アニメ「氷菓」聖地巡礼による経済波及効果 ～ 総合効果は21億円

平成２４年７月３１日
報道各位
岐阜市神田町８－２５
株式会社 十六銀行
アニメ「氷菓」聖地巡礼による経済波及効果
～ 総合効果は２１億円 ～
株式会社十六銀行経営相談室では、アニメ「氷菓」に関する聖地巡礼よる高山市等への来訪者
の増加が及ぼす岐阜県への経済波及効果を測定いたしました。
＊ アニメ｢氷菓｣：米澤穂信氏（岐阜県出身）原作、角川書店＜古典部＞シリーズ（
「氷菓」、
「愚
者のエンドロール」等）をアニメ化したもの。ロケの多くが高山市で実施された。
＊ 聖地巡礼：アニメ作品で、描写されたシーンから製作のベースとなったロケ地を探り、訪
問すること。それまで観光地と呼べないような町が突如賑わいを増したり、特定の喫茶店
や楽器店への訪問者が急増するといったことが各地で起こっている。
１．岐阜県への経済波及効果
 「氷菓」による高山市等への入込客数を年間 15 万人と想定、
「岐阜県観光レクリエーション
動態調査結果」
（岐阜県観光・ブランド振興課）
、
「旅行・観光消費動向調査」
（国土交通省観
光庁）等により観光消費額を推計し、岐阜県総合企画部統計課により提供されている「平成
１７年（２００５年）岐阜県産業連関表による経済波及効果分析システム（Ripple）
」によ
り分析した。
 その結果、最終需要増加額(観光消費額）は約 18 億円、このうち、岐阜県内における需要額
すなわち直接効果は約 13 億円、波及効果を含めた総合効果は、約 21 億円となった。
「氷菓」聖地巡礼による経済波及効果
直接効果
１次効果
２次効果
1,340百万円
504百万円
261百万円
総合効果
2,104百万円
内訳
粗付加価値
中間投入
877百万円
1,227百万円
雇用者所得 592百万円
就業者誘発効果
244 人
ご照会先
十六銀行　法人営業部
経営相談室　滝藤
TEL　（058）262-0631
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２．聖地巡礼を活かして観光振興を図る意義
 アンゾフのマトリクス(縦軸に「顧客・市場」、横軸に「製品・サービス」を取り、それぞれ
に「既存」
、
「新規」の２区分を設けたマトリクスで戦略の位置づけを描いたもの)で例えれ
ば、聖地巡礼は、新たな入込客に対し、新たな観光資源を提供する「多角化」に該当する場
合が多い。しばしば、大河ドラマによる観光客数増による経済波及効果が測定されることが
あるが、多くの新規入込客が見込めたとしても、多くの場合、既存の観光資源が活用される
こととなり、「市場開拓」にあてはまる。リスクは高いかもしれないが、成功したときのイ
ンパクトは「多角化」の方が大きい。
 静岡県の巡礼地ではあるが、聞き取りしたところによれば、巡礼者のカメラの方向は、それ
までの観光客のカメラの方向と違っていたということであった。すなわち、既存の観光客は
花菖蒲を撮っているが、巡礼者はアニメで描写された建物や調度品を撮っていた。巡礼者の
カメラの先には新たな観光資源があったのである。
 聖地巡礼は、ほぼ無コストで外部から与えられた、いわば天恵のようなものであり、新たな
地域の魅力発見につなげ、観光振興に役立てることが望ましい。
アンゾフのマトリクスによる観光戦略の位置づけ
市場浸透
製品開発
既
顧 存 格安プラン
客
・
市 市場開拓
場新
規 外国人観光客
（大河ドラマ）
新施設
多角化
聖地巡礼
既存
新規
製品・サービス
＊ アンゾフのマトリクスで観光戦略の位置づけを整理すると、閑散期に格安パック旅行
を企画するなどしてリピート率を高めるといったことが「市場浸透」、屋台会館・歴史
館など施設を建設し、観光客の回遊先を増やすといったことが「製品開発」
、外国人観
光客誘致などこれまで訪れることのなかった人々に観光に来てもらうことなどが「市
場開拓」にあたる。聖地巡礼は、観光スポットでなかった場所に、これまで訪れるよ
うなことがなかったような人々が来るといったことが起こる場合が多く、これは「多
角化」にあたる。また、大河ドラマのロケ地観光については、新たな観光客誘致につ
ながったとして、大河ドラマが地域の歴史等既存の観光資源がベースになっているた
め「市場開拓」となる。
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＜別添＞
（１）入込客数を仮定するに際し、参考としたデータは以下のとおり。
① 「氷菓」の制作会社である京都アニメーション製作のアニメ「涼宮ハルヒの憂鬱」の舞台
となった西宮市の、テレビ放映された平成 18 年と平成 21 年の入込客数は、前年比それぞ
れ、168 千人、539 千人増加（延べ入込客数）。
また、数日の事例ではあるが、同じく京都アニメーション製作で、平成 19 年 4 月～9 月
テレビ放映された「らき☆すた」の舞台となった鷲宮神社の平成 20 年の初詣参拝客数は前
年比 17 万人増の 30 万人になった（
「全国町村会ＨＰ町村のとりくみ」より）
。
② 平成 21 年８月に公開されたアニメ映画「サマーウォーズ」のロケ地となった長野県上田市
の上田城跡の平成 21 年の入込客数は、平成 20 年に比べ、446 千人増加。
なお、「アニメ･マンガで地域振興」（山村高淑著 東京法令出版）によれば、訪問者に自
由に書き込みをしてもらうための巡礼ノートには設置後２ヶ月で 400 件以上の書き込みが
あった。「氷菓」についても、氷菓コーナーやロケ地となった喫茶店に巡礼ノートが置いて
あるが、前者には 233 件（4/21～6/19）、後者には 168 件（4/28～6/19）の書き込みがあっ
た。上田城跡の入込増が巡礼効果とし、単純に書き込み件数に巡礼者数が比例するとすれば、
「氷菓」で期待できる入込増は約 26 万人。
③ 平成 23 年 10 月にテレビ放映されたアニメ「たまゆら」の舞台となった竹原市の放送時期
（平成 23 年 10～11 月）の入込客数は前年同期比 15 千人増（2 ヶ月の数値）。
巡礼した人はブログ等で記録を残すことも多いため、試みに、Google によるキーワード
検索で、「たまゆら」と「氷菓」に関するヒット件数を調べ、それに基づき、氷菓で期待で
きる入込増を試算すると年ベースで約 10 万人となった。
（２）消費額の算定については、以下のとおり。
① 日帰り客と宿泊客の比率は、H20～H22 年の飛騨地域の日帰り構成比の平均値が 70.5％で
あったことから、日帰り客：宿泊客＝7：3 とした。
② 平成 22 年飛騨地域における観光消費額から、日帰り客１人当たり消費額＝6,461 円、宿泊
客１人当たり消費額＝25,263 円とした。
③ 「旅行・観光消費動向調査」全体単価表・日帰り旅行（国内）
、宿泊旅行（国内）の「旅行
中」費目（パック・団体旅行参加費を除く）の単価により費目ごとの構成比を求め、産業
連関表 108 部門との対応関係により、消費額を各部門へ按分した。ただし、
「旅行・観光消
費動向調査」全体単価表に以下の加減調整を行なって構成比を算出した。
・ 宿泊旅行の宿泊費にはキャンプ場利用によるものも含まれ実態より低くなっていると
思われるため、パック・団体旅行参加費の１／２を加算した。
・ 岐阜県の交通実態から、交通費のうち、飛行機、船舶については０円とした。
・ 巡礼スポットして喫茶店、温泉、神社があることから、対象費目に 150～250 円加算し
た。
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波及効果フローチャート
単位：百万円
直　接　効　果
氷
菓
最終需要額 うち県内分
1,815 ×自給率
県内需要額
1,340
第１次間接波及効果
中間投入
569
×投入係数
×雇用者所得率
粗付加価値
771
うち
雇用者所得
396
×賃金・俸給率
賃金・俸給
348
×粗付加価値率
うち県内分 県内需要増加額
×自給率
362
生産誘発額
×逆行列係数
×粗付加価値率
×雇用者所得率
504
うち
粗付加価値誘発額
276
うち
雇用者所得誘発額
132
×賃金・俸給率
賃金・俸給
113
うち家計消費分
×消費転換率0.600773（平成22年総務省家計調査）
第２次間接波及効果
消費増加額 うち県内分 県内需要増加額
277 ×自給率
211
×逆行列係数
×粗付加価値率
×雇用者所得率
生産誘発額
261
うち
粗付加価値誘発額
179
うち
雇用者所得誘発額
63
総 合 波 及 効 果
生産誘発額
うち粗付加価値誘発額
うち雇用者所得誘発額
総合効果／直接効果
2,104
1,227
592
1.57 倍
就業者誘発効果
×労働力投入係数
＊家計外消費支出調整
粗付加価値誘発額
（
県内ＧＤＰ押上げ効果
0.02 ％
1,185 ）
総合効果／最終需要増加額
-4-
244 人
1.16 倍