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世界最優秀民族が異世界にやってきました

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世界最優秀民族が異世界にやってきました
世界最優秀民族が異世界にやってきました
mk−3
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ
テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ
ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範
囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し
ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
世界最優秀民族が異世界にやってきました
︻Nコード︼
N6471DD
︻作者名︼
mk−3
︻あらすじ︼
韓国済州島に突如出現した門。
北朝鮮の進攻を警戒する韓国政府はスラム街の住民、無職者、犯罪
者などを特別徴兵し異世界への侵略を始める。
自称世界最優秀民族による虐殺のはじまりである。
韓国軍による異世界人虐殺の真っ只中に勇者として召喚された日本
人の高校生、鈴木道彦。
チート能力無し。
1
伝説の装備無し。
魔法無し。
召喚獣無し。
時を操作する能力無し。
近代兵器無し。
wi−fiあり。
スマホあり。
道彦はスマホで韓国軍の虐殺を生中継する。
後に伝説となる生中継の幕開けだった。
容赦なく戦火に巻き込まれていく道彦。
覚醒剤でブーストした数十万の韓国軍 VS ただの高校生&世界
中のお前ら
本気でただの高校生を抹殺しようとする韓国。
報道しない自由を駆使する日本のマスコミ。
見殺しにする役所。
道彦に死んで欲しい議員。
道彦を助けようとするクラスメイト。
九条ナイフがクラスメイトを襲い、左翼団体が学校襲撃。
史上最悪の血まみれファンタジーが今始まる。
※元ネタの大半をベトナム戦争から頂いております。そのため現在
の戦略とは大きく異なっています。でもやめない。
※※ゴアシーン過多。ほとんどホラーです。
※※※ギャグはほとんどありません
カクヨムにも投稿しました。
→いろいろあって削除されました。ぱよぱよちーん。
2
序章 世界最優秀民族
世界最優秀民族。
それは言うまでもなく韓民族である。
全ての文明は韓半島発祥であり、文明を創始者は古代韓国である。
イエスキリストは韓人であるし、孔子も韓人である。
※︵http://www.unionpress.co.kr/
news/articleView.html?idxno=22
4551︶
※︵http://www.excite.co.jp/News
/world︳g/20151026/Postseven︳35
5437.html︶
そればかりか最古のアメリカ大陸到達者という冒険者のDNAを
持っている。
※︵http://japanese.joins.com/ar
ticle/094/137094.html?sectcode
=&servcode=︶
あの野蛮な日本人にも文明を教えてやった。
剣術、剣道、侍、武士道、相撲、忍者、空手、柔道、合気道、日
本刀、弓道、流鏑馬、切腹、道の精神を作ったのも韓人だ。
それだけではない、文化も科学技術もすべて我が優秀な韓民族の
発明したものである。
つまりあらゆる日本の功績は韓民族のものなのである。
15世紀の記録では韓民族は世界最高の科学力を誇る、というこ
とをサイバー外交使節団VANKが世界に拡散させる運動を起こし
たほどだ。
3
※︵http://m.media.daum.net/m/me
dia/digital/newsview/201601211
01802081︶
それなのに!
それなのにあの薄汚い日本人に買収されたノーベル財団はなぜ我
らを認めない!!!
なぜ我が民族以外の劣等民族を認めようとする!
許さぬ!
日本人も日本人に味方するヤツらも許さぬ⋮⋮
チャンスが⋮⋮
チャンスさえあれば我らはその優秀さを世に示せるのだ!!!
と、数年前にスマートホンバブルが訪れたにも関わらず、それを
無駄に潰した彼らは世界を恨んだ。
4
序章 世界最優秀民族︵後書き︶
韓国紙がGATEに難癖をつけたので韓国ならやりそうなネタを詰
め込みました。
5
イルボンを殺せ!
2016年。
韓国済州島。
突如として異世界への門が出現した。
なぜか韓国政府は日本の右翼主義者の謀略だと認定。
戒厳令を布告した。
非常事態宣言も戒厳令も効果は憲法の一部分の停止である。
なぜなら国家存亡の危機の中では国民の財産や権利が足かせにな
ることがある。
例えば救助の際に家や財産を破壊しなければ救助がままならない
場合やスパイやテロリストを逮捕せずに排除することなどである。
消防などは災害時に緊急の場合があるときは建物を含めた他人の
財産を壊すことを許されているが、それはあくまで常識の範囲内で
の例外であり、無制限な権限を与えられているわけではないし、範
囲は法律で事前に決められている。
非常事態宣言も大まかには同じ趣旨で、﹁今は特別ですよ。﹂と
いう前提で、国民の権利を制限する幅を大きくしている。
大規模な災害などの救助でいちいち法の定めた手続きに従っては
被害が増大してしまうからだ。
一方、戒厳令においては救助を含めた軍隊の活動という目的で広
く一般的に憲法が制限される。
憲法は国の根幹をなす法律なのでつまり戒厳令とは軍隊による国
家権力の掌握である。
︵建前上軍隊が存在しないことになっている日本では戒厳令は存
在しない︶
この戒厳令によって、最高司令官である大統領の任期は無制限に
延長され、軍は議会を通さずに大統領の命令であらゆる作戦を実行
6
することができるようになった。
実質的な軍のクーデターである。
さらに外国にはアメリカと中国の間をフラフラしつつ両者を争わ
せて、両国から自国のみでの探索の許しを得た。
﹁もういい。帰れ﹂を許可と受け取ったのだ。
国連には﹁アジアのユダヤ人を差別するのか!﹂と意味不明な恫
喝をし、同時に大量の賄賂を配って黙らせた。
国民用の年金はなくなったのは気にしない。
どうせ人の金である。
異世界から得られる利益でどうにかなるだろうと韓国政府は考え
た。
これによってアメリカにも中国にも遺恨を残したが、それが原因
で数年後に起こる国難を想像できるほど彼らは想像力が豊かではな
い。
彼らにとっては時とは単に瞬間が連続しているだけなのだ。
瞬間は過去にも現代にも繋がっていないのだ。
こうしてノープランのまま韓国は異世界への探索に乗り出したの
だ。
門周辺。
その開門を今か今かと待ちわびる軍団がいた。
韓国特別徴兵隊。
海外同胞と無職の国民、それに犯罪者で作った軍団である。
韓国政府は異世界への探索を世界に発表した。
が、発表した後に気づいた。
人手が足りない。
ここで人員を割けば北に対抗できないことをこの段階でようやく
気づいたのだ。
シンクタンクの計算がいいかげんだったのだ。
人員も予算も装備も弾薬も何もかも嘘だったのだ。
7
まず弾薬は日本から巻き上げた。
差別と慰安婦と過去の歴史問題を声高に叫べば日本政府は言うこ
とを聞いた。
こういうものにうるさい日本の野党は金で黙らす。
弾薬を買うよりはずっと安い。
これで弾薬の心配はなくなった。
問題は人員である。
焦った韓国政府は特別徴兵を実施。
犯罪者や無職者で軍を編成した。
海外工作に資金を使い果たしたため訓練などは一切行わない。
さらに財閥からも資金提供を受けたため財閥が軍の上層部に人を
送り込むことをごり押しした。
しかたなく司令官を財閥が用意した人材に変更した。
名声を欲しがったド素人であるから危険性はないだろう。
この時の上層部は見込みが甘かった。
その結果、軍服に企業CMがプリントされた異常な集団ができあ
がった。
もうこの時点で期待ができない。
さらに韓国軍が誇る数々の不良品装備を押しつけて異世界に送り
出したのだ。
在庫一掃である。
こうして冬期オリンピックのように初手からグダグダな探索が始
まろうとしていた。
そんなある意味被害者の彼らは目を血走らせていた。
彼らはある噂を聞きつけ興奮していたのだ。
それは犯し殺し焼き放題という、21世紀でまともな教育を受け
た人間なら眉をひそめる内容だった。
だが、そのまことしやかにささやかれる噂は彼らの本能を刺激し
た。
8
ベトナムで味わった最高の体験。
殺し犯し焼き尽くす。
それこそ彼らの本能なのだ。
このとき彼らの多くはすでに勃起していた。
本来なら一生使うことのない9㎝の如意棒を硬く硬くしていたの
だ。
そして門が開く。
門の外にはネットゲームでは味わえない最高の体験が待ち受けて
いる。
その興奮が全体を包んだ。
﹁殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!﹂
誰ともなく叫びはじめた。
興奮は瞬く間に全員に広がる。
﹁殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!﹂
全員が制御不能の殺意に興奮する中、司令官が壇上に現れる。
財閥のグループ企業で最高責任者を務めていたキム・マルチャン
だ。
財閥総帥の甥でこれまでコネ入社、コネ出世、コネ経営で生きて
きた。
まさに財閥版ロイヤルファミリーである。
そしてそのキャリアをさらに華美にするためだけに司令官就任を
ごり押ししたのだ。
兵役も拒否した彼は軍事のことなど何も知らない。
韓国で大人気のアメリカ製リアルタイムシミュレーションのよう
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に兵が動いてくれると思っているレベルだ。
彼には兵たちがボードゲームの駒にしか見えていなかった。
そんな彼は威厳のある声で静かに、だが全員に聞こえるように言
った。
韓人は営業とイメージ戦略だけは得意なのだ。
﹁この門の外から攫ってきた奴隷からわかったが門の中の文明レベ
ルは極めて低い。水車も作れないレベルだ﹂
日本統治時代まで水車を作れなかったことは完全に忘却の彼方、
彼はどこまでも高い目線で言った。
確実に勝てる。
それは兵にとって重要なことだった。
強いものには弱く、弱いものには能力を超えた強さを発揮する。
それが韓民族である。
そして彼らに司令官は決定的な一言を放った。
イルボン
﹁この門の外にいるのは日本人だ﹂
途端に﹃殺せ!﹄コールが大きくなる。
日本人を抹殺して奪われた約束の土地を取り戻す。
奪った憶えもなければ、元寇などを考えれば侵略者は朝鮮半島の
ような気がする。
ところが韓国では反日は国教であって反論は許されないのだ。
反論などしようものなら最悪の場合、殺されても文句は言えない
し、逮捕すらされる。
なぜなら彼らは幼いときから日本人を殺すことだけを考えて育て
られる。
悪いことはすべて日本人のせい。
景気が悪いのも、災害も、事故も、事件も、自分が不幸なのも、
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自分が惨めなのもすべて日本人のせいである。
それが彼らの信仰なのだ。
結果として彼らは日本人の不幸は全力で喜ぶ。
震災直後の彼らの喜びっぷり、サッカーワールドカップでの﹁日
本の大震災をお祝いします﹂の横断幕は記憶に新しい。
これらは第3国からも﹁人間失格﹂と言われるほどである。
※︵https://www.youtube.com/wat
ch?v=TG3nvJQSXI4︶
※︵http://blog.livedoor.jp/jan
ews/archives/6111284.html︶
要するに韓国では一般的に日本人には何をしてもいいというのが
反日という宗教の教義であり、常識なのである。
なので細かいツッコミなどは疑問には思わないし、もし疑問に思
っても口に出したら弾圧されるので黙っているのである。
それにみんなが楽しんでいるのだ。
自分一人だけが悩むのは損である。
よくわからないけど日本人への嫌がらせは楽しい。
これこそ彼らの行動原理である。
ゆえに彼らは心から歓喜していた。
そもそも門の中は明らかに異世界で、日本人はいないはず。
そんな常識的なツッコミはここでは通用しない。
そればかりか国家反逆罪の容疑でその場で処刑されても文句は言
えない。
なにせ夢にまで見た日本人の抹殺なのだ。
現実では逆立ちしても叶わない夢を思う存分味わうことができる
のだ。
反日という宗教、正義の側という道徳、そしてなによりも暴力を
好む民族性を要因として脳内麻薬が生産され、究極のエクスタシー
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が彼らを狂気に追い込んだ。
そしてそんな狂気混じりの歓声の中、門が開いていった。
﹁殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!﹂
そして異世界は世界最悪の軍隊の本気を知ることになる。
◇
門開通から24時間後。
ソウル市内。
ホテルで二人のオークが交尾をしていた。
﹁ホラホラホラホラ﹂
﹁ブッチッパ!﹂
﹁で⋮⋮出ますよ﹂
﹁ンアッー!﹂
野獣先輩の如き雄叫び。
パコパコすることすでに8時間。
コンドームとバイアグラの空き箱が床に散乱していた。
そしてまた事に及ぼうとする二人に無粋な邪魔が入る。
それは携帯電話の着信だった。
着信の相手は広報官。
男は満足そうに女を離し、女は仕事の終わった慰安婦のようにけ
だるげに電話に出た。
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﹁あ? てめえなに邪魔してんだよ! パコパコの邪魔しやがると
反逆罪で刑務所にぶち込むぞ!﹂
電話を取り怒鳴り散らした女。
彼女はパコ・グニ。
韓国の大統領である。
すでに8時間ものパコパコを経た身だがまだその火照った体は未
だパコパコを求めていた。
パコには定期的な情事が必要だった。
特に国家を揺るがす非常事態の際には体がどうしようもなくほて
るのだ。
実際この日も、数十年間もアメリカ軍に作戦指揮まで任せて作戦
立案をしたこともない軍部を放置してきた。
欠陥だらけの戦車、欠陥だらけの自走砲、マンホールに撃墜され
る戦闘機、真っ直ぐ航行できない駆逐艦。
タルトンネ
PKOで﹁市民生活の支援しかしてないから﹂と弾薬の確保を忘
れる指揮官、月の街などの貧民街から﹃金持ちになれる﹄と騙して
連れてきた無教養な捨て駒たち。
今ごろ現場は混乱の極みだろう。
だが彼女はそんなことは知らないし、想定外である。
なぜなら韓民族は世界最優秀民族なのだから。
﹁はあ? 意味わかんねえよ﹂という言葉は無意味である。
なぜなら
意味などないからだ。
これは信仰の問題である。
神の存在を証明しろと言っているようなものである。
もちろんごく一部の韓国人は異世界探索の危険性に気づいていた。
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だが彼女を批判するものはいなかった。
なぜなら大統領のパコパコを邪魔するものは親日派として国家反
逆罪で逮捕。
外国マスコミでも容赦はしない。
大統領に対する名誉毀損で逮捕だ。
それが韓国のルールである。※
※︵http://www.sankei.com/main/
topics/main−26704−t.html︶
﹁大統領。済州島に異世界の兵が現れて死者多数。すでに100人
以上が死傷しています。すぐに帰ってきてください﹂
﹁ふ、ふははははは!﹂
広報官の言葉を聞いたパコ・グニが突如笑った。
なぜ彼女が笑ったのか?
その笑いの多くは韓国特有の文化に占められていた。
被害者は偉い。︵例外として日本だけは被害者にならない︶
これが韓国、いや韓半島の国家的宗教である。
被害者は絶対的に偉く、加害者にはなにをやっても許される。
しかも一度被害者になれば千年被害者になることができ、加害者
に無制限にたかることができる。
ちなみに千年というのは永遠という意味である。
﹁くくくくく。これで大義名分を得た⋮⋮おい。今から記者会見を
セッティングしろ! 一億人が殺されたと発表するぞ!﹂
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このとき韓国の総人口は5000万人程度という客観的な数字は
意味をなさない。
彼らの発言には論理性や根拠は必要ないし、数字は常に間違って
いる。
あくまで彼らの発言は感情であり、イメージでしかない。
この場合、論理的な反論は意味をなさない。
彼らにとって被害者は神であり、その神の発言に逆らうことは宗
教的に許されないのだ。
﹁それで⋮⋮異世界の住民はどうなさるので?﹂
﹁ふふふ⋮⋮﹂
大統領は不敵に笑う。
﹁皆殺しだ!﹂
そう言うと大統領は電話を切り、ベッドに寝そべる愛人に寄り添
った。
﹁本当に皆殺しにするのかい?﹂
﹁ふふふ⋮⋮なあに皆殺しにはしないさ。だが異世界は日本人に奪
われた領土だ。なにがあっても取り戻させてもらう。さて、もう一
発したら記者会見だ﹂
こうしてよくわからない理由で異世界の滅亡が決定した所から話
は始まる。
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イルボンを殺せ!︵後書き︶
この回だけ嫌味を書きたかったのでギャグを入れてます。
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世界最優秀民族の襲撃
アミガ村。
住民約500人。
文明レベルは中世程度。
農耕と狩猟を半々で行っているありふれた村である。
商業が盛んではないため貧しい。
だがそれでも村人は秩序を重んじ、村人は一致団結して生きてき
た。
その証拠に道にはゴミ一つ落ちていない。
そんな村のある日のことだった。
空は青く、風は穏やか、気温も暖かい。
草原に心地の良い風がそよそよと吹いていた。
﹁ミーシャ!﹂
長い黒髪をたなびかせた少女が手を振りながら走った。
彼女の耳は人間では有り得ないほど長い。
﹁どうしたのエッラ?﹂
ミーシャと呼ばれた少女が微笑んだ。
彼女たちは友人なのだろう。
﹁父ちゃんが鹿を仕留めたってさ! 分けてやるから肉を取りに来
てくれってさ﹂
﹁へえ。それはすごいや。わかったわ。お母さんに伝えてくる﹂
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今日の夕飯は豪華だ。
ミーシャは嬉しくなった。
この村には娯楽は少ない。
映画も漫画もゲームもスマートホンもない。
だがそこに幸せは確かに存在した。
今までは。
それは一瞬の出来事だった。
エッラの後頭部が弾け飛んだ。
脳みそと脳症と血が混じったものが飛び散る。
衝撃で眼球は飛び出し、エッラの体はゴトリと地面に落ちた。
即死である。
だがエッラはまだビクビクと手足を痙攣させていた。
ミーシャはあまりに光景に悲鳴を上げようとした。
だがそれは叶わなかった。
次の瞬間、ミーシャは胸に痛みを感じた。
穴から勢いよく血が流れ出る。
誰がこんなことをしたのか?
それを考えるまでもなくミーシャは一瞬で意識を失った。
平和な村での突然の凶行。
その主はライフルを構えながら楽しそうにつぶやいた。
﹁10点。昼食おごれよ﹂
通信機ごしに返事が返ってくる。
二人の命の値段は昼食代と同じだった。
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﹁おい、女を殺すな。あとで犯すんだからよ!﹂
﹁おいおいおいおい。お前は前の村では男の子に突っ込んで喜んで
ただろ﹂
﹁俺じゃねえ。みんなのためだ。男が好きなやつもいるだろ? そ
の気持ちを理解するためにやったんだよ﹂
﹁そうかよ変態野郎﹂
﹁うるせえ。さてと略奪するぞ!﹂
それは面白半分だった。
そもそも彼らが受けた命令は占領である。
敵対してもない村を占領する命令を出す方も出す方だが、それで
も無意味に殺傷しろとは言われていない。
本来なら話し合いですむ問題なのだが、彼らは酔っていた。
無抵抗の村を蹂躙することに。
圧倒的戦力差で虫のように他人の人生を踏みつぶすことにである。
それは韓国のベトナム戦争からのお家芸なのである。
あとは地獄である。
﹁ふひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!﹂
男が狂気を纏った笑い声を上げながら、楽しそうに銃剣で何度も
女性を刺した。
メッタ刺しにされ穴の空いた遺体は空を見ていた。
兵士の男はそれを見ると、つまらなそうにタバコを死体の顔に投
げ捨てさらにジッパーを下ろしイチモツを取り出すと小便をかけた。
それは彼女にとっては人生最悪の日だったが、彼にとってはいつ
19
もの火曜日だった。
その横では別の男が子どもの髪を掴んで引きずり回していた。
﹁死ねよガキ!﹂
男は泣き叫ぶ耳の長い男の子にガソリンをかけるとタバコを投げ
つけた。
男の子は一瞬で火だるまになる。。
この世のものとは悲鳴と肉の焼けるニオイがあたりに広がる。
それを見て男は指をさしてゲラゲラと笑った。
それだけではない。
手に穴を開け、その穴にヒモを通し数珠つなぎにした何人もの耳
の長い女たちを下卑た笑いを浮かべてた兵士が連れて行く。
もちろん犯すためだ。
※︵http://www.sankei.com/west/n
ews/140614/wst1406140068−n1.ht
ml︶
もちろん男でも兵士の性欲のはけ口にされた。
それ以外の男たちは一カ所に集められ、面白半分に銃の的にされ
ていく。
韓国人は彼らを人間と認めなかったのだ。
経済的に無価値と判断されたのだろう。
かつて日本アシカを絶滅させたときのように異世界人の抹殺を開
始したのである。
※︵http://www.sankei.com/column
/news/150221/clm1502210005−n1.
html︶
逃げる男の子を銃剣で突きながらイビリ殺し、大人は問答無用で
20
殺された。
銃剣で赤ちゃんをキャッチボールしている兵士たちもいた。
皆一様に笑みを浮かべている。
楽しそうに、それは楽しそうに虐殺していた。
連れ攫われた女たちも安全ではなかった。
彼らは女を見ればすぐに犯した。
サディストである彼らは暴力を振るい、支配し、そして飽きたら
殺した。
彼らは妊婦を犯した後腹を割き子供を取り出して﹁このチョッパ
リ野郎めが!﹂と地面に叩きつけた。
異世界はすでにベトナムの悲劇よりも多数の死傷者を出していた。
彼らはベトナム戦争でその凶暴性を遺憾なく発揮した。
犯し殺し焼き尽くした。
彼らはベトナムが楽しくて楽しくて仕方がなかったのだ。
それから数十年。
彼らの凶暴性が発散されることはなかった。
その代わりに日本人を悪役にしたポルノまがいのコンテンツを量
産した。
いわゆる反日作品である。
日本では日本軍最強伝説として半ばネタとして語られているもの
だ。
人の油で航空燃料。
ほう、現代でも存在しない技術を日本軍は持っていたのだな?
100人斬り。
日本刀の性能云々よりもトーチカに飛び込んで走り回りながらの
戦闘など体力が続くはずがない。
スポーツチャンバラの剣でいいから検証してみろ。
21
石油がなくて戦争をしているのに村を焼くために油無駄使い。
もうコメントもバカバカしい。
慰安婦40万人。
セックスの合間に戦争。
頭おかしい。
︵実際は死に直面すると生存本能から性欲が過剰になることはあ
り、実際どこの戦争でも強姦などは頻繁に起こるのだが、それをふ
まえても彼らの主張が全て正しいという条件で計算すると日本軍は
セックスの合間に戦争するほど暇だったことになり、その主張は論
理的に荒唐無稽と断ずるほかない︶
龍脈を断ち切るための呪いの杭。
お前ら﹃測量﹄って知ってるか?
当時の総人口の半分もの人間を強制徴用。
お前ら﹃数学﹄とか﹃科学﹄って知ってるか?
たとえ奴隷として働かせたとしても、輸送費、食費、光熱費、家
賃など徴用のコストは高い。
更に言えば、彼らの主張する炭鉱での労働は当時としては技術の
粋を集めた施設であり、爆破や解体、坑道の設計運用、機械のオペ
レーティングなど労働者に要求されるレベルはとてつもなく高い。
ゆえに給料を払わないわけはない。
︵実際、三菱と報酬の計算方法をめぐって争った記録がある。︶
軍艦島への強制連行で島は死の島と言われていた。
写真を含めて近代的な生活をしていた資料が大量にあるけど見た
ことある?
さらに言えば、三菱の資料によると朝鮮人労働者の坑内労働の効
22
率は朝鮮人1に対して日本人1.4であり、朝鮮人は主に坑外の単
純作業を担当していた。
実際、坑外労働が機械化された1920年代には朝鮮人労働者は
使えないとリストラ対象になっていた。
最重要採掘労働を担当していたというのは疑問である。
このようにほとんどの主張は鼻で笑われるレベルである。
荒唐無稽すぎて﹁ある﹂﹁ない﹂以前の問題なのだ。
だが、それらは彼らの本性を映し鏡のように現したものなのだ。
なぜならそれら全てを彼らはベトナムでやっている。
もちろん、物理法則を超えたようなものは不可能だが、できるこ
とは全てやり尽くしている。
非戦闘員への殺人も、
強姦も、
意味もなく村を焼くのも、
子どもを面白半分に殺害するのも、
民間人を殺すために化学兵器を使ったのも、
味方の村を襲ったのも、
彼らは全てやったのだ。
そう、彼らの言う残虐な日本軍とは彼らの姿そのものなのである。
実際、ごく最近彼らの行ったオリンピック開催地投票での約束の
23
反故。
慰安婦像でのウィーン条約違反。
ありとあらゆる約束の反故。
それこそが彼らの本性なのだ。
そして今回はそれが表に出た。
日本であれば異世界への扉が開けば、その調査には科学者や人類
学者、法学者などの専門家、士官、各種専門職、などを行かせるだ
ろう。
なるべく問題を起こさないように。
過去にトラブルを経験した日本人はそう考えるだろう。
それが当たり前である。
実際、経済産業省は海外でビジネスをする企業への調査研究報告
書を配布している。
※︵http://www.meti.go.jp/polic
y/economy/keiei︳innovation/kig
youkaikei/CSR/reports/24summar
y.pdf︶
ところが、韓国は違う。
韓国企業は未だに前時代のように低賃金で、未成年までも働かせ、
逆らうものは解雇し、強制労働まで行っている。
※︵http://www.hurights.or.jp/ar
chives/newsletter/sectiion3/20
14/09/post−258.html︶
考え方の根本が違うのだ。
韓国が門の調査に向かわせたのは貧民。
金で貧民を騙して門の調査をさせたのだ。
たとえ門の向こうに危険があろうとも、死体の山で道を作れば本
調査は楽になるという考えだ。
24
なので彼らにはK11複合型小銃をはじめとする不良品兵器を持
たせた。
死んでこいという意味だ。
だが派遣された兵士たちは目をキラキラと輝かせた。
門の向こうにはチョッパリがいる。
反撃をしてこないチョッパリだ。
チョッパリとは日本人の蔑称で豚の足のことである。
下駄や草履をはく日本人を揶揄した言葉である。
どう考えても異世界人が日本のはずはない。
これは誰でもわかるはずだ。
だがそんな論理性は彼らにはない。
偉い人が異世界人を日本人だと言うのだから彼らは日本人なので
ある。
将軍様への個人崇拝をする北朝鮮と何ら変わらないメンタリティ
である。
チョッパリを殺せば民族の英雄として讃えられる。
彼らにとっては神の存在と同等の当然のことである。
そこに疑問を挟む余地はない。
チョッパリは悪であり、抹殺すべき敵なのだ。
それが彼らの誇りであり信仰だった。
そんな歪んだ彼らの前にはじめて勝てそうな存在が現れた。
彼らのたがは簡単に外れた。
理性は欲望に負け、民衆は蹂躙を望んだ。
その国内向けの方便としての日本人扱いだが、それは一瞬で神の
言葉になった。
残虐さは大義名分を得た。
もちろん外国から見れば狂ったとしか思えない。
だが韓国の民衆はその意味不明な理屈をムリヤリ受け入れた。
思えばナチスもまた同じだったのだろう。
自分たちの仲間内だけで納得してしまったのだ。
25
この言論に批判するものは、親日派として逮捕された。
韓国北朝鮮の民族宗教である﹁反日﹂。
その暴走が招いた虐殺。
それがこの戦争の真実だった。
26
勇者﹁鈴木道彦﹂
容赦のない虐殺。
その真っ只中に不幸な少年がいた。
名前を鈴木道彦。
道彦は日本人の高校生で、家で寝ていたはずだった。
道彦は第一話で姫様の裸を見るラノベの主人公になりたいと常日
頃から思っていた。
だがこれは断じて望んだストーリーではない。
断じて違う。
彼のまわりにいるのは耳の長い女たち。
﹁勇者様。この森を韓国軍の兵士が取り囲んでいます﹂
なぜか彼女たちは日本語で道彦に報告をした。
ここまではいい。
道彦がこの世界にやって来てからすでに4時間が経過していた。
この世界に放り出された直後、道彦は兵士に見つかりいきなり発
砲された。
﹁チョッパリ﹂だの﹁ウェノム﹂だのと怒鳴られながら追い回さ
れたが道彦には意味がわからない。
幸いにも極めて練度の低い兵士だったようで、道彦はなんとか五
体満足で逃げ延びた。
そこを召喚した勇者を探しに来た彼女たちに保護されたのである。
﹁何が勇者だ﹂と道彦は毒づいた。
運動部員ではない道彦は痩せぎすな体である。
勇者にはほど遠い。
精神の方も勇者にはほど遠かった。
27
緊張のため過呼吸になるんじゃないかと思うくらい深く呼吸をし
ていた。
それは当たり前だった。
道彦がこの世界にやって来て早々に見たもの。
それはこの世のものとは思えない悲鳴をあげる子どもを殴りつけ、
その腹を割き臓物を掻き出しながら笑う兵士の姿だったのだ。
あのペプシ国旗があちこちに設置されているのが見えた。
道彦はあの国旗を知っていた。
そう彼らは韓国軍だったのだ
道彦は韓国軍に保護を求めようなどとは思わなくなった。
道彦は理解していた。
この虐殺が世界に知られたら非常にまずい。
彼らにとっては致命的なはずだ。
そんな彼らが道彦を生かして返すわけがない。
見つかったら殺されてしまうのだ!
道彦は戦争などしたことがない。
不良に殴られたことはあるが、怪我をするほどの暴行を加えられ
たこともない。
そんな彼がいきなり虐殺の現場に放り込まれたのである。
確かに最近のニュースで韓国軍が異世界の調査に出るという話は
聞いていた。
だがそれは宇宙飛行士の月面着陸のように遠いところで起こって
いる科学的な話のはずだった。
それなのに、まさか韓国軍があまりにも文明レベルの違う相手を
容赦なく虐殺しているとは思っていなかったのだ。
﹁ふー、ふー、ふー⋮⋮﹂
道彦は震えながら息をしていた。
28
恐怖で筋肉が痙攣をした。
﹁勇者様⋮⋮勇者様の召喚に同胞10名の命を捧げました﹂
静かに耳の長い女、おそらくエルフと言われる存在の一人が言っ
た。
10名の命とはおそらく生け贄なのだろう。
人命軽視も甚だしい。
道彦は軽い嫌悪感を憶えた。
軽かった原因は道彦の目の前で虐殺を繰り返す韓国軍に大きな嫌
悪感を抱いているからだ。
だがそんな事は道彦には関係ない。
道彦はスマートホンを取り出す。
まだ手は震えている。
虐殺を見たせいだ。
道彦は助けを求めようと思っていた。
彼女たちを助けるのは後回した。
そもそもなにができるというのだ?!
勝手に呼び出したのは彼女たちだ。
道彦に責任はない。
彼女たちの願いを叶えてやる義務はない。
むしろこれは拉致だ。
損害賠償を請求できるだろう。
裁判所があればの話だが。
道彦はスマートホンのホーム画面から通信状態を確認した。
道彦の冷静で論理的な部分では繋がるはずがないと判断していた。
だが実はこの時点で自称IT先進国の綻びが起きていたのだ。
29
﹁無線が来てる⋮⋮つ、繋いでみよう⋮⋮﹂
普通ならキーを入力しなければならないはずだ。
だがフリーWI−FIスポットのごとくなにも入力せずに繋がる。
この時、相手は野蛮人だと侮った軍部が費用を浮かせるために民
間のフリーWI−FIを持ち込んでいて、それがたまたま繋がった
のだがそれを道彦は知らない。
道彦は連絡のために韓国製SNSアプリを起動する。
﹁つ、使える⋮⋮﹂
道彦は安心した。
これで親や友人と連絡ができる。
だが通話は使えない。
警察に電話することができない。
しかたなく道彦は母親とSNS経由で通話しようとした。
だが母親は通話に出ない。
﹁クソッ!﹂
しかたなくメッセージを送ろうとするが、何を書いていいかわか
らない。
﹁気がついたら異世界にいた。助けて﹂
頭が悪そうだ。
しかたなく道彦は母親への通信をあきらめた。
今度は友人と通話する。
コンタクトリストから﹃遠藤﹄へ通話する。
数コールで遠藤へ繋がった。
せん
﹁おう。どうした学校サボったことか? ハゲ先怒ってたぞー﹂
30
﹁バカ! 今それどころじゃない! 気づいたら戦場にいたんだよ
!﹂
﹁はあ? お前なに言ってんの?﹂
﹁いやマジで。本当だって! 助けて! 警察に電話してくれ!!
!﹂
﹁お前⋮⋮薬でもやってるのか?﹂
﹁本当だって!!!﹂
必死になって道彦は訴えた。
だが遠藤からしてみれば道彦の訴えは荒唐無稽な妄想にしか思え
なかった。
うざい。
それが遠藤の偽らざる本音であった。
そこで遠藤はこの会話を終わらせるべく、条件を出すことにした。
﹁んじゃ、写真撮って送れよ﹂
もちろん遠藤ははなから信じていない。
からかわれているのだろうとさえ思った。
だから冷たくあしらったのだ。
一方、道彦からすればそれは死刑判決に等しい。
だがこの道彦は、ただ者ではなかった。
道彦は少し考えると静かに言った。
﹁わかった⋮⋮﹂
31
そしてにエルフの少女の一人へ携帯を向けると写真を撮影した。
そのままSNSで遠藤に送信した。
すぐに遠藤から呼び出しがかかる。
﹁おいマジか。耳が長いってエルフなのか!?﹂
遠藤は興奮していた。
なにせ日本の漫画やアニメで出てくるような美少女エルフである。
本当に異世界にいるかどうかなんてもはやどうでもよくなったの
だ。
﹁わからん﹂
道彦はそっけなく言った。
道彦からすれば命がかかっているのである。
エルフが美少女だとかは優先順位が低い。
当たり前である。
﹁本当に異世界にいるんだな?﹂
遠藤は期待を膨らませてながら聞いた。
﹁本当だ。助けてくれ﹂
道彦は泣きそうな声で懇願する。
﹁俺に何ができるよ?﹂
﹁ああ、考えてある⋮⋮﹂
32
そう、道彦は勇者として召喚された男である。
少し、いや⋮⋮かなり思考がぶっ飛んでいた。
偉人や英雄と呼ばれる人たちにはある共通点がある。
それは常人を遙かに超える行動力である。
彼らは一見無謀にも思える壁を行動力だけで乗り切っていくのだ。
道彦も同じだった。
自分が今なにをするべきか、それを一瞬ではじき出したのだ。
﹁ああ、そうだ。準備頼む⋮⋮﹂
そう言って遠藤との通話が終わると道彦は大きく息を飲み込んだ。
そしてエルフたちに言った。
﹁僕は今から動く。僕が生き残るためだ。でも僕の行動で君らを助
けることができると思う﹂
﹁ゆ、勇者様! 本当ですか!?﹂
彼女は金髪で色白、お姉さんといった印象の女性が言った。
エルフたちのリーダーなのだろう。
﹁でも条件がある﹂
﹁条件とは?﹂
﹁命をかけてくれ。正直言って僕も含めて生き残ることができるか
わからない。でも作戦には君らの力が必要だ﹂
﹁はい! かしこまりました﹂
33
道彦は携帯のバッテリーを確認する。
まだ電池は充分にある。
そこまで確認すると、道彦の心にほんのわずかな余裕が生まれた。
心に余裕ができると道彦は、まだ誰一人としてエルフたちの名前
も知らないことに気づいた。
名前を聞かなければならないだろう。
﹁僕は鈴木道彦。君の名前は?﹂
﹁エレインでございます﹂
﹁他の子も名前を名乗ってもらえるかな﹂
これから彼女たちは運命共同体だ。
その名前を知らないのはおかしい。
﹁フィーナです﹂
銀髪ロングで物静かな印象の娘が言った。
﹁アリアです﹂
赤髪で気の強そうな娘が言った。
道彦はこの3人と生き残らなくてはならないのだった。
34
作戦開始
1982年9月16日。
レバノン、パレスチナ難民キャンプ。
イスラエル国防軍の部隊とレバノン軍の民兵が難民キャンプ襲撃、
虐殺を開始した。
虐殺は18日間に及び、犠牲者は最大で3500人と言われてい
る。
諸条件が違うことを考慮に入れたとしても、1982年の予算と
技術力で18日間の殺害数は3500人である。
1937年に6週間行われたとされる南京事件の被害者数はあま
りにも捏造されすぎていて、事件そのものが否定されるのは当然だ
ろう。
だがここ重要なのは南京事件の犠牲者数ではない。
被害者は永遠に無垢で正しいわけではないことこそが重要なのだ。
いやそれどころか、どの国も同じである。
例えば世界最高の先進国であるアメリカですらも2012年にア
フガニスタンで米兵15人による虐殺事件を起こしている。
もちろん彼らは裁かれたが、裁かれていない裁く気もない国も中
にはある。
世界最大の被害者アピール国であるイスラエル。
それと双璧をなす中国はウイグルにチベットとやりたい放題であ
る。
それにベトナムで楽しく虐殺をした韓国である。
日本は裁判を受けたし、今でも政治家が反省を口にする。
ところが彼らは全く反省をしてないし、むしろ当事者を英雄とし
て褒め称えている。
35
つまり﹃次もやる﹄という宣言である。
そんな彼らは恐れている。
いわゆる世間の目をだ。
この今ではアフリカの紛争地帯にまでネットが普及した時代。
犯罪の証拠を撮影し衆目に晒すことは難しくない。
海上保安庁への中国軍の攻撃を撮影した映像を海上保安庁職員自
らがアップロードした事件は有名である。
傍若無人な彼らも心の奥底ではやましいことをしているという自
覚がある。
実際はペナルティがあるかもしれないし、ないかもしれない。
実際、中国は北京オリンピックの聖火リレーで徹底的にメンツを
潰されただけで実害はほとんどなかった。
だが彼らは、見られるのを何よりも恐れているのだ。
そういう意味では彼らはまだ国際社会の一員なのである。
たかが映画にテロ予告をした北朝鮮とは大違いなのである。
そしてそれこそが道彦の生きる手段であった。
道彦は全てを撮影し、全世界に配信しようと思ったのだ。
それは天から吊された蜘蛛の糸と言えるだろう。
仏の一存でいつでも断ち切ることができるものだ。
だが道彦はそれを掴むしかなかった。
﹁じゃあ行くよ﹂
そう言うと道彦はテントから出る。
そこは森の中だった。
肉の焼けるニオイが漂ってくる。
途端に道彦の鳩尾からすっぱいものが上がってきた。
必死になってそれを飲み込もうとするがとうとう口にまで上がっ
てくる。
道彦は胃の中のものをぶちまけた。
36
何度も吐き、鼻にまですっぱい胃液が逆流してくる。
一通り吐くと道彦はヨロヨロと立ち上がった。
﹁すまん。情けないところを見せた﹂
道彦はそう言うと立ち上がった。
今は生き残るか否かの境界線上にいるのだ。
無理にでも有能に振舞わなければならない。
士気が下がればそれが死に直結する。
エルフたちを落胆させるわけにはいかない。
吐いている暇なんてないのだ。
﹁いいえ、道彦様。我々の口伝によると勇者は覚醒するまで召喚か
ら数日かかると言われています。道彦様のように呼び出された直後
から動かれるのは珍しいのです。このエレイン、さすが道彦様と正
直驚いております﹂
道彦に声をかけたのはエレインだった。
その声に偽りの色はなかった。
道彦はエレインに目を合わせずに静かに言った。
﹁ありがとう﹂
目を合わせなかったのは恥ずかしかったからだ。
女性に褒められたことのない道彦は、女性に褒められるのはどう
にも気恥ずかしかった。
道彦は耳まで真っ赤にしていた。
恥ずかしく思いながらも道彦の心は少しだけ軽くなった。
﹁作戦だ。今から連中のやることを僕の世界へ向けて生放送する﹂
37
﹁生放送⋮⋮とはなんですか?﹂
﹁この機械で撮影する。僕らの世界ではああいう野蛮なことは禁じ
られているんだ。虐殺の証拠さえあればアメリカや日本が動いてく
れるはずだ﹂
たとえ虐殺を配信できたとしても望みは薄い。
それを道彦はわかっていた。
北京オリンピックでのチベット人虐殺への抗議活動。
別名、エクストリーム聖火リレー。
国境なき記者団の三人が北京オリンピック組織委員会の劉淇会長
に襲いかかったのを皮切りに全世界で聖火リレーへの妨害が始まっ
た。
有志がフランス、イギリスなどで激しい妨害を繰り返し、激しい
小競り合いを繰り返した。
日本でも機動隊が出動する騒ぎになった。
だがそこまでの抗議があってもなお、チベットへの弾圧は続いて
いる。
ルワンダ内戦でも100万人以上が死んだが国連は役立たずだっ
た。
1998年から2003年までの第二次コンゴ戦争では600万
人が殺害されたが、その事実そのものを知っている日本人は少ない。
世の中はそうそう甘くはない。
そもそも学校のイジメですら多くの教師は積極的には解決しよう
としない。
解決してもしなくても給料は変わらないし、いじめられっ子が苦
しむことで教室内に平和が訪れるならそれでいいのだ。
それこそが社会の縮図である。
それを道彦は理解していた。
38
だからこそ道彦はわかっていた。
ただ撮影するだけじゃ相手にされないのだ。
﹁演出が必要だ﹂
そう言った道彦は驚くほど冷酷な目をしていた。
村の近くまで来た道彦は携帯で撮影を始めた。
﹁いま、村まで来ました﹂
そこまで言うと道彦は携帯をエレインに渡した。
39
虐殺実況生ライブ
遠藤はこの時点でもまだ事態の深刻さを全く理解してなかった。
道彦が地下アイドルのプロデュースでも手伝っているのだろう。
今回の生放送も地下アイドルのイベントに違いない。
手伝えばおこぼれがもらえるだろう。
そう思い込んでいた。
だからアイドルオタク、いわゆるドルオタのSNSを中心に生放
送が行われる旨を宣伝していった。
さらに﹁もしかするとミリタリーな趣味の方たちをターゲットに
しているかもしれない﹂と、気を利かせてミリタリーな話題のグル
ープにも話を伝播して行った。
とは言っても無料の放送があふれるこのご時世、そんなに簡単に
人は集まらない。
生放送が始まる前に予約した人数はわずか50人だった。
それも半数は同じ学校の生徒である。
そして放送が始まった。
煌々としたたいまつの光が村の外から見えた。
道彦の声が聞こえる。
﹁いま、村まで来ました⋮⋮﹂
道彦は努めて冷静な声で説明をはじめた。
﹁虐殺はもう数日も続いています﹂
たいまつが燃えさかる。
煙が道彦たちの方にまで漂ってきていた。
40
肉の焼けるにおい。
これが焼き肉ではないことを道彦は知っていた。
人肉の焼けるにおいなのだ。
韓国軍はさんざんおもちゃにしたあと死体を火にくべたのだ。
﹁韓国軍は無抵抗の村人を殺してから焼いています。人の肉の焼け
るにおいがここまで漂ってきています。僕もこの世界に呼ばれたと
ころ、韓国軍の兵士に問答無用で攻撃されて逃げまわりました。い
ずれ僕も殺されてあそこで焼かれることになるでしょう﹂
道彦はそれを極めて冷静に言った。
日本のマスメディアのように面白おかしく脚色することはできた。
だが道彦はそれを避けた。
不謹慎なジョークでも言おうものなら炎上するだろう。
まずはネット上で信頼を築かなくてはならない。
演出とは面白おかしくすることではなかったのだ。
そのまま道彦は村へ忍び込む。
向こうは兵士で、見つかれば虫のように殺される。
そのような合理的思考は数時間前に消え失せていた。
あまりにも残虐なものを見過ぎて、道彦の脳内では脳内麻薬が大
量生産されていたのだ。
村を占領したのは小規模な部隊のようだ。
月明かりしかない村を明るくするライトすら設置していない。
道彦の足に何かが当った。
それは子供だった。
爆発に巻き込まれたのだろうか手足がちぎれている。
道彦は悲鳴も上げずにそれを撮影する。
﹁もう一度言います。韓国軍は無抵抗の村を襲って皆殺しにしてい
41
ます﹂
道彦はせめてと思い、子供の空いたままの目をそっと閉じ、手を
合わせた。
それを全て撮影していた。
﹁お、おい。ちょっと待て、なんだこりゃ⋮⋮﹂
一方、遠藤は動画を見て震えが止まらなかった。
ネットではアクセス数が異常なまでに跳ね上がっていたのだ。
感覚が麻痺した道彦は気づかなかったが、子供の死を撮影するこ
とはプロパガンダの基本である。
戦争反対、難民の受け入れ、児童ポルノの撲滅、全て子供の死を
発端として世論を動かした例である。
世界最大の募金団体も広告でハエのたかる子供の写真を使ってい
るくらいだ。
それほどまでに世界は子供の死を嫌う。
道彦のこの行動はインパクトという意味で最大の効果を上げたの
だ。
この間、遠藤の携帯は鳴りっぱなしだった。
みんな知りたかったのだ。
異世界で何が起こっているのかを。
さらに道彦の生放送は続く。
﹁あそこで虐殺した村人を焼いています。エレイン、あそこの黒い
固まりを映して﹂
エレインは黒い固まりを撮影する。
42
﹁赤ちゃんです。生きたままあそこに放り込まれました﹂
この数分後、全国で救急車が大量に出動することになった。
生放送を見て具合が悪くなった人が続出したのだ。
噂が噂を呼び、物見遊山の視聴者が殺到した。
超至近距離からの戦争の生ライブ。
命知らずの戦場カメラマンでも避ける距離である。
誰も見たことのない映像がそこにはあった。
◇
実はこの生放送が行われていたとき、ちょうどパコ大統領の会見
が行われていた。
大統領は異世界の軍隊が国民を虐殺したと涙ながらに訴えていた。
実際は滅ぼした村のごく少数の生き残りが門の外へ出て暴れただ
けなのだが、犠牲者数は最低100倍は盛るのが半島の常識である。
30分で逮捕されたにもかかわらず1万人が殺されたと主張して
いた。
﹁我々は異世界との全面戦争に突入する!﹂
と、パコが泣女のごとく叫ぶ。
実際はこの時、心の内では﹁パコパコしてえ﹂と思ってたのだが、
パコはゴールデンラズベリー賞ものの演技で泣き叫んだ。
この裏で韓国軍の殺戮が生中継されているとは知らずに。
43
勇者覚醒、殺人ショー
﹁やめて⋮⋮﹂
小さな悲鳴が道彦の耳に入った。
道彦は闇に紛れながら声の主を探す。
草むらで小さな人の姿とそれ覆い被さる大人が見えた。
見えなくてもわかった。
兵士が子供を強姦しようとしているのだ。
そしてさんざんおもちゃにしてから苦しめて殺すのだ。
時が来た。
道彦は息を吸い吐いた。
わかっていた。
これから何をすべきかを。
﹃演出﹄の出番だ。
﹁エレイン、たとえ僕に何があっても撮影し続けろ。他は援護﹂
道彦はエレインに命令を出した。
エレインはスマートホンのカメラを道彦に向けた。
道彦はもう一度大きく息を吸うと駆け出した。
エレインに渡された剣を抜き振りかぶる。
振りかぶったまま走る。
不思議なことに声は出なかった。
男は道彦に気がつかなかった。
道彦はそのまま男の頭に剣を振り下ろした。
兵士はヘルメットを着用してなかった。
剣は頭蓋骨に当たり弾かれる。
44
道彦は容赦なくもう一度剣を叩きつける。
今度はガツリとした手応えがあった。
もう一度振りかぶると、どろっとした血が剣にこびりつき糸を引
いた。
男はまだ動けた。
反射的に道彦から逃げようと背中を向けた。
それで道彦の剣の狙いはそれ、首の下から背中のあたりを斬りつ
ける。
男は悲鳴を上げなかった。
いやもう絶命しかかっていたのかもしれない。
道彦は男の背中を蹴飛ばす。
男はよろけて地面に手をつく。
首だ。
道彦は思った。
道彦は肩に剣を背負うと、一気に振り下ろす。
道彦は剣豪ではない。
首を切断できるはずがない。
しかも狙いははずれた。
道彦の剣は男の肩と首の間に深々と突き刺さる。
道彦は男の背中に足を置き、足で男の背中を押しながらムリヤリ
剣を引きはがす。
手が血で滑る。
道彦はさらに振り下ろす。
今度は首に直撃した。
血がどばっと噴き出した。
さらに道彦は剣を振り下ろす。
血まみれになった男の首に何度も何度も。
めちゃくちゃに振り回したせいで、首だけではなく頭にも剣が当
たった。
男の耳がちぎれ頭の皮が剥がれた。
45
五度ほど剣を振り下ろすと首が変な角度に曲がった。
口から小さくうめき声が漏れていた。
道彦は男の背中に剣を突き刺す。
意外なことに簡単に突き刺さった。
道彦は男の背中から剣を抜こうとするが、血で滑って引き抜けな
かった。
男はまだピクピクと指を痙攣させていた。
それでもちぎれた首から絶命しているだろうことは推察できた。
ここでようやく道彦は攻撃の手を止めた。
﹁大丈夫?﹂
白々しい声で道彦は少女に言った。
男に襲われていたのは小さな少女だった。
小学生くらいに思える。
服は引き裂かれ、肌は傷だらけだった。
陵辱する前にナイフで面白半分に斬りつけたのだろう。
茶色いズボンは引き裂かれていない。
まだ最後まではされていなかったのだろうが顔は恐怖で蒼白だっ
た。
それは一生分の殺戮と暴力、陵辱を見た表情だった。
少女はどこか遠くを見るような目をしながら頷いた。
﹁エレイン、俺を撮れ。アリアとフィーナは彼女を頼む﹂
道彦は返り血を浴びた姿で指示を出した。
エレインは道彦を撮影する。
道彦はスマートホンに向かい静かに言った。
﹁今、僕は人を殺しました。子供を殺そうとした兵士を殺しました。
46
皆さんが証人です﹂
道彦はなぜこのような凶行に及んだか?
単純にもう我慢ができなかったという側面も確かにある。
人類の醜さをこれでもかと見せつけられて精神の均衡が崩れたの
だ。
だがそれは理由の一つに過ぎない。
理由の大部分を占めるのは生きて帰りたいという思いだった。
海外での拉致事件で日本人が帰ってくる確立は驚くほど低い。
たいていは死体になってもなお帰って来られない。
拉致事件解決の難易度が高いのと、犯人の安全を考えれば始末し
てしまうのが定石だからだ。
拉致事件では人質の存在自体が証拠になってしまうからだ。
ゆえに犯人が身代金を要求した時点で生きている可能性はゼロに
近い。
しかも今回は韓国が関わっている。
なぜか政治家は彼らに異常に甘い。
しかも北朝鮮との兼ね合いもあって非常にめんどうくさい相手だ。
彼らは日本人には何をしてもいいと思っている。
すぐに政治問題化して謝罪と賠償を要求するに違いない。
道彦を取り戻すのに数十億円からもしかすると数百億円という金
額が必要になるだろう。
逆に道彦が殺されたとしても政府が払う賠償金は1億円以下だろ
う。
︵犯罪被害給付金を例に取ると学生である道彦の命の価値は1,
210万円である︶
だったら道彦が死ぬのを待って遺族に金を払った方が政府にも政
治家にも都合がいい。
それどころかうまく立ち回りさえすれば、韓国に対する日本人殺
害への糾弾という外交カードを得ることができるのだ。
47
道彦を救うメリットはどこにもない。
政府を動かす価値など道彦にはないのだ。
いや政府は道彦の死を望むだろう。
それもなるべく無残に死ぬことを。
見殺しにされるのはわかりきっている。
韓国軍に捕まればあのエルフたちのように犯されてからさんざん
おもちゃにされて飽きたら丸焼きにされるだろう。
道彦はそれだけは嫌だと身震いした。
だからこそ日本国が動かざるを得ない状況に持っていく。
自身の存在そのものを国際問題にしてやるのだ。
道彦に都合か良いことに韓国軍はヘマをした。
虐殺をしたことも道彦に生中継されたこともだ。
道彦が正義の味方として受け入れられる余地がある。
政治家も官僚も世論をコントロールできないのは嫌だろう。
国内の韓国人勢力より厄介だと判断されれば日本政府が回収しに
来るかもしれない。
それはとてつもなく可能性の低い。
それは道彦が一番よくわかっていた。
だがこのままでは確実に見殺しにされる。
道彦にはその計画に望みを託すしかなかったのだ。
だがまだ道彦は気づいていなかった。
すでに道彦は逃れられない運命のレールに乗ってしまったのだ。
48
逆神、有川
道彦の初めての殺人ショー。
その映像は一瞬で拡散された。
殺人ショー自体は珍しくない。
戦地や治安の悪い地域なら毎日あるだろう。
実際にイスラム国などが公開している映像も存在する。
ペドフィリア
実際防犯カメラに犯罪の証拠が撮影されるのはよくあることだ。
だが道彦の中継は違った。
いきなり戦地に放り出された少年が行為に及んでいた小児性愛者
を惨殺したのだ。
これは誰も見たことのない映像だった。
ちょうどこのライブを見ていたアメリカ人の青年エディ・ハンセ
ンは思わず﹁YEAAAAAAAAAAH!﹂と叫んだ。
それは実に痛快だった。
わかりやすい悪党を地味な少年が成敗する。
確かにスーパーマンやバットマンよりはスマートではない。
パニッシャーのようにえげつない方法での殺害だ。
だがそれが逆に良かった。
それはコミックにはないリアルで心の底からの願望だった。
そう、悪党は苦しんで死ぬべきなのだ。
これを正義ポルノと言うが、日本の愛国ポルノのように悪意を持
った言葉ではない。
気持ちいいコンテンツという意味である。
そう最高に気持ちがよかったのだ。
全米ライフル協会のお得意の答弁に﹁この少女が銃を持っていれ
ば犯行は防げただろう﹂というのがある。
それと同じだ。
49
持っていたのが銃ではなく剣だっただけだ。
確かに裁判も受けなかったし、民主的ではない。
だがとにかく悪党は死んだのだ。
これで少しは世の中が良くなるはずだ。
エディはSNSにこのライブのURLを書込んだ。
スゴイ映像が見られるぞと。
同じことをしたのはエディだけではなかった。
全世界で数千人が同じことをしたのだ。
その宣伝効果は凄まじい。
素早い海外マスメディアが一斉に道彦の映像を生中継しはじめた。
合間合間で兵士を惨殺する道彦の映像が流す。
SNSには道彦の個人情報が拡散され、顔写真まで流出する。
ヒーロー出現か?
それともただの殺人者か?
議論は真っ二つに割れた。
そもそもペド野郎は死ねという暴論。
韓国軍に殺されそうになったと道彦が言っていたこと。
彼はレイシストだ。
様々な角度から議論が進んだ。
だがそもそも世界の一般人は韓国と北朝鮮の区別もつかない。
﹁韓国って中国のどこだっけ? あの変な髪型の王様がいる国だ
っけ? なんで日本人がいるの? 日本って欧州のどこだっけ?﹂
を繰り返し議論することになったのだ。
一方、日本のマスコミは沈黙を保った。
韓国様の不利な情報は流さない。
それが日本のマスコミなのだ。
明日のニュースはゆるキャラとB級グルメとアイドルだ。
動物園のライオンの赤ちゃんのニュースも忘れない。
あとはいつもの政権批判で穴埋めでもして道彦が死ぬのを待てば
いい。
50
死んだら小さく報道してネットで右翼主義者だと繰り返しレッテ
ルを貼ればいい。
それ以外は許されないのだ。
すでにマスコミには心を持った人間はいない。
あるのは賄賂と性欲と麻薬、それに韓国至上主義の宗教家だけだ。
彼らには韓国に都合の悪いことは見えない。
だから報道もしない。
それが正しいと信じているのだ。
こうして露骨なまでに不自然な報道は続くのである。
その結果として視聴率は下がり続け、新聞の購読者は減り、本は
売れなくなるのだ。
だがそれも国民の選択なのだ。
ありかわ うらじみる
だがそんな自国民以外に優しい国にも確実にバカは存在する。
それが有川裏地海松議員である。
かの偉大なレーニンから名前を頂いた根っからの共産主義者であ
る裏地海松は短文投稿型SNSで問題を提起した。
﹁鈴木道彦は差別主義者でネトウヨ﹂
完全に意味不明である。
いつから小児愛好者を殺害するのがネトウヨになったのだろうか?
そもそもネトウヨの定義はなんだったのだろうか?
そんなことは有川にとってはどうでもよかった。
彼にとっては韓国に逆らうものは全てネトウヨなのだ。
いや自分自身の思い通りにならないものは全てネトウヨなのだ。
もちろんこれに対して大量の意見が投稿された。
﹁意味わかんねえよ﹂と。
有川はそれを華麗にNG登録していく。
その姿はどこまでも必死だった。
51
﹁ネトウヨの煽りが凄まじい。全員NGにしてやった﹂
もはや意味がわからない。
いや最初から意味などない。
自分に逆らうものは全てネトウヨ。
それがこの日本の左翼の姿なのだ。
﹁思えばナチスもこうやって宣伝をしていた﹂
議員でありながら国民の生の声をナチス呼ばわりして切り捨てた
のだ。
どちらの方がナチスなのかはすでにわからない。
当然、ネットは大炎上した。
だがこの有川。
実はネットでは有名な逆神様なのである。
そこまで嫌われているのか超自然的な現象なのか不思議なことに
﹁買うな﹂と言った本が次々とベストセラーになって行くのである。
この時は、道彦の動画の再生回数に働いた。
逆神様のおかげで再生数が異常なまでに増大したのだ。
52
見殺しの予感
道彦は実況を続けていた。
バッテリーは残りわずか。
実況を続けられるはずがなかった。
だが道彦には計画があった。
道彦はたったいま自分が殺した兵士の死体を漁る。
気持ち悪いという思いはあったが死にたくないという生存本能の
方が勝っていた。
男はかなりの荷物を持っていた。
男が地べたに置いたライフル、ライター、ナイフ、それに携帯電
話。
タバコも必要になるかもしれないのでポケットに突っ込む。
次に道彦は携帯電話のモデルを確かめる。
﹁よし!﹂
道彦のスマートホンはキャリアショップで勧められわけもわから
ず使っていた韓国製である。
そして男が持っていたのも同じ機種だった。
道彦は男のスマートホンのカバーを外し、リチウムイオン電池を
取り出す。
これでバッテリーは確保した。
次は武器だ。
それはゲームに出てくるような無駄にゴテゴテしたデザインだっ
た。
それほど銃に詳しくない道彦は最近の兵器はこんなデザインなの
かと納得した。
53
道彦は疑問を持つことなくライフルを拾おうとした。
﹁お、重ッ!﹂
重い。
10キロはあるだろう。
スーパーで売っている袋入りの米より重いのだ。
道彦が拾ったのはK−11複合型小銃。
アサルトライフルとグレネードランチャーを合わせた装備である。
そのためAK−47が重さ4.5キロなのに対して2倍強の重量
なのである。
当然のように道彦は思った。
兵士というのはこんなに重いものを持って戦うのか。
無理だ。
こんな武器を訓練を受けてもいない自分が扱えるはずがない。
道彦はライフルを地面に置いた。
この判断は正しかったことが後に判明する。
しかたなく道彦は死体をさらに漁る。
尻の下に拳銃が落ちていた。
少女を犯そうとした時か、道彦に頭をかち割られたときに落とし
たのだろう。
そちらはライフルに比べれば軽かった。
1キロ以下だろう。
道彦は拳銃を持っていくことにした。
道彦はホルスターや服をはぎ取って装着する。
レイプ魔の服を着用するのは嫌悪感があったが、部屋着のジャー
ジとTシャツ、それにエルフにもらったサンダルというだらしのな
い格好よりはマシだ。
サイズも多少ぶかぶかだが問題はなかった。
ちなみにエレインはこの間も忠実に道彦の命令を実行していた。
54
つまり道彦の強盗から生着替えまで全て記録されていたのだ。
だが道彦はそれを知らないし、別のことで頭がいっぱいだった。
次にどうするかだ。
村を解放するか、それとも逃げるか。
村を解放するのは兵士と戦うことになり殺される確率は跳ね上が
る。
逃げるのは許されない。
子供を救うために手を汚したのだ。
もう後戻りはできない。
それに何よりも視聴者が許さないだろう。
異世界にいもしない連中に無能呼ばわりされて叩かれるのは明ら
かだ。
それに道彦に死んで欲しい勢力に餌をやるようなものだ。
子供を助けたことはなかったことにされ殺人の責任だけ追及され
るだろう。
見殺しにされずに日本に帰っても刑務所送りにはされるに違いな
い。
刑務所で口封じされる可能性すらある。
だとしたら救助しかない。
兵士に見つからないように生存者を逃がすのだ。
道彦はごくりとつばを飲み込んだ。
兵士と戦うよりはマシとは言え道彦の死ぬ確率はかなり高い。
道彦はまだ死にたくない。
だからその決断は勇気が必要だった。
道彦は深呼吸をした。
そして絞り出すように言った。
﹁い、今から生存者の救出をします⋮⋮ぼ、僕は⋮⋮こ、殺される
と思います。僕が死んだら視聴者の皆さんは僕が最後まで勇敢だっ
たことを家族に伝えてください⋮⋮﹂
55
もう後戻りは絶対にできない。
救助をするしかない。
少し涙が出た。
道彦は死への恐怖で胃が跳ね上がった。
56
救出⋮⋮だが⋮⋮
道彦は村に侵入した。
村は静まりかえっている。
住民の相当数が殺されたのだろう。
そこらじゅうに血痕が散らばっていた。
道彦は息を止めて耳を澄ました。
虫の鳴く声。
人を焼く焚火の音。
それに混じりうめく声が聞こえた。
高い声。
それは小さな子供か女性の声に違いなかった。
﹁エレインは撮影。他は援護。勝率は低い⋮⋮死んだらごめん﹂
道彦は小声でささやいた。
エレインは首を振る。
﹁私は道彦様が何をなされようとしているのかわかりません。です
が道彦様と最後までご一緒致します﹂
それが勇者を召喚したという使命感から来るものだと道彦はわか
っていた。
まだ出会ってから数時間しか経っていない色恋もクソもない。
道彦の方も美しいエルフに恋心を抱くほどの余裕はなかった。
道彦は音を立てないようになるべく静かに声の方に近寄った。
あまりの緊張に冷や汗と手汗が止まらない。
声は小屋の一つから聞こえてきた。
57
﹁助けて! お母さあああああああああああんッ!﹂
それは幼い少女の悲鳴だった。
﹁少女と思われる声が響いています。今から救助したいと思います﹂
道彦はカメラに向かい小さく言った。
カメラの向こうの視聴者たちもゴクリとつばを飲み込んだ。
道彦は﹁自分が死ぬのを面白おかしく見てるに違いない﹂と生放
送をシニカルに捉えていたが、実際は多数の視聴者が道彦に共感し
道彦の生還を祈っていた。
サイバー犯罪の通報窓口であるインターネット・ホットラインセ
ンターには通報が殺到、サーバーがダウンしていた。
各地の警察署にも通報が殺到。
夜中にもかかわらず警察庁が対策会議を開いていた。
また政府も同様だった。
日本国内閣総理大臣である芥川重三も夜中だというのに閣僚を呼
び出し対策を練っていた。
﹁韓国との電話会談はまだでしょうか?﹂
芥川が質問をした。
﹁総理。その件ですが韓国が拒否しています﹂
﹁そうですか﹂
時間稼ぎをして高校生を殺害しようとしているのか、それとも単
に情報を得ていないのか。
58
おそらく後者だろう。
芥川はそう判断した。
彼らが計画的に行動するのは珍しい。
常に彼らは秩序より感情を優先させる。
この高校生は韓国人のメンツを潰してしまった。
実利を無視してでもメンツを大事にする韓国人の民族性から考え
ればどんな手を使っても殺害するはずだ。
居場所がわかれば日本の右翼が云々と虚実織り交ぜながら大騒ぎ
するはずだ。
つまりまだ彼らもなにもわかっていないのだ。
芥川はやれやれとため息をついた。
﹁とりあえずこの鈴木くんの家に護衛をつけてください。それと韓
国側は被害者数を盛ってくるはずです。おそらく異世界で自分たち
が殺した人たちまで鈴木くんが殺したことにするでしょう。それに
赤日新聞をはじめとするメディアが鈴木くんを叩くでしょう。人権
を守ってあげてください﹂
いま芥川にできるのはそこまでだった。
芥川は理解していた。
鈴木道彦はこれから話題の中心になる。
そして彼の安否で政権が揺らぎかねないことを。
◇
道彦は小屋にそっと近づくと静かにドアを開けた。
兵士から奪った懐中電灯で中を照らす。
涙で顔をくしゃくしゃにした少女と目が合った。
この世界の住民の寿命はわからないが人間であったら7、8歳だ
ろう。
59
酷いことをされたのか衣服は破られ、顔は腫れあがって黒くなっ
ていた。
床には歯が落ちている。
気分の悪いことに爪も落ちている。
道彦は心の底から嫌悪感を抱いた。
少女は縛られていた。
縛られたロープには電子部品が取り付けられている。
道彦は驚愕した。
﹁爆弾だ!﹂
それがなんなのかは明らかだった。
道彦は道彦の後ろで少女を撮影をしていたエレインを突き飛ばし
た。
次の瞬間光が走った。
僅かに遅れて爆発。
逃げ遅れた道彦の脇腹に何かが突き刺ささり炎は道彦の体を焼い
た。
60
道彦Ⅲ 怒りの異世界
それは爆弾だった。
道彦の耳がきいぃんと鳴った。
道彦はどこか人ごとのように思い出していた。
スナイパーはまず敵兵をなぶり殺しにする。
すると仲間を助けようと敵兵が近づいてくる。
それをさらになぶり殺しにする。
そうすれば実に効果的に敵を排除することができるのだ。
そう。
これはトラップだ。
子供を取り返しに来たエルフを殺すための罠だ。
道彦がそこまで考えると耳鳴りがやんだ。
﹁道彦様!﹂
エレインが道彦に駆け寄ろうとしているのが見えた。
スマートホンを下に降ろしてしまっている。
﹁エレイン! 俺の事はいい! 撮影するんだ!!!﹂
道彦は怒鳴った。
エレインはびくりとするとスマートホンを道彦に向けた。
﹁違う! あの子を映すんだ! ヤツらの犯罪を世界中に知らせる
んだ!﹂
脇腹から血を出しながら道彦は少女の無残な遺体を指さす。
61
エレインは泣きそうな顔をしてかつて少女だったものを撮影した。
このとき世界中で道彦を見守っていた人々の中で運の悪いごく少
数が心臓発作を起こし救急車で運ばれた。
世界中で暴徒が韓国人経営の商店を襲い、大使館にビール瓶が投
げ込まれた。
それはあまりにもショッキングな映像だった。
21世紀だというのに世界中で蛮行は行われている。
イスラム国に捕らわれ販売される女性。
地雷で足をなくす子供たち。
爆弾をおもちゃだと思って拾い死んでしまった子供。
世の中には理不尽があふれている。
だがそれはどこか遠いところで行われていることだ。
全てをカメラに収められたのは初めてだった。
人々は激怒した。
世界中の人々はパコ大統領のSNSに罵詈雑言を書込んだ。
﹁この人殺し!﹂
﹁戦争犯罪者め!﹂
﹁悪魔め!﹂
﹁お前を殺してやる!﹂
﹁絶対に許さない!﹂
アノニマスは韓国サーバーへ無差別DOS攻撃を行いありとあら
ゆるサーバーがダウンした。
世界の主要メディアは韓国を非難する特集を組んだ。
62
素早い主要企業は韓国企業との提携を解消する旨の声明を出した。
夜中だというのに韓国の損失は天文学的数字になろうとしていた。
だが道彦はまだそれを知らない。
血を垂れ流しながら這いずっていた。
横っ腹に刺さったもの。
それは壊れたドアの破片だった。
もし動脈が傷ついていたら抜いたら死ぬ。
道彦はそう判断し、それを抜かないことにした。
フィーナとアリアが肩を貸し、なんとか動けるようになる。
すでに顔は青くなっていた。
﹁道彦様。い、今ヒールをかけます!﹂
フィーナはそう言うと道彦の脇腹に手を当てる。
アリアは問答無用で道彦の脇腹から木片を抜く。
その方が抵抗が少ないからだろう。
道彦はビクッと震えた。
そしてフィーナの手から光が放たれる。
するとピタリと血が止まった。
﹁ヒールって⋮⋮治ったの⋮⋮﹂
道彦が聞いた。
傷は塞がったようだがフラフラとする。
﹁い、いえ。ヒールにはそこまでの力は⋮⋮血を止めただけです﹂
道彦は力なく頷いた。
それでも痛くないだけ大分マシだった。
63
そんな半死半生の道彦たちに男の怒鳴り声が浴びせられた。
﹁ふはははははは! このウジ虫が! ガキを餌にすると簡単に罠
に引っかかりやがるぜ!﹂
男は指をさしながらゲラゲラ笑っていた。
それすらも生中継されているとも知らずに。
しかも道彦は韓国語を知らない。
何を言っているのかわからなかった。
だがその態度は友好的なものではないことだけはわかった。
道彦が睨み付けていると闇から男たちが現れた。
男たちはあのクソ重い銃を腰だめに構えていた。
ああ、重いからあの構えなんだと道彦は妙に納得した。
﹁この薄汚いチョッパリが! ぶち殺してから犯してやるぜ!!!﹂
弱者には自己の実力の200パーセントを出す。
それが韓国人である。
調子に乗った韓国人たちがタコ踊りを踊った。
言葉こそわからないが集団リンチでなぶり殺しにするつもりなの
だろう。
その姿の表情も醜悪そのものだった。
結局、道彦は兵士と戦うことになってしまったのだ。
男たちの一人が警告も無しに道彦を拳銃で撃った。
道彦は悲鳴も上げずに倒れ込んだ。
最初は棒で突かれたかのようだった。
だが倒れた瞬間、全身が悲鳴を上げた。
﹁ぎゃああああああああッ!﹂
64
それは道彦自身でも驚くほどの声だった。
15年の人生の中で一番痛い。
先ほどのドアの破片も痛かったが銃弾は次元が違った。
﹁てめえは女たちが犯されるのをそこで見てろ!!!﹂
男が叫んだ。
言葉の意味はわからなかったが何が言いたいのかはそのゲスな表
情でわかった。
殺す。
殺してやる。
道彦の胸が殺意でいっぱいになった。
エレインはスマホで一部始終を撮影していた。
それを見て男たちが笑う。
﹁おい、この原始人。スマートホンが武器だと思ってるぞ!﹂
生中継されているとは思っていなかった。
彼らは異世界人を完全にバカにしていたのだ。
フィーナたちは弓を構えたが道彦に銃が向けられ手を離した。
道彦を撃った男がベルトを外しズボンを下げた。
固くなった醜悪なものが自己主張していた。
﹁どの娘にしようかな? それとも男を犯すかな?﹂
男はイチモツをぶらぶらとさせながら妄想に耽った。
その妄想は現実になるはずだった。
男は下卑た笑いを浮かべながら暴行を加えようと道彦に近寄った。
今だ。
65
道彦は尻の下に敷いた拳銃を取り出す。
少ない知識から安全装置を外し銃を撃った。
男のイチモツが破裂した。
﹁あ?﹂
男が間抜けな声を出した。
道彦はさらに引き金を引いた。
一発が頭に当り男が崩れ落ちた。
道彦はさらに他の男へめちゃくちゃに銃を乱射した。
マガジンが空になると銃を捨ててナイフを抜いた。
圧倒的戦力に過信をしていた兵士たちは突然のイレギュラーに動
作が遅れた。
片腕をだらんと下ろしたまま道彦は男に襲いかかりナイフで刺し
た。
男は抵抗しようと手で道彦を突き飛ばそうとした。
道彦はその手を斬りつける。
すぱっと手の平が切れ鮮血が飛んだ。
道彦は攻撃本能の赴くまま斬りつけた。
ナイフは兵士の顔をなで切りにする。
道彦はさらにナイフで突き刺した。
ナイフは角度をつけて頬へ刺さり兵士のアゴの骨に当たった。
兵士が蹴飛ばしてくる。
道彦はそれをまともに受けるが、すでに体勢の崩れた兵士が逆に
後方へバランスを崩した。
道彦はナイフを腰だめにして突進する。
兵士の腹にナイフが突き刺さる。
根元まで深々と刺さると血で手が滑った。
二人はそのまま地面に倒れた。
道彦は慌てて地面を手で探るとこぶし大の石が落ちていた。
66
道彦は石をつかみ兵士の体を殴った。
兵士の抵抗が弱まると顔に向かって石を振り下ろす。
歯が飛んだ。
道彦の手に痛みが走った。
歯が刺さっていた。
それでも道彦は止めなかった何度も石を顔に振り下ろす。
べちゃっという湿った音が響いた。
道彦が兵士を殴り続ける中、アリアとフィーナは弓を射った。
その正確無比な弓によって急所を撃ち抜かれた兵士が二人倒れた。
兵士の顔面がへこんだのを見て道彦はゆらりと立ち上がった。
まだ撃たれた方の手は動かない。
だが凄まじいまでの迫力があった。
最後の兵は慌てて銃を撃とうとする。
ここで道彦たちは死ぬはずだった。
どんなに有利でも21世紀の複合小銃に勝てるわけがないのだ。
K11複合小銃。
グレネードとライフルを組み合わせた銃である。
兵士は焦っていた。
まさか反撃してくるとは思っていなかったのだ。
こんなはずではなかった。
男はなぶり殺しにして、女はさんざん犯してから殺すつもりだっ
た。
そして祖国で薄汚いチョッパリを殺した英雄として表彰され、ベ
トナム人かフィリピン人の嫁を金で買って妻を殴りながら悠々自適
に暮らすつもりだった。
全ては完璧だった。
それなのに!
67
男は悪魔に出会ってしまった。
それは少年の姿をしているが悪魔そのものだった。
残酷で理不尽で人の命をなんとも思っていない悪魔なのだ。
恐怖に駆られた男はボルトアクション式のグレネードを発射しよ
うとした。
己の持っている最大の火力で道彦を葬ろうとしたのだ。
男が引き金を引いた瞬間、男の銃が爆発した。
そう。
それがK11複合小銃の不具合だった。
K11の不良率は約半分。
一説によると66%にも及ぶ。
その不具合で有名なものとしてグレネードの暴発がある。
それが起こったのだ。
今回は運がよかった。
道彦は思った。
それは韓国軍の兵器までもが道彦を応援したかのようだった。
男は吹き飛び地面に倒れた。
腕はちぎれてどこかに飛んでいた。
﹁た、助けて! こ、これは命令されてしかたなく!﹂
男はちぎれた腕を振り回して言い訳をはじめた。
男に道彦がゆらりゆらりと近づく。
その手には別の兵士から奪った拳銃が握られていた。
﹁なに言ってるかわかんねえよ﹂
68
道彦は男に馬乗りになると男に向かって引き金を引いた。
何度も何度も。
道彦は敵兵を一撃で殺す方法など知らない。
拳銃の射撃は男を最大限苦しめることになった。
悲鳴と命乞いがあたりに響き、それは全てリアルタイムで世界に
配信された。
69
戦闘後の生質問
﹁す、すげえよ! 道彦!﹂
遠藤は感嘆の悲鳴を上げた。
動画のカウンターは100万回を軽く超えていた。
一時間以上前から遠藤の携帯は鳴りっぱなしである。
遠藤は道彦の動画に関与していることを自ら告白した。
顔と名前を出し、連絡先も公開した。
すると世界中のメディアがこぞって遠藤にインタビューをしてき
たのだ。
アメリカ、欧州、中東まで。
遠藤は世界中のメディアから注目の的だった。
ちょっとした芸能人気取りである。
だがこの遠藤、そこで調子に乗るような男ではない。
あくまで今回の主役は道彦で、自分自身は道彦のバックヤードを
支える相棒であると正しく理解していた。
それを理解しているからこそ遠藤は道彦のブランドイメージの構
築を考えていた。
もう夜中だというのに学校からも事情聴取の電話が入ったが無視
である。
止めろと言うのだろう。
どうせ彼らには道彦を助けることなんて頭にないだろう。
そんな連中に従う義理はない。
親にも友人を救いたいから無視しろと言ってある。
﹁道彦⋮⋮世界はお前のことを知りたがってるぜ﹂
70
30分後に中東のメディアのインタビューがある。
時間も人手も金も足りない。
それが遠藤の悩みだった。
ここで遠藤はある決断をする。
遠藤はスマホからメッセージを一斉送信する。
知り合い全員に応援を頼んだのだ。
するとすぐに電話がかかってきた。
着信通知には﹃三井﹄と表示されている。
﹁三井。夜中に悪い﹂
﹁いやいいってことよ。遠藤。手伝って欲しいって道彦の件か?﹂
﹁うん。もう俺だけじゃ人手が足りないんだ。人手だけじゃない。
金も技術もなにもかもないんだ﹂
﹁なるほど。他の連中は?﹂
﹁まだ誰も。お前が一番だ﹂
﹁そうか。そうだな。俺に考えがある。任せてくれるか?﹂
﹁ありがとう! 頼む!﹂
この三十分後、ネット上であるプロジェクトが注目される。
﹁同級生の命を助ける支援をお願いします!﹂
それは資金提供を呼びかけるサイトのプロジェクトだった。
いわゆるクラウドファンディングである。
一定以上の資金提供で特典を与えるのが特徴である。
71
今回は道彦との生の音声チャット権を付与することに決めた。
生放送中の道彦には許可を取っていないが道彦には断わる権利は
ない。
プロジェクトの立ち上げと同時に信じられない額の振り込みが行
われていく。
そして同時刻、遠藤の携帯電話が着信を知らせた。
遠藤はまたインタビューかよと辟易しながら通話ボタンを押す。
﹁え、機材を貸してくれる? 本当ですか!﹂
そして遠藤もまた運命という名の大波に翻弄されることになるの
であった。
◇
道彦はまたヒールを受けると村を捜索した。
大人10人。
子供10人。
合せて20人ほどがまだ生きていた。
楽しく殺害するために大事にとっておいたのだろう。
﹁皆さん、エルフを救出しました﹂
エレインが撮影するなか道彦は淡々と実況中継をしていた。
兵士たちはまだ数人が意識を保っていた。
村民たちは道彦に詰め寄った。
﹁か、家族の仇を討たせてくれ!﹂
まずいことになった。
72
道彦は思った。
戦闘で人を殺すのとリンチは違う。
道彦は戦場での殺人はしかたないと思っているが、戦闘が終わっ
てからのリンチをどう扱えばいいかは判断できなかった。
﹁皆さん、村民の皆さんは報復を望んでいます﹂
道彦はあくまで冷静に言った。
﹁普通、盗賊はどうやって処分するんですか?﹂
わざと道彦は兵士を﹃盗賊﹄と言った。
こんなヤツらを兵士と呼びたくない。
声にこそ出さないが道彦は嫌悪感でいっぱいだった。
﹁盗みは縛り首だ。人が死ねば杭打ちの刑だ﹂
﹁わかりました。現地の法に従いましょう。エレイン、兵士を引き
渡して﹂
道彦はアッサリと兵士を引き渡した。
だが一言添えた。
﹁ちゃんと裁判を開いてやってください﹂
﹁勇者様のご指示とあれば従いましょう﹂
道彦は簡易の村営裁判を中継すると刑の執行を撮影するのは止め
た。
あまり美しいものではない。
73
それに村民を蛮族とみなされたら面倒だと思ったのだ。
代わりに世界に対して自己紹介をすることにした。
﹁鈴木道彦です。高一です。部屋にいたら突然この世界に呼び出さ
れました。韓国軍に追い回されたあげく殺されかけたところを彼女
たちに保護されました﹂
コメント欄には道彦への質問であふれかえっていた。
道彦はそれに丁寧に答えていく。
最初はなにげない質問から始まった。
Q.彼女はいるの?
﹁彼女はいません。女子と話す機会も少ないです⋮⋮﹂
自分で言っておきながら気分が落ち込む。
このまま童貞で死んでしまうのだろうか⋮⋮
それを考えると空恐ろしかった。
道彦はそれを正直に言った。
﹁童貞のまま殺されるかと思うと⋮⋮なんと言うか怖いです⋮⋮﹂
少し場が湿っぽくなった。
﹁生きろ﹂
﹁どんまい﹂
﹁頼むから死ぬな!﹂
コメントも妙な慰めであふれた。
Q.平和的に解決はできなかったんですか?
74
﹁言葉も通じなければ姿を見たら殺そうとする相手にどうやって平
和的解決をすれいいのでしょう﹂
これはほとんどのコメントが同調した。
彼らは全てを見たのだ。
野蛮だったのは韓国軍の方だ。
話し合いで解決するはずがない。
Q.これからどうしたいですか?
﹁家に帰りたいです。でもその前に僕は殺されるでしょう﹂
このとき、すでに道彦の動画は各言語に翻訳されて世界中に配信
されていた。
この﹁帰りたいです﹂は世界中に配信され、道彦のこの発言は事
件を象徴するものになった。
だがここで空気が変わる。
75
戦闘後の生質問︵後書き︶
次回マリファナ回
76
痛み止めは☆マリファナ☆三
Q.差別主義者なのですか?
﹁生きるので精一杯なだけです﹂
これは非常にリアリティがあった。
確かに嫌悪感はあるがそれを言う必要はない。
だが質問者は食い下がった。
﹁このネトウヨ野郎が!!!﹂
道彦は政治的にはノンポリだ。
いや、正確には知識がなさ過ぎてなにも考えていない。
公立学校でよくある赤化教育を受けたため、労働組合と社会保険
の存在を信じる程度には左である。
﹁ネトウヨとはなんですか?﹂
﹁ネトウヨってのはお前みたいなやつのことだ!﹂
全く答えになっていない。
道彦は冷や汗をかいた。
﹁よくわかりません﹂
﹁この薄汚い障●者野郎!﹂
77
質問者は成人なら口にしてはいけないような差別的な言葉で罵っ
た。
韓国では反日は国策であり同時に信仰である。
そして日本人を罵るときには障害者という言葉を使うのが一般的
である。
それは韓国の第三国歌と言われる名曲﹃fUCk zAPAN﹄
でも日本人を障●者野郎と罵る歌詞が頻発することからも明らかで
ある。
︵※https://www.youtube.com/watc
h?v=w9e6hWrNbD4︶
道彦には意味がわからない。
なぜそこまで必死なのだろうか?
﹁テメエの家はわかってるんだぞ! 火をつけてやる!﹂
道彦へ容赦ない罵倒が浴びせられるとコメントが一斉に書込まれ
た。
﹁テメエ、﹃日本人を殺し隊﹄のコボルト戸川だろ?﹂
日本人を殺し隊。
﹃韓国人は日本を差別してもいいけど、日本人は黙って耐え続け
て根絶やしにされろ﹄という日本人を差別する運動を繰り広げるナ
チス主義団体である。
一部の外国人への過度な優遇を廃止し公平性を求めるデモを暴力
的に排除したり、サイバーテロを含むあらゆるテロを実行する集団
である。
そのリーダー本人が降臨したのだ。
78
﹁死ねよXX野郎!﹂
﹁韓国へ帰れ!!!﹂
それは炎上であった。
道彦は当然そうなるだろうと思っていたので一度ため息をついた。
﹁差別もなんてしている暇はないです。見てくださいこの傷を﹂
道彦はカメラへ向けて脇腹を晒した。
血は止まってはいるが、まだそれは痛々しい姿だった。
むしろ血が止まっているぶん、傷ついたばかりの生々しい傷が画
面に映し出される。
次に道彦は撃たれた肩を晒した。
運の良いことに弾は貫通していた。
これも生々しい傷だった。
﹁今日、僕はこの手で四人殺しました。日本にいたら一生誰も殺さ
ずに生きていけたと思います⋮⋮まだ手が震えています﹂
道彦はカメラへ向かって動く方の手を差し出した。
手が震えていた。
ただそれは死への恐怖なのか、人を殺した後悔の念なのか、ただ
単に全身を駆け回る痛みのせいなのかはわからなかった。
そんな道彦へフィーナが何かを持ってきた。
﹁道彦様。痛み止めです。ゆっくり噛んでから食べてください﹂
それは乾燥した葉っぱだった。
79
﹁痛み止めらしいです。RPGの薬草みたいなものでしょうか?﹂
道彦はカメラに向かって葉っぱを振る。
そしてコメントを確認せずに葉っぱを口に入れた。
肩と脇腹がまるで自分の体ではないかのようにじんじんとしてい
た。
傷口の周りがお湯で煮たように熱い。
だが傷口は氷のように冷たかった。
痛みとは別にピリピリとしたシビれが神経を登ってくる。
耳からも血液の流れる音がする。
心臓はドクドクと鼓動し、それと連動して痛みが繰り返し襲って
くる。
もう道彦は限界だった。
この痛みは我慢できそうにもない。
かと言ってここで泣いてもカメラの先にいるサディストを喜ばせ
るだけだ。
だから痛み止めなら大歓迎だった。
いや一時でも早くこの痛みを抑えたかった。
痛みは注意力散漫になるほどに道彦をむしばんでいた。
歯を噛むと青臭いニオイが口の中に広がった。
決して美味しくはないがはき出すほど不味くもない。
芋虫になったような気がして死にたくなったが生きたい気持ちの
方が強かった。
葉っぱを噛みながら道彦はコメントを確認した。
﹁オイコラ、それは大麻だ!﹂
﹁ちょッ! おま!﹂
80
﹁節子、それは大麻や!!!﹂
﹁wwwwwwwwwwwww﹂
思わず吐き出しそうになった。
だが道彦は痛みが収まるならと飲み込んだ。
﹁ごめんなさい。大麻の葉っぱなんて見たことなかったので⋮⋮﹂
道彦は正直に答えた。
実際大麻は癌などの痛みを緩和するために医療用として使われる
こともある程度には鎮痛作用がある。
文化の違いと使える物資を考えれば合理的な選択であった。
道彦は知らずに使ってしまったが、日本国刑法第二条で大麻は国
外での使用でも訴追可能であることを道彦は知らなかった。
じゅくじゅくとした傷口の痛みはあまりにも酷かったため知って
いたとしても使ったかもしれない。
もちろん道彦をなじる人間の声は大きくなった。
﹁日本の恥だ! 殺せ!﹂
﹁ネトウヨ野郎め!﹂
﹁このジャンキーが!!!﹂
効能も現れていないうちからジャンキー扱いである。
道彦はまずったと思いながらもどこか冷静にコメントを眺めてい
た。
81
﹁ネトウヨは死ね!!!﹂
﹁おい明日こいつの家燃やそうぜ!﹂
﹁死ねよwwwwwwwwwwwww﹂
罵声と﹃w﹄の連打。
コメント欄が荒らされていく。
金で雇われた工作員⋮⋮とは断定できないが組織的に行動する﹃
荒らし﹄が暴れはじめている。
潮時だ。
道彦は思った。
そろそろ中継を一旦終わりにしようと思ったその時だった。
それは悪意のない書き込みだった。
Q.先ほどから悲鳴が聞こえているのですが?
風の音と言うことにしたかったが先ほどから悲鳴が聞こえている
のは事実だった。
それと一緒に木と木がぶつかる音と﹁子どもたちの敵!﹂とか﹁
妻の敵!﹂という怨嗟の声が道彦の方まで届いていた。
﹁弓矢で攻撃されて動けなくなった連中です。裁判で死刑が決まっ
たようです﹂
道彦は慎重に言葉を選んで言った。
Q.死刑?
82
﹁ええ。この地域では強盗は杭打ち、放火犯は火あぶりだそうです﹂
Q.止めないのですか?
﹁僕は異世界に迷い込んだ部外者です。村民に肩入れはしてますけ
どね。この世界の法律に従うしかありません。裁判を開くようには
頼みましたが僕ができるのはそこまでです﹂
道彦は勇者の件は黙っていた。
銃で撃たれて青い顔をしながら泣きそうな顔でむしゃむしゃと青
臭い大麻を噛んでいた自分が勇者のはずがない。
道彦が本当に勇者なら、今ごろランボーみたいにたいまつで傷を
炙って治したはずだ。
摂取してから30分程度経つと少しずつ心臓が高鳴ってきた。
それに伴い自分が溶けるような感覚に襲われる。
意欲がなくなり、だんだんと思考力が落ちる。
大麻が効いてきたのだろう。
意識がコントロールできるうちに道彦はぼそりと言った。
﹁意識がドロドロになってきました⋮⋮中継を一旦終了致します﹂
こうして道彦の第一回放送はあらゆる意味で議論を呼んだ。
道彦を許せないという人間。
殺すべきだと主張する人間。
エルフの方が悪だと強行に主張する人間。
いやこれが現実だとあきらめる人間。
幸いなことにほとんどの声は道彦の救出を求める声だった。
処刑についても死刑囚にすら人権がある道彦の世界でも﹁しかた
ないよね﹂で終わりだった。
83
今夜、道彦の世界での兵士の命の価値は限りなく低かった。
中継が終わったあと、世界中の人は積極的に議論を交わした。
議論の半分は﹃死ね﹄とか﹃殺す﹄という罵声だった。
だがそれ以外は自分の言葉で事件を語りあった。
議論すべきことは山のようにあった。
道彦はカメラの前で人を殺した。
処刑にも関わった。
平時ではないが、自分の意思で人を殺害したのだ。
それに麻薬を摂取した。
重大犯罪ゆえ、たとえ外国での事件でも国内で裁かれる可能性が
ある。
いや戦争犯罪としてすら裁かれる可能性があった。
道彦は帰ってきたら逮捕されるだろう。
だが彼は本当に裁かれるべきなのか?
あるものは道彦を非難し、あるものは道彦の無罪を主張した。
あるものは道彦への亡命の道を模索し、あるものは道彦で一儲け
を企んだ。
こうして世界中の人々は眠れない夜を過ごすことになったのだ。
一方、道彦は処刑が終わると村民に森へ隠れるように指示を出し
た。
村への襲撃がこれで終わりだとは思えなかった。
バタバタしているうちに道彦は突如笑い出した。
大麻がせいだろう。
タバコも酒も飲まない道彦には効果が強く出たようだ。
道彦はひたすらハイテンションで笑っていた。
痛みを忘れた代わりに完全に使い物にならない。
アミガの村民はそんな道彦を優しく運んだ。
道彦は最強の戦士でも大魔道士でもない。
ましてや勇者なんて決して手が届かない。
84
でも村民は 家族の仇を討たせてくれた異世界の男へ感謝の念を
抱いていた。
85
痛み止めは☆マリファナ☆三︵後書き︶
傷口から蛆がわく描写はダメだよね?
感想欄で答えると大炎上するから黙ってろとアドバイスを受けまし
た。
なのでここで一部に答えます。
Q.なんで道彦に殺人させたの
A.犯罪者にしたかったから。政府の中の人の対立を書きたかった
ので。あと法曹関係者の悪役出したかったから。
Q.政治思想を語るのはいけないと思います
A.道徳の教科書に採用できるレベルの中道かなかと?
Q.韓国人を悪く書きすぎ。
A.当初悪役はアメリカ軍だったんですけど、ゲートに難癖つけた
記事を見て韓国に悪役になってもらいました。
http://u1sokuhou.ldblog.jp/arc
hives/50475206.html
現実でも戦争馴れてるアメリカも被害者永世名人のイスラエルもや
らかしてますし。
そのわりには日本は悪く言われて過ぎてるなあと思います。
しかもほとんどがファンタジーです。
これって明らかに人種差別ですよねえ。
できる限り批判的な視点から戦争を描写していて戦争賛美でも軍国
86
主義でもないハイパーリベラルなのできっと喜んでくれるに違いな
いと思います。
87
マスゴミ
有川は歯ぎしりをしていた。
ネトウヨが生き残ってしまったのだ。
ネトウヨは死ぬべきだ。それも無残に。
それが有川のルールだった。
そもそもネトウヨとはネット上の右翼のことであり、ただ巻き込
まれただけの道彦はネトウヨではない。
だが近年ネトウヨの定義はどこまでも広く拡大し、いまや共産主
義政党や当の韓国人までもネトウヨ扱いである。
﹃ネトウヨとは遠足におやつを300円以上持ってくる極悪人で
ある﹄とまで言われる始末である。
だが有川にはそんなことは関係ない。
有川は今までイスラム国に日本人の情報を密告して二人を葬った。
日本人を殺すこと。
それが有川の存在理由だった。
だが薄汚い日本人が生き残ってしまったのだ。
そしてこの世でもっとも先進的でリベラルな韓国様に危害を加え
ようとしている。
実際は巻き込まれた道彦が過剰防衛で三人殺したが一番中立な物
の見方だがそれは有川には関係ない。
有川は常に韓国や北朝鮮側から世界を見ているのだ。
歯ぎしりした有川はある作戦に出る。
これが道彦たちの運命を変えることになる。
長い長い夜が終わり朝がやってきた。
太陽が黄色く輝いていた。
世界中の人々が活発に議論をし眠れぬ夜を過ごした。
88
世界中のSNSはは異世界に紛れ込んだ少年、道彦の話題で持ち
きりだった。
それに同調して各国のニュースもトップで道彦の話題を取り上げ
ているほどだ。
鈴木道彦は今やハリウッドの俳優よりも有名人だった。
道彦に関する議論は主に法律的な扱いや報道として﹃アリ﹄なの
かだった。
ほとんどの意見は同情的なものであった。
それ以外にも心理学や社会学、人類学的にもモラルが高い地域の
少年が容易く殺人に手を染めた例として議論が行われていた。
学術とは無縁のグループでは道彦がランボーなのか地獄のヒーロ
ーなのかで議論が行われている。
ほとんどが﹃ヒーローではない﹄と口では言いながら道彦が次に
何をやらかすかを期待していた。
悪人を殺す正義のヒーローという筋立てなのに、その映画では再
現できない妙な生々しさに彼らは興奮していたのだ。
彼らは自分自身でも人道に外れた興奮をしているのを自覚してい
た。
それをごまかすためなのか、それとも純粋な善意からか﹃道彦を
救え!﹄と繰り返し叫んでいた。
叫びは怒り、喜び、哀しみ、憎しみがない交ぜになったものだっ
た。
そして彼らは自分たちを糾弾するかのようにその矛先を韓国へ向
けた。
韓国の方はたまったものではない。
世界各国の韓国大使館の前には抗議のデモ隊が集い﹁この犯罪者
!﹂と叫んでいた。
韓国大統領のパコは一夜にして救国の英雄から戦争犯罪者へ堕と
89
された。
パコは各国の指導者に電話会談を要求し自らをかばうように求め
た。
パコからすれば世界の首脳は韓国をかばう義務があるからだ。
結果はほとんどの国にきっぱりと断られた。
特に日本の芥川首相はまるで汚物と話しているかのような冷たい
声だった。
なぜ世界最優秀民族として世界に君臨する韓国大統領の命令に従
わないのだ!
世界大統領より偉いのだぞ!
︵※世界大統領とは国連事務総長のことである︶
なぜ世界最優秀民族ではなく異世界人なんかに感情移入をするの
だ!
パコは嘆き悲しんだ。
大韓帝国が日本軍に踏みにじられたときもこんな気持ちだったに
違いない。
そして非常に短い時間を韓国人独特の思考に費やすと恨む相手を
見つけた。
そう⋮⋮これも全て⋮⋮全てが薄汚い日本人のせいなのだ。
異世界人とつるんで汚い金を使って世界各国を買収したに違いな
い。
許せない。
根絶やしにしてやる!
パコは憎しみを募らせ歯ぎしりをした。
だが同時にパコは知っていた。
日本に見捨てられたら韓国は滅びることを。
日本を滅ぼすのは世界が望む自明の理である。
90
それは人類普及の真理である。
だが今は日本を刺激するべきではない。
当面は韓国の国内世論を抑えなければならない。
それにはパフォーマンスが一番だ。
李明博元大統領は独島︵竹島︶にヘリで駆けつけるというサプラ
イズを果たした。
薄汚い日本人へ一撃を加え、同時に世界は韓国にひれ伏したのだ。
パコは自分も同じようなことをすればいいはずだと結論づけた。
それにだ、世界で最も革新的な我が軍が野蛮なことをするはずが
ない。
世界中のマスコミを連れて異世界へ訪問すればいいのだ。
今ごろ我が軍は微笑みながら現地の子どもたちと我が国が生んだ
文化であるサッカーでもしていることだろう。
悪逆非道な日本になど負けない。
負けてたまるものか!
パコは微笑んだ。
それがかつてベトナム戦争でアメリカが失敗した戦略だとは気づ
かぬままに。
◇
結局、遠藤は一睡もしなかった。
炎上するネットとは違い日本の朝は静かなものだった。
マスコミ各社は﹁報道しない自由﹂を行使することを選択した。
新聞は野党による芥川総理への漢字クイズを大きく取り上げた。
漢字が読めるのが政治力だとでも言いたいのだろう。
それなら辞書の編纂者がもっとも優秀な総理のはずだ。
そう思っているのだからはっきりと言い切ればいい。
だがそれを言わないのが彼らの品性というものを表していた。
あとはいつものように慰安婦がどうとかアメリカ軍がどうとかの
91
記事で埋め尽くした。
韓国軍の虐殺には一文字も触れない。
また朝のニュースは芸能人の不倫放送からはじまり、国内の事件
報道、上野動物園のパンダのニュース、お笑い芸人の私生活、そし
てアイドルの宣伝と盛りだくさんだった。
お笑いタレントが話すたびに、女性アナウンサーがケラケラ笑っ
ていた。
まるで鈴木道彦という人物が存在しないかのようにすっぽりと異
世界での虐殺だけが報道されなかった。
マスコミの本音は簡単だった。
誰でもわかる。
クソガキさっさと死ねよ。
それは北京オリンピックの前にチベット虐殺を全く報道しなかっ
たころの空気とどこか似ていた。
普段は政府の圧力がうんぬんと偉そうに言っているが、マスコミ
などこの程度だった。
マスコミなど最初から知る権利には貢献していないし、すでに自
らの主張する存在意義など粗大ゴミに出していた。
公正中立とホザきながら中韓の足の指をしゃぶる豚でしかなかっ
たのだ。
それに反して日本のネットニュースは道彦の話題で持ちきりだっ
た。
ありとあらゆる場所で道彦と遠藤、それとその家族への殺害予告
が書込まれるほど人気だったのだ。
ありとあらゆる場所に﹁俺ならもっとうまくやる﹂と書き込みが
あり、﹁テメエみたいなクズは永遠に呼ばれねえよ!﹂と返信され
ていた。
﹁暴力はいけないよ﹂と生ぬるい意見に、﹁鈴木道彦はXX教の
92
信者﹂とか﹁フリーメイソンがうんぬん﹂とお約束の陰謀論が隙間
を埋める。
道彦が見たら代わって欲しいと本気で思うに違いない。
遠藤はため息をついた。
世間は残酷だ。
イデオロギーのためには人殺しもいとわない。
だがそれでもよかった。
道彦には敵が必要だ。
韓国軍では相手が強すぎる。
まともに戦ったらあと数日の命だろう。
だからもっと卑怯な悪党を用意する。
マスコミだ。
じきに彼らに怒りの矛先が向かい炎上するだろう。
彼らが意地になって無視して、世間が騒げば騒ぐほど道彦の生還
の可能性は上昇する。
そして道彦を利用した連中が動くはずだ。
世間を飽きさせてはいけない。
世界をも巻き込んでの祭りを炎上させなければならない。
煽って煽って煽って煽って⋮⋮炎上した先に道彦の生還があるは
ずだ。
ニュースを見る人たちを道彦に感情移入させ、自分たちが異世界
人と共に戦っているように思わせるのだ。
だから村人に肩入れしてもいい。
なるべく生々しく、苦しみ、傷つける。
それが必要なのだ。
一方海外のマスコミも似たようなものである。
もしこれが自国のタブーに触れるニュースだったら報道する勇気
はない。
93
特にアメリカのマスコミは、ボストンマラソンへの爆弾テロ事件
で無責任なネットの流言を信じて無実の人を晒し者にするという失
態で、その権威はすでに地に墜ちていた。
どこもマスゴミは似たようなものである。
だがこれは遠い朝鮮半島で起こったことだった。
遠慮するいわれはないし、責任を取る必要もない。
ほとんどの局は道彦の生放送をそのまま垂れ流した。
そして生放送休止中の現在では様々な角度から好き勝手に意見を
述べていた。
遠藤の部屋の目覚まし時計が鳴った。
そして全員が固唾を飲んで待つ中、二日目の放送が始まった。
94
マスゴミ︵後書き︶
・応援メッセージありがとうございます!
がんばって書きます。
ストックちょっとしかありませんけど⋮⋮
・﹃死ね﹄という心が温かくなるたくさんのメッセージありがとう
ございます。
スクショ撮ったのでそのうち晒しますね♪
・レビューありがとうございます!
腹筋崩壊しました。
それと某議員さんのツイートまとめを貼るのは自重しました。
だって別人ですし。
>グロくね?
グロいって意見がたくさんあって驚いています。
なろうの作品って子どもの背中の皮剥いだり首チョンパしたりが普
通にある印象だったので⋮⋮
不死の肉体を持ついじめっ子の顔を焼いて毒で修復しないようにす
るとか見ましたし。︵去年の今ごろの日間一位かな?︶
アウトーでしたか⋮⋮
>犯罪者を送るのはおかしくね?
フラグなのであとで回収します。
95
二日目インタビュー
二日目の放送は血液を失って黒ずんだ顔の道彦の顔のドアップか
ら始まった。
いわゆる死相である。
﹁おはようございます。鈴木道彦です。血を失いすぎて死にそうで
す。この世界には輸血の技術はないそうなのでヒールをかけてもら
ってます。血や肉の元になる肉を食べればかなり高い確率で死なな
いそうです﹂
いきなりのヘヴィな発言に視聴者はドン引きした。
実は爆発で道彦の腹に突き刺さった木片が致命的だった。
ヒールをかけたがその前にかなりの血液を失っていた。
それでもほとんどが助かるのだからこの世界の魔法は素晴らしい
ものに違いない。
道彦はカップに村人から渡された岩塩の欠片を入れるとお湯を入
れ飲んだ。
赤い岩塩からはなんとも言えないにおいがした。
一言で言えばくさい。
卵の腐ったというか牧場の牛舎のにおいというかとにかく耐えが
たいにおいだった。
だが道彦は我慢した。
聞きかじりの知識だが、水分と電解質を取っておくべきだと思っ
た。
少なくともヒールは効いている。
あとは時間を稼げばいいはずだ。
まだお腹がすく程度には元気は余っている。
96
人まで殺したのだ死んでたまるものか。
道彦の目はギラギラとしていた。
道彦が画面に現れると怒濤の勢いでコメントが投下される。
明らかに昨日より英語のコメントが増えていた。
幸いにも英語のできる親切な人が翻訳をしてくれていた。
せっかくなので道彦は翻訳された中から質問に答えることにした。
Q.服を代えたんですか?
﹁血で汚れてしまったので捨てました。下着も全部。今は兵士から
はぎ取った服と親切な村の男性に下着を借りてます﹂
道彦のシャツと兵士から奪った上着とズボン、それにトランクス
はべったりとした血を吸い込んでいた。
異世界に全自動洗濯機と中性の衣類洗い洗剤があるはずもなく、
しかたなく廃棄処分にした。
はぎ取った軍服とブーツは使うことにした。
さすがに奪った靴下をはくのは嫌だったので結局、靴下と下着は
村人から借りたものである。
日本でもわりと最近までノミやシラミなどが多かったと聞いたこ
とがある。
今でもアジアの国の安宿ではシラミがたかったベッドで宿泊する
ことになるそうだ。
そう聞いていた道彦は心配になって服をよく調べたがそんなこと
はなく安堵した。
下着と言っても腰に巻き付ける布である。
ふんどしとはだいぶ違い、最初はどうやって履くのかわからなか
った。
そんなことを説明するとかなりウケたようだった。
97
Q.どんな武器を使っていますか?
道彦はその質問に答えることにすると剣を抜いた。
﹁まずは剣。鉄製だと思います。全長70㎝くらいかなあ。韓国兵
が持っていたナイフの方が切れ味はいいです。結構な重さですが骨
に当ると刃が滑るし、肉も固くてなかなか斬れません。家で使って
いた穴あき包丁の方が斬れ味はよかったなあ﹂
道彦はしみじみと言った。
CMで見たが現代の技術で作った包丁なら固い骨も太い電線もス
パスパ斬れる。
現代の包丁と比べてこの世界の剣は叩き斬るものなのか道彦の腕
力と技術では戦闘不能にするには多大な労力が必要だった。
道彦がしみじみと語るその生々しい発言に多くの人が一瞬フリー
ズした。
﹁次は拳銃。韓国兵から奪いました。名前とかはわかりません。手
榴弾もいくつか手に入れました。それと⋮⋮グレネードがついた小
銃ですが10キロ以上あって重すぎて僕では使えません。それに昨
日の兵士は暴発事故で戦闘不能になりました。重いし死にたくない
ので小銃は持っていくのをやめました﹂
重いから持っていかない。
その決断は賢明だった。
いつの時代の戦争でも重量は大きな問題だった。
重い荷物を持てば機動性は落ちるし、すぐに疲れてしまう。
どんなに最先端の兵器であっても通常のアサルトライフルの二倍
98
強の重量の兵器では初動は遅くなるし、行軍も撤退にも影響が出る
のだ。
当然生死を分けることにもなる。
しかもグレネードの暴発事故までついてくる。
持っていくのは自殺行為だった。
ミリタリーマニアを装った何者かが一生懸命﹁そんなことはない﹂
と主張していたが誰も相手にしなかった。
Q.欲しいものはありますか?
﹁医薬品です。怪我をした子供たちがたくさんいてフィーナのヒー
ルでとりあえず血は止めたんですが⋮⋮死にそうな子が数人います。
他の子も感染症が恐ろしいので抗生物質が欲しいです。大麻だけだ
と怪我の位置によっては鎮痛効果が低いので痛み止めも⋮⋮﹂
あくまで道彦は自分以外に必要な物資をあげた。
特に考えてのことではない。
自分に言われているような気がしなかったのだ。
少し間を開けると道彦は言った。
﹁いや薬より⋮⋮いっそお医者さんが欲しいです。いまこのキャン
プには死にそうな子供が何人もいるんです。夜中に1人亡くなった
そうです﹂
そう言うと道彦はテントの一つに歩いて行く。
テントの前で警備をしていた村人に道彦は声をかける。
﹁いま中に入っても大丈夫ですか?﹂
﹁もちろんです。道彦様﹂
99
道彦は村人に会釈をしてテントを開ける。
中には5、6歳くらい思われる子供が横たわっていた。
それは誰も目から見ても酷い有様だった。
﹁彼女は韓国軍に酷いことをされて、僕がわかるだけでも骨折に打
撲にナイフで裂かれた傷に⋮⋮内臓も痛めているんじゃないかなと
思います。僕ではこれ以上のことはわかりません。ただの高校生で
すから。フィーナが血を止めましたが意識は回復しません。他にも
酷い怪我をした子供が何人もいます﹂
なるべく静かに道彦は言った。
このとき道彦はあきらめていた。
助かるはずがないと。
死を見たくない。
逃げ出したいとさえ思っていた。
殺人を犯してなお死というものが怖かった。
見ている視聴者も嫌な気持ちになっただろう。
道彦は目的を果たすとそっとテントから出た。
Q.道彦さん個人はなにが欲しいですか?
その考えはなかったので道彦は少し考える。
﹁僕が個人として欲しいのは迎えに来るヘリ⋮⋮というのは無理と
して充電用の装置にカメラに、できれば護身用の武器に⋮⋮あと大
麻以外の痛み止め⋮⋮﹂
﹁大麻以外の∼﹂は非常にウケた。
100
画面が﹁w﹂で埋め尽くされる。
道彦は自虐的に笑ったが実は惨めな気持ちだった。
欲しいものはここにあるもの以外の全てだ。
清潔な服に、ミネラルウォーター、ふかふかの布団に、ジャンク
フード⋮⋮なにより安全が恋しかった。
うまくいけば韓国軍は虐殺を止めて道彦を保護しようとするかも
しれない。
いや、それは甘い考えだ。
道彦は彼らの仲間を殺しているのだ。
躍起になって道彦を殺そうとするに違いない。
仮に保護したとしても誰も見てないところで自殺に見せかけて殺
されるだろう。
道彦は昨日よりも確実に死に近づいていた。
だから思わず弱音が漏れた。
﹁でも⋮⋮たぶん見殺しにされるんだろうなあ。遠藤の話だと有川
議員が僕を殺せって言ってるみたいだし。あの人、中東で捕まった
人の情報をイスラム国に密告する書き込みをリツイートしたんでし
ょ。今ごろ僕の家族の情報とかも売られてるんだろうなあ。家族が
人質に取られたらやだなあ⋮⋮﹂
この言葉は世界中に拡散された。
有川事務所には抗議の電話が殺到する。
もちろん有川は﹁全てネトウヨの陰謀だ﹂とわめき立てた。
だがそれだけでは終わらない。
有川の所属する政党﹁民主主義クラブ﹂に抗議の電話が殺到した
のだ。
もちろん民主主義クラブもネトウヨの陰謀であるとわめき立てた。
101
二日目インタビュー︵後書き︶
中途半端なのでもう一話投稿します。
前回の李明博については竹島上陸に関しては争いのない事実ですし
その行動に対してなんの評価もしてませんので実名で出しました。
>リアルじゃない
これはノンフィクションじゃないですよ。
いやかなり真面目に。
冷静に考えると現実にゲートが出現したら世界の共有になるんじゃ
ないかと思います。
アメリカが調査したがらないわけがない。
そこで福音派の宣教師と宗教系のNGOとバカな企業が無茶やって
テロが発生すると思います。
102
三人娘の自己紹介
さて朝の放送が終わると感想が書込まれる行く。
>ところでさ後ろの娘たちを紹介してよ。
とある書き込みが目にとまった。
忘れていた。
自分のことで精一杯だったため道彦はエルフの娘たちを紹介する
のを完全に忘れていた。
﹁みんな、僕が撮影するから自己紹介して﹂
三人はキョトンとしていた。
道彦はこれまで感想を持つ暇すら与えられていなかった。
冷静に見ると全員が芸能人よりも美形なのだ。
道彦は思わず目が合わないようにしてしまった。
そんな三人は自分たちが注目されているとは思ってもいないのだ
ろう。
特にポーズを取ることもなく自然体だった。
﹁世界中のみんなが知りたがってるから﹂
まずはフィーナがスマホの前に立った。
フィーナは薄い女性だと道彦は思った。
残念なことにスレンダーという単語は出なかった。
10代男子のボキャブラリーなどこの程度だった。
フィーナは人のよさそうな笑顔で微笑んだ。
103
﹁んじゃ、名前は?﹂
﹁フィーナです﹂
﹁好きな食べ物は﹂
﹁お団子です。あんこのが好きです﹂
︵餡団子あるのか⋮⋮︶
﹁職業は?﹂
﹁チチブ神殿の巫女です﹂
﹁チチブ?﹂
それはどこか聞いたことのある語感を持つ単語だった。
とてつもなく嫌な予感がする。
﹁はい。今から70年ほど前にこの地に降臨され神器﹃センシャ﹄
で魔王ベイテイを討伐された勇者チチブ様と賢者ミズシマ様をお奉
りする神殿です﹂
日本人だ。
道彦は確信した。
そして同じ立場として異世界で何が起こったかが手に取るように
わかった。
おそらく魔王はアメリカ軍の兵士だ。
おそらく異世界に放り出され言葉も通じずに路頭に迷ったアメリ
104
カ軍の兵士が略奪でもしたのだろう。
対して日本人は現地人と言葉が通じるので勇者としてアメリカ人
を倒したに違いない。
道彦はふとした考えが頭をもたげた。
もしかしてこの世界は困ったことが起きると道彦の世界から使え
そうな人材を呼び出すのではないだろうか?
それは拉致というものではないだろうか?
>日本人じゃね?
>日本人
>なんで日本人が
>つか米帝って⋮⋮
気づかれた!
慌てて道彦は話を変える。
拉致をしたという印象を与えるのはマズイ。
﹁はい。アリアさん自己紹介!﹂
﹁あ、はい﹂
アリアは体育会系っぽい女性だ。
なんとなく全体的に仕草が雑だ。
だが凄い。
どこを見ての感想なのかは道彦の名誉のために黙っていよう。
﹁お名前は?﹂
﹁アリア﹂
105
﹁好きな食べ物は﹂
﹁肉!﹂
まさに見た目通りだ。
﹁お仕事は?﹂
﹁フィーナと同じ巫女です。籍は同じ敷地内のミズシマ神殿だけど
ね⋮⋮です﹂
やはりところどころ雑な本性が垣間見える。
だがその仕草はネットでは﹁アホ可愛い﹂と好印象だった。
﹁次はエレイン﹂
﹁あ、はい﹂
おしとやかそうな線の細い美人が画面に映った。
カメラマンと聞いて豪傑のような女性だと勝手に思っていたせい
かコメントが﹁爆発しろ!﹂で埋まる。
フラグなんて立たねえよ! なにこの理不尽と道彦は文句を言い
たいところだが我慢した。
﹁カメラマンをやってもらってるエレインさんです﹂
﹁エレインです﹂
﹁好きな食べ物は?﹂
106
﹁あ、甘いものなら﹂
﹁ご職業は?﹂
﹁あ、あの⋮⋮その⋮⋮﹂
なんだか歯切れが悪い。
もじもじとしている。
﹁道彦様の巫女だよ﹂
アリアのその顔は意地の悪い笑みを浮かべていた。
﹁どういうこと?﹂
道彦は間の抜けた顔をしていた。
﹁アリア!﹂
﹁あ、あの一時休憩します﹂
道彦は中継を止めた。
アリアはちゃんとそれを待っていた。
わかってやっているのだ。
﹁エレインは元チチブ神殿の最高位の巫女で今は道彦様の巫女だ。
あとはわかりますね?﹂
わかるかよ!
と心の中で毒づいた道彦だががエレインと目が合うと恥ずかしく
107
なって目をそらした。
エレインも下を向いていた。
この休憩は﹁リア充め!﹂という怨嗟を一瞬だけ産んだが、﹁い
やいや、銃で撃たれて傷が痛くてマリファナ食べてる状態で何がで
きんのよ﹂という冷静な言葉で荒れることはなかった。
108
三人娘の自己紹介︵後書き︶
<i184579|17412>
心温まる応援メッセージありがとうございます!
※次回から覚醒剤が出てきます。
どこかのサイトで会話率11%と書かれていたのでちょっとまずか
ろうと思い入れて見ました。
甘酸っぱい展開はたぶんありません。
109
大統領のサプライズ訪問
パコはヘリで済州島に駆けつけると乗用車で門をくぐった。
数台の乗用車には韓国国内の国内のマスコミ、それに韓国の忠実
な奴隷である赤日新聞をはじめとする友好的なメディアを引き連れ
ていた。
サプライズ訪問である。
彼らは信じていた。
世界で最も優秀かつ先進的な国家である韓国。
その優秀な国家が虐殺などするはずがない。
絶対的悪の国家である日本とは違うのだ。
パコが基地に入るとなぜか兵士が行く手を遮った。
﹁だ、誰も入れません﹂
なぜか必死である。
だがパコは退かなかった。
韓国の大統領の娘として産まれたパコは簡単に言うとこの国の王
女である。
その意思を下級国民である兵士が邪魔をすることなど儒教の精神
から許されることではない。
李王朝時代なら凌遅刑︵生きたまま少しづつ体を切り裂く刑罰︶
ものの犯罪である。
それがたとえ﹁入れば韓国は終わりだ﹂という配慮からであって
もパコは反射的に押し入ることに決めた。
韓国の最上級国民としてのプライド、そしてメンツが許さないの
である。
110
﹁SP! 兵士を排除しろ!﹂
パコは兵士を排除し堂々と基地の中へ押し入った。
各国の記者は﹁おいおい大丈夫かよ﹂と焦っていた。
その中で赤日の記者だけは﹁素晴らしい威厳です! まるで生ま
れながらの支配者ですな!﹂と気持ちの悪いおべっかを使った。
パコはそのおべっかに気をよくした。
そうだ。
赤日の言うとおり生まれながらの支配者であるこのパコの軍なの
だ。
戦争犯罪などするはずがない!
今ごろ住民と楽しくサッカーでもしているはずだ。
パコが意気揚々と中に入る。
サッカーをしている兵士が見えた。
ただしボールはエルフの少年の頭である。
そこかしこに無残に殺されたエルフの死体が詰まれていた。
韓国兵はそれを楽しげに侮辱していく。
あまりの光景にパコは絶句した。
あたりには人間の臓物のニオイが充満し、あちらこちらでハエが
飛んでいた。
外国マスコミの複数がその場で吐いた。
パコは気力で我慢した。
マスコミは目の前のスクープに群がり死体を撮影していく。
赤日だけがオロオロとしていた。
それには理由がある。
赤日新聞の記者はさんざん日本の悪口を世界に広めた後、韓国の
大学の教授になるのが一番の出世コースである。
そこでも捏造した日本の悪口を言いふらすのだ。
彼らはここでスクープをすれば歴史に残るかもしれない。
111
だが韓国の大学教授になるという夢は絶望的になってしまう。
それだけは避けたかった。
だから太鼓持ちのようにおだてることにした。
だがパコはプライドのない奴隷を相手にしている暇はなかった。
パコが絶句していると兵士たちが汚い格好でタバコを吸っている
のが見えた。
そこは一応敵地であるのだから汚いのは仕方がない。
だが、お嬢様育ちのパコはそんなことはわからない。
戦争とは清潔な軍服を着た正義の味方が悪を倒すもの。
それがパコの認識だった。
パコは八つ当たりをする相手を見つけた。
弱いものを徹底的に叩くことで自分を大きく見せる。
それは儒教では当たり前の行動だった。
パコは怒鳴り散らそうと近づく。
すると兵士たちはパコに気づくこともなくおもむろに注射器を出
した。
そして鍋に何かの結晶を入れてかき回すと注射器に入れていく。
そしてゴムバンドで血を止めた腕に液体を注射する。
兵士たちは瞳孔が開き、だらしなく口から泡立った唾液を垂れ流
した。
パコは開いた口が塞がらなかった。
明らかにまともな状態ではない。
こんなものを外国マスコミに見せるわけにはいかない。
パコが焦ったのには理由がある。
軍隊で麻薬成分の含まれた薬剤の使用は普通のことである。
アメリカ軍では空軍のパイロットに事故回避のためにアンフェタ
ミンを支給している。
自衛隊法第115条の3第1項では法律外の薬物の使用も認めら
れている。
112
ただしそれは管理された医療用である。
麻薬そのものを支給するわけではない。
アメリカは二次大戦から伝統的に兵士をアンフェタミン漬けにし
ているがそれは戦後に医療費などで跳ね返っている。
日本もヒロポンの問題は数十年も尾を引いた。
それでもいまだに覚醒剤の汚染はなくならない。
さらに言えば朝鮮半島の北ではかつては覚醒剤は合法であった。
元気になるサプリメント程度の認識で使われていたほどである。※
︵※http://www.sankei.com/world
/news/131101/wor1311010020−n1.
html︶
金正恩体制になってからは麻薬根絶キャンペーンを開始され、厳
しい取り締まりをするようになった。
だが、北朝鮮は1992年から覚醒剤を外貨稼ぎのために利用し
てきたせいで国内の麻薬汚染は深刻である。
庶民だけではなく富裕層まで覚醒剤漬けなのである。
それが今の粛正に繋がっているという見方も存在する。
外国に輸出するための覚醒剤を横流ししたのがはじまりだと言わ
れているが、結局は上から下まで覚醒剤漬けになってしまい、すで
にコントロール不能の状態に陥った。
それほどの害悪が麻薬というものなのである。
それをわかっているからこそパコは焦ったのだ。
パコはなんとか言い訳をしようと外国マスコミの方を見ると、エ
ルフの少女たちが並べられている。
殴られたのか顔はどす黒く腫れ上がっていた。
その首には﹁21万ウォン﹂と値札が下がっていた。
どう見ても明らかに奴隷の売買である。
113
異世界に進攻した韓国軍はイスラム国と同じことをしていたのだ。
パコはその時確信した。
﹁終わった﹂と。
自身のキャリアも、政治家としての人生もなにもかも。
刑務所行きは確定した。
いやパコに生きてもらっては困る。
登山に見せかけて謀殺されるだろう。
国家は戦犯の自分が生きていては困るのだ。
いやパコだけではない。
韓国という国家までもが終わったのだ。
国際社会から日本よりも格下の戦犯国家として永遠に奴隷扱いさ
れるのだ。
パコはブツブツと意味不明の言葉を吐きながら下を向いた。
そして数秒の間を置くと﹁責任者を呼べええええええええ!﹂と
金切り声を上げた。
そしてその姿は全世界に生中継された。
114
大統領のサプライズ訪問︵後書き︶
近況
藤ゴンがお気に入りユーザーをツイッターのフォローみたいに使っ
てたらカクヨムに怒られました。バカだーwwwww
星飛ばしまくったのって聞いたら﹁不正はしないよ。読んで面白か
ったやつだけはちゃんと星つけたよ﹂とか言ってやんの。
﹁なんのためにやってんだよ意味ねえだろ﹂と聞いたら。
﹁SNSだからみんなフォローすればいいじゃん﹂だそうで。
天然が悪意なくバカやるとこの威力! ああ面白え。
皆様のおかげで瞬間最高順位で日間22位になりました。
テンプレでもチーレムでもないのでこの辺が限界かなあと思います。
勢いも落ちてきました。
なので暴力シーンフルスロットルで行こうと思います。
ちなみに今回一見するとパコが被害者に見えますが程度が違うだけ
でクズです。
では感想欄のお返事コーナー
>米帝ギャグじゃね?
米帝はうっかりギャグをやってしまいました。どうしても会話シー
ン入れたかったもので。
>なんで地上軍は歩兵なの?
115
実はすでに王国は占領されます。あと数話で書けるといいなあ。
>韓国人を悪く書きすぎ
最終的にはマスコミの方が扱いが悪いです。
一応最後にストッパーを儲けてます。ただし生ぬるくないです。
>アメリカ軍の蛮行
できればやりたいんですが、悪役で出しちゃうと今考えてるエンデ
ィングを書くのが難しいんです。
番外編でチチブとの戦いを書くしかないかもです⋮⋮
>遠足におやつを300円以上持ってくる極悪人の元ネタ
前に2chの東亜板に書込んで左右どちらの勢力の人からも怒られ
ました。
>右翼なの?
右翼⋮⋮定義が難しいですね。
国粋主義や皇国史観ではありません。
むしろそう言うのとは接点がなさ過ぎて意見を持ってません。
靖国に関しては宗教施設に難癖つけるのはいい度胸してるなあと思
います。
世界の常識では一般的に宗教に難癖をつけるのは殺される理由にな
るほどの行為です。
>韓国人が嫌いなの?
116
好き嫌いと言うより顔にツバを吐きつけながら仲良くしようぜと言
う手を取る気がしないだけです。
>テコンダー朴なの?
最初テコンダー朴みたいにしようと思ったんですけど、文字にする
のが難しかったんです。
もの凄い高度なギャグです。
模倣しようとしてはじめてあの高度さを理解して打ちのめされまし
た。
模倣が難しかったので自分のスタイルでやってみました。
117
クーデター
﹁ああ、戦争って素晴らしい! 私の手腕で黒字ですよ!﹂
司令官であるキムはその太った顔に誇らしげな表情を浮かべた。
眼鏡をかけて知的な顔つきながら、かなりの肥満体である。
鼻息も荒く興奮している。
キムは紅茶を飲みながらつばを飛ばした。
﹁我が財閥が北から輸入した覚醒剤を兵士に配りました! 次回か
らは全て有料です。戦闘が長引けば長引くほど黒字が大きくなると
いう天才的なアイデアですよ! 史上初めて長引けば長引くほど黒
字になる戦争です! どうです素晴らしいでしょう!!!﹂
パコの顔から怒りすら消えた。
パコの抜け殻に残るのは後悔だけだった。
誰だこんなバカを司令官にしたのは。
どうしてこうなった?
ガチガチとパコの手が震える。
パコはまだ悪いことをしている自覚があった。
そうパコは外国留学の経験がある。
そこで日本人以外は無闇に殺してはいけないと学んだ。
弱いものは全て奴隷というのが普通の韓国人としては破格の文明
的な考え方を持っているのだ。
確かに便宜上、異世界人を日本人として処理する必要があった。
国内世論を納得させるには日本との戦争というファンタジーが必
要だったのだ。
それには多少の殺人も許されるだろう。
118
なにせこちらは民間人を殺された被害者だ。
1000年は恨む権利がある。
だが本気で大虐殺を開始するバカがいるなんて思っていなかった。
パコの考えは甘かった。
韓国では日本を絶対悪として教育する。
日本人なら殺してもいい。
むしろ日本人を殺めれば英雄扱いされる。
ただの民間人への殺害であっても日本人相手なら賞賛されるのだ。
※
︵※http://ja.wikipedia.org/wik
i/%E9%87%91%E4%B9%9D︶
それが韓国という国なのだ。
反日こそが絶対かつ唯一の信仰なのだ。
それは安重根が英雄として奉られていることからも明らかである。
﹁兵士には福利厚生として奴隷を支給しました! みな喜んでます﹂
一点の曇りもない目でキムが言った。
それを悪いことだとは認識していない。
それには理由があった。
韓国は極端な競争社会である。
そこで頂点に立つにはサイコパスになるしかない。
一部のサイコパスは自分のやっていることが悪などとは認識しな
い。
ブラック企業の経営者が社員をイビリ殺してもなぜかお涙頂戴の
サル芝居をするのにその闇が垣間見えるだろう。
彼らはそれが正しいと心の底から信じているのだ。
キムも同じだった。
119
財閥の一族に生まれた彼は、生まれながらか、それとも競争社会
がそうさせたのか他人への同情心というものを持っていなかった。
彼の世界には自分と奴隷しかいない。
世界は勝者である彼を賞賛するためだけに存在し、敗者は彼の自
由に扱ってよかった。
取引先、下請け、会社の社員、いままで何人もを自殺に追いこん
できたが、それが悪いことだとは全く思っていない。
おもちゃが壊れた程度の認識である。
むしろ人生の勝者という勲章だとさえ思っている。。
彼には奴隷にされたエルフも兵士も等しくゲームの駒だった。
彼はイスラム国のやり方を見て学んだ。
庶民は暴力と欲望のはけ口を用意してやれば喜んで死んでくれる
のだと。
だからキムは兵士たちに覚醒剤を配り、麻痺した頭で少々のスリ
ルを味合わせ、エルフを強姦させて兵士の性欲を満たした。
暴力と薬物と背徳のテーマパークこそキムの目的だった。
そう、キムは異世界を最高のテーマパークにしたのだ。
﹁ふふふ。北から買った覚醒剤で彼らはどこまでも強く残酷になれ
ます。この世界を滅ぼして世界最強国家を作り、日本人を絶滅させ
ましょう!﹂
キムは自信満々に言った。
ゲームでもやっているつもりなのか。
パコは驚愕した。
キムは完全に狂っている。
キムを止めなければ!
﹁き、貴様ぁッ! 我が国家を滅亡させるつもりなのか!﹂
120
パコはキムに掴みかかった。
日本人の絶滅。
確かにそれは韓国建国以来の国是であり、絶対不可侵の信仰であ
る。
その信仰を満足させるために毎日のようにマスメディアは日本の
悪口を報道し、日本政府を刺激しない程度に在日同胞には破壊工作
を命じてきた。
日本内部のテロリストを先導して国連にあることないこと陳情さ
せ、日本の立場を悪くさせたこともある。
だが日本人の絶滅が政治的に可能であるかと言えばそうではない。
パコはわかっていた。
韓国は建国以来日本に依存してきた。
都合よく助けてくれるのは日本しかいないのだ。
そう日本がいなければ韓国は滅亡することをわかっていたのだ。
日本に災害があったときに大喜びしすぎて日本が本気で怒ったこ
とがある。※
︵※https://www.youtube.com/watc
h?v=TG3nvJQSXI4︶
︵※https://www.youtube.com/watc
h?v=VnHME︳X2uFU︶
︵※http://horukanlite.com/blog−
entry−50.html︶
その火消しに日本のマスコミに我が国がいくら払ったのか。
赤日に報道させないためにいくら使ったのか!
年金をつぎ込んでようやく火消しをしたというのに!
そんなパコにキムは冷たく言い放った。
﹁あなたも親日派でしたか﹂
121
ぞくりとパコの背筋に寒いものが走った。
キムは暑苦しい笑顔のままだが目が笑っていない。
これが反日教育だけを受けてきた世代だというのか。
日本を恨み、日本人を殺すことだけを教育され、自分の人生を取
り戻すには日本を滅ぼさなければならないと思っている模範的韓国
人の姿だというのか!
キムはパコを無視して手を叩いた。
﹁衛兵。裏切り者が出た。親日派を牢に入れろ﹂
覚醒剤で虚ろな目をした2人の衛兵がパコをつかむ。
親日派とは日本に親近感を抱く人物ではない。
売国奴のことである。
当然のように親日派の財産は没収され被害者に分配される。
親日派には、なぜか朝鮮戦争やベトナム戦争当時のものまで含ま
れるがそこを考えたら負けなのである。
﹁お前、韓国は貴様のせいで滅んでしまうんだぞ! わかっている
のか!﹂
パコは喚きながら衛兵に連れて行かれる。
その背中にキムはつぶやいた。
﹁滅ぶ? いいえ。誰もが為し得なかった世界最強の国家になるん
ですよ﹂
キムは紅茶を口に入れた。
その日のうちに韓国軍部はクーデターを宣言。
数十年ぶりに軍事政権体制に戻った。
122
キム・マルチャンは異世界の司令官として残留した。
軍部もスポンサーには甘いのだ。
軍事政権は親日派名簿に載っているスポンサー以外の一族郎党を
逮捕。
日本企業の韓国法人、その財産全てを接収。
スポンサー以外の従業員を逮捕した。
裁判を開かずに死刑判決を言い渡すつもりである。
これに韓国国民は熱狂。
正義政治の時代が到来したと大喜びした。
◇
アパートの一室。
暗がりでパソコンのディスプレイが煌々と光っていた。
その前には太った男がパソコンのキーボードへ向かい一生懸命タ
イプしていた。
>さすがに今回はついていけない。頭おかしい。
>うん。日本を本気で怒らせたら経済が破綻してしまう!
>でも異世界に行きさえすれば僕たちの人生だって少しはマシに
なるんじゃないか?
>それでも人殺しはいけない
>日本猿だって僕らのものを盗んで大きくなったんだ! 僕らだ
って盗む権利はある!
>違う。その前から日本は大国だった。日本と比べるのはもうや
123
めよう。
>この親日派野郎が! なにを言ってやがる! 日本さえいなけ
れば我々は世界最強の国家だった。
>現実を見ろよ。日本は敵じゃない! なんでみんなそうやって
怒るんだよ!
そこまでタイプすると男はため息をついた。
ここのところこの国はおかしい。なぜ一番仲良くしなければなら
ない国を滅ぼそうとするのだろうか?
そんなことができるはずがない。
もし輸出産業主体の我が国が仮に日本と戦争をしたら株価は一瞬
で暴落し、日本に辿り着く前に経済が崩壊して戦争をする金はなく
なるだろう。
そんなことになったら、日本は絶対に助けない。人を憎むことの
虚しさはキリスト教徒ならみんな知っているはずだ。
過去に実利は存在しないというのに何を考えているんだ⋮⋮
﹁どうしちまったんだ⋮⋮?﹂
男がそうつぶやいた瞬間、ガシャーンという音と共に窓ガラスが
割れた。
男は椅子から滑り落ち尻餅をつく。
ロープ、ヘルメットを被った警官。
警官が屋上から突入したのだ。
﹁動くな! 逮捕する!﹂
男は一瞬警官が何を言ってるのかわからなかった。
124
﹁貴様には国家保安法7条、敵国への讃揚・鼓舞罪の容疑で逮捕状
が出ている﹂
﹁へ?﹂
﹁この薄汚い親日派が!﹂
﹁ちょっと待ってよ! 僕が親日派だって? それに日本はまだ敵
国じゃないだろ?﹂
﹁うるさい! 貴様には与敵罪の疑いもある。有罪なら死刑だ!﹂
﹁ちょっと、ちょっと待ってよ! どうして? どうして日本と戦
わなきゃいけないんだよ! おかしいだろ?﹂
﹁うるさいこの豚が!﹂
警官が男の顔を蹴っ飛ばした。
そして警官は特殊警棒を取り出し男を滅多打ちにした。
﹁死ね! 死ね! 死ね! 死ね!﹂
男はこのあと収容所に搬送され、拷問を受けることになる。
だが民衆は喜んでいた。これで世界はもっとマシになると喜んだ。
なぜなら親日派が消えるからだ。
これは魔女狩りと同じである。
反日という信仰への反逆者を倒すための一手なのだ。
行き着く先は言論の自由の消滅。
彼らはそんなことを考えず、わけもわからず熱狂していた。
125
クーデター︵後書き︶
数々の応援メッセージありがとうございます︵嫌味じゃない方︶
とりあえず完結までの予定が立ちました。
なんとか完結までお休みせずに投稿できると思います。
こういう書籍化だけは絶対にないネタ小説は勢いが大事です。
ポイント欲しいとか欲張ってはいけません。
なので10万字ちょいで終わる予定ですが予定よりオーバーしそう
です。
感想のお返事コーナー
中国の掲示板でネタになりましたので書込んでみました。
中国語できないので日本語で突撃です。
http://homu.komica.org/35/inde
x.php?res=314977
>銃で撃たれた道彦に関して
ここは完全に演出の都合上です。
自分で倒さない方が絶対にリアルなんで一般向けの公募だったらリ
アルに舵を切ります。
でもここなら倒しちゃった方がいいと判断しました。
この辺がフルメタルジャケットかプラトーンかを分けていると思い
ます。
リアル寄りがフルメタルジャケットで、アメリカ軍が比較的かっこ
126
よく敵を倒すのがプラトーンですね。
貫通は経験ないので比較対象が骨折ですが、被害はたいしたことな
いのに動けなくなりますよ。次の日とかは地獄です。
内視鏡とかもやはり一週間は動けませんよね。
熱も出ます。人間はやはり脆いものです。
>キ●ハラ、ASU●A
TAS●IRO⋮⋮
最近そんなのばっかりですね。もうがっかりです。
あの世代はMDMAとか脱法ドラッグの出始めのころに金持ってた
んです。元気なうちはいいんですけど年を取ると影響が出るわけで
す。
⋮⋮致死量飲んで無事だったキ●ハラさんは化け物だと思います。
>韓国って国を理解しろ。理解したなら、自重などするな。本能の
ままコメントを打て。荒らせ、叩け。
だって
彼らが荒らしてくれたおかげで楽しいコメント欄になってくれたん
だと思います。
>セキュリティ業界の総力
あ、無理無理。ちゃんと身バレ対策してるから。TORとか野良W
IFIとかじゃなくてちゃんとお金をかけたやり方で。確かに総力
挙げればできるけど調査だけでかなりお金かかりますよ。
>ぬるすぎ
127
フルスロットルでがんばる!!!
今夜は覚醒剤まみれ!
感想欄は逆に面白いので晒します。
カクヨムじゃあこの展開はないですからw
>その他いろいろ。
数話先から始まる後半戦はエンディングに向けてドイヒー場面の連
続です。
今20話まで投稿してるので40話くらいで終わりだと思います。
最後まで書き終わったら連続投稿します。
ところで悪役はまとめて地獄に落ちるのは決定として、道彦はハッ
ピーエンドと生々しいバッドエンドっぽい何かのどちらがいいです
か?
終わったら10話くらいのチチブ外伝できたらいいなあと思ってま
す。魔王米帝を蹴散らすヒロイックファンタジーです。︵大嘘︶
128
マスゴミと覚醒剤
クーデターから数日後、全世界が韓国への制裁に乗り出した。
アメリカも日本も欧州も冷たかった。
﹁レッドチームにいればいいじゃない﹂という具合である。
その態度は友人でいることさえ明確に拒否していた。
西側諸国だけではない。中国も冷たかった。
自らを世界最優秀民族とのたまう勘違い国家の仲間だと思われる
のは心外だったし、仲間だと思われたらアメリカになにをされるか
わかったものではない。
もちろん韓国政府は﹁全て日本の右翼主義者による陰謀﹂と反論
したが誰も相手にしなかった。
韓国の通貨であるウォンは暴落。
株価も一瞬でゴミになった。
だがそれは日本では報じられることはない。
日本人は何も知らされていなかった。
隣の国の軍政はキレイな軍政。そして自衛隊は憲法違反。
隣の国の虐殺はキレイな虐殺。自衛隊だけは許さない。
隣の国を嫌うものはネトウヨ。あとアメリカ軍も敵。
それが日本のマスコミなのだ。
もちろん道彦のことも韓国軍の虐殺も韓国でのクーデターも全く
報道しない。
ただ隣にあると言うだけで韓国に隷属し韓国の言うことは全て聞
けというのだ。
﹁ふざけんな! なんで日本人が死にかけてるのに報道しないんだ
129
よ!﹂
その怒りはネットユーザー以外にまで波及した。
当然のように大量の苦情が放送局とスポンサーを襲う。
新聞の購読者は減り全国紙が夕刊を廃止する方向で検討を始めた。
勝った。誰もがそう思ったとき新聞は答えを出した。
漫画アニメ規制を!
ゲーム脳は子どもの人生を破壊する。
世界が日本のオタクカルチャーの規制を望んでいる。
オタクから子どもを守れ!
なぜか執拗なオタクカルチャー叩きが始まったのだ。
﹁今、ここに数万人の少年Aがいます!﹂
中野でインタビューをしていたアナウンサーが唐突に言った。
少年Aから中年Aになったあの男のことである。
﹁こんなに不道徳な本が並んでいます!﹂
同人誌と顔にモザイクをかけられた客が画面に映る。
﹁こういった本から子供を守らねばなりません!﹂
お前らよりマスコミより不道徳な存在はない。
これがネットの意見だった。
だがそんな意見はテレビ局には届かない。
それは当たり前だった。
130
都内のホテルの一室。
男がごそごそと作業をしていた。
横には女がケタケタと笑っていた。
黒目が大きくなり目が寄っていてよだれを垂らしていた。
女と比べてまだまともな様子の男はアルミホイルの上に耳かきで
粉を置くとアルコールランプで炙る。
液体になった粉を転がすとガラスのパイプで蒸気を吸った。
﹁あぶり﹂と呼ばれる覚醒剤摂取方法である。
﹁んんんー♪﹂
粉は覚醒剤である。
男は意味不明なうわごとを繰り返した。
その股間はだらしくなく勃起していた。
覚醒剤によって性欲を司るA10神経が刺激されたせいだ。
男は大手マスコミのディレクターだった。※
︵※http://www.j−cast.com/tv/20
15/05/19235538.html︶
ディレクターは薬物によって侵された視床下部で幻覚を見ていた。
それは日本人の女を足蹴にして踏みつけている夢だ。
幻覚の女は泣きながら許しを請う。
世界で最低の民族に生まれてきてごめんなさい。
許してください。
それを男は蹴飛ばす。
この薄汚い日本人野郎が!
女は泣きながら脚にしがみつく。
生まれてきてごめんなさい。
私は汚い日本人です。
131
どんなことでもするので許してください。
男は容赦なく女を犯す。
薄汚い日本に天罰を下してやる。
そこで男は幻覚から解き放たれる。
ぼんやりとしながら男は全能感を味わいケタケタと笑っていた。
薬物による多幸感で笑いが止まらない。
韓国に仇成すオタクどもを成敗してやる。
俺は韓国の英雄なのだ!
すでにマスコミは彼らに乗っ取られていた。
︵※http://note.chiebukuro.yaho
o.co.jp/detail/n119642︶
笑い終わるとディレクターと女は笑いながら服を脱ぐ。
覚醒剤は脳のA10神経を刺激する。
男女が覚醒剤をやるということは、たとえ初対面でもセックスを
するということである。
獣のように二人は求め合う。
女は男の所属するテレビ局のニュースキャスターだった。
マスコミの内部はすでに薬物汚染が進んでいた。
いや薬物をやっていない人間はいなかった。
あのスポーツ選手も、歌手も、アイドルも、俳優も、女優も、お
笑い芸人も、アナウンサーまでもが薬物に汚染されていた。※
︵※http://www35.atwiki.jp/koli
a/pages/756.html︶
スポーツ選手は伝統的に試合前に集中力を高めるためにアンフェ
タミンを摂取する。
132
30年ほど前はアメリカの大学リーグですら当たり前の光景だっ
た。
タレントの薬物汚染はもはや語るまでもない。
麻薬の一つもやっていなければデビューすらもままならない。※
︵※http://matome.naver.jp/odai
/2140980630203853901︶
いや民放だけではない。
公共放送も薬物汚染に浸っていた。
︵※http://moneytalk.tokyo/life
style/4578︶
いまやテレビはヤク中のヤク中によるヤク中のための番組なのだ。
そして日本に出回る覚醒剤のほぼ全てが朝鮮半島製である。
今でこそ北朝鮮は取り締まりをしているが、それはあくまで北朝
鮮国内に限ってのことである。
そして国内の売人が問題だった。
彼らのほとんどは韓国建国以前の不法入国者の子孫である。
北と南をその都度都合のいい方をフラフラと行き来している存在
である。
彼らは日本を薬物で汚染し、社会保障を食いつぶし、日本を犯罪
の餌食にするためだけに生きているのだ。
そして彼らは薬物と金と暴力でマスコミを懐柔することに成功し
ていた。
そんな邪悪な連中の言いなりになっている。
それが日本のマスコミの姿だった。
133
マスゴミと覚醒剤︵後書き︶
今回は酷い展開ですみませんw
潮が引くかのように全ての攻撃が止みました。
今日は一件もありません。
攻撃してもいいのよ。晒すだけだから。
私は肯定でも否定でもオープンな場所で議論できたらと思います。
さて国連が余計な事を言い出しましたね。
だから祭祀に口を出すのは殺されても文句言えないことなんだって。
そもそも国連の事務総長に女性がなったことって︵略︶
お返事コーナー
エンディングの件たくさんのご意見ありがとうございます。
当初二つ考えてたエンディングを三つに増やしました。
計画では分岐を
XXを殺しますか?
>殺す
>殺さない
という感じで記述して、その後のエピソードに
︵殺した場合︶
︵殺さない場合︶
134
とわかりやすく共通部分と分岐を書くていく予定です。
一応プロットは固まったので致命的な間違いを発見しなければいけ
ると思います。
エンディングですが、一日中仕事の合間に合間に考えた結果、
バッドエンド
ノーマルエンド
トゥルーエンド
に分岐予定です。
バッドエンドが一番せつない感じで、ノーマルはファンタジーで、
トゥルーエンドが一番安定しています。
全てのルートで道彦は生き残るのでご安心ください。
>身バレの件。
ありがとうございます!
対策はしてるので今のところ大丈夫です。
ふふふふ。IPたどっても何もできませんとも。
>削除されるかも
実は今のところ運営からの警告とかは一切来てません。
カクヨムも同じです。︵カクヨムは荒れないので少し寂しい︶
なんで大丈夫かなあと思ってます。
テキストファイルはちゃんとありますので最悪の場合は藤ゴン先生
のサイトで公開します。
135
暗黒の時代
公共放送や民放各局に同時にインターネット主催のデモが行われ
た。
﹁鈴木道彦を助けてください!﹂
それは理の通った非常に大人しいデモだった。
テレビ赤日はそれを中継していた。
だが韓国様のために存在する企業である。
まともな放送はしなかった。
﹁見てください! 極右団体がヘイトスピーチをしています!﹂
アナウンサーが言った。
吐き気がするほどの邪悪。
それが赤日を表す言葉だった。
だが赤日は自分たちが正しいと自信を持っていた。
自分たちは常にリベラルで平和的。
そう自信を持っていた。
そこに間の抜けたHIP−HOPが流れる。
﹁道彦を殺せー!!!﹂
入れ墨を入れた男たちと女性大学教授が道彦を殺せとシャウトし
た。
﹁日本人を殺し隊﹂によるデモへのカウンターである。
﹁ヘイト豚どもを殺せ! 殺せ! 殺せー!!! 日本人を皆殺し
だー!!!﹂
136
大学教授は中指を立てながら金切り声を上げる。
日本国内ではマジョリティである日本人へ向けて﹃日本人は誰で
も殺せ﹄と言うのはヘイトスピーチにはあたらない。
とある有名弁護士の言葉である。※
︵※http://togetter.com/li/9059
19︶
マジョリティにはなにしてもいいという意味だろう。
彼らは好き放題に日本人にヘイトをぶつける。
なぜなら彼らは絶対的に正しいマイノリティであり、強制連行の
被害者だ。※
︵※大半、自由意思で居住。外務省、在日朝鮮人で発表。戦時徴
用は245人 1959年7月13日 朝日新聞︶
︵※http://www35.atwiki.jp/koli
a/pages/23.html︶
つまり全ての在日コリアンは245人の子孫なのだ。
245人から70年で60万人に増えたのだ。
もし本当だったら人類とは別の単性生殖か細胞分裂で増える生命
体であるということになるのだが、彼らの出す数字は常に間違って
いるので気にしたら負けだ。
つまり彼らはこう言いたいのだ。
﹁韓人には日本人を皆殺しにする権利がある﹂と。
﹁日本人を殺せー!!!﹂
カウンターたちの興奮が最高潮に達した。
137
勝手に興奮して勝手にヒートアップして怒り狂っている。
通行人が汚物を見るような視線を送っていた。
そしてその時だった。
それは外国製の乗用車だった。
スピードを上げ外に向けたスピーカーから間抜けなヒップホップ
が大音量で流れる。
それが猛スピードでデモの列に突っ込んだ。
ブレーキなど一切かけないで人の群れに突っ込んだのだ。
悲鳴が上がり、人々は一斉に逃げ出した。
人混みの中で子どもの声が聞こえた。
ベビーカーの横に母親が倒れていた。
そして自動車からゆらりと人影が出てきた。
それは釘バットを持った男だった。
上下ともだらしのないスウェットに身を包み、目はとろんと濁り、
うわごとのように﹁殺す﹂とつぶやいていた。
﹁動くな!﹂
警備をしていた警官が拳銃を構え、近くの商店の店主が店から出
てきて救助をしようと駆け寄る。
道彦の救出を訴えていたデモ隊も子どもを助けようと男を取り囲
んだ。
それは日本人の善意が表れた瞬間だった。
興奮した男が倒れている母親に釘バットを振り上げ襲いかかった。
﹁死ねレイシスト!﹂
がつんという重い音が響き女性の体がびくりと震えた。
138
﹁レイシストの遺伝子を処分してやる!﹂
男はベビーカーへ目がけて釘バットを振り上げる。
誰もが子どもが死んだと思った瞬間、よだれを垂らしながら興奮
する男に警官が発砲した。
威嚇射撃ではなかった。
﹁痛え! いてえよおおおお!﹂
背中から撃たれた男が悲鳴を上げた。
男が死んでいなかった。
洗剤をかけられたゴキブリのようにヨタヨタと這い回り警官は男
を拘束する。
やはり撃たれた状態で兵士を殺した道彦の気力は常人を超えてい
る。
﹁警官が発砲したぞ!!!﹂
赤日の記者が叫んだ。
﹁権力の横暴だ!!!﹂
それは心の底から嬉しそうな声だった。
記者たちは救急車も呼ばず倒れた母親と警官の写真を撮影する。
﹁なんだこのネトウヨまだ死んでねえよ﹂
記者が地面につばを吐いた。
﹁てめえざっけんな!﹂
139
記者の暴挙に激怒したデモ隊の一人が襲いかかる。
たくさんの警官が駆けつけデモ隊を抑える。
﹁落ち着け!﹂
﹁でもあの野郎が! あの野郎があの人に酷いことを!﹂
それでも警官たちは職務に忠実だった。
デモ隊を抑えカウンターを守る。
﹁殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! 殺せ!﹂
ところがカウンターは血を見て興奮した。
入れ墨を見せつけ、殺せコールを叫ぶ。
興奮は最高潮に達する。
怒鳴るだけでは我慢できなくいなった一人が警官隊に襲いかかっ
た。
警官は慌てて持っていた警棒で男を殴る。
警官は防刃ベストの隙間からナイフで刺されていて、血がぽたぽ
たとしたたり落ちていた。
﹁暴力だー!!!﹂
赤日の記者が喜びの悲鳴を上げた。
警官がナイフで刺されたことなど気にしないし取り上げない。
一方的な言論の暴力。
それがマスゴミなのだ。
﹁芥川政権の横暴だー!!!﹂
140
喜びすぎて過呼吸気味になりながら記者は叫んだ。
その喜ぶ顔は全世界に報道されることになるがそんなのは気にし
ない。
メディアスクラムで外の情報など一切国内には入れないのだ。
仲間を怪我させられた警官隊が怒鳴る。
﹁逮捕だー!!!﹂
警棒と盾を手に﹁日本人を殺し隊﹂のメンバーに手錠をかけてい
く。
盾で顔を殴られた男が倒れ、別の男がゲバ棒で盾を殴る。
赤日はそれをニヤニヤ笑いながら撮影した。
﹁見てください! 警官がヘイトデモへの抗議者を逮捕していきま
す! なんという横暴でしょうか!!! これは明らかな差別です
!!!﹂
狂ったことを叫ぶ赤日の声を聞いて﹁日本人を殺し隊﹂のメンバ
ーが興奮して叫ぶ。
﹁ヘイト豚を殺しても大阪市と赤日が守ってくれる! 日本人を殺
せ!!!﹂※
︵※http://www.city.osaka.lg.jp/
shimin/page/0000309374.html︶
彼らは今まで何人もが暴力行為で逮捕されてきた。
だが行政や赤日を代表するマスコミはなぜか彼らを擁護してきた。
すでに行政やマスコミは賭博に麻薬、売春を取り仕切る彼らの手
141
下だったのだ。
そして数日後、大阪市はなぜか殺害された被害者の名前を差別主
義者として公表した。
この日、日本国の表現の自由は死んだ。
暗黒の時代の足音はすぐそこまで聞こえてきていた。
142
暗黒の時代︵後書き︶
リンク修正しました。
NHKのスキャンダルなのに消すのはやすぎです。
前半戦終了部分まで予約投稿しました。
あとは後半戦を書けば終わりです。
プロットは7割完成してます。
エンディング部分のプロットは全部できました。
後半部分は道彦の救出がメインになります。
あとは北朝鮮を動かすか、いっそSFにしてしまうかが問題です。
感想のご返信コーナー!
>なんで回線切られないの?
書くの忘れて慌てて第一部の最後の方に書きま⋮⋮じゃなくて計画
的に最終話に入れました。
書くの忘れたわけじゃないですよ!
書くの忘れたわけじゃないですよ!
違いますからね!
いいですか! 書くの忘れたわけじゃありませんからね!
書いた気になってて指摘されて焦ったわけじゃありませんからね。
⋮⋮22話にこっそり入れました。
>北朝鮮どうなるの?
ユナイテッドコリア︵UNKO︶ネタを出したかったんですけど無
143
理かも。
後半は爆撃と核出したいんですよねえ。
あとダイオキシンも。
本当はミャンマー、北朝鮮、中国の麻薬取引で日本がどんだけ被害
に遭ってるかとか書きたいことがたくさんあったんですが今ネタを
絞ってます。
あと北朝鮮の粛正ネタとか。粛正された幹部の結構な数が覚醒剤取
引が原因みたいですね。
どこまで書けるかなあ。
>国連
後半部分にPKFの停戦監視団が出る予定なんですが書き切れるか
が問題です⋮⋮技量的に。
>戦車とかの大活躍
後半に書けたら⋮⋮書きたいと思います。
あの異常なまでに陸軍に偏った戦いが書きたい。
でも資料が足りない!
さらに作者の力量が足らない!
薄くあっさりになるかもしれません。
>中国韓国の人たち
前の掲示板は台湾のだったようです。
本人出現したのに孤児院の話題で持ちきりで華麗にスルーされまし
た。
孤児院凄え⋮⋮ああいうのを書くコツを誰か教えてください。
144
>韓国人の麻薬での逮捕報道
調べたのですがRUSHって持続時間が十秒から数十秒なのに失明
の危険ありだそうで⋮⋮
なにこの誰得薬物。
日本国内のジャンキーは不思議なことにハイリスクローリターンを
好むようです。
追記
2016/3/11 17:48に運営からメッセージを頂きまし
2016年
2016年
03月
03月
03月
09日
09日
09日
06時
06時
05時
09分
08分
51分
た。
2016年
の感想が規約違反で削除されたそうです。
面白かったのに⋮⋮
今回はこちらにはペナルティはないそうですがこの作品も削除のカ
ウントダウンを迎えているかもしれません⋮⋮
今ごろ運営には凄い数の苦情が来ていることでしょう。
終わりまではいけると思ったんですけどねえ⋮⋮
そこでご提案があるんですが⋮⋮ここのが削除されたら作者名mk
−3︵もしくはmk3︶を入れてさえ頂ければ頒布自由ってのはど
うでしょう?
消したら増える小説ーってのはどうでしょう?
P2Pでもブログでもなんでもありで。
さらに追記
145
今度こそリンクを修正いたしました。
146
日本人を殺す会
道彦の通う高校には警官が常駐していた。
最悪の可能性を考慮しての措置である。
だがその最悪の可能性が今まさに起こっていた。
﹁と、止まれ!﹂
制服の警官はそう叫ぶと次の瞬間引き金を引いた。
銃撃が響き黒いワンボックスカーに穴が空く。
だがワンボックスカーはスピードを落とさずに突っ込んでくる。
﹁うわああああああああああ!﹂
ワンボックスカーは容赦なく警官をはね飛ばすと何事もなかった
ように停車した。
ワンボックスカーから男たちが悠然と降りて来る。
それを血走った目をした男たちがビデオカメラで撮影していた。
撮影をしている男たちはテレビクルー。
そして自動車から降りてきたのはコボルト戸川を中心とする釘バ
ットを持った男たちだった。
﹁レイシストどもを殺すぞ⋮⋮﹂
戸川の目は完全に常識の埒外にあった。
そんな戸川を出迎えるものがあった。
出迎えの挨拶は土下座だった。
なぜか韓国人は日本人に土下座を強要して悦に入る習性がある。
147
土下座をさせることで自分たちの優秀性を誇示したのだろうか。
とにかく修学旅行生を土下座させた事件はあまりにも有名である。
︵※http://ameblo.jp/memorialro
se−greatest/entry−11115187682.
html︶
それと同じ光景が日本国内で発生していたのだ。
土下座をするのは道彦の学校の校長。
それを高いところから見下ろすのは﹁日本人を殺す会﹂コボルト
戸川。
そしてゲバ棒や釘バットで武装した殺し隊のメンバーが校長を取
り囲み、それをニヤニヤしながら赤日や冥日のテレビクルーが撮影
していた構図である。
﹁我が校の生徒が神聖にして賢明なる世界最優秀民族、韓国人様の
ご意向逆らってしまいたいへん申し訳なく⋮⋮﹂
﹁チョッパリ!﹂
﹁はい! それと我が校の生徒が薄汚い鈴木道彦を助けるデモなど
という暴挙に出てしまい⋮⋮たいへん申し訳なく⋮⋮﹂
﹁チョッパリいいいいいいいぃッ!﹂
﹁ひいいいいいい!﹂
韓国人の言うことは絶対にして不可侵。
神の言葉と同じである。
それが古い世代の教育者の間では当たり前こと、常識なのである。
148
そしてこれこそ韓国人から見た日本人の理想の姿なのだ。
﹁いいか。わかってるな? 生徒を引き渡せ﹂
﹁で、ですが⋮⋮﹂
﹁神聖にして賢明なる世界最優秀民族の韓国に逆らうのか!!!﹂
﹁ははー! ご自由にどうぞ!!!﹂
校長が許可を出したとき事務員がすでに警察に連絡をしていた。
だがデモ隊への襲撃のせいでどうしても到着が遅くなる。
﹁さあ! 今、神聖にして賢明なる世界最優秀民族を護る市民団体
の代表者が学校に入りました!﹂
冥日のリポーターの声が勘当のあまりうわずっている。
釘バットを持って押し入っているのだから明らかに犯罪者である。
だがそんな常識などマスコミにはないのだ。
間抜けなHIP−HOPが自動車から大音量で流れる。
﹁ネトウヨを殺せ!!!﹂
﹁仲良くしようぜ!﹂と言いながら一般の日本人にまで殺意をみ
なぎらせる。
それがレイシストへのカウンター団体の本性である。
︵参考資料:http://detail.chiebukuro.
yahoo.co.jp/qa/question︳detail
/q11127967381︶
149
レイシストを殺し隊もまた同じだった。
バットを振り回しながら日本人を殺せと連呼する。
そんな彼らを冥日はまるで戦いに赴く英雄のように撮影していた。
コボルト戸川は教室のドアを蹴破る。
﹁このレイシストども! ぶっ殺してやるぜ!﹂
だが返事はない。
それは当たり前だった。
すでに全員避難した後だったのだ。
﹁薄汚いチョッパリがあああああああ!﹂
﹁同志戸川。落ち着いてください。これもチョッパリの罠です﹂
﹁同志﹂という共産主義者独特の言い回しで眼鏡の男はそう言っ
た。
男は憲法学者だった。
憲法9条を護るためなら人殺しもいとわない平和コマンドである。
※
︵※http://coresugo.com/9−jyo/︶
男はナイフを抜いた。
男のナイフは9条ナイフ。
日本国憲法9条を守るためなら先制攻撃も辞さないという覚悟の
表れである。
﹁ま、待て!﹂
150
男の声響いた。
男は刺股を持った男だった。
﹁生徒には指一本触れさせん!﹂
それは教頭だった。
彼は校長とは違いまともな判断力を有していたのだ。
﹁チョッパリガアアアアアア!﹂
戸川がバットを振り下ろした。
教頭はそれを刺股で受け止めた。
テレビクルーはそれをニヤニヤしながら見ている。
﹁いまネトウヨに正義の釘バットが振り下ろされました!!!﹂
テレビクルーはゲラゲラ笑いながら実況した。
とろんとした目、何かを隠すように意味もなく日焼けした肌、額
に浮かぶ異常なほどの汗。
それはまさに覚醒剤中毒者の特徴だった。
テレビクルーの狂気の笑いが響くなか、一生懸命刺股で攻撃を払
っていた教頭がぐらりと崩れ落ちた。
教頭の背中には9条ナイフが深々と突き刺さっていた。
﹁ぐ、ぐう⋮⋮﹂
﹁あひゃひゃひゃひゃひゃひゃ!﹂
戸川は狂気の雄叫びを上げた。
151
◇
一方、体育館では生徒たちが震えながら籠城していた。
﹁もういやああああああ!﹂
女生徒が悲鳴を上げる。
﹁開けろオラァ! チョッパリガアアアアアアア!﹂
ゾンビ映画のごとく何人もの怒鳴り声が響く。
﹁殺してやる! 土下座しろおおおおお!﹂
殺したいのか土下座させたいのかは不明である。
﹁おどれこらあああああああ!﹂
バットでドアを激しく打ち付けるたびに女生徒の悲鳴が響いた。
その姿はまさに暴徒だった。
﹁鈴木道彦を殺せええええええええええッ!﹂
戸川はドアをバットで殴り続ける。
前は高校を土下座させた。※
︵※http://gensen2ch.com/archiv
es/7012631.html︶
152
今回もうまく行くはずだ。
なあに失敗しても有川議員や大阪市がかばってくれるはずだ。
哀れなことに戸川は道彦が異世界にいるという事をまったく理解
していなかった。
戸川は奇声を上げながらドアに蹴りを入れる。
﹁出てこおおおおおおいッ!﹂
子どもを狙った凶行。
たとえパチンコで懐柔しようとも警察がそれを許すはずがないの
だ。※
︵※http://pachinkokouryaku.fc2
web.com/shugoshin.html︶ ﹁君たちは包囲されている!﹂
それは拡声器からの声だった。
戸川が後ろを見ると警官隊が戸川たちを取り囲んでいた。
﹁このチョッパリの権力の犬ガアアアアアアア!﹂
戸川の口から怨嗟が漏れた。
﹁チョッパリを殺すうううううううううう!﹂
戸川は釘バットを振りかざし警官隊へ真っ直ぐ突っ込んでいった。
﹁撃てー!﹂
153
警官が発砲した。
拳銃の弾丸は回転しながら戸川の体に突き刺ささり、肉を切り裂
き、内臓に穴を開けた。
頭蓋骨が割れ脳漿が飛び出し、頭の皮が剥がれた。
﹁さ、差別だ⋮⋮ぐはっ⋮⋮﹂
戸川は血を吐きながらも差別を訴えた。
﹁殺す⋮⋮日本人を殺す⋮⋮こ⋮⋮ろ⋮⋮﹂
戸川が崩れ落ちた。
それを見た警官隊が叫ぶ。
﹁逮捕ぉーッ!﹂
国家権力に踏みつぶされていく殺し隊たち。
殴られ、蹴られ、手錠をかけられていく。
思えば戸川たちは韓国人の権利向上のために人生を費やした。
もう少し判断力と常識と知性と忍耐と他者への思いやりがあれば
道を誤ることはなかっただろう。
本人なりにがんばっていたのだ。
そんな戸川の存在は在日コミュニティの中で伝説の存在へと昇華
した。
烈士と崇められ事件を象徴する存在になったのだ。
国内のマスコミは道彦の存在だけは書かずに国家権力の暴走とは
やし立て、彼らは被害者だと主張した。※
︵※http://matome.naver.jp/odai
/2136927871105833001︶
154
わざわざ民族衣装を着て電車に乗り込んだ少女のチマチョゴリが
切り裂かれ、インチキくさい街宣右翼が意味もなく学校へ街宣を繰
り返した。
国内には彼らに逆らってはいけないという空気が蔓延し、道彦の
同級生たちは口をつぐむことになった。
そんな戸川たちに韓国本国人は冷徹に、そして吐き捨てるように
言った。
﹁パンチョッパリなんかどうでもいい﹂と。
155
日本人を殺す会︵後書き︶
20話・21話はバッドエンドのフラグです。
これと道彦のある選択が加わるとバッドエンドになります。
業務連絡
私がさんざん迷惑をかけたあげくに活動報告に突撃された藤原ゴン
ザレス先生が︵これが主な原因じゃないけどトドメで︶ストレスで
十二指腸潰瘍再発、入院がほぼ確定しました。
本当にすみません⋮⋮お詫びします。
マジでごめんね。
お返事コーナー!
協議の結果
・ありとあらゆる形での配布自由。P2Pでもコピペでもブログで
も自由です。ただしmk−3︵mk3︶であることを表示してくだ
さい。私の虚栄心
が満たされます。
・商用利用可。アプリでも漫画でもエロ小説でも可。商用利用をし
ようとする勇者は知らせてくれると嬉しいな。大儲けしたら分け前
ください。
・改変、二次創作、シェアワールド、続編など全て自由。
エロでもBLでもリョナでもどんと来い!
156
ただし原作者がmk−3︵mk3︶であることを表示、なろうもし
くはカクヨム、藤原ゴンザレスのサイトなどのマスターがあるサイ
トも一緒に表示してください。
してくれないとすねていじけます。
・この規定は金に目がくらんだmk−3により将来改変される可能
性がありますが、この作品を出版しようとする無謀な出版社もなけ
ればこの作品に商業的価値があるとは思えないのでたぶん大丈夫で
す。ご安心ください。
>一陣会
不良の全国ネットワークって凄いですよねえ。
悪いことやる連中が組合作っちゃって自己正当化するという⋮⋮
ヤクザでも一応悪いことしてる自覚はあるというのに。
>銃砲店
手元の資料は日露戦争後のやつなんですが拳銃とかも普通に買えた
そうですねえ。
刀狩り平和説ってどこから来たんでしょうね?
>ブラジルのアノニマス
ありがとうございます!
とりあえず今日はまだ大丈夫っぽいです。
>かの国の自滅ばかりで話が進む。
後半の第二部は積極的に動くようになると思います。
157
ファンタジー設定が出てくるので生々しさがかなり薄れますが物語
的にはきれいに終わると思います。
>某宗教団体
えーっと⋮⋮実は数年前に藤ゴンと自治体主催のイベントのボラン
ティアをスタッフをやったんです。
そしたら窓口が勝手に個人情報漏らして、数ヶ月間も﹁巣鴨の会館
のイベント来てよ﹂とかの激しい勧誘されました。
その件に関しては本気で怒ってて悪口が本当に笑えなくなりますの
で⋮⋮それだけは私の都合で自重します。
申し訳ありません。
>鬼郷 & 軍艦島
⋮⋮なんで彼らは戦争とか併合をそういうファンタジーだと思って
るんでしょうねえ?
経済的に不経済すぎて有り得ないと思うんですが⋮⋮
本当に1920年代には機械化で鉱山における単純労働者の仕事が
激減したんです。
住友のダイナマイトがあれば単純労働者でもどうにでもなるっては
話半分だなあと。
娼婦とかもセックスワーカーはどこの時代でも余り気味なわけでし
て⋮⋮そもそも商品傷つけてどうすんだよと。
アフリカなんかを見てたらわかりますがエイズがなくても娼婦の平
均寿命は恐ろしく短いわけです。
相当数が生き残ってることが労働者として扱われていたことを示唆
していると思います。
158
第一部 最終話 救援
都内、外資系チェーンの喫茶店に遠藤はいた。
学校は休んだ。
本当はデモにも参加したかったがそれよりも優先するものがあっ
た。
﹁山岡さん。ほんとうに道彦を助けてくれるんですね⋮⋮日本政府
は道彦を助けてくれるんですね﹂
オールバックに眼鏡の中年男性、山岡と名乗った男は遠藤の目を
見て言った。
﹁もちろんだ⋮⋮と言いたいところだだけど、残念ながら僕らは政
府でも少数派だ﹂
﹁⋮⋮どうしてですか?﹂
﹁外務省が反対してる。隣国と戦争になるのが恐ろしいんだ。彼ら
は鈴木くんの死を待っている。韓国軍が高校生を殺したというカー
ドを欲しがってるんだ。それであらゆる交渉が有利になると思って
る。バカだね。彼らが約束や常識をわきまえているはずがないのに﹂
﹁そんな⋮⋮ひどい﹂
﹁もちろん彼らも一枚岩じゃない。そんなカードに意味がないこと
をわかっている人たちは彼を救出することにした。それが僕らだ﹂
159
﹁⋮⋮あなたは法務省の人だって言ってましたよね﹂
﹁広く解釈すればね﹂
﹁公安ですか?﹂
﹁今は違うよ。つい2時間前からトルコの通信社の社員になった﹂
﹁⋮⋮それって﹂
スパイ映画の世界である。
﹁遠藤くんは、パコ大統領が拘束されたのを知ってるね?﹂
﹁ええ。なんでも韓国に帰ってきてないとか﹂
﹁これはまだ誰にも言わないで欲しいんだけど、つい一時間前、異
世界の国家⋮⋮王国らしいんだけど、その首都が陥落した﹂
﹁そ、それって!﹂
﹁国王は死亡。今夜あたりに王国の韓国への編入を宣言すると言わ
れている﹂
﹁なぜそんなに急ぐんですか?﹂
﹁現在調査中だ⋮⋮でも鈴木くんのせいかもしれない﹂
﹁生放送を辞めさせたいんですね﹂
160
﹁遠藤くんは道彦くんのスマホが未だにインターネットに繋がって
いることをおかしいと思わなかった?﹂
﹁そ、それは⋮⋮電波を切ったら非を認めるようなものだから⋮⋮﹂
﹁そうだね。自分から切るのは嫌だったんだ。韓国では自分の非を
認めるのは奴隷になるのと同じ意味だからね。韓国は現場の兵士に
よる犯罪で鈴木くんには感謝しているし救助に手を貸すという苦し
い言い訳をしてたしね。まったく面の皮が厚いやつらだ。だからこ
そ今までは自由にさせていた。兵士から奪った充電池やモバイルバ
ッテリーが切れるまではね。それも一両日中には全てなくなる計算
だ。⋮⋮つまり﹂
﹁電池が切れたら殺すつもりなんですね﹂
﹁そうだね。韓国では証言が物証より優先される。だからこそ彼ら
は鈴木くんを殺して口をふさぐつもりだ。⋮⋮僕らは鈴木くんをた
いへん評価している。まさか高校生が一国の軍隊に情報戦を挑むな
んてね。CIAが分析官として欲しがってるよ⋮⋮それでね⋮⋮﹂
山岡は遠藤にパスケースとパスポートを差し出した。
﹁君の身分証とパスポートだ。うちの部門はね、いまプロデューサ
ーが足りないんだ。世界中のメディアを動かすようなプロデューサ
ーがね。遠藤くんのようなね。どうだろう? インターンとして我
が社で働いてみないかな? 契約は10日。場所は異世界。学校に
は短期留学として認めさせた。報酬は⋮⋮ってあの動画の再生回数
だったら雀の涙だね﹂
﹁山岡さん⋮⋮﹂
161
﹁チームは元CIAに元公安に元自衛隊に⋮⋮なあに戦闘は任せて
くれ。君の仕事は中継を盛り上げることだ﹂
﹁⋮⋮山岡さん﹂
遠藤の目に涙が浮かんだ。
日本人を見捨てない。そんな矜持がまだこの国には残っていた。
それが何よりも嬉しかった。
だが誇りを持った男がいれば、どうしようもない腐れ外道もいる。
﹁えんどうくーん♪ 学校サボってなにやってるのー?﹂
それは赤日の腕章をつけた男たちだった。
禁煙席で堂々とタバコを吹かし、テレビカメラを遠藤たちに向け
ていた。
﹁⋮⋮誰ですか﹂
﹁いまネトウヨの遠藤くんが学校をサボって喫茶店で中年サラリー
マンと話してます。援助交際でしょうかね?﹂
おじさんと少年が話しているのを見て即座にそういう発想が浮か
ぶと言うことは、おそらく男子高校生を買った経験があるのだろう。
取材クルーの下卑た顔は醜く歪んでいた。
﹁えんどうくーん。君のせいで何十万人っていう日本にいる韓国人
が困ってるんだよ。意見を言ってくれないかなあ?﹂
﹁君、やめないか!﹂
162
山岡が取材クルーを軽く突き飛ばす。
﹁ぼ、暴力だあああああああああああ!﹂
取材クルーは興奮すると山岡を撮影する。
﹁援交野郎を撮影してまーす♪﹂
﹁とにかく撮影は禁止だ!﹂
山岡がカメラを奪おうと掴みかかる。
その時だった。
乾いた破裂音がした。
カメラマンの頭に穴が空いた。いや頭蓋骨が破裂した。
脳漿と脳みそを吹き出してカメラマンがどさりと倒れる。
﹁くそ外した!﹂
金のネックレスをつけた男が銃を構えていた。
とっさに山岡は遠藤を抱きかかえ床に押し倒す。
銃撃の音が何発も響いたが銃弾は虚しく空を切り、ガラスを粉々
にした。
押し倒された遠藤はとっさに赤日の取材クルーのカメラをひった
くり、男に向けた。
﹁遠藤くん!﹂
﹁オラァッ! 殺るなら殺してみやがれ! こっちはテメエのツラ
晒してやんよ!﹂
163
男が遠藤に銃を向けた。
山岡はその隙にテーブルの上のコップを掴み投げつける。
コップとその中身の水があたり男が怯む。
その隙を狙ったかのように周辺の席でコーヒーを飲んでいたサラ
リーマンが男に襲いかかった。
﹁確保ー!!!﹂
押し倒されもみくちゃにされ男は手錠をかけられる。
﹁くそ! まさか本当に襲ってくるとは! 誰かが漏らしやがった
!﹂
山岡が床を叩くと遠藤の方を向いた。
﹁君も狙われている。今すぐ行くよ。親御さんにも警備をつけてる
から安心してくれ﹂
◇
道彦たちは森に隠れていた。
あれから韓国軍との戦闘はない。
その代わりに傷ついた村人や子どもたちがこの世界から旅立つた
びにそれを報道していた。
だがもう限界だった。
韓国軍の兵士から奪った携帯のバッテリーもあとわずか、食料も
少ない。
かと言って遠藤のクラウドファンディングがこちらに届くわけも
ない。
164
それに遠藤は数日前から連絡がつかなかった。
道彦はすべてが悪い方に向かっているような気がした。
道彦は首を振った。
だめだ。ネガティブなことばかり考えている。今できることをし
なくては。
﹁傷口を見て見たいと思います﹂
道彦は呑気を装って実況中継をはじめた。
声が震えている。
顔はまだ青白い。
全身は重く、肩はまるで無くなったかのように感覚はなく、その
くせ熱を持っていた。
たぶん全身が発熱しているだろう。頭もくらくらした。
なんとか気力で実況を続けていた。
>グロ中尉
道彦は書き込みにクスリと笑った。
笑うと肩から締め付けるような痛みが走ったが少し元気が出た。
包帯代わりにした布を取り外す。
湿った組織が包帯にくっついた。
電車内にホームレスが乗ってきたようななんとも言えない強烈な
ニオイがする。
そう言えば傷口こそお湯で洗浄したがこの世界に来てから風呂に
入っていない。
汗と皮脂で変な髪型になっていた。
怖くて痛くてくさい。
それが戦場というものなのだろう。
165
傷口を見ようとしたが自分の肩なのでスマホで撮影する。
>ちょっ!
凄まじい勢いで書き込みがされていく。
>蛆!
>腐ってる!
>蛆がわいてる!
意識が飛びかけた。
どおりで傷口がかゆいとは思っていた。
﹁あ、ああああ、あう。あうあ⋮⋮﹂
>落ち着け
>落ち着いて
﹁どどどどど、どうすればいいですか?﹂
>落ち着いて。たしかウジ虫って治療で使うよね?
>マゴット治療は無菌状態で育てたウジ。野生のは感染症の原因
になるよ。
>そうとも限らない。南北戦争やWW1でも天然物でよくなった
例がある。
コメント欄では議論が始まる。
道彦は青白い顔をさらに青くしながら﹁死ぬかも﹂と思った。
恐怖でガチガチと上下の奥歯がぶつかった。
166
﹁フィーナ。診てあげて﹂
アリアが指示を出した。
フィーナは傷口を診る。
﹁大丈夫そうですね。腐った肉をウジが食べてくれました。腫れも
引いてます。ウジを洗い流せば回復するでしょう﹂
この世界では普通のことらしい。
家に帰りたい。
道彦は本気で思った。
そんな道彦の耳にカラカラカラという音が聞こえてきた。
何かが草むらをかき分け迫って来る。
明らかに人工の物体が発する音だ。道彦はそれが何かわかってい
た。
無人機だ。
﹁隠れろ!﹂
偵察用かもしれない。
道彦は焦った。
爆弾を仕掛けられているかもしれない。
銃を撃てるようにしてあるかもしれない。
カメラで位置を割り出そうとしているかもしれない。
道彦たちはすぐに草むらに隠れた。
︵道彦はまだ充分に動けないためアリアが肩を貸している︶
その物体はキャタピラをつけた砲台のない戦車だった。
無人機のてっぺんには箱がくくりつけられている。
無人機にくくりつけられた箱が地面に落ちた。
167
すると無人機はカラカラと音を立ててどこかに行ってしまった。
道彦はカメラを向け箱の側へ近づいた。
﹁い、今、無人機が物資を運んできました⋮⋮﹂
そう言いながら箱を棒でつつく。
何も起こらない。
﹁道彦様、ご無理をなさらないでくだされ。私が開けます﹂
村人の男性が道彦に声をかけた。
﹁い、いえ⋮⋮﹂
﹁なに恐れることはありません。ただの箱です﹂
外装を破ると箱は普通の段ボールの箱だった。
男性はナイフを出し箱を開ける。
中には水、食料、薬が入っている。
それを道彦は撮影する。
﹁それでは村長と物資を配る相談をしますので一度休憩します﹂
道彦は水を取り出すと物資の下に封筒が入っているのを発見した。
﹁撮影しないで﹂と書かれている。
﹁これは⋮⋮なんだろう?﹂
アリアが封筒から手紙を出し道彦に渡す。
そこには驚きの情報が掲載されていた。
168
鈴木道彦くん
やまおかあつし
私は山岡厚志と言います
元法務省の職員です
SNS経由だと情報が筒抜けになるのでお手紙で失礼いたします
いま韓国の鈴木くんを助けるために派遣されたチームと一緒に異
世界にやって来ています
水と食料、薬、それに撮影機器やパソコンも用意してます
もしよろしければ同封の地図の場所にご来訪ください
一緒に日本へ帰りましょう!
追伸、遠藤くんも異世界に来ています
救助が来た。
それを認識した瞬間、道彦の頬を涙が濡らした。
道彦は顔をくしゃくしゃにしていた。
日本に帰れる。
その思いで胸がいっぱいになった。
169
第一部 最終話 救援︵後書き︶
これで前半戦終了です。
これで無事に帰れるかというと⋮⋮悪役がとんでもないことをしま
す。
さて今回物語の都合上、遠藤が異世界に行くことになりました。
実際なら未成年をリクルートするのはまずないでしょう。
するのは北海道大学の学生をリクルートしようとしたイスラム国く
らいのものですね。
あくまで物語の都合です。
後半は道彦の逆襲編です。
これまでの陰鬱な展開を吹き飛ばすようにリアル寄りではなくラノ
ベ寄りの展開になります。
リアルじゃないって怒らないでね。
エンディングは三つです。
お返事コーナー!
>警察の扱い
警察屋さんは扱いが難しいんですよねえ。
好きな人は好きだし嫌いな人は嫌いですねえ。
過去の例からすると事件が取り返しのつかないことになってから逮
捕っていうパターンの方が現実寄りかなあと思います。
ですが栃木県中国人研修生死亡事件で警官が刑事で無罪、民事でも
差し戻し控訴審で遺族側が負けましたので、射殺自体はないとは言
えないと思います。
警察小説では各都道府県警によって、こういう気質はかなり違うっ
170
て書いてありますね。
>拡散
どうぞどうぞ!
>宜保愛子さん
韓国に降りたくないって言ったのは有名らしいですね。
しかもそのあと胃がんで具合が悪いのに撮影に連れ回されて死んで
しまったそうで⋮⋮
メディアはどんだけ鬼畜なんだよと思います。
171
強襲
話は少し前に遡る。
王国の城下町。
そこは平和で穏やかな都だった。
音楽が流れ、人々が微笑みながら広場で踊っていた。
村が襲われたニュースは城下町の人たちの耳にも入っていた。
だが彼らは安心していた。
村を取り返すために王国第三軍が出征したのだ。
世界最強と言われる。
カイン将軍に夜盗は一網打尽にされるはずだ。
吟遊詩人たちはカイン将軍のサーガを吟じ、その名声は遠い国に
まで広がるだろう。
民衆が平和を享受する。
しかそれは突然終わった。
空気を切り裂く轟音が響く。
何事かと市民が空を見る。
その時にはもう遅かった。
韓国軍のマルチロール機がミサイルを発射する。
轟音を立てながらも一瞬で鉄の矢は城へと肉薄する。
ミサイルが王城に突き刺さる。そして爆発した。
爆風と炎、石の壁が吹き飛びメイドや兵士はなにがあったかを認
識する間も与えられず炭に変わる。
炭になったものはよかった。
壁の破片で潰されたもの、吹き飛ばされて城から落ちるもの、崩
落した穴に飲み込まれるものは死の恐怖を味わった。
172
現代における建築学という概念のない世界では城と言っても現代
のような強度計算はされておらず、城は爆破解体のごとく下から崩
壊していく。
そして地下にある牢獄に全てが飲み込まれていく。
地獄がそこにはあった。
誰も生き残るはずがなかった。
王も大臣も兵士もメイドも下働きも。
全てが一瞬で死に絶えた。
巨大な建築物が崩落すると近隣に住む住民も影響を受ける。
特に城の近くには議会議員の有力貴族や近隣の領地の領主、騎士
そしてその家族が住んでいた。
轟音、粉塵。
それらが彼らを襲った。
﹁な、なにがあったのです!﹂
貴族議会議員の妻であるアリシアは叫んだ。
瞬く間に粉塵で覆われた空が暗くなる。
アリシアは教養のある女性だった。
アリシアは大災害が起こったことを見抜いた。
火山だろうか?
それとも、もっと恐ろしいものなのか?
﹁皆のもの早く逃げるのです。家財道具やお金は放っておきなさい
! とにかく逃げるのです!﹂
そう言うとアリシアは子ども部屋に急いだ。
部屋に飛び込むと息子のライリーはぼうっと外を見ていた。
173
﹁お母様⋮⋮お、お城が⋮⋮﹂
﹁いいから逃げますよ!﹂
そんな話を聞いている暇はなかった。
息子の手を引っ張り外に出る。
アリシアは粉塵で暗くなった空を見てこの世の終わりが来たのだ
ろうかと思った。
それでも絶望感を打ち払い走り出す。
逃げるのだ。
逃げて逃げて逃げるのだ。
だが近代兵器はそれを許さない。
突如として爆発がアリシアたちを襲った。
馬車も荷台も家来も何もかもが爆発に飲み込まれた。
アリシアたちは榴弾など存在すら知らないだろう。
攻撃の第一波で城下町に住む住民の2割が肉塊と化した。
彼女の体は爆発でちぎれ飛ぶ、彼女の愛する息子もまた同じだっ
た。
幸いだったのは苦しむ間もなく即死したことだろう。
それは言い訳のできない完全なジェノサイドだった。
﹁あーあ、皆殺しかあ⋮⋮もったいねえなあ﹂
惨状を双眼鏡で観察していた兵士がつぶやいた。
﹁あとで生き残った娘を犯せばいいだろ?﹂
相棒の男が呆れたという声を出した。
174
﹁貴族ってのを泣かせてみたかったんだよ。わかるだろ?﹂
﹁まあな。でもしかたねえ。キム司令官の命令だ﹂
﹁司令官はなに考えてるんだろうなあ? パラシュート部隊で占領
しても同じだろよ? なにも皆殺しにしなくてもよう﹂
﹁あー、そう言えば首都は核廃棄物や薬品のゴミ捨て場にするって
言ってたな﹂
﹁⋮⋮司令官は異世界に親でも殺されたのか?﹂
﹁あー、お前知らないのか?﹂
﹁なにが?﹂
﹁キム司令官のひい爺さん。死ぬ一年くらい前に日本で行方不明に
なってさ、なぜか済州島で発見されたらしくてさ、そのときに﹃異
世界を俺は救った﹄って言ってたらしいぜ﹂
﹁それって北の拉致じゃねえのか? それでどうなったんだ?﹂
﹁誰も信じなかった。それで精神病院に入れられたんだわ。当時の
精神病院ってのは酷いところでさ、薬でおかしくされたり、電気流
されたり、脳を手術されたりして最後は垂れ流しながら虫けらみた
いに惨めに死んだって話だぜ﹂
﹁洒落にならねえなあ⋮⋮﹂
﹁まあでも俺たちには関係ねえな。兵隊さんはシャブでも打って楽
175
しく戦ったら女を犯せばいいんだけどな!﹂
﹁がはははは。違いねえ﹂
兵士は笑い合う。
﹁ところでよ? 弾薬って残りどれくらいあるんだ?﹂
﹁さあ? だいぶ無駄遣いしたよな﹂
﹁まあ気にしてもしかたねえな﹂
﹁がははははは!﹂
二人は顔を見合わせて笑うと覚醒剤を炙った。
◇
﹁お前は何を言っているのだ?﹂
芥川が電話の相手に言った。
電話の相手は軍政のトップである自称元帥だった。
芥川は疲れていた。
相手は狂っている。
言葉が通じない。
﹁だからもう一度言おう。この薄汚いチョッパリよ。異世界とお前
らを滅ぼすから弾薬を寄こせ﹂
むっとした芥川は言葉が荒くなる。
176
﹁お前らに弾薬を渡したら滅ぼされるんだよな?﹂
﹁ああそうだ。貴様らを殺し犯し国土を蹂躙し全てを焼き尽くす﹂
﹁なら断る﹂
﹁なぜだ? この世界最優秀民族に滅ぼされる栄誉を与えてやろう
と言っているのだ﹂
﹁どこの世界に自分らを滅ぼすための弾薬を渡すバカがいるんだよ
! 少しは考えろよ!﹂
芥川は思った。
昔から彼らの言っている事はわからなかった。
あれだけオリンピックの選定を妨害しておきながら、自分たちの
オリンピックを手伝えと言ったり、いらんと言うから中止したスワ
ップ協定を締結しろと言ったり、自分から蹴ったTPPに今から入
れろという。
意味がわからない。
全く意味がわからない。
﹁ふふふふ、何を言っている。共産主義党と民主主義クラブは賛成
している。平和のために日本人は生物学的に絶滅すべきだ﹂
﹁あ、あんのクソバカども⋮⋮﹂
売国奴は確かにいた。
思えば彼らは頭がおかしい。そして話が通じない。
ミサイル防衛は破片が降ってくるから反対だとか、自衛隊は市民
177
が攻撃されても動くべきではないとか、災害の救助をするなとか意
味不明な主張を繰り返していた。
だがここまで狂っているとは⋮⋮
それが彼らをここまで増長させてしまったのだ。
芥川はため息をつくと絞り出すように言った。
﹁⋮⋮国交を断絶しよう。大使館は引き上げる。邦人も引き上げさ
せる。日本にいる韓国人には帰国命令を出してくれ。残した財産に
ついては後日話し合おう﹂
﹁ま、待て! いいのか! 後悔するぞ!﹂
﹁なんの話だ?﹂
﹁異世界に水爆がある。死にたくなければ大人しく従え﹂
﹁てめえ⋮⋮なにを言ってやがる⋮⋮﹂
﹁水爆だよ! 薄汚いチョッパリよ、貴様らは早晩死に絶えるのだ
!﹂
﹁お、おいテメエ、どういうことだ!﹂
﹁楽しみにしてるがいい。薄汚いチョッパリよ! 我々は貴様らの
苦しむ顔が見たい。1000年被害者の恐ろしさをその目に焼き付
けろ! ウェーハッハッハ!﹂
178
強襲︵後書き︶
後半は伝説の反日小説﹁ムクゲノ花ガ咲キマシタ﹂などを参考にし
てます。︵パクリではないよ︶
あの辺の反日小説は調べもせずにイメージだけで書いているので、
後半は書いてる私も﹁ねえよ!﹂って展開が多いのですがご理解く
ださい。
韓国では原爆を神の懲罰と捉えているようです。
これは韓国の新聞が何度も書いてますし、それに対する批判が全く
ないことからも間違ってないでしょう。
ですので、﹁ムクゲノ花ガ咲キマシタ﹂において竹島を奪取された
から北朝鮮と組んで核攻撃で返すという展開は彼らは疑問に思わな
いようです。
なにせ神のやることですから。
そんなことやったら韓国滅びますよ。かなり真面目に。
さて次回までヘイトが溜まる展開です。
そこから話はブーストします。
では感想のお返事コーナー!
>一言の欄ですが、長文で失礼します。
マルチポストは規約違反ですよ︵どや︶
あと自費出版のためのクラウドファンディングだそうですが、Ki
ndleで十分だと思いますよ。
そもそも出版したい人への月額制課金という時点でマネタイズ失敗
すると思います。
179
>本日のマスゴミ。
偶然って恐ろしいですね。
言っている事と反対の言葉に編集するのであればマスコミは必要あ
りませんね。
憲法にある知る権利の邪魔でしかありませんから。
>アキレス腱固め
サンボ経験者のアキレス腱固めはいけないことだと思います。
確かにこんな感じの作品がコッチにも時々あったりはし
逃げ切ってやる!
>まあ,
ますな.
>故にソレらと同じに形も無い空っぽの憎しみに満ちたこんな作品
にはいい言葉が言えません....
これは商売として成立してない同人作品です。
それも投稿サイトで最高で20位くらいのささやかなものです。
無料でもそんなものです。
そちらの300万人も動員する映画とは影響力は比べものになりま
せんよ。
いやホント。
あと何度も言いますがこの作品はノンフィクションじゃないです。
ちなみに憎んでいるかと言えばそんなことはなく、﹁うぜえ﹂とい
うくらいです。
捕捉
水爆は韓国製ではないです。
180
宣戦布告
韓国国防長官の演説が全世界に向けて中継されていた。
長いうえに意味不明なのでぜひ読み飛ばして欲しい。
﹁いま韓国を守るという国民みんなの決然たる意志と団結、そして
軍の確固たる愛国心がどの時よりも切実だ。これは薄汚いジャップ
の極悪な対韓国政策が破綻したことに対する断末魔の悲鳴だ。薄汚
いジャップを殺し尽くし日本列島を焼き尽くすことが慰安婦おばあ
さんの何よりの望みだ。我々はジャップを許さないし、我々の生活
が苦しいのも、我々の社会の競争が厳しいのも、我々の年金が消え
たのも、私の糖尿病も、甥っ子が事業に失敗して破産したのも、孫
が受験に失敗したのも、嫁が出て行ったのも、初恋の相手に相手に
されなかったもの、全て、全て薄汚いジャップの陰謀なのである!
今、韓国の企業は存亡の危機を迎えている。それもジャップの悪
辣な陰謀である! あの悪魔は我々から言語を奪い、対馬を奪い、
オリンピックの金メダルとノーベル賞を奪ったのである! 先の大
戦で韓国が被った損害、慰安婦40万人︵最近倍に増えた︶、強制
徴用者5000万人︵当時の総人口越え︶、戦死者3億5000万
人︵1920年国勢調査時の総人口は約1700万人︶。焼き尽く
された田畑は総面積1,000,000㎢︵朝鮮半島の総面積は2
20,800㎢︶。奪われた数々の文化財。その数61万4090
点︵桁が増えた︶。もはやジャップを根絶やしにすることは全人類
普遍の真理なのだ! 殺せ! 殺せ! 殺せ! ジャップを殺せ!﹂
いつの間にか倍に増えた慰安婦。
適当すぎる数字。
通常の商取引で手に入れたはずの作物。
181
日本と朝鮮半島は戦争をしていないし、そもそも根拠不明の謎数
字。
普通に売買や贈与の記録がある文化財。
なのに理不尽な略奪の言いがかり。
しかも数字がいい加減。
さらには差別用語使いまくりだ。
これらは通常の国なら﹁侮辱である﹂と抗議するところだろう。
だが日本は今まで抗議してこなかった。
程度が低すぎて相手にしたくなかったのだ。
それに対する彼らの思考は単純である。
反論しなければ認めたのと同じことだし、反論すれば差別なので
ある。
つまり日本は反論してはならないし、言いがかりを鵜呑みにせね
ばならないのだ。
これは彼らの信仰であり絶対の真理である。
ゆえに韓国国民はこの言葉に興奮した。
子供のころから夢見ていた日本人皆殺しという人生の目的が叶う
のだ。
﹁むくげの花が咲きました﹂のようなスカッとするシナリオが今
実現しようとしているのだ。
それが反日という信仰だったのだ。
日本人を抹殺すれば国連からも褒められるし、全世界から賞賛と
感謝の意を送られる。
だから日本を滅ぼそう。
それが韓国の民意だった。
﹁我々は日本に宣戦布告をする!!! これは我が民族半万年の歴
史の悲願。世界が認める聖戦である!﹂
※韓国の建国は1948年である。︵大韓民国樹立宣言日を基準
182
とする︶
拍手、歓声、歓喜の叫び。
自称元帥はこの日、半万年に及ぶ韓国の歴史の中で伝説を作った。
◇
長崎県対馬市。
言わずと知れた韓国が侵略を狙っている島である。
自衛隊はまず先にここにやってくることを警戒して住民の避難の
ために部隊を派遣していた。
戦闘より住民の命。
非難されることはないだろう。
だがおかしなことにそこは今緊張に包まれていた。
﹁自衛隊はー。いますぐ対馬から出て行ってくださーい!﹂
﹁出て行け! 出て行け! 出て行けー!﹂
対馬市民でもない平和団体がシュプレヒコールを上げる。
街宣車の屋根を壇上として社会主義党の女性議員が演説をする。
﹁みなさーん! 自衛隊は皆さんを守りませんよー!﹂
﹁そうだそうだ! 自衛隊は悪の軍隊だ!﹂
﹁世界で一番平和的な韓国軍が来てくれますよー﹂
アフリカや南米諸国で奴隷型プランテーション農園を経営して暴
動まで起こされている国が何を言っているのだろうか?
183
﹁日本が大人しく島をあげれば日韓友好が実現しますよー! ねえ
有川先生﹂
先日の大暴動から運良く生還を果たした有川議員が壇上に上がっ
た。
﹁皆さん。私たちに逆らうものは全てネトウヨです。韓日友好のた
めに頑張りましょう!﹂
﹁ネトウヨを殺せー! 殺せー! 殺せー!﹂
有川の狂ったスピーチを暴力的なシュプレヒコールが煽った。
だがこの狂ったデモも長くは続かない。
﹁うるせえボケが!!!﹂
日に焼けて顔が茶色くなった漁師たちがデモ隊を取り囲む。
﹁てめえら失せろ! なんだテメエらは、韓国韓国韓国韓国。恥ず
かしくねえのかよ!﹂
﹁みなさーん! ネトウヨですよー!!!﹂
すでにネトウヨの定義すらあやしい。
すでにネトウヨは森羅万象全てを表す便利な言葉になっていた。
﹁みなさん、あの人たちのアレはいつものことですから⋮⋮本土に
避難してください﹂
184
ニコニコとした自衛官が漁師たちをなだめる。
﹁怒らないのかい?﹂
﹁いつものことですから﹂
漁師たちは隊員の顔にくっきりと浮かぶ苦労を感じ取って、
﹁ありがとう﹂
と一言だけ言った。
こうして住民たちの避難は着々と進む。
だがデモ隊はそんな自衛隊員に罵声を浴びせる。
﹁死ねよ! 死ねよ! 死ねよ!﹂
一通り罵声を浴びせるとデモ隊はお互いの腕を組んで人間の鎖を
作った。
﹁韓日友好ー! なんて素晴らしいのでしょうか! さて今度はイ
先生のスピーチがあります!﹂
バーコード型の髪型をした男が街宣車に上がる。
有川と握手をしてマイクを受け取るとスピーチをはじめる。
﹁チョッパリどもは皆殺しだ!﹂
﹁皆殺し! 皆殺し! 皆殺し!﹂
完全に主張は狂っている。
185
だがデモ隊を撮影するテレビクルーはそうとは取らなかった。
日本人は絶滅すべきだ。それが赤日の社是である。
彼らの言っている事は絶対の真理なのだ。
﹁だからお前らも死ね!﹂
イが外套を開いた。
そこにはダイナマイトが巻き付けられている。
﹁イ先生⋮⋮なにを⋮⋮﹂
有川の顔が恐怖で歪む。
﹁薄汚いチョッパリどもよ! 我が身を祖国のために捧げよう!﹂
﹁ひいいいいいいッ!﹂
有川は背中を見せて逃げようとした。
聞いていない!
なぜ世界で一番平和的な世界最優秀民族がこのような暴力的な行
為に出たのだ!?
なぜさんざん韓国、北朝鮮に尽くしてきたこの有川がこんな目に
遭うのだ!
許せない。それもこれもネトウヨの陰謀だ。
﹁マンセー!!!﹂
﹁撃てー!﹂
男が叫ぶのと同時に自衛隊員が一斉射撃した。
186
だが遅かった。
ダイナマイトが破裂する。
ダイナマイトと一緒に持っていたベアリングの玉や釘がデモ隊に
突き刺さる。
釘や玉が突き刺さながら爆発で飛ばされた有川が街宣車から落ち
る。
アスファルトに頭を打ちめきりという音が有川の頭の中に響いた。
耳から血が飛び出し、目からも血が流れ出た。
体は動かず、自分の吐いた血で喉が詰まる。
苦しい。
だが神経が切れているのか叫び声も上げられない。
怖い。
死が怖い!
だがだんだんと目の前が真っ暗になってくる。
チョッパリを絶滅させねば。
どうにかしてこの日本へ復讐せねば⋮⋮
力を振り絞ったが指先一本すらピクリとも動かない。
そして闇が有川を包んだ。
最後にぐうと喉から音を出し有川は息絶えた。
死亡者20名。重軽傷者50名の大惨事だが赤日はなぜか﹁右翼
系市民グループによる大暴動。住民20名死亡﹂と書き立てた。
187
宣戦布告︵後書き︶
有川先生へのお仕置きを忘れてました。
裏切られ死亡と逮捕から死刑とどちらがいいかなと思ったのですが、
エンディング的に蛇足だなあと思ったのでここで退場させました。
歴史的にも売国奴の末路はたいてい悲惨ですね。
また感想欄の削除が行われたそうです。
例のスパムのようですね。
そろそろランキングから消えますが、あと一週間くらいで完結まで
書けると思います。
現在空白除く7万字まで書きました。
平和とか書きまくってますのでSAN値がガリガリ削れてます。
では感想コーナー!
>なるほど、では韓国国内で親戚の原発から放射能が漏れてる云々
は正に神罰なわけだw
自然放射能も多いみたいですね。
>エルフと韓国人のハーフ↑のちのゴブリンである
ぬお、最後のネタばらしが!
もうちょっとひねる予定です。
>ムクゲ∼を読みきった作者さん
188
私も途中だつら⋮⋮いえあの独特の文章が⋮⋮無理⋮⋮
>⋮⋮もう停波でいいんじゃね?
せっかく制度があるのですから一度適用してみればいいと思います
よね。
きもい∼
法律の死文はよくありませんよね。
>ネットうよ
ネトウヨの定義がマジでわからない⋮⋮
>外患誘致罪
あの法律って結構成立要件が難しいんですよねえ。
もちろん出しますがラスト近くになると思います。
189
勇者の墓
道彦たちが指定の場所に行くと軍用にカスタマイズされた軽トラ
ックが見えた。
道彦たちの姿を確認したのか誰かが降りてくる。
遠藤だ。
﹁道彦!﹂
遠藤が駆け寄る。
遠藤はアメリカ人みたいに大げさにハグをしてやろうと思ったが、
道彦から発せられるにおいに止まってしまった。
﹁いいよ。自分がくさいってのはわかってる。怪我のせいで風呂入
ってないもんな﹂
﹁わ、悪い﹂
﹁あ、そうだ道彦。医者を連れてきた﹂
﹁は、早く! 村で死にそうな子がまだいるんだ﹂
﹁落ち着け道彦! お前も死にそうに見えるぞ!﹂
﹁俺の事はいい。早くしてくれ!﹂
遠藤は道彦の背中を見ていた。
もともと痩身のその体はさらに細くなっていた。
190
だがその背中はどこか大きく感じた。
たった数日だ。
たった数日で自分は道彦の背中を見るようになってしまったのか。
﹁道彦、呼んで来てやっから焦んな! それに山岡さんに紹介する
から待てって!﹂
﹁後で! とにかく医者が先だ!﹂
﹁おい! あー聞いてねえ⋮⋮﹂
遠藤はため息をつく。
もう何を言ってもダメなのだ。
しかたなく遠藤は医者と看護婦を大急ぎで連れて道彦たちのキャ
ンプへ向かった。
﹁酷いもんだな⋮⋮映像で見て覚悟してたがこれ程とは﹂
白人の医師が日本語で言った。
キャンプには怪我人が多数いた。
意識がないものも多かった。
﹁ええ。ここ数日で何人も死んでしまって。助かりますか?﹂
﹁ベストを尽くす﹂
愚問だった。
現代医学はおとぎ話の魔法ではない。
手遅れなものは治すことはできない。
191
﹁⋮⋮ゲートの向こうで手術するぞ﹂
医師は真剣な顔で言った。
﹁ゲートの向こう?﹂
﹁ああ、遠藤くんが出した条件だ。君が救った村人や韓国軍の暴走
で家をなくした人たちを日本で受け入れる﹂
﹁⋮⋮本当ですか?﹂
﹁ああ。確約をもらっているってさ﹂
﹁わかりました。じゃあ僕は山岡さんのところへ⋮⋮﹂
﹁待て。治療が先だ﹂
﹁いや僕なんかより子どもを⋮⋮﹂
﹁20億円﹂
﹁え?﹂
﹁君の救出の予算だ。トルコなどへ借りを返す金に物資にロビー活
動費、宣伝広報費⋮⋮君の命はもう君だけのものじゃないんだ。わ
かるね?﹂
﹁⋮⋮はい﹂
192
﹁わかったら治療の続きだ﹂
道彦は大人しく治療を受けることになった。
金の話をされたら抵抗する気も起きなくなる。
蛆を洗い流し点滴を注射する。
﹁これはあくまで応急処置だ。この世界の感染症はなにもわかって
ないから、帰ったら赤十字の指定する病院に入院してもらうからね﹂
﹁は、はい﹂
﹁そんな顔するなよ。今ごろ世界各国が門を明け渡すように韓国に
圧力をかけているからもう帰れるよ﹂
﹁正直⋮⋮嬉しいです﹂
だがそうは問屋が卸さなかったのだ。
◇
﹁遠藤くん﹂
山岡がパソコン片手にやって来た。
その姿は慌てるを通り越して狼狽していた。
﹁どうしたんですか?﹂
﹁僕は一緒に帰れなくなった。よく聞いて欲しい。韓国が北朝鮮と
南北共同軍を作って日本に宣戦布告した﹂
193
﹁はい? あいつら正気ですか?﹂
﹁ムクゲノ花ガ咲キマシタ﹂
金辰明による韓国の小説である。
売上は100万部を超え、この作品を原作とした映画は大ヒット、
映画賞を総なめにした。
内容は韓国が北朝鮮と手を結び、核兵器を日本本土近くの島に打
ち込んで日本を脅迫をするというものである。
途中、意味もなく公園を攻撃したり農家を襲撃して作物を奪い北
朝鮮に送る場面がある。
韓国人の一般的日本観が凝縮された一作である。
今回韓国軍はこれと同じことをしたのだ。
﹁正気⋮⋮だろうね。少なくとも彼ら自身はそう思ってる﹂
﹁世界がそんなことを許すはずがない! 日本に核兵器を撃ち込ん
だら国際経済はめちゃくちゃになってしまう!﹂
まだそれほどの影響が日本にはある。
日本は9条には守られていない。
経済に守られているのだ。
﹁もう彼らは世界なんて見てない。自分たちが正しいと思い込んで
いるんだ﹂
﹁⋮⋮狂ってる!﹂
﹁ああ、でも日本も悪いんだ。国際問題になるのを恐れてこれまで
彼らの意味不明な難癖に反論してこなかった。彼らにとっては反論
しないってのは奴隷になるのと同じなんだ。ちゃんと反論すべきだ
194
ったんだ。経済制裁をしてでも彼らに反論すべきだったんだ﹂
﹁⋮⋮じゃあ、それでどうするんですか!? 帰ったら家がなかっ
たなんて嫌ですよ!﹂
﹁多国籍軍が韓国軍事政権を抑える予定だ。さすがに核兵器での攻
撃は洒落にならない。それに僕たちはここに残ってパコ大統領を救
出する﹂
﹁そもそも大統領はどこにいるんです?﹂
﹁キムと一緒にいるという情報が入った。それ以上は続報を待ちだ﹂
﹁でも場所がわかったとしても⋮⋮この人数で大丈夫なんですか?﹂
﹁もちろん多国籍軍もこちらにも来る予定だ。いいかい、この戦争
を止めるには選挙で選ばれたリーダーであるパコ大統領を救出して
正当政府を担ぎ上げるしかない。軍部の暴走っていうことにしてキ
ム司令官と元帥に全ての罪をなすりつけるんだ﹂
﹁⋮⋮でもこの人数じゃ﹂
﹁ああだから君たちは帰還するんだ。わかったね﹂
﹁全て包み隠さず生放送しましょう﹂
その声は道彦のものだった。
道彦は体を洗い、血や泥で汚染された髪の毛をバリカンでそり上
195
げ、奪ったものではない清潔な服に着替えていた。
横にはエルフの三人娘がいた。
道彦の眼差しは数日前の気の弱い学生のものではなかった。
﹁⋮⋮確かに中継の道具は揃っているが。だがパニックが起きてし
まうかも﹂
﹁いえ、全て報道しましょう。全世界に報道するんです。そうすれ
ば韓国人の何人かは自分たちの間違いに気づくはずです﹂
道彦は嘘をついた。
そこまで期待はしていない。
人間の善意など目先の利益に劣る。
道彦自身だって己の命のために何人も犠牲にしたのだ。
だが、それがわかっているからこそ判断をゆだねたかった。
今まで生き残ることができたのはまぎれもなく善意の力だったか
らだ。
﹁⋮⋮上司の指示を仰ぐ﹂
山岡はそう言うとどこかに連絡を取った。
﹁あ⋮⋮はい⋮⋮かしこまりました。では﹂
電話を切ると山岡はニコッと笑った。
﹁許可が下りた。全てを放送する。いま日本とその友好国は各国の
国営放送、大手通信局、インターネットメディア、世界の200以
上のチャンネルで生放送を打診している。全てを放送するぞ! 脚
色はなし、すべて生だ﹂
196
﹁ま、マジですか?﹂
﹁ああ、でも問題がある。パコ大統領がどこにいるかわからないん
だ。それに⋮⋮この世界に水爆があるらしい﹂
﹁⋮⋮マジですか?﹂
﹁ああ⋮⋮マジだ。君らは何か心あたりがあるかい?﹂
山岡は現地人であるエレインたちに問いかけた。
﹁⋮⋮水爆⋮⋮神器。もしかすると!﹂
﹁エレイン、勇者の墓だよな?﹂
﹁勇者の墓ってはなんだい?﹂
﹁勇者様が使命を果たし元の世界に帰る時に使う門です。神器が封
印されていて、勇者様の到来と共に開き勇者様の帰還によって閉じ
て誰も入れなくなるんです。中は際限なく広く、伝承ではセンシャ
や巨大な船、神の矢や地獄の炎などが封印されているそうです﹂
地獄の炎。
それを聞いた全員が水爆のことだと思った。
﹁うんわかった。偵察隊を出すよ﹂
そう言うと山岡は通信をする。
多くの味方が異世界に潜伏しているようだ。
197
﹁道彦⋮⋮﹂
遠藤が道彦の方を見た。
﹁遠藤、セッティングするぞ。最後の生放送だ﹂
198
勇者の墓︵後書き︶
アメリカ大統領選挙が面白すぎて笑いが止まりません。
あ、ムクゲは日本語訳がアレ過ぎたので途中で脱落しました。
韓国文学の日本語翻訳版ってどれもこれも読み辛いんですよね⋮⋮
韓国の新聞のあの感じです。
ちなみに水爆はもう一度どんでん返し?があります。
お返事コーナー
>外観誘致って、刑法八十一条で死刑以外の刑罰が記されてないん
ですよね。
なんですよねえ。
戦時犯罪と破防法は濫用は許されないって言われてるんですけど、
破防法はオウムの時に使っておくべきだったと思います。
>なんで最近投稿が早いの?
い、いえ、夜ぐっすり寝ようかと思いまして⋮⋮
そんなに意味ないんですよ。
>有川先生
最初は殺人罪で逮捕されて泣き叫びながら絞首台につれて行かれる
エンドだったんですが、最後に入れるのが嫌だったので退場しても
らいました。
199
>鳩ぽっぽ先生
あの人は⋮⋮出したら作品壊されます⋮⋮
ノムたんもそうですけど勘だけで生きてますもん。
面白いですけど。
その点、ぽっぽの次の総理はまったく笑えませんでしたね。
あの人は﹁韓国のために原発爆発させたのにー﹂ってネタが一瞬頭
によぎったのですが入れる箇所がありませんでした。
200
水爆など⋮⋮
道彦たちは移動中にも生放送をしていた。
﹁今、僕たちは多国籍軍の部隊と一緒にいます。韓国と組んだ北朝
鮮が日本を核攻撃しようとしてます。これからパコ大統領を救い出
し正当政府を立て直す予定です。僕らの後からも大部隊がやってく
る予定です!﹂
>核攻撃!!!
>どういうこと?
>なんで?
がたりと車体が揺れる。
﹁異世界に水爆があるらしいんです﹂
>す、水爆?
>いや待ってよ。そんなものを用意できるはずが⋮⋮
>起動できるの?
﹁わかりません! でも異世界への第二のゲートに水爆が保管され
ているそうです!﹂
>俺、住んでるの千代田区だよ! 絶対ターゲットにされるよ!
俺まだ死にたくねえよ!
>リア充死ね!
>どうせ水爆なんていつもの嘘だろ。
201
>どうすんだよ!!!
﹁偵察部隊によるとキムは少数の部隊で第二のゲートへいるそうで
す。そこを異世界に潜伏してる他の部隊と協力して襲撃します!﹂
>どう考えても罠だろ!
>死ぬ気か?
>殺されるぞ!
﹁これが罠なんてわかってます! だから皆さんに訴えかけます。
戦争を止めてください! もう世界は韓国の正当性を認めていない。
韓国はこのままでは世界の敵になってしまう。お互いが滅びる前に
止めてください! 我々は平和を望んでいます!﹂
その言葉は薄っぺらく、安っぽく、しかも使い古された言葉だっ
た。
道彦自身も自分から発せられる言葉を信じていなかった。
今でも韓国は嫌いだ。自分の目の前で村民を殺した彼らが憎い。
だからこそ我慢しなくてはならない。
ここで止めねば事態は悪化する。
ほんの数日とはいえ地獄を生き抜いた道彦の言葉には説得力があ
った。
道彦は一生懸命だった。
道彦を笑うものはたくさんいた。
いやほとんどの人間が嘲笑した。
ネットの悪意は正体を隠さず剥き出しの悪意をぶつけた。
右翼がどうたらと決めつけたし、それでもメディアは意地になっ
て道彦の存在を隠した。
だが立ち上がるものもいた。
202
それは日本国内だけではない。
世界中の人が立ち上がったのだ。
◇
城下町近くの森。
神域とされ誰も入ろうとしない深い森。
その最深部に勇者の墓はあった。
キムはその勇者の墓にパコを連れてきていた。
パコは殴られたのか目が腫れていた。
それでも毅然とした態度でキムと対峙していた。
﹁元大統領。ここが勇者の墓です﹂
﹁まさか⋮⋮水爆なんて⋮⋮これがアメリカや中国に知られたら1
000年奴隷にされるぞ! わかっているのか!﹂
﹁くっくっく、水爆⋮⋮そういやそんなものもありましたね﹂
﹁どういう意味だ⋮⋮?﹂
﹁確かに水爆は中にあります。北朝鮮製のがね﹂
豚がくくくと笑う。
﹁そんなもの有り得るはずがない。あの国にそんな技術力はない⋮
⋮だいたいそんなものを紛失するわけがないだろう?﹂
﹁⋮⋮くくくく。耐えがたいほどの愚かさだ。異世界への門、空間
を超えるということは時間を超えることに近い。なぜ愚物どもは過
203
去から未来に時間が流れると思うのでしょうか?﹂
﹁過去から未来に時間は流れるのは当たり前のことだ!﹂
﹁違います。それは人間の見方でしかない。哀れでちっぽけなね。
門には過去、現在、未来の区別はない。あそこにあるのはこれから
長い時間をかけて北朝鮮が自分自身で開発する水爆ですよ。自分自
身が創り出す物と引き替えに交渉をするなんてなんて愚かなのでし
ょう!﹂
パコは相手を狂人と斬り捨てるのではなく相手の意見をよく考え
てみた。
するとあるバカげた考えが頭に浮かんだ。
いやそれは有り得ない。
﹁み⋮⋮未来なのか?﹂
﹁ええ、ようやく答えに辿り着きましたね。その小さな頭でよく頑
張りました。それにしても北もあなたも日本も米国も愚かだ。水爆
なんていうのはたいした兵器ではないのに⋮⋮くくく﹂
﹁もっと恐ろしい兵器があるのか?﹂
﹁やれやれ。なぜ愚物どもは兵器を念頭に置くのでしょうか⋮⋮考
え方が小さい小さい﹂
その言い方にパコはむっとしたがあまりの事態の大きさになんと
か爆発せずにすんだ。
なぜこの豚はここまで余裕があるのだ?
国際社会で孤立するメリットはなにもない。
204
それは商売人の豚も知っているはずだ。
それなのにどうしてあえて滅びの道を選択するのだ?
この豚は何を知っている⋮⋮
﹁門ですよ﹂
﹁門?﹂
﹁ええ。門そのものです。確かに門を作ったのは神なのかもしれま
せん。でも純粋な現象として考えたらどうでしょう?﹂
﹁ど、どういう意味だ!﹂
﹁異世界への扉を開ける。この現象を発生させるにはどれだけの熱
量が必要なんでしょうね? 核分裂? 核融合? 韓国の一日の電
力相当? アメリカの電力量? 太陽のエネルギー? 答えは﹃計
り知れない﹄。わかりますか? いやあなたのような愚物にはわか
らないでしょうね!﹂
﹁⋮⋮仮に理解したとしても門を兵器として利用できるようになる
まで何年もかかるだろう! いや人類が門の謎を解明することは1
00年後もありえない! 核なんて言いだしたせいでアメリカも中
国も日本もロシアも世界中が我々を許さない! 門を利用できるよ
うになる前に韓国は滅びるぞ!﹂
﹁くくくくく。人間による真理の解明など意味はありません。私の
曾祖父はこの世界に勇者として召喚されました。そこで目撃したの
です。大いなる知識の海を! それさえあれば利用など容易いこと
です﹂
205
﹁それが本当だとしても、今のこのザマはなんだ! 門は開いてな
いぞ。たとえ知識があっても世界征服などできぬぞ! 世界を舐め
るな!﹂
﹁くっくっく。これだから愚物は度しがたい。世界を超える力なら
時間を超えることも可能だとは考えないのですね。知識の泉には門
の制御法が必ずあるはずです﹂
﹁それは推論だ!﹂
﹁いいえ。なぜ我が曾祖父が精神病院に入ることになったのか知っ
てますか?﹂
﹁お前はなにを言っている?﹂
﹁知識の泉で半島の未来を見た曾祖父は恐ろしいことを知ったので
す。⋮⋮我が国には⋮⋮いや朝鮮半島にはこれから1000年の長
きにわたり歴史を変えるような英雄は出現しない。誰一人としてだ
! それを言った途端、危険思想の持ち主として精神病院送りです
よ!﹂
﹁⋮⋮な、んだと⋮⋮1000年も英雄が誕生しないだと⋮⋮我々
は世界最優秀民族で世界の支配者のはずじゃ⋮⋮﹂
﹁ええ、しませんとも。優秀な人間は全て海外に逃げてしまうし、
正しいことを主張する人間は国家に潰される。それが我が国の現状
です﹂
﹁だからと言って⋮⋮今さら知識を手に入れてもなにもかもが⋮⋮
遅い⋮⋮それに鈴木をどうやって捕まえるのだ⋮⋮﹂
206
﹁ご安心ください。勇者の墓は鈴木道彦が帰還するためのゲートで
す。工作員に情報を流させました。あの愚かな高校生は利用される
とも知らずにのこのこやってくるでしょう﹂
﹁鈴木には世界中の目がついているんだぞ! わかっているのか!
? 滅ぶんだぞ!﹂
﹁ええ、知ってますよ。鈴木道彦はここに水爆があると思っていま
す。自ら手の内を晒すとは、やはり彼は愚物のようだ﹂
﹁そう長くはも保たないぞ! わかっているのか!﹂
﹁それでも世界を獲るのは私です。私は門を制御して過去に戻り大
韓帝国に世界を征服させます。見てなさい。現在に価値などない!
私は正しい歴史に向かうように歴史を修正する!﹂
言葉が通じなかった。
キムは完全に自身の勝利を確信している。
こうなった韓国人には他人の言葉など届かない。
誰か助けてくれ⋮⋮
もう誰でもいい
パコは生まれて初めて日本人たちの勝利を願った。
207
水爆など⋮⋮︵後書き︶
すいませんでしたー!!!
謝罪します。
少しだけSF入れました。
二話くらい先からエンディングが分岐する予定です。
今、71000字なので分岐書いてちょうど10万ちょいかなあと
思います。
お返事コーナー
>ハゲは死にますか?
完全に存在を忘れてました⋮⋮
とりあえずまとめて酷い目に遭います。
>水爆⋮⋮
ごめんなさい! SFやってしまいました!
でも日本の架空戦記で日本がアメリカに勝つのが多いように、韓国
も歴史IFで自国を勝たせるのが好きなはずです。
そうじゃなきゃ日本に嫌がらせする小説や映画があそこまで流行り
ませんし、CivとかエイジオブエンパイアとかのSLGにいちゃ
もんつけませんよね?
>宇宙最優秀
208
完全なSFで惑星を征服する話だったら迷わずつけてました。
>注液
まさに奇跡の間違い!
お茶だばーです。
>唯一神ぽっぽ
無理。
あの生き物はまったく理解ができませんので出したら彼がしゅやく
になってしまいます。
原因と結果が意味不明すぎてわかりません。
次回、世界が立ち上がる!
209
情報戦
キムに騙されて日本に核攻撃をしようとしている北朝鮮は完全に
ピエロだった。
数十年、数百年先の未来に自分たちが創り出す未来では、すでに
陳腐化したであろうゴミを手に入れるために滅亡の道を歩んでしま
ったのだ。
キムにとって北朝鮮などどうでもよかった。
キムの計画はそもそも人間の考えではなかった。
門の向こうの人間が日本人だという屁理屈を考えたのはキムだ。
キムは虐殺が起これば現地人が勇者を呼び出すことを知っていた
のだ。
バカな国の上層部は現地の共通語が日本語というだけで陳腐な嘘
を簡単に信じた。
勇者を呼び出すために嘘を信じた国民のナショナリズムを利用し
て虐殺を行わせるのは簡単だった。
タガの外れた人間の姿をニヤニヤしながら眺め、数ヶ月がかりで
捕らえるつもりだった。
北朝鮮は介入する国際社会の足止め役のつもりだった。
だがさすがは勇者。まさか国家相手に情報戦を仕掛けてくるとは
思わなかった。
計画を急ぐ必要があった。
首都を攻め落とし道彦の味方になりそうな勢力を潰しパコを囮に
して勇者をおびき出したのだ。
ヒロイックファンタジーやアバターのように現地人の仲間など作
らせない。
最後は勇者とキムとの戦いに持ち込むのだ。
210
キムは負ける気はしなかった。
なぜなら相手は愚かな日本人なのだ。
◇
日本の逆襲は韓国全土で一斉に起こった。
突如として全てのコンピューターのインターネット接続が切れた
のだ。
金融、証券、海外向け行政サービス、空港までも。
その全てが一瞬で停止した。
そして全てのテレビ放送が電波ジャックされ、全てのチャンネル
でCNNニュースが流れ続けた。
﹁な、なにが起こった!﹂
国防長官が怒鳴った。
軍の上層部は慌てていた。
いや、いまや完全にパニックを起こしていた。
インターネットの不通はインフラだけではなかった。
国防のラインまで切断されたのだ。
﹁ちゅ、中国のラインを使え!﹂
﹁中国のラインも切断されました!﹂
﹁じゃあ、アメリカは!?﹂
﹁もう切断されてます!﹂
﹁き、北は⋮⋮﹂
211
﹁北も同じ状態です!﹂
なぜだ?
世界各国の政府は財閥が賄賂で抑えているのではないか?
どうしてこうなった?
道彦の安っぽい演説はアメリカや日本だけを動かしたわけではな
かった。
道彦の存在によってとうとう中国が動いたのだ。
いや動かざる負えない状況に追い込まれたのだ。
善意ではない。
安っぽいヒューマニズムでもない。
それは恐れだった。
今回はいくらなんでも洒落にならない。
韓国の仲間扱いはされたくない。
他人のフリをすべきだ。
全力で殴って仲間ではないことをアピールしなければ莫大な不利
益を被るのだ。
彼らは自己中心的で、10億もの国民を食わせなければならない
立場で、そして民族問題を抱えていた。
だが同時に彼らは世界有数の商人だった。
商人は損を嫌う。
損切りのために手の平を返したのはそれこそ一瞬だった。
﹁なぜだ! 日本を滅ぼすのは世界の望みではないのか!!!﹂
彼ら韓国人の大好きな孫子は繰り返し﹁変化﹂の重要性を説いて
いる。
何か一つのパターンに陥るものは敗者に成り下がるのだ。
当事者世代だけではなくひ孫の代まで反日に凝り固まり周りが見
212
えていなかった彼らに未来はなかった。
これこそが反日の結果だったのである。
﹁も、もうダメです⋮⋮中国まで敵に回してしまった⋮⋮絶対に勝
てません⋮⋮﹂
﹁日本め! 世界中を買収しやがったな!﹂
国防長官が叫ぶ。
だが彼の叫びはまだ早かった。
これは地獄のはじまりに過ぎなかったのだ。
商人は儲けにならなければ手の平を返す。
それは当たり前のことである。
特に多国籍企業は特定の国への忠誠心はない。
儲けられれば特定の国とパートナーになり、儲からなければ国を
捨てるだけだ。
この場合も同じだった。
多国籍企業は経済崩壊をまるで最初から知っていたかのようなタ
イミングで指摘。
本社を海外に移すことを宣言した。
韓国法人は解散、全従業員は解雇が電撃戦のごとく決定される。
お前らには時間すら与えない。
これが世界の答えだった。
韓国は北朝鮮の核を背景に日本を脅して九州全土を手に入れる予
定だった。
計画では一週間以内に日本国内の協力的勢力と組んで日本を降伏
させる予定だった。
だがその手はもう使えない。
213
国内のインフラが崩壊した今となっては一週間すら戦闘を継続す
ることはできない。
もう終わったのだ。
日本に辿り着く前に韓国は終わったのだ。
核は神の恩寵。
反日作品によく登場するフレーズである。
だが実際は悪魔のささやきだった。
悪魔の指さす先は地獄に続く道だったのだ。
﹁お、俺は悪くない! 悪くないぞおおおおおおッ!﹂
国防長官は涙を流した。
どうしてこうなった?
私は世界で一番不幸だ!
なぜだ? なにが間違っていた?
嘆き悲しみ涙を流し、子どものように駄々をこねる。
だが大人である国防長官はそれだけではなかった。
同時に薄汚い陰謀を張り巡らせる計画をも考えていた。
どうやってキムに罪をなすりつけるか。
どうやって自分は戦後に起きるリンチで生き延びるか?
誰を親日派にして蹴落とし、誰を味方に引き込むか?
涙を流しながら一心不乱に考えていた。
それは韓国国民も同じだった。
自分たちは悪くない。軍に脅されてしかたなくやったのだ。
抵抗勢力もいたし、それが民意だ。
それは日本軍がアメリカに負けた時、いきなり戦勝国と言いだし
たのとよく似ていた。
そして彼らの底の抜けた行動力によって売国奴狩りというリンチ
が早くも始まった。
214
彼らは敗者には容赦がない。
石をぶつけ刃物で襲撃し家を燃やす。
まるで襲撃をすることで自分たちが免罪されるかのように彼らは
暴力に及んだ。
それは韓国政府を動かすには十分なほどの狂気だった。
◇
韓国製の軍用にカスタマイズされた軽トラックで遺跡に向かって
いると、記者や赤十字、国連の関係者、NGO関係者に扮して潜入
した各国の兵士たちが次々と合流していった。
そんな状況を見たせいか遠藤は世界を救う勇者の顔をしていた。
いや遠藤だけではない。
その場に集まった兵士たちも世界を救う勇者のように振舞ってい
た。
確かに韓国のやったことは悪いし、水爆なんて誰も得をしない。
世界中がめちゃくちゃになってしまう。
やっつけるべきだし、これは世界を救う最後のチャンスなのだ。
だが道彦だけは冷静だった。
冷静に、冷酷に事態を正しく理解していた。
﹁エレイン⋮⋮感動させるんだ﹂
﹁どういう意味ですか?﹂
使い方を習ったばかりの業務用ハンディビデオカメラにビニール
テープを巻き付けながらエレインが聞いた。
﹁今までは韓国の悪行を世界に伝えた。その結果、一時的に虐殺は
やんで異世界からの援軍も来た﹂
215
﹁はい。最初はなにをやっているか分かりませんでしたがさすが勇
者様です﹂
﹁だけど今回は怒りではダメだ﹂
﹁なぜですか?﹂
﹁恨みを買う。彼らは恨みを忘れない。千年恨み続ける民族だ。そ
の理不尽さは日本人ならよく知っている﹂
﹁でも⋮⋮勇者様。魔王を倒さずにどうやって世界を救うのですか
?﹂
﹁韓国軍⋮⋮魔王軍を切り崩す。嘘の情報を流して感動させ仲間に
引き込む⋮⋮だから勇者として頼みがある。敵討ちを忘れてくれ。
報復はなにも生まない。みんなも勇者になって欲しい⋮⋮﹂
﹁ゆ、勇者様のご下命とあれば⋮⋮﹂
エレインは泣きそうな顔をした。
道彦だって無茶なことを言ったのはわかっている。
だが二つの世界を救うにはこの計画しかないと自信を持って言え
た。
それを聞いた遠藤が口を出してくる。
﹁どういう意味だよ道彦! 悪の韓国を倒すんだろ?﹂
﹁違う。どんな悪い国であろうとも追い詰めちゃいけない。全てを
216
キムになすりつけるんだ。ドイツと同じだすべてヒトラーに罪を被
せるんだ﹂
﹁だからそのためにパコ大統領を救出するんだろ?﹂
﹁違う⋮⋮その前に情報戦を挑む。山岡さん。海外の通信社と連絡
は取れますか?﹂
﹁ああ、君ならそう言うと思ってたよ。で、どうするんだい?﹂
﹁韓国人に逃げ道を用意します。これによって彼らは瓦解します﹂
﹁なんだかよくわからないが、向こうと相談してくれ﹂
山岡が道彦へ携帯を渡す。
﹁軍用だけど盗聴されてるから気をつけてね﹂
﹁いえ、盗聴させるんです﹂
道彦の目は自信に満ちあふれていた。
それから約一時間後、世界中である番組が一斉に報道される。
それは道彦のライブ映像からはじまり、多国籍軍が水爆を止める
ために死地に赴くことを報道する内容だった。
BGMは壮大にして心に響き、世界平和のために戦う兵士たちの
映像が流れ、兵士たちが家族と撮影したビデオまでもが流れる。
兵士にも生活があり、誰かの子どもで、誰かの親である映像を流
したのだ。
それによって受け手は戦争は遠い異世界で怒っているものではな
217
く、ごく近く近所の住民が戦っているかのように錯覚した。
感動と怒り、正義という圧倒的気持ちの良さが視聴者の心をわし
づかみにする。
道彦は狡猾だった。その場にいた誰よりも狡猾だったのだ。
どこまでも感動的なその映像。
異世界と自分たちの世界を救わんとするヒーローの映像。
そこに韓国軍も混ぜたのだ。
韓国軍は拉致された大統領を救出しようとする正義の味方として
過剰に演出した。
まだキムの傘下であるにもかかわらず、多国籍軍側として報道し
たのだ。
それにより道彦は韓国軍に選択を迫った。
賊軍か?
それとも多国籍軍に加わるか?
滅亡か?
生存か?
それは明らかに脅迫だった。
道彦は国家を脅迫したのだ。
韓国は震え上がった。
ネットの切断により頭を押さえつけ今度はナイフを首に突きつけ
て言ったのだ。
218
﹃仲間になれ。断れば殺す﹄と。
それは韓国人にとっては何よりも屈辱だった。
子どもに出し抜かれるのは日本人の奴隷になることの何倍も屈辱
だった。
だが差し向けられた悪意しかない救いの手を取るしか選択肢は残
されてなかった。
恐怖にかられた国民は制御不能だったし、なにより自分より強い
相手と戦うなど韓国の常識では考えられなかったのだ。
韓国は素早かった。
放送が流れて30分後に国防長官が反乱首謀罪で逮捕された。
さらにその30分後、韓国の裁判所はキムへ不法戦闘継続容疑で
の逮捕状を出した。
韓国人は勝ち馬に乗ることを選択した。
こうして彼らは道彦の前に屈したのである。
219
情報戦︵後書き︶
そういや
﹁竹島は日本固有の領土﹂教科書に韓国反発
というニュースを見たのですがテラ侵略者。
業務連絡
藤ゴンの新作に突撃するアホども。
来るなら私のところに来い。
相手してやるから。
感想の返信コーナー
>ノーベル賞
あのくらいの規模の国なら平和賞以外で獲ってもおかしくはないん
ですよね。
台湾も化学賞獲ってますし。
彼らがバカにしてるアフリカでもセネガルとかは文学賞2人出して
ますし。
スポーツでも同じですけど彼らって手段を選ばなすぎなんですよね。
今回のお話の件
実は今回のお話はそれこそファンタジーです。
世界中に非難されている映像をぶつけられたときに彼らはどう動く
のかと考えると、﹁日本が悪い﹂からの壮絶な魔女狩りかなあと思
います。
220
彼らの反日はすでに宗教なので、鬼郷を見て疑問に思わないわけで
す。
221
全エンディング共通部分1
勇者の墓はまるで神社のような不思議な場所だった。
木々に囲まれ鳥居の中は外からは見えない。
不気味なほど静かだった。
道彦たちは森に隠れて周囲を取り囲む。
キムたちはそれを察したのか逆に拡声器で呼びかけた。
﹁鈴木道彦。出てこい。出てきたら大統領を解放してやろう﹂
﹁なに考えてるんだ狙撃されて終わりだろ?﹂
道彦がつぶやく。
山岡がそれに反論する。
﹁そうとも言えない。まだキムには大統領を殺すというカードがあ
る﹂
﹁じゃあどうする?﹂
﹁普通の人質と違って強行突入みたいな手は使えない。カメラもあ
るし失敗したら全てがひっくり返ってしまう。そこでだ⋮⋮﹂
道彦は嫌な予感がした。
﹁囮になってくれ﹂
﹁デスヨネー。まったく⋮⋮信じられねえ⋮⋮﹂
222
そう言いながらも道彦はカメラに﹁今から行くぜ﹂とささやくと
手を頭の上で組みながら表に出た。
その後ろをエレインはついていく。
﹁おう豚、出てきたぞ! カメラマンのエレインもいるけど別にい
いだろ!﹂
道彦は鳥居に近寄っていく。
中にキムがいるはずだ。
合図をしたら部隊が突入する。
もしもの時は拳銃を持っているし、ナイフもある。
稼ぐのは数秒。
それで全てが終わるはずだ。
道彦は鳥居につくと息を整えた。
﹁鳥居をくぐれ﹂
道彦は一歩踏み出した。
その瞬間、空間がぐにゃりと歪んだ。
同時に強烈な光がほとばしった。
﹁なんだ!﹂
﹁勇者の墓の封印が解かれます! そんな、伝承と違う!﹂
エレインは慌てていた。
神官に伝わっている現象とは異なっていたのだ。
光が辺りを包み、道彦は光に飲み込まれた。
223
◇
道彦が光に飲み込まれ、意識が一瞬飛んだ。
気がつくと何本もの柱が立つ回廊にいた。
回廊の外には中庭がどこまでも続いている。
そこはオリエンタルというよりは純和風の佇まいだった。
﹁道彦様。ここは勇者の墓の内部です﹂
エレインもすぐ側にいた。
バラバラの場所に転移されなくってよかったと道彦は安心した。
﹁ずいぶん和風なんだな?﹂
﹁伝承によりますと勇者様の意識とリンクして内装が変わるようで
す﹂
﹁なるほどね﹂
そう言いながらも道彦は疑問に思っていた。
道彦の家庭はよくありがちな地方からの東京近郊への移住者であ
る。
そのため、地域の住民のほとんどがが檀家や氏子になっているよ
うな施設とは縁が切れてしまっている。
そのためぼんやりと神を信じてはいるが、特定の宗教の神を信奉
してはいない。
精神の宗教的バックボーンに神社があるとはとうてい思えなかっ
た。
道彦とエレインは回廊を歩いて行く。
何本もの柱を通り過ぎる。
224
道彦はエレインに疑問をぶつけてみた。
﹁なぜエレインは内部の構造を知っている?﹂
﹁勇者様を神の国に送り返すのが我々の役目です。そのために巫女
たちは帰還される勇者様と一緒に勇者の墓に入ります﹂
﹁巫女たち?﹂
﹁普通は数人で入る決まりです﹂
どこまでも続く回廊を歩いていると中庭に大きな物体が見える。
それは戦車だった。
﹁勇者チチブ様の神器センシャです。勇者様は神器を置いていく決
まりになっています﹂
﹁僕が帰るときはスマホを置いていくのかな?﹂
そう言ってスマホを確認するとスマホはネットに繋がっていた。
中継も可能なはずだ。
どういった技術なのだろうか?
空間が歪むことも、人を転移させることも、なにもかもが現代の
技術ではありえない。
﹁ええ、そうなります。その代わりに勇者様はここから必要なもの
をお持ち頂くことができます﹂
﹁なるほどね﹂
225
回廊を進んでいると柱の一本に落書きがされているのを発見した。
自己犠牲
秩父一夫ここにあり
﹁勇者チチブ様のものと思われます﹂
﹁秩父さんは日本に帰ったの?﹂
﹁いえチチブ様はこの世界に残られました﹂
道彦はその言葉をなにか大事なもののように思えた。
自己犠牲。
どういう意味なのだろうか?
さらに歩いて行くと今度は風景が次々と変わっていく。
火縄銃、日本刀、昔のライフル、拳銃など様々な武器が中庭に無
造作に放置されている。
ありえないことに巨大な戦艦や、道彦が見たこともない形の飛行
機まで存在した。
普通なら錆びたり朽ちたりするはずだ。
だがそれらは時が止まったかのように最後に使われた状態を保っ
ていた。
﹁最深部に到達いたします﹂
エレインがそう言うと木造の建物が見えた。
道彦がその建物に近づいた瞬間、建物の姿が歪んだ。
226
﹁先に入った何者かの影響を受けています!﹂
エレインがそう言うと、辺り一面がギタギタとした電飾で飾られ
た西洋風の教会に変貌していく。
﹁なんじゃこりゃ!﹂
﹁悪趣味です!﹂
すえたニンニクのにおいがどこからともなく匂ってきて、﹁お金
が欲しいイエイエイエイ﹂という気持ちの悪い賛美歌が聞こえる。
﹁薄汚い日本人よ。神の宿にようこそ!﹂
キムの声がした。
﹁この美しさはお前たちにはわからないだろうな!﹂
確かに全くわからない。
﹁大統領を返せ﹂
﹁いいだろう。真っ直ぐ進み知恵の泉を起動したら帰してやる﹂
道彦たちは真っ直ぐ進み教会の中に入ると聖水の流れる噴水が奥
にあった。
その横でキムと兵士たちががパコ大統領に拳銃を突きつけていた。
◇
227
外では多国籍軍が戦っていた。
韓国軍は最初こそ勇猛果敢だった。
自分を正義だと思い込み覚醒剤でブーストした脳で突っ込んでき
た。
日本人をかばう物は日本人だ。
殺すことは名誉なことだ。
なあに異世界の日本人も簡単に殺せたのだ。
多国籍軍も楽に殺せるに違いない。
なぜなら世界最強の兵は韓国軍なのだ。
韓国軍の兵士は思いっきり勘違いをしていた。
そして現実の戦場を知っている兵士たちは非情だった。
うかつに前に出た兵士の頭がトマトのように弾けた。
一人が殺された瞬間、彼らは思った。
勝てないと。
反撃をしてくる相手には異常なほど弱い。
それが彼らなのだ。
まず指揮官が土下座をした。
三跪九叩頭である。
︵※http://hinode.8718.jp/korea
︳favor︳gate.html︶
それに続き兵士たちも土下座をした。
﹁我々は薄汚い豚に騙されたのです!!!﹂
あまりにも早い手の平返し。
これには多国籍軍もあきれ果てた。
228
バカじゃねえのと。
ゴミを見るような目を向けると、韓国軍兵士を拘束した。
そこまで終わると兵士たちや村人の中にある欲望が目覚めた。
光の中に入りたい。
なぜか彼らは光に吸い寄せられていく。
まるで誘蛾灯のように光に集まっていく。
その光は罠かもしれないのにもかかわらず、どうしても抗いがた
かった。
兵士たちと村人たちは正気を失って光の中へ入っていく。
彼らを韓国軍の兵士たちは土下座したまま見送った。
229
全エンディング共通部分1︵後書き︶
感想のお返事コーナー
>1000年もあの国保つんか?
保たないと思いますよー。
これからロボットに仕事奪われますし。
日本ですらこれから10年間なにで食べていく?
っていうビジョンが見えませんもんね。
韓国だともっとたいへんじゃないかなあと思います。
他の国でも先が見えませんから。
例えばアメリカのいくつかの州のマリファナ解禁だってアメリカの
農家が息してないって現実が原因の一つですから。
アメリカすらそれだけ苦しいわけです。
日本だって少子化一本で充分お先真っ暗なわけですが、韓国はそれ
以上に問題が山積みなわけです。
>裏を読むなんて出来ない彼らに、道彦が与えた選択肢なんて理解
出きるんですかね?
現実だったらできないと思います︵きっぱり︶
彼らの能力というよりは韓国が
・近年デモの禁止の方に動いている
・長いものに巻かれろという気質が日本より激しい
・儒教の影響か悪認定されるとマジでリンチする
230
という感じなのでストッパーが働かないと思います。
昔、翻訳掲示板で
私﹁北朝鮮を韓国が征服したら人身売買はじめるんじゃないの?﹂
韓国人﹁そんなことはない! 我々は世界最優秀民族で⋮⋮︵意味
のない自己賛辞︶﹂
私﹁だって今でもジャマイカとかで奴隷型のプランター農園やって
て問題になってるじゃん﹂
韓国人﹁このチョッパリ野郎!﹂
という感じで話になりませんでした。
私は刑法で禁じられてるとか、軍のシュミュレーションがあるとか
の話が聞きたかったのですが⋮⋮
そんな感じなので済州島四・三事件みたいな風になるかなあと。
それでまた日本が迷惑すると。
>あ、そうだ忘れてた。
犯罪者を異世界に行かせるアイデアは懲罰部隊です。
第36SS武装擲弾兵師団でしたっけ?
韓国だと実尾島事件ですね。
もっとも彼らが犯罪者だったというのは映画の演出らしいですけど。
ちなみにこれは﹁韓国人全体が凶暴なわけじゃないよ﹂という言い
訳のための設定です。
実際は普通の部隊でもやるんじゃないかなあ。
でも忘れて欲しくないのは、あくまで作中で明らかに敵として書い
231
ているのは日本のマスコミです。
次回、分岐します!
まずはバッドエンドから!
と、言いたいのですが⋮⋮ストックなくなりました。
投稿できなかったらすいません。
232
選択肢 1
キムは勝利を確信していた。
知恵の泉を手に入れてゲートを操れるようにさえなればいいのだ。
手元に残った忠誠心の強い兵だけを連れて過去の世界に行く。
そうすれば世界は大韓帝国⋮⋮いや世界最優秀民族に跪くだろう。
日本人を奴隷化し、アメリカ人を皆殺しにして、中国を焼き尽く
す。
石油を独り占めにし、ありとあらゆる特許や発見を独り占めにし
する。
そして世界最優秀のDNAで世界を埋め尽くし人類を進化させる
のだ。
世界中は幸福に包まれ、ありとあらゆる賛辞は韓人のものになる
だろう。
このキムの銅像は世界中に建立される。
慰安婦ではない。このキムの銅像が世界中に建立されるのだ。
猿ぐつわをし黙らせた大統領に拳銃を突きつけながらキムは日本
語で言った。
まるで王者になったかのような尊大な風格を漂わせて。
﹁鈴木君、ここに来るまでに水爆を見たかね?﹂
そんなものは見ていない。
﹁見ていない﹂
﹁だろうな。どうやらあれは召喚された同胞が置いていった物だけ
が見えるようだ﹂
233
﹁だからどうした?﹂
﹁気がつかなかったのか⋮⋮?﹂
﹁見たことのないものがあっただろう?﹂
﹁ああ⋮⋮あったよ﹂
﹁あれは未来の兵器だ﹂
確かに見たことのない飛行機を見た。
あれはもしかすると未来の物かもしれない。
﹁未来の兵器で戦争を続けようと言うのか! そんなことできるは
ずがない!﹂
﹁ああそうだ! どんなに高性能な武器があろうとも日本を敵に回
すのは世界を敵に回すのと同じだ。国際市場が黙ってるはずがない
!﹂
﹁じゃあなぜこんな無意味な戦争を始めたんだ!﹂
﹁お前も見ただろう! 未来の兵器を!﹂
﹁だからどうした!﹂
﹁⋮⋮朝鮮には水爆しかない﹂
﹁なんの話だ?﹂
234
﹁何百年かかるかわからないが北朝鮮は水爆を作る。それは約束さ
れた未来だ。だが百年後には陳腐化された兵器だ。本体に書いてあ
ったよ。﹃朝鮮半島は消滅した。未来を変えろ。チョッパリを皆殺
しにしろ﹄ってな⋮⋮﹂
﹁なぜお前らは日本を滅ぼそうとする? それが原因で滅ぶんだよ
!﹂
だが道彦の言葉はキムには、韓国人には届かない。
﹁黙れ。俺は未来を変える。さあ! 鈴木道彦。知恵の泉に手をか
ざせ!﹂
道彦は言われるままに泉に手をかざした。
次の瞬間、泉が光り輝いた。
﹁あははははは! 韓民族の世界が来るぞ!﹂
キムが引きつった笑い声を上げ、大統領を突き飛ばした。
キムも泉に手をかざす。
﹁世界最優秀民族万歳!!!﹂
勝ち誇った豚の脳裏に世界を形作る情報が流れこんでくる。
﹁あははははは! わ、私は神になる!﹂
素晴らしかった。
カンニングで100点を取ったときよりも興奮した。
235
はじめて覚醒剤を使ったときの何倍もだ。
女を殴るときよりも、ライバルを自殺に追い込んだときよりも、
原始人狩りをする兵士たちをニヤニヤしながら見るよりことも楽し
かった。
興奮するキムの脳裏にゲートの制御法がダウンロードされる。
やはり、やはり、過去に戻ることができる。
起動キーは⋮⋮勇者!
キムは道彦の襟をつかんだ。
そして拳を振り下ろす。
キムとて素人ではないという自負があった。。
カルチャーセンターで特攻武術︵韓国の軍隊格闘術︶を習ったこ
とがあるのだ。※
︵※http://matome.naver.jp/odai
/2143145193077152101︶
投げ飛ばして人質にしてしまえばいい。
だがそれは甘かった。
道彦はすでに戦場での考え方が身についていた。
キムが拳銃で道彦を殴るのと同時だった。
キムの腕に力が入らなくなった。
激しい痛みがキムを襲う。
当初小さかった痛みは耐えがたく大きな痛みとなっていた。
それはナイフだった。
道彦がキムの脇腹にナイフを突き刺したのだ。
ナイフが抜けた。
道彦は感情をこめず何度も突き刺した。
キムも負けじと拳銃で道彦を撃とうとする。
今度は肩に何かが突き刺さる。
ナイフだった。
236
キムはカメラマンをしていたエレインを見た。
ナイフを投げたのはあの女だ!
ナイフを投げた女はキムを撮影していた。
﹁な、なぜだ⋮⋮なぜ世界最優秀民族が敗北しなければならない⋮
⋮﹂
世迷い言を言いながらキムは崩れ落ちた。
口の中を切った道彦は口内の血を床に吐き出す。
歯は無事だった。
そして道彦は血まみれになったナイフを捨て拳銃を抜いた。
そして倒れたキムに銃口を向けつつナイフを刺した方の傷口を蹴
っ飛ばした。
キムがうめき声を上げる。
﹁うつぶせになって手を頭の後ろで組め﹂
キムは泣きながら道彦の言うとおりにした。
道彦の銃口はまだキムの後頭部を捉えていた。
﹁勇者様!﹂
﹁こいつだけは許せない!﹂
この男の狂った計画のせいで道彦は数多の死を見た。
一緒にいたのは数日だけだがすでに道彦は村人の方に肩入れして
いた。
道彦の心は憎しみでいっぱいだった。
殺す。
殺してやる!
237
﹁エレイン、撮影続行!﹂
道彦は叫んだ。
カメラの前でこの野郎を処刑してやる!
﹁ま、待て! そいつは国で裁判にかける! カメラの前で殺すな
! 私でも君をかばうことができなくなる!﹂
大統領が韓国語で叫んだが道彦の耳には届かなかった。
道彦は葛藤していた。
韓国軍がキム一派を倒すことでキムたち犯罪者の暴走で片付けら
れる。
だがキムが無罪になる可能性だってある。
韓国の法廷は信用できない。
門がある限りまた韓国人は異世界へ侵略を開始するかもしれない。
だがここで始末してしまえば全ては解決だ。
こいつさえカメラの前で処刑してしまえば恐怖を植え込むことに
なる。
だが自分は?
いや違う、勇者秩父の言葉だ。そう、自己犠牲だ。
自分を犠牲にして異世界を救うのだ!
選択肢
キムを
殺す
殺さない
238
選択肢 1︵後書き︶
有田先生の方が南京の犠牲者は人口20万人だけど近くには160
万人いたから30万人という発言をしました。
もうさ、やめようよ。
日本人に対するヘイトスピーチは。
そういうことばかり言ってるから風当たりが強くなるんですって。
ないことは﹁ない﹂。
日中戦争3500万人死亡説とかそんなに殺せるほど物資を持って
いたらアメリカと戦争になってなかったっての。
数字を盛るから信じられないんですよ。
感想コーナー
>感想欄の荒れっぷり
まとめますね。
藤ゴンに反対されたのにmk−3をわざと使う
←
存在がバレたので藤ゴンあきらめてここのURLを割烹で白状
←
日間ランキング掲載
←
殺害予告 & 罵声 & メッセージで追撃 & 律儀に1:1入
れてくれる
←
私が面白半分に来たメッセージの一つを晒す
239
←
日間22位、反対派なぜか藤ゴンの方に突撃 ↓ 藤ゴン入院決定
←
まとめサイトとか2chで話題にして頂く。
←
反対派、急に黙る。お気に入り1000件突破。
←
運営が悪質な書き込みを消す、藤ゴンの新作に殺害予告、運営によ
る削除
←
完結が見えてきたし勢いも落ちたので平和 ↑ 今ここ
という流れなので感想は荒れたまま放置してます。
ちなみに当方の個人的主張は特定民族を追い出せとかではなく、
︵マスコミ、左翼含めて︶少しは日本人を思いやれ
ですので。
日本人やアメリカ、ロシア含むヨーロッパはどれだけ悪く書いても
いいのに韓国や中国はダメっていう基準がそもそもおかしいって気
づいてください。
それはただの人種差別ですからね。
ちなみにテコンダー朴などの素晴らしい作品と比べてユーモアが足
りないのはただ単に私の力量不足です。
次回、共通ルート & バッドエンド
240
BAD END
◇分岐ルート キムを殺す
道彦は後頭部に突きつけた拳銃の引き金を引いた。
乾いた音が教会の中に響く。
反動は軽かった。
キムはびくりと動くとまるで破裂したスイカのようになって転が
った。
まだ指はピクピクと動いている。
道彦は確認のためもう一度キムを蹴る。
今度は生きていた時とは違い、体は重く反応もほとんどなかった。
絶命したのだろう。
これで終わりだ。
道彦は知識の泉に手をかざす。
道彦は力に溺れるつもりはない。
もう終わりにするつもりだ。
道彦はなにも持ち帰る気はしなかった。
﹁大統領。ゲートを開きます﹂
それは完璧な発音の韓国語だった。
﹁韓国語を話せたのか?﹂
﹁いえ、知識の泉の効果です。すぐに消えますよ﹂
道彦は知識の泉からゲートを起動した。
241
すると気持ちの悪い教会だった建物は徐々に神社へと変貌してい
く。
アクセス権を取り戻したに違いない。
発電所のタービンのような轟音が鳴った。
中は神社の本殿のように変貌し、奥行きがどこまでも伸びる。
奥がどこまで続いているかわからないほど伸びた部屋のその先が
光った。
﹁ゲート起動完了。兵士を帰還させる﹂
すると、外で戦っていた兵士たちがわらわらと現れた。
その目は正気を失っていて皆一様に呆けていた。
道彦はそれを当然のように受け止めていた。
一瞬の静寂の後、道彦が柏手を打つ。
その音で全員が正気を取り戻す。
﹁え? なんで? ここはどこだ?﹂
山岡たちがガヤガヤと騒ぎ出した。
それを見て道彦は笑う。
﹁皆さん、帰りましょう﹂
道彦は異常なほど広くなった本殿の先にある光を指さす。
﹁鈴木君⋮⋮なにがあったんだ?﹂
﹁キムを殺して大統領を奪還しました﹂
返り血を浴びた道彦はなんでもないことのように言った。
242
その迫力は
﹁あ、ああ。いやそうじゃなくてあの光!﹂
山岡が光を指さしていた。
﹁山岡さん。ゲートを閉じます﹂
﹁な、なに?﹂
﹁争いの原因はゲートです。ゲートを閉じてこの世界と我々の世界
を守ります﹂
﹁我々の⋮⋮どういうことだ?﹂
﹁僕は歴史を見ました⋮⋮﹂
道彦の話は全員を驚愕させた。
まず、韓国の失態のせいでPKFが入り、その後アメリカが不平
等条約をむりやり締結させてゲートを横取りする。
当然、中国が異議を申し立てて5年間ほど冷たい関係を続く。
この間にアメリカとその同盟国はありとあらゆる調査を施す。
その結果、この世界の面積が地球の2倍もあるということ、あり
とあらゆる資源が豊富にあること、人類はそのほとんどに進出して
ないことがわかる。
すると口減らしが必要な中国、アフリカ諸国が口を挟む。
だが資本主義が行き詰まったアメリカとその同盟国も、この利権
を手放すことはできなかった。
利権を自分たちの仲間だけで独占するために中国やロシアをのけ
者にしたのだ。
243
異世界から彼らを締め出し、ついには軍事衝突に陥る。
お互いに核兵器を使うほどは狂ってなかったが、無難な着地点を
提示するほど利権は小さくなかった。そのためひたすら戦争は長期
化した。
そして朝鮮半島をめぐっての大戦争が発生、地形が変化するほど
の火力での戦争で韓国は崩壊。
己の力を超えた利権を持ってしまったがための悲劇であると言い
たい所だが、実際はいつものように米中両国の間をフラフラとした
挙げ句に滅ぼされたというのが真相である。
その韓国の態度に巻き込まれ米中両国は多大な被害を出す。
両国とも兵士が無駄死にし、退役軍人のPTSDの治療費で莫大
な金を払い、それでも莫大な利権のために戦いをやめることはでき
なかった。
そんな両国に対して被害者ヅラした韓国・北朝鮮人は各地で難民
となり、売春と覚醒剤をはじめとするありとあらゆる犯罪に手を染
め両大国を内部から腐敗させていった。
﹁こうして人類は停滞と膠着状態に入ります。新しい技術の進歩は
ありますが現代ほどのスピードではなくなります﹂
最終的に北朝鮮が水爆を開発するが、その頃にはすでに核兵器は
陳腐化していた。
だが滅ぼすには十分な理由だった。
未来の兵器で焼き尽くされた北朝鮮も崩壊する。
そしてそれを見計らったようにゲートは突如として消えた。
こうして誰も得せず死人の山を築いただけで戦争は終わった。
﹁げ、ゲートを作ったのは悪魔なのか⋮⋮﹂
山岡がつぶやいた。
244
﹁さあ? 少なくとも友好的なだけではないようです﹂
道彦はわざとそう言った。
本当はわかっていた。
ゲートはただそこにあるだけだ。
神のような存在が気まぐれに作った装置なのだ。
神は善意だったとは思うがそれに惑わされた人間は破滅する。
﹁⋮⋮だから⋮⋮閉じるんだね﹂
﹁ええ。こんなものは人類の手には余ります。閉じましょう。山岡
さん。全ての国に撤収命令を出させてください!﹂
﹁あ、ああ! わかった﹂
山岡が兵士たちのそれぞれのリーダーに話をし撤退を促す。
そんな混乱の中、道彦はエレインに手を差し出した。
﹁ありがとう。君のおかげで命を拾った﹂
呼び出したことは不問にした。
本当に道彦は勇者だったのだろうか?
それはわからない。
二人には恋愛感情はない。
だがカメラマンとリポーター、仕事仲間としての友情のようなも
のが芽生えていた。
﹁道彦様⋮⋮﹂
245
﹁はい、スマホ。もうなるべく勇者を呼び出さないでくれ。今回の
件でこっちの世界もめちゃくちゃだよ﹂
そう言って道彦は笑う。
﹁はい。⋮⋮もう最後にすると伝承に書き残します﹂
﹁これでお別れだね﹂
﹁⋮⋮はい﹂
エレインは道彦の手を取る。
二人は握手をする。
今生の別れになることを道彦は知っていた。
ゲートの閉門。それは勇者もしくは勇者の巫女がこの世界に残っ
て閉じなければならないのだ。
﹁鈴木君! 撤退命令を出した! 村民も受け入れ準備も完了した
! 帰るぞ!﹂
﹁先に行ってください﹂
道彦は兵士たちの後ろをとぼとぼと歩く。
数時間をかけてエレインと話を続け語り合った。
そして光の前に辿り着く。
最後に残ったのは道彦とエレインと二人だけだった。
﹁じゃあ元気で﹂
﹁はい。道彦様も﹂
246
道彦は手を振った。
エレインも手を振る。
道彦は光の中に入った。
◇
5年後。
﹁被告人を懲役15年とする﹂
裁判官が判決を読み上げた。
そこは無機質な法廷。
弁護士が悔し涙を流す。
5年も争った。だが負けた。
道彦の懲役が確定したのだ。
道彦は数件の殺人、大麻取締法違反、私戦陰謀罪などの容疑で逮
捕された。
ほとんどの罪では起訴されなかったがキムをテレビの前で殺した
ことだけは許されなかった。
エルフの難民たちは道彦に感謝状を送ったがそれは効果がなかっ
た。
道彦がカメラの前でキムを殺したことにより、世論は手の平を返
したのだ。
勢いづいた野党は道彦を罰することを要求。
芥川ですら道彦を擁護することができない空気になってしまった。
戦争を止めたというのに道彦は公の敵として扱われた。
異世界に行ったのは自己責任。
あれほど海外でテロリストに捕まった人間を擁護していた野党は
自己責任論で道彦を責め立てた。
247
拉致問題解決の邪魔をしたその手腕を遺憾なく発揮したのである。
パコ大統領や兵士たちはもっと悲惨だった。
彼らは国家反逆罪で起訴され、ほとんどのものが銃殺刑に処され
た。
パコ大統領は裁判所の前で銃撃され命を散らした。口封じである。
韓国国内では魔女狩りが蔓延し、多くの国民が戦争賛成派の右翼
主義者として処刑された。
国連の事務総長をやっていた韓国人政治家も﹁なぜ止めなかった﹂
と理不尽な言いがかりをつけられ、韓国人による自爆テロでこれま
た葬られた。
その点、遠藤はうまく立ち回った。
道彦を擁護しつつ、暴力はいけないというスタンスを維持し非難
されることはなかった。
だが日本にはいられなくなり、海外の大学へ進学した。
村人は日本に適応した。
もともと日本語と同じ言語を話すし、彼らは真面目だった。
彼らは道彦の弁護を支えてくれた。
署名活動をし、感謝状を贈り、記者会見も開いた。
だが日本のメディアはそれをまったく報道しなかった。
そしてその成果が実り、道彦は無期懲役になった。
日本の司法は死んだ。
この日、道彦が死刑にならなかったことをメディアは一斉に非難
した。
もうこの空気を覆すことは誰にもできなかった。
◇
さらに10数年後。
248
道彦の仮釈放が決まった。
刑務所の壁の外に10年数年ぶりに出ることになったのだ。
あれから日本は変わってしまった。
道彦がキムを殺したせいで被害者ぶるのが得意な千年被害者たち
の工作により世論は逆転、韓国人たちは日本を支配することに成功
してしまった。
音楽番組の半分をワンパターンなフレーズのKポップを流さなく
てはならなくなったし、タレントは韓国人ばかりになった。
全てのテレビは繰り返し震災と原爆を揶揄する番組を報道し、原
爆は神の恩寵というのを表明しても誰も抗議の声を上げなくなった。
ニュース番組は韓国の賞賛にあふれ、日本人は未来永劫謝罪する
のが社会常識になった。
赤日の﹁日本人は子々孫々、未来永劫謝罪しなければならないけ
ど、在日の子どもたちにはあらゆる罪はないよ﹂という人種差別と
しか思えないメッセージに疑問を挟む余地はなくなった。※
︵※http://www.asahi.com/paper/e
ditorial.html?iref=editorial︳n
ews︳two︶
優生保護法が復活し、遺伝的に劣等とされた日本人の堕胎が奨励
され日本人は絶滅寸前に追い込まれていた。
それどころか日本人は殺してもいいという赤日と冥日のキャンペ
ーンは日本に蔓延し、日本人への殺人は10倍以上に増えたが起訴
件数は半分以下になった。
異論を挟む人間は大阪市によって警察権を与えられた革命SSに
よって逮捕され強制収容所送りにされた。
そこは劣悪な環境で、強制労働とコレラと結核の蔓延で大勢が死
んだ。
さらには増えすぎた受刑者を減らすための策として大勢がガス室
249
送りにされ処刑された。
それを見て韓国人は﹁日本猿は放射能で死んでください﹂と喜ん
だ。
全ての日本の技術は1000年被害者の国に奪い取られ、世界遺
産は彼らに汚損された。※
︵※http://u1sokuhou.ldblog.jp/a
rchives/50477373.html︶
すでに日本人は彼らの奴隷に成り下がってしまったのだ。
こうして崩壊寸前の祖国を見限って日本を支配した彼らは無邪気
に日本人への虐殺を繰り返した。
ゲラゲラ笑いながら日本人を抹殺しようとするが、そんな彼らに
反対するものはいなかった。
いや反対するものは強制収容所送りになって帰ってこなかった。
日本中に革命の象徴として有川の銅像が建ち、野川の平等を得る
ための戦いと死が教科書に掲載された。
韓国への土下座旅行が修学旅行として制度化され、いつしか誰も
それを疑問に思わなくなった。
街を歩いていたら﹁チョッパリ死ね﹂とチンピラにいきなり殴ら
れるのはいつしか日常の光景になっていた。
志ある日本人は地下に潜り抵抗を続けた。
そんな日本人たちは道彦を日本滅亡の主犯と罵るものと、抵抗の
象徴として神格化するものに分れたのだ。
仮釈放の日が来た。
道彦は刑務所の門を出る。
家族はいない。
すでに道彦の家族は10年前にガス室送りになっていた。
外にはエルフたちや地下に潜った日本人革命家が集まっている。
250
彼らは道彦を車に乗せた。
男は車内で道彦に日本刀と拳銃、手榴弾を渡す。
道彦はそれを受け取る。
この日本を破滅に追い込んだやつを殺す。
それが道彦にできる日本への最後のご奉公だった。
﹁今日は死ぬにはいい日だ﹂
道彦はつぶやいた。
道彦はこの人生の中で何度も思い出すことがある。
キムを殺したことだ。
殺す必要はなかった。
引き渡すべきだった。
だがあのときは頭に血が上っていた。
年をとった今ではよくわかる。
だが⋮⋮
本当にあのときの判断は自分のものだったのだろうか?
もしかすると門の都合のいいように踊らされたのではないだろう
か?
もしかすると門は神の作ったものではなく悪魔の作ったものでは
ないだろうか?
あのとき殺意に抵抗していれば⋮⋮
あのとき殺意に抵抗してさえいれば日本はめちゃくちゃにならな
かったのではないだろうか?
いや⋮⋮それは結果論だ。
自分の起こしたことの結果には責任を持たなければならない。
道彦は窓から外を見た。
桜が咲いていた。
251
これが最後の桜だ。
道彦は桜をまぶたに焼き付けた。
BAD END
252
BAD END︵後書き︶
BAD END です。
次回からはノーマルエンドとベストエンドを実施します。
10万文字⋮⋮行くのかが問題です⋮⋮カクヨム的に。
ベストエンドはかなり長いので大丈夫だとは思うんですが。
今回は韓国は負け、北朝鮮も負け、でも国内の千年被害者は大勝利
です。
わざと酷いエンディングにしました。
どうがんばってもあそこまでは酷くならないと思います。
でも報道ステーションとかが言ってた右派が政権を取った未来をパ
ロディにするためにあそこまで酷くしました。
歴史的には虐殺をするのは左派の方が多いです。
国の体制を変えますから。
本当はキム豚殺した方が面白いんですが、もっと悲惨な目に遭わす
ために生き残らせます。
お返事コーナー
>Kの国はイメージとちょっと違うな
まさにその通りです。
Kの国というよりメディアの作った嘘を誇張するために無茶な行動
をとらせています。
つまりメディアの言っている事はこうなんですよと。
あまりにもメディアの言うことは単純化されすぎているので、善悪
253
を入れ替えるだけでこの通り、違和感バリバリなわけです。
議会制政治ですから悪の帝国っていう脚色は無理がありますし、た
だ悲惨だよというのも無理があるなあと思います。
例えば、ブッシュ時代のアメリカを見るとなんでああなったと思う
ほど酷いですが、ああいうのが別の国でも起こったんだなあと推測
できるわけです。
どんな大国でも常に合理的に動けるわけではありません。
かと言って常に間抜けなわけではありません。
有り得ないほどの慰安婦に遊び半分に畑を焼き尽くしたりと無駄な
破壊を繰り返す。北斗の拳のモヒカンより悪い連中。
ねえよと思うのです。
でも彼らの建国神話ではそういう設定です。
一度物理的に可能かどうか考えて頂きたいものです。
資料
日本国刑法第3条
第3条
この法律は、日本国外において次に掲げる罪を犯した日本国民に適
用する。
第108条︵現住建造物等放火︶及び第109条第1項︵非現住建
造物等放火︶の罪、これらの規定の例により処断すべき罪並びにこ
れらの罪の未遂罪
第119条︵現住建造物等浸害︶の罪
第159条から第161条まで︵私文書偽造等、虚偽診断書等作成、
偽造私文書等行使︶及び前条第五号に規定する電磁的記録以外の電
磁的記録に係る第161条の2の罪
第167条︵私印偽造及び不正使用等︶の罪及び同条第2項の罪の
254
未遂罪
第176条から第179条まで︵強制わいせつ、強姦、準強制わい
せつ及び準強姦、集団強姦等、未遂罪︶、第181条︵強制わいせ
つ等致死傷︶及び第184条︵重婚︶の罪
第199条︵殺人︶の罪及びその未遂罪
第204条︵傷害︶及び第205条︵傷害致死︶の罪
第214条から第216条まで︵業務上堕胎及び同致死傷、不同意
堕胎、不同意堕胎致死傷︶の罪
第218条︵保護責任者遺棄等︶の罪及び同条の罪に係る第219
条︵遺棄等致死傷︶の罪
第220条︵逮捕及び監禁︶及び第221条︵逮捕等致死傷︶の罪
第224条から第228条まで︵未成年者略取及び誘拐、営利目的
等略取及び誘拐、身の代金目的略取等、所在国外移送目的略取及び
誘拐、人身売買、被略取者等所在国外移送、被略取者引渡し等、未
遂罪︶の罪
第230条︵名誉毀損︶の罪
第235条から第236条まで︵窃盗、不動産侵奪、強盗︶、第2
38条から第241条まで︵事後強盗、昏酔強盗、強盗致死傷、強
盗強姦及び同致死︶及び第243条︵未遂罪︶の罪
第246条から第250条まで︵詐欺、電子計算機使用詐欺、背任、
準詐欺、恐喝、未遂罪︶の罪
第253条︵業務上横領︶の罪
第256条第2項︵盗品譲受け等︶の罪
255
ノーマル・ベストエンディング 共通部分1
◇ノーマル・ベストエンディング 共通部分1
殺す。殺してやる。
道彦は明確な殺意を持って拳銃の引き金を引こうとしていた。
この男は異世界を侵略した悪魔だ。
この男は癌だ。この男は調和を乱す癌細胞なのだ。
︱︱ちょっと待て⋮⋮癌細胞⋮⋮僕はどこの視点からそう思って
いる。自分自身かそれとも⋮⋮神の視点なのか?
道彦の手が震えた。
これは本当に自分の意思なのか?
なぜキムを殺したいと思ったのだ?
憎い。そうだ憎い。
こいつのせいで村人が大勢死んだ。
子どもも大人もみんな苦しんで死んだ。
だが自分は兵士を殺したときどうした?
生き残った兵士は現地で裁判にかけたはずだ。
自分が一時の感情でキムを殺すのはおかしいことだ。
キムを殺していいのは被害に遭ったこの世界の住民だけだ。
道彦自身にはキムを裁く権利はない。
道彦の感情ではない部分は冷静な答えを出した。
では⋮⋮誰がキムを殺そうとしたのだろうか?
道彦か? それとも⋮⋮
﹁キムを殺すことを望んだのは門なのか⋮⋮﹂
256
この抗いがたい殺意は門の思惑なのだ。
それに気づいたとき道彦の殺意は一気に冷めた。
そうだ。韓国の法で裁けばいい。
大統領はこちらにある。
大義名分はできている。
処刑スタイルで殺すなんて世論がひっくり返りかねない愚かな手
だ。
キムに全ての罪を押しつければ四方丸く収まるのだ。
そのためには口封じなどもってのほかだ。
むしろ全てをぶちまけて醜態を晒してもらわなければならない。
それに万が一、裁判がキムの有利に運んだとしても、それは道彦
や日本には有利に働く。
財閥の力で裁判に圧力をかければキムへの悪というイメージは加
速するからだ。
日本に逃げた村人たちもキムが生きている間は哀れな被害者とい
う政治カードとしてとてつもない価値を生み出すだろう。
今後日本で生きる助けになるはずだ。
殺すな。絶対に殺すな。
それなのに殺そうとするなんて。
これは自己犠牲でもなんでもない。ただの暴走だ。
道彦は拳銃を捨てようと手の力を抜く。
だが道彦の指は意思に反して力をこめようとする。
操られるな! 自分の意思は自分だけのものだ!
ピクピクと指が動く。
道彦はもう片方の手で指をむりやり引きはがす。
拳銃が床に落ちた。
パコが安堵のため息をついた。
キムががばりと起き上がる。
257
そう、キムはこの時を待っていたのだ。
キムは拳銃をつかみ道彦に向ける。
だが甘かった。
道彦はキムの拳銃をつかむと自らの体を射線から外す。
そしてキムの顔面を空いた手で何度も殴りつける。
何度か殴りつけキムの手の力が弱まると拳銃の引き金にかかった
人差し指をむりやり引っこ抜き、関節と反対側に曲げた。
﹁ぎゃああああああッ!﹂
悲鳴など気にしない。
次に道彦はキムをナイフで刺したその横っ腹をブーツのつま先で
蹴っ飛ばした。
今度のは悲鳴にもならない。
﹁ああああん⋮⋮えぶ⋮⋮﹂
武道の技など知らない道彦は、持っているキムの指をどうするか
迷ったが、とりあえず捻った。
まるで武道の達人がやったようにキムがだらしなくごろんとひっ
くり返った。
道彦はまだ動けそうな気がしたのでだめ押しにキムの脇腹をもう
一発蹴る。今度は体重をかけて踵をぶつける。
キムは小さく悲鳴を上げるとひっくひっくとえずいた。
おそらく戦意は喪失しただろう。
﹁エレイン、行こう。キムはもう動けない﹂
道彦は勇者の墓を出ようと思った。
大統領は確保した。
258
キムも後から来る兵士に引き渡してしまえばいい。
あとは堂々と済州島につながる門から帰ればいい。
勇者の墓はなんとか入り口を閉じる方法を考えよう。
勇者の墓はその存在自体が有害だ。
なあに勇者の墓でのやりとりは全て中継されている。
韓国も北朝鮮も自分たちが滅びると思い込むはずだ。
他の国はそこに付け込み、滅ぼしもせず生かしもせず中途半端に
生かす道を模索するだろう。
確実に未来は変わるに違いない。
それでいい。上出来だ。
未来を見るのは破滅に直結している。
その証拠にキムは絶望的な未来を知ったせいで、異世界を侵略し
大勢の人を殺した。
常人には手に入れられない全てを持っていたキムが自ら破滅の道
を突き進んだのだ。
たとえ確定した未来だとしても、現在の決定に対して不確かなノ
イズをもたらすのであれば、それは有害な情報だと言えるだろう。
未来を知る技術があってもそれを受け入れて建設的方向に持って
いくだけの文化は生まれていない。
人類には過ぎた技術だ。だから道彦は泉に触らないことにした。
﹁エレイン。泉に触らないで勇者の墓を閉じる方法はある?﹂
﹁はい道彦様。本殿の外に黄泉国⋮⋮天界とも言われていますが道
彦様の世界に通じる穴が空いています。そこで帰還の儀式をすれば
勇者の墓は次の勇者様の降臨まで封印されます﹂
﹁わかった案内して﹂
259
﹁はい!﹂
道彦は大統領を連れて教会の外に出る。
﹁う、ううう。うう。﹂
うめき声がしていた。
教会の外には男たちが倒れていた。
キムの側近だろう。キムに置いていかれたようだ。
なぜか彼らはもがき苦しんでいた。
目から血を流し、口から泡を吐いている。
足を緩慢にじたばたさせ、ぜいぜいと浅い呼吸をしていた。
﹁どういうことだ⋮⋮?﹂
﹁勇者の墓には勇者と魔王、そのお仲間しか入れません。おそらく
魔王の仲間ではないと門に判断されたのでしょう﹂
道彦はどうしようか迷ったが、女性のエレインと怪我人である道
彦では連れて行くことはできない。
道彦が悩んでいると、大統領はキムの側近の手を取りオーバーア
クションで言った。
﹁医療班をよこすから、わかったな。大丈夫だ。君らはキムの被害
者だ。あのキムという売国奴にだまされていたんだ!﹂
側近は涙を流しながら力を振り絞って首を縦に振った。
道彦は韓国語はわからないが大統領のゲスな笑顔を見ればなにを
言ったかは理解できた。
道彦は大統領にイラッとしたがそれは顔に出さないようにしてい
260
た。
一緒にいるのは長くないだろう。
それにしても気にかかる⋮⋮
︱︱何かがおかしい。
道彦は違和感を持っていた。
ゲートは道彦の意思に介入した。
今度は側近を排除しようとしている。
ゲートには意思があるのだろうが、その目的がわからない。
しばし道彦は考える。
その姿は世界中に中継されていた。
キムとの戦いもその結果の制圧もなにもかも中継されていたが、
道彦が殺人を思いとどまりキムを生かしたことで道彦を悪者扱いす
る声はなかった。
パコ大統領もまるで最初から道彦の仲間だったかのように﹁自分
たちの民主主義側の勝利だ﹂とカメラに訴えかけていた。
﹁みなさん。ゲートにはなにか意思があり、今回の戦争はその意思
によって引き起こされた模様です﹂
道彦はカメラの前で断言した。
﹁世界中の皆さん! この韓国大統領であるパコも鈴木くんに同意
いたします! 全て我が国民には非はなく、全てはゲートと悪漢キ
ムによる国家反逆の大罪なのです!!!﹂
大統領はカメラをつかむと大声で演説をはじめた。
この時のドアップは様々にコラージュされて世界中で拡散される
ことになった。
261
ノーマル・ベストエンディング 共通部分1︵後書き︶
ちょっと裁判制度の間違いがあったので細かいところを習性いたし
ました。
⋮⋮と言うか刑期満了してるのに仮釈放になっていました。
感想お返事コーナー
>裁判
裁判は⋮⋮裁判官全体の考え方が周回遅れなんです。
なので新しい出来事とかには対応ができないケースが多いんです。
最高裁判例で有名な尊属殺人のケースとかですね。当時は国会が裁
判所を叩いて凄かったそうで⋮⋮
直近では痴呆症の徘徊老人がJRの電車とぶつかって死亡、遺族に
責任があるのかを問われたケースが思い浮かぶかと思います。
道彦の場合は少年審判ではなく、刑事裁判ですので起訴された時点
で99%負けます。詰んでます。
実際だったら戦地なので起訴は難しいと思うのですが、傭兵と違っ
て軍には所属してませんし、場所は︵むりやりな解釈だと︶韓国国
内、目立ってしまったということで物語としては起訴してみました。
︵小野田寛郎さんのケースではフィリピン政府は30件の殺人の免
責をして起訴しなかったそうです︶
特に道彦の場合は全てカメラの前での犯行ですので、法律を犯した
事実そのものは争いがないと思います。
争うとしたら戦地に拉致されて仕方がなかったから無罪か減刑して
よという線だと思いますが、そういうのが得意なのは圧倒的に左翼
262
系弁護士なので、左翼を敵に回してる道彦は詰んでいます。
今は強制起訴の制度があるので本当に起訴されるかも⋮⋮
>ここまで酷くなる?
なるかも。ならないかも。ですね。
憲法改正は無理ゲーの極みなのでまずないなと思います。
︵今の状況だと計算上では6年も圧倒的な支持率を保って衆院選と
参院選2回を大勝利しなければできません︶
憲法改正でも基本的人権は改正できないはずですし。
でも社会の価値観の変化って凄く怖いんです。
ある日突然、新しい罪が生まれたりしますから。
それを今、成そうと工作してるのが国連に乗り込んだあやしいNG
Oです。
彼らは嘘で社会を動かそうとしてます。
本当に怖いですよ。気がついたら文化大革命とか嫌ですね。
263
ノーマル・ベストエンディング 共通部分2
◇ノーマル・ベストエンディング 共通部分2
パコは何度も何度もカメラに向かってドアップで訴えかけた。
﹁我々自由と民主主義の側は鈴木道彦と共に戦っています!﹂
言葉さえ理解できていたら道彦はパコを殴っていただろう。
パコは帰国後の暗殺を避けようと手の平返しをしたのだ。
もちろんパコは政治家である。帰国したらキムの親戚の財閥を解
体し、一族全てを晒し者にして糾弾する側に立つつもりである。
韓国では石を投げつける側にさえ立てば英雄なのだ。
道彦は内心絞め殺したいと思いながらパコのするままにさせてい
た。
パコが醜態を晒せば晒すほど日本も道彦も有利になるのだ。
道彦が回廊に戻ると教会が神社へと変化していく。
道彦は確かめるつもりだった。
勇者秩父は、なぜあんな落書きを残したのだろうか?
それになぜ、秩父は勇者で水島は賢者なのだろうか?
そこに秘密があるではないだろうか?
道彦はエレインに質問をすることにした。
﹁エレイン。答えてくれ。秩父さんと水島さんは同僚なのかな? それともどちらかが上官なのかな?﹂
﹁上官と部下です﹂
264
思った通りだ。
ここで7割の謎が解けた。
﹁水島さんは帰ったんだよね?﹂
﹁はい。賢者水島様は黄泉国へとお帰りになりました﹂
やはりだ。
﹁どちらが上官⋮⋮いや水島さんが上官だね?﹂
﹁それは⋮⋮道彦様のご判断に影響を与えるため禁則になっており
ます﹂
それが答えだった。
道彦は理解した。
本来だったら上司である水島が勇者になるべきだ。
だが勇者は秩父なのだ。
残った秩父が勇者で、帰った水島が賢者なのだ。
考えられることは一つ。
残ったものを勇者と呼び、帰ったものを賢者と呼ぶのだ。
﹁わかった。ようやくわかった﹂
道彦は何をすべきかを理解した。
◇
道彦は黄泉、つまり元の世界へと続く穴を目指していた。
するとフラフラと多国籍軍の兵士たちが歩いてくるのが見えた。
265
正気を失ってまるでゾンビのようだった。
道彦はその中にアリア、フィーナ、それに遠藤を発見する。
道彦は遠藤の胸倉をつかむと容赦なくビンタを浴びせた。
﹁んぎゃ! なにしやがる⋮⋮って道彦⋮⋮あれ? ここはどこだ
?﹂
﹁遠藤、お前操られてたんだよ﹂
﹁⋮⋮誰に?﹂
﹁門に﹂
﹁なんで門が俺を操るんだよ!﹂
﹁たぶん⋮⋮間引きだと思う﹂
﹁間引き?﹂
﹁ああ⋮⋮推測だけど門は文明の発展を妨害してるんだ﹂
﹁どういうことだ?﹂
﹁韓国と同じだ。全ての困りごとの解決を外国というか異世界に委
ねてるんだ。自力で解決しなければ成長はない。だけど門は勇者を
呼ぶことで徹底的に成長の芽を摘んでいる。俺たちの世界にわざと
依存させているんだ﹂
﹁なぜその結論になった? おかしいだろ﹂
266
﹁遠藤⋮⋮この回廊には武器が置いてある。戦車から軍艦からミサ
イルまでだ⋮⋮未来の兵器もある﹂
﹁⋮⋮未来も﹂
﹁ああ。未来の兵器がある。門が本気になれば俺たちの世界を滅ぼ
せるんだ。でもしない。なぜか? それが問題だったんだ﹂
﹁世界を滅ぼせるけどしない?﹂
﹁ああ、しないんだ。そういう機能はないんだ。じゃあ門はなにを
させたいのか?﹂
﹁魔王を倒させたいんだろ?﹂
﹁勇者の機能はな。じゃあ魔王は⋮⋮?﹂
﹁魔王は⋮⋮魔王だろ?﹂
﹁違う。魔王にも役割がある﹂
﹁魔王の役割? お前なにを言ってるんだ?﹂
﹁ここからは完全に推測だ。韓国軍は王国を滅ぼして、村を焼き住
民を虐殺するために呼ばれたんだ。そのために非論理的で鬱屈が溜
まっていて、日本人相手だったら何をしてもいいという連中を呼ん
だんだ﹂
﹁なぜそんな無駄なことを⋮⋮﹂
267
﹁間引きだ。たぶん王国は文明を発展させる契機になるはずだった
んだ。村は偉人が現れる予定だったんじゃないかな?﹂
﹁⋮⋮どういうことだ?﹂
﹁この世界を作ったやつはユートピアを作ろうとしてたんだ﹂
﹁は?﹂
﹁武器を取り上げ、農業をさせ、破綻しそうになったら外部から脅
威を招いてリセットする。ゲームと同じだ。その装置が門だ。そし
て門と勇者を宗教化してエルフを支配しているのがこの世界だ﹂
﹁い、いや⋮⋮道彦⋮⋮それはさすがに飛躍が過ぎるんじゃ⋮⋮﹂
﹁アリア、フィーナ! それにエレイン! そうだよな!?﹂
三人娘は下を向いた。
道彦の言葉に思い当たる節があったのだろう。
﹁い、いや、それでも私たちは幸せで⋮⋮﹂
アリアは否定する。
﹁だろうな。僕たちがとやかく言うことじゃない。でも僕たち異世
界人にも情報をくれるべきだ﹂
﹁そ、それは決まりでは⋮⋮﹂
﹁今は考えなくていい。僕たちは自分たちの害にならない限りにお
268
いて文化の多様性を認めているから、そういう考えもありだ。それ
にもうこのやりとりは放送されているんだ﹂
道彦は断言した。
おそらくここまでやったら道彦の存在は門にとって有害だろう。
邪魔をしてくるはずだ。
これからは門との心理戦なのだ。
そしてそれは現実になるのだ。
◇
キムは目を覚ました。
途中であまりの痛みに気絶したようだ。
脇腹の感覚はすでにない。
だが死なないのという確信があった。
あの日本人、鈴木は殺すことなく自分を行動不能に至らしめたの
だ。
運のいい男だ。
なぜ神は韓国人にばかり試練をもたらすのだ。
どうして日本人だけが優遇されるのだ。
許せない⋮⋮
日本人だけは許さない。
そして朦朧とする意識の中、キムの頭に声が響いた。
﹁お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪わ
れた。お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪われた⋮⋮﹂
呪い?
どういう意味だ?
韓国人は常に呪われている。
269
日本が近くにいる。
ただそれだけで呪われているのだ。
﹁お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪わ
れた。お前は呪われた。お前は呪われた。お前は呪われた⋮⋮﹂
うるさい黙れ。
そんなことはわかってる。
神など死んでしまえ!
そう毒づいた瞬間、キムの体が痛くなった。
それは焼けるような痛みだった。
まるで熱で皮膚が溶けていくようだった。
﹁痛い! 痛い! 痛い! 痛い!﹂
ナイフで刺されたことだけでも人生の中で最大級の痛みだった。
徴兵されたときだってこんなに痛い思いはしなかった。
なぜだ!?
なぜ自分だけがこんな思いをしなければならないのだ!
苦しみはさらに加速した。
本当に皮膚が溶け、次に歯が抜ける。
そして溶けた皮膚の下から新たな皮膚が現れ、抜けた歯の歯茎か
ら牙が生えてきた。
﹁どうして? どうして? どうして俺ばかりが!!!﹂
キムの心の叫びは間違っていた。
この時、同じ思いをしていたのはキムだけではなかった。
異世界に侵略した韓国軍の兵士、その全員がキムと同じ状態に陥
ったのだ。
270
ノーマル・ベストエンディング 共通部分2︵後書き︶
今回は韓国ではなく、共産主義の影響を受けたユートピアを出しま
した。
世界各地にこういったユートピアを目指す文明全否定の団体が存在
するらしいです。恐ろしいものです。
さて都知事の計画が波紋を呼んでいるそうですね。
ああいうのはどちらのためにもならないので、韓国側からも非難す
べきだと思います。
桝添さんが追い込んでいるようにしか⋮⋮
学生時代に教師にえこひいきされすぎて孤立する子どもというか。
教師は善意なんですけどその子が成長をする機会を奪ってしまって、
しかも孤立を招くというドSでは考えつかないほどの残酷な手です。
こういった行政などのフェアじゃない扱いが嫌われている原因なの
に。
それと明日は仕事の関係で投稿できないかもしれません。
物語はあと数話、10万字くらいで終わる予定です。
271
ノーマル・ベストエンディング 共通部分3
◇ノーマル・ベストエンディング 共通部分3
道彦たちは兵士たちを一発ずつ殴って正気にさせた。
正気になった兵たちも面白がって正気を失った兵を殴りつける。
これには道彦や遠藤ですら薄笑いだった。
戦争のせいか、それとも異世界になにかの原因があるのか、道彦
たちは暴力的になっていた。
道彦は大統領を引き渡す。
道彦とエレインは安堵のため息をついた。
正直言って大統領の世話はもううんざりだったのだ。
大統領を引き渡すと道彦たちは別の兵士にキムの居場所を伝える。
数人の兵士が知識の泉へと急いだ。
道彦たちのやるべき事は終わった。
後は帰る儀式をするだけだった。
道彦は息を吐いて脱力した。
あとは兵士たちがなんとかするだろう。
これで終わりなのだ。
だがそんな甘い考えが通じるはずがない。
﹁ぎゃああああああああああッ!﹂
知識の泉のある建物から悲鳴がした。
発砲音。手榴弾の破裂する音までする。
﹁なにがあった!﹂
272
山岡が怒鳴った。
声にいくらか遅れてぴしゃりと音がした。
数百メートルも離れている道彦たちの下へなにかが放物線を描い
て飛んでくる。
ごとりと音がしてなにかが床に落ち、ゴロゴロと転がった。
それには目と鼻と口があった。
それは兵士の頭だった。
その顔は恐怖に歪んでいた。
﹁ひいいいいいッ!﹂
兵士の一人が叫んだ。
遠藤も釣られて﹁ひいッ!﹂と変な声を出した。
ここ数日で死体をさんざん見てきた道彦はなんとか声を飲み込ん
だ。
﹁チョッパリイイイイイイイ!﹂
なんとも形容しがたい雄叫びを上げながら、何者かが道彦たちの
方へ走ってきていた。
人間ではない。それは化け物だった。
﹁コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス﹂
化け物は肥大した頭部からよだれを垂らしながら呪詛を吐いた。
頭部に比べてバランスが悪い小さな脚でヨタヨタとしながら道彦
たちの方へ異常なスピードで迫ってくる。
﹁撃てー!!!﹂
273
誰が言ったのかその声を境に兵士たちが一斉射撃を開始する。
化け物の体に穴が空き、体液が飛び散る。
その体液を浴びた回廊の床からじゅうという音がし、体液を浴び
た部分が腐食する。
﹁あの体液は毒だ! 浴びるな!﹂
その言葉に全員が息を呑んだ。
はじめてファンタジーっぽい生き物が現れた。
ほぼ全員がモンスターと聞くとJRPGのような敵を想像してい
た。
だが実際はモダンホラーの悪役のような醜悪な生き物だった。
兵士がグレネードを投げた。
数秒経ってから爆発する。
グレネードは化け物の足下で爆発し、腐食する体液がまき散らさ
れる。
﹁動きは止まったか!?﹂
だが化け物の脚は体液をばらまくと一瞬で傷が癒える。
いや癒えたのではない。無秩序に肉が、細胞が増殖し盛り上がっ
たのだ。
﹁ああああああああ、スズキ、コロスコロスコロス﹂
化け物が悲鳴を上げる。
﹁癌細胞だ!﹂
274
道彦が叫んだ。
﹁あの化け物は全身が癌細胞みたいなものなんだ!﹂
兵士たちは自分たちが戦っているのが本物の化け物だと理解した。
﹁支援火器で潰すぞ!﹂
山岡の声がした。
銃器に詳しくない道彦から見て、比較的大きな銃が発射され、支
援火器での弾幕、面攻撃が化け物を襲う。
穴だらけになった化け物が悲鳴を上げた。
脚が穴だらけになり化け物が倒れた。
そこに数発が化け物の頭に命中し肥大した頭がぐちゃりと潰れた。
﹁ああああああああああ! オレノオレノキオクガアアアアアアア
アア!﹂
化け物が悲鳴を上げた。
﹁キムだ⋮⋮﹂
道彦がつぶやいた。
﹁なにがです?﹂
エレインは撮影をしながら聞いた。
﹁あの化け物はキムだ。ゲートが僕たちの邪魔をするために本当の
魔王にしちまったんだよ!﹂
275
道彦は吐き捨てた。
道彦の胸は嫌悪感でいっぱいだった。
ゲートにもキムにもそれらを作った自称神にもだ。
化け物は無秩序に肉を増やすと、すぐに起き上がる。
﹁ああああああああああああああああ!﹂
もう一度グレネードが投げられ爆発する。
爆発が直撃し化け物の脚がちぎれた。
ちぎれた脚が爆発し、辺り一面が腐食した。
﹁ああああああああああああああああ!﹂
肉が盛り上がりちぎれた脚が生えてくる。
長さが合わないためヨタヨタとしたその揺れが大きくなる。
﹁コロスコロスコロス⋮⋮﹂
﹁くそ! 止まらない! 全員退避!﹂
兵士たちは銃を撃ちながら下がる。
しんがり
それを見た化け物が走る勢いを増す。
殿を勤めた兵士が追いつかれる。
﹁うわああああああああああああああ!﹂
化け物と兵士が叫んだ。
次の瞬間、化け物が破裂した。
化け物の肉が弾け飛び、噴出する体液に兵士は巻き込まれた。
276
兵士が一瞬でドロドロの液体に変わり、回廊の壁が崩れる。
化け物は無秩序に肉を盛り上げまた道彦たちに向かって進撃を開
始した。
この時、道彦たちは知らなかった。
済州島に繋がる門も地獄絵図になっていたのだ。
門の外に出ようとする化け物へと変貌した韓国軍兵士たち。
門の外の兵士たちは元同胞に容赦なく榴弾を撃ち込む。
ちぎれ、潰れ、焼けても⋮⋮全身をバラバラにされてもなお化け
物は突き進む。
最新兵器でもこの単純な歩みを止めることができなかった。
﹁門より外に出すな! 死んでも止めろぉッ!﹂
1000年の奴隷生活。
それがその場にいた韓国人全員の頭を掠めていた。
意地でも、いやどんな犠牲を払おうとも外に出してはならない。
彼らは必死に戦うしかなかった。
277
ノーマル・ベストエンディング 共通部分3︵後書き︶
すいません風邪ひきました。
あと3話くらいで終わる予定です。
278
選択肢 2
前戦の兵士が死にものぐるいで戦う中、前戦の隊長は⋮⋮
誰よりも早く逃げていた。
主にアメリカ軍などでは部下を見殺しにした責任者は出世できな
い。
卑怯で尊敬できない行動だからだ。
だが韓国ではそうでもない。
南スーダンでのPKO活動中に弾薬が足りなくなり、韓国の要請
で自衛隊が1万発の銃弾を提供したが韓国はそれに対して遺憾の意
を表明したと韓国の新聞は伝えている。
︵※http://www.sankei.com/world/
news/131225/wor1312250001−n1.h
tml︶
つまり積極的に見殺しにしろという意味だ。
これには彼らと親しい日本国内の左側の勢力も同じことを言って
いる。
︵※http://www5.sdp.or.jp/commen
t/2013/12/24/%E5%8D%97%E3%82%B
9%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%B3%E
F%BD%90%EF%BD%8B%EF%BD%8F%E6%B
4%BE%E9%81%A3%E9%83%A8%E9%9A%8
A%E3%81%AE%E5%BC%BE%E8%96%AC%E
279
8%AD%B2%E6%B8%A1%E3%81%AB%E6%8
A%97%E8%AD%B0%E3%81%99%E3%82%8
B/︶
︵※http://www.seihokyo.jp/seime
i/2013/131227−gichou2.html︶
つまり彼国では見殺しが社会通念上当たり前の行為なのである。
兵士など上級国民の駒でしかなく、日本に弾薬を要求するくらい
なら全滅しろ。
これが彼らの社会常識である。
そうでなければ日本に遺憾の意を伝えるわけがないし、新聞もそ
んなことをした政府を非難するだろう。
日本人にはまったく理解できない考え方だが、きっとこれは儒教
的に正しいのだろう。
文化の違いによる違和感は珍しくない。
我々には彼らの文化を理解する義務はない。
同じように彼らの文化に口出す権利はない。
ただ日本へ剥いた牙に対してのみ事実を積み重ねて抗議をすれば
いい。
彼らの国内問題はそういう社会構造なのだとあきらめるほかはな
い。
この隊長も当たり前の行動をしただけだった。
上役のために大勢の兵士が死ぬ。
たとえ日本人が理解できなくともそれは誇らしいことなのだ。
だが異世界は、門はそれを許さなかった。
隊長の体が膨らむ。
﹁ああああああああああああ!﹂
280
全身がみるみるうちに水死体のようにぶよぶよになる。
目は飛び出て水泡眼のようになり、思考は途切れ途切れになった。
これが指揮官一人なら問題はなかった。
この時逃げ出した隊長は多数に及んでいたのだ。
それらが後ろから兵士を襲う。
不死の化け物は兵士の頭にかじりつき、毒の体液をまき散らす。
恐怖で逃げた兵士が今度は怪物に変わり山のように犠牲者を増や
していった。
素人である道彦に出し抜かれた各国のジャーナリストたちは命を
かけてその地獄ような有様を撮影していた。
学生に手柄をとられたという事実が彼らの恐怖を麻痺させ、あり
えないほど近距離まで近づいていたのだ。
その生々しい写真や映像は後に様々なところで使われることにな
る。
そしてさらに近いところにいた集団がいた。
赤日と冥日のテレビクルーと記者たちである。
﹁な、なぜだ! 世界最優秀民族様の崇高なる軍に守られていたは
ずなのに!﹂
すでに異世界騒動での記者やテレビクルーの累計殉職者は10名
を超えていた。
今回は薄汚いあのネトウヨ高校生に勝つために生放送までしてい
るというのに!
なぜだ! なぜ! 絶対的正義である赤日の社員がこんな目に遭
わなければならない!
定年後は韓国の大学の教授になって日本の悪口を言いふらすつも
りだったのに!
281
﹁クソ! こんな重いカメラは邪魔だ!﹂
生放送中なのにカメラマンがカメラを放り投げた。
﹁バカな視聴者に付き合って死ねるかよ!﹂
放り投げられたカメラがカメラマンの声を拾った。
﹁キャー! 成田さん! 体が、体が大きく! 来ないで! やめ
て! 来ないでよ!!!﹂
女子アナの悲鳴がした。
﹁肉、肉、肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉肉!!!﹂
悲鳴、叫び声、それは最初こそ大きな声だったが次第に小さな声
になる。
﹁やめて! 離して、離してよう⋮⋮﹂
悲鳴は懇願に変わった。
そしてカメラに血しぶきがかかり、声はやんだ。
現場には夜に使うはずだった覚醒剤だけが残された。
◇
道彦は考えていた。
どうすればあの怪物を止められる。
この場合は止める方法そのものを考えるのではない。
どうやったら門が困るのかを考えるべきだ。
282
道彦は走りながら周囲をうかがった。
未来の飛行機が見えた。
﹁山岡さん! あれは使えますか!?﹂
道彦は山岡の上着を引っ張って必死に飛行機へ向かって指をさす。
﹁そ、そうか! ここにある武器を使えば⋮⋮﹂
山岡は近くにいた金髪の男に英語で話しかける。
男とその部下は飛行機へ全速力で走る。
﹁足止めするぞ!﹂
山岡たちは再びキムへ総攻撃をかける。
﹁手足は狙うな! 頭を狙え! 脳みそを再生するまでは動けなく
なる!﹂
キムの頭に弾丸が突き刺さるたびにキムは自分のことを忘れてい
った。
なぜ道彦を憎んでいるのか?
自分が何をしようとしているのか?
自分が何者なのか?
その全てを忘れていった。
﹁あああああああああああああ!﹂
ついには言葉まで忘れキムはわけがわからなくなりながら泣き叫
んだ。
283
痛い。痛い。痛い。痛い。
キムの体は耐えがたい苦痛を感じていた。
暴走する癌細胞はキムの神経を締め付けていた。
殺してくれ。
どうにか殺してくれ。
銃弾の雨あられを浴びながらキムは暴れていた。
﹁機関砲を発射する! 全員退避!﹂
山岡が叫び、道彦たちは死ぬ気で逃げた。
未来の戦闘機の攻撃が始まり回廊はめちゃくちゃに破壊されてい
く。
キムは一瞬でひき肉になり、毒の体液をまき散らしながら爆発し
た。
兵士たちから歓声が上がる。
だが道彦はそれでも考えていた。
門を出し抜く方法を。
その時、道彦の頭にプランが浮かんだ。
それは二つのプランだった。
一つは予定通り兵士たちを元の世界へ帰還させること。
そしてもう一つは知識の泉を破壊すること。
どちらを選びますか?
元の世界への帰還
284
知識の泉の破壊
285
ノーマルエンディングルート
◇元の世界への帰還 1
道彦は兵士たちを元の世界へ帰還させることを選んだ。
知識の泉の破壊は難しい。それに不死の化け物を外に出すわけに
は行かない。
外でなら穴を掘って埋めるとか、火山に沈めるとか、冷凍してし
まうとかの手が使えるかもしれない。
溶鉱炉に落とすとか、焼却炉で焼いて灰にしてしまうのもいい。
だが今は無理だ。
だとしたら帰還して元の世界とこの世界のリンクを断ってしまう
のが一番だ。
キムは再生に時間がかかっている。
今がチャンスなのだ。
﹁帰りますよ!﹂
道彦が言うと全員が出口へ向けて走った。
﹁山岡さん!﹂
﹁ああなんだい?﹂
﹁ゲート付近の兵も撤退させてください!﹂
﹁わかった!﹂
286
山岡は走りながらどこかへと連絡する。
エレインは兵士たちを撮影していた。
﹁エレイン! 僕を映してくれ!﹂
﹁はい!﹂
エレインが道彦にカメラを向ける。
﹁みなさん、いま僕たちは不死の怪物に追われています! これか
ら異世界との扉を切ります。これで皆さんの世界は救われます!﹂
道彦は走りながら説明した。
道彦が言うまでもなく怪物になったキムはすでに世界中にライブ
中継されていたし、ゲート付近で怪物に変化する兵士たちの惨状、
それに赤日や冥日の記者が頭から食べられたのも放送されていた。
すでに全世界が怯えていた。
ネットでは悲観論が大多数を占めていた。
榴弾を喰らいながらも瞬時に再生して襲ってくる化け物をどうや
って倒せばいい!
あれが門の外に出たらどうやって止めればいいのだと。
韓国がパニックになっていたこの時、すでにアメリカ、中国、ロ
シアは韓国への核攻撃を真剣に話し合っていた。
特にアメリカは科学者を呼んで不死の化け物を無力化する方法の
意見交換までしていたのだ。
道彦は走った。
世界は祈っていた。
救世主の到来を。
287
﹁うおおおおおおおおおおッ!!!﹂
道彦の後ろで肉塊になったキムが叫んだ。
復活したのか!
道彦は動揺しないように平静を装った。
兵士たちを見ると全員が同じだった。
キムを止める兵力は誰も持っていない。
捕まったら終わりなのを全員がわかっていた。
﹁はぁ、はぁ、怪物になったキム司令官が、はぁっ、復活しました﹂
道彦の息が切れる。
キムだった怪物の体が大きくなるのが見えた。
脳を破壊されたキムはとうとうアメーバのような単純な生き物に
なってしまった。
どんどんどんどん大きくなっていく。
無秩序に肉が増えていく。
肉は辺りを押しつぶし、それでもなお増殖するのをやめない。
道彦たちの後方にまで肉は迫る。
手榴弾も分隊支援兵器も効果はない。
肉の増殖には追いつかない。
回廊の柱が折れ屋根が落ちてくる。
その屋根を肉は取り込んでいく。
肉は全てを飲み込みながら壁を押しつぶす。
壁の破片が散った。
木片がエレインへ飛び、木片が背中に当ったエレインが転倒する。
﹁エレイン!﹂
道彦はエレインを助け起こし肩を貸した。
288
道彦にはエレインを抱き上げる余力はなかった。
それでも二人は走る。
﹁エレイン、カメラを捨てろ!﹂
﹁で、でも、神器を捨てるわけには⋮⋮﹂
﹁いいから捨てろ!﹂
この時になってようやく道彦は理解した。
友情ではない。
エレインとの絆は友情ではなかった。
エレインが死ぬくらいならカメラなんていらない。
エレインは道彦の顔を見るとなにも言わずにカメラを捨てた。
﹁道彦様⋮⋮﹂
﹁ようやくわかった。なぜエレインが僕の巫女なのか﹂
﹁はい⋮⋮﹂
もしゲートを作ったのが神だとしたら、道彦はこのくだらない運
命に逆らいたい。
だがエレインとの絆だけは否定することはできない。
たとえ神の作った運命であろうともそれだけは本物だった。
一方、遠藤も同じだった。
落ちてきた屋根の一部で床に穴が空き、そこを踏み抜いてしまっ
たのだ。
289
﹁くそッ! すねを切った!﹂
遠藤のすねに血がにじむ。
足首もひねったらしい。
痛みで走れない。
﹁おい! アンタ、道彦様の仲間だろ! 大丈夫か!?﹂
声をかけたのはアリアだった。
﹁足をくじいた。走れない!﹂
遠藤がそう言うとアリアは遠藤に肩を貸す。
﹁行くぞ!﹂
アリアに助けられた遠藤は気合で走る。
自分一人の命なら自己責任だ。
だがアリアの命への責任も発生したのだ。
痛みなど関係なかった。
﹁アンタ、痛みを我慢するなんて意外に男らしいな!﹂
﹁そうでもねえよ!﹂
﹁友達を助けに異世界にやってくるんだから男らしいよ!﹂
﹁ありがとよ!﹂
遠藤は照れていた。
290
遠藤は今までオタクと呼ばれることはあっても男らしいなどと言
われたことはなかった。
オタクというだけで人格を全否定される世界に身を置きすぎて、
褒め言葉に弱かったのだ。
﹁えへへへへへ﹂
アリアが笑った。
遠藤も笑い返す。
二人はヨタヨタしながらも小走りに走った。
そして一行の目の前に回廊の外が見えた。
﹁道彦様、あの奥に出口があります!﹂
エレインが指をさした。
道彦たちは出口を目指す。
だが道彦は知っていた。
自分たちの役目を。
291
ノーマルエンディングルート︵後書き︶
次回も一日休みます。
292
ノーマルエンディング
兵士たちは出口になだれ込む。
光が見えていようがなんだろうが構わない。
キムの肉に飲み込まれるよりはマシだった。
道彦は彼らをぼうっと見ていた。
﹁⋮⋮道彦様?﹂
道彦はエレインの手を握った。
﹁決めた﹂
﹁道彦様⋮⋮﹂
最後に残った遠藤と山岡が手を振っていた。
﹁道彦ぉーッ! 帰るぞーぉッ!﹂
今がその時だ。
道彦はもう一度深呼吸をした。
﹁遠藤。僕は帰らない﹂
道彦は断言した。
道彦はわかっていた。
何人も殺したのだ。
もう日本に道彦の戻る場所などない。
293
生き延びるまでの殺人だった。
だがそれを許すほど日本は甘くない。
社会的に抹殺されて終わりだろう。
家族のためにも道彦は消えるべきだ。
﹁道彦⋮⋮﹂
﹁俺が残ることを選択すればこの神殿は封印される。キムもこの神
殿に封印されるはずだ。俺はこの世界に勇者を呼ばないようにこの
世界に訴えかける。遠藤もこのことを世界に広めてくれ!﹂
﹁なんでだよ! 一緒に帰ろう!﹂
遠藤が怒鳴った。
これが永遠の別れになることをわかっていたのだ。
﹁ダメだ! キムを見ただろう。この世界は危険だ! 俺たちの世
界が滅ぼされる可能性がある。それにもう俺は日本にはいらないん
だ。なあ山岡さん!﹂
﹁そ、そんなことはない!﹂
﹁山岡さんは嘘つきだね。帰ったら僕は韓国に引き渡される。運が
良ければ刑務所行きだ。韓国べったりの政治家がそう決めたんだろ
?﹂
﹁⋮⋮知っていたのか﹂
﹁ええ。実況やってたら直接ダイレクトメッセージを送ってくれた
人が結構いたので﹂
294
﹁そうかい⋮⋮死ぬなよ!﹂
そう言うと山岡は遠藤の襟をつかむと出口に飛び込んだ。
キムの肉は出口までは追ってこなかった。
残ったのはエレインとフィーナ、アリアだった。
﹁さて、どう閉める?﹂
道彦は﹁自己犠牲﹂の意味を残ることだと理解していた。
﹁勇者である事を宣言されれば勇者の墓は閉ざされます﹂
﹁わかった。僕は勇者だ!﹂
勇者の墓が光る。
キムはそれを見ていた。
すでに単細胞生物のようにただただ自己増殖を繰り返すだけの生
き物と化してしまい知性はなかった。
かつてキムだったものは光に触れる。
すると瓶のようなもに押し込められていた。
その間も自己増殖を繰り返す。
だが瓶の大きさは小さかった。
大きくなりすぎて潰れていく。
それでも潰れた細胞を喰らいながらキムは増殖を繰り返した。
キムは勇者の墓で永遠に潰れ、永遠に己を喰らい続ける。
近くには同じ状態になった肉塊がいくつもあった。
韓国兵たちはみんな肉塊として閉じ込められ永遠に死と増殖を繰
り返す。
295
それが彼らの運命だった。
◇
それは一瞬だった。
道彦は気がついたらかつて勇者の墓があった場所にいた。
﹁終わったのか⋮⋮﹂
﹁はい全て終わりました﹂
道彦は神には勝てなかった。
だが引き分けには持ち込んだ。
人間の身としてはよくやった方だろう。
それはわかっている。
﹁勇者の墓は一つじゃないんだろ?﹂
一つのはずがない。
元の世界だけのはずがない。
支配を考える連中は常に執拗だ。
少しでも異論を唱えれば抹殺の対象なのだ。
旧ソ連の秘密警察やポルポト派、北朝鮮など歴史が証明している。
﹁はい。100以上あると言われています﹂
﹁だろうね⋮⋮残った勇者は余生はなにをして過ごすの?﹂
﹁ほとんどは神殿に奉られ、伴侶を得て御昇神されるまで自由に過
ごされます﹂
296
つまり隠居だ。
﹁ゲートの危険性を広めたい。手を貸してくれ﹂
﹁御意に﹂
道彦はまだ隠居する年ではない。
生きていくのには目的が必要だった。
﹁あ、あと、その⋮⋮﹂
﹁なに?﹂
﹁手を離してください⋮⋮﹂
﹁ぬおわ!﹂
エレインの顔は真っ赤だった。
アリアとフィーナはそれを見て笑っていた。
◇
遠藤はいつものように朝食を食べていた。
あの事件で遠藤は少し有名になったが、事件が終息すると世の中
はもっと大きな事件の話題で持ちきりになっていた。
﹁赤日新聞本社に家宅捜索が入りました! 今回は麻薬取締法です
が、捜査関係者によると破壊活動防止法の適用も視野に入れて捜査
が行われるということです﹂
297
あれからマスコミの信用は完全に失墜した。
調子に乗って殺人までも煽ったマスコミを世間は許さなかった。
公共放送までも逮捕者の山を築いた。
テレビというものは過去のものとなり、新聞も過去の遺物になっ
た。
日本人殺害を煽った議員によって国会の権威は地に墜ちた。
そのため日本人殺害に手を貸した議員が任期中だというのに議院
の許可によって次々と逮捕される。
マスコミは民主主義は死んだと訴えたが民意はマスコミの死を願
った。
残ったのは一次ソース、つまり事実だけを報道するメディアだけ
だった。
一見すると報道の自由が失われたように見えるが、死んだメディ
アがやっていたのはジャンク情報を与えて世論誘導をすることだけ
だった。
そんなものは報道の自由に必要はない。結果として日本の風通し
は確実に良くなっていた。
さらに日本政府は強制送還の理由になる暴力団関係者や犯罪歴の
ある人間を容赦なく送り返した。
もちろん彼らは裁判に訴えて日本にいる権利を主張した。
この裁判は10年裁判になるだろうと予想されている。
だが犯罪率は目に見えるように下がり景気は少し良くなった。
少しだけ明るい未来が見えてきた。
日本が良くなる一方で韓国は地獄だった。
パコは韓国の大統領として返り咲いた。
だがその実はアメリカの傀儡政権だった。
だが日本はアメリカの﹁韓国の尻ぬぐいをしろ﹂という要求には
応じず、韓国とは醤油の貸し借りもしない関係を望んだ。
298
国交を断絶したのだ。
アメリカは奪うものもなくひたすら差別されたと文句を言う彼の
地に心の底からうんざりしている。
数年で撤退するだろうとすら言われている。
最近では南北とも中国にすら相手にされていなくなった。
彼らの地獄はどこまでも続くのだ。
道彦は韓国から異世界と日本を救った。
異世界では英雄として扱われているだろう。
遠藤はそう結論づけた。
遠藤のゲートは危険であるという意見は世界には広まらなかった。
人間はそうそう学習しないのだろう。
次のゲートの開通も無いとは言えない。
だがそれでも人類はあきらめないだろう。
あの醜い韓国兵の姿もまた人類の姿なのだから。
遠藤はいつも考えている。
あのとき道彦についていったらどうなっただろうかと。
ノーマルエンディング
299
ノーマルエンディング︵後書き︶
ようやくネタバレできる!
実は日本が幸せになればなるほど韓国が不幸になる仕様です。
バッドエンドは﹁ディストピアエンド﹂です。
なんだかここ数日でリアル日本がこのルートに進んでいるようない
やな感じがします。
ヘイトスピーチ規制とかやるのはいいんですけど、やった結果があ
まりにも韓国人寄りで日本人の悪口はいいけど韓国人の悪口は許さ
ないだとしたら誰も得しないと思います。
だって韓国人や良心的日本人のふりしてありとあらゆるブログに因
縁つけて閉鎖させる活動をすればいいわけです。
一気に憎悪が拡散しますよ。
﹁テントウムシは韓国人を揶揄する隠語なので韓国人差別です﹂と
か言って小学生の書いたブログを閉鎖させたりとか煽る方法はいく
らでもあるわけです。
ありもしない差別を創り出してテレビ番組に難癖付けたりとか、芸
能人に圧力をかけたりとか。
ポケ○○や妖怪のやつにまで言いがかりをつけていけばいいわけで
す。
だってヘイトスピーチ自体が曖昧ですし、ちゃんとした法律ですか
らコンプライアンスとして強制力があるわけです。
強い法律なら逆手にとって悪用すればいいわけです。
小学生までが憎むようになったら終わりですね。
そもそも彼らがここまで嫌われたのもその手の人たちが暴れた結果
なわけです。
300
押さえつければいいと思っている時点で考えが甘い甘い。
情報戦がわかっていないわけです。
今回は﹁ビルマの竪琴エンド﹂です。
坊さんにはなりませんが異世界に残ります。
韓国は不幸になりますが、本来の姿に戻っただけです。
最後のベストエンディングですが、みなさんお待ちかねの﹁スター
シップトゥルーパーズエンド﹂です。
韓国が一番不幸になります。
﹁お楽しみ﹂にと言いたいのですが、明日というか今日も日付が変
わる前に帰宅できなそうな気がします。
301
最終話 トゥルーエンド
﹁破壊する﹂
道彦は言った。
﹁破壊?﹂
﹁知識の泉を破壊するんだ! こういう施設は外は強いけど中は弱
い。その証拠にキムの攻撃で壁や柱が壊れてる。知識の泉を破壊す
ればキムもどうにかなるはずだ!﹂
﹁いやでもどうやって?﹂
道彦は飛行機を指さす。
﹁あの飛行機からミサイルを本殿にぶち込む。山岡さん指示して!﹂
﹁ああ! わかった! 君たちは逃げて!﹂
山岡が指示を出し、道彦たちは死ぬ気で逃げる。
道彦はここ数日で嫌と言うほど思い知った。
撤退は全力で。さもなければ死ぬと。
走るたびに体が軋む。
傷を塞ぐ糸がぶちりと切れる。
銃で撃たれた傷から血がにじむ。
あまりの痛みに道彦の脳が自ら創り出した脳内麻薬でハイになる。
かつてキムだった肉塊の一つから爆発的に肉が増殖した。
肉が一気に回廊を埋め尽くし全てを飲み込んでいく。
302
未来の戦闘機は機関砲を撃ったが焼け石に水だった。
﹁クソ! 撃つぞ!﹂
もう距離や仲間の撤退など気にしている暇はなかった。
飛行機に乗り込んだ兵士は中のマニュアルを読みながら安全装置
を解除して肉の先にある本殿に向けてミサイルを発射しようとした。
まともに飛ぶわけがないがやらないよりはマシだろう。
兵士はミサイルを発射する。
パイロンからミサイルが切り離されミサイルが本殿に向かう。
幸運なことにミサイルは地面にこすってバウンドしながらも予定
通りの進路をたどった。
ミサイルは神殿を包んだキムの肉に突き刺さり、爆発した。
﹁やったぞ!﹂
遠藤が逃げながらガッツポーズをした。
するとガラガラと敷地全体が揺れる。
﹁な、なんじゃこりゃ!﹂
﹁遠藤、いいから逃げろ!﹂
ドーンという音がした。
道彦は知識の泉が破壊されたことを確信した。
次の瞬間、勇者の墓が崩壊していく。
壁はぼろぼろと崩れていき、床がめくり上がる。
そんな状況でもキムの肉は消えず増殖していた。
﹁道彦! お前キムは消えるって言ってたよな!﹂
303
﹁まあ、なんだ⋮⋮間違ってた﹂
﹁道彦ー!﹂
もはやキムを止めるものはなかった。
崩壊する勇者の墓を肉が埋め尽くしていく。
だが以前のように道彦たちを追ってくるだけの意思はもはや感じ
られない。
﹁道彦! 勇者の墓の出口から逃げるのか?﹂
﹁違う! 入り口から逃げるんだ! とにかく全て逆らうんだ!﹂
道彦たちは必死に入なってり口に向かう。
道彦たちはなんとか無事に勇者の墓を脱出した。
道彦たちが自動車に乗って逃げ出すとキムの肉は増殖し勇者の墓
からあふれ出した。
そのまま肉が勇者の墓を飲み込み、バキバキという勇者の墓の断
末魔が聞こえた。
道彦たちはトラックに乗り込み一目散に逃げた。
外にはキムの仲間たちがいたが、すでに知性はなくほどなくキム
の肉に全てが飲み込まれた。
軽トラックの荷台で道彦はかつてキムだった肉の塊を見ていた。
次々と肉は世界を喰らい増殖していく。
その姿は癌細胞そのものだった。
道彦はこれからどうするのだろうと
轟音が響いた。
304
飛行機が飛んでくるのが見えた。
飛行機は遠くにあるキムだった肉へ一直線へ飛んでいく。
﹁なんだあれ?﹂
道彦が指をさす。
﹁ああ、爆撃だよ。連絡したら、韓国兵がキムみたいな化け物に変
わっているってさ。こちらの世界にやってこないように爆撃が開始
されたらしい﹂
道彦たちの車からミサイルが爆発するのが見えた。
それはまるで怪獣映画のようだった。
﹁肉を焼きまくって小さくしてから液体窒素で凍らせて焼却場に運
んで焼却処分するらしい。さすがに肉を全て灰にしてしまえば復活
しないらしい。もう試してうまく行っているらしいよ﹂
﹁へえ⋮⋮﹂
本気を出した人類がコストを考えずに怪獣と戦う。
それを見ながら道彦は山岡に言った。
﹁山岡さん⋮⋮あの悪いんだけど、報告してくれないかな。たぶん
勇者の墓はあれ一つじゃない。いくつもあるはずだ﹂
﹁え?﹂
﹁これから全世界と勇者の墓との戦いが始まる⋮⋮と思う﹂
305
﹁な、な、な、なんだって!!!﹂
山岡の叫び声が響いた。
◇
道彦はその後、家に帰還することができた。
再開した両親は泣いていた。
結局、横っ腹に爆弾の破片やらがまだ残っていることが判明し再
手術になった。
傷跡は酷く、形成手術でも完全に取り除くことはできないだろう
と言われたが道彦はそれでも構わなかった。
傷は服を着てしまえばわからないし、道彦自身は傷をそれほど醜
いとも思えなかった。
あれから世界は良い方にも悪い方にも変わった。
戦争が始まったのだ。
それは異世界の人類との戦争ではなく勇者の墓との戦争だった。
この人類以外との戦いはどん詰まりだった世界経済を復活させた。
戦費に糸目をつけない戦争でかつてないほどの大量の消費が起こ
ったのだ。
さらに勇者の墓から持ち帰った未来の道具で文明は驚異的なスピ
ードで発展を遂げていた。
今まで投資に不適格だった国にまで富は行き渡り、各地で起こっ
ていた内戦は終結し、世界最貧国と言われていた地域の平均寿命は
上がった。
韓国と北朝鮮以外はこの消費を歓迎した。
韓国が歓迎していないのには理由がある。
戦いを始めたのは韓国なのだから韓国が責任を取るべき。
血を流すのは韓国である。
306
国連ではそう結論づけられた。
韓国は兵士を差し出し永遠に戦う。
もちろん足らない分は各国から兵士が派遣されたが、韓国軍が一
番危険な場所に派遣される。
それによって上がった利益は世界で分配された。
どんなに血を流そうとも報われない。
ブラッドダイヤモンドなどという甘いものではない。
自業自得とは言え日本軍にされたと主張する搾取よりも過酷な搾
取を受けることになった。
北朝鮮も悲惨だった。
完全に無視されたのだ。
最初からいなかったように扱われ続けたのだ。
韓国はかつての日本と同じように韓国には自虐史観が植え付けら
れ、韓国や北朝鮮を貶める発言は先進的でリベラルとされ、それに
疑問を持つ意見は無職で無教養な極右の妄言と片付けられた。
国教であるはずの反日教はたった数ヶ月で﹁世界のために死ぬこ
とは罪民族が天国に行くための切符を買うこと﹂という極端なもの
へと変貌した。
かつての日本への工作が自分たちに降りかかった形だ。
これには日本は眉をひそめたが抗議はしなかった。
関わりたくなかったのだ。
キムたち化け物は当初こそ恐れられていたが、馴れてしまえば対
処が早かった。
肉を焼いたら凍結させて焼却場へ。これだけで充分戦えたのだ。
まだ韓国軍の死亡率は高いままだが、それでも戦えるというのに
は希望があった。
幸いなことに異世界では勇者の墓自体が信仰の対象ではなく勇者
そのものが信仰の対象だったため、勇者の墓の破壊はそれほど致命
307
的な軋轢は生まなかった。
実際、門や勇者の墓は何者かが作ったデバイスでしかなかった。
それ自体に漠然とした意思はあるが、神そのものではないし、未
来の道具を使うというアイデアも生まれなかった。
異世界の住民いは移民をする権利が与えられた。
真面目で勤勉な彼らはどこの国でも喜んで受け入れた。
道彦の立場は微妙なものだった。
パコ大統領が道彦に勲章を授与。
兵士を殺したことまで正当化され全ては有耶無耶になった。
そのせいか大麻の摂取まで含めて全ての罪は不起訴処分になった。
ところが左翼側は道彦の起訴を検察審査会に請求。
起訴議決がはねつけられて恥をさらした。
それでも彼らはあきらめずに道彦の救助に使った金が不当だと大
騒ぎしている。
その醜悪な姿にますます人が離れていっているようだ。
マスコミは相変わらず醜悪だった。
道彦が帰ってくると赤日や冥日はしきりにネトウヨだの軍国主義
者だの人殺しだのと好き放題道彦を追いかけ回した。
日弁連は道彦のこの状況にだけ人権救済申立てをはねつけた。
これに関しては赤日や冥日の記者や左翼勢力が覚醒剤の所持で大
量に逮捕されることで沈静化した。
危機を察したマスコミは手の平を返し﹁異世界と日本を繋ぐ親善
大使﹂と道彦を褒め称えた。
海外のマスコミが、報道や人権部門の賞を道彦与えることを提案
したが、道彦は断った。
だがすかさず遠藤が勝手に道彦と共同で賞を受賞した。
不器用な道彦に比べて遠藤は世渡りが上手なのだ。
308
そして道彦は半ば強制的に勇者として外交官の真似事をさせられ
るようになった。
千代田区のビルの一室にオフィスを設けられ、そこで臨時の大使
館が作られた。
韓国軍の虐殺から生き残った異世界の軍人や外交官が勤める本格
的なものだった。
そこのお飾りとして働くことになったのだ。
左翼が襲撃した高校は廃校になった。
しかたなく道彦は山岡のコネで千代田区の学校に通いながら大使
館でも働いている。
要するに隔離だった。だが道彦には不満はない。
遠藤も同じ学校に行き大使館でも働いている。
テレビにもよく出演している。
同じく大使館スタッフのアリアとも仲が良いらしい。
フィーナはだけは少し違った進路についた。
医療を学ぶために海外留学したのだ。
この世界の医術と異世界の技術交わるとき、どういった変革が起
こるのだろうかと道彦は楽しみにしている。
道彦は大使館のオフィスでテレビを見ていた。
景気の良いニュースばかりが報道されている。
株に投資しろと銀行や証券会社から電話がよくかかってくるくら
いだ。
実際に景気は良いのだろう。
ニュースが切り替わる。
﹁パコ大統領に死刑判決が言い渡されました﹂
あのだけは景気の悪いニュースばかりだった。
彼らは全てを人のせいにすることを選んだ。
309
今では全ては北朝鮮の陰謀とまで公言している。
世界はそんな彼らの言葉を信じなかった。
いや彼らの意見などどうでもよかったのだ。
彼らは未来永劫、世界に使い潰されるのだろう。
﹁道彦様。書類にサインを⋮⋮ってまたサボりですか! もう仕事
しなきゃダメですよ!﹂
エレインが道彦を叱った。
あれからエレインは日本にくることを望み、そのまま道彦のアシ
スタントをしている。
最初は絶対服従の人形のようだった彼女もだんだんと普通の女性
のようになっていった。
道彦はそんなエレインの方が好きだったが、気恥ずかしくて言え
ないでいる。
だからこの時もごまかした。
﹁なんの書類?﹂
﹁また異世界での撮影の依頼です﹂
﹁韓国軍は撮らないことを明記してある?﹂
﹁はい。もちろん﹂
プロパガンダ以外の何者でもなかった。
それでも道彦は異論を挟む気はなかった。
彼らを好きになる理由もなければ助けてやる義理もないのだ。
世界は誰かの犠牲で幸せになっている。
それが韓国の番だったのだろう。
310
道彦はそう結論づけた。
道彦はサインをするとはんこを押した。
そうだ一度聞いてみなければ。
﹁エレインちょっといいかな?﹂
﹁はい。どうされました﹂
﹁ぼくはあのとき正しい選択をしたかな?﹂
﹁わかりません。でも最良の選択をしたと思います﹂
﹁そうかな?﹂
﹁ええ。最良だと思います﹂
﹁ありがとう﹂
道彦は書類をエレインに渡した。
道彦は勇者ではなくなった。
だがそれでも人生は続く。
世界もまた形を変えながら続くのだ。
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最終話 トゥルーエンド︵後書き︶
感想の返信コーナー
>俺的
うわーお。本当に晒されてた。
コメントが﹁くっさ﹂で埋まってますね。
ちゃんと内容を批判している書き込みがほとんどない⋮⋮
はっきり言って右翼成分ないんですけどね。
嫌韓に関しても﹁アメリカ軍と日本軍は悪く書いても良くて韓国軍
はなんで悪く書いちゃダメなんだよ﹂って話ですし。
ヘイトスピーチなんて一つもありませんよ。
本気で嫌いなのはマスコミだけですよ。
そもそも右翼の定義ってどうなった?
>ゲートの擁護のための作品
違います。
文句のつけ方が気に入らなかったから韓国人が言うような作品を韓
国を悪役にして書いただけですよ。
ゲートに文句をつけること自体は別に構わないんです。
商業作品ですしいろんな意見があるでしょう。
この作品だって﹁つまらねえ﹂とか﹁文章がゴミ﹂とか好きに言っ
ていいんですよ。
ただ反論はします。
あくまで私が気に入らないのは文句のつけ方です。
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日本人だから自衛隊は悪く書かなければいけないって、これこそ人
種差別なわけです。
じゃあお前らが望んだ作品をお前ら悪役にして書いてやるよってだ
けです。
はっきり言って悪役はアメリカ軍でも旧ソ連でもよかったんです。
アメリカ軍だったら戦争の悲惨さだけの話にしたとは思います。
最終話も戦争には賛成もしてなければ反対もしてません。
最後に。
藤ゴン
さんざんご迷惑をかけて入院まで追い込んだ藤原ゴンザレス先生。
ごめんね。
読者の皆さん
最後まで読んで頂きありがとうございます。
第二部は失敗した感が激しいですが、生まれて初めて書いたにして
はよくできたかなあと自画自賛しております。
次もなにかネタがあれば書こうと思います。
最後までありがとうございました。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n6471dd/
世界最優秀民族が異世界にやってきました
2016年10月3日20時21分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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