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ツーバイフォー住宅の特性を生かして
ツーバイフォー住宅の特性を生かして 古田二郎 技術統括本部 商品開発グループ マネジャー 当社の提供するツーバイフォー住宅は、良質な社会資 れている期間は、炭素を固定し続けるので、住み続けら 本として、資源の有効活用の観点からも、環境への負荷 れている限りは、住まいが「炭素の貯蔵庫」として機能 ．が低く、「環境と共にある住まい」の基本条件を満たして する（図2）。当社のツーバイフォー工法は、木造在来工 いると自負している。 法より約2割、木材を多く使用し、そこに蓄えられる炭 そこで、理想的な「環境と共にある住まい」として、 素は75トン（45坪あたり）にもなる。 当社の考える次の4つの視点を紹介する。 森林の伐採が環境破壊と誤解されがちだが、当社が使 ①地球環境にやさしい木の住まい 用する大部分の木材は、世界最高レベルでの厳しい森林 ②次世代省エネルギー性能の標準化 管理が行われている、カナダのブリティッシュ・コロン ③耐久性の向上とメンテナンス体制 ビア州およびアルバー池州から調達している。ここでは、 ④地域環境と調和し、共生する住まい 政府主導の保続生産体制※’を基本として、州の主要な収 入源である林業の経営、貴重な原生林や生態系の保存、 1 環境にやさしい木の住まい 先住民族の生活圏の確保といった、森林が持つあらゆる 機能を十分に発揮するために、徹底した保護と管理が行 木材は生産・加工に要するエネルギーが、鉄やコンク われている。 リート等の住宅建材と比べると少なく（図1）、化石燃料 80∼100年かけて成長するカナダの木材を使用した住 の消費にともなう温室効果ガスの排出も少なくてすむ。 まいは、その樹齢と同じぐらいの歳月を、住み続けられ さらに植物は、光合成により地球温暖化の原因となる るのだ。 CO、（二酸化炭素）を吸収し、炭素として体内に固定す る。植物の体内に固定された炭素は、木材として使用さ 0 200 400 600 ※1：年間の伐採量を森林の年間成長量以下にすることで、森林の持つ あらゆる機能を発揮させながら、長期的に維持する管理体制。 鞭険二酸化炭素㊥酸囎麹 齢 データ出典：COFI（カナダ林産業審議会＞ GJ＝ギガジュール（1GJ＝1，000，000，000J） 図1住宅製造にかかる総合的なエネルギー消費量の比較 36 家とまちなみ51〈2005．3＞ 図2 炭素を蓄積するツーバイフォー住宅 ガラス：Low−E複層ガラス 難 ’・ 卜、“ ・而 齪’ 毒断藤棚営 誘 鋸畦 ．ゴーゴr． の涼しさや暖かさをキープします。 い断熱性能を発揮。 』颯 返し、冬は室内の暖 り ロユ ユ ミ ミ し 配 轟；一 D6… 夏は日射熱を跳ね ㎞講翻灘 講，雛 ．鎌羅 パネル」が優れた断熱性を発揮。室内 譲 ． 鑛 ド 謹購−・ 淫 、 屋根：6インチDSパネル 三井ホーム独自の「ダブルシールド かさを逃しません。 Q値※：優れた断熱性 ダブルシールドパネルは、 三井ホームオリジナル 高性能構造断熱パネ ルの名称です。＜商標 登録番号一4714089＞ 「、…一。、以華・塀「 外壁：BSウォール i 21・98 ■ ㌦」：」じ．∵．L 三井ホームが独自の外壁下地工法 有害なCO2の排出を削減し、豊かな地球環境を守ります （kg・D〆年） 800 600 400 三阿；：麟6。 躍 ︸ 時時 ⋮ 房房 ⋮ 曖冷 ﹁一⋮F 「BSウォール」が、建物の耐久性と 美しさを守ります。 l蜜蝋上 ロ 1琳一ム省姿難準強襲、 L＿＿墾」 ※Q値建物の断熱性能を示す数値 200一一日目334♂ 〇 三井ホーム次世代省エネ仕様 三井ホーム新省工ネ仕様 （DSパネル6インチ） （天井断熱） 一般の新省工ネ仕様 〔公庫仕様） ＊一部の地域・商品は仕様が異なります。 ＿＿＿」 図3三井ホームの次世代省エネルギー仕様 2 次世代省エネ基準を標準仕様に 3 メンテナンス対応 ツーバイフォー工法は、基本性能として高い断熱性と 1992年に当社が業界に先駆けて導入した「20年保証シ 気密性を誇っている。それに加えて当社では、より優れ ステム」は、その中間点になる10年目点検が本格化して た断熱性を有する「ダブルシールドパネル」を屋根に標 いる。すでに点検を実施した約10，000棟（04年12月末） 準搭載し、住まいの省エネルギー化を大きく前進させた。 の建物は、躯体の性能においては建築当時とほとんど変 さらに、2003年10月からは建物の構造材（木材）を長 わらず、当社のツーバイフォー住宅の優れた基本性能を 期にわたって健全に維持する「湿式外壁下地工法（BSウ 証明するかたちとなっている。 ォール工法）」を採用し、構造躯体の耐久性をより向上さ 標準仕様で住宅性能表示制度の最高等級である、75∼ せ、その他の性能向上と合わせて、国土交通省が定める 90年の耐久性を有している。加えて創立30周年の2004 「次世代省エネルギー基準」を上回る省エネルギー規格を 年10月置ら、60年点検システム「キープウェル」を開始し 標準仕様としている（図3）。 た。これは、適切な点検・診断とメンテナンスにより、より 当社の標準仕様の住宅は、冷暖房にかかるエネルギー 永く快適にお住まいいただくためのシステムであり、住む 消費を一般の新省エネルギー仕様住宅に比べ、約50％低 人はもちろん、地球環境へも配慮したシステムである。 減することができ、トータルのランニングコストを軽減 したうえで、より快適な住環境を実現している。標準仕 4環境・まちなみへの意識 様とすることで、次世代エネルギー仕様の採用率も高ま り、結果として2003年度は、前年度に比べてCO、排出量 を約540トン削減する効果があった。 ハードの面で環境共生を実現するのに加えて、「豊かな アメニティ」の提供が環境共生にとって大きな役割を担 うものと考えている。ここが機絨設備仕様だけに頼らな 家とまちなみ51＜20053＞ P37 5 微気候のコントロール 色彩計画 建物の高さ 白を基調にアースカラー（ガレージ 通りや近隣に面した部分は屋根の高 棟の外壁、木製ガレージドア、天然 さを低く抑え、街並みに対して圧迫 石の笠木、etG）で街並みにフィッ 感を与えないやさしいデザイン。 さらに環境を考えた暮らしを充実させるためには、よ トするあたたかみのあるデザイン。 りローコストで自然環；境に近い快適性を生み出すことも 考慮している。植物の働きを利用して、暮らしの中の温 抽 睡 廻回 皿 度や湿度を調整する「微気候のコントロール」も当社の 追求している手法である（図5）。 セ 植物は太陽の光をコントールして日向や日陰をつくり、 ド それによって室内温度を変化させることができる。また 1罫 自然な風の流れを演出することもできる。吹き降ろしの 山風を防ぎ、通りを抜ける風を敷地に呼び込むことも可 、 易 』副 ＼ 能である。これらによって室内環境は大きくコントロー ルされる。さらに植物は雨や露を保湿したり発散させた りすることで温度、湿度の調節も行っている。何より植 アプローチ 外構計画 プライバシーを確保しつつ、街とやさしく つながるために、塀は雁行さぜスリットと 木戸を設けました。 玄関ポーチは広めにゆったり、かつ通 りに対して開放的なデザイン。またベ 栽そのものの緑や風にそよぐ音が、人々に与える精神的 効果は計ることのできないメリットといえる。 ンチを設けて近隣との＝］ミュニケー ションも積極的に。 植栽計画 通りに対しても積極的に植栽を設け、 都会の街並みに潤いを与えました。 図4 三井ホームの提案する環境共生住宅 この「微気候のコントロール」という考え方は、当社 では環境デザイナーの正木覚先生より10年以上前からご 教授いただいていることで、現在でもその考えを生かし た設計作業を行っている。 機械を使った人工的な空気調節機能なくして、1年中 い部分であり、住宅メーカーの姿勢や対応力がもっとも を快適に暮らすことは容易ではない。しかし、植栽の配 発揮される部分であるかもしれない。 置や選び方によって、多少でも自然環境によって快適さ 当社では、「暮らし方からの家づくり」を掲げ、お客 が供給できれば、経済的にも精神的にも非常に有効な手 様一人ひとりのための、住まい方に応じた住宅を提案し 段である。 ている。暮らしの舞台となる地域やまち、通りや敷地、 優れたハードに加えて快適を演出するソフトの提案こ すなわち「環境」の特徴を読み、それを有意義に生かす そが、「環境と共にある住まい」であると考えている。 ことを大切に考えている（図4）。そのため、設計を担当 する建築家、営業担当者は、お客様の敷地を訪れ、その 土地の持つ特性を見出し、さまざまな角度からそれを設 計に生かそうとしている。 第一に、地域の自然や共通するデザインモチーフをプ ランに取り入れることなどで、地域環境との調和を図る こと検討する。第二に、敷地の前面道路の状況を観察し、 その景観の連続性を重視すると同時に将来のまちなみを （1）落葉樹は軒や庇とともに、夏の日差し を遮り、冬の陽を取り込む 意識した住まいづくりの提案をとくに心がけている。 続いて、建設予定地の敷地全体をどう利用するか。と くに通風や採光といった自然条件をいかに生かすか、ま た、プライバシーをコントロールしながら近隣とのコミ ュニティを形成していくことも重要なポイントと考えて いる。 38 勲・「 （2＞生垣や高木は風の方向をコントロール して建物へ当たる風を防いだり、呼び込ん だりする 図5植物による「微気候のコントロール」の考え方 家とまちなみ51〈2005．3＞ 注宅企業の 環境行動贋轡驚 ．． jr Xノ．”．…零げ闇．酬聯旧．’Vrノ…U叩．四rノ．…髪．避…．糺！．．．日．’）’．’．「．ノ…㌦ノ「ノい．凹．㌦．ノ．閣．’．’．「・．．ノ「…． 灘鰹熱闘） u 襲 至 剛1 ／l ζ 竣工＝1992年 lノ ﾜち、通り、敷地といったスケーノレ ／において・まちなみ（環境）を考えた ∼ ㌧誕＋を行うこと働域との朗な蘇を 保ち、自然を暮らしに取り込むことで 快適な暮らしが実現すると考える。か つて日本の住まいは、通りに面した低 い生垣と庭に開かれた縁側により、地 域に開かれた住まいが基本であった。と 5ζ5ヒ監ト⇒塗ヒ﹁一ζ ころが、近年は、狭い敷地を高い塀で 囲み、通りや隣家からの視線を遮るよ うな住宅が多くなった。また、日中は 留守宅が多く並ぶ通りも増えてしまっ た。その結果として、近隣との交流が 少なく、閉鎖的なコミュニティが増え た。また、通りからの視線を遮った玄 関や窓は、ピッキングや押破りのターゲ 践㌔一丸、﹄ギ彊㌔一ぐーメ㌦一押、、ーヂ擁、べ漁メ擁一ぐ，﹂ぐ一．︵、メ﹁擁描焦旨，バ隆，．ノ㍉一．コメ．・ 乱︶ CHERRY COURT SEIJO ｝『耀v▽▽vv…職徹禍乱ノ…ず▽マ㌣ 写真1シンボルツリーの枝垂れ桜を中心にゆとりある住環境を提供する三井ホームの賃貸住 宅（1992年竣工当時〉 ットとなり、防犯上も聞題を抱えてい る。 や花壇はそのひとつの手法であり、積極 的な「環境と共にある住まい」ではな これからは少子高齢社会を迎え、高 的に取り組んでいる。道ゆく人々に潤 いだろうか。 齢者が多くの時間を家で過ごすことにな い与え、その植物を育てる人だけでな 1992年に竣工した大規模な賃貸住宅 り、地域におけるコミュニティの重要性 く、地域の住民が豊かさを感じること プロジェクトでは、その土地の持ってい が見直されていくならば、かつてのよう ができれば、やがてその周囲にはそのよ る価値や存在感を破壊しないような設計 に地域に開かれた住まいが増えていくこ うな住まいが増えていくに違いない。快 提案を行い、良好な地域の環境を生み とは大切だろう。 適な住まいでありながら、豊かなアメニ 出すことができた（写真1、2、3）。 道路からのセットバック、低い生垣 ティの創造を予感させることこそ、理想 写真2竣工から12年の歳月を重ね、豊かに茂った樹木が、高級住 写真3前面の道路から後退したアプローチ部分は、休日ともなれば、 宅地に相応しい瀟洒な街並を演出している（2004年撮影） 小さな子供たちにとって格好の遊び場になっている L鳶A∫〕狐∼ヂ繍㌔ハ．漁。∫し翫汎一∼ハ＿凸繍㌦ん∫〕〕u一ゴ、．ハば一へ諾ゴL．A流諮』。△＿へ＿△＿ 家とまちなみ51〈2005．3＞ 39