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JP-5、JP-8
急性曝露ガイドライン濃度 (AEGL) Jet Propellant Fuels ジェット噴射燃料 AEGL 設定値 Table Jet Fuels (JP-5 and JP-8) 8008-20-6 and 70892-10-3 (Final) [mg/m3] 10 min 30 min 60 min 4 hr 8 hr AEGL 1 290 mg/m3 290 mg/m3 290 mg/m3 290 mg/m3 290 mg/m3 AEGL 2 1,100 mg/m3 1,100 mg/m3 1,100 mg/m3 1,100 mg/m3 1,100 mg/m3 AEGL 3 NR NR NR NR NR 3 数値の単位は mg/m であり、ppm でないことに留意 NR: データ不十分により推奨濃度設定不可 設定根拠(要約): 軍や民間の航空機で使用されるジェット噴射(JP)燃料は、脂肪族炭化水素と芳香族炭化水素 の複合混合物であり、石油の様々な蒸留物を混合して製造される。JP-8 は、陸上基地機の主 要燃料である。JP-8 は JP-4 に代わるものであり、JP-4 は現在は使われていない。JP-5 は、米 国海軍が船舶搭載用に開発した燃料である。JP-8 と JP-5 の組成は基本的に灯油(添加剤を含 む)と同じであり、これらは同様の化学的・物理的特性を有している〔米国環境有害物質・特定 疾病対策庁(ATSDR)1998〕。全世界での消費量は、軍用の JP-8 とこれと同等の民間用の Jet A と Jet A-1 を合わせ、年間約 600 億ガロンである。軍用ジェット燃料には、民間用ジェット燃 料では見られない添加剤が含まれている。民間人、軍人とも、燃料生産、航空機への給油、 航空機の整備、偶発的な流出やパイプライン漏出などの際に、ジェット燃料に曝露される可 能性がある。ジェット燃料の放出による災害で、主要なものは火災と爆発である。 本文書においては、JP-8 の毒性に焦点を絞るが、化学的に類似している JP-5 についても多少 言及する。この 2 種類の燃料は組成が類似しており、同様の毒性があると思われる(ATSDR 1998)。JP-8 や JP-5 よりも蒸気圧の高い JP-4 への曝露量は、JP-8 や JP-5 と比較して高いも のとなることが、モニタリングデータから示されている。JP-8 と JP-5 について、マウスとラ ットを用いて感覚や全身への急性的な影響を調べた試験データが得られた。全身毒性と肺毒 性に関する亜慢性毒性試験も存在した。P-8、JP-5 ともに、眼への刺激性が、2,500 mg/m3 以 上の濃度で認められている。また、軽度の皮膚刺激性が、直接局所へ塗布した後に認められ ている。ジェット燃料のエアロゾルの毒性に関する短期反復曝露試験も数件存在した。エア ロゾル化したジェット燃料への曝露の場合は、ジェット燃料の蒸気に同等の濃度で曝露した 場合と比べ、毒性が増強し、標的臓器は肺と免疫系であった。ただし、緊急事態としての曝 1 露は、流出に伴う蒸気曝露の形で起こると予想され、一方、エアロゾルへの曝露は、航空機 用発泡材除去作業中や航空機の低温始動中の職業曝露に限られる。ジェット燃料のエアロゾ ル単独の毒性を調べた試験(Martin et al. 2010; Tremblay et al. 2010)のデータは、AEGL 値の導 出に使用していない。ただし、完全を期すため、この技術支援文書(TSD)には、エアロゾル の吸入試験で得られたデータを収載している。動物試験では、神経毒性や生殖発生毒性、発 がん性の有無についても調べられている。JP 燃料には遺伝毒性や発がん性はないと考えられ ており、ヒトにおける JP-8 の予備的な試験でも、精子に対する影響は生じていない。ジェッ ト燃料に曝露された雄のラットで、特異的な腎症やそれに起因した腎臓がんが生じているが、 ヒトに関連するものではない。 2,500 mg/m3 以上の濃度のジェット燃料では、中枢神経系(CNS) 抑制が引き起こされる。ジェット燃料の成分の多くは、親油性溶剤である。CNS 抑制を引き 起こす親油性溶剤は、一般に、1 時間以内に血中濃度が定常状態に達する。 AEGL-1 値は、Whitmanand Hinz(2001)の感覚刺激試験に基づいて導出した。この試験では、 JP-8 の蒸気/エアロゾル混合物にの RD50 値(Swiss-Webster マウスにおいて呼吸数が半減した濃 度)は、2,876 mg/m3 であった。この RD50 試験は、空中の化学物質の感覚刺激を推定するため の、 標準的なプロトコル〔ASTM E981-84:(1988)〕である。 各雄 4 匹の Swiss-Webster マウスを、 681、1,090、1,837、ないしは 3,565 mg/m3 の濃度で 30 分間曝露した。呼吸数が 30 分以内に濃 度依存的に減少し、上気道に感覚刺激が生じた場合に特徴的な呼吸パターンが認められた。 構造的に異なる多数の化学物質における RD50 と感覚刺激濃度との相関に基づくと、RD50 の 10 分の 1 の濃度は、ヒトにおいて感覚刺激を引き起こすが、数時間から数日間耐容される濃 度である(Alarie 1981; Schaper 1993)。刺激は濃度依存性であり、AEGL-1 を特徴付ける軽度の 感覚刺激に対しては順応が生じる。この理由から、RD50 の 10 分の 1 の値(290 mg/m3)は、 AEGL-1 のどの曝露時間の場合も、耐容される濃度である。290 mg/m3 の値の妥当性は、JP-8 の蒸気に 1,000 mg/m3 の濃度で反復または連続曝露した亜慢性毒性動物試験(Mattie et al. 1991; Briggs 2001; Rossi et al. 2001)において、健康への有害な影響が認められていないことによって 支持される。 AEGL-2 は、ラットやマウスの吸入試験に基づいて導出した。これらの試験では、動物を 1,100 mg/m3 の濃度で JP-8 に曝露しても、中毒や CNS 抑制の徴候が現れなかった蒸気とエアロゾル が混合した状態の JP-8 や JP-5 に、3,430~5,000 mg/m3 の濃度で、短時間(30 分間~4 時間)曝 露した試験(MacEwen and Vernot 1985; Wolfe et al. 1996; Whitman and Hinz 2001)を AEGL-2 導 出の根拠としたが、これは、蒸気に 1,000 mg/m3 の濃度で反復または連続曝露した試験(Mattie et al. 1991; Briggs 2001; Rossi et al. 2001)によっても支持される。有害な影響が認められておら ず、また最長 90 日間の反復または連続曝露で試験が行われたため、この濃度(1,000 mg/m3) での試験結果には、不確実係数を考慮しなかった。これより高い濃度(JP-8 の 3,430、3,565、 4,440 mg/m3 と、JP-5 の 5,000 mg/m3)に、 種間不確実係数として 1(げっ歯類はヒトに比較して、 呼吸数と心拍出量が高く、全身の取り込み量が多いため)、種内不確実係数として 3(潜在的に 感受性の高い個人を保護するため)を適用した。ヒトとげっ歯類は、溶剤についての感覚刺激 に関する閾値でも、CNS 抑制に関する閾値でも、一般に 3 倍以下の変動しか示さないため、 2 種内不確実係数は 3 で十分であると判断した。不確実係数を適用して得られた値(1,100~ 1,700 mg/m3)の低い方の値(1,100 mg/mg3)は、有害な影響が認められなかった反復曝露試験に おける濃度とほぼ同じ濃度である。CNS 抑制は、濃度に関連した影響である。CNS への影響 を引き起こす溶剤は、一般に、1 時間以内に血中濃度が定常状態に達する。また、導出の根 拠とした試験における曝露時間が 4 時間であるため、AEGL-2 の 4 時間以下の値を、1,100 mg/m3 とした。Mattie et al.(1991)の試験では、ラットとマウスを 1,000 mg/m3 の濃度で、最長 90 日間連続曝露(1 日 24 時間)しているため、8 時間値も 1,100 mg/m3 とすることができる。 これらの試験のほどんどでは、曝露(特に高濃度での曝露)が JP-8 の蒸気とエアロゾルの混合 物で行われているとことから、AEGL-2 値の妥当性が支持される。 JP-8 や JP-5 では、蒸気圧が比較的低いといった物理的性質から、死亡を引き起こすほど高濃 度で蒸気が存続する状態にはならないと考えられる。Wolfe et al.(1996)の報告に示されている ように、35ºC の試験系で到達できた JP-8 の最高濃度は、蒸気の場合が 3,430 mg/m3、蒸気と エアロゾルの場合が 4,440 mg/m3 である。しかし、蒸気とエアロゾルの混合物について、環境 中で到達可能な最高濃度は 700 mg/m3 と推定されており、安定な JP-8 エアロゾルとしては、 500 mg/m3 が上限である。環境条件下では、JP-8 や JP-5 の蒸気・エアロゾル混合物は、死亡を 引き起こすほど高い空気中濃度で存続することはないという公算に基づき、AEGL-3 の導出 は行わなかった。 AEGL 値は、ジェット燃料のエアロゾルと蒸気の混合物について報告されている濃度に基づ いて導出されているが、主要なのは、蒸気に対する曝露である。エアロゾル曝露は、おそら く肺深部への沈着を引き起こす。したがって、エアロゾルと蒸気の混合物曝露に基づく AEGL 値は、気相曝露に基づく AEGL 値よりも、安全側に考慮した値である。10 mg/m3 の濃度のエ アロゾルは、発煙する。この濃度以上になると、物質表面に、液体として沈着するようにな る。 AEGL 値を Table にまとめて示す。 ----------------------注:本物質の特性理解のため、本文書の最後に、参考として国際化学物質安全性カード(ICSC)を 添付する。 3 国際化学物質安全性カード ICSC番号:0663 ケロシン ケロシン KEROSENE Kerosine Light petroleum Lamp oil Fuel oil noー1 CAS登録番号:8008-20-6 RTECS番号:OA5500000 ICSC番号:0663 国連番号:1223 EC番号:649-404-00-4 災害/ 暴露のタイプ 一次災害/ 急性症状 応急処置/ 消火薬剤 予防 火災 引火性。 裸火禁止、火花禁止、禁煙。 粉末消火薬剤、AFFF(水性膜 泡消火薬剤)、泡消火薬剤、二 酸化炭素。 爆発 37℃以上では、蒸気/空気の爆 37℃以上では、密閉系、換気、 火災時:ドラム缶などに水を噴霧 発性混合気体を生じることがあ および防爆型電気設備。帯電を して冷却する。 る。 防ぐ(例えばアースを使用)。 ミストの発生を防ぐ! 身体への暴露 吸入 錯乱、咳、めまい、頭痛、咽頭 痛、意識喪失。 換気。 新鮮な空気、安静。必要な場合 には人工呼吸。医療機関に連 絡する。 皮膚の乾燥、ざらつき。 保護手袋。 汚染された衣服を脱がせる。洗い 流してから水と石鹸で皮膚を洗 浄する。医療機関に連絡する。 発赤。 安全眼鏡。 数分間多量の水で洗い流し(でき ればコンタクトレンズをはずして)、 医師に連れて行く。 下痢、吐き気、嘔吐。 作業中は飲食、喫煙をしない。 吐かせない。 安静。医療機関 に連絡する。 皮膚 眼 経口摂取 漏洩物処理 貯蔵 ・漏れた液を密閉式の容器に集める。 ・耐火設備(条件)。 ・残留液を砂または不活性吸収物質に ・強酸化剤から離しておく。 吸収させて安全な場所に移す。 ・涼しい場所。 ・この物質を環境中に放出してはならな い。 ・(特別個人用保護具:自給式呼吸 器)。 包装・表示 ・EU分類 記号 : Xn R : 65 S : 2-23-24-62 Note : H ・国連危険物分類(UN Haz Class):3 ・国連包装等級(UN Pack Group):III 重要データは次ページ参照 ICSC番号:0663 Prepared in the context of cooperation between the International Programme on Chemical Safety & the Commission of the European Communities © IPCS CEC 1993 国際化学物質安全性カード ICSC番号:0663 ケロシン 重 要 デ 物理的状態; 外観: 特徴的な臭気のある、粘稠度の低い液体 暴露の経路: 体内への吸収経路:蒸気の吸入、経口摂取 物理的危険性: 流動、撹拌などにより、静電気が発生することが ある。 吸入の危険性: 20℃で気化したとき、空気中で有害濃度に達す る速度は不明である。 化学的危険性: 酸化剤と反応する。 短期暴露の影響: 皮膚、気道を僅かに刺激する。液体を飲み込む と、誤嚥により化学性肺炎を起こす危険がある。 神経系に影響を与えることがある。 | タ 許容濃度: TLV は設定されていない。 長期または反復暴露の影響: この液体は皮膚の脱脂を起こす。 物理的性質 環境に関する データ ・沸点:150~300℃ ・融点:-20℃ ・比重(水=1):0.8 ・水への溶解性:溶けない ・相対蒸気密度(空気=1):4.5 ・引火点:37~65℃ ・発火温度:220℃ ・爆発限界:0.7~5 vol%(空気中) ・水生生物に対して毒性がある。 注 ・組成によって物理的性質は異なる。 ・ケロシン(灯油)の経口摂取が子供の偶発的事故の主な原因となっている。 Transport Emergency Card(輸送時応急処理カード):TEC(R)-551 NFPA(米国防火協会)コード:H(健康危険性) 0;F(燃焼危険性) 2;R(反応危険性) 0; 付加情報 ICSC番号:0663 更新日:1998.11 ケロシン © IPCS, CEC, 1993 国立医薬品食品衛生研究所