Comments
Description
Transcript
1464KB
豆類基金 コーナー ドイツ豆類事情に関する調査の概要及び 「2006ニュー豆料理プロフェッショナル選手権」 について ㈶日本豆類基金協会 振興部長 齋 藤 章 Ⅰ ドイツ豆類事情に関する調査の概要 また、ライン川・モーゼル川沿いでは、ブ ㈶日本豆類基金協会では、第42期の海外 ドウ栽培が盛んである。 豆類事情調査団派遣事業を、平成18年7月 農 家 戸 数 は47万 戸、 平 均 経 営 面 積 は 15日から7月22日まで、今村団長(雑穀輸 36.3ha であるが、経営構造は、旧西ドイ 入協議会理事長)他7名により、ドイツを ツ地域と旧東ドイツ地域では大きく異なる。 対象として実施したので、その概要を報告 西ドイツ地域では小規模の自作農的家族経 します。 営が支配的で、兼業農家の比率も高く、階 層分化と規模拡大が進みつつあるが、平均 経営規模は29.1ha にとどまっている。一 1 ドイツ農業の概要 ドイツはEU最大の経済力を持つ工業国 方、旧東ドイツ地域では、旧東ドイツ時代 であるが、農業については、地勢上の条件 の農業生産協同組合(LPG)の解体・民営 等から中部・南部を中心として零細農家が 化に伴う個人経営の増加により、経営規模 多いため、英国、フランスと比べ競争力が は縮小しつつあるが、平均で203.0ha と依 弱い。 然として非常に大きい。 農用地面積は16,967千 ha(国土面積の 主要農産物は、豚肉・牛肉・牛乳を中心 48%)で、このうち、耕種作物が約7割、 とした畜産物で、総生産額の約6割を占め 永年草地が約3割を占める。南部や中部の ている。穀物では、大麦・ライ麦の生産量 高地、北部の海岸沿いの土壌・気候条件に の割合が比較的高いのが特徴となっている。 恵まれない地域においては、牧草・飼料作 このほか、てんさい、ホップの生産量も多い。 物を基礎とした酪農・肉用牛飼育が支配的 農業総生産額は年々増加してきているが、 である。一方、旧東ドイツ地域を中心とし 国内総生産額に占める割合は、1975年の た比較的平坦な地帯では、穀物・ばれい 2.5%から2001年の0.9%まで低下し、EU しょ・飼料作物と畜産の複合経営が多い。 諸国の中では最も低い水準となっている。 - 67 - 2 ドイツの豆類の生産・流通・消費事情 ⑴ 主な豆類の最近の作付面積 ⑵ 豆類生産の概要 の流通業者に販売されるが、東部ドイツの ドイツにおける豆類生産は、EU全体の 14%程度で、フランス、英国に次いで第3 大農家は卸業者ないし飼料産業に直接供給 している。 位であるが、その大部分が飼料用エンドウ 食用の乾燥豆はほぼ全量輸入品であり、 である。食用乾燥豆の商業栽培の比重は極 その大部分は素材としての利用であるが一 めて小さい。飼料用エンドウの最大の栽培 部に小売業への販売に適した包装豆の輸入 地域は、東部ドイツのザクセン・アンハル を行っている輸入・包装会社もある。 ト州、ザクセン州、テューリンゲン州であ 野菜としての豆類は、生鮮野菜マーケッ り、この3州の栽培面積はドイツ全体の トで販売されるか、保存食品加工業、冷凍 49%を占めている。ソラマメの主な栽培地 食品加工業で加工されている。 域はノルトライン・ヴェストファーレン州 ドイツの豆の年間の一人当たり消費量は であり、全国作付面積の17%を占めている。 0.7kg であり、我が国の半分程度と見られ、 レンズマメ、ヒヨコマメ、小豆などは不採 過去数年に比べ減少してきている。個人消 算性ゆえ、ほとんど栽培されていない。 費量の内訳は、エンドウが40%、レンズマ 野菜としての豆は、インゲン、ベニバナ インゲン、大粒種ソラマメ、エンドウ等で、 メが35%、インゲンマメが25%となってい る。 生鮮エンドウの栽培はザクセン州に集中し ており、大部分は加工用の契約栽培である。 小売店で販売されている豆の種類は、ウ ズラ系、キドニー系や白・緑色のインゲン マメ、黄・緑色のエンドウで、レンズマメ、 ⑶ 豆類流通・消費の概要 赤レンズマメ(皮なし)、ヒヨコマメ等で 飼料用豆は、通常協同組合又は農村地域 ある。 - 68 - 一般によく食べられている豆料理は、簡 レンズマメ、ヒヨコマメ、エンドウ、緑豆 単な家庭料理としてのスープかシチューが などのほか、米、麦を多種類販売していた。 主体である。最近は、簡単に調理できる缶 豆、米、麦ともに500g包装のもので品揃 詰や冷凍の豆を使う人が増えている。 えは多い。価格はスーパーマットよりやや 近年、国内では豆類、野菜、果物の栄養・ 高めであった。 機能性について関心が高まっており、米、 アラブ等の豆をよく使う外国料理が人気と ⑵ 油糧植物・タンパク質植物促進連盟 なっており、それに伴い豆料理が見直され 1990年に、ドイツ農業家連盟とドイツ植 ている。さらに、ベジタリアン(菜食主義 物栽培協会から成立した団体である。主な 者)、ベガン(動物性食品忌避者)、有機食 業務は、政治的ロビー活動、生産改善の 品愛好者等の間で豆料理が美味しくて、健 ためのコンサルタント、新たな販売先開 康的で、新感覚の味というイメージから全 拓、新商品の普及等に取り組んでいる。特 体的に消費が増えるきざしがあると言われ に、輪作上の豆作の経済的有利性について、 ている。 農家への啓発普及に力を入れて活動してい るが、収量不安定、低収益性、気候不適性、 3 主な訪問先の概要 家畜堆肥との競合、適用農薬が少ない等に ⑴ 量販店等における豆類販売状況 より、必ずしも豆の生産は拡大していない。 ベルリン市内の2店での豆類の販売状況 今後は、EUの砂糖制度改革、有機農業 を調査した。市内のスーパーマーケットで の進展、健康志向の高まり等から増産期待 は、レンズマメ、ヒヨコマメ、インゲンマ がある反面、バイオマスエネルギー利活用 メ類等各種の乾燥豆(500g 小袋)やそれ のさらなる高まり、豆作の収益性改善の困 らの水煮、調理済みの缶詰、瓶詰め、レト 難性等から横ばいないしは低減と見込む向 ルトパックなどのスープやシチューが販売 されており、これら加工食品の品揃えは非 常に豊富であった。また、140年前に兵士 の野戦食として作られたエンドウの粉を 固めたステイック状のインスタントスー プ(「エンドウのソーセージ」と呼ばれて いる。)が安くて、手軽な人気商品として、 今も販売されていた。 駅の構内にある自然食品販売店では、有 機栽培(Bio マーク付き)の小豆、キドニ ー系や白色のインゲンマメ、赤色・黒色の 写真:油糧植物・タンパク質植物促進連盟事務所で の説明状況 - 69 - きもあるとのことであった。 問題は依然として大きな課題とのことで あった。 ⑶ 中核経営体(中部ドイツ協同組合連盟 の一員)のほ場視察 ⑷ フロスタ社(冷凍野菜の製造会社) 中部ドイツ協同組合連盟は、旧東ドイツ 野菜の冷凍工場は、従業員は130人で、 時代の農業生産組合(LPG =集団農場)が 近隣の野菜栽培農家からグリンピースを買 解体され、新たに組織された協同組合の地 い付け、年間1万3千トンの冷凍グリン 域代表である。 ピースを製造している。グリンピースは収 ほ場視察に訪れた生産農場は、社員55名 穫後、直ちに工場に運ばれ、洗浄、ごみの を擁し、経営面積は2,200ha であり、搾乳 除去された後、96℃で20秒間ゆでられ、- 牛の飼育、冬小麦、大麦、冬ナタネ、エン 18℃で瞬間冷凍される。品質保持のため、 ドウ、インゲンマメ、紫キャベツ、ほうれ 収穫から冷凍まで2時間以内で処理されて んそうなどを生産している。豆類は野菜と いる。製品は、甘み、香りなどかなり高品 しての生産であり、その作付面積(2005年) 質なものであった。 は、エンドウ314ha、インゲンマメ63ha で ある。 グリンピースは近隣にある野菜の冷凍工 場であるフロスタ社と全量契約栽培で生産 しており、フロスタ社の冷凍グリンピース の40%以上を供給している。 近年、大規模機械の導入が進み、農業労 働力が過剰となり、失業率は20~25%にも なっている。グリーンツーリズムなどで「む らおこし」を積極的に行っているが、雇用 写真:グリーンピース・ハーベスター 写真:訪問した生産農場周辺のほ場 写真:グリーンピース栽培状況 - 70 - フロスタ社の存在は、LPG 崩壊後、自立 店、有機食品扱い店等の販売網を通じて販 を目指す農業者、農村にとって、雇用面、 売している。選別工場の選別ラインは、ダ 農産物の販売面で重要な位置を占めており、 ヴァート社が独自に考案・開発したもので、 地域農業の持続性、活性化に大きな役割を 選別精度は我が国と比べかなり見劣りする 果たしていることがうかがえた。 ものであった(異物混入許容値0.05%)。 ⑸ ダヴァート社(穀物等輸入・小分け包 ⑹ 野菜・果実・ジャガイモ加工工業連邦 装会社) 組合 ダヴァート社は、社員は75人、総販売高 野菜・果実・ジャガイモの加工業者約70 25億ユーロの有機栽培による穀物、豆類の 社が会員の連邦組合である。半数は小売店 輸入・小分け包装の有限会社である。 と業務用への販売の両方、半数は業務用専 取扱商品は、100%有機の穀物製品、油 糧種子、大豆、雑豆等である。豆類の商品は、 門の加工業者である。主な豆の加工品は、 冷凍豆、保存食、サラダ用などである。 小豆、種々のレンズ豆、エンドウ、ひよこ豆、 近年、エネルギーコストの値上がりなど 赤、白のキドニー豆などである。販売単位 で、業績は低迷しており、会員も年々減少 は、8×500g、25kg、2×2.5kg などの箱 してきている。今後は、有機食品等の需要 詰めである。原料の有機農産物はヨーロッ に期待をかけており、生き残り策として、 パを中心に、各国から輸入、夾雑物の除去、 専門化し業務を特徴あるものにするよう、 選別、小分け包装し、国内の自然健康食品 会員指導に当たっているとのことであった。 - 71 - Ⅱ「2006ニュー豆料理プロフェッショナル 品を募集し、それぞれ49作品、24作品、合 計 73作品の応募がありました。 選手権」について ㈶日本豆類基金協会では、豆類の消費拡 これらの応募作品については、書類審査 大対策の一環として、外食・中食産業にお により10作品まで絞り込んだ上、9月17日 いて、関係者の豆・豆料理に関する意識の (日)、女子栄養大学(駒込)において、応 高揚を図るとともに、豆料理提供機会の増 募者本人の調理実技による最終審査を行い 加を通じた豆の消費拡大を推進することな ました。なお、審査は、嶋村光夫フランス どを目的とし、平成15年から毎年、農林水 農事功労章受章者協会会長を始め料理界・ 産省の後援を得て、フードビジネスに携わ 豆類関係業界を代表する4名の方々にお願 るプロの料理人を対象とした本格的な豆料 いしました。 理コンテスト「ニュー豆料理プロフェッ ショナル選手権」を開催しています。 最終審査の結果、上位入賞作品は次のと おりで、いずれも外食・中食産業における 第4回目となる2006年の選手権では、 「豆 豆料理の新たな可能性を示すものでした。 料理部門」と「デザート部門」2部門で作 【豆料理部門】 【デザート部門】 ■グランプリ:「白インゲン豆と冬瓜の冷 ■グランプリ: 「フェーヴ フェーヴ フェー 製スープにそら豆のフランとレンズ豆の ヴ(トラ豆とココナツのグラニテ 、 あず ガレットを添えて」(浦和ロイヤルパイ きのスフレ、白いんげん豆の抹茶アイス ンズホテル 竹下公平氏)(カラー頁写 クリーム)」(ホテルグランヴィア大阪 真1参照) 渡部人美氏)(カラー頁写真2参照) ■準グランプリ:「4種類の豆の煮込みと ■準グランプリ:「白インゲンと大納言の フォアグラのテリーヌ ビーツ入りラビ カネロニドルチェ パッションフルー ゴットソース添え」(浦和ロイヤルパイ ツの泡ソース」(レストラン ポンヌフ ンズホテル 山田宏樹氏) 伊藤隆志氏) - 72 -