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第336号(2013年01月31日発行)

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第336号(2013年01月31日発行)
北里大学医学部ニューズ
CONTENTS
第5回医学部ニューズ写真コンテスト応募作品「天空の氷河」
(片山菜穂子さん)
■新春の挨拶………………………………………………………2,3
■第38回北里医学会総会報告… …………………………………4
■平成24年度墓前祭報告……………………………………………5
■県立こども医療センターボランティアについて……………6,7
県立こども医療センターボランティア報告
■科学研究費補助金を受けて……………………………………8~12
■講師就任挨拶……………………………………………………13
■北里研究所創立100周年・北里大学創立50周年
記念事業について………………………………………………14,15
■医療系研究科とKAIST
(大韓民国)
の学術交流協定の調印… …16
2013.1
No.336
新春の挨拶
医学部長 東 原 正 明
(教授・血液内科学) 謹んで、新春のお慶びを申しあげます。本年、医学部は
家試験・CBT対策の推進、9)医学部教員の教育能力を
創立43周年を迎えました。3.11東日本大震災以来、インフ
高めるための実践的方法(FD)の開拓、10)教職員の職
ラ老朽化の問題は切実であります。現在建設工事が進んで
務体制の点検・評価と、非効率な委員会運営の見直し。
います新大学病院の開院(平成26年5月予定)の次は、全
本学部は「国際貢献の推進」も基本理念としており、国
学臨床研修センター(仮称)そして新医学部教育研究棟の
際化に向けた学生の能力向上と意識啓発を図るための教育
建設が始まります。この流れを踏まえて、本年度も、医学
を推進しています。第6学年での海外選択実習は、昨年度
部教育・研究・診療の機能が円滑に運営できるハードとソ
は5つの海外の医科大学付属病院で10名が参加しました。
フトの構築を目指したいと思います。
本年度は、新しく国際交流協定を結んだマサチューセッツ
以下、教育、研究、診療における本年度の抱負を述べさ
医科大学に1名が参加し、合計7名を予定しています。年
せていただきます。
間25名の実績を持つ医科大学もあります。医師になってか
【教育活動-教育の質の向上に向けた取組-】
らでも海外留学の機会はありますが、学生の時に国際感覚
医学部の基本目標は、人間性豊かで確固たる倫理観を持
を養うことができる貴重な体験と考えます。一方、海外か
つ優れた医師の育成です。医師は、知識・技能だけでなく、
らの留学生に対しては、新ドミトリー棟に10室程度を、宿
コミュニケーション能力、医学研究を遂行する能力、そ
泊施設として確保しています。
して社会ニーズに応える資質を備えておく必要がありま
スキルスラボの整備・充実を更に進めていきます。臨床
す。平成25年度の定員は、茨城県地域枠2名を新たに加え、
教育において学生・研修医・指導医(専門医)による屋根
119名となります。入学定員増以降、全国的に医学生の学
瓦方式の教育を構築し、卒前・卒後教育を通じて一貫した
力の低下が問題視されています。1~4年生の留年者が経
臨床技術教育を展開する必要があります。このスキルスラ
年的に増加し、1年生の休学者は明らかに増加していると
ボは、将来、全学臨床研修センター(仮称)内で運営され
の報告があります。学力以外にも、様々な問題を抱えた学
ることになります。全学臨床研修センター棟内には、病棟
生が増えています。これらの輻輳する課題に対しても、本
医及び研修医の教育施設、居室、講義室等が配置されます
学は、医学教育研究開発センター、教育委員会、学生指導
が、その具体案については、今年度早々、病院、関係学部
委員会、国試・CBT(Computer Based Testing)対策委
等との協議が始まります。
員会、国際交流委員会等が連携しながら濃やかなる教育活
平成23年度入学者から改定カリキュラムを導入していま
動に取り組んできました。その成果の一つとして、昨年度
すが、第3学年の「医学研究入門3」においては、研究マ
の国家試験合格率(新卒)は、98.2%と過去最高の合格率
インドの涵養や、自主的な問題解決能力の獲得を目指しま
を達成しました。本年度もその水準を維持することを目標
す。さらに、3~4年次カリキュラムの再編成(器官系別
としております。ライフプラン、キャリアプランが立てら
総合教育の見直し、臨床実習の早期開始等)について検討
れない学生に対する教職員からの声かけ、励ましを行い続
し、医学教育カリキュラム検討会(文科省)で例示された
けることも重要です。クラブ活動、学年主任・クラス主任
臨床実習の最低必要単位数50単位(1単位30時間、計1,500
制、懇和会などにより学生の自己研鑽学習を支援しており
時間)確保に向けて引き続き検討を進めていきます。さら
ます。これらを通して、学生は学習意欲を持ち、目的意識
に国際的な基準として求められる72週間の確保や診療参加
が芽生え、学習を継続することができると確信します。
型臨床実習の充実についても検討を進めていく予定です。
本学の本年度の教育重点事業項目として、以下のような
「2023年問題」への対応も行なう必要があります。アメリ
10項目あげたいと思います。いずれも継続課題です。
カ・カナダ以外の医学部出身者に対してアメリカで医業
1)屋根瓦方式の臨床教育スタイルの構築、2)系別総
を行う資格を審査するEducational Comission for Foreign
合講義に「腫瘍学」に加えて「血管学」の新設、3)M3
Medical Graduates(ECFMG)が、申請条件として、
「2023
学生を各教育単位へ配属(1か月)する「医学研究入門3」
年以降は国際的な認証評価を受けている医学部出身者に限
の具現化、4)語学エリート育成のプロジェクトの立ち上
る」との通告を全世界に発信したのが、いわゆる「2023
げ、5)臨床スキル・シミュレーションラボ(スキルスラ
年 問 題」 で す。 こ の 通 告 を 受 け、 全 国 医 学 部 長 病院長
ボ)の整備・充実、6)客観的臨床能力試験(OSCE)や
会議では平成22年に「医学教育の質保証検討委員会」を
医療面接、診察の実習等において重要である模擬患者(SP)
発足させました。日本医学教育認証評価評議会(Japan
の人材確保と育成、7)改訂カリキュラムの導入、8)国
Accreditation Council for Medical Education: JACME)
− 2 −
による認証評価制度確立の検討が始まっています。公的機
たいと思います。
関による厳正な認証評価を受け、質が保証された医学教育
【診療】医学部と4病院との意思疎通、情報交換に努め、
を受け、一定の医療水準が担保された医師を輩出す必要が
臨床研修の質を充実させること、病院間ネットワーク回線
あるというコンセプトに基づきます。
容量アップによる効率化も重要と考えます。スキルスラボ
【研究活動】基礎研究を充実させ、治験・臨床研究との連
を運営し、屋根瓦方式の教育を実現させるには大学病院ス
携を推進させたいと考えます。また経済的基盤確保(寄附
タッフの協力が必要です。指導医の質と人数の担保、
若手・
講座、科研費、大型研究助成金・民間助成金の獲得)に努
中堅医療者の育成、臨床研究・治験の共同実施が重要です。
めます。研究資金の管理、運用をより適正化する必要があ
北里大学医学部附属新世紀医療開発センター(仮称)を開
ります。治験の活性化も重要です。昨年おこなった倫理委
設し、新病院の先進的・横断的診療部門の運営を支援する
員会の改組のもと、運営委員会を基軸として、各委員会を
体制が具現化する年でもあります。
運営させて参ります(下図を参照下さい)。北里大学医学
以上、本年度の抱負を述べ、新春の挨拶とさせて頂きま
部付属臨床研究センター(KCRC)の組織の整備と強化も
す。医学部の目標達成そして、さらなる弥栄のために、医
急務と心得ております。医療系大学院の海外での留学制度
学部教職員、そして同窓会・けやき会・PPAの皆様方の
を利用した院生の海外留学、そして、学内に於いては、臨
ご協力、ご支援をお願い申し上げます。
床系と基礎系の研究室間の人的交流、共同研究も推進させ
1.倫理委員会を設置する研究機関長は、医学部長及び大学病院長並びに東病院
長とし、その代表者を医学部長とすることになりました。
2.各委員会の改名をおこない、旧A委員会は、医の倫理委員会、旧B委員会は、
観察・疫学研究審査委員会、旧C委員会は、治療・臨床研究審査委員会とし
ました。
3.新たに運営委員会を設置し、各委員会の活動状況の統括と運営管理をおこな
います。自己点検・評価、内部監査、広報・渉外、臨床研究等及び診療等に
係る教育及び人材育成等を遂行します。
− 3 −
第38回北里医学会総会報告
北里医学会事務局
本年度の第38回北里医学会総会は、平成24年12月1日
using megalin cDNA fragments」で、メガリンN末端のア
(土)に小田急ホテルセンチュリー相模大野・フェニック
ミノ酸残基1-236をコードする遺伝子の断片を用いて、遺
スにて開催された。ここ数年は地元医師会を中心とした近
伝子免疫によるpassive Heymann nephritisの誘導に成功
隣地域との連携・交流をより深めようと交通アクセスのい
したことが編集委員会にて高く評価された。宮下俊之編集
い相模大野駅前を会場に選定している。周辺地域では本学
担当理事の司会により受賞講演をして頂いた。引き続き平
医学部の卒業生も数多く開業しており、相模原市、町田市
成24年度黒川賞を受賞された細野加奈子(薬理学)
・龍華
を筆頭に近隣の医師会宛にもプログラムを送付し、公開市
慎一郎(呼吸器内科学)の両先生の講演が黒川賞選考委員
民講座への参加を募った。その結果、公開市民講座への外
長の馬嶋正隆教授の司会のもと行われた。
部参加者は本学卒業生だけでない近隣医師会員も見受けら
今回の
「公開市民講座」
は教授就任講演・卒業生顕彰講演・
れた。開催にあたり、物心両面のご後援を頂いた本会理事
招待講演とし、教授就任講演は本年に着任された西山和利
でもある大内孝文医学部同窓会長を筆頭とした医学部同窓
教授(神経内科学)
、
村雲芳樹教授(病理学)
、
堤明純教授(公
会の皆様に紙面を借りて厚く感謝申し上げます。
衆衛生学)にお願いした。休憩を挟んで、聖マリアンナ医
本年は総会に先立ち評議員会を開催し、「平成23年度収
科大学(外科学心臓血管外科)でご活躍中の西巻博教授(本
支決算報告」が承認され、「平成23年度活動状況」「平成24
学10回生)を顕彰、ご講演頂いた。専門はInterventional
年度収支中間報告」および「平成24年度〜25年度役員」が
Radiology(IVR)で、北里大学病院でのIVRの経験と今
報告された。本年度より評議員は大幅に増員されたので、
後の展開について語って頂いた。本学での所属であった救
出席者は32名を数えた。
命救急医学や放射線科学の関係者も聴講し、旧交を温めて
総会は東原正明会長の「開会の辞」に続き、総会議事に
いた。
おいては、総務担当の三枝信理事より平成23年度活動報告・
本年の招待講演は東北大学加齢医学研究所腫瘍制御研究
収支決算報告、平成24年度活動中間報告・収支中間報告等
部門腫瘍循環研究分野の佐藤靖史先生による「血管新生調
がなされた。
節の新しい分子基盤」で、vasohibinファミリー分子の血
平成24年度北里医学会賞は、田崎尋美先生(医学部腎臓
管新生における各種病態での役割に関する研究と、治療応
内科学)に会長より授与された。受賞論文はThe Kitasato
用を目指した橋渡し研究についてご講演頂いた。
Medical Journal 2011; 41(1)
:135-143に掲載された「Passive
学術集会担当の馬嶋正隆理事による閉会の辞の後、懇親
Heymann nephritis induced by genetic immunization
会が行われ、学内外の関係者と交流を深めた。
「平成24年度北里医学会賞」受賞の田崎尋美先生と東原正明会長
「公開市民講座Ⅲ−招待講演」佐藤靖史先生
− 4 −
平成24年度墓前祭報告
太 田 博 樹
(准教授・解剖学) 平成24年12月7日(金)、午後1時30分より、相模原市
感想文を書いており、そのいくつかは号を改めて紹介でき
南区当麻の当麻山無量光寺境内にある北里大学医学部納骨
ると思いますが、その中で多くの学生は原君と同様に、献
堂前において「平成24年度北里大学医学部墓前祭」が執り
体して下さった方々に対する思いを述べています。
行われました。平成24年度解剖学実習は、9月3日をスター
昨年は京都大学の山中伸弥教授のノーベル医学生理学賞
トに、骨学実習、肉眼解剖実習、納棺と全過程を修了しま
受賞が大きな話題となりました。iPS細胞は今後の医療を
した。この日は、今年度の解剖学実習を終了した2年生全
変えるとも言われています。将来、その応用は臨床での成
員、解剖学担当講座教員、教務課職員が参列し、納骨を希
果が期待されますが、
どんなに素晴らしい基礎研究の知見・
望された6柱の納骨を行い、また、献体くださった諸霊の
技術であっても、それを自分のものとする臨床医が育成さ
ご冥福をお祈りし、感謝を捧げました。
れなければ、人を救うことはできません。医師を目指す学
式では、一同納骨堂に向かって礼拝を行った後、阪上洋
生は、必死になって最新の知識を取り込む不断の努力が要
行教授から挨拶があり、今年一年を振り返って、解剖学講
求されます。
義そして解剖学実習での経験は医学生として初めて人体に
一方で、地味で新しい発見はほとんどない人体解剖は、
触れるということ以上に医師になるための精神的成長のた
野心的な学生にとっては時に退屈に感じられたこともあっ
めに必要不可欠な第一歩であったという学生諸君へのメッ
たかも知れません。解剖学実習では正規の実習時間を2、
セージをいただきました。
3時間過ぎても脂肪組織、硬い結合組織に隠れた神経、血
続いてご住職による読経、その中12名の学生代表と関係
管を捜し出す作業の繰り返しです。しかし、人体の真の構
教員による納骨が行われました。寒空のもと無事納骨を終
造、教科書にはない様々な個体変異、多様性を理解しよう
え、続いて全員でお焼香、そして例年通りご住職からの法
と地道な試行錯誤の過程を繰り返すことで、学生は真の医
話をいただきました。「仏教で “因果” という言葉があり
学生になると言われています。解剖学実習で芽生えた、死
ますが、この “因” とは植物の種子のことで、“果” とは果
から生へ、自らの力でその橋渡しをしようという真摯な姿
実のこと。みなさんが北里大学医学部に入ったことが “因”
勢、命の育みを担おうとする正義感と使命感を忘れずに、
であるとすれば、その “果” とはみなさんが立派なお医者
これからも勉学に励んでいっていただけたらと思います。
様になることです。精進して下さい。」というお話でした。 繰り返しになりますが、立派な医師に育てるために献体
最後に原勇輔君が、学生代表として、解剖学実習の感想を
して下さった方々、社会への感謝の念を忘れずに、歩み続
述べ、献体してくださった方々とそのご遺族に、改めて感
けてもらいたいと願っています。
謝の意を表しました。2年生は全員、実習終了時に実習の
読経する住職
焼香する学生たち
− 5 −
県立こども医療センター
ボランティアについて
齋 藤 有紀子
(准教授・医学原論研究部門)
1年生の医学原論演習では、この夏45人の学生が神奈川
により子どもと同じ目線で笑顔で接すること、など。1年
県立こども医療センターでボランティア実習を行った。配
生には決して低くないハードルであった。前号掲載の保育
置されたのは、病院玄関ホール、外来図書室、放射線科、 園実習でも学生たちは同じ課題に直面した。社会経験であ
入院病棟、肢体不自由児施設、養護学校など。経験豊かな
る。医学生は大学だけで医師になるのではない。社会の皆
ボランティアの方々をはじめ、病棟の看護師・保育士さん、
さまに教え育てていただく。自分たちの未熟な姿も知って
養護学校の先生方に、大変お世話になり、また、ご迷惑も
いただきながら。そして将来、ほろ苦い思い出を感謝に変
お掛けした。挨拶に始まり、時間を守ること、連絡を怠ら
えて、精一杯社会に恩返していくのである。
ないこと、身だしなみや体調を整えて実習に臨むこと、な
県立こども医療センターボランティア報告
実習を通じて考えたこと
海 平 俊太郎
第1学年 2012年9月3日から9月7日まで、神奈川県立こども医
戻って行ってしまいました。その後私は散らかった遊具の
療センターでボランティア実習をしてきました。そこで
片づけをしていたのですが、その場面を見ていた年上の女
は、“こころ” という病棟に入り、入院していた子ども達
の子に「なんであの子に片付けさせないの?自分で散らか
の遊び相手をしました。病棟にはたくさんの子ども達がお
したものなんだから自分で片付けさせないとダメじゃん。
り、入院までの経緯も一人一人異なったものでした。この
そういうのは叱んないとダメだよ!」と言われてしまいま
レポートでは、そんな子ども達と5日間過ごして、私が考
した。その後、特に問題なく最終日の日程を終えたのです
えたことについて、そして、なぜそのように考えるように
が、この女の子の言葉には、実習が終わってからも凄く考
なったのか、きっかけになった出来事について書こうと思
えさせられました。「注意を遠慮することが子どもにとっ
います。
てプラスに働くのだろうか・・・」
、
「子ども達は、歳を重
実習が始まる前、私は「子ども達がルールを破ったり、
ねれば、自分の過ちに勝手に気づいていくのだろうか・
・
・」
悪いことをしていたりしたとしても注意はしないようにし
もちろんそれらの答えはノーであり、誰かがダメなことは
よう」と心に決めていました。なぜならば、子ども達は病
ダメだときちんと伝えてあげなければ、子ども達は自分自
棟に入っているという時点で、普通の子ども達がしないよ
身を改善していくことはできない、そのことに私は気づい
うなつらい思いをたくさんしてきており、そのような不平
たのです。
等さが解消されるためにも、彼らは多少甘やかされてしか
小児医療の現場では、子どもに健康を提供するだけでは
るべきだ、と考えたからです。実際に実習前半において、
なく、その後の生活で「やっていいこと・いけないこと」、
私は遊具を使う際にルール違反をしていた子に対して注意
そういった社会的規範(そんな大げさなものではないかも
をしませんでしたし、子ども達が実習の終了時刻を過ぎて
しれないが)も習得させる義務があります。とりわけ私は、
も私を解放してくれなかった際には、彼らの気が済むまで
将来小児医療に携わりたいと思っているので、この実習を
遊びに付き合ったりもしました。(もちろん、ある程度の
終えて、伝えるべきことは妥協せずに伝えきるための能力
節度は守っていましたが・・・)
の向上に努めていかなければならないなと考えるようにな
しかし、ある出来事をきっかけにこのような実習前の考
りました。そのような努力を日々の生活の中で少しずつ行
えは変わっていきました。実習最終日に、私と遊んでいた
うようにし、子ども達の身体だけでなく心も健康にできる
ある男の子が癇癪を起こし、遊具を散らかしたまま自室に
ような医師を目指したいと思います。
− 6 −
こども医療センター実習を通して
高 橋 かおり
第1学年 私は今回の夏休みの実習で、東戸塚にある神奈川県立こ
なと感じました。
ども医療センターに行かせて頂きました。この病院は肢体
実習を通して最も印象に残ったのは、何よりこどもたち
不自由児施設、重症心身障害児施設を併設した高度医療を
の笑顔です。医療センターに来ているこどもたちは治療の
提供する小児総合医療施設です。またこの施設では高校生、
ためにずっと学校に登校できていなかったり、思うように
大学生、主婦、社会人、定年退職後の方など、さまざまな
体を動かせない生活を送っている子が大半です。そんな中
方たちがボランティアとして活動しています。今回私はこ
で、私たちがいるボランティアのブースに来て楽しそうに
のボランティアの一員として実習をさせて頂きました。
話してくれたり、腕時計を腕につけてと嬉しそうに頼んで
担当したのは放射線科でした。放射線科では、病院に来
くる姿を見ていると、何だか温かい気持ちになりました。
院したこどもたちに配るための折り紙の腕時計や指輪、こ
私は小さい頃から体が丈夫で大きな病気をした経験もあり
まを作りました。また、それらの作ったものを1階ロビー
ませんし、入院もしたことがありません。いろいろなこと
の受け付け近くでこどもたちに配りました。それから、初
に興味があって遊びたい盛りの時期を病院で過ごさなけれ
日には放射線科内を見学させて頂いたり、イベントが行わ
ばならないことを考えると、少しでも病院で過ごしている
れる日には、その会場準備もお手伝いさせて頂きました。
時間を快適で楽しい時間にしてあげたいと思いました。
折り紙で作ったおもちゃなんて、大学生の私たちにとって
そしてこの実習で最も自分のためになったことは、こど
みれば何てことのないものですが、もらいにくるこどもた
もとのコミュニケーションの取り方を学ぶことができたこ
ちがどれを貰おうかと真剣に選んでいる姿をみて、この子
とだと思います。私は一人っ子で、身の周りにも小さい子
たちにとっては宝物なのだなと思いました。ボランティア
はいません。実習の初日にはどのように子どもと話せばよ
のお話によれば、家で指輪や時計をコレクションしている
いのか戸惑いましたが、日を重ねるごとに徐々に慣れてい
子もいるそうです。きっとこのようなものをもらえるとい
き、スムーズに話せるようになりました。このことはこれ
うことが、病院にいくのが億劫な子を支えているのだろう
から先に生かしていきたいと思います。
2013.1 No.336
− 7 −
科学研究費補助金を受けて
科学研究費補助金を受けて
神 谷 和 孝
(准教授・眼科学) この度、
「長深度前眼部光干渉断層計によるサイズ決定
今回の研究では、長深度前眼部光干渉断層計を用いた毛様
に基づく貫通孔付きレンズの有用性の検討」
という研究テー
溝径の直接計測によるレンズサイズの決定とレーザー虹彩
マで科学研究費補助金(基盤研究(C)
)の助成を受けるこ
切開不要とする貫通孔付き有水晶体眼内レンズの使用の併
ととなりました。この研究は、有水晶体眼内レンズという
用によって、白内障や瞳孔ブロックなどの術後合併症をで
新たなテクノロジーの安全性・有効性の更なる向上に貢献
きるだけ軽減し、より安全性や有効性の高い手術を目指し
し、患者さんの満足度を高めることを目的として考えまし
ていきたいと考えています。本邦で清水公也教授が独自に
た。少しだけ専門的な話をしますと、後房型有水晶体眼内
開発した貫通孔付き有水晶体眼内レンズを含めて、いずれ
レンズはレーシックより安全性・有効性が高く、術後視機
のアプローチも世界に先駆けての研究ではないかと自負し
能にも優れていて、現在64か国で承認され、25万眼以上に
ています。もちろん、臨床研究には紆余曲折がつきもので
埋植された実績があります。ただし、現状レンズが固定さ
あり、決して平坦な道のりではないことも理解しています。
れる毛様溝径を直接測定することが困難であり、レンズサ
ただし、このような最先端の研究に触れることができるの
イズが小さ過ぎると機械的接触や房水循環不全による白内
は、北里大学でしかないと思います。この分野の世界的な
障が、サイズが大き過ぎると瞳孔ブロックや隅角閉塞によ
先駆者である清水教授をはじめ、角膜・屈折矯正グループ
る眼圧上昇が発症しやすくなります。また、瞳孔ブロック
の五十嵐章史先生、石井梨絵先生、佐藤信之先生、小橋英
を予防するために術前虹彩切開術が必須であり、特に若年
長先生に改めて深謝申し上げたいと思います。日常での診
者では疼痛の訴えが強く、患者満足度を低下させる要因と
療は、近視や乱視を治して眼鏡やコンタクトレンズから患
なっています。したがって臨床的視点から、①毛様溝の直
者さんを解放すること、見え方の質を落とさずに角膜の病
接計測による正確なレンズサイズの決定②レーザー虹彩切
気を治すことを目指しています。屈折矯正手術や角膜疾患
開を不要とするレンズの開発が重要な課題となっています。 でお困りの方は気軽にご相談いただければと思います。
科学研究費補助金を受けて
三 上 哲 夫
(准教授・病理学) この度、
「潰瘍性大腸炎の炎症性粘膜における発癌と浸
関連癌)
。これまで、
潰瘍性大腸炎関連癌に関して細胞増殖、
潤に関わる蛋白の解明:プロテオミクス解析」という研究
アポトーシス、細胞接着因子、DNAメチル化などの観点
テーマで、科学研究費補助金(基盤研究(C))の助成を
から研究を行ってきましたが、その結果、潰瘍性大腸炎関
受けることができました。これも偏に、私の研究を支えて
連癌は通常の大腸癌とは種々の点で異なることが解りまし
くださっている方々無しではできなかったことです。まず
た。特に潰瘍性大腸炎関連癌は一たび浸潤すると、分化度
は、この場をお借りして協力いただいている方々に感謝申
が低くなりやすく、予後が不良であることです。浸潤現象
し上げます。さて、この研究は、潰瘍性大腸炎から発生す
そのものは通常の大腸癌でも起こることですが、浸潤に関
る大腸癌の発癌や浸潤に関わる因子を解明することを目的
わる因子が通常の大腸癌とは異なることが予想されます。
としたものです。潰瘍性大腸炎においては、粘膜の炎症に
私たちはCD44という細胞接着因子に着目し、この分子の
よる脱落と再生を繰り返しており、長期経過例で大腸癌の
発現や分解が潰瘍性大腸炎関連癌の浸潤に関わることをこ
発生頻度が高くなることが知られています(潰瘍性大腸炎
れまで示してきましたが、これをさらに進めて、CD44の
− 8 −
周辺で関連する蛋白を明らかにすることが、まず第一の目
研究室の改装など、研究しやすい環境を整えて下さってお
標です。
り、また、新しい視点からコメントを頂いたりしています。
この研究に関して、昨年度科学研究費の申請を行ってか
研究の話に戻りますと、第一の目標に加えて、潰瘍性大
ら、現在までに大きく変化したことが二点あります。一つ
腸炎関連癌に特異的に高発現している蛋白をプロテオミク
は横浜市立市民病院の林弘行先生と共同で研究が進められ
スの手法で網羅的に解析し同定することが第二の目標です。
ることになったことです。潰瘍性大腸炎関連癌は、大腸癌
以前、理学部小寺義男先生、大石正道先生と医療衛生学部
全体からみると症例数が少ないため、これまで研究を進め
佐藤雄一先生にお世話になりながら、細胞株においてプロ
ていく上で困難な面がありました。平成24年4月の病理学
テオミクス解析を大学院生と一緒に行いましたが、実際の
会で、隣のポスターで林先生が発表していらっしゃいまし
組織からの解析はさらに厳しいものになりそうです。です
た。隣同士の雑談の中で、「横浜市立市民病院には多くの
が、研究のできる環境にいる幸運に感謝して、少しでも新
潰瘍性大腸炎関連癌症例が蓄積されていますので、ぜひ一
しい知見を積み重ねていけたらと考えています。新装開店
緒にやりましょう」とおっしゃって下さいました。その後、
となった病理学村雲単位ですが、単位の皆さんと協力して、
病院を訪問し具体的に共同研究として立ち上げることがで
診療、研究、教育に力を入れていきますので、宜しくお願
き、大きな進歩となっています。もう一つは、村雲芳樹教
い致します。
授が病理学単位に新たに着任なさったことです。着任以来、
科学研究費補助金を受けて
科研費がもたらす正の循環
中 山 明 仁
(診療准教授・耳鼻咽喉科学)
1989年秋、病棟医としての外来中、院内ポケットベルが
小説を中心に百冊を読んだ。今でも英文は完璧ではないが、
鳴った。医学部事務から「先生、奨励研究Aが補欠で採択
nativeによる校正で和文の添付は必要なくなった。留学中、
されたので、急いで書類を提出し、まもなく使用期限にな
NIHで参加した講座では、究極の英文作成術とGrant取得
るので、全額使い切ってください。」と矢継ぎ早にいわれた。
に人生をかける研究者たちに接し、公費獲得の奥深さにつ
何のことかわからないので電話を切り、そばにいた上級医
いてさらに学んだ。
たちに、
「何か科研費が通ったみたい」と言った時の驚い
1994年春、習得した病理手技を基に喉頭・下咽頭癌の病
た表情だけは今でも眼に焼き付いている。研究実績もなく、
態生理に関する研究を始めた。留学中の業績のお陰で1997
いわば箸にも棒にもかからない状態、これはビギナーズ
-2001年度までは奨励研究が順調に取得できた。しかし、
ラック?あらためて20数年前の手書きの申請書を見てみる。
臨床の多忙さ、作成論文数の減少、科研費に対する慢心、
関係がありそうなのは研究業績欄の7編の日本語論文だろ
等から徐々に勢いは衰え、2002年以降に申請が適応となっ
うか。初の症例報告発表を論文にしたものを始め、3年間
た基盤研究からは黒星の連続であった。合格ラインに程遠
で書いたものであった。最初の原稿は指導教授の忍耐強い
い審査結果を見て、さらに士気が低下した。今から十年程
高閲を受け、万年筆で7回書き直したものであった。業績
前のことである。完全な “負の循環” に陥り、真剣に基礎
と科研費取得は連動するものだろうかとおぼろげながらに
研究から足を洗おうと思った。その時、ある学会で尊敬す
思った。
る名誉教授から「大学人は臨床と基礎の二本立て、基礎を
1991年春、大学病院での研修終了後、念願の留学に出発
捨ててはいけない」との鞭撻の言葉を頂き、このままでは
した。米ウイスコンシン州立大学に2年、ワシントンDC
終われないとリベンジを決意した。崖っぷちの2004年秋の
のAFIP(Armed Forces Institute of Pathology) で 1 年
申請書作成、医学部9階に掲示された採択申請書の前に通
を過ごした。出発前の送別会、指導教授からは「ただ海外
い詰め、共同研究者を立て、peer reviewに謙虚に耳を傾
生活を楽しんで来い、何もしてこなくてもいい」と温かい
けた。低いテンションを鼓舞し、細々と研究室に通い続け、
言葉で送り出されたが、内心「嘘だ」と思った。①1年間
何とか英語論文にまとめた。
に2編、3年間で6編の論文を持ち帰る、②本を百冊読ん
2005年春、基盤研究C「下咽頭癌の浸潤転移を規定する
で英文が書けるようになる、この2つの宿題を胸に成田を
既存、新規分子の発現と予後との関連性」(3年)が初め
後にした。帰国したとき、①は3年間で論文5編、
本のチャ
て採択された。喜びは初回採択時とは比べものにもならな
プター1編とほぼ達成したが、同施設に留学した外科医は
いほど大きかった。予後不良な下咽頭癌の分子生物学的解
2年間で論文10編を書き上げていた。②本はベストセラー
析を続けつつ、新たなテーマの立案と予備的研究を通して、
− 9 −
2008年の基盤研究C「喉頭機能温存手術SCL-CHEPの術後
することを目的としている。
音声嚥下機能に関する生理的エビデンスの解析」(4年)
科研費の採択は “正の循環” に向かう原動力を与えてく
の採択に繋ぐことができた。進行喉頭癌でも声を残すこと
れた。
「基礎研究を捨ててはいけない」と激励してくれた
が可能なSCL-CHEPは北里大学が本邦で初めて行った手術
名誉教授のお陰である。卒業して四半世紀、多くの師と恵
で、獲得した喉頭機能の解析を目的とした。申請期間を4
まれた研究環境を与えてくれた北里大学に深い恩を感じつ
年としたのは、オリンピック選手のように頑張ろうという
つ、臨床と基礎が共にできる日々に感謝している。2012年
発想からである。ロンドンでオリンピックが開催された昨
春、耳鼻咽喉科の若き助教が科研費の取得から学位授与を
年、基盤研究C「喉頭機能温存手術SCL-CHEP:音声・嚥
経て、さらなる躍進のためにニュージランドへ留学した。
下機能改善に向けた基礎研究と臨床応用」(4年)を採択
送別会の席上「ただ海外生活を楽しんで来い、何もしてこ
して頂いた。基礎研究の成果を臨床に応用し、患者に還元
なくてもいい」と温かい言葉で送り出した。
科学研究費補助金を受けて
松 本 和 将
(講師・泌尿器科学) 平成24年度より「膀胱癌に対する抗体検出に付随する新
法であり、個別医療体制確立にとっても意義のあることと
規腫瘍マーカーの解析」について科学研究費補助金(基盤
考えている。さらに、当大学病院において、シスプラチン
研究(C))科学研究費補助金の交付を受けることとなった。
耐性進行再発膀胱癌に対して、個々人に対応したテーラー
本研究の概要について記載したいと思う。
メイド癌ペプチドワクチン療法を全国に先駆けて行ってい
膀胱癌の罹患率・死亡率は増加の一途を辿っている。膀
る。本研究で見出された蛋白を用いて、ペプチドワクチン
胱癌と診断される約1/3の症例で、初診時すでに筋層浸潤
療法に応用することで、現在治療法の確立していないシス
を認める進行癌である。進行性膀胱癌に対しての治療とし
プラチン耐性進行再発膀胱癌症例に対して、膀胱癌特異的
て一般的に、膀胱全摘除術・尿路変向術、化学療法、放射
な治療を行うことも視野に入れ研究、開発を行っている。
線療法があげられる。化学療法として、シスプラチンを軸
さらに、抗がん剤感受性を事前に予測する等、抗がん剤
とした多剤併用化学療法が主となる。また、手術不能例や
感受性に関与する分子に対する単クローン性抗体の作製も
有転移症例に対しての奏効率は約50%であり、完全寛解は
検討している。その抗体を用いて多数症例の膀胱癌組織マ
10%に及ばず、さらに腫瘍が薬剤耐性能を獲得し、現治療
イクロアレイ、抗がん剤感受性の結果の出ている治療前組
が無効になることも少なくない。臨床的に、薬剤耐性を克
織、およびそれら患者の血清を用いた早期血清診断および
服することは膀胱癌のみならず、様々な癌種においても一
抗がん剤感受性予測マーカーとしての有用性も検討したい
大問題となっている。
と考えている。
現時点で、膀胱癌に対する特異的腫瘍マーカーは存在せ
市場の原理から、罹患率や死亡率の多い癌腫は多くの研
ず、検出および経過観察においても画像診断のみで行われ
究費が投入され、多くの科学者が研究に参加する。全癌腫
ている。また、抗癌剤感受性に関与する分子として幾つか
において、膀胱癌や尿路上皮癌は日米での死亡者数にそれ
の報告はあるが、特定の抗癌剤に対する個々の患者の感受
ほどの違いは無く罹患率では低位にあり、比較的orphan
性を予測する分子の解析は遅れており、感受性の有無にか
diseaseに分類されてしまう。また、世界的に研究・臨床
かわらず共通のプロトコールで治療されているのが現状で
においてbreakthroughが無いのも現状である。このよう
ある。今後、膀胱癌に対する根治的治療の可能性を広げ、
な疾患に対する研究こそacademismの責務と個人的には考
その予後を改善するには、新たな検索方法やマーカーを用
えている。本研究は、多くの諸先生方、大学院生・学生・
いた新しい診断基準に基づく検討が重要と考えている。こ
技術員・秘書の方々にご協力を頂き、膀胱癌における腫瘍
れまで膀胱癌特異的腫瘍マーカーを検出するため、様々な
関連蛋白の検出を試みてきたその一端である。本研究費取
手法を用い検討してきた。本研究ではその一環として、ラ
得を励みに、また血税を無駄にすることの無いよう、そし
ンダム免疫法を用い、膀胱癌特異的抗体の作製を行い、多
てご支援いただいている方々への感謝を忘れず、一歩でも
数例の患者血清との反応性、膀胱癌組織との反応性を検討
前進できるよう研究を進め、一日でも早く臨床応用させる
することを主題としている。
べく努力していきたいと考えている。
また、早期発見、早期治療は医療費削減の最も有効な方
− 10 −
科学研究費補助金を受けて
板 倉 誠
(講師・生化学) この度、
「ピロカルピン処理マウスにおける脳由来神経
かしながら、プロBDNFはBDNFの前駆体として働くだけ
栄養因子と不安様行動の解析」という研究課題で科学研究
でなく、p75受容体に結合することで成熟型BDNFとはまっ
費補助金(基盤研究(C))の助成を受けることができま
たく異なる働きをすることがわかっています。そこで、こ
した。これもひとえに、研究に協力していただいている方々
のプロBDNFに注目し、これまでほとんど明らかにされて
のおかげであり、この場をお借りして感謝申し上げます。
こなかったプロBDNFの細胞内小胞輸送や開口分泌の制御
本研究課題は、ピロカルピンを投与したマウスにおける
機構を研究することにしました。当研究室では、神経伝達
脳由来神経栄養因子(BDNF)の発現上昇が、強い不安様
物質放出の制御機構について多くの研究を行ってきており、
行動をどのように引き起こすのかを解明することを目的と
申請書において、これまでの研究との継続性も示せたと思
しています。情動異常の1つである不安障害は、生涯の罹
います。また研究を遂行するうえでも、これまで蓄積され
患率が15~20%にもおよび、その病因解明や治療法の開発
た多くのデータを活かすことができます。現在、当研究室
が急務となっている精神疾患です。不安感に関与する脳の
で作成したプロBDNFまたは成熟型BDNFを特異的に認識
領域や神経回路は多岐に渡っており、さまざまな病因に
する抗体を用いたELISA法によって、それぞれのタンパ
よって不安障害が、引き起こされていると考えられます。
ク質を高感度かつ定量的に測定できる系が確立しつつあり
そのため、不安障害の病因解明には、さまざまな不安様行
ます。
動を示すモデル動物が必要となります。これまでに当研究
申請において強調した2つめの点は、我々が不安障害の
室では、ムスカリン性アセチルコリン受容体アゴニスト、
病因解明に必要とされているモデル動物を持っていること
ピロカルピンを投与したマウスに誘発されるてんかん重積
です。ピロカルピン処理マウスは強い不安様行動を可逆的
の時間をコントロールすることで、強い不安様行動を可逆
あるいは不可逆的に起こします。可逆的な不安様行動を示
的あるいは不可逆的に示すモデルマウスを作製することに
すモデルマウスは、不安感を引き起こす脳内メカニズムの
成功しています。さらに我々は、このマウスの不安様行動
解析に非常に有用であることは言うまでもありません。ま
と精神・神経疾患に関係の深いBDNFの発現量に正の相関
た、多くの精神・神経疾患は比較的早期に治療効果の上が
があることも見出しました。そこでこれらの成果を発展さ
る症例と難治性の症例があることが知られていますが、不
せるために、本研究課題を申請しました。
可逆的な不安様行動を示すモデルマウスは、難治性の不安
この原稿が掲載される頃には、本年度の科研費の申請時
障害の良いモデルになると考えられます。さらに当研究室
期は過ぎてしまっていると思いますが、何をポイントとし
では、BDNF関連のさまざまな遺伝子改変マウス(BDNF
て申請書を書いたのかを研究計画の内容とともに書きたい
ノックアウトマウス、p75受容体ノックアウトマウスなど)
と思います。本研究課題の申請にあたっては、2つの点を
を飼育しており、これらの遺伝子改変マウスにピロカルピ
強調することにしました。その1つめは、研究の独自性を
ン処理を行うことで、BDNFと不安様行動の関係をより詳
示すために、成熟型BDNFだけでなく、前駆体であるプロ
細に解析することができると考えています。
BDNFの分泌制御機構や不安障害における役割も検討して
これら2つの点を強調することで本研究課題の独自性
いくとした点です。ペプチドおよびタンパク質性のホルモ
や社会的な必要性、さらにこれまでの研究との継続性もア
ンや成長因子は、シグナル配列を含むプレプロ体として生
ピールできたと考えています。幸いにも、おそらくは申請
合成されます。その後、シグナル配列が切断されプロ体に
書の内容が評価され、本研究課題が採択されましたので、
なり、さらに切断や翻訳後修飾を受けて、成熟型のホルモ
残りの研究期間は2年と数か月になりますが、できる限り
ンや成長因子として機能します。BDNFも、前駆体である
の多くの成果を上げて、
論文にまとめていきたいと思います。
プロBDNFと成熟型BDNFの両方が脳内に存在します。し
− 11 −
科学研究費補助金を受けて
永 井 真貴子
(講師・神経内科学) この度、科学研究費補助金(基盤研究(C))を交付い
が、2006年、この封入体の主要成分がTAR DNA binding
ただくことになりましたことをご報告いたします。以下、
protein of 43kD(TDP-43)と同定されました。TDP-43は
交付課題(新規の孤発性ALSマウスモデルの作製)の研究
封入体の構成蛋白と言うだけでなく一部の家族性ALSの
内容についてご紹介いたします。
原因遺伝子ともなっていることが報告され、神経細胞死を
私の研究テーマは筋萎縮性側索硬化症(ALS)の原因
引き起こす因子であることが分かりました。現在、TDP-
究明に関するものです。ALSは手や足の筋力低下で発症
43は孤発性ALSの発症機序を知る上で大きな手がかりと
し、数年の経過で進行して四肢麻痺あるいは球麻痺を来
考えられており、ALS病態解明の研究の主役となってい
たし、呼吸不全で死に至る運動神経変性疾患です。原因は
ます。そこで、今回の研究課題では、TDP-43を導入した
未だ不明で治療法も確立されていません。1993年に家族性
モデルマウスを作製することが主要テーマとなっていま
ALSの原因遺伝子としてsuperoxide dismutase 1(SOD1)
す。TDP-43を神経細胞特異的に発現するプロモータを使っ
遺伝子の異常が報告されるとこれが大きな手がかりとなっ
て発現させるトランスジェニックマウスとアデノ随伴ウィ
て、分子生物学的手法を用いたALSの研究がさかんに行わ
ルスベクターを使用してマウス脊髄の一部の運動神経に
れるようになりました。神経疾患の原因究明、治療実験に
TDP-43を過剰発現させるモデルを予定しています。トラ
は必ずモデル動物が必要となります。私は大学院生のとき
ンスジェニックマウスは将来治療実験に使用できるモデル
に家族性ALSの原因遺伝子の一つである(SOD1)の変異
を目指しています。ウィルスベクターを使用したマウス
遺伝子を導入したALSモデルマウスおよびモデルラット
はトランスジェニックマウスより簡便に作製できるため
を作製しました。これらのモデル動物は現在でも運動神経
TDP-43の様々な変異体を発現させ、神経細胞死の機序解
の神経細胞死の解析や治療実験に使用されています。しか
明を目指したいと考えています。
しSOD1変異を持つ患者は大変少なく、モデル動物で得ら
最後になりましたが、本研究課題は神経内科の研究員お
れた知見がALS患者の大半を占める孤発性ALSに適応さ
よび大学院生の協力で遂行されています。また日頃より笹
れないことが問題となってきました。
岡俊邦教授、久保地誠司さん、高橋晃さんを始めとした遺
孤発性ALS患者の剖検脳・脊髄において、神経細胞にユ
伝子高次機能解析センターの皆様に研究へのご協力をいた
ビキチン陽性の封入体が出現することが知られていました
だいております。この場をお借りして感謝を申し上げます。
− 12 −
講師就任挨拶
聴くことからすべては始まる
澤 山 透
(講師・精神科学) 平成24年4月1日付にて、医学部精神科学講師を拝命い
す。
「いや~、アルコールの初診は同じパターンばかりで
たしました澤山透と申します。
同じことを話せば良いだけですね」と現在、同院の院長に
私は、平成7年に北里大学医学部を卒業し、北里大学の
なられた樋口進先生にお話したところ、厳しい口調で「そ
精神科に入局致しました。父親は、北海道で透析のクリニッ
れは先生ダメだね。我々が患者さんに断酒を勧めるという
クを開業しておりましたので、内科に進むか精神科に進む
ことは、その人のお酒を飲むという権利を奪うことなんだ。
かとても悩みましたが、「特定の臓器だけではなく、“人”
そのことを忘れずにもっと慎重に話を聴かないといけない
に関われる科に進みたい」という漠然とした想いから、精
んだよ」
と諭されました。確かに、
飲酒に対するコントロー
神科を選びました。しかしながら、最初の半年くらいは、
ルを失ったアルコール依存症の患者さんには、断酒の継続
患者さんとどのように話していいかわかりませんでした。 が必要です。しかしながら、依存症に至ってしまった経緯
また他科に進んだ大学の同級生から、こんな手技を覚えた、
や現在の状況、飲酒行動に対する葛藤や迷い(止めたいけ
こんなオペに入った、というような話を聞くと、自分は医
ど飲みたい)、これからの生活を患者さんがどうしていき
師として全く成長していないのでは?と考えてしまい、転
たいか、などの患者さんの想いを聴くことなく、頭ごなし
科することも頭をよぎりました。それでも、「とにかく1
に断酒指導をしても上手くいくはずもないのです。きっと
年間、精神科をやってみよう」と覚悟を決め、診断や治療
樋口先生はそんなことを言ったことをお忘れだと思うので
に対する知識や経験が乏しくとも、まずは入院している患
すが、私の中にはその言葉が今も重く残っております。
者さんが、
「いま何に困っていて、これからどうしたいと
平成14年から私は北里大学に戻り、現在に至っておりま
思っているのか」という想いや要望を聴くことを心掛けま
す。そして、今も私の専門は、アルコール依存および関連
した。もちろん経験のない研修医なので、患者さんから質
疾患であります。その中でも、私が関心を持って取り組ん
問されたり治療に対する希望を聴いたりしても、自分一人
でいることは、アルコール依存症者の心理・認知的要因の
では判断できないことも多かったのですが、それでも患者
評価や行動変容への動機づけです。アルコール依存症者の
さんの想いを聴いているだけで、なんとなく患者さんとの
患者さんにおいて、その治療転帰に影響を与える飲酒行動
信頼関係が築かれていくような気がして、やりがいを感じ
に関する心理・認知的要因には、
様々なものがあります(自
るようになりました(そうするといつしか「精神科は自分
らの飲酒行動を変えることが出来るという自信の度合いで
の天職だ」と単純な私は思うようになってしまいました…)
。
ある自己効力感、飲酒したら良い結果が得られるだろう
研修医が修了し、平成9年からは、国立療養所久里浜病
という “正の期待” と飲酒したら悪い結果が生じるだろう
院(現:久里浜医療センター)に出向となり、研修医の時
という “負の期待” の2つからなる飲酒に対する結果期待、
にほとんど経験することのなかったアルコール依存症の病
自らの飲酒行動を変えるという動機づけが整っているかの
棟を担当することになりました(ご存知の方もいらっしゃ
度合いである変化への準備性、酒を調節して飲むことは困
るかもしれませんが、久里浜病院は、アルコール依存症の
難であるという飲酒のコントロール障害に対する認識、自
治療で全国的にも有名な施設で、各地から紹介されたア
らの飲酒問題に対する認識、など)。それぞれの患者さん
ルコール依存症の患者さんが数多く集まっておりました)
。 の心理・認知的要因を評価し、それらに対してどのように
初診も担当することになり、最初はとても戸惑いましたが、
アプローチして患者さんの行動変容に繋げていくかが、私
慣れてくるとだんだん診察がパターン化してきて、それほ
の臨床および研究テーマです。そして、やはりその基本と
ど苦労しなくなりました。というのも久里浜病院のアル
なるのは、患者さんの話を(興味を持ってこちらの偏見を
コール外来にいらっしゃる患者さん達は、重度の依存症の
持たずに)聴くということだと思っております。
方が多く、治療は断酒指導、という方ばかりだったからで
今後とも皆様のご指導ご鞭撻をよろしくお願い致します。
− 13 −
北里研究所創立100周年・北里大学創立50周年
記念事業について
2012(平成24)年に北里大学創立50周年、2014(平成26)年には北里研究所創立100周年を迎えます。これを契機に、
創立記念事業「Kitasato 100×50 プロジェクト【未来科学の創造~Pioneer the Next~】」をスタートさせております。
ここでは、主な記念事業についてお知らせします。
○北里大学校歌「生命の北辰」完成
平成24年度に創立50周年を迎えた本学に、創立以来の悲
願でありました北里大学校歌「生命の北辰(いのちのほく
しん)
」が誕生しました。
この校歌は、学祖・北里柴三郎の精神を引き継ぎ後世へ
伝え、また在学生や卒業生、教職員の帰属意識を高め、多
くの人々に愛され歌い継がれる歌をとの想いのもと、記念
事業の一環として制作されました。
作詞は、俳人の黛まどかさんに、作曲・編曲を作曲家の
千住明さんに制作を依頼しました。スクールカラーの
「紺青」
校歌完成披露発表会
から始まる校歌は、学祖の生涯と生命科学の総合大学であ
思った」
「これまで以上に愛校心が生まれ、学生同士や卒
る本学の理念が詩にこめられ、美しく壮大な旋律と見事に
業生とのつながりも深まるはず」
「タイトルの北辰のように、
マッチした素晴らしい校歌として誕生しました。
北里大学の学生として揺るがない信念をもてるようになり
この校歌の完成を記念して、2012(平成24)年11月2日
たい」などの感想が上がりました。
本学にとって初めての校歌である「生命の北辰」によって、
(金)には、相模原キャンパス総合体育館にて完成披露発
北里に集う学生や卒業生、教職員が一つになることを願う
とともに、大学の発展と共に今後50年、100年、それ以上の間、
学生・教職員から鳴り止まないほどの拍手とアンコールが
北里で永遠に誇りを持って歌い続けていきたいと思います。
起こるなど、とても盛況の中で行うことができました。初
譜面と校歌完成披露発表会の模様は、記念事業HPにて
めて校歌を聴いた学生からは、
「歴史を感じる壮大な曲だと
ご覧いただけます。
ほくしん
てんきゅう
北里大学校歌
いのち
こんじょう
あんねい
紺青尽くす天穹に ひとつの星を探すごと
しろかね
も と
白金の地にひたすらに 学祖が追求めし医の真理
いかずち
安寧の世を築くため
雷 のごと 貫いて
ひら
拓きし道を 歩む我らぞ
や
いただ
作詞:黛 まどか
作曲・編曲:千住 明
は
この学び舎に励みしを 風雪に堪えいつの日か
月桂冠を戴きて 未来につないでゆく叡智
ぜってん
その絶巓を極めんと
まきば
切磋琢磨の 実学を
世に捧げるを 報恩とせり
あかつき
暁 告げる産声は 牧場を渡る風に乗り
あめつち す
白波立つるわだつみの 底にひしめく 命美し
雨に照る日に 虹かけて
天地統べて 揺るぎなし
ああ北里は 耀く北辰
朝な夕なに とこしえに あまたの星を従えて
ああ北里は 生命の北辰 生命の北辰
○熊本県阿蘇郡小国町 北里柴三郎記念館の整備
『生命の北辰』
表会を開催しました。千住さんの指揮のもと、文化会合唱
団と交響楽団の熱意のこもった演奏に、参加した約400名の
北里柴三郎博士が1916(大正5)年に建てた貴賓館及び
所では、北里研究所創立100周年を機に、改めて北里柴三
北里文庫があった敷地に、1987(昭和62)年に北里研究所、
郎記念館の3年にわたる整備計画を策定、2012(平成24)
北里学園が中心となって生家を復元修復。同時に北里文庫
年8月から生家の改修工事に着手しています。熊本に行か
の建物を利用して北里博士の遺品等を陳列し、小国町に寄
れます際には、是非とも北里柴三郎記念館にもお立ち寄り
贈したのが「北里柴三郎記念館」です。学校法人北里研究
下さい。
− 14 −
○記念シンポジウムの開催
2012(平成24)年10月21日(日)
、白金キャンパス薬学部
本の医学や生命科学の未来をも展望する基調講演や総合討
コンベンションホールにおいて、
「近代医学の父-北里柴三
論を行いました。当日は、一般応募者687名のうち291名の
郎」をテーマとした記念シンポジウムを開催しました。中
方が来場されました。
村桂子氏(JT生命誌研究館長)
、作家の佐野眞一氏、山崎
記念事業HPでは、朝日新聞東京本社版(2012(平成
光夫氏等6名のシンポジストをお招きし、近代医学の発展
24)年11月24日付)に掲載された採録記事がご覧いただけ
に生涯を捧げた北里柴三郎の業績を振り返るとともに、日
ます。
○北里柴三郎特別記念展
2012(平成24)年11月10日(土)~12月16日(日)の期間で、 原市立博物館(共催)にて開催しました。北里柴三郎が生
学祖・北里柴三郎の生涯や業績を広く紹介するため、特別
前使用していた実験器具や書簡、写真パネルによる業績紹
記念展「北里柴三郎-伝染病の征圧は私の使命-」を相模
介などの展示のほか、特別講演会や実験教室を実施しました。
○特設Webサイト開設
全キャンパスの学生や教職員、全国で活躍する卒業生
タちゃん” と “サトくん” の冒険「キタちゃん&サトくんが
などが世代をこえて一堂に会する場として、記念事業特設
行く!」がスタート!2012(平成24)年10月の紅葉祭(十
Webサイト「Respect Life」を開設しました。近況や今後
和田キャンパス)を皮切りに各部署をどんどん紹介してい
の抱負、エピソードなど、北里ゆかりの方からのメッセー
く予定です。キタちゃん・サトくんの冒険を招待してくだ
ジを募集しています。北里が皆様の「心の原点」となり、 さる研究室がありましたら、喜んで訪問(取材)しますので、
いつまでも「Respect Life」であり続けるよう、
「キタサト
的な人」たちの想いを紹介していきます。
お気軽に総務部企画課(担当・小針)までご連絡ください!
(03-5791-6451/e-mail:[email protected])
また、記念ロゴから誕生した記念事業キャラクター “キ
特設Webサイト:http://kitasato-respectlife.com/
○記念切手の発売
○学内外に記念事業フラッグを設置
した「記念切手」を販売してお
内灯に記念事業フ
ります。学祖・北里柴三郎博士
ラッグを、各建物入
記念事業の一環として作成
各キャンパスの構
ゆかりの品や写真でしか見られ
口に記念事業ポス
ない貴重な旧建築物、現代に北
ターを設置しました。
里精神を受け継ぐ者たちの学び
また、白金北里通り
の舎など10種類の80円切手シー
商店会、相模大野北
ト(オリジナル台紙付)に収録、
口商店会のご協力を
北里の軌跡を堪能できます。1
得 て、 記 念 事 業 フ
シート2,000円で学内の売店また
ラッグを設置してい
は通信販売(北里ライフサービス㈱)でご購入できます。
ます。
今回ご案内した内容をはじめ、
2013(平成25)年度開催の記念式典(11月5日(火)
)や記念講演会(日時未定)など、
記念事業の情報については、記念事業HP等を通じて順次お知らせしていきます。今後とも記念事業をよろしくお願
いいたします。
記念事業HP (http://www.kitasato.ac.jp/100x50/)
− 15 −
クララ細胞(Clara cell)
組織学では、発見者の名を冠した細胞名を多数学ぶ。クララ細胞は、細気管支レベル
に分布する線毛を持たない気道上皮細胞で、1937年にドイツのライプツィヒ大学の解剖学
マックス・クララ教授(1899-1966)により発見されたものである 1 。最近では、この細胞
由来のタンパク質(Clara cell secretory protein, CCSP)が肺疾患のバイオマーカーとし
て利用され始めている。細胞名として残ることは発見者にとって名誉なことであるが、最
近、医学倫理的な観点からクララ細胞の名称に意義を唱える論文が出された 2 。論文によ
ると、クララ教授は、ヒトラー政権下でユダヤ人処刑者の肉眼解剖学実習や研究への利
用を推進し、クララ細胞の発見は、それらを由来とする組織標本からなされたようである。
戦争による医学の進歩の暗い側面として、本年度の組織学講義で学生に紹介した。
(H・S)
1
2
Z Mikrosk Anat Forsch 41:321-347(1937)
Eur Respir J 36:706-708(2010)
医療系研究科とKAIST
(大韓民国)
の学術交流協定の調印
平成24年12月3日(月)
、相模原キャンパスM1号館2階会
名し、握手を
議室で、北里大学大学院医療系研究科と大韓民国のKAIST
交わした。
(Korea Advanced Institute of Science and Technology)
調印式に出
との間で、学術交流協定書及び覚書が締結された。
席した出席者
調印式の出席者は、次のとおり。
全員で、記念
北里大学
KAIST
岡安 勲(学長)
小林弘祐(医療系研究科長)
馬嶋正隆(医療系研究科専攻主任)
小幡文弥(医療系研究科専攻主任)
七里眞義(医療系研究科国際化推進委員長)
北里英郎(医療衛生学部長、医療系研究科教授)
Ook-Joon Yoo(医療科学・工学研究科長)
Gou Young Koh(医療科学・工学研究科教授)
Myung Soon Lee、Young Ju Lee
撮影し、和や
かな雰囲気の
中、午後5時
30分、調印式
を終了した。
調印式(集合写真)
調印式終了後、控室(M1号館2階理事室)に場を移し、
調印式は午後5時に始まり、馬嶋専攻主任の司会・進行の
日本の伝統文化である茶の湯により、おもてなしをした。北
もと、岡安学長、Ook-Joon Yoo KAIST医療科学・工学研究
里大学の4名(岡安学長、小林医療系研究科長、馬嶋専攻
科長、小林医療系研究科長が、それぞれ、両大学間が学術
主任、小幡専攻主任)とKAISTの4名が和菓子と抹茶を楽
交流をすることの意義を讃え、両大学間で、教員及び研究
しみながら、和やかに懇談した。
者の交流、学生の交流、学術資料、刊行物及び情報等の交換、
なお、調印式と懇談の場には、大韓民国の国籍を有する
共同研究・シンポジウムの実施が、進展することを期した。
宋一大君(医療系研究科医科学専攻修士課程2年次学生)
引き続き、小林医療系研究科長とOok-Joon Yoo KAIST
が陪席し、医療系研究科における両国の国際交流の実際を
医療科学・工学研究科長が、学術交流協定書及び覚書に署
披露した。
編 集 後 記
あけましておめでとうございます。
平成25年最初の「編集後記」と言うことなので、今回は編集
委員会の様子をすこし紹介させていただきます。
私が医学部ニューズ編集委員会のメンバーになり、早くも2年
目を向かえようとしています。当初は、文才のない私が人の文章
を校正するとは心苦しく、他の先生方のご意見に耳を傾けている
だけでした。とにかくメンバーの中には凄い先生がいらっしゃい
ます。臨床系の先生方は的確な診断をくださなければならないの
で身についていて当然なのでしょうが、I先生は宿題の文章全て
をセンテンスごとに丁寧に分析され、適切な表現を考えてこられ
ます。そして、助詞の使い方まで指摘されるのには本当にいつも
感心させられます。学生時代にこのような先生と遭遇していたな
らば、
私自身億劫がらずに文章を書けたのではないかと、
この「編
集後記」を書いている間もずっと思いつつ筆を走らせています。
委員長であるM先生は、お昼の一時間と言う短い時間の中で議
題について手際よく処理される様子にいつも感心させられます。
最初は、何となく気の重いことを引き受けてしまったという思
いの方が強かったのですが、最近は(1)すばらしい先生方と知
り合えたことそして(2)文章とはこんなふうに書くんだという
こと(3)決まった時間内に物事をまとめる能力とはこのような
ものだと言うことを実感できる委員会であります。任期は2年で
すが、メンバーになるチャンスはいくらでもあります。自分に反
省を加えレベルアップする貴重な経験かもしれません。読者の
皆様も編集委員へチャレンジしてみては如何でしょうか。
(H・T)
医学部ニューズ〔第336号〕
http://www.med.kitasato-u.ac.jp/
- 未 来 科 学 の 創 造-
2012年北里大学創立50周年
●発行責任者 東 原 正 明
2014年北里研究所創立100周年
●編集責任者 宮 下 俊 之
〒252-0374 相模原市南区北里1-15-1
北里大学医学部内 医学部ニューズ編集委員会
TEL.042-778-8704
(直通)
FAX.042-778-9262
E-mail [email protected]
●発 行 日 平成25年1月31日発行
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