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中期為替相場見通し

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中期為替相場見通し
中期為替相場見通し
2014 年 12 月 26 日
みずほ銀行
国際為替部
みずほ銀行|中期為替相場見通し
目次
【見通しの概要】
P.2
◆ ドル/円相場の見通し~第三次安倍政権を待つ「実現不可能なポリシーミックス」~
衆院選挙後のドル/円相場について~ゲームのルールが変わる時~
P.3
米金融政策の現状と展望~巧妙に詰められる出口への距離感~
P.4
2014 年のドル/円相場振り返り~6 年ぶりの大相場~
P.6
基本シナリオへのリスク~円安・ドル高に死角はないのか?~
P.8
◆ ユーロ相場の見通し~視野に入ったソブリン QE~
ECB の金融政策の現状~expectation(期待)以上、target(目標)未満の intention(意思)~
P.12
PPP から考えるユーロ/ドル相場の水準感~切り上がる PPP~
P.15
2014 年 12 月 26 日
1
みずほ銀行|中期為替相場見通し
【見通しの概要】
国際為替部 チーフマーケット・エコノミスト 唐鎌 大輔
ドル/円相場に関し、需給(対外収支)面、金利(金融政策)面から見て、円を買う理由が乏しい状況は不変であり、「放っ
て置けば円安」の基本シナリオは継続である。12 月は原油急落とこれに伴う金融市場の動揺に乗じて円高に振れる場面も
見られたが、市場における円売り・ドル買い意欲は根強く、やはり一時的な動きに終わった。前月の本欄で議論したように、
貿易黒字も実質金利もないという未曾有の環境を前に、やはり円安方向の動きは想定せざるを得ない。米国の金融政策正
常化が頓挫するに伴い円安「ペース」が落ちることはあろうが、円安「基調」が変わる望みは薄い。もちろん、円安「基調」に
もリスクはある。歴史的には FRB の利上げスタート直後にドル相場が急落したことは多々あるし、ドル高のもたらすディスイ
ンフレ効果を FRB がどこまで許容するのかも定かではない。また、第三次安倍政権が円安のもたらす副作用を看過しかね
るという判断に至った場合、押し目は不可避だろう。さらに、本欄で重視してきた交易条件に関し、悪化度合いが止まりつつ
あることは、見通し作成上、重要な兆候であり、この動き次第では予想レンジの修正も有り得ると考えている。
一方、ユーロ相場は軟調な相場が続いているが、FRB と ECB の金融政策格差は如何ともし難いものがあり、ECB のソブ
リン QE が既定路線に入っていることも踏まえると、やはり当面ユーロ/ドルの上値は重いだろう。日銀同様、ECB も足許の
原油価格下落をデフレ懸念と読み替えるきらいがあり、「原油下落→インフレ率低下→ユーロ下落」という展開は暫く予想さ
れ、経験則に準じ、購買力平価である 1.20 付近までの下値は想定したい。但し、ソブリン QE が市場の期待を満たす内容に
着地する公算は決して大きくなく、ユーロ相場が「噂で売って、事実で買い」という動きに至るリスクも念頭に置きたい。毎月
述べるように、現状は投機主導の「力ずくのユーロ安」であることは否めず、経常黒字の蓄積やディスインフレ傾向の定着が
進んでいる事実を踏まえれば、反騰リスクが温存された状態にあることは忘れてはならない。本欄ではドル買いムードが
FRB の利上げ直前まで続き、その後失速すると仮定し、2015 年下期以降にはユーロ/ドルが底打ちすると予想している。
【見通し総括表および為替相場の推移と予想】
ド ル/ 円
2014年
1 ~1 2 月( 実績)
2015年
1 ~3 月期
4 ~6 月期
7 ~9 月期
100.76 ~ 121.85
(120.38)
116 ~ 124
(120)
117 ~ 126
(124)
1.20 ~ 1.26
(1.22)
143 ~ 150
(146)
ユーロ/ ド ル 1.2165 ~ 1.3995
(1.2208)
ユーロ/ 円
135.73 ~ 149.12
(146.95)
1 0 ~1 2 月期
2016年
1 ~3 月期
118 ~ 128
(126)
120 ~ 130
(127)
122 ~ 132
(128)
1.20 ~ 1.26
(1.21)
1.22 ~ 1.28
(1.23)
1.23 ~ 1.31
(1.24)
1.25 ~ 1.32
(1.26)
144 ~ 152
(150)
148 ~ 157
(155)
150 ~ 160
(157)
153 ~ 164
(161)
(注) 1. 実績の欄は12月26日までで、カッコ内は12月26日の午前9時頃。 2. 実績値はブルームバーグの値などを参照。
3. 予想の欄のカッコ内は四半期末の予想レベル。
140
130
120
110
ドル/円
100
90
80
70
06/1Q 07/1Q 08/1Q 09/1Q 10/1Q 11/1Q 12/1Q 13/1Q 14/1Q 15/1Q 16/1Q
1.7
175
165
1.6
ユーロ/ドル
1.5
1.4
155
145
135
125
1.3
1.2
1.1
06/1Q 07/1Q 08/1Q 09/1Q 10/1Q 11/1Q 12/1Q 13/1Q 14/1Q 15/1Q 16/1Q
2014 年 12 月 26 日
115
105
95
ユーロ/円
85
06/1Q 07/1Q 08/1Q 09/1Q 10/1Q 11/1Q 12/1Q 13/1Q 14/1Q 15/1Q 16/1Q
2
みずほ銀行|中期為替相場見通し
 ドル/円相場の見通し~第三次安倍政権を待つ「実現不可能なポリシーミックス」~
《衆院選挙後のドル/円相場について~ゲームのルールが変わる時~》
次回選挙の対立軸は「円安&物価高の打開」?
12 月 14 日、投開票が行われた第 47 回衆院選挙は自民、公明の連立与党が 326 議席を確保し、参議院で否決
された法案を再可決できる衆議院の 3 分の 2(317 議席)超を維持した。だが、公示前と比べれば、自民党は 295
議席から 291 議席へ減少しており、これを公明党が 31 議席から 35 議席に伸ばすことで勢力が保たれた格好とな
っている。一方、野党第 1 党の民主党は 62 議席から 73 議席、共産党が 8 議席から 21 議席となる動きも目を引
いた。自民党の議席数があまりにも巨大であるため「野党及ばず」の論調が先行しやすいが、単純に議席の増減
が勝敗の定義だとすれば、自民党の失速と言えなくもない。「アベノミクスを評価しない」との世論が 50%を超えて
いる状況が、この僅かな失速に繋がった可能性などは考え得る。2 年前の自民党が「円高&物価安」の状況に対
して「円安&物価高」を打ち出して大勝利したように、明確な対立軸がなければ今後大きな体制転換は難しいと
いう印象は強い。この点、今後については憲法改正や特定秘密保護法など、国論を二分するテーマが待ち受け
ていそうだが、今のまま行けば、次の解散総選挙では「円安&物価高」の打開が対立軸となる可能性もある。その
場合、自民党は苦戦を強いられるかもしれない。
過去の本欄でも述べたように、今後の実体経済に関しては円安・物価高を背景とする実質所得の劣化を背景
として、先行きは非常に厳しそうである。この点、野党の協力体制が整っていないという政治環境を抜きにしても、
経済・金融環境からすれば、現時点での解散・総選挙が最も軽傷で済む「最高の好機」だったことには変わりはな
い。当面はアベノミクスを吟味する局面が続くことになる。
通貨政策と金融政策のバランス、再考の時
選挙結果はあくまで現状追認である
ため、今後の相場見通しに修正が
生じることはない。過去の本欄1でも
述べたように第三次安倍政権を待
つのは「実現不可能なポリシーミック
ス」と筆者は考える。言い換えれば、
政府としての通貨政策をどのように
設定すべきなのかを再考する時期
ポリシーミックスの組み合わせ
金融政策 財政政策 通貨政策
①
緩和
緩和
通貨安
②
③
④
⑤
緩和
緩和
緩和
引締め
緩和
引締め
引締め
緩和
通貨高
通貨安
通貨高
通貨安
⑥
引締め
緩和
通貨高
⑦
引締め
引締め
引締め
引締め
通貨安
通貨高
に差し掛かっているように思われる。 ⑧
本欄では執拗に議論しているため
日米欧では・・
政策意図
不況脱却、デフレス
アベノミクス当初の日本
パイラレル回避
×
景気下支え
×
×
経常黒字縮小、景
気過熱防止
×
景気過熱防止
2014年以降の日本?
ユーロ圏
米国(※)
(資料)筆者作成による。×は実現不可能なポリシーミックス。
(※)緊縮的な財政運営の縛りが緩くなりつつあるという意味で、米国は⑥に位置付けた。
繰り返すことは避けるが、円安は実
質所得劣化を通じて家計部門への負担を増している。選挙で大勝しつつも、「アベノミクスを評価しない」との声
が世論の半数を超える現状2は通貨政策として円安を志向するのか、それともこの辺りで休止(場合によっては円
高への揺り戻し)を望むのかを今一度考える必要性を示唆している。金融政策で円安を追求しながら、政治が所
管する通貨政策では過度な円安を忌避したいという構図は理論的には持続しない(表)。直感的には、円安がも
1 そのほか、みずほマーケット・トピック 2014 年 11 月 6 日号『当面は温存されそうな実現不可能なポリシーミックス』や本欄 2014 年
11 月 25 日号『解散総選挙後のアベノミクスを待ち受けるもの』をご参照下さい。
2 日本経済新聞社とテレビ東京が 11 月 21~23 日に実施した世論調査の結果によれば安倍晋三首相が衆院選の争点とする 経済政策
「ア
ベノミクス」については「評価しない」が 51%で「評価する」の 33%を上回った。
2014 年 12 月 26 日
3
みずほ銀行|中期為替相場見通し
たらす家計部門への負担増を政治的に放置することは難しいように思われ、2015 年のどこかで量的・質的金融緩
和(QQE)が後退的修正を迫られるというのが本欄で提示するリスクシナリオである。
現状では幸いにも原油が下落しているため、円安のもたらす家計部門への負担感がかなり軽減されているが、
裏を返せば「円安の是非」を再考するインセンティブが減じられてしまっている面もある。かなり高い確率で言える
ことは、現状の円相場水準のまま、何らかの理由で再び原油価格が急騰し始めた場合、もう「円安の是非」を考察
している余裕はなく、輸入物価を押える方向の議論が強制的に求められるということである。後述するように、円買
い介入の可能性を囃し立てる向きも現れるかもしれない。そうなってしまうと QQE の撤収も含めて、急な政策転換
まで追い込まれてしまう可能性もある。いずれにせよ「円安は良いことなので促進すべき」というムードは 180 度変
わらざるを得なくなり、危機的なムードすら漂うことも考えられる。
だが、原油価格が低位安定している今なら比較的余裕をもって、通貨政策と金融政策のバランス建て直しを図
れる。QQE の修正にしても、さほど急激な転換を求められることはなく、後述するように、時間軸やターゲットの微
修正で済むかもしれない。もちろん、今年 9 月以降の国会論戦で断続的に登場する「円安対策」なる財政的補助
も、この期に及んではある程度は必要だろう。だが、そもそも「金融緩和しながら円安対策」という構図が歪(いび
つ)なのであり、「対策」するほど悪いことならば元から断つ(円安を修正する)というのが普通の発想になる。
ハロウィン・ロジックの再考
通貨政策と金融政策のバランス建て直しを図り、円安促進を再考することは「原油安はインフレ期待を押し下げ追
加緩和の理由足り得る」という 10 月 31 日の黒田日銀による追加緩和のロジック、さしずめハロウィン・ロジックを再
考することにも繋がる。ハロウィン・ロジックを温存する限り、民間部門は原油安のもたらす減税効果の恩恵に永久
に与れないことになってしまう。こうした観点から、QQE に後退的修正が施される可能性はメインではないにしろ、
リスクシナリオとしては十分検討に値するものだろう。具体的にそれは 2 年で 2%の「2 年」を撤廃するのか、それと
も「2%」を 1%に修正するのかなどの展開が考えられる。しかし、黒田日銀は「2%」をグローバルスタンダードと捉
え、しかも「2」をマジックナンバーとして喧伝した経緯もあるため、恐らく「2%」の看板は守りたい意向と思われる。
とすれば、ターゲットとする消費者物価指数(CPI)について、生鮮食品を除くコアベースではなく食料(酒類を除く)
及びエネルギーを除いたコアコアベースにするなどの選択肢もあるだろう。
いずれにせよ現状を踏まえる限り、第三次安倍政権が発足以来最大の武器であった円安の意義を再考し始め
る可能性はある。それは市場参加者にとってゲームのルールが変わる可能性にも等しいだろう。今後発表される
GDP 統計や毎月の実質賃金指数そして来春の統一地方選挙などは潮目の変化を促し得る計数・イベントとして、
注目しておきたいところである。
《米金融政策の現状と展望~巧妙に詰められる出口への距離感~》
巧妙に詰められる出口への距離感
12 月 16~17 日にかけて開催された FOMC は現状維持を決定した。注目された声明文における利上げまでの期
間に係る文言「相当な期間(considerable time)」は金融政策の正常化を始めるまで「忍耐強く待つ(be patient)」
との表現に置き換えられた格好だが、これは厳密には「前回の声明と合致する(consistent with its previous
statement)」と述べられている。イエレン FRB 議長も会見で「新たな文言はわれわれの政策の意図が変化したこと
を示すものではなく(中略)現行の FF 金利の目標誘導レンジを『相当な期間』維持することが適切になる、として
いたこれまでのガイダンスと完全に一致するもの」と述べている。平たく言えば、「前回から大きな変化なし」が額
2014 年 12 月 26 日
4
みずほ銀行|中期為替相場見通し
面通りの解釈になる。
これに対する金融市場の反応は均一ではなく、為替と債券についてはタカ派的解釈に応じてドル買い、金利
上昇の流れとなったが、株式はハト派的解釈に応じて急伸している。いずれにしても FRB の金融政策に関し各市
場が「見たいように見る」という相場は今夏のジャクソンホール講演以降、幾度も見られてきたものであり、その意
味では夏から解釈が進歩していないというようにも見える。だが、時が経過しながらも「2015 年 6 月以降に利上げ」
というコンセンサスは不動であり、結果として FRB は非常に巧く出口への距離を詰めている印象である。
原油下落は一時的な効果と割り切る
足許の原油価格下落が招くディスインフレ懸念が正常化プロセスの障害と成り得るとの懸念については、あくまで
一時的な効果(the transitory effects)であり、時の経過と共に消失(dissipate)していくと整理されている。会見に
おいても、イエレン議長は「石油産業にとって厳しいが米国経済全体ではプラス」とのスタンスを示しており、基本
的には従前の高官発言(フィッシャーFRB 副議長やダドリーNY 連銀総裁)と整合的である。むしろ原油価格下落
のもたらすリスクとしては、ディスインフレ懸念よりもロシアを筆頭として新興・資源国の混乱にどの程度繋がり得る
のかという点が注視されるべきなのだろう。この点、ロシアを巡る危機は未だ収束したとは言えず、FOMC 後から
の楽観ムードが持続可能なのか不安は抱かれるし、これに応じた円高方向への修正も警戒したいところである。
利上げ時期について
利上げ時期に関しては、会見においてイエレン
議長が「参加者の殆どが 2015 年内の利上げを想
最初の利上げ 時期
以上(つまり最低 1 回の利上げ)と予想している
FOMC Date
Sep-13
Dec-13
Mar-14
Jun-14
Sep-14
Dec-14
(より具体的には 0.5%~0.75%が 2 名、0.75%~
(資料) FRB
定している」と述べていることにも表れるように、ス
タッフ見通し(SEP :the Summary of Economic
Projections)で示されるドットチャートおいて、17
名中 15 名が 2015 年末時点の FF 金利を 0.50%
2014
3人
2人
1人
1人
1人
-
2015
12人
12人
13人
12人
14人
15人
2016
2人
3人
2人
3人
2人
2人
1.00%が 4 名、1.00%~1.25%が 3 名、1.50%~1.75%が 2 名、1.75%~2.00%が 4 名)。仮に 0.25 ポイントず
つの利上げが 9 月にスタートするとすれば(本欄の想定は 9 月である)、9 月、10 月、12 月で計 0.75 ポイントが引
き上げられ、FF 金利誘導目標は年末には「0.75%~1.00%」に着地し、メンバー見通しとイメージが合う。現時点
では 9 月会合(&会見)での利上げスタートというのが最も無難な想定だろう。だが、イエレン議長は「0.25 ポイント
ずつのペースは望まれていない可能性」にも言及しており、より小さな利上げ幅で正常化が行われるとすれば、
利上げスタート時期がより前倒しになる可能性もある。
なお、イエレン議長は今回声明文で注目された文言「忍耐強く待つ(be patient)」の解釈について、「少なくとも
今後 2 回(a couple of meetings)の会合において利上げを開始する公算は小さい」と述べており、裏を返せば今か
ら 3 回目(4 月 28~29 日の会合)以降では利上げが有り得ることを仄めかしている(事実、「利上げ開始の決定は、
記者会見の有無に関係なく行いうる」とイエレン議長は述べている)。転じて言えば、「忍耐強く待つ(be patient)」
が「相当な期間(considerable time)」と同義だと言われている以上、「相当な期間(considerable time)」の意味する
時間軸が済し崩し的に短縮化されたようにも感じられ、この辺りにイエレン議長の巧妙さ(悪く言えばずる賢さ)が
見て取れる。現に、こうした声明文や会見を経て、市場へのショックは避けられており、本来大騒ぎになりかねなか
2014 年 12 月 26 日
5
みずほ銀行|中期為替相場見通し
ったフレーズの取り外しを巧く乗り切った印象は強い。
なお、SEP で示される
FRBメン バー 経済見通し
経済・物価見通し(表)も
強めであり、どちらかと言
GDP
えばタカ派的な印象を受
ける。総じて実質 GDP 成
失業率
長率、失業率が長期見通
しを凌駕する構図となって
おり、これに応じてインフ
レ率が高進するような構
インフレ
(PCEコア)
FOMC Date
Mar-14
Jun-14
Sep-14
Dec-14
Mar-14
Jun-14
Sep-14
Dec-14
Mar-14
Jun-14
Sep-14
Dec-14
2.8
2.1
2.0
2.3
6.1
6.0
5.9
1.4
1.5
1.5
1.5
2014
to
to
to
to
to
to
to
5.8
to
to
to
to
3.0
2.3
2.2
2.4
6.3
6.1
6.0
1.6
1.6
1.6
1.6
3.0
3.0
2.6
2.6
5.6
5.4
5.4
5.2
1.7
1.6
1.6
1.5
2015
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
3.2
3.2
3.0
3.0
5.9
5.7
5.6
5.3
2.0
2.0
1.9
1.8
2.5
2.5
2.6
2.5
5.2
5.1
5.1
5.0
1.8
1.6
1.7
1.7
2016
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
to
3.0
3.0
2.9
3.0
5.6
5.5
5.4
5.2
2.0
2.0
2.0
2.0
2.3
2.3
4.9
4.9
1.9
1.8
2017
n.a.
n.a.
to
to
n.a.
n.a.
to
to
n.a.
n.a.
to
to
2.5
2.5
5.3
5.3
2.0
2.0
Longer run
2.2 to 2.3
2.1 to 2.3
2.0 to 2.3
2.0 to 2.3
5.2 to 5.6
5.2 to 5.5
5.2 to 5.5
5.2 to 5.5
2.0
2.0
2.0
2.0
(資料) FRB
図となっている。デュアルマンデートの観点から解釈すれば「雇用最大化」についてはほぼ達成し、「物価の安定」
に軸足が移りつつある状況と言えるだろう。
円相場見通しのシナリオは変わらず
今回の FOMC を経ても 2015 年央以降の利上げという従前の市場予想が修正されたわけではなく、ドル/円相場
の見通しに関し、本欄のメインシナリオを変更する必要はないと考えられる。2015 年中に 130 円へ手をかけるとい
うシナリオは継続で問題ないだろう。それゆえ、今後の米金融政策と円相場という論点においては、後述するよう
に、「FF 利上げ直後にドル相場が急落してきたアノマリー」や「米国自身がドル高を嫌気するリスク」そして「(耐え
られず)利上げがワンショットで終わってしまうリスク」などを引き続き警戒したいとことである(円安・ドル高シナリオ
を阻むリスク要因に関しては後述「基本シナリオへのリスク~円安・ドル高に死角はないのか?~」をご参照)。
《2014 年のドル/円相場振り返り~6 年ぶりの大相場~》
2014 年のドル/円は 6 年ぶりの大相場。1 か月半で 12 円弱
2014 年の値幅を振り返ってみると、今年
の ド ル / 円 相 場 の 値 幅 は 21.09 円
(円)
(121.85 円-100.76 円、※Bloomberg 参
70
照値)で、これは 6 年ぶりの大相場という
ことになる(図)。だが、この値幅の殆ど
は 10 月 31 日のハロウィン緩和以降のも
のであり、10 月 30 日までは 9.33 円
(110.09 円-100.76 円)と、この時点では
変動相場制移行後の年間最小値幅で
あった(なお、これまでの年間最小値幅
は 2011 年の 10.18 円)。つまり、僅か 1
変動相場制以降後のドル/円の年間レンジ(高値-安値)
60
50
【史上最小レンジ】
2011年:10.18円
40
30
20
10
0
73年 76年 79年 82年 85年 88年 91年 94年 97年 00年 03年 06年 09年 12年
(資料)Bloomberg
か月半の間に 12 円弱、円安が進行したことになる。一方向にこのスピードで加速したことは輸入企業を筆頭とし
てドルを手当てしなくてはならない向きにとっては相当酷な相場つきだったと言える。こうした経緯もあり、「安いド
ル」への実需は根強い状況が続いていると考えられ、必然的にドル/円相場の下値を堅いものとしている。
なお、四半期の値幅で見ると今年 10~12 月期は 16.6 円(121.85 円-105.23 円)であり、これは 2008 年 10~
2014 年 12 月 26 日
6
みずほ銀行|中期為替相場見通し
12 月期の 19.4 円(106.53 円-87.14 円)以来の大きなものであるが、当時は円高方向への動きであった点が異な
る。円安方向の動きで今年 10~12 月期よりも振れ幅が大きい局面となると、大手金融機関の連続破綻など金融
危機を受けて「日本売り」などがテーマ視されていた 1998 年 4~6 月期の 19.4 円(146.78 円-127.38 円)や同年
7~9 月期(147.66 円-129.19 円)などまで遡る必要がある。後述するように、当時は円買い・ドル売り為替介入が
行われていた。
なお、年間平均レンジについて言えば、過去 5 年で 14.1 円、過去 10 年で 15.6 円、過去 20 年で 18.2 円とな
っている。今回の本欄では 2015 年の上値目途を 130 円に設定しているが、各々のレンジで推移したとしてもラフ
に「116 円~130 円」、「114 円~130 円」、「112 円~130 円」となり、少なくとも 110 円を下回る相場は難しいという
イメージになる(今月の本欄では「116 円」を下値目途としている)。ドル/円相場の水準感は今年 11 月以降、正確
にはハロウィン緩和以降でシフトアップされたと考えられるだろう。また、こうして見ると、円安予想が市場に蔓延す
る中にあって「110 円を割れると思うか否か」が 1 つの注目点となりそうである(本欄ではそこまで想定していない)。
「97-98 年」との比較
上述したように本邦金融危機などを背
景として 1997 年から 1998 年にかけて
(円)
ドル/円相場と円買い介入の歴史
320
は「日本売り」の色合いを帯びた円安が
進行していた。この際、1997 年 10~12
月期や 1998 年 4~6 月期には円買い・
【 円買い介入:97年12月、98年4月、98年6月(協調)】
●95年4月~97年12月:約700日で約45円
●95年4月~98年6月:約830日で約55円
270
●12年11月~14年12月:約540日で約40円
220
ドル売り介入が行われており、当時と現
在を重ね見る向きもある。上述したよう
に、値幅で見た場合、今年 10~12 月
170
120
期(16.6 円)は当時の円安局面と匹敵
するため、「水準ではなくスピードが問
題」という観点に立ち、政策的な対応が
【 円買い介入:91年5月~92年8月】
●断続的に実施:計7871億円
70
1973
1978
1983
1988
1993
1998
2003
2008
2013
(資料)Bloomberg、※日数は営業日ベースでカウント
検討されても一応の道理は立ちそうな状況ではある。
また、アベノミクス相場という大きな括りで見た場合、野田首相(当時)が衆議院解散の意思表明をした 2012 年
11 月 14 日から足許(2014 年 12 月 17 日)に至るまで、約 540 日間(以下 Bloomberg データを元に営業日ベース)
で約 40 円(116 円-79 円)の円安が進んでいる。こうした状況は、1995 年 4 月 19 日に 79.75 円をつけてから約
700 日間で約 45 円の円安・ドル高が進行し、1997 年 12 月 17~19 日に 1 兆 591 億円の円買い・ドル売り介入へ
踏み切った局面を確かに彷彿とさせる。なお、この後、1998 年 4 月 9~10 日及び 6 月 17 日にも 3 兆 470 億円の
円買い・ドル売り介入を行っている。特に 6 月の介入時のドル/円相場は 140 円付近で推移しており、日米協調介
入が大いに影響力を発揮したことで知られる。この 6 月の円買い介入は約 830 日間で約 55 円の円安・ドル高が
進行した末のアクションだが、今からあと約 15 か月間(約 300 日間、※1 か月 20 日営業日と仮定)で 135 円程度
までの円安が進むのだとすれば、当時と同様のイメージに帰着する(そうなるとアベノミクス開始から約 840 日間で
56 円程度の円安となる)。こう考えると、やはり「130 円」は 2015 年において警戒される節目となろう。ちなみに、円
買い介入は 1998 年 6 月を最後に行われていないが、この時、榊原英資・財務官と共に介入にあたったのが現日
銀総裁の黒田東彦・国際金融局長であった。
2014 年 12 月 26 日
7
みずほ銀行|中期為替相場見通し
あくまでリスクシナリオの 1 つ
しかし、これらは値幅だけに論点を絞った議論であり、それをもって円買い介入の正当性を検討するのは難しい。
そもそも貿易赤字の国で通貨安が進むのは当然であり、これを政策的に反転させることが先進 7 か国財務大臣・
中央銀行総裁会議(G7)声明における「為替レートは市場において決定されるべきこと」に照らして許容され得る
のかという問題はあろう。
恐らく、本当にそのような事態を想定するのであれば悲観ムード一色であった 1997~98 年と類似する様な状
況が必要になる。国内において株、債券、為替のトリプル安が慢性化した場合、「危機的状況に対抗するための
円買い介入」というロジックは当然検討されてしかるべきである(この点、QQE の下で債券市場のアラーム機能が
切られてしまっていることは悩ましい)。G7 声明でも「為替レートの過度の変動や無秩序な動きは、経済及び金融
の安定に対して悪影響を与え得る」として、秩序維持を企図する為替介入まで排除されているわけではない。目
先で言えば、GDP が数四半期連続でマイナスになったり、円安倒産が社会問題として注目を浴びる環境になっ
たりする事態に至れば、こうした論点がより耳目を浴びてくる可能性はある。また、政府・与党からすれば、2015 年
4 月に予定される統一地方選挙などにおいて芳しくない結果が出てしまった場合、やはり円安との向き合い方を
考える契機になるかもしれない。
なお、対外的には、通貨高方向の介入であれば、反発が限定されるという面はあり、少なくとも露骨に通貨安
誘導を図るユーロ圏は静観するかもしれない。また、米国においても、ここもとの原油安やドル高がディスインフレ
懸念を高める展開になってくれば、やはり円買い介入を止める理由はない。特に、日本が円安を懸念し、米国が
ドル高を懸念するとなれば、歴史的には非常に稀だが、日米通貨政策の利害が一致することになり、ドル/円相
場も強めの調整を余儀なくされよう(しかし、正常化を慎重に進めたい FRB からすれば、米国債売却に繋がり得る
円買い介入は無用な金利のボラティリティを生むとして快く思わない可能性はある)。もちろん、現時点でそこまで
踏み込んだ想定が必要だとは考えていないが、ロシアを巡る危機に着地点が見えてくれば、再び円安が走り出
す可能性が高いため、2015 年におけるリスクシナリオの 1 つとしては留意しておきたい。
《基本シナリオへのリスク~円安・ドル高に死角はないのか?~》
円安・ドル高を阻むものとは?
以上が現時点での基本シナリオだ
が、当然リスクはある。12 月こそ原
油やロシア危機に応じて一時的に
円安・ドル高を阻むものは何か?
リスク要因
① 歴史的なアノマリー
備考
歴史的にFF利上げ直後にドル急落してきた
②
米国による牽制
ドル高&原油安をFRBは懸念?
円高に戻る場面があったものの、
③
米経済の挫折
住宅市場への影響などから利上げがワンショットで終了等
基調として円安であるとの見立て
④
日本の交易条件改善
原油安により交易条件は反転?
に異議を唱える向きは少数派であ
⑤
本邦政治による牽制
通貨政策としての円安が揺らいでいる。
る(事実、115 円台への押し目は
⑥
その他
(資料)筆者作成
地政学リスクやエボラ出血熱等
極めて短時間だった)。2015 年の日米欧中銀を取り巻く状況に関しては、ドルが「金利のある世界」に戻る一方、
円やユーロはその真逆にアクセルを踏むというあまりにも分かりやすい構図であり、必然的に「2015 年はドル高の
年」という見通しがどうしてもコンセンサスになってくる。だが、市場参加者の大半が期待するシナリオは得てして
そうならないことが多い、という一抹の不安もある。
そこで、今、敢えて円高リスクを考えるとすれば何が考えられるだろうか。列挙してみると、米国側の視点に立っ
た時には①歴史的に FF 利上げ直後にドルが急落してきたというアノマリーや②米国による牽制、③利上げによる
2014 年 12 月 26 日
8
みずほ銀行|中期為替相場見通し
米国経済の挫折、などが考えられる。一方、日本側の視点に立った場合として、④原油安を受けた交易条件の
改善(これが示唆する円相場の均衡水準上昇)、⑤本邦政治からの円安牽制などは注視すべきだろう。また、⑥
その他攪乱項(地政学リスクやエボラ出血熱等)も、海外投資家にとって「日本株買い&円売り」がワンセットの取
引戦略になっている中で、リスクオフムードの強まりが「株売り&円買い戻し」に直結しやすいと考えられる。
FF 利上げ直後にドル暴落?
このうち①については本欄でも何度か議論し
た通りであり、過去 FF 金利の引き上げがスタ
ートする直後にドル相場が暴落することはあ
った(図)。この背景としては諸説ある。例え
ば、不況の局面では米国債を対象とする対
FF金利とドル/円相場
(円)
(%)
9.0
174
154
ドル/円
8.0
FF金利(右軸)
7.0
6.0
134
5.0
米証券投資が増加するため、利上げと共に
米国債の価格下落が嫌気され、「米国債売
却→ドル売り」というフローが活気づくという
指摘は相応に説得力がある。また、過去
FRB が利上げに踏み切る局面では往々にし
て新興・資源国通貨が複数回利上げをして
4.0
114
3.0
2.0
94
1.0
74
1990 1992 1994 1996 1998 2000 2002 2004 2006 2008 2010 2012 2014
0.0
(資料)Bloomberg
いる状態となっていたことから、FF 利上げ前後のタイミングが最もドルキャリー取引が盛り上がる傾向にあったとい
う指摘もある。但し、米国一強でドル独歩高の傾向が強い現状を踏まえれば、この理由は少なくとも今回は当て
嵌まりにくいと思われる。なお、理屈を抜きにしても「噂で買って、事実で売る」は相場の常であり、利上げ直前ま
でドル買いが盛り上がり、その後に反落というのは如何にもありそうな展開ではある。
ドル高懸念は尚早だが・・・
なお、②と③は類似の論点である。今のとこ
ろ②に関しては大きな不安は無い。今年 10
月の米為替政策報告書において米財務省
はどちらかと言えばドル高容認のメッセージ
を滲ませており、米国の通貨政策としてドル
高を懸念しているという様子はない。実際、名
目実効ドル相場は漸く長期(20 年)平均に到
達したものの、実質実効ドル相場はこれに遠
く及ばないのが現状であり、ドル相場の水準
に割高感はさほど感じられない(図)。
(73年3月=100)
(97年1月=100)
ドル相場の推移(名目・実質)
130
125
120
115
110
105
100
95
90
85
80
140
120
100
80
60
40
20
0
93
95
97
99
01
03
05
07
09
11
13
実質実効ドル
20年平均(実質実効)
名目実効ドル(右軸)
20年平均(名目実効、右軸)
(資料)FRB,、Broadベース
もちろん、足許の原油安とドル高が相俟っ
て現実のインフレ率が押し下げられ、FRB の正常化プロセスが遅延するというリスクはある。しかし、12 月以降の
FRB 高官の言動3を踏まえる限り、原油安は実体経済にポジティブであり、それゆえに緩和継続を正当化する理
3 例えば 12 月 1 日にはフィッシャーFRB 副議長が「原油価格の下落がインフレに及ぼす影響は一時的。あまり懸念してない。
」と発言
しているほか、ハト派であるダドリー・ニューヨーク連銀総裁も同日、
「エネルギー価格の下落は家計の実質所得の大きな伸びにつなが
るほか、消費支出を力強く喚起するはずだ」と発言している(ブルームバーグより)。
2014 年 12 月 26 日
9
みずほ銀行|中期為替相場見通し
由には成り得ないとの意図が透けて見える。また、上述するように、イエレン議長も「石油産業にとって厳しいが米
国経済全体ではプラス」と明言している。この点、日銀(や ECB)とは決定的に異なる部分だろう。なお、③に関し
ては現実に利上げに踏み切った後に金利感応度の高そうな住宅関連指標が悪化してくるようなケースが想定さ
れ、可能性はゼロとは言えない。むしろ、これだけ低インフレの環境下で何故わざわざ正常化をしなければならな
いのか、さほど納得的な理由は提示されていないという印象を筆者は抱いている。利上げがワンショットで終わっ
てしまえば、ドル売り・円買いを促す展開は必至である。
交易条件が示唆する円安余地の縮小
上記米国に絡む①~③の要因は比較的市場でもウォッチされているリスクだが、ことドル/円相場を見る上では日
本側のリスクを見ることも必要である。
まず、長期的な視点に立てば、
④は留意しておきたい論点である。
本欄では日本の交易条件悪化が
(85年平均=100)
実質実効円相場の均衡水準下落
180
を示唆している可能性を重視して
160
きたが、最近の原油安を受けて輸
140
入物価の上昇が落ち着き、円安を
120
反映して輸出物価がやや上昇し始
実質実効円相場と交易条件(※)の推移
200
改善
↑
交易条件
↓
悪化
100
交易条件
めている。その結果、これまで悪化
の一途を辿ってきた交易条件は横
円高
↑
円相場
↓
円安
80
実質実効円相場
這いに転じており、理論上は円安
60
が小康状態に入る可能性も示唆さ
(資料)日本銀行 ※輸出物価/輸入物価
85
87
89
91
93
95
97
99
01
03
05
07
09
11
13
15
れている。図示されるように、金融危機後に放置されてきた実質実効円相場と交易条件指数の異様な乖離はここ
にきてほぼ解消しており、円安余地は理論的にも縮小が示唆される。この点、来月以降の見通し作成において、
重要な論点として勘案していきたい。もちろん、原油安は CPI の下落を促すものであり、ハロウィン緩和との整合
性を優先するのであれば、近い将来に追加緩和が予想されるところであり、交易条件が再び悪化に向かう可能性
もある。だが、12 月 9 日付の日本経済新聞朝刊『経済教室』で斎藤誠・一橋大学教授が「経済全体の文脈から離
れた CPI インフレ率の上昇が経済学的な意味をまったく持たないことにも早く気付くべき」と述べているように、そ
もそも CPI の上昇を追求することに本質的な意味があるわけではない(あるとすれば GDP デフレーターの方であ
る)。交易条件改善の恩恵を素直に享受することで、理論的に示唆される円相場の水準は今よりも高いものにな
るだろうし、国民経済の実質所得も改善することになる。
2015 年最大の見どころの 1 つ
なお、⑤は本欄で執拗に指摘している論点だが、2015 年のどこかで通貨政策(政府)と金融政策(日銀)の「捻じ
れ」が修正される可能性はあって、その一環として政府から円安牽制発言が出てくることは必然的に想定し得る。
現状、「円安からやや距離を取る政府」と「円安追求に余念が無い日銀」という構図にあって、今のところは政府が
日銀の QQE を許容しながら、副作用に関しては財政的な円安対策で応急手当するということで凌いでいる。ゆえ
に、「政府が日銀と歩調を合わせている」のが現状かと見受けられる。
2014 年 12 月 26 日
10
みずほ銀行|中期為替相場見通し
しかし、例えば 2015 年 2 月 16 日公表の 10~12 月期 GDP(1 次速報値)が 7~9 月 GDP のように想定外の悪
化となった場合、政府は QQE の維持・強化を容認し続けることができるのだろうか。4 月の統一地方選挙で思った
ほどの戦果を上げられなかったら流石に実質所得の悪化と真摯に向き合わざるを得ないのではないか。何より、
原油価格が再び上昇に転じたらどうするのだろうか。実質賃金悪化が円安経由の輸入物価上昇に起因している
ことを踏まえれば、問題意識を強めた政府はまず円安ペースの減速を考えるだろう。その際、原油が下がったか
ら追加緩和で円安・物価上昇というハロウィン・ロジックはやはり根本から変わらざるを得ないように思われる。リス
ク要因⑤は 2015 年で最大の見どころの 1 つである。
円安が行き過ぎるリスクは・・・?
なお、前月の本欄でも述べたように、新発債の 9 割超を買い入れる QQE2 の直後に消費増税を先送りするという
合わせ技を受けて金融市場では日本国債の CDS や円投・ドル転コストが上昇する動きが見られた。これは額面
通り受け止めれば「日本売り」ということになる。現状、「日本売り」を囃し立てるのは尚早と考える。そもそも世界最
大の対外純資産(2013 年末で 325 兆円)を保有する日本が一夜にしてギリシャ化するということは有り得ない。し
かし、金利を筆頭に為替も株も政策的に演出された部分が少なからず含まれていることを差し引かなければ、そう
した事態の兆候を感じることすら叶わなくなってしまう。
金利は金融緩和で、為替や株は公的年金改革
などを通して需給が歪められている以上、「見え
にくいリスク」を感じようとする姿勢は重要である。
事実として、新発債の 90~95%を中央銀行が購
入するという政策を実施している以上(図)、本当
に「日本売り」が到来した時に、指差されやすい状
況はある。斯かる状況下で求められるのは無用な
疑いを招かない政策運営、端的には消費増税に
QQE2における長期国債購入イメージ
日銀保有国債残高
(2014年11月10日時点)
うち2015年中に償還の国債①
QQE2における年間の長期国債買い入れ②
平成26年度カレンダーベース市中発行額
A
うち短期国債を除く分③
B QQE2で購入予定の長期国債(①+②)
1,870,225
415,838
800,000
1,551,000
1,276,000
1,215,838
(資料)日本銀行、財務省、Bloomberg
代表される財政再建姿勢の維持は絶対に必要なものと感じられる。
QQE2 を決定した 10 月 31 日の金融政策決定会合議事要旨には『この間、何人かの委員は、年間約 80 兆
円の増加ペースで国債買入れを行うとなれば、フローでみた市中発行額の大半を買い入れることになるため、国
債市場の流動性を著しく損なうだけでなく、実質的な財政ファイナンスであるとみなされるリスクが、より高くなると
指摘した』との指摘があった。無論、今の段階で危機を煽る必要はないが、本当にそれがテーマになった時に反
論材料に困るような状況が出来上がりつつあることは留意しておいても良いだろう。
2014 年 12 月 26 日
11
みずほ銀行|中期為替相場見通し
 ユーロ相場の見通し~視野に入ったソブリン QE~
《ECB の金融政策の現状~expectation(期待)以上、target(目標)未満の intention(意思)~》
遅くとも 3 月にはソブリン QE
12 月の ECB 理事会は政策金利である主要リファイナンスオペ(MRO)金利を 0.05%、市場の上限金利となる限界
貸出金利を 0.30%、そして市場の下限金利となる預金ファシリティ金利は▲0.20%で据え置いた。この結果、
ECB が操作対象とする上限金利と下限金利の差であるコリドーも変わらず 0.50%ポイントで据え置かれている。
追加緩和に含みを持たせて現状維持という予想通りの結果だが、俄かに緩和観測を高めていたユーロ相場では
大きく買い戻される動きも見られた。ポイントとしては①バランスシート(B/S)拡大文言の修正、②量的緩和(QE)
の意図が声明文に明記されたこと、③今後の決定は全会一致(unanimous)に拘らないと述べたことであり、これら
が意識される中でユーロ相場の騰勢も徐々に落ち着いた。前回 11 月理事会では「必要に応じて実施する追加措
置を適切なタイミングで準備するよう、ECB スタッフとユーロシステムの担当委員会に指示した」との文言が加えら
れたことが話題になったが、今回も理事会の要請を受けて「必要に応じて適宜導入できるよう、ECB スタッフとユ
ーロシステムの担当委員会がさらなる手段のための技術的準備を進めた」と声明文に記載されている。後述する
ように、早ければ 1 月、遅くとも 3 月にはいよいよ ECB も国債を含む QE に踏み切ることになる。
expectation(期待)以上、target(目標)未満の intention(意思)
今回最も注目される点は 11 月に話題になったばかりの「these asset purchases will have a sizeable impact on our
balance sheet, which is expected to move towards the dimensions it had at the beginning of 2012」との文言がさら
に強化され、「our measures will have a sizeable impact on our balance sheet, which is intended to move towards
the dimensions it had at the beginning of 2012」と変更されたことにある。これは 11 月理事会の会見において「理
事会としては B/S 拡大を期待しているのか。それともそれが起きて欲しいと願っているのか」との質問が出たことと
関連している。要するに、B/S 規模の拡大に関し、能動的に取り組むつもりなのか、それともあくまで政策の結果と
して受動的なものと割り切るのかという論点である。
今回の「expected」から「intended」への変更は明らかにハト派方向のものであり、ドラギ総裁も両者の表現は「違
うものだ」と含みを持たせている。しかし、この変更自体は全会一致ではなかったとされており、ドイツを始めとする
健全国の反対は強かったものと思われる。バイトマン独連銀総裁は 11 月理事会直後に「バランスシートの数字は
期待であり目標ではない」と釘を刺していることから、「expected」との表現に止めたい意思はあったのだろう。ドラ
ギ総裁は「intention は expectation と違うが、まだ target ではない。その中間だ」と非常に微妙な言い回しをしてお
り、これは自身の手足を縛りたくないという意図もあろうが、反対派との調和を重んじた可能性も有りそうである。要
するに intention(意思)とは従前の expectation(期待)以上だが、target(目標)ほど強くはない、ということになるが、
市場としてはあくまで target(目標)と見なす状況に変わりはないだろう。
QE 実施を意図する声明文へ
また、もう 1 つの注目点として「来年(2015 年)初旬に我々の手段の規模、ペースそして構成を変える」といった表
現が声明文に加えられたことは見逃せない。この文言に関し、ドラギ総裁は「これは意味のある文言なので繰り返
す価値がある」と述べている。ドラギ総裁が QE の効果波及チャネルを尋ねられた際、「規模、ペース、構成の 3 つ
の要素がある。それぞれの決定は信用緩和の効果、シグナル効果そしてポートフォリオリバランス効果などを持ち
得る」と述べていることにも現れるように、今回声明文に加えられた当該文言は将来的な QE 実施を意図するもの
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12
みずほ銀行|中期為替相場見通し
と考えて差し支えない。
市場参加者からすれば「来年初旬とはいつなのか」が当然注目され、記者からも「(次回理事会までの)あと 7 週
間で国債購入を含むこの種の政策を決定することができるのか」といった質問が出ている。これに対し、ドラギ総
裁は「初旬は初旬であり、次回理事会ということを意味しない」と述べ、性急な期待を牽制している。あくまで原油
価格の動向やそれが経済動向だけではなくインフレに与える影響などを評価する必要があって、それ次第の決
定である、というのがドラギ総裁の主張である。
なお、12 月中旬にはバイトマン独連銀総裁が「(たとえ原油安でデフレになったとしても)そのような展開は 2 次
的な影響が見られない限り、金融政策による即座の対応を必要とするものではない」としており、原油安によるイ
ンフレ期待低下が QE の根拠にならないことを明言している。これに加えて「この措置が正しくないことを示す経済
的根拠は山のようにある」としてソブリン QE の可能性については一顧だにしないというスタンスを隠していない。
対象資産は?
なお、今後、市場参加者は「広範な資産購入プログラム」への思いを強めていくことになる。この点、ドラギ総裁は
「金以外の全ての資産が対象」と述べており、具体的な言質を与えていない。しかし、恐らくは国債を主軸に社債
も加え、さらには既存の ABS(資産担保証券)やカバードボンドも含めてパッケージ化し、総額を大きく見せる手段
に出る可能性が高いと筆者は見ている。国債は ECB への出資金比率で案分した上で、全ての加盟国国債を対
象とするしかないだろう。なお、特に為替市場の観点からは「金以外と言うことは外国債券も有り得るのか」という
点が必然的な興味として持ち上がるが、この可能性についてドラギ総裁は「何度か別の機会で話し合ったことは
あるが、それは今の機会ではない。為替介入と同義であるため、私は難しいと考えている。もちろん、数回述べて
いる通り、為替レートは成長や物価の安定にとって重要だが政策目標ではないため、我々としてもやりたいとは思
っていない」と述べており、可能性としてはゼロではないものの極めてゼロに近い、というのが現状と見受けられる。
「全会一致に拘らない」と断言している以上、バイトマン総裁のこうした姿勢が特別尊重される筋合いはないのか
もしれないが、これほどの溝を引きずったまま本当に歴史的な一歩を踏み出すのかどうか、筆者は確信が無い。
OMT と QE は何が違うのか
また、記者会見では 2012 年 9 月に無制限国債購入プログラムとして鳴り物入りで導入された OMT(Outright
Monetary Transactions)と QE は何が違うのかという質問も出ている。OMT は実施にあたって厳しい発動条件(具
体的には購入対象の国債発行国における財政再建コミットなど)があるため、QE ではこのような条件付与がある
のかどうか、という質問が出ている。これに対しドラギ総裁は「OMT と QE の違いを丁寧に区別することは極めて重
要である」と述べた上で、OMT はあくまでユーロ圏に係るテールリスクに対応するものであり、特定国のコンフィデ
ンス危機に対応することが必要であるため条件付与が必要になるといったロジックを展開している。
片や、QE はユーロ圏全体のディスインフレに対応するものであって、現状を放置すれば実質金利高になるとこ
ろ(既にゼロ金利制約に直面しているため金利ではなく)、B/S 規模を修正することによって対応するものであると
述べ、あくまで「純粋な金融政策(pure monetary policy)」との理解を披露している。純粋な金融政策ならば OMT
に付与されるような発動条件は不要、ということである。
スタッフ見通しは大幅下方修正
改訂されたスタッフ見通し(次頁表)は大幅下方修正されている。2016 年までの実質 GDP 成長率に関しては 2014
2014 年 12 月 26 日
13
みずほ銀行|中期為替相場見通し
年 /2015 年 /2016 年 に つ い て 、 0.8 %
ECBのスタッフ見通し(2014年12月)
/1.0%/1.5%とされており、各々▲0.1 ポイ
ント/▲0.6 ポイント/▲0.4 ポイントとかなり
きつい下方修正となっている。需要項目
別に見ると、例えば総固定資本形成の下
2013
消費者物価上昇率(HICP)
1. 4
(前回:2014年9月)
実質GDP
▲ 0.4
(前回:2014年9月)
(%)
2014
2015
2016
0. 5~0. 5
0. 2~1. 2
0. 6~2. 0
(0.5~0.7)
(0.5~1.7)
-
0.7~0.9
0.4~1.6
0.4~2.6
(0.7~1.1)
(0.6~2.6)
(0.6~3.2)
方修正が極めて大きく(改訂幅は▲0.4 ポ
消費支出
▲ 0.6
0.8
1.3
1.2
イント/▲1.7 ポイント/▲0.7 ポイント)、域
政府支出
0.3
0.9
0.5
0.4
内需要の弱さは由々しき事態と見受けら
れる。また、輸出の下方修正が大きいこと
も目を引く(改訂幅は+0.1 ポイント/▲1.3
総固定資本形成
▲ 2.5
0.7
1.4
3.2
輸出(財・サービス)
2.2
3.2
3.2
4.8
輸入(財・サービス)
1.3
3.3
3.7
4.9
(資料)ECB、為替レート(ユーロ/ドル)の前提は14年が1.33、15~16年は1.25。
ポイント/▲0.5 ポイント)。これほどユーロ安誘導したにも拘わらず輸出が弱い理由についてドラギ総裁は世界経
済の弱さを挙げ、さらには予測の為替レート前提が現状よりも高めであることにも言及している。前者の理由は分
かるとしても、2015~16 年の想定為替レートは 1.25 であり現状(1.23~1.24)と大きく変わるわけではないため、苦
しい言い訳に聞こえる。
肝心の消費者物価指数(HICP)見通しも引き下げられており、2014 年/2015 年/2016 年について、0.5%/0.9%
/1.3%とされており、2014 年と 2015 年に関し▲0.2 ポイント/▲0.2 ポイントの下方修正となる。「今後 2 年間は 1%
台前半までしか上がらない」という ECB の見通しは、欧州の日本化を考える上でもかなり重く受け止める必要があ
るだろう。こうしたインフレ率見通しを受けて記者からは「(欧州議会で早く動くと言ったのに)何故今日動かないの
か」とった質問も出ており、ドラギ総裁は原油価格下落の影響を見極めたい意向を述べている。だが、本音のとこ
ろでは、現実問題として「次の一手」が枯渇化しつつあるため慎重に考えたい、という思いが強いはずである。
QE は既定路線。問題はいつやるか~3 月メインも 1 月も辞さず~
今回理事会を経て、ECB が国債を対象とする QE を実行に移すことはもはや既定路線となった。あとはいつやる
のか、という問題だけである。本欄では 2015 年 3 月 5 日の理事会を予想している。理由としてはスタッフ見通しが
再び改訂され、2017 年までの HICP 見通しが加えられるため、これが 2%に大きく届かないことを理由に未曾有の
一手に踏み切る、というのが客観的に最も綺麗であるためである。また、2 月には 36 か月物 LTRO の満期が到来
する。12 月中旬時点の未返済残高 2600 億ユーロ弱が 2 月に期落ちするため、「量」を追求する ECB はここで試
練を迎えるはずである。B/S を「3 兆ユーロ」に誘導するための intention(意思)を表明した以上、何かをしなくては
ならない。3 月ならばこうした B/S の規模を踏まえ、QE がどういった形を取ればベストなのかを考えた上で決定を
下すことができる。
もちろん、1 月 22 日の理事会で動く可能性はゼロではない。今回筆者が印象に残ったのはドラギ総裁が「物価安
定からの長期的な乖離について、我々は許容できない(we won’t tolerate prolonged deviations from price
stability)」と述べたことである(同じ旨を 2 度述べている)。物価の安定から乖離(deviate)した状態が長期間続くこ
とがインフレ期待に波及し、中長期のインフレ期待まで押し下げ、実際の中長期のインフレ期待にも影響してしま
う、という懸念である。とすれば、今からあと 3 か月もリードタイムを設けるつもりはないかもしれない。そもそも、ドラ
ギ総裁は QE の決定に関し、「全会一致である必要はない」と断言しており、スピード感を重視している可能性もあ
る。ドラギ総裁は「全会一致にできるように設計はできるが我々には責務があり、物価安定からの乖離を長期間許
容できない」といった旨も述べており、「緩和への焦燥感」は確かに認められる。1 月にサプライズ緩和があると仮
2014 年 12 月 26 日
14
みずほ銀行|中期為替相場見通し
定し、後に振り返った場合、こうしたドラギ総裁の言動がキーフレーズとして思い返される可能性は高い。
《PPP から考えるユーロ/ドル相場の水準感~切り上がる PPP~》
PPP に挑むユーロ/ドル
前 月 の本 欄では ユー ロ/ドル 相場 に関 し 、
1.20 までの下落を想定しているが、今のところ
ユーロ/ドルの購買力平価(※)と実勢相場の推移
(ドル)
1.60
その水準に向かって順当に調整している印象
1.50
である。図示されるように 2000 年代に入り、ユ
1.40
ーロ/ドル相場の下値は基本的に購買力平価
1.30
(PPP)であり、これは現状で 1.20 である。歴史
1.20
的に 1.20 を長時間割り込んだのは相当特殊
1.10
な局面しかない(ユーロ発足当初のみ)。ギリ
1.00
シャ・ショックを受けた 2010 年 6 月にも割り込
んだが、これはあくまで数日間の出来事であ
った。ただ、過去の本欄で主張してきたように、
過大評価
↑
ユーロが・・・
↓
過小評価
?
購買力平価
ユーロ/ドル相場
0.90
0.80
99
00
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
(資料)Datastream、Bloomberg、※消費者物価ベース(99年1月基準)
円化した通貨であるユーロはファンダメンタルズに照らして強いが、内外金利差を背景とするキャリー取引では下
落しやすい。円化は通貨高方向のみならず、通貨安方向にも発症するものであり、この点、筆者の基本シナリオ
に全く変更は無い(みずほマーケット・トピック 2014 年 8 月 4 日号『ユーロ下落時のユーロ円化説の考え方~認識
は変わらず~』をご参照下さい)。円化という経
(99年Q1=100)
験が初めてのものである以上、これまでの経験
則に逆らい、大幅に下落する可能性はメインシ
120
115
ナリオではないとしても、完全否定するもので
110
はない。但し、ユーロ/ドル相場に限らず、名目
105
実効ユーロ相場を見た場合でも(図)、既に長
100
期平均まで収斂し割高感は解消されている。
95
少なくとも長期平均からの上方乖離が ECB 理
事会で懸念されていた頃を思い返せば、割高
感を理由に通貨を押し下げる道理が失われつ
つあるのも事実である。
90
85
80
1999
2001
今後、更にユーロ/ドル相場が押し下げられる
2003
2005
2007
2009
2011
2013
(資料)Bloomberg
(%、前年比)
PPP は切り上がる環境
ユーロ名目実効相場の推移
(太線は1999年以降の平均)
米欧PPIの推移(%、前年比、総合)
8
7
6
可能性はあるにせよ、だからといって欧米物価
5
格差が今後縮小していくと考える向きは少数派
3
米国
ユーロ圏
4
2
だろう。さすれば、PPP は徐々に、しかし確実に
1
切り上がる環境が続くことになる。例えば、12 月
-1
2 日に公表されたユーロ圏 10 月生産者物価指
数(PPI)は前年比▲1.3%で 15 か月連続のマイ
0
-2
-3
11/01
11/07
12/01
12/07
13/01
13/07
14/01
14/07
15/01
(資料)Bloomberg、米PPI(最終需要)は10年11月以降のみで、それに合わせている
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みずほ銀行|中期為替相場見通し
ナスであり、経済の上流段階ではデフレ定着の様相である。これに対して米国の PPI は極めて堅調であり、両者
の物価格差は如何ともし難い状況になりつつある。理論的には、PPP に限って言えば、今後ますますユーロ高方
向の水準調整が進むことになりそうである(前掲図、なお PPI ベースのユーロ/ドル購買力平価は 1.23 付近)。こ
のような状況は程度の差こそあれ CPI で見ても同様である。目先の相場は金融政策などの分かりやすい動きに振
らされやすいが、長期的な相場展望を語る上では、底流にある通貨高要因からも目を逸らすべきではない。
国際為替部
チーフマーケット・エコノミスト
唐鎌 大輔(TEL:03-3242-7065)
[email protected]
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連絡なしに変更されることもあります。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願い申し上げます。また、当
資料の著作権はみずほ銀行に属し、その目的を問わず無断で引用または複製することを禁じます。
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