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がん幹細胞ニッチの破綻と がん幹細胞の細胞死の誘導
基幹研究 代表研究者 高倉 伸幸(大阪大学微生物病研究所 教授) がん幹細胞ニッチの破綻と がん幹細胞の細胞死の誘導 概 要 がん細胞は生化学的に単一でなく、従来の抗がん剤や放射線療法に抵抗し、転移および浸潤能の高いがん幹細胞が、 がん細胞を産生して、 がん組織形成に大いに関わることが示唆されてきた。 そこで、 がん幹細胞の単離法を確立し、単離 されたがん幹細胞と、通常のがん幹細胞の遺伝子発現の相違を明確にして、 がん幹細胞の細胞増殖に関わる遺伝子を 同定する。 また、 がん幹細胞の腫瘍組織内における局在を明確にし、 がん幹細胞に効果のある薬剤のスクリーニングに 利用する。 さらに、 がん幹細胞の生態学的な適所、 いわゆるニッチ領域を解明して、 ニッチを構築する組織の破綻により、 がん幹細胞の増殖を抑制する治療法の開発をめざす。 期待される成果 がん幹細胞の増殖は血管領域で生じることが判明してきており、血管新生抑制剤に血管ニッチの破綻効果の期待が寄 せられる。 しかし、現行の治療手段では、 がん幹細胞がニッチを形成するのは、成熟血管であり、 その破綻は困難である。 本研究により、 がん幹細胞の棲息領域を明確にし、 そのニッチを破綻する方法を確立することで、 がん幹細胞の増殖を抑 制する新規の治療開発が期待される。 また、 がん幹細胞の腫瘍内可視化により、治療効果判定が容易になると考えられ る。 がん幹細胞化に関わる遺伝子プロファイリングとその機能解析 骨髄細胞と相互作用中のがん細胞 がん幹細胞とがん細胞の分画 骨髄細胞 がん幹細胞 マイクロアレイ FACS がん細胞 10細胞の移植 候補 遺伝子 no tumor がん細胞 弱い腫瘍形成能 機能解析 105細胞の移植 がん幹細胞 強い腫瘍形成能 骨髄細胞との相互作用により、がん細胞のがん幹細胞化が生じうる。得られたがん幹細胞様細胞とがん細胞の 発現遺伝子のプロファイリングから選択された、幹細胞化に関わる候補遺伝子約20遺伝子について、機能解 析を行っている。 DNA複製因子、GINS複合体構成分子を用いたがん幹細胞の可視化 マウス移植モデル ヒト食道がん LLC-PSF1pEGFP PSF1/CD31 colon26-PSF1pEGFP PSF1/CD31 DNA複製因子、PSF1の発現解析により、がん幹細胞の腫瘍組織内における局在の解明に成功した。 がん幹細胞は腫瘍周辺の血管領域で自己複製している。他の、GINS構成分子による、がん幹細胞の 可視化により、さらにがん幹細胞ニッチを詳細にする。 がん幹細胞ニッチの破綻 血管の管腔形成の阻害 がん幹細胞 破綻 ッチの 血管ニ miR-X 血管新生抑制剤投与 tumor 残存する腫瘍周囲の成熟血管( ) がん幹細胞ニッチを形成している腫瘍周囲の血管は成熟化しており、 現行の血管新生抑制法では破綻できていないと考えられる。 我々は、内皮細胞同士の接着に関与して、管腔形成維持に必須である VE-cadherinの発現を抑制するmicroRNAを同定し、これにより血管 ニッチの破綻の方法を開発中である。