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こちら - 日本骨髄腫患者の会

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こちら - 日本骨髄腫患者の会
支持療法
IMFホットラインのコーディネーターがあなたの疑問にお答えします
IMF ホットライン800-452-CURE(2873)ではデビー・バーンズ、ポール・ヒューイット、ナンシ
ー・バクスターそして、ミッシー・クレペターが皆様のご質問にお答えします。
この電話は月曜日から金曜日、午前9時から午後4時(太平洋標準時刻)までご利用いただけ
ます。インターネットで質問をご希望の方は、[email protected] までメールしてください。
私はビタミンDのサプリメントについての記事を読んだことがあり、骨髄腫の患者として、ビタミ
ンD欠乏症が骨髄腫の病因となるかどうかについて関心があります。
ビタミンDは皮膚が日光の紫外線Bに曝露することで産生されるホルモンです。また、食物(ビ
タミンDを強化した乳製品、脂肪分の多い魚類、卵および肉)、経口サプリメントによって摂取
されます。ビタミンDはカルシウムの代謝および骨の健康に不可欠です。 2007年にArchives
of Internal Medicine誌、2009年にJournal of the American Geriatric Society誌で発表された研
究によると、ビタミンD量の多さと長寿に関係があります。
ビタミンD欠乏症のリスクのある人には、日光浴・食物摂取が不十分、重篤な肝臓疾患、腎障
害および、胃腸障害の1つとして吸収不良症候群が見られます。抗てんかん薬の一部には、
ビタミンD量を下げる作用があります。ビタミンDが十分な白人成人の割合は、2001∼2004年
で約30%減少したと疾患コントロールセンターが報告しています。同じ2001∼2004年で、ビタミ
ンD量が十分なアフリカ系米国人はわずか5%です。
ビタミンD欠乏症は最近の医学雑誌で多く記載されていて、大腸癌、乳癌および前立腺癌、血
管疾患、感染症、自己免疫疾患、骨粗鬆症、II型糖尿病、肥満および認知減退など多くの疾
患と関連があります。当然のことながら、ビタミンD欠乏症は、骨髄腫の予後および臨床所見
において重要な役割を果たしています
2009年3月のAmerican Journal of Hematology誌の「ビタミンD欠乏症の影響」と題された記事
において、メイヨー・クリニックのNg医師、Kumar医師、Rajkumar医師およびDrake医師が新た
に多発性骨髄腫であると診断され、診断日から14日以内にビタミンD量を検査した患者148例
について報告しました。医師らは、ISS(International Staging System)の病期分類の増悪とビ
タミンD欠乏症が並行することを見出しました。これはビタミンD欠乏症が多発性骨髄腫の予
後が不良となる可能性を警告する可能性を示唆しています。ビタミンD欠乏症は病期Iの患者
の16%、病期IIでは20%、病期IIIでは37%で認められています。
ビタミンD欠乏症の患者さんでは、全身性炎症のマーカーであるC反応性タンパク(CRP)およ
び腎不全のマーカーであるクレアチニン値が高いです。新しく骨髄腫であると診断された患者
さんでCRP値およびクレアチニン値が高い場合、転帰および生存期間が不良であると予測さ
れています。しかし、最初の仮定とは逆に、ビタミンD量の低さと診断時の骨の罹患率(溶解
性病変の増加、長骨骨折または椎骨圧迫骨折)が相関するとは示されていません。しかし、
この知見は、ビタミンD量の低さがその後の新しい骨病変の発現または診断後の骨疾患の進
行に何らかの影響がある可能性があります。
研究を確認し新たに骨髄腫であると診断された患者の疾患進行、全生存期間およびQOLに
おけるビタミンD欠乏症の影響をより深く評価するためには、さらに大規模な集団ベースの研
究の必要性を強調することによって、メイヨー・クリニックの著者らは、結論しています。
2010年8月にロサンゼルスで開催されたIMF患者・家族セミナーで、ロバート・カイル博士は、
骨髄腫の患者さんはいずれもカルシウムおよびビタミンD量を調べる必要があると述べました。
ビタミンDの臨床参考値は民族的背景、年齢、地理的状況および季節によって個人差が大き
いので、包括的な言い回ししかできません。メイヨー・クリニックのKennel医師らは次の推奨事
項を作成しています。
• 血漿25-OH-D値はビタミンDの体内貯蔵量の評価に有効です。
• 食物摂取だけではビタミンDを十分な摂取量を維持できません。
ビタミンDのサプリメントは安全であり、高価なものではありません。医学研究所のRevised
dietary reference intakes(改定・食事の参照摂取量)は更新中です。
• ビタミンD3の補充が一般に必要ですが、完全菜食主義者および菜食主義はビタミンD2の
吸収が優れています。
• 重度のビタミンD欠乏症患者さんは、ビタミンD50,000IUの 負荷量 の週1回経口摂取を2
∼3カ月継続または週3回摂取で1カ月継続することが必要です。軽度∼中等度の欠乏症
の場合、前述より短期間または低用量の摂取が有効です。
• ビタミンD療法の実施と関係なく、欠乏症の再発を予防するために、維持/予防として1日当
たり 800-2,000 IU のビタミンD摂取が必要です。
• ビタミンD3およびD2の吸収率を最大限に高めるために、脂肪を含む食物と共に摂取する
ことが必要です。
上記の推奨事項に加え、IMFのブライアン・デューリー博士は、特に再発時にビタミンDが十
分に充足し、吸収されているかを確実に検査するために、ビタミンD量の追跡調査が必要で
あると言及しています。 主治医の血液学者/腫瘍学者が、ビタミンD量の評価および維持に
疑問を感じるなら、患者さんの状況を評価し、骨疾患を診る内分泌専門医に紹介が必要であ
るとデューリー博士は強調しています。
治療期間中、骨髄腫の患者さんのMタンパク値および血球数だけでなく、ビタミンD量と密接
に関連する血清カルシウムおよび血清クレアチニン値の厳重なモニタリングを行う必要があ
ります。これらの検査は一般的代謝機能評価の一環として定期的に実施してください。米農
務省(USDA)の食事摂取基準では「副腎皮質ホルモン療法を受けている患者はさらにビタミ
ンDを必要とします」と記載されていることを心に留めておいてください。もちろん、副腎皮質ホ
ルモンとは、デキサメタゾン、プレドニゾンおよびメチルプレドニゾロンなど、骨髄腫治療でよく
使用される薬剤です。
骨髄腫患者におけるビタミンD量について、さらに研究するまで、患者さんのビタミンD量が
正常レベルに達すると転帰が良好となると仮定することはできません。しかし、既知のとおり、
ビタミンD欠乏症は診断時の進行病期と関連(予後不良の警告)していて、他の健康上の問
題にも関係があります。十分なビタミンD量を維持することは、したがって、骨髄腫治療の新し
い側面で重要です。
いつものことながら、これについて話し合ったり、すべての他の医療問題について、主治医と
徹底的に話し合ったり、IMFホットライン800-452-CURE (2873)にお電話していただきますよう
お願いいたします。十分なビタミンD量を維持することは、骨髄腫のケアの新しい側面として
重要です。
出典:「Myeloma Today」Winter 2010, Volume 8 Number 5: Page11
http://myeloma.org/pdfs/MT805_b5web_.pdf
翻訳者:吉村
監修者:日本の医師
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