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2015年9月~12月

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2015年9月~12月
MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT
30 SEPTEMBER 2015
日本国公認会計士 金澤 厚
第39回 タイ国 ビジネス事例 アトランダム ㉔ IHQとITC
「シルバーウィーク」という言葉をはじめて聞いたのは最近のことです。「ゴールデンウィーク」に対して
「シルバー」という意味で、単に秋の連休を意味しているだけのようで、「敬老」の意味はあまり意識されて
いないようです。敢えて「敬老」するために命名はしないなと納得してしまったところに少し寂しさも感じまし
た。タイの方が良き習慣が残っているかなと。
テロ事件の後遺症が癒えてきているのでしょうか。先日、社内旅行でクラビに出掛けましたが、9 月でハ
イシーズンではないと思いますが、離島ツアーは多くの外国人で賑わっていました。中国人も沢山いまし
た。日本人以外はテロ事件をあまり気にしていないのかもしれません。
さて、今回は「ITC」(国際貿易センター、International Trading Center)についてご紹介します。
(ITC:国際貿易センターとは?)
「海外の法律で設立された法人に対し、商品、原材料、部品を購入・販売、ならびに貿易に関連するサ
ービスの提供を目的とする、タイ国の法律で設立された企業」を国際貿易センターと BOI は定義づけして
います。
(ITC の事業範囲、IPO との比較)
1) 「海外の法人に対する商品、原材料、部品の購入・販売」として、以下のような点にご留意下さい。
(ア) 海外の法人からの商品(完成品)、原材料、部品の購入・調達とされています。
⇔IPO では、「完成品」を購入して、タイ国内で販売することは想定されていませんでした。
ITC ではこの点すべて可能となりました。
(イ) 海外の法人への商品、原材料、部品の販売。この場合、国内で調達した商品を海外へ輸出
すること(In-Out)、タイに搬入せず、海外商品を輸入・販売(Out-Out)することも含まれます。
⇔IPO では、国内から調達した原材料、部品、及び半製品を海外へ輸出する取引(In-Out)
のみ認められていました。ITC では、タイに入国しない(Out-Out)取引も認められることとなり
ました。
(ウ) 国内への商品販売では、別の商品に組立て/製造する製造業者への販売(In-In/Out-In)が
対象となっています。しかし、最終消費者(End users)に対する小売り/直接販売ではないこと
が条件になっています。この点、IPO も同様でした。
(エ) IPO では、国内の調達先を有すること、倉庫(自社ないしレンタル)で有し、倉庫管理システム
を有すること、検査・梱包業務を行うことが条件とされていました。ITC ではこういった条件は何
もありません。
2) 「国際貿易に関連するサービス」とは?以下のサービスとされています。
(ア) 商品の調達
(イ) 商品の保管及び出荷
(ウ) 梱包、運送、損害への付保
(エ) 商品に関するコンサルティング、テクニカルサービス、トレーニング
(オ) 歳入局長が定めるその他のサービス
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MOTHER BRAIN MONTHLY REPORT
30 SEPTEMBER 2015
(ITC の申請条件)
1) 最低払込み資本金は、1,000 万バーツ。
BOI が規定する申請条件はこれだけです。
(ITC の税務恩典)
1) 法人税が免除となる取引:ⅰ)オフショア貿易及び関連サービスによる収入(Out-Out 貿易による
収入)、ⅱ)外国企業への国際貿易関連サービス提供による収入。
「オフショア貿易活動」とは、多国間の物品売買で、タイ国内に持ち込まれない場合に限るとされて
います。又は、タイ国内に持ち込まれたとしても、それが関税法に基づく通過、積み替えのためで
ある場合に限るとされています(Section7 Royal Degree No.587 B.E.2558)。「国際貿易に関連する
サービス」とは、海外の会社に対して、海外で提供されるサービスが対象とされています。
2) 対外支払い法人税の免除:ⅰ)法人税免除対象収入からの配当金の支払い時の源泉税徴収が免
除されます。
3) 駐在員の個人所得税の税率を 15%に軽減:ITC での就労による総所得(すべての便益を含む)が
対象となります。
ITC の1)から 3)の税務恩典を受ける場合には、タイ国内における一般管理費の最低額は、1,500 万
バーツという条件が加わります。国際貿易センターがいずれかの会計年度において上記の条件を満たす
ことが出来なければ、該当の会計年度において上記の税務恩典、駐在員の税務恩典を受ける資格を失
うとされています。また、BOI の奨励を受けた後、歳入局に別途事前の申請が必要となります。
IPO 同様、以下の税務恩典も認められています。
4) 輸入関税の免除:機械の輸入関税の免除、及び輸出向け製品の原材料・部品の輸入税が免除さ
れます。
(ITC の非税務恩典)
1) 外国人が株式の過半数ないし全株の保有が許可されます。
2) 外国人の土地所有が許可されます。
3) 外国人の技術者ないし専門家が ITC で働くことが許可されます。
(まとめ)
1) BOI の申請条件と特定の税務恩典を受ける場合の条件が異なっています。特定の税務恩典を受
けるには、一般管理費要件(1,500 万バーツが最低額)をクリアする必要があります。
2) 法人税、所得税関連の特定の税務恩典の対象は限定されています。メリットとしては限定される可
能性が高いです。
3) IPO 奨励プロジェクトは、ITC で新規プロジェクトとして奨励申請することが出来るし、若しくは IPO
から ITC に変更するため、既存プロジェクトの修正の申請もすることが出来るとされています。
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31 OCTOBER 2015
日本国公認会計士 金澤 厚
第40回 タイ国 ビジネス事例 アトランダム ㉕ IHQとITC
法人税の税率を長期間 20%に据え置くことが閣議で承認されたという報道が先日ありました。タイ国内
の景気がよくないことがこの決定には影響していると思いますが、シンガポールの法人税率が 17%である
ことなども影響しているのではないかと考えられます。法人税率の引き下げ競争が始まったのでしょうか。
一方、インドネシアの高速鉄道計画は中国にもっていかれたことが先月大きく報道されました。タイにお
いてもいくつかの鉄道建設計画があり、タイ政府は中国、日本、それぞれに配慮して発注しているように
見えます。バンコクからノンカイに到る路線については、中国と共同で工事を行うとの報道もあります。一
方、日本とは新幹線方式採用を前提に調査を進めるという覚書を締結しています(本年 5 月)し、その他
現在具体的に受注している工事もあります。ただ新幹線方式が本当に採用されるのかどうかは未確定で、
覚書は単なる配慮(見せかけ)に過ぎないのかもしれません。
翻って、わが日本の法人税住民税の実効税率は 40%近辺ですし、新幹線計画の受注が出来ないこと
が明らかになって、官邸のコメントは「遺憾」。発注者が決めることですから、「遺憾」と言っても何も変わら
ないでしょう。日本を外から見ていると歯がゆいことが多いです。
さて、今回は「IHQ」(国際地域統括本部、International Head Quarters)の事業範囲にある財務センター
(Treasury Center, TC) ついてご紹介します。
(IHQ:国際地域統括本部の事業範囲)
国際地域統括本部(IHQ)は、「タイ国企業で、関連会社にマネージメント、技術、支援サービスを提供し、
関連会社に財務サービスを提供し、オフショア貿易活動をするもの」とされています。
IHQ の事業範囲は大きく以下の 3 つに区分されます。
1) 「マネージメントサービス又は技術サービス、支援サービス」
2) 「財務サービス」(フィナンシャルマネージメントサービス)
これは、財務センター(Treasury Center, TC)が行うサービスです。
3) 「原材料、部品、商品の購入・販売」(Procurement of raw materials and parts, Sourcing of
Goods)、「オフショア貿易活動」(国際貿易関連サービスの提供含む)
(財務センター(以下 TC)とは?)
TC は、金融事業に携わらないタイ法人で、タイ国内及び海外にあるグループ企業のために外貨資金
の管理をするものとされています。
(TC 設立のメリット)
1) 取引費用の削減、資金のプーリング及びネッティングによる会社の資金効率や競争力の向上を期
待出来ます。外国為替に関する規制緩和により、TC の認可を受けることにより、ネッティング・流動
性管理などの手法を使うことにより、資金の効率化を図ることが出来ます。
2) IHQ 認可取得により BOI の恩典を使うことが出来ることがあります。税務上の恩典としては適格所
得について法人税の減免、従事者の個人所得税の減免などが使えます。
3) タイ国内外の親会社に対して、すべての財務管理を集中させることで、多国籍企業化を促進する
ことができます。金融業務の分野でもコントロールする会社の誘致を狙っているといえます。
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31 OCTOBER 2015
(TC の業務範囲)
以下の業務範囲があります。
1) 支払い及び回収:「エージェント」及び「請求書再発行」という 2 つの機能が対象とされています。
前者は、グループ企業と相手先企業との間に入って、バーツと外貨との決済の仲介を行います。
後者は、請求書の買い取り・再発行を通じて、商品/サービスのバーツと外貨との決済を効率化し
ます。2015 年 4 月 30 日の規制緩和により、「エージェント」としての資金決済の対象として、配当
金や利息の支払いもその範囲とされました。
2) 外為取引のネッティング(相殺):TC は、外為取引をネッティングして、タイ国内外にあるグループ
企業または取引相手先企業に、純額を支払うことが出来るとされています。以下の決済について
は、TC が間に入ることによりネッティングが可能となります(3 社以上の会社が参加することも可能
です(複数ネッティング))。
① タイ国内外にあるグループ企業の国際貿易やサービスの対価(配当金・利息の支払いも対象
となりました)の相殺
② 外貨建て貸出し、借入れなど事業範囲内の TC の外為取引
3) 外為取引及びリスク管理:
① ヘッジング:グループ企業と国内金融機関の間に TC が入り、グループ企業が保有する商品
サービスの債権・債務、ローン契約などを国内金融機関に転売することにより、リスクヘッジす
ることが可能です。
② 外貨預金口座の開設:
以下の目的のため TC は年間最高累計 5 億ドルまで外貨を獲得することが可能です。
・関連取引書類なしで、国内金融機関の外貨預金口座(海外源)に預金すること
・海外金融機関に預金すること(最高額 5 億ドル)
・海外の債権に投資すること(最高額 5 億ドル)
4) 流動性管理:
グループ企業内で資金過剰な会社、若しくは資金不足の会社がある場合、TC はグループ企業間
の中心となり、グループ企業への貸付け(1 年以上の期間も認められるようになりました)、又はグル
ープ企業から資金の受け入れをすることが出来ることとなりました。グループ全体として資金が過剰
である場合には、TC は国内の外貨預金口座に預金、海外金融機関に預金、海外の債権に投資
等します。資金不足である場合、TC は金融機関、グループ企業、関連金融機関、他の海外法人
から借入れすることが可能です。
(TC 認可手続き)
1) BOI への奨励認可申請に続いて、BOT へ認可申請し、審査を受けます。その結果、MOF による
承認、認可を受けます。
2) 外国法人の場合、外国人事業法による許可を取得し、証明書を入手する必要があります。
(TC の税務恩典)
1) 法人税が免除となる取引:外国企業への国際貿易関連サービス提供による収入。
2) 源泉税の免除:法人税免除対象収入からの配当金の支払い時の源泉税徴収が免除。
3) 駐在員の個人所得税の税率を 15%に軽減:TC での就労による総所得(すべての便益含む)。
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30 NOVEMBER 2015
日本国公認会計士 金澤 厚
第41回 タイ国 ビジネス事例 アトランダム ㉖ IHQとITC
タイへの投資を増やそうと、タイ政府は物凄い勢いで投資インセンティブを打ち出しています。その対
象は以下のように区分できると思います。
1)「BOI 以外の民間企業への投資刺激策」:2016 年中に機械設備、コンピュータープログラム、自動車、
建物などへの投資をした場合に投資額以上の税額控除を付与するというもの。
2)「経済特区での投資拡大策」:BOI 投資奨励対象業種を追加認定し、法人税の減免期間を延長す
るもので、2015 年 1 月以降奨励対象から除外された事業の復活もあるようです。
3)「BOI の投資奨励策の充実」:ⅰ)早期に投資する案件への法人税減免等の優遇策を拡大するもの、
ⅱ)タイの「新たな成長エンジン」となる事業を選別して投資優遇し、「国際競争力の向上」、「中所得国の
わなからの脱却」を目指すものという 2 つの方策があります。ⅰ)の方は、2016 年 6 月末までに総投資額
の 70%を投資した場合には法人税免除期間を 4 年延長、その後 5 年間は 50%免除等、以後投資時期
が後ろにずれたり、投資総額に対する投資割合が下がると優遇内容が下がることとなっています。ⅱ)の
方は、タイの産業高度化に関連する 5 業種と未来型産業 5 業種を選別して優遇策を与えるというもので、
例えば、先端自動車産業、電子産業、医療ツアーを組み合わせた観光産業、バイオ技術を含む農工業、
食品加工業や、産業用ロボット、航空・物流、医療ハブなどの業種が含まれています。
4)「国際競争力向上基金」を設置して、バイオ燃料、物流、ロボット工学など特定重点分野への低利融
資などの投資優遇措置を行うことを検討するもの(シンガポールの制度を参考にしているとのこと)。
これらは、現在閣議で承認済み、ないし基本承認を受けており、今後詳細が明らかになって来ます。
さて、今回は IHQ と ITC に関連して、BOI のプロジェクト変更申請についてご紹介します。
(BOI の投資奨励)
BOI の投資奨励策は、投資奨励法に基づいて、特定の奨励事業に対する新規投資を一定の条件のも
とで、奨励しています。
輸入関税の減免、法人税の減免、土地の取得、ビザやワークパミット取得上の便宜など BOI の投資奨
励を受けることによるメリットは数多くあります。
メリットを享受している一方、BOI の投資奨励を取得するためにパスしなければならない条件、遵守しな
ければならない条件がたくさんあります。
(BOI 投資奨励取得のための条件)
BOI を取得時に求められる条件=基準として以下の基準があります。
1) 販売収入に対して付加価値 20%以上が求められる。
2) 新規投資プロジェクトは、負債が払込み資本の 3 倍を超えてはいけない。
3) 近代的製造工程、新品の機械の使用(原則)。中古の場合は、性能証明を取得し、BOI から許可
を取得する必要がある。
4) 環境保全措置が取られること。
(BOI 取得後の遵守すべき条件)
BOI 取得後に遵守すべき条件としては以下のような条件があります。
1) 外国人の技術者、専門家は許可を受けた職務以外の職務に付くことはできない。
2) 取得が許可された土地は、奨励を受けた事業にのみ使用しなければならない。
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30 NOVEMBER 2015
3)
4)
5)
6)
輸入税の免除を受けた機械や原材料は奨励を受けた事業にのみ使用できる。
資本金の払込み時期に関する規制(操業開始前に全額払込みが必要)。
資本金は申請時の金額以上でなければならない。
奨励事業の生産数量、操業時間に関する規制(申請時の計画により年間操業可能時間が確定さ
れる)。
7) 投資の最低金額は申請時の計画以上でなければならない。
8) 奨励事業と非奨励事業の収支勘定は区分して記帳、管理しなければならない。
9) 期末日から 120 日以内に監査を受けた決算書類を添付して、法人税免税の申請をしなければな
らない。
10) 法人税の免税額は、土地代、運転資本を除いた投資総額によりその上限が決められる。
11) 事業開始日から 2 年以内に ISO9000 等の認証を取得しないと、免税期間が 1 年間取り消される。
12) 工場設置場所は、当初申請時の工業団地などに限られる。操業開始から 15 年間は移転が出来
ない。
ここにすべてを網羅することは出来ませんが、守るべき条件は非常に多いです。
(条件が設定される背景)
こういった条件は、結局のところ、輸入税免除、法人税免除の金額に上限を設けると共に、法人税免除
のための手続きを厳格にして、制度の濫用を防止することが目的と考えられます。
上記条件の中には、4)から 7)ないし 10)のように自ら計画した数値をもとに設けられる条件もあります。
(条件の変更が必要な場合)
こういった計画はあくまでも計画です。しかも、BOI 投資奨励の申請時は、会社の設立登記も出来てい
ない場合も多く、実際に事業を開始してみると、計画通りに行かないことが判明するというケースは多いの
ではないでしょうか。
そこで BOI は、「プロジェクト変更」という制度を設けています。例えば、
1) 生産能力、販売見込み量を変更したい場合
2) 生産工程を変更したい場合
3) 重要な原材料の使用計画量の変更、重要な原材料の種類の変更
4) その他事項の変更(IPO から ITC への変更は、プロジェクト変更のひとつとして取り扱われます)
などの場合に、プロジェクト変更が認められます。
(プロジェクト変更)
変更申請を出すには、変更したい項目について、これまでの実績値、変更前の計画値、変更後の計
画値を示し、それが財務面、労働者数などにどう影響するかなどを具体的に説明する必要があります。
生産能力の引き上げであれば、これまでの生産実績、販売実績を示し、生産能力を引き上げることに
より、タイ人労働者の雇用増加という計画を示せば理解を得られ易いでしょう。
IPO から ITC への変更申請の場合だと、新たな取引形態が追加になる等の理由が必要になると考え
られます。
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25 DECEMBER 2015
日本国公認会計士 金澤 厚
第42回 タイ国 ビジネス事例 アトランダム ㉗ 2015年のまとめ
早いもので、2015 年も残すところわずかとなりました。
タイの 2015 年は、BOI の新しい投資奨励策と共に明けましたが、暮れになっても何かと BOI の投資奨
励の話題が出ることが多かったです。これは、タイにとって、日本を含めた外国企業からの投資を誘致す
ることが非常に重要なことだからかと思います。BOI の大きな制度転換により外国からの投資が大きく減っ
てしまい、慌てた政府が投資誘致策の軌道修正を連発して、何が何でも投資を呼び込もうとしています。
何種類もの奨励策がでています。それも時限付きで、早期に投資を実行した場合に大きな優遇を得られ
る奨励策もあります。BOI 企業に対象を限定しない恩典もあります。
これらの中には使い方によっては、大きな恩典を得られるケースもあるかと思います。御社に合致したも
のがないのか、使える恩典がないのかご確認下さい。
ただ、投資を奨励しようとする一方で、締め付けが厳しくなっている制度もあります。ビザの更新がその
一例です。特に Non-BOI 企業(サービス業等)の方は慎重な対応が望まれます。
さて、今回は 2015 年中に起こった大きな出来事(不正等)をご紹介します。
【事例:タイ人従業員の横領】
これは、経理を任せているタイ人マネージャーによる会社銀行口座から個人口座への勝手な振込みが
行われていた件です。会社(以下、A 社)が認識した時には、過去 2 年間勝手に振り込みが行われ、
横領総額は 1,000 万バーツを超えていました。
(A 社の概要)
A 社は、プラスチック部品製造業に従事しており、工業団地内に 2 工場を有しています。従業員は
2 工場合計で 150 名ほど。経理部門にはマネージャー1 名、他にアシスタントが 2 から 3 名いました。
アシスタントは書類整理などを行うだけで、経理の知識も十分にはありません。
A 社は、日本に親会社があり、日本でも工場を何箇所か有しています。いずれも主な納入先は、日本
の上場大手メーカーで、優良な得意先を有しています。
(事件の発端)
A 社では会社の各種支払いに銀行振り込みを使用していました。元来、振り込み申請資料を準備する
人と最終承認者を区分して設定していました。最終承認者は MD だけに設定していたハズでした。しかし、
書類を偽造され、サインも偽造されて、最終承認者にタイ人マネージャーが追加設定されていました。
このことはマネージャー以外は誰も認識していませんでした。
(横領の方法)
最終承認者に設定されてしまえば、自分の ID、パスワードにより勝手に振り込みが出来てしまいます。
横領した額の推移を見ると、初めは 2 万~3 万バーツで、月に 2 回程度の頻度で行われていました。
しかし、何ヶ月か経過すると、1 回当たり 5 万バーツ、時に 10 万バーツなどと金額が大きくなっていきます。
発見前は、平均すると 6~7 回に分けて月に合計 100 万バーツ程度振り込まれていました(事後的に、
銀行に問い合わせ、集計した結果判明)。
通帳記帳の際は、長期間まとめて記帳され、その期間の貸方、借方の合計額でしか取引金額を把握
出来ないようにされていました。A 社の使っている銀行の場合、通帳に個別に記帳される取引データは
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25 DECEMBER 2015
過去1ヶ月間程度が限度で、タイでは一般的なようです。(ちなみに通帳記帳とは別に、インターネット
バンキングの場合で、個別の取引データは過去 6 ヶ月間が限度です。弊社使用の銀行のケース。)
(会計処理方法)
発見されるまでの間、2 回の決算がありました。会計データを検証した結果、振込みの処理方法は、
①買掛債務の過大支払い、②経費の過大支払いに区分されました。このうち、経費の過大支払いによる
方法は、発見される直前、苦し紛れに行われたのみで、通常は買掛債務の過大支払いとして処理されて
いました。仕訳処理は、日次ベースではダミー勘定を相手勘定にして行い、決算時に買掛金のマイナス
として処理する方法がとられていました。
(発見が遅れた理由)
なぜ 2 年間も発見できなかったのか、以下のような点を挙げることが出来ます。
① 経理担当マネージャーが一人で、振り込み資料準備、承認受領、通帳の管理、会計帳簿の作成
等すべて行っていた。
② 記帳の際に、長期間分をまとめる方法がとられていた。通帳を見ただけでは判別できない状況とな
っていた。インターネットバンキングを利用しながら、インターネットによるステートメントは利用され
ていなかった。
③ 会計監査が全く機能していなかった。タイ人個人の会計士が副業としてアルバイトで監査業務を
行っていた。チェックする資料は当該マネージャーが準備した資料を表面上チェックするだけ、
監査作業は週末土曜、日曜日だけ、一人で行う等で、「監査」と言える検証手続きが十分行われた
かどうか疑問です。特に、横領した金額を負債(マイナス額)の中に紛れ込ませている場合、仕入
取引から検証していかないと発見が難しい可能性があります。
(対策)
以下のような点にご留意頂くことが必要です。
① 支払い資料の準備、通帳等の記帳、会計帳簿の入力、これらの業務は、すべて別の担当者により
分担して行う。
② 通帳記帳はこまめに行い、月次締め後元帳との照合を上席者等別の担当者により行う。
③ タイムリーに月次決算を行う。タイムリーに締めて、タイムリーにチェックを行い、不正の芽は早期に
摘む。
④ タイではすべての株式会社に監査が必須となっています。すべての監査人が十分な監査を行って
いるかどうか心許ない状況です。また、コストとの兼ね合いで、安いタイローカルの監査人を使って
いる場合も多いかと思います。完全な監査は難しいと理解し、上記①から③等内部チェック機能を
向上させることが一層重要となります。
⑤ 今回の件、発見に至り、事後的に判明した事項として、当該経理マネージャーの家族の生活ぶり
が従業員の間で話題になっていたとのこと。例えば、家の事業が拡大していた、大きな家を新築し
た、車を何台も保有している、ぞろ目の特別なナンバーをフェイスブックにアップしていた等々特異
な点があったとのこと。こういった情報もときに重要となります。
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