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荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析(荒川断層を活
安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 荒川断層を活断層として 神永 敏幸* 八ッ繁 公一** 久田 嘉章*** Earthquake Motion Creation by the Arakawa Fault and Response Analysis of Research Center Building Arakawa fault to be an active fault by Toshiyuki KAMINAGA, Koichi YATUSHIGE and Yoshiaki HISADA Abstract After Niigata-ken Chuetu earthquake damage in 2004, buildings with seismic isolation and vibration control structures aiming at BCP is increasing. In our company, a seismic isolation building is built in the research center, and the validity and safety of its method of construction are checked from the result of seismic observation. However, the generation of a number of earthquakes in its neighborhood is expected. The seismic waves that made the Arakawa fault, are presumed to be located near the research center, to be an active fault this time is created by Hisada's method. Response analysis of the seismic isolation building was conducted and its safety was examined. 要 旨 2004 年新潟県中越地震被害をきっかけに,BCP を目的とした免震・制震構造の建物が増加傾向 にある。当社では,埼玉県内所在の技術研究所建設に際し免震構法を開発し,非免震(在来構 法)棟及び免震棟を並列して建設し現在まで地震観測を継続して行い,免震構法の有効性及び 安全性を確認してきた。しかし,埼玉県内及びその近辺で発生が予想されている大地震は少な くない。今回,研究所近傍に位置すると推定されていた荒川断層を活断層とした地震波を久田 の方法により作成し,研究所免震棟の応答解析を行いその安全性を検討したので報告する。 キーワード:荒川断層/波数積分法/統計的震源モデル法/ハイブリッド法/時刻歴応答解析 1.はじめに BCPを目的とした免震・制震構造の建物が増加傾向 近年,1995年兵庫県南部地震以後,甚大な災害 にある。 を生じさせる大きな地震が各地に発生している。例 当社においては,耐震建物として1990年に免震構 えば,2003年十勝沖地震,2004年新潟県中越地震, 法の技術開発を行い,技術研究所(埼玉県ふじみ野 2005年福岡県西方沖地震,2007年能登半島地震,新 市)建設に際しほぼ構造規模の等しい在来構法棟及 潟県中越沖地震,今年には岩手・宮城内陸地震およ び免震棟(3F建て)を並列して建設し,現在まで び岩手県沿岸北部地震等が発生し人的な被害,建物 地震観測を継続し行ってきた。また,観測データ解 への被害等大きな災害をもたらした。特に2004年新 析による免震効果の確認を行い,BCP活動に対する 潟県中越地震では,半導体製造工場の被害により約 有効性を確認している。 1400億円もの赤字を出すメーカーがあった。このよ しかし,埼玉県内及びその近辺で発生が予想さ うな状況がきっかけとなり,わが国でもBCP(事業 れる大地震は少なくない。今回,当技術研究所近傍 継続計画),危機管理に取り組む民間企業が増加し, に位置する荒川断層を活断層として用い,地震動の * 技術研究所振動・基礎研究室 ***工学院大学建築学科 ** 技術研究所所長 35 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 表1 作成および技術研究所建屋の時刻歴応答解析を行い, 深度 (m) 0.00 ~ 4.35 4.35 ~ 8.05 8.05 ~ 10.25 10.25 ~ 17.00 17.00 ~ 19.10 19.10 ~ 21.95 21.95 ~ 23.25 23.25 ~ 24.55 24.55 ~ 29.05 29.05 ~ 39.00 39.00 ~ 43.50 43.50 ~ 47.00 47.00 ~ 50.50 応答値及び安全性を検討したので,ここにその結果 を報告する。 2.想定地震動 2.1 地盤モデルの設定 地震波は震源断層で発生し地盤を伝播して地表 に到達するが,到達地震動の大きさは伝播してくる 地盤状況によって違いが出てくる。S波速度が3km/s 程度以上を地震基盤と,S波速度が0.7km/s程度以上 PS 検層結果 層厚 S波速度 P波速度 湿潤密度 ポアソン比 ヤング率 剛性率 2 2 (m) Vs(km/s) Vp(km/s) ρ(g/cm3) νd Ed(kN/cm ) Gd(kN/cm ) 4.35 0.17 1.37 1.30 0.492 11.2 3.8 3.70 0.59 1.83 1.90 0.425 100.3 66.1 2.20 0.16 1.47 1.80 0.494 13.8 4.6 6.75 0.59 1.58 2.15 0.419 212.4 74.8 2.10 0.50 1.32 2.15 0.416 152.2 53.8 2.85 0.38 1.49 1.85 0.465 78.3 26.7 1.30 0.61 1.88 2.25 0.441 241.3 83.7 1.30 0.32 1.44 1.85 0.474 55.9 18.9 4.50 0.72 1.96 2.20 0.442 328.9 114.1 9.95 0.62 1.90 2.20 0.440 243.6 84.6 4.50 0.76 1.93 2.20 0.408 357.8 127.1 3.50 0.76 1.93 2.25 0.408 366.0 130.0 3.50 0.65 1.85 2.20 0.430 265.8 93.0 (km) を工学的基盤とする。また,地震基盤より工学的基 0 1 2 3 4 5 6 7 8 盤までの地盤を深部地盤モデル,工学的基盤よりも 浅い地盤を浅部地盤モデルとして地盤のモデル化を おこなう。 a. 浅部地盤モデル 解析検討地において実施したPS検層の結果を表1 に示す。地表からGL‐50.50mまでPS検層をおこな 1LAY 2LAY 3LAY 4LAY 5LAY 6LAY 7LAY 8LAY 9LAY 10LAY 0 1 2 3 4 S-wave velocity(km/s) っ て い る 。 モ デ ル 化 は , 10.25m ~ 19.10m お よ び Model:松岡・白岡2002_FJ1 24.55m~50.50mを各一つの層にまとめ,また他の FJ1(赤線:チューニング後のS波速度構造) 層はそのままとして地盤モデル化を行った。Q値は 図1 文献[3]による Vs 値 既往の文献[1]を参考に,Q値≒Vs/15として求めた。 地盤モデルを表2に示す。工学的基盤面の深度は, 新河岸川 0.0 荒川 彩湖 2.25km/s 値は,文献[2]で得られた観測波解析による表層地 盤の卓越周期とほぼ同じ値となる。 b. 深部地盤モデル 2.90km/s 2.0 3.0 3.60km/s 5.10km/s 4.0 深部地盤は,文献[3],[4]を参考にモデル化をお こなった。図1に文献[3]で示されているS波速度を, 5.0 図2 図2に文献[4]で示されているP波速度を示す。地震 36 ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ ~ 4.35 8.05 10.25 19.10 21.95 23.25 24.55 50 100 250 1200 2600 3500 8400 12000 26000 60000 2.0 3.10km/s 地盤モデル S波速度 Vs(km/s) P波速度 Vp(km/s) 湿潤密度 ρ(g/cm3) Qs値 Qp値 4.35 3.70 2.20 8.85 2.85 1.30 1.30 25.45 50 150 950 1400 900 4900 3600 14000 34000 0.17 0.59 0.16 0.55 0.38 0.61 0.32 0.70 0.75 0.82 0.90 1.50 2.94 3.20 3.40 3.70 4.50 1.37 1.83 1.47 1.45 1.49 1.88 1.44 1.91 2.00 2.05 2.13 2.93 3.60 5.10 5.90 6.40 8.00 1.30 1.90 1.80 2.15 1.85 2.25 1.85 2.21 2.30 2.30 2.40 2.50 2.50 2.63 2.70 2.80 2.90 11 39 11 36 25 41 21 47 50 55 60 100 196 213 250 300 300 23 79 21 73 51 81 43 94 100 109 120 200 391 427 500 600 600 備考 P S 検 層 結 果 工学的基盤 推 地震基盤 4.0 5.0 文献[4]による Vp 値 層厚 (m) 3.0 定 Depth in km Depth in km ると,Tg=0.299秒(3.34Hz)程度と推定される。この 0.00 4.35 8.05 10.25 19.10 21.95 23.25 24.55 50 100 250 1200 2600 3500 8400 12000 26000 1.0 2.79km/s を基盤と仮定した場合の地盤卓越周期Tgを計算す ① ② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮ ⑯ ⑰ 0.0 2.00km/s 1.0 た。ここで,GL‐24.55m以深に分布する所沢礫層 深度 (m) 新大宮バ イパス 1.88km/s PS検層結果よりVsを考慮してGL‐24.55mに設定し 表2 Depth(m) H(m) VEL(m/s) 280 500 280 900 900 1180 1400 1500 2580 5792 3200 8372 12537 3530 20909 14702 3940 35611 2898 2900 38510 4959 4000 43468 156532 4700 200000 4700 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 基盤面はS波速度をVs=3.0km/s以上とし,出現深度 をGL‐3500mに設定した。また,上部マントルか ら地震基盤までの構造は,文献[5]を参考に表2のよ うに設定した。 2.2 震源モデルの設定 ◎ a. 建屋周辺の活断層 埼玉県及び近隣に分布する断層位置は,図3に示 すような状況となっている。また,国の中央防災会 議及び地震調査研究推進本部より発生が予想されて いる地震を基に埼玉県が防災上想定している地震は, ◎は技術研究所位置 図3 埼玉県の断層位置図 (文献[3]より引用加筆) 図4に示すように,活断層では立川断層帯による地 震,深谷断層による地震,綾瀬川断層による地震が, プレート境界では東京湾北部地震及び茨城県南西部 地震が挙げられている。この中には,当技術研究所 から最も近くに位置する荒川断層による地震は, 2004年に地震調査研究推進本部から活断層ではない と評価されたため考慮されていない。 しかし,2004年中央防災会議「首都直下地震対 策専門調査会」地震ワーキンググループ第12回報告 書[6]に応急対策の対象とする地震としてさいたま 市直下地震が含まれている。そこで,荒川断層も活 断層ではないと評価されているが,今回の検討は, 図4 埼玉県想定地震の断層位置図 (文献[3]より引用) 最も近くに位置すると推定された荒川断層を活断層 として地震動を作成することにした。 139゜40’ 139゜30’ b. 震源モデルの作成 荒川断層の概略位置は,図3に示されているが, 図5に詳細位置を示す。この断層は,大宮台地の南 西縁を流れる荒川に沿って大宮台地の段丘面を相対 的に10-15m隆起させる長さ20kmの伏在活断層と 36゜00’ 川島町 されてきた。以下に震源パラメータ設定の概要を示 川越市 す。 荒川断層 (1)マグニチュードについて さいたま市 断層の長さが与えられるため,(1)式に示す松田 35゜50’ の式を用いて気象庁マグニチュード(Mjma)を決定 朝霞市 した。 log L = 0.6Mjma − 2.9 …… (1) 点線が荒川断層 図5 モーメントマグニチュード(Mw)は,(2)式に示す 戸田市 荒川断層位置図 (文献[4]より引用加筆) 気象庁マグニチュード(Mjma)との関係式を用いて 断層全体での平均的応力降下量(⊿σ)は3Mpaと 換算した。 し,平均すべり量(D)は(3)式に示す地震モーメン Mw = 0.879Mjma + 0.536 …… (2) トの定義式より算定した。 37 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 M 0 = μDS …… (3) μ = ρV アスペリティ面積は断層面積の約20%程度とし, 断層の中央に配置した。 ここで,S:断層面積,μ:剛性率 2 S ①アスペリティの配置 ,ρ:密度,Vs:S波速度 ②アスペリティの地震モーメント,すべり量,応力 パラメータ (2)微視的なパラメータの設定 アスペリティの平均すべり量は断層全体の平均す 表3 荒川断層地震パラメータ 荒川断層のパラメータリスト 備 考 数値 地震断層全体 緯度 (゜ ) 35.830 経度 (゜ ) 139.649 (X,Y,Z)=(0,0,5000):資料より 上端深さ d(km) 5.0 断層位置 長さ L(km) 20.0 資料より 幅 W(km) 11.4 S=WL 走行角 θ(゜ ) 321 資料より 傾斜角 δ(゜ ) 45 資料より(北東下がり) すべり角 λ(゜ ) 90 マグニチュード M 7.0 logL=0.6M-2.9 地震モーメント Mo(Nm) 1.37E+19 logMo=1.5Mw+16.1(金森) (dyn・cm=10-7Nm) モーメントマグニチュード Mw 6.7 Mw=0.879M+0.536 マクロ的パラメータ 2 断層面積 228 logS=1/2logMo-10.71 → S=100.5*logMo-10.71 S(km ) S波速度 Vs(km/s) 3.5 地殻内平均値 3 平均密度 2.8 地殻内平均値 ρ(g/cm ) 剛性率 μ(N/m2) 3.4E+10 μ=ρVs2 平均的な応力降下量 ⊿σ(Mpa) 3 平均的な値 (bar=0.1Mpa) 平均すべり量 D(m) 1.5 Mo=μDS → D=Mo/μS 破壊伝播速度 Vr(km/s) 2.5 Vr=0.72Vs 2 要素断層の大きさ 1.95 (km ) 全体 100 10×10 要素断層の数 アスペリティ 24 Sの24% 背景領域 76 Sの76% C (km) 8.0 Fmax (Hz) 6 fc (Hz) 0.115 fc=4.9×106Vs(⊿σ/Mo)1/3 2 短周期レベルA 7.13E+18 A=Mo×(4.9×106Vs(⊿σ/Mo)1/3×2π)2 (Nm/s ) アスペリティ等内部パラメータ 2 アスペリティの総面積 55 Sa=0.24S Sa(km ) アスペリティ内の平均すべり量 Da(m) 3.02 Da=2.01D アスペリティでの総モーメント Moa(Nm) 5.66E+18 Moa=μDaSa 要素断層の平均モーメント (Nm) 2.36E+17 アスペリティの総応力降下量 ⊿σa(Mpa) 12.5 ⊿σa=⊿σ×S/Sa fc (Hz) 0.223 fc=4.9×106Vs(⊿σa/Moa)1/3 2 短周期レベル 1.11E+19 A=Moa×(4.9×106Vs(⊿σa/Moa)1/3×2π)2 (Nm/s ) 背景領域 2 背景領域総面積 173 Sb=S-Sa Sb(km ) 地震モーメント Mob(Nm) 8.01E+18 Mob=Mo-Moa 要素断層の平均モーメント (Nm) 1.05E+17 平均すべり量 Db(m) 1.35 Mob=μDbSb → Db=Mob/μSb 背景領域の総応力降下量 2.5 ⊿σb=0.2⊿σa ⊿σb(Mpa) fc (Hz) 0.1163 fc=4.9×106Vs(⊿σb/Mob)1/3 2 短周期レベル 4.28E+18 A=Mob×(4.9×106Vs(⊿σb/Mob)1/3×2π)2 (Nm/s ) 38 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 ★ ★ ★ ● ★:破壊開始点(震源) ●:技術研究所位置 図6 荒川断層による震源モデル (文献[4]より引用加筆) べり量の2倍程度とし,総モーメントは(1)と同じ 地震断層のパラメータ設定、断層分割 方法で求めた。 ③背景領域でのパラメータ 長周期地震動の作成 波数積分法(Hisada, 2005) 短周期地震動の作成 統計的震源モデル法(Hisada, 2008) 波数積分法による地震動の作成 (観測地点の加速度波形、速度波形) 統計的グリーン関数法と同様に、はじめに 小地震(要素地震)を断層面上で計算(理 論グリーン関数法を用いる) (観測地点の加速度波形、速度波形) 背景領域の地震モーメントは,全体の地震モーメ ントとアスペリティの総モーメントとの差とな る。すべり量は地震モーメントと面積から算定 し,応力パラメータはアスペリティにおける値 の20%とした。 ④破壊開始点と破壊伝播速度 スケーリング則を用いて大地震に合成 (観測地点の加速度波形、速度波形) ローパスフィルター (周波数領域) 破壊開始点は,アスペリティの外側に設定し断層 ハイパスフィルター (周波数領域) 時間領域での足し合わせ (観測地点の加速度波形、速度波形) 下部より開始する点を選択した。 図7 ⑤fmax ハイブリッド法の計算フロー fmaxは6Hzとした。 フィルタ関数 以上の仮定により算定した断層モデルのパラメ 低振動数(長周期)成分 ータリストを表3に示す。また,図6に震源モデルを 高振動数(短周期)成分 示す。 1 3.地震動の作成 3.1 作成手法 0 地震波の作成は,図7に示すハイブリッド法を用 いて行う。ハイブリッド法は,長周期地震波を理論 図8 f1 f2 低振動数、高振動数それぞれのフィルタ関数 的な手法である波数積分法(Hisada,2003)[8]を用いて 作成し,短周期地震波を統計的グリーン関数法を改 Boreの点震源モデルを使用し,位相スペクトルは低 良した手法である統計的震源モデル法(Hisada,2008) 振動数のコヒーレント位相から高振動数のランダム [9]により作成し,その両波形に図8に示すフィルタ 位相に変化するハイブリッド位相スペクトルを用い, をかけ,時間領域で重ねあわせる手法である。波形 これをω2モデルに従うように断層面に分布させる。 は,各方法によって観測地点における波形を作成し また,放射特性も低振動数での理論値から高振動数 合成した。 での等方値に変化するモデルを用いている。さらに 統計的震源モデル法は,まず振幅スペクトルに グリーン関数はS波の遠方近似解ではなく,長周期 39 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 2.5 North θ=321° 座標原点● East W=11.4km L=20.0km ●破壊開始点 velocity(m/sec) ●観測点 △1 △2 △3 △4 △5 △total 2 1.5 1 0.5 0 0.0 δ=45°●断層基準点 0.2 0.4 図 10 図9 0.6 0.8 1.0 time)sec) 1.2 1.4 1.6 すべり速度関数 断層モデル 表4 も短周期も全て平行成層を仮定し,波数積分法で厳 密な波動場を計算する。そのため,作成された観測 地点の波は,水平2方向,上下方向の3成分(3波) が得られる。図9に断層モデルを示す。 3.2 地震動作成 地震波は,工学院大学建築学科久田研究室公開 プログラム(http://kouzou.cc.kogakuin.ac.jp/)を用いて 作成した。プログラムでは,前項で述べた手法を用 い波形作成を行うが,プログラム中で用いたいくつ かの解析パラメータについて以下に説明する。 (1)ランダムな時間遅れ(dtr) 各小断層の破壊開始時間は破壊開始点からの距離 に完全に比例するように設定すると,破壊の伝播仮 定が単調となり,その影響で計算される地震動に現 実的でない卓越周期が発生し,または現実の地震動 の複雑さが再現できないことがある。そこで,各小 断層の破壊開始時間にランダムな時間遅れを設定す ることにより,破壊の伝播仮定が複雑になり,計算 される地震動もより現実的になる。このランダムな 時間遅れをdtr(sec)と設定している。本解析では断 層面全体でのdtrの平均値を0.8秒とした。 (2)すべり速度関数 各地震波の加速度及び速度最大値 地震波名 方向 データ数 NS EW UD NS wave2 EW UD NS wave3 EW UD NS wave4 EW UD NS wave5 EW UD NS wave6 EW UD NS wave7 EW UD NS wave8 EW UD NS wave9 EW UD NS wave10 EW UD wave1 2048 2048 2048 2048 2048 2048 2048 2048 2048 2048 時間刻み 最大加速度 (sec) (cm/s2) 318 0.02 305 290 217 0.02 360 272 488 0.02 317 351 313 0.02 306 247 282 0.02 290 303 318 0.02 324 274 266 0.02 246 315 292 0.02 351 328 309 0.02 276 264 291 0.02 373 296 最大速度 (cm/s) 26.2 34.8 29.5 15.4 34.7 17.4 29.5 30.1 25.2 26.9 26.6 21.2 29.6 25.7 28.5 34.5 28.3 20.2 20.0 22.9 21.5 27.8 37.8 24.1 20.4 30.5 25.9 22.9 26.9 21.9 には振動数1Hz付近で選択している。本解析では図8 長周期の計算に用いるすべり速度関数は三角形 に示す接続点をf1=0.8,f2=1.2としてロウパスフィ の重ね合わせで与え,図10に示すような形状とした。 ルタの振動数およびハイパスフィルタの振動数を設 この場合の面積比は,1:0.5:0.5:0.5:0.25となる。従 定した。 って,各断層要素の全体すべり量は各三角形面積の (4)その他のパラメータ 割合で分割された値となる。 (3)短周期成分と長周期成分の接続点 短周期成分と長周期成分の接続点はそれぞれの波 各小断層に設定することができるガウス点数は1 点~最大6点となっているが,計算時間を考慮して4 点と設定した。 形を計算し,フィルタをかける前のそれぞれのフー 以上のパラメータ等を用いて地震波を作成する。 リエスペクトルが,できるだけ接続点付近で極端な 実際の模擬地震波作成には各パラメータ値を変更し, 違いが無く,不自然でないような接続点を,基本的 100波程度作成した波の加速度応答スペクトル,速 40 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 3.3 模擬地震動波 度応答スペクトルおよびエネルギースペクトル等を 算定し,その特性と解析建物の特性を勘案し解析波 作成した地震波の最大値をまとめて表4示す。加 を選択する方法が行われる。今回,作成する波は10 速度の最大値は,NS方向488cm/s2(wave3),EW方向 波とし,各作成データ中のランダム数を変えて行っ 373cm/s2 (wave10),UD方向351cm/s2(wave3)となっ ている。 ている。また速度の最大値はNS方34.5cm/s(wave6), EW方向37.8cm/s(wave8),UD方向29.5cm/s(wave1)と Velocity Response Spectrum (O.P=5,NS Direction) Acceleration Response Spectrum (O.P=5,NS Direction) 1400 1Psv 80 1Psa 2Psv 2Psa 1200 70 3Psa 6Psa 7Psa 800 8Psa 9Psa 600 10Psa avPsa 400 Velocity(cm/sec) 2 Acceleration(cm/sec ) 60 5Psa 1000 3Psv 4Psv 4Psa 5Psv 6Psv 50 7Psv 8Psv 40 9Psv 10Psv 30 avPsv 20 avPsa+σ avPsv+σ avPsa-σ 200 avPsv-σ 10 avPsa+2σ avPsv+2σ avPsa-2σ 0 0.01 0.1 1 10 Period(sec) avPsv-2σ 0 avPsa+3σ 0.01 avPsa-3σ 0.1 1 10 Velocity Response Spectrum (O.P=5,EW Direction) Acceleration Response Spectrum (O.P=5,EW Direction) 1800 1Psv 80 1Psa 2Psv 2Psa 1600 4Psv 4Psa 1400 60 1200 6Psa 7Psa 1000 8Psa 9Psa 800 10Psa 600 avPsa Velocity(cm/sec) 5Psa 2 Acceleration(cm/sec ) 3Psv 70 3Psa 400 5Psv 6Psv 50 7Psv 8Psv 40 9Psv 10Psv 30 avPsv 20 avPsa+σ avPsv+σ avPsv-σ avPsa-σ 200 10 avPsa+2σ avPsa-2σ 0 0.01 0.1 1 10 avPsv+2σ avPsv-2σ 0 avPsa+3σ 0.01 0.1 avPsa-3σ Period(sec) 1Psa 3Psa 1Psv 2Psv 3Psv 70 4Psa 4Psv 60 5Psa 1000 5Psv 7Psa 800 8Psa 9Psa 600 10Psa avPsa 400 avPsa+σ Velocity(cm/s) 6Psa 6Psv 50 7Psv 8Psv 40 9Psv 10Psv 30 avPsv 20 avPsv+σ avPsa-σ 200 avPsa+2σ avPsv-σ 10 avPsv+2σ avPsa-2σ 0 0.1 1 Period(sec) 図 11 加速度応答スペクトル avPsv+3σ avPsv-3σ 80 2Psa 1200 2 10 Velocity Response Spectrum (O.P=5,UD Direction) 1400 Acceleration(cm/sec ) 1 Period(sec) Acceleration Response Spectrum (O.P=5,UD Direction) 0.01 avPsv+3σ avPsv-3σ Period(sec) 10 avPsa+3σ avPsa-3σ avPsv-2σ 0 0.01 0.1 1 Period(sec) 図 12 10 avPsv+3σ avPsv-3σ 速度応答スペクトル 41 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 なっている。次に全ての作成波について図11,図12 Energy Spectrum Ve10 (O.P=5,NS Direction) 1Ve10 100 2Ve10 90 3Ve10 Psuedo Velocity(cm/sec) 80 4Ve10 5Ve10 70 6Ve10 60 7Ve10 50 8Ve10 にh=0.05の時の加速度応答スペクトル,速度応答ス ペクトルとその平均値を,図13にh=0.10の時のエネ ルギースペクトルとその平均値を示す。計算は,固 有周期0.01~10秒について行っている。 9Ve10 40 10Ve10 30 avVe10 avVe10+σ 20 avVe10-σ 10 avVe10+2σ avVe10-2σ 0 0.01 0.1 1 10 Period(sec) avVe10+3σ avVe10-3σ 4.建屋の応答解析 4.1 地震応答解析モデルの設定 当社の技術研究所は,在来構法で建設されてい る非免震棟と免震構法で建設されている免震棟より 構成されている。この2つの建物は,上部構造がほ ぼ同一の規模で建設されているところに特色がある。 図14に当建物平面図及び断面図を示す。 Energy Spectrum Ve10 (O.P=5,EW Direction) 当建物の地震応答解析モデルの諸数値は,文献 1Ve10 120 2Ve10 3Ve10 4Ve10 5Ve10 80 6Ve10 7Ve10 8Ve10 60 9Ve10 静的加力実験,強制振動実験の結果を基に算定した ものである。表5,6に解析モデルの諸数値を示す。 ここで,免震層は層全体について非線形モデルを考 慮し作成した解析モデルとしている。免震装置は 10Ve10 40 avVe10 avVe10+σ 750 avVe10+2σ avVe10-2σ 0 0.01 0.1 1 10 avVe10+3σ avVe10-3σ 550 50 3000 550 9700 750 5000 Period(sec) 9700 650 avVe10-σ 20 5000 Pseudo Velocity(cm/sec) 100 [10]に示されている値を用いている。これらの値は, 5000 Energy Spectrum Ve10 (O.P=5,UD Direction) X(NS) 650 1Ve10 100 免震棟 3Ve10 80 4Ve10 非免震棟 3階平面図 Y(EW) 5Ve10 70 6Ve10 60 免震棟 7Ve10 非免震棟 40 10Ve10 30 avVe10 avVe10+σ 20 avVe10-σ 3650 9Ve10 3650 8Ve10 50 avVe10+2σ avVe10-2σ 0 0.1 1 10 層 3層 2層 1層 42 方向 NS EW NS EW NS EW 1425 エネルギースペクトル 質量 kN 365 2055.06 365 1747.05 411 1762.73 9700 2100 断面図 FL 非免震棟解析モデル 高さ cm 9700 GL 層剛性 kN/cm 減衰 h 4959.29 3939.31 5610.79 4599.24 7136.26 5937.53 0.030 0.027 0.030 0.027 0.030 0.027 1315 表5 GL 485 図 13 avVe10+3σ avVe10-3σ Period(sec) 600 0.01 2700 10 2900 300 4000 Pseudo Velocity(cm/s) 2Ve10 90 免震装置部断面図 図 14 解析建屋の平面図および断面図 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 表6 層 方向 3層 2層 1層 免震層 高さ cm NS EW NS EW NS EW NS-S EW-S NS-R EW-R 免震棟解析モデル 質量 層剛性、スゥェイ・ロッキング 2 kN/cm or kN・cm/rad kN or kN・cm 365 2055.06 365 1747.05 411 4027.80 4959.29 4648.34 5610.79 5427.04 7136.26 7006.22 2284.42 2134.97 3.643E+10 3.266E+10 3006.64 - 1.736E+09 1.512E+09 (ton) α=15.36052 γ=3 Xy=0.100(cm) 40.0 Py=21.121(ton) K1=6.647(ton/cm) 80.0 減衰 h 0.003 0.004 0.003 0.004 0.003 0.004 0.067 0.064 - Max=45.2 ton 2.9 cm 0.0 -40.0 -80.0 -4.0 Ramberg‐Osgood(RO)モデルに線形剛性を付与した -2.0 図 15 修正ROモデルを用いている。設定式は(4)式のよう 0.0 (cm) 4.0 2.0 免震層修正 RO モデル履歴図 (文献[10]より引用加筆) に示されている。 X − X 0 ⎛⎜ P − P0 ⎞⎟ ⎛ P − P0 ⎞ = + α⎜ ⎟ ⎜ 2P ⎟ 2X y ⎝ 2P ⎠ y ⎠ ⎝ P = K1 X 表7 γ 解析モデル固有周期 方向 …… NS EW 非免震棟 (4) NS 上式に用いられている諸数値は,免震棟の静的 免震棟 加力実験から得られた値を修正ROモデルに合うよ EW う最小自乗法を用いて算出している。設定された修 ()内は基礎固定時の固有周期 正ROモデルの設定値及び履歴図を図15に示す。 4.2 入力地震波 上記解析モデルによる固有値解析の結果,免震 棟の一次固有周期はNS,EW共に0.45秒前後となっ acceleration(cm/sec2 ) 次に上記解析モデルを用いて行った固有値解析よ り得られた建物の固有周期を表7に示す。 ている。この値を参考に,入力地震波を図11~13よ 400 300 200 100 0 -100 0 -200 -300 -400 NS 方向 5 10 15 4.3 時刻歴応答解析 上記解析モデルおよび入力地震波を用いて質点 系モデルによる時刻歴応答解析を行う。解析に用い acceleration(cm/sec2 ) 図16に示す。 400 300 200 100 0 -100 0 -200 -300 -400 ようにRamberg‐Osgoodモデルを用いた。入力地震 波は,0.02秒の時刻きざみでデータ点数2048個であ る。解析時間は40秒で,積分時間間隔は0.005秒と して行った。 以下に解析結果を示す。表8,9に免震棟における acceleration(cm/sec2 ) (γ=0.35)を用い,免震層のモデルには4.1で述べた 30 35 40 5 10 15 20 25 30 35 40 25 30 35 40 time(sec) 析用ソフト「RESP‐M/Ⅱ」(構造計画研究所)を バネの復元力特性は,質点間バネに武田モデル 25 EW 方向 たアプリケーションは,質点系時刻歴弾塑性応答解 用いて行った。 20 time(sec) り選択する。ここでは,全地震波10波について時刻 歴応答解析を行うが,地震波wave8の時刻歴波形を T1 T2 (sec) (sec) 0.2511 0.0918 0.2772 0.1021 0.4435 0.1548 (0.2511) (0.0918) 0.4568 0.1588 (0.2552) (0.0940) 400 300 200 100 0 -100 0 -200 -300 -400 UD 方向 5 10 15 20 time(sec) 図 16 wave8 地震波時刻歴 43 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 全入力地震波毎の応答最大値を示す。また,表10に 速度倍率を示す。ここで表8~10より,NS方向では はNS方向での入力最大加速度に対する応答最大加 入力波wave8の時に屋上階応答加速度でほぼ最大値 表8 wave1 wave2 wave3 免震棟 NS 方向応答最大値 wave4 3層 2層 1層 免震層 Ground 173.0 104.4 106.0 118.1 318.0 139.6 96.3 77.0 112.8 217.0 170.0 94.6 105.6 108.3 488.0 153.2 120.3 96.3 117.7 313.0 3層 2層 1層 免震層 Ground 17.58 16.51 14.62 13.88 0.0 17.33 16.81 16.51 16.31 0.0 23.51 22.36 21.02 20.00 0.0 19.63 19.03 18.70 18.39 0.0 3層 2層 1層 免震層 Ground 2.621 2.597 2.565 2.529 0.0 2.840 2.834 2.819 2.791 0.0 1.970 1.943 1.908 1.882 0.0 4.144 4.107 4.044 3.981 0.0 表9 wave1 wave2 wave3 免震棟(NS) wave5 wave6 wave7 wave8 wave9 wave10 acc_max(cm/s2) 150.3 180.2 124.9 179.7 169.9 160.1 96.7 128.5 91.6 140.9 96.9 86.8 95.7 92.2 63.3 109.3 80.4 78.5 103.8 139.9 82.0 131.8 130.6 110.5 282.0 318.0 266.0 292.0 309.0 291.0 vel_max(cm/s) 16.88 22.66 11.82 27.80 15.01 15.46 17.19 21.66 10.95 26.54 13.32 14.73 17.16 19.67 10.58 25.11 14.31 14.07 16.96 18.25 10.90 25.17 15.40 13.51 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 disp_max(cm) 3.752 4.372 1.377 4.640 3.216 2.277 3.735 4.331 1.363 4.594 3.196 2.250 3.697 4.272 1.356 4.522 3.165 2.213 3.649 4.213 1.344 4.450 3.127 2.175 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 免震棟 EW 方向応答最大値 wave4 3層 2層 1層 免震層 Ground 194.7 121.7 111.2 142.7 305.0 139.8 106.8 103.0 120.0 360.0 136.5 90.0 80.8 99.3 317.0 128.8 78.6 91.7 107.2 306.0 3層 2層 1層 免震層 Ground 22.54 22.32 21.89 21.40 0.0 18.24 17.39 18.40 18.72 0.0 15.47 14.90 14.07 13.93 0.0 15.82 15.23 15.09 15.09 0.0 3層 2層 1層 免震層 Ground 2.854 2.807 2.743 2.684 0.0 3.750 3.690 3.612 3.545 0.0 3.290 3.254 3.204 3.153 0.0 2.309 2.285 2.253 2.221 0.0 免震棟(EW) wave5 wave6 wave7 wave8 wave9 wave10 acc_max(cm/s2) 139.9 160.6 132.1 127.1 152.2 158.2 90.1 87.5 97.2 111.3 88.9 109.1 86.3 90.7 81.5 84.1 86.0 116.6 116.3 121.5 104.2 94.6 116.4 123.0 290.0 324.0 246.0 351.0 276.0 373.0 vel_max(cm/s) 17.12 20.26 15.60 16.65 21.77 15.72 15.77 19.18 14.24 16.08 21.65 15.33 15.88 18.74 12.73 15.64 21.66 14.79 16.48 18.50 11.71 15.66 21.60 14.43 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 disp_max(cm) 4.124 3.880 3.150 3.752 3.420 3.417 4.079 3.860 3.115 3.703 3.392 3.368 4.018 3.821 3.062 3.634 3.346 3.300 3.960 3.774 3.009 3.572 3.294 3.239 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 上段:免震棟 表 10 wave1 3層 2層 1層 免震層 Ground 44 0.54 1.44 0.33 1.31 0.33 1.11 0.37 1.00 wave2 0.64 2.11 0.44 1.39 0.35 1.83 0.52 1.00 入力最大加速度に対する応答最大加速度倍率 wave3 0.35 0.93 0.19 0.83 0.22 1.06 0.22 1.00 免震棟(NS) wave4 wave5 wave6 wave7 acc_resp_max/acc_inp_max 0.49 0.53 0.57 0.47 1.84 1.89 1.68 1.93 0.38 0.34 0.40 0.34 1.36 1.72 1.67 1.45 0.31 0.34 0.29 0.24 1.11 1.37 1.27 1.46 0.38 0.37 0.44 0.31 1.00 1.00 1.00 1.00 下段:非免震棟 wave8 0.62 1.75 0.48 1.45 0.37 1.22 0.45 1.00 wave9 0.55 1.42 0.31 1.22 0.26 1.22 0.42 1.00 wave10 0.55 1.99 0.30 1.40 0.27 1.06 0.38 1.00 荒川断層による地震動作成と技術研究所建屋の応答解析 に近い値を,応答変位で最大値を示している。また, いないが,免震棟でほぼ最大値に近い応答倍率 応答倍率では入力波wave8において,非免震棟で 0.62(最大はwave2で0.64)を示している。 1.75(最大はwave2で2.11)と最大の応答倍率を示して 次に,屋上階の加速度および免震層の変位共に最 屋上階NS方向応答加速度 屋上階 NS 方向応答加速度 屋上階EW方向応答加速度 屋上階 EW 方向応答加速度 600 600 :非免震棟 :非免震棟 400 :免震棟 200 0 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -200 acceleration(cm/s2 ) acceleration(cm/s2 ) 400 -400 :免震棟 200 0 0 5 10 15 20 35 40 -600 time(sec) time(sec) 図 17 応答加速度時刻歴 NS方向層変位分布 EW方向層変位分布 層 4 層 4 3 3 2 2 :非免震棟 :免震棟 1 0.0 1.0 2.0 3.0 変位(cm) :非免震棟 :免震棟 1 0 4.0 0 0.0 5.0 図 18 1.0 2.0 3.0 変位(cm) 800 800 600 600 400 400 200 -1.0 0.0 -200 せん断力(kN) 200 変位(cm) 変位(cm) 0 0 -2.0 5.0 免震層復元力特性(EW) せん断力(kN) -3.0 4.0 応答変位 免震層復元力特性(NS) -4.0 30 -400 -600 -5.0 25 -200 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 -5.0 -4.0 -3.0 -2.0 -1.0 0.0 -200 -400 -400 -600 -600 -800 -800 図 19 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 免震層復元力特性 45 安藤建設技術研究所報 Vol.14 2008 大値あるいはほぼ最大値に近い値を示している入力 Green’s Function for a Layered Half-Space with 波wave8による応答解析結果を示す。図17にNS, Sources and Receivers at Close Depths, Bulletin of EW各方向の応答加速度時刻歴を,図18にNS,EW the Seismological Society of America, Vol.84, No.5, 各方向の層間変位を示す。各図には非免震棟におけ pp. 1456-1472, October 1994 る応答結果も示している。また図19にNS,EW各方 2 屋上階床の応答最大加速度はNS方向で約180cm/s , 2 EW方向で約127cm/s となっている。入力地震動が, 2 [8] Hisada,Y. : An Efficient Method for Computing Green's Functions for a Layered Half-Space with 向における免震層のQ‐δ関係を示す。 2 NS方向で最大292cm/s ,EW方向で最大351cm/s で あったので,NS方向で約40%,EW方向で約65%の Sources and Receivers at Close Depths (Part 2), Bulletin of the Seismological Society of America, Vol.85, No.4, pp. 1080-1093, August 1995 [9]Hisada,Y. :Broadband Strong Motion Simulation in 応答加速度の低減を生じている。また,免震層の変 Layered Half-Space Using Stochastic 位はNS方向で最大4.45cm,EW方向で最大3.57cmと Function Technique, (J.Seismology, 2008) Green’s なっている。その時の層せん断力は583kN,504kN [10]野中康友,沼田岳彦:免震構法の開発に関する であった。日本建築センター技術指導時のレベルⅠ 研究‐実験結果に基づく解析と地震観測‐,安藤 における許容水平変位量は10.49cm,レベルⅡにお 建設第1回技術発表会資料,1993 ける許容水平変位量は23.30cmであるので,免震層 の変形許容値に対し十分に小さな値となっている。 5.まとめ 当社の技術研究所から最も近い断層として荒川 断層を活断層とする地震波を久田の方法により作成 し,技術研究所免震棟の時刻歴応答解析を行いその 応答の大きさを推定した。その結果,入力地震動の 最大加速度値に対し,屋上階床の応答加速度が各方 向で約50%以上の低減を生じていた。また,免震層 の変位が最大約4.5cmとなり,最大約580kNの層せ ん断力が発生した。しかし,いずれの応答値も建物 および免震層の耐力に比較し問題となる大きさでは なかった。 参考文献 [1]日本建築学会:地震動と地盤,P.118,1983 [2]藤本利昭,稲井栄一,八ッ繁公一:免震構造物 の地震観測報告,日本建築学会技術報告集,第24 号,89‐94,2006年12月 [3]埼玉県:平成19年度埼玉県地震被害想定調査報 告書, 2007 [4]地震調査研究推進本部地震調査委員会:荒川断 層の長期評価について, 2004.8 [5]地震調査研究推進本部地震調査委員会:宮城県 沖地震を想定した強振動評価(一部修正),2005 [6]中央防災会議:首都直下地震対策専門調査会地 震ワーキンググループ第12回報告書,2004 [7]Hisada,Y. : An Efficient Method of Computing 46