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BRMS でバックアップ時間を短縮
BRMS でバックアップ時間を短縮 1 BRMS とは IBM Backup, Recovery, and Media Services (BRMS)は、IBM i 製品で、保管および復元操作を計画し管理 するための戦略ソリューションです。BRMS ベース・プロダクトは、完全に自動化された、単一システム、バックアッ プ、リカバリー、およびバックアップ・メディア管理を実施するためにほとんどの IBM i ユーザーが必要とするすべての 機能を備えています。 BRMS を使用すると、IBM Domino サーバーのオンライン・バックアップを含む重要かつ複雑な保管操作を管理 できます。また、BRMS は最大 32 台のテープ装置を使用して、ライブラリーまたは単一オブジェクトの並列保管 操作をサポートし、これによって、複数装置の使用によるバックアップ・ウインドウを短縮できます。さらに、災害ま たは障害の際も、システムをフルリカバリーすることも、保管媒体から単一オブジェクトまたはライブラリーを復元で きます。BRMS は、バックアップ・ルーチンに関連した日次メインテナンス活動の一部を実行できます。 バックアップ運用は CL プログラムとジョブスケジューラーにて構築されているお客様が多く見受けられますが、 BRMS を活用したバックアップ環境の再構築もご検討ください。 2 BRMS によるバックアップ・ウインドウの短縮 今回は BRMS が持つ基本機能の一つである並行保管・並列保管について解説します。 通常 1 台の磁気テープ装置を使用する場合には、バックアップはすべて逐次保管されます。逐次保管では、ラ イブラリーなどのオブジェクトのバックアップを一度に 1 つずつ連続的に処理します。BRMS では複数の磁気テープ 装置を使用する場合には、並行保管と並列保管を行うことができます。並行保管および並列保管を使用する と、バックアップに要する時間の節減とバックアップ操作の簡素化がされる可能性があります。次にこれらの 2 つの タイプの保管操作について簡単に説明します。 並行保管操作では、複数のテープ装置に対する複数のバックアップジョブを送って同時に並行して処理し ます。 BRMS の英語マニュアルなどでは Concurrent Backup と記述されています。例えば、BRMS を使わないケースで も 2 台のテープ装置に 2 つの CL プログラムからなるバックアップジョブを同時に実行してバックアップ運用をするこ とができますが、それに近い保管操作となります。 並列保管操作では、1 つのジョブで複数のテープ装置にデータを保管します。 BRMS は、IBM i が提供する 2 つの方法を使用して並列サポートを実行します。1 つ目の方法、「並列保管/ 復元」(英語では Parallel-Parallel Save/Restore)サポートでは、各オブジェクトを複数のリソースに分散させます。 例えば 1 つの大きなライブラリーを複数のテープ装置にバックアップする場合に有効な方法となります。2 つ目の 方法、「複数ライブラリー並列」(Parallel-Serial Save/Restore)サポートは、ライブラリーを複数のリソースに分散 させるので、各ライブラリーが単一のリソースにバックアップされます。これらの方法を使用して、BRMS は、パフォー マンスを最適にし、リソースのバランスを取ることを試みます。2 番目の方法で保管されたオブジェクトでは、順次 復元動作が行われることになります。 3 BRMS の基本設定 BRMS ではバックアップで使用するテープ装置やそのメディアの保管期間、媒体密度などをポリシーという形で事 前に設定しておきます。基本的なポリシーとしては、使用する媒体を定義する媒体プール(媒体クラス)、媒体の 属性を定義する媒体ポリシー、そしてバックアップの実行単位として使われるバックアップ制御グループがあります。 これらの基本的な説明や使用方法は以前のインターネットセミナーでも解説しているので、こちらを参考にして 基本的な設定を行ってください。今回のテーマでは、これら基本設定を終えたとして、並列保管のため追加設 定を解説します。 インターネットセミナー 「BRMS を利用した保管運用の自動化のご紹介」 4 並行・並列保管のための追加設定 並行・並列保管のための追加設定は以下の 3 項目となります。画面例を交えて解説します。 BRMS の設定は基本設定資料の中でも使用していますが、System i ナビゲーターを使った GUI 操作、”GO BRMS”メニューを使ったメニュー操作、個々の CL コマンドによるコマンド操作の 3 種類が用意されています。 今回は基本設定資料に引き続き System i ナビゲーターを使った GUI 操作で実行します。 1. 「装置の管理」にてテープ装置追加 System i ナビゲーターで BRMS メニューを展開すると以下の画面が表示されます。 右下フレーム内の”装置の管理”を実行することで追加のテープ装置の管理が可能です。 装置の管理ウインドウがポップアップするので、並列保管用の複数台のテープ装置が認識されていない場合 は、”新規媒体装置”メニューを実行してテープ装置を追加してください。 2. 「ボリュームの追加」にてテープ装置のメディアを媒体プール(媒体クラス)に追加 追加・認識されたテープ装置のメディアを媒体プールに追加します。 “媒体”→”ボリューム”と展開し、右クリックメニューの中から追加を実行します。 メディアの追加操作は基本設定資料を参考にしてください。 3. 「バックアップ制御グループ」にて並列保管用のテープ装置の登録 並列保管用のバックアップ制御グループを新規作成し、並列保管用の複数台のテープ装置を設定します。 “バックアップ制御グループ”→”新規”を実行すると、新規バックアップ制御グループウインドウがポップアップするの で、基本設定資料を参考にして追加操作を実行してください。 追加操作の途中で、バックアップ時に使用する装置の指定画面が表示されます。並列保管にて使用する複 数台のテープ装置を追加します。 画面例では仮想テープ装置を 2 台指定していますが、GUI 操作の制約として仮想テープ装置は 1 台しか指 定できません。 2 台目の指定はメニュー操作で可能なため、”GO BRMS”メニューの中の” バックアップ制御グループ属性の変 更”にて 2 台目の仮想テープ装置の追加を行います。 ” バックアップ制御グループ属性の変更”画面は、”GO BRMS”トップメニューから、”2.バックアップ”→”1.バックアッ プ計画”→” 2.バックアップ制御グループの処理”にて表示される” バックアップ制御グループの処理”画面で、変 更すべきバックアップ制御グループの”オプション 8.属性の変更”にて 2 台目の仮想テープ装置の追加が可能で す。 追加操作を進めて、バックアップ制御グループを作成してから、右クリックメニューで表示される”プロパティー”を実 行します。 “対象”タブにてバックアップ制御グループの作成操作で指定したライブラリーを確認することが出来ます。そのライ ブラリーを選択して”編集”ボタンを実行します。 並列保管タイプ・パラメーターがあり、デフォルトは”BRMS に決定させる”となっています。これは BRMS が並列保 管すべきライブラリーやオブジェクトは並列保管操作にてバックアップし、並行保管操作にて 1 つのオブジェクトを 1 つのテープ装置に保管すべきライブラリーやオブジェクトを自動的に制御することを指します。 BRMS が自動的に並列保管や並行保管を制御しますが、一定の法則はあります。その法則は以下のとおりと なりますが、確実に並列保管にてバックアップ時間の短縮を行いたい巨大なライブラリーがある場合は、今回の 画面例のように単一のライブラリーを指定するようにし、総称名や特殊値は使わないようにします。もしくは並列 保管タイプ・パラメーターで” 保管アイテムの装置間の伝搬を許可”(並列保管を意味する)と指定します。 単一のオブジェクト :並列保管 単一のライブラリー :並列保管 複数のライブラリー :様々な要因を考慮して BRMS が自動制御 総称での複数ライブラリー(DEV*など) :並行保管 特殊値(*ALLUSR、*ALLPROD など) :並行保管 GUI 操作でバックアップ制御グループを作成した場合の注意点として、デフォルトで統合サーバーの終了と始動 が設定されていることです。統合サーバーは PC サーバーと IBM i との統合環境の事を指し、iSCSI にて System x や BladeCenter が IBM i のディスクを仮想ディスクとして使用するシステム構成です。 もし、統合サーバーの機能を BRMS の並列保管を予定しているサーバーで使用している場合、”実行前”と”実 行後”タブに”統合サーバーのシャットダウン”と”統合サーバーの始動”がデフォルトでチェックされているので、チェッ クを外します。 もちろん、バックアップ対象オブジェクトの中に統合サーバーの NWSSTG がある場合は、事前に Windows サー バーのシャットダウンは必要となるので、チェックはそのままにしておくことが推奨されます。 “場所”タブにて並列保管で使用するテープ装置やその台数の指定が確認できます。 今回の画面例では、2 台の仮想テープ装置に並列保管を行うので、並列デバイスの最小数パラメーターと並 列デバイスの最大数パラメーターで”2”と変更してください。 画面下部にある”使用可能な媒体への付加”から”使用可能なスクラッチ媒体の使用”にチェックを変更してくだ さい。これにより保管操作のたびに追記するのではなく使用可能な状態となっているメディアを検索して使う設 定となります。 以上で、基本設定資料以外に実施すべき並列保管用の設定が終了しました。基本設定資料を参考にスケ ジューラーに今回の並列保管ジョブを追加してください。 バックアップで使用するメディアが使用可能な状態にステータスを変えるには BRMS のメンテナンスジョブが 1 日 に 1 回実行されなければならないため、こちらも基本設定資料を参考にスケジューラーに追加してください。 5 バックアップログの確認 BRMS ではバックアップ処理のログや、バックアップされたオブジェクトのログを確認することが出来ます。 まずはバックアップ処理が正常に完了したかなどの操作ログを確認します。System i ナビゲーターの右下フレーム 内にある”BRMS ログの表示”を実行してください。 BRMS ログにて、並列保管処理が正常に完了していることと、仮想テープ 2 台の 2 本のメディアにほぼ同じブロ ック数で保管されていることが分かります。 System i ナビゲーターの右下フレーム内にある”保管ヒストリーの表示”を実行して、BRMS で保管されたオブジェ クトのログを確認することが出来ます。 今回の操作例では SEIPFR ライブラリーを並列保管にてバックアップをしていますが、こちらのヒストリーの保管画 面ではボリュームが 1 本しか表示されていません。該当のライブラリーを選択し、右クリックメニューから”ボリュー ム・セット”を実行すると SEIPFR ライブラリーが CTG05 と CTG06 の 2 本のメディアにまたがって保管されていること が確認出来ます。 保管ヒストリーの表示画面では該当のライブラリーを選択して復元操作なども行うことが可能です。 BRMS ではこのように保管したライブラリーやメディアの管理をしているため、テープライブラリーを使用した際の数 十本となるメディアの管理をツールに任せることが可能となるので、TS3100 や TS3200 などの LTO テープライブラ リーを使用する場合は BRMS でのバックアップ管理を検討してみてはいかがでしょうか。 6 並列保管のパフォーマンス例 並列保管は単一テープ装置でのバックアップと比較してバックアップ時間の短縮効果があります。もちろん、バッ クアップ処理はテープ装置の台数だけではなく、サーバーの CPU やメモリー、Disk も要因として含まれるので、全 てのケースで並列保管のパフォーマンスを発揮出来るわけではないです。 IBM サイトで公開している IBM i 7.1 Performance Capabilities Reference では並列保管のパフォーマンス検 証データが記載されています。それによると 320GB の単一ファイルが含まれるライブラリーを 2.1TB 用意して並列 保管すると 1 台で 363GB/時間であったのが 2 台で 641GB/時間と 176%のバックアップ短縮効果がありました。 この検証環境は 24 コア、128GB メモリー、679 個の Disk と、サーバー側にボトルネックとなる可能性がほとんど ないシステム構成なため同じ短縮効果が見込めるシステムは少ないかもしれませんが、多くのシステムで並列保 管によるバックアップ短縮効果が発揮されているため、十分検討していただく価値はあるかと思います。 IBM i 7.1 Performance Capabilities Reference - August 2013 (1.41MB) 7 参考情報 マニュアル BRMS V7R2 developerworks BRMS Redbook BRMS 2001 年版