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Keysight Technologies 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定
Keysight Technologies 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定/ 解析ソリューション Application Note Measurment Tips スナップショット Volume 11, Number 2 電気通信の小規模な企業が、大企業が参入していないニッチ・マーケッ はじめに データ・リカバリ用の安定したクリーンなクロック信号が必要なレ エラーのないデータ・リカバリを実現するには、データ・ス タ(クロックの立ち上がり/立ち下がりエッジのドリフト)に対する耐 トをターゲットにしました。このマーケットのニーズから、企業は、 シーバを開発しています。クロック・デザインで鍵となる仕様は、ジッ トリームとクロック信号のエッジとの関係が重要になります。 力です。データ・リカバリのビット・エラーの原因は、クロック信号 理想的には、リカバリを開始するクロック・エッジ(立ち上が 内のジッタに起因する無効エッジであると明らかにはなりましたが、 り/立ち下がり)は、データ・ビットの中心にある必要があり 限られた予算内での妥当な価格のジッタ測定/特性評価の手段が必要 ます。この関係を、 図1に示します。この記事で使用するクロッ でした。Keysight 53230Aのユニバーサル・カウンタを使用すること ク・エッジは、立ち下がりエッジです。 により、存在するジッタ・タイプの識別、振幅基準の確立、ジッタ・ レベル低減のためのデザイン変更の検証が可能になりました。 ジッタが原因で、クロック・エッジが、中心位置からドリフ トすると、ビット・エラーが発生します。 この測定のヒント では、Keysight 53230Aカウンタを使用して、ジッタの測定 /計算/解析方法を説明します。特に、以下について説明し ます。 – タイム・インターバル測定に対するカウンタの設定。 – 53230Aカウンタの統計処理機能を使用した、タイム・ インターバル測定に基づいたジッタの測定/計算。 – ジッタのタイプ/分布を表示するヒストグラムの作成。 測定器の演算/グラフィック機能は、統計/グラフィック解析のため のワンボックス・ソリューションを提供します。 02 | Keysight | 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定/解析ソリューション - Application Note タイム・インターバル用のカウンタ設定 レシーバ・デザインでは、5 MHzクロック(方形波)が組み込まれてい ます。ジッタ測定には、カウンタの設定を、単一クロック・パルス(1/2 クロック周期)の立ち上がり/立ち下がり間のタイム・インターバル 測定にします。図1と図2に、測定パラメータと設定を示します。 測定可能なジッタ 図2と等価なSCPIコマンドを以下に示します。 //既知の機器ステートから開始 *RST DISP:DIG:MASK 5 CONF:TINT (@1) SAMP:COUN 100E3 INP:COUP DC //DC結合を設定 INP:IMP 50 //インピーダンスを50Ωに設定 //開始/終了しきい値に対する 自動レベリングをオフ 100 ns クロック //10万回のサンプリング・カウント を設定(任意) INP:LEV:AUTO OFF 開始スロープ //単一チャネルのタイム・インター バル測定を設定 望ましいエッジの位置 ビット・ ストリーム //自動桁数モードをオフ、表示を 5桁に設定 0V 開始/終了レベル 終了スロープ 200 ns 図1:5 MHz信号のタイム・インターバル測定 INP:LEV1 0 //開始しきい値を0Vに設定 INP:LEV2 0 //終了しきい値を0Vに設定 INP:SLOP1 POS //立ち上がりエッジで開始 INP:SLOP2 NEG //立ち下がりエッジで終了 セットアップ AutoDigits: Digits Displayed: Coupling: Impedance: Function: Channels: Auto Level: Start/Stop Levels: Start Slope: Stop Slope: Off 5 DC 50 Time Interval single channel (1-1) Off 0V Pos Neg 測定のヒント 測定スループットの高速化には、自動選択(自動レベリング、 オートレンジ、自動桁数)ではなく、パラメータを測定の前に 評価し、パラメータ値を指定してください。 図4は、約1500回のタイム・インターバル測定の統計結果です。 図2:フロント・パネルによるタイム・インターバル測定の設定 1,526回の タイム・インターバル測定の平均値 カウンタ統計機能をオン タイム・インターバル測定をセットアップした後、カウンタの統計処 理機能をオンにします。測定カウントに使用可能な統計機能には、平 均値/最大値/最小値/標準偏差/ p-p値があります。統計機能をオ ンにするには、図3に示されているように、フロント・パネルから行 います。 図3:フロント・パネルから統計機能をオンに設定 ジッタ (ガウス分布) ジッタ (非ガウス分布) 図4:統計機能をオンにしたときの53230Aの表示 統計表示では、ジッタの2つの要素である標準偏差(StdDev)とピーク ツーピークが表示されています。ガウス分布であるランダム・ジッタ プログラムで統計機能をオンにする手順を以下に示します。 CALC:STAT ON //演算機能をオン CALC:AVER:STAT ON //統計機能をオン 測定が設定され統計機能がオンになった後、測定は以下のコマンドで 開始されます。 INIT //測定の開始 は、分布の標準偏差で定量化されます。デターミニステック・ジッタは、 非ガウス分布であり、p-p測定で表示されます。 03 | Keysight | 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定/解析ソリューション - Application Note 測定のヒント カウンタのデフォルト・トリガ・ソース(内部)により、カウン タは即座に測定を開始し、各機能がオンの場合は統計計算が行 図5と等価なSCPIコマンドを以下に示します。 CALC2:TRAN:HIST:POIN 100 //100ビンを指定 CALC2:TRAN:HIST:RANG:AUTO ON //ヒストグラムの レンジを自動選択 わ れ ま す。 フ ロ ン ト・ パ ネ ル のReset Statsを 押 す か、 CALCulate:AVERage:CLEarを送信することで、測定値カウン CALC2:TRAN:HIST:RANG:AUTO:COUN 1000 //最初の1,000個の トがリセットされ、次の内部トリガが受信されると新たに測定 読み値に基づいて /統計が開始されます。カウンタ設定のパラメータの変更や統 レンジを設定 計機能のオン/オフによっても、測定カウントがリセットされ、 測定/統計が新たに開始されることに注意してください。 //ヒストグラムを CALC2:TRAN:HIST:STAT ON オン 図6は、メイン・ヒストグラム・メニューおよび”zoom&markers”メニュー カウンタ・ヒストグラムを 使用したジッタ解析 を選択して、ヒストグラムを表示した例です。 X Max:全ビン中の最大タイム・インターバル測定 X Min:全ビン中の最小タイム・インターバル測定 Binサイズ: (X Max−X Min)/ビンの個数 53230Aの購入を決定した要因は、カウンタのトレンド・チャートと ジッタ分布 ヒストグラム機能でした。ヒストグラムを使用することで、分布状態 がわかり、ジッタがランダム(ガウス分布)か他のタイプかを評価でき ます。特性を知ることで、ジッタの原因の正確な特定に役立ちます。 最大エントリ数のビンに 一致 ユーザは、ビンの個数、ヒストグラムのレンジの下限/上限、数値デー タ表示を制御できます。ズーム、パン、マーカの制御により、個々の ビンまたは隣接ビン・グループを詳細に解析できます。ヒストグラム のデータは、リアルタイムで解析可能であり、後で解析するために内 部メモリ/外部USBメモリへの保存も可能です。 Mrk 1:マーカ位置のビン内の最大値 Mrk 2:マーカ位置のビン内の最大値 スパン:マーカ位置間の最大値の差 ヒストグラムの設定と実行 ヒストグラムは、通常、オンにする前のカウンタの設定が基準になり ます。重要となるのは、同じタイム・インターバル測定やスループッ トの最適化の際に発生するジッタの原因となる干渉(信号)の分布状態 です。前述の例の設定を仮定すると、図5に示すように、フロント・ ビン:マーカ位置およびビン内の 読み値カウント スパン:マーカ間のビンの個数 (マーカ位置を含む) 図6: デターミニステッ ク・ジッタの分散 のヒストグラム 表示 パネルからヒストグラムの設定を行ないます。 統計機能とヒストグラム機能は、同時にオンできますが、同期してい ません。オンされた時間やリセット/リスタートの有無により、各機 能は異なる測定になります。‘Digits’ /‘Graph’キーを押すと、数値(統 計)表示とグラフィック表示を切り替わります。表示を切り替えても、 機能はリセットされません。 Show: Numbers of bins: Auto-range: Number of Readings: *Outer Bins: ヒストグラムの設定 カウント (絶対値のビンの個数) 100 オン (ヒストグラムのレンジの下限/上限を自動設定) 1,000(最初の1,000個の読み値に基づいてレンジを設定) オン (ヒストグラムのレンジ外の分布を表示) *set from front panel only 図5:フロント・パネルからのヒストグラムの設定と実行 04 | Keysight | 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定/解析ソリューション - Application Note 測定のヒント 測定スループットの観点からは、自動パラメータ選択(自動レ ベリング、オートレンジ、自動桁数)は推奨されませんが、ヒ ストグラム・レンジの自動選択は時間の節約になる場合があり ます。自動レンジ設定は、各ヒストグラムに対して1回限りの 設定であり、初回の測定にのみ行われます。(初回の測定も分 布に含まれます。) 外側ビン(範囲外)に想定外の測定が現れる場合は、自動ヒスト グラム・レンジ選択に対する測定カウントを増加させることを 検討してください。サンプリング回数を増加させることで、正 確な分布が記録できます。最大1,000回までの測定を指定でき ます。 まとめ 53230Aの演算/グラフィック機能は、ランダム/デターミニステッ ク・ジッタなどの信号成分を測定/解析する機能を提供します。リア ルタイム/ポスト・プロセスでデータを解析するカウンタの能力が、 さまざまな測定機能と統合され、価格/性能に敏感なあらゆる規模の 企業の選択肢になります。豊富な機能のフロント・パネルとSCPIコマ ンド・セットにより、ベンチでの使用や、LAN、USB、オプションの GPIBインタフェース経由でのシステムへの統合に適した理想的なカウ ンタになっています。 Keysight 53200シリーズ 周波数カウンタの詳細をご覧ください www.keysight.co.jp/find/FrequencyCounters 05 | Keysight | 53230Aカウンタによる低価格のジッタ測定/解析ソリューション - Application Note myKeysight www.keysight.co.jp/find/mykeysight ご使用製品の管理に必要な情報を即座に手に入れることができます。 www.axiestandard.org AXIe(AdvancedTCA® Extensions for Instrumentation and Test)は、 AdvancedTCA®を汎用テストおよび半導体テスト向けに拡張したオープン規格 です。Keysightは、AXIeコンソーシアムの設立メンバです。 www.lxistandard.org LXIは、Webへのアクセスを可能にするイーサネットベースのテストシステム用 インタフェースです。Keysightは、LXIコンソーシアムの設立メンバです。 www.pxisa.org PXI(PCI eXtensions for Instrumentation)モジュラ測定システムは、PCベース の堅牢な高性能測定/自動化システムを実現します。 www.keysight.com/go/quality Keysight Technologies, Inc. DEKRA Certified ISO 9001:2008 Quality Management System 契約販売店 www.keysight.co.jp/find/channelpartners キーサイト契約販売店からもご購入頂けます。 お気軽にお問い合わせください。 キーサイト・テクノロジー合同会社 本社〒192-8550 東京都八王子市高倉町9-1 受付時間 9:00-18:00(土・日・祭日を除く) TEL 0120-421-345 (042-656-7832) FAX 0120-421-678 (042-656-7840) Email [email protected] www.keysight.co.jp © Keysight Technologies, 2011 - 2015 Published in Japan, October 21, 2015 5990-5648JAJP 0000-00DEP www.keysight.co.jp