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カザフスタン - Spire Research and Consulting
www.spireresearch.com カザフスタン 中央アジアの秘宝 © 2013 Spire Research and Consulting Pte Ltd カザフスタン : 中央アジアの秘宝 中央アジアは中世の時代、アジア経済の中心だった。中国、インド、中東、ヨーロ ッパを結ぶ交易路の交差点にあることから、豊かな成長を経験した。ところが、20 世紀の海上貿易の 興隆は、この交易路を奪ってしまった。しかし今、中央アジア は、エネルギーや耕地など、天然資源が豊富な急成長中の市場として、カザフスタ ンを中心に目覚めてきている。カザフスタンでビジネスを行う可能性は胸を躍らせ るものではあるものの、まだ課題は残っている。 中央アジア‐新たなシルクロード 文化、貿易と経済繁栄の豊かな歴史を持つ活気に満ちた地域、中央アジアが、 今、 世界中の投資家から注目を集めている。この地域には数々の経済的優位性がある。 中国、インド、 ロシア、トルコなど、大きな経済の交差路の戦略的な位置にあり、 天然資源が豊富、且つ、 高い成長の可能性を秘めている。 カザフスタン、アゼルバイジャン、 グルジア、アルメニア、ウズベキス タン、トルクメニスタン、タジキス タン、キルギス、モンゴルは、"新シ ルクロード"として定義されている 近年カザフスタン、アゼルバイジャン、 グルジア、アルメニア、ウズベキスタン、 トルクメニスタン、タジキスタン、キル ギス、モンゴルは、今後の経済成長を暗 示する"新シルクロード"1と定義されている。 "新シルクロード"は、4000 年に渡り、シルク、スパイス、紅茶、貴金属などの貴重 な商品取引のために、ヨーロッパ、アフリカとアジアを結ぶ貿易ルートを結んだ、 古代シルクロードの再出現である。今日の"新シルクロード"はアジア全域へ石油や ガスなどの高付加価値商品を輸出するものとなっている2。 1 2013 年 1 月 24 日 An Introduction to the Frontier Markets of “The New Silk Way” Part 1, Emerging Market Insider, Paul Henderson 参照 2 Ibid Page 2 カザフスタン - 中央アジアの重要資産 カザフスタンは、中央アジア最大の国で、世界で第 9 番目の国土面積を誇り、 2012 年時点で 1,590 万の人口と、2,717,300 平方キロメートルの国土を占める3。 1991 年にソビエト連邦からの独立を果たした後、国による大規模な経済改革が行な われた。 ソ連の支配下でカザフスタンは、ソ連をうまく無視することに苦しんだ。いくつか のインフラ 投資が行われたが、多くの場合、ソ連の国家安全保障に関連する目的 のためであった。品質の高い教育やビジネスは開発されないまま、ソ連の希少な高 付加価値商品の生産が中央アジア地域に置かれた。 現在のカザフスタンは、世界的観点から見ればまだ早期開発中だが、間違いなく中 央アジア地域の経済的なリーダーである。 中央アジアの大半の公開企業は、最も大きな時価総額がつき、国際的にもアクセス しやすいカザフスタン証券取引所(KASE) を経由して取引されている。2013 年中に は 3 社の新規上場、2015 年末までには 8 社の追加新規上場が計画されており、国内 外からのさらなる投資誘致も予定されている。 カザフスタンは何を提供すべきか? カザフスタンは、発展可能な投資先として、ゆっくりとその姿を現しつつある。そ の 理 由 は 以下の通りである: 堅調な経済成長 カザフスタンの経済見通しは明るく、2013 年~2016 年にかけて年平均 5.9%の GDP 成長率が予想されている4。この健全な成長見通しの大部分は石油産業の拡 大であるが、 3 4 少数の非石油部門の成長も見られる。 Kazakhstan Review 2013, Country Watch Inc より 2013 年 7 月 26 日抜粋 Kazakhstan Country data, Economist Intelligence Unit より 2013 年 7 月 30 日抜粋 Page 3 現在、カザフスタンの石油とコンデンセートの埋蔵量は、世界で 12 番目に ランクされている5 。政府はガス·パイプライン容量の拡大と、新たなパイプ ラインおよび生産施設の建設、ガスベースの発電産業の発展により、石油産業 の一層の開発を計画している6。 業界の専門家は、大規模な未開発の石油·ガス鉱床が、カスピ海の下に横たわ っているのではないかと推測しており、現在、これらの石油・ガスを採掘する ための大規模な探査プロジェクトが進行中である。この見通しのおかげで、同 国の石油産業は、国の 経済成長を促す主要な推進力であり続けるであろう。 カザフスタンの明るい経済的見通しに寄与するその他の要因は、非石油部門の 成長である。 リスクを分散するため、長期的には石油への経済の依存度を減 らすことに政府は取り組んでいる。金融サービス、インフラ、建設などが、リ スク分散の目的で開発されてきた基幹産業である。これらの産業への投資は、 固定資本貯蓄増に役立ち、消費者支出を促進し国の経済を牽引している。 良好なビジネス環境 近年、カザフスタンは良好なビジネス環境を築いていると称賛を得ている。 世界銀行によると、カザフスタンは、ビジネスの容易さが 183 カ国中 47 位に ランクされたている。この結果は 2011 年から 11 ランクのアップであり、この ランキング上昇は、"投資家促進"と "納税"の進歩によるものである。 法人税は 2009 年 30%から 2010 年 20%へ下がり、 2014 年には 15% になる予定 5 6 7 カザフスタン政府は 2011 年に"投資を誘致するための国家 計画"を採択した。その対策の中には、ビザや通関手続き の簡素化や、地域の市当局による外国人投資家のための特 別サービスセンター設立が含まれていた 7 。 加えて、政 Ibid Doing Business in Kazakhstan, United States Diplomatic Mission to Kazakhstan より 2013 年 7 月 31 日抜粋 2012 年 6 月, 2012 Investment Climate Statement – Kazakhstan, US Department of State 参照 Page 4 府は 2010 年に法人税を 2009 年の 30%から 20%に下げている。この数字は 2014 年に 15%へと、さらに低下すると予想されている8。 政治的安定 1991 年独立以降、カザフスタンは、民主主義と政治的安定に重点を置く立憲共 和国になった。平等な権利と機会均等は、国籍を問わず、すべての人に与えら れ、調和の取れた多民族環境を作りだそうとしている。 "戦略カザフスタン - 2050"の演説の中で、カザフ大統領は、主要な目標のひ とつは、多民族社会と多信条社会の維持であると述べた9 。これにより、 外 国人投資家を誘致するための必要な政治的安定が促進されるであろう。 戦略的立地 カザフスタンは、大西洋と太平洋の両方からほぼ等距離にあり、またヨーロッ パとアジアの中間という戦略的な位置にある。最も重要なのは、ヨーロッパと アジアの交差点に 位置するため、貿易の役目が保証されていることだ。ヨー ロッパと中国をカザフスタン経由で結ぶ、最近の新鉄道10の立ち上げにより、 この優位性は強化されている。 天然資源 カザフスタンが持つ最大の競争優位性のひとつは、天然資源の豊かさであろう。 元素周期表に記載されている 110 元素のうち、99 元素がカザフスタンで見つか り、60 元素はすでに抽出・使用されている11。 カザフスタンは、石油や天然ガスなどのエネルギー資源、ならびにチタン、マ グネシウム、スズ、ウラン、金や他の色の金属など鉱物資源が、世界で最も豊 富な国の一つである。 8 2010 年 11 月 5 日 Kazakhstan Defers Corporate Tax Cut, Global Tax News,参照 Official site of the President of the Republic of Kazakhstan, Strategy – “Kazakhstan – 2050”より 2013 年 8 月 1 日抜粋 10 Kazakhstan opens new Silk Road rail route, Cargonews Asia より 2013 年 7 月 26 日抜粋 11 About Kazakhstan, Oriental Express Central Asia より 2013 年 8 月 1 日抜粋 9 Page 5 Page 6 何に投資すべきか‐新興セクター カザフスタンの以下のセクターにおいて、輸出と投資のビジネス機会が急速浮上し ている。 建設 建設業界では、外国からの投資やパートナーシップの機会が多くなっている。 優良価格住宅プログラム 2020 の一環として、政府は 2015 年~2020 年まで、毎 年 130 万平方メートルの住宅増加を計画している12。これは、建設業界にとっ て、毎年 USD5.6 億ドルの投資流入となるであろう13。 銀行・金融サービス 2013 年、カザフスタンの銀行セクターは比較的不振な状況であるが、政府は、 銀行部門への信頼を回復するための措置を行っている。 ひとつの前向きな発展としては、BTA 銀行の準ソブリン債再編である。BTA 銀 行では、直接的な信用サポートがなくても、劣後ローンの構築や信用強化がで きる。このような発展は、投資家や預金者の懸念を緩和する可能性がある14。 ローンの名目成長率は、2012 年の約 10%から、2013 年には 20%弱になると予 想されている15。個人消費の伸びや、住宅用・商業用建物の建設が増加するに つ れ て 、 銀行融資も増加している。 インフラストラクチャー 政府は、カザフスタンのインフラをアップグレードするために、多額の投資を しており、 これはミャンマー、ベトナム、インド政府の動きと並行している。 2030 年までに、総インフラ投資は USD25 億ドル以上に達すると予測されており、 12 Kazakhstan Construction and Interiors, The ITE Group より 2013 年 8 月 1 日抜粋 Ibid 14 Industry Forecast - Banking Sector Still Recovering In 2013, Business Monitor International より 2013 年 8 月 1 日 抜粋 15 Kazakhstan Banking Outlook 2013, World Finance Review より 2013 年 8 月 1 日抜粋 13 Page 7 インフラ投資合計額の 40%が鉄道輸送、23%が高速道路の建設、25%がテレコ ミュニケーションセクター、12%が空気・水の輸送システムに使われる16。こ の部門の成長潜在性は高い水準で推移すると予想されている。 カザフスタン投資に関する変更 カザフスタンは大きな投資機会を提供しているが、現在の課題を理解した上で、上 手く市場に進出することが重要である。 脆弱なインフラストラクチャー 多くの旧ソ連国と同じように、カザフスタンが直面している最大の課題のひと つは、脆弱なインフラである。特に交通やテレコミュニケーション分野ではそ れが顕著である。 交通網の面では、カザフスタンには、組織的かつ信頼性の高い方法で貨物を輸 送する、 近代的な高速道路システムや鉄道網がない。テレコミュニケーショ ンサービスのインフラにおいても、同様に、国の急速な経済成長と調和してい るとは言えない。インターネットや携帯電話のサービス範囲は限られており、 一部の地方では、今なおソ連時代からの時代遅れの通信機器を使用している17。 脆弱なインフラのため、原材料の調達フローだけでなく、サプライヤーとディ ストリビューターが連絡を取り合うことに関しても、困難が生じている。 汚職 2012 年のトランスペアレンシー· インターナショナルの汚職認識 指数によると、カザフスタンは 183 カ国中 133 位にランク されている 政府の反汚職キャンペーンと有罪官僚の解 任にもかかわらず、汚職は蔓延した まま である。2012 年のトランスペアレンシー· インターナショナルの汚職認識指数による と、カザフスタンは 183 カ国中 133 位にランクされた。これは、 2010 年から 28 位の下落である18。 16 17 18 Kazakhstan Transport and Communications, Embassy of the Republic of Kazakhstan より 2013 年 8 月 1 日抜粋 Ibid Transparency International, Corruptions Perception Index 2012 より 2013 年 8 月 1 日抜粋 Page 8 Page 9 スキル不足 スキル不足もまた、カザフスタンの大きな課題である。カザフ統計庁によると、 国内での スキル不足が増加の一途をたどっている。2013 年 1 月の時点では、 最大の労働力 不足は製造業で、約 1 万人の労働者が不足しているとされてい る。次いで建設業界では約 5,000 人の不足、ヘルス·ソーシャルサービス部門 では、3,000 人の労働者不足がおきている19。 政府は人々のスキルと、持続可能な成長の間にある、高い相関関係に注目して おり、現在、金融支援政策により、より多くの学生が、技術的なスキルを身に 着けられるカザフスタンの民間機関に入れるよう支援している。そのような政 策にもかかわらず、この問題は未だ深刻な課題をもたらしているため、多くの 投資家は、この問題を軽減するためには、外国人労働者に頼る必要があるかも しれないと考えている。 結論 確かにカザフスタンは、現在外国人投資家を誘致するための、透明かつ効果的なビ ジネス環境を作りだすことに取り組んでいるが、脆弱なインフラと高い汚職は、ソ 連時代から依然として残ったままである。そのため企業は、ビジネスプランを実行 する前に、慎重に計画を練る 必要がある。 特に、企業は投資案件に署名する前に、まずは人材確保に関する合意を政府と締結 す る 必要がある。 課題が多々あるにもかかわらず、投資の見通しはポジティブなままである。 フ 政 府 カザ は これらの課題に対応する意思を示している。1991 年以来の再編成の取り組みは、強 力な 19 経済成長を促し、市場経済へ移行する国の能力を実証した。最も重要なのは、 2013 年 5 月 3 日 Kazakhstan – Skills Shortage Worsens, Staffing Industry Analyst 参照 Page 10 カザフスタンの政治的安定、豊かな資源と良好なビジネス環境であり、未開発の機 会を探している企業にとっては理想的な投資先である。 経済が開放し続けるにつれて、より多くの外国企業がカザフスタンの市場に参入す ることが期待されている。建設、インフラ、エネルギー、鉱業業界の関係者は、後 発市場参入にもビジネスチャンスがあるということを確証する為に、今後の情報に 注意を向け続ける必要がある。 Page 11