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1 カンボジア王国の首都プノンペンの視察 ヨコミネ式
1 カンボジア王国の首都プノンペンの視察 ヨコミネ式は,現在,日本のボランティア団体から,カンボジア王国の教育に 対する協力・支援を要請されております。先般,同団体から,是非とも現地の様 子を見てほしいとのお話があり,平成27年9月30日から10月1日の2日間, カンボジア王国の首都プノンペンに滞在し,現地に在住している日本人の案内の もと,複数の教育施設を視察してまいりました。カンボジアの現状と歴史,そし て,ヨコミネ式がカンボジアで果たすべき使命についてお伝えしたいと思います。 ⑴ プノンペンの現状 東南アジア地域の経済的活況の恩恵を受けているほか,海外からの資金援助 やボランティアなどの支援もあり,プノンペンの一部地域においては,経済的 にも非常に恵まれ,高級住宅や高層ビルが所狭しと立ち並んでいます。また, その近隣では,建設ラッシュの様相を呈しており,街から溢れるエネルギーや 勢いは日本を凌ぐものといえます。 しかし,その地域を一歩出ると,街の様相は一変し,そこには,貧困から抜 け出せない人々の暮らしがありました。首都であるプノンペンですら大半の地 域がそうでありますので,地方においては,まだまだ,高床式の粗末な住居に 住んで,牛を飼い,それ用いて農作業を営むという暮らしを送っているとのこ とだそうです。 小学校の就学率は90パーセントを超えているとの統計上の数値は出てい るようですが,退学率も非常に高く,卒業まで学校に行くことができるのは一 握りの子どもであり,多くの子ども達は,満足に教育施設に通うことができて いるとはいえないようです。また,教育施設に通う子ども達も,託児の域を出 るものではなく,十分な教育が受けられているとは言いがたい状況でした。 幼稚園や学校等の教育施設の「建物」は数多く存在します。しかし,親達 は,積極的には,子どもを幼稚園や学校に通わせようとはしません。また,教 師は子どもに教科書に書いてある通りにしか教えることができません。 「教育」 が軽視されている現状がありました。 ⑵ 抹消された教養と教育の断絶 カンボジアの親は,決して我が子が可愛くないのではなく,日本の親と同様 に,我が子を愛し,その成長を心から願っています。では,どうして親達は, 子どもを教育施設に通わせようとしないのでしょうか。 カンボジアの教師は,教科書に書いてある通りの答えしか認めないそうです。 そうでなければ,教師が,解答の正否が分からないからだそうです。では,ど うして教師は,正否が分からないのでしょうか。 にわかには信じ難い過去がありました。今から約40年前,この国では,時 の為政者により,約3年8か月という短期間に,老若男女を問わず,200万 人を超える人々が虐殺されました。為政者は,国民の反発を極度に恐れていた といい,保身のために,「反発することができる能力を持つ者」=「文字が読 める者」を根絶やしにしたのです。 その結果,わずか約3年8か月で「文字が読める者」はいなくなり,たった 約3年8か月の短期間で,数千年にわたり,文字を介して脈々と続いていた, 教養,知識,経験のバトンが途絶えてしまったのです。親が子に伝え,子が孫 に伝えるべきもの,教師が生徒に教えるべきもの,それらすべてが失われてし まったのです。 ですので,今の親世代は,教育を受けることができていません。教育の重要 性も分かりようがないのです。教師も同じで,満足な教育を受けることができ ておらず,教科書に書いてある通りにしか教えることができないのです(カン ボジアの教師は,日本の中学生が平均70点から80点をとる試験で,30点 程度しかとれないようです。)。 冒頭の高級住宅などに住む富裕層も,自らの能力で資財を得たのではなく, 海外からの投資に乗じたいわゆる土地成金で,確たる収入源となる産業,事業 を持っているわけではないとのことです。 2 ヨコミネ式をカンボジアに,そして世界に ⑴ このようなカンボジアの現状に対し,外国政府や民間の各種団体から,さま ざまな支援がなされています。ただ,その多くが,幼稚園や学校の「建物」を 作ることに終始してしまっているのが実際です。 また,海外からの支援がいつまでも続くわけではありません。この絶望的な 状況を打開していくためには,子が親に学び,孫が子から学ぶという,大虐殺 の前に存在したサイクルを,カンボジア人自身の手で再構築していくことが何 よりも求められるところといえます。 今,求められているのは, 「魚を与えることではなく,魚の釣り方を教えるこ と」です。そのような考えから,日本で幼児教育に多くの実績を残しているヨ コミネ式が必要とされています。 ⑵ 悲しい過去,厳しい現状がありますが,カンボジアの子ども達は,笑顔がい っぱいで,とても元気です。 カンボジアの子どもも,日本の子どもも,同じ子どもです。 「すべての子ども が天才である。ダメな子なんて1人もいない。」, 「すべての子どもが天命を受け てこの世に生まれて来た。その天命を最大限に発揮させたい。」というヨコミネ 式の理念はもちろん,「読み,書き,計算,体操,音楽を通して,学ぶ力,体の 力,心の力を付けさせ生まれ持っている可能性を最大限に引き出し,子どもを 自立させ,子どもが,自ら考え,自ら判断し,自ら行動・実践するようになる。」 というヨコミネ式の目的・手法も,当然,カンボジアの子どもにも通じるもの です。 カンボジアの子ども達が,その幼児期から,ヨコミネ式で学ぶことにより, 生まれ持った能力を最大限に発揮できる人材となり,多方面において活躍し, 将来,このカンボジアという国を担っていってくれることを願っています。