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下肢静脈瘤治療の最前線
下肢静脈瘤治療の最前線 NTT東日本札幌病院 心臓血管外科 松崎賢司 下肢静脈瘤って? 「瘤(りゅう)」とは「こぶ」のこと 「瘤」のつく、その他の病気 脳動脈瘤(破裂): 腹部大動脈瘤(破裂): 命に係わる重症な病 命に係わる重症な病 下肢静脈瘤(破裂?) 命に係わる・・・・ことは全くない病 そもそも破裂しません。 腹部大動脈瘤 圧の高い大動脈に「こぶ」がで きる。破裂すると大出血。 血管がふくらむこと自体が問題 大動脈瘤手術後 下肢静脈瘤 下肢静脈瘤 下肢の静脈の拡張 圧は低い 直接切らなければ出血はしない 出血しても下肢を挙上して圧迫 すれば死ぬことはない ふくらむことが問題ではない。 静脈機能が落ちることが問題 下肢静脈瘤:別名=慢性静脈不全 「こぶ」が破れる心配は無用 慢性的な静脈の機能障害 Q:静脈の機能とは? A:血液を心臓に戻すこと 慢性的に下肢の血液の戻りが悪い状態 血液の戻りが悪いので脚がむくむetc 静脈の病気は心配しなくてよい 過去の講演でもいってきたこと 下肢静脈瘤で人は死にません。 足が切断になることはありません。 その結果、意外とほっとかれてしまう病気です 死なないし下肢もなくならない・・・ 下肢の皮膚が悪くなるなど意外と問題児です 下肢静脈瘤治療の最前線・・・・ というタイトルですが・・・ 下肢静脈瘤や他の下肢の静脈の病気について 治療法を3つほどご紹介します 静脈のしくみ について 静脈(図の青いほう) 血液の戻り道。 奥深くにある深 部静脈と、皮膚 の下にある表在 静脈からなる 足の静脈のしくみ 皮膚の下、皮下脂肪内にあ る表在静脈と筋肉内にある 深部静脈がある 一度心臓へ向かった血液 が足にもどってこないように 弁がある 静脈の戻りの原動力 弁のしくみ、ふくらはぎの筋肉 筋肉(特にふくらはぎ)の収縮によって血液は上に上がる。 一方弁によって血液は下に戻らない (ふくらはぎの)筋肉を鍛えることは足のむくみによい 深部静脈vs表在静脈 大事なのは深部静脈 表在静脈は、なくなっても問題ない 心臓のバイパス手術などに使用される 下肢の表在静脈に よるバイパス 閉塞した心臓の動脈 心臓 下肢の静脈におこる病気 について 下肢の静脈についておこりうること 静脈がつまる 深部静脈血栓症 静脈の弁が壊れる、逆流 表在静脈の弁が壊れる→下肢静脈瘤 深部静脈血栓症 急に下肢の深部静脈に血栓ができる 静脈がつまって脚が腫れる 血栓が移動して肺にいくことも。生命 にかかわることもある。 重症肺血栓塞栓症の一例 安藤太三:Heart View 13(8), 928-933, 2009 一部改変 下肢静脈瘤 表在静脈の逆流 下腿の静脈が拡張 むくみ 足がつる 皮膚の色素沈着 下腿の皮膚潰瘍 下肢静脈瘤-軽症例 太い表在静脈の逆流が ないもので枝の逆流が 少し見られるもの 症状はありません 下肢静脈瘤の中等症例 ふくらんでいる部位より頭 側に逆流源がある 下肢静脈瘤-重症例 膝下の内側に色がついたり、 皮下脂肪が硬くなります。 傷ができると直りが悪く潰瘍になります 下肢静脈瘤の検査 超音波(エコー)検査のみでok 外来で検査可能 造影剤やCTなどは必要なし 被曝はなく、体への負担もない 手術の場合はさらに採血・レントゲンなど 下肢静脈瘤エコー検査 外来で簡単にできます 下肢静脈瘤治療法 弾性ストッキング 手術治療(それなりの逆流がある場合) 静脈抜去(ストリッピング)術 血管内焼灼術(レーザー治療) 瘤切除 硬化療法 軽症例 手術後の補助的治療 下肢静脈瘤の手術 表在静脈の逆流を止める。 表在静脈を取り去る(抜去) もしくは焼きつぶす(レーザー) 拡張した静脈瘤は別個にとる。 瘤切除 下肢静脈瘤の手術 逆流している静脈を大腿 部で取る/または焼きつぶ す その上で拡張した静脈瘤 を取り去る ふくらんでいる静脈瘤は逆 流している静脈の枝 静脈瘤抜去手術後の写真 (1週間後) 下肢静脈瘤治療の最前線? 3つほど紹介します 下肢静脈瘤血管内焼灼術(レーザー手術) 皮膚障害に対する内視鏡手術 深部静脈血栓症に対する直接的血栓溶解術 下肢静脈瘤の血管内焼灼術 2011年から保険適応 逆流のある表在静脈を内側から‘焼きつぶす’ 欧米:8割がた焼灼術 それなりの手術です。 キズをつけなくてもできる 針刺しでできる 局所麻酔でできる 日帰りでできる レーザー焼灼術 股の付け根にキズが付かない などの利点はありますが 結構な局所麻酔が必要 2011に導入されたレーザーの問題点 治療効果は従来の抜去手術と同等 治療後の痛みが2-3週ある(抜去手術もある) 治療後の内出血がみられる(抜去手術もある) 1か月たてば、いずれも軽快する(抜去手術も同様) なんだ、抜去手術と変わらないじゃん! レーザー治療後の 一時的な内出血 必ず治ります 実は最新機種が導入されなかった 導入された機種が欧米でいえば「旧式:1世代前」 最新のものは新しいゆえに実績がない 実績がないものは厚労省も認め難い 病院によっては自費診療で「新型」が使われた でもあれから3年たった・・・ 2014にあらたに2つが保険適応になりました レーザーの進化版 レーザーじゃない方式での焼灼機器(高周波) 現状の欧米でもこれ以上の改良はされてません レーザーの進化版 ELVeS1470 (エルベス1470) 2011に導入 された初期型 レーザー ELVeS980 新規機種:高周波焼灼 ClosureFast (クロージャーファースト) 高周波焼灼/進化版レーザー 治療効果は従来の抜去手術とおなじ 治療後の痛みがほとんどない 治療後の内出血がほとんどない 高周波と進化版レーザーは同等 これ以上の改良は、もうない。 NTT札幌病院には両方ともありません。 旧式のレーザー機種のみ 2015に高周波導入予定(病院の予算が付いたら) 下肢静脈瘤の焼灼術 2011∼保険適応 病院や医師は一定の基準をクリアする必要あり 演者(松崎)は北海道の「指導医」第1号 下肢静脈瘤治療の最前線 :血管内焼灼術のまとめ 2011年に旧式レーザーが健康保険適応 2014年に進化版レーザーと高周波焼灼術が 保険適応 従来の抜去手術もふくめ、「小手術」です 下肢静脈瘤治療の最前線? :皮膚障害例に対する内視鏡手術 内視鏡下筋膜下穿通枝切離術(SEPS) 内視鏡下、筋膜下、穿通枝切離 内視鏡をつかって筋膜の下から穿通枝を切り離します 静脈瘤により脚の皮膚障害がある人への手術の1つ 2009年に先進医療認定 2014年に健康保険適応 札幌でやっているのは当院だけ 静脈瘤による皮膚障害 血の戻りが悪い状態が長く続く 静脈の逆流 脚の皮膚、皮下脂肪が悪くなる 色素沈着(シミ) 皮下脂肪が硬くなる そこにキズができると治らない 下肢切断にはならない 静脈が原因だと気づかれない場合もある 静脈瘤による皮膚潰瘍 内視鏡治療の効果(広島県の病院) 穿通枝 表在静脈と深部静脈 をつなぐ静脈 表在→深部にしか流 れないように弁がある この弁が壊れて深部 →表在に逆流する 穿通枝の逆流に対しては 穿通枝を切り離せば逆流がなく なる 皮膚の悪い部位にある穿通枝 は 悪い皮膚を切開する必要がある 手術のキズが治らない そこで皮膚のいいところを切って 内視鏡をいれて血管を切り離す 内視鏡下筋膜下穿通枝切離術 超音波検査 でここに逆流 する穿通枝 がある 皮膚の良いところ を切って内視鏡で 処理 矢印が逆流穿通枝 専用の器具でその まま焼切る 切離完了 当科での治療例 50歳代の男性 1年間、右下肢のキズがなおらない 内視鏡手術ののち植皮 初診時 超音波検査でここに 逆流する穿通枝が ある 内視鏡手術終了後1週くらい 2か月後 内視鏡手術の問題点とまとめ 日帰りでは、できない なかなか治らない皮膚障害には有効 札幌でやっているのは当院だけ 下肢静脈瘤治療の最前線? 下肢静脈瘤ではないですが・・・ 深部静脈血栓症に対する直接的血栓溶解術 深部静脈血栓症:深部静脈がつまって急に脚が腫れる 深部静脈血栓症 急に血栓ができて下 肢が腫れる 早めに血栓溶かした 方がよい場合もある 全身に投与しても血 栓に有効に届かない 直接血栓の中に管を 入れて血栓を溶かす 薬を入れる この管を血栓の中に穿刺でいれて 溶解する薬を噴射する 治療風景 ←頭側 うつぶせで膝裏から管を入れて薬を注射。 治療前 治療後 静脈の 血栓 治療により 血栓が消失 治療効果 治療前 治療後 深部静脈血栓症に対する 直接的血栓溶解療法 下肢が急に腫れた人が対象 発症2週間以内が望ましい 時間がたつと血栓が溶けにくくなる これも札幌でやっているのは当院くらい? 入院治療です。 下肢静脈瘤治療の最前線? レーザー焼灼術 内視鏡下筋膜下穿通枝切離術 2014にバージョンアップ(当院にはない) 検索するなら「ELVeS1470」か「ClosureFast」 現時点で当院にはない 下腿の難治性の創傷に適応できる場合あり 札幌でやっているのは当院だけ 深部静脈血栓に対する直接的血栓溶解 急に太もも以下が腫れた場合に適応できる場合あり 2週間以内が望ましい