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環境省は携帯電話用アンテナの設置等の許可事務を中止し、 広く市民が

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環境省は携帯電話用アンテナの設置等の許可事務を中止し、 広く市民が
尾瀬の自然環境の保全index
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尾瀬の自然環境の保全
■意見書
Last Update 2002.2.14
「環境省は携帯電話用アンテナの設置等の許可事務を中止し、
広く市民が参加した公開の議論を通じてこの計画を再考すべき」
日光国立公園尾瀬特別保護地区における携帯電話アンテナ設置に対する意見書を提出
NACS-Jは2月14日、尾瀬において携帯電話用アンテナを設置し、尾瀬全域で
携帯電話を使用可能にする計画に関する意見書を環境大臣あてに提出し、環
境省記者クラブで記者発表を行いました。この意見書は「環境省は携帯電話
用アンテナの設置等の許可事務を中止し、広く市民が参加した公開の議論を
通じてこの計画を再考すべき」という内容のもので、その論拠として4つの問
題点を指摘しました。
都会の便利さを自然の中に持ち込むことの意味をあらためて考える事例で
す。
*この件についてのみなさんのご意見を、電子メールでお聞かせください。
シンポジウムや会報等の、今後の活動の参考にさせていただきます。お送り
いただくメールは、件名に「尾瀬と携帯電話」とお書きください。
メールの送り先はこちら
[email protected]
平成14年2月14日
環境大臣
大木
浩
殿
(財)日本自然保護協会
理事長
日光国立公園尾瀬特別保護地区における
携帯電話アンテナ設置に対する意見書
田畑
貞寿
当協会は、その前身である尾瀬保存期成同盟(1949-1950)の時代から、尾瀬の電源開発に
対する反対運動を展開し、日本自然保護協会(1951-)と改称してからも、尾瀬車道問題、排
水パイプライン敷設問題などに対し意見を述べてきました。
また尾瀬に関しては、保護委員会の下に尾瀬保護小委員会(1990-1994)を設置し、「尾瀬
の自然保護と利用のあり方-自然公園における新しい管理計画への提言」をまとめました。
さらに2000年には国立公園制度検討小委員会を設置し、「豊かな自然・深いふれあい・パー
トナーシップ~21世紀の国立公園のあり方を考える」をまとめ、国立公園を日本を代表する
生態系と生物多様性保全の場とするとともに、質の高い自然とのふれあいの場とすることを
提言しました。
さて現在尾瀬地区では、(株)NTTドコモが携帯電話用アンテナを設置し、尾瀬全域で携帯
電話を使用可能とする計画がすすめられています。山小屋関係者は、この計画を事故の救助
に役立つと評価し、また環境省北関東地区自然保護事務所は、既存の山小屋にアンテナを設
置、既存の電柱にケーブルを共架するのであれば景観破壊にならないため問題としない、と
の見解をとっていると聞きます。
しかしながら、当協会は日光国立公園の特別保護地区である尾瀬において、携帯電話が通
じるようになることについては、以下のような問題があると考えこの計画に反対の意見を表
明いたします。環境省はアンテナの設置、ケーブルの共架の許可事務を中止し、この問題に
関して広く市民が参加した公開の議論を通じて、この計画を再考することを求めます。
1、 国立公園特別保護地区である尾瀬の価値をそこないかねず、豊かな自然とのふれあいの
場の観点からはふさわしくない
環境庁が日光国立公園尾瀬特別保護地区を指定した際の理由には、「(略)尾瀬一帯は雄
大極まりない原始景観とともに世界にもその比を見ない規模と質を有する貴重な高層湿原で
あり、学術研究、自然研究将又国立公園利用上からも重要であり、今後、一切の人為的改変
を加えることなく保護すべき地区である」と述べられています。
しかしながら、これまで環境庁は利用者の増加に対して、新しい木道の敷設、合併浄化槽
トイレの設置、排水パイプラインの敷設など、技術的に利便性を高めることによって、貴重
な湿原の保護と過剰利用とを両立させようとする道を選択してきました。その結果、登山者
としてふさわしい装備を持たない観光客も「快適」に過ごすことができる環境が作られてい
ます。事故増加の原因は、登山者の高齢化のみならず、原生的な自然を訪れる装備と心構え
のない観光客を誘引した施設整備計画にもあるといわざるを得ません。
また環境省は環境基本計画において、国立公園を国民の豊かな自然とのふれあいの場と位
置づけていますが、豊かな自然とのふれあいとは決して都会的な利便性を保った上でのこと
ではなく、都会的な環境では経験することのできない雄大な景観や野生生物とのふれあいの
場とすることを指しています。また景観とは、視覚的景観のみならず、鳥のさえずりや川の
せせらぎなどの音の景観(サウンドスケープ)を含む五感を総合したもの(景相ともよばれ
る)であり、携帯電話の着信音や会話音が聞こえる環境を、豊かな自然あるいは豊かな自然
とふれあう体験と表現することはできません。
さらに今年1月29日に環境大臣の諮問に対して中央環境審議会が回答した「自然公園のあり
方に関する答申」の中でも、「原生的な自然の地域は、より深い自然とのふれあいと体験が
得られる場として貴重であり、一定のルールとコントロールの下で持続的な利用を図ること
が有効であると考えられる」と明確に述べられています。
このたびの携帯電話用アンテナ及びケーブルの設置は、視覚的な景観破壊にはつながらな
いものであったとしても、都会の便利さを尾瀬に持ち込むことによって、尾瀬の原生的価値
をそこなうことにつながることは明らかです。
2、 環境省は携帯電話使用のマナーを呼びかけるというが、マナーの呼びかけで尾瀬の静け
さが守られる保証はない
この計画に対して環境省は、携帯電話使用のマナーを呼びかけることで対処する方針であ
ると聞きます。しかしながら、携帯電話のマナーに関しても、山小屋関係者と自然保護関係
者では見解が異なり、山小屋関係者は小屋の中での使用自粛を求めているのに対して、尾瀬
の静けさを求める自然保護関係者は山小屋の外での使用禁止を求めています。環境省はこれ
らの意見をもとに、緊急時のみの使用に限定するよう自粛を求めるとのことですが、このよ
うなマナーが果たして守られるでしょうか。
都会の中でさえ、あれだけ列車内における携帯電話の使用自粛が呼びかけられているにも
かかわらず、マナーを守らない人は少なくありません。比較的マナーが守られているのは、
コンサート会場など観客が料金を支払って音楽を聞きに来ているため、他の観客の非難を浴
びないようにせざるをえない場合のみでしょう。
尾瀬の自然は、都会の劇場ではありませんが、風がふきわたり、川がせせらぎ、野鳥がさ
えずる、いわば自然の劇場です。そのような意識を持った人なら、尾瀬に入った時点で携帯
電話のスイッチを切ることができるでしょうが、果たして尾瀬を訪れる40万人以上の登山者
の何割がそういう意識を持っているでしょうか。単にマナーモードにするだけならば、職場
や友人からかかってきた電話に出ないという人は少ないでしょう。
今年の秋から尾瀬でも携帯電話が使えるというPRがある一方で、尾瀬に入った時点で携帯
電話のスイッチを切らせることができるのか。環境省はもう一度その困難さを考え直すべき
です。
3、 山小屋は事故の救助に役立つというが、他の山岳国立公園では緊急を要しない救助要請
を増やす結果となっている
尾瀬で携帯電話が使えるようにしたいという理由の一つに、事故発生時の救助要請が迅速
になり救助活動に役立つということがあげられています。しかしながら、すでに携帯電話が
通じるようになった他の山岳国立公園では電話が通じるという安心感から、原生自然に身を
おいているという登山者の心構えが薄れ、緊急を要しない救助要請を増やす結果となってい
ます。従来であれば、道に迷った登山者は自力で登山道をさがし出し下山していたものが、
道がわからなくなった時点で安易に携帯電話を使って救助要請を行うようになります。この
ような救助要請にこたえなければならないとするならば、むしろ本当に緊急を要する事故に
対応することが困難となりかねません。
携帯電話があれば助かったかも知れない事例として、残雪期に道に迷い遭難した例があげ
られていますが、このような時期の尾瀬にまで都会の便利さを持ち込むことは、むしろ遭難
の増加を招きます。冬季や残雪期の尾瀬は携帯電話などなくても山を歩ける登山者に限定さ
れるよう誘導すべきです。
なおこのたびの携帯電話用アンテナ設置は、NTTが無線公衆電話の製造を中止することがき
っかけとなったと聞いていますが、公衆電話が必要なのであれば、衛星通信を利用した公衆
電話も実用化されており、携帯電話用アンテナ設置以外の代替案も比較検討すべきです。
4、 環境省は自然公園法改正を機会に、自然公園における保護と利用のあり方に関する計画
を、広く市民が参加した開かれた論議によって決めるよう改めるべきである
今回の問題は、単に携帯電話施設設置の是非という小さな問題にとどまらず、尾瀬をはじめ
とする日本の国立公園の保護と利用に関する典型例です。
日本の国立公園は、米国の国立公園とは異なり、さまざまな土地利用が行われている地域を
土地所有とは無関係に指定する地域制の国立公園です。この制度の下で、尾瀬沼や尾瀬ヶ原
の高層湿原など生態的に脆弱な地域を守るため、特別保護地区が指定されました。
一方で環境庁は、尾瀬を訪れる人が増え問題が発生するたびに、利害関係者内のみの論議に
よって対症療法的対策をとり、根本的な問題解決に代えてきました。今回の尾瀬の携帯電話問
題も、環境省の自然保護事務所が携帯電話の導入による影響に関して、利害関係者の意見のみ
を聞いて認可したために生じた問題であると考えられます。
環境省は、これまでの保護と利用のあり方に関する計画策定のプロセスを大幅に改め、利用
主体である市民が広く参加した開かれた議論の中で取り決めていくように改めるべきです。自
然公園法の改正が予定されている本年は、このような計画策定のプロセスを改める絶好の機会
であり、法改正と同時に実現するよう求めます。
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