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GISなどの新事業にも情熱を傾ける ネットワーク総合
109 株式会社エヌ・ティ・ティ エムイー http://www.ntt-me.co.jp/ GISなどの新事業にも情熱を傾ける ネットワーク総合エンジニアリング 企業 東日本エリアに17の事業所を持ち，法人・個人向けのワンストッ プ・トータルソリューションと基幹ネットワークの設計から保守ま でを手掛けるエヌ・ティ・ティ エムイー（NTT-ME）．空間基盤情 報（GIS）ビジネスや中小企業・SOHOを対象にしたソリューショ ンにも果敢に取り組んでいる．その様子を，同社の大木一夫社長に 詳しく伺った． 一般市場向けソリューションと NTT東日本の基幹ネットワークが主業務 ◆御社の設立背景をお聞かせください． 1999年にNTT-TE関東，NTT-TE東京，NTT-TE信越が NTT-ME 大木一夫社長 こういった一般市場向けサービスの売上が全体の約４割 を占めており，現在でも当社のコアビジネスの１つとなっ ています． ◆基幹ネットワーク関連ではどのようなことをされている のですか． 合併して生まれたのがNTT-MEです．その後，2002年の NTT東日本の基幹ネットワークにおける設備の企画・構 NTT構造改革によるグループ会社再編により一般市場向け 築から運用・保守に至るまでの業務を，24時間365日体 のソリューションビジネスを主な業務としてきましたが， 制で実施しています．ひかり電話をご利用のお客さまのご 2005年，NTT東日本の基幹ネットワークの設計，運用， 相談先となる「光サポートセンタ」や，NTTグループの 保守というミッションがあらたに加わって，現在の業務形 ネットワークの監視や制御を行う「NTT東日本ネットワー 態になりました． クオペレーションセンタ」も私たちの管轄です． 当社は「ネットワーク総合エンジニアリング企業」とし また，ご存じのとおり，現在NTTグループでは世界に先 て，広範囲な業務にかかわっています．現在の社員数は派 駆けた次世代ネットワーク（NGN）を推進しています． 遣の方を含めると１万人以上．北海道から長野，新潟まで 2009年度中にそのネットワークを東日本のBフレッツエ 東日本全域で業務にあたっています． リア全域に拡大するためのインフラ構築も，鋭意進めてい ◆一般市場向けのソリューションにはどのようなものがあ るところです． りますか． ◆NGNに関連した取り組みについてお聞かせください． 例えば，高品質なネットワークの構築を希望する法人の ネットワークや端末が高度化する中，お客さま自身では お客さま向けに，コンサルティングから構築，保守運営ま 解決できないような問題が発生することがあります．その でを手掛ける「XePhion」というトータルソリューション ような際に，リモートサポートや訪問サポートを含めて， サービスがあります．それから，ブロードバンド・プロバ フル・ワンストップでサポートできる体制づくりをしてい イダ「WAKWAK」も当社のサービスです． ます．NTT東日本のモットーでもある「安心・安全・信頼 また，中堅・中小企業を含む法人のお客さま向けの各種 サポートサービスや，マンション棟内への光配線による高 速インターネットやデジタル放送対応サービス，セキュリ ティサポートなど，ブロードバンド時代に必要な，かゆい ところに手が届くような各種サービスを取りそろえていま す．後述しますが，その中でも電子地図を利用したサービ ス分野が特に伸びています． 50 NTT技術ジャーナル 2009.10 の向上」を実現するために，今後はさらに充実したサポー ト体制を整えていくつもりです 高付加価値の電子地図づくりや 小規模ネットワークサービスにも着手 ◆現在特にどの分野に注力されていますか． 2009年7月に組織変更を行い，空間基盤情報（GIS）ビジ ネスを部門から事業部に格上げしました．当社が開発を手掛 自発性と実地技術の高い技術者を育成 NTTグループ企業との交流もさかん けている電子地図は，日本の中での網羅性と精度に優れてお り，自治体の防災地図にも採用されています．今後は，その 電子地図に不動産登記情報などネットワーク上で閲覧できる 付加情報を加えることによって，さまざまな市場への進出を ねらっています． ◆人材育成はどのように行われていますか． 当社では「自ら進ん で実践できる人材」 もう１つ，中小企業・SOHO向けのサポートサービスの充 「知識だけでなく実技 実も図っています．これまでは社内にITの専門家もいる大企 もできる人材」の育成 業の全国規模のネットワークやシステムを扱うことが多かっ を目指しています． たのですが，中小企業やSOHOなどでは社内にプロIT技術者 NTT東日本研修セン がいないことがほとんどですから，私たちが技術コンサル タ内にある，当社の東 ティングからネットワークはもちろんLAN設置，運用，保守 日本テクニカルセンタ サポート，アプリケーション関連までを一元的にフルサポー にて直営工事等も交え トできればと考えています． ながら実践的プロの技 ◆事業拡大にも精力的に取り組まれているのですね． 術者の育成を図ってい ええ，ただむやみに手を広げすぎないようにとは心掛け ます．当センタには光 大木一夫社長 ています．潜在的なニーズがあり，私たちの技術・強みを ファイバや局内装置等，NGNにも対応する種々の屋内外の 活かすことのできる分野でお役に立っていくというのが基 実設備が用意されており，実際の設備を使いながら技術を 本的なスタンスです． 習得することができます． 新事業といえば，2011年7月に地上アナログTV放送が 地上デジタルTV放送へ完全に切り替わる予定で，地上デジ タルTV放送を視聴するには地上デジタルTV放送に対応し ◆御社の社風はどのようなものですか． まず何よりも明るく元気で風通しの良い社風を目指して います． たTVやチューナー等を購入する必要があります．しかし， また，世界に先駆けたNGN技術をはじめとするプロの技 経済的な理由によりそれらの対応が困難な世帯に対しては， 術者集団を目指しており，3年前から採用を始めた若手技術 国家施策として無償で地上デジタルTV放送対応の簡易な 者も，切磋琢磨しながら成長してくれています． チューナーを給付することが決定しています．総務省が， 当社は17の事業所をはじめ，多くのロケーション，多様 その簡易なチューナーの設置やアンテナ改修などを行う事 な業務内容を持っていますが，考え方がバラバラにならな 業者を公募し，当社が2009年度分を担当することに決ま いよう，企業ブランドやサービスコンセプト，行動指針を りました．今後，年度ごとに事業者が採択されるのですが， 定めて，全社員に広く浸透するように努めています．事業 2009年度分だけでもかなり大掛かりな事業となります． 所間での交流や応援も活発で，改善施策の発表会で全事業 高度な技術と経験を活かして 「売上高1 000億円」を実現 ◆御社の強みはどのような点にありますか． 何といってもネットワークに関する技術です．当社の業 務はいずれも，優秀な技術者たちに支えられています． NTTグループは100年以上にわたり，日本の情報通信イ 部が集うこともありますし，お互いに刺激しながら知恵を 出し合っています．私自身も全国の各事業所等各職場を年 １度は訪問するようにしており，お客さま最前線を訪れる ことにより，スタッフの士気の高さや問題点などを肌で感 じています． ◆NTTグループ内での交流も活発ですか． NTTネオメイト，NTTコミュニケーションズ，NTTドコモ， ンフラを支えてきました．当社ではその経験とノウハウを などの各社とさかんに交流しています．NTTネオメイトは 活かして，高度なネットワーク，端末，アプリケーション 西日本で当社と同じような業務を行っていますから，お互 に関するサービスをワンストップで提供していきたいと考 いに学ぶところが大きいのです．幹部どうしの打ち合わせ えています． が定例となっており，施策を取り入れ合うなど，実りある ◆今後の目標を教えてください． 時間を過ごしています．東西で異なっていた工法やマニュ 2005年，新生MEが発足してから数えて10年後の アルも，共通化するよう努めています． 2015年までに「キャリア系ビジネスの生産性50％アップ」 日本のどこにいても，そして世界のどこにいても，お客 と「ソリューション系ビジネスの売上高1 000億円」とい さまに安心で便利なネットワークを使っていただきたい． う目標を立てました．いずれも簡単な目標ではありません その願いをかなえるために，私たちは日々地道な活動を続 が，全社員の知恵を結集して明るく元気にチャレンジして けています． いきたいと考えています． NTT技術ジャーナル 2009.10 51 担当者に聞く 高精度・広範囲な空間情報コンテンツ 企業向けソリューションの提案も ネットワークビジネス事業本部 空間基盤情報ビジネス事業部 事業部長 南橋 丈二さん 少ないため，成功事例が少ないのが現状ですが，弊社では 実用に供するGIS構築をお手伝いすることができます． 防災管理やTV報道など 幅広く活用されている「GEOSPACE」 ◆現在までにどのようなサービスを実現してきましたか． ◆空間基盤情報ビジネス事業部の業務内容を教えてください． コンテンツ提供では，単なる提供のみではなくお客さま 現在取り組んでいる事 の要望に応じたデータ加工の提供から，日々の更新のデー 業領域は大きく分けて2 タを都度要求に応じて提供できます．例えばNHKのニュー つあります．1つは法人 ス番組では，事件や事故が起こった現場を写した航空写真 向け空間情報コンテンツ もご依頼の都度，当社のストックからリアルタイムに提供 の販売です．空間情報の しています． フレームワークとなる電 さらに，ネット配信サービスとしてのSaaSの具体的な 子地図情報（製品名 事例として，不動産エリアマーケティング情報提供サービ 「GEOSPACE」）と，そ ス「GEOSPACE AIMZ」があります（図）．不動産登記情 の電子地図上の付加価値 報をリスト化して閲覧でき，物件をデジタル地図や航空写 情報となる空間情報とし 真で確認することも可能です．不動産の取引経緯に関して て弊社では新築情報，不 動産登記情報，画像コン 細かいデータまで網羅しているので，特に不動産や金融関 南橋丈二事業部長 テンツ，道路横断測量映 係のお客さまからお問い合わせをいただいています． 一方，SIビジネスでは，某省庁の高度防災システム，自治 像などニッチな空間情報も提供しています．地図情報の市 体のGISサービス，民間企業におけるお客さま管理から施設 場は25 000分の1の小縮尺と2 500分の1の大縮尺の2つ 管理まで幅広い業種のSIに取り組んでいます．最近では，農 が主な市場です．当社では主に後者の「大縮尺」がメイン 地管理や道路管理などでもご依頼をいただいています． コンテンツです．個々の建物，車道，歩道などの地物を詳 ◆他の事例についても教えていただけますか． 細に表現した精度の高い製品です．日本国土全体約38万平 少しユニークなケースでは，GISを屋外の現場で使うた 方キロメートルのうち約27万平方キロメートルと，他社よ めに，PND（パーソナルナビゲーションデバイス）に大縮 りも広い地域をカバーしています． 尺地図とGISアプリケーションソフトウェアを組み込んだ もう1つのビジネスは，これら空間情報をハンドリングす 「GEOSPACE PND」の開発があります．PNDは4.3イン るためのシステムソリューション提供です．SIビジネスの チと見やすく扱いやすいサイズで，落としても大丈夫，雨 中でも空間情報を扱うためには必ずGIS（地理情報システ や寒さにも強いという堅牢防沫設計された製品です． ム）がベースになります．私どもの事業部では，NTTの施 2008年７月には，このPNDが配達業務用，施設点検用に 設管理系のGISシステムは10年前から手掛けております 利用されました．目的地まではナビゲーションとして使う が，これらの実績をベースに，一般市場におけるさまざま ことができ，タッチパネル方式で配達記録の入力が可能， な業界のGISのサービスを提供しています．国内外の市場 で開発されたものを含めた多数のGISミドルウェアを扱い， お客さまの利用形態に最適なプラットフォームを選定して， システム開発にあたっています． ◆貴事業部の強みはどんなところにありますか． 私たちの事業部には現在34名のスタッフが在籍していま すが，業界では珍しい特徴として空間情報コンテンツの製 作とソフト開発の双方を経験した人材が多く在籍していま す．そのため，お客さまにソリューションを提案する際に， 必要な複数のGISミドルウェアの開発と，データベースの 構築や，空間情報を流通させるためのネットワーク構築に 関する幅広い知識と業務経験を有していることが強みです． 国内でこれらGIS系システム全体の設計経験者は，非常に 52 NTT技術ジャーナル 2009.10 図 GEOSPACE AIMZの表示画面例（対象物件の抽出リ ストと該当エリアの航空写真および公図を表示） ■社員のための実習施設 2007年に開設されたNTT-ME東日本テクニカルセンタは，実践 的技術力を高めるための実習施設で，東京都調布市の閑静な住宅街 の一角にあります．NGNや光ファイバ等の実設備が研修用に整備 され，プロの技術者を育成するとともに新入社員の実技研修も行っ ています（写真1，2） ．例えばアクセス系については，昇降等安全 写真2 作業の向上および技術力の向上，電柱の新設撤去・架空ケーブル敷 設の研修を行っています．敷地内には高所作業車が5台あります． 写真1 ■電柱作業初体験 実際に高所作業車に載り，電柱作業を体験させていただきまし た！ まず，安全帯を腰にセット（意外と重いです），ヘルメット をかぶり，軍手を着用，いざ作業車へ．10 mの高さでの作業は危 険であるのはもちろん，非常に暑かったです（写真3∼5） ．体験し た日は快晴・無風でしたが，雨・豪風での作業はさらに危険が伴い ます．実際に体験して，日々工事をしている方々の苦労が身にしみ て分かりました． データをPCに転送するのも簡単というものです． 写真3 写真4 写真5 れるとイメージしてください．マンホールの大きさがプラ また，防災システムの一環として，3次元地図のグラフィッ スマイナス約20センチの精度で調べられるなど，高い精度 クで浸水や土砂崩れなどのシミュレーションも行える等，3 が特徴です．前年度末に開発検証しましたが，早速今年 次元GISで地盤の起伏や建物の高さなどを表現し，施設管 ファーストユーザが得られました．将来的にはさまざまな 理のために空間解析する要望にも対応したサービスを提供 業界からさまざまなニーズが創出されるのではと期待して しています．航空写真も併用しているのでリアルに見られ います． るだけでなく，実世界の空間解析結果を具体的な数値とし ◆今後はどのような分野への進出をお考えですか． て確認することもできるのです． 関連情報はこまめにアップデート 今後はコンシューマ向け事業も視野に 現在のところ，いわゆるBtoBのサービスを提供していま すが，今後は事業領域を一般コンシューマ向けにも展開し ていけたらと考えています．GEOSPACEの特徴は，大縮 尺の地形と住所の網羅性ですが，マス向けには視認性向上 ◆地図情報はどのくらいの頻度で更新されているのですか． のための地図デザイン，目標物名称や道路情報の充実など 都市部の撮影周期は短いエリアで１年半から2年ほどで， が必要であるという課題があります．これらすべてのコン 山間部などはもう少し頻度が低くなります．例えば，つく テンツが整備されてから販売するのではなく，まずは，そ ばエクスプレス沿線や再開発地区のように，経年変化が早 の時点で所有する個々の位置情報コンテンツを素材提供す い地域は更新頻度を高くして，最新情報を地図データに反 るなど，市中の空間情報コンテンツとの組み合わせにより， 映しています． 結果的にユーザが満足するコンテンツをそろえ市場拡大に また，現地調査やデータ入力・検査をNTTグループの施 つなげたいと思っています．さらに，個人・法人が活動す 設管理の業務スキームを活かして日々更新しています． る中では，位置情報に関連する空間情報は限りなく存在し ◆車両カメラでの測量も手掛けていらっしゃいますね． ていますので，いまだ未開拓の高付加価値となる空間情報 ええ，道路周辺の景観や構造物の位置情報を正確に計測 するために，全方位カメラ4個，位置計測用ステレオカメラ を創造し，ユビキタス社会の利便性につなげていきたいと 考えています． （インタビュー：村上百合） 2個，高度GPSセンサ3個を搭載した車両を走らせていま す．撮影映像にX，Y，Z軸が埋め込まれたデータが収集さ NTT技術ジャーナル 2009.10 53