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清酒の貯蔵熟成について

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清酒の貯蔵熟成について
清酒の貯蔵熟成について
元関東信越国税局 鑑定官室長
衣
山
陽
三
いる。しかしながら,一流のレストラ
1.はじめに
ンになると,何故あれほどピンからキ
5年程前に家族連れで多少あらた
リまでストックしておく必要があるの
まったレストランで食事をすることに
かと不思議に思うこともある。しか
なった。テーブルについて,うやうや
し,元々品揃えと云うのは客の要望か
しく出されたワインのメニューの中か
ら生まれてきたものなのだから,一消
ら懐具合とも相談しながら,赤ワイン
費者にすぎない我々はそれぞれの商品
を一本注文した。
に歴史を感じ,それぞれの風味の奥深
オードブルも出て来て,やや経った
さに想像をめぐらすべきなのかもしれ
頃注文したワインはきれいなガラス製
ない。しかしながら,ダイアモンドほ
のデカンターの中身となってテーブルに現れた。多
どの価値のあるワインであっても,貯蔵中の管理一
分,若いソムリエが慌てて滓を濾して出したものと
つで石ころほどの価値のものになってしまうことは
想像される。つまり,一流と思われるレストランで
恐ろしいことである。
さえワインの貯蔵管理というのは難しいものだとい
うことをつくづくと教えられた。
2.ワインの貯蔵熟成について
以前から,ワインの製成酒は,樽による貯蔵から
冒頭に申し上げたのは,最もポピュラーな,パス
はじまって,瓶詰め後の貯蔵管理まで,慎重に取り
ツリゼーション(低温熱殺菌)といわれる加熱処理
扱われて,はじめてその本領が発揮されるという認
をしていないスチルワインの話である。勿論品質の
識を持っていた。しかしながら,そういう管理を任
劣化を招くような温度で貯蔵することはタブーであ
された従業員の立場に立てば,温度調節のきいた貯
る。一般的には,冒頭に申し上げたように,低めの
蔵庫に入り,いちいち壜の栓を開けてそれぞれの風
温度でじっくり時間をかけて熟成が図られている。
味の変化を確かめるわけにもいかないし,経験と感
一方,同じぶどうを原料にした醸造酒でも,醪の
性が求められる大変な職業なのだと認識させられ
発酵途中の,まだぶどうの甘さが十分に残っている
る。
うちにアルコール分の高いブランデーを添加して保
通常レストランの食卓では,開栓されたばかりの
存性を高めた,いわゆるフォーティファイドワイン
いちげん
壜のワインを,一見の客か馴染みの客かの差別はな
といわれる「マデイラ」では,4
0∼5
0℃位の温度で
く,その宴の席主と思われるものに先ず味見させる
3ヶ月くらい熟成を進め,更に何年も何十年も貯蔵
のが習わしになっているようである。一見,合理的
したものの方が,より好ましい方向に品質が変化し
な感じもするが,押しつけがましいような気がしな
ていると聞いていた。毎年3月に千葉県の幕張メッ
いでもない。
セで行われるフーデックスでたまたま味みをさせて
ワインは,元々原料としてのぶどうの種類も多
もらう機会があり,多少納得することが出来た。す
く,産地も広域で,その生まれ育ちが重要視されて
なわち,両者の熟成のメカニズムは,同じぶどうが
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