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日本の飲食店 上海奮闘記~シェ・シバタ

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日本の飲食店 上海奮闘記~シェ・シバタ
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究極のスイーツマーケット日本
2011・02・21 715号
日本の飲食店 上海奮闘記~シェ・シバタ~
財部誠一 今週のひとりごと
NY在住の知人から米国の景気についてこんな報せがありました。
「NYは年末から、表面上は派手さが戻ってきました。年末商戦は好調で
『在庫をかかえない』という安心感が小売業界に広がっています。年が明
けても消費は回復基調です。ただ力強さに欠けている感じは否めません。
年明けは予想より低い数字でとどまりました(予想の方が楽観的すぎるの
ではないかとも思いますが・・)。全体でみると、楽観、悲観が二極化してい
ます。前年比では回復の数字が大きくなるため気分的には楽観的になり
ますが、前年の数字が悪すぎたことに注目すれば『まだまだ』だとなるわけ
です。NYの株価も上昇していますが、出来高などを見ると、本物ではない
ようです。投資家は本当に回復しているとは思っていないでしょう。ここに
きて、インフレ懸念が急速に広がっています。商品相場の高騰が限界に達
している感じです。安売りに安売りを重ねて消費をなんとか底上げしてきた
ものの、末端の価格にも、いよいよ影響がでてきました。いびつな形で長
期金利が上がっていけば、何が起きるかわかりません。そういう意味では
誰も先が読めない状況に置かれているのだと思います」
米国の景気回復ははげ落ちるのか、落ちないのか。現状では見きわめ
られないというところでしょうか。
今週の「HARVEYROAD WEEKLY」は内田裕子が担当します。
(財部 誠一)
※HARVEYROADWEEKLYは転載 ・ 転送はご遠慮いただいております。
日本のスイーツの進化は目覚しい。デパートの地下にあ
る食品売り場に行くと、ガラスケースの中に綺麗に並べら
れた何百種類ものお菓子を目にする。中には芸術作品と
みまがうような手の込んだ装飾のケーキもあり、買い物中
に思わずうっとり眺めてしまうことがよくある。新製品投入
のスピードも凄まじく、デパ地下を訪れるたびに、新しいス
イーツを発見することができる。人気店では常に行列がで
きているので、たいてい場合、購入するのをあきらめること
になるが、その行列が落ち着いたころには、また違うお店
に行列ができている。日本のスイーツは質も種類も洋菓
子の本場フランスを超えていると言われており、日本人は
世界最高のスイーツを日ごろから食べていることになる。
じつはハーベイロード・ジャパンの事務所があるビルの
隣にも高級洋菓子屋がある。有名なフランス人パティシエ
のお店であり、ブティックのようなしつらえになっている。男
性だと3口ほどで食べ終わってしまいそうな小ぶりのケー
キが600円もする。牛丼業界が生き残りを掛けて200円
台の攻防を繰り広げている一方で、著名なスイーツ店は
ほくほくの状態である。なんとも複雑な消費活動が東京で
は行われている。
これは先日のバレンタインデー前の連休に銀座三越に
行ったときのことだが、珍しく東京で雪が降った日だったの
で、みんな外出を控えるだろうと思い、ゆっくりと買い物が
できることを期待してでかけてみたが予想は見事に外れ
た。デパートは買い物客でごった返しており、厚着をして来
たことを心から後悔した。
言うまでもなくお菓子フロアの人出は凄まじく、多くの女
性が熱心にチョコレートを選んでいた。その姿を眺めなが
ら、日本の女性は健気でよいなと関心していたのだが、そ
れは少し理解が違っていたことがあとになってわかった。
最近は「友チョコ」といって、女の子同士でチョコレートを交
換するのがはやっているというのだ。お互いがプレゼント
したチョコレートをその場で見せ合って「かわいい」と褒め
合いながら一緒に食べるのが楽しいという。それだけでは
ない。究極は「自分チョコ」だ。バレンタインデーは頑張っ
ている自分に何千円もする高級チョコを贈るという日に変
◆柴田武氏 経歴
1971年3月28日生まれ。39歳。
岐阜県多治見市出身。
子供の頃、母親の作るケーキを食
べて、自分でもつくってみたいと思
いお菓子作りに興味を持つ。フラン
スに憧れを持っていた事もお菓子
作りへの興味に影響した。料理学
校を卒業後、神戸や岐阜のレスト
ランで修業を積み、1995年、24歳
の時に「シェ・シバタ多治見」をオー
プン。その後、渡仏し「ホテル・リッ
ツ」で修業を積む。2006年に「シェ・
シバタ名古屋」、翌年にレストラン
「ラシェット・ドゥ・シバタ」を名古屋
にオープン。2009年には海外へ進
出、「シェ・シバタ上海」をオープン
し、日本人初の上海で店舗を構え
る経営者を兼ねるパティシエとなっ
た。2010年に「シェ・シバタ香港」、
2011年1月に「シェ・シバタ上海」2
号店を出店。現在、国内3店舗、海
外3店舗を構える。
◆シェ・シバタの海外展開
【上海1号店】
住所:上海市柴云西路24号
電話:021-5206-5671
営業時間:10時~21時
【上海2号店】
住所:上海市陸家嘴西路168号
正大広場B2
電話:021-5013-3582
営業時間:10時~22時
【香港】
住所:九龍尖沙咀柯士甸道西一號
電話:852-2196-8921
営業時間:11時~22時
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化しつつあるという実態もわかった。やはり日本人
(女性)のスイーツ好きは筋金入りと言えるだろう。
東京や大阪よりも上海だった
世界でも屈指のスイーツマーケットを持つ日本だ
が、そこには目もくれず、単独でアジアに飛び出し
た日本人がいる。
柴田武。「シェ・シバタ」のオーナーパティシエだ。
柴田氏は71年生まれの39歳。岐阜県多治見
市に「シェ・シバタ」をオープンさせたのは、いまか
ら16年前の24歳の時だ。子供の頃に食べた母
親のつくるパウンドケーキの美味しさに、「こんな
に美味しいものを自分でもつくってみたい」と思っ
たという。
専門学校を卒業し、5年間レストランで修行をし
た後、自分のお店を出すことを決めたが、実績の
ない柴田氏に銀行はお金を貸してくれなかった。
父親の支援のもと、実家と祖父の家を担保になん
とか開業資金を銀行から借りることが出来た。そ
れまで優しかった親戚も態度を一変させ、本当に
大丈夫かと執拗にせまってきたという。そんな心
配をよそに、「美味しいものをつくりたい」という
並々ならぬ信念を持っていた柴田氏のケーキは
地元で評判になり、多治見の店は軌道に乗ってい
った。さらに柴田氏は腕を磨くためにパリ修行を決
意し、洋菓子の本場でケーキ作りを学んだ。そうし
た努力が実を結び、シェ・シバタは多治見店のほ
か、名古屋にスイーツとレストラン2店舗を出すま
でに発展した。
当時、東京では大規模な再開発が起こっていた。
丸の内や汐留、品川駅周辺、東京ミッドタウン、赤
坂サカスなど複合商業施設がつぎつぎと誕生して
いた。大手デベロッパーは集客力のある優良テナ
ントを求めて全国各地を歩き回った。シェ・シバタ
のところにもやってきて「是非、東京進出を」と頭を
下げられたという。普通ならそこで嬉しくなり二つ
返事で承諾してしまうところだが、柴田氏は考えた。
「東京や大阪はスイーツは飽和状態、そこで勝負
することは果たして得策だろうか」。
出店依頼をすべて断った。
そんなときに、親しいレストランのシェフが上海に
店を出すので手伝って欲しいと声を掛けてきた。
柴田氏にとって外国といえばパリ、ニューヨーク。
なんで上海なんかにいくのかと理解ができないま
ま、かといって無下にも出来ず上海に出かけてみ
ることにした。
しかしそこに人生の転機があった。
「行ってみて本当に驚きました。自分がイメージ
していた中国とはまったく違う風景がそこにありま
した」
浦東の超高層ビル街を見て自分の認識不足に
気がついたという。
知人の手伝いを引き受け、レストランのスイーツ
をプロデュースするために上海に通っているうちに
上海にはまともな洋菓子がないことに気がついた。
「ここにライバルはいない」
そんなことを考えているうちに「一緒に上海でケ
ーキ屋をやろう」と数人の中国人が声を掛けてき
た。「自分でやったほうが儲かる」。そう決心した柴
田氏は一番馬が合う中国人をパートナーに決め、
上海で店を出すことに決めた。
日本のクオリティを目指すが同じである必要はない
上海は世界で最も日本人が多く住む外国の都
市だ。領事館に登録しているだけでも5万人、未登
録や短期滞在者を含めるとおよそ10万人の日本
人が上海にいる。まずはそこをターゲットにして経
営を軌道に乗せることを目標にしたが、それは大
正解だった。
「まず日本人駐在員の奥さんがお得意様になり
ました。その後、日本人が食べているなら安心だと
いうことで、口コミで中国人の富裕層に客層が広
がりました」
ただ単に美味しいケーキがなかったというだけで
なく、それが日本のブランドであるということで、さ
らに価値を持つというのは予想以上だった。
しかし、柴田氏はどんなに美味しいものをつくっ
ても、知ってもらわなければ意味はないと考えて、
中国を代表する新聞社の新華社にいた女性をヘ
ッドハンティングし、メディア対策をすべて任せて、
マーケティングの責任者にした。彼女の人脈を生
かした結果、上海の法人需要に入り込むことがで
き、イベントやパーティなど大口の注文が入ってく
るようになった。
また、肝心の菓子作りは上海のレストランで偶
然出会った中国語が堪能の日本人を即採用し、
多治見でシェ・シバタのケーキ作りを学ばせた後、
上海で採用した中国人スタッフの教育を任せるこ
とにした。
「どこまでクオリティを求めるか、中国人スタッフの
技術の習得状況を見ながら判断していくのが大
事です。何も考えずに日本と同じクオリティを求め
るとかえって悪いものができあがるのです」
材料は現地で調達しなければまったく採算が合
わないのだが、そこも柴田氏は割り切っている。
「日本クオリティを目指しながらも、同じものをつく
る必要はありません。日本のBestが上海のBest
とは限らないのです。出来る範囲でいかにシバタ
テイストに近づけていくかで良いのです。多治見
のシバタ、上海のシバタ、香港のシバタでいいの
です」
上海の1号店の成功で、先月上海2号店がオー
プンした。香港店も去年オープンして好調だ。今
はシンガポールに出店の準備をしているという。
柴田氏の話を聞けば聞くほどパティシエを超え
た、優れた経営者の顔を感じるが、同時に、新興
国ビジネスは、大企業よりもむしろ小さな企業の
方に有利で、その柔軟性を武器にすることで、
様々な問題を克服できる可能性が高くなるので
はないかと、シェ・シバタの取材からは感じた。
(内田 裕子)
◆シェ・シバタの店舗、ケーキ
※上海 1 号店
※上海 2 号店
(浦東エリアのデパート正大広場内)
※香港 1 号店
(商業施設 ELEMENTS 内)
※シェ ・ シバタの人気ケーキ
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