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こちら - 日本骨髄腫患者の会

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こちら - 日本骨髄腫患者の会
補助治療
性的機能不全と多発性骨髄腫への影響
ティファニー・リチャーズ氏と Myeloma Today の対談にて
ティファニー・リチャーズ氏(MS, ANP-BC, AOCNP)
テキサス州ヒューストン
MD アンダーソンがんセンター
この10年間、対骨髄腫療法の進歩によって多発性骨髄腫患者の全生存率は向上しました。
新しい治療によって長期の無病期間に希望が持てるようになり、患者により良い結果が
もたらされています。より多くの骨髄腫患者が長く生存していることから、IMF看護師
リーダーシップ委員会(NLB)のメンバーらは、進化している骨髄腫生存者のニーズに
取り組んでいます。生存者のための診療計画によって,生じうる後期影響の最適な管理
および生活の質の向上が可能となります。現在公表に向けて準備中であるIMF看護師リ
ーダーシップ委員会による生存者のための診療計画では、患者と患者ともに働く看護師
の利益のための長期ケアの5つの特異的側面について調査しています。これら5つの領域
とは、健康維持、セクシュアリティー、性的機能不全、腎臓合併症(Myeloma Today2010
年春号を参照)、骨疾患および骨の健康(Myeloma Today2010年春号を参照)および機能的
運動性と安全性(Myeloma Today2010年夏号を参照)です。セクシュアリティーと性的機
能不全のタスクフォースリーダーであるティファニー・リチャーズ氏は彼女のチームの
仕事についてMyeloma Todayへ話してくれました。
性的機能不全の定義を教えてください。
WHO(世界保健機関)は、セクシュアリティーを「生涯を通じ人間らしくあるための根幹
であり、性、性同一性と役割、性的指向、性欲、性的な喜び、愛情的行為および生殖を含
む」と定義しています。セクシュアリティーは生物学的、心理的、社会的、経済的、政
治的、文化的、倫理的、法律的、歴史的および宗教的、精神的な要因による多くの相互
作用によって影響を受けます。
性的機能不全は、通常の加齢現象ではなくむしろ、性的反応のサイクルが身体的疾患ま
たは心理的要因によってうまく機能しないときに発生します。性的機能不全は4つのメ
インカテゴリのうちのひとつとして説明することができます。それらは性的欲求障害
(リビドーの減退)、性的刺激障害、オルガスム障害そして性的痛みです。
一般的に、疾病中における性的機能不全の原因とは何でしょうか。特に骨髄腫の場合の
原因は何でしょうか。
癌患者における性機能に関する文献レビューは主に前立腺癌、乳癌および婦人科系の癌
と診断された患者に限られています。多発性骨髄腫患者の性的機能不全に関する研究は
ほとんど行われていないため、性的機能不全の評価に関する情報はその他の癌や疾病の
場合から尐しずつ収集されています。私のIMF看護師リーダーシップ委員会タスクフォ
ースでは、骨髄腫患者の間での会話や評価実務の促進に取り組んでいます。
骨髄腫の治療を受けている患者は、治療の結果として元々あった障害が悪化したり、新
しい障害が発生する可能性があります。性的機能に影響を与えるおそれがある身体的障
害には、内分泌異常、心血管疾患、骨盤疾患、癌および腎機能不全が含まれます。さら
に、これらの疾患の治療(投薬治療、化学療法または放射線治療)またはこれらの疾患
に関連する合併症によって症状が悪化する可能性があります。性的機能不全への影響は、
機能不全の程度とタイプによってさまざまです。
骨髄腫患者では、治療によって例えば糖尿病、高血圧および貧血などの疾病が引き起こ
される可能性があります。さらに、骨髄腫は骨疾患または神経障害のために腎機能、運
動機能と痛みに影響を与える可能性があります。治療を受けている患者は、疲労、虚弱、
痛みおよび身体イメージ変化の結果として性的反応障害を経験するかもしれません。ま
た、圧迫骨折患者は痛みと運動機能の減退を経験し、性的機能が阻害されるかもしれま
せん。長期の麻酔薬使用が必要となる慢性痛は、勃起機能、ホルモン値および性欲に影
響を及ぼすおそれがあります。
心血管疾患(高血圧、アテローム硬化、血管疾患、脳血管イベント)は、性的機能不全
を含む全身的な影響があります。勃起障害(ED)の男性は心血管イベントの発生が増加
します。心血管疾患を有する女性における心血管イベントの危険性はわかっていません。
ステロイド治療を受けている骨髄腫患者は高血圧を発症する危険性が高いため、治療中
は血圧をしっかりモニタリングすることが必要です。
骨盤への放射線治療は骨盤内の血管および神経の損傷を通じて、性的刺激およびオルガ
スムが遅れる場合があります。女性は膣狭窄および線維症を発症し、性交痛や内診時の
痛みを引き起こすおそれがあります。
女性の骨髄腫患者への治療では、サリドマイド/レナリドマイドを使用することによっ
て避妊法が要求されるために性機能を損なう可能性があります。経口避妊薬によって性
欲減退を引き起こす場合があり、またテストステロン値が減尐し性機能に影響を及ぼす
可能性があります。
身体イメージ、鬱病、将来への心配、自暴自棄の問題、および薬物乱用歴は性的機能に
悪影響があります。治療の影響によって精神的健康が損なわれた結果、身体イメージへ
も影響を与えることが、ある癌患者の研究からわかりました。身体イメージに関連した
副作用は最も重篤な化学療法の副作用として報告されました。骨髄腫では、治療によっ
て一時的または永続的な変化がもたらされ、潜在的に身体イメージに影響を与えること
によってセクシュアリティーへも影響します。特にプライバシーが最小化されてしまう
支援を必要とする場合、医療提供者への依存は、精神の健康に影響をあたえる可能性が
あります。
骨髄腫とその治療がもたらす性的機能不全への影響はなんでしょうか。
癌患者の正常な性的機能と生殖機能の不全は従来の化学療法を受けている患者らによ
って記録されてきました。さらに自己由来幹細胞移植の前のメルファランによる高用量
治療は、より若い女性において化学的に誘導された閉経を引き起こします。ビンクリス
チンおよびシスプラチンは一時的または永久的に中枢神経系の一部を損傷し、勃起障害
と射精障害を引き起こします。
骨髄腫で現在使われている新しい治療法によって性的機能不全が発生しているという
事例証拠があります。ボルテゾミブとレナリドマイドを投与された患者の勃起障害およ
び性欲減退の報告は骨髄腫患者の治療者にとって一般的な経験となっています。サリド
マイドには勃起障害の記録された証拠があります。サリドマイドとレナリドマイドの使
用を制限することは、これらの薬剤が出生異常を引き起こすおそれがあるという知識に
よってもたらされる、心理的影響によるものかもしれません。
さらに、骨髄腫患者は性的活動の間に痛みをもたらす、またはリスクを生じる骨折が現
在発生しているか、またはそのような骨折が今にも発生しそうなのかを確定する骨検査
を必要とするかもしれません。
男性の性的機能不全の治療について教えて下さい。
経口薬によって最も一般的な男性の性問題である勃起障害が改善されることが示され
ました。しかし、現在硝酸塩治療を受けている患者において経口薬を使用することは絶
対に禁忌です。その他の勃起障害には、静脈内または経尿道注射、テストステロン補充
療法、真空勃起装置、外科手術または心理療法が含まれます。静脈内または経尿道注射
の使用は、骨髄腫およびその他ある種の疾患の患者にとって絶対に禁忌である点に注意
することが重要です。
女性の性的機能不全の治療について教えて下さい。
30%から50%の女性は悩みや対人関係の問題に原因がある性的問題を抱えていることが
研究によって示されました。最も一般的な女性の性的障害は性欲減退です。女性たちは
テストステロン補充療法によって性欲減退が改善され、精力と自分が健康であるという
感覚が増えたことを報告しました。しかしながら、テストステロンとその他の男性ホル
モン療法には潜在的なリスクと副作用があります。そのような治療法は、乳癌または子
宮癌の既往歴がある閉経後の女性、または心血管または肝臓疾患がある患者には適切で
はありません。
骨髄腫における生殖機能温存について教えてください。
化学療法と放射線治療は男性患者の30%から75%に不妊症を引き起こす可能性がありま
す。女性では化学療法と放射線治療の影響によって早発閉経が引き起こされ、その結果
生殖機能を失う可能性があります。現在、米国臨床腫瘍学会(ASCO)は、男性患者へは
精子凍結保存、女性患者へは胚の凍結保存を推奨しています。その他の選択肢も専門セ
ンターで提供されるかもしれません。生殖機能を温存することに興味がある患者は医療
提供者と話し合う必要があります。
締めくくりのコメントをお願い致します。
セクシュアリティーの問題について医師、看護婦と患者の間により良いコミュニケーシ
ョンが必要です。医療提供者へ自分の性的機能の変化を質問したり説明したりすること
に不安を感じないで下さい。婦人科医または泌尿器科専門医、または臨床心理士、有資
格のセックス・セラピスト、または結婚および家族セラピストを紹介してもらうことが
適切な場合があります。セクシュアリティーは全般的な健康にとって重要な一部分であ
り、自分のパートナーや医療提供者とのオープンなコミュニケーションがこの問題の根
本的な原因に対処するためには必要不可欠です。
出典:「Myeloma Today」Fall 2010, Volume 8 Number 4: Page10
http://myeloma.org/pdfs/MT804_b4web.pdf
【日本の顧問医師のコメント】
今回は骨髄腫患者における性的機能障害に関するインタビュー記事です。骨髄腫患者
は疾患自体や治療の影響により,様々な健康障害が生じますが,性的機能障害も重要な
合併症として認識されてきました。米国では専門的な医療従事者がこの問題について取
り組んでいますが,我が国においては十分な対策が講じられていないのが現状です。今
後このような専門的な医療者を育成することが求められています。
翻訳者:佐々木
監修者:日本の顧問医師
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