Comments
Description
Transcript
事業事前評価表(開発調査)
事業事前評価表(開発調査) 作成日:平成18年9月20日 担当グループ:社会開発部第三G(社会基盤) 1.案件名 インドネシア国 次世代航空保安システム整備に係るフィージビリティー調査 2.協力概要 (1)事業の目的 次世代航空保安システム整備に係るF/Sの実施およびシングルATSプロバイダーの設立に係る計画を 策定することにより、安全かつ効率的な航空輸送の実現に寄与する。 (*ATS:Air Traffic Services、航空交通業務) (2)調査期間 2006年11月~2007年12月 (3)総調査費用 約1.6億円 (4)協力相手先機関 運輸省航空総局 DGCA(Directorate General of Civil Aviation)、Ministry of Transport (5)計画の対象(対象分野、対象規模等) (a)対象分野:航空分野 (b)対象地域:インドネシア全域および関連空域 3.協力の必要性・位置付け (1)現状及び問題点 インドネシア国(以下、「イ」国)は、東西約5,100km、南北約1,800kmの広がりの中に15,000を 超える島が存在する島嶼国であり、航空輸送が基幹輸送モードのひとつとして重要な役割を担ってい る。また、好調な経済状況、規制緩和による新規参入効果で運賃が低下したことから航空需要の伸び が著しく、この傾向は今後も継続することが予想され、2003年から2004年にかけてJICAが実施した 「インドネシア国 航空セクター長期政策調査」によると2025年の航空交通量は2002年のおよそ4倍 に達すると予測されている。そのため、交通量の増加に対応した航空管制体制の構築は「イ」国の重 要な課題となっている。 上記政策調査において、安全かつ効率的な航空輸送実施のために、航空管制システムの更新など航空 安全管理システムの整備、安全管理業務の品質管理の徹底が必要と提言された。管制システムについ ては、国際民間航空機関(ICAO)が航空衛星、コンピュータ、デジタルシステムを利用した次世代型 の航空管制システム(CNS/ATM:通信、航法、監視/航空交通管理)の2010年までの導入を勧告し ている。特に、需要の伸びが著しく、管制区域も複数の国・地域に分かれているASEAN地域において は、管制区域境界における管制の移行が円滑に実施される必要があり、各国間の調和の取れたシステ ムの導入が求められているため、「イ」国においてもCNS/ATM導入の必要性がある。また、同分野 における「イ」国特有の課題として航空交通業務が航空総局(DGCA)、第一国営空港管理会社(API)、第二国営空港管理会社(AP-II)という3つの組織によって提供されていることがある。航空交通 業務の方式や運用方法が異なることによる不調和が発生し、航空機の飛行安全性と効率性の面で支障 となっている。係る状況を受け、上記政策調査では航空交通業務を一元的に扱うシングルATSプロバ イダーの設立が提言され、「イ」国政府は航空法の改正法案を国会に提出し、現在審議中である。 以上のような背景から、「イ」国政府は、CNS/ATMの導入に係る計画立案、シングルATSプロバイ ダーの運営体制の検討などを盛り込んだフィージビリティー調査の実施を要請した。 (2)相手国政府国家政策上の位置づけ 国家中期開発計画(2004年~2009年)において、航空輸送開発のプログラムとしてCNS/ATM整備 が位置づけられている。 また、航空総局が策定した航空分野の開発計画(Air Transport Development Plan 2005─2024) では、2005年から2009年までの政策としてシングルATSプロバイダーの設立が位置づけられてい る。 本調査は次世代航空保安システム整備に係るF/Sの実施とシングルATSプロバイダーの設立に係る計 画を策定することを目的としており、インドネシア国の開発政策との整合性が図られている。 (3)他国機関の関連事業との整合性 当該分野においては、フランス政府が1995年に実施した「Master Plan and Feasibility Studies in the Area of Air Traffic Control」が存在するが、計画の策定から10年が経過していることと提案され た事業についてもほとんど実施に至っていないため、計画の更新が必要である。また、フランス政府 の資金協力にてマカッサル航空交通管理センターの近代化が実施され、2006年より供用が開始され ている。本調査では、センターの機能について把握した上でインドネシア全体として整合性のある整 備計画を策定する。 (4)我が国援助政策との関連、JICA国別事業実施計画上の位置づけ 国別援助計画では、わが国のインドネシアに対する重点分野・重点事項の一つに「経済インフラの整 備」が掲げられている。また、本案件は基幹輸送モードである航空交通の整備に資することか ら、JICA国別事業実施計画の援助重点分野「民間投資主導の成長のための環境整備」の中の「経済イ ンフラストラクチャー支援プログラム」として位置づけられる。従って、わが国及びJICAの対インド ネシアへの重点的な援助政策・課題と本案件の内容は合致している。 4.協力の枠組み (1)調査項目 (a)現状把握 航空保安施設の現況およびCNS/ATM整備計画 既存の航空需要予測と実際の航空交通量の比較 将来航空需要の分析 周辺国のCNS/ATM整備の現況、整備計画の把握 ATSプロバイダーに係る法制度、業務内容、財務状況、人材育成制度の把握 ATSプロバイダーに係る政府の安全認証制度の導入状況把握 シングルATSプロバイダー設立に向けた動向把握 他国のATSプロバイダーの現状把握 問題点の抽出 (b)CNS/ATM整備に係るF/Sの実施(目標年次2015年) ATM導入に向けたロードマップの策定(CNS/ATMの機能面に係るロードマップの策定) CNS整備計画の策定(上記の機能を実現するための施設整備計画の策定) F/S対象コンポーネントの選定 優先プロジェクトの選定 優先プロジェクトの概略設計 費用積算 設置計画の策定 維持管理運営計画の策定 経済分析・財務分析 維持管理に係る人材育成計画 (c)シングルATSプロバイダー設立計画の検討 組織計画の検討 運営計画の検討 人材育成計画の検討 財務計画の検討 シングルATSプロバイダー設立に向けた複数のシナリオ策定 シングルATSプロバイダー設立(移行)計画の策定 (2)アウトプット(成果) CNS/ATM整備に係る優先プロジェクトの概略設計と費用積算の実施 シングルATSプロバイダー設立計画の策定 (3)インプット(投入):以下の投入による調査の実施 (a)コンサルタント(分野/人数) 総括/1 副総括/航空管制/1 組織計画/1 航空保安システム/1 施設計画設計(航空保安)/1 積算/施工計画/1 機材計画/自然条件調査/1 需要分析/経済分析/1 財務分析/1 人材開発/1 (b)その他 研修員受入れ 5.協力終了後に達成が期待される目標 (1)提案計画の活用目標 提案計画が国家計画に反映される (2)活用による達成目標 F/Sに基づく事業の実施 航空管制業務の統合が促進される 6.外部要因 (1)協力相手国内の事情 (a)政策的要因:開発政策の変更によるF/S対象事業の優先度の低下や航空セクター における主要政策の変更等 (b)行政的要因:関連省庁および運輸省航空総局とAP-I、AP-II間での調整の遅延等 (c)社会的要因:治安の急激な悪化 (d)経済的要因:インドネシア国経済の著しい悪化 (2)関連プロジェクトの遅れ 特になし。 7.貧困・ジェンダー・環境等への配慮(注) 本調査は、次世代航空保安システム整備に係るF/Sの実施とシングルATSプロバイダーの設立に係る 計画を策定することが目的であるが、F/Sの対象としては航空保安施設の更新、整備が考えられ大規 模な施設建設が含まれる可能性は極めて低い。そのため、環境・社会への重大なインパクトは発生せ ず、JICA環境社会配慮ガイドラインのCカテゴリーに従って実施する。 8.過去の類似案件からの教訓の活用(注) 調査の目的の一つであるシングルATSプロバイダー設立計画の策定にあたっては、ステークホルダー (DGCA、AP-I、AP-II等)によってシングルATSプロバイダーの組織体制のあり方について見解の相 違が十分考えられる。そのため、ステークホルダー間にて十分な協議を行いつつ、計画についての合 意形成をなす必要がある。 9.今後の評価計画 (1)事後評価に用いる指標 (a)活用の進捗度 F/S対象事業の進捗状況 策定されたCNS/ATM整備計画の国家計画への反映 (b)活用による達成目標の指標 F/S対象事業の実施率 (2)上記(a)および(b)を評価する方法および時期 フォローアップ調査によるモニタリング (注)調査にあたっての配慮事項