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コケイン報告書 22年度page
厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針 作成のための研究 平成22年度 総括・分担研究報告書 研究代表者 久保田 雅也 平成23(2011)年3月 目次 [I] 総 括 研 究 報 告 書 ・・・・・2 コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究 研究代表者 久保田雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長 [II]分 担 研 究 報 告 書 1.コケイン症候群の発生頻度 ・ ・ ・ ・ ・ 6 分担研究者 久保田雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長 2.遅発型(3型)コケイン症候群の臨床経過 ・ ・ ・ ・ ・ 8 分担研究者 久保田雅也, 分担研究者 星野英紀 国立成育医療研究センター神経内科 医員 研究協力者 柏井洋文、太田さやか、寺嶋宙 国立成育医療研究センター神経内科 フェロー 3.コケイン症候群患者由来培養細胞における紫外線抵抗化生理因子の解析 ・・・・12 分担研究者 杉田克生 千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門 教授 研究協力者 喜多和子 千葉大学大学院医学研究院 環境生化学講座 講師 4.コケイン症候群の中枢神経病理所見、および他の臓器病理所見の解析 ・・・・15 分担研究者 林 雅晴 東京都神経科学総合研究所神経発達・再生 副参事研究員 5.コケイン症候群の分子遺伝学的解析 ・ ・ ・ ・ ・ 1 9 分担研究者 森脇真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 教授 6.XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状に関する研究 ・ ・ ・ 2 2 分担研究者 中根裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲノム形態学分野 助教 7.コケイン症候群の酸化ストレスマーカー解析 ・ ・ ・ ・ ・ 2 4 分担研究者 田沼直之 都立府中療育センター 小児科 医長 8.コケイン症候群における不随意運動の検討 ・ ・ ・ ・ ・ 2 7 分担研究者 熊田聡子 都立神経病院 神経小児科 医長 9.軽症型コケイン症候群の分子遺伝学的な検討 ・ ・ ・ ・ ・ 3 0 分担研究者 立石 智 熊本大学 発生医学研究所 発生制御部門 講師 [III] 研 究 成 果 の 刊 行 に 関 す る 一 覧 表 ・ ・ ・ ・ ・ 3 4 [IV] 参 考 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ 3 9 「 コ ケ イ ン 症 候 群 ( CS) の 集 い 2010」 資 料 [V] 班 員 名 簿 ・ ・ ・ ・ ・ 4 2 [VI]研 究 成 果 ( 論 文 ) 抜 粋 ・ ・ ・ ・ ・ 4 3 1 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) [I]総括研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」 研究代表者 久保田雅也 (国立成育医療研究センター神経内科 医長) 研究要旨 コケイン症候群(CS)を対象とし以下の研究を行った。(1)CS の日本における発生 頻度の検討、(2)CS の診療実態と死亡原因の詳細の検討、(3) CS の治療とケアの指針作成の ための資料解析、(4) CS の基礎的病態の解明を目的に全国実態調査の解析、および神経病理、 分子生物学、分子遺伝学、細胞生物学、神経生理学などの手法を用い CS の臨床実態と基礎 的病態にせまる成果をあげることができた。この成果は今後の CS の「包括的診断・治療およ びケア指針」作成につながると考えられる。 分担研究者 な症状が出現するため小児科、皮膚科、眼科、 (1)杉田克生 千葉大学教育学部養護教育学基 耳鼻科、リハビリ科、整形外科、泌尿器科など 礎医科学部門 教授 が協力して診療にあたるべき疾患である. 今 (2)林雅晴 財団法人東京都医学研究機構 東 回の本研究班の目的としては(1)CS の日本にお 京都神経科学総合研究所 副参事研究員 ける発生頻度の検討、(2)CS の診療実態と死亡 (3)森脇真一 大阪医科大学感覚器機能形態医 原因の詳細の検討、(3) CS の治療とケアの指針 学講座皮膚科学 教授 作成、(4) CS の基礎的病態の解明があげられる。 (4)中根裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学 これらにより CS 患者の QOL 改善と一般の疾病 講座ゲノム形態学分野 助教 理解、治療ケア体系の確立をめざすものである。 (5)立石智 熊本大学 発生医学研究所 発生制 B.研究方法 御部門 講師 本研究班の活動は上記目的中(1)-(3)のよ (6)田沼直之 都立府中療育センター小児科 医 うな全体の研究活動とともに個々の研究分 長 担者による(4)に関る研究より成り立つ。 (7)熊田聡子 都立神経病院神経小児科 医長 (1)-(3)に 関 し て 21年度の厚生労働科学研 (8)星野英紀 国立成育医療研究センター神経内 究費補助金(難治性疾患克服研究事業)「コ 科 医員 ケイン症候群の実態把握および治療とケアの 指針作成ための研究」において我が国の小児科 A.研究目的 臨床研修病院、療育施設、計921病院にCSの診 コケイン症候群(CS)(は常染色体劣性遺伝形 療の有無と死亡例調査を行い、回収率73.2%で 式での DNA 修復の異常を原因とする稀少難病で CS生存例34名、死亡例39名という結果をえた。 あるが、古典型とされる CS1型、新生児期より さらにCS生存例34名、死亡例39名の診療実態と 発症する重症型とされる CS2型、より軽症の経 死亡に至る経過の詳細を二次調査により尋ね 過をたどる CS3型、および色素性乾皮症-コケ た結果CS生存例17名(CS1型14名、CS3型3名)、 イン症候群(XP-CS)に分類される。いずれも 死亡例15名(CS1型13名、CS2型2名)、合計 著名な低身長、低体重、小頭を呈し、視力障害、 32名の臨床経過が集積された。これらのデータ 聴力障害、中枢神経および末梢神経障害の進行 を詳細に解析検討することにより(1)CSの日本 により重度の精神運動発達遅滞を合併し、多様 における発生頻度の検討、(2)CSの診療実態と 2 死亡原因の詳細の検討、(3) CSの治療とケアの る CS12 例の死亡時平均年齢 12.9 才よりも高く 指針作成をすすめた。 なっている。同報告書では死亡原因は 14 例中 6 (4)に関して 中枢神経病理所見(視床下部 例が腎不全であった。今回の死亡時平均年齢の 障害)と体温調節障および睡眠障害の解析、患 上昇がどのような原因であるのかは不明だが 者由来培養細胞における紫外線抵抗化生理因 腎不全以外の呼吸循環、栄養管理など日常のケ 子の解析、各種DNA修復試験、分子生物学的 アが影響していることが推定された。 手法を駆使したCS確定診断法の樹立、XPG 腎機能データの記載のあった1型死亡例 12 nullマウスにおけるコケイン様臨床症状に関 例(平均 18.8 才、14-27 才)の BUN は平均 する検討、神経症状発症や早発老化における酸 47.3mg/dl(17.4-132, 中央値 38.5) ,Cr は平 化ストレスの関与の検討、不随意運動の神経生 均 2.8mg/dl(0.44-10, 中央値 0.97)と著明な 理学的解析により(4) CSの基礎的病態の解明に 腎機能低下を認めた。1型1例のみで 26 才よ 関する研究を行った。 り腎不全に対し腹膜透析が施行されたが 27 才 (倫理面での配慮) で腎不全が進行し死亡している。これに対し1 全ての研究は、研究参加者の自発的な同意に基 型生存例 16 名の平均年齢は 22.3 才、平均体重 づくことを前提とし、必要に応じ研究者所属機 は 19.5kg、腎機能低下は 1 名のみであった。生 関の倫理委員会の承認を得て行った。詳細は各 存例では歩行可能 10 名中 8 名、有意語 10 名中 分担研究報告書を参照。 7 名を認めたが、死亡例では歩行可能 12 名中 6 C.研究結果 名、有意語 12 名中 6 名とわずかだが差を認め (1)CS の日本における発生頻度の検討 た。約半数の1型 CS の予後や QOL に腎不全が 全国調査における CS の発生頻度は 100 万出 大きく影響していることがわかる。今回は腎機 生あたり 1.72 と判明した。患者数の実態を反 能低下の詳細な経過は不明であった。腹膜透析 映していないと思われる 1960 年代を除外する 等の治療介入の是非や時期の検討とともに腎 と 100 万出生あたり 2.10 となり、1980 年以降 不全の基本的病態や進行のマーカーの検討が で計算するとこれは 2.57 となる。今回の調査 今後の課題である。 の不十分性を考慮すると CS 発生頻度は日本に (3) CS の治療とケアの指針作成 おいては西ヨーロッパにおける値 2.7 よりもや 全国調査において約 8 割の患者が小児科以外 や少ないが大きくは変わらないといえる。(久 に、拘縮予防や良姿位維持のためのリハビリ科、 保田) 齲歯治療のための歯科口膣外科、腎不全、高血 (2)CS の診療実態と死亡原因の詳細の検討 圧のための腎臓内科、糖尿病などのための内分 二次調査によるとコケイン症候群生存例 17 泌科、難聴フォローのための耳鼻咽喉科、視機 名(CS1型 14 名、CS3型 3 名)、死亡例 15 名 能フォローのための眼科、てんかん発作のため (CS1型 13 名、CS2型 2 名)、合計 32 名の臨 の小児神経科、療育施設での全身管理など多く 床経過が集積され、CS2型および CS3型の発症 の科でのフォローを受けていることが判明し 頻度は CS1型の1割以下であることが判明し たが、その包括化、体系化の必要性が重要と思 た。死亡例 15 名の死亡時平均年齢は 18.3 才、 われた。その中で治療とケア指針作成のための 平均体重は 8.4kg と著明な成長障害を認め、8 重要な項目を1.診断・経過フォローのための 名は著明な腎不全が死因に関係し、4 名は重症 チェック項目および2.長期フォロープログラ 肺炎が死因であった。拡張型心筋症が 2 名にみ ムとして以下にあげた。 られた。今回の死亡時平均年齢は平成5年度長 1.診断・経過フォローのためのチェック項目 寿科学総合研究報告書「早老症の疫学」におけ 1.体重、身長、頭囲の測定 3 2.精神・運動発達の評価 メカニズムに、annexin II のカルシウム依存的な細 3.齲歯の評価 胞膜への結合と phosphatidylinositol 3-kinase を介 4.日光過敏症など皮膚科的評価 するシグナル伝達系が関与することが示唆され 5.白内障、網膜色素変性症、視機能など眼科的 た。(杉田、喜多) 評価 コケイン症候群(CS)患者では睡眠異常、体温 6.ABR での聴力評価 調節障害が合併する。CS の視床下部障害を明ら 7.頭部 CT および MRI かにし、治療法を考案するため、アンケート調査、 8.貧血の有無 剖検脳での視床下部評価、melatonin 代謝物の尿中 9.腎機能・肝機能の評価 排泄に関する ELISA 定量を進めた。5例のアンケ 10.糖尿病の有無のチェック ート解析では体温調節障害が睡眠障害より多く 11.骨格系の評価 みられた。また、高度の萎縮を示す4CS 剖検脳 12.末梢神経障害評価のための神経伝導検査 の視床下部で亜核の形成が確認された。さらに睡 2.長期フォロープログラム 眠制御に重要な役割を担うメラトニンの代謝物 1.精神発達遅滞の評価と個別対応による教育 の尿中排泄が低下している可能性が示唆された。 プログラム (林) 2.歩行もしくは移動機能促進および良姿位維 コケイン症候群(CS)など紫外線性DNA 持のための理学療法 修復異常で発症するすべての遺伝性光線過敏 3.成長障害に対する栄養計画 症に対する本邦唯一の診断センターを本年度 4.筋緊張亢進、振戦に対する薬剤投与 も研究分担者の施設で維持し、各種DNA修復 5.聴力障害に対する評価と補聴器などの治療 試験、分子生物学的手法を駆使して本年度は新 6.白内障、角膜びらん、視機能の評価と治療 規に3例のCSを確定診断した。さらにCSが 7.皮膚の日光過敏症に対する日焼け止めクリ 疑われて本年度に依頼のあった3症例につい ーム、サングラスの使用 ては 1 例は非CSであることが判明し、2 例に 8.齲歯予防のための徹底した歯科的ケア 関しては現在解析中である。CSBと確定した 9.腎機能、肝機能フォロー 遅発型の 1 症例では新規変異がヘテロにみられ 10.高血圧フォローと治療 (C229T /3549delG)、前者の変異は皮膚症状の 11.睡眠障害に対する評価と薬物療法の検討 みしか呈さない他の稀な遺伝性疾患; 12.体温調節障害の評価と対策の検討 UV-sensitive syndrome (UVSS)に見られ 23 年度には上記項目の詳細を診断・治療とケ たものと同様であった。この結果はCSBとU アの指針として総合的に検討報告する予定で VSSの異同を考察する上で興味深い。CS相 ある。 補性試験の高感度化に向けた評価系の検討も (4) CS の基礎的病態の解明 現在進行中である。(森脇) 様々な視点から CS の基礎的病態に迫る研究 XPG null マウスは、成長障害、小脳失調症状、 がなされた。 コケイン症候群(CS)患者におけ 短寿命を示しコケイン症候群のモデルと考え る紫外線(UVC)致死感受性を軽減化(UVC 耐 られていて小脳の発育不全、皮下脂肪の欠如が 性化)するヒト生体内生理活性因子の探索を目指 観察された。最近、XPG null マウスの歩行異常 し、annexin II の作用を調査した。その結果、不死 に関与する関節の異常を見いだし、XPG null マ 化 CS 細 胞 ウスがコケイン症候群の関節拘縮モデルとし (CS3BES お よ び CS1ANS) を recombinant annexin II で前処理すると、紫外線致 ての可能性が示された。(中根) 死耐性化することを見出した。その致死抵抗化の 蛍光試薬を用いる簡易細胞診断法により、2 4 例のコケイン症候群が疑われる患者様由来の 並行して稀少難病としてのコケイン症候群を 繊維芽細胞を用いて、細胞診断を行った。細胞 医療者や一般に周知してもらうために 2010 年 診断は、紫外線に対する感受性試験、不定期 DNA 10 月 30-31 日「CS の集い 2010」を開催した。 合成試験(UDS)、RNA 合成回復試験(RRS)の 3 つ (参考資料参照)また本研究班の活動をより広 の基準により行った。2 例ともコケイン症候群 く知ってもらうために今年度中に本研究班の であると診断した。簡便で定量的な手段により、 ホームページを立ち上げる予定である。医療者 信頼性の高い診断を行うことができた。 (立石) の知らないことから来る診断の遅れや患者家 コケイン症候群(CS)患者は小頭症、小脳失 族の知られていないことから来る無用の心理 調、感音性難聴、末梢神経障害など多彩な神経 的負荷の軽減に役立つと考えている。 症状を呈する。CS の神経症状の発症に酸化スト レスが関与していることを明らかにし、治療法 D. 考察 を考案するため、CS 患者の尿中酸化ストレスマ 本研究班では今年度全国調査によるコケイ ーカーの ELISA 定量と、剖検脳での DNA 特異的 ン症候群の臨床実態の検討および基礎的な病 な酸化ストレスマーカー(thymidine glycol、 態に迫る研究を総合的に行うことができた。来 TG)の神経病理学的解析を進めた。CS における 年度はこれらをさらに進化.統合させさせ、診 TG 沈着に関する剖検脳での染色により、大脳基 断・治療およびケア指針を作成する予定である。 底核・小脳変性における DNA 酸化ストレスの関 E. 結論 与が示唆された。(田沼) コケイン症候群の臨床実態の検討および基 コケイン症候群症例に見られる不随意運動 礎的な病態に迫る研究を行うことができ「包括 について解析した。従来の報告よりも低年齢か 的診断・治療およびケア指針」作成につながる ら、前腕及び手指に振戦様の不随意運動が見ら 成果が出せた。 れ、手指を捻転または過伸展させるアテトーゼ F.健康危険情報 様運動が混在した。同時記録した表面筋電図で 特になし はミオクローヌスにジストニアの混在する所 G.研究発表 見が示された。小脳性失調症の治療薬である 「研究成果の刊行に関する一覧表」参照 TRH 製剤を投与した 2 例において、振戦様不随 H.知的財産権の出願・登録状況 意運動の軽減が見られた。コケイン症候群の神 なし 経病変は、大脳白質・小脳・基底核・末梢神経・ 1.特許取得 脳幹・脊髄と多巣性であるが、主病変の一つで なし ある小脳萎縮が不随意運動の発現に関与して 2.実用新案登録 いる可能性が示唆され、今後治療法を検討する なし 上で重要な所見と考えた。(熊田) 3.その他 以上のように多彩な視点からコケイン症候 なし 群の病態が解析され今後のさらなる研究の進 化が待たれる。 以上の臨床および基礎医学的な研究遂行と 5 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) [II]分担研究報告書 研究課題:コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」 1.コケイン症候群の発生頻度 研究要旨 コケイン症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾患であり、頻度は 100 万人に 1 人程度のまれな疾患 とされるが正確な発生頻度については不明である。今回昨年度の本研究班の全国調査データを基に CS の発生頻度を解析,検討した。今回の全国調査において CS の発生頻度は 100 万出生あたり 1.72 と判明した。患者数の実態を反映していないと思われる 1960 年代を除外すると 100 万出生あたり 2.10 となり、1980 年以降で計算するとこれは 2.57 となる。今回の調査の不十分性を考慮すると CS 発生頻度は日本においては西ヨーロッパにおける 100 万出生あたり 2.7 よりもやや少ないが大きく は変わらないといえる。 分担研究者 C.研究結果 久保田雅也 (国立成育医療研究センター神経 32 名中臨床経過および出生年月日の明らかな 内科 医長) 31 名の5年ごとの出生年を表にまとめた。(1 名 は年齢不明のため除外した) また厚生労働省平 A.研究目的 成 21 年人口動態統計の年間推計中の第 1 表人口 コケイン症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾 動 態 総 覧 の 年 次 推 移 (http://www.mhlw.go. 患であり、頻度は 100 万人に 1 人程度のまれな jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei09/index 疾患とされるが正確な発生頻度については不 .html)より年間出生数を求め、出生 100 万人あ 明である。今回昨年度の本研究班の全国調査デ たりの CS 発生頻度を計算した。 ータを基に CS の発生頻度を解析,検討した。 B.研究方法 年 n/5 年 n/100 万出生あたり 2005 1 0.94 療育施設合計921病院にCS生存例および過去 2000-2004 4 0.696 の死亡例についての一次調査を行い合計674 1995-1999 4 0.671 病院から回答を得た(回収率は73.2%)。こ 1990-1994 3 0.494 の結果CS生存例34名、死亡例39名、合計73名と 1985-1989 9 1.339 いう結果が判明し患者有りとの回答を得た病 1980-1984 5 0.656 院・施設に臨床経過の詳細を尋ねる二次調査 1975-1979 2 0.226 票を実施した。その結果、CS生存例17名(CS 1970-1974 2 0.198 1型14名、CS3型3名)、死亡例15名(CS1型 1965-1969 0 0 13名、CS2型2名)、合計32名の臨床経過が集 1960-1964 1 0.122 平均 3.1 0.534 全国の小児科臨床研修認定施設、小児病院、 積された。この結果を基にCSの発生頻度を産出 した。 表 今回の全国調査でのコケイン症候群の5年ご (倫理面での配慮) 研究遂行に際し、臨床研究 との発生人数および 100 万出生あたりの発生人数 に関する倫理指針を遵守した。 6 2005 年以降は 2005 年の1名のみの診断であ 先に述べた今回の調査の不十分性を考慮する りこの例に限って 2005 年出生数から 100 万出 と CS 発生頻度は日本においては西ヨーロッパ 生あたりの発生頻度を求め、他はある年に実際 におけるよりもやや少ないが大きくは変わら は偏っていても当該5年間での 100 万出生あた ないといえる。 りの発生頻度を求めた。2005 年以降はおそらく E. 結論 未診断例があると思われ 2005 年以降1人とす 今回の全国調査において CS の発生頻度は 100 ると過小に見積もる可能性があるからである。 万出生あたり 1.72 と判明した。1980 年以降で 全国調査のデータから計算すると 100 万出生あ これを計算するとこれは 2.57 となる。 たりの CS の発生頻度は 0.534 となった。 今回の調査の不十分性を考慮すると CS 発生 これをもとに一次調査を行った病院・施設に 頻度は日本においては西ヨーロッパにおける 全ての CS 患者が関っている、および二次調査 発生頻度 2.7 よりもやや少ないが大きくは変わ で回答の来なかった 73 名中 41 名の年齢分布が らないといえる。 今回の 31 名と同じであるという2つの仮定の 文献 下に出生 100 万あたりの CS 発生頻度を求める (1) Kleijer WJ et al. Incidence of DNA repair と(0.534/0.732)x(73/31)= 1.72 となる。(0.732 deficiency は一次調査の回収率) Xeroderma pigmentosum, Cockayne syndrome 今回の全国調査では CS の発生頻度は 100 万 and trichothiodystrophy. DNA Repair (Amst). 出生あたり 1.72 である。患者がほとんど把握 2008;7:744-50. disorders in western Europe: できなかった 1960 年代を除外すると 100 万出 F.健康危険情報 生あたり 2.10 となる。1980 年以降で計算する 特になし とこれは 2.57 となる。 G.研究発表 D. 考察 1.論文発表 CS の発生頻度は 100 万人に1人とされていた 1) 古山晶子、久保田雅也 Cockayne 症候群の運動 が本邦での実体は不明であった。今回の全国調 発達 「ここまでわかった小児の発達」五十嵐隆、 査の結果 100 万出生あたり 1.72 という結果が 久保田雅也 編集 中山書店 2010 pp170-173 出たが、いくつか注意が必要である。大半の CS 2) 久保田雅也 ヒトの随意運動の発達 「ここまで は小児科領域でのフォローがなされるであろ わかった小児の発達」五十嵐隆、久保田雅也 編集 うが今回の調査には成人神経内科でのフォロ 中山書店 2010 pp2-6. ーや小児科以外でのフォロー(整形外科、リハ 2.学会発表 ビリ科、眼科,耳鼻科,皮膚科)のみの患者は 1) 平成 23 年小児神経学会で発表予定。 把握されていない可能性がある。また低年齢で H.知的財産権の出願・登録状況 の診断の困難さがあり最近5年間の少なさは なし おそらく未診断が影響していると考えられる。 1.特許取得 また 1960 年代での患者数は実態を表している なし とはいえないであろう。1960 年代を除外すると 2.実用新案登録 100 万出生あたり 2.10 となった。また 1980 年 なし 以 降 で 計 算 す る と こ れ は 2.57 と な っ た 。 3.その他 Kleijer et al(1)によると西ヨーロッパにおけ なし る CS の発生頻度は 100 万出生あたり 2.7 であ る。これは今回の我々の得た値よりも大きい。 7 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) 分担研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」 2.遅発型(3型)コケイン症候群の臨床経過 研究要旨 コケイン症候群は発症年齢と症状の重篤度により、古典型(1 型)と重症型(2 型)とに分けられて いたが、近年、より軽症で発症年齢の遅い 3 型の報告がなされている。今回昨年度の本研究班の全 国調査データの中から3例の3型患者を抽出しその臨床経過の詳細を検討した。3型は他の型と比 較し 1.発症が遅い(症状の顕在化が遅い) (10 代中盤以降)。2.歩行困難になる年齢が遅い(20 代後半)。 3.自力歩行可能で通常の運動能力を示す時期が少なくとも10代中盤ー後半までは続き、その後ゆっく り退行する。4.日常会話は(ある程度)可能な時期がある 。5.齲歯が目立たない 。6.特徴的顔貌が初 期には目立たない。7.日光過敏性は顕在化しにくい。8.発症は遅いが中枢神経、末梢神経、腎臓、視覚, 聴覚の病変は他の型と同様に徐々に出現する。腎機能低下は軽度にとどまる。等が特徴であった。1例 は CT 上大脳の石灰化を欠いており文献的にも 20 代での知的レベルがかなり保たれている場合同様 の報告がある。コケイン症候群3型の表現型は多彩であるが進行が緩徐であることは共通しており 人種による特異的な差はなく遅発性発症に関る遺伝子の関与が想定される。 分担研究者 イン症候群の臨床経過の詳細を検討した。 久保田雅也 (国立成育医療研究センター神経 B.研究方法 内科 医長) 全国の小児科臨床研修認定施設、小児病院、 星野英紀 (国立成育医療研究センター神経内 療育施設合計 921 病院にコケイン症候群生存例 科 医員) および過去の死亡例についての一次調査を行っ 研究協力者 柏井洋文、太田さやか、寺嶋宙 た。患者有りとの回答を得た病院・施設に臨床 (国立成育医療研究センター神経内科 フェロ 経過の詳細を尋ねる二次調査票を実施 した。そ ー) の結果、コケイン症候群生存例 17 名(CS1型 14 名、CS3型 3 名)、死亡例 15 名(CS1型 13 A.研究目的 名、CS2型 2 名)、合計 32 名の臨床経過が集積 コケイン症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾 された。この生存例の中で3名の遅発型(3型) 患であり、頻度は 100 万人に 1 人程度とまれな コケイン症候群を他の型と比較し臨床的特徴 疾患とされる。近年、DNA 修復機構の一つであ を抽出した。3例のうち2例は双胎で現在 31 才 るヌクレオチド除去修復異常、特に転写と共役 の女性、他の1例は 46 才男性であった。 した DNA 修復の異常であることが明らかになっ (倫理面での配慮) ている。発症年齢と症状の重篤度により、古典 研究遂行に際し、臨床研究に関する倫理指針を遵 型(1 型)と重症型(2 型)とに分けられていたが、 守した。 近年、より軽症で発症年齢の遅い 3 型の報告が C.研究結果 なされている。今回はこの遅発型(3型)コケ (1) 症例1、2 双胎2例(31 才女性)の経 8 過(2人ともほぼ同様の経過をとった):四人姉 振なし、眼球運動正常、自力での立位、座位保 妹の次女、三女として双胎、未熟児で出生(詳細 持不可、四肢の筋緊張亢進あり。rigidity あり。 は不明)。乳幼児期の発達歴に異常なし。小学校 足関節拘縮、変形あり。振戦あり、上肢に 低学年までは運動能力も正常だった。小学校高学 dystonia 様の不随意運動あり。深部腱反射は消 年より、マラソンで最下位になるなど運動が苦手 失、Babinski 反射陽性、食事は全量経口摂取可 となり、歩行時の軽いふらつき、上肢振戦が徐々 能 で あ る が 摂 取 量 は 落 ち て き て い る 。 BUN に出現し、学業成績も落ちてきた。姉妹で同様の 76.3mg/dl、Cr 1.63mg/dl、UA 11.0mg/dl、Na 経過をたどったが、妹のほうがやや症状は先行し 131mEq/l、K 6.2mEq/l、Cl 105mEq/l(以上姉 ていた。 のデータ)と腎機能の著明な低下を認めた。尿 タンパク(3+)、尿潜血(3+)であった。膀胱バル ーンカテーテルを留置したところ、混濁した血 尿が大量に排泄された。輸液とバルーンカテー テル留置のみで尿性状、血液データは速やかに 改善した。エコー、CT にて膀胱壁の著明な肥厚 を認めた。妹も右優位の両側水腎症、水尿管、 膀胱の著明な拡大を認めた。また、血液検査に て同様の腎機能低下もあり、姉と同様、腎後性 腎不全と考えられた。原病による末梢神経障害 のため、下位型の神経因性膀胱になり、膀胱排 尿筋の収縮不全があり、残尿の増加に対し、長 図1 皮膚線維芽細胞の紫外線感受性 期間にわたって不十分な圧迫排尿が行われた ことにより、炎症性の膀胱壁の肥厚と腎後性腎 短大入学時歩行時ふらつきが顕在化し,精査を 不全を引き起こしたと考えられた。バルーンカ 受けるも診断には至らず、脊髄小脳変性症の疑い テーテル留置のみで速やかに尿所見、血液検査 でフォローされていた。頭部 CT,MRI 上基底核石 所見が改善したことから、腎機能自体は保たれ 灰化、大脳半球、脳幹,小脳に著明な萎縮を認め ていたといえる。2例ともバルーンカテーテル る。徐々に特異顔貌が明らかとなり、 24 歳時、 留置、抗生剤持続投与を行い、現在月に1回取 皮膚線維芽細胞の紫外線感受性試験を行 ったと り替えている。腎機能は正常、尿路感染もなく ころ、CS1型と正常コントロールの中間の感受 過ごしている。 性を示したため臨床症状と合わせて CS 遅発型 30 才で2人とも初めて齲歯の処置と抜歯を (3型)と診断した(図1)。24 才時、筋トーヌ 行った。齲歯は CS において早期から出現し、 スは上下肢でやや低下、深部反射は上下肢で低 唾液分泌の低下が原因とされるが、2人とも唾 下,Babinski 反射陰性、上下肢深部感覚障害 液分泌はむしろ多いことが特徴であった。 あり、関節抗縮が進行し(尖足、肘外反)、28 30 才過ぎから2人ともそれまで問題なかっ 才で歩行困難,車いす使用となった。28 才時尿 た睡眠リズムが不安定となり、夜間覚醒、不穏、 閉、腎後性腎不全のため2人とも入院。入院時 昼間の気分障害が顕在化した。リスパダール少 所見として体重 31kg でるいそうあり。ある程 量により一時不眠,不穏は消失したが意欲や活 度の会話、意思疎通は可能、発語は断綴性でゆ 動性が低下したため、てんかん発作はないもの っくり、構音は不明瞭。典型的な Cockayne 様 の脳波異常はあるためバルプロ酸を投与した 顔貌あり。皮膚は薄く粗造で乾燥している。眼 ところこれらは改善した。 9 (2)症例3 46 才男性の経過 視覚,聴覚の病変は他の型と同様に徐々に 在胎週数 40 週、3000g で出生、仮死があっ 出現する。腎機能低下は軽度にとどまる。 たが詳細は不明。歩行開始1才3か月、有意語 等があげられる。 は1才すぎから出現。幼児期から知的障害はあ ったが日常会話は可能であった。歩行は不安定 D. 考察 であった。10 才過ぎから聴力が徐々に低下する 遅発型、軽症型、成人型などと分類されるコ も 20 代まで自転車でパチンコ屋へ通うことも ケイン症候群3型は今回の双胎例の紫外線感 できた。30 代から運動期機能、知的機能が低下、 受性に象徴されるように他の型と比較し病態 視力障害も出現した。41 才で療育施設に入所、 は同じだとしても進行が緩徐であることが特 既に寝たきりだったが発語はわずかにあり。入 徴である。発症は遅く,進行は緩徐であるがほ 所後食事摂取量増加に伴い糖尿病を発症。入所 とんどの末梢神経および中枢神経系の障害は 前より高血圧があったが現在(46 才)は無治療 いずれ顕在化する。しかし他の型で死因にもな で経過。また尿中アルブミン高値、クレアチニ り え る 腎 臓 病 変 は 軽 度 で あ る 。 Miyauchi et ンクリアランスの低下があり低形成腎の可能 al.(1)は 55 才と 42 才のコケイン症候群兄弟例 性あり。現在発語もなくほとんど無反応である (相補群 B)を報告している。兄は日光過敏性 が経口摂取は可能である。現在身長 130cm,体重 を有しているが特異的顔貌、齲歯、小頭もなく、 30.1kg 頭囲 50.2cm、くぼんだ眼、まばらな毛 軽度難聴があり IQ70、CT 上脳萎縮はあるも 髪、薄い皮膚、発汗低下、体温調節障害、白内 石灰化なし、軽度痙性があり、安静時右手と頭 障、涙液分泌低下、難聴(ABR は 100dB でも無反 部に振戦を認めている。弟は日光過敏性を有し 応)、齲歯など CS に特徴的な徴候を認めるが日 小頭で CT 上基底核石灰化があり、軽度痙性、 光過敏性の記載はなく、また頭部 CT 上石灰化 尖足、同様の振戦を認め IQ<60と臨床的には はない。脳幹を含めた中枢神経系全体の萎縮を 兄より重い。2人とも低身長、糖尿病罹患はあ 認める。下肢深部反射は低下̶消失、病的反射 るが腎機能低下は記載なし。今回臨床経過を報 は認めず、足関節の拘縮を認める。けいれん発 告した症例3コケイン症候群 46 才男性は頭部 作の既往があり(詳細不明)抗てんかん薬を服 CT 上石灰化を認めていないが中枢神経系全般 用中である。 の萎縮はある。Kennedy et al.(2)も脳の石灰 化を欠くコケイン症候群 25 才女性を報告して 以上の3例からコケイン症候群3型の特徴 いる。この患者は日光過敏性、低身長、特徴的 の特徴としては な顔貌、小頭、難聴、振戦があり IQ7865 で 発症が遅い(症状の顕在化が遅い) (10 あった。Miyauchi et al.(1)の 55 才男性、 代中盤以降)。 Kennedy et al.(2)の 25 才女性と今回の症例3 2. 歩行困難になる年齢が遅い(20 代後半) はいずれも CT 上大脳の石灰化を欠いているが 3. 自力歩行可能で通常の運動能力を示す時 共通するのは 20 代での知的レベルがかなり保 期が少なくとも10代中盤ー後半までは たれていることである。今回報告した症例1、 続き、その後ゆっくり退行する。 2の基底核石灰化がいつ出現したかは確認し 4. 日常会話は(ある程度)可能な時期がある 。 えていないが3型の中でも基底核石灰化を欠 5. 齲歯が目立たない 。 く症例がありコケイン症候群において知的障 6. 特徴的顔貌が初期には目立たない。 害が重くない場合基底核石灰化は必ずしも診 7. 日光過敏性は顕在化しにくい。 断の必須条件にはならないといえる。コケイン 8. 発症は遅いが中枢神経、末梢神経、腎臓、 症候群3型の表現型は多彩であるが進行が緩 1. 10 徐であることは共通しており人種による特異 G.研究発表 的な差はなく遅発性発症に関る遺伝子の関与 1.論文発表 が想定される。 1) 古山晶子、久保田雅也 Cockayne 症候群の 運動発達 「ここまでわかった小児の発達」五 E. 結論 十嵐隆、久保田雅也 編集 中山書店 2010 コケイン症候群3型は今回の双胎例の紫外 pp170-173 線感受性に象徴されるように他の型と比較し 2) 久保田雅也 ヒトの随意運動の発達 「こ 病態は同じだとしても進行が緩徐であること こまでわかった小児の発達」五十嵐隆、久保田 が特徴である。発症は遅く,進行は緩徐である 雅也 編集 中山書店 2010 pp2-6. がほとんどの末梢神経および中枢神経系の障 害はいずれ顕在化する。 腎機能低下は軽度にと 2.学会発表 どまる。知的障害が重くない場合基底核石灰化 1) 平成 23 年小児神経学会で発表予定。 を欠く場合もある。3型表現型に人種による特 異的な差はなく遅発性発症に関る共通の遺伝 H.知的財産権の出願・登録状況 子の関与が想定される。 1.特許取得 なし 文献 2.実用新案登録 (1) Miyauchi H, Horio T, Akaeda T, et al. Cockayne syndrome なし in two adult siblings. J Am Acad Dermatol 1994;30:329–335. 3.その他 (2) Kennedy RM, Rowe VD, Kepes JJ. Cockayne syndrome: なし An atypical case. Neurology 1980;30:1268–1272. F.健康危険情報 なし 11 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」 3.コケイン症候群患者由来培養細胞における紫外線抵抗化生理因子の解析 研究要旨 コケイン症候群(CS)患者における紫外線(UVC)致死感受性を軽減化(UVC 耐性化)する ヒト生体内生理活性因子の探索を目指し、annexin II の作用を調査した。その結果、不死化 CS 細 胞 (CS3BES および CS1ANS)を recombinant annexin II で前処理すると、紫外線致死耐性化するこ とを見出した。その致死抵抗化のメカニズムに、annexin II のカルシウム依存的な細胞膜への結合 と phosphatidylinositol 3-kinase を介するシグナル伝達系が関与することが示唆された。 分担研究者 (CS3BES および CS1ANS)を提供され、実験に用 杉田克生(千葉大学教育学部・教授) いた(Mayne L.V., et al., Exp. Cell Res. 162, 530-8, 研究協力者:喜多和子(千葉大学大学院医学研究 1986) 院) (2) 細胞培養 牛血清を 10%(w/w)と抗生物質(100 µg/mL スト レプトマイシンと 100 units/mL ペニシリン)を含 A. 研究目的 コケイン症候群(CS)患者における紫外線(UVC) む minimum essential medium (MEM) 中で培養し 致死感受性を軽減化(UVC 耐性化)するヒト生体 た。直径 100 mm ディッシュ(コーニング細胞培 内生理活性因子や薬品・食品素材の発見を目指し 養用ディッシュ)を使用した。 ている。すでに、その耐性化をサイトカインの一 (3) UVC 照射 種であるヒトインターフェロンが CS 患者由来培 254 nm の波長を主として発生する紫外線ラン 養細胞(CS 細胞)にて示すことを報告している プ(6-W National germicidal lamp, 1 J/m2/sec)を使 (Sugita K., et al., Mutat. Res., 357, 177-81, 1996)こ 用し、線量は UV radiometer (UVR-254, 東京光学 とより、サイトカイン様因子の探索を行うことと 機械)を使用し測定した。細胞への紫外線照射は、 した。このインターフェロンによる作用メカニズ 培養液を除き、phosphate buffer saline (PBS) でデ ムについては、究極、シャペロンを介して行われ ィッシュを洗った後、PBS を除いた状態で行った。 るとの示唆を得ており、Heat Shock Protein (HSP) (4) Annexin II タンパク質の精製 類の関与を見出している。一方、シャペロンない 大腸菌にて、次のような方法で作製した組換え しシャペロンに結合する分子の中には、細胞外へ 体タンパクを使用した。PCR 増幅した annexin II の放出や血液中の存在が報告されている。本研究 cDNA を GST 融合型組換タンパク質発現ベクター では、シャペロン HSP27 結合タンパク質 annexin II pGEX6P(GE ヘルスケアバイオサイエンス)に挿入 による CS 細胞の UVC 耐性化を検証した。 した。このプラスミドを大腸菌 BL21 株へトラン スフォーメーションし、0.2 mM IPTG 存在下で B.研究方法 GST-anneixn II タンパク質を発現させた。大腸菌 (1) より細胞ライゼートを抽出し、これをグルタチオ 培養ヒト細胞 CS 細胞:英国 MRC Genome Damage and Stability ンセファロース 4B カラム(GE ヘルスケアバイオサ Centre の Prof. Lehmann よ り 不 死 化 CS 細 胞 イエンス)にアプライした。カラムに吸着した 12 GST- anneixn II タ ン パ ク 質 は 、 Prescission Protease (GE ヘルスケアバイオサイエンス)を用 いてカラム内で GST と recombinant annexin II (rANX II)に限定分解させた後、rANX II のみを溶 出した。次いで、10 mM グルタチオンを含む溶 液で、GST を溶出した。精製した、rANX II およ び GST は、透析した後、ポアサイズ 0.22μM のフ ィルターで滅菌し、−80℃で保存した。この rANX II を UVC 照射前 0.5μg/ml で 24 時間メディウム 中へ添加した。比較タンパクとして GST を用いた。 図2 EGTA と抗 annexin II 抗体(A)および PI3K C.研究結果 (1)rANX II による不死化 CS 細胞の紫外線致死 阻害剤(B)による rANX II の紫外線耐性 耐性化 化効果の抑制 培養液中に rANX II を添加された CS3BES 細胞 と CS1ANS 細胞はともに、GST を添加されたコ D. 考察 平成 21 年度は、初代培養 CS 細胞(CSBB)につ ントロール細胞に比べ、UVC 致死耐性化した(図 いて検討し、rANX II 添加による UVC 致死耐性化 1)。 作用を認めた。本年度は、不死化 CS 細胞におい ても、rANX II による UVC 致死耐性化が起こるこ とを見出した。その作用は、抗 annexin II 抗体に より抑制されることから、rANX II サンプル中の 微量の混在成分に起因するのではなく、annexin II によることが示された。また、カルシウムキレー ト試薬および PI3K 阻害剤により、rANX II の紫外 線致死耐性化効果が抑制された。この結果から、 耐性化機構に、rANX II のカルシウム依存的な細 胞膜への結合と PI3K を介するシグナル伝達系が 図 1. rANX II 前処理による不死化 CS 細胞の紫外 関与することが示唆された。今後、さらに、メカ 線致死耐性化 ニズムの詳細を解明したい。 CS 細胞は、DNA 修復に関わる分子の欠損が知 (2)rANX II による紫外線致死耐性化作用の機 られている。従って、CS 細胞で欠損している分 子 が 関 わ る 以 外 の DNA 修 復 経 路 の 活 性 化 が 序 annexin II により、もたらされている可能性もある。 カルシウムに親和性の高いキレート試薬 EGTA(5mM)、あるいは抗 annexin II 抗体を、rANX 今後、その経路の探索も行いたい。また、annexin II とともに CS3BES 細胞の培養液に添加すると、 II がヒト血清中に存在するか否か、もし存在する rANX II による致死耐性化効果が抑制された(図 なら CS 患者の血清中の濃度はどの程度かを調査 2A)。さらに、phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K) する必要がある。その上で、annexin II がヒト体液 阻害剤の LY29004 (50 µM)でも、rANX II による致 中の生理活性因子として機能する場合、その機能 死耐性化効果が抑制された(図2B)。 を高めることによる治療法の開発も、一つの可能 13 性と考えられよう。一方、annexin II やインターフ Chiba Medical J. in press. ェロンの作用と類似の化合物が、薬品・食品の中 に存在するか否かを調査する必要もある。特に、 2.学会発表 植物中に存在する可能性を追究している。植物は、 1) 佐々枝里子、小林悟、中島葉子、岩山秀之、石 太陽光紫外線による傷害に対応して生存してき 田敦士、服部文子、安藤直樹 、伊藤哲哉、石川 たと考えるからである。 達也、杉田克生「コケイン症候群 の全身管理プ ロトコールの作成」第 34 回日本小児神経学会東 E. 結論 海地方会 2011/1/29 名古屋 紫外線感受性の CS 細胞を rANX II で前処理す 2) 田沼直之、宮田理恵、林雅晴、久保田雅也、杉 ると、紫外線致死耐性化した。rANX II による致 田克生、金子節子、荒木聡、百崎謙、大野耕策 死耐性化の詳細なメカニズムは未だ不明である 「色素性乾皮症・Cockayne 症候群における尿中酸 が、rANX II のカルシウム依存的な細胞膜への結 化ストレスマーカー解析」第 51 回日本小児神経 合と PI3K を介するシグナル伝達系の関与が示唆 学会 2010/5/21-23 福岡 された。 3) 喜多和子、杉田克生、陳 仕萍、佐藤哲生、郭 文智、鈴木敏和、菅谷 茂、鈴木信夫「細胞外に G.研究発表 添加された HSPB-A によるコケイン症候群患者由 1.論文発表 来細胞の紫外線致死抵抗化」第 53 回放射線影響 1) Torii M, Shimoyama I, Sugita K., Phonemic and 学会大会 2010/10/20-22 京都 semantic working memory in information processing in children with high function pervasive H.知的財産権の出願・登録状況 developmental disorders. IMJ Vol 17, No 1, 35-39, 1.特許取得 2010. なし 2) Sugita K, Suzuki N, Oi K, Allen-Tamai M, Sugita 2.実用新案登録 Ki, Shimoyama I. Cross-Sectional Analysis for なし Matching Words to Concepts in Japanese and English 3.その他 Languages. IMJ Vol 17, No 1, 41-45, 2010. なし 3) Chen S-P, Dong M, Kita K,, Shi Q-W, Cong B, Guo W-Z, Sugaya S, Sugita K, Suzuki, N. Anti-proliferative and apoptosis-inducible activity of labdane and abietane diterpenoids from the pulp of Torreya nucifera in HeLa cells. Mol. Med. Rep. 3, 673-678, 2010. 4) Lu J, Hu G, Kita K., Suzuki N. Retrovirus-mediated transduction of a short hairpin RNA gene for GRP78 fails to downregulate GRP78 expression but leads to cisplatin sensitization in HeLa cells, Oncol. Rep. 25, 879-885, 2011. 5) Zahed M, Suzuki T, Kita K, Sugaya S, Suzuki N. Screening of novel peptide ligands bound to the carboxy-terminal domain of GRP94 by phage display. 14 厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) (分担)研究報告書 コケイン症候群の実態把握および治療とケアの指針作成ための研究 4.コケイン症候群の中枢神経病理所見、および他の臓器病理所見の解析 研究要旨 コケイン症候群(CS)患者では睡眠異常、体温調節障害が合併する。CS の視床 下部障害を明らかにし、治療法を考案するため、アンケート調査、剖検脳での視床下部評 価、melatonin 代謝物の尿中排泄に関する ELISA 定量を進めた。5例のアンケート解析では 体温調節障害が睡眠障害より多くみられた。また、高度の萎縮を示す4CS 剖検脳の視床下 部で亜核の形成が確認された。さらに睡眠制御に重要な役割を担うメラトニンの代謝物の 尿中排泄が低下している可能性が示唆された 分担研究者 林 雅晴 東京都神経科学総合研究所 神経発達・再生(副参事研究員) A.研究目的 Cockayne 症候群(CS)は転写関連の塩基損傷 修復機構の遺伝的欠損により生じ、発育障害、老 人様顔貌、日光過敏症、白内障、網膜色素変性、 感音性難聴、末梢神経障害、腎障害などが見られ る。CS 患者では時に睡眠や体温調節の異常がみ られ、視床下部障害の合併が疑われるが、臨床的 な解析は十分で行われていない。本年度は CS 患 者の生活の質を大きく左右する視床下部障害に 関して、臨床神経病理学的検討を行った。 B.研究方法 (1)CS 患者家族会「日本 CS ネットワーク」の 協力を得て睡眠・体温調節異常に関するアンケー ト調査を行い、結果を集計評価した。 (2)CS 剖 検脳5例(死亡時年齢 7∼18 歳)において、視床 下部に対する免疫組織化学染色の前提とすべく、 通常組織染色標本で亜核の同定を試みた。(3) CS、疾患対照である色素性乾皮症(XP)、年齢相 当対照の午前採取スポット尿検体において、睡眠 制御に重要な役割を担うメラトニンの主たる代 謝物 6-sulphatoxymelatonin(aMT6s)の尿中排泄を ELISA により定量評価した。 (倫理面への配慮) 本研究計画は東京都神経研と協力医療機関の 倫理委員会から承認されている。生体資料・剖検 脳の収集ならには治療にあたっては十分な説明 の上での書面による同意を患者家族から受けて いる。 C.研究結果 (1)5例のアンケート集計では体温調節障害 15 (変動体温、低体温、夏季の高熱)が全例でみら れたのに対して、睡眠障害(12 歳例:入眠・覚醒 障害、21 歳例:夜間睡眠中の中途覚醒が頻回)は 2例で認められた(表1)。また、家族からの聞 き取り調査により二次性徴発現にはあまり問題 がみられないことを確認した。(2)高度の脳萎 縮にもかかわらず、4剖検脳の組織染色標本で一 部の視床下部の亜核を識別できた(図1)。ただ し、神経細胞の大きさは対照に比べ小さく、かつ 密集していた。(3)午前採取スポット尿検体に おいて、CS 患者での aMT6s 尿中排泄が、対照(幼 児期に高値、以後年齢に応じて J カーブを描いた)、 XP 患者より有意に低下していた(図2)。年齢を 7∼32 歳に揃えた場合、尿中 aMT6s 濃度(ng/mg Creatinine)はそれぞれ対照(n=7)37.4±15.3、XP 患者(N=9)24.5±18.2、CS 患者 19.2±9.1 であった。 D.考察 少数例での解析ではあったが、体温調節障害が 睡眠障害より多くみられ、視床下部障害に加えて、 CS 患者での皮下脂肪減少、発汗障害、末梢循環 不全等の関与が推定された。また、睡眠障害と視 力障害の重症度との関連も示唆された。今後も例 数を増やしてアンケート集計を進めるとともに、 睡眠障害を合併した患者で Actigraph や睡眠表を 用いて概日リズムの評価を試みる。一方、今回、 通常組織染色での検討で視床下部亜核をある程 度識別できたので、XP 剖検脳とともに、視床下 部 の 機 能 マ ー カ ー ( vasopressin, tyrosine hydroxylase, hypocretin)に対する免疫組織化学染 色を行う予定である。従来、aMT6s 尿中排泄は日 内変動を示し、覚醒直後の午前スポット尿で最大 値を呈することが報告されている。CS 患者午前 スポット尿での aMT6s 排泄低下を証明するため、 対照において6時間おきに採取された複数スポ ット尿で aMT6s 濃度を測定し、午前スポット尿で の測定の有用性を検証する。 E.結論 CS 患者では体温調節障害、睡眠異常の順に視 床下部障害が推定される症状がみられた。また、 高度の萎縮を示す剖検脳の視床下部で亜核形成 が確認された。さらに睡眠制御に重要な melatonin の主たる代謝物 6-sulphatoxymelatonin の尿中排泄 が低下している可能性も示唆された。 G.研究発表 1.論文発表 1) Oba D, Hayashi M, et al. Autopsic study of cerebellar degeneration in siblings with ataxia-telangiectasia-like disorder (ATLD). Acta Neuropathol 119(4): 513-20, 2010 2) Hayashi M, et al. An autopsy report of case showing repetitive hypoglycemia and unique cortical dysplasia. Brain Dev 32(4): 289-92, 2010. 3) Miyata R, Sasaki T, Hayashi M, et al. Low dose of levodopa is effective for laryngeal dystonia in xeroderma pigmentosum group A. Brain Dev 32(8): 685-7, 2010. 4) Hayashi M, et al. Oxidative stress in developmental brain disorders. In: Ahmad S, ed. Neurodegenerative diseases. Austin: Landes Bioscience (in press)(レビュー) 5) Hayashi M, et al. Hypothalamic lesions in developmental brain disorders. In: Dudas B, ed. The Human hypothalamus: anatomy, functions and disorders. New York: Nova Science Publishers (in press)(レビュー) 2.学会発表 1) 林雅晴ら. A 群色素性乾皮症と Cockayne 症 候群の剖検脳での Thymidine glycol の蓄積. 第 52 回日本小児神経学会総会, 福岡 (2010, 5.21)。 2) 林雅晴. CS 研究 最近の進歩. コケイン症 候群(CS)の集い 2010, 東京 (2010, 10.30)。 H.知的所有権の出願・取得状況 (予定を含む) 該当するものは無い。 16 表1 CS 患者5例でのアンケート集計結果 図1 CS 患者の視床下部の Klüver-Barrera 染色(a. 7歳例の腹内側核、b. 15 歳例の室傍核) a b 17 図2 対照(Control)、Cockayne 症候群患者(CS)、色素性乾皮症患者(XP)でのメラトニン代謝物 6-sulphatoxymelatonin の尿中排泄 18 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」 5.コケイン症候群の分子遺伝学的解析 研究要旨 コケイン症候群(CS)など紫外線性DNA修復異常で発症するすべての遺伝性光線過敏症に対する本 邦唯一の診断センターを本年度も研究分担者の施設で維持し、各種DNA修復試験、分子生物学的手法を駆 使して本年度は新規に3例のCSを確定診断した。さらにCSが疑われて本年度に依頼のあった3症例につ いては 1 例は非CSであることが判明し、2 例に関しては現在解析中である。CSBと確定した遅発型の 1 症例では新規変異がヘテロにみられ(C229T /3549delG)、前者の変異は皮膚症状のみしか呈さない他の稀な 遺伝性疾患;UV-sensitive syndrome (UVSS)に見られたもの同様であった。この結果はCSBとUV SSの異同を考察する上で興味深い。CS相補性試験の高感度化に向けた評価系の検討も現在進行中である。 分担研究者 復テスト、④遺伝子解析、⑤タンパク解析などによ 氏名(所属・職名) り行った。③に関しては紫外線照射したレポーター 森脇真一(大阪医科大学皮膚科・教授) プラスミドの宿主細胞回復能を指標にした新規アッ セイ系であり、現在至適条件の検討を行っている。 A.研究目的 (倫理面への配慮) 研究分担者は平成 10 年よりコケイン症候群(C S)、色素性乾皮症(XP)など紫外線性DNA修復 上記の研究は大阪医科大学ヒトゲノム・遺伝子解 異常で発症するすべての遺伝性光線過敏症の診断セ 析研究倫理審査会において承認されている。研究は ンターを本邦で唯一維持し、各種DNA修復試験、 その審査会の基準を遵守し、患者あるいは家族の文 分子生物学的手法を駆使してこれまで新規に 17 例 書による同意を得た後に施行し、その場合検体は連 のCSを確定診断した。今年度も引き続き新たにC 結可能コード化して取り扱った。個人情報には十分 Sが疑われて紹介されてきた患者に対して細胞生物 配慮し、検体の保管も厳重に行った。またコントロ 学敵、分子遺伝学的な解析を行い、さらに臨床症状 ール細胞など一部の細胞はすでに論文などで発表さ を詳細に検討することにより、CSにおけるゲノタ れており本研究者が長年連結不可能化して保持して イプ・フェノタイプの関連についての検討を行った。 いるものである。 本研究によりCSにおいて多岐にわたる臨床症状の 発症機序解明や分子レベルでの情報取得による重症 C.研究結果 度や予後の推定に役立つものと思われる。 CSの確定診断は宿主細胞回復能を指標にした 相補性試験にて施行中であるが、レポータープラス B.研究方法 ミドとともに細胞内に導入したCS遺伝子の mRNA CSの確定診断は患者皮膚由来の培養線維芽細胞 発現は高レベルである一方で翻訳過程が十分ではな を用いて①紫外線照射後の不定期DNA合成能 く、部分的な相補しか達成されない(図)。軽症CS (unscheduled DNA synthesis ; UDS)測定、② の診断目的を含めて現在引き続きこの相補性試験に 紫外線感受性試験、③相補性群試験などのDNA修 おいての最適な条件を検討中である。 19 CS診断センターにおいては年度間に新規に1例 宿主細胞回復能が指標の新規CS診断システムに のCSA(4 歳男児例)、2例のCSB(ともに成人 おいて、CS細胞にCS遺伝子を導入しても相補(D 例;22 歳男性と 40歳女性)を確定した。他の1例 NA修復能の正常レベルまでの回復)が少ないこと は 30 歳の女性で低身長、早老様顔貌で当初CSが疑 から、軽症CSの確定診断のためにも、導入CS遺 伝子の細胞内発現をさらに上げるような何らか工夫 (ケミカル処理など)を考慮する必要がある。 E. 結論 CSは稀な疾患ではあるが患者のためには本邦唯 一維持しているCS診断センターは引き続き継続す ることが重要であると考える。またその過程で得ら れる貴重な臨床材料(多彩な臨床症状を呈する患者 皮膚由来の初代培養線維芽細胞など)を詳細に検討 することによりCSの病態のさらなる解明がいっそ われたが細胞生物学的に否定された。さらに2症例 う進むものと予想する。このような病態の解明は近 (14 歳男児、31 歳男性)については現在解析中であ い将来 iPS 細胞などによる再生医療が進歩した後 る。このうち遅発型CSBの1例(図)に新規変異 に可能となるかもしれない「遺伝病の根本的な治療」 をヘテロに同定し(C229T /3549delG)、興味深いこ に対しても有用な情報をもたらすものであろう。最 とに前者の変異は 皮膚症状のみしか呈さない稀な 後にCS患者会を通して、CS患者・家族はCSと 遺伝性疾患;UV-sensitive syndrome (UVSS) いう疾患の認知が低い故に多くの社会的制約や差別 に見られたもの同じであった(表)。 を受けていることが判明した。今年度開催したよう またCSの社会的認知を高めるための啓蒙活動を な市民や医療関係者を対象とした研修会はこれから 目的として「CSの集い 2010」を東京にて主催した も有用と考える。 (平成 22 年 10 月 30 日;医療従事者対象、10 月 31 日;一般市民対象)。 F.健康危険情報 なし G.研究発表 1. 論文発表 (1) 森脇真一 皮膚科領域の遺伝医療 臨床講義 皮 膚科の臨床 52 ; 351-358, 2010 (2) Moriwaki S Ten Years of Clinical and Laboratory Work on Xeroderma Pigmentosum. Bulletin of the Osaka Medical College 56 ; 1-7, 2010 (3) 森脇真一 色素性乾皮症 看護大辞典第二版、 D. 考察 医学書院 今回の遅発型CSB症例の結果はUVSSが遅発 (4) 森脇真一 色素性乾皮症を疑ったらまずどんな 型CSBに移行する可能性あるいはUVSSが独立 検査をするか What 疾患ではなくCSBという包括的な疾患概念の中に s new in 皮膚科学 2010-2011 p196‐197, 2010(メディカルビュー社) 位置する可能性を示唆する。 20 (5) 森脇真一 色素性乾皮症 皮膚科セミナリウム (17) 森脇真一 皮膚疾患と看護 小児臨床看護学 日本皮膚科学会雑誌 120:1861-1867,2010 各論 小児看護学(改訂 12 版) p415-425 医学書 (6) 森脇真一 色素性乾皮症 からだと光の事典 院 2011 学会発表 p171-175, 2010 (朝倉書店) (7) 森脇真一 色素性乾皮症 小児科臨床ピクシス (1) 森脇真一 色素性乾皮症の病態と日常生活での 注意点 色素性乾皮症患者家族の集い(岡山皮膚難 p64-65, 2010 (中山書店) 病支援ネットワーク) 平成22年2月6日(岡山) (8) 森脇真一 色素性乾皮症 子どもの皮膚疾患の 診かた 小児科 51:670-671, 2010 (金原出版) (2) 森脇真一 光環境と皮膚∼色素性乾皮症と向き 合って∼第15回京都皮膚科治療フォーラム 平成 (9) 森脇真一 色素性乾皮症 日本小児皮膚科学会 22年3月18日(京都) 雑誌、29;1-5,2010 (3) 中西伸夫、森脇真一 UVs 症候群は late onset (10) Takahashi Y, Endo Y, Sugiyama Y, Inoue S, のコケイン症候群に移行する?第39回 UV-ABClub Iijima M, Tomita Y, Kuru S, Takigawa M, Moriwaki 平成22年3月20日(京都) S Novel XPA Gene Mutations Resulting in Subtle (4) 森脇真一 遺伝性光線過敏症の分子診断と患者 Truncation of Protein in Xeroderma Pigmentosum ケア 教育講演 第109回日本皮膚科学会総会 Group A Patients with Mild Skin Symptoms. J 平成22年4月17日(大阪) Invest Dermatol 130:2481-8, 2010 (5) 森脇真一 「色素性乾皮症を知ろう」 市民公 (11) 森脇真一 光線過敏症 日本皮膚科学会平 開講座 第 32 回光医学・光生物学会 平成22年8 成 22 年度中部支部企画研修講習会テキスト (12) 森脇真一 高齢者の光線過敏症をみたら? 高 齢 者 の 皮 膚 ト ラ ブ ル FAQ ( 診 断 と 治 療 社 ) 月1日(東京) (6) 森脇真一 光線過敏症:基礎から最新の知見 まで 日本皮膚科学会平成 22 年度中部支部企画研 p94-97, 2011 (13) Hirata Y, Koga S, Fukui N, Yu A, Koshida S, Kosaka Y, Moriwaki S 5-Aminolevulinic acid (ALA) - mediated photodynamic therapy to superficial malignant skin tumors using Super LizerTM J 修講習会 平成22年9月10日(大阪) (7) Moriwaki S Experience of laboratory diagnosis of XP, CS and TTD in Japan XERODERMA PIGMENTOSUM AND OTHER DISEASES OF HUMAN PREMATURE AGING AND DNA REPAIR: MOLECULES TO PATIENTS 2010.9.21-24 Dermatology, in press. (14) Bradford PT, Goldstein AM, Tamura D, Khan SG, Ueda T, Boyle J, Oh K-S, Imoto K, Inui H, (Lansdowne, VA), USA (8) 森脇真一 CSの遺伝と診断 CSの集い20 T, DiGiovanna JJ, Tucker MA, Kraemer KH CANCER AND 10 平成22年10月30日(東京) (9) 森脇真一 CS患者とともに20年 CSの集 い2010 平成22年10月31日(東京) NEUROLOGIC DEGENERATION IN XERODERMA PIGMENTOSUM: (10) Moriwaki S ,Sakai Y, Nakanishi N, Nakamura LONG TERM FOLLOW-UP CHARACTERIZES THE ROLE OF DNA S, Takahashi M, Toda K Progression of UV REPAIR J Med Genet, in press sensitive syndrome to adult onset Cockayne (15) 森脇真一 色素性乾皮症 皮膚疾患 最新の治 syndrome in a patient with CSB mutations 第3 療 2011-2012 p116, 2011 南江堂 5回日本研究皮膚科学会 平成22年12月3日 (16) 森脇真一 遺伝性光線過敏症の分子診断と (和歌山) 患 者 ケ ア 日 本 皮 膚 科 学 会 雑 誌 学 術 大 会 号 H.知的財産権の出願・登録状況 120:2582-2583, 2010 なし Moriwaki S, Emmert S, Pike KM, Raziuddin A, Plona 21 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」 6.XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状に関する研究 研究要旨 XPG null マウスは、成長障害、小脳失調症状、短寿命を示しコケイン症候群のモデルと考えられてい て小脳の発育不全、皮下脂肪の欠如が観察された。最近、XPG null マウスの歩行異常に関与する関節の 異常を見いだし、XPG null マウスがコケイン症候群の関節拘縮モデルとしての可能性が示された。 分担研究者 中根裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学講座 ゲノム形態学分野・助教 D. 考察 コケイン症候群の患者さんの関節拘縮の病理 報告がなく詳細は不明であるが、XPG null マウス の歩行異常の病変として、小脳の異常だけでなく 、関節病変に着目することで今回の所見を得た。 コケイン患者さんのリハビリ担当者と関節拘縮 の病態と同マウスの病変との関係を検討できた ことも重要であった。今後、さらに末梢神経の病 変を解析する必要があるが、同マウスのコケイン 症候群の疾患動物として有用性が明らかになる だろう。 A.研究目的 XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状と 各臓器の病変との関係を病理学的に検討し、同マ ウスがコケイン症候群の疾患動物としての有用 性を調べることを目的とする。 B.研究方法 XPG nullマウスにおけるコケイン様臨床症状の 検討するために、各日令のXPG nullマウス( 3 週令)の組織検索を行う。検索には、各日令マウ スを灌流固定した標本を作成し(固定条件を一定 にするため)、光学顕微鏡(場合によっては透過 電子顕微鏡を用いて)で検索する。当然、ヒトと マウスの種の違いには、細心の注意を払って検索 する。ヒトのコケイン患者さんの剖検症例の所見 を参考にして、以下の点に留意する。同マウスの 皮下組織、性腺、網膜、聴覚器、小脳[小脳失調] 、関節[関節拘縮、亀背]、脳の髄鞘化[髄鞘障害] 、歯・唾液腺等を検索する。 [ ]内は、コケイン 症候群の臨床症状を示す。 E. 結論 XPG null マウスの歩行異常の一因として、小脳 の異常のみならず、関節の病変が関わる可能性を 示し、同マウスのコケイン症候群の関節拘縮の病 態解析モデルとしての可能性が示された。 F.健康危険情報 なし。 G.研究発表 (倫理面への配慮) 本研究は、鳥取大学・動物実験安全委員会に実験 計画の承認を受けて実施している。 1.論文発表 今後発表予定。 2.学会発表 C.研究結果 1) 中根裕信ら. コケイン症候群のモデル動物と しての Xpg ヌルマウスの検討. 第 4 回日本エピ ジェネティクス研究会年会.要旨集 p94、米子市 (2010.5.28-29) 2) 中根裕信 CS モデルマウスの解析 コケイン症候群(CS)の集い 2010、東京都渋谷区 代々木ロレアルビル,(2010.10.30-31) XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状の 検討の過程で、同マウスの歩行異常が、小脳の異 常だけでなく関節の可動域制限にも一因がある と考えられた。予備実験で同マウス膝関節の病理 学的検索から、関節空隙の狭小化や関節周囲組織 の異常が観察された。 22 3)中根裕信ら. DNA 修復異常症における DNA 損 傷応答の違いによる脳神経病変への関与̶ATLD, NBS, XPA の神経病変. BMB2010 Workshop(招待 講演)、神戸市(2010,12.8) 4) Hironobu Nakane “Differential DNA damage signaling accounts for distinct neural apoptotic responses in DNA repair deficient mice of ATLD, NBS, XPA, XPG - Insight from neuropathology of DNA repair-deficiency disorders –“ 1st RIRBM International Symposium ― Genome Damage and Non-Cancerous Diseases ― (invited speaker),March 3 – 4 (Thu. – Fri.), 2011 Koujin Conference Hall on Kasumi Campus, Hiroshima University 講演予定 5)Hironobu Nakane et al. “Histopathological analysis of impaired spermatogenesis in xeroderma pigmentosum group A gene (Xpa)-deficient mice” 第 88 回日本生理学会大会・第 116 回日本解剖学 会総会・全国学術集会合同大会,横浜市 (2011.3.28-30)発表予定 H.知的財産権の出願・登録状況 なし。 1.特許取得 なし。 2.実用新案登録 なし。 3.その他 23 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業) (分担)研究報告書 研究課題「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成ための研究」 7.コケイン症候群の酸化ストレスマーカー解析 研究要旨 コケイン症候群(CS)患者は小頭症、小脳失調、感音性難聴、末梢神経障害など多彩な 神経症状を呈する。CS の神経症状の発症に酸化ストレスが関与していることを明らかにし、 治療法を考案するため、CS 患者の尿中酸化ストレスマーカーの ELISA 定量と、剖検脳での DNA 特異的な酸化ストレスマーカー(thymidine glycol、 TG)の神経病理学的解析を進め た。CS における TG 沈着に関する剖検脳での染色により、大脳基底核・小脳変性における DNA 酸化ストレスの関与が示唆された。 分担研究者 田沼直之(都立府中療育センター・小児科医長) A.研究目的 Cockayne 症候群(CS)は DNA 修復機構のうち 転写関連の塩基損傷修復機構の遺伝的欠損によ り生じる疾患で、発育障害、老人様顔貌、日光過 敏症、白内障、網膜色素変性、感音性難聴、末梢 神経障害、腎障害などがみられる。CS 患者では 多彩な神経症状がみられるが、発症機序について の解析は十分に行われていない。我々はこれまで に剖検脳での神経病理学的解析を通じて CS 患者 の神経変性での酸化ストレスの関与を明らかに してきた。本年度は新たな患者での尿中酸化スト レスマーカー解析を行うとともに、剖検脳におい て RNA に含まれない塩基 deoxythymidine から生 じ る DNA 特 異 的 な 酸 化 ス ト レ ス マ ー カ ー thymidine glycol (TG)の沈着を免疫組織学的に検 討した。 (倫理面への配慮) 本研究計画は府中療育センターと協力医療機 関の倫理委員会から承認されている。生体資料・ 剖検脳の収集ならには治療にあたっては十分な 説明の上での書面による同意を患者家族から受 けている。 C.研究結果 (1)CS 例では年長例2例で HEL の上昇を認め、 うち 1 例は PAO の低下がみられた。新たな 2 症 例(CS5, 6)の 8-OHdG、HEL 値は正常であった が、1 例(CS5)で PAO の低下を認めた(表 1)。 (2)4例の被殻・淡蒼球の石灰化周囲のグリア 細胞に TG 陽性核が確認され、3例の小脳顆粒細 胞にも陽性核がみられた(表 2)。さらに海馬・脳 幹に TG 陽性核を有するグリア細胞が認められた。 なお 30 歳未満の対照では陽性核をほとんど確認 できなかった。 B.研究方法 (1)昨年度解析した CS 5 例(8∼29 歳)に加え、 本年度新たに 2 例の CS 患者(10 歳男性、8 歳女 性 ) で 、 採 取 し た 尿 中 の 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine (8-OHdG)(DNA 酸化 的障害マーカー)、ヘキサノイルリジン付加体 (HEL)(脂質酸化的障害マーカー)、抗酸化能 potential anti-oxidant(PAO)を ELISA キット(日 本老化制御研究所製)を用いて測定した。8-OHdG、 HEL は尿中クレアチニン値にて補正し、正常対照 の測定値の平均値+2SD を cut off 値とした。 (2)CS 剖検脳5例(死亡時年齢 7∼18 歳)と 年齢相当対照の海馬を含む側頭葉皮質、大脳基底 核、小脳、脳幹の連続切片において、日本老化制 御研究所製 TG モノクローナル抗体による免疫染 色を行った。 24 D.考察 生体組織中の 8-OHdG は、DNA 修復酵素により 速やかに除去され尿中に排泄されるが、TG は生 体内に長期間残留する。TG 沈着に関する剖検脳 での染色により、8-OHdG の解析結果と類似し、 大脳基底核・小脳変性における DNA 酸化ストレ スの関与が示唆された。さらに 8-OHdG とは異な り、CS においてもレンズ核石灰化周囲、脳幹> 海馬のグリア細胞、小脳顆粒細胞に陽性所見が見 られた。今後、 base excision repair(BER)での酸 化 ス ト レ ス 処 理 に 関 与 す る oxoguanine DNA glycosylase 表出を検討し、TG 沈着が BER に及ぼ す影響を検討する。また、新たなバイオマーカー としてタンパク質の酸化修飾体であるカルボニ ル化タンパク質の測定を CS 患者血清で行う予定 である。 一方、本研究班の昨年度の報告で CS における 腎障害について、死亡例では半数以上で認められ たのに対し、生存例では少ないことがわかった。 この点について、(1)二次調査に登録された剖 検例を含む死亡例の解析、(2)日本コケイン症 候群ネットワーク(家族会)を通じてのアンケー ト調査を行い CS における腎障害の実態を明らか にする予定である。 E.結論 CS 患者の神経症状発症や早発老化には酸化ス トレスの関与が示唆された。 G.研究発表 1.論文発表 1) Tanuma N, et al. The axonal damage marker tau protein in the cerebrospinal fluid is increased in patients with acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion. Brain Dev. 32(6): 435-9, 2010. 2) 三輪菜穂,田沼直之,林雅晴.著明な高 IgE 血症を呈した重症心身障害児の剖検例.脳と発 達 42: 367-71, 2010. 2.学会発表 1) 林雅晴,宮田理英,田沼直之. A 群色素性 乾 皮 症 と Cockayne 症 候 群 の 剖 検 脳 で の Thymidine glycol の蓄積. 第 52 回日本小児神 経学会総会, 福岡 (2010, 5.21). 2) 田沼直之ら. 色素性乾皮症・Cockayne 症候 群における尿中酸化ストレスマーカー解析. 第 52 回日本小児神経学会総会, 福岡 (2010, 5.21). H.知的所有権の出願・取得状況 (予定を含む) 該当するものは無い。 25 表 1. コケイン症候群における尿中酸化ストレスマーカー、抗酸化能の解析 8-Hydroxy2'-deoxyguanosine 症例 年齢・性 運動機能 腎障害 (ng/mg creatinine) Hexanoyl-lysine adduct Potential Anti-Oxidant (pmol/mg creatinine) (µmol/L antioxidant power) 対 照 ( 20 例,8∼66 (平均±SD) 10.2±3.3 76.1±43.9 10087.3±4900.1 (平均+2SD) 16.8 163.9 歳) CS1 29 歳・女性 介助歩行 あり 11.8 627.8 ↑ 2100.9 ↓ CS2 29 歳・女性 介助歩行 あり 9.3 187.2 ↑ 5286.1 CS3 21 歳・男性 介助歩行 ? 8.4 27.9 16827.0 CS4 11 歳・女性 車椅子 ? 16.8 109.4 7143.1 CS5 10 歳・男性 車椅子 ? 12.8 73.2 2293.8 ↓ CS6 8 歳・女性 ? 15.5 70.0 5857.2 CS7 8 歳・女性 18.4 ↑ 172.1 ↑ 5841.9 平均 13.3 181.1 6478.6 SD 3.8 205.0 4940.0 CS 車椅子 ? CS1 と CS2 は双胎例、CS4 と CS7 は姉妹例. ↑は平均+2SD(cut off 値)以上の上昇、↓は平均‐SD 以下の低下を示す. 表 2. コケイン症候群剖検脳 5 例の thymidine glycol (TG)免疫組織学的解析 Calcifi:石灰化 26 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」 8.コケイン症候群における不随意運動の検討 研究要旨 コケイン症候群症例に見られる不随意運動について解析した。従来の報告よりも低年齢から、 前腕及び手指に振戦様の不随意運動が見られ、手指を捻転または過伸展させるアテトーゼ様運動 が混在した。同時記録した表面筋電図ではミオクローヌスにジストニアの混在する所見が示され た。小脳性失調症の治療薬であるTRH製剤を投与した2例において、振戦様不随意運動の軽減が見 られた。コケイン症候群の神経病変は、大脳白質・小脳・基底核・末梢神経・脳幹・脊髄と多巣 性であるが、主病変の一つである小脳萎縮が不随意運動の発現に関与している可能性が示唆され、 今後治療法を検討する上で重要な所見と考えた。 分担研究者 C.研究結果 氏名 熊田聡子 6 例いずれにおいても、前腕及び手指に振戦様 (東京都立神経病院神経小児科・医長) の不随意運動が見られ、これに手指を捻転または 過伸展させるアテトーゼ様の運動が混在した(図 A.研究目的 1)。これらの不随意運動は随意運動時や精神的緊 コケイン症候群の神経症状としては、精神運動 張時に増強した。表面筋電図では、不規則な持続 発達遅滞、知的退行、痙性四肢麻痺、小脳性失調、 の短い筋放電がしばしば拮抗筋間に同期して認 末梢神経障害、視力及び聴力障害が知られている められ、ミオクローヌスと考えられた(図 2)。ま が、不随意運動の報告は少ない。今回コケイン症 た拮抗筋間で同期性の持続の長い筋収縮も認め 候群に見られる不随意運動を解析し、この起源に られ、一部の筋群では他動的筋伸展時に拮抗筋の ついて検討した。 筋収縮が認められた(Westphal 徴候)。これらはジ ストニアの混在を示す所見と考えられた。中枢及 B.研究方法 び末梢神経系病変について詳細に検討した成人 2 コケイン症候群 6 例(6-29 歳、全例女性)の不随 例では、コケイン症候群に特徴的とされる大脳白 意運動をビデオにて検討。内 4 例ではビデオ・表 質変性・小脳萎縮・基底核石灰化・末梢神経障害 面筋電図同時記録を行い解析を加えた。成人 2 例 に加え、脳幹・脊髄萎縮も認められた。大脳皮質 では画像及び電気生理学的病巣診断を行い、また、 の易興奮性を示唆する巨大感覚誘発電位は認め 脊髄小脳変性症の治療薬である TRH 製剤の効果を られなかった。この 2 例に TRH 製剤を投与したと 検討した。 ころ、振戦様不随意運動の減少を認めた。 (倫理面への配慮) ビデオの撮影ならびに研究会などにおける公 図 1. コケイン症候群 29 歳女性例に見られた上 開について保護者の同意を得た。TRH 製剤投与に 肢の不随意運動. 手関節及び手指を伸展・屈曲さ ついても保護者の同意を得た。 せる比較的律動的な素早い運動. しばしば指を 擦り合わせるような捻転性の肢位を示し、また手 27 指を過伸展する. 背側骨間筋に筋萎縮を認める. 脳核の脳深部刺激療法が有効であった症例が報 告されており(Hebb ら,2006)、ここからは小脳の 関与が推測される。今回の我々の検討でも、小脳 における neuromodulator と考えられている TRH 製剤が振戦を軽減させた。 最近、ヒトの脊髄小脳変性症や、ジストニアの 動物モデルにおける研究から、従来基底核に起因 図 2. 図 1 と同時記録した表面筋電図. 左優位 すると考えられていた不随意運動の発現に小脳 の手根筋群に持続の短い筋放電を認め、しばしば も関与している可能性が示唆され、注目されてい 拮抗筋間で同期。同様の筋放電は右優位の下腿筋 る(Standaert,2011)。独立した回路と考えられて 群にも認められる。振戦に特徴的な拮抗筋間の相 いた小脳-皮質ループと基底核-皮質ループの間 反性収縮は明らかでない。 に直接の線維連絡が存在することも明らかにさ れた(Bostan ら,2010)。 コケイン症候群の神経障害は多巣性であるの で、臨床的検討から不随意運動の起源を確定する ことは困難であるが、以上に述べたような知見か らは、病理学的異常の最も顕著な小脳が不随意運 動の発現に大きく関与している可能性も推測さ れる。今後不随意運動に対する治療法を検討する D. 考察 上で、興味ある知見と考えられた。 コケイン症候群における不随意運動の報告は 少ない。Nance ら(1992)による 140 例の review で は、ミオクローヌス 3 例と 不随意運動症 E. 結論 (詳 コケイン症候群における不随意運動は、従来の 細不明)4 例が記載されているのみである。一方 報告よりも低年齢から高頻度に出現している可 Rapin ら(2006)は、成人に達したコケイン症候群 能性がある。不随意運動の起源としては、基底核 21 例の review を行い、9 例に不随意運動が記載 の他に小脳の関与が推測された。 されていると報告した(安静時振戦 6 例、コレオ アテトーシス 3 例)。今回の我々の検討では、小 F.健康危険情報 児期(6-12 歳)の 4 症例にも成人(29 歳)2 症例と類 特になし。 似した上肢の不随意運動が認められた。コケイン 症候群における不随意運動は、従来の報告より高 G.研究発表 頻度に、より低い年齢においても生じている可能 1.論文発表 性があり、今後の検討が必要と考えた。 なし。 コケイン症候群における不随意運動の病態に 2.学会発表 は、小脳・基底核・末梢神経のいずれか、または 1)コケイン症候群Ⅲ型双胎例に見られた不随意 これらが複合して、関与していると考えられる。 運動の解析. 近年、L-dopa 投与によりジストニアと振戦が軽減 東京都立神経病院神経小児科 1、国立成育医療 した 3 症例が報告され、基底核ドパミン投射路の センター神経内科 2、東京都神経科学総合研究所 関与が推定されている(Neilan ら,2008)。一方、 神経発達・再生研究分野 3 頚部と上肢の激しい不随意運動に対して視床小 熊田聡子 1、久保田雅也 2、古山晶子 2、 28 奥村さやか 2、柏井洋文 2、星野英紀 2、林雅晴 3 なし。 第 52 回日本小児神経学会総会(2010/5/20-22)、 2.実用新案登録 福岡. なし。 3.その他 H.知的財産権の出願・登録状況 なし。 1.特許取得 29 平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書 研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」 9.軽症型コケイン症候群の分子遺伝学的な検討 研究要旨 蛍光試薬を用いる簡易細胞診断法により、2 例のコケイン症候群が疑われる患者様由来の繊維芽細 胞を用いて、細胞診断を行った。細胞診断は、紫外線に対する感受性試験、不定期 DNA 合成試験(UDS)、 RNA 合成回復試験(RRS)の 3 つの基準により行った。2 例ともコケイン症候群であると診断した。簡便で 定量的な手段により、信頼性の高い診断を行うことができた。 研究分担者 蛍光試薬を用いる方法で、簡易に信頼性のある 立石 智 (熊本大学・講師) 結果を得られることがわかった。患者様由来の細 : 胞である Kps10 は、既存のコケイン症候群である A.研究目的 と判定されている Kpsx6 と同じく、健常人由来の これまで、コケイン症候群の細胞診断は、放射性 Mori 細胞に比べて紫外線感受性を示した(図 1)。 同位元素を用いる専門的な手技であり、難易度が UDS レベルは、どの細胞でも正常レベルであった 高かった。今回、蛍光試薬を用いる簡易診断方法 (図 2)。これに対して、RRS レベルでは健常人由 により、コケイン症候群の細胞診断をおこなう。 来の Mori 細胞に比べて Kpsx6 および Kps10 では また、共同研究者との共同研究により、コケイン 顕著な低下がみられた(図 3)。この画像をイメー A、B 遺伝子の変異部位を同定する。 ジングソフトウェアで定量し、統計を考慮して解 析をおこなった。以上の結果から Kps10 は、コケ B.研究方法 イン症候群であると診断した。 細胞診断は、1.紫外線に対する感受性試験 2. これと同様に、名古屋市立大学から分与された 不定期 DNA 合成試験(UDS) 3. RNA 合成回復試験 繊維芽細胞は、細胞診断の結果、コケイン遺伝子 (RRS)の 3 つの基準により、判定する。すなわち、 であると判定した(NCU-F10 と命名した)。NCU-F10 紫外線に対する感受性を示し、UDS が陽性、RRS と Kps10 は、CSA のエキソン 4 に異常がある可能 が陰性である場合に、コケイン症候群であると判 性があることがわかった。 定する。患者様由来の繊維芽細胞からゲノム DNA D. 考察 を抽出し、PCR によりコケイン遺伝子の各エキソ 放射性同位元素を用いる細胞診断方法では、 ン部分を増幅した後に、配列を読むことにより、 UDS 試験、RRS 試験の両方で、オートラジオグラ 変異部位を同定する。 フィー後のグレイン数を測定することにより、定 (倫理面への配慮) 量をおこなっていた。今回行った蛍光試薬を用い 当該病院または熊本大学大学院生命科学研究部 る簡易診断方法では、グレインを観察することは での疫学研究倫理審査委員会およびヒトゲノ できなかったが、蛍光顕微鏡で撮影したデジタル ム・遺伝子解析研究倫理審査委員会で審理を経て 画像をイメージングソフトウェアで定量するこ 承認されている。 とができた。このため、この方法も客観的で信頼 C.研究結果 性のあるデータが得られることがわかった。今後 30 は、今回コケイン症候群であると同定された 2.学会発表 NCU-F10 細胞を用いて、ips 細胞を樹立すること 1) 立石 智、江藤 瑞菜: Rad18 ノック をめざす。 アウトマウスの自然発癌の形成 日本 放射線影響学会 第 53 回大会、2010 年 E. 結論 10 月 20-22 日、 京都、 蛍光試薬を用いる簡易細胞診断法により、2 例 2) 柳原 啓見、森 俊雄、立石 智、小 のコケイン症候群の細胞診断を行った。簡便で定 林 純也、小松 賢志: NBS1 の DNA 量的な手段により、診断を行うことができた。 損傷トレランス機構の役割 日本放射 線影響学会 第 53 回大会、2010 年 10 F.健康危険情報 月 20-22 日、京都 3) 柳原 啓見、立石 智、森 俊雄、小 G.研究発表 林 純 也 、 小 松 賢 志 : Potential 1.論文発表 role of NBS1 in translesion synthesis. 1. Song, I.Y., Palle, K., Gurkar, A., Tateishi, S., 日本分子生物学会 第 33 回大会、2010 Kupfer, G. M., Vaziri, C. Rad18-mediated 年 12 月 7-10 日、神戸 translesion synthesis of bulky DNA adducts is coupled to activation of the Fanconi anemia DNA H.知的財産権の出願・登録状況 repair pathway. J. Biol. Chem. 285, (41) 1.特許取得 31525-31536. (2010) なし。 2. Day, T. A., Palle, K., Barkley, L. R., Kakusho, N., 2.実用新案登録 Zou, Y., Tateishi, S., Verreault, A., Masai, H., なし。 Vaziri, C. Phosphorylated Rad 18 directs DNA 3.その他 Polymerase h to sites of なし。 stalled replication. J. Cell Biol. 191, (5) 953-966. (2010) 31 図 1. 紫外線に対する感受性試験。健常ボランティア由来の繊維芽細胞である Mori に比べて、既にコケイン症候群であ ることが確定している繊維芽細胞である Kpsx6 は、紫外線照射に対して感受性を示す。今回、細胞診断を行っている Kps10 も紫外線感受性を示した。 図 2. 不定期 DNA 合成試験 繊維芽細胞に 15 J/m2 の紫外線を照射して直後の DNA 修復にともなう DNA 合成を蛍光で可視化した。健常ボランティ ア由来の繊維芽細胞である Mori に比べて、既存のコケイン症候群患者様由来の Kpsx6 および患者様由来の Kps10 で、 ほぼ同程度の不定期 DNA 合成がみられた。 32 図 3. RNA 合成回復試験 繊維芽細胞に 15 J/m2 の紫外線を照射して 20 時間後の RNA 合成を蛍光で可視化した。健常ボランティア由来の繊維芽 細胞である Mori に比べて、既存のコケイン症候群患者様由来の Kpsx6 では RNA 合成が顕著に低下していることがわか る。これに対して、Kps10 でも RNA 合成が顕著に低下していた。 33 [III] 研究成果の刊行に関する一覧表 【H22.4.1∼H23.3.31】 1.書籍 著者氏名 論文タイトル名 書籍全体の 書 籍 名 出版社名 出版地 出版年 ページ 編集者名 古山晶子、 Cockayne 症候群の 五十嵐隆、 「 こ こ ま で わ 中山書店 久保田雅也 運動発達 かった小児の 久保田雅也 東京 2010 pp170-17 3 発達」 久保田雅也 ヒト随意運動の発達 五十嵐隆、 久保田雅也 「 こ こ ま で わ 中山書店 東京 2010 Pp2-6 東京 2010 Pp114-11 かった小児の 発達」 久保田雅也 MEG を用いた小児 五十嵐隆、 の発達の解析 久保田雅也 「 こ こ ま で わ 中山書店 9 かった小児の 発達」 Hayashi M, Oxidative Miyata stress R, developmental Tanuma N. in Ahmad S brain Neurodegenerati Landes Bi Austin oscience ve diseases 2011 (in press) New York 2011 (in press) disorders. Hayashi M, Hypothalamic lesions Dudas B The Miyata hypothalamus: Science Tanuma N, brain disorders. anatomy, Publishers Fukumizu functions M. disorders. R, in developmental Human Nova and 森脇真一 色素性乾皮症 和 田 他 医学書院 日本 2010 森脇真一 色素性乾皮症 太 陽 紫 外 線 か ら だ と 光 の 朝倉書店 防御研究会 事典 日本 2010 171-175 森脇真一 色素性乾皮症 瀧 川 雅 浩 皮膚疾患最新 南江堂 他 の治療 日本 2011 116 森脇真一 色素性乾皮症 宮 地 良 樹 今 日 の 皮 膚 疾 医学書院 他 患治療指針 日本 印刷中 森脇真一 色素性乾皮症を疑っ 宮地良樹 たらどんな検査をす るか 高齢者の皮膚疾患を 宮地良樹 みたら? 森脇真一 攻 看護大辞典 What s new in メ デ ィ カ 日本 皮膚科学 ルビュー 社 高 齢 者 の 皮 膚 診 断 と 治 日本 トラブル FAQ 療社 34 2010 196-197 2010 94-97 Moriwaki Disorders of DNA Bickers DR S, Kraemr repair. Miyachi Y KH Therapy of Springer skin diseases. 2010 Pp589-95 2.雑誌 発表者氏名 論文タイトル名 発表誌名 巻号 Kubota M, Chida Thermolabile J, Hoshino CPT II Brain Dev H, variants and low blood Koide doi:10.1016/ Epub ahead 2011 j.braindev.2 of print Kashii H, Ozawa ATP levels are closely H, ページ 出版年 010.12.012 A, related to severity of Hoshino A, acute encephalopathy in Koyama A, Japanese children. Mizuno Y, Yamaguchi M, Yao D, Yao M, Kido H Saitsu H, Kato M, STXBP1 mutations in Epilepsia doi:10.1111/j Epub ahead 2010 Okada I, Orii KE, early infantile epileptic .1528-1167. Higuchi T, encephalopathy 2010.02728. Hoshino H, suppression-burst Kubota M et al. with of print x. pattern. Kikuchi E, Kubota Critical illness Pediatr 25 1771-2. 2010 52 664-7 2010 Saitsu H, Hoshino Paternal mosaicism of Clin Genet. doi: Epub ahead 2010 H, M, an STXBP1 mutation in 10.1111/j.13 of print K, OS. 99-0004. M, Kamei K, Ito S. polyneuropathy after Nephrol. septic peritonitis in a boy with nephrotic syndrome. Okazaki K, Kondo High-dose lorazepam for Ped Int M, Kubota M, convulsive status Kakinuma, R, epilepticus in an infant Hoshino A, with holoprosencephaly Kimura H, Itoh S Kato Nishiyama Okada I, Yoneda 2010.01575. Y, x. Tsurusaki Y, Doi H, Miyake N, Kubota M,et al. 久保田雅也 いわゆる熱せん妄の病態 小児科 35 51 935-42 2010 Torii M, Shimoyama Phonemic and Vol 17, No 1 35-39 2010 I, Sugita K., memory Vol 17, No 1 41-45 2010 Vol 3 673-678 2010 Oncol. Rep. Vol 25 879-885 2011 Autopsic study of cerebellar Acta Neuropathol degeneration in siblings 119(4) 513-20. 2010 32(4) 289-92. 2010 32(8) 685-7. 2010 working semantic IMJ in information processing in children with high function pervasive developmental disorders. Sugita K, Suzuki N, Cross-Sectional Oi K, Allen-Tamai for M, Sugita Matching Analysis IMJ Words to Ki, Concepts in Japanese and Shimoyama I. English Languages. Chen S-P, Dong M, Anti-proliferative and Mol. Med. Rep. Kita K,, Shi Q-W, apoptosis-inducible activity Cong B, Guo W-Z, of labdane and abietane Sugaya S, Sugita K, diterpenoids from the pulp Suzuki, N. of Torreya nucifera in HeLa cells. Lu J, Hu G, Kita K., Retrovirus-mediated Suzuki N. transduction hairpin of a RNA GRP78 gene fails downregulate expression cisplatin short for to GRP78 but leads to sensitization in HeLa cells, Oba D, Hayashi M, Minamitani M, Hamano S, Uchisaka N, Kikuchi A, Kishimoto H, Takagi M, Morio T, Mizutani S. with ataxia-telangiectasia-like disorder (ATLD). Hayashi M, Hachiya An autopsy report of case Brain Dev Y, Arai N. showing repetitive hypoglycemia and unique cortical dysplasia. Miyata R, Sasaki T, Low dose of levodopa is Brain Dev Hayashi M, Araki S, effective for Shimohira in Kohyama J. M, dystonia laryngeal xeroderma pigmentosum group A. 36 Hayashi M, Miyata Decrease R, Tanuma N in Neuropathology Epub acetylcholinergic neurons ahead 2010 of print in the pedunculopontine tegmental nucleus in a patient with Prader-Willi syndrome. 52 森脇真一 皮膚科領域の遺伝医療 皮膚科の臨床 森脇真一 色素性乾皮症 日 本 皮 膚 科 学 120 会雑誌 森脇真一 色素性乾皮症 小児科臨床ピ クシス(中山書 店) 小児科 51 森脇真一 色素性乾皮症 森脇真一 色素性乾皮症 森脇真一 遺伝性光線過敏症の分子 日 本 皮 膚 科 学 120 診断と患者ケア 会雑誌 日 本 小 児 皮 膚 29 科学会雑誌 351-358 2010 1861-1867 2010 64-65 2010 670-671 2010 1-5 2010 2582-2583 2010 acid J Hirata Y, Koga S, 5-Aminolevulinic (ALA) mediated Dermatology, Fukui N, Yu A, photodynamic therapy Koshida S, to superficial malignant Kosaka Y, skin tumors using Super LizerTM Moriwaki S Takahashi Y, Endo Y, Sugiyama Y, Inoue S, Iijima M, Tomita Y, Kuru S, Takigawa M, Moriwaki S Novel XPA Gene J Invest 130 Mutations Resulting in Dermatol Subtle Truncation of Protein in Xeroderma Pigmentosum Group A Patients with Mild Skin Symptoms. 37 in press 2481-2488 2010 Bradford PT, Goldstein AM, Tamura D, Khan SG, Ueda T, Boyle J, Oh K-S, Imoto K, Inui H, Moriwaki S, Emmert S, Pike KM, Raziuddin A, Plona T, DiGiovanna JJ, Tucker MA, Kraemer KH Song, I.Y., Palle, K., Gurkar, A., Tateishi, S., Kupfer, G. M., Vaziri, C. CANCER AND J Med Genet, NEUROLOGIC DEGENERATION IN XERODERMA PIGMENTOSUM: LONG TERM FOLLOW-UP CHARACTERIZES THE ROLE OF DNA REPAIR Day, T. A., Palle, K., Barkley, L. R., Kakusho, N., Zou, Y., Tateishi, S., Verreault, A., Masai, H., Vaziri, C. Tanuma N, Miyata R, Kumada S, Kubota M, Takanashi J, Okumura A, Hamano S, Hayashi M. Phosphorylated Rad 18 in press 285 31525-31536 2010 J. Cell Biol. 191 953-966. 2010 Brain Dev 32 435-9. 2010 Rad18-mediated translesion J. Biol. Chem. synthesis of bulky DNA adducts is coupled to activation of the Fanconi anemia DNA repair pathway. directs DNA Polymerase η to sites of stalled replication. The axonal damage marker tau protein in the cerebrospinal fluid is increased in patients with acute encephalopathy with biphasic seizures and late reduced diffusion. 38 [IV] 参 考 資 料 「 コ ケ イ ン 症 候 群 ( CS) の 集 い 2010」 資 料 「コケイン症候群(CS)の集い 2010」開催のご案内 コケイン症候群(以下 CS)は 100 万人に 1 人に発症する珍しい遺伝病です。現在、日本では CS 患者さんは 30 数人い るといわれていますが、人数が少ないために医師やその他の医療従事者の間でも CS という病気の存在が認知されていな いのが現状です。病気の特徴は早くに年をとる。紫外線に弱く皮膚に炎症がおきやすい、耳が聞こえなくなる、目が見え なくなる、歩くのが困難になって車椅子での生活を余儀なくされる、などの特徴を有し、ほとんどの子供たちは 20 歳ま でに亡くなっていきます。残念ながら現在の医療ではCSの治療法はありません。 今から 15 年前に日本で、CS という同じ痛みを共通の思いとして子供達、家族同士で分かち合い、その活動を支援する 会として CS 家族会(「分かち合いと助け合い日本コケイン症候群ネットワーク」)ができました。この家族会はこれまで に色々な活動をしてきましたが、もっと多くの方にこの病気の存在を知って頂きたいと思い、このたび日本ロレアル株式 会社からの多大なるご支援とご協力により「CS の集い 2010」を開催させて頂く事となりました。また、今回、会社の方 のご厚意により CS の子供達、お母様に日焼け止めクリームをたくさんプレゼントして頂きました。クリームと一緒に届 いた暖かい気持ちのプレゼントを受け取り、毎日、子供達とお母様、ご家族は一生懸命に生きておられます。どうぞそん な子供達とご家族にぜひ会いに来てください。 日時 平成 22 年 10 月 31 日(日曜日) 10 時開始(予定) 内容 コケイン症候群患者会の紹介および会の歩み,患者会父兄より ロレアル 100LOVE HANDS PROJECT によるハンドマッサージ 場所 事前のお申し込みは必要ありませんので、直接会場にお越しください。 詳細につきましては 03-6911-8572 増井・望月までお問い合わせいただきますようお願いいたします。 39 コケイン症候群(CS)の集い2010 10月30日(土曜);医療従事者向け(医師、看護師、介護師、理学療法士など) 司会;森脇 真一(大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学) 13時 日本ロレアル挨拶 13時5分 CS ワークショック開始(座長;森脇、林先生) 発表時間は討論込み 13時5分∼13時10分 挨拶、「CS オーバービュー」 森脇 真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 13時10分∼13時40分 「CS の疫学と臨床」 星野 英紀 先生 国立成育医療研究センター神経内科 13時40分∼14時10分 「CS の遺伝と分子細胞診断」 森脇 真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 14時10分∼14時40分 「CS 研究 最近の進歩」 林 雅晴 先生 東京都神経科学総合研究所神経発達・再生(臨床神経病理) 14時40分∼15時10分 「CS モデルマウスの解析」 中根 裕信先生 鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲノム形態学分野 (コーヒーブレイク) 司会;森脇 15時30分∼16時 「CS 家族会の活動と歩み」 CS家族会 土屋代表 16時∼16時15分 「CS 遮光対策と本セミナー総括」 森脇 真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 16時15分 日本ロレアル挨拶 16時20分∼ 18時 ケイタリングでの簡易懇親会 当日参加医師、CS 患者家族、日本ロレアル社員様、関係者など 40 10月31日(日曜);一般市民向け 司会;西谷 かつ江(大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学、医療コーディネ ーター) 10時 日本ロレアル挨拶 10時5分∼10時30分 「CS 患者さんとともに20年」 (患者 DVD 上映含む) 森脇 真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 10時30分∼10時55分 「CS 患者さんのケアと他国 CS 家族会の現況」 杉田 克生 先生 千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門 (コーヒーブレイク) 11時10分∼11時30分 「日焼け止めの使い方」 (できればデモ付きで) 日本ロレアルのご担当者様 11時30分∼11時50分 「CS 家族会の活動と歩み」 土屋代表 11時50分∼12時30分 「CS 患児とともに」 「患児の思い出」(仮題) CS 患者保護者 数名 12時30分∼ 簡易懇親会(サンドイッチ、ジュース、お茶など) パンフレット配布、署名活動(ブース) 日本ロレアル 日焼け止め展示(ブース) CS 患者想い出の品・写真など展示閲覧、ポスター展示(家族会の歩みなど) CS 患者さんと市民との触れ合い CS 患者;ボランティアが面倒みる 患児母親;エステ体験、化粧体験など(13時∼14時30分) 15時 終了 懇親会場にて挨拶 (森脇、日本ロレアルご担当者様) 41 [V] 班 員 名 簿 コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班 区 分 氏 名 所 属 等 職 名 研究代表者 久保田雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長 研 究 分 担 者 杉田 克生 千葉大学教育学部養護教育学基礎 教授 医科学部門 林 雅晴 財団法人東京都医学研究機構 副参事研究員 東京都神経科学総合研究所 森脇 真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学 教授 講座皮膚科学 中根 裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学講 助教 座ゲノム形態学分野 立石 智 熊本大学 発生医学研究所 発生制 講師 御部門 田沼 直之 都立府中療育センター小児科 医長 熊田 聡子 都立神経病院神経小児科 医長 星野 英紀 国立成育医療研究センター神経内科 医員 研 究 協 力 者 柏井 洋文 国立成育医療研究センター神経内科 フェロー 太田さやか 国立成育医療研究センター神経内科 フェロー 寺嶋 宙 国立成育医療研究センター神経内科 フェロー 小俣 卓 千葉県子ども病院神経科 医長 杉田記代子 東京歯科大学市川総合病院小児科 非常勤医師 喜多 和子 千葉大学大学院医学研究院環境生 講師 化学講座 42