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インフルエンザ疫学研究の原理 と方法 - 感染症学雑誌 ONLINE

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インフルエンザ疫学研究の原理 と方法 - 感染症学雑誌 ONLINE
1293
総
説
イ ン フル エ ンザ疫 学研 究 の原理 と方 法:
特 に ワ クチ ン有 効性 の評 価 との関連 で
1)九州 大 学 医学 部 公 衆衛 生 学 講 座
,2)呉 共 済 病 院
廣
Key
words:
田
良
夫1)加
(平成6年7月1日
受付)
(平成6年8月2日
受 理)
influenza,
vaccination,
要
欧 米 で は ハ イ リス ク者(老
あ る が,我
地
vaccine
正
郎2)
efficacy,
epidemiology
旨
齢 者 を含 む)に 対 す るイ ン フ ル エ ンザ 予 防 接 種 を積 極 的 に推 進 す る 方 向 に
が 国 で は 予 防 接 種 へ の 対 応 は 消 極 的 で あ り,効 果 そ の も の を否 定 す る見 解 もあ る.そ
こで,
ワ ク チ ン有 効 性 の評 価 を 中 心 に疫 学 研 究 手 法 を考 察 し た.
1.イ
ン フ ル エ ンザ 流 行 は 時 間 と場 所 に よ っ て 異 な る の で,地 域 が 異 な る 多 施 設 の 調 査 結 果 を プ ー ル し
て 解 析 す る時 に は 注 意 を要 す る.
2.対
象 集 団 中 で 観 察 し た 急 性 呼 吸 器 疾 患 の 集 団 発 生 が,イ ン フル エ ン ザ ウ イ ル ス に よ る もの か ど うか
を,ま
ず 議 論 せ ね ぼ な ら な い.
3.接
種 ・
非 接 種 の群 間 で 差 を検 出 で き な い 最 大 の理 由 に,非
イ ンフルエ ンザ に よる結果 の希釈 が あ げ
ら れ る.罹 患 調 査 に 当 た っ て は,(1)観 察 期 間 を最 流 行 期 間 に 限 定 す る,(2)strictcriteriaを
流 行 規 模 が 比 較 的 大 き な シ ー ズ ン に 実 施 す る,の3項
4.自
適 用 す る,(3)
目 が 重 要 で あ る.
然 感 染 に よ り既 に 十 分 な抗 体 価 を有 す る者 の 影 響 を考 慮 す る た め に は,antibody
efficacyを 求
め る方 法 が あ る.
今 後 は,イ
ン フ ル エ ンザ と関 連 す る個 人 の 特 性 を 明 らか に し て,バ
イ ア ス や 交 絡 な どに つ い て も検 討
を 深 め る 必 要 が あ る.
1.は
米 国 のAdvisory
Practicesは,イ
Committee
関 わ る医 療 費 の増 大 を抑 制 す るた め に,予 防 接 種
を適 切 か つ 積 極 的 に推 進 す る方 向 に あ る2).但 し,
吸 器 系 ・循 環 器 系 の 慢 性 疾 患 を 有 す
健 常 児 童 へ の接 種 に関 して は 否 定 的 見 解 が あ る の
以 上 の 者,(2)老
性 代 謝 性 疾 患 ・腎 機 能 障 害 な
も また 事 実 で あ り,そ の 主 た る根 拠 に は 「ハ イ リ
ス ピ リン長 期 投 与 中
ス ク者 の 保 護 とい う理 由 に よ っ て児 童 に接 種 を行
イ リス ク者 へ の 伝
う こ とが 正 当化 され る の か 」或 は「自然 感 染 に よっ
健 医療 ス タ ッフ や 子 供 を含 め た 同
て 長 期 に亙 る強 力 な免 疫 を獲 得 す る機 会 を予 防接
ど を 勧 告 し て い る1).こ の よ う に 欧 米 で
種 が 奪 っ て し ま う の で はな いか 」 とい う考 え 方 が
ど を 有 す る 大 人 や 子 供,(5)ア
∼18歳),及
播 者 と な る,保
居 家 族,な
や 死 亡 を予 防 す るた め に,ま た イ ン フ ル エ ンザ に
人施設入所
る 大 人 や 子 供,(4)慢
の 者(6月
on Immunization
ン フル エ ンザ ワ ク チ ン 接 種 の 対
象 集 団 と し て,(1)65歳
者 な ど,(3)呼
はハ イ リス ク者 の罹 患 及 び そ の 結 果 生 じ る合 併 症
じめ に
び,(6)ハ
あ る3)4).一方 我 が 国 に お け る予 防 接 種 へ の否 定 的
別 刷 請 求 先:(〒812)福
岡市 東 区馬 出3-1-1
九州 大 学 医学 部 公 衆衛 生 学 講座
廣田
平成6年11月20日
見 解 は有 効 性 へ の疑 問 とい う一 点 に集 約 され た 観
良夫
が あ り,こ れ が イ ン フル エ ンザ対 策 の 中 で の 予 防
1294
廣 田 良夫 他
接 種 を極 め て 消 極 的 手 段 と位 置 付 け る根 拠 に な っ
て い る よ うで あ る.
され る こ とが な か っ た事 項 で あ っ た.
高 齢 化 社 会 の 進 展 と共 に,我 が 国 で もイ ン フル
この よ うな相 違 が 生 じた 主 な理 由 と し て,諸 外
エ ンザ 対 策 に 関 す る検 討 が 深 め られ て い く と考 え
国 の研 究 と我 が 国 の 疫 学 研 究 の 差 異 が あ げ ら れ
られ る の で,今 後 の 参 考 の た め,イ
る.従 来 「疫 学 」 は感 染 症 を主 た る対 象 と して,
疫 学 研 究 の 方 法 論 に つ い て 問 題 点 を整 理 し報 告 す
疾 病 の 頻 度 や分 布,そ
に して き た.そ
の 時 間 的 推 移 な ど を明 らか
る.な お 内容 は観 察 研 究 を主 と し,本 文 中特 に 明
し て,近 年 にお い て は主 た る対 象
示 し な い 限 り は,学 校 集 団 を 対 象 と し た 研 究
を慢 性 疾 患 に代 え,各 種 要 因 と疾 病 の 関 連 性 や 因
(school-based
果 性 を検 証 す る こ とに力 点 を置 く よ う に な っ た.
る.
そ れ らの 解 明 が 疾 病 の原 因 究 明 や 予 防 に直 接 役 立
2.イ
つ か らで あ る.要 因 に関 す る仮 説 を検 証 す る た め
1)基 本 原 理
に は,良 好 に デ ザ イ ン さ れ た 分 析 疫 学 研 究(コ
ホ ー ト研 究,症 例 ・対 照 研 究,介
入 研 究)が
ー
行わ
れ て お り,循 環 器 疾 患 や 悪 性 新 生 物 に 関 して は疾
病 特 性 に応 じ た 方 法 論 が 一 応 確 立 し て い る と言 え
よ う.一 方 イ ン フル エ ンザ に関 して は流 行,免 疫,
感 染,発
ン フル エ ンザ
病 な ど複 雑 な 疾 病 特 性 が あ る た め,仮 説
study)を
念 頭 に置 い て 稿 を 進 め
ン フル エ ンザ 疫 学 研 究 の特 殊 性
イ ン フル エ ンザ 研 究 の基 本 原 理 は 「イ ン フ ル エ
ン ザ の 流 行 は 時 間 と場 所 に よっ て 異 な る:
differential occurrence by time and place(以
"DOTIP"と
略)」 とい う こ とで あ る
.
下
例 え ば ワ ク チ ンの 有 効 性 を調 べ る 目 的 で,全
国
100カ 所 の小 学 校 の 児 童30,000人 を対 象 に,3学 期
の 検 証 を 目的 と した 分 析 疫 学 研 究 の 方 法 論 が 未 確
(1∼3月)の"か
立 の 状 況 に あ る.
比 較 した とす る.通 常 疾 病 の場 合 な ら全 国 調 査 で
イ ン フ ル エ ン ザ ワ クチ ン の有 効 性 に関 す る研 究
は,諸 外 国 にお い て は 多 くが 臨 床 家,ウ
者,免
イルス学
疫 学 者 な どに よっ て 行 わ れ て お り,そ れ ら
は比 較 的 小 規 模 なが らイ ン フル エ ンザ の疾 病 特 性
ぜ"罹 患 を接 種 群 と非 接 種 群 で
あ る とい う こ と,ま た標 本 数 が30,000人 に も及 ぶ
とい う こ とか ら,調 査 結 果 は大 きな 説 得 力 を有 す
る こ とに な る.一 方 イ ン フル エ ンザ の 場 合 に は流
行 が 時 間 や 場 所 で 同 一 で は な い の で,あ
る小 学 校
を十 分 考 慮 した 綿 密 な デ ザ イ ン の も と に実 施 され
で は12月 に イ ン フル エ ンザ が 流 行 し,3学 期 の"か
て い る.こ れ に対 し我 が 国 に お け る研 究 は,公 衆
ぜ"は イ ン フル エ ンザ以 外 の急 性 呼 吸 器 感 染 症(非
衛 生 学 分 野 の研 究 者 が 大 き く関 与 して行 わ れ て き
イ ン フル エ ンザ)に
た とい う背 景 が あ る.そ
よ る,と い っ た現 象 が 生 じ得
こで は イ ン フル エ ン ザ の
る.イ ン フ ル エ ンザ の 流行 が 確 認 され た と して も,
疾 病 特 性 が 複 雑 か つ 難 解 で あ るた め,疫 学 研 究 の
時 や 地 域 ・集 団 が 異 なれ ば 流 行 株 も同一 とは 限 ら
方 法 論 が 十 分 検 討 され な い ま ま,単 に数 理 統 計 に
な い.例
よ る デ ー タ解 析 法 の み が 持 ち 込 まれ る とい った 現
て も,抗 原 性 が 同一 で あ る とは 限 らな い.例
象 が 生 じた.こ
行 株 の抗 原 性 が 類 似 して い た と して も,前 年 の主
こ にイ ン フ ル エ ンザ ワ ク チ ン の有
効 性 に 関 し多 くの相 反 す る結 果 が,我
が国で繰 り
返 し報 告 され る こ と とな っ た原 因 が あ る の で は な
い か と考 え られ る.
え流 行 株 が 同 一 型(亜
あ った と し
え流
流 行 株 が異 な れ ば流 行 の パ タ ー ン も異 な る可 能 性
が あ る.
従 っ て基 本 原 理"DOTIP"を
著 者 らは1988∼89年 の シー ズ ンに 小 学 児 童 を対
型)で
念 頭 に置 い て,単 一
シー ズ ン,単 一 集 団 の 流行 形 態 に 注 意 を払 い な が
象 と した イ ン フル エ ンザ の 疫 学 調 査 を実 施 し,結
ら,綿 密 な調 査 ・解 析 を行 う こ とが イ ン フ ル エ ン
果 を1992年 に発 表 し た5).こ の 報 告 を完 成 す る 過
ザ疫 学 研 究 の基 本 で あ る.
程 で,イ
ン フル エ ン ザ の疫 学 研 究 が 克 服 す べ き問
題 点 や 備 え るべ き要 件 を学 習 す る と共 に,示 唆 に
富 む 多 くの指 摘 を レ フ ェ リー よ り頂 い た.そ
して
そ の 多 くが 我 が 国 にお け る従 来 の研 究 の 中 で 考 慮
2)研 究 の 困 難 性
喫 煙(要
場 合,主
因)と
肺 が ん(結 果)の
関 連 を調 べ る
要 因 は喫 煙 で あ り,結 果 は肺 が ん の罹 患
や 死 亡 で 測 定 さ れ る.一 方 イ ン フル エ ンザ ワ ク チ
感 染 症 学 雑誌
第68巻
第11号
1295
イ ン フル エ ンザ疫 学研 究 の原 理 と方法
ク チ ン接 種 とイ ン フ
∼(7)は研 究 の デ ザ イ ン,結 果 及 び そ の 解 釈 に 関 わ
ル エ ンザ ウ イ ル ス暴 露 と い う2つ の 主 要 因 が存 在
る項 目 で あ る.特 に(3)が疫 学 研 究 の 妥 当 性 に影 響
し,イ ン フル エ ン ザ ウ イ ル ス がnecessary
cause
を与 え る最 大 の 問 題 点 で あ る.ま た小 学 校 を対 象
亡,
集 団 とす る意 義 は,(4)及 び(6)の影 響 を あ る程 度 克
ンの 有 効 性 を調 べ る場 合,ワ
で あ る.ま た,結 果 は感 染,発 病,入
院,死
欠 席 な ど多 様 な指 標 で 測 定 さ れ る.従 っ て 自然 流
服 で き る と こ ろ に あ る.
3.考 慮 す べ き要 件
行 に よ る ウ イ ル ス暴 露 を通 じて行 わ れ る通 常 の 研
究 は,以 下 に示 す よ うな 問 題 を常 に抱 え て い る.
(1)流 行 期 を 的確 に予 測 す る こ とが 困 難
1)原 因 の 存 在
急 性 呼 吸 器 疾 患 の集 団 発 生 が イ ン フル エ ン ザ ウ
(2)ワ ク チ ン株 と流 行 株 の 抗 原 性 の差
イ ル ス に よ る もの か,そ
(3)イ ン フ ル エ ンザ の臨 床 診 断 が 困難,そ の た め
の か を まず議 論 せ ね ぼ な ら な い.対 象 集 団 か ら ウ
非 イ ン フ ル エ ンザ に よ って 生 ず る結 果 の希 釈6)∼9)
(4)自 然 感 染 に よ り既 に十 分 な抗 体 価 を 有 す る
れ 以 外 の病 原 体 に よ る も
イ ル ス分 離 や 血 清 抗 体 価 に関 す る成 績 が 得 られ れ
ばイ ン フ ル エ ンザ ウ イ ル ス 暴 露 を証 明 で き る が,
疫 学 調 査 で は必 ず し も容 易 で な い.そ
者 の 存 在10)11)
(5)ワ ク チ ン接 種 で 生 じた 集 団 免 疫 に よ り,非 接
種 者 が 受 け る間 接 的効 果12)
(6)接 種 群 と非 接 種 群 で の ウ イ ル ス 暴 露 機 会 の
こで 状 況 証
拠 に よ りウ イ ル ス暴 露 を間 接 的 に証 明 す る こ と と
な る.
この場 合,地
域 の サ ー ベ イ ラ ンス に よ る イ ン フ
ル エ ン ザ様 疾 患 の報 告 患 者 数 の ピー ク と,調 査 対
差13)∼15)
(7)接 種 者 と非 接 種 者 との 特 性 の差16)
象 の学 校 にお け る欠 席 率 の ピ ー ク の 一 致 が 参 考 に
(1)と(2)は研 究 の 環 境 に 関 わ る項 目 で あ り,(3)
な る.Fig.1は1988∼89年
の シ ー ズ ン に福 岡 県 の
Fig. 1 Changes in the number of influenza patients reported weekly from the 56
surveillance sites in Fukuoka Prefecture in the 1988-1989 season (bar), and in
rates of absenteeism for the subject school during the observation period, 8
January to 11 February, 1989 (line). The marks in the upper part indicate the
time point and number of virus type confirmed at the prefectural center (circle:
A/H1N1, square: A/H3N2, triangle: type B).
平 成6年11月20日
廣田 良夫 他
1296
小 学 校 で 行 った 調 査 結 果 で あ る`).冬 期 休 暇 の た
め1週 間 の 遅 れ は あ る もの の,両 者 の ピー ク は良
好 に一 致 した.な
お サ ー ベ イ ラ ンス の報 告 患 者 数
の 推 移 と比 較 す る た め に は,欠 席 を週 単 位 で 集 計
す る必 要 が あ る.サ ー ベ イ ラ ンス の 報 告 患 者 数 の
推 移 と対 象 集 団 の 欠 席 率 の 推 移 を重 ね た 図 に地 域
の ウ イ ル ス 情 報 を週 毎 に記 入 す る と,更 に詳 細 な
暴 露 情 報 を得 る こ とが で き る.Fig.1に
示 す よう
Fig. 2 Changes in the number of influenza patients
reported weekly from the 11 surveillance sites in
the Chikuhou sector of Fukuoka Prefecture in the
1991-1992 season (line) , and in the number of
influenza-like illness (ILI) cases among the study
subjects during the observation period, 26 January to 21 March, 1992 (bar) . The marks in the
upper part indicate the time point and number of
virus type confirmed at the prefectural center
(circle: A/H1N1, square: A/H3N2).
に,福 岡 県 内 の ウ イ ル ス 情 報 は この シー ズ ン に合
計28件 得 られ,そ
の 内 訳 はA/HIN1;26件,A/
H3N2;1件,B型;1件
で あ っ た.ウ
イル ス型
(亜型)の 時 間 的 推 移 に よ り,流 行 ピー ク時 の ウイ
ル ス 暴 露 はA/HIN1が
主 で あ る こ とが わ か る.更
に 年 齢 に よ る感 受 性 の差 に注 目 して 年 齢 別 の分 布
を み る と,5歳
以 下 でA/H3N2;1件,6∼12歳
でA/HIN1;18件,13∼16歳
とB型;1件,17歳
でA/HIN1;5件
以 上 で はA/HIN1;3件
で
あ っ た.
以 上 の 状 況 証 拠 に よ り,当 該 小 学 校 にお け る 急
性 呼 吸器 疾 患 の集 団 発 生 に は,イ
ン フ ル エ ンザ ウ
イル ス暴 露 が 関与 して い る との 確 信 に近 づ く.ま
た,ウ
イ ル ス型(亜
型)の
時間的推移及 び年齢別
分 布 よ り,そ の集 団 発 生 はA/HIN1イ
ン フル ェ ン
ザ ウ イ ル ス に よ る との 示 唆 が 得 られ る.
福 岡 県筑 豊 地 方 の職 域(18歳
て,1991∼92年
Fig.2に
報 告 患 者 数,独
イ ル ス情 報 の 時 間 的推 移,及
以 上)を 対 象 とし
の シ ー ズ ン に行 った 調 査 結 果 を
示 す.図
に は筑 豊 地 方 の サ ー ベ イ ラ ンス
自 に定 義 した イ ン フル エ ン ザ様 疾
患 の 週 毎 の発 病 者 数,及
ン フル エ ンザ 様 疾 患 発 病 者 数 の ピー ク の一 致,ウ
び 福 岡 県 内 の ウ イル ス情
び 年 齢 に よ る感 受 性
の 差 か ら,当 該 集 団 に お け る急 性 呼 吸 器 疾 患 の 集
団 発 生 はA/H3N2イ
ンフル エ ンザ ウ イル ス に よ
る こ とが 強 く示 唆 さ れ た.
以 上,イ
ン フル エ ン ザ の 疫 学 研 究 の 第 一 歩 は,
対 象 集 団 中 で観 察 され た 急性 呼 吸 器 疾 患 の集 団 発
報 が 含 まれ て い る.サ ー ベ イ ラ ン ス報 告 患 者 数 の
生 が,イ
ピ ー クが 立 ち上 が る1992年 第5週
か ら罹 患 調 査 を
の か ど うか を検 討 す る こ とに 始 ま る.こ の 検 討 抜
よ る と思 わ れ
き に して ワ ク チ ンの 有 効 性 を論 ず る こ と はで きな
開 始 した.最 初 にover-reportingに
ン フ ル エ ンザ ウ イ ル ス へ の暴 露 に よ る も
る小 ピー クが あ るが,発 病 者 の ピ ー ク とサ ー ベ イ
い.ま た対 象 集 団 で の 流 行 ウ イ ル ス の型(亜
ラ ン ス 報 告 患 者 数 の ピー ク は 一 致 す る.県 内 の ウ
を推 定 す る こ とは,ワ
イル ス情 報 は合 計30件 得 られ,そ の 内 訳 はA/Hl
か ら も重 要 で あ る.
N1;12件,A/H3N2;18件,B型;0件
で あった.
2)結 果(疾 病)の
型)
ク チ ン株 との 抗 原 性 の 関 連
測 定 指標 及 び測 定 方 法
年 齢 別 に は10歳 未 満 でA/HIN1;11件
とA/H3
N2;7件,10∼14歳
とA/H3
に,goldstandardと
で あ り,
イ ン フル エ ンザ にお い て は存 在 しな い.
一般 に
,ウ イ ル ス 分 離,血 清 抗 体 価 測 定,臨
N2;9件,15歳
でA/HIN1;1件
以 上 で はA/H3N2;2件
10歳 を境 にA/HIN1に
対 す る感 受 性 が 大 き く異
な る.こ の よ う にサ ーベ イ ラ ン ス報 告 患 者 数 とイ
が ん の 疫 学 研 究 で 用 い られ る組 織 診 断 の よ う
な り得 る結 果 の 測 定 指 標 は
床
症 状 な ど を単 独 で 或 は組 み合 わ せ て指 標 と して い
感 染 症 学 雑誌
第68巻
第11号
イ ンフル エ ンザ疫 学 研究 の原 理 と方法
1297
る.検 査 成 績 に基 づ い て 感 染 や発 病 を比 較 した 研
よ り,結 果 的 に欠 席 率 ピー クが 示 す 集 団 内 で の 最
究 で は ワ ク チ ン効 果 あ り との結 論 を得,臨 床 症 状
流 行 期 間 に観 察 期 間 を一 致 させ る こ とが で きた.
の み に基 づ い て 比 較 した 場 合 は効 果 を検 出 で き な
Fig.2の
い例 が 多 く,そ の理 由 は非 イ ン フル エ ン ザ に よ る
ピー ク の 鋭 い 立 ち 上 が り と 同 時 に観 察 を始 め,
結 果 の 希 釈 の た め と考 え ら れ て い る6)∼9)17).厳
し
ピー ク終 了 まで 毎 週 自記 式 調 査 票 に よ る罹 患 調 査
い測 定 指 標 に は,「(1)発
病 期 間 中 の イ ン フ ル エ ンザ
を行 っ た.
ウ イ ル ス分 離(2)抗
体 価 上 昇 の み の 場 合 は,発 病
例 で は,サ ーベ イ ラ ン ス情 報 に よ る 流 行
な おFig.1の
調 査 で は,イ ン フ ル エ ンザ 様 疾 患
期 間 中 に他 の ウ イル ス が 分 離 さ れ て お らず,且 つ
の 発 熱 を38.0度 以 上39.0度 未 満,及
そ の 発 病 が 同 居 家 族 に お け る イ ン フル エ ンザ ウイ
に分 け て解 析 した と こ ろ,前 者 で は ワ ク チ ン の 有
ル ス 分 離 か ら10日 以 内 に起 こっ た も の で あ るか,
効 性 を検 出 せ ず 後 者 で の み 検 出 した.観 察 期 間 を
若 し くは地 域 にお け る最 流 行 期 に起 こ っ た もの で
限 定 し て もな お 非 イ ン フル エ ン ザ に よ る結 果 の希
あ る こ と」と した例 が あ る18).イ ン フル エ ンザ 研 究
釈 が 相 当程 度 生 ず る た め か,或
に お け る結 果 の 測 定 が 如 何 に 困難 で あ る か,ま た,
化 防 止 効 果 に よ り接 種 者 が 中 等 度 の発 熱 に留 ま る
イ ン フル エ ンザ の臨 床 診 断 が 非 イ ン フル エ ンザ に
た めで あ ろ う5).
よ る希 釈 を如 何 に受 け 易 い か を 示 す もの で あ ろ
び39.0度 以 上
は ワ クチ ン の重 症
小 学 児 童 の よ う に感 受 性 が 高 く共 同 生 活 の場 を
う.
一 方 検 査 成 績 を伴 わ な い疫 学 研 究 を,そ の 理 由
有 す る集 団 で は22),一般 に1∼1.5カ
の た め に過 少 評 価 す る こ とは適 切 で な い.イ
月 の 鋭 い ピー
ク を描 い て 流 行 が 終 息 す るの で,3学
期 全 体 を観
ンフ
察 期 間 と した よ う な調 査 結 果 の解 釈 に は慎 重 を 要
ル エ ン ザ ウイ ル ス が分 離 さ れ る頻 度 は必 ず し も高
す る.な お,欠 席 率 の 鋭 い ピ ー ク が 確 認 で きな い
くな い し,流 行 前 の血 清 抗 体 価 が 高 け れ ば 感 染 し
シー ズ ンや 学 校 は,調 査 に不 適 当 な 環 境 で あ る.
て も抗 体 価 の 上 昇 を認 め な い こ とが あ る との 報 告
欠 席 を 結 果 の 測 定 指 標 とす る場 合 も観 察 期 間 を
も あ る18).ま た検 体 採 取 は臨 床 の 場 で も容 易 で な
限 定 す る必 要 が あ る22)23).但し イ ン フ ル エ ン ザ と
く,多 人 数 を対 象 とす る疫 学 研 究 で は更 に困 難 で
関 係 な い 欠 席 の 除 外 は必 ず し も容 易 で は な い.都
あ る.だ か ら とい っ て 安 易 な 方 法 で 結 果 を測 定 す
市 部 の小 学 校 で は 中学 受 験 前 の 自宅 学 習 の 欠 席 理
る こ とは 疫 学 研 究 の 信 頼 性 を損 な う こ と に な る.
由 と して"か ぜ"を 報 告 す る例 が 多 い.職 域 で は
臨 床,ウ
疫 学 な ど多 分 野 の研 究 者 の
本 来 の病 欠 が 有 給 休 暇 で 処 理 され る こ とが 多 い た
つ 疫 学 研 究 に適 用 可 能 な 結 果 の
め実 態 把 握 は困 難 で あ る.何 れ に し て も欠 席 や 欠
イ ル ス学,免
納 得 が 得 られ,且
測 定 指 標 及 び測 定 方 法 を見 出 す こ とが,イ
ンフル
エ ン ザ疫 学 研 究 手 法 の 確 立 につ な が る.
疫 学 研 究 に お け る結 果 の 測 定 は,呼 吸 器 症 状 及
勤 を結 果 の 測 定 指 標 とした 調 査 は,一 般 論 と し て
の ワ ク チ ン有 効 性 で は な く,ワ クチ ン の 欠 席 ・欠
勤 防 止効 果 を検 討 して い る もの で あ る.欠 席 や 欠
び全 身症 状 に 関 す る情 報 を得 て,研 究 者 自 らが イ
勤 は イ ン フ ル エ ン ザ 罹 患 のsurrogate
ン フ ル エ ン ザ様 疾 患 を定 義 す る とい う方 法 が 多 く
(代理 変 数)で あ り,こ の よ うな 指 標 の み を用 い た
用 い られ る.例
え ば[(鼻 汁,咽
頭 痛,and/or咳)
variable
ワ ク チ ンの 有 効 性 に関 す る報 告 は,諸 外 国 で は例
plus発 熱]の よ うに定 義 さ れ る9)17)19)∼21).そ
して 非
外 的 な も の を 除 い て 見 受 け られ な い24).その 他,合
イ ン フル エ ンザ に よ る結 果 の 希 釈 を 出 来 る 限 り避
併 症 や 死 亡 の頻 度 を接 種 者 と非 接 種 者 で比 較 した
け る 方 法 と して,症 状 の観 察 期 間 を イ ン フル エ ン
報 告 も あ る17)19)21)25).
ザ の 最 流 行 期 間 に 限 定 す る こ とが 有 効 で あ
3)疾 病 頻 度 の測 定 尺 度
る5)9)16)17)19)∼21).Fig.1の
例 で は,サ ー ベ イ ラ ンス
疾 病 頻 度 の測 定 尺 度 に は 有 病 率,累 積 罹 患 率,
情 報 を追 跡 しな が ら地 域 の 流 行 ピー ク の最 終 週 に
全 児 童 に調 査 票 を配 布 した.こ
の 中 で 「3学 期 が
始 ま っ て か ら今 日 まで の 症 状 」 を 質 問 す る こ と に
平 成6年11月20日
罹 患 率 の3種 類 が あ る.
有 病 率(prevalence)と
は,あ る一 時 点 に お い て
対 象 集 団 の 中 で 疾 病 を有 す る者 の全 対 象 者 数 に対
廣田 良夫 他
1298
す る割 合 で あ る.
有 病 率(P)=
感 染 を受 けた 時 に発 病 し,非 接 種 群 で は 流 行 初 期
に感 染 発 病 す る こ と を想 定 した もの で あ る.各 群
疾病 を有 す る者 の人数
対象集 団の人数 /
累 積 罹 患 率(cumulative
incidence)と
の 累 積 罹 患 率(CI)及
は,固
定
した対 象 集 団 の 中 か ら一 定 期 間 内 に疾 病 に罹 患 し
び 罹 患 率(1)は
次 の よ うに
計 算 され る.
接種群 で は
た 者 の 全 対 象 者 数 に対 す る割 合 で あ る.
累 積 罹 患 率(CI)=
(for 5 weeks)
観察期 間 内の疾 病発生数
観察 開始時 の対 象集団 の人
/ 数
罹 患 率(incidence)と
は,一 定 期 間 内 に対 象 集
団 の 中 で 観 察 され た 疾 病 罹 患 数 を,対 象 集 団 内 の
1人1人
の観 察期 間 の総 計 で 割 っ た もの で あ る.
非 接 種 群 で は,
この場 合 観 察 期 間 とは,対 象 者 が 疾 病 に罹 患 す る
可 能 性 が あ る(atrisk)時
(person-time)で
罹 患 率(I)=
間 で あ り,観 察 人 時
(for 5 weeks)
表 され る.
観 察 された疾 病発生数
観察 人時
有 病 率 は有 病 期 間 に影 響 され る の で,疫 学 研 究
に は多 用 さ れ な い.Fig.3に
各 々5人
か らな る接
種 群 と非 接 種 群 の 仮 想 デ ー タ を示 す.イ
ンザ 最 流 行5週
ンフルエ
間 の観 察 期 間 中,接 種 群 で は濃 厚
接 種 群 と非 接 種 群 で累 積 罹 患 率 は 等 し い が,罹
患 率 は非 接 種 群 の 方 が 大 で あ る.こ の よ うに 累 積
罹 患 率 は平 均 的 な リス ク(average
は罹 患 強 度(force
Fig. 3 Hypothetical
data on influenza attack
(arrow mark) among vaccinees and nonvaccinees during a five-week observation period, to
demonstrate the difference between incidence (I)
and cumulative incidence (CI) . Vaccinees: I=
0.27/week and CI = 80%, Nonvaccinees: I= 0.4/
week and CI= 80%.
of morbidity)を
risk),罹
患率
表 す もの で あ
り,疾 病 の測 定 尺 度 と して は罹 患 率 の ほ うが秀 れ
て い る26).イン フル エ ンザ の 疫 学 研 究 で は,観 察 開
始 時 点 を合 理 的 に設 定 す る こ とが 困難 で あ り,ま
た個 々 人 の疾 病 発 生 時 点 を 正 確 に把 握 で き な い た
め,罹 患 率 を測 定 す る こ と は一 般 に行 わ れ な い.
な お 累 積 罹 患 率 を示 す 場 合 は必 ず 観 察 期 間 を 明 示
しな けれ ば な らな い.
イ ン フ ル エ ン ザ に 関 す る海 外 の 文 献 で は
attackrate(発
病 率)と い う言 葉 を 累積 罹 患 率 と
同義 語 に用 い て お り21)22),イン フ ル エ ン ザ研 究 の
領 域 で は この 方 が 一 般 的 で あ る.国 内 で は罹 患 率
とい う言 葉 を誤 用 し て い る例 が 多 い.前 記 計 算 結
果 の 如 く,発 病 率(累 積 罹 患 率)の 単 位 に は%を
用 い得 るが,罹
患 率 の 単 位 は[1/時
間]で
あ る.
な お小 学 校 の新 学 期 開 始 時 に は転 校 に よ り5%程
度 の児 童 の 入 れ替 わ りが 生 ず る こ とが あ る の で,
発 病 率 の 測 定 に 当 た っ て は,観 察 開 始 時 点 で の人
数 を厳 密 に把 握 せ ね ば な らな い.
感 染 症 学 雑誌
第68巻
第11号
イ ン フル エ ンザ 疫 学研 究 の原理 と方 法
4)ワ
クチ ン有 効 率
な お,累
一 般 に ワ ク チ ン 有 効 率 は 発 病 率(attackrate)
や 感 染 率(infection
rate)を
接 種 者 の 発 病 率(感
Rv:接
種 者 の発 病 率(感
rence)を
染 率)
る.従
(2)
相 対 危 険(RR,relative
に 一 致 す る.相
対 危 険 と は,要
ratio)と
因 へ の暴 露 が 非 暴
げ る)か
ス ク 比(risk
も 言 わ れ る.非
種 者 の 発 病 率 を10%と
ratio),率
す る と有 効 率 は,
あ り,接 種
者 は 非 接 種 者 に 対 し て 発 病 リ ス ク が1/3と
い う こ
対 危 険 の 意 味 か ら も わ か る よ う に,
い う こ と は 「接 種 者100人
病 し な い 」 と い う意 味 で は な い.一
中67人
は発
般 に発 病 を臨
床 症 状 の み に よ っ て 測 定 す る 場 合,観
察期間が長
近 づ き,VEは0に
近 づ
比 は0.1∼0.4),麻
比 は0.05∼0.2)と
従 来(1)式
に よ っ て有 効 率 を直 接 計 算 す る方
法 が と ら れ て き た が,近
年(2)式
険 を 一 旦 計 算 し た 後 に1か
て 有 効 率 を 求 め る,或
に よ り相 対 危
ら相 対 危 険 を差 し引 い
は ワ ク チ ン効 果 を有 効 率 で
は な く相 対 危 険 で 表 わ す,と
高 い 有 効 性 を 示 す が,率
差 は一 般 に麻 疹 ワ クチ ン
の 方 が 小 と な る.
究 結 果 の 妥 当性
研 究 結 果 の 妥 当 性 に 影 響 す る も の と し て,誤
類,選
分
択 バ イ ア ス,交 絡 が あ げ ら れ る26).こ の う ち
で あ る.
a)誤
分類
誤 分 類(misclassification)と
は,調
選 択 後 に 行 う 情 報 収 集 の 過 程 で,要
査対 象者 の
因へ の暴露 の
有 無 や 結 果(疾 病)の 有 無 の 分 類 に 誤 り を 生 ず る こ
と で あ る(exposure/disease
misclassification).誤
分 類 に は 暴 露 と結 果 の 情 報 が 独 立 し て 生 ず る 場 合
い う方 法 が 報 告 され
differential
misclassification).
ワ ク チ ン の 接 種 群 と非 接 種 群 を 保 護 者 の 回 答 に
よ っ て 分 類 す る と,接
∼5%の
nondifferential
当 し,希
計 算 に は 他 の 要 因(例
る(nullvalue)方
え ば 性,年
齢 な ど)を
同時
に 考 慮 す る多 変 量 解 析 の 手 法 が 確 立 し て い る こ
ク チ ン効 果 の 判 定 に 症 例 ・対 照 研 究 の 手 法
を 応 用 す る 例 が で て き た こ と,相
連 の 度 合 を 理 解 し 易 い こ と,に
対 危 険 の方 が 関
よ る.通
危 険 は 罹 患 率 を 用 い て 計 算 さ れ る.従
常,相
対
っ て一 般 の
種 記 録 と の 比 較 で 全 体 の3
誤 分 類 が 生 ず る .こ
る よ う に な っ て き た5)9)16)17)19).これ は 相 対 危 険 の
exposure
Nondifferential
様 にnull
value方
disease
発 病 率 比(attack
rate
ratio)と
い う言 葉 を使 用
察 期 間 と 共 に 提 示 す る こ と を 推 奨 し た い.
平 成6年11月20日
該
同
の起
場 合 に 比 べ て 複 雑 で あ る.
イ ン フ ル エ ン ザ の 罹 患 調 査 が そ の 典 型 で あ り,通
常 の 疾 病 で 用 い るunder-orover-diagnosisと
葉 が ふ さ わ し い.Table1の
た は
misclassificationも
向 の 結 果 を も た ら す が,そ
こ り方 はexposureの
積 罹 患 率 比(cumulative
ratio)ま
misclassificationに
向 に 作 用 す る26).
な っ て,under-or
incidence
の よ うな誤 分 類 は
釈 効 果 に よ っ て比 較 群 間 の差 をゼ ロ に す
疫 学 研 究 に お け る 相 対 危 険 と 区 別 す る た め に,累
し,観
疹 で80∼95%(率
い わ れ て お り13)14),後 者 の 方 が
と依 存 的 に 生 ず る場 合 とが あ る(nondifferential/
く.
と,ワ
difference
イ ン フル エ ン ザ の疫 学 研 究 で は誤 分 類 が 最 も重 要
ち67%と
た 相 対 危 険 は0.1/0.3=0.33で
く な る 程Rv/Rnは1に
お,rate
compari-
っ て ワ ク チ ンの 有 効 率 はイ ン フ ル エ ンザ で
5)研
接種者 の発病率
(0.3-0.1)/0.3=1-0.1/0.3=0.67,即
有 効 率67%と
の 率 の 差(ratediffe-
行 う こ と も あ る26).な
60∼90%(率
risk)
露 に 比 べ て 疾 病 リ ス ク を 何 倍 上 げ る(下
を 表 わ す 指 標 で あ り,リ
com-
(率 差)は 感 染 症 の 場 合 流 行 規 模 に 大 き く影 響 さ れ
VE=1-Rv/Rn.=1-RR
と な り,Rv/Rnは
あ る が,2群
求 め て 絶 対 的 な 比 較(absolute
son)を
染 率)
これ を変 形 す る と
と に な る.相
般 に 要 因 の 影 響 をunder-
る と 言 わ れ て い る26).
parison)で
(1)
Rn:非
な る.ま
estimateす
累 積 罹 患 率 比 は 相 対 的 な 比 較(relative
Vaccine efficacy(VE)
=(Rn-Rv)/Rn
を30%,接
積 罹 患 率 か ら求 め た 率 比 は 罹 患 率 か ら求
め た 率 比 に 較 べ て,一
も とに 次 式 で 計 算 さ
れ る12)13).
比(rate
1299
者 ・非 接 種 者 各100人
り,真
over-ascertainmentと
異
い う言
仮 想 デー タ は接 種
を一 定 期 間 追 跡 した もの で あ
の イ ン フ ル エ ン ザ が10人
と30人 生 じ た と す
廣田
1300
Table
1
Hypothetical
disease
between
data
vacciness
良夫 他
on nondifferential
misclassification
of the
and nonvaccinees
1) 50% of actual influenza patients are detected.
2) 50% of subjects are contracted noninfluenzal illnesses.
る.率 比 は0.33(ワ
で あ る.厳
ク チ ン 有 効 率67%),率
し い 疾 病 定 義(strict
差 は0.2
criteria)を
適用
と15%で
状 態 で 調 査 す る と,発
率 比 は 同 様 に0.33で
小 さ く な る.一
い る か,観
b)選
病 率 は5%
あ る が,率 差 は0.1と
方 緩 い 定 義(loose
criteria)を
用
察 期 間 を 長 く し てover-ascertainment
の 状 態 で 調 査 を す る と,対
象 者 の50%に
率 比 は0.75(ワ
の
差 は 変 化 し な い が,
ク チ ン 有 効 率25%)と
な る.実
際
生
な る
な る こ と も あ る26).
択 バ イアス
選 択 バ イ ア ス(selectionbias)と
は,調
査対象
者 の 選 択 過 程 で 結 果 と関 連 す る 特 性 の 分 布 に偏 り
(bias)が
生 じた 非
イ ン フ ル エ ン ザ を も 発 病 者 に 含 め て し ま う.そ
結 果 発 病 率 は60%と80%,率
misclassificationが
じ る と 関 連 の 測 定 結 果 はover-estimationに
こ と もunder-estimationに
し,か つ 観 察 期 間 を 短 く し てunder-ascertainment
(患 者 の50%)の
piciousbias).Differential
生 じ る こ と を い う.イ
に お い て は,ア
ン フル エ ンザ 研 究
レ ル ギ ー 疾 患 を有 す る者 が 副 反 応
を 避 け る た め に 接 種 を 受 け な い,扁
桃 炎 を起 こ し
易 い 者 が そ の 症 状 の た め に 接 種 が 受 け ら れ な い,
気 管 支 喘 息 を 有 す る者 が 発 作 の 重 篤 化 を 避 け る た
イ ン フ ル エ ン ザ 流 行 が 小 規 模 な シ ー ズ ン で も,か
め に 接 種 を 受 け る,な
ぜ 症 状 を 経 験 す る 小 学 児 童 は70∼80%程
基 礎 疾 患 は イ ン フ ル エ ン ザ 罹 患 時 の 症 状 発 現 と関
る.真
度存 在す
の イ ン フル エ ンザ を一 定 の 割 合 で発 見 す る
criteriaが
あ る 訳 で は な い し,イ
ンフルエ ンザ と
非 イ ン フル エ ン ザ の 両 者 に 罹 患 す る者 も い る の
で,現
実 は仮 想 デ ー タ 通 り に は な ら な い.し
な が ら こ の 仮 想 デ ー タ は,ワ
る 疫 学 研 究 に お い て,非
か し
ク チ ン有 効 性 に関 す
インフルエ ンザを出来 る
限 り除 外 す る こ と の 重 要 性 を 示 す も の で あ る.
Differential
misclassificationの
例 と し て は,ワ
ク チ ン の 有 効 性 に 懐 疑 的 な 立 場 で"か
質 問 す る 場 合 が あ げ ら れ る.こ
ぜ"症
状 を
の 時 接 種 者 は非 接
連 す る の で,ワ
ク チ ン 接 種 と発 病 リ ス ク と の 関 連
を 検 討 す る 時 結 果 に 影 響 を 与 え る5)16)27).
c)交
絡
要 因(A)と
疾 病(D)と
す る 要 因(B)が
例 え ば 飲 酒(A)と
肺 が ん(D)の
の で あ り,喫
ent association)で
た 診 療 所 で 個 別 接 種 を行 っ
(confounder,
く く,非 接 種 者 に は つ け 易 くな る(diagnostic
sus-
の
場 合 飲 酒 と肺 が ん の 関 連 は,喫 煙 に よ る 交 絡(con-
定 す る こ と と な る.ま
接 種 者 に は イ ン フ ル エ ンザ 様 疾 患 の 診 断 を つ け に
煙(B)
煙 と肺 が ん が 真 の 関 連 で あ る.こ
founding)の
の 後 の 有 熱 受 診 者 に対 し
関 連 は,喫
が 飲 酒 と肺 が ん の 両 者 と 相 関 す る た め に 生 じ た も
種 群 の発 病 頻 度 を多 目 に測
該 医 師 は ワ ク チ ン の有 効 性 を信 頼 し て
際 に は存 在 し な い
関 連 或 は 実 際 よ り強 い 関 連 を 認 め る こ と が あ る.
の で(recallbias),接
い る こ と が 多 い た め,そ
の 問 に そ の 両 者 と相 関
あ る た め に,実
種 者 に 比 べ て 症 状 を よ り詳 細 に 思 い 出 し て 答 え る
た 場 合,当
どが 考 え られ る。 これ らの
た め に 生 じ た 見 掛 け上 の 関 連(apparあ り,喫
confounding
煙 の こ とを交 絡 因 子
factor)と
イ ン フ ル エ ン ザ に 関 し て も,個
い う.
人の健康度 が ワ
ク チ ン 接 種 及 び 罹 患 の 両 者 と相 関 す る た め に(健
康 度 が 低 い 人 は 非 接 種 群 に 多 く,ま
た 罹 患 し易 い
と い っ た 傾 向),見 掛 け 上 ワ ク チ ン の 効 果 を 検 出 す
感 染症 学 雑 誌
第68巻
第11号
イ ン フル エ ンザ疫 学研 究 の原 理 と方 法
る と い う考 え 方 が あ る.し
標 を 用 い て"健
康 度"を
か しな が ら如 何 な る指
測 定 す る か に つ い て は慎
括
れ た 結 果 は,time-and
place-speciflc observation
外 的 妥 当 性(generalizability,external
イ ン フル エ ンザ の疫 学 研 究 の妥 当性 に及 ぼ す 影
響 を整 理 し た.但
し従 来 か ら指 摘 さ れ て い る よ う
に6)∼9)17),考 慮 す べ き 最 重 要 事 項 は 非 イ ン フ ル エ
ン ザ に よ る 結 果 の 希 釈,即
に よ るnondifferentiald
isease
validity)
と して は不 十 分 で あ る.内 的 妥 当 性 が 確 保 され た
研 究 の 積 み 重 ね に よっ て,abstract
statementが
universal
得 られ る.
6)免 疫,感
ちover-ascertaiment
ち
受性
ワ クチ ン の有 効 性 に関 す る疫 学 研 究 に お い て,
misclassiflcation
の誤 分 類 を避 け る努 力 をす る こ とに よ
疾 病 の 誤 分 類 に 次 い で 大 きな 影 響 を及 ぼ す の が,
ク チ ン有 効 性 に 関 して は相 当安 定 した疫 学
自然 感 染 に よ る免 疫(自 然 活 動 免 疫)で あ る1∼).
で あ る.こ
り,ワ
とい う基 本 原 理 が 示 す よ う に,あ る集 団 か ら得 ら
で あ り,そ の結 果 を一 般 化 す る際 の妥 当性,即
重 な 検 討 を 要 す る.
d)小
1301
のた めの方
小 学 児 童 を対 象 と した 殆 どの 調 査 が 全 学 年 ま とめ
法 と し て は,(1)観 察 期 間 を 最 流 行 期 間 に 限 定 す る,
て集 計 を行 っ て い るが,小 学 児 童 は ウ イ ル ス 暴 露
(2)厳 し い 疾 病 定 義(strict
研 究 を 実 施 す る こ と が 可 能 で あ る.そ
適 用 す る,
機 会 が 急 激 に増 大 す る年 齢 層 に あ る た め,低 学 年
(3)流 行 規 模 が 比 較 的 大 き な シ ー ズ ン に 調 査 す る,
と高 学 年 とで は感 受 性 が 異 な る.従 っ て全 学 年 ま
の3点
とめ て 接 種 群 と非 接 種 群 を比 較 す る と発 病 率 に差
criteria)を
が あ げ ら れ る5)9)13)16)17).
こ れ に 加 え,イ
ン フ ル エ ン ザ疫 学 研 究 の今 後 の
を認 め な い場 合 で も,低 学 年 に限 っ て比 較 す る と
連 す る個 人 の特 性 を明 らか に
有 意 差 を検 出 す る こ とが あ る.こ の よ う に学 年 で
し て バ イ ア ス や 交 絡 に つ い て も検 討 を 深 め る必 要
層 化 す る か補 正 を行 う こ と に よ り,明 瞭 な 結 果 を
が あ る.具
得 る こ とが 可 能 とな る`)16).成人 は豊 富 な ウ イル ス
発 展 の た め に は,関
体 的 に は 「b)選
示 し た 如 く,イ
択 バ イ ア ス 」の 項 で 例
ン フ ル エ ンザ の症 状 発 現 と関連 す
る こ とが 報 告 さ れ て い る,種
疾 患 をpotential
,個
考 え て情 報 を収
与 え る.な お,感 受 性 が低 い 者 が 存 在 す る こ とに
れ らに 関 す る研 究 は緒 に
康 度"と
い う 抽 象 的 概 念 を い き な り適 用 す る こ と は慎 む べ
康 度"を 表 わ す 指 標 と し て 非 流 行 期
の 欠 席 を 用 い た 報 告 が あ る が,こ
surrogate
variableで
あ る.疫
れ は明 らか な
学 研 究 は集 団 を観
察 す る の で 常 に あ る 程 度 の 誤 分 類 を 生 じ,一
希 釈 さ れ た 結 果 を も た らす.し
gatev
ariableに
類 す る の で,そ
ableで
う の で,そ
か し な が ら ,surro-
よ る分 類 は 真 の 特 性 を更 に誤 分
れ に も 拘 らずsurrogate
補 正 さ れ た 結 果 を,読
で は"健 康 度")で
般 に
の よ う な要 因 で 補 正 した 結 果 は解
釈 が 困 難 と な る.そ
者 は 真 の 特 性(こ
こ
補 正 さ れ た 結 果 と誤 解 し て し ま
に 述 べ て い る.イ
平 成6年11月20日
と短 絡 的 に解 釈 す る こ と は誤 りで あ る.
児 童 ・成 人 を問 わ ず抗 体 陰 性 の者 だ け を対 象 と
して 接 種 群 ・非 接 種 群 を設 け る こ とが 理 想 で あ る
が,こ
れ を 実 施 で き な い 場 合 に は,antibody
efficacyを 求 め る 方 法 が あ る12).流 行 前HAI価
1:128以
上 をprotective
levelと 考 え る と,以 下
の 式 で計 算 で き る.
(≦1:64の
=1-
発 病 率)-(≧1:128の
≦1:64の
発病 率
≧1:128の
≦1:64の
発 病 率)
発病 率
発病率
接 種 者 の み を対 象 と して 接 種 後 抗 体 価 を も と に算
の 影 響 は 深 刻 で あ る26).
ち 内 的 妥 当 性(internal
populationの
選 択 を示 唆 す る も の で あ り,「 ワ クチ ン効 果 な し」
vari-
な お 本 項 で は 調 査 対 象 集 団 か ら得 ら れ た 結 果 の
妥 当 性,即
よ って ワ ク チ ンの 有 効 性 を検 出 で きな い場 合,そ
の 結 果 は接 種 計 画 に お け るtarget
々 の 特 性 を 明 ら か に せ ず,"健
き で あ る."健
leve1の
抗 体 価 を保 有 す る者 の存 在 が 結 果 に大 き な影 響 を
付 い た ば か りで あ る5)16)17).
一方
にprotective
々 の健 康 状 態 や 基 礎
confounderと
集 す る こ と に な ろ う.こ
暴 露 経 験 を有 す るた め,既
validity)を
ン フ ル エ ン ザ 研 究 で は"DOTIP"
主
出 す る 方 法 と,接 種 者 と非 接 種 者 を ま とめ て 流 行
前 抗 体 価 を も とに算 出 す る方 法 が あ る.後 者 の 場
合,自 然 活 動 免 疫 と人 工 活 動 免 疫 の差 を考 慮 して,
廣田 良夫 他
1302
そ の他,「 ワ ク チ ン効 果 は 集 団 で は認 め て も,個
接 種 ・非 接 種 で 補 正 し な け れ ば な ら な い.Antibody
efficacyにachievement
≦1:64の
rate(こ
こ で は,
者 が 接 種 に よ り ≧1:128と
を 乗 じ た 数 値 がvaccine
な る 割 合)
efficacyに
相 当 す る と考
人 に お い て は明 確 で な い 」 とす る解 釈 が あ る.こ
の 表 現 自体 は誤 りで は な い が,接 種 を行 わ な い こ
との理 由 と し て は適 切 で な い.こ
こで 注 意 を要 す
る の は 「コ イ ン を1,000回 投 げ た 時 に表 が 出 る確 率
え る こ と が で き る.
7)そ
の他
は50%で
a)ワ
ク チ ン株 と 流 行 株
る確 率 は0%か100%で
ワ ク チ ン株 と流 行 株 の抗 原 性 の 一 致 が 話 題 とな
あ るが,今
投 げた コイ ン につ い て 表 が 出
あ る」とい う点 で あ る.即
ち1回 の 試 行 後 の確 率 は常 に0%か100%で
あ る.
る が,そ れ を判 定 す る 客 観 基 準 が あ る 訳 で は な い.
医 薬 品 の 開 発 や 新 た な 治 療 法 の 導 入 は 常 に集 団
1991∼92年
デ ー タ に 基 づ い て 進 め られ て い る.「 集 団 で は
… …,個 人 で は … … 」 とい っ た 解 釈 に よ り予 防 接
の シ ー ズ ン の 抗 原 性 の 一 致 をHAI価
で み る と,ワ
場 合,ホ
ク チ ン 株A/北
モ で1,024倍
京/352/89(H3N2)の
で あ っ た.こ
九 州 北 部 で 分 離 さ れ たA/北
倍,A/福
岡/C4/92と
256倍 で あ る.ま
は512倍,A/長
れ と比 較 し て,
九 州/2/91と
は64倍,A/佐
賀/30/92と
た 同 一 県 内 で もA/長
野/58/92と
は128倍
の 一 致 を 厳 密 に 論 ず る な ら ば,調
は256
は
野/62/92と
で あ る.抗
種 を否 定 す る こ とは,現 在 行 わ れ て い る多 くの 医
療 行 為 の 合 理 性 を否 定 す る の と同様 で あ る.ワ ク
チ ン に は"perfectly effective"な もの も な け れ ぼ,
"totally
ineffective"な
原性
査対象集 団 にお
も の も な い13).
4.お
わ りに
イ ン フ ル エ ン ザ ワ ク チ ン の 有 効 性 を 巡 っ て,我
け る 分 離 株 と比 較 し な け れ ば な ら な い こ と に な
が 国 で は 多 くの調 査 結 果 が これ まで に報 告 され て
る.従
き た.但
っ て 海 外 の 報 告 で も,closely
(related)
antigenically,antigenically
perfectly
matched,imperfectly
matched
similar,
論 す る 姿 勢 で 遂 行 さ れ て お り,「イ ン フ ル エ ン ザ の
など
matched,
と述 べ て い る に 過 ぎ な い.Perfectlyunmatched
と い う こ と は 殆 ど考 え られ な い の で,ま
疾 病 特 性 を 考 慮 し た 疫 学 研 究 手 法 」 と い う視 点 が
欠 け て い た こ と は 否 め な い.
ず堅固 な
デ ザ イ ン の も と で 調 査 を す る の が 先 決 で あ ろ う.
実 際,自 然 流 行 下 で のheterotypic
し そ の殆 ん どが 有 効 か無 効 か を性 急 に結
immunityに
関
世 界 で の1970∼93年
た.〔INFLUENZA
が あ る10)18)28)).
NATION)〕
果 の解釈
報 告 が あっ
and(VACCINE
or VACCI-
に よ る 検 索 で は4,078と
ル エ ン ザ 研 究 の 約1/4が
ワ ク チ ン 有 効 性 の 解 釈 に 際 し て は,流
とい う単 一 の キ ー
ワ ー ド に よ る 検 索 で は 合 計17,025の
す る研 究 で もワ ク チ ンの 有 効 性 を報 告 して い る例
b)結
の 研 究 動 向 をMEDLINE
で 調 べ る と,〔INFLUENZA〕
な り,イ
ンフ
ワ ク チ ン 関 連 で あ る.次 に
行 情 報,
〔INFLUENZA
果 の測定
TION)and
EPIDEMIOLOGY〕
指 標 ・測 定 方 法 な ど を 総 合 的 に 検 討 し な け れ ば な
と 合 計530の
報 告 数 と な る.こ
ら な い.特
銘 を 打 つ こ と な く実 施 さ れ た 多 く の ワ ク チ ン有 効
ウ イ ル ス 情 報,調
に 判 定 に 最 も大 き な 影 響 を 及 ぼ す
nondifferential
nullvalue方
査 対 象 集 団 の 特 性,結
disease
misclassificationは
向 の 結 果 を も た らす の で,ワ
常 に
クチ ン
接 種 と 発 病 リ ス ク と の 関 連 はunder-estimation
と な る.従
って 接 種 群 と非 接 種 群 で 有 意 差 を検 出
し な か っ た 場 合 の 解 釈 は 慎 重 を 要 す る.ま
た,接
and(VACCINE
or VACCINAに よ り検 索 す る
の 中 に は"疫
学"の
性 に 関 す る 集 団 調 査 が 含 ま れ て お り,Hoskinら
の 報 告7)30)も 当 然 検 索 さ れ る.こ
れ を発 表 年 別
(1970∼74,1975∼79,1980∼84,1985∼89,
1990∼93)に
み る と,80-107-83-103-157と
増 加 が 著 し い.こ
近 年の
の 中 で 著 者 名 か ら 日本 の研 究 報
種 群 と非 接 種 群 と の 間 に 例 え 小 さ く と も有 意 差
告 と 考 え ら れ る も の は4-0-3-3-8で
(nonzero
の 学 術 誌 に 発 表 さ れ た も の は16)-0-0-0-25)31)で
effect)を
認 め た な ら ば,関
連 の度 合 が
小 さ い た め に ワ ク チ ン効 果 を 取 る に 足 ら な い も の
と解 釈 す る こ と も で き な い26).
あ り,う ち 海 外
あ る.
こ れ ら の 数 値 を 直 ち に 研 究 の 質 と結 び 付 け る こ
感染 症 学 雑 誌
第68巻
第11号
イ ン フル エ ンザ 疫学 研 究 の 原理 と方 法
とは適 切 で な い が,現 在 まで 国 内 の学 会 や 雑 誌 で
発 表 さ れ た 多 く の 調 査 報 告 が,必
reviewを
ず し もpeer
受 け た もの ば か りで な い こ と は 明 ら か
で あ ろ う.同 時 に,一 定 の水 準 を確 保 した イ ン フ
ル エ ンザ 疫 学 研 究 が,如 何 に容 易 で な い か を窺 い
知 る こ と もで き る.
我 が 国 の イ ン フル エ ン ザ疫 学 研 究 は,単
にワク
チ ン の 有 効 ・無 効 の み を論 じる こ と に終 止 した 後,
急 速 に 興 味 の対 象 か ら外 れ つ つ あ る が,世 界 的 に
は イ ン フル エ ンザ対 策 と ワ クチ ン接 種 に 関 す る研
究 が 急 激 な増 加 を示 して い る.著 者 ら は も とよ り
ワ ク チ ンの 有 効 ・無 効 論 議 の た め に本 稿 を著 した
もの で は な い.イ
は,イ
ン フ ル エ ンザ の疫 学 研 究 の発 展
ス学,免
ン フル エ ンザ を取 り巻 く臨 床 医 学,ウ
疫 学,ワ
イル
ク チ ン学 な ど多 くの 分 野 に も有
用 な情 報 を もた らす こ と を可 能 に し,公 衆 衛 生 上
最 大 の 問 題 の1つ で あ るイ ン フ ル エ ンザ 対 策 の進
展 に 大 い に寄 与 す る こ と を確 信 す るか らで あ る.
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感 染症 学 雑 誌
第68巻
第11号
1305
イ ン フルエ ンザ疫 学 研 究 の 原理 と方法
Principles
and Methods
of Influenza
Field Evaluation
Yoshio
1)
Department
HIROTA"
of Public
Kure
countries,prevention
promoting the vaccination
hand,in Japan,there
has
social basis.This
is due
epidemiologic studies have
principles
efficacy.
and methods
General
& Masaro
Health,Faculty
2)
In Western
Epidemiology:With
of Vaccine Efficacy
Reference
to
KAJI2
of Medicine,
Kyosai
Special
Kyushu
University
Hospital
of influenza
has been a major
public health
concern,
program to high-risk individuals including the elderly.On the other
been no systematic approach to such a selective vaccination on the
to the deep-rooted skepticism on vaccine efficacy.A
number of
so far reported conflicting results in this country. We investigated the
of influenza
and methodologic
epidemiology
problems
focusing
on the field evaluation
of vaccine
in vaccine
field trials with naturally
occurring
influenza
antigenic
differences
between
the
vaccine
include;unpredictability
of the time of its occurrence;
already-immuned
individuals;indirect
effect
of hard
strains and epidemic viruses;preexistence
of
possible
difference
in the virus exposure
between
immunity
by vaccination
on nonvaccinees;
of cases, if not
compared
groups,particularly
when epidemic scale is small; possible misdiagnosis
laboratory-confirmed.
Tocopewiththese,the
on
following
measures
in conducting
are essential
epidemiologic
study
influenza.
1)Tnfluenza
epidemics
attention
should
different
locations.
2)It
be pain
show
differential
when analyzing
should be the first
step
of
occurrence
by time and place.
from various
the pooled data obtained
a research
to
consider
among subjects is caused by
respiratory
3)In
whether
influenza
the
virus
Therefore,much
study
samples
outbreak
at
of acute
exposures.
illnesses observed
to the dilution of outcome
general,faillings
to detect vaccine efficacy are attributable
number
of
cases defined by clinical symptoms
include substantial
with
noninfluenzal
illnesses;
To minimize this nondifferential
misclassificaacute respiratory
illnesses other than influenza.
confining
observation
period during the peak
tion,three
methods are thought to be important;
with laboratory
epidemic;applying
a strict criteria
to measure the outcome, preferably
with
large-scale
epidemic.
tion:and
conducting
the study in the season
the preexistence
of already-immuned
4)It
is also important to take into account
uals."Antibody
efficacy"
Besides,further
influenza
yielding
attack,
bias
平 成6年11月20日
is a keen
research
which affect
or confounding
index
is required
the validity
effect.
to assess
to clarify
of analytic
vaccine
the
effectiveness
individual
epidemiologic
in this
characteristics
examinaindivid-
instance.
related
to
study on vaccine efficacy by
Fly UP