか、あるいは本来
の役割、そういうところにもうちょっとスポットを当てて、組み立てをしようという
ことで考えてきました。昨年、一昨年のテーマは同じで、「これからの社会教育委員
のあり方」というテーマで2年間やってきました。今年はこのテーマでございます。
それで、一応3年目を迎えますので、そういった意味で、この3年間の積み重ねをこ
こで一つ、形としていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いした
いと思います。
もちろん、参加者の方の中には、今年初めて社会教育委員になったという方もいら
っしゃるかと思いますけれども、ちょっと思い出していただきますと、一昨年は実は
このシンポジウムに、多分初めてかも知れませんが、行政の職員の方にここに上がっ
てもらったんです。それまで、事例発表、報告はそれぞれの先進事例的なものを発表
していただいたんですけれども、行政側の理解がやっぱり必要じゃないかということ
で、登壇をしていただきました。そのシンポジウムの中でも、特に、行政は社教委員
さんたちに、どんなことを期待しているんですか、求めているんですか、逆に社教委
員さんは行政のほうにどういうことを求めているんですか、そんな問いかけをさせて
いただきました。
昨年はさらに協議の時間をたっぷりとって、役割とかに迫っていったんですけれど
も、会場にいらっしゃる参加者の方にもシンポジウムに参加をしてもらおうというこ
とで、色紙を使って進めました。昨年どんな質問をしているのかなと思って見たんで
すけど、例えばこんな質問をしています。「社会教育委員は必要ですか」。去年の参加
者の大多数の方は「必要です」と答えています。しかしですね、私の手元の資料によ
りますと、不要だと答えた方が8名いらっしゃいますね。あと、「社会教育委員の仕
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事を他の人に説明できますか」という質問に、できると答えた方が約6割、できない
という方が約4割。次に「地域の方は社会教育委員さんを知ってますか」。すると大
多数の方は知らないと。知っているという札を挙げた方は4名です。これ1年前なん
ですね。1年前なので今はもう少し増えているかなと思いますけれども、そんな現状
を捉えさせてもらいました。
そこで、今年なんですけれども、今年は若干テーマは変わってるんですけれども、
実は前半、後半でちょっと分けようと思ってまして、毎年、反省の中に、例えば事例
発表とか、報告をした時に必ず出てくる反省点、アンケートの中の反省点は、「いや、
今日の発表はとても良かったけども、でも、あの発表はその方が入っている団体とか、
あるいは個人の活動の発表であって、社会教育委員の発表なんですか?」っていうも
のです。それで今回は実際に諮問、答申をやられている市の社教委員の方、そして教
育委員さんと定期的に、懇談会を開いてますよという社教委員の方に登壇をしていた
だきました。
あと、今日の後半は、どういうふうにもっていきたいかというと、実は昨年の総会
の時に全国の社会教育委員連合の坂本常務理事が、こういうことを言われてました。
「今こそ、社会教育委員とか、あるいはその行政の担当者の本気度が問われてるんで
すよ」という話がありました。そこで、今日の後半は皆さん方に、その本気度、それ
にちょっと迫ってみたいなというふうに思っていますので、ご協力をお願いします。
そこで、早速、まず登壇者のご紹介の前に、皆さんに参加をしてもらいたいと思い
ます。皆さんのところに3枚の色紙がいってるかと思います。去年は多分2色だった
と思いますけれども、今年はさらにグレードアップしまして3色にいたしました。で
は、まず皆さんに問いかけます。「社会教育委員の仕事は、あるいは行政の方はその
担当者として、楽しいですか」。楽しいという方は緑のカード、楽しくないという方
は黄色のカード、いやどちらとも微妙だという方は白いカードを挙げてください。皆
さんお答えください。どうぞ。
これは面白いですね。人数分かりますね。緑という方が半分までいかない、4割ぐ
らい。白が多くて5割ぐらいいってますかね。黄色の方が4名か5名ですね。ありが
とうございました。微妙という答えが一番多かったと思います。それでは、遅れまし
たけれども、今日ご登壇をされている方をご紹介したいと思います。向こう側のテー
ブル、皆さん方から向かって左になります。沼津市から来ていただきました沼津市社
会教育委員会の委員長でいらっしゃいます、南山和聖さんです。その右隣は川崎市社
会教育委員会議の議長でいらっしゃいます、大下勝巳さんです。一番右側は行政の立
場ということで県教育委員会足柄上教育事務所社会教育主事の布施好美さんです。布
施さんからは、行政の立場から見えること、考えること、そんなことを時々伺ってい
きたいなと思っております。そして、助言者といたしまして、前半の基調講演に引き
続きまして、文教大学の野島正也先生にお願いをいたします。それではよろしくお願
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いいたします。
では、シンポジスト3名のうち、南山さんと大下さんには、社会教育委員としての
活動の紹介、あるいは今答えていただきました社会教育委員の仕事が楽しいかという
質問に対する結果について、感想も交えまして、南山さんから一言ずつご発言をお願
いしたいと思います。
南山
皆さん、こんにちは。ただいまご紹介いただきました、沼津市社会教育委員会委員
長をしております、南山和聖と申します。鈴木会長からは「社会教育委員というのは、
個人が動けるんだから、委員会という名前はおかしいんじゃないか」ということをよ
く言われます。(社会教育)委員の会議だと言われるんですが、静岡県の場合は、ほ
とんどがもう社会教育委員会というような形で動いているのが現状です。ただし、委
員会いう形で動いているからといって、必ずしもみんなで話し合って、諮問、そして
答申を行っているかというと、その地域によってかなり違いはあるというのが現状で
す。私は現在、沼津市の社会教育委員長ということでやらせていただいているんです
が、静岡県社会教育委員連絡協議会の会長も現在務めさせていただいて、ちょうど会
長としては今年3年目ということになります。社会教育委員になってからは、17 年
を経過しております。そのうち、4年間は社会教育委員として、残りの 13 年間を委
員長として活動をさせていただいております。前期に出した答申のコピーを皆さんの
お手元にお届けさせていただいておりますけれども、こんな形で、諮問を受けて答申
を出すということをこの何期かは行っております。
平成 11 年に初めてこういう諮問、答申という形をとり始めたんですが、その前は
はっきり言って年に3回程度、行政から連絡がきて、集められて、会議室で行政のほ
うから「今日はちょっと皆さんにこういうことを話し合って欲しい」というようなこ
とを言われて、そのことが諮問であって、そこで話し合った内容が答申という形で、
一つの形が出来上がっていたのが現状です。それがずっと続いたわけですけれども、
平成 11 年からいろいろ大きく変わる部分がありまして、私が委員長になったから、
そういうふうに変えたなんていうことではなくて、いろいろな状況の変化がありまし
て、そういうふうになりました。
私はなんで社会教育委員になったかと言いますと、元々は充て職で社会教育委員に
なりました。PTAのほうをずっとやってまして、沼津市の市P連の会長を4年間や
らせていただいて、市P連の会長の充て職として、この社会教育委員というのがあり
ました。充て職で4年間やって、子どももみんな卒業して、PTAもこれで終わりに
なったので、これでこの社会教育委員という仕事も終わるだろうなと思っていたら、
私の前任の委員長が「じゃ僕これで辞めるから、あとあんた頼むね」ってパッと辞め
ちゃったんですよ。それで行政の方がいろいろ話をする中で、「まぁしょうがないか
らと、1期ぐらいはやらせていただきましょう」というようなことで、やり始めたわ
けです。そんな中でたまたまその年に教育長が代わられ、それから委員長も代わった。
- 40 -
それから行政のほうもかなり異動があったりしたようなことが重なりました。その時
の教育長が県のやはり社会教育をいろいろやられた方ということもあって、「折角社
会教育委員がいるのに、年に3回ぐらい、ただ意見を聞くだけ。そんなのもったいな
いじゃないか。もっと社会教育委員にいろいろと仕事をしてもらったほうが良いんじ
ゃないか」ということで、諮問、答申ということになりました。
実際に、一番最初の諮 問は、「学校週5日制に 対する青少年教育のあ り方につい
て」ということで諮問をもらったんですが、これ非常に難しいんですよね。学校週5
日制になるのに、一体どういうふうに変わってしまうのかということは、全く予想が
つかない部分もあったものですから、どういう答申を出したら良いのか、というよう
なことでかなり皆さんと話し合った結果、年に3回ぐらいの委員会じゃとても結論は
出せないということで、そこからスタートしたのが、正規の委員会のない月というこ
とで、我々の集まりやすいのは夜ですから、夜7時から9時まで勉強会という形で集
まりましょうということが決まりまして、そこから毎月、委員会の形式で進めること
になりました。普通ですと、これはもう勝手にやってるんだからというふうになって
しまうんでしょうけれども、行政のほうも、一応これは委員会という形として認める
というような形にしてくれて、要するに何が怖かったかというと、あの行き帰りに万
が一事故があったりとか、何かあった時に、委員会であれば、ある程度市のほうで面
倒も見てもらえる部分も出てくる。ところが、あくまでも任意で勝手にやってるもの
ということになると、全く市は関係ないというようなことがあったので、その辺は市
といろいろ話をしまして、一応認めてもらう形で進めさせていただきました。2年任
期の中で、一つの答えを出すわけですけれども、今まで6回、答申を出して、今7回
目の答申に向かってみんなで話し合っている最中であります。答申というのも、はっ
きり言って、委員がいろいろなところから来ているということもあって、皆さんの考
えが全くバラバラというところもあります。ですから、この2年間のうちのまず最初
の1年間ぐらいは、ある程度皆さんにいろんなことを言っていただいて、意見をある
程度、方向性っていうか、同じ方向を見られるような形にもっていかないと、なかな
か最終的に意見をまとめるということができません。それから今度は、各委員さんに
担当を押し付けちゃいます。押し付ける中で、例えば第1章については、誰さんと誰
さんがやってくださいよと言うと、もう言われた2人はしょっちゅう連絡を取り合い
ながら、文章を全部まとめます。ですから、今回も皆さんのお手元にお届けしている
答申というのは、これはもう全部委員が作り上げたものです。そういう形で私たちは、
現在、行政に対して答申という形で、いろいろな私たちのアイデアも含めて、提言を
させていただいているのが現状です。
最後に社会教育委員の仕事が楽しいか、楽しくないかということで、皆さん、結構
白が多かったんですけれども、これは逆に、私は皆さんに自分からグリーンにしてい
ただきたいなと、要するに2年間の任期をやるのに、いやいややったり、つまんない
- 41 -
なと思ってやったって、何も身に付かないし、やってても行くのが億劫になってしま
う。だから、それだったらもう自分から楽しんじゃう。たまには飲みに行くのも良い
と思いますし、いろいろな楽しみも中に入れながら、社会教育委員会は楽しいなとい
うことで進めていただいたら良いんじゃないかなと思います。逆にそれじゃないと元
気が出てこないし、先程挨拶の中でありましたけれども、今、社会教育っていうのは
非常に厳しい状況があります。そんな中でなんら予算もつかない、何にもできない、
どうしよう、どうしよう、なんて言ってても始まらないんで。社会教育委員の皆さん
がまず元気を出して、なんとかしようということでドンドン動いていってしまう。こ
れからは大事なことではないのかなというふうに思っております。
纐纈
どうもありがとうございます。資料として配られているのは、6回目の答申という
ことになるんですね。今、ちょうど7回目をやられているということで、これだけの
ページ数のものを作り上げるって、かなり大変だと思います。そのあたりのことは、
このあと聞いてみたいと思います。次に大下さん、お願いいたします。
大下
ご紹介いただきました、川崎市社会教育委員会議の議長を務めています、大下と申
します。自己紹介を兼ねて、二つの話をさせていただきます。一つは、私自身の社会
教育との出会いについて、あと一つは、現在の川崎市社会教育委員の会議の活動状況
についてです。
まず、私自身の社会教育との出会いですが、個人的なことになって恐縮ですけども、
お許しをいただきたいと思います。私は昭和40年代、50年代の高度成長期にサラリー
マン生活を送りました。男は仕事、女性は家庭という言葉がまだ残っていた時代で、
私は文字どおりの“会社人間”でした。職業人という一つのチャンネルだけの人間で、
仕事に生きがいを感じて、家庭や地域のことは妻任せでした。そういう生き方、男の
ライフスタイルがまだ一部では、社会的に容認されていた、そういう時代でしたが、
40代になって、川崎市の教育委員会が開いた父親家庭教育学級という講座を受講しま
した。2週間に1回、土曜日の夜、計10回です。1982年の秋から翌年春にかけてのこ
とです。私はその頃、朝7時半ごろ家を出て会社に向かい、東京で夜まで働いて、眠
るために帰ってくる。つまり、川崎市民ではなくて、“川崎都民”だったわけですね。
会社人間の川崎都民をいかに川崎市民にするか、でないと地域社会が成り立たない、
コミュニティが育っていかない、子どもたちがかわいそうだ、そういう身近な地域課
題があったわけですね。男たちを地域に呼び戻し、父親として、地域のおじさん、地
域のおやじとしても、頑張ってもらいたいと、講座はそういう趣旨だったと思います
が、40歳前後のおやじさんたち15、6人が集まりました。私の場合、会社人間でした
から、今更、父親になるための勉強なんかすることあるかと言って、非常に反感を持
っていたのですが、妻に背中を押され、「父親学級に行ってくれないんなら、私にも
考えがある」とか言われて出たんですね。外圧ですね。渋々参加したんですけれども、
10回参加するうちに、仕事の世界とは全く違った、地域の居場所ができていったんで
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す。北海道から九州まで、高度成長期に地方から出てきた男たちがほとんどでした。
地域に縁がなかった私ですが、父親学級に通うことによって、人のつながりができた。
それともう一つは、仕事だけで生きていた自分だったけども、仕事以外の自分に気
づかせてくれた。家庭人としての私、おやじとしての私、地域の住民としての私、地
域の子どもたちにとっては近所のおじさんとしての私、いろんな私があることを学ば
せてくれた。気づきの過程を通して、仲間ができていったという、これが一つの大き
な財産になりました。いわゆる“関係財”ですね。社会教育っていうのはこういうこ
とだったんだぁ、ということをつくづく思いました。そういったご縁で社会教育委員
を今務めています。
それから二つ目、川崎市社会教育委員会議の活動ですが、委員は学校長が3人、公
募が2人、学識経験者が7、8人、それから社会活動団体の代表を合わせて20人。昨
年度は川崎市における子育て世代を地域でどう支援していくか、孤立しがちな子育て
家庭を、地域のみんなでどうやって支えていくか、同時に、社会教育委員は何ができ
るか、社会教育の役割はなんだろうかということをテーマに提言としてまとめ、教育
長と教育委員会に報告をしました。
その中で一つだけ触れておきたいのは、教育委員との懇談会を年に1回持っている
ことです。これが私ども社会教育委員の立場としても、貴重な機会ですし、教育委員
が社会教育委員に対して、あるいは社会教育に対して何を期待し、どういうことを望
んでいるのかが分かる。教育委員としてのアドバイスやサジェッションをいただける。
教育委員と社会教育委員との定期的な懇談会というのは非常に有意義です。あとでま
た申し上げたいと思います。
纐纈
ありがとうございます。大下さんも、時間があればまだまだたくさんのお話ができ
そうな感じです。皆さんにお配りをしている資料は、この提言書の概要版ということ
で、印刷をさせてもらっているんですけれども、本冊子は本文だけで30数ページのも
のが提言書として、今年の3月に出されております。内容については今日は、細かく
触れることはできないんですけれども、これだけのものを作られているということで、
また詳しく後程お伺いしたいと思います。最後になりましたが、布施さんのほうから、
足柄上地区の社会教育委員さんたちの活動の様子についてご報告をお願いいたします。
布施
皆さん、こんにちは。神奈川県教育委員会教育局足柄上教育事務所指導課の布施と
申します。今日はよろしくお願いいたします。
私が勤務しています教育事務所というのは、県の教育委員会の出先機関です。そこ
で私は社会教育主事、兼ねて指導主事として、社会教育、それから学校教育のほうに
も携わるという立場で仕事をしています。
皆さん、足柄上地区をご存知でしょうか。足柄上地区というのは中井町、大井町、
松田町、山北町それから開成町の5町で、足柄上郡と言います。管内にはもう一つ南
足柄市という市が一つあります。ちょっと宣伝させていただきますと、凄く景色の良
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いところで、教育事務所があるところは、酒匂川が流れて山のほうを見ると大きな富
士山が見えて、6月にはアジサイ祭りが開かれるようなところです。是非皆さん、い
らしてください。
私は、教育事務所で社会教育主事として仕事をしておりますが、実はあまり各町の
社会教育委員さんと直接に活動するということはございません。では、何でここの席
に座らせていただいているのかなということを自分で考えます時に、足柄上地区では、
先程話した5町で、足柄上郡社会教育委員連絡協議会、足柄上郡社教連と呼んでいま
すが、そちらを組織しています。町が五つ集まっての組織です。足柄上郡社教連とい
うのは、各町の議長さんと副議長さんの2名、それから各町の行政担当者の方とで構
成されていまして、活動内容としては、年3回の定例会と年1回の総会、それから視
察研修、地区研修会等の活動を行っています。そこで私どもの教育事務所の社会教育
主事が事務局として仕事をしています。少し活動紹介をさせていただきますと、他の
ところではあまりないのかなと思うことが、足柄上郡社会教育委員連絡協議会地区研
修会というのを、年に1回行っています。イメージとしたら、県の地区研究会の地域
版というようなことを思っていただけると良いのかなと思います。5町が輪番で、年
に1回研修会を行っているのですが、テーマを持って調査研究した内容を発表すると
いう形での研修会となっています。目的を読ませていただきますが、「地域における
社会教育の振興充実を図るため、各町の社会教育委員が社会教育の諸問題について研
究協議し、社会教育委員としての資質の向上を図る」。こういうことを目的に年に1
回、研究発表会を行っているというのが、珍しい活動なのかなと思います。その研修
会は、担当の方にお話を伺いますと、やはり研究の成果がそれぞれ共有できる、それ
から交流も深まるということで、とても良い刺激になっていると伺っております。ま
た、他にも特徴的な活動もございますので、またあとでお話しさせていただきます。
それから、私は社会教育委員さん方と日ごろお会いして、いつも楽しいので、先程
の質問の時に、思い切って緑の紙を挙げたんですけれども、きっと足柄上地区のここ
にいらっしゃっている方々も、そのような思いで緑を挙げてくださったのかなと思っ
ています。いつもお会いするたび、本当にパワフルにお話をしてくださいます。地域
のこと、それから地域の子どもたちのこと、社会教育全般のこと、本当に熱心に語ら
れる方ばかりで、こちらが元気をもらったり、仕事に対する視点をいただいたりとい
うようなことが、とてもありがたいと日ごろから思っています。それから、会議終了
後の懇親会も恒例で行っておりまして、それもまた交流を深める良い場になっている
と思います。長くなりましたが、自己紹介を兼ねて足柄上地区の活動を少し紹介させ
ていただきました。
纐纈
ありがとうございます。足柄上地区では、市町村の枠を超えた交流の機会を設けて
いるということなんですね。自分の市、町だけでやっていると、なかなか行き詰って
しまったりとか、様子が分からないっていうことがあって、交流を深めることによっ
- 44 -
て刺激し合える、ヒントがもらえる、結構それが大きいのかなというふうに思ってお
ります。
それでは、沼津市さんと川崎市さんの取組みにちょっと焦点を当てて、お聞きした
いと思います。沼津市さんは答申という形で出され、川崎市さんは提言という形で出
されているんですけども、よく我々の反省の中に出てくるのは、その出したものが結
局、行政のほうで、本当にそれって生かされているんですか、反映されているんです
かとか、あるいは社会教育委員が折角作ってるんだけども、出しっぱなしになってし
まい、そのあとどういうふうに扱われているのかということを、我々社会教育委員の
立場から見ていく必要もあるのではないかと、今までの研修会でも、よく聞かれたん
ですが、その当たりについて、南山さんのほうからお答えしてもらって良いですか。
南山
答申を一生懸命2年間かけて作ったわけですから、それをただ見て分かったよと言
われただけでは我々としては納得できない部分もあります。まず答申が出来上がりま
すと、任期の最後の時に、教育長に答申書をお渡しするとともに、内容の概略をお伝
えします。それだけだとなかなか進まないので、教育長と一緒に市長のところへお伺
いして、市長に説明をします。市長にはこれはお金がかからないんだから、やる気に
なればすぐにできることですよと申し上げます。そうすると市長は「お金がかからな
いんだったら、すぐにやれ、担当課はすぐやれ」となる。当初はお金がかかる箱物の
ことですとか、そういうことを答申の中に入れていたものですから、なかなか実行さ
れなかった。ところがそのことにハッと気がついて、ある段階からお金がかかるとい
うことではなくて、例えば、今こういう部分があるんだから、ここに工夫を重ねたら、
行政のほうで工夫をしたら、もっと良いものができるのではないのかというような形
で答申を出すようにしました。
それから、比較的行政のほうで動いてくれるようになったと同時に、年に1回行政
のほうが、例えばこの答申に対して、これについては少し変えてみたからとか、そう
いったところを一応委員会の時に、発表をしてもらうようにしております。そういう
中で、例えば、今まであったものを再利用して、新しい事業展開をしているものも出
てきておりますし、そういう意味では、ある程度我々の答申というのが行政にいろい
ろと上手く伝わって、それを実行してもらえるのではないかなというふうに考えてお
ります。
纐纈
ありがとうございます。教育長さんにも伝え、なおかつ市長さんにもということで
すね。確かにもう行政のほうはお金がかかるよと言えば、それはもう難しいです、無
理ですという話になるかも知れませんが、アイデアを伝えるという点では、行政のほ
うも受け入れやすいというところがあるかも知れません。大下さん、川崎市ではどう
ですか。
大下
最近は、テーマを自分たちで自主的に決めています。現在の地域課題、社会教育の
課題として何があるだろうかということを全員で意見を出し合い、それを絞り込んで
- 45 -
いって2年間の任期中のテーマを設定し、議論をして提言書としてまとめていくわけ
です。社会教育委員として非常に関心の高いことは、果たして我々のこの提言なり報
告が行政に反映されているかどうかということです。社会教育委員に新しくなった人
は必ずといって良いほど、それを質問しますね。行政もその点は心得てましてね、提
言が行政施策に反映されているかを報告をしてくれることになってるんです。
一つ例を言いますと、社会教育委員の会議が出した「協働の学びを求めて」という
提言を受けて行政は、職員研修にきちっと位置づけた。これからは協働の時代である、
市民と協働していくにふさわしい職員の養成です。それから、協働の要項があります
が、行政としては市民と協働していくために要項を決める必要がある。提言の中身を
盛り込んで要項基準を変えていったとか、そういう地道なことは、きちっとやってく
れている。事業計画を立てる時に、提言をきちっと織り込んでいってくれてるんだな
という信頼関係が大事です。私たちのやってることがきちんと反映されているんだ、
職員が動いてくれたらこっちもまたさらにやる気になるとか、そういう関係づくりが
大事ですね。
纐纈
ありがとうございます。川崎市の職員の方も大変かも知れませんが、その出された
提言については、行政のほうに反映されるように、着々と進めている。その報告を会
議の中で受けながら、自分たちもやる気、モチベーションを高め合っているというわ
けですね。素晴らしいです。ありがとうございます。
この答申、あるいはその提言書、本当にこのページ数というか、枚数が凄く多くて、
委員の人たちの負担というんですか、先程南山さんからも話が出ていましたけれども、
委員長さん、議長さんは、結構やる気満々かも知れないんですが、なかなかその10人、
20人いる委員さんたちが一緒になってやっていくというのは結構難しいことかなと思
うんです。その辺について、委員長、議長として配慮されていることとか、自分たち
のシステムが上手く回っている理由はこうなんだよ、なんていうのがヒントとしてあ
れば、伺いたんですが、お願いします。
南山
沼津市の場合は、比較的皆さん、おとなしいというか、意外と言うことを聞いてく
れる。言い方が悪いんですが、皆さん素直に言うことを聞いてくださる方が多いです。
来月の日程を決めましょうと言うと、皆さんが手帳を出され、手帳で日にちを順番に
読みあげ、都合の悪い方は手を挙げてくださいと言うと、皆さん手を挙げにくいもの
ですから、よっぽど何かない限り、開く日が出てくるんですね。まず、全員が出られ
る日で組んでいく。それから、正直言って答申が出来上がった時に、みんなで祝杯を
あげるんですけれども、その時に皆さんの意見というのは、やってよかったとか、こ
んなに良いものが出来上がるなんて思ってもいなかった、もう本当に自分は感動した
とか、かなり皆さん、出来上がったものに対して、満足をしていらっしゃる方がほと
んどです。やはりそういう部分があるから、結局、委員の皆さんの気持ちというのも、
常にその答申という部分に向いてくれているんじゃないかなと思います。だから、本
- 46 -
当に強制して、「お前出なかったら、もう仲間はずれにするぞ」とか、そういうこと
ではなくて、皆さん出てくれる日を決めましょうと言えば、すんなり決まってしまう
というのが、現状です。
纐纈
ありがとうございます。お一人お一人の自覚があるというように受け止めました。
大下さんはどうでしょうか、その辺。
大下
冒頭にも申しましたけど、20人の委員がいて、提言を2年間でまとめるに当たって
4月から9月、10月ぐらいまでは委員がそれぞれの活動分野と専門分野の活動を通し
て持ってる地域の課題を全員が出し合う。この全員が出し合うというところが僕は大
事だと思うんですよ。これに行政職員も加わってジャンル別に絞っていって、そのジ
ャンルごとの関係性なども議論しながら、一つの形、テーマとして設定していく。
テーマが決まったら、今度は三つの分科会ぐらいに分かれて議論を繰り返す。例え
ば今回の場合は、「地域に広がる教育力の再発見∼川崎における子育て世代への支援」。
地域には様々な教育的な資源があるのに、我々は十分活用していないのではないか、
再発見しなきゃいけないんじゃないかということで、三つの分科会(仕組み、地域活
動、教育資源)に分かれ、事例の収集や見学などを積み重ね、検証を行いました。そ
のプロセスに、自分の立場や関心をベースにしながら関わっていく。その中で、異な
るジャンルの人との出会いが頻繁にあって、自分自身が気づいたり、「あぁそういう
ことなんだ」といって分かっていく。活動しながら育っていくことの面白さ、喜びが
ある。つながりの中でモチベーションをどう高め、維持していくかが非常に僕は大事
だと思います。
纐纈
ありがとうございます。一方的ではなくて、あるいは委員のほんの数人ではなくて、
みんなで積み上げていくということですね。ありがとうございます。あと大下さんに
もう一つちょっとお聞きしたいのは、先程年に1回教育委員さんとの懇談会をされて
いるということで伺ったんですけども、その当たりの成果というんですか、さっきも
ちょっと話は出たかと思うんですが、もう少し詳しく、それをやることによって委員
の活動にどうプラスになるのか、もうちょっと詳しくお話を聞かせてもらって良いで
すか。
大下
教育委員との懇談会は年1回、1月に行います。教育委員は6人ですので、懇談の
場には社会教育委員5人ないし6人が出席します。社会教育委員の任期は2年、4月
から始まってテーマを決めて議論をし始めた頃で1回、それから1年たってちょうど
議論し尽くして、提言としてまとめる直前に1回、このタイミングはなかなかいいん
ですね。1回目の時には今から議論しようとしている提言のテーマについて、社会教
育委員の一人ひとりが自分の思いも込めて5、6分ずつ述べ、意見交換をする。それ
から1年後の2回目の時は、提言をまとめる段階です。この2度の懇談会を通して、
教育委員の考え方と立場、立ち位置が分かる。一方で、社会教育委員としてのあり方
や教育委員会との関係が理解できる。子どもは、家庭の子であり、地域の子どもであ
- 47 -
り、学校に行けば学校の子ども。子どもは家庭と地域と学校とを行ったり来たりして
いるわけで、学校教育と社会教育とつながっている。そこで子どもが育つ。そういう
意見で、教育委員との懇談は、私たちにとって得るところが大きいんです。
このように、「提言」のテーマを決めて議論を始める時と、議論を終えてまとめに
入る時に貴重な意見をいただいています。一つ例を挙げますと、「地域の教育力を高
めることは非常に大事です。教育委員会として非常に期待してます」という指摘です。
川崎市は 140 万人が7つの区に分かれて住んでいますが、地域それぞれの魅力、楽し
さがあるだろうと。その楽しさ、魅力を掘り起こしながら、そこに集うことによって、
人がつながっていくとか、そういう“地域の宝”を発掘していただけたら、社会教育
として非常によろしいのではないかという意見をいただいたことがありました。
それから、もう一件。提言「地域に広がる教育力の再発見」の中で、大事な二つの
キーワードがあります。一つは子育て親育ちのコミュニティ作り。子育てしながら親
も横につながって育っていく。その結果を子どもに与えていく。子育て親育ちのコミ
ュニティ作りをやる時に、小学校区がいいのではないかという意見を教育委員会に出
したところが、「小学校区は良いですね」という意見をいただいて、励みになりまし
たね。
もう一つは、社会教育委員の活動としては、今日の役割は何かということなんです
けれども、やっぱり地域社会のコーディネーターですね。これは非常に大事だと思い
ます。先生もおっしゃったけど、いろんな地域活動の分野が一杯ありますけれども、
分野ごとに結局、行政の縦割りということをよく言いますが、地域社会もテーマごと
に縦割りになっているケースが結構あるんです。横断的なつながりが意外にないんで
す。子育てグループとお年寄りがつながることはあまりないんです。そうではなく、
社会教育委員はそういう異なったジャンルと分野をどうやってつないで、一つの地域
社会の力にしていくかという役割をもっているということは、非常に僕は大事なんじ
ゃないかと思って、そういうことも含めて、教育委員との懇談は年2回と最後は報告
に行くわけですけれども、非常に重要な機会として位置付けています。最後に社会教
育委員が5、6人行き、懇談し、帰ってきてどんなことを感じたか、教育委員と懇談
して何を得たかということを、一人ひとりが定例の社会教育委員会議で報告し合うん
ですね。そうするとみんな「あっ、行って良かった」「あぁこういう視点があったん
だ」ということを、一人ひとりがコメントするんですよ。社会教育委員の会議の中で
ガンガンやって、もっとまた違う視点に、違う鏡に当てたら、自分たちのやっている
ことがどういう意味合いを持っていて、それが新しい方向性としてどうなんだという
ような客観視できる見方を教育委員の皆さんからもらえる。私たちが発表することも、
教育委員の皆さんからは「あっ、そういうことやってんの。それ良いじゃないです
か」と言ってもらえると、この交流が僕は非常に良いんじゃないかというふうに思っ
てます。
- 48 -
纐纈
ありがとうございます。足柄上地区でも諮問、答申をやられている市町村があると
思いますが、布施さんにはその辺を簡単にご説明してもらえたらと思いますが。
布施
足柄上地区の諮問、答申というお話でしたが、ここのところ頻繁に諮問、答申が行
われてるということはないようですが、今年度に関しては二つの町で諮問が新たに出
されていると伺っています。近年ですと、例えば平成21年度に放課後子ども教室の調
査研究ということで諮問をいただいたものに対して、22年に答申が出て、それが具体
的に今年度から放課後子ども教室の立ち上げということで、調査研究が生かされてい
るという話も伺っています。諮問が正式にされていない場合でも、足柄上地区ではそ
れぞれが自主的な調査研究ということでテーマを掲げて、凄く熱心な取組みがされて
いると聞いています。
纐纈
ありがとうございます。今、沼津市さん、川崎市さん、そして足柄上地区の様子の
お話をしてもらったんですけれども、会場の皆さんからもうちょっとこの辺を聞いて
みたいということがあれば、質問を受けたいと思いますが、いかがでしょうか。
参加者
沼津市と川崎市の方にお聞きします。答申等に際して、行政職員はどういう対応、
参画をしていらっしゃるんでしょうか。
纐纈
南山さんのほうからでよろしいですか。行政職員の関わりですね。答申とか、提言
書を作る時の。はい、お願いいたします。
南山
当然のことながら、夜、勉強会のような形でやるにしても、何にしても、行政のほ
うは必ず出てきてくれます。教育長は出てこないですが、事務局を担当してる課長だ
とか、課長補佐であるとか、そういう方は夜9時まで、一緒に付き合ってくれて、意
見交換の中で、例えば行政の考え方だとか、そういったものが必要になってくる時が
あります。そういった時には、やはりそれなりに行政の考え方を我々に教えてくれる
というような形でやってますし、昼の会議の時は教育長をはじめ全課長が揃って、そ
れぞれの課がどういう形で、その内容に対して自分たちが取り組んでいるとか、そう
いったものについても話はします。比較的そういう部分では上手くキャッチボールが
できて、そのキャッチボールのお陰で我々も行政が本当に望んでいるもの、形だけで
はなくて、本当に何を望んでいるのかという部分がよく分かって答申を出していくこ
とができているのが現状だと思います。
纐纈
ありがとうございます。大下さんいかがですか。提言書作りにあたっての職員の方
の関わりですね。
大下
先程ちょっと申しましたけれども、提言のテーマが決まったら三つの分科会に分か
れて議論し、分科会の話し合いをお互いに共有するために全体会議で報告しあってい
ます。その際、分科会ごとの発言の整理や分科会相互の意見調整の場づくりなどは事
務局がやってくれています。全体の進行管理も、事務局として、全体の動きと議論の
方向性などを見ながら、関連した資料作りをやってくれたり、方向性についてのチェ
ックをしてもらったり、あるいは議論が錯綜したりするときは整理してくれたり、時
- 49 -
に応じて前からあるいは側面から面倒を見てくれています。だからこそ提言ができて
いくんですね。社会教育委員と職員との本気の関係作りということは非常に大事だと
思います。
纐纈
ありがとうございます。ここで野島先生から、社会教育委員の諮問、答申、あるい
は提言、あるいは教育委員さんとの懇談など、こういった活動が上手く回っているポ
イントというか、今までの議論を聞かれての感想でも結構ですので、一言野島先生か
らお願いできますか。
野島
最初に南山さんの沼津市ですが、諮問、答申の関係をしっかりと作られていて、こ
れは本来なら普通であるはずなのに、珍しいですね。まず、諮問をするということは
どういうことかということですね。簡単に言えば「お聞きしたい」ということです。
聞くときは、こういうことって大事だと思うけど、よく分からないと思うから聞くわ
けです。でも、本当のことを言うと、これは私の勘繰りかも知れないけれど、行政の
ほうも、何を聞いてよいか分からないから、聞かないということもあるのかも知れな
いなと思うぐらいに、諮問しないですね。諮問という形で聞かれるということは、も
うそれだけはっきりとここが課題なんですということを聞く側が把握しているという
ことで、たいへん素晴らしい自治体だと思います。ここが課題なんです、と提言のよ
うな形で聞かれなくても言っていかないといけないんだろうと思います。なので、諮
問が出るよう期待したいところですが、たとえ期待できなくても、提言はどんどん出
していって、「ここが課題です、なんとかしましょう」という提案をされていくのが
よいと思っています。
大下さんの川崎市ですが、父親の家庭教育学級からスタートされたということで、
よいキャリアをお持ちだなと思いました。社会教育を通じていろいろと地域に出て行
かれる方、あるいは社会教育を通じて、女性の場合など職業に就いていかれる方など、
おられますので、そういう点ではよいキャリアをお持ちだと思いました。
教育委員との懇談会ですが、本当は教育委員の方々というのは、学校教育と社会教
育をカバーするのが教育委員なんですね。なので、社会教育委員の方々は社会教育に
詳しいから、教育委員会が是非その内容を聞きたいといって、教育委員会に呼んで、
そこで社会教育委員の意見を伺うというのが本来の形なんですね。法律上もそうなっ
ています。しかし、そうでないとすると、社会教育委員としては、何処かで、今こん
な問題があって、そこを考えてくださいということを言っていく。そういう機会を持
っていくというのは大事なことだと思います。
布施さんは、足柄上地区で市町村の枠を超えた社会教育委員の交流をなさっている
ということです。自治体の中の委員がまとまっていることはありますが、他の自治体
の委員の方々と交流する機会を持たれているということは、すばらしいことだと思い
ました。もっともっとつながりを作っていくということが必要なんだろうと思ってい
ます。例えば社会教育主事等の職員の方々も、近接の自治体同士で集まりを持って、
- 50 -
自主的に研修会などを開いているところもあるんです。職員がそこに出かけていきた
いというと、上司に許可をもらって出張させてもらう。そういう地域というのは、横
のつながりが非常にありますので、何か企画をする時に電話一本で、他の自治体に
「あれどうしているの」などと聞けるんですね。ところが、そういうものが全くない
と、手持ちの資料などを見て、「こういうことじゃないか」っていうように判断して
いくことが多くなります。とにかく横のつながりを作っていくということは大事なこ
とだということを、この足柄上地区の事例から確認した思いがします。
纐纈
どうもありがとうございます。各地区で非常に活発にやられているなという感じが
しております。残り時間が少なくなってきたんですけれども、会場の皆さん方に、本
気度というところに迫って質問をしてみたいと思います。
カードをご用意いただいてお答えいただきたいと思います。大変失礼な質問かも知
れませんが、怒らずにお願いをしたいと思います。皆さん方、社会教育委員の活動を
活性化させたいと思っておられる方はたくさんいらっしゃるかと思いますけれども、
活動を活性化させるためのポイントを握っているのは、誰だと思いますか。社会教育
委員さんだろうと思う方は緑、行政の担当の方だろうと思う方は黄色、それ以外の方
だろうと思う方は白。社会教育委員を活性化させるために、もちろんみんな必要なん
ですけども、一番ポイントを握っているのはこの人じゃないかと思う色を挙げてくだ
さい。
ありがとうございます。8割方が緑、2割ぐらいが黄色、白が7、8名、10名ぐら
いいますかね。本当は時間があれば、白を挙げた方に誰が握っているかということを
実は聞いてみたかったんですけれども、時間がないのでお許しください。実は昨年度
の会誌を読み返してみますと、シンポジウムの中で、こういう発言がありました。
「責任のある方に短期なり、長期なりのビジョンを示して欲しい」と言われているん
です。ということは、担当者ではなくて、課長さんなり、教育長さんなり、もっと上
かも知れないですけれども、そういった人たちから何をやって欲しいか示して欲しい
って。そんな発言があったと思いましたので、ちょっとこんな問いを考えさせてもら
いました。
次に、もう一つ質問したいと思います。行政は、社会教育委員に何を求めているか、
社会教育委員は行政に何を求めているか。実は一昨年、昨年と同じ質問をしているん
です。この質問をよく考えてみて、あまりよくなかったかなと実は思ってるんです。
それは何故かというと、社会教育委員は行政に何かをあてにしているわけです。行政
は社会教育委員をあてにしているんです。本来、地方自治というのは、自分たちが主
体的に動いて、やっていくものだろうと。そう考えるとこういう問いはよくなかった
かなと思います。そこで皆さんにこういう投げかけをしてみたいと思います。皆さん
が社会教育委員に選ばれたからには、きっと何かを期待されて選ばれていると思いま
す。ご自分は何を期待されて選ばれているか分かっている方は緑、良く分からないと
- 51 -
いう方は黄色、もう忘れてしまったという方は白、それでいきたいと思います。ご自
分は何を期待されて社会教育委員に選ばれているか、分かっているか、分かっていな
いか。お願いいたします。緑、黄色、半々ぐらいですね。ありがとうございます。
答えづらいところもあったかと思います。社会教育委員さんたちは、県内に400人
弱いらっしゃいます。今日ご参加の委員さんは120、30名だと思いますけれども、こ
れはもちろん市町村ごとによっても違うでしょうし、同じ市町村でも委員さんによっ
ては多少違うかなというふうに思っています。実はもう1つ聞きたいなと思っている
ことは、社会教育委員に委嘱される時に、行政の方から説明がありましたか、何を期
待しているか説明がありましたか、というのを実は聞こうと思っていたんですけれど
も、それは止めにしたいと思います。実は「説明」というのは昨年の研修会のシンポ
ジウムで多分話があったと思うんですが、その説明というのは、私は本来の説明では
ないのではないかと思うんです。その説明というのは何かというと、例えば、社会教
育委員って、年に2回とか、3回とか、4回とかやるんですよとか、謝金はいくらで
すとか、時間帯はこうですとか、あるいはもっと言えば、皆さんはなんとかの会長だ
から毎年なってるんですよ、という説明になっているのではないでしょうか。でも、
私はそんな頼み方って違うのかなと実は思っていて、会長なら会長で、あなたはなん
とかの会長だから会のメンバーに意見を聞いてきてもらってここに反映させて欲しい、
そういう頼み方を本来はするべきかなと思っているんです。その期待されていること
を分かっているか、分かってないかということ。今半々というような結果が出たんで
すけれども、もう1回シンポジストのお二人にちょっと聞きたいと思うんですけれど
も、南山さんは今の結果あるいはご自分は何を期待されていると思うかについて、そ
の辺を話していただけるでしょうか。
南山
今の結果っていうのは、もう当然だと思います。というのは、自分でも、本当は皆
さん自分自身で何を求め、期待されているかというのは多分本当は自分では分かって
はいるんだけれども、本当にそうかなという迷いみたいな部分で多分黄色を出された
方が結構いらっしゃるんじゃないかと思うんですよ。私自身は自分が先程言いました
ように、充て職で、市のPTA連絡協議会の会長をやっていて、そのまま社会教育委
員長になったということで、市のPTAをやっている時、「駆け込み110番の家」を実
施したりとか、また今出てきましたが、イジメ問題、当時もやはりイジメ問題という
のはかなり問題になって亡くなったりだとか、そういう事件がありまして、私は市の
イジメ対策の委員長ということをお受けしたりだとか、いろんなところに出させてい
ただきました。そういったことが例えば行政の社会教育のほうの新しいシステムを作
りたいんでちょっと相談に乗ってくれということで、そういう部分が期待をされて、
社会教育委員長をやるようになったのかなと思います。多分皆さんも絶対に自分にあ
るこの部分を多分行政は望んでいるんだろうということは、絶対思っているはずなん
です。だったら、そこの部分を精一杯出して、それを伸ばして、そこの部分について
- 52 -
は、自分が引っ張っていけるような形でやっていけたら、良いのではないかなと思い
ます。
纐纈
ありがとうございます。大下さん、どうですか。何を期待されていると感じている
か、その辺をお願いします。
大下
期待ということで言えば、冒頭の父親学級のところに戻るんですけれども、10回の
講座が終わって、受講した男たちが、折角知り合いになったんだから、自分たちで
「おやじの会」をやろうといって、始めた。その時に、名前を付けようとみんな出し
合ったんだけど、良いのが出てこない。そのうち話がそれて、愚痴っぽい話になっち
ゃって、1人がこういったんですね。「いや、子どもとは、仕事が忙しくてほとんど
会ってないんだ。土日もゴルフだしな。ところがこの前雨でね、たまたま家にいたん
だよ。そうしたら子どもと出くわしちゃってね、子どもがビックリして、『あっお父
さん、いたのか、いたかぁ』って、凄い声で叫んでくれたの。子どもはこんなに、お
やじに期待してるんだって分かった」。それで、名前を「おやじの会
いたか」とし
たんです。子どもから期待された、それに応えようと、おやじの会の活動を始めた。
私にとっては社会教育への出発点です。期待されること、周囲から必要とされること
に応えていく。その過程で自分自身も育っていく、育つことによってまた友だちが増
えていく、つながりができていく。そういうその循環の喜びっていうのがあるんです
よ。自分が必要とされるために何をすれば良いか、期待されることは何か、必ずある
はずです。期待されていることがあるはずです。それを自分自身でも感じ取りながら、
やっていく。自分から求める形で期待されることを引き受ける、自分が必要とされる
こと、やって喜んでくれることを自らも探していく。探し求めながら期待に応えてい
く。そういうスタンスが良いのではないかというふうに思うんです。社会教育委員と
して期待されていることといえば、先ほど申し上げたように、地域を舞台に人のつな
がりをつくること、コーディネーターとしての役割だと思います。
纐纈
ありがとうございます。期待をされるっていうのは、やっぱりどんな人にとっても、
本当に嬉しいというか、やりがいにつながっていくのかなと思います。昨年の基調講
演、逢坂先生の記録をちょっと読んでみましたら、面白いことが書いてあって、「向
こうが何も期待していないのに、例えば、教育委員会に突然『俺、今度行くから』と
言っても、それは邪魔なだけだ」と言われたんですね。社会教育法の第17条に、こう
いうことができます、ああいうことができますよって書いてあるんですけれども、そ
れをやるから委員ではなくて、それはあくまでも手段であって、本来の目的ってなん
だろう、何をして欲しいんだろう、そのために教育委員さんと懇談しましょう、提言
出しましょう、答申出しましょうっていう話になってくるのかなと思っております。
そう考えると、期待感を持たせるという部分でいくと、非常に重要になってくるのか
なと思うのが、皆さんの自治体の職員の方ですが、活性化という意味で、意識は高い
ですか、どうですかというと、これはさすがに答えづらいですよね。これは、また逆
- 53 -
も同じです。職員の方に社会教育委員さんは意識が高いですかって聞くもの同じかも
知れません。これはちょっと辛い質問ですので、代表して南山さんと大下さんに、そ
れぞれ沼津市の担当者、川崎市の担当者は、議長さん、委員長さんから見てどうかと
いうことを率直なところ、お話をお願いできればと思います。
南山
非常に答えにくいというか、難しい質問なんですけれども、はっきり言って、行政
の方は異動があるんですよ。異動によって非常に社会教育に対して理解のある方が、
例えば課長であるとか、そういったポジションについてくれると、凄くやりやすい部
分があります。ところが、全くそういう分野に今まで関連していない市長部局から、
突然なんか回ってきたとかいう方って社会教育だとか、そういうのが全く分かってな
い。だから、なんでそんなことをする必要があるのかみたいな感じの部分がありまし
て、非常にやりにくい部分はあるんですけれども、それをいかに説得できるかという
のも、社会教育委員長さんの一つの仕事ではないかなというふうに思います。ただ、
行政の言うとおりに動いていれば社会教育委員はそれでいいのかと言ったら、やはり
そうではなくて、自分たちの社会教育委員、委員長さんの場合だったら、委員さんた
ちの考えもよく自分で捉えて、みんながこう思っているんだったら、こういうふうに
してあげようということで、やはり委員長さんが課長さんなり、それを補佐する方な
りに話をする。場合によっては、一緒に教育長のところに行って話をしましょうよと
いうぐらいの意気込みを持ってやっていかなければいけないのかなというふうに思い
ます。
纐纈
ありがとうございます。大下さんお願いします。
大下
非常に難しいですね。率直に言って、やっぱり行政もその一人ひとり人間が違いま
すから、個人差があることは事実です。ただ、今南山さんの言われたことと重複する
のですが、こちらの情熱とやる気とで、職員に向かっていく、四つに組むというぐら
いのスタンスじゃないと良い関係はできませんね。こっちが何にもやらなくて、「行
政は何にもやらないじゃないか」と言ったって、駄目ですね。一般的にも相手を動か
すのはこちらのやる気次第です。こちらが動くので相手も動くという関係づくりです
ね。相手に求めるのではなくて、まずこっち側、自分から、私から動く。そこが僕は
大事かなと思いますね。
纐纈
ありがとうございます。実はですね、沼津市さんと川崎市さんの職員の方からも、
事前に委員さんたちへの声を伺っておりまして、お二人には内緒で聞いておりますの
で、ちょっとご披露させていただきたいと思います。沼津市は中村さんという方がご
担当なんですけれども、社会教育委員の皆さんの素晴らしいところはどんなところで
すかと聞いてみました。そうしたら、こう答えが返ってきております。「諮問に対す
る答申を約2年かけて作成するために、毎月1回19時から必ず勉強会を行っておられ
ます。皆さんお仕事を持っており、お忙しい中にもかかわらず、毎回ほとんどの委員
さんが出席をしており、活発な意見交換が2時間行われます。委員の皆さんは社会教
- 54 -
育のみならず、様々な方面の勉強もしており、得た情報など皆さんで共有しておりま
す。行政としても大変参考になっております」ということです。
社会教育委員の担当者として、どんなことを配慮されているんですかということも
聞いてみました。そうしたら、「その勉強会には必ず出席をするようにしています。
勉強会をするにあたって、必要となる資料の要求があった時には、できる限りその収
集に努めています。また、昨年度は教育委員さんとの話し合いの場も設けさせてもら
いました」と、中村さんからそんな返事がきております。
川崎市は、芝田さんという担当の方が、今日お見えになってもいると思いますが、
事前にいただいておりまして、ちょっと読ませていただきます。「会議の定例会、年
に大体 10 回程度のほか、臨時会や編集会議など、ほぼ毎月何かの会議に参加してい
ただき、活発に活動していただいています。また、提言書の執筆にあたっては、全て
委員さんが分担して執筆、構成等をされています。さらに、事例研究のための視察や
分科会の打ち合わせなど、各委員同士で連絡を取り合いながら行うなど、積極的に活
動されています。これらの活動をこなしていく思いの強さが大変素晴らしいと感じて
います」ということです。あと、ご自分で配慮されていることについては、やはり
「資料の要望があった時には、できる限り応えられるようにしています」とのことで
す。
先程、教育委員との懇談会の話が大下さんからも出ましたけども、懇談会について
は、「教育委員に自分たちの要求、要望ばっかりをぶつける場ではありません。広く
意見交換をして自分たちの活動に反映する、プラスになるような場ですということを、
事前に委員さんにちゃんと分かっていただいて臨んでもらっています」と、そんなお
答えがありました。どうもありがとうございました。
ということで、行政の担当者と委員さんとの信頼、そういったものが非常に大事な
のかなというふうに感じております。もう本当に終わりの時間が迫っております。本
当はここで、会場から感想とかご意見を最後にいただいてと思ったんですが、時間が
ありませんので、登壇されている方から、一言ずつ今日参加されている方へのメッセ
ージをいただいて、最後に野島先生にまとめていただいて終わりにしたいと思います。
南山
今日いらっしゃっている皆さんは、社会教育のことについて頑張っていることと思
いますが、どうしても先程も言ったように、予算は削られる、事業仕分けでこの事業
はなくなる、そういうような状況の中で、何となく意気消沈してしまうところがある
んじゃないか。でも、それに負けていたら、絶対にこの社会教育という部分は小さく
なっていくばかりなんで、是非皆さんには、ここで一つ踏ん張っていただいて、なん
とかまた社会教育を盛り返していけるように、皆さんの力、それから、元気を最大限
に振り絞って、頑張っていただけたらなと思います。私も頑張りますので、一緒に頑
張りましょう。
大下
社会教育委員を務めることによって、個人的にはいろんな気づきがあり、異分野の
- 55 -
様々なジャンルの人との出会いがあって、そこで自分を客観視する視点を得ながら、
交流を通して、自分もドンドン育っていけるというこの喜びは大きいです。その過程
で、「新しい公共」をどう担うか。「公」と「民」との中間ですね、身近な地域課題を
やっぱり担っていく人がいないと、これからの社会は持たないんじゃないか。行政と
市民活動との協働による「新しい公共」の構築こそ、これからの大きな課題でしょう。
社会教育委員はそのためのコーディネーターとしての活動に大きな期待がかかります。
公共とは、公を共に担うというくらいで、行政も含めて、地域社会の我々が担ってい
くんです。その当事者の一人として社会教育委員がこれから、大きな役割を占めてい
くのではないか、その公共を担うことによって自分自身も大きく育っていくんじゃな
いか。公共の面と自分自身と、両方のやりがいを感じながら、皆さん一緒に頑張りま
しょう。ありがとうございました。
布施
今日はありがとうございました。今日参加させていただきまして、シンポジストの
お二人のお話、それから皆様の様子から日ごろ皆さんが頑張っていらっしゃる様子が
よく分かり、私たち行政の側ももっともっと頑張らなくてはいけないなと思いました。
それぞれ行政といってもいろいろな立場で仕事をしている方がいます。本当にそれぞ
れの立場で頑張ることが大事なんだということを改めて思いました。
ただ、立場、立場で仕事をしているのではなく、そこにつながりを持って、みんな
で取り組んでいくということを意識していけたら良いなと思っています。私は教育事
務所で仕事をしておりますので、社会教育委員さんに対しては後方支援という形でし
か関わる部分がないんですけれども、情報を収集して発信したり、求められた時に皆
さんに提供できるような、そういうことをしていきたいと思いました。いろいろと皆
さんからも勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。
纐纈
では、野島先生お願いいたします。
野島
今日は、後半は「本気度」についてということになりました。大下さんがおっしゃ
ったんですが、やはり職員の方にも、あるいは社会教育委員の方にも個人差はあると
思います。ちょっとこんな話をさせていただきたいんです。私が会った公民館の職員
なんですが、下水道課から公民館にある日突然異動になって、「どうしよう?」とい
うことになった。その後、私がその女性の方にお会いしたとき、「ここに来てよかっ
た」って言うんです。今まで下水道課にいた時には使う予算というのは結構なもんで、
それこそ何千万というお金を机上で動かしてきた。でも、それはハンコを押して右か
ら左に書類が行くだけの話なんですね。ところがです。公民館に行った時に、「あな
たがこの講座の担当です」といって、1講座10万円預けられた。この10万円は言って
みれば、自分の才覚でこれを使うことができる。下水道課ではそれが全くなかった、
と言うんですね。「私はここにきて、いろんなことをやりたいです」ということをお
っしゃるわけです。今までの職場ではいろいろな規則があり、それに沿ってやってい
けばよかった。ところが、公民館に異動すると、ほとんど基準みたいものがないんで
- 56 -
すね。あるのは社会教育法の中の公民館の禁止行為の三つの条件くらいなものです。
これだけはやってはいけない、というのがあるだけ。だから戸惑ってしまうわけです。
こういう状況を困った状況と思うか、チャンスと思うか、職員にとって受け止め方は
異なると思います。学校教育の場合には、学習指導要領という基準がありますから、
それに沿ってやっていきますが、社会教育は基本的にかなり自由なんですね。なので、
担当者の気持ちや才覚で、よい仕組みを作って、よい人間関係を作って、よい事業を
やっていくというのは可能性としては非常に高いと思います。今回はその社会教育の
主要な役割である社会教育委員ということで、「指導者」なんですが、それ以前に
「主動者」だと思うんです。つまり、自分がどう動くかということを自分で決めてい
く以外にはしょうがないんじゃないのかと思うんですね。社会教育委員というのは制
度上個別に任命されていますので個別に動けます。つまり、会議を構成するメンバー
として委嘱されているわけではないんです。実際には、会議体を作って役割を果たし
ますが、基本は個別なんです。なので、自らの意思でいろんなことを言い、実践する
ことは基本になりますが、やはり委員同士が一緒になって意見をまとめていかないと、
実際の力になっていかないということはあると思うんです。
私たち社会教育をずっとやってきた者が大事にしてきたことは、個人個人ではなく
てその人たちがつながることによって、つまりグループの力でいろいろなことをやっ
ていこう、仲間を作っていこうということでした。社会教育委員もそうなんです。一
人ひとりではなく、一緒になっていろいろなことを考え、そして提案していく。こう
いう姿勢で地域の元気を作っていくということが大事なのではないかと思います。社
会教育委員の方々は、既にいろいろな経験を持ってこられていると思います。しかし、
社会教育委員になったら、社会教育のいろいろな場面、例えば、公民館まつりがあっ
たら出かけてみる、講座の一つくらいは出席してみるのも良いと思います。そこで感
じたことを持ち帰って、委員の会議の中で話し合っていくということも、これからは
非常に大事になってくるように思います。
纐纈
ありがとうございました。それでは会場の皆さんに最後の質問です。今日の基調講
演、そしてシンポジウムを通じて、本気度が上がったという人は緑、下がったという
人は黄色、微妙という人は白、最後にお答えください。
ほとんどの方が緑で、微妙という方が8人か9人ぐらいいらっしゃいましたけれど
も、その辺はまた反省材料にしたいと思います。「社会教育は教育の一つなんです
よ」ってよく言われます。教育なんだから、思いとか、方向とか願いがあるんですと
いうことがよく言われます。そう考えると、我々は社会教育ということをただ漠然と
して捉えるんじゃなくて、その願いとか方向とかをきちんと委員さんとか、行政の担
当者がしっかり向き合って、それを共有するということが一番大事かなと思います。
でも、その願いとか方向というのはこの場で一つにして、こういうことだと確認をす
るものではなくて、それぞれの市町村であったり、地域であったりで確認するものか
- 57 -
なというふうに思っております。
本当に拙い進行で、上手くまとまらなかったというか、時間がちょっとオーバーし
て申し訳ございませんでしたが、これで終わりにしたいと思います。それで最後に一
つだけ皆さん方にお願いがございます。最初にアンケート用紙が配られていると思い
ます。実は昨年度、アンケートの回収率は社会教育委員さんからは約50%、行政の方
は約3分の1でした。今年はこれを100%に近づけたい。もし分科会を開くなら、ど
のテーマが良いですかという質問があると思います。実は、再来年の平成26年度に神
奈川県で関東のブロック大会を開きます。今日は、行政の方も含めて150名ぐらいの
方がいらっしゃいますので、皆さんがアンケートを出していただくと、かなり方向と
して見えてくるかなという気がします。○をつける数は、特に制限はございませんの
で、ご自分が関心があるものに、○を付けていただきたい。それを参考にしたいと思
っております。そして一番下のところに自分がどっちの立場か、社会教育委員か、行
政職員かに○印を付けていただいて、お出しをいただければと思います。
時間のほうが10分ぐらいオーバーしてしまって申し訳ございませんでしたけれども、
これからの県内の社会教育委員の活動の一助になれば、今日のシンポジウムは良かっ
たのかなと思っております。それでは、ご登壇いただきましたシンポジストの3名の
方、そして野島先生にもう一度感謝の意味を込めまして、大きな拍手をお願いしたい
と思います。ありがとうございました。それではこれでシンポジウムを閉じたいと思
います。
- 58 -
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