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初期発生の組織化学的研究

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初期発生の組織化学的研究
2165
初期発生の組織化学的研究
一モザイク卵について一
金沢大学医学部第二病理学敏室(指導石川太刀雄教授》
專攻生 西 田 守 治
丑forIんα四るユ〉ぜSゐ掘α
(昭和30年10,月18日受附)
次
目
序 言 ・
第1節RNA
第1編Isopodaの正常発生
第2節 D:NA
第2編 組織化学的検:索成績
第4:章 Glycogen
第1章Amino acids
し
第5章 Minerals
第1節Cystine及びCysteine
第1節Ca
第2節 Tyrosine
第2節:Fe
第6章Enzymes
第3節 Tryptophane
第4節 Histidine
第5節 Arginine
第;1節 Alkaline:Phosphatase
第2節 Acid:Phosphatase
第6節 :Basic Aminoacids
第3編 考 按
第2章: Glycoprotein
第4編 結 論
第3章Nucleic acids
文 献
序
操
受精卵から,全一・的な機能をもつ複雑な生体
る.それ故私は,これら基質並びに酵素系に亘
に発生するまでの過程は,謂わぽ,非常な短期
る系統的な組織化学的検索方法に基づいて,胚
聞中に行われるく基質一酵素系〉間の著明な非
発生過程を吟味することにした.脊椎動物,殊
可逆的生化学反応の結果が,細胞形態に其象化
に両棲類胚,鶏胚に関しては,その正常発生過
して行く過程と理解することが出来る.従っ
程,:並びに胚域の誘導一反応系に関する実験形
て,組織細胞の形態的分化の過程,及びその機
態学的研究も詳細に亘っている.叉その生化学
能を解明するに当っては,先ず,その部に行わ
的研究に関しては,敏室民野,若野,倉田,井
れている生化学的変化の過程,生化学反応の特
上等の組織化学,酵素化学,琵疫化学的研究業
異性を追究しなければならない.生化学的反応
績がある.これら脊椎動物調整卵の胚発生過程
並びに物質の局在性を形態に即して論ずるに当
と比較検討するために,私は,節足動物IsOpoda
っては,目下のところ組織化学的検索方法によ
をえらびその組織化学的研究を進めることにし
るのが至当である.今日,組織化学的に検証し
た.しかし,節足動物の発生に関しては,その
得る物質の種類も,かなり多く,且つ,その:方
研究は極めて少なく,昆虫,甲殼類の二三に,
法,確度に対しても多くの吟味がなされてい
文献を見るに過ぎない.
【85】
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西
田
両棲類胚や,鶏胚では,はじめから調和憶説
材料に選び正常発生における核行動と分化の過
系にあり,脊索中胚葉がOrganizerとして,爾
程を追究し,面体の分化中心と形成中心とを決
後の胚域分化に主導的役割を演ずる.
定し,更に各胚葉分化より器官形成までを追求
これに対し,無脊椎動物の中には,モザイク
した.ついで,その成績の上に立って,生化学
卵が多く,且つ,節足動物は,申黄卵で,分裂
的物質の分布歌話を組織化学的に調査した.そ
核の移動によりSeidelのいう如く造形中心,
の結果,その時間的,室間的転換白重に一定の
分化中心が現われてくる.従って,これらの初
秩序性を見出し,組織分化の過程を脊椎動物の
期胚では核の行動と卵黄内,化学的物質分化の
それと比較し,興味ある結果を得たのでこれを
歌態との二面より追究されなければならない.
まとめて発表することにした.
私は発生期を追って入手しやすいIsOPodaを
第1編Isopodaの正常発生
節足動物を実験材料とする場合,第一の困難
生の上に大きく左右するものである.受精核は
は,材料の牧集と組織切片作製の困難さとにあ
盛んに分裂して,分裂核(Cleavagemlclei)とな
る.それ故に,従来,動物学者においてさえも,
る.この際,卵黄を含む卵の大部分は分裂に関
その正常発生に関する実験は余り行われていな
与せず,第一次卵黄ピラミ。ドを形成し,核は
い.まして,実験発生学的に取り扱われている
その周囲の僅少の細胞質を件って分裂して分割
場合は少ないので,その発生の誘導一反応系
細胞になるに過ぎない.核分裂が5∼6回進み,
や,細胞分化に関しては未詳の領域が多いので,
分割細胞が32∼64個に達した時,その50%の分
先ずIsopodaの正常発生をHematoxyllneoslne
割細胞は上昇して卵表の周縁原形質に達する.
染色標本によって追究することとする.
卵表にはうすい細胞質性の膜が出来,核はその
Armadi11idium vulgare lま,節足動物門,甲殻
部に密着する.心内卵黄の間に分散している分
綱,等脚目に属する.卵胎生をなすので,初期
裂核は,その周囲に卵黄密粒が集り,卵黄粒団
胚を多:量入手するに便である.叉一般節足動物
を形成し,卵黄核となるが,これは,その後出
卵は,抵抗性の張い卵膜につつまれた牟流動性
んど分裂することなく,やがて消失する.
の卵黄からなっているので,その切片を作るに
第2其月 ]Blastula
は諸種の困難を件うが,このIsopodaは,前処
周縁原形質に達した分裂核は,やがて卵黄の
置することなく比較的容易に切片にし得る利点
誘導によって,胚表の一側にBlastderm(胚胞
がある.脱卵膜のための前処置を必要としない
膜,胚盤)を形成するに至る.この時期はB】ast−
から,組織化学的検索の上にも障碍がなく,使
ula(胞胚期)に相当するわけである.この時期
用出来る利点をもつ.
Isopodaの発生過程の詳細は研究されていな
までの胚発生には,卵黄に存する生化学的勾配
が,大きな意味をもっといわれている.
いので,これを追究した結果は次の如くであ
胚胞膜形成部位は,卵の上面叉は,歯面で後
る.
者の方が多い.この部の細胞分裂は盛んであ
第1期 分割期
り,かなり広い【:Blastodermを形成するに至る.
受精卵が中黄卵である点は,他の節足動物と
Blastodermの内,將来のCephalic lobeにあた
同様である.従って,受精核は僅少の細胞質を
る細胞に肥厚が認められる.
その周囲に含んで,卵の申央に位置する.この
第3当月 (3astrula
核の位置並びに卵黄の分布欣態は,高来の胚発
Blastodermの細胞分裂が進み,この部に100
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初期発生の組織化学的研究
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細胞も出来ると,この局部的増殖の故に,内側
一対の覗葉は,円柱歌細胞からなる轡曲した
に陥入しはじめる細胞が現われて来る.始め
蓮結組織によって結ばれるが,これは上唇の原
は,数個に過ぎないが,やがて,大量となり,
基となる部分である.
これがGastrulatfon(陥入蓮動)である.かく
叉,覗:葉と胸腹部原基との問の触角及び顎原
て,卵内に陥入’じた細胞のあるものは,外側の
基も,著明になって来る.
胚葉に滑って移動し,これを裏打ちする.これ
胸腹部原基は,同規体節を成形し,その腹側
はMesodermとなるもので,この移動の前端
に脚原基が形成されはじめる.
は,外側の外胚葉のCephalic Iobeの前端に一
この頃,受訴の前端及び後端の2ヵ所より外
致している.外胚葉に滑わないで,内側に陥入
胚葉の乱入が始まる.前方は前腸を形成し,後
して行くのは,やがてEndodermを形成する.
:方は後詰となるもので,何れも浩化器官形成に
かくて,この時期において,外胚葉,中胚葉,
与かる外胚葉域である.
内胚葉の3胚葉分化が出現するわけである.
一方,二面の外胚葉からは,將来,二丁系を
第4期Cepbal{c lobe,及びLiver Saccule
形成する出域が陥入し,祠1経節を形成するに至
形成期
る.:Liverは胚体内の大部分を占め量的には広
表層細胞は,陥入と同時に卵黄から離れて陥
い.
入口の方に移動する.従って,陥入部における
第6期 諸原基完成期
細胞質性表暦は肥厚し,陥入口は次第に卵内方
前腸及び後腸の陥入は更に進み,陥入口は夫
に凹入する.
々口と肛門を形成する.一方,内胚葉からは中
MesodermはEctoderm及びEndodernlに滑
腸が形成され,これと,外胚葉性の前,後腸が,
って,盛んに移動するが,それと同時にEcto−
夫々前後で連絡し,前,申,後腸よりなる1本
の腸管が完成されるに至る.胚二丁側の外胚葉
dermの肥厚が,部分的に張くなる.この肥厚
部としては先ず,陥入部より前方に一対の外胚
に肥厚部があり,その下にある中胚葉塊は,外
葉肥厚の終結部が認められ,やがて,陥入口に
胚葉に接近して,心臓を形成する.心臓は,腸
まで達するV字型を形成する.CephaHc Iove
管の背側に位置する細長い管で開放血管系であ
(脳葉,覗葉)原基で,將来両眼,脳示申経節を形
る.この時期に至ると,附属肢の原基は分岐し
成する部分にあたる.
各体節に一対ずつの附属肢をつけるに至る.各
陥入口後方部は,胸腹部原基となる胚域で,
附属肢の基部にあたり,大形の明瞭な核をもつ
脳葉と胸腹部原基との間に,やがて,触角原基
た細胞集団よりなる減軽節と,これを蓮絡する
と顎原基が形成される筈である.
紳i経線維とがある.
一方陥入口の内側,両側に内胚葉による1・iver
頭部には脳祠二二があり,これは,食道下祠1
Sacculeが一一対現われる.このLiver Sacculeは
経節と橋によって連絡し,それらは,上記胸腹
やがて,卵黄を含む大きなSacc.となるが,脊
音山中二二と祠i経線維によって,蓮絡するように
椎動物のHverとは大分意味が違うようであ
なり,一連の祠1経系が完成するわけである.二
る.
葉は,やがて覗細胞を形成し,一対の複眼とな
第5期 前腸,後腸陥入期
る.
陥入口は,胸腹部原基の連合によって出来た
生殖器は,購牝前に背部に原基として存する
突起によって閉じる.
に過ぎない.
【87】
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第2編 組織化学的検索成績
受精卵より卿化に至るまでの各発生期につい
て述べることとする.なお,濃度記載は,次の
て,組織化学的に検索した結果,発生に件う生
標準に従った.陰性(一),痕跡∼弱陽性(∴),
化学物質の分布,濃度勾配の上に興味ある結果
陽性(+),中等度陽性(+),強陽幽紛,最彊
’
陽性(柵).
を認めたので,基質並びに酵素系に亘る系統的
な組織化学的検索成績の内,著明なものについ
第1章 Amino acids・
Amino acidsは基質として,原形質内の重要
強い.
な役割をもつものであるが,Isopodaに著明な
第3期 :Blastodermよりの陥入細胞の内,離
ものに,Cystine−Cysteine, Tyrosine, Tryptoph−
れて卵黄中を遊走したものは内胚葉上皮を形成
ane, Hlstidlne, Argllline,:Basic Aminoaclds,等
し,一部は中胚葉を形成して来る.この間SS−
がある=
SHの分布は殆んど陥入部外側及び内側の細胞
第1節 Cystine(一S.S一)及び
との区別がつかず(+),鼠紙においても細胞質
CysteiDe(一SH>
との差は認められず(+),一方卵黄は前期より
含硫アミノ酸としてSS−SHの組織化学的検
索方法には:Nitroprusside反応を利用するBu血
弱く,弱陽性となり(∴),全体一様の分布を示
す.
法,Serra』法,Ferricyanideを用いるChevermont
第4期Gastrula初期に既に肥厚しはじめた
−Frederic法, Ditet■azolium塩を還元する法等
Ventral Plateはこの時期になると,中胚葉に裏
が存するが,大原,倉田,芳賀による鉛塩法が
打ちされた一対の外胚葉の絡結部として認めら
鮮明であるので,これを用いた.
れ,陥入口まで達するV字型のCephalic lobe
実 験 方 法
を形成する.このCephalic lobeの分布度は(+)
1.10%Formalin固定,1∼3日聞.
を示し,その裏打ちをなしている中胚葉との差
2.水洗後反応液に浸す,60∼80。C 10∼15時.
も認め難く,又細胞内分布上の差も付けること
3.睨水,Para伍ne切片とし,:BalSam封入.
が出来なかった.陥入部後方には胸腹部原基が
実 験 成 績
形成されるのであるが,これもCephalic lobe
第1期 SS−SHは分割細胞の方に臨く存在
と同工(+)である.叉一方内胚葉系細胞からは,
し,その染色度は全体として(ギ)であるが,分
陥入口の両側に:Liver Sacculeとこれを結ぶ
割細胞内でのSS−SHの分布には差がある.即
Endoderm系EP{thellumが現われるが,これ亦
ち,原形質膜と細胞質に強く(紛に存在し,核
同じく(+)で,細胞内分布上の差はない.卵黄
では核膜,核質,核内穎粒の区別が付し難い
においては(十)であり,Llver Saccule内の卵黄
が,細胞質より弱く痕跡程度である。卵黄には
には特に強く出たが,Liver Sacculeより幾分劣
差がなく,一様に細胞質より梢ミ弱く弱陽1生で
っていた.
ある.
第2塑 :Blastodermの細胞の分裂は盛んで,
第5期 全体的に陽性度は前期と同等なる
も,卵黄は本期においては,殆んど陰性であ
原形質膜,細胞質は前期同様(+)であるが,核
る.これは栄養源として吸牧されて行き,その
においては前期より強く(十)に現われる.一方
性質も変化するためであろう.陥入口は,胸腹
卵黄は前期に比し反応は相当醜く,細胞と同程
部原基の蓮合によって出来た突起により閉じは.
度に現われ(+),Blastodermより離れた部位に
じめる頃,外胚葉の陥入が胚体の前端及び後端
【88】
初期発生の組織化学的研究
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から始まり,前記及び空腸が形成されるのであ
闘の卵黄に多く(十),他部は少なく(十)に認め
るが,その部にては前腸及び後腸の差なく(+)
らる.
に認められ,叉腹側に出来た顎脚原基において
第2期 :Blastodermの部の細胞の分裂は盛ん
も(+)に認められるが,その内側に存するMeso−
で前期同檬,原形質膜(十),細胞質(十)であ
derm系に梢ミ弱い部を見出す.
り,核においても全く同じく,核膜(+),核質
Liver SaCCuleは電話にては胚体の大部分を
(∴),核内顯粒(+)と存在する.一方卵黄にお
占めるに至り陽性度は(+)に現われた.
いてはBlastoderm形成部位に(+),その他に
第6塑 外胚葉i生め脳祠1経飾は(+)に見ら
は(十)である.
第3期:Blastodermからの細胞の陥入部を見
れ,これと橋で連結する食道下軽軽節も同度
(ヨニ)であり,胸腹部祠1経索亦同仁であるが,特
ると,陥入部外側に多く(+),内側に少なく
に該榊経索外膜には強い反応を示す.触角原基
(+),現われる.細胞内分布は明確に区別づけ
から分化した触角,顎脚も同職である.附属肢
ることが出来なかった.:更にこの陥入・部を詳し
においては,その外側のキチン質の存在を確め
く見ると,陥入部を申心として,外胚葉,及び
・ることが出来ず,結締織組織に前記祠1経節と同
中,内胚葉共陥入部より離れた部位においては
好であった.腸管は前,中,後日と,その発生
弱くなる勾配が存在する.一:方卵黄はTyr・の
胚域を異にするが,陽性度は差を認めず弱陽性
分布が弱くなり,弱陽性(∴)で,1期,2期に
(∴)であり,心臓は呈色せず(一).Liver Saccle
比し少なく,卵黄全体は一様の分布を示し,特
は僅かに認められる(∴).尾脚は弱陽性で腸管
に陥入部において変化は認め得なかった.
と同度である.
第:4期 Gastrula初期に既に肥厚しはじめた
Ventral Plateより生ずるCephalic lobeの分布
第2節 Tyrosine(Tyr.)
度は(→’∼刊)を示し,その裏打ちをなしてい
芳香族アミノ酸として,Tyr.の検禺には,
る申胚葉に比し非常な差を現わしている(中胚
諸種の組.織化学的証明法がある.
葉は弱陽性(÷).細胞内分布上の差は付けるこ
Millon反応を利用するものにPollister, Serra,
Bensley−Gershの諸法があるが,α一Nitroso一β一
Naphtholを用いる大原,倉田法が鋭敏度にお
いてすぐれているので,これを用いることにし
た.
とが出来なかった.陥入部後方には,胸腹部原
基が形成される.これもCephalic lobeと油島
(→二(・十十)である.叉一方内胚葉系細胞からは陥
入口の両側にL{ver Sacculeと,これを結ぶ
Elldoderm系Epitheliumが現われるが,これ
実 験 方 法
はCephalic Iobeより弱く(十)認められ,細胞
1.:Formalin固定,:Parafane切片.
内分布上の差はない.卵黄には,非常に弱く痕
2。0.2%α一Nitroso一β一Naphtho1の70%
Alkoho1溶液を切片上にたらし,2∼3分間加
跡的(∴)となり,ただ1・iver Saccule内卵黄の
熱,30%HNO3を滴下すれば,数滴にしてTyr・
み少しく彊く弱陽性に認められる.
は赤色となる.
第5期全体的に見て,陽性度は前期に比し
実 験 成 績
非常に少なくなり,卵黄は殆んどなく,痕跡程
第1期Tyr.は全体として(+)に存在する
度となる(前期卵黄より幾分弱い).外胚葉の
が,分割細胞内でのTyr.の分布には差があり,
陥入が胚嚢の前端及び後端から始まり,前幅及
原形質膜(→二),細胞質(+)と現われ,細胞原形
び後幅が形成されるのであるが,その部にては
質膜に弧く,核においては,核膜(十),核質(∴),
回腸及び後指の・差なく(+)に認められ,叉腹側
核内穎粒(+)と,矢張り核膜に幽く存在する.
に出来た顎脚原基においては,梢ζ彊く認めら
卵黄には,部分による差があり,特に分割細胞
れるが(十∼十),その内側のMesoderln系に
【89】
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弱い部(+)を見出す.:Lives SaCCuleは本意に
ては胚体の大部分を占めるに至るも前期に比し
(十)に検出され,特にLiver Sacc・内の卵黄は
(甘)でTry.の存在が張い.
第5期 卵黄は栄養源として心魂されて行く
.弱い(弱陽性).
第6期諸原基完成に件いTyr.は豆蒔減少
につれてTry.検出度も減少し来るが,1・iver
して来る.外胚葉性の脳祠軽節は(+)に見ら
Sacc.内卵黄は(+)で彊く残る.外胚葉陥入に
れ,食道下輩1経節も同胞(+)であり,胸腹部紳
よって形成される前輪及び後腸では痕跡的に見
経索亦同度である.触角原基から分化した触
られ,腹測の顎脚原基には外側の表皮に(+ン
角,顎脚も同法である.附属肢においては結締
で,身体の大部分を占めるLiver Sacc.の細胞
織組織に前記祠1経節と同度(+)であった.腸管
には全く認められない.
は前,中,後腸と,その発生論意を異にすると
第6期 Try・は始めから細胞には余り認め
共にTyr.の分:布も異なり,外胚葉系の前当
られず,卵黄に存在していたが,諸原基完成期
(十),後腸(十)に弧く,内胚葉性の中腸に弱い
となると,卵黄にも殆んど認められず,ただ外
(十).心臓は(十),1・iver Saccule(十)で,内部
胚葉性の脳祠1経節(み),食道下直1経節(∴)に見
の卵黄には認められず,尾脚(+)である.
られ,脳祠i経節後方の脳線維に幾分彊く弱陽性
第3節 Tryptophalle(Trγ.)
に見られる.その他の部にては全く陰性であ
111doL核をもつTry.の検出には, Romieu反
る.
応を用いるもの,Serra法等,があるが, Ehrlich
試薬を用いて検出する方法に従った.
第4節Histidine(His.)
Hjs.の組織化学的証明にはPalllyのDiazo
実 験 方 法
反応を利月」して証明する:Brunswik法一大原・
1・Formar量n又はAlcohol固定, Para伍ne切片.
倉田変法による.
2.Ehrlich試薬に浸す.
実 験:方 法
実 験成 績
1・Formalin固定或いはAlcoho1固定,:Paraf6ne
第1期 分割細胞自体には全く認められず,
切片.
卵黄に陽性である(干). 卵黄には平均的に見
2・0・7%NaOHに調製したDiazo試薬を0.1∼
られ,特に恥い分布を示した所はなかった.
0・2%に溶かした液に約20分投ず.
第2期Trγ.は本期にても細胞には認める
3・塩水一透明化一:Balsaln封入.
強く(朴),それより離iれるにつれ弱くなってい
実 験 成績
第1期His.は分割細胞において,卵の辺
る.
縁部に存するものも,なお細心部に残っている.
ことが出来ず,卵黄では,Blastodermの部位に
第3期 細胞には依然検出することが出来
ものも差は殆んどなく,何れも(+)程度であ
ず,卵黄の検出度は前期より劣り.第1期と同
る.しかし,各個の分割細胞について詳細に記
感(十)であり,その分布歌序はTeloblast附近
すと,原形質膜(朴),細胞質(十),核膜(什),
の部に働く,反対側に行くにつれ弱くなる.
核(∴)である.卵黄は細胞より弱く弱陽性に認
第4期 Cephahc Iobeが形成されるが,この
められる.
時は,外胚葉(一),中胚葉も亦(一)である.陥
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
入部後方には胸腹部原基が形成されるのである
は,一層のBlastoderrnを形成する.この:部の細
が,これも全く認められない.叉一一方内胚葉系
胞の分裂は盛んであるが,個々の細胞について
細胞からは陥入口の両側に:Liver. Sacc.ど,
は前期と大差なく,原形質膜(暑),細胞質(+),
これを結ぶEndoderln系Epitheliulnが現われ
核膜(什),核(∴)である.一方卵黄は前期卵黄
るが,これ亦陰性である.しかし,卵黄は依然
より少しく弱く痕跡的(∴)で,分布ナ伏態は一様
【90】
初期発生の組織化学的研究
である.
2171
実 験 方 法
第3期 この時期の外胚葉は(ギ)で,陥入し
て行く中胚葉及び内胚葉は(+)で,外胚葉より
癌性:Formalin固定, Para缶ne切片後,衣の反応
液に浸す.
梢ζ弱く同様に核において少しく弱いようであ
0・1%a−Naphthol及び15%NaOH,0・3:N・Nac10
るが,分布度は差を付す程度まで弱くない.卵
をi欠々に滴下する時は,赤紫色を呈する.しかし標本
黄は前期より幾分強く現われTeloblast側に多
が破損し易く,鮮明度も短時間で腿回するため,直ち
に検鏡する.
く(十),反対側には弱陽性である,
:第4期 Gastrula初期に既に肥厚しはじめた
実 験 成 績
vent「al Plateは,この時期になると,中胚葉に
第1.期 Arg.は分割細胞には,全体として
裏打ちされた一対の陥入口まで達するV字型の
(十)であり,分割細胞内での分布には差を認め
Cephalic lobeを形成する.このCephalic lobe
難い.卵黄には極く僅かに認められ(∴),細胞
の外胚葉では分布度は(+)で,その下面にある
より微弱で,全体一様の分布を示した.
中胚葉は(+)である.細胞質,核の差は認めら
第2期 二二の周縁原形質に達した分裂核
れない.陥入、口より後方部は胸腹部原基となる
は,一丁の:Biastoderlnを形成する.この部の
所であるが,この部のHis.はCephalic Iobe
細胞の分裂は盛んであるが,Arg.分布は前期
と同訓である.叉一方陥入口両側の内胚葉性の
と全く同様である.即ち,細胞質,核共に(十)
1・iver Sacc・もCephallc Iobeと同度(十1であ
であり,細胞内分布上の差もなく,叉卵黄は全
る・卵:黄においてはLiver Sacc.内卵黄のみ
体一様に痕跡的に認められる.
Liver Sacc・と同歯(+)で,他はそれより弱く
第3期 Blastodermの細胞増加により,その
(+)である.
一部が内側に陥入し陥入細胞となる.これら陥
第5期 卵黄の田s.は殆んど検出されない.
入細胞のArg.の分布は陥入部外側,及び内側
陥入口が胸腹部原基の連合によって出来た突起
の区別なく一様に(十)であり,細胞質,核との
により閉じはじめると,胚体の前端及び後端か
差もっけ難い.一方卵黄は前期より幾分張く弱
ら外胚葉の陥入が始まり,前腸及び後腸が形成
陽性であった.
されるが,何れも(十)で,叉腹側に出来た顎脚
第4期 Cephalic lobeを形成する外胚葉の分
原基では(+∼→=)である.:Liver Sacc.には
布度は(+)を示し,その裏打ちをなしている申
殆んど痕跡的となっている.
胚葉との差も認め難iく,階入口より後方部の胸
第6期外胚葉性の脳山膚節(十),これと橋
腹部原基にても(十)であり,細胞内分布上の差
により蓮結する食道下学1経節亦(+)であり,胸
も明確に区別づけられない.叉一・方内胚葉系細
腹部紳三富も七度である.触角原基から分化し
胞からは,陥入口の両側に:Liver Sacc.とこれ
た触角,顎脚も同様(十)である.附属肢におい
を結ぶEndoderm系Epithel{Umが現われるが,
ては外山俵皮には(+),内部の筋肉には(+)で
これは幾分張く(什)認められる.卵黄において
あった・腸管は前腸,嘉応,及び後干と,その
は弱陽性でLlver Sacc.内の卵黄に特に強く現
発生胚域を異にするがBis・検崩度には差は付
われるということはない.
し難く一一脚こ(+)である・胚体背側の心面こは
第5期卵黄はその量も減少すると同時に
全く認められず,Lfver Sacc.も陰{生である.
Arg.は全く見られず陰性である.
外胚葉の陥入が胚体の前端及び後端から始ま
第5節Arginine(Arg.)
GuanidiDe基をもつArg.は坂口反応を用い
て証明する.
り,前腸及び後腸が形成されるのであるが,そ
の部にては晶晶及び後腸の差なく(+)であり,
叉腹側に出来た顎脚原基にては非常に強く(暑)
【91】
2172
田
西
現われるが,その内側に存するMesoderm系に
梢ζ弱い部(+)を見出す.
た.
第3期Blastodermの細胞増加により,その
1・iver Sacc・は本期にては胚体の大部分を占
一部門内側に陥入し陥入細胞となる.:BAA.の
めるに至り減少して痕跡的(∴)となる.
分布度は陥入部外側及び内側の細胞は同程度で
第6期 Arg・の分布は,全体的に見て大体
(粁),細胞内分布の差もない.
一定して来る.外胚葉i生の脳祠軽節は(十)に見
Te1・blastより外側に行くにつれ減少して行
られ,食道下二品節も同度(+)であり,胸腹部
く.卵黄は前期同語である.
棘経索亦同度である.触角原基から分化した触
第4期 Ce1)halic Iobeの外胚葉の分布度は
角,顎脚も三度であり,附属肢においても(+)
(什)を示し,その裏打ちをなしている中胚葉と
であるが,その内側の筋肉系には(+)と梢ぐ弱
の差を認め,三胚葉は梢ζ劣っている(+)・陥
くなっている.腸管は前面,申腸,及び後腸と
入部後方には胸腹部原基が芥多成され,これも
Arg・の分布は差を認めず(+)である.面体背
Cephalic lobeと同素(十十)である.又一一方内胚
側にある心臓は弱陽性であり,1・iver Sacc.は
葉系細胞からは陥入口の両側に1・iver Sacc・
痕:跡的となっている.
とこれを結ぶEndoderm系Epithellumが現わ
れるが,これ亦同じく(++)で,細胞内分布上の
第6節:Bas{c amino acids(BAA.)
差もない.卵:黄に:おいては:Liver Sacc.内卵黄
教室大原は一定域でTropeolin−oがBAA.
と結合する反応を応用しArg.:H is.:Lysine.等
を組織化学的に証明することに成功した.今そ
れに従って,胚葉各域,各種原基のBAA,の検
に動く(+),その他の部にては非常に少なくな
っている(∴).
第5期卵黄内BAA.は殆んどなく,ただ
Liver S乙乳cc.内卵黄に彊く残る(十十).陥入口は
出を行った.
胸腹部原基の連合によって出来た突起により閉
実 験 方 法
1.中性F・・maline固定, Par醐ne切片.
じはじめると,外胚葉の陥入が胚体の前端及び
2・pH】・2∼1・8の0・5%Tropeo】in−0
後端から始’まり,前回及び後腸が形成されるの
3.塩酸酸性液にて弁色.
であるが,その部にては(+)に見られ,前腸及
BAA・は美麗な黄褐色乃至黄色に染まる.
び後腸の差は認められない.叉腹側に出来た顎
実 験 成 績
第1期 BAA・は分割細胞内では,原形質に
脚原基は(十)である.
Liver Sacc.は盛期にては赤面の大部分を占
彊く(+),核に弱く(+)認められる,卵黄は原
めるに至りBAA.は(十)に現われた.
形質と同檬程度(+)に見られ,殆んど卵黄,細
第6期 外胚葉性の脳祠1経節は(+)に見ら
胞原形質の区別はつぎ兼ねた.
れ,食道下祠i経節も同誌であり,胸腹部祠1魚崎
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
亦(→二)である.触角原基から分化した触角,顎
は,一暦のBlastodermを形成する.この部の
脚も(1●1)で,附属肢においては外側の表皮及び
細胞では,細胞質,核の区別はつけ難く一謙に
筋肉共に(+)を示し,腸管は発生域を異にする
黄色く染まり,13AA.は(十)で前期と丁度であ
が,前,中,後詰何れも(+)に見られる.心臓
る・一方卵黄は,前期に比しBlastodermの部
は(十),尾脚G二)で,Liver gacC.は(十)であ
分に張く(++)現われ,他側にては(+)に見られ
った.
第2章Glycoprotein,
生体内には各種の糖蛋白体が含有され,そ
の糖蛋白体を構成する炭水化物は,主として
【92】
初期発生の組織化学的研究
2173
Polyalcoho1乃至Polysaccarideであって,これ
て(+)に減少して行く,叉細胞内分布には差は
らは酸化剤により,一CHO基を生じ,これに亜
付け難iい.卵黄はTeloblastの側に多く集り
硫酸フクシン呈色反応を得るものである.教室
(研)である.
ならず,その他の未知物質の存在することを考
第4期 陥入口より前方にV字型のCephalic
lobeが形成されGlycoproteinの陽性度はCe−
大原(1949)は検出される物質は糖蛋白体のみ
慮している.Glycogenを固定しないような固
phalic】ove及びその裏打ちをなしている申胚葉
定液を使用するか,唾液浩化試験によりGlyco−
との区別はなく一様に前期同様(甘)であり,陥
genを除くべきである.
入口より後方に出来る胸腹部原基も亦二度(甘)
実 験 方 法
である.一方陥入口両側の内胚葉系細胞から出
1・Zenker氏固定液,叉は氷酷酸を加えた6%昇
来るLiver Sacc.とこれを結ぶEndoderm系
柔液固定,或いはFormalin固定, Para缶ne切片.
Epltheliumにては(朴)である.卵黄は前期同様
2・0・2%過沃度酸加里液一一水洗一:Feulgen反応。
(柵)で,特に:Liver Sacc.内に強いとはいえな
実 験 成 績
第1期 分割細胞の内.G1ソcoproteinは,卵
第5期 卵黄は吸直され減少して行くが,
い.
の表層部に出たもの,及び内層にあるものの差
GIγcoprotein検出度は前期同檬に(柵)を示す.
なく共に(暑)である.叉細胞内分布では,核よ
胚体の前端及び後端から外胚葉陥入により出来
りも細胞質に多く(++)に現われている.卵黄は
た前面及び後腸では,その分布に差を認めず
分割細胞より強く(柵)に現われた.
(柵),腹側の顎脚原基でも同様温く(柵)を示し
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
た.胚体の大・部分を占める:Liver Sacc.は,そ
は,一暦の:Blastodermを形成する.この部の
の中の卵黄が届きため不明であった.
細胞には,細胞質,核の区別はつけられず一一様
に(什)に現われる.一方卵黄は前期同檬G紛で
第6期 外胚葉性の脳祠軽節は(什)に見ら
れ,食道下祠軽節もG紛であり,胸腹忌詞1経索
Blastodermの側に強く,それより離れるにつれ
亦同度である.触角原基から分化した触角,顎
て弱い(什).
脚も同度(甘)である.附属肢:においては,その
第3期 Blastodermの細胞増加により,その
外側の表皮,及び内側の筋肉共に(什)で,尾脚
一部が内側に陥入し,陥入細胞となる.これら
亦(什)である.腸管は前,申,後腸等しく(→う
陥入細胞のGlycoprotei11は陥入:部外倶1及び内側
である.心臓は腸管と同様(+)であり,:Live
の細胞の聞に差はなく,一様にTeloblastの部
Sacc.は(料)で,中の卵黄は(十十∼十)であっ
分に彊く(朴)現われ,それより遠ざかるにつれ
た.
第3章Nucleic acids・
第1節 RNA
現われ,卵黄には一一様に(十)程度に分布する.
Nucleic acids.は蛋白質とならんで生体の本
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
質的な成分として,近年生化学の中心課題とな
は,一二の:Blastodermを形成する.この部の
っている.
細胞には(十)に認められる.一方卵黄内RNA
Pyroni110 methy】green染色によりRNAを組
はこの時期に減少し痕跡的となる.
織化学的に検索した結果を報告する.
第;3期 陥入部におけるRNAの分布は,陥
実 験 成 績
第1期 RNAは分割細胞においては(十)セこ
入外側の細胞に強く(+),陥入内側の細胞に弱
く(+)現われ,陥入部を中心として両側に次第
【93】
2174
西
田
に弱くなっている.卵黄は(十∼十)で全体一‘
一方卵黄は前期に陰性であったものが,本圃に
様の分布を示している.
は痕跡的であるが認められた(山)・
第4期 Cephalic lobeの外胚葉の分布度は
:第;3期 陥入部のD:NAの分布は,陥入部外
(+)を示し,その裏打ちをなしている中胚葉に
側の細胞では,細胞質(+),核(++)と強く,内
は梢ζ弱く(+)を示している.陥入口後方の胸
側の細胞にては,細胞質(+),核(子)と弱く認
腹部原基は(十∼十)で,Cephalic Iobeと同程
められる.これらは叉,Teloblastの部分より離i
度である.叉一一方内胚葉性の:Liver Sacc.も同
れた部には幾分弱い反応を示している.一方卵
じく(+∼+)であった.卵黄は弱陽性でL{ver
黄は前期と同じく(山)であった.
Sacc.内にのみ(十)と禾傑強く認められる.
第4期 Cephal{c lobeでは,細胞質(+),核
第5期 卵黄は,諸基質が少なくなると同様
(朴)を示し,その裏打ちをなしている中胚葉で
にRNA陽性度も減少し弱陽性に見られる.
は,細胞質(十),核(十)に現われる.CephaUc
外胚葉陥入による腸管では,前,後の腸管の差
Iobeと同時に,陥入口後方には胸腹部原基が形
は認め難く一様に(+)であり,腹側に出来た顎
成されるのであるが,これもCephalic lobeと
脚原基においても(+)に見られた.:Liver Sacc.
扇面(+)である.叉一方内胚葉系細胞からは陥
は胚体の大部を占めるに至り陽性度は減少弱陽
入口両側に:Liver Sacc.と,これを結ぶElldo−
性である.
derm系Epitheliumが現われるが,Cephalic lobe
第6期 外胚葉性の脳神経節は(十),食道下
の裏打ちをなす中胚葉と同じく,細胞質(+),
正面節も同感(+)で,胸腹部紳経霊肉同旨であ
核(十)である.卵黄においては痕跡(∴)である
る.附属肢においては外閲の表皮及び内部の筋
が,Hver Sacc.内卵黄に幾分彊いように思わ
肉共に(十)で,前記紳経節と同心であった.腸
れる.
管は,その胚葉由来によりRNA分布が異なり,
第5期 卵黄のDNAは殆んど陰性である
外胚葉性の前腸,嗜虐は強く(+),内胚葉性の
(∴).外胚葉の前端及び後端から,前腸及び後
中腸は弱く弱陽性である.心臓は痕跡的:Liver
幅が形成されるのであるが,その部にては,前
Sacc.叉痕跡的であった.
帝及び心皮の差はなく(÷十)であり,叉腹側に出
第2節 DNA
来た顎脚原基においては(+)∼Gのに認められ
実 験 方 法
る.:Liver Sacc。は滅期にては胚体の大部分を
曹通の:Feulgen法にしたがう.
占めるに至り,陽性度は(暑)を現わして前期よ
実 験 成 績
り」曾恥している.
第1期DNAは分割細胞に:おいては,雨雲
部のものに彊く現われ,細胞質(十),核(什)と
第6期 外胚葉性の脳紳経節は弱陽性,食道
下記経節も自訴であり,胸腹部祠面明亦同論で
認められ,嘉暦に残る細胞には,細胞質(∴),
ある.触角原基から分化した触角,顎脚も同度
核(子),と弱く認められた.一・方卵黄には陰性
である.附属肢においては,外側の表皮(一),
である,
内側の筋肉に(柵であり,腸管は内胚葉性の中
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
腸に弱く痕跡的で,外胚葉性の前腸及び二恩は
は,一層の:Blastoderrnを形成する.この部の
(十)である.心臓は痕跡的となり申腸より梢ζ
細胞には細胞質(轟1,核十)と前期同様である.
弱いようであった.:Liver Sacc.叉(∴)である.
第4章
Glycogenの組織内証明法は種々詳述され,
Glycogen.
且つ多種多様であるが,ベスト,カリウム,カ
〔94】
初期発生の組織化学的研究
2175
ルミン染色法が最も多く用いられている.これ
である.陥入部後方にぽ胸腹部原基が形成され
に従って観察した結果を報告する.
るのであるが,これもCephahc lobeと同度で
実 験 方 法
ある.叉一方内胚葉系細胞からは陥入口両側に
1.無水アルコール固定,:Paraf且ne切片.
:Liver Sacc.と,これを結ぶElldoderm系Epi−
2.ベストのカルミン液で5分間染色後,アルコー
the]iumが現われるが,これは中胚葉と同度(+)
ルで白色し,二水一封入.
に出,卵黄は1期,2期,3期と二度(+)であ
実 験 成 績
る.
第1期 Glycogenの分布は,分割細胞にお
第5期 卵黄内Glycogenの量は次第;に減少
いては細胞質(+),一方卵黄には(+)と見え一・
して弱陽性となる.四二及び後句の陥入に際し
様に現われている.
ては何れも差なく(+)に認められ,叉腹側に出
第2期 卵表の周縁原形質に達した分裂核
は,一蓋のBlastodermを形成する.この部の
来た顎脚原基においては(十)∼(十)に認められ
細胞には(十)である.一方卵黄は前期に比し増
減を見せず(+)である.
る.胚体の大部分を占めるLiver Sacc・は前期
同様(+)である.
第6期外胚葉性の脳祠軽節は(甘)に見ら
第;3期 陥入部におけるGlycogenの分布
は,陥入部外側の細胞では(+),内側の細胞は
れ,食道:下紳経節少しく劣り(+),胸腹部榊経
回亦同度であり,附属肢においてはその外側の
(十)を示し,前期より彊くなっている.これは
キチン質には全く見られず,全体として弱陽性
陥入の部に甚だしく,それより離れるにつれ,
であった.腸管は前腸,中腸,後腸と,その発
弱くなっている.卵黄は前期同檬(十)であっ
生胚域を異にすると共にGlycogen分布にも差
た.
を生じ,外胚葉性の前面及び後出は(甘)と張
第4期陥入口より前方では,中胚葉に裏打
く,丙胚葉性の中腸は弱く(+)と認められる・
ちされた外胚葉により,V字型のCephalic lobe
心臓及び1・iver Sacc・は全く呈色しない・
が形成される.このCephahc lobeの分布度は
(+),その裏打ちをなしている中胚葉(+)∼(什)
第5章M:inerals・
第1節Ca
細胞の分布は第1期と同じく,一方卵黄はこれ
Caの組織化学的証明法については種々の発
も亦前期同様であって,:Blastodermに特に弓量い
表があるが,岡本法に従った.
分布を示していない.
実 験ジ方 法
第3期:Blastodermの細胞増加により,その
純アルコール固定,以後出来るだけ水をさけ,且つ
Caの混入を防ぎ, Paraf丘ne切片とし, Alizarinrot・
一部が内側に陥入し陥入細胞となる.これら陥
入細胞のCaの分布は一様で(+)を示し,ただ
Sで染色する.
実 験 成 績
陥入部を離れるにつれて両側に段々と弱くなっ
第1期 分割細胞におけるCaの分布は,細
て行くようである.卵黄は前期同様弱陽性であ
胞(十),核膜(紛,核(十)で,核膜に強く認め
った.
た.一方卵黄は一様に弱陽性に分布し,細胞質
第4期 陥入口より前方に,中胚葉の裏打ち
より弱度を示している.
による外胚葉のV字型のCePhalic lobeが形成
第2期滋雨の周縁原形質に達した分裂核
される.その部にては(+)を示し,その裏打ち
は,一画面B】astodermを形成する.この部の
をなしている中胚葉(+1より少しく彊い.陥入
【95】
2176
田
西
口より後方には,胸腹部原基が出来,この部に
は,一一層の:Blastoderlnを形成するが,この部
てもCephalic iobeと同檬の分布を示す.叉一
では,細胞質に弱陽性,核は陽性(+)である.
方内胚葉系のLiver Sacc.は(+)を示し,卵黄
一方卵黄は(十∼十)に認められた.
は弱く前期と同様弱陽性であった.
第3期 :Blastodermの細胞増加により,その
第5期卵黄は栄養源として吸牧されるに件
い,Caも全く分布を見ない.外胚葉の陥入に
一部が内側に陥入し,中胚葉,内胚葉となる.
よる前出及び後段にては差なく(+)に認めら
と同様に(+)であり,卵黄亦前期同様(+∼+)
これら陥入細胞のFeの分布は,外側の外胚葉
れ,叉腹側に出来た顎脚原基においても(+)に
であった.
見られるが,その内側に存するMesoderln系に
梢ζ弱い(+)部を見出す.:Liver Sacc・は(+)
第4期陥入口より前方に,中胚葉細胞の裏
打ちにより,外胚葉によってV字型のCephalic
であった.
Iobeが形成される.このCephalic Iobeでは
第6期 外胚葉性の脳祠1経節(十),食道下紳
(十)を示し,その裏打ちをなしている中胚葉は
経節(+)であり,胸腹部祠思索門門度である.
弱陽性であった.陥入口後方には,胸腹部原基
附属肢:においては,その外側の表皮は(十),内
が形成されるのであるが,この部の外胚葉も,
側の筋系は(+)であった.腸管は前,中,後腸
CePMic lobeと六度の分布であり,陥入口両側
何れも(+)であり,心臓及び1・iver Sacc.共に
の内胚葉性Uver Sacc.は弱陽性である.卵黄
陰性である.
は極端に減少して痕跡的となる.
第2節 Fe
鉄化合物は生体内に仮装性鉄化合物並びに非
第5期本期においては,卵黄の:Feの分布
仮装性急化合物として存在し,その組織化学的
前端及び後端から始まり,前腸及び血忌が形成
証明法も多種:多様である.
されるのであるが,その部にては民謡及び後腸
は前期同様(∴)である.外胚葉の陥入が病体の
実 験 方 法
の差なく(∴)に認められ,叉腹側に出来た,顎
1.アルコール固定,Para銀ne切片後,:Brにより
脚原基は(十)に現われた.:Liver Sacc.は痕跡
仮装を除去し,ベルリン青反応一睨水一封入.
的である.
実 験 成 績
第6期 外胚葉性の脳紳経節(+),食道下祠1
第1期分割細胞におけるFeの分布は,細
経節も(+)であり,腹部祠懸索梢ζ弱く弱陽性
胞質に弱陽性,核(+),核内穎粒(+)と現われ
を示す.附属肢においては,(+)を現わし尾脚
て,核分質の方に強く出る.一方卵黄は,非常
更に弱く(∴)で殆んど陰性に近い,腸管は前
に不規則に現われ(+∼+)と,細胞質より張い
腸,中腸,後記の差なく弱陽性で,心臓,Liver
傾向にある.
Sacc.共に陰性である.
第2期図表の周縁原形質に達した分裂核
第6章E皿zumes・
酵素系の組織化学的検索方法セこは種々のもの
第1節AlkalinePhosphatase・
が,敏室同人によって考案されているが,この
(Alk−P−ase)
卵では凍結切片作成が出来ないので,結局,
実 験 方 法
:Phosphatase類しか検索出来なかった・
高松法にしたがう.
PhosPhataseは脂肪族,芳香族の燐酸エステ
実 験 成 績
ルを加水分解して,燐酸を遊離iせしめる一一種:の
:第1期 Alk−P−aseは分割細胞の:方に彊く存
エステラーゼである.
在し,その染色度は,細胞質に痕跡的(∴),核
【96】
初期発生の組織化学的研究
膜(甘),核内穎粒(十)と認められ,卵黄には全
く分布を見なかった.
2177
臓(十),Liver Sacc.(∴)である.
第2節Acid−Phosphatase.
笛2期 分割細胞は,その牛数を周縁原形質
(Acid−P−ase.)
におくりBlastodermを形成し,その部におい
Alk−P−aseはアルカリ域においては,反応は
ては,Alk−P−aseは細胞質(+),核膜(+),核
最適であるが,次第にP.H.を酸性に近づけ
内智歯(+)と現われる.一方卵黄は,Blastoderm
ると反応も弱くなる.酸性域においては,Acid−
の部(十)に強く,他は全然存在しない.
P−aseにより検索したので報告する.
第3期:Blastodermの細胞増力1により,その
実 験 方 法
一部が内側に陥入し陥入細胞となる.これら陥
アセ1・ン固定,低温パラフィン切片,以下Gomori
入細胞の内離れて卵黄中を遊走したものは,内
法にしたがう.
胚葉上皮を形成し,一部は中胚葉を形成して来
実 験 成 績
る.この陥入・部においてはAlk−P−aseの分布
第1期Acid−P−aseは分割細週包においては,
は,陥入外側の細胞は,細胞質(+),核内穎粒
細胞質(十),核(什)と見られ,卵黄は全く認め
(+)を示し,陥入した中胚葉,内胚葉の細胞は
られず陰性であった.
(+)に認められた.一方卵黄は(+)で,Telob
第2期第1期と同様の分布を示している.
lastの部に多い.
即ち,131astodermの細胞には,細胞質(+),核:
第4期Gastru1a初期に肥厚しはじめた
(柵)を示し,卵黄は陰性である.
Ventralplateは,この時期になると中胚葉に裏
第:3期 :Blastoderlnからの陥入部における
打ちされた一対の外胚葉の卜占部として認めら
Acid−P−aseは陥入外側の細胞に張く,細胞質
れ,陥入口まで達するV字型のCephalfc】obe
(+),核(柵)を示し,内側の中,内胚葉の細胞
を形成する.このCephalic lobeの分布度は(甘)
は,細胞質(子),核(什)を示している.卵黄は
を示し,その裏打ちをなしている中胚葉には
僅かに(∴)を示す.
(十)に認められる.陥入口より後方部は胸腹部
窮4期二面のCephalic lobeの分布度は,
原基となり,この部にはCephalic Iobeと同度
細胞質(什),核(柵)を示し,その裏打ちをなし
(十+〉に見る.一方陥入口両側の内胚葉性:Liver
た中胚葉は,細胞質(+),核(什)であった.陥
Sacc.はCephalic Iobeと同様招く(什)現われ,
入部後方の胸腹部原基もCephalic lobeと同度
卵黄はLiver Sacc.内に多く(十),他部は僅か
である「,叉一方内胚葉系細胞からは,陥入口両
に劣っている.
側にLiver Sacc.が現われるが,これは細胞質
第5期卵黄は吸牧されて行くにつれ,分布
㈱),核(冊)と極端に張く現われ,卵黄も:Liver
度も減少し陰性となる.外胚葉の陥入による前
Slしcc.内に張く(十),他は(∴)である.
腸及び後瀬は差を認めず,一様に(甘)に見ら
第5期 卵黄は本期に至ると,殆んどAcid−
れ,顎脚原基においては(什),Liver Sacc.は
P−aseの分布を見ない.これは,栄養源として
(十十∼∴・)であった.
吸牧されて行き,その性質も変化するためであ
第6期Cephalic lobeを中心として頭:部の分
ろう.外胚葉の陥入により,前鑑及び後腸が形
化はめざましく,これと共にAlk−P−aseも面々
成されるのであるが,その部にては,前,後配
増加を示し,外胚葉性の脳祠1経節(粁),食道下
の差なく(什)に認められ,叉腹側の顎脚原基に
祠軽二節亦(什)であり,胸腹部祠軽索梢ぐ張く
ては(冊)に現われ,Liverは減弱して(十)を示
(甘)認められる.附属肢においては,外側,内
していた.
側の別なく(什)を示し,腸管は内胚葉性の中腸
第6期 外胚葉性の脳祠軽油は(柵)を示し,
に弱く(十),前,後腸は強く(十)見られる.心
食道下祠ユ経節も湿度(柵)である.胸腹部祠軽索
【97】
2178
田
西
亦同度(冊)であり,触角原基から分化した触
(柵)であった.腸管は前,中,代八共に(冊)を
角,顎脚も同度(柵)である.附属肢において
示し,心臓は(十),Liver Sacc.(∴)と痕跡と
は,外側の表皮及び内側の筋肉二面に一様に
なっている.
按
第3編 考
誘導一反応系闇の生化学的反応の時間的,室
IsOPodaに関する以上の成績より,胚発生に
ついて,種々の事柄を考察することが出来る.
間的勾配が,各胚域の発生能を規定し,器官原
最:も著明なことは,受精卵の発生分化に関し
基を形成せしむるに至っている.この場合卵黄
て,卵黄が最初重大な意義をもつことである.
は,栄養源としての意味をもつに過ぎない.所
従って,この時期には,組織化学的にも著しい
がArthropodaでは,卵の中央に存する卵黄は
生化学的変化が,卵黄内におこっていることを
極めて多く,分化の主演部たるべき原形質は,
認めることが出来る.胚組織の自律分化は,こ
僅かに表面の薄層として分布しているに過ぎな
れに従属して現われるので,このモザイク卵の
い.しかも,発生の始めの数回の細胞分裂は,
特徴を吟味する上に,先ず1.卵黄について述
卵割を乞わないで進行する.即ち,卵黄内に存
べ,次に皿.胚葉の分化について記載すること
する受精核は,核分裂のみによって,32∼64個
とする.なお,モザイク卵と調整法とを比較す
の分裂核となり,これが表層原形質に移動し来
るために,後者の代表として,教室井上の両棲
ってはじめて,分割を件うことになるが,それ
類に関する成績を対照とした.
でも前表の僅かな原形質暦に限られているに過
1.卵黄内生化学的物質の分布勾配の意義
ぎない.この胚発生の出発点の特異性が,今後
IsopodaはArthropodaセこ共通な特徴である
のIsopodaの発生分化の上に,大きな変化を与
如意卵より出発する.当初一個の亘大な細胞と
える所のものである。
して出現した受精卵が,分割によって,より多
Arthropodaの多くが,典型的なMosaic卵,
くの小さな細胞の集団を形成し,やがて,これ
即ち,部分は部分の形成を示すに過ぎない胚
に種々な部分差即ち,分化を生ずることは,動
子,換言すれば胚域は始めから,発生能の規定
物発生過程の一般則で,中土卵といえども,こ
をうけており,そのMos翫ic的な配置によって
れに該当する筈である.しかし,そのCleavage
出来ている受精卵だと考えられていた原因も,
は表割をもって進められ,卵表原形質の分化に
上記の特異性に基づくものであった.しかし,
は,申出にある卵黄の支配が極めて張く,その
Seide1はPlatycellel nis Pellnpesの卵で,叉
ためにMosaic卵とさえも名付けられて来た.
Krauseは, Tachycinemis asynammorusの卵を
この点,調整卵であるTriturusやChickの初
用いての,紫外線照射,結紮等の発生実験によ
期発生と非常に異なっている.即ち,これら調
整卵においては,山積している実験発生学の論
り心内に調節機能のあることを見出した.従
ってMosaic卵といえども,ごく初期には,未:
文が示すように,胚は:Blastulaに至るまでは,
決定であることがわかったわけである.それで
未分化な細胞集団である.それがGastruhに
は,その分化決定はどのようにして行われて行
達すると,陥入運動によって生ずる原口背唇部
くのであろうか.
の胚域が,胚全体に対してOrganizerとしての
SeidelのInsectaに関する形態分析に基づけ
役割を演じ,ここより出る未決定な誘導因物質
ば,中黄卵の卵黄体には,初期より決定中心を
の作用をうけて,はじめて頭垢域の発生能が,
なす系と,予定分化中心をなす系との二つの形
規定されて行くのである.即ち,そこに生ずる
成中心の系が存在している.しかし,決定中心
【98】
初期発生の組織化学的研究
系の活動は,核分裂の進行と,それに件う核原
2179
形質の分散,移動によって,始めて開始される
かわるDNAの出現も亦1この時期の卵黄の特
徴であろう.一般に,核以外の部にDNAが出
という.それらは先ず,分化中心の生理的活動
現することは殆んどないとされている.それに
状態を規定し,ついで,分化底心の形態的変
もかかわらず:Feulgen陽性のDNA物質が,
化,即ち,卵黄の牧縮となって可面的現象を惹
卵黄内に現われることはTrltllrusのBlastu!a
起して来る.この卵黄宙吊蓮動によって,胚表
と同誌,胚発生初期に特別の意味をもつものと
の原基聚集が誘発されるものと考えている.し
考えられる.
かしSeidelをはじめ,この活動状態の内容に
以上の生化学的物質の変化勾配が,卵黄を生
関してふれている研究は一つもない.私がここ
化学的に特徴づけるものであり,これらが胚表
に,卵黄内の決定乱心及び分化中心という系
原形質に対するMosaic的な分化の基底をなす
の,生化学的内容,及びこの2系相互間の蓮鎖
ものと考えられる.
反応と,胚表原基形成との間における生化学的
4.第3期の卵黄にはHis, Arg, RNA,の
物質分化の意義を,先ず問題にした所以であ
増加,Acid−P−aseのわずかの活性化をあげる
る.
ことが出来る.中でもHis.はTry・と共に陥
1.組織化学的には,発生初期の卵黄内分化
入:部位に強い勾配を示しつつ増加して来る.
期間中に,濃厚に存在するものにTyr. Try.
Alk−P−aseはこの時期を中心として卵:黄に活性
:BAA.(Lys.), Glycoproteh1, RNA, Fe,若干
を示すものである.初期より多量存在していた
あるものとしてGlycogen, Ca,等;をあげるこ
聡AA. Fe.はこの時期まで張存し,後消失して
とが出来る.これらの内,分裂核周囲,及び卵
表原形質に全然存在せず,卵黄にのみ局在する
しまう.卵黄が分化に関与するのは2期まで
で,3期以後は,胚葉分化に関与するより,成
Try.の意義,及び第11期に濃厚で第;2期に溝
長の栄養源としての意味の方が:重大であろう
失するRNAの意義を先ず考えるべきであろ
が,以上のものの変戴が,胚表の陥入灯油に何
らかの意味をもつものと考えられる.
う.
2.Blastoderm形成に先だって,即ち,分化
5.第4期には,陥入細胞の内より生じた内
中心の生理的活動歌態の動きを示すものに
胚葉によって:Liver Sacc.が形威されるが,こ
Tγr.がある.卵黄内分布の最:初の勾配はTyr.
のHver形成部位の卵黄に強染されて来るもめ
に現われ,分化中心(+)が濃く反対側に至るに
にはlSS−SH, Try. His. Alg. BAA. Glyco−
従って(∴)で僅かしか存在しなくなる.Tyr.
protein. RNA.があり,Alk−P−ase及びAdd−
の分布勾配は,その濃厚存在部への卵表細胞集
P−aseが局在的に活性を示す.これらの基質,
中を結果し,この部にBlastodermが形成され
酵素系はLiver形成という内胚葉分化の上に関
て来る.Tyr.より梢ζ逞れ131astoderm形月父の
与するもので,一般の卵黄ではSS−SH以外
頃に,この部の卵黄に濃くなるような勾配を示
は,第4期に増加するものなく,多くは減少傾
すものにTry. Glycoprotein. Alk−P−ase.があ
向を示している.
る.Tyr・では分化中心(什),反対側(十), Glyco−
proteinでは分化乱心(冊),反対側(什),Alk−
6.第5期,第6期と癸生の進むに従って,
卵黄のもつ意義が少なくなると同時に,卵黄内
P−ase活性は分化中心(+),反対側(一)で夫々
検出物質の量も少なくなり,やがて,第6期の
分化中心を中心として盛んな代謝が行われてい
:Liver Sacc.内にはGlycoproteinと:BAA.の存
ることが示される.
在を認めるのみで,他の反応は陰性である.以
3.一方この時期には,卵黄全体にSS−SH
上を要約すると第1表のようになる.第1表は
発生期に論う基質酵素系の分布勾配を第1期か
の著明な増加を見る.RNAの減少と,これに
【99】
2180
田
西
ら第6期までを通じて示したものである.山の 高さは分布の濃さに比例する・
第1表卵黄における生化学物質の濃度勾配
卵 黄 B
卵 黄 A
発生期
沚
物質
1 2 5 4 5 6
1 2 5 4 5 6
1
SS−SH
DTy7
@Try
@Hig
@Arg
aAA
G1》cop蹴ein
qNA
1
cNA
αycogen
@Ca
@Fe
`lk−P−ase
`cld−P−ase
一一
一一
(十十).Arg(山). Glycoprotein(桝)程度にしか
]1.胚葉分化
卵黄の牧縮運動によりBlastodermを形成し
検出されなかった卵表原形質に,移動して来た
た胚は,この:Blagtula以後Gastrulaを経ると,
分裂核は,やがて,胚体を形成するEctoderln・
Ectoderln, Mesoderm, Endoderm.の3胚葉に
分化し,その後,各胚葉は夫々所定の臓器を形
Mesoderm, Endodermに分化するわけである
が,次に,この三胚葉分化に件う原形質内生化
成するに至る.その過程を略記すれば,次表の
学物質の変化を追究することにする.
ようである.
分裂核が胚表に達し原形質を俘うに至るまで
一神経系外胚葉
に,核:を取り囲む原形質にはSS−SH:, His・
Arg・RNA. Ca.の強存及びP−aseの活性が,
一外胚葉 一表皮
周囲卵黄と非常に異なる所である. 中でも
一二二・二二
:Blastoderm一
一一
陥入
細胞
Acid−P−aseでは.核:,原形質共に(赫)に存在
リ肉系中胚葉
神胚剰 一同環器系中胚葉
一中腸
一一
璢
葉一
___
するものと,核には余りなく,細胞質,原形質
にのみ彊存するものとの2種の細胞が認められ
る.この時,卵黄には全然Acid−P−ase活性が
kiver. Saccule
認められない.Alk−P−aseを若干(山)活性化し
従って,先ずHlastoderm形成から,Gastrula−
ており,これは核の:Nllcleolusに強い. R:NA
tlonにより,胚葉分化がおこるまでの初期と,
それ以後の各胚葉内での分化とに分けて記載す
は初期より核周囲の原形質に弧く,叉DNAも
若干細胞質内に検出される.SS−SHは核に少
ることにする.
なく(∴),卵:黄にはなく,核周囲の細胞質にの
1.初期の3胚葉分化に至るまで
上述の卵黄の影響をうけっっ,最初Try.
み彊存(一のすることは,特筆すべきで,これと
同じ分布朕態をHis.及びArg. BAA・が示す・
【100)
初期発生の組織化学的研究
無機質ではジ卵:黄にIFeが多く,Caが少な
2A.外胚葉の分化
2181
かったのに反し.細胞質には:Feが少なく,Ca
a)紳経系形成外胚葉について
が多く存在する.叉Try.は卵黄にのみ存し,
第4期に入ると,外胚葉は陥入して来た中胚
原形質,核共に存在しないことも特異的であろ
葉によって裏打ちされ,同時にPhosphataseの
う.Tyr. Glycoge11. Glycop」oteinには格別の
活性化が著しくなる.即ちAlk一:P−aseは第4
意味は認め難い.
期にAcid−P−aseは第5期に活性のMaximum
かくして,周囲原形質をもつた坤高分裂核
に達し.以後減少することがない.示申経系を形
は,卵:黄の牧民蓮:動に伴ってBlastoderrnを形
成する部にP−ase活性が強いことは,脊椎動
成するが,:Blastoderm形成までは,殆んど原形
物の胚でもChick等で認められる所で,これ
質:の内容はi変化しない.ただAlk−1)一aseの急
は紳経節細胞の分化並びに機能に関蓮するもの
激な増加のみが特異現象である.叉:B】astula後
と考えられる.なおIsopodaではAlk−P−ase
期の予定脳胚葉域の肥厚細胞にも,特別の差異
の祠li経節分布にCranio−Caudalな勾配があり,
は認め難い.
腹部祠軽節の方が謡い分布を示している.
Blastulaを過ぎると,それ以後の胚葉分化は
基質系の変動を見ると,先ず,祠1経節を形成
自律的であって,卵黄の影響をうける所は極め
する外胚葉系の組織ではSS−SHが絡始かなり
て少ない.先ず,第3期におけるGastrulation
続く存在する.瓦経節を形成後もなお(+)の度
によりEctodermとMesoderm, Endodermの
合に存するが,胸腹部祠1経節では,その外側が
分化が,その端緒をきるわけであるが,この陥
殊に強く(十)SS−SHを含有するに至っている
入感動における著明な変化としてはTyr.が陥
が,脳紳経節をはじめ頭部にある二二系には,
入前の細胞及びEctodermに強くなるのに対し
て,陥入する細胞では減少しはじめ,これと同
かかることはない.
H:is.も亦,この系の細胞にはかなり含まれ,
じ傾向はGlycogenにおいても認められる.
Tyr・及びGycogenが陥入部位において陥入
第3期より第6期まで殆んど差異を認めない
が,第;6期の紳経節系の分布はSS−SHと逆
する細胞に減少することはTriturllsのGastrula
で,頭部の祠1経節の方に多く,胸腹部祠軽節で
のOrganizer部位においても顕著に認められた
は梢ζ減少している.Arg.も亦His.と同様,
所であり,これらは,共通の意味をもつものと
初期よりかなり存在するが,第6期における祠1
考えられる.
経虫歯の頭尾のGrad{entは存在しない・Arg・
RNAは陥入する部位に彊くなりその後陥入
Hls.:Lys.を検出する:BAA・のみは,第3,4
と共に減少する.DNA His.も亦陥入に際して
期に増加を認める.それ故,これは:Lys・によ
減少する.Alk−P−ase活性も亦陥入によって減
るものと判断されよう.第6期セこは頭部示申経節
少するが,Acid−P−aseにはかかることは認め
に多く,胸腹部示生経節には梢ζ減少する,しか
られない.
し,これはH紅によるものか,Lys・による
一方,胚葉の如何をとわず第3期の細胞に一
ものかを判定することは出来ない.これに対し
檬に増加して来るものにBAA.がある.外胚
Tyr.は,:第;3,4期のEctodermに増加した
葉系の細胞には:BAAの他に, Tyr. DNA. Fe
のであるが,第5期以後減少傾向を示し,何れ
の増加を認める.
の紳経節も(∴)程度しか含有しない.Try・は
第4期以後には,外胚葉,中胚葉,内胚葉の
初期の細胞には検出されないにもかかわらず,
区別が明瞭になる故,夫々に分けて記載するこ
第6期には,脳榊経:節及び,食道下祠1経節の周
とにする.
囲,祠1経線維にのみ検出されるようになる.し
かし,胸腹涜神i経には全然存在しない.Glyco一
【101】
2182
西
田
proteinは,始めから相当強く存在しているが,
較して見ると
外胚葉系では第5期が最高である.その後減少
1.Tyr. SS−SH. Hls. Arg. BAA等;Try.
し,紳経節細胞には(十十∼十)程度となるが,頭
以外のAminoacidsを余り変化なく多く含有す
部紳経節に少なく胸腹・部祠1経節ほど多い勾配を
ること.
示すに至る.Glycogenは第6期には,脳裏1経
2.Glycogenは最初多く含有するが, Gast−
節に張く(什),胸腹部祠1経節には(+)という勾
rulaを過ぎると減少傾向を示すこと.
配を示す.RNAは第4期まで相当に検出され
3.Caをかなり含有すること.
るが,第5期以後は減少し,紳経節において特
に彊いということはない.無機質でほCaは全
1.IsoPodaではRN Aが存するが,Amphibia
等の共通点があるが,
然減少することなく中等度に存在し,第3期に
には殆んどない。
増加を示したFeも同様に祠軽節形成後まで減
2.PhosphataseではAcid−P−aseの僅かな
少しない.第2表一1はIsopod3耐経節の第1
活性を見るに過ぎないが,IsopodaではAlk,
期から第6期の原基完成間における上記組織化
Acid−P−ase共に非常な高活性である.
学的成績を表示したものである.これを脊椎動
等の大きな相違がある.こθ相違はIsopodaの
物の代表としてAmphibiaのNeuraltube, Neural
表皮は外骨格形成をするので,その分泌機能に
Crestの成績と比較すると, Is・podaの祠i経節
関するものであると考えられる.従って,表皮
形成外胚葉の発生に件う生化学物質の変化勾配
それ自体の意義が,脊椎動物とは異なるので両
はAmphibiaのNellral tubeよりもNeuralαest
者を比較するのは困難ではあろうが,何れも
系(脊椎祠1経節,交感利1経節形成系)と類似し
Substratに変化の少ないことだけは,共通点と
ていることがわかる.即ち
f・Tyr.及びG】ycoprotelnの浩長が同じで
してあげることが出来よう.
あること.
c)外胚葉性消化器官
外胚葉の内,脊椎動物のそれにはないものと
2・Arg・Hls・BAAを原基完成期において
して,外胚葉よりの前記,後節形成がある.こ
も濃厚に含有すること.
の・部が陥入しはじめる第5期には1,他の外胚葉
3.RNA. Ca.:Feを若干含有すること.
と異なる所は1
1.陥入・部のTyr. Arg.:Feが減少するこ
4.Alk−P一翫se能が高いこと.
等があるが,SS−SHの含有量が多いことのみ
と.
はNeural tube系に類似である.
2.Try.が多く現われること.
Acid−1)一ase能の活性が非常に添いことは,
3.Acid−P−aseが他の外胚葉のように多く
Isopodaに特異的である.
ならないこと.
b)表皮
第6期に至ると,
次に表皮に関する胚域について見ると,上記
1.Alk−P−aseの減少, Acid一’P−aseの急激
祠軽一系外胚葉と非常によく似ているが,表皮
な増加を見る.
では祠1経節と異なり
2.Ca. Glycoprotei11. H:is. SS−SH:等;は,
1.Tyr.は:第6期でも減少しない.
他の外胚葉域に比較して減少度が彊い.
2・Try・は第5期に若干現われるが,第6
3.Tyf. Fe. Arg. Glycogenは再び増加す
期には全然ない.
る.
等があげられる.IsopodaのEpidermlsの発生
以上は第2−3表によって一二はつきりとする
による生化学物質の変化のガ犬態は,第2−2表
であろう.
にまとめたようになる.これをAmphibiaと比
【102】
初期発生の組織化学的研究
2183
第2表 外胚葉における濃度勾配
発生期
検索物質
2B.中胚葉の分化
第3期に陥入して来たMesodermの細胞は,
やがてEctodermとEndodermとを裏打ちし
Phosphatase系のあり方は外胚葉系と異なり
っっ,自らは筋肉,間充織,血管系の組織に分
し,第5期以後は殆んど同じ程度に存する.
化して行く. .
Add−P−aseは陥入時に減少するということは
a)筋肉系中胚葉の分化
なかったが,活性度の増加は第5期に急におこ
第4期のこの部ではTyr.の減少が:更に著し
りMaximumとなって,外胚葉と同程度になっ
くなり,Tyr.増加を示す外胚葉と対照的であ
ている.以上の成績は,第3−1表のように総
るが,第5期には梢ヒ増加し,第6期では外胚
括出来る.これをTritllrusのSomite系の胚域
Alk−P−aseはGastrulaで,陥入時に減少した
が,その後,外胚葉より常におくれつつ増加
葉と同程度となる.
と比較して見ると,次のような類似点を見出し
His. Tyr.と同じ傾向を示し,第3,4期に
得る.
減少し,第5期には一次増加するが,第6期に
1・:His. Arg. BAA.が減ずること, SS−SH
は再び減少する.
が少ないこと.
Fe. Ca等;の無機質も第;4期に減少し,:Feで
2.GlycOI)roteinが多いこと.
は第5,6期には外胚葉と同程度含有するよう
3.RNA. Feを若干含有する.
になるが,Caは第4期以後も増加しない.
異なる点としては.,
RNAは第3期に減少したまま増加しない.
BAAも第4期に減少し,その後増加しない.
Glycogenは第4期から増加しはじめ,:第6期
1.Isopodaでは, P一ししse能が高い,殊に
になってもかなり張存する.Glycoproteinは外
Acid−P−aseが彊いこと.
2.Tyr. Glycogen. Caを含有』しているこ
と.
胚葉と何ら変る所なく,第5期を中心として彊
3.Isopodaにはl Try.が全然ないこと.
存する.
等をあげることが出来る.
【103】
2184
西’
田
b)血管系形成中胚葉
る.これを商棲類のそれと比較すると非常に異
血管系形成中胚葉域は鑑別しにくいが,第6
なった傾向を示していることがわかる.
期に至ると,殆んどのものを認め難くなる.即
形態論にも,血色素の種類においても両棲類
ち,この部に検出されるものはTyr.βAA.
とIsopodaは根本的な生理的相違を有するため
のみが,他のMesodermと同程度に存するに
か組織化学的成績も相当の相違が存する.即ち
止まりArg・を若干, Glycoproteinはかなり存
Amphibiaでは,基質系を何れも,多量に含有
していて,原基決定後も,なお多量のTyr.
するが,他の晶晶に比べれば少ない.
RNAは痕跡程度に存在するが, Ca Fe等の
無機質は全然なく,その他有機質でもSS−SH.
Try. H is. Arg.:BAA.:Fat. Glycoprotein.:Fe
Mg・Cu・等を含有しMesoderm中最も多くを
Try. Glycogen等;は検出されない.
もっているのに対し,Isopodaでは諸種の含存
Phosphatase系の活性度も他の申胚葉に比較
量少なく,基質含量は胚域中最も少ない.これ
すれば少なくAlk−P−ase(十).Acid−P−ase(十)
に対しAcid−Alk両Phosphatase系の滑性度の
共第6期で減少している.
みは,両者共通である.
これらの関係は第3−2表に示すようであ
第3表 中胚葉における濃度勾配
1.
発生期
1
沚
2
肉
筋
2
5
4
5
1
6
2
管
血
3
系
4
5
6
1
SS−SH
7
P
Tvr
Try
A
Hi8
Arg
BAA
Glycoprotein
RNA
りNA
f且ycogen
Ca
,
Fe
A旦k−P−a8e
Ac{dP_3肥
2C.内胚葉の分化 ,
し,同時にArg.も他の胚葉には見られない増
a) 1・三ver Saccule.
加を示している.:BAA.も第;3,4期には彊い
内胚葉として陥入した細胞は第4期には,
が,SS_SH, Tyr.には変化がない.
Liver Sacculeを形成しはじめる. Isopodaにお
:Liver Sacculeの出来るその部にはR:NAが
ける:L{verというのは,内胚葉上皮に囲まれた
多くなる点,分化増殖に関係するものと考えら
卵黄集団で,脊椎動物の:Liverとは構造上かな
れる.同時にAlk−P−ase Acld−P−aseが急にこ
り異なるものである.:Liverを形成する内胚葉
の部に局在的に増加する.しかしFe・Ca・等
の無機質は,逆に減少傾向を示す.所が第5期
の細胞には,一時低下したHis.は次に増加
【104】
2185
初期発生の組織化学的研究
に入ると,一般に減少傾向を示し,中でも
第6期でもSS−SH(∴), Tyr.(十), H:is.(十).
His. Arg. RNA・の減少度は強い.叉SS−SH・
Arg.(十).:BAA.(十). RNA.(∴).αycoge11(十).
Tyr.:Feも少量になる. Alk−P−ase. Acid−P−ase.
Cal+). Fe(∴).程度に含有する. Glycoprotein
共に減少傾向を示しはじめる.
のみはLiverよりも少なく(+)程度に存在す
かくて,第6期に入るとH:is. Glycogen. Ca.
る.
:Feが全然なくSS−SH.Arg. RNA.DNA・Alk−
Alk−P−ase.は減少し(十), Acid−P−ase.は
P−ase. A dd−1)一as母.等は痕跡程度に存するに
非常に張い活性度(・田)を示すに至る.
過ぎない,
この中腸三内,胚葉内諸物質の検出程度は,
ただ,Tyr.(十)と,:BAA.(十)が少量と,
外胚葉由来の回腸,後腸と,第5期までの漕長
GlycoP「otein(什)が中程度に含有されるに過ぎ
は異なるが,第6期には殆んど同じ傾向を示し
ている点は注目すべきである.即ち,RNA.
ない.
b)中腸
Glycogen. Tyr. Alk−P−ase.が前後腸に若干多
同じ内胚葉でも,申腸を形成する内胚葉では
いこと以外は全く同氏である.
’:L{ver Sacc.のように基質酵素活性が全然なく
以上は次の第4−2表により示される通りで
なることはない.
ある.
第4表
1ワ
発生期
沚
物質
1
2
内胚葉における濃度勾配
2.
Live了Sacoule
5
5 4
6
目
2
中
腸
5
4
5
6
i
SS−SH
Tyr
Trヲ
Hi8
Ar9
1
BAA
1
qycopmtem
RNA
cNA
Glycogen
@Ca
Fe
Alk−P_a8e駐
Acid_P餌a8e
以上を要約すれば,
し,他端より次第に他物質に転換して消失する
1.受精卵の卵黄はその準備封犬態として,
のであるが,このTyr.の生化学的分布勾配
Tyr. Try. Glycoproteil〕.君AA(主にLys.).
は,卵表にBlastoderm形成を結果する. Tyr.
:Fe. RNA.等を含有し,卵表原形質の分化に
と同様の分布勾配を示すものにTyr. Glycopro−
対し,誘導作用をもつ.
tein及びAlk−P−ase.活性がある.かくして,
2.その生化学変化は先ず,卵黄内Tyr.の
分化中心に盛んに代謝が進んでいることがわか
変動に始まる.即ちTyr.は分化中心に集中
る.
〔105】
2186
田
西
消化器官(外胚葉性の前面,後腸,内胚葉性
この時期にのみ特異的に卵黄に増加するもの
にSS−SHがあり,叉RNA. His.の全体的消
の中腸)にはその胚葉由来をとわずAlk−P−ase
失,これに代ってDNA.の新しい出現を認め
少なくAcid−P−aseが設い.
るが,これらは何れも上記造形蓮動に直接叉は
叉,中胚葉の血管系にはPhosphatase類は少
間接的に関与するものと考えられる.
なく,内胚葉のLiverには殆んどなくなる.
3.卵黄内の生化学的変化に基づいて出現し
6.基質含有量に変化少なく,諸物質を第6
た分化中心に形成されたBlastoderlnの細胞は,
期・まで多量に有するのは表皮である.
SSL SH. His. Arg. Ca. Acid−Pase等,卵黄と
祠1経系はTyr・の減少とTry.の鋤現を前,
は異なった生化学物質をもつ他,RNA.αyco−
後腸は,陥入時にTyr. A rg. Fe.の一時的減
protein. Glycogen. TyL:BAA.等;を含有する.
少,更にSS−SH. His. Ca. G:ycoproteinの減
4.Gastrulat{011部位にTyr・GlycogeD・RNA・
少と,Alk−P−aseの減少と, Acid−P−ase.のお
が集中的に彊くなり,陥入するにつれて中,内
くれての増加を特徴とする.
胚葉の細胞に少なくなる.この他,陥入と共に
申胚葉では陥入時の減少が続きTyr. His.
減少するものにはHis. D:NA.Alk−P−ase.をあ
:Fe・Glycoprotdn等;の変動が多いが,筋肉系で
げ得る。この時期の卵黄にはRNA.が再び多
はSS−SH. Tyr. His.Arg.13AA. Glycoprotein.
くなり,Try. rlis.は陥入部位を中心とする濃
RNA. Glycogen. Ca.:Fe.等が第6期にも中等
度勾配を示す.叉卵黄内に多量に検出された
:Feはこの時期以後浩失する.一椴に胚葉に
度に存在するが,血管系では更にひどくTyr.
Arg・BAA・Glycoprotei11以外は浩失する.
:BAA.が多くなる.
内胚葉では,中腸が笏肉系と同程度,Liver
5.胚葉の細胞にPhosphatase類が,ますま
Sacc.が血管系と同程度に消失し,かくして,
す活性化されて来るのはこの類の特徴で,外胚
各胚葉に由来する夫々の器官原基が完成するの
葉(祠1経系,表皮)が第一で,中胚葉(筋肉)
である.
が禾徐時期的におくれてこれに次ぐ.
第4編結
子
初期発生の生化学的機作,就中,その紅織化
黄における胚体形成の上に基礎的な誘仙南をも
学的並びに琵疫化学的解析において,敏室同人
つ.卵黄内決定申心より分化中心形成に至る間
は調整卵(Amphibia, Chlck)に関する詳細な
に,質的に極めて特異的な生化学変化の勾配
る検索より「初期発生における勾配説」を提唱
が,卵黄内に生起されることを組織化学的に証
している.
明した.この1ζ1astodefm形成を誘導する初期
周知の如く,調整卵と対照的な発生をなすも
の卵黄の意義は特記さるべきものである.
のにMosaic卵が存するが,同様なる検索は,
Gastrula以後の卵黄は,恐らく栄養源として
後者に関しても行われなければならない.両者
利用されるに過ぎないものであろう.逐次その
の成績を比較検討することによって.教室同人
含有基質を溝失し,爾:応能も嚢えてVacuole化
の勾配説は,より広汎なる内容をもち得るも
する.
ので,本報告が,従来検索至難とされていた
II)形成されたBlastodermは,やがて,
Mosaic卵を対照とした所以である.
自律的にGastrulationを生起し,こ、こに胚体形
Isopodaの初期胚発生を検索すると,
成の基礎たる外,中,内3胚葉の分化が現われ
1)受精卵の中央に多量に存する卵黄は,卵
る.その後,各胚葉は夫々特異的な秩序性ある
【106】
西田論文附図 (・)
第1図一1 組織化学的検索成績
Acld−P−ase第2期 Glycogen第3期
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SS−SH第2期
Alk−P−ase第3期
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西田論文附図
(2)
第1図一2 組織化学的検索成績
D.N. A.第4期
Acld−P−ase第4期
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Acld−P−ase第4期
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西田論文附図 (3)
第1図一3
Alk−P−ase第6期 Acid−P−ase第6期
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初期発生の組織化学的研究
2187
組成の転換を経期的に行い,夫々の器官原基を
く,これらは胚葉分化,成長に基礎的な生化学
形成するに至ることを組織化学的に検索した.
変化と考えることが出来る.
その聞,Ipvaginationに伴うTアr.:R NA.
終りに御指導を戴いた恩師石川教授に深く感謝申し
Glycogenの消長,紳経系,筋肉系における基
質,酵素系の転換にはAmphibiaと共通性が彊
上げます.
丈
献
1)石川太刀雄:初期発生の界面生化学的な解
und ihre Rolle bei Aktivierung des:Bild鵬gs−
析.細胞化学シンポジウム,3・1954・
zentrums.Arch.:Entw.一Mech.123(1932)213∼
2)石川太刀雄:動物組織化学。生物学実験法
276. 9)Seidel, F.3 Das Di仔erenzie−
講座,5・1955・ 3)井上和子:胚発生機
rungszentrum im:Libellenei.1.:Bie dymmizchen
構の組織化学的亜に冤疫化学的解析.動雑,60.
Voraussetungen der Determination und Regula・
3∼64.12,1951∼1954. 4)Krause, G.:
tion. Arch. Entw−Mec}λ.131(1936)291∼336.
Ana】)・se erster D班erenzierungsprozesse inl Keim
m)Seidel, F.: Entwicklungsphysio】ogie des
der Gewachshausheuschrechrecke durch K:慧stlich
Insekten一:Keims. Verh. deuts. Zool. Gessll.
erzeugte zwillings一, Doppel−und Mehrfachbil−
35(1936)291∼336. U)Seidel, F.:
dungeu. Arch. Entw.一Mech.132(1938)115∼
Der Anlagenplan im:LibeUeiei, zugleich eine
205. 5)1>Iac Br量de 3 Text−book oF
Untersuchung Uber die a1】gemelnen:Bedeutungen
:E血buyo】ogy vo1.1,1914. 6)岡田要:
fUr detekte Entwick】ung und Regulation bei
昆虫界における胚子発生機構.卯月動,7,1.
dotterreichen Eiern. Arch. EntwブMech.132
7)Seidel, F.: UntersuchuDgen廿ber das Bi1−
(1938)671∼751. 12)民野孜:鶏胚初期
dungsprinzip der Kleimanlage im Ei der I,ibeHe
胚の組織化学,(印刷申).
Platヌcnemis pennipes.1−V. Arch.Entw.一Mech.
玉3)若野三郎:鶏胚内胚葉性器官発生の組織化
119 (1929) 332∼440. 8) Seidel. F. 3
学(印刷申)
Diepotenzen der:Furcllungskerne im Libellenei
、
【107】
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