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ITS 世界会議 2010(釜山)参加報告

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ITS 世界会議 2010(釜山)参加報告
ITS 世界会議 2010(釜山)参加報告
JARI・ITS 研究部では、今秋、韓国 釜山で開催された第 17 回 ITS 世界会議へ参加し、各セッシ
ョンを聴講・発表を行い、メンバそれぞれの研究テーマに関連する調査を行いましたのでご報告さ
せて戴きます。
ITS の最新の動きを把握して戴く資料として、お役立て戴ければ幸いです。また、会議に参加さ
れた関係者の皆様からのご意見等、お待ちしております。
財団法人
日本自動車研究所 ITS 研究部
報告者:蓮沼
□■■□□■■□□■■□□■■
目
次
茂、青木 啓二、関
馨、鈴木
儀匡
□□■■□□■■□□■■□□■
1. 概況報告 ·························································································································
3
2. JARI 関連の発表 ···········································································································
5
3. Plenary Session ··············································································································
6
3.1
Integrated Goal for ITS Paradaigm Shift-Safe, Convenient and Mobility(PL01)
「ITS のパラダイムシフトへ向けた目標-安全・快適・利便」 ···············································
3.2
6
Strategies for Ubiquitous Society with ITS-Ubiquity, Transparency, Trustability(PL02)
·····························
7
4. Executive Session ··········································································································
9
4.1
ITS Initiatives in Environmental Issues(ES02)「環境問題における ITS 推進」 ··················
9
4.2
Emergence of the "iCar"(ES05)「"iCar"の登場」 ························································· 11
4.3
National and Supranational Policies, What are the Driving Forces for
「ITS で築くユビキタス社会へ向けた戦略-ユビキタス・透明性・信頼性」
ITS Deployment? (ES07)
「国家及び超国家施策において、ITS 普及の原動力は何か?」 ···············································
4.4
12
Global Safety(ES09)「世界の安全への取り組み」 ························································· 12
-1-
5. Special Session ············································································································· 13
5.1
Highly Automated Vehicles and Application for Intelligent Transport:Tools,
Systems and Applications(SS06)「欧州プロジェクト HAVE-IT:ツール、システムとアプリ」
··················································································································· 13
5.2 Technical Trend of New ITS Wireless System(SS07)「ITS 無線システムの新しい動向」 ...... 17
「エネルギーITS」 ....................................................................
5.3
Energy ITS(SS12)
5.4
Cooperative Systems for Energy Efficient Mobility(SS35)
「エネルギー効率の良いモビリティへの協調システム」 .................................................
5.5
..................................... 22
New Market Generation Through Utilization of "Internet ITS"(SS47)
「“インターネット ITS”を活用した新しいマーケットづくり」
5.7
21
Intelligent Vehicle for Driver Assistance and Vehicle Safety(SS40)
「運転者支援と自動車安全のためのインテリジェントビークル」
5.6
20
......................................... 23
Intelligent Vehicle Field Operational Tests around the World(SS61)
「世界のインテリジェント自動車の実証実験」
............................................................ 24
6. Scientific Papers / Technical Session ····················································································· 26
6.1
Intelligent Vehicle Safety : Advanced Driver Assistance Systems(1)(SP01)
「インテリジェントビークル安全:高度運転支援システム(1)」 ············································
26
6.2
Advanced Driver Assistence System(TP022)「高度ドライバ支援システム」 ······················ 28
6.3
Vehicle to Vehicle Communication(1)(TP035)「車車間通信(1)」 ······································· 30
6.4
Autonomous Vehicle(1)(TP036)「自動運転」 ··································································· 32
6.5
Vehicle to Vehicle Communication(2)(TP050)「車車間通信(2)」 ······································· 34
6.6
Autonomous Vehicle(2)(TP051)「自動運転」 ··································································· 35
6.7
Intelligent Vehicle Safety- Advanced Driver Assistant System(TP057)
「インテリジェントビークルセーフティー高度ドライバ支援システム」 ································
37
6.8
Safty:Truck and Management(TP058)「貨物車両とマネジメント」 ···································· 41
6.9
Traffic Management:Ways of Improving Traffic Flow(TP070)
「交通管理:交通のニーズに影響を与えるもの」 ·······························································
42
7. 展示関係 ······································································································································· 46
7.1 展示ホール概要 ··················································································································· 46
7.2 日本の団体・メーカー ············································································································ 46
7.3 韓国の団体・メーカー ············································································································ 50
8. Technical Visits ······························································································································ 52
8.1
Hnmjin New Port(有料テクニカルビジット 3) ······························································· 52
8.2
スマートハイウェイにおける無線通信サービスデモ(有料テクニカルビジット 5) ········ 53
8.3
会場周辺無料デモ··············································································································· 54
9. 韓国(釜山)交通事情 ·················································································································· 56
-2-
1. 概 況 報 告
10 月下旬に韓国・釜山にて 17 回目となる ITS 世界会議が行われ、JARI・ITS
研究部では、自動運転・先進運転支援システムや協調システム関連の論文発表
や調査を主目的として部員 4 名が参加したので、技術的な調査内容を中心に概
要を報告する。
ITS 世界会議の開催地は、欧・米・アジア太平洋で毎年交替で開催しており、
アジア太平洋としては、横浜(1995)、ソウル(1998)、シドニー(2001)、名
古屋(2004)、北京(2007)に続く 6 回目、韓国としては 2 回目の開催となる。
ちなみに 2013 年の開催地は東京で決定している。
会場となった BEXCO という名前の国際会議場は、釜山中心部から地下鉄で一時間弱のところにある海雲台
(ヘウンデ)という海沿いの再開発地区の一角にあり、まだ新しく綺麗な施設である。
セッションと展示を通じた全体的な印象としては、会議テーマである「ITS で築くユビキタス社会」が既に
現実のものになりつつあることが実感できた大会であったと言える。
具体的には、環境・エネルギー問題の高まりから車の電動化(EV)、スマートグリッド、マルチモーダル等
の検討が急速に進んでいること、また、多機能情報端末となるスマートフォンの普及により、車(スマートカ
ー)と家(スマートハウス)と社会(スマートコミュニティ/スマートシティ)をユビキタスに結ぶことが可
能になってきており、ITS を取り巻く世界が大きく広がり、従来の ITS の概念を変えるべき時が来ていること
を実感した。
また調査を行ったいくつかの技術分野での傾向を見ると、まず欧米,特に欧州の協調システム(隊列走行も
含む)への通信利用に関しては,実験まで含めてまだ検討中というレベルである。しかし,規格化作業は併行
してスピード感を持って進められている印象があり,こうした動きへの日本の対応が必要であろう。また協調
システム(運転支援システム)の社会認知度を上げるため FOT(Field Operation Test)の必要性が叫ばれてお
り、同時に各地,各組織が行う FOT の統一化を図るためのプロジェクトが EU 内で立ち上がっていることから、
ITS 全体にわたり効果評価の手法,データの統合化が米国も巻き込んで進む可能性がある。JARI も関わってい
る ITS 施策による CO2 削減の効果評価関連では国際協調の動きが具体化しているが、こうした動きをさらに
広げる必要があろう。
自動運転・先進運転支援システム関連分野では、センサ技術や制御技術面では新しい研究は見られなかった
が、今回特徴的だったものとして、ドライバとシステムとの責任範囲によって、自動運転を 2 つのカテゴリに
分類して整理する考えが示された点があげられる。これまでは自動運転ではドライバの責任を論ずる報告はさ
れていなかったが、この様な考え方が論じられた背景には、いよいよ自動運転が実用化のフェーズに入ったこ
とがあるのではないかと推察される。特に欧州の HAVE-it プロジェクトの報告ではこの考え方が整理されてお
り、我々が取り組んでいるエネルギーITS(自動運転・隊列走行)プロジェクトの関連でも注視していく必要
がある。
JARI ITS 研究部参加者:蓮沼
-3-
茂、青木 啓二、関
馨、鈴木
儀匡
(1) 会議の概要(ITS Japan 速報)
【会期】
2010 年 10 月 25 日(月)~10 月 29 日(金)
【会場】
韓国・釜山・BEXCO 国際会議場
【会議テーマ】
”Ubiquitous Society with ITS”(ITS で築くユビキタス社会)
【参加国/地域】
【参加者】
38,700 名(一般公開含む)
【会議登録者数】
【出展者数】
4,300 名
(うち韓国 2,762 名,日本 557 名)
213 企業・団体
【セッション数】
【論文数】
84 ヶ国・地域
223 セッション
1,037 編
例年に比べ欧米の参加が少なかったのは、やはり開催地域のせいであろう。参加者が 4 万近くいたのは、展
示場への学生の見学などを含めたためと思われる。セッション数が増え、興味のあるテーマが分散したため情
報を得るのが難しいところもあった。
(2)
開会式
初日の夕刻から行われた開会式では、開催国代表からのウェルカムスピーチのあと、欧米アジア太平洋 3 極
からキーノートスピーチがあり、アジア太平洋を代表して、日本から総務省の桜井総合通信基盤局局長が登壇
された。
(3)
功労者表彰
開会式の中で第一回の功労者表彰が行われ、欧・米・アジア太平洋 3 極から ITS に貢献された方として 1 名
ずつが選ばれ表彰された。表彰者は、アジア太平洋から豊田
章一郎・ITS
Japan 名誉会長、米国からラッセ
ル・シールズ・ワイゴミ社会長、欧州からフォーティス・カラミトソス EC 局長の 3 名である。
会場付近は建設ラッシュ
-4-
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2. J A R I 関 連 の 発 表
(順不同)
発表者名
発表日/時間
セッション名・発表タイトル
SS06
Highly Automated Vehicles and Application for Intelligent Transport:
Tools, Systems and Applications
"Deployment of Fuly Automated Platoon System for New Freight
Transport on Highway"
TP035
Vehicle to Vehicle Communication(1)
"Inter-Vehicle Communication for Truck Platooning(2nd Report)"
啓二
2010/10/26
16:00~17:30
関
馨
2010/10/27
11:00~12:30
関
馨
2010/10/27
14:00~15:30
TP050
Vehicle to Vehicle Communication(2)
"An Integrated Simulation for Safe Drive Systems"
儀匡
2010/10/27
16:00~17:30
TP058
Safety:Truck and Management
"Development of Automated Platooning System based on Heavy Duty
Trucks"
経済産業省
辻本室長
2010/10/26
14:00~15:30
ES02
ITS Initiatives in Environmental Issues
経済産業省
山下課長補佐
2010/10/28
16:00~17:30
SS47
New Market Generation Through Utilization of "Internet ITS"
青木
鈴木
-5-
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3. Plenary Session
3.1
Integrated Goal for ITS Paradaigm Shift-Safe, Convenient and Mobility(PL01)
(ITS のパラダイムシフトへ向けた目標-安全・快適・利便)
(1) Mr. Ton H. Steenman, Vice President, Intel Architecture Group, USA(モデレータ)
ITS システムのネットワーク化によってユビキタスで安全で、便利で、
グリーンな生活が可能となるという趣旨の発表があった。
具体的なイメージとして、朝、家から会社に向かうまでの移動を例
示に出し、ITS を活用して交通情報や交通機関が連携することによって、
通勤途上で起こる様々な問題に対してスムースに対応でき、いかに便
利で安全に移動できるかの未来像を示した。
こうしたことは今でも実現できないことはないが、より便利に使え
るようにするためにはテレマティクスと交通インフラが統合された交
通情報システムの構築が必要であり、そのためには関連する業界全体
図表 3-1 スティーンマン副社長
の協力と標準化が重要であるという考えを示した。
(2) Mr. Zhongze Wu, Chairman, ITS China, P.R. China
"ITS in Chaina"というタイトルで、中国における ITS の現状と将来展
望に関しての発表があった。
中国は、これまで 2008 年の北京オリンピックや 2010 年の上海万博
に合わせて ITS の国家プロジェクトを立ち上げ、様々な ITS システム
を導入してきた。具体的にはリアルタイム交通情報システム(中国版
VICS)や ETC、超高速鉄道システム(リニアモーターカー)の整備な
どである。
図表 3-2 ウー会長
課題としては、研究成果の実地展開が遅れていることや技術レベルがまだまだ高くないことなどである。今
後 2011 年度からの 5 ヵ年計画をスタートさせる予定であり、サービス面での ITS を発展させるとともに、技
術レベルの向上、低コスト化を図り、いつでも、どこでも使える交通サービスを充実させていくとの計画を紹
介した。
(3) Ms. Ann Flemer, Deputy Exective Director, Policy,
Metoropolitan Transportation Commission / Chair, ITS
America
前段で、米国は海外の事例で良いものは学び導入してきたという紹
介があった。具体的には自転車のシェアリングシステム、スマートパ
ーキングシステム、マルチモーダル支援システムなどである。
近年は Intelli Drive(インテリドライブ)を中心とした環境志向の先
進的研究に挑んでいるが、20 代、30 代の若者の自動車使用が減ってき
ていることもあり、ネットワーク化された情報システムへの期待が高
図表 3-3 フレーマー会長
いとのことである。
また米国各地での取り組み事例として、高度信号管制システム、バス運行管理システム、自動トラック重量
-6-
計測システム、可変速度規制システム、駐車情報システムなどの事例を挙げ、これらによる渋滞削減によって
CO2 削減に貢献したとの紹介があった。最後に ITS に関する国際連携も行っているとの紹介があった。
(4) Mr. Gunter Zimmermeyer, Supervisory Board Chairman,
ERTICO-ITS Europe
ITS ヨーロッパの紹介を行った後、ITS によってモビリティの維持を
図ることが重要という趣旨の発表があった。
我々の生活にとって、より便利で楽な交通手段にならないと持続で
きないとして、安全なモビリティ、エコなモビリティ、モビリティ情
報の 3 つを結ぶ、協調されたモビリティ(コオペラティブモビリティ)
図表 3-4 ジマーメイヤー会長
ネットワークの構築が重要との概念を示した。
3.2
Strategies for Ubiquitous Society with ITS-Ubiquity, Transparency, Trustability(PL02)
(ITS で築くユビキタス社会へ向けた戦略-ユビキタス・透明性・信頼性)
(1) Dr.Hiroyuki Watanabe, Chairman, ITS Japan, Japan
日本の ITS の開発経緯、現状そして今後の方向について具体的な事例を挙げて紹介した。
全体構想に謳われている 9 つの開発分野の紹介を導入として、交通環境の変化が ITS に影響を与え、そのス
コープが拡大していること説明した。
課題となっている CO2 削減に関しては
・車単体のエネルギー削減/エネルギー転換
・交通流改善のためのイノベーション
・シームレスなマルチモーダル輸送
の方策を挙げ、マルチモーダルのネットワーク構築の必要性を述べた。
また、移動手段として、歩行と自転車をカバーし、自動車を補間するものとして PMV(Personal Mobility
Vehicle)の具体事例を紹介した。
一方、空気抵抗を減らし燃費を上げる走行形態であるトラックの隊列走行の研究例をシミュレーションデー
タも含めて紹介した。将来はセーフドライブへの転換も視野に入れていると述べた。
従来の固定位置のセンサデータを集約する交通センターから、ダイナミックなプローブデータの情報などの
交通データを集約するオープンなプラットフォームの構築に進むことにも触れ、これを利用した Anticipated
Services やエネルギー最小化運転の可能性を紹介した。
協調走行システムに関しては、既に展開され始めている路車間通信を用いた“ITS スポット”を紹介し、さ
らに車車間通信に関しては、交差点での衝突防止、追突防止、緊急車両の接近情報提供などのアプリケーショ
ンを紹介し、ネットワークを作ることで、将来は鳥や魚の群れのようなぶつからない走行形態が生まれると述
べた。
(2)
Mr.Abbas Mohaddes, President and CEO, Iteris Inc., USA
“交通混雑は毎年 87bill$の損失を生んでいる”というイントロで話を始めた。米国の財政システムでは道
路のメンテナンスができない、米国は地方が予算を持っており統合化が遅れていることを述べ、幾つかの州の
取り組みを紹介した。高速鉄道に重点を置いているとの発言もあった。マルチモーダル、スモールコミュニテ
ィがキーワードとなっており、交通問題の解決が経済問題も解決すると述べた。
-7-
(3)
Mr.Hans Rode, Senior Advisor / Director, Swedish Transport Administration, Sweden
欧州の動きのなかでスェーデンとしての施策について述べた。
安全性に関しては交通手段毎にサービスが異なっている。しかし、欧州内での共通化は図るべきであり、現
在、以下の 6 つのサービス仕様共通化に重点が置かれている。
・欧州域内でのマルチモーダル旅行者情報提供
・リアルタイム交通情報提供
・無料の安全関連情報提供
・eCALL
・商用車の安全な駐車場所情報の提供
・商用車の安全な駐車場所の予約
スェーデンでは委員会を設置して、こうした欧州の計画と調整を取りつつ国としてのアクションプラン(5
年間)を作成し政府に提出した。また、欧州のアクションプランに似たプランを作成し、官民の責任分担を明
確にしつつ強調と競争の両面で進める。スェーデンは ITS の利用者の数を増やすことが重要だと考えており、
ベネフィットに重点を置いていると述べた。
この後、聴衆を代表してエリクソン社の人が 3 人のスピーカに各地域のうまくいったケース(事例)を紹介
して欲しいと頼んだところ以下の紹介があった。
【米国】
カリフォルニア南部の情報システム。40~50 の組織が協力しユーザニーズに基づき構築された。100 万人
がユーザとなっており、ユーザのセグメント毎のニーズを捉えている。いずれにしろ、連邦政府の予算が不足。
シームレスかつ多額の予算が必要。IntelliDrive は政府が予算を獲得するチャンス。10 年前は色々な輸送手段
が競争していたが、これからは輸送手段の複合化を図る必要がある。ただし、安全な輸送が前提。いずれにし
ろ制度内問題が深刻。
【アジア/日本】
韓国のユビキタス通信ネットワークが挙げられる。
【欧州/スェーデン】
ストックホルムの ITS ワールドコングレスを通じて官民の声を聞くチャンスが得られた。
-8-
目次へ移動
4. Executive Session
4.1
ITS Initiatives in Environmental Issues(ES02)「環境問題における ITS 推進」
名城大学の津川教授がモデレータとなって進行した。
(1) K. Tsujimoto, Directir, Ministry of Economy, Trade and
Industries, Japan
冒頭、前週末に日本で行われた「ITS 施策による CO2 削減効果評
価に関する国際シンポジウム」が欧米関係者の協力のもと 150 名も
の参加があり、成功裏に終了したことの報告があった。
辻本室長からは、運輸部門からの CO2 排出量を減らすため「エネ
ルギーITS」プロジェクトを開始し、自動運転・隊列走行と CO2 効
果評価の 2 つのプロジェクトを進行させており、現在 5 年計画の 3
図表 4-1 ご講演中の辻本室長
年目として計画通りの進捗が計られている旨の紹介の後、乗用車やタクシーなど様々なプローブ情報を集約
化・共有化させることにより、プローブ情報の質・量を改善するとともに、様々な施策に活用する取り組みを
行っているとの紹介があった。
次に、今後 ITS を活用してクルマとネットワークが接続することにより、EV や PHV 等次世代自動車の普及
支援につながるとともに、新たなエネルギーマネジメントシステム(EMS)の中で ITS や EV が重要な役割を
果たし、スマートグリッドやスマートコミュニティへと発展するという期待について述べた。
最後に、環境対策によって推進される自動車の電動化や道路のインテリジェント化が自動車のネットワーク
化をますます発展させ、新たなクルマ社会(スマートビークルネットワーク)を構築することにより、新しい
サービスや新しい産業が出てくるであろうという期待と、そのために解決すべき、インタフェース標準化やプ
ライバシー保護などの課題について述べた。
(2) Eva Boethius, Project Officer, European Commission, DG INFSO
EU 事務局のエバ氏からは、EU が第 7 次フレームワークプロジェクト(FP7)の中で実施している環境対策
関連 ITS プロジェクトについて紹介を行った。
最近の欧州の環境 ITS に関する重要政策を整理すると以下のように
なる。
・ITS Action Plan(2008)
・ITS
Directive(2010.7)
・Road Safety Action Plan 2011-2020(2010.7)
・European strategy on Clean and Energy Efficient Vehicles(2010)
・White Paper on European Transport Policy(end 2010)
図表 4-2 ご講演中のエバ氏
欧州では EU2010 戦略の一環として、2010 年 5 月に ICT に関わるイニシアティブ(Digital Agenda for Europe:
DAE)をスタートさせた。これは ICT 分野の 7 つの Flagship(旗艦)イニシアティブ(Innovation union, Youth on
the move, A digital agenda for Europe, Resource-efficient Europe, An industrial policy for green growth, An agenda for
new skills and jobs, European platform against poverty)の一つである。DAE は ICT による欧州の経済発展を目指す
もので、ITS の標準化を支援する欧州指令の促進などがその具体項目例となる。
こうした状況で現在 FP7 の募集が行われており、図表 4-3 のように環境関連のプロジェクトも計画されてい
る。
-9-
また、中- 小規模 の研 究 を支援 する プ ログラムとして 2007 年~ 2013 年の期間で Competitiveness and
Innovation Framework Programme(CIP)が立ち上がっており、特に ICT や Sustainable Energy を対象とした研究
開発を支援している。
図表 4-3 欧州の ITS 関連プロジェクトとその位置づけ(発表資料より)
以下、FP7 と CIP が出資する欧州のプロジェクトについて紹介があった。図表 4-4 は第 6 次、7 次フレー
ムワークプログラムにおける ITS 研究開発テーマ数と予算である。
図表 4-4 第 7 次フレームワークプログラムにおけるプロジェクトと予算(発表資料)
-10-
最近では環境関連のテーマが増えており、その中の幾つかを簡単に紹介した。
① eCoMove:路車間通信を用いて、ドライバの燃料消費最適運転と効率的な交通管理を支援する協調シス
テムを開発(FP7)
② ELVIRE:実用性の高い ICT 技術を用い電気自動車のための車内、車外のサービスを実現(FP7)
③ FREILOT PILOT:貨物輸送車の燃費の改善をドライバ、車両、運送業者、交通マネージャの立場から実
施(CIP)
④ IN-TIME PILOT:欧州域のリアルタイムマルチモーダル旅行者情報の提供を実現。オペレータやサービ
スプロバイダのインタフェース標準化を目指す(CIP)
⑤ ECOSTAND:エネルギー効率化と CO2 削減に関する ITS 施策の効果を推定する研究や標準化に関して、
日・米・欧の共同タスクフォースの活動を支援(FP7)
最後に、今後の研究開発について以下のキーワードを紹介した。
・スマートシティ
・人と物資のための知能化協調システム
・コネクトされた電気による移動
・ある程度の車両の自動化
・将来のインターネット技術(どの程度輸送に影響するか)
・革新的なモビリティコンセプト
4.2
Emergence of the "iCar"(ES05)「"iCar"の登場」
(1) N. Kishi, Research Director, Nissan Research Center,
Nissan Motor Corporation, Japan
日産自動車が今年販売する EV(リーフ)は 7 日間 24 時間、いつ
でも PC や携帯とつながり、カーライフを変えるという趣旨の発表
があった。
クルマの電動化(EV)と情報化によってカーライフが大きく変わ
るということをアニメビデオを使って紹介。内容としては、朝、携
帯で充電完了のチェックや、事前に冷暖房のリモート操作を行い満
充電で出発、走行中は減速時に回生充電、帰宅後はタイマーで夜間
図表 4-5 横浜プロジェクトの紹介パネル
充電、週末での移動時は、カーナビで目的地付近の充電スポットがわかるので安心、スーパーでは、入口付近
の EV 専用スペースで買い物中に充電、夜帰りが遅くなっても静かなので近所迷惑にはならないという使い方
を紹介。
また、EV を利用したカーシェアリングシステムやデータセンターを利用したエコドライブサポート、プロ
ーブ情報を利用した動的経路誘導システム(DRGS)の構想を紹介。
そして、バッテリーの使い方として、EV の電気を活用したスマートハウスを紹介し、スマートハウスが、
スマートコミュニティ、そしてスマートグリッドに発展するという構想を示した。最後に、実験サイトとして
横浜市と行っている横浜モビリティ「プロジェクトゼロ」の紹介を行った。
-11-
4.3
National and Supranational Policies, What are the Driving Forces for ITS Deployment?
(ES07)
「国家及び超国家施策において、ITS 普及の原動力は何か?」
(1) K. Takemura, Counseller, Cabinet Secretariat, Japan
今年策定された「新たな情報通信技術戦略」の中で計画している
ITS 関連施策として、「グリーン ITS」と「安全運転支援」について
紹介。グリーン ITS では、プローブ情報の集約・活用やプローブ情
報の信号制御への活用等の技術開発、効果検証を行い、2020 年に
2010 年比で 50%の渋滞削減を行うことが目標、また安全運転支援施
策では、官民が協力して路車・車車協調型の安全運転支援システム
図表 4-6 講演中の竹村内閣参事官
を整備・導入することなどにより、2018 年に交通事故死者数を 2,500
人以下にすることが目標であるとの紹介が行われた。双方について、既に年度別のスケジュールと関係省庁の
取り組みを決めた工程表や、企画委員会、ITS タスクフォースといった運営組織を作って活動を始めており、
2013 年の ITS 世界会議(東京)で活動の成果を見せたいとの抱負を述べた。
4.4
Global Safety(ES09)「世界の安全への取り組み」
日産自動車の赤津シニアリサーチャー(ISO/TC204/WG14 国際コンビーナ)がモデレータとなって進行した。
(1) R. Itazaki, Director, Road Transport Bureau, Ministry of Land Infrastructure Transport and
Tourism, Japan
国土交通省自動車交通局が実施している車両面での安全対策として、日本の交通事故の現状を紹介した後に、
NCAP(新車アセスメントプログラム)及び ASV(先進安全自動車)の取り組みを紹介。現在 ASV は第 4 次
のフェーズで、車車間通信を用いた運転支援システムの研究開発を行っており、運転支援に関わる 8 つの設計
思想の考え方や、昨年実施した東京お台場での大規模実証実験の紹介を行った。
(2) Abbas Mohaddes, President and CEO, Iteris Inc., USA
最初に米国における自動車の安全装備(衝突安全、予防安全)搭載の歴史を振り返りながら、自動車が安全
になるとともに便利で快適になってきており、特にシートバル
トとエアバッグによって 1 万 3 千人の命が救われてきたことを
紹介。しかしながら、まだ 2 万 5 千人が毎年車線逸脱事故で亡
くなっており、車線逸脱警報の搭載によってかなりの事故が防
げるはずとの見解を示した。特にドライバの注意力が低下(ド
ライバディストラクション)した際に起きる事故を予防する装
置として期待されるものとして、追突防止支援システム、死角
警報、車線逸脱警報の 3 つを挙げた。
また、次に期待される予防安全システムの技術として、マル
図表 4-7 テレマティクスの活用イメージ
チファンクションセンサによるコストダウンとセンサフュージョン技術を挙げた。最後に、サービス提供者と
利用者をテレマティクスを通して双方向で結ぶことにより、お互いが協力して交通改善を行う必要があると、
交通管理関連事業を担当している企業のトップを意識した発言で締めくくった。
-12-
目次へ移動
FF. Special Session
5
5.1
Highly Automated Vehicles and Application for Intelligent Transport:
Tools, Systems and Applications(SS06)
「欧州プロジェクト HAVE-IT:ツール、システムとアプリ」
EC FP7 で開発中の HAVE-IT(Highly Automated Vehicles for Intelligent Transport)の概要紹介及び NEDO「自
動運転・隊列走行」の概要紹介。
(1) B. Vanholme, Researcher, LIVIC(LCPC/INRETS), France
HAVE-it は先進の安全運転システムを目指したものでその基本思想はコパイロットシステムである。制御シ
ステム構成は走行環境認識センサ、車両運動センサ、制御コンピュータ、HMI 及び制御装置から構成され操舵、
エンジン出力、ブレーキ及びトランスミッションが制御される。特に走行環境認識の認識率向上は重要課題で
あり、このプロジェクトでは前方はレーザレーダとレーダ及びカメラのフュージョン技術を開発している。
またコパイロット制御の基本設計思想は車線に対し発生するイベント毎の行動ルールを決め、このルールに
従って車両を制御する。とくに前方障害物が発生した場合、ブレーキによる速度制御を行うか、レーンチェン
ジを行うかの判断を実施する場合である。
またもう一つの特徴として運転モード選択の導入である。これは運転モードとして、ドライバ、運転者支援、
半自動及び高度自動の 4 モードを設定し、ドライバやシステムの状態に応じて最適なモード選択を行うもので
ある。なお、完全自動モードは設定されていない。モード選択を行うモード選択ユニットには HMI を介しド
ライバ情報とコパイロットシステム情報が入力され、どのモードを選択するかが決定される。これを行うため
ドライバのオーバライドやドライバ操作を禁止できる等の機能をもつ装置も合わせて開発されている。図表
5-1 に全体システム構成、図表 5-2 にモード選択装置を示す。
図表 5-2 モード選択装置
図表 5-1 コパイロットシステム構成
-13-
(2) N. Schoming, Researcher, Wurzburger Institut fur Verkehrswissenschaften, Germany
HAVE-it では運転モードが自動的に選択されるがドライバがシステムといかに関わるかは非常に重要な問題
である。特に重要なのがドライバの状態である。HAVE-it ではドライバの状態を評価する技術として居眠り検
出と運転意識状態検出の開発を行っている。
居眠り運転検出では画像認識による検出方法と操舵状態等による間接法を開発している。画像認識では、顔
のトラッキング、瞬き検出からの居眠り状態を推定している。また操舵では操舵量の変化状態より居眠り推定
を行っている。
一方運転意識状態検出では画像認識による方法と運転支援用の HMI とのインターラクションによる間接法
を研究している。画像認識では顔トラッキングによる方法が中心である。ドライバ状態推定技術はドライビン
グシミュレータ(DS)を用いて研究されている。運転状態は 2 レーン道路における単独走行、追従、レーンチ
ェンジ、渋滞等が模擬される。警告用 HMI(Attention Monitor)としては表示と警報音の 2 種類が使用される。
DS を使用し 12 人により AM の効果を評価した結果、居眠り運転警報としては警報による覚醒効果は,一時
的には見られたた,眠気を無くす等の継続的効果はなかった。
また運転意識警告では警告により運転意識はもどったが、自動制御モードでは運転意識レベルは低下した。
しかし、自動モードでの AM の必要性は多くのドライバが認めた。図表 5-3 にシステムでのドライバの関わり
を示す。
図表 5-3 システムとドライバとの関わり
(3) F. Flemisch、Research Team Leader for ITS, German Aerospace Center - DLR, Germany
HAVE-it の進め方について述べられた。現在 HAVE-it では運転支援から高度化された自動制御レベルまでを
対象としたもので完全自動運転レベルはスコープに含まれていない。HAVE-it ではこのレベルは任意にモード
変更が可能でありドライバはシステムに介入することが可能である。HAVE-it のこのコンセプトは最初に DS
によるシミュレーションで確認の後、システム設計され、今後はこれを確認するためも乗用車、トラック、乗
用車の 7 台の実験車を使用した様々なデモ実験や DS による実験が行われる。
安全関係ではステア・バイ・ワイヤ、ブレーキ・バイ・ワイヤを搭載した実験車で安全運転支援のデモ実験
が行われる。また、高度自動制御実験では安全のために乗用車 2 台、トラック 1 台、また、省エネ化のためバ
ス 1 台を使った実験が計画されている。この実験を通じて運転支援と自動化の統合化が図られ今後の制御のあ
り方、方向性が見出されると考えている。図表 5-4 にコンセプト、図表 5-5 にデモ実験車を示す。
-14-
図表 5-4 HAVE-it コンセプト
図表 5-5 高度自動制御実験車
(4) A. Amditis, Research Director for ITS, Institute of Communication and Computer Sysytems
- ICCS, Greece
HAVE-it の主目的は、運転負荷が高い状態での高度な自動制御による運転支援である。例えばレーンマーカ
がよく見えない狭い車線幅道路やカーブ部や隣接車両との間隔が狭い場所において減速が必要な場合への支
援、渋滞での運転操作である。また別の必要性として、渋滞時先頭のトラックの後ろに車列を形成して走行す
る(AQUA)場合である。ここでは操舵やブレーキが走行環境センサを使って自動制御される。
渋滞等の場合、運転をドライバの代わりに行う一時自動運転(TPA:TemporaryAuto Pilot)もドライバ運転支
援である。運転支援のレベルとしては、高度自動制御、半自動制御、運転支援、安全介入があり、高度自動制
御はハンズフリーの自動制御、半自動制御は ACC、運転支援では車線保持支援、安全介入では緊急ブレーキ
制御がある。
これらのシステムは 7 台の実験車によりデモ走行される。ブレーキ・バイ・ワイヤではボルボ大型トラック
の EMB(Electro Mechanical Brakes)が使用される。
図表 5-6 に自動運転支援システム構成、図表 5-7 に EMB のシステム構成を示す。
-15-
図表 5-6 自動運転支援システム構成
図表 5-7 ボルボ EMB システム
(5) K. Aoki, ITS Research Division, Japan Automobile Research Institute, Japan
エネルギーITS 推進事業で推進されている自動運転・隊列走行プ
ロジェクトの概要について紹介。
実用化を想定した 2 種類の隊列走行コンセプトや仕様が設計され
た。第 1 が混在流での隊列走行で「コンセプト Y」、第 2 番目が専用
レーンでの隊列走行で「コンセプト Z」と名付けられた。コンセプ
ト Y では 4m から 10m の車間距離を維持するシステムで全車にドラ
イバが乗車する。また、又コンセプト Z では車間距離 4m で後続車
は無人運転される。
図表 5-8 講演中の青木
走行認識や車車間通信などの技術が開発されるとともに大型トラ
ック隊列実験車が開発され自動隊列走行実験が行われた。車車間通信を用いた車間距離制御アルゴリズムが開
発され評価された結果、先頭車が 0.4G の減速を行った場合でも車間距離制御偏差は 1.0m であった。またこの
実験車は未供用の高速道路でも走行実験が行われ、速度制御性、車線保持制御性とも良好であった。図表 5-9
にコンセプト、図表 5-10 に実験車構成を示す。
-16-
図表 5-9 隊列コンセプト
図表 5-10 隊列実験車構成
5.2 Technical Trend of New ITS Wireless System(SS07)「ITS 無線システムの新しい動向」
名城大の津川教授のイントロダクションの後、総務省の竹村氏が日本の「新情報通信戦略」について説明し、
特に ITS の部分について新たな進め方を紹介した。また、日本の周波数割り当ての動きについても紹介した。
さらに、トヨタ自動車の鈴木氏は車車間通信への利用が予定されている 700MHz 帯電波の特性をこれまでの実
験データなどを含めて紹介した。以下では海外からの発表を紹介する。
(1) A. de La Fortelle, INRIA, France
欧州におけるプロジェクトの概要と、特に同氏が関わっている IPv6GeoNet プロジェクトについて紹介した。
欧州における無線通信を利用したプロジェクトを図表 5-11 で示す。また、こうした通信利用に対し一貫性
が必要であるとのことから共通のリファレンスとして CVIS のトップレベルアーキテクチャが作られている。
インターネットプロトコルやメッセージセットについてのガイドラインが欲しい。
IPv6GeoNet プロジェクトは車車間通信の適用範囲を増やすことを狙っており、フランスのインリアが中心と
なってコンソーシアムを組み研究が進められた。日系の企業も参加している。
-17-
図表 5-11
プロジェクト名
欧州の通信を利用したプロジェクト(発表資料を JARI で編集)
期間
外部からの資金
ドイツ
経済・技術省
AKTIV
2006~2010
C2CCC
継続実施
該当せず
City Mobil
2006~2010
欧州連合
COM2REACT
2007~2008
欧州連合
COOPERS
2006~2010
欧州連合
CVIS
2007~2011
欧州連合
ETSI TC ITS
継続実施
該当せず
EVITA
2008~2011
欧州連合
GeoNet
2008~2009
欧州連合
目的/キーワード
・運転支援システムの設計、開発、評価
・情報技術、交通管理、車車間・路車間通信
・アクティブセーフティアプリのための通信について
欧州標準を開発
・プロタイプとデモ、世界との通信に関する協調、ビ
ジネスモデルの構築
・都市内環境における輸送自動化の統合と実用化
・セルラーや車車間通信を使った分散的な交通アプリ
ケーション
・車車間、車両ーセンター間通信、車室内通信
・道路インフラのためのテレマティックアプリケーシ
ョン
・車両と道路インフラを包含したマネージメント
・連続的なインターネット接続が可能なマルチチャネ
ルターミナル
・オープンな通信アーキテクチャ、位置情報の高度化、
商用的な応用、開発のためのツールキット
・ITS の開発と実用化を支援する標準化活動
・安全且つ信頼できる車室内の通信のための通信アー
キテクチャ、車両内の重要データの改竄防止や保護
・ 協 調 ア ー キ テ ク チ ャ の 中 で 利 用 さ れ る IPv6
Geo-networking の開発とテスト
IPv6GeoNet のユースケース例は以下のようなものである。
GeoNetworking とは C2CCC で検討されている車車間通信のプロトコルで地理情報を利用して通信パケット
を送信してアドホックネットワークを構成する機能を持つ。こうした機能に IPv6 の機能を加えることで、ITS
の利用分野を広げるというスコープを持っている(図表 5-12)。
図表 5-12 GeoNetworking の動作イメージ(発表資料より)
-18-
また、標準化は重要であり、ETSI/TCITS や ISO/TC204、IETF や CEN278 が関係している。C2CCC で検討し
ている車車間通信のアーキテクチャで該当する検討部分を図表 5-13 に示す。既に最終のワークショップが開
催されている。
図表 5-13 C2C アーキテクチャにおける GeoNetworking の検討部分(発表資料より)
なお、Dr. A. de La Fortelle はテクニカルセッションでも IPv6 GeoNetworking について発表を行っている。こ
こでは、プロジェクトのメンバが ETSI TC ITS、ISO TC204 WG16 そして IETF などの標準化団体で活動を行っ
ていることや、CVIS や iTETRIS などのアーキテクチャに GeoNetworking が組み込まれることなどが述べられ
た。
(2) J. Misener, Executive Adveser, Booz Allen Hamilton, USA
「ITS Application Using Wireless」というタイトルで講演。
協調衝突防止システムでは従来 360 度周囲の監視センサをつけなければならなかったが通信を利用すること
で安価にシステム構築が可能である。また、100msec 毎の Hertbeat メッセージ(これらにはタイムスタンプの
ついた車の位置情報、方位、速度を送ることで周囲車両の注意喚起が行われる)、この他の潜在的なアプリケ
ーションとして、緊急ブレーキや滑りやすい道路情報を交換するといったものが考えられる。
V2X や協調システムへの期待の背景にはチップセットの共用化がある。Atheros は 100 万/月以上の 802.11a/b/g
チップを売っており、さらにこの動きを加速させたい。
WiFi や WiMAX の普及が進むとともに、協調システムを再定義しなければならない。即ち
・Mobile:高い Qos を必要としない機器
・High Qop: DSRC の使用
ノマディックデバイスの普及(蔓延)は両刃の剣と考えられる。テキストメッセージの送信に利用されてい
る一方、NHTSA の 2006 年の調査で衝突の 80%、ヒヤリハットの 65%がドライバのディストラクションによる
ものであるという事実が重要である。
研究事例としては
・PATH の旅行者情報提供
・Arterials:路車間通信を用いたダイナミックな信号制御によりエコ運転を支援。
・IntelliDrive での安全運転支援(IntelliDrive では車の衝突の 82%を削減する可能性を持つ)
を挙げられ、普及率の低い状況でのアプリケーションとしてプローブ、診断、ランプメータリング等がある。
-19-
5.3
Energy ITS(SS12)
「エネルギーITS」
日本(経済産業省・NEDO)が「エネルギーITS 推進事業」の中で推進している「ITS 施策による CO2 削減
効果の評価手法に関する国際連携」を目指したセッションで、東大の桑原教授(エネルギーITS 推進事業リー
ダー)をモデレータとして進行した。
講演者は、日本からは上記事業の実施者を代表して、JARI の米沢主
管とアイトランスポートラボ(ITL)の堀口社長の 2 名、欧州から PTV
の Benz 氏、米国から California PATH の Zhang 氏の 4 名が登壇した。既
に日・米・欧で ITS 施策による CO2 削減効果の評価手法(エネルギー
ITS・効果評価)に関する国際連携の活動が進められており、上記 4 名
はそのキーメンバーとのこと。
まず最初にモデレータの桑原教授より、日本で実施している経済産
図表 5-14 講演中の米沢
業省・NEDO のエネルギーITS 推進事業の概要説明と、ITS 世界会議(釜山)が始まる直前の 10 月 22 日に日
本で開催された同様の目的の国際シンポジウムが多数の参加者のもと成功裏に終了したことの紹介が行われ
た。
JARI 米沢主管と ITL 堀口社長からは、エネルギーITS・効果評価で
開発している研究テーマと成果について分野別に分担して報告された。
PTV の Benz 氏からは、欧州で開発している統合シミュレーション
ツールセットの開発状況の紹介と事例評価結果の紹介があり、V2X シ
ミュレーション(VSimRTI)は、アプリケーションシミュレータ、排
出量シミュレータ、交通流シミュレータ、通信シミュレータ、環境シ
ミュレータを含むもので、交通流モデルとして VISSIM や SUMO など
図表 5-15 講演中の堀口社長
のマイクロスケールモデル、排出量モデルとして PHEM を使用した事
例が紹介された。モデル検証に関する質問があり、ベースデータセットを集め、個別モデルの検証はしている
とのこと。桑原教授からも検証は大変重要であり、日本でもデータ収集をしていることから情報交換をして行
きたいとのコメントがあった。
米国 Zhang 氏からは、交通需要マネジメントの実例(移動時間情報を示しモーダルシフトを促す)、信号情
報提供によるエコドライブ、単体効率の向上、現状と将来の ITS 技術、道路容量増加(隊列走行)などの紹介
があった。
最後に桑原教授から本スペシャルセッションを通した今後の課題として、交通流シミュレーションと CO2
排出量モデルの連携方法や検証方法に関する開発と国際的連携、それらを踏まえた ITS 施策による CO2 削減
の推進が挙げられた。
-20-
5.4
Cooperative Systems for Energy Efficient Mobility(SS35)
「エネルギー効率の良いモビリティへの協調システム」
通信を用いた協調システムでエネルギー効率化に関わるプロジェクトの紹介があった。
(1) J. Charles Padazis, Head of Sector_EcoMobility, ERTICO-ITS Europe
本発表では、ERTICO(ITS-Europe)が主導するプロジェクト、Eco Move を紹介した。
・総予算 22.5M€(内 EC の補助 13.7M€
①
・期間
36 か月
2010.4.1 開始
・参加
欧州の 10 の国が参加
目的:
現在 SP1~SP6 までのサブプログラムに分かれて検討を進めている。
SP1:IP の連携、広報
SP2:コア技術の統合化
SP3:エコスマート運転
SP4:エコ運送
SP5:エコ交通管理
SP6:検証と評価
例えば SP2 のコア技術としてはエコドライブに必要な坂道やこれまでの速度履歴、エネルギー消費量などの
データを提示できるデジタルマップデータベースや現状のドライブや周囲の交通環境を分析できる操作モデ
ルが挙げられる。また、エコ運転支援は運転前の“グリーン経路”の提供や、運転中のダイナミックな“グリー
ン経路”の提供、さらには運転後のデータの提供が含まれる。そして SP6 は欧州レベルでみた場合の運転行動
の変化を捉え、この事業が欧州の関係者の期待に応えたかどうかを判定する。SP6 ではさらに欧州の数か所(ベ
ルリン、ヘルモンド他)でエコ運転の実証実験を計画している。
本プロジェクトでは CO2 の削減検証方式とその標準化について国際的な相互理解を形成することを狙って
おり、欧州-日本の経済省、欧州と米国 DOT の RITA との連携に関与している。
EcoMove の主な活動マイルストーンは以下の通りである。
・2010/11:ユースケースとリクワイアメントの決定
・2011/9:eCoMove の通信プラットフォーム完成
・2012/7:評価のための車両完成
・2013/3:最終報告書完
(2) P. Kompfner, Head of Sector_CooperativeMobility, ERTICO-ITS Europe
欧州のトラック輸送の効率化を目指す FREILOT プロジェクトについて説明した。
燃料消費量の 20-25%改善を目指して、特に都市部でのトラック輸送の効率化を図ることを目的にしている。
・総予算:4M€(内 2M€を EU が負担)
・期間:3 年
2009 年 4 月 1 日スタート
ERTICO(ITS-Europe)がコーディネータとなりコンソーシアム方式で推進。具体的には以下の 4 つの手法
をとるが、これらを組み合わせて総合的な効果を出す。
・交通管理:交差点での運行効率化
・適応加速、速度規制
-21-
・ドライバ:高度化されたエコ運転支援
・トラック輸送管理:リアルタイムな駐車スペース情報の提供
講演では、これらのそれぞれについて個別に行われた実験とその効果がデータで示された。
(3) J. Misener, Executive Adviser, Booz-Allen Hamilton, USA
米国におけるエネルギー効率化のための協調システムの方向性について見解を述べた。
最初に IntelliDrive の構成内容とその中で今回のテーマに関わる示し、特に IntelliDrive Applications for the
Environment:Real Time Information Synthesis(AERIS)のロードマップを示した。
また、無線技術の現状について、DSRC が 1999 年に新たな周波数割り当てが行われた後、展開が遅れてい
る一方で新たな通信方式(4G、LTE など)や iPod などが誕生している。車車間通信はこれまで長い開発の歴
史を持っているが、直接エネルギーや排出ガスに関われる可能性を持っている。具体的な研究例として PATH
の協調型 ACC を紹介し、今後の主要なターゲットとして商用車両効率化を挙げた。かつての CHAUFFEUR プ
ロジェクトや日本の E-ITS のトラックプラトゥーニングを紹介した。
最初に紹介した AERIS ではダイナミックなエコ運転を目指しており、主要道路での速度向上と信号制御を
目指している。具体的には路車間通信で信号タイミングを車両に通知し速度を調整させ、逆に各車両の走行情
報を路側に上げ信号のタイミングを調整する。このほか効率化の効果をシミュレートする方式検討例などを紹
介した。
(4) M. de Kievit, Consultant, TNO, The Netherlands
欧州の ECOSTAND について紹介した。
これはエネルギー効率化や CO2 削減を目指して、日米と協調しながら共通の方法と研究のアジェンダを作
るための EU プロジェクトである。コーディネータはオランダの TNO であり、欧州各国の主として評価研究
機関が参加している。2010 年の 11 月 1 日からスタートする。WP1~WP5 のワークパッケージに分かれて活動
をしているが、シンポジウムの開催や広報などもその中に含まれており、連携活動が主になっている。さらに、
これまで(プロジェクト開始前)に行われたアムステルダム会議で決定したサブトピック毎の日米欧の責任者
が公表されている。
5.5
Intelligent Vehicle for Driver Assistance and Vehicle Safety(SS40)
「運転者支援と自動車安全のためのインテリジェントビークル」
(1) I. Kageyama, Professor, Department of Mechanical Engineering, College of Industrial
Technology, Nihon University, Japan
ASV 及びエネルギーITS(自動運転・隊列走行)で研究している自動
運転車両の走行路決定アルゴリズムについて紹介があった。自動運転
車両の走行路を決定する際には、車両モデルとドライバーモデルに加
えて走行環境に関わるリスクを考慮したモデルを作る必要がある。
(2) T. Fukao, Professor, Kobe University, Japan
エネルギーITS(自動運転・隊列走行)で実施している側方直下の
図表 5-16 ご講演中の景山先生
白線検知による車線維持アルゴリズム、及び前方車両だけでなく後方車両との速度と車間距離を反映した隊列
走行制御アルゴリズムについて紹介があった。
-22-
また独自に行っている研究として、低速時における接触事故防止
を目的とした運転支援システムとして、狭い道でのすり抜け支援シ
ステムと自動駐車システムについて実験車両のビデオ映像を交えな
がら紹介した。
図表 5-17 ご講演中の深尾准教授
5.6
New Market Generation Through Utilization of "Internet ITS"(SS47)
「“インターネット ITS”を活用した新しいマーケットづくり」
NEC の前川部長がモデレータとなって進行した。
(1) M. Maekawa, Generel Manager, ITS Business Development Center, NEC Corporation, Japan
まず最初にモデレータの前川部長がインターネット ITS の概念を
紹介するとともに、短期的にはアフターマーケットをターゲットと
した B2B あるいは B2G ビジネスが中心であるが、将来的には OEM
市場として B2C 市場に広がることが期待されるとの展望を示した。
次にインターネット ITS のサービス分野として、利便情報、公共
交通支援、物流、緊急医療サービス、プローブカーの 5 分野が挙げ
られることを紹介、日本における事例紹介の一つとして物流分野で
のヤマト運輸の宅配サービスでの取り組みを紹介した。
(2) T. Yamashita, Deputy Director, Ministry of Economy, Trade and Industry, Japan
経済産業省の山下補佐は、インターネット ITS は、標準化された
プラットフォーム上で様々な事業者が様々なアプリケーションサー
ビスを行えるという意味で、従来の事業者単位のテレマティクスビ
ジネスとは大きく違うということを述べ、具体的な取り組み事例と
して官民のプローブ情報の集約化・共有化の取り組みを紹介した。
インターネット ITS がクルマに新しい付加価値を加えるとともに、
新しい市場を創出することへの期待と、そのために必要な標準化活
動を中心に経済産業省がインターネット ITS を推進していることを述
べた。
図表 5-18 インターネット ITS から
クラウド ITS へ
最後に、将来的にはインターネット ITS から世界中どこにいても必要なサービスが享受できる「クラウド
ITS」への発展の期待を述べた。
(3) S. Ogura, Chair Professor, Dept. of Emergency and
Disaster Med., Graduate School of Medicine,
Gifu University, Japan
小倉教授は、経済産業省の支援を受けインターネット ITS のアプ
リケーションの一つとして実証実験を行なっている救急医療支援情
報流通システムプロジェクト(GEMITS)の紹介を行った。
-23-
図表 5-19 ご講演中の小倉教授
GEMITS では、救急搬送時における医療機関の受入先紹介の迅速化(病院たらい回しの回避)を目的として、
岐阜大学病院をセンターとした病院ネットワークを構築し、病院情報(医師と設備のリアルタイムな情報)と
患者情報(救急車からのリアルタイムな情報)を迅速・最適にマッチングさせている。
5.7
Intelligent Vehicle Field Operational Tests around the World(SS61)
「世界のインテリジェント自動車の実証実験」
日欧米で行われているフィールドテスト、及びその統合化に関するプロジェクトの紹介があった。日本から
は、ホンダが、自社が関わった主として協調走行システムの効果と今後の方向を、また国土交通省自動車交通
局から ASV の実証実験の成果と今後の課題が紹介された。
(1) M. Benmimoun, Scientific Assistant, Institut fur Kraftfahrzeuge, RWTH Aachen University,
Germany
“euroFOT”で実施したアクティブセーフティシステム実験の成果について報告した。
まず“euroFOT”についてであるが、その背景として、安全システムを普及させるにはユーザに認知が重要で
あり、欧州では様々な安全システムについての認知度が低いことを課題である。本プロジェクトの前身として
FESTA というプロジェクト(2008 終了)があり、FOT の実施方法をまとめている。euroFOT は先進の運転支
援システムの FOT に焦点を当て 2008 年 5 月から 2012 年 2 月まで 22 百万€規模のプロジェクト(14 百万€は
EC の支援)として開始された。ここで対象とする機能は以下のものである。
① 前後方向の制御機能
・Forward Collision Warning(FCC)
・Adaptive Cruise Control(ACC)
・Speed Restriction Systems(SRS)
② 横方向の制御機能
・Blind Spot Information System(BLIS)
・Lane Departure Warning System(LDW)
③ 新たなアプリケーション
・Curve Speed Warning(CSW)
・Fuel Efficiency Advisor(FEA)
・Safe Human Machine Interaction(SafeHMI)
これらのシステムの効果を評価するステップとして
課題の設定(設問)⇒課題についての仮説(例えば ACC は事故を減らす)⇒効果評価のための指標の設
定(たとえば事故件数)⇒測定項目(例えば速度、車間距離)
が設定され、これに基づいてそれぞれのシステム共通的な評価期間が 12 カ月と決められた。得られたデータ
に関しても処理と蓄積のプロセスが共通化された。現在、FOT が開始されデータ収集が行われている。2011
年には効果評価の方法が最終的に決まり 2012 年の 3 月には結果が報告される。
-24-
(2) M. Flament, Head of Sector-Safe Mobility,
ERTICO-ITS Europe
ERTICO から“euroFOT”に関する全体的な説明が行われた。
現状 FOT では以下の課題がある。
・テストすべき機能が複数ある
・対象とするメーカと車種が複数ある
・データ取得の方法もまちまちである
・機器のレベルが様々である
しかも、こうした FOT が欧州の様々な場所で行われて
図表 5-20 欧州メーカの関連機器のレベルの違い
いる。
こうした状況をいったん整理し、4 つの Vehicle Management Center のもとに実施内容をまとめたものを図表
5-21 に示す。
図表 5-21 VMC ごとに整理した FOT の内容(発表資料より)
各 VMC が責任をもってリエゾンをとりながら FOT の実施内容を調整する。特に車両とドライバについては
・車両:車種選定、データ取得方式、ドライバのローテーション
・ドライバ:インセンティブ、モニタの方法、訓練、インタビュー方法
を調整する。
こうして現在欧州では 733 台の車が実験に参加している。
(3) S. McLauglin, Research Scientist, Virginia Tech Transportation Insutitute-VTTI, USA
ADAS(Advanced Driver Assistance System)の有効性をみるための FOT における自然なドライバ挙動の観察
プロジェクト SHRP2 について述べた。
SHRP2 研究は 2010 年から 2013 年の期間で、3100 人のドライバを対象にデータを収集している。スポンサ
ーは National Academic of Science Transportation Research Board である。
具体的には、インタビューやモニタカメラの画像、車両挙動に関するセンサ情報、ドライバの身体状況チェ
ック情報などを収集する。こうした条件で 250 人~500 人のトラックドライバについてそれぞれのドライバに
ついて ADAS を機能させた時とさせない時の差をみる予定である。
-25-
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6. Scientific Paper s/Technical Session
6.1
Intelligent Vehicle Safety : Advanced Driver Assistance Systems(1)(SP01)
「インテリジェントビークル安全:高度運転支援システム(1)」
(1) Panoramic Vision System for an Intelligent Vehicle using a Laser Sensor and Cameras
韓国 Kyungpook National Universityから、パノラマビジョンシステムを紹介。
左右サイドミラーの下にカメラ、トランクに広角のカメラを、さらに、他車両との距離を測定するレーザセ
ンサは、車両左後に設置する。しかし、カメラデータは、投影中心(center of projection)が違うため一般的な
手法は適用できず、レーザセンサを使っても、死角への接近車両を精度よく検出できないため、レーザのデー
タを効果的に利用する手法を考案した。
図表 6-1 システム構成と機器の測定範囲
(2) Pedestrian Detection Using Local Pedestrian Classifiers
弘前大学からの発表。
歩行者検出方法の提案。背景画像を非歩行者のサンプルとして学習し歩行者分類を行う。歩行者は 2HOG 分
類と 18HOG 分類から成る(2HOG は歩行者候補を早く検出できて、18HOG は詳細に歩行者の輪郭を調べるこ
とができる)。
図表 6-2 2HOG 分類と 18HOG 分類のグラフ
(3) Real-Time Recognition of Blue Traffic Signs
筑波大学からの発表。
青色標識を青空の背景と識別するアルゴリズムの発表。場合によって標識が分断されて認識されることがあ
るため、断片を結合する。その後、標識内の白い矢印を認識する。白い矢印は規定したパターンと照合させ分
類する。
-26-
(a.オリジナル,b.マスクエリア,c.グレイレベル)
図表 6-3 青色標識の識別
図表 6-4 標識と矢印のパターン
(4) Towards 3D Automotive LIDAR Processing How to deal with Vehicle Dynamics
Chemnitz University of Technology からの発表。車両の動きによりレーザの検出距離が変化してしまう。そこ
で LIDAR を用い車両ピッチ角の検出とピッチ角に応じた正確な距離を再計算するアルゴリズムについて発表。
図表 6-5 車両の動きによるレーザの検出距離の誤差
(5) The Analysis of Potential Cost Savings for Large Trucks with Rearview Video System (RVS)
University of South Floridaからの発表。トラックのバック時の衝突は、「後方が見えない」ためと考えられて
いる。そのためトラックの後方を認識するためにrearview video system(RVS)を開発し、米国ではトラックに
搭載し始めている。
フロリダでのトラックのバック時の衝突事故データを再調査したところ、その内の64%がRVSを搭載するこ
とで防止できる。それは年間、トラック1台あたり600-2400ドル節約できる可能性がある。それはトラック運
送会社にとってコスト削減になる。
図表 6-6 トラックのバック時の衝突事故
-27-
6.2
Advanced Driver Assistence System(TP022)「高度ドライバ支援システム」
(1) Effect of Combined Stimuli to Raise Driver Vigilance -Using Vibration and Auditory Stimulus愛知県立大学からドライバの覚醒度の検知について発表。
ハンドルの振動と聴覚への刺激によりドライバの覚醒度の変化を計測。実験はドライビングシミュレータを
用いて実施した結果、振動と音の2つの刺激により瞬きは減少した。ドライバの覚醒度は何も刺激を与えない
場合より向上した。2つの刺激を併せることで、単一の刺激を与える以上の効果が得られた。
図表 6-7 日本での (a)交通事故の原因 (b)死亡事故
(2) Human physiological signals extraction and estimation using a car seat built-in piezo-film
sensors
アイシン精機からシートに圧電センサを埋め込みドライバの覚醒度を検出についての発表。ドライバはセン
サで計測されていることを意識せずにシートに座ることができる。センサはいろいろな種類の振動を検出して
しまうが、フィルタを用い呼吸と脈拍、ドライバの動きを計測することができる。
図表 6-8 センサ
図表 6-10 センサの位置
図表 6-9 センサの配置
(3) Cooperative Adaptive Cruise Control: Driver Selection of Car‐Following Gaps
カリフォルニア大学のシュレドーバ氏からの発表。
ACCとCACCの比較実験を行うと、CACCの方が車間距離を詰めることができた。16人のドライバに2つのシ
ステムを通勤で使用してもらい、運転行動の記録とアンケートを実施した。結果、ドライバはより車間距離を
詰めることができるCACCを好んでいたが、男女によって好みが大きくことなることになった。
CACCが普及すると高速道路での交通容量増大が見込める。
-28-
図表 6-11 ACCtpCACC の車間距離の選択
(4) Joint Interpretation of On-Board Vision and Static GPS Cartography for Determination of
Correct Speed Limit
Fabien Moutarde obotics Lab(CAOR)から、制限速度サポートシステムADAS(Advance Driving Assistance
System)の紹介。ADASはドライバへの情報提供やACCの最高速度の設定に使用を目的としている。システム
は地図情報と車載カメラによる標識認識と車線認識を利用している。
(5) Bio-Signal Indices to Evaluate Driver Stress of Automatic Platooning
東京大学から発表。二酸化炭素排出量を減少させ物流効率を高めるため、車間距離を詰めることで空気抵抗
を減少させる隊列走行システムを開発している。しかし設定車間距離を短くするため、ドライバのストレスを
評価する必要がある、ミュレータを用い計測を行った結果車間距離4m、8mは通常の運転よりストレスが大き
いことがわかった
図表 6-12 シミュレーションでの車間距離毎の映像
-29-
6.3
Vehicle to Vehicle Communication(1)(TP035)「車車間通信(1)」
車車間通信に関する発表が行われた。
(1) IPv6 GeoNetworking for ITS
Arnaud de La Fortella
C2CCC で検討されてきた位置情報を利用した GeoNet プロトコルと IPv6 を一つのプロトコルにまとめる活
動について紹介。(P15 を参照)
(2) Challenges of Platooning on Public Mortorways
公道でのプラトゥーン走行を目指す SARTRE プロジェクトの紹介であった。自動的にプラトゥーンを組むこ
とで安全性、移動の効率化、燃費向上、運転者の負担軽減など多様な効果を狙うものである。
全体的なコンセプトの整理と課題の洗い出し、併行して行われているシミュレーションの説明が主たる内容
であった。プラトゥーンの定義は図表 6-13 のように行われている。
図表 6-13 プラトゥーンの構成と定義(発表資料)
隊列の先頭車はプロのドライバが想定されており、車両としてはトラック、バスなどとされている。追従車
両は一般車両である。特徴的なのはプラトゥーンのユースケースのアクターとしてドライバとバックオフィス
の管理者が想定されていることで、プラトゥーンの形成にインフラが深く関わっていると思われる。こうした
様々な車両が走行中にプラトゥーンを形成するプロセスとして図 8 が想定されており、起こりうる車両運動の
複雑さや技術課題が挙げられている。
図表 6-14 プラトゥーンの形成パターン(発表資料より)
-30-
こうしてプラトゥーンのモデル化を行い、PELOPS と呼ばれるシミュレータで
・プラトゥーンの方式
・システムの限界
・交通流への影響
等をシミュレートしている。PELOPS(Program for the Development of Longitudinal Traffic Processes in System
Relevant Environment)は PROMETHEUS プロジェクトの中で BMW によって開発されてきたもので、トラック
の環境、ドライバ、車両の 3 つの要素を統合させている。その概念は図表 6-15 のように示される。
図表 6-15 PELOPS シミュレータの概念(発表資料より)
(通信シミュレーションについては組み込まれていないようで、車両の動作と簡単な人間の動作を組み込み、
プラトゥーン形成までの動作をシミュレートしているレベルである。)
シミュレーションシステムの概要を図表 6-16 に示す。
図表 6-16 PELOPS シミュレータの構成(発表資料より)
SARTRE のプラトゥーニングコンセプトを分析するためいくつかのシナリオのもとでシミュレーションが作
られている。合・分流のための適切な車間距離、プラトゥーン形成や解除のための時間、ストリングスタビリ
ティ、交通流への影響、ハイウェイへの出入り、燃料消費などが分析できるはずである。
-31-
しかし、制度的な課題、技術的な課題は多く残っており、現状はそれらを明らかにしている段階である。
なお、通信については
・プラトゥーン内の通信
・バックオフィスとの通信
を区分けしている。方式は 5.9GHz の IEEE802.11p を主にしており、さらにバックアップ通信として 5.9GHz
帯の異なるチャネルあるいは 2.4GHz の無線 LAN、さらには全く異なる技術である UMTS などが考えられてい
る。
6.4
Autonomous Vehicle(1)(TP036)「自動運転」
(1) Look-ahead-Distance for Lateral Control of Vision-based Vehicles
名城大学からの発表。
前方注視に基づく車両の横制御技術を紹介。本論文では、車両
が直線に沿って運転できる横の制御アルゴリズムは LQ 制御での
設計を行った。車両運動モデルとしては2輪モデルが使用された。
図表 6-17 にシステムと軌道の関係を示す。
制御モデルにおいて入力は前方注視時の横煩瑣-距離及び速度
でこれらをもとに制御則の設計を行った。各制御ゲインは速度の
関数として使用されている。
曲線及び直線時の制御性のシミュレーションが行われ、制御則
図表 6-17 システムと軌道の関係
の妥当性が検証された。この結果は人間のドライバの先取りの距離と一致した。
(2) The Trajectory Generation Method for Autonomous Vehicle Driving System
日本電気 山崎氏らによる発表。
横方向制御では FB 制御に加えてフィードフォワード制御が行われるがこの目標軌跡はこの FF 制御に使用
される。軌跡は出発点から目的点までの軌跡が生成されるがこの軌道軌跡は計測された白線位置座標から生成
されるものと交差点での計算軌跡より生成される 2 種類がある。
この生成において、ステアリング角度が滑らかに変わることができるように、各々の Vertical の斜面、湾曲
と接線方向は連続的に変化するよう求められる。この手法を用いていくつかの実際の道路での計算がなされた。
会場にてデータ計測時の GPS 精度や 3D データの必要性の質問がなされた。
図表 6-18 に軌跡生成ポイントを示す。
図表 6-18 軌跡生成ポイント
-32-
(3) Defining the Operating Performance Envelope of an Intelligent Vehicle
SWRIからの発表。
本発表は自律運転車両システムにおいて可能な限りの最高のパフォーマンスを定める方法を提案したもの
である。SWRI では自律運転の開発を行っており、このプロジェクトは Autonomous Robotics Technology Initiative
(MARTI)プログラムとして推進され、安全や環境を改善する目的で開発されている。
今発表では自律運転システムの性能を決める要件や指標について発表がなされた。乗用車であるか、商用で
あるか、軍の車両プラットフォーム車両により設計手法は異なる。
図表 6-19 にシステム決定パラメータを示す。
図表 6-19 システム設定パラメータ
(4) Automatic Guidance Control of an Articulated-All Wheel Steered Vehicle
本発表は韓国鉄道研究所(KRRI)によって現在開発されている全輪操舵連接バスの操舵制御法に関する発
表である。
このシステムはオランダ APTS 社によって開発された Phileas と呼ばれるシステムで車両が走行する道路中
央にはレーンマーカが設置され、連接車両の全ての車軸はこのマーカを通過するよう制御されるものである。
本発表では全車軸が所定の範囲内で基準進路をたどるようにするためのガイダンスコントローラのアルゴリ
ズム設計法に関するものである。制御法としては非線形の車両ダイナミックなモデルをベースとする 3 入力-3
出力線形化されたモデルが設計された。コントローラを単純で、調整できるようにする目的で、分散する低順
序制御構成とされた。
なお、車両制御モデルとしては多変量 3x3 を扱う CRA 方法が用いられた。
また、カーブ路での追従性能向上のためフィードフォワードコントローラが併用されている。設計されたコ
ントローラは非線形のダイナミック車両モデルを使用してシミュレーションがなされ、良好な結果がえられた。
図表 6-20 に連接バス構成と車両運動モデルを示す。
図表 6-20 連接バス構成及び車両運動モデル
-33-
(5) Operational Concepts for Truck Automation Systems
米国のシュレドーバ氏によるトラックの自動化のコンセプトに関する提案である。自動化コンセプトにおい
て本発表では隊列走行における先頭車と追従車車両のドライバの役割範囲による A~L までの分類と道路環境
の組み合わせによるコンセプトが分類されている。この中で特に重要なのがドライバとシステムの相対的な役
割とシステムが作動する道路環境の関係である。
トラックがプロによって運転されて、維持されるので、自動化が乗用車市場への展開を図る前のトラックへ
の導入は意味がある。またトラックへの自動化の導入は燃料効率改善や、時間短縮、安全性向上することによ
って車両運営経費を減らすことができる場合は、乗用車より物流事業者に直接、経済的な見返りを与える。図
表 6-21 に A~L のコンセプトを示す。
A:警報支援
B.:ACC
C:ACC+警報支援
D、E:隊列で先頭車がドライバ運転、後続が自動追従(ドライバ乗車)
F,
G:隊列ですべてが自動(速度、操舵)
H,I,J,K,L:追従車が無人運転
ここで F~L の場合、解決すべき技術課題は A~E に比較し飛躍的に増大する。今後どのコンセプトを実用
化していくか議論が必要。
図表 6-21 隊列走行コンセプト
6.5
Vehicle to Vehicle Communication(2)(TP050)「車車間通信(2)」
車車間通信に関する発表である。
(1) Cooperative Position Verfication-Defending Against Roadside Ayacker2.0
DENSO
AUTOMOTIVE(ドイツ)と Daimler AG の発表。複数の車両が協調して路側からの妨害を排除す
る方式について紹介した。
-34-
Vehicle ad hoc network(VANETs)においては自車の情報を定期的に発信し、場合によってはその中に注意情報
を含ませる。こうしたシステムに対し外部、特に路側から偽の注意情報を流し安全な運転を脅かすことが考え
られる。こうした路側の妨害メッセージを見分ける方法として MDM(Minimum Distance Moved)方式を提案
した。これは、移動する車両の信頼関係をもとにしており、同じ方向に移動する車両はメッセージ交換が長時
間可能であるのに対し、路側の妨害者は移動しないためいづれ区別ができるというものである。しかし、これ
までの方法では区別に時間がかかるといった欠点があり、また妨害者が通信範囲を広げ、自分のための位置を
実際に走っている車の近くに設定するなどの方策をとった場合には対応が困難であった。本発表では、複数の
車が互いの位置を交換するなどの方法を用いて偽の位置を発信している妨害者の矛盾(即ち本来は情報受けて
いるはずの車両が電波の到達範囲の関係で情報を受けていない)を見つけ出し路側の妨害者を区別する方法を
提案している。ただし、この方法は車車間通信が十分普及していることが前提となっている。
これまで暗号方式に頼った妨害者の排除を、路側からの妨害に限定されるが、電波到達範囲の特性を生かし
て行うユニークな方法である。
(2) Consideration of Location Surveying for Vehicle-to-Vehicle Communication Using the UHF-band
アイシン精機(日本)からの 700MHz 帯電波の特性改善に関する発表。
700MHz 帯の電波を車車間通信に適用する場合の課題を明らかにするため、遅延分散の測定を行った。チャ
ープ変調方式を用いて見通し通信が可能な道路環境で遅延分散のデータを収集した。直接波に対して反射して
遅れた波の強度が強い場合があり、その後の処理(同期をとる)場合に注意が必要である。また、直接波より
遅れてくる反射波が強くなるという方向を探すため見通し通信の環境で反射が起きる環境を設定し、実際に遅
れた波の強度が高くなることを確認した。こうした遅延波の強度が強くなると PER(パケットエラーレート)
が極端に上がることをシミュレーションで示した。
6.6
Autonomous Vehicle(2)(TP051)「自動運転(2)」
(1) Smart Car Algorithm using Fuzzy Rules
本発表は韓国からの発表。安全性を向上するための制御アルゴリズム及びシステムに関するものである。本
発表ではカーシートを自動的に調節することができる自動制御アルゴリズム、及びファジー制御アルゴリズム
による自動車速度制御及び交通事故シミュレーションが報告された。
全体のシステム構成は路側からの危険情報と速度制限情報をもとに速度制御がなされるが車両の速度制御
はスロットル制御により行われる。
ファジー速度制御アルゴリズムでは障害物との車間距離により論理ステップを 12 段階にわけこれに基づい
てファジールールが作成されている。路車間通信としては DSRC が使用されている。このシステム及びファジ
ー制御アルゴリズムのシミュレーションが実施された。
(2) Performance Evaluation of the 2D Positioning by M-CubITS in Plural Traffic Lane Roads
埼玉大学
長谷川研究室からの発表。
本発表では、M-CubITS システムと呼ばれる 2D 車両測位システムの開発に関する発表である。M-CubITS サ
ブシステムは、道路区画線に沿って設置されたマーカを用いて横及び縦方向の位置決めを行う技術である。
図表 6-22 は、M-CubITS のシステム構成をしめしたもので、車線と道端に沿って塗られた M マーカをオン
-35-
ボードカメラを用いて M-CbuITS 列を検出しカメラ位置と方向を測定する。M-CubITS マーカは画像認識によ
り認識される。マーカは 2.5m 毎に表示され、短一レーンに加え複数の車線での認識性能が評価され、マーカ
の検出精度は横方向で 0.15m、縦方向が 0.26m である。
なお、位置決めのエラーの主因は、カメラ、カメラの最初のミス設置、その他のぎりぎりの写角である。 カ
メラの最初の失敗-設置を解くために、ソフトウェアによる自動較正法が開発された。図表 6-23 に実際の装置、
マーカを示す。
図表 6-22 システム構成
図表 6-23 カメラ及びマーカ
(3) Road Environment Perception for Automated Vehicles
本発表はギリシャ AICC 社よる HAVEit プロジェクトで開発中のセンサ認識のためのデータ融合技術に関す
る発表である。
開発の目的は自動制御のための信頼性の高い障害物認識を行うもので、基本的な方法としはセンサフュージ
ョンとターゲットのトラッキングである。センサとしてはレーザレレーダ、画像及びレーダを使用する。
認識率向上のための基本的考えはそれぞれのセンサで対象物のクラスタリングとトラッキングを行い、トラッ
キングの結果をフュージョンするアルゴリズムが開発されている。図表 6-24 に基本システム構成を示す。
ここでトラッキングの実施において、トラック・マネージメントと呼ばれるアルゴリズムが開発された。こ
れはトラッキング結果が正しいかを評価するものでこれによりトラッキングの精度を向上している。またフー
ジョン方法として行列式からなる相関関数が採用されている。
これらの認識アルゴリズムはマットラボ・シムリンクにより記述された。
認識実験が行われ、単一センサでのご認識率は最大で 2%であったがフュージョンの結果 0.01%まで誤認識
率が低下した。
-36-
図表 6-24 システム構成
(4) Development of Human Machine Interface for Platooning Systems
-Fundamental Proposal of HMI for Risk Avoidance産総研 加藤氏と名城大 津川教授により、「エネルギーITS プロジェクト」で開発中の隊列走行システムに
おける HMI に関する発表であり、より多くの高度情報サービスを狙った HMI が提案されている。本開発の目
的は隊列内の車間距離が自動制御されている間、システムが故障した場合に機械系からドライバに運転を安全
に遷移するための HMI を開発するものである。開発された HMI では制御状態の内容を自車のドライバと後続
車のドライバに知らせる HMI から構成されている。
提供される情報は隊列内の車両すべての車間距離、速度、加減速状態、障害物情報であり HMI としては自
車ドライバにたいしてはグラッフィク的表示、後続ドライバには主に文字表示される。表示情報は車両 ECU
より 20msec 毎に表示される。
図表 6-25 に自車ドライバ用 HMI、図表 6-26 に後続車ドライバ用 HMI を示す。
図表 6-25 ドライバ用 HMI
6.7
図表 6-26 後続車ドライバ用 HMI
Intelligent Vehicle Safety- Advanced Driver Assistant System(TP057)
(インテリジェントビークルセーフティー高度ドライバ支援システム)
(1) Development of a Safe Driving Management System and ITS Application
車両運転情報を集めて、危険な運転状況を分析し危険運転かを判断する安全運転管理システムの開発に関す
る韓国からの発表。この管理システムは車載運転監視装置とマネージメントセンタから構成される。
運転監視装置は、車両に取り付けられて車両運動とドライバのふるまいについての情報を収集し、運転発見
-37-
アルゴリズムによって分析され、収集したデータと分析結果は、コントロールセンターに送られて、データベ
ースに保管される。システム構成を図表 6-27 に示す。
危険運転判断アルゴリズムは 16 のケースの分類法と運転データパターン識別法が開発された。この分類と
識別は車両運動シミュレーションと車両実験に基づいて決定された。
危険運転判断分析実験は 50 台のバスと 10 台の乗用車を用いて収集された。分析では、危険なドライブが起
こる日と時間を選んで実施された。収集されたデータは速度、ヨーレート、加減速度、前方画像である。これ
らの情報をもとに分析が行われた。
図表 6-27 安全運転管理システム構成
(2) Development of the Device to Prevent Wrong-Way Driving
東日本高速道路からの発表で、高速道路での逆走を防止する装置の開発に関するものである。この装置は逆
走を検出する画像認識装置と警報装置から構成される。画像認識を選択した最大の理由は従来の車両感知装置
である超音波センサやループコイルに比較し、広範囲の場所を検出できる点である。このため最適なレンズ焦
点距離が選択された。
警告装置としては電光表示機が使用される。この装置は実際の 2 箇所の道路に設置され性能評価が行われ、
雨、霧と降雪量のような天気下及び 30°の冷寒でも、正確に車両検知できることが証明された。また、逆走が
多発する場所に取り付けられ、インストールから 6 ヵ月以内に 5 回の逆走が検出され正面衝突事故が防止され
た。
図表 6-28 にカメラ像と警告表示機を示す。
図表 6-28 カメラ画像及び警告表示機
-38-
(3) A Safety Evaluation Method at Freeway Exit Ramp Based on Driving Behavior
韓国からの発表。本発表は高速道で事故率が高い出口ランプ域での事故解析と事故低減のための出口ランプ
設計に関するものである。出口ランプ形状が異なる 4 種類についてランプ区域と速度の関係を調査した。一般
的に車両は減速部から減速して、移行カーブ部を通して連続的に減速し始めて、出口ランプで減速する。図表
6-29 に速度の調査結果を示す。
図表 6-29 ランプ出口と速度の関係調査
また出口ランプ区間と過去の事故発生割合が解析され、移行カーブ区間での事故は全体の 6 割以上に達して
いる。このデータよりデザイン安全レベルを評価するために、DSI(Safety Index)計算法が開発され、この結
果、事故現場の DSI が事故現場のそれより良くないとの解析がなされた。なお DSI はランプ部各部位の長さと
重み係数等からなる計算式である。以下に DSI 計算式を示す
また Design Safety Criteria( DSC)が、高速道路の出口ランプのデザイン安全性を評価するために導入された。
DSI、DSC を評価した結果、DSI と DSC は、ハイウェイ安全性を改善するための非常に役に立つツールである
ことが照明された。
(4) Study on Eyes Movement of Drivers with Different Driving Experience on Perception of Traffic
Signs
中国の発表。異なる運転経験を持つドライバ眼球運動の違いを検出する手法の研究に関するものである。目
Trackingシステムはドライバの眼球運動の特徴を研究するのに用いられたものを使用し、2種類のドライバ(経
験豊かで未熟なドライバ)の眼球運動が比較された。この研究より運転経験差がドライバの眼球運動の特徴に
明らかな影響を及ぼすことが明らかになった。具体的には道環環境をよく理解していない運転初心者は経験豊
かなドライバより長く交通標識を見ている。
またドライバによる視覚情報の 95%はダイナミックであり、大部分のドライバの標識凝視固定時間が 0.1~0.4
秒あることが示された。この研究は今後標識の表示方法等に利用される予定である。
-39-
(5)
Applying Intelligent Transportation Systems to Reduce Hydroplane Related Crashes In
Greenville County, South Carolina
米国の発表。地方での交通事故を減少するための方策に関する発表である。具体的には 2008 年 2 月始まった
Rural Safety Initiative に関し、サウスカロライナ DOT が行った 3 つのシステム開発に関するものである。
サウスカロライナは 2006 年全米第 2 の死亡率であり、100 万につき 3.60 の死亡率であった。特に死亡事故
数 1037 の 40%がスピードオーバによる車線逸脱事故で滑りやすい路面状態が原因であった。
速度及び路面状態に関して発生した追突事故及び車線逸脱事故を低減するため、サウスカロライナ州は州内
の 25 号線に 2 マイルの実験サイトを設定し、ここに天候・舗装路面センサ、情報提供装置及びビデオカメラ
監視装置を設置し実証実験を行った結果、事故が減少した。サウスカロライナ州の試算ではこの装置の本格導
入による B/C は 12 で非常に効果のあるものであると予測している。
(6) CrossWatch™ - Real Time Accident Prevention
イスラエルより交差点をモニタして危険性をドライバに報せる「CrossWatch」システムの開発に関する発表。
「CrossWatch」システムは路側に設置された SCU(ビデオセンサ)と通信装置と車両側の VTT 装置からな
る。VTT は RF レシーバ(例えば 802.11p レシーバ)、GNSS レシーバ及びナビ道路地図等からなり、複数の交
差点画像データを通信装置を介して車両側に伝送し、ナビ道路データと連動して危険をドライバに報せるシス
テムである。図表 6-30 にシステムイメージを示す。
図表 6-30 「CrossWatch」システムステムイメージ
SCU は 7 から 20m の高さに設置され、40m から 300m の交差点範囲をモニタするよう設定される。SCU か
ら VTT への通信周期は約 200msec であり、TDMA 通信プロトコルにて交差点に設置された複数の SCU データ
を車両側に通信する。ドライバは「CrossWatch」サービスに有料加入しこのサービスを受ける。
(7) Clustering DSRC-Based Networks for Logistics Operations in Ports
カナダから、DSRC を利用した港湾での物流用ネットワーク技術に関する発表である。
欧州委員会によると、2005 年での定期的なライナー便とフェリーで、北海地域での短い海運輸送は、約 5
億 9100 万トンと膨大にも拘わらず、短距離海運輸送での港湾における荷捌きは人力に非常依存している。
この問題を解決するため DSRC を利用したネットワークを形成しリアルタイムにトラックに情報提供を行い
物流の効率を改善するシステムを開発した。
本システムでは 802.11p、IEEE 標準に基づく無線ネットワークのパフォーマンスをシミュレーションし、こ
の結果に従って DSRC のネットワークが構築された。DSRC の周波数は 5.9GHz で 2 本の制御チャンネルと 7
-40-
つのサービスチャネルを含み、1 チャンネルにつき最高 27Mbps、データ信号速度で 1000m まで無線通信範囲
で設計されている。対象車両は、個人車両、通過車両、商業貨物と緊急車両である。DSRC 無線ネットワーク
において、送信データは 2 種類であり、1 種類が Vehicular Environment(WAVE)で他が Short Messages(WSM)
である。
ネットワーク設計では待ち行列を作っている遅れを減らした設計がなされた。
この研究により 5.9GHzDSRC ネットワークが構築され、ロジスティックスでの地理的地域に情報提供するこ
とが可能であることがしめされた。これにより物流を効率化し、配送、集積ルート計画サービスが提供可能と
なった。
図表 6-31 に DSRC 物流ネットワークのイメージを示す。
図表 6-31 DSRC物流ネットワーク
6.8
Safty:Truck and Management(TP058)(貨物車両とマネジメント)
(1) Development of Automated Platooning System based on Heavy Duty Trucks
JARI から、現在開発が進められている自動運転・隊列走行研究開発プロジェクトの概要を報告。本プロジ
ェクトは高い稼働率と信頼性の両方を兼ね備えた自動運転・隊列走行システムを開発し、高速道路での次世代
運送貨物システムとして利用することを目的としている。
現在、日本自動車研究所及び産学公連携のもと、隊列走行を実現するための走行制御技術、走行環境認識技
術、車車間通信技術、位置認識技術等を開発中である。その概要及び隊列走行の制御システム、未供用高速道
路で行った評価性能実験の結果を報告した。
隊列走行中と急制動時の様子を図表 6-32(a)(b)に示す。
(a)隊列走行中
(b)急制動(0.4G 減速)
図表 6-32 隊列走行実験
-41-
(2) Prospect of Using Weigh-in-Motion Based System for Enhancing Vehicle Weight Enforcement
– A Case Study of Malaysian Roads
マレーシア大学からの発表。一般道や高速道路の路面を維持するためには車両重量計測と重量制限が必要で
ある。頻繁に過積載のトラック走行する道路は轍やひび割れなどが発生してしまうため、メンテナンスを実施
しなくてならない。本研究ではマレーシアの主要道路に WIM(weigh-in-motion)を敷設し計測を行った。研究
の目的は WIM システムを用い、トラックの積載重量を守らせることである。そのために過積載の割合を調査
し、WIM システムの配置検討を行った。図表 6-33 に WIM システムを示す。
図表 6-33 WIM System
(3) Research on Qualitative Standard of Driver Workload
北京大学からの発表。中国では交通事故問題が深刻になっている。
そこでドライバの運転負荷と、道路を設計する際の規格や評価基準
の要因となる、安全と快適性に関する認識力の過程を研究した。シ
ミュレータと実車を用い、運転時におけるドライバの認識のプロセ
スと生理反応を分析することによって運転負荷を調査した。
図表 6-34 使用したシミュレータ
6.9
Traffic Management:Ways of Improving Traffic Flow(TP070)
(交通管理:交通のニーズに影響を与えるもの)
(1) Ubiquitous Traffic System together with Low Carbon Green Growth Dedicated to Busan City
ユビキダス都市プロジェクトの交通統制システムについて韓国から発表。
プサンでは港湾、交通、観光、コンベンションなど都市の主要インフラにユビキタス技術を適用し、地域産業
構造改善と地域經濟活性化、市民生活の質の向上を目指している。
その中に交通統制システムがある。インフォメーションセンターに集めた車両情報は携帯電話、バス停、標
識そしてインターネット等で見ることができる(図表 6-35)。
ユビキタスネットワークのために多目的ワイヤレスシステムと、CO2 の分析センサを設置していることが本
システムの特徴である。図表 6-36 はプサン主要部に設置した装置の分布図である。
-42-
図表 6-35 交通管制システムの構成
図表 6-36 装置の分布図
(2) Sustained effects of increasing Queue Discharge Flow Rate by using the Variable Message
Signboard
西日本高速から VMSs を用いた交通渋滞解消の研究紹介。交通容量を増やすために、高速道路の渋滞ポイン
トに VMSs(Variable Message Signboards)という標識を設置した(図表 6-37)。VMSs で加速をドライバへ促す
場合と、表示なしの場合では表示なしのほうが著しく交通流量が低下した。
図表 6-38 に示すように KP117.7 と 117.6 の 2 箇所に VMSs を設置し図表 6-39 のような 3 パターンのメッセ
ージを表示させた。その結果 QDFR(Queue discharge flow rate)は CaseA の場合 830(vehicles/hour)、 CaseB
の場合 693(vehicles/hour)、 CaseC の場合 809(vehicles/hour)であった。
図表 6-37
VMSs
-43-
図表 6-38 VMSs に表示するメッセージ
図 6-39 渋滞ポイントと VMSs の位置
(3) Traffic Flow Control Using Probe Vehicle Data
UTMS(新交通管理システム協会)は二酸化炭素排出減少のための交通流をプローブデータを用い研究して
いる。 2008 年高度道路交通システムを定義し要求技術を調査した。2009 年にはプローブデータと主要技術に
ついて確認するためにシミュレーションを行った。
プローブデータを統計的に見ると、車載ユニットの展開率に依存せずにボトルネックを検出できることを確
認した。プローブデータの位置精度が高い場合、車載ユニットの展開率が 10%以上であったならば、「信号管
理性能の改良」で二酸化炭素排出を減少させる効果がある。一方、プローブデータの位置精度が低い場合、CO2
排出を減少させるためには車載ユニットの展開率が 20%必要である。しかし、この結果はプローブデータのみ
で計算された場合のため、次のステップでは車載ユニットの開発率の必要な状態を減らすためにプローブデー
タとスポット探知器情報をフュージョンし調査を行う。
図表 6-40 シミュレーションの構成
-44-
(4) Evaluation of the benefits of Route Guidance System using Combined Traffic Assignment and
Control Framework
ユタ大学からの発表。
都市における交通渋滞は、交通計画の主要な問題である。 混雑緩和ために、輸送研究は既存のインフラ効
率を上げる開発に集中している。
Route Guidance Systems(RGS)の過去の研究では、交通情報をドライバへ与え、ルートを案内し、そして交
通渋滞を減少させるシステムになる可能性がある。本研究では、RGS の評価として Combined Traffic Assignment
and Control Framework(CTAC)を使用し評価した。11 のシナリオは RGS の異なった割合でテストされた。
図表 6-41 RGS の評価
(5) A Development of Traffic Analysis Support System for Gyeonggi-Do Traffic Information Center
サムスン SDS 株式会社からの発表。本研究の目的は traffic analysis support system(TASS)を構築することで
ある。TASS とはセンタ運用で使用するデータ管理、センター運用、トラフィック計画、及び政策決定で必要
であるデータ管理として使用できるようにするものである。
図表 6-42 TASS の概要
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7. 展 示 関 係
7.1 展示ホール概要
展示ホールの面積は 2.7 万㎡あるとのことで、全体の印象としてはパシフィコ横浜の展示ホール(2 万㎡)
を一周りゆったりさせたような会場であった。日本からの単独出展企業は約 10 社で、ほかに約 10 数団体と数
社が共同ブース(ジャパンパビリオン)での出展となり、全体では 30 社・団体と、一昔前に比べると出展ブ
ース数としては少なくなった印象があるが、逆に地元韓国企業が通訳を兼ねた美形のコンパニオンを採用し、
大きなスペースで展示し、会期の途中からは学生にも開放していたため、全体的には盛況という印象を受けた。
展示ホール正面入口
正面入口前のジャパンパビリオン
7.2 日本の団体・メーカー
(1) ジャパンパビリオン(日本館)
展示ホール中央入口正面に「ジャパンパビリオン」があり、ITS
Japan をはじめとして、長崎県(長崎 EV/ITS)、
国土交通省道路局(スマートスポット)、道路新産業開発機構、UTMS 協会、VICS センター、JAF メイト、三
菱電機、IHI、各高速道路会社などが共同で出展していた。
JAPAN パビリオン全景
ITS スポット
長崎県展示ブース
長崎 EVITS ジオラマ
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(2) アイシングループ(アイシン精機、アイシン AW)
アイシン精機・アイシン AW が共同で出展しており、複数のカ
メラ画像を合成し、真上からの自車両の周辺画像を見せる「車両
周辺監視システム」、停止線で安全に止まれるようアシストする
「ナビ協調ブレーキ制御」などを展示していた。
また、展示車両のシートに心拍や呼吸、姿勢などを検知するセ
ンサを埋め込み、居眠りの検知を行なおうという「ドライバモニ
タシステム」の提案が行われていた。ピエゾセンサをシートに埋め込み、座るだけで眠気や生理状態を計測で
きる。検知したデータはフィルタを通し車の振動などを除去し体の動きや、心拍、呼吸を抽出する。実際にシ
ートに座ってみても別段センサが入っている感覚はなくすわり心地はそのままであった。さらにこの日は寒く
厚着をしていたが、服を着ていても計測可能であった。今後このシステムを就寝時に利用し、ドライバ睡眠の
質を記録し運転中に利用する計画がある。
車内の様子
計測画面
センサ概要
システム概要
(3) 住友電気工業
車両用ハーネスなどの部品に加えて、交通情報収集・管理シス
テムを中心にした展示。車両からのプローブ情報が十分得られな
いリンク(道路区間)に関して、ニューラルネットワークを組ん
で、過去の情報や道路の相関関係から、推定の重み付けを変えて、
情報の不足を補完するとプローブ情報の処理についてユニークな
手法を紹介していた。
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(4) デンソー
デンソーは、ITS で築くユビキタス社会という今回の ITS 世界
会議のテーマを意識して、人とクルマと社会をつなぐというコン
セプトでの展示を行なっていた。コンビネーションメータの表示
を赤外線暗視画像などに切替えられるメーターや、ナビやオーデ
ィオ、エアコンなどの操作をドライバの手元で行うデバイス(リ
モートタッチコントローラー)など、表示・インタフェース系の
展示が多いという印象であったが、変わったものとしては、ステ
アリングの中央部に自分のスマートフォンを接続し、好みの色やデザインのメーターにカスタマイズするとい
うコクピットの提案があった。
また、ナビ関連では、ドライバの顔画像(目の開き)から眠気を検知し、眠気を感じていると判断した場合、
ナビ地図上に近隣のカフェを幾つかアイコン表示し、その中の一つを選択するとそこへのルート案内を行うサ
ービスや、路車間通信により前方の信号の状態を入手し、赤信号で停止することなく通過するための推奨速度
を車が計算しメーターに表示するサービスなどが紹介されていた。
リモートタッチコントローラ
多機能メータの表示
(5) 東芝
路側および車載カメラからの歩行者検知システムや車両後
退時の障害物警報システムなど、画像認識・処理技術の展示が
多かった。
路側器用の映像取得技術の活用例として、高速道路の進入口
を間違えた車両を素早く把握して、事故を防止する逆走検知シ
ステムや、料金収受の瞬間に車種を判別する画像処理技術も紹
介していた。車両のサイズを 5 段階まで認識し、サイズによっ
て徴収する料金を瞬時に判別するもので海外(アジア)の ETC 向けと思われる。
(6) トヨタ自動車
トヨタは、インフラ協調型の安全運転支援システムの展示として、昨年お台場で行なわれた大規模実証実験
で使用した車両(レクサス LS460)の展示や、プリクラッシュセーフティシステム(ドライバーモニター付ミ
リ波レーダー・ステレオカメラフュージョン方式)を中心とした安全運転支援システムを体験できるドライビ
ングシミュレータの展示を行なっていた。
また、太陽発電を導入したスマートホーム(トヨタホーム)とプラグインハイブリッドカー(プリウス)と
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管理センター(トヨタスマートセンター)を組み合わせたスマートグリッドのイメージを実物と模型を使った
パネルで紹介していた。
スマートグリッド展示
(7) パナソニック
パナソニックは、電気自動車社会の到来に対応して、電力ネッ
トワークを通信ネットワークとして使う PLC(パワーランコミュ
ニケーション)を EV/PHV まで広げたシステムの提案を行なって
いた。
また、各種のモニタ用カメラを展示していたが、ユニークな技
術として車室内の人物像を撮影するとき、ガラスの反射を防止す
る技術が展示されていた。
(8) 富士通グループ(富士通、富士通テン)
富士通と富士通テンが共同で出展していた。目を引いたのは、
世界初というふれこみの「マルチアングルビジョン」で、一見す
ると既に実用化されている駐車支援のために複数のカメラ映像を
真上から見た画像に合成する車両周辺監視システムのように見え
るのであるが、真上だけでなく、真後ろなど、どの角度からの映
像でも見られるというシステムのデモが行われていた。
これは、車体の前後および左右に取り付けた 4 つのカメラによ
り撮影した車両周辺の映像を高速処理して、車両と車両の周囲を立体的に合成した俯瞰映像を生成するもの。
マルチアングルビジョンデモ
視点切り替えデモ
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(9) ホンダ
ホンダは、「ECO / SAFETY / FUN」をテーマに、環境関連ではハイブリッドカー・インサイトとエコドライ
ブのシミュレータ、安全関係では車車間及び路車間通信を利用した「DSSS」や、先進安全自動車「ASV」の
安全運転支援システムの効果を体験できる 3 画面大型スクリーン搭載のドライビングシミュレータが展示され
ていた。トヨタもそうであったが、ドライビングシミュレータは黒山の人だかりであった。
黒山の人だかりとなっていたドライビング
シミュレータの展示
(10) 三菱重工業
シンガポールでのマルチレーンフリーフローの ETC や駐車
場管理システムなど日本以外のアジア諸国での ETC 展開を紹
介。また,CNSS/CN(Global Navigation Satllite System/Cellular
Network)システムによる交通需要管理システムを紹介してい
た。
7.3 韓国の団体・メーカー
(1) 韓国国土交通海洋省およびハイパス
ひときわ目を引くデコレーションと最大の出展面積を誇っていたのは、韓国の国土交通海洋省(MLTM)と
ハイパス(韓国版 ETC)のブースであった。
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(2) 現代・起亜自動車
日本以外の自動車メーカーとしては唯一現代自動車と傘下の起亜自動車が共同で出展していた。起亜の小型
車ベンガの EV(試作車?)が展示されているほかは、パネル中心で、地元の割には地味な印象であったが、
ITS 関係のパネルは、ガソリンスタンドをアクセスポイントにし、通信費がかからないブルーツースを使って
アクセスする「MOZEN
Autocare」というテレマティクスサービスが中心であった。サービスの詳細は不明で
あるが、車両の状態をモニタリングすることによる故障診断等のカーケアサービスやエコルート案内などが紹
介されていた。
テレマティクス関連展示パネル
MOZEN Autocare
Eco Route Service
(3) MYbi(マイビィ)
『MYbi(マイビィ)』とはロッテグループが展開している電子マネーである。バス・地下鉄・タクシーそし
て有料道路といった交通機関はもちろんのこと、日本と同様にコンビニ・自動販売機でも利用できる他、さら
に野球・映画といったエンタテイメント分野や大学での学食でも利用できる。
韓国の電子マネーは様々な形があり、ケータイのストラップとして持ち歩くというスタイルが普及している
ようだ。地下鉄や街を歩いていると MYbi をケータイに付けている人を良く見かけた。
会場で説明をしてくれた方に Suica を見せたところ「それはかわいくない、持ち歩くならこっちのほうがい
い」と色々な形状のストラップを紹介してくれた。Mybi はコンビニ等で気軽に購入できる。
大学の学食などでも使用できる
(チャージもできる)
色々な形状の MYbi
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v8. Technical V isits
8.1
Hnmjin New Port(有料テクニカルビジット 3)
テクニカルビジットとして Hnmjin New Port の見学に参加した。以下にその概要を紹介する。
釜山中心部から約 1 時間高速道路を走り釜山の西側にある釜山新港に到着した。ここは釜山を国際的な物流
ターミナル基地にすべく新たに建設されたもので、HANJIN の他幾つかの企業が専用の物流拠点を持っている。
HANJIN NEW PORT は HANJIN グループの HANJIN NEW PORT CO.,LTD(HJNC)(2007 年設立)によって運
営されており、2008 年 6 月に最初の設備が導入されたという、大変新しい港湾施設である。釜山新港と全体と
HANJIN NEW PORT の位置を示す。
HANJIN
NEW PORT
ターミナル
ロジスティックセンタ
HANJIN の施設は港の入口部分にあり船の出入りに便利であり、水深 18m の海は大型船の入港を可能にして
いる。その概要を以下の表にまとめる。
全長
面積
取り扱い量/日
一般的な貯蔵量
1.1km
696,300m2
68,800TEU(TEU:コンテナの単位)
57,200TEU
技術的な特徴は以下のようにまとめられる。
① 2 種類の大きさのコンテナを扱える 12 基の走査型自動クレーン(100 トン)を設置している。このため、
従来のターミナル操作より 30%の能率向上が図れた。
② 自動化された 42 基のガントリークレーンがレール上を動く。24 時間稼働であり、コンテナの滞留はおき
ない。このため平均のゲートでのトラック-ターン-タイムは 8 分となっている。
③ ガントリータイプのクレーン配置が埠頭に対して水平となっておりアクセスがし易い。
④ RFID を用いてリアルタイムなコンテナ位置をモニタしている。これによって荷扱いの効率が挙げられる。
港湾施設の概要を図に示す。
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施設のオートメーションのイメージを下図に示す。
見学コースにはオペレーションセンタも含まれてが、これだけの施設を 30 人程度(半分以上は女性?)が
コンピュータの画面とイヤホーンとマイクのヘッドセットで操作しているのが印象的であった。
8.2
スマートハイウェイにおける無線通信サービスデモ(有料テクニカルビジット 5)
テクニカルビジットの一つとして、韓国の国土交通海洋省(MLTM)が実施している「スマートハイウェイ」
プロジェクトの無線通信サービスデモ見学に参加した。
デモ用のバスに乗車すると、釜山と北部のウルサン間を結ぶ片道 2~3 車線の釜山・ウルサン高速道路に設
けられた約 10km のデモサイトで路車間通信(V2I)と車車間通信(V2V)の無線通信サービスのデモが行なわ
れた。
5.8GHz(IEEE802.11P)帯の無線通信を利用して、往路は時速 60km、復路は時速 100km で走行中に一連の
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サービスをバスのモニターを用いて 2 回ずつデモを行なった。無線通信サービスデモの内容としては、路車間
通信サービスとして、
1)インターネット接続 WEB 検索、
2)路上 CCTV ビデオカメラからのリアルタイム動画
映像受信(自分の車両が映る)、
また、車車間通信サービスとして、
3)前方車両からの事故発生情報受信(E-Call サービス)、
4)前方車両とのショートメッセージ交換(チャット)、
5)先行車両の ECU データ情報受信(速度、バッテリー状態等)、
の 5 つであるが、スマートハイウェイ全体としては、交通情報サービスや交通管理の高度化、自動料金収受
(ETC)などを加え、全部で 19 のサービスを展開するとしている。デモサイトでの一連のサービスデモのあ
と、往路の終点となる IC を降り、すぐ近くにある「ウルサン管理事務所」で高速道路モニター等の見学を行
なったあと、会議室で機器やアンテナの展示見学および質疑応答の時間が設けられた。
E-Call サービス
V2V ショートメッセージ交換
日本でも国土交通省(MLIT)が進める「スマートウェイ」で同
様のサービスが展開されつつあるので、特に目新しいものはない
が、日本ではないものとして、4)の V2V 前方車両とのショート
メッセージ交換は、バスの前方を走行する SUV 車両との間で、助
手席のスタッフ同士が端末で簡単なチャットを行っている画面を
バスのモニターで見せるというもので、
“今どこ?”とか、”これか
ら IC を降りる”とかいった簡単なチャットをデモして見せていた。
現時点ではキーボード入力のためあまり現実的ではないが、近い
車載機(スマートデバイス)
将来音声認識対応のスマートフォンでも出てくれば、V2V 通信も
ありえるかなと感じた。
韓国ではこのスマートハイウェイプロジェクトを 2007 年にスタートさせたということであるが、この ITS
世界会議でのデモ(2010 年 10 月)に間に合わせるよう、機器の開発やテストサイトの構築を行ない、今回の
デモが韓国初のイベントと宣伝していた。2014 年に実用化する計画であるとのことである。
8.3
会場周辺無料デモ
会期中会場周辺で、3 つの無料デモが行われた。デモ 1 は、バスツアーで、会場周辺に設置されたテストサ
イトを 1 時間位で回り 15 のサービスを体験。デモ 2 は、携帯端末を利用したバス交通情報提供サービスや視
覚障害者移動支援デモ等の体験、デモ 3 は、グリーンカー(EV、HEV)の試乗で、会場周辺に設けられた試
乗コースで、ホンダのハイブリッドカー(インサイト)と韓国メーカー3 社(現代、AD モーター、CT&T)の
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EV に約 10 分間試乗するというもの。
グリーンカー展示・試乗
マルチメディアポール(左側)
デモ 1 では、バスに乗車し,大型モニター等で以下の 6 つに層別した全部で 15 のサービスを体験した。
① 自動駐車(後述)
② IPTV 利用リアルタイム交通情報提供サービス(インターネットテレビやスマートフォンに対するリアル
タイム道路交通情報、バス情報、最速経路情報の提供)
③ DSRC 利用交通情報サービス(交通情報や事故情報等の提供)
④ 無線 LAN(WAVE)利用交通情報サービス(交差点カメラの動画映像や赤信号になるまでの時間情報等
の提供)
⑤ スマートフォン利用サービス(渋滞情報やバス到着時間情報等の提供)
⑥ マルチメディアディポールサービス(会場前広場に設置したディスプレイによる各種情提供)
交差点に設置された設備
赤信号時間情報
交差点カメラ動画映像
スマートフォンでの渋滞情報受信画像
自動駐車のデモは、デモツアーバスに乗車する前に駐車場で見学するというもので、無人の自動運転車が低
速で走行してきて、障害物を検知して一時停止したのちに再発進し、予め決めてある駐車エリアにバックで駐
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車するというデモストーリー。詳細は不明であるが、レーダーによる障害物検知と GPS ベースの自動走行・
自動駐車の技術のようであった。
自動駐車(車庫入れ)
自動運転(低速度)
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9. 韓国(釜山)交通事情
(1)
公共交通
地下鉄は 3 路線あるが、料金体系は近距離(約 80 円)か遠距離
(約 100 円)の 2 種類に統一されており、我が国の PASMO のよ
うに乗り物と買い物両方ができるチャージ式の電子マネーカード
(MYbi や T-money)での利用も可能である。全部ではないが自
動券売機の中には、日本語での音声案内対応機種もある。プラッ
トフォームでの路線・方面表示も、路線番号ごとに色別されてお
り、方面は英語併記、停車駅には番号がついているので、○色の○
号線で○番の駅で乗り換え、〇番の駅で降りるということで、ハ
自動券売機(日本語表示あり)
ングル文字が読めなくてもストレスなく移動可能である。車両内
での電光表示の停車駅案内もあり、車内放送は通常は韓国語であ
るが、乗換駅間際になると日本語を含む外国語での案内放送が行
われており、急速に国際化対応している印象である。
タクシーは、日本よりも基本料金が安く、我が国同様手を挙げ
れば停まるが、少し高いが言葉(日本語もしくは英語)が通じる
可能性の高い黒塗りの大型タクシー(模範タクシー)を利用した
方が安心である。
(2)
電子マネーチャージ機
一般道路
一般道路は、片道 2~数車線で、混雑の程度も朝夕はそれなりに渋滞があり、日本の地方都市と似ているが、
交通標識(道路標識、規制標識)が少なく、あってもほとんどがハングル文字なので、カーナビなしでのレン
タカーでの移動はあまりお勧めできない。
(3)
高速道路
高速道路は片道 2~3 車線で日本と同様であるが、ところどころ路面が荒れているところがあり、日本の方
-56-
が整備状況が良いという印象を受けた。料金所には、自動料金収受レーン(韓国では、hi-pass=ハイパス、と
言う)が設置されているが、通行台数から見るとまだ日本ほど普及していない様子であった。ハイパスレーン
の制限速度は 30km/h で、短めの停止バーがついているようであった。
(4)
自動車交通
平日の交通しか見ていないが、セダン系が大半で、日本で人
気のあるワンボックスタイプのミニバンはほとんど見ず、大型
のセダンと SUV を良く見かけた。真新しい日本車の販売店は
よく見かけるものの、走行車両の 9 割は韓国車であり、高級セ
ダンの一部でドイツ 3 社(ベンツ、BMW、アウディ)の車両
を見かけるが日本車はまず見ない。たまに見かける日本車もハ
イブリッド(プリウス)か SUV で、セダン系の日本車はまず
現代自動車の高級車
見ない。
日本では韓国車両はほとんど見ないが、近年その品質は飛躍的に向上してきており、ドイツ高級セダンと見
間違うような韓国車もある。米国での韓国車のシェア向上もうなずけるし、欧米との FTA 締結後の韓国車の
動向も気になるところである。
(5)
カーナビ・ETC
カーナビ・ETC とも後付けでダッシュボード上に置いている車両が多く、特にカーナビは街中で見かける車
の 3 分の1から半数近くについている。シリコンメモリータイプの PND(ポータブルナビ)がほとんどと思わ
れるが、欧米のように小型のものではなく、7インチ位のフルサイズのナビである。後日聞いた情報であるが、
PC とメモリーカードを使った地図更新が一般的になっているようで、この点に関しては実質的には我が国よ
り進んでいるようだ。IT 先進国の韓国だが、街中を走る車の中では、スマートフォン+クレードルの車は見か
けなかった。
韓国版 ETC(ハイパス)に関しては後付け ETC をダッシュボードに置いている車を時折見たが、ETC 車載
器が内蔵された PND もあるようなので、普及の程度は不明である。
(6)
時差・気候・言語
日本との時差は全くなく、気候も同程度であり、大きなホテルやレストランなら日本語を話せる人がいるこ
とも多いので気楽に旅行できるが、唯一やっかいなのはいかがわしい店と見間違うような暖色系の色彩のハン
グル標記のみの看板の店がほとんどの点。
(7)
市内の様子
郊外(釜山中心部から 1 時間弱の海雲台地区)にある会場
周辺の店の看板はほとんどがハングル文字しか書いてない
ので、覗いて見ないと何の店かわからないが、釜山中心部に
ある有名なチャガルチ市場付近にある再開発地区には東京
の銀座や表参道と見間違う位整備された綺麗なショッピン
(銀座のような)ショッピングストリート
グストリートがあり、英語標記のみの店が建ち並んでいる場所もあるのには驚く。
街を歩く人の服装は日本人と大して変わらないので、話しているのを聴かないと日本人と見分けがつかない。
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ほとんどの人が携帯を持っているようであるが、電車の中で携帯をいじっている人は日本ほどひどくはない。
(8)
買物
ロッテや新世界など、日本の大手デパート並みあるいはそれ
以上の大型デパートがいくつもある。デパートの中は英語の案
内があり、周りも東洋人ばかりなので、日本のデパートの中に
いるような錯覚がおきる。センターホールにある池の上が吹き
抜けになっているデパートでは、ラスベガスを真似てか音楽に
合わせて噴水が踊るショーをやっており、消費者の購買力が旺
デバ地下の回転寿司コーナー
盛であり、日本とは大分状況が違うことを感じさせる。食料品
売り場の一角に回転寿司があったのには驚いた。街中では、店舗のスケールが日本の半分程度のセブンイレブ
ンとファミリーマートが良く目に付くが、日本と同様の感覚で買い物できるのはうれしい。
(9)
食事
韓国といえば焼肉、釜山といえば海鮮料理と思うが、焼肉については豚肉専門店もあるので要注意。海鮮料
理ではいけすに入っている魚介類をその場で料理してくれる店が多いが、生きているたこの足を小さく切り、
動いている足をそのまま口に入れる「たこの踊り食い」が絶品である。また、韓国ではどのような料理におい
ても前菜として小さな小皿の野菜や漬物が 5~10 品出てくるのが通例らしく、それだけで結構お腹はふくれる。
以上
-58-
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