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本文 - 北海道

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本文 - 北海道
平成 18 年度
北海道包括外部監査の結果報告書
随意契約について
北海道包括外部監査人
弁護士
中嶋
恭介
Ⅰ
監査の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
Ⅱ
監査結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
第1章 北海道における随意契約・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4
一 北海道における随意契約の根拠規定・・・・・・・・・・・・・ 4
二 北海道における随意契約の概況・・・・・・・・・・・・・・・13
三 監査対象の選定理由及びその経過・・・・・・・・・・・・・・15
四 総論の最後に(随意契約の例外性の再確認)・・・・・・・・・ 20
第2章 北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係の1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」についての監査
結果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
一 総 論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・29
二 個別契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・34
三 小 括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 140
第3章 情報関連業務委託契約における随意契約についての監査結果 146
一 総 論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 146
二 個別契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 157
三 小 括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 221
第4章 その他の随意契約についての監査結果・・・・・・・・・・ 235
一 総 論・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 235
二 個別契約・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 243
三 小 括・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 306
第5章 北海道における随意契約の公表制度について・・・・・・・ 313
一 はじめに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 313
二 北海道における随意契約の公表制度の状況・・・・・・・・・ 313
三 国及び他府県のインターネット利用による公表状況・・・・・ 324
四 北海道における公表制度の問題点と改善提案・・・・・・・・ 327
Ⅲ
包括外部監査の結果に添えて提出する意見・・・・・・・・・・・・ 329
Ⅰ
監査の概要
1
外部監査の種類
地方自治法第 252 条の 37 第 1 項に基づく包括外部監査
2
選定した特定の事件(テーマ)
随意契約について
3
外部監査の対象
以下の北海道本庁各部の随意契約のうち、委託に関する契約を対象とした。
4
・
北海道総務部
・
北海道知事政策部
・
・
北海道企画振興部
北海道環境生活部
・
北海道保健福祉部
・
北海道経済部
・
北海道農政部
・
北海道水産林務部
・
北海道建設部
・
北海道出納局
外部監査の対象期間
原則として平成 17 年度の契約を対象とした。
ただし、必要に応じて平成 16 年度以前の事業年度も対象とした。
5
特定の事件(テーマ)を選定した理由
地方公共団体の契約はあくまでも競争入札が原則であり、随意契約は例外的な契約方
法である。
また、今日では行政手続の透明性、公正性の確保が強く求められており、この観点か
らも随意契約選択は慎重にならざるを得ない。
入札手続に関し、平成 14 年に「入札談合等関与行為防止法」
(いわゆる「官製談合防
止法」
)が制定され、本道でも、平成 15 年に岩見沢市の発注工事に関し同法が適用され、
その後平成 16 年には新潟市の発注工事に関し適用され、
社会の注目を浴びるに至った。
その後も競争入札手続については、指名競争入札のあり方を巡って論議されるなど、
1
より透明性、公正性を目指しており、こうした入札制度の改善を支えるためにも、随意
契約の運用はより厳格になされる必要がある。
上記を踏まえ、北海道における随意契約が、適正に行われているかどうかを検証する
ことには、重要な意義があると考え、特定の事件(テーマ)として選定した。
6
外部監査の方法
(一)監査の視点
前記理由で述べたように、地方公共団体の契約はあくまでも競争入札が原則である
という理念を念頭に置き、また、随意契約のうち委託契約によるものを監査対象とし
たことから、委託の目的の必要性、契約金額の根拠等を確かめる必要があると考え、
主に以下の基本的視点をもって監査を進めた。
①
委託の必要性・有効性が認められるか。
②
随意契約に拠った理由ないしは相手方選定の判断過程は適正か。
③
契約金額は合理的な算定に基づいているか。
(二)監査手続
契約関係の書類の検討、各担当部局からのヒヤリング等を行った。
7
外部監査の実施期間
平成 18 年 11 月 7 日から平成 19 年 2 月 28 日
なお、平成 18 年 4 月 1 日から平成 18 年 11 月 6 日までは事前調査期間と位置付けて
いる。
8
外部監査の実施体制
(一)包括外部監査人
弁護士
中
嶋
恭
介
正
史
(二)包括外部監査人補助者
公認会計士
庄
司
弁護士
青
木
豪
弁護士
朝
倉
靖
2
9
利害関係
包括外部監査の対象とした事件につき、包括外部監査人および補助者は、地方自治法
第 252 条の 29 の規定により記載すべき利害関係はない。
3
Ⅱ
監査結果
第1章 北海道における随意契約
一
北海道における随意契約の根拠規定
1
随意契約の法令上の位置付け
随意契約を論ずる前提として、法令上、随意契約がどのように位置付けられているか、
随意契約を行うことができるケースとしてどのようなものがあるのか、といった点を整
理しておく必要がある。
「Ⅰ監査の概要」の「特定の事件(テーマ)を選定した理由」にて述べたとおり、随
意契約は例外であり、随意契約を行うにあたっては、恣意的な判断は許されず、すべか
らく法令上の根拠規定を有しなければなければならない。
この点、随意契約を行うことのできるケースとしては、地方自治法(昭和 22 年法律第
67 号
以下、
「法」という。)第 234 第 2 項を受けた地方自治法施行令(以下、
「施行令」
という。)第 167 条の 2 第 1 項において 9 つの類型が規定されている。
そして、その他関連政令、北海道財務規則(以下、「財務規則)という。)及び同運用
方針(以下、
「運用方針」という。)において、更に詳細に随意契約できるケースが類型
化されており、後述のとおり、結論としては、
(分類の仕方にもよるが)北海道における
随意契約には 33 の類型があると考えられる。
以下では、随意契約ができる場合の法令上の仕組みについて整理する。
(一)地方自治法における規定
法第 234 条第 1 項では、
「売買、貸借、請負その他の契約は、一般競争入札、指名競
争入札、随意契約またはせり売りの方法により締結するものとする」と定められてお
り、同条第 2 項では、
「前項の指名競争入札、随意契約またはせり売りは、政令で定め
る場合に該当するときに限り、これによることができる」とされている。
すなわち、地方公共団体が随意契約をする場合は、法の委任を受けた政令の規定が
ある場合に限られることとなる。
そして、随意契約ができる場合を定める政令として、①施行令第 167 条の 2 第 1 項
第 1 号から第 9 号と、②地方公共団体の物品等または特定役務の調達手続の特例を定
める政令(以下「特例政令」という。
)第 10 条第 1 項第 1 号から第 6 号がある。
以下、それぞれを整理する。
(二)地方自治法施行令の規定内容
施行令第 167 条の 2 第 1 項では、第 1 号から第 9 号まで、随意契約できる場合が規
定されている。これらの規定は制限列挙であり、地方公共団体の規則等により自由に
増加することはできない。以下、各号ごとに規定の概要を整理する。なお、施行令を
はじめとした具体的な条項については、本章末尾にまとめて掲載しているので参照さ
4
れたい。
(1)第 1 号(金額随契)
便宜上、
「金額随契」と呼ぶこととする。地方公共団体の事務量の増加した今日に
おいて、契約金額が低廉なものであっても、すべて競争入札によらなければならな
いとなれば、行政運営の効率化が阻害されるおそれがある。そこで、施行令では、
一定の上限金額の範囲内での随意契約の締結が認められている。
そして、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 1 号の規定を受けて、財務規則では、金額
随契によることができる上限を契約類型ごとに定めている(第 162 条の 2)。
その具体的内容は下記のとおりである。
記
工事又は製造の請負
250 万円
財産の買入れ
160 万円
物件の借入れ
80 万円
財産の売払い
50 万円
物件の貸付け
30 万円
前各号に掲げるもの以外のもの
100 万円
(2)第 2 号(特命随契)
便宜上、
「特命随契」と呼ぶこととする。「性質又は目的が競争入札に適さないも
の」について、随意契約によることが認められている。
例えば、非常災害時に被災者に必要な物資を売り払うときなどに、競争入札に付
していたのでは、被災者救援に支障を来たすであろうし、特殊な技能を必要とする
事業において当該事業を遂行し得る技能を有する者が他に存在しない場合は競争入
札を行う余地はなかろう。
このように、競争入札に適さない契約が一定程度存在することは確かであるが、
他方で、どのような場合に、
「競争入札に適さない」と考えるべきかは重要な問題で
あり、具体的なケースの想定が不可欠である。
この点、北海道では、運用方針第 3 節(随意契約)関係第 1 項において、19 の類
型が具体的に定められている。
その具体的内容は下記のとおりである(なお、下記は一部を省略しており、正確
な全文は本章末尾に掲載する。)
。
なお、随意契約のうち、特命随契を根拠とするものが金額随契を除く随意契約の
中に占める比率は高く、本件監査においても中心的なテーマとして位置付けている。
記
(運用方針第 3 節(随意契約)関係第1項第 1 号から第 19 号の規定内容)
1号
道の行為を秘密にする必要があるとき
2号
3号
契約の目的物が代替性のないものであるとき
物品の保管をさせるとき
4号
試験場、学校その他これに準ずるものの生産に係る物品を売り払うとき
5号
道の需要する物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるために必要な
物品を売り払うとき
5
6号
条例の規定により財産の譲与又は無償貸付をすることができる者にその財
産を売り払い、又は有償で貸し付けるとき
7号
非常災害による被災者に必要な物件を売り払い、又は貸し付けるとき
8号
外国と契約するとき
9号
国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。
)又は地
方公共団体(地方独立行政法人を含む。)若しくは慈善のために設立された救
済施設と契約(政令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く。)
をするとき
10 号
軽易な工事を関係住民の共同請負に付するとき
11 号
法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくは
その連合会の存立を援助するためこれらの設立目的に基づく事業についての
契約(政令 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く。
)をすると
き
12 号
個々の中小企業者では履行できない契約につき、官公需適格組合の証明を
有する事業協同組合、事業協同小組合若しくは協同組合連合会又は商工組合
若しくは商工組合連合会の保護育成のためこれらの者と契約するとき
13 号
14 号
営利を目的としない学術又は技芸の奨励のためこれらの者と契約するとき
公用、公共用又は公共の利益となるべき事業の用に供するため必要な物件
を直接公共団体又は事業者に売り払い、貸し付け、又は信託するとき
15 号
土地又は建物を特別の縁故のある者に売り払い、又は貸し付けるとき
16 号
業者が事業着手後放棄した工事等を他の業者に継続して施行等をさせると
き
17 号
庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く。
)に委託するとき
18 号
委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難
いものを委託するとき
19 号 その他特に知事が必要と認める契約をするとき
(3)第 3 号(特定随契 1−社会福祉関連)
第 4 号と共に「特定随契」と呼ぶこととする。一定の法令上の根拠を有する社会
福祉施設等の製造に係る製品の購入、役務の提供に関する契約について、随意契約
によることを認めたものである。
本号を根拠とする随意契約締結の相手方は、身体障害者更生施設、精神障害者授
産施設、知的障害者授産施設、シルバー人材センター等であり、これら施設ないし
組織の支援という政策目的に基づいて、競争入札によらない契約類型を認めている
ものである。
なお、次に述べる第 4 号(特定随契 2)もあわせて、特定随契に関して、財務規
則では、発注の見通し、契約締結しようとするとき、契約を締結したとき、の 3 つ
の時期に公表すべき事項を定めている(162 条の 3)
。さらに、北海道では、
「特定随
意契約に係る事務取扱要領」を定め、公表や相手方選定方法等につき、具体的な手
続を定めている。
(4)第4号(特定随契 2−新商品開発関連)
6
上記のとおり、第 3 号と並んで「特定随契」と呼ぶこととする。新商品の生産に
より新たな事業分野の開拓を図る者として認可を受けた者から、新商品を買い入れ
る契約について、随意契約によることを認めたものである。
新たな事業分野の開拓は、経済活動推進の原動力となり得る可能性を秘めている
が、他方で既存の価格競争原理には馴染まない要素があり、これを積極的に育成す
るという行政目的に基づいて、競争入札によらない契約類型を認めているものであ
る。
なお、財務規則及び特定随意契約に係る事務取扱要領の適用の対象となることは
第 3 号と同様である。
(5)第 5 号(緊急随契)
便宜上、
「緊急随契」と呼ぶこととする。臨時急施を要する際に、時期を失せずに
事態を処理することができるよう随意契約によることが認められている。例えば、
災害の際、土砂崩壊により交通が遮断したような場合に行う土砂取り除き工事等が
典型例である。
なお、「緊急性」の判断基準に関し、運用方針では、
「天災地変その他の緊急事態
のため、競争入札の方法によっては契約の目的を達することができないときをいう」
と定め、その内容を具体化している(運用方針第 3 節(随意契約)関係第 2 項)。
(6)第 6 号(不利随契)
便宜上、
「 不利随契」と呼ぶこととする。競争入札をすることによって、かえって、
地方公共団体が損害を被るおそれがあるときに随意契約によることができるとした
規定である。
なお、運用方針では、
「現に契約履行中の工事、製造又は物品の買い入れに直接関
連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利である場合等を
いう」と定め、その内容を具体化している(運用方針第 3 節(随意契約)関係第 3
項)。
(7)第 7 号(有利随契)
便宜上、
「有利随契」と呼ぶこととする。時価に比して著しく有利な価格で契約を
締結することができる見込みのあるときに随意契約によることができるとした規定
である。
なお、運用方針では「①契約の相手方が道の必要とする物件を多量に所有し、又
は道の施行する工事につき使用する材料を当該工事現場付近に多量に所有するため、
他に者に比して有利な価格で契約することができるとき、②特殊な機械等を有する
業者に、時価に比して有利な価格で発注できるようなとき」と定め、その内容を具
体化している(運用方針第 3 節(随意契約)関係第 4 項)。
(8)第 8 号(不落随契)
通例、
「不落随契」と呼ばれている。競争入札に付し入札者がいないとき、または
再度の入札に付し落札者がいないときに、必要な事業の遂行が阻害されるおそれが
あることから、随意契約によることが認められている。
(9)第 9 号(落札随契)
便宜上、
「落札随契」と呼ぶこととする。「落札者が契約を締結しないとき」に随
7
意契約によることを認めた規定である。契約締結を放棄した場合に、随意契約の方
途を認めたものである。もちろん、再度、所定の手続により競争入札に付すること
もできる。随意契約に移行する場合であっても、落札金額の制限内で行う必要があ
る。
(三)地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(以下「特例政
令」という。
)の規定内容
(1)特例政令の趣旨
近年の国際化、グローバル化の進展のもと、内外無差別かつ透明な契約制度が要
請され「政府調達に関する協定」
(平七条約二三)が作成、締結されているが、これ
を実施するために、特例政令が定められている。
(2)特例政令における随意契約の位置付け
特例政令の詳細は、第3章総論において報告するが、基本的には「特定調達契約
に該当し、かつ、予定価格が総務大臣の定める金額以上である契約」は、同政令の
適用を受ける。
そして、特例政令の適用を受ける契約は、内外無差別の競争入札に付されること
が原則であり、随意契約を行うには、基本的には、同政令第 10 条第 1 項第 1 号から
第 6 号に該当する必要がる。
(3)施行令との優先関係
特例政令第 1 条では、
「この政令は・・・地方自治法施行令の特例を定めるともに、
必要な事項を定めるものとする」と定められており、特例政令は、施行令に優先す
る規定と考えられる。
(4)特例政令における随意契約の規定
上記のとおり、特例政令では、随意契約をなし得る場合として、同政令第 10 条第
1 項第 1 号から第 6 号の定めがあるが、このうち、本報告書にて取り上げているの
は、第 1 号、第 2 号であるため、これら条項の内容を示しておく。条項内容を見れ
ば明らかなとおり、特例政令では、施行令に比して厳格な要件が定められている。
(a)第 1 号「他の物品等若しくは特定役務をもって代替させることができない芸
術品その他これに類するもの又は特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に
係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が
特定されているとき」
(b)第 2 号「既に調達した物品等(以下この号において「既調達物品等」という。)
又は既に契約を締結した特定役務(以下この号において「既契約特定役務」と
いう。)につき、交換部品その他既調達物品等に連接して使用する物品等の調達
をする場合又は既契約特定役務に連接して提供を受ける同種の特定役務の調達
をする場合であって、既調達物品等又は既調達役務の調達の相手方以外の者か
ら調達をしたならば既調達物品等の使用又は既調達特定役務の便益を享受する
ことに著しい支障が生じるおそれがあるとき」
(5)特例政令の適用を受ける契約金額
8
特例政令の適用を受ける契約は、予定価格が総務大臣の定める金額以上である
ことが要件とされるが、この点の具体的金額の定めは下記のとおりである(平成
16 年 1 月 23 日総務省告示)。
記
①物品等の調達契約
32,000,000 円
②特定役務のうち建設工事の調達契約
2,430,000,000 円
③特定役務のうち建築のためのサービス、
エンジニアリング・サービスその他の
240,000,000 円
技術的サービスの調達契約
④特定役務のうち右記以外の調達契約
32,000,000 円
(四)小括
以上、随意契約の法令上の位置付けを概観した。
上記の内容の主要な点を確認すると、
①
随意契約を締結するためには、法第 234 条の規定に基づき、政令上の根拠が必
要となる。
②
③
この政令上の根拠として、まず、施行令第 167 条の 2 第 1 号から第 9 号がある。
施行令第 167 条の 2 第 1 項第 2 号の具体化として、運用方針では、
「競争入札に
適さない」場合につき、19 の類型を具体化している。
④
もう一つの政令上の根拠として、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号から第 6 号が存
在する。
⑤
適用関係の優先関係としては、特例政令が施行令に優先する。
ということになる。
このように、施行令の 9 類型、そのうちの 1 類型を具体化した運用方針における
19 類型、特例政令における 6 類型を単純に数えると、北海道が随意契約を行う根拠
は 33 の類型があることになる。
相当に複雑ではあるが、随意契約である以上は、これらのいずれかに該当するこ
とが必須である。なお、論証の便宜のため、これまでの内容を次頁以下で、図式化
のうえ、整理しておく。なお、図の中で示した条項は、一部省略しており正確な全
文は、本章末尾にて掲載していることを留意されたい。
9
随意契約の法令のイラスト図
地方自治法
(234条,2項)
委任
特例政令(平成7年政令第372号)
委任
(10条,1項)
地方自治法施行令
(167条の2,1項)
特別関係
地方自治法施行令5号,8号,9号の他は,
特例政令 10 条 1 項の 1 号∼ 6 号に限定。
北海道財務規則 運用方針
第3節 (随意契約関係)
1号(金額随契)
2号(特命随契)
1項,1号∼19号
3号(特定随契)
4号( 〃 )
5号(緊急随契)
2項
6号(不利随契)
3項
7号(有利随契)
4項,1号∼2号
8号(不落随契)
9号(落札随契)
10
(随意契約鳥瞰)
地方自治法第234条第1項、第2項
一般競争入札が原則。
随意契約は政令で定める場合に該当する場合に限り行なうことができる。
地方自治法施行令における規定(同167条の2第1項第1号∼9号)
地方自治法を受けた地方自治法施行令が随意契約を行なうことのできる9つのケースを定めている。
1号(金額随契)
「売買、貸借、請負その他の契約でその予定価格(貸借の契約にあっては、予定賃貸借
料の年額又は総額)が別表第5上欄に掲げる契約の種類に応じて同表下欄に定める額の
範囲内において普通地方公共団体の規則で定める額 を超えないものをするとき」
北海道財務規則第162条の2
金額随契の限度額
2号(特命随契)
工事又は製造の請負
250万円
財産の買入れ
160万円
物件の借入れ
80万円
財産の売払い
50万円
物件の貸付け
30万円
前各号に掲げるもの以外のもの 100万円
「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工
又は納入に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争
入札に適しないものをするとき」
北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係で19の類型に具体化
①道の行為を秘密にする必要があるとき
②契約の目的物が代替性のないものであるとき
③物品の保管をさせるとき
④試験場、学校その他これに準ずるものの生産に係る物品を売り払うとき
⑤道の需要する物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるために必要な物品を売り払うとき
⑥条例の規定により財産の譲与又は無償貸付をすることができる者にその財産を売り払い、又は有償で貸し付けるとき
⑦非常災害による被災者に必要な物件を売り払い、又は貸し付けるとき
⑧外国と契約するとき
⑨国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。)又は地方公共団体(地方独立行政型法人を含む。)
若しくは慈善のために設立された救済施設と契約(政令第167条の2第1項第3号の規定に該当するものを除く。)
をするとき
⑩軽易な工事を関係住民の共同請負に付するとき
⑪法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくはその連合会の存立を援助するため、これらの
設立目的に基づく事業について契約(政令167条の2第1項第3号の規定に該当するものを除く。)をするとき
⑫個々の中小企業者では履行できない契約につき、官公需適格組合の証明を有する事業協同組合、事業協同小組合若しく
は協同組合連合会又は商工組合若しくは商工組合連合会の保護育成のためこれらの者と契約をするとき
⑬営利を目的としない学術又は技芸の奨励のためこれらの者と契約するとき
⑭公用、公共用又は公共の利益となるべき事業の用に供するため必要な物件を直接公共団体又は事業者に売り払い、貸し
付け、又は信託するとき
⑮土地又は建物を特別の縁故のある者に売り払い、又は貸し付けるとき
⑯業者が事業着手後放棄した工事等を他の業者に継続して施工等をさせるとき
⑰庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く。)に委託するとき
⑱委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難いものを委託するとき
⑲その他特に知事が必要と認める契約をするとき
3号(特定随契1) 社会福祉施設等からの物品の買入等
4号(特定随契2) 認定業者開発の新商品の買入
北海道財務規則162条の3で公表等の定めがある。
特定随意契約に係る事務取扱要領において手続を具体化
11
5号(緊急随契)
「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」
北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係で内容を具体化
「天災地変その他の緊急事態のため、競争入札の方法によっては契約の目的を達することができないときをいう」
6号(不利随契)
「競争入札に付することが不利と認められるとき」
北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係で内容を具体化
「現に契約履行中の工事、製造又は物品の買入れに直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させること
が不利である場合等をいう」
7号(有利随契)
「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」
北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係で内容を具体化
「①契約の相手方が道の必要とする物件を多量に所有し、又は道の施行する工事につき使用する材料を当該工事現場付
近に多量に所有するため、他の者に比して有利な価格で契約をすることができるとき、②特殊な機械等を有する業者
に、時価に比して有利な価格で発注できるようなとき」
8号(不落随契)
「競争入札に付し入札者がいないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき」
9号(落札随契)
「落札者が契約を締結しないとき」
地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(特例政令)による規定
・ 特例政令は地方自治法施行令に優先する。
・ 特例政令に該当する契約か否かは、①特定調達契約に該当するか、②予定価格が総務大臣の定
める額以上か等の要件によって判断される(詳細は第 3 章)
※総務大臣の定める額
平成16年1月23日総務省告示第64号
・物品等の調達契約
32,000,000円
・特定役務のうち建設工事の調達契約
2,430,000,000円
・特定役務のうち建築のためのサービス、
240,000,000円
エンジニアリング・サービスその他の
技術的サービスの調達契約
・特定役務のうち右記以外の調達契約
32,000,000円
・ 特例政令の適用を受ける契約を随意契約によるためには、原則として下記の厳格な要件を充た
す必要がある。
①他の物品等又は特定役務をもって代替させることができない芸術品その他これに類するもの又は特許権等の排他的権利若
しくは特殊な技術に係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されているとき
②既に調達をした物品等又は既に契約を締結した特定役務につき、交換部品その他既調達物品等に連接して使用する物品等の
調達をする場合又は既契約特定役務に連接して提供を受ける同種の特定役務の調達をする場合であって、既調達物品等又は
既契約特定役務の調達の相手方以外の者から調達をしたならば既調達物品等の使用又は既契約特定役務の便益を享受する
ことに著しい支障が生ずるおそれがあるとき
③特定地方公共団体の委託に基づく試験研究の結果製造又は開発された試作品等の調達をする場合
④既に契約を締結した建設工事についてその施工上予見し難い事由が生じたことにより既契約工事を完成するために施工し
なければならなくなった追加の建設工事で当該追加工事の契約に係る予定価格に相当する金額が既契約工事の契約金額の
100分の50以下であるものの調達をする場合であって、既契約工事の調達の相手方以外の者から調達をしたならば既契
約工事の完成を確保する上で著しい支障が生ずるおそれがあるとき
⑤計画的に実施される施設の整備のために契約された建設工事に連接して当該施設の整備のために施工される同種の建設工
事の調達をする場合、又はこの号に掲げる場合に該当し、かつ、随意契約の方法により契約が締結された同種工事に連接し
て新たな同種工事の調達をする場合であって、既契約工事の調達の相手方以外の者から調達をすることが既契約工事の調達
の相手方から調達をする場合に比して著しく不利と認められるとき(以下略)
⑥建築物の設計を目的とする契約をする場合であって、当該契約の相手方が、総務大臣の定める要件を満たす審査手続により、
当該建築物の設計に係る案の提出を行った者の中から最も優れた案を提出した者として特定されているとき(以下略)
12
二
北海道における随意契約の概況
以上、北海道における随意契約の法令上の根拠を概観したが、次に、契約件数、契約
金額等、北海道における随意契約の実情を見てみる。
北海道の平成 17 年度の金額随契を除いた契約の競争入札、随意契約を各科目別に集計
した一覧表は以下のとおりである。
平成17年度の契約に係る(金額随契を除く)契約方法一覧
(出納局調査)
競争入札(A)
随意契約(B)
科
※
一般競争入札
目
総計(A+B)
指名競争入札
割合
件数
金 額
件数
金 額
件数
金 額
件数
金 額
%
需用費
161
5,148,109,240
728
3,445,403,695
156
2,496,359,978
1,045
11,089,872,913
22.51
役務費
12
167,053,060
53
132,027,225
100
572,750,307
165
871,830,592
65.70
委託料
389
5,143,061,721
7,183
46,216,774,876
2,335
46,066,072,415
9,907
97,425,909,012
47.28
使用料及び
賃借料
161
486,807,611
281
837,630,997
103
1,198,644,848
545
2,523,083,456
47.51
工事請負費
537
15,869,657,896
6,296
284,569,382,147
308
8,888,105,720
7,141
309,327,145,763
2.87
備品購入費
128
2,239,045,558
226
839,978,801
38
210,038,356
392
3,289,062,715
6.39
計
1,388
29,053,735,086
14,767
336,041,197,741
3,040
59,431,971,624
19,195
424,526,904,451
14.00
委託料∼100 万円以上、需用費∼160 万円以上、役務費∼100 万円以上、使用料及び賃借料∼80 万円以上、
工事請負費∼250 万円以上、備品購入費∼160 万円以上
※
随意契約の金額
「随意契約の金額割合」は出納局調査に基づいて監査人において算出した。
13
前頁の一覧表に基づき、随意契約を支出科目の金額別に円グラフにしたものを下記に示す
が、同グラフから明らかなとおり、随意契約に基づく支出のうち、約 8 割近くは委託料が
占めている。
備品購入費
0.35%
使用料及び
賃借料
2.02%
役務費
0.96%
需用費
4.20%
工事請負費
14.96%
委託料
77.51%
14
三
監査対象の選定理由及びその経過
1
委託契約への着目
先に整理したとおり、一口に随意契約といっても、その類型は多岐に亘る(類型化す
れば 33 類型にものぼる。)
。また、その件数も膨大であるため、本監査においてすべての
随意契約をチェックすることは不可能である。
そこで、かかる膨大な検討対象を前にして、いかなる視点、切り口で、随意契約を検
証すべきかについては、慎重な考慮を必要とするものであり、監査人としても、具体的
な監査の視点、対象を定めるための予備調査には相応の期間を要した。
検討の結果、効率よく、かつ、随意契約の本質に切り込んだ監査をするための視点と
して浮かび上がってきたのは、まずは、契約類型としては「委託契約」にスポットを当
てるということであった。すなわち、上記の統計から明らかなとおり、北海道が随意契
約に基づいて支出した費用のうち委託料の占める割合は、実に約 8 割にものぼる。
また、
委託料に占める随意契約の割合は、件数にして約 4 分の 1、金額にして約 5 割にのぼっ
ている。このような実情からすれば、
「随意契約によった委託契約」を監査することによ
って、北海道における随意契約の実際が見えてくるのではないかと考えた。
なお、委託契約はもとよりその業務内容が多岐にわたりそれ自体検証の必要が高いこ
と、出納局では平成 12 年から契約金額、契約件数、契約根拠、委託先等を把握するため
委託契約実態調査を行っておりその概況が把握されていたことについても付記しておく。
2
随意契約によった委託契約の統計
上記の理由から、本監査においては「随意契約によった委託契約」を検証することで
北海道における随意契約の問題点をチェックすることとした。
ところで、先に触れたとおり、出納局では、平成 12 年度より委託契約に関する実態調
査を行っている。本監査では、予備調査の段階でこの出納局調査資料の提出を受け、こ
れを基礎資料として具体的な監査対象を選定した。
同調査に基づく、平成 17 年度の随意契約によった委託契約(全道を対象)に関する随
意契約の契約根拠別分類を次ページに示しておく。
15
平成 17 年度
件数
随意契約
の内訳
委託契約実態調査結果集計表(金額 100 万円以上)
金額(円)
1,380
3
245
6
6
区分
19,857,885,588 運用方針第三節1の(2)(代替性のないもの)
11,848,055 運用方針第三節1の(8)(外国で契約するとき)
5,641,168,555 運用方針第三節1の(9)(国又は市町村等との契約)
139,965,392 運用方針第三節1の(11)(非営利法人との契約)
15,677,000 運用方針第三節1の(16)(事業着手後放棄した工事等を他の業者に継
続して施工等させるとき)
126
448
38
16,336,304,700 運用方針第三節1の(18)(競争により難い委任又は準委任の契約)
128,403,000 運用方針第三節1の(19)(知事が必要と認める契約)
11
37,515,707 運用方針第三節2(緊急随契)
4
11,631,900 運用方針第三節3(不利随契)
3
11,266,500 運用方針第三節4(有利随契)
1
13,700,400 政令167条の2第1項第3号(社会福祉関係特定随契)
29
5
7
23
計
387,692,079 運用方針第三節1の(17)(個人に委託)
2,335
295,460,550 政令167条の2第1項第8号(不落随契)
908,894,850 特例政令第10条第1項第1号(相手方が特定されるとき)
2,230,319,231 特例政令第10条第1項第2号(既契約者との契約)
38,338,908 その他(歳入徴収委託等)
46,066,072,415
(出納局調査)
16
3
監査対象とした主要テーマ
上記のとおり、本監査では、
「随意契約によった委託契約」を検証することとし、かか
る観点から出納局基礎資料を検討したわけであるが、その結果、具体的監査テーマとし
て、以下の視点が浮かび上がってきた。
(一)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
先の一覧表から明らかなとおり、随意契約によった委託契約のうち、随意契約を行
う根拠としては、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(2)「契約の目的物が代替性のな
いものであるとき」とするものが、件数、金額ともに圧倒的な比率を占めている。ま
た、一般論としても、
「代替性」の有無は、画一的あるいは自動的に判断し得るもので
はなく、そこには「評価」の要素が介在する。そのため、この判断の正当性について
検証する必要性は高いと考えた。
また、この類型には、いわゆるプロポーザル方式による契約が含まれており、金額、
件数ともに一定の比率を占めている。プロポーザル方式とは、大まかに言うと、実施
予定の事業に関する企画を提案させて企画競争を行い、審査の結果、最も優れた企画
を提案した業者との間で随意契約を締結する契約方式である。
確かに、地方公共団体の実施する業務中には、単純な価格競争ではなく、民間等の
有するアイデア、ノウハウを活用し、よりよい事業の構築が求められるものもあり、
プロポーザル方式による契約には一定の意義が認められる。
他方、プロポーザル方式によって契約された事業は、企画「競争」によるものであ
ることから分かるとおり、本来は、当該業者のみにしかなし得ないものではない。
「企
画競争の結果、当該業務の『具体的な』内容が定められることから、結果として、当
該企画提案業者のほかには、当該具体的事業を行ない得るものはいない」、というロジ
ックを前提に、
「契約の目的物に代替性がない」として随意契約による運用がなされて
いる。
このようなプロポーザル方式の持つ性質からして、運用が恣意的になされると、本
来は、競争入札によらなければならない業務が、形式的なプロポーザル審査を経るこ
とによって安易に随意契約されてしまうことにもなりかねない。プロポーザル方式が、
正しくその使命を果たすためには、審査員の構成・人選の適正、審査基準の適正、審
査自体の適正が担保されなければならないことは言うまでもない。かかる観点からプ
ロポーザル方式についての検証を行うことは重要と考えた。
(二)情報関連業務に対する監査
次に、出納局調査資料を分析したところ、情報関連業務に関する検証の必要性を感
じるに至った。その理由としては、情報関連業務は、総じて契約金額が高額となって
いる傾向にあり、
北海道の財務内容に与える影響からして看過できないものと考えた。
また、
情報関連業務については、
業務開始当初に当該システム開発を委託した場合、
当該システム開発業者が、その後の保守管理も継続して受託しているケースが多く、
その場合の契約が随意契約として行われている傾向が出納局基礎資料から見て取れた。
確かに、システム開発業者が、その後も当該システムの保守管理を行なうというこ
17
とは理解できないわけではない。しかし、契約金額も含めて、無条件に前年度を踏襲
しながら継続し続けることは、もちろん、許容されるものでない。日進月歩で進化す
る情報関連分野においては、事業の必要性、経済的合理性等の観点を踏まえて、常に、
委託先変更の可能性の検証、委託内容の適正の検証、委託金額積算にあたっての合理
性の検証等がなされなければならないことは言うまでもない。
また、情報関連業務については、契約金額が高額であることから、特例政令による
規制の対象となるものが多い。そこで、特例政令の求める要件該当性の判断や、手続
履践についても検証の必要があるものと考えた。
(三)その他の随意契約
先に述べたとおり、規定上の根拠ごとに分類とすると、随意契約の類型は 33 類型に
ものぼる。そこで、北海道における随意契約を検証するにあたっては、実際の運用に
おいてそれぞれの類型ごとの趣旨が正しく理解されているかどうかについて、概観す
る必要があると考えた。
かかる観点から、それぞれの類型ごとに特定の事業を適宜ピックアップして監査し
た。
なお、出納局調査による基礎資料を分析したところ、平成 16 年度は随意契約であっ
たが、平成 17 年度には競争入札に移行している業務が複数件存在した。これらについ
て、もともと随意契約に拠っていたことは適切であったのか、移行にあたって事情あ
るいは判断の変化があったのか、競争入札への移行によって契約金額に変化があった
のか、といった点を検証することは、
「原則としての競争入札、例外としての随意契約」
という位置付けの整理に重要な意味を持つものと考え、これら業務についても検証し
た。
(四)公表について
上記(一)から(三)が個別契約をチェックするにあたっての監査テーマであるが、
これとは別に、公表に関する検証を行うこととした。
開かれた行政を実現するため、北海道の活動に関する情報は、北海道民に広く公表
されなければならないことは言うまでもない。
特に、随意契約は、競争(入札手続)というフィルターを経ずして、契約相手が選
定されるものであるから、恣意に流れる危険を内包しており、その情報を公表する必
要性は高い。そこで、北海道において、随意契約の公表に関していかなる制度が存在
するのか、公表のあり方として現在の公表制度で十分なのか、現にどのような手続、
方法をもって公表がなされているのか、その手続、方法が広く道民の監視可能な状況
になっているか、等について検証の必要があると考えた。
以上の視点に基づいて、第 2 章では運用方針 1(2)を根拠とする契約(プロポーザル方
式を含む)、第 3 章では情報関連契約、第 4 章ではこれら以外の随意契約(一部平成 17
年度から入札へ移行した契約を含む)
、第 5 章では公表について、監査した。
18
4
具体的な監査対象契約の選定
監査の人的、時間的制約から、対象事件数を一定数に絞り込む必要があったため、以
下の過程を経て具体的な監査対象契約を選定している。
(一)まず本庁各部の契約を対象とすることとした。
北海道庁の組織は大きく(支庁 14 庁、出先機関は 380 を超えている)
、また、北海
道の面積も広大であり、本庁以外の契約を対象とすることは人的、時間的な限界があ
ると考えた。
そこで、本庁における随意契約を対象とし、他方、本庁各部を横断的に監査するこ
とで全体的傾向を把握しようと考えた。
(二)上記と同趣旨から、金額については、原則として契約金額が 1000 万円以上のもの
の中から監査対象契約を選別することとした。
ただし、契約根拠別に監査する必要があったことから、契約金額 1000 万円未満の契
約についても、一部書類監査の対象としている。
(三)これらの選定プロセスを経て、①「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
の契約 38 件、②情報関連契約 20 件、③その他の随意契約 38 件につき契約記録を取
り寄せ、契約書類の閲覧、調査を行った。
その結果を踏まえ、上記①については 28 件、②については 20 件、③については 18
件を監査対象とし、ヒヤリング調査を行った。
19
四
総論の最後に(随意契約の例外性の再確認)
地方公共団体が行う契約は、一般競争入札が原則であり、随意契約は例外的な契約方
法である。これは地方公共団体の契約事務には公正さ、機会均等性、また、競争による
経済性の確保等が要求されるからである。
ところで、随意契約は、その定義から分かるように、端的に表現すると入札に付さな
かった契約、すなわち「価格競争」を経ていない契約ということになる。
そもそも一般生活においても、例えば、自動車を購入し、あるいは住宅を建築すると
きなどには、複数の業者から見積りを取り、価格を参考にした上で契約の相手先を選定
することは広く行われているところであり、
「価格競争」によって、経済的合理性を担保
しようと考えることはいわば常識である。
地方公共団体においても、より低コストで事業目的を達成すべきであることは会計原
則上当然の要求であり、その意味で競争(入札)によって、より低い価格を目指すこと
は、極く自然のことであるといってよい。
「競争性による経済性の確保」などと言葉にしてしまうと、やや分かりにくい面があ
るかもしれないが、上記のとおり、至極当然の原則であることを強く認識する必要があ
る。
さらに地方公共団体の契約の財源は基本的に住民ないしは国民からの税収入によるも
のであり、契約を履行する能力を有するものには平等の契約のチャンスが与えられなけ
ればならず(公正性、機会均等性)、かかる意味においても、一層競争入札手続が求めら
れているのである。
また、今日においては行政手続の透明性もまた強く求められている。手続が公正、適
正に行われているのか否かについて、広く一般に観覧可能な状態に置く、いわば万人に
とって可視的な状態とすることが必要である。この観点からしても、多少手続上のコス
トを要するとしても、より公正かつ透明な手続、すなわち入札手続によることが一層求
められていると言える。
国においても、平成 18 年 7 月 7 日付「経済財政運営と構造改革に関する基本方針 2006」
に基づいて、公益法人等との間の随意契約につき、厳格かつ徹底的に見直しを行った結
果、従来の随意契約の約 7 割を競争的な手続による契約に移行することとしている。
また、その後平成 18 年 8 月 25 日「公共調達の適正化について」において、競争性の
ない随意契約の見直しについての考え方を示すとともに、情報公開の充実に努める旨の
財務大臣から総理大臣宛の答申が出されている。
このように、今日において「入札原則」
(随意契約の例外性)という点を強く再確認す
る必要がある。
20
(地方自治法施行令)
(随意契約)
第167条の2
地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によることができる場合は、次に掲げる
場合とする。
(1)
売買、賃借、請負その他の契約でその予定価格(賃借の契約にあっては、予定賃貸借料の年額
又は総額)が別表第5上〔左〕欄に掲げる契約の種類に応じ同表下〔右〕欄に定める額の範囲内に
おいて普通地方公共団体の規則で定める額を超えないものをするとき。
(2)
不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入
に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないも
のをするとき。
(3)
身体障害者福祉法(昭和24年法律第283号)第29条に規定する身体障害者更正施設、同法第31
条に規定する身体障害者授産施設、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和25年法律第1
23号)第50条の2第3項に規定する精神障害者授産施設、同条第5項に規定する精神障害者福祉工
場、知的障害者福祉法(昭和35年法律第37号)第21条の6に規定する知的障害者更生施設、同法第
21条の7に規定する知的障害者授産施設若しくは小規模作業所(障害者基本法(昭和45年法律第8
4号)第2条に規定する障害者の地域における作業活動の場として同法第15条第3項の規定により必
要な費用の助成を受けている施設をいう。
)において製作された物品を普通地方公共団体の規則で
定める手続により買い入れる契約、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和46年法律第68
号)第41条第1項 に規定するシルバー人材センター連合若しくは同条第2項に規定するシルバー人
材センターから普通地方公共団体の規則で定める手続により役務の提供を受ける契約又は母子及
び寡婦福祉法(昭和39年法律第129号)第6条第6項に規定する母子福祉団体が行う事業でその事業
に使用される者が主として同項に規定する配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの及び
同条第3項に規定する寡婦であるものに係る役務の提供を当該母子福祉団体から普通地方公共団
体の規則で定める手続により受ける契約をするとき。
(4)
新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として総務省令で定めるところにより普
通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品として生産する物品を、普通地方公共団体の規則
で定める手続により、買い入れる契約をするとき。
(5)
緊急の必要により競争入札に付することができないとき。
(6)
競争入札に付することが不利と認められるとき。
(7)
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
(8)
競争入札に付し入札者がないとき、又は再度の入札に付し落札者がないとき。
(9)
落札者が契約を締結しないとき。
21
(北海道財務規則運用方針)
第3節(随意契約)関係
政令第167条の2(随意契約)第1項の運用は、次によるものとする。
1
第2号の「不動産の買入れ又は借入れ、普通地方公共団体が必要とする物品の製造、修理、加工又は納入
に使用させるため必要な物品の売払いその他の契約でその性質又は目的が競争入札に適しないものをする
とき」とは、次に掲げる場合をいう。
なお、次の(9)(国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。
)又は地方公共団体(地
方独立行政法人を含む)を契約の相手方とするものを除く。
)及び(11)に基づき随意契約の方法により契約
を締結する場合は、第162条の3の規定を準用するものとする。
(1)
道の行為を秘密にする必要があるとき。
(2)
契約の目的物が代替性のないものであるとき。
(3)
物品の保管をさせるとき。
(4)
試験場、学校その他これに準ずるものの生産に係る物品を売り払うとき。
(5)
道の需要する物品の製造、修理、加工又は納入に使用させるため必要な物品を売り払うとき。
(6)
条例の規定により財産の譲与又は無償貸付をすることができる者にその財産を売り払い、又は有償で貸
し付けるとき。
(7)
非常災害による被災者に必要な物件を売り払い、又は貸し付けるとき。
(8)
外国で契約するとき。
(9)
国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。)又は地方公共団体(地方独立行政法
人を含む。)若しくは慈善のため設立された救済施設と契約(政令第167条の2第1項第3号の規定に該当する
ものを除く。
)をするとき。
(10)
軽易な工事を関係住民の共同請負に付するとき。
(11)
法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくはその連合会の存立を援助す
るため、これらの設立目的に基づく事業について契約(政令167条の2第1項第3号の規定に該当するものを
除く。)をするとき。
(12)
個々の中小企業者では履行できない契約につき、官公需適格組合の証明を有する事業協同組合、事業協
同小組合若しくは協同組合連合会又は商工組合若しくは商工組合連合会の保護育成のためこれらの者と
契約をするとき。
(13)
営利を目的としない学術又は技芸の保護奨励のためこれらの者と契約するとき。
(14)
公用、公共用又は公共の利益となるべき事業の用に供するため必要な物件を直接公共団体又は事業者に
売り払い、貸し付け、又は信託するとき。
(15)
土地又は建物を特別の縁故のある者に売り払い、又は貸し付けるとき
なお、「特 別の縁故の ある者に 売り払い、 又は貸し付 けるとき 」とは、次 に掲げる場 合をいう 。
ア
寄附を受 けた物件 をその寄附 者(相続人 その他の 包括承継者 を含む。) に売り払い 、又は貸 し付け
るとき。
イ
民有地上 にある建 物、工作物又 は立木竹 をその土地 所有者又は 貸付契約 に基づき現 に使用して いる
者に売り払い、 又は貸し 付けるとき 。
ウ
相当額の有 益費を投 じ、当該土地又 は建物の時 価を騰貴さ せた者に、有益 費を控除 することな く現
況時価をもって その土地 又は建物を 売り払うと き。
22
エ
無道路地、 袋地、地 形狭長等単 独利用が困 難な土地 で、かつ、 他に買受希 望のない ものを隣地 所
有者又は隣地の 賃借権等 を有する者 に売り払い 、又は貸 し付けると き。
オ
面積が極 小規模で あり単独利 用が困難な 土地をそ の隣地と一 体として利 用する必 要がある場 合に
おいて、当該土 地をその 隣地所有者 又は隣地の 賃借権等 を有する者 に売り払い 、又は貸 し付けると
き。
なお、極小規 模の土地 を処理する 場合は、次に掲げ る場合に該 当するとき に適用す るものとす る。
(ア)
当該土 地の一箇 所の面積が 、おおむね 200平方メ ートル( 不整形地又 は法面等を 含む土地 に
ついては、おお むね300平 方メート ル)以下で あって、原 則として 隣地の面積 より小さい 場合で
あること。
(イ)
当該土地 と隣地と を一体とし て利用する ことによ り有効利用 が図られる と認めら れる場合
であること。
(ウ)
カ
当該土地の売払後の用途は、隣地の従来の用途と同様の用途に供される場合であること。
永続的使用に耐える建物又は堅固な建築物の敷地として許可を得て、又は契約により、使用されてき
た土地を当該建物又は構築物の所有者に売り払い、又は貸し付けるとき。
キ
貸付契約に基づいて現に住宅等又はその敷地を生活の本拠として使用している者に、当該住宅等又は
その敷地を売り払うとき。
ク
国有財産当時から占用許可を受けて一定期間使用していた土地で、当該土地に対して使用上必要とす
る相当額の有益費を投じており、かつ、引き続き占用許可の用途と同様の用途に供する場合において、
当該土地をその占用者に売り払い、又は貸し付けるとき。
なお、「一定期間」とは、おおむね3年以上の場合をいう。
ケ
北海道が施行する道路、河川等の公共事業の用に供する土地を取得しようとする場合において、廃道、
廃川等によって生じた第二種普通財産である土地を代替地として当該土地所有者に売り払うとき。
(16)
業者が事業着手後放棄した工事等を他の業者に継続して施工等をさせるとき。
(17)
庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く。)に委託するとき。
(18)
委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難いものを委託するとき。
(19)
その他特に知事が必要と認める契約をするとき。
2
第5号の「緊急の必要により競争入札に付することができないとき」とは、天災地変その他の緊急事態の
ため、競争入札の方法によっては契約の目的を達することができないときをいう。
3
第6号の「競争入札に付することが不利と認められるとき」とは、現に契約履行中の工事、製造又は物品
の買入れに直接関連する契約を現に履行中の契約者以外の者に履行させることが不利である場合等をい
う。
4
第7号の「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき」とは、次
のような場合をいう。
(1)
契約の相手方が道の必要とする物件を多量に所有し、又は道の施行する工事につき使用する材料を当該
工事現場付近に多量に所有するため、他の者に比して有利な価格で契約をすることができるとき。
(2)
特殊な機械等を有する業者に、時価に比して有利な価格で発注できるようなとき。
23
(北海道財務規則)
第162条の3
契約担当者等は、毎年度、政令第167条の2第1項第3号又は第4号の規定に基づき随意契約の方法によ
り締結する契約(以下この条において「特定随意契約」という。
)に係る発注の見通しについて、次に
掲げる事項を公表するものとする。公表した事項に変更があったときも、同様とする。
(1)
契約の名称及び数量
(2)
契約を締結する時期
(3)
契約の相手方の選定方法
2
契約担当者等は、特定随意契約を締結しようとするときは、あらかじめ、次に掲げる事項を公表
するものとする。
(1)
契約の名称及び数量
(2)
契約を締結する時期
(3)
契約の相手方の選定方法及び選定基準
(4)
公募に応じた者の中から契約の相手方を選定する場合にあっては、次に掲げる事項
3
ア
応募する者に必要な資格
イ
応募の方法及び期限
契約担当者等は、特定随意契約を締結した時は、速やかに、次に掲げる事項を公表するものとす
る。
(1)
契約の名称及び数量
(2)
契約を締結した年月日
(3)
契約の相手方の氏名及び住所(契約の相手方が法人である場合にあっては、その名称、主たる
事務所の所在地及び代表者の氏名)
(4)
契約金額
(5)
契約の相手方を選定した理由
24
地方自治法施行令第167条の2各号と北海道の財務規則、運用方針との対照表
施行令
(1)号
金額随契
財務規則
運用方針第3節(随意契約)関係
規則162条の2により対象金
額を定める
(2)号
特命随契
(3)号
特定随契
1項において①∼⑲号を定める
規則162条の3により発注の
(福祉関係) 見直しから契約結果までの
公表手続を求めている
(4)号
特定随契
上記(3)号と同じ
(新商品)
(5)号
緊急随契
2項
施行令を具体化
(6)号
不利随契
3項
施行令を具体化
(7)号
有利随契
4項
施行令を具体化
※ 1 施行令(8)号、(9)号に対応する規則、運用方針はない。
25
(特例政令)
第1条
この政令は、1994年4月15日マラケシュで作成された政府調達に関する協定(以下「協定」という。
)
を実施するため、地方公共団体の締結する契約のうち協定の適用を受けるものの取扱いに関し、地方自治
法施行令(昭和22年政令第16号)の特例を設けるとともに必要な事項を定めるものとする。
第 2条
この政令において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)
特定地方 公共団体
(2)
物品等
都道府県 及び地方自 治法第 252 条の 19 第 1 項の指定 都市をい う。
動産(現金 及び有価 証券を除く。)及び著 作権法(昭 和 45 年 法律第 48 号)第 2 条第 1
項第 10 号の 2 に規定する プログラ ムをいう。
(3)
特定役務
協定の附 属書Ⅰ日 本国の付表 4 に掲げる サービス に係る役務 をいう。
(4)
建設工事
協定の附 属書Ⅰ日 本国の付表 4 に掲げる 建設工事 をいう。
(5)
調達契約
物品等又 は特定役 務の調達の ため締結さ れる契約(当 該物品等又 は当該特 定役務以外
の物品等又は役 務の調達 が付随する ものを含む 。)をいう 。
(6)
一連の 調達契 約
特定 の需要 に係る一 の物品等 若しく は特定役 務又は 同一の種 類の 2 以上の物
品等若しくは特 定役務の 調達のため 締結され る 2 以上の 調達契約を いう。
第 3 条
この政令は、特定地方公共団体の締結する調達契約であって、当該調達契約に係る予定価格(略)
が総務大臣の定める区分に応じ総務大臣の定める額以上の額であるものについて適用する。ただし、
次に掲げる調達契約については、この限りでない。
(1)
有 償で 譲渡( 加工又 は修理 を加え た上で する譲 渡を含 む。) をする 目的で 取得す る物品 等若し く
は当該物品等の 譲渡(加工 又は修理を 加えた上 でする譲渡 を含む。)を するために 直接に必 要な特
定役務(当該物 品等の加工 又は修理を するため に直接に必 要な特定役 務を含む。)又は有償 で譲渡
する製 品の原 材料 として 使用 する目 的で 取得す る物 品等若 しく は当該 製品 の生産 をす るため に直
接に必要な特定 役務の調 達契約
(2)
事業協 同組合、事業 共同小組 合若しくは 協同組合連 合会又は商 工組合若 しくは商工 組合連合会 を
相手方とする調 達契約
(3)
特定地 方公共団体 の経営す る鉄道事業 及び軌道事 業におけ る運行上の 安全に関連 する調達 契約
(4)
特定地 方公共団体 の経営す る電気事業 に係る調達 契約
(5)
公共の 安全と秩序 の維持に 密接に関連 する調達契 約であっ て、当該調達 契約に係る 特定地方公 共
団体の行為を秘 密にする 必要がある もの
2
前項 の予定 価格は 、一連 の調 達契約 が締結 される 場合に あって は、当 該一連 の調達 契約に より調
達をすべき物品 等又は特 定役務の予 定価格の合 計額とす る。
(略)
第10条
特定調達契約については、地方自治法施行令第167条の2第1項第5号、第8号又は第9号の規定による
ほか、次に掲げる場合に該当するときに限り、地方自治法第234条第2項の規定により随意契約によること
ができる。
(1)
他の物品等若しくは特定役務をもって代替させることができない芸術品その他これに類するもの又は
特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等もしくは特定役務の調達をする場合において、当
該調達の相手方が特定されているとき。
(2)
既に調達した物品等(以下この号において「既調達物品等」という。
)又は既に契約を締結した特定役
務(以下この号において「既契約特定役務」という。)につき、交換部品その他既調達物品等に連接して使用
26
する物品等の調達をする場合又は既契約特定役務に連接して提供を受ける同種の特定役務の調達をする
場合であって、既調達物品等又は既契約特定役務の調達の相手方以外の者から調達をしたならば既調達物
品等の使用又は既契約特定役務の便益を享受することに著しい支障が生ずるおそれがあるとき。
(3)
特定地方公共団体の委託に基づく試験研究の結果製造又は開発された試作品等(特定役務を含む。)の
調達をする場合
(4)
既に契約を締結した建設工事(以下この号において「既契約工事」という。)についてその施工上予見
し難い事由が生じたことにより既契約工事を完成するために施工しなければならなくなった追加の建設
工事(以下この号において「追加工事」という。)で当該追加工事の契約に係る予定価格に相当する金額
(この号に掲げる場合に該当し、かつ、随意契約の方法により契約を締結した既契約工事に係る追加工事
がある場合には、当該追加工事の契約金額(当該追加工事が2以上ある場合にはそれぞれの契約金額を合
算した金額)を加えた額とする。
)が既契約工事の契約金額の100分の50以下であるものの調達をする場合
であって、既契約工事の調達の相手方以外の者から調達をしたならば既契約工事の完成を確保する上で著
しい支障が生ずるおそれがあるとき。
(5)
計画的に実施される施設の整備のために契約された建設工事(以下この号において「既契約工事」とい
う。)に連接して当該施設の整備のために施工される同種の建設工事(以下この号において「同種工事」
という。)の調達をする場合、又はこの号に掲げる場合に該当し、かつ、随意契約の方法により契約が締
結された同種工事に連接して新たな同種工事の調達をする場合であって、既契約工事の調達の相手方以外
の者から調達をすることが既契約工事の調達の相手方から調達をする場合に比して著しく不利と認めら
れるとき。ただし、既契約工事の調達契約が第4条から前条までの規定により締結されたものであり、か
つ、既契約工事の入札に係る第6条の公告又は第7条の公示においてこの号の規定により同種工事の調達を
する場合があることが明らかにされている場合に限る。
(6)
建築物の設計を目的とする契約をする場合であって、当該契約の相手方が、総務大臣の定める要件を満
たす審査手続により、当該建築物の設計に係る案の提出を行った者の中から最も優れた案を提出したもの
として特定されているとき。ただし、当該契約が、地方自治法施行令第167条の2第1項第2号に規定するそ
の性質又は目的が競争入札に適しないものに該当する場合に限る。
2
特定 調達 契 約に つき 地方 自治 法 施行 令第167条の 2第 1項 第8号又 は第 9号 の 規定 によ り随 意 契約 によ
る場合について は、同条 第4項の規 定は適用し ない。
第 11 条
特定地方公共団体の長は、特定調達契約につき、一般競争入札若しくは指名競争入札により落札者
を決定したとき、又は随意契約の相手方を決定したときは、当該特定地方公共団体の規則で定めるところ
により公示をしなければならない。
27
平成16年1月23日総務省告示第64号
地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(平成7年政令第372号)第3条第
1項に規定する総務大臣の定める区分は、次の表の上[左]欄に掲げる区分とし、同項に規定する総務大
臣の定める額は、当該区分に応じ同表の下[右]欄に定める額とし、平成16年4月1日から平成18年3月3
1日までの間に締結される調達契約について適用する。
区
分
額
32,000,000円
物品等の調達契約
2,430,000,000円
特定役務のうち建設工事の調達契約
特定役務のうち建設のためのサービス、エン
ジニアリング・サービスその他の技術的サー
240,000,000円
ビスの調達契約
32,000,000円
特定役務のうち右記以外の調達契約
28
第2章
北海道財務規則運用方針第3節(随意契約)関係の1の(2)「契約の目
的物が代替性のないものであるとき」についての監査結果
一
論
1
総
はじめに
先に述べたとおり、北海道の随意契約において、運用方針第3節(随意契約)関係
の1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に該当することを根拠と
するものは、件数、金額ともに大きな比率を占めている。したがって、この点に対す
る監査は、北海道における随意契約の検証において重要な意味を有するものと考えら
れる。
「契約の目的物が代替性のないもの」である以上、事業遂行可能な業者が特定され
たケースでなければならない。そして、随意契約は例外的な契約形態であるから、こ
の特定性の判断は厳格になされる必要がある。そこで、まず、この判断の妥当性を中
心として監査を行った。
ところで、北海道が随意契約を行う手法として、複数の事業者から事業内容につい
ての企画提案をさせて企画競争を行い、その結果、最も優れた企画を提案者との間で、
随意契約を締結する方式がある。この方式は、
「プロポーザル方式」と呼ばれている。
そして、このプロポーザル方式も「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当することをもって、随意契約を行う根拠とする運用がなされている。
確かに、北海道が行う事業の中には、単なる価格競争ではなく、民間等のアイデア、
ノウハウ等を活用して、事業内容についての企画を提案させて、よりよい事業の構築
を図るべきものも存在する。その意味でプロポーザル方式が一定の重要な役割を果た
していることは間違いなく、実際も多様な業務においてプロポーザル方式が用いられ
ている。
しかし、他方で、プロポーザル方式は、随意契約の根拠という観点からは、ある種
の「特殊性」を有する面がある。すなわち、「企画競争をする段階では具体的な事業
内容は未だ確定されていない」→「企画競争の結果選定された当該企画が具体的な事
業内容になる」→「その具体的な企画内容を実現できるのは、提案者である当該業者
しかいない」→「よって、当該事業を遂行し得る業者は選定された企画提案者しかい
ない」という思考過程を経て、随意契約による運用がなされている。しかし、企画「競
争」であることから明らかなとおり、当該事業目的を達成可能な業者が複数存在して
いることが前提となる(理論的には、選定された企画を前提に改めて競争入札を行う
ことも不可能ではない。)。
プルポーザル方式を用いることをもって、
「代替性なし」と判断することは、他の
一般的類型における判断とは異なる要素がある。そして、プロポーザル方式による場
合には、プロポーザル審査の適正についてのチェックという異なる視点からの検証が
必要となる。
そこで、本章では、
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に関し、①プ
29
ロポーザル方式によらない一般的な類型と、②プロポーザル方式による類型に分けて
監査した。
なお、
本類型の中でプロポーザル方式が占める割合を以下グラフにして示しておく。
運用方針 1(2)にプロポーザル契約の占める割合
プロポーザル (109 件)
プロポーザル (1,474,047,559 円)
7.90%
総件数
2
7.42%
1380 件
総金額
19,857,885,588 円
プロポーザル方式によらない一般的な類型について
この類型では、先に述べたとおり、
「代替性」の有無の判断が適正になされているか
どうかが監査の中心となる。また、その他、委託の必要性・有効性の観点、契約金額
積算の妥当性という観点からも監査を行った。
基本的な視点としては、①委託の必要性・有効性、②随意契約によることの妥当性、
③委託料積算根拠の妥当性の3点についての監査を行い、その他指摘すべき事項があ
る契約については、必要事項を指摘した。
3
プロポーザル方式による類型について
この類型においては、一般的な類型同様、①委託の必要性・有効性、②随意契約に
よることの妥当性、③委託料積算根拠の妥当性についての監査のほか、プロポーザル
方式固有の問題として、④プロポーザル方式によることとした判断の妥当性、⑤提案
を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性、⑥プロポーザル審査に
関する手続規定の整備状況及びその妥当性、⑦プロポーザル審査基準の妥当性、⑧プ
ロポーザル審査内容の妥当性に関する監査を行った。以下、プロポーザル方式固有の
監査に項目について、若干のコメントを加えておく。
(一)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
手続的には、プロポーザル方式によるか否かの決定は、各部局に設置されている
入札参加者指名選考委員会(以下「指名選考委員会」という。
)によって、判断され
ることとなっている。この指名選考委員会による判断がプロポーザル方式による契
約事務のスタートラインといえるが、まずは、この判断の妥当性について検証され
30
なければならない。
ところで、競争入札のひとつの形態として、
総合評価入札方式という手法がある。
定義するならば、
「 入札において価格と価格以外の要素を総合的に評価して発注者に
最も有利な者を落札者とする方式」と言うことができる。従来型の競争入札は、単
純に価格競争のみをもって事業実施者を決定するものであるが、総合評価入札方式
では、
価格競争のみならず、
企画競争の要素も取り入れているところに特徴があり、
その面では、プロポーザル方式に類似する。しかし、総合評価入札方式も、地方公
共団体が行う契約の原則である入札の一類型であり、可能であれば、プロポーザル
方式ではなく、総合評価入札方式が用いられるべきである。
(二)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
プロポーザル審査参加者の範囲という観点から分類すると、プロポーザル方式に
は、大きく分けて公募型と指名型とがある。概括的に定義すれば、公募型とは、広
く一般から企画提案を募る方法であり、指名型とは、一定の範囲の者を指名して企
画提案を募る方法である。これら手法の選択が正しくなされているか否かについて
も、検証する必要性は高い。
(三)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
プロポーザル方式実施にあたって、その採点基準、審査方法等についての規定が
整備されなくてはならない。この規定の有無、内容の妥当性についても、検証する
必要が認められるものと考えた。
(四)プロポーザル審査基準の妥当性
プロポーザル審査にあたっての上記の手続規定が設けられる際には、審査の基準
が定められる。すなわち、どういった項目を評価の対象とするか、それぞれの項目
に何点を割り付けるか、等が設定される。言うまでもなく、この基準が、事業目的
に沿って正しく設定されていなければ、プロポーザル審査自体の意味が失われる。
そこで、各個別業務の検証にあたって、この審査基準の妥当性を検証することは重
要な意味を持つと考えた。
(五)プロポーザル審査内容の妥当性
プロポーザル審査そのものが公正かつ適正に行われなくては、プロポーザル方式
の意味は失われる。審査委員の構成、審査手続の適正、審査結果の妥当性いずれの
観点からも、十全な審査がなされる必要があり、この点の監査も重要であると考え
た。
31
4
検討する個別契約一覧
以上の視点から下記の契約を「二
番
個別契約」において論ずる。
委託業務名
担当部課
委託金額(単位:円)
号
契約の目的物が代替性のないものであるとき(プロポーザル方式による契約類型を除く)
1
ヘリコプター運航管理業務
総務部防災消防課
183,456,000
2
北海道職員等選択型福利事業委託業務
総務部職員厚生課
101,797,201
3
旅券作成関係業務
知事政策部国際課
15,789,060
4
エゾシカ個体数調整緊急対策業務
環境生活部自然環境課
15,659,000
5
知床の世界自然遺産登録をアピールす
環境生活部自然環境課
12,642,000
る宣伝広告業務
6
生活保護法による診療報酬明細点検業
務等
保健福祉部保護課
1 枚につき 96 円
の単価契約
7
資源保全実態調査委託業務
農政部農村整備課
28,455,000
8
歩掛等基礎データ解析委託業務
農政部事業調整課
16,905,000
9
日本海ニシン種苗生産委託業務
水産林務部水産振興課
50,400,000
10
林業用種子採取事業委託業務
水産林務部森林整備課
27,095,250
11
道有施設保全業務支援資料作成業務
建設部計画管理課
11,760,000
プロポーザル方式による契約
1
「道税広報テレビスポット放送」制作
放送業務
2
津波シミュレーション及び被害想定調
査業務
3
広報誌「ほっかいどう」制作業務
総務部税務課
総務部防災消防課
知事政策部広報公聴課
7,999,950
①33,957,000
②39,165,000
151,697,899
上半期
4
新聞紙面利用による道政広告実施業務
知事政策部広報公聴課
43,513,470
下半期
43,509,362
32
①テレビ番組 A
上半期
19,820,168
下半期
5
電波媒体道政広報実施業務
知事政策部広報公聴課
20,612,974
②テレビ番組B
上半期
16,648,941
下半期
19,820,167
6
7
8
知事出演道政広報実施事業
知事政策部広報広聴課
アートツーリズム調査検討事業
環境生活部文化振興課
「北海道の自然の原点知床の姿」DVD
制作業務
9
民間テレビ放送等を活用したエイズ広
報実施事業
10
11
12
13
14
15
12,915,000
保健福祉部疾病対策課
3,519,600
経済部観光のくにづく
査業務
り推進室
在宅就労支援モデル事業作成業務
経済部雇用労政課
季節労働者再就職活動支援業務
経済部雇用労政課
中高齢者等再就職支援業務
経済部雇用労政課
事業
根室市道営住宅新築工事基本計画及び
実施設計業務
12,684,000
環境生活部自然環境課
新たな周遊観光ルート形成のための調
農業・農村コンセンサス形成総合推進
18,415,740
農政部農村設計課
15,246,000
12,705,000
①22,827,000
②22,099,350
①26,143,913
②28,308,000
15,025,500
建設部住宅課
17,115,000
16
北方型住宅新展開の普及推進業務
建設部建築指導課
13,499,430
17
北海道住情報共有化推進業務
建設部建築指導課
3,465,000
※
なお、以下の個別契約の報告において、指摘を要すると思料される事項については、
「改善事項」
、
「提案事項」として記載している。
「改善事項」については、担当部課に対
して具体的な改善へ向けた対応を求めるものである。
「提案事項」については、全体に通
じる問題点として指摘したものであり、全庁的な対応が必要な事項を本章の末尾に小括
としてまとめた。上記の用語は、本章、第3章、第4章に共通するものである。
33
二
個別契約
(契約の目的物が代替性のないものであるとき−プロポーザル方式による契約類
型を除く)
1
ヘリコプター運航管理業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
ヘリコプター運航管理業務委託契約
担当部課
総務部防災消防課
委託先
民間企業
業務内容
① 消防防災ヘリコプターの運航業務
② 製造会社整備基準書及び受託者の整備規程を準用し、消防防災ヘリコプタ
ーの保守、日常点検整備、定期耐空検査、無線検査受検整備等の業務
③ 消防防災ヘリコプターの運航に要する装備品及び部品並びに整備点検用
設備及び資機材の保守点検業務
④ 消防防災ヘリコプターの運航に伴う装備品の着脱業務
⑤ その他消防防災ヘリコプターの運航に必要なタンクローリー、電源車、ト
ーイングトラクターなどの運行及び保守管理業務
⑥ 消防防災ヘリコプターの運航のための地上支援業務
⑦ 消防防災ヘリコプターの安全な運航を図るための次に掲げる管理業務
ア
気象及び航空情報の収集、分析等の安全確保
イ
飛行計画の届出
ウ
航空法に基づく各種申請及び調査
エ
飛行日誌、整備日誌等の整理保管
オ
その他飛行及び整備に関して必要な安全管理
⑧ 消防防災ヘリコプターの耐空性維持のための、航空局、メーカー等の技術
資料の管理その他の技術管理業務
⑨ 消防防災ヘリコプターに搭乗する道職員の教育訓練等支援業務
⑩ 消防防災ヘリコプターの納品検査の立会業務
⑪ 消防防災ヘリコプターの部品その他の消耗品、燃料補給等の納品検査業
務、並びに外注修理、点検にかかる検査業務(特に専門的な知識または技
能を必要とすることその他の理由により道職員により検査を行うことが
困難であり、または適当でないと道が認めたものに限る。)
⑫ 前各号の業務に付随する関係書類の管理その他の業務
業務目的
業務内容の技術性、専門性から外部委託の必要がある。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契
187,479,530 円
187,236,000 円
H17 まで) H16
同
上
183,954,565 円
183,540,000 円
H17
同
上
184,201,600 円
183,456,000 円
34
委 託 先 選 定 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
の理由
1
運航体制
①
操縦士
常時 2 名勤務し、乗務すること。うち 1 名は、計器飛行証明を有する
者とすること。
②
整備士
常時 2 名勤務し、うち 1 名は原則乗務すること。
③
2
運航管理者
常時 1 名勤務すること。
能力要件
① 操縦士
飛行経験 10 年以上、飛行時間 2,000 時間以上、多発タービンエンジン
ヘリコプター飛行時間 200 時間以上の経験を有する者。
② 整備士
2等航空整備士の資格を有し、ベル412の整備が可能な技術証明を
有すること。
整備士経験 5 年以上、ベル412の整備経験を1年以上有する者。
③ 運航管理者
航空機、航空保安施設、無線通信、気象に関する知識及び技能を有す
るもの。
3
施設所要面積
格納庫 240 ㎡、事務室 110 ㎡、資材庫 80 ㎡、仮眠室 20 ㎡及び駐車場 1
台分を確保すること。
4
業務の実施場所
丘珠空港とする。
現在、丘珠空港に運航基地を有するヘリコプター運航会社のうち、上記要
件を満たすのは、本件委託先のみであることから同社を選定する。
委 託 料 の 算 積算方法:操縦士、整備費、運航管理担当者の人件費、施設借上料、住宅借
定
上料、被服費、気象システム使用料、除雪経費その他の経費をもとに積算し
ている。
見積書の内容:金額のみ記載されている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
災害時、救命医療を要する緊急時等に道民の身体、生命を守ることは重要な業務
であり、他の都府県においても同種の業務が行われている。法令としては、災害対
策基本法、消防組織法等に根拠を持つ事業である。
本事業を委託によることは、ヘリコプターの運航という高度に専門性、技術性を
35
要する業務であることを理由とする。他の都府県においては、一部、パイロット等
を職員として雇用し直営の事業としているケースもあるが、ヒヤリング調査の際の
説明では、上記の専門性、技術性という観点のほか、人事の硬直化を回避して業務
の効率化を図るためには外部委託のメリットが大きいとの説明がなされた。
結果の検証としては、委託契約書に基づいて、前日の業務実績を毎朝所定の書式
に基づいて報告を受けている。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)
要件の設定について
上記契約の概要にて記載した各選定要件を設定した理由につき、ヒヤリング
調査において確認したところ、「運航体制」については操縦士としては正副2
名の乗務が必要であること、整備士としては離着陸の際には1名に乗務が必要
であり、さらに、地上勤務者も1名は必要であること、運航全般を管理するた
めに運航管理者1名が必要であること、から要件設定がなされている旨の説明
があった。
「能力要件」については、緊急時の救助の際にはヘリコプターをホバリング
させるなどの高等技術が必要であること等、一定の能力的信用性が求められる
ため、経験、資格その他の要件が設定されている旨の説明があった。ただし、
例えば、飛行経験年数、飛行経験時間等の具体数値設定の根拠については、本
業務開始当初(平成8年時)には、他府県の同種事業を参考にするなどして検
討したと思われるが保存期間の関係で資料としては存在しない、また、事業開
始後要件が再検討されたことはないとのことであった。本事業において、一定
の能力を有するスタッフが必要であることはそのとおりであり、本要件自体に
は特に指摘すべき問題があるとの評価にはいたらない。しかし、あくまでも随
意契約は例外であり、「代替性」有無の判断基準の持つ意味は大きい。事業が
継続している以上、開始当初の記録の保管期間が経過したとしても、現在の担
当者は要件設定の根拠について認識していなくてはならない。
「施設所要面積」については、本件北海道の所有するヘリコプターの大きさ
に基づいて格納庫の所要面積が、本件業務内容とそれに要する人員配置から勘
案して事務室その他の所要面積が設定されているということである。この要件
自体には、特に、指摘すべき点はない。
(提案事項)
事業遂行者の要件を設定した根拠を明確に記録に記載されたい。
(b)
要件該当性の判断
上記の要件のうち、施設所要面積の要件を満たす者は、本件委託先のほかに
2 者存在する。そして、この 2 者が本件業務を遂行できない理由としては、上
記運航体制、能力要件を満たさない、すなわち、本件事業を遂行するだけの人
員の確保ができないとの判断がなされている。ヒヤリング調査での回答では、
平成 8 年の事業開始時には、この他の 2 者に対しても、事業参画の意思を確認
36
し文書での回答を求めたという説明があった。そして、以後は現在まで毎年電
話での事情聴取によって、
その意思を確認しているということである。しかし、
いつ、いかなる内容の電話確認を行い、どういった回答があったか、そして、
その回答に基づいて、なぜ、事業遂行ができないと判断したかなどの経過につ
いては、記録化されたものはない。随意契約はあくまでも例外的な契約形態で
あり、特命随契にあっては、年度ごとに当該一者のほか当該業務を遂行できる
ものがいないことを検証しなくてはならない。そして、その一者性の判断の正
当性こそが、随意契約によることの正当性を基礎づけるものである。かかる意
味でも、年度ごとにその判断プロセスを書面化すべきと考える。
(提案事項)
特命随契をなすにあたっては、年度ごとに他に遂行し得る業者が存在しない
かどうかを検証すべきであり、その判断プロセスを書面化することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
本件では、操縦士、整備費、運航管理担当者の人件費、施設借上料、住宅借上料、
被服費、気象システム使用料、除雪経費その他の経費をもとに積算している。
まず、人件費については、事業開始年度においては、社団法人航空事業連合会作
成の給与水準に関する資料を参考にして設定し、以後は、現在に至るまで当初設定
額を基準に道人事院勧告による給与増減率を反映させてきたとのことである。本件
事業は委託によるものであり、人員を道が直接雇用するものではないから、人事院
勧告を準用する形での人件費設定は、本来の形ではないとの評価もありえる。ヒヤ
リング調査での回答では、業界の給与水準に関する資料が入手困難になったことか
ら、上記のような算定根拠によったとのことである。しかし、契約形態からは例外
的な積算手法であることを認識して、より適正な人件費積算方法を模索する姿勢は
重要である。
その他、本件積算にあたっての経費項目は詳細にわたるが主要な項目について述
べる。施設借り上げ料については、施設の利用面積に平米当たりの単価を乗じて積
算されている。ただし、少なくとも平成 17 年度において、平米当たりの単価を算
出した資料は存在しない。
気象システム利用については、委託先に確認して積算しているとのことであり、
その他特段の市場調査はなされていない。
住宅借り上げ料については、緊急時に速やかに業務に取り掛かれるよう空港近隣
に居を構えてもらうという趣旨から、市場価格の半額相当の住宅手当相当額を積算
対象としている。ただし、相場調査に関する具体的資料はない。
本件は、契約金額が 1 億 8,000 万円を超えるものであり、その積算項目も多岐に
わたるが、いずれについても年度ごとに具体的資料に基づいて検討し、その検討経
過については資料化されるべきである。
ところで、今後、他機関との消防防災ヘリコプターの共同運行を検討するため、
本件委託先による積算資料の提出を求めたとのことである。消防防災ヘリコプター
の有効活用を検証し、契約金額削減の余地を検討する意味において、有効な作業で
37
あると考える。
(提案事項)
委託料積算は、項目ごとに具体的資料に基づいて検討されなければならず、その
判断プロセスを書面化することが望まれる。
(4)その他
本件業務の契約金額は、特例政令の適用を受ける金額以上であるが、業務の内容
が同政令に言う「特定役務」に該当しないので同政令の適用は受けないとの判断が
なされている。同政令の定める「特定役務」は、政府調達に関する協定の附属書Ⅰ
日本国の付表4において具体化されているが、本件業務との関連では、付表4に掲
げるサービスのうち、「航空輸送サービス」に該当するかどうかが検討され、その
該当性が否定されているが、特にその判断理由について書面化されたものはない。
(提案事項)
今後契約を継続する場合は、当該サービスが特例政令に言う、「特定役務」に該
当するか否かの判断経過を書面化することが望まれる。
38
2
北海道職員等選択型福利事業委託業務
(一)契約の概要
契約名
北海道職員等選択型福利事業委託契約
担当部課
総務部職員厚生課
委託先
民間企業
業務内容
職員の宿泊施設、体育施設、レジャー施設等利用に関するサービスメニ
ューを提供する事業。
業務目的
職員を取り巻く状況が大きく変化する中で、道における福利厚生も個々
人のライフスタイルの多様化に対応することや財政状況を考慮し、より
効果的で公平な福利厚生制度の確立が求められていることから、職員
個々のニーズにフレキシブルに対応することが可能で、男女別・年齢別
など組織実態に応じたメニューを構成し、効果的で公平な福利厚生制度
を確立するため、道(及び地共済)が福利厚生サービス代行業者(以下、
「代行業者」
)と委託契約を締結することにより、職員が「代行業者」の
提供する体育・レクリエーション、健康増進、自己啓発など各種施設を
繰り返し安価に利用できる「北海道職員選択型福利厚生事業委託業務」
を委託するものである。
契約の推移
(H15 から
年度
委託先選定方法
H16
特命随契(公募型プロ 107,997,120 円
ポーザル)
107,651,425 円
H17
特命随契
101,797,201 円
H17 まで)
積算額
107,437,680 円
委託金額
委 託 先 選 定の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
本事業は、平成 16 年に公募型プロポーザル方式により業者を選定したと
ころ、当面は、新たに導入した当該事業を職員に定着、浸透させ利用率
の向上を図ることを優先し、現行事業を継続させるため、引き続き同一
業者との間で随意契約をすることとした。
委託料の算定
積算方法:職員1人あたりの単価に職員数を乗じて積算している。
見積書の内容:職員1人あたりの単価に職員数を乗じて計算されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業の内容となっている北海道職員のレクリエーション等に関わるメニュー等
は、個々人のライフスタイルの多様化に対応する必要があるとして、福利厚生サー
ビス代行業者への外部委託が選択されている。本事業は、平成 16 年度から開始され
たものであるが、事業開始当時には、経済的合理性の観点から、当時の現行事業と
の費用比較がなされている。具体的には、本事業開始以前の職員福利厚生施設管理
費、職員体育福利増進費、職員レクリエーション費及び人件費の合計額との対比から、
外部委託による方が事業費の削減につながるとされている。確かに、従前の制度よ
39
りも、事業費を削減できるものであり、かつ、福利厚生内容の充実を目途としたも
のであれば、委託の有効性は認められる。
(2)随意契約によることの妥当性
本件業務処理要領では、実施体制として、十分なサポート体制の確立、会員の要
望を収集してサービス体制を確立すること、個人情報管理体制その他の定めがなさ
れおり、業者選定の要件自体は、ごく抽象的に設定されているということができる。
この要件を前提にすると、これら実施体制を備えた事業者は、少なからず存在す
るはずである。よって、本件では、「代替性」の有無の判断は、極めて緩やかにな
されていると評価せざるを得ない。
本件事業おいて、受託者が選定された理由の実態としては、本件業務は、平成 16
年度において公募型プロポーザル方式を用いて業者選定を行っていることから、事
業の遂行上、便宜であるという程度の理由しか見当たらない。また、本件事業は、
当初、3 年ごとの見直しを予定しており、少なくとも、この 3 年間は、業者選定に
関しては、最初に行ったプロポーザルで決めたことを理由に、以後、変更の必要な
しとの判断があったことが窺える。そして、実際に、平成 17 年度の事業遂行にあた
って、
「十分なサポート体制の確立、会員の要望を収集してサービス体制を確立する
こと、個人情報管理体制」を備えた他に代わり得る業者の存在を調査、検証した経
過は認められない。
そもそも、地方公共団体の行う契約は単年度契約が原則であり、年度を跨いでの
長期継続契約が認められるのは限られた契約類型のみである(法 234 条の 3、施行
令 167 条の 17)
。本件契約も長期継続契約は認められない。本件契約は、形式的に
は、単年度ごとの契約にはなっているが、上記のとおり、実質的には同一業者との
間の 3 年間の契約が予定されていたと見ることができる。
確かに、本件業務の実績を評価するためには、一定期間の検証が必要であること
は、理解できないではないが、本件の契約の性質に鑑みると、年度ごとに他者の事
業遂行可能性を検討することなく実質的な継続契約を締結することには、正当性を
見出し難い。
(提案事項)
随意契約によることの妥当性は年度ごとに検証されるべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
一般に委託料を積算するにあたっては、北海道出納局平成 2 年 4 月作成の「調査
研究委託の手引」
(以下「出納局手引」という。
)を基礎とするものが多い。これに
よれば、当該事業実施に必要な人員(研究員)のランク、人工数を設定し、ランク
ごとの単価を乗じて積算されるケースが見られる。
しかし、本件契約においては、職員 1 人あたりの単価を設定し、これに単純に職
員数を乗じて積算している。
一般に委託料とは、委託業務に対する対価として支払われるものであるから、基
本的には業務内容のボリューム、すなわち受託者側の労力が金額設定にあたっての
40
基礎となるはずである。その意味で出納局手引においても、上記のような積算方法
が示されていると理解できる。かかる観点からすると、
「職員1人あたりの金額」を
前提に契約金額を積算している本件の手法は特殊なものと言える。
確かに、事業の規模、性格からして、出納局手引が前提とするような積算方法が
馴染みにくいことは理解できないではないが、本件における積算手法はあまりに単
純である。そして、契約金額が1億円を超えていることを踏まえれば、実際の受託
者の事務処理内容に見合った積算であるか否かという視点からの検証は不可欠であ
ると考える。少なくとも、平成 17 年度においては、平成 16 年度の実績が存在する
のであるから、受託者側の実際の作業内容の実態に応じた契約金額の積算を試みる
ことはできたはずである。
また、
「職員 1 人あたりの金額」についても、市場調査として 3 社からの聞き取り
を行ったのみであり、十分な調査が尽くされたとは言い難い。
(提案事項)
委託料は、業務内容、業務量等を前提とした委託事務遂行に対する対価であり、
委託料の積算にあたっては、業務の対価としての正当性が確保されなくてはならな
い。
41
3
旅券作成関係業務
(一)契約の概要
契約名
旅券作成関係業務委託契約
担当部課
知事政策部国際課
委託先
民間企業
業務内容
旅券作成機の操作、旅券の作成及びこれらに付随する業務。
業務目的
旅券事務のうち、旅券作成に関する業務を専門技術を有する外部の者に
委託することにより、事務の効率化を図る。
契約の推移
(H15 から
H17 まで)
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
H15
特命随契
17,035,200 円
16,877,700 円
H16
同
上
14,667,660 円
14,647,500 円
H17
同
上
15,831,610 円
15,789,060 円
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
1
旅券作成業務は、我が国の公式身分証明書の作成業務であることか
ら、民間委託する場合においては、旅券作成業務についての実績のあ
る民間会社でなければならない。
(迅速で厳正な旅券サービスの継続的
かつ安定的な供給の確保・申請者個人情報及び旅券作成関係情報の漏
洩防止等)
2
上記要件を踏まえ、道内及び他の都府県において旅券作成委託業務
を受注している業者に対し、入札参加の意向を調査したところ、各都
府県所在の業者ともに現状においては、道の発注する旅券作成委託業
務を受託することは困難である回答を得ていることから、当該契約に
唯一参加可能な委託先会社を選定する。
委託料の算定
積算方法:道職員の給与基準を根拠に作業員1人あたりの経費を算出し、
これに必要な人工数を乗じて算出されている。
見積書の内容:内訳として期間、月額を記載。
(二) 監査結果
(1)委託の必要性・有効性
旅券発行業務は、昭和 45 年までは外務省の専属事業であったが、同年以降、都道
府県の事業とされている。各地方自治体の独自の事業として外部委託を行わない選
択肢もあり得るところであるが、業務の性質、事業効率等からして、外部委託によ
ること自体に特段の問題は認められず、実際、北海道は、当初より外部委託の方法
を採用してきたものである。
次に、結果の検証についてであるが、ヒヤリング調査での回答では、本業務は、
日々、成果物たる旅券が作成されることから、財務規則第 181 条所定の検査調書の
作成に馴染まないものであり、検査結果については検査員が月末に当該月分を取り
まとめ、月毎の集計表の所定欄に確認済みの表示をする取扱いをしているとのこと
42
であった。ところで、契約事務ハンドブック(出納局作成)では、清掃委託業務に
関して、検査の方法として、
「日々の作業結果を記載した作業日誌等により履行を確
認することとなります。この場合にあっては、確認者が作業日誌等に「確認済み㊞」
などの表示をした上、内部決裁に付することになります」とされている。これに準
ずれば、本件業務の検査としても、確認後の内部決裁が必要と考えられるところ、
これが行われていなかった。
(改善事項)
業務の検査につき、部内における決裁を行うべきである。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務における業者選定要件は、①迅速で厳正な旅券サービスの継続的かつ安定
的な供給の確保、②申請者個人情報及び旅券作成関係情報の漏洩防止等が可能な業
者とされている。本事業目的に照らし、かかる要件自体は取り立てて指摘すべき点
はない。
さて、上記要件に該当するか否について、
「道内及び他の都府県において旅券作成
委託業務を受注している業者に対し、入札参加の意向を調査したところ、各都府県
所在の業者ともに現状においては、道の発注する旅券作成委託業務を受託すること
は困難である回答を得ている」ことをもって、当該業者が唯一の業者であるとされ
ている。
この選定にあたっての調査として、ヒヤリング結果によれば、各都府県に対し、
同種事業を委託している受託先を確認し、これら受託先に北海道での本件業務の受
託の可能性を調査したとのことである。このように、受託先選定にあたって一定の
調査を行っていること自体は認められるものの、選考対象を「道内及び他の都府県
において旅券作成委託業務を受注している業者」に限定していることの正当性には
疑問が残る。
確かに、本件事業の性質上、信頼性の高い業者に委託する必要があることは理解
できるものの、同種の業務の経験がない業者であっても実施できる可能性は否定で
きず、
これまでの取扱いでは、新規参入の道が全く存在しないことになってしまう。
実際、本件事業は、平成 18 年度には、指名競争入札に移行している。その結果、結
局は同一業者が落札してはいるものの、契約金額は、平成 17 年度に比べて減額され
ている。
また、平成 18 年度に指名競争入札に移行するにあたって、特段の事情変更があっ
たことが理由となっているわけではなく、
翻って考えると、平成 17 年度においても、
競争入札によることは可能であったはずである。したがって、平成 17 年度の事業実
施にあたって、
「代替性」がない旨を判断し、随意契約によったことの正当性には疑
問が残る。
ちなみに、ヒヤリング調査による限り、本件事業は外務省からの事業委譲があっ
た後、相当長期間にわたって同一業者への委託が継続されていたとのことであり、
かかる事実は、代替性の有無の判断が検証されることなく、長期間過去の実績が踏
襲されてきたことを意味する。言うまでもなく、北海道が行う契約は単年度契約が
43
原則であり、運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)を根拠に随意契約を締結
するのであれば、年度ごとに、本当に代替性がないのかとの点が厳密に検証されな
ければならない。
(提案事項)
特命随契をなすにあたっては、年度ごとに他に遂行し得る業者が存在しないかど
うかを検証すべきであり、その判断プロセスを書面化することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
本件では、北海道職員の給与基準を根拠に作業員 1 人あたりの経費を算出し、こ
れに必要な人工数を乗じて算出されている。しかし、なぜ、具体的積算に上記給与
単価を用いたのかについての根拠となる資料は存在しない。他方、人工数について
は、ヒヤリング調査での回答では、委託先からの聴取、実際の作業実情の見分から
算出しているとの説明があり、また、処理件数と作業所要時間を検討した資料も存
在し、一定の検証のうえで算定されたことを認めることができる。
ただし、実際、平成 17 年度における委託先の勤務体制としては常勤 3 名、繁忙期
1名というものであり、積算と実態とが必ずしも一致していないとも捉え得る。
随意契約、特に特命随契にあっては価格競争の要素が存在しないため、経済的合
理性を担保するためには積算こそが重要であり、そのためには、実績を踏まえての
検証という視点が肝要である。
(提案事項)
委託料積算は、項目ごとに具体的資料に基づいて検討されなければならず、その
判断プロセスを書面化することが望まれる。
44
4
エゾシカ個体数調整緊急対策業務
(一)契約の概要
契約名
エゾシカ個体数調整緊急対策業務委託契約
担当部課
環境生活部自然環境課
委託先
社団法人北海道猟友会
業務内容
道東部において爆発的に増加したエゾシカの個体数を緊急に減少させる
ため、道内の主要越冬地において集中的にエゾシカの捕獲を実施する。
業務目的
北海道東部地域を中心として爆発的に増加したエゾシカにより、大きな農
林業被害や自然環境への悪影響が発生しており、これらの軽減を図るた
め、道ではエゾシカ保護管理計画に基づきエゾシカ個体数の減少を図って
きた。しかし、近年、エゾシカの個体数は各種モニタリング調査の結果か
ら、再増加の傾向を示しており、現状ではエゾシカ保護管理計画の当面の
目標である個体数指数 50 の達成が難しい状況にある。このため、個体数指
数 50 の達成を図るため、本業務を委託することにより、道内の主要な越
冬地である白糠町等において集中的にエゾシカの捕獲を実施し、メスジカ
を中心とした 3,000 頭を捕獲する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17 まで)
H16
特命随契
19,223,593 円
19,171,000 円
H17
同
15,737,400 円
15,659,000 円
上
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
生物のモニタリングを行っている業者としては、営利法人として①株式会
社A、非営利法人として②社団法人北海道猟友会、③社団法人B、④財団
法人Cが存在する。①の業者については、陸上大型哺乳類の調査を行って
いる業者であり、主な実績にエゾシカを含む大型哺乳類のモニタリング調
査を実施していることから、エゾシカの生態的知見は有しているが、事業
実施期間に作業者の管理を確実に行う手段はなく、本調査業務を実施する
ことは困難である。③の業者については、エゾシカの生態、捕獲に関する
ノウハウを有しているものの、会員に経験豊富な狩猟者がほとんどおらず
本業務を実施する市町村において作業を実施する体制になっていない。④
の業者については、アライグマを主とした森林生物の駆除関連の団体であ
り、エゾシカの生活、捕獲に関する知識に乏しく、本業務を実施するのは
困難である。以上の検討結果から、平素より狩猟及び許可捕獲(駆除)に
よりエゾシカを捕獲しており、本事業を確実に行うことができる組織を有
し、さらに優れた狩猟ノウハウを有する会員を擁する、社団法人北海道猟
友会が本業務を処理するのに最も適した機関であると判断する。
委託料の算定
積算方法:捕獲実施者、現場監督者の人件費、旅費、需用費をもとに積算
されている。
見積書の内容:金額のみが記載されている。
45
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道においてエゾシカの増殖による農業被害、環境被害は甚大なものがあると
認識されている。鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律に基づいて、北海道で
は、エゾシカ保護管理計画を策定しているが、本事業はその一環として平成 16 年度
から開始されたものである。
また、委託目的についてであるが、本件事業における作業の実態からして、委託
するほかの方法は想定し難く、委託の目的にも正当性が認められる。
成果の検証としては、捕獲頭数が数値として押えられている。平成 17 年度は、本
事業において 1,700 頭余のエゾシカが捕獲されている。ただし、当初、目標として
掲げていた 3,000 頭には及んでいない。
(2)随意契約によることの妥当性
本件での代替性有無の判断経過としては、まず、①生物のモニタリングを行って
いる業者として営利法人 1 者、非営利法人 3 者の合計 4 社に絞り、②それぞれの業
者の事業遂行可能性について個別に検討したうえで、本件委託先以外には事業遂行
者は存在しない、という判断がなされている。
このうち、①の判断としては、かつて北海道が行った事業の中から、本事業遂行
可能性のある業者を絞り込んでいるが、検討対象はこれ以外にはない。また、②の
判断についても、過去に事業関係記録から窺われる業者の能力や、北海道が把握し
ている本件業務遂行可能な狩猟免許保持者の人数等から、委託可能性の有無を判断
している。ただし、これら業者に対して直接事業遂行の意思は確認していない。
確かに、ヒヤリング調査による回答によれば、本件事業遂行に必要な銃猟免許保
持者が存在しない、あるいは、人数が少ないということであり、同回答を前提にす
ると、現に本事業を遂行し得るのは本件委託先以外には存在しないであろうことは
推測できる。
ただし、随意契約はあくまでも例外であり、
「代替性」の有無についての調査は十
分に尽くされなければならず、また、その判断経過についても書面化してその判断
の適正を検証できるようにすることが望まれる。
(提案事項)
特命随契をなすにあたっては、当該業者以外のものに事業遂行可能性がない旨を
判断したプロセスを書面化することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
捕獲実施者、現場監督者の人件費、旅費、需用費をもとに積算されている。この
うち捕獲実施者は「軽作業員」として設定され、現場監督者は「研究員 E」として
設定されている。このうち、
「 軽作業員」としての設定は北海道水産林務部作成の「森
林土木事業適用単価表」を基準とし、
「研究員 E」としての設定は出納局手引によっ
ており、それぞれの1人当たりの単価についても、各単価表を基準としている。
ヒヤリング調査での回答では、それぞれの具体的作業内容を踏まえて、作業員ラ
46
ンクの設定を行ったということであり、それ自体には問題は認められない。ただし、
基準中なぜ「軽作業員」、「研究員 E」というランク設定を行ったかについての判断
過程について、書面化はされていない。また、業務に必要な人工数についても、捕
獲目標を前提とした作業の実質を踏まえて設定したとのことである。その判断自体
には特段の問題は見出せないが、この判断プロセスについても書面化されていない。
次に、ライフル弾、くくりワナ等の需用費については、市場調査によったとのこ
とであり、カタログ等の参照資料も存在し、その積算根拠が認められる。ただし、1
頭捕獲するにあたってのライフル弾の数を 4 発として積算されているが、平成 16
年度では、1 頭当たり 1 発とされている。ヒヤリング調査によれば、実際の作業に
おいて、1 発で必ず 1 頭を仕留められるわけではないので、平成 17 年度では実態を
踏まえて 4 発としたとのことであった。ただし、実際の発弾数の具体的数値の検証
はなされておらず、聞き取り調査のみによる判断となっており、その判断プロセス
は書面化されていない。
その他、旅費、諸経費、技術経費は、北海道出納局作成の単価基準によっている。
以上、本件業務の積算にあっては、実質的には特段の問題を指摘するには至らな
いが、作業員のランク設定、人工設定、その他評価が介在するものについても、可
能な限りその判断プロセスを書面化することを検討すべきである。
(提案事項)
委託料の積算において評価が必要な項目(人件費におけるランクの設定、人工の
設定等)については、その評価判断プロセスを書面化することが望まれる。
47
5
知床の世界自然遺産登録をアピールする宣伝広告業務
(一)契約の概要
契約名
知床の世界自然遺産登録をアピールする宣伝広告業務委託契約
担当部課
環境生活部自然環境課
委託先
民間企業
業務内容
知床の世界自然遺産への登録を受け、地元住民や道民、あるいは全国に対し
て、世界自然遺産登録の趣旨や意義、将来にわたって知床の自然を保全して
いくことなどを周知し、理解を得るために新聞広告を行う。
業務目的
知床の世界遺産登録については、平成 17 年 5 月にIUCNからの評価書が公
表され登録すべきとの評価を受け、7 月の南アフリカのダーバンで行われた
第 29 回ユネスコ世界遺産委員会で決定した。この登録決定を踏まえて、全国
に対して幅広く、その趣旨や意義について周知し、理解を深める必要がある
ことから全国紙(読売新聞)に広告を行うとともに、地元住民や道民に対し
ても趣旨や意義について周知し、理解を深めるため、道内の発行部数(約 122
万部)が最大である、北海道新聞に広告を行うものである。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契
13,000,000 円
12,642,000 円
H17 まで)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
読売新聞では、「知床を世界自然遺産に」をテーマに特集記事を組んでおり、
7 月 23 日には道と共催で「第3回知床リレーフォーラム」を開催する予定で
あり、これと連動する形で、同フォーラムの特集記事の掲載日に広告を掲載
することで、高いPR効果が期待できる。また、読売新聞は、国内最大の発
行部数を誇り、同紙に広告を掲載することにより、全国に対して幅広く知床
の世界自然遺産登録の意義や将来にわたって知床の自然を保全していくこと
を周知することができる。北海道新聞社では、従来から「知床から世界遺産
への道」と題し、
「知床」をテーマとした連載記事を組んでいるが、7 月の世
界自然遺産登録の直後に広告を掲載し、道として積極的なPR活動を行う。
北海道新聞は道内最大の発行部数(約 122 万部)を誇っており、同紙に掲載
することは、北海道全域にわたる大きな宣伝効果が期待できるものである。
委託先に選定する業者は、読売新聞社及び北海道新聞社の両者が指定する広
告代理店であり、当該業者でなければ、道が希望する内容で広告掲載ができ
ないため、代替性がないことから、一者随契により委託を行うものである。
委託料の算定
積算方法:掲載新聞社ごとの掲載単価と制作費をもとに積算されている。
見積書の内容:両紙掲載料、版下デザイン制作・製版料の内訳が記載されて
いる。
48
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、知床の世界自然遺産への登録を受け、地元住民や道民に対して、世界
自然遺産登録の趣旨や意義について周知し、理解を得るために新聞広告を行うこと
は、北海道の自然の豊さのアピールともなることから実施されたものである。
また、本事業の性質上、外部委託によることには問題は認められない。
成果の検証については、本件新聞広告の効果を検証する仕組みは特に存在しない。
広告効果を具体的に検証することは容易な作業ではないとは思われるが、本事業に
限らず、広報業務の効果を丹念にくみ上げる努力は、今後も広報のあり方を考える
うえでも、重要なことである。
(2)随意契約によることの妥当性
本件において、代替性がないとの判断を行ったプロセスとしては、①新聞広報媒
体として、読売新聞、北海道新聞を選択する、②両紙に広告代理店の指定を依頼す
る、③指定を受けた者を選定業者とする、という経過を辿っている。
北海道が広報業務を行うにあたっては、企画を提出させてその企画の中から優秀
な企画提案者を選定するプロポーザル方式が多くとられている。しかし、
本件では、
同方式を経ることなく、特命随契によっている。ヒヤリング調査によって、なぜ、
プロポーザル方式を採用しなかったかを問うたところ、知床の世界自然遺産登録の
決定がなされるかどうか最終段階まで判然としなかったこと、時期を失することな
くタイムリーな広報が必要と考えられたこと、からプロポーザル方式を行う時間的
な余裕がなかったという回答であった。
上記の趣旨は理解できないではないが、随意契約はあくまでも例外であり、正当
な根拠なくして行うことは許されない。言うまでもなく、本広告業務自体を行い得
る他の業者は多数存在するはずであり、プロポーザル方式をも経ることもなく、
「代
替性」がないとの判断の正当性が維持できるか疑問なしとはできない。
上記の判断プロセスに沿って述べるに、新聞広告媒体として、全国への発信とし
て全国的には購読者数が最も多い読売新聞が、北海道内への発信として北海道にお
いて購読者数が最も多い北海道新聞が選択されたこと自体には特段の問題は認めら
れない。
次に、両紙に対して広告代理店の指定を求めた経過については、北海道が任意に
委託先を選別したわけではないという点においては、一応の段取りを踏んだものと
言うこともできないではない。しかし、本件随意契約は、他に「代替性」がないこ
とを根拠とするものであり、この手続のみをもって代替性がないとの判断の正当性
が担保されるかどうかについては疑問を呈さざるを得ない。考慮すべき要素として
は、
「タイムリーな広報」という一種の緊急性があったということであろうが、緊急
性の問題と代替性の問題は別であり、改めて、随意契約の例外性を再認識する必要
がある。
(提案事項)
代替性の有無の判断は慎重になされるべきであり、速やかな事業執行の必要性を
49
理由とした安易な判断とならないよう留意すべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
掲載新聞社ごとの掲載単価と制作費をもとに積算されている。北海道新聞の掲載
費については、規定の掲載費をもとに、北海道知事政策部広報広聴課作成の単価基
準に基づいている。読売新聞については、新聞社の掲載費単価の全国通し料金を基
準としている。
また、制作費についても、上記広報広聴課作成の基準に基づいている。
以上、本件積算は、いずれも所定の基準をもとに計算されており、特段の問題は
認められない。
50
6
生活保護法による診療報酬明細書点検業務等
(一)契約の概要
契約名
生活保護法による診療報酬明細点検業務等の業務委託契約
担当部課
保健福祉部保護課
委託先
民間企業
業務内容
生活保護法による診療報酬明細書の点検、再審査請求に伴う業務等
業務目的
生活保護法による診療報酬明細書(レセプト)点検業務等を効果的に実
施し、適正な医療扶助の執行を確保するため、専門委託業者に点検業務を
委託する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
(H15 から
H15
特命随契
1 枚につ き 210 1 枚につき 198 円
H17 まで)
円の単価契約
H16
特命随契
の単価契約
1 枚につ き 102 1 枚につき 96 円
円の単価契約
H17
委託金額
特命随契
の単価契約
1 枚につ き 100 1 枚につき 96 円
円の単価契約
の単価契約
委 託 先 選 定 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
の理由
1
技術的基準
「健康保険法の規定による療養に要する費用の額の算定方法」
(H6.3.6
厚生省告示第 54 号)など、必要な専門知識が蓄積されている者である。
2 地理的適正
履行期限、履行場所等から北海道内で営業している者である。
3
人員的適性
9 ケ所の保健福祉事務所に派遣できる人員を有している者であること。
4
レセプト点検専門業者であること。
一部の医療機関では、診療報酬請求事務を業者に委託している場合が
あるが、医療機関から委託を受け請求事務を行っている者に、保険者と
してのレセプト点検を委託することは好ましくない。
これらの要件を全て満たすのは本件委託先のみである。
委 託 料 の 算 積算方法:レセプト点検業務の 1 枚あたりの単価を道内各市の契約単価を
定
参考として設定し、再審査を行う場合の単価をこれの 5 倍とし、交通費宿
泊費を計上のうえ、予定価格枚数を前提として 1 枚あたりの単価を積算し
ている。
見積書の内容:1 枚あたりの単価の記載がなされている。
(二) 監査結果
(1)委託の必要性・有効性
「健康保険法の規定による療養に要する費用の算定方法」
(平成 6 年 3 月 16 日厚
51
生省告示第 54 号)
、「使用薬剤の購入価格(薬価基準)」(平成 10 年 3 月 6 日厚生省
告示第 30 号)との照合等により診療報酬の算定方法に誤り及び疑義がないか等を点
検する業務であり、診療報酬請求の適正につき検証するために行われる業務である。
本事業は、従前は、臨時職員を雇用するなどして委託に拠らずに対応していたが、
平成 11 年度にモデル事業として特定の支庁において一部外部委託を試み、従前の事
業実施状況との比較検証を経て、平成 13 年度より全面的に外部委託がなされている。
本件事業成果の検証としては、各保健福祉事務所及び出張所単位で、過誤調整額
が整理されその効果が把握されている。提出を受けた資料によれば、一部保健福祉
事務所及び出張所において委託費用が過誤調整額を上回っているが、全体としては、
総額で 7,200 万円余のプラスとなっている。
(2)随意契約によることの妥当性
上記のとおり、①技術的要件、②地理的適正、③人員的適性、④レセプトの点検
業者であること(診療報酬請求事務を受託する業者ではないこと)の4要件が設定
されている。
このうち、①の要件は当然のものと考えられるが、専門技術を有する業者は全国
に相当数存在する。
②の要件であるが、ヒヤリング調査での回答によれば、北海道内で営業している
業者であることが要件とされている理由としては、「レセプトは、紙媒体で各保健
福祉事務所宛に届けられるものであり、ケースワーカーもこれを利用するため北海
道各地の保健福祉事務所に備え置かなければならず、点検にあたっても点検員が現
地へ赴く必要があるため、北海道内に拠点を構える業者であることを前提としてい
る」とのことであった。
なお、情報通信媒体のあり方が変更になった場合は、別途、検討を要することは
いうまでもない。
この①、②の要件に該当するものとして、本件委託先を含めて 5 者が選別されて
いる。
ヒヤリング調査での回答によれば、
この 5 者に絞り込むための調査としては、
各保健福祉事務所への照会、同種業者への聞き取り調査、インターネットでの検索
調査を行ったとのことであった。しかし、この調査の経過は書面化されていない。
仮にこの調査経過が不十分なものであったとすれば、随意契約によることの正当性
は担保されない。「代替性」の有無判断の手続的適正、透明性のためも、この調査
経過は書類化して明確にしておくことが望まれる。
結局、④の要件に該当するものは、当該委託先しか存在しないとの判断がなされ
ている。診療報酬の流れの中での本事業の位置付けを整理するに、まず、医療機関
がレセプトを作成して支払基金宛てに診療報酬請求を行う。そして、支払基金にお
いて原審査を行い、保険者である各福祉事務所に審査済みレセプトを届け、各福祉
事務所においてレセプト点検を行い疑義レセプトについては支払基金宛に再調査
を依頼する。本事業は、この各福祉事務所におけるレセプト点検の業務である。し
かるに、医療機関が支払基金に対して行う診療報酬請求事務を受託している業者が、
本事業を受託することになると、あたかも、自らの行為をチェックすることになる
52
側面があり、手続の公正に疑念を抱かれかねない、という問題意識から、④の要件
が設定されている。この④の要件の趣旨は理解できるものである。
以上、本件において随意契約によったことを問題と考えるには至らない。しかし、
上記のとおり、代替性の有無を判断する要件の設置については、毎年、その要件の
正当性が事業目的、形態等との関係から吟味されなくてはならないし、また、その
要件に該当するかどうかの判断についても、十分な調査が尽くされなければならな
いとともに、その調査過程、判断過程が書面化される必要があると考える。
(提案事項)
特命随契をなすにあたっては、当該業者以外のものに事業遂行可能性がない旨
を判断したプロセスを書面化することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
レセプト点検業務の 1 枚あたりの単価を、道内各市の福祉事務所における契約単
価を参考として設定し、再審査を行う場合の単価をこれの 5 倍とし、交通費宿泊費
を計上のうえ、予定価格枚数を前提として 1 枚あたりの単価を積算している。
1 枚当たりの点検単価につき、平成 15 年度、平成 16 年度では福岡県において行
われている同種業務の単価を参考としている。平成 17 年度において、何ゆえ、北海
道内各市における単価を基準とすることにしたのかは、ヒヤリング調査の際の回答
では明確な説明はなかった。結果としては、前年よりも 1 枚当たりの積算単価は抑
えられており(契約金額は同様であるが)
、特段の問題を指摘するものではないもの
の、一般論としても積算にあたっての市場調査の対象についての考え方(誰から情
報収集するのか、なぜその相手から情報収集するのか)も大切な要素である。
53
7
資源保全実態調査委託業務
(一)契約の概要
契約名
資源保全実態調査委託契約
担当部課
農政部農村整備課
委託先
北海道土地改良事業団体連合会
業務内容
地帯別・営農類型別に分類した全道 15 地区において、国から示された「資
源保全実態調査事業の実施に関するマニュアル」等に基づき、基礎調査、
保全管理計画調査検討を行う。
業務目的
農地・農業用水等の地域資源は重要な社会共通資本であるが、農家戸数の
減少や農業集落の脆弱化などにより、適切な管理が困難な状態となってい
る。このような状況に対応するため、国は、食料・農業・農村基本計画の
見直しにおいて、地域の農業者、地域住民等の多様な主体の参画を得て、
上記資源の適切な保全管理を行うとともに、農村環境の保全等にも役立つ
地域共同の効果の高い取り組みを促進することとした。このため、平成
19 年度からの必要な施策の導入に向け、地域の実態調査や管理手法の検
討等を行う調査を国と地方の役割分担のもとに本年度に実施することと
し、道において資源保全実態調査を委託により実施する。
契約の推移
(H15 から
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
H17
特命随契
28,864,500 円
28,455,000 円
H17 まで)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
本業務は、平成 16 年度に行われた地域資源管理体制調査結果等を参考に、
限られた時間(基礎調査については 7 月中旬までに中間報告)内でとりま
とめが可能な者であって、かつ、次に掲げる条件を満たしていることが必
要となる。
1
地図情報に土地情報や営農情報の属性の入力が可能で、特定の GIS を
活用し、資料を取りまとめることが可能な者。
2
実態に即した保全管理組織(体制整備等)の構築をモデル的に行うた
め、土地改良施設等の維持管理や体制の整備・運営に精通している者。
3
限られた時間内で全道 15 地区を同一水準で調査できる技術体制が整
備されている者。
4
経営状況など、個人情報も調査する必要があることから、農家、市町
村、土地改良区、農協等から限られた時間内に情報が入手できるととも
に情報保護が担保できる者。
これら業務に必要な農業農村整備事業支援システムを有し、地域資源や
管理組織等に精通し、全道的に技術体制が整備され、かつ市町村・土地
改良区・農協等を会員とする者が、「北海道土地改良事業団体連合会」
に限られる。
54
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅
費、その他の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:金額のみが記載されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
平成 17 年 3 月、国において、食料・農業・農村基本法に基づき「食料・農業・農
村基本計画が策定され、その中で農村の振興に関する施策として地域資源の保全管
理政策が構想され、平成 19 年度からの必要な施策の導入に向け、地域の実態把握や
保全管理の手法の検討等を行う調査を実施することとされている。本事業は、同施
策の一環として位置付けられるものである。
また、業務の性質上、専門性、技術性が要求されることに加え、調査範囲が広範で
あること、調査期間が限定されていることなどから外部委託によっており、特段指
摘すべき問題はない。
平成 19 年度からの施策の本格的実施に先立って、本事業結果に基づいて、平成 18
年度より、道内 15 地区においてモデル事業が遂行されており、予定にしたがって成
果の利用がなされている。
(2)随意契約によることの妥当性
本事業に関する代替性の有無の判断としては、7 月中旬までに基礎調査について
の中間報告のとりまとめが可能な者であることを前提に、①地図情報に土地情報や
営農情報の属性の入力が可能で、特定の GIS を活用し、資料を取りまとめることが
可能な者、②実態に即した保全管理組織(体制整備等)の構築をモデル的に行うた
め、土地改良施設等の維持管理や体制の整備・運営に精通している者、③限られた時
間内で全道 15 地区を同一水準で調査できる技術体制が整備されている者、④経営状
況など、個人情報も調査する必要があることから、農家、市町村、土地改良区、農
協等から限られた時間内に情報が入手できるとともに情報保護が担保できる者、と
いう要件が設定され、これらに該当するものは、本件委託先以外には存在しないと
されている。
例えば、民間の土木コンサルタント会社であっても、物理的、能力的には、抽象
的には本事業を遂行することは不可能とは思われない。特に、上記①の要件に該当
する者は、当該委託先以外にも多数存在すると考えられる。結局のところ、本件に
おいて、代替性がないとの判断が許容されるとすれば、国との関連における提出期
限を確実に遵守できる業者が他に存在するか否かとの点にかかってくるものと思わ
れる。
ヒヤリング調査の中では、本件委託先は、調査先の市町村他が会員となっている
こともあり、確実かつ迅速な情報収集できる者は当該業者のほかにない旨判断して
いるとの趣旨の回答があった。ただし、期間内での実施可能業者がほかに存在する
か否かについての具体的調査は行われていない。
実際、本件事業を期間内に遂行できる業者が他に存在しないことが事実であり、
55
また、それが相当程度明らかであったとしても、例外としての随意契約の位置付け
に鑑みれば、少なくとも、他の業者を選定し得ないことについての具体的調査を行
い、その判断プロセスについては書面化すべきことが望まれる。
(提案事項)
特命随契をなすにあたっては、当該業者以外のものに事業遂行可能性がない旨を
判断したプロセスを書面化することが望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関し
ては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
本件では、研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅費その
他の経費をもとに積算されている。
具体的な研究員のランク、人区については、北海道農政部作成の調査測量設計歩
掛表に基づいて積算されている、同歩掛表は、経済情勢その他に応じて毎年改定さ
れているものであり、一定の信頼性が認められると言ってよい。
また、その他の旅費等の経費についても、具体的な調査内容に対応して、土地改
良事業等委託積算基準、建設機械等損料算定表に基づいて詳細に積算されている。
さらに、諸経費率、技術経費率については、北海道出納局作成の経費率表に基づ
いており特段の問題は認められない。ただし、技術経費率の算定にあたって、本件
では「困難な内容の調査・研究」を前提としており、その判断自体に問題はないと
は考えられるものの、評価・判断プロセスについて、資料化しておくことが望まし
いと考える。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目について
は、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
56
8
歩掛等基礎データ解析委託業務
(一)契約の概要
契約名
歩掛等基礎データ解析委託契約
担当部課
農政部事業調整課
委託先
北海道土地改良事業団体連合会
業務内容
工事歩掛等積算基準改正の基礎資料作成を行う(工事歩掛等の検討及び
改正素案作成、工事数量算出基準の改正素案作成、歩掛解析及びデータ
整理)
業務目的
本事業を確実に実施するためには、農業農村整備事業に特有の歩掛の内
容や施工実態に関して高度な知識が必要であるため委託により実施す
る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契
32,424,000 円
31,290,000 円
H16
同
上
30,754,500 円
30,450,000 円
H17
同
上
17,220,000 円
16,905,000 円
H17 まで)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
1
農業農村整備事業の施工実態を熟知していること
2
取扱注意文書である農政部制定歩掛表等の使用許可機関であること
3
歩掛解析業務等の業務を手掛けた実績があり、解析業務に精通して
いること
4 積算基準等を熟知していること
以上の条件から、①取扱注意文書である農政部制定歩掛表等の使用許
可機関である、②設計施工管理業務及び工事数量算定業務を数多く手掛
けた実績があり積算と施工管理に精通している、などの条件を満たす北
海道土地改良事業団体連合会以外に代替性がないことから同連合会を受
託者として選定する。
委託料の算定
積算方法:技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、事
務用品費その他諸経費等をもとに積算されている。
見積書の内容:金額のみが記載されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、農政工事等に関する予算積算基準の基礎資料の作成業務であるが、農
政関連工事等事業の予算積算が適正なものでなければならないのは当然であり、積
算の前提たる積算基準も常に適正なものでなくてはならない。また、時勢に適合し
た適正な積算基準を設定するためには、常に見直しが必要である。
工事関連の積算基準については、農林水産省、国土交通省、開発局等においても
策定されているが、北海道における区画の特性もあり、北海道農政部では、毎年、
57
その積算基準が見直されている。
また、本事業は外部委託によるものであるが、本件業務を委託により遂行するよ
うになったのは平成 10 年以降であり、それ以前は、北海道自身が行っていた。かか
る意味では、北海道独自の事業とすることは物理的に不可能とまではいえないが、
ヒヤリング調査での回答によれば、毎年 4 月に改定される国の基準を踏まえて、短
期間に本件作業を行う必要があり、従前は、いわば職員総動員での作業を遂行して
いたものの、事業の効率性に鑑みた場合、委託することが合理的であるとの判断の
もと、平成 10 年以降、委託によってきたとのことであった。その背景としては、ガ
ット・ウルグアイラウンド対策補正予算などによる大幅な事業量の増加への対応な
ど、業務量が年々増加しているという点があり、外部委託によることについて、特
段指摘すべき問題はないと考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
本件では、①農業農村整備事業の施工実態を熟知していること、②取扱注意文書
である農政部制定歩掛表等の使用許可機関であること、③歩掛解析業務等の業務を
手掛けた実績があり、解析業務に精通していること、④積算基準等を熟知している
こと、という要件を設定し、この要件を満たすものは本件委託先以外には存在しな
いという判断がなされている。
しかし、本件業務に専門性、技術性が必要とされるとはいえ、従前は北海道職員
自身が行っていたことから窺えるとおり、物理的な作業内容自体から、当該事業者
以外に遂行できるものが存在しないとまでは言えない。本件業務において、代替性
がない言うためには、上記②の要件に関連して、本件歩掛表の性質上、どの程度の
秘密性が保たれる必要があるかとの観点である。すなわち、工事委託先になる可能
性のある民間業者等に歩掛表作成手続に関与させることの妥当性如何である。この
点、ヒヤリング調査での回答では、農政部制定の積算資料は北海道取扱注意文書規
定第 3 条1項に基づく取扱注意文書として指定されている、その配布先も公の機関
に限定されている、本件委託先は土地改良法に基づく公的機関であり一定の信頼性
が認められる、といった説明があった。かかる説明内容には一定の合理性があり、
特命随契によったことについて、特段指摘すべき問題はないと考える。
(3)委託料算定根拠の妥当性
技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、事務用品費その他諸経
費等をもとに積算されている。
ただし、本業務では、技師のランク、人工数の設定にあっては、一般の調査研究
業務とは異なる特殊性があるとの観点から、規定された積算基準によらずに作業内
容の実質から判断がなされている。
基本的に委託料とは、業務に対する対価と考えられるから、事業の性質によって
は、一般的な基準に馴染まないものも存在し、その場合に当該事業の具体的作業内
容に対応する形で、必要で人員のランク、人工の設定されることは理解できるとこ
ろであり、本件業務の性質からして、本件での人員のランク、人工の設定手法自体
58
には、あえて指摘すべき問題はないものと考える。
問題は、これら設置にあたって、正しく本件事業のための作業内容を正確に把握
したうえでの判断がなされているかとの点である。この点、ヒヤリング調査での回
答によれば、本件事業を委託することとした平成 10 年から平成 15 年までは、委託
先から見積書を取りうけ、
これを前提に積算を行っていたとのことである。しかし、
かような手法では、いわば委託先の見解をそのまま受け入れているに等しく、実際
の作業内容に関する検証が介在しない結果となってしまう。
そこで、事業実績を踏まえて、平成 16 年度以降は、過去 4 年分の作業実績を提出
させ、人員のランク、人区数を設定するようになっている。その意味では、作業の
実質を踏まえた適正な積算を行う方向でのものであって評価することができる。
なお、諸経費率、技術経費率については、北海道農政部作成の土地改良事業等委
託積算基準によっており、特段の問題は認められない。
59
9
日本海ニシン種苗生産委託業務
(一)契約の概要
契約名
日本海ニシン種苗生産業務委託契約
担当部課
水産林務部水産振興課
委託先
社団法人北海道栽培漁業振興公社
業務内容
ニシン種苗の生産及び中間育成をする業務。
業務目的
日本海北部(石狩湾、留萌及び宗谷海域)で漁獲される日本海沿岸性ニシ
ンを親魚に用いて採卵を行い、45mm 種苗 180 万尾を生産する。また、こ
のうち 30 万尾を 60mm サイズまで中間育成する業務であり、専門業者への
委託が必要。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契
57,625,000 円
57,498,000 円
H16
同
上
50,504,000 円
50,400,000 円
H17
同
上
50,503,950 円
50,400,000 円
H17 まで)
委託先選定の
運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
1
道内で 180 万尾規模のニシン種苗を生産し、30 万尾規模の中間育成
を実施できる技術や知識及び施設を有する者は、A センター、(社)北
海道栽培漁業振興公社、B センターの3機関である。
2
3機関の中で、A センター、B センターは、独自の事業計画を有して
おり、本来業務である種苗生産期間と当該委託業務期間が重複するた
め、両機関とも当該委託業務の受託が不可能である。
3
A センターは、厚岸町(道東太平洋海域)、B センターは別海町(根室
海峡海域)に位置するため、地理的条件から本業務である日本海海域に
おけるニシンの種苗生産に対応できる施設は、
(社)北海道栽培漁業振
興公社の施設のみである。
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅
費、需用費、運搬費等の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:金額のみ記載されている。
(二) 監査結果
(1)委託の必要性・有効性
かつて北海道では、ニシンの漁獲高は年間 100 万トン前後を誇っていた時代もあ
るが、その後、漁獲高が激減した。かような状況のもと、日本海沿岸の漁業振興の
ため、平成 8 年より本事業が開始された。
本件事業は、平成 8 年から開始されたものであるが、平成に入ってから平成 8 年
までは漁獲高数トンから 10 トン程度で推移していたところ、平成 9 年以降、200 か
ら 300 トンの漁獲高を確保しており、平成 16 年では 1,200 トンとなっている。
また、本件事業は外部委託によっている。北海道自前の施設でニシン種苗の生産
60
が可能なものとして室蘭市所在の栽培水産試験場が存在するものの、ヒヤリング調
査での回答によれば、同試験場における種苗生産可能数は、年間数万から 10 万尾程
度であるとのことであり、本件事業目的を果たすための能力に不足している。
(2)随意契約によることの妥当性
本件においては、①道内で 180 万尾規模のニシン種苗を生産し、30 万尾規模の中
間育成を実施できる技術や知識及び施設を有する者は、A センター、
(社)北海道栽
培漁業振興公社、B センターの 3 機関である、②3 機関の中で、A センター、B セン
ターは、独自の事業計画を有しており、本来業務である種苗生産期間と当該委託業
務期間が重複するため、両機関とも当該委託業務の受託が不可能である、③A セン
ターは厚岸町(道東太平洋海域)、B センターは別海町(根室海峡海域)に位置する
ため、地理的条件に優位性がない、との判断過程を経て、当該委託先が選定されて
いる。
このうち、①についてであるが、本件事業の進展状況と実績からして、生産尾数、
中間育成尾数の設定には合理性が認められるといってよい。また、対応施設を保有
している者を 3 者に絞った点については、ヒヤリング調査での回答によれば、毎年
行われている種苗生産放流実績調査に基づいて検証しているとのことであり、事実
に即した適正な調査結果に基づいて 3 者に限定されていると認められる。
次に②については、
本件委託先以外に 2 者に対し、
対応可能性を聞き取った結果、
この 2 者の業務体制において実施することはできないとの判断を下している。ただ
し、物理的な可能性としては、これら 2 者が事業体制を整えて本件事業に意欲的に
参画してくることもあり得ないとは言えない。③についても、本件委託先でなくて
は事業遂行ができない決定的な要因とまでは言えない。
したがって、他に事業を遂行し得るものが存在しないかにつき、年度ごとにその
可能性を検討していく必要がある。
(提案事項)
特命随契を行うに際しては、年度ごとに他に事業を行う得る業者が存在しないか
につき調査検討を行い、その判断プロセスを書面化することが望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関し
ては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅費、需用費、運搬
費等の経費をもとに積算されている。
本件の積算は、出納局手引に基づく手法を採用している。出納局手引では、人件
費については、AからFまでの格付けを行っており、業務の難易度に応じてランク
の設定することとされている。本件では、下位のランクが設定されており、積算金
額の多寡との観点では、実際上は、大きな問題性は感じないが、なぜ、このランク
に該当すると評価・判断したのかについてのプロセスについて資料化はされていな
い。人工数についても同様である。他でも指摘しているところであるが、積算の透
61
明性を確保する意味でも、研究員のランク、人区数等の評価、判断プロセスについ
てはできる限り書面化すべきと考える。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工の設定等)については、その評価、判断プロセスを書面化す
ることが望まれる。
(4)その他
上記(2)では、運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)への該当性につい
て述べたが、本件契約は、その契約金額からして、特例政令の適用可能性があるケ
ースである。
役務提供を受ける契約が特例政令の適用を受ける要件としては、①当該契約に基
づく調達内容が「特定役務」に該当すること、②当該契約の予定価格が調達契約の
区分ごとに定められた金額以上であることである。そして、①については、政府調
達に関する協定の附属書Ⅰ日本国の付表4に具体的サービス名が規定されている。
そして、特例政令の適用を受ける契約については、原則として随意契約は許されず、
随意契約による場合には、
特例政令第 10 条に規定する厳格な例外要件を満たす必要
がある。
本件契約との関係では、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号が問題となるが、同号では
「他の物品若しくは特定役務をもって代替させることができない芸術その他これに
類するもの又は特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等若しくは特
定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されているとき」でなけ
れば随意契約によることはできないとされている。
この文言から明らかなとおり、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号に定める要件は、運
用方針第3節(随意契約)関係1の(2)に比して厳格なものであり、特例政令の
適用を受けるとすれば、その特定性の判断が上記「随意契約によることの妥当性」
の項目で述べたもので足りるかは再考を要する問題である。
なお、特例政令の適用を受ける場合には、北海道広報による公示が求められてお
り、公表の点でも異なる取扱いとなる。そして、本件においては、契約締結後に公
示に関する決定がなされており、公示の観点からは、特例政令及び同特例を定める
規則に基づいて北海道広報による公示がなされている。
ところで、本件事業決定書では、随意契約によった根拠として施行令第 167 条の
2 第 1 項第 2 項及び運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)のみが記載されて
おり、特例政令に定めた要件該当性を判断した体裁となっていない。特例政令の適
用を受ける場合には、運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)の適用が排除さ
れることになる。よって、本件契約が特例政令の適用を受けると判断されるのであ
れば、事業決定手続に誤りがあったことになる。
なお、ヒヤリング調査での回答によれば、結論としては、本件契約は、上記付表
4に掲げる契約には該当せず、特例政令の適用を受けるものではないと考えるとの
ことであった。この判断が正しいとすれば、事業者選定過程についての実質的な問
62
題はないことになり、手続上、必要とされていない北海道広報による公示を行なっ
たこととなるため、結果的には、大きな問題を指摘するまでには至らない。ただし、
事業決定書上の随意契約の根拠を運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)とし
つつ、公示手続のみを特例政令によることは手続のあり方としては矛盾しており、
その背景として、特例政令に対する理解が不十分であったことは否定できない。
(提案事項)
契約金額が特例政令に該当する場合は、当該サービスが特例政令に言う、「特定
役務」に該当するか否かの判断経過を書面化することが望まれる。
特例政令の適用を受ける契約を随意契約にて行う場合には、同政令に定める要件
を満たす必要があり、事業決定にあたっても、同政令に定める要件該当性が検討さ
れなければならない。
特例政令は施行令及びこれに基づく財務規則、運用方針に優先するものである。
63
10
林業用種子採取事業委託業務
(一)契約の概要
契約名
林業用種子採取事業委託契約
担当部課
水産林務部森林整備課
委託先
北海道山林種苗協同組合
業務内容
スギ、カラマツ、トドマツのきゅう果の採取及び種子精選をすること。
業務目的
スギ(精選種子で30kg)、カラマツ(同240kg)、トドマツ(同5
00kg)のきゅう果の採取及び種子精選をするためには、対応の能力の
ある業者へ委託する必要がある。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契
27,269,550 円
27,257,895 円
H16
同
上
27,112,050 円
27,101,130 円
H17
同
上
27,112,050 円
27,095,250 円
H17 まで)
委託先選定の
第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
1
林業種苗法第10条の規定により定められた生産事業者の登録を受
けた者で、生産事業の内容が種子の採取について登録している者。
2
種子の結実には豊凶があり、樹種により量も一定していないため、道
内各所に所在する指定採取源から採取しなければ、数量の確保が困難で
あることや、採取の適期が限定され迅速な対応が必要とされることか
ら、道内一円で種子採取が可能な者。
以上の条件を満たすものは、北海道山林種苗協同組合1者のみである。
委託料の算定
積算方法:スギ、カラマツ、トドマツにつき、それぞれきゅう果採取、精
選に要する人件費、その他の経費をもとに積算している。
見積書の内容:内訳としてスギ、カラマツ、トドマツにつきキロ当たりの
単価と数量を記載した上で、見積金額が提示されている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
林業用優良種苗の生産の安定を図ることは、北海道の林業にとっても重要である。
この点、林業用優良種苗生産需給調整要綱(昭和 36 年 9 月 9 日、36 林野造第 2817
号林野庁長官より都道府県知事あて、最終改正平成 15 年 9 月 29 日)では、
「都道
府県は、都道府県林業用種苗需給調整協議会の意見を聞いて、種苗の長期計画及び
年次生産計画を策定するものとする」とされ、また「都道府県は、当該都道府県の
区域内における造林に必要な種子を原則として自給するものとする。」とされてい
る。
本事業は、北海道における造林計画の一環として林業用の種子の採取を行う事業
である。また、本事業が全道広範囲にわたるものであること、危険の伴う作業内容
であること、種子採取は時期が限定されていることなどからすると、外部委託によ
64
ったほうが、安全、確実な事業の実施が求められるとの観点から外部委託が採用さ
れている。
本事業の成果の利用、検証としては、予定どおりのきゅう果の採取、精選がなさ
れ検査のうえ引渡しを受けている。種子需給全体のシステムとしては、道林業種苗
需給調整協議会の意見を聴取のうえ必要量を決定し、豊凶に備えて備蓄用の種子を
も確保しつつ、種子を採取・管理する団体である北海道山林種苗協同組合に売り払
い、備蓄種子についてもまきつけ計画量にしたがって決定される、というものであ
り、本事業もこの一環に位置付けられ、その役割を果たしている。以上、成果の利
用、検証については特段指摘すべき問題は認められない。
(2)随意契約によることの妥当性
本事業においては、
①林業種苗法第 10 条の規定により定められた生産事業者の登
録を受けた者で、生産事業の内容が種子の採取について登録している者、②種子の
結実には豊凶があり、樹種により量が一定していないため、道内各所に所在する指
定採取源から採取しなければ、数量の確保が困難であることや、採取の適期が限定
され迅速な対応が必要とされることから、道内一円で種子採取が可能な者、という
要件を設定し、これに該当する者は本件委託先業者以外には存在しない、として当
該委託先が選定されている。
このうち①については、林業種苗法によって「生産事業を行おうとする者は、そ
の住所地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない」とされており、
また、本件事業内容からして、登録生産事業の内容に種子の採取が含まれているこ
とは必須である。したがって、①の要件は適正なものと考えられる。
さて、ヒヤリング調査によると、①の要件のうち北海道知事の登録業者総数は 314
者であり、そのうち種子の採取について登録している者は 79 者であるとのことで
ある。
しかるところ、②の要件、すなわち採取地域が道内一円とされているものは、こ
のうち1者しかいないとして、本件委託先が選定されている。確かに、採取量の確
保、種子の地域への適合性等の観点からは、道内一円において広く種子を採取する
必要性は認められる。
したがって、本件事業を1者に委託することが前提であれば、
他に「代替性」がないとの判断も理解できないところではない。
しかし、例えば、種子単位、あるいは地域単位で事業を分割することができれば、
複数業者による競争も可能となるのではなかろうか。もちろん、不適切な事業分割
によって、無用なコストがかかるなどの事態が生じることは避けなければならない
が、競争入札が原則的な契約方式であることを常に念頭におき、競争入札への移行
可能性を検証していかなければならない。
なお、平成 18 年度の事業実施にあたっては、競争入札への導入が検討されたもの
の、結局、見送られている。
(提案事項)
今後とも、事業分割の可能性等の検証を重ね、競争入札への移行可能性を検討す
ることが望まれる。
65
(3)委託料積算根拠の妥当性
本件業務では、スギ、カラマツ、トドマツにつき、それぞれきゅう果採取、精選
に要する人件費、その他の経費をもとに積算している。そして、きゅう果採取につ
いては、とび工 1 人あたりの単価を設定し、作業内容に基づいて人工数を設定してい
る。
ところで、北海道水産林務部では、一般の工事に関するとび工の単価については、
森林土木事業単価表を用いるが、本件業務は、通常の工事と作業内容が異なること
から、同単価表ではなく、同種事業を行っている複数の業者から見積書を取りうけ
これに基づき、とび工1人あたりの単価を割出している。このように、とび工単価
については、具体的な調査、検討を行って金額が設定されていると評価できる。
ただし、人工数の設定(例えば、スギについて言えば一日あたり7本の木から採
取できるという設定)については、前年度を踏襲しているのみであり、少なくとも、
平成 17 年度の事業実施にあたって、その適正が検証されていない。結果として、
人工設定に誤りはないのかもしれないが、前年の作業実績等を踏まえて、年度ごと
に積算の正しさについての検証を行うことを怠ってはならない。特に、本件事業は、
ヒヤリング調査での回答によれば、およそ 30 年もの長きにわたって同一業者との
契約を継続しているとのことであり、検証なく前年度の踏襲が継続されているとす
れば問題である。
また、管理費、諸経費それぞれ 10%ずつが計上されているが、これも前年度の設
定が踏襲されているとのことである。その管理費率、諸経費率の妥当性はともかく、
少なくも、いかなる基準に基づいて、いかなる判断の結果、これら比率を設定する
のかとの点の判断プロセスを書面化する等して明確にすることが望まれる。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目について
は、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
66
11
道有施設保全業務支援資料作成業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
道有施設保全業務支援資料作成業務委託契約
担当部課
建設部計画管理課
委託先
民間企業
業務内容
1
道有施設保全計画作成に係る現地調査の方法(各種判断基準を含
む。)を定め、それに基づき保全計画を作成するための、技術職員向け
保全計画作成要領を作成する。
2 各施設の修繕履歴や施設運営費等の情報の一元管理して、施設管理
者が行う日常の維持管理や修繕業務を支援する機能を有するシステム
(以下「システム」という。
)等を利用して施設の維持管理業務を円滑
に行うための、施設管理者向け保全マニュアルを作成する。
業務目的
現在、道有施設(以下「施設」という。
)に係る情報の一元化と適切な保
全を行うことにより、施設の長寿命化やライフサイクルコストの縮減を
図るため、
「公共建築物ストマックマネジメント推進事業」
(平成 15 から
17 年度)を実施している。同事業では、平成 15 年度から業務委託によ
り、先進事例調査や施設情報システム(以下「システム」という。)の設
計・構築、現地調査、データ入力等を行っている。本年度は、平成 18 年
度からの本格運用に向け、システムを試験運用するとともに、システム
運用と現地調査により保全計画を作成するための技術職員を対象とした
「道有施設保全計画作成要領」及びシステムを利用して施設の維持管理
業務を円滑に実施するための施設管理者を対象とした「道有施設保全マ
ニュアル」を作成する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契
11,999,400 円
11,760,000 円
H17 まで)
委 託 先 者 選 定 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
の理由
「道有施設ストックマネジメントシステム調査・設計業務」(平成 15 年
度)について、同社がプロポーザル方式により選定され、業務を受託し
た。平成 16 年度は、同社が引き続き「道有施設スットクマネジメントシ
ステム構築業務」及び「道有施設ストックマネジメント現況調査・シス
テム登録業務」を共に受託している。また、同社は、本年度、上記シス
テム保守業務も受託し、システムの試行運用と、必要に応じてシステム
の修正を行う予定である。
「道有施設保全計画作成要領」及び「道有施設
保全マニュアル」の内容となるデータ入力や保全計画の作成、光熱水費
等施設管理コストの検証等は、システムと密接に関わりがあることから、
それらの作成にあたっては、このシステムを熟知し、かつ、この 2 年間
の関連業務での蓄積がある同社を契約の相手方とする。
67
委託料の算定
積算方法:研究委員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
諸経費、技術経費をもとに積算されている。
見積書の内容:金額のみが記載されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、
「公共建築物ストックマネジメント推進事業」の一環として位置付けら
れるものであり、道有施設の適切な保全管理を図ることを目途とするものである。
本事業の関連事業は平成 15 年度から開始されており、事業計画の流れの概略として
は、北海道内に約 2 万棟存在する道有施設の現状調査を行ったうえで保全計画を立
て、この収集した情報を一元化するためのシステムの構築、データ入力等を行い、
①保全計画を作成するための技術職員を対象とした「道有施設保全計画作成要領」
の作成、②システムを利用して施設の維持管理業務を円滑に実施するための施設管
理者を対象とした「道有施設保全マニュアル」を作成することとされている。
本業務を外部委託によったのは、一連の業務遂行には、情報システムに精通する
などの専門性、技術性が必要なことによる。
(2)随意契約によることの妥当性
本件が随意契約によった理由は、
本件関連業務がスタートした平成 15 年度におい
てプロポーザル方式を用いて本件委託先が選定され、平成 16 年度においても同一の
委託先が引き続き関連業務を受託していることから、本件においても同社に委託す
るということである。業者選定理由に沿ってより具体的に言うと、①「同社は、本
年度(平成 17 年度)、上記システム保守業務も受託し、システムの試行運用と、必
要に応じてシステムの修正を行う予定である」こと、②「
『道有施設保全計画作成要
領』及び『道有施設保全マニュアル』の内容となるデータ入力や保全計画の作成、
光熱水費等施設管理コストの検証等は、システムと密接に関わりがある」ことが理
由とされている。
ところで、本件業務においてなすべきことは、直接的には「道有施設保全計画作
成要領」と「道有施設保全マニュアル」を作成することである。前者は、北海道担
当職員が保全計画を策定するにあたっての指針となるべき要領を作成する業務であ
り、後者は道有施設の管理者が当該施設を管理するにあたってのマニュアルを作成
する業務である。このような業務内容自体を見れば、平成 16 年度までに収集された
一元化された情報を把握することができれば、必ずしも当該システムの構築を行っ
た業者でなくとも遂行できるのではないかとの疑問が生じる。
そこで、
「要領」、
「マニュアル」作成業務と先行業務によって構築されたシステム
の関連如何を検証する必要がある。
ヒヤリング調査での回答によれば、道有施設の一元管理を目指すにあたって、当
初は北海道の建築専門技術者による情報収集と、これら技術者による一元的管理が
予定されていたとのことであった。しかし、2 万棟にも及ぶ全施設の情報をこれら
技術者のみの労力をもって収集するには長期間を要すること、全庁的に単なる施設
68
管理を超えた道有資産の有効活用(ファシリティマネジメント)の取り組みが開始
されたことなどから、各施設の管理者自身にも施設の情報を入力させてシステムを
構築し、技術者との役割分担のもとで、施設の管理・有効活用を図ることとされた。
そして、本業務に言う「道有施設保全マニュアル」は、施設の具体的管理手法に関
するマニュアルのみならず、システムへの入力方法等のマニュアルをも含むもので
あるとのことであった。かかる説明を前提とすると、平成 17 年度以前に構築したシ
ステムと直接的関連性を持つことになるから、随意契約によって本件委託先を選定
したことには特段の問題は認められない。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究委員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、諸経費、技術経費
をもとに積算されている。
人件費については、
研究員の設定は出納局手引によって研究員 A から F を設定し、
「要領」作成に関しては保全方法等の検討、現地調査要領の作成、保全計画策定要
領の作成という項目ごとに、
「マニュアル」作成に関しては提供情報内容、保全マニ
ュアルの作成という項目ごとに、各ランクの研究員として人工数を定め、各単価を
乗じて積算している。いかなるランクの研究員を必要とするか、人工数を何人と設
定するかの基準については、社団法人日本都市計画学会ほか作成の「地区開発、地
区整備、団地計画業務及び報酬規準」に基づいている。このように、研究員のラン
ク、人工については一定の基準にしたがっている点は、客観性が担保されていると
考えることができる。ただし、一般論としても言えるが、当該規準を準用すること
ができるかについては、事業の性質ごとに慎重に検討されることが必要である。
本件では、諸経費率については出納局手引に基づいて毎年策定される経費率表に
基づいているが、同規準表によれば、本件契約金額を前提にすれば 35%とされるべ
きところ、積算にあたっては、
「要領」作成部分と「マニュアル」作成部分に分断し
て、それぞれの部分の人件費に対応する経費率(前者につき 40%、後者につき 45%)
が用いられている。確かに、実質的な作業としては、2 つに分割される内容の事業
ではあるが、全体を1つの事業として発注していることとの関係からは、このよう
な経費率の設定には検討の余地があるものと考える。
(提案事項)
実質的な作業内容が分割されていても、契約としては1つのものである以上、経
費率の算定については、全体の契約金額を前提にすることの妥当性を検討する余地
がある。
69
(プロポーザル方式による契約)
1
「道税広報テレビスポット放送」制作放送業務
(一)契約の概要
契約名
「道税広報テレビスポット放送」制作放送業務委託契約
担当部課
総務部税務課
委託先
民間企業
業務内容
道税広報のため、テレビスポット番組の制作、放送を行う。
事業目的
道民に道税への理解を深めてもらうことにより、納税思想の向上を図る
とともに、自主納税の推進を目的として、全道ネットの放送局を通じて、
テレビスポット放送を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H15
特命随契(指名型プロ 8,229,060 円
H17 まで)
積算額
委託金額
8,190,000 円
ポーザル方式)
H16
同上
8,253,000 円
7,999,950 円
H17
同上
8,199,450 円
7,999,950 円
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
指名型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:規程の放送料、企画費、演出費、技術スタッフ費、出演料、
機材使用料、編集費・構成、シナリオ作成、出演者ギャランティ等の制
作費単価をもとに積算されている。
見積書の内容:制作費一式とテレビ局ごとの放送料が記載されている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、道民に道税への理解を深めてもらうことにより、納税思想の向上を図
るとともに、自主納税の推進を目的として、全道ネットの放送局を通じて、テレビ
スポット放送を行う事業である。
委託目的の正当性についてであるが、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に
優れた業者に委託することが効果的であることから委託によっている。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、指名型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を
行って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。ただし、総合評価入札
によることの可能性については後述する。
(3)委託料積算の妥当性
70
規程の放送料、企画費、演出費、技術スタッフ費、出演料、機材使用料、編集費・
構成、シナリオ作成、出演者ギャランティ等の制作費単価をもとに積算されている。
このうち、放送料の積算については、ヒヤリング調査での回答によれば、知事政
策部広報広聴課からの聞き取り調査、過去の実績に基づいて算定しているとのこと
であった。ただし、最終的な積算金額は、平成 16 年度の契約実績と官公庁等の実績
を勘案して規定料金の 20%として計算されている。しかし、この割引率を設定した
ことについての具体的根拠資料はなく、その判断プロセスについても、
「平成 16 年
度契約実績及び官庁契約等の実績を勘案し」とあるのみである。
また、企画費、演出費、技術スタッフ費、出演料、機材使用料、編集費等の制作
費については、独自の調査は行っておらず、これも知事政策部広報広聴課での契約
実績を参考にしたのみとのことであり、具体的な積算資料についても書類として綴
られていない。
確かに、広報業務に習熟した他部から同種事業の積算方法を聴取することが積算
の資料となることは理解できるが、単なる聴取に止まらず、原資料に直接あたって、
当該具体的事業との関連において妥当な積算であるかを検証する姿勢を忘れては
ならない。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目につい
ては、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
安易に他の契約における積算金額を援用するのではなく、具体的な積算資料に
あたって当該事業との関連で妥当な積算を検討することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
本事業目的を達成するためには、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
た業者に委託することが効果的であることは理解できるところであり、本事業が単
純な価格競争に馴染まないとの判断には正当性が認められると言ってよい。
ただし、これまでに蓄積された事業実績を踏まえて、審査基準をより客観化した
うえで、総合評価入札へ移行することも今後の検討課題であると考える。
(提案事項)
総合評価入札方式導入の可能性を検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
本事業では、社団法人北海道広告業協会加盟の広告代理店宛に照会文を送付し、
プロポーザル参加希望者から事業概要調査書を徴求して、事業概要書の提出のあっ
た 21 社を指名選考委員会において選考し、これら業者を対象とする指名型プロポ
ーザル方式が取られている。
確かに、社団法人北海道広告業協会加盟の広告代理店を選定することはひとつの
方法ではあろうが、同協会未加入の広告代理店では遂行不可能な業務とまでは言え
ないであろう。
もとより、プロポーザル方式を行うにあたっては、手続の透明性、公平性の観点
71
から、公募型が原則とされるべきであり、本件においても公募型によることを検討
する必要があったものと思料されるところ、公募型の選択は検討されていない。
(提案事項)
プロポーザル方式を用いるにしても、公募型を原則とする運用を心がけられたい。
なお、公募により難く指名型プロポーザルによることとした場合は、その具体的
根拠を明示する必要がある。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたっては、「道税広報テレビスポット放送」制作放送業務に係る
プロポーザル方式による選考審査委員会設置要領、
「道税広報テレビスポット放送」
制作放送業務に係るプロポーザル方式による選考審査要領が定められており、一定
の規定の整備はなされている。
本件審査要領の規定する選考業者設定方法は、①個別審査として「各委員が事前
に企画提案書に目を通した上で、審査委員会の会場においてプロポーザル提出者か
ら提案説明を受け、その評価をそれぞれの審査表に記入して行う」
、②審査委員会審
査として「個別審査で選定された上位 5 社から、各委員の協議による審査委員会審
査により採用する企画案を選定する」とされている。
なお、プロポーザル審査の透明性を高めるため、審査要綱、要領あるいは企画提
案指示書において、選考された企画に関する公表についての定めをしているケース
が少なからず存在するが、本件ではこの種の規定はない。
(改善事項)
審査要領、企画提案指示書等において、選考された企画に関する公表についての
規定を整備することが望まれる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①コンセプトの明確さ、②企画の新鮮さ・内
容の創意工夫、③放送局・放送時間の確保の 3 項目につき、各 4 点を配分して合
計 12 点満点としている。そして、さらに①については納税思想の向上を図ると
ともに自主納税の推進を目的とした趣旨に沿った内容となっているか、②につい
ては視聴者の目を引く斬新なアイデアがあるか、構成が見やすく分かりやすいも
のとなっているか、表現が簡潔で分かりやすいものとなっているか、③について
は視聴率の高い時間帯を多く確保できているか、効果的な時間帯を確保できてい
るかといった点が審査のポイントとされている。
本業務の委託先を選定するにあたって必要な評価基準は網羅されていると考
えられるが、他のプロポーザル方式にも共通する問題として、蓄積された実績を
踏まえたよりよい基準作りが毎年検証されていかなければならないところであ
る。
事業目的に即し、かつできるだけ客観化された基準を設定することは、総合評
価入札方式への途を拓くことにも繋がるものと考えられる。
72
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
本件では、14 社からの企画提案があり、ヒヤリングを行ったうえで、プロポー
ザル審査委員会において討議を行って選考がなされている。プロポーザル審査委
員会の討議では、点数上位 5 社を前提として議論がなされているが、特に上位 3
社については各委員から具体的な意見が述べられたうえで、選考案を決定してお
り討議の実質が認められる。
また、審議経過について、議事録が作成されており評価できる
なお、プロポーザル審査委員として北海道職員以外の外部委員は存在しない。
73
2
津波シミュレーション及び被害想定調査業務
(一)契約の概要
契約名
津波シミュレーション及び被害想定調査業務委託契約
担当部課
総務部防災消防課
委託先
民間企業
業務内容
北海道沿岸地域に影響を及ぼす津波に対する防災対策の強化のため、津波シ
ミュレーション及び被害想定調査を実施し、防災計画策定等の基礎資料とす
る業務。
業務目的
本業務は、専門的な分野の高度な知識が必要不可欠であり、高い技術力と施
工能力を兼ね備えた業者を選定する必要があるため委託を行う。
契約の推移
年度
委託先
(H15 から
H17
① 北 海 道太 平 洋沿 ① 34,136,424 円
H17 まで)
積算額
委託金額
① 33,957,000 円
岸西部
特命随契(公募型プ
ロポーザル方式)
② 北 海 道太 平 洋沿 ② 40,718,475 円
② 39,165,000 円
岸東部、中部
特命随契
委託先選定の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
① 公募型プロポーザル
②
本業務は、専門的な分野の高度な知識が必要不可欠であり、高い技術力
と施工能力を兼ね備えた業者を選定する必要があるため、事業初年度にお
いて公募型プロポーザル方式により、事業全体(2 年度)の企画提案を審
査し、A株式会社を選定したところである。また、平成 16 年度に収集し
たデータ、計算結果(シミュレーション)を基に平成 17 年度において、
津波浸水予測図や津波遡上 CG などの作成を行うもので、他の業者が受託
した場合、収集・作成データの引継、変換に相当な時間と費用が必要とな
るほか、シミュレーションの計算結果や CG の表現などに統一性を欠くな
ど、業務に支障が生じるおそれがある。以上の事情を勘案し、本件委託先
を選定する。
委託料の算定
積算方法:技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、報告書
印刷費、浸水予想図印刷費その他の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:詳細な内訳が記載されている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
津波に対する防災対策、避難計画等は、地域住民の生命、身体等を守るうえで不
可欠の施策である。平成 15 年 9 月に発生した十勝沖地震において行方不明者 2 名
74
の被害があったことから、総務省より、
「平成 15 年(2003 年)十勝沖地震に関する
津波避難の状況と今後の対策について」と題する通知がなされ、また、平成 16 年
には、「日本海溝・千島海溝周辺海溝型地震に係る地震防災対策の推進に関する特
別措置法」(平成十六年四月二日法律第二十七号)が制定されている。本事業は、
これらの流れの中で、北海道沿岸地域に影響を及ぼす津波に対する防災対策の強化
のため、津波シミュレーション及び被害想定調査を実施し、防災計画策定等の基礎
資料とする業務である。
そして、本業務は、2 年計画の事業であり、危険性の程度に鑑み、北海道太平洋
沿岸東部、中部を先行させ、同地域については平成 16 年度、同 17 年度において実
施し、北海道太平洋沿岸西部については平成 17 年度、同 18 年度において実施され
ている。
そのため、北海道太平洋沿岸東部、中部については、平成 16 年に公募型プロポー
ザル方式を用いて業者選定を行い、平成 17 年度には、同一業者でなければ業務を完
遂できないことを理由に、当該業者との間で特命随契がなされている。
また、北海道太平洋沿岸西部については平成 17 年からの事業であるから、公募型
プロポーザル方式によって業者選定がなされている。
いずれも外部委託によったのは、本事業に求められる高度の専門性、技術性の程
度が高いことからである。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)北海道太平洋沿岸西部について
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査
を経て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評
価入札によることの可能性については後述する。
(b) 北海道太平洋沿岸東部、中部について
上記のとおり、北海道太平洋東部、中部に関しては、平成 17 年度においてはプ
ロポーザル方式を採ることなく、特命随契がなされている。その理由は、契約の
概要にて記載したとおり、
「本業務は、専門的な分野の高度な知識が必要不可欠で
あり、高い技術力と施工能力を兼ね備えた業者を選定する必要があるため、事業
初年度において公募型プロポーザル方式により、事業全体(2 年度)の企画提案
を審査し、A株式会社を選定したところである。また、平成 16 年度に収集したデ
ータ、計算結果(シミュレーション)を基に平成 17 年度において、津波浸水予測
図や津波遡上 CG などの作成を行うもので、他の業者が受託した場合、収集・作成
データの引継、変換に相当な時間と費用が必要となるほか、シミュレーションの
計算結果や CG の表現などに統一性を欠くなど、業務に支障が生じるおそれがある。
以上の事情を勘案し、A社を選定する。」ということである。
ただし、ヒヤリング調査での回答では、
「他の業者が受託した場合、収集・作成
データの引継、変換に相当な時間と費用が必要となる」こと、
「シミュレーション
75
の計算結果や CG の表現などに統一性を欠くなど、業務に支障が生じるおそれがあ
る」ことについては、特段の具体的検証はなされていないとのことであった。そ
の検証を行い、その検証結果を書類化することは重要である。
(提案事項)
特命随契を行うにあたっては、当該業者以外のものに事業遂行可能性がない旨
を判断したプロセスを書面化することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、報告書印刷費、浸水予
想図印刷費その他の経費をもとに積算されているが、どのランクの技師をどの業務
において何人工必要とするかについての判断プロセスは書類化されていない。また、
報告書その他の印刷費についても、ヒヤリング調査の回答では、市場調査によった
との説明があったが、具体的な調査資料については資料化されていない。
(提案事項)
委託料の積算にあたっては、項目ごとにその根拠を資料化すべきである。
また、委託料積算にあたって、金額算定のための評価・判断が必要な積算項目に
ついては、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性(北海道太平洋沿岸西部に関し
て)
公募型プロポーザル方式を採用した理由としては、
「当該業務にあっては、専門的
な分野の高度な知識が必要であり、高い技術力と施工能力を兼ね備えた業者を選定
する必要があるが、競争入札では仕様が限定的となり、その内容によっては知識が
乏しく施工能力の低い業者が落札してしまう可能性があることから、個々の業者の
もつ技術力、施工能力に関する情報収集が容易であり、的確な成果が見込める業者
選定が可能である公募型プロポーザル方式を採択する」とされている。
その趣旨は理解できるところであるが、
上記理由中、
「 競争入札では仕様が限定的」
となること、
「 内容によっては知識が乏しく施工能力の低い業者が落札してしまう可
能性がある」ことなどは、総合評価入札方式を採用すれば、そのおそれを払拭する
ことが可能である。特に、後述するとおり、本件プロポーザルでは、詳細かつ客観
的な審査基準が定められていること、選考業者決定方法が協議を予定しておらず点
数評価のみによっていることなど、他のプロポーザル方式とは相当に趣を異にする。
かかる点に鑑みれば、本件業務にあたっては、競争入札、特に総合評価入札方式の
導入の可能性が高かったのではないかと考えられる。また、本件では、プロポーザ
ル審査委員には外部委員が含まれてはいないが、業務開始にあたっては、北海道大
学、札幌管区気象台から専門家を招いて専門家会議を設定しており、その意味でも、
総合評価入札方式への近接性が認められる。しかし、総合評価方式導入の是非につ
いては検討されていない。
(改善事項)
今後、同種業務を行う場合には、総合評価入札によることを検討すべきである。
76
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており特に指摘すべき問題はないが、そもそも、総合評価入札によ
るべきではなかったか、との点は上述のとおりである。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
津波シミュレーション及び被害想定調査業務プロポーザル審査要領が定められて
いる。
また、企画提案に関する説明書では、
「提案者の求めにより、審査結果〔審査委員
別(委員名は秘匿)、事業者別(事業者名は秘匿)の採点〕を公表する」とされてお
り、一定の公表方法が整備されている。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①配置予定の技術者の技術 50 点、②作業工程と
動員計画 20 点、③企画提案内容 220 点、④プレゼンテーション力 10 点としつつ、
①についてはさらにアからエまで、②についてア、イ、③についてはさらにⅰ津波
遡上シミュレーションの作業の流れ、ⅱ津波対策の推進に寄与する浸水予想図の作
成方法、ⅲ成果品の沿岸市町村等への情報提供方法、ⅳ被害想定調査の内容に分類
されたうえで、ⅰについてはアからサまで、ⅱについてはアからカまで、ⅲについ
てはアからウまで、ⅳについてはアからウまでに細分化して評価項目が示され、そ
れぞれ細分化された評価項目ごとに点数が割り振られている。
このように本件審査基準では、30 項目超える審査ポイントが示され、その項目の
内容についても、例えば、「適当な大きさの計算メッシュ領域が設定されているか、
震源パラメータは、中央防災会議(専門家委員会)の動向、学識者の意見等を考慮
するようになっているか」など相当に具体的、詳細なものとなっている。
本基準は、本件業務遂行者を選定するにあたって必要かつ十分な基準と思料され
評価に値する。
ただし、かようなまでに詳細かつ客観的な基準が設定できるのであれば、プロポ
ーザル方式によらずに、総合評価入札によることも十分に検討し得たのではないか
と考える。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
本件では、上記の採点基準に基づいて各プロポーザル審査委員が採点を行い、そ
の集計結果に基づいて、業者選定がなされており、委員会において討議はなされて
いない。他のプロポーザル方式では、点数評価のみならず、審査委員会での実質的
な討議を経ることが一般であり、そのほうがプロポーザル審査の本旨に合致するケ
ースが多いと考えられる。しかし、本件業務の性質からすると、点数評価のみによ
ったことは否定的評価が与えられるものではないと思料される。ただし、そうであ
るならば尚更総合評価入札の導入を検討し得たのではないかと考える。
77
3
広報誌「ほっかいどう」制作業務
(一)契約の概要
契約名
広報誌「ほっかいどう」制作業務委託契約
担当部課
知事政策部広報広聴課
委託先
民間企業
業務内容
開かれた道政を推進するため、情報の共有化と道民の道政への参加を
目的として、広報誌を発行する事業。
業務目的
広報誌の制作にあたっては、道民に親しまれ、読まれる内容にするた
め、写真やイラストを多用し、レイアウトや文章にも工夫を凝らした
ものとする必要があることから、高度な企画・編集技術や専門的な知
識を持つ業者に委託することが効果的である。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H15
特例政令による随意
前期
前期
契約(指名型プロポー
48,907,000 円
48,906,900 円
ザル)
後期
後期
147,286,245 円
147,285,076 円
150,859,863 円
150,853,290 円
151,699,389 円
151,697,899 円
H17 まで)
H16
同
上
H17
特例政令による随意
積算額
委託金額
契約(公募型プロポー
ザル)
委託先選定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:表紙デザイン料金、取材費、取材協力費、スタッフ人件費
等の編集費、印刷製本費等の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:企画・取材・編集費及び印刷・製本費の単価、数量、
合計が記載されている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本広報誌は、道政を推進する上で道民の意識啓発や機運の醸成が必要なテーマを
特集するとともに、各部等からの政策情報や各支庁、道議会からの情報発信などを
基本に構成するものであり、読者層としては、広くおおむね中学生から高齢者まで
を想定し、わかりやすく、興味と親しみを持てる誌面とすることが目途とされてい
る。道政広報としては、中核に位置付けられる業務である。
事業の性質上、高度な企画・編集技術や専門的な知識を持つ業者に委託すること
が効果的であることから委託がなされている。
本事業では、冊子形態の広報誌を年 2 回、北海道内全世帯へ、町内会を通じて配
布している。発行部数は、それぞれ 2,456,000 部、2,467,000 部である。本事業に
78
関する広報効果の検証としては、ハガキなどで寄せられる広報誌に対する道民の声
を記録化しているとのことである。
また、道政広報全体の検証をするために外部委員をも構成員とする広報広聴推進
委員会が設置され道政広報全般に関する意見交換がなされている。
さらに、道民意識調査を行うにあたって広報に関連するアンケート調査を行って
いる。具体的なアンケート項目としては、①道政情報入手方法、②テレビの広報番
組を見たことがあるか、③もっと広報番組を見るためには、④広報誌の発行回数は
適当か、⑤広報誌の情報量は適当か、⑥広報誌の配布の方法、⑦広報誌に代わる広
報手段、といった内容になっている。
なお、本事業は、平成 18 年度からは、冊子形態ではなくタブロイド版形態に変更
している。また、各戸への配布方法も、これまでの町内会を通じての配布方法を改
めて、配布方法についても企画提案の対象としたプロポーザル審査を行って、北海
道新聞への折込、各戸へのポスティング等の方法が採用されている。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、随意契約に
よる根拠とされている。
しかし、本件は、契約金額及び業務の内容からして特例政令の適用を受ける契約
である。そして、実際に、契約事務の遂行にあたっては、特例政令第 10 条第 1 項第
1 号を根拠として進められている。
同条項の要件を引用するに、
「 他の物品等若しくは特定役務をもって代替させるこ
とができない芸術品その他これに類するもの又は特許権等の排他的権利若しくは特
殊な技能に係る物品等若しくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相
手方が特定されているとき」と規定されている。この文言から明らかなとおり、運
用方針第3節(随意契約)関係1の(2)に定める「契約の目的物が代替性のない
ものであるとき」に比して、より限定された要件であると考えられる。
ところで、本章総論にて述べたとおり、プロポーザル方式による契約は、物理的、
客観的に当該業者しかその業務を遂行できないという訳ではない。企画競争を経て
事業内容自体が確定されるというプロセスを経ているから、当該確定された事業を
遂行できるのは当該提案者以外にはない、
という思考経過を辿って、
「 代替性がない」
という判断に至っている。
問題は、同様の思考によって、プロポーザル審査を経たことをもって、特例政令
第 10 条第 1 項第 1 号に言う「相手方が特定されているとき」に該当すると評価でき
るか、との点である。この点、特例政令の適用を受ける契約は、原則として随意契
約によることができず、随意契約によるためには、同政令が例外として規定してい
る条項に該当しなければならない。そして、上述のとおり、本件契約がその根拠と
している同政令第 10 条第 1 項 1 号は、
「芸術品、特許等の排他的権利、特殊な技能」
といった例示があることから明らかなとおり、これらの理由によって、事業遂行可
能な業者が特定される必要がある。
この点、一般論としては、プロポーザル審査を経ることによって、運用方針第3
79
節(随意契約)関係の1の(2)にいう「代替性」なしと判断することには、特段
の問題点は認められないが、特例政令の適用を受ける契約であるときには異なる考
慮を要する。特例政令の適用を受ける契約について、プロポーザル方式の採用が否
定されるとまでは考えられないが、特例政令による以上、例えば、同政令第 10 条第
1 項第 1 号との関係で言えば、
「芸術品」
「特許権等の排他的権利」
「特殊な技術」に
関連するような限定された業務でなくてはならない。
かような観点に立った場合、本業務をプロポーザル方式をもって実施することが
できるかは疑問なしとはできない。少なくとも、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号の要
件に該当するか否かが厳密に判断される必要がある。
他でも述べているとおり、現在、プロポーザル方式にて行われている契約につい
ては、可能な限り、総合評価入札方式の導入を検討すべきであるが、特に、本件事
業に関しては、プロポーザル方式一般に共通する問題のみならず、特例政令の要件
該当性の問題が存在するので、早期に総合評価入札方式への移行が検討されるべき
と考える。
(改善事項)
特例政令の適用を受ける契約については、同政令に定める「特定役務」に該当す
ると判断したプロセスを書面化することが望まれる。
特例政令の適用を受ける契約をプロポーザル方式によることができるか否かにつ
いては単にプロポーザル審査を経たからよしとするのではなく、特例政令所定の要
件該当性を厳格に審査する必要があり、その判断理由について書面化する必要があ
る。
(3)委託料算定根拠の妥当性
本件委託料については、表紙デザイン料金、取材費、取材協力費、スタッフ人件
費等の編集費、印刷製本費等の経費をもとに積算されている。
このうち表紙デザイン料金、取材費、取材協力費、スタッフ人件費等の編集費の
積算は、ヒヤリング調査での回答では、過去の契約の実績と聞き取りによる市場調
査に基づくとのことであったが、その評価、判断過程にプロセスは書面化されてい
ない。
また、印刷製本費についても、前年実績のみに基づいている。印刷費等の市場単
価については、財団法人経済調査会発行の単価表などが存在するところ、平成17
年度の本事業に関する積算にあっては、このような基準調査はなされていない(な
お、平成 18 年度では、同単価表に基づき積算がなされている。)。
契約金額の積算にあっては、個別の費目の基準、及び同基準に基づくあてはめの
経過を書面化するなどして、明確にすることが望まれる。その意味では、本件積算
経過は、その根拠資料が不十分と言わざるを得ない。
(提案事項)
委託料の積算にあたっては、項目ごとの積算根拠が資料化される必要がある。
また、委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目に
ついては、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
80
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、制作する広報誌が、道民に親しまれ、
読まれる内容となることを担保するために、事前に業者の企画力や編集能力を把握
する必要があることから、技術面での競争と業者選定の透明性を確保できるプロポ
ーザル方式において委託業者を選定する、とされている。
本件の業務の性質上、企画提案を求めて業者を選定するという手法が考え得るこ
とについては、理解できないではない。しかし、本件は、特例政令の適用を受ける
契約であり、同政令との関係での問題は上述のとおりである。また、この問題への
対応も含めて総合評価入札方式への移行の可能性が検討される必要がある。
(改善事項)
総合評価入札方式への移行の可能性を早期に検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
特例政令においてプロポーザル方式を行い得るか、との問題は上記のとおりであ
るが、プロポーザル方式を前提とした場合は、公募がなされており、提案を求める
者の選考過程には特段の問題はない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたっては、平成 17 年 1 月 24 日付けで道政広報業務公募型プロポ
ーザル実施要綱、同要領、同審査会設置要領、同審査会審査細則が定められている。
同実施要領では、「随意契約の相手方とされた特定者と契約した後、当該企画提案
書を成果品が納品される日まで閲覧に供するものとする」と規定され、公表に関す
る規定も整備されている。
これら要綱、要領、審査会設置要領、細則は、適式な公募型プロポーザル方式を
実施するにあたって、必要十分な手続規定を整備しており、本監査にて監査対象と
なったプロポーザル方式を用いた契約の中では、最も充実した規定のひとつである
と評価することができる。また、通常、プロポーザル方式を行うにあたっては、当
該事業単位でその事業に関する要綱、要領が都度作成されるという取扱いが多いが、
本要綱、要領、細則は、今後、知事政策部において行う道政広報プロポーザル事業
に適用されることが前提とされており、統一的な基準を制定したものとしても評価
することができる。
なお、審査における決定方法は、まず、点数によって順位を付したうえで、審査
会において順位を付された企画提案について、その長所・短所を討議し、多くの意
見を聞き、各委員が共通認識に立った上で、最適な企画提案を特定することになっ
ている。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査項目としては、①業務処理体制 20 点、②広報誌全体の企画・考え方 30 点、
③特集記事の内容 30 点,④各ページのレイアウト(特集を除く)10 点、⑤イラスト
81
10 点の合計 100 点満点とされており、①については人数の配置・役割分担、各担当
者の経験・実績、②については表紙まわりの印象、全体のカラーページ割り振り、
カラーページの扱い、各ページの企画、その他広報誌を読ませる工夫、③について
はテーマを正しく理解しているか、企画・構成に工夫があるか、表現は適切か、読
んでいておもしろいか、④については読みやすさを感じるか、必要十分な記事スペ
ースがあるか、⑤については適切なイラストか、親しみを持てるイラストか、技術
的に優れているか、との点が審査のポイントとされている。
プロポーザル方式によることの是非については上記のとおりであるが、本件業務
をプロポーザル方式によることを前提にすれば、必要十分な採点基準が準備されて
いると評価できる。ただし、一定程度の具体的基準が整備されていることからすれ
ば、尚更、総合評価入札によることを検討すべきであったと考えられる。
なお、本事業は、平成 18 年度においても、公募型のプロポーザル方式が用いられ
ているが、その審査基準において、価格要素が盛り込まれ、
「価格について」との評
価項目にて 10 点の配分がなされている。これまでのプロポーザル方式は、企画面の
みの競争であって、少なくとも本監査対象とした各契約において、価格要素を考慮
したものは見当たらなかった。その意味では、価格要素を採点基準にしたことは新
たな試みと考えられる。
プロポーザル方式において、企画提案を求めるにあたっては、予算額が明示され
るが、提案者としては、当該予算の範囲内でよりよい企画を立てるであろうし、道
の側としても予定価格の範囲内であれば、その金額の多寡を判断要素とすることな
く、優秀な企画を選定できる。かかる構造にあっては、提案業者の見積額は、予算
上限に近いところに集中する傾向となり、価格減額方向での契機が作用する場面が
ない。しかし、企画に大きな優劣をつけ難いケースも少なからず存在し得るし、そ
もそも、契約の合理性、経済性等の観点から、価格要素を考慮することは有意義で
あると考える。価格要素の配分をどの程度に設定するかは慎重な検討を要する問題
ではあるが、
プロポーザル方式に価格要素を組み込んだ平成 18 年度における本業務
の方式は、プロポーザル方式一般の問題として、参考にすべきである。
ただし、他方で、プロポーザル方式に価格要素を取り込むということは、手法と
しては、総合評価入札に類似するものであり、これまで他の契約においても述べて
いるとおり、現在、プロポーザル方式にて行われている業務については、総合評価
入札導入の可否を検討する必要がある。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
4 者からの企画提案があり、企画提案に対する書面審査を行うとともに、プロポ
ーザル審査会における討議を経て決定がなされており、審議の実質が認められる。
ただし、本件では、ヒヤリング審査を行っていない。ヒヤリング調査での回答によ
れば、例えば、テレビ等の電波媒体を用いた広報業務では、シナリオだけでは具体
的な広報内容のイメージを持ちづらいため、原則としてヒヤリングを行っているが、
文字媒体での広報は、企画提案内容自体が、広報内容のサンプルとなるため、特段
の必要は感じなかったとの趣旨の回答があった。しかし、文字媒体での広報であっ
82
ても、その考え方等をヒヤリングすることには意義が認められ、原則としてヒヤリ
ングを行うことが望ましい。特に、本件契約金額は、1 億 5000 万円を超える高額の
ものであり、より慎重な審査を行う意味でも、ヒヤリングを行うことが望ましかっ
たと考える。
なお、平成 18 年度においては、プロポーザル審査にあたって、ヒヤリングが実施
されている。また、本プロポーザル審査委員会には北海道職員以外の外部委員は存
在しない。
(提案事項)
プロポーザル審査にあたってはヒヤリングの実施を原則とすべきである。
一定の金額以上の契約にあっては、プロポーザル審査会に外部委員を加えること
が望まれる。
83
4
新聞紙面利用による道政広告実施業務
(一)契約の概要
契約名
新聞紙面利用による道政広告実施業務委託契約
担当部課
知事政策部広報広聴課
委託先
上半期
民間企業
下半期
民間企業
業務内容
道民への情報提供のために、新聞紙面を通じて広告掲載をする事業。
業務目的
新聞紙面利用による道政広報実施業務は、新聞紙面を活用し、北海道の事業や
イベント行事、各種制度、重点政策の紹介や意見募集手続きなど道民生活に関
わるタイムリーな情報を広く道民に提供するため、掲載する新聞広告は、写真
やイラストなどを用い、親しみやすく分かりやすい紙面とすることが必要であ
る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H15
特命随契(指名型プロポーザル方
4∼6月
4∼6月
式)
15,062,827 円
15,059,520 円
7∼9月
7∼9月
15,062,827 円
15,059,520 円
10∼12 月
10∼12 月
15,062,827 円
1∼3月
15,060,937 円
1∼3月
15,062,827 円
15,061,410 円
4∼6月
4∼6月
21,757,417 円
21,757,417 円
7∼9月
7∼9月
21,757,417 円
21,757,417 円
10∼12 月
10∼12 月
21,757,417 円
21,756,735 円
1∼3月
1∼3月
21,757,417 円
21,756,735 円
上半期
上半期
43,514,835 円
43,513,470 円
下半期
下半期
43,514,835 円
43,509,362 円
H17 まで)
H16
H17
同
同
上
上
積算額
委託金額
委 託 先 選 定 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
の理由
公募型プロポーザル
委 託 料 の 算 積算方法:掲載新聞社ごとの掲載単価と制作費をもとに積算されている。
定
見積書の内容:新聞社ごとの掲載費内訳が記載されている。
84
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本件は外部委託によっているが、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
た業者に委託することが効果的であることをその理由とする。
本件事業に基づく広報効果を独立して検証するシステムは存在しない。
ただし、道政広報全体の検証するために広報広聴推進委員会が設置されているこ
と、道民意識調査を行うにあたって広報に関連するアンケート調査を行っているこ
とは、広報誌「ほっかいどう」制作業務の項目にて述べたとおりである。
確かに、新聞紙面広報を単体として取り上げてその広報効果を検証することは容
易でないことは否定できず、道政広報は、新聞紙面による広報のみならず、テレビ
等の電波媒体を利用した広報、広報誌による広報等の各種手段の総体として、効果
が検証されるべき側面は強い。その意味で、上記の一般的な検証手段にも一定の意
義を見出すことはできよう。
ただし、何よりも道政の主役は道民であり、道民へタイムリーに正確な情報を提
供することは不可欠であって、その広報効果を検証する意義は大きい。そのために
も、丹念に道民の声を吸い上げる努力を怠ってはならない。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を
行って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。なお、総合評価入札導
入の可能性については後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
掲載新聞社ごとの掲載単価と制作費をもとに積算されている。まず、掲載単価に
ついてであるが、新聞各社は出稿予定段数をもとに料金を公表しており、本件積算
における掲載単価もこれに基づいている。また、制作費については市場調査に基づ
く積算がなされているが、市場調査の状況を整理した書類も作成されており、内容
的にも特段指摘すべき点はない。
(4)プローザル方式によることとした判断の妥当性
本事業目的を達成するためには、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
た業者に委託することが効果的であることは理解できるところであり、本事業が単
純な価格競争に馴染まないとの判断には正当性が認められると言ってよい。
しかし、これまでに蓄積された事業実績を踏まえて、審査基準をより客観化した
うえで、総合評価入札への移行することも今後の検討課題であると考える。なお、
本事業実施にあたって総合評価入札導入の可能性については検討されていない。
(提案事項)
総合評価入札方式への移行の可能性を検討することが望まれる。
85
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており参加者の選考に問題は認められない。なお、本事業は、前年
度までは指名型プロポーザル方式が執られていた。手続の透明性、公平性の観点か
らすると、プロポーザル方式を採用するにせよ、公募型が原則とされるべきである。
その意味で、平成 17 年度より公募型プロポーザル方式に移行したことは評価できる。
(提案事項)
本業務に限らず、現行では指名型プロポーザル方式を採用している業務につき、
公募型に移行すべきものはないかを常に留意して、契約事務を行う必要がある。ま
た、その前提として、プロポーザル方式ではなく、総合評価入札方式への移行がで
きないかどうかの検討が重要であることは上述のとおりである。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたっての規定整備については、広報誌「ほっかいどう」制作業務
にて述べたところと同様であり、充実した規定がなされており評価できる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①業務処理体制につき 10 点、2 案(ラフ 1、ラ
フ 2)を提案させ、それぞれ②視覚的な印象(ビジュアル)につき 25 点、③文章の
表現力(コピー)につき 20 点を配点して合計 100 点満点としている。また、②につ
いては全体の印象、レイアウト及びデザイン、イラスト適正を、③については文章
力、課題に対する理解度、表現力を具体的な審査要素としている。
重要な業務委託する以上は、委託先業者の処理体制がどのように整備されている
かは大切な点であり、特に公募による場合は、一定程度、この点を採点の対象とす
ることは理解できるところである。
また、1 案だけでは、審査が不十分となる危険があることから、2 案を提案させて
いる点も評価できる。なお、平成 15 年までは 1 案のみを採点対象としており、より
審査方法が進化してきているものと評価することができる。
次に、コピー点よりも、ビジュアル点への配分が大きいことの理由につき、ヒヤ
リングの際、新聞広告の性質上、
まずは視覚に訴えて道民の関心を喚起することが大
切である、その意味でビジュアル点を若干重く見ているとの説明があった。その趣
旨は理解できるところである。
ところで、全てのプロポーザル方式に共通する問題であるが、最も優秀な企画を
採用するためには、その審査基準が正当なものでなければならないことは言うまで
もない。したがって、常によりよい審査基準を模索することを忘れてはならない。
この点で、広報業務において、その審査基準の精度を高めるとすれば、広告の受け
手である道民のリアクションをどう取り入れていくかということではなかろうか。
広告の受け手である道民の評価の声を丹念に受け止め、それを分析して、プロポー
ザル審査基準に反映させることができないか、という地道な検証を行なう姿勢を失
ってはならないだろう。そして、審査基準の「磨き上げ」は総合評価入札への移行
の途を拓くきっかけとなるであろう。
86
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
上半期においては、企画提案を行なった 20 社につき予備審査を行なって上位 7 社
に絞り込んでいる。また、下半期では、14 社を 5 社に絞り込んでいる。そして、い
ずれの予備審査においても、単に点数をつけるだけではなく、提案のあった全社に
つき、コメントが付されており、実質的な検討がなされている
そして、本審査でも、点数評価を行っているのみならず、それを踏まえた実質的
な討議がなされたうえで選考がなされており、充実したプロポーザル審査がなされ
ていると評価することができる。
なお、プロポーザル審査委員として北海道職員以外の外部委員は存在しない。
87
5 電波媒体道政広報実施業務
(一)契約の概要
契約名
電波媒体道政広報実施業務委託契約
担当部課
知事政策部広報広聴課
委託先
① テレビ番組A
上半期
民間企業
下半期
民間企業
② テレビ番組B
業務内容
上半期
民間企業
下半期
民間企業
テレビ等の電波媒体を用いて道政の広報を行う。
Aについては、道の施策、事業、制度等を紹介する。
Bについては、道の施策から特定のテーマを選定し、それに関連した道民
の取り組みの紹介などを行う。
業務目的
道民の道政への理解と参加を促進するため、電波媒体を利用し、その特性
に応じた広報活動を行う。
契約の推移
年度
(H15 から
H17 まで)
H17
業者選定方法
積算額
委託金額
特命随契(公募型プロポーザル (テレビA)
(テレビA)
方式)
上半期
19,820,430 円
上半期
19,820,168 円
下半期
下半期
20,613,356 円
20,612,974 円
(テレビB)
(テレビB)
上半期
上半期
16,649,161 円
16,648,941 円
下半期
下半期
19,820,535 円
19,820,167 円
事 業者選定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:規程の放送料、企画・構成、シナリオ作成、出演者ギャランテ
ィ等の制作費単価をもとに積算されている。
見積書の内容:本放送電波料、本放送制作費、再放送電波料が記載されて
いる。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れた業者に委託することが効果的で
あり、委託の目的の正当と考えられる。
88
結果の検証としては、道政広報番組の視聴率については毎回確認しており、ヒヤ
リング調査での回答によれば放送枠特 B、B あわせて平均 4%前後の視聴率を獲得し
ているとのことである。しかし、そのほか、本件事業に基づく広報効果を独立して
検証するシステムは存在しない。
なお、道政広報全体の検証するために広報広聴推進委員会が設置され道政広報全
般に関する意見交換がなされていること、道民意識調査を行うにあたって広報に関
連するアンケート調査を行っていることは広報誌「ほっかいどう」制作業務の項目
にて述べたとおりである。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を
行って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。ただし、総合評価入札
導入の可能性については後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
規程の放送料、企画・構成、シナリオ作成、出演者ギャランティ等の制作費単価
をもとに積算されている。
このうち放送料については規程の金額を前提としており、特段、指摘すべき点は
ない。
しかし、その他の制作費用については、積算根拠が明確でない。ヒヤリングの際
の説明によれば、広告業者 1 社からの電話聞き取りを行い、これを参考にしたとの
ことであったが、これをもって市場調査というには不十分と言わざるを得ない。
ところで、プロポーザル方式を用いる場合は、予算額の上限を示して企画を募集
する。そして、企画審査においては、価格要素を審査の対象としないのが一般であ
る。とすると、企画提案を行う業者にとって、価格競争という発想は排除され、予
算額一杯でできるだけ優れた企画を提案すべく努力することになろう。かような構
造を前提とすると、ともすれば、契約金額を削減する方向での契機が存在しないこ
とになる。その意味でも、予算額の前提となる積算を厳密に行う重要性は、極めて
高い。他の事業でも共通する問題であるが、積算結果としての積算調書が作成され
なければならないのは当然として、具体的にいかなる調査、検証を行って、当該積
算金額を算定したのか、という積算プロセスを書面化し、その妥当性を検証できる
ようにすべきと考える。
(提案事項)
委託料の積算は、項目ごとに具体的資料に基づいて検討されなければならず、そ
の判断プロセスを書面化することが望まれる
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
本事業目的を達成するためには、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
89
た業者に委託することが効果的であることは理解できるところであり、本事業が単
純な価格競争に馴染まないとの判断には正当性が認められると言ってよい。
しかし、これまでに蓄積された事業実績を踏まえて、審査基準をより客観化した
うえで、総合評価入札への移行することも今後の検討課題であると考える。なお、
本事業実施にあたって総合評価入札導入の可能性については検討されていない。
なお、平成 16 年度までは「道政広報番組(レギュラー)制作・放送に関する業務」
として類似の事業が行われており、同事業においては、契約方式としては特命随契
がとられてきた。これまでの業務が特命随契とされてきた趣旨は、各放送局が指定
する、道が希望する放送枠を確保している広告代理店と契約する必要があることに
よっていた。
これに対し、平成 17 年度では、放送曜日・時間帯も審査項目としてプロポーザル
方式が執られており、従前との対比においては評価することができる。
(提案事項)
総合評価入札方式への移行の可能性を検討することが望まれる。
(5)提案案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており参加者の選考に問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたっての規定整備については、広報誌「ほっかいどう」制作業務
にて述べたところと同様であり、充実した規定がなされており評価できる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①業務処理体制につき 10 点、②番組全体の企
画・考え方 30 点、③放送曜日・放送時間帯 30 点、④第 1 回放送テーマのシナリオ
30 点を配点して合計 100 点満点としている。
そして、⑤については各担当者の経験、
実績、役割分担が、②については番組タイトル、番組のコンセプト、企画・構成の新
鮮さ・創意・工夫が、③については放送局・放送曜日・放送時間帯が、⑤について
はテーマへの理解、構成の工夫、表現の適切さ、わかりやすさが、審査のポイント
として示されている。
①については重要な業務を委託する以上、委託先の業務処理体制を評価対象とす
ることは理解できるところであり、②については業務の性質上当然の評価ポイント
であり、③については広報を行う以上はどれだけの視聴者に見てもらえるかは極め
て重要であり大切なポイントとなるものと言え、④については具体的なシナリオの
提出を受けて審査するものであって必要なポイントと言える。以上、本件審査基準
自体には、特段の問題は見受けられない。
ただし、抽象的な基準に止まっていることは否定し難いところであり、実績を踏
まえた事業検証を通じてよりよい審査基準が模索され続けなければならないことは、
他でも述べたところと同様である。そして、その中で総合評価入札への移行という
視点を忘れてはならない。
90
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
上半期では 9 社からの企画提案を受けたが予備審査を行っていない。他方、下半
期では 6 社からの企画提案を受け予備審査で 5 社に絞った後に本審査を行っている。
本審査においては、いずれも企画提案書がヒヤリング日に事前配布され、これを
持参してヒヤリングを聞いた上で、各委員が点数をつけている。その後日に集計の
うえ、審査会を改めて開催し、討議を経たうえで決定しており、審査の実質を認め
ることができる。
予備審査の位置付けであるが、本審査と予備審査では、審査委員の構成が異なる
ため、より複数の視点から検討がなされるという面もある。しかし、予備審査は書
面審査のみでヒヤリングを行わないものであり、基本的には、ヒヤリング実施によ
る手続負担を軽減することを目的とする絞込みと位置付けられる。したがって、本
件業務の上半期において予備調査を経ずに、本調査において全件ヒヤリングを行っ
たことについては、否定的な評価が与えられるものではない。
ところで、道政広報業務公募型プロポーザル実施要領では第 12 条では「・・・企
画提案書の提出が多数ある場合には、審査委員長は予備審査を行い、審査会におい
て審査する企画提案を選定するものとする」
(12 条 1 項)と定められており、
「多数」
とは何件であるかについて具体的な規定はない。企画提案を求める事業の内容、規
模、複雑さによって審査の難易度も異なるであろうから、具体的件数を規定上に盛
り込むことは容易でないことは理解できる。ただし、可能な限りヒヤリングを行う
ことが原則的な審査形態であるべきであり、安易に予備審査による絞込みをかける
ことのないよう留意すべきである。
なお、道政広報プロポーザル審査会審査細則では、予備審査によって 5 程度の企
画提案を選定する旨が規定されており(第2(1)④)
、現行の規定振りからは、少
なくとも「多数」というためには 6 以上の企画提案が存在することが前提となって
いると理解できる。しかし、6 以上であれば全て予備審査で 5 先に絞込むというの
ではなく、事業の性格を勘案しつつ、可能な限りヒヤリングによる本審査を実施す
るという姿勢を失ってはならない。
なお、本プロポーザル審査では、外部委員は参加していない。
91
6 知事出演道政広報実施事業
(一)契約の概要
契約名
知事出演道政広報実施事業委託契約
担当部課
知事政策部広報広聴課
委託先
民間企業
業務内容
知事が出演して、道の重要施策等を取材映像等を十分に用いて分かりや
すく詳細に説明する番組を制作・放送する。
業務目的
道民の道政への理解と参加を促進するため、電波媒体を利用し、その特
性に応じた広報活動を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契(指名型プロ
22,767,418 円
22,761,900 円
26,147,594 円
26,145,000 円
18,416,160 円
18,415,740 円
H17 まで)
ポーザル)
H16
同
上
H17
特命随契(公募型プロ
ポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:規程の放送料、企画・構成、シナリオ作成、出演者ギャラン
ティ等の制作費単価をもとに積算されている。
見積書の内容:本放送電波料、本放送制作費、再放送電波料が記載され
ている。
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
テレビを活用し、知事が直接、北海道の重要施策等について、広報する業務であ
る。
また、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れた業者に委託することが効
果的であることから委託によっている。
成果の検証としては、番組の視聴率の確認がなされており、平均 5%程度の視聴
率を獲得しているとのことである。そのほか、本件事業に基づく広報効果を独立し
て検証するシステムは存在しない。
ただし、道政広報全体の検証するために外部委員をも構成員とする広報広聴推進
委員会が設置され道政広報全般に関する意見交換がなされていること、道民意識調
査を行うにあたって広報に関連するアンケート調査を行っていることは、広報誌「ほ
っかいどう」制作業務の項目にて述べたとおりである。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
92
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を
行って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。ただし、総合評価入札
によることの可能性ついては後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
規程の放送料、企画・構成、シナリオ作成、出演者ギャランティ等の制作費単価
をもとに積算されている。
このうち放送料については規程の金額を前提としており、特段、指摘すべき点は
ない。
しかし、その他の制作費用については、積算根拠が明確でない。ヒヤリングの際
の説明によれば、広告業者 1 社からの電話聞き取りを行い、これを参考にしたとの
ことであったが、これをもって市場調査というには不十分と言わざるを得ない。
(提案事項)
委託料の積算は、項目ごとに具体的資料に基づいて検討されなければならず、そ
の判断プロセスを書面化することが望まれる
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
本事業目的を達成するためには、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
た業者に委託することが効果的であることは理解できるところであり、本事業が単
純な価格競争に馴染まないとの判断には正当性が認められると言ってよい。
しかし、これまでに蓄積された事業実績を踏まえて、審査基準をより客観化した
うえで、総合評価入札への移行することも今後の検討課題であると考える。
(提案事項)
総合評価入札方式への移行の可能性を検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており参加者の選考に問題は認められない。なお、本事業は、前年
度までは指名型プロポーザル方式がとられていた。手続の透明性、公平性の観点か
らすると、プロポーザル方式を採用するにせよ、公募型が原則とされるべきである。
その意味で、平成 17 年度より公募型プロポーザル方式に移行したことは評価でき
る。しかし、翻って考えれば、これまで指名型プロポーザル方式によっていたこと
の問題性は否定できない。
本業務に限らず、現行では指名型プロポーザル方式を採用している業務につき、
公募型に移行すべきものはないかを常に留意して、契約事務を行うべきである。ま
た、その前提として、プロポーザル方式ではなく、指名競争入札への移行ができな
いかどうかの検討が重要であることは上述のとおりである。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたっての規定整備については、広報誌「ほっかいどう」制作業務
93
にて述べたところと同様であり、充実した規定がなされており評価できる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①業務処理体制につき 10 点、②放送曜日・放
送時間帯 30 点、③番組全体の企画・考え方 30 点、④第 1 回テーマによる番組展開
案 30 点を配点して合計 100 点満点としており、さらに、審査のポイントとして、
①については各担当者の経験、実績、役割分担が、②については放送局、放送曜日、
放送時間帯が、③については番組タイトルは適当か、番組のコンセプトは明確かつ
的確か、企画・構成に視聴者を惹きつける新鮮さや創意・工夫が凝らされているか、
番組内容にふさわしい司会者・レポーター等が起用されているか、番組宣伝等パブ
リシティは十分か、④につきテーマを正しく理解し、わかりやすく表現しているか、
番組の流れが良く、明確か、紹介する事例の選定は的確か、また、事例数は適当か、
内容にインパクトがあり、視聴者を惹きつけるか、といった点が揚げられている。
本件広報業務の目的から見て、業者選定にあたって必要な要素が網羅されている
ものと考えられる。ただし、蓄積された実績を踏まえてより良い審査基準を検証し
ていく姿勢は忘れてはならない。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
3 者からの企画提案があり、いずれもヒヤリングを行ったうえで、各審査委員に
おいて採点を行い、これに基づいてプロポーザル審査会を開催して決定が行われて
いる。ただし、審査会においては、9 名中 8 名が1位としているため、全委員から意
見を述べることはせずに、別の者を1位とした委員から理由を述べてもらうにとど
まっている。
上記に確認したとおり、本プロポーザル審査基準では、
「審査会では、順位を付さ
れた企画提案について、その長所・短所を討議し、多くの意見を聞き、各委員が共
通認識に立った上で、最適な企画提案を特定する」とされている。この趣旨は、最
も優れた企画を選定するためには、単なる点数評価のみならず、審査会による実質
的な討議をも踏まえることが望ましいと考えられることによるものと思料される。
確かに、本件の採点結果からすれば、討議によって選定先が変更されることはな
いと考えられる。また、よほどのマイナス要因が討議の過程で発覚しない限り、選
定先が変更されることは、かえって審査の正当性に疑念がもたれる結果を招こう。
したがって、本件選考経過に対し問題性を指摘するには至らない。
しかし、本件のように採点結果に変更を与えることが想定できないケースであっ
ても、一定の議論を尽くすことで、より選考の正当性が担保される側面があるとい
う点も留意されるべきであろう。
なお、本プロポーザル審査委員として北海道職員以外の外部委員は存在しない。
(提案事項)
プロポーザル審査委員会では実質的な討議が行われることが望ましい。また、討
議内容の透明性を担保し、後日の検証のためにも議事録を作成すべきである。
94
7
アートツーリズム調査検討事業
(一)契約の概要
契約名
アートツーリズム調査検討事業委託契約
担当部課
環境生活部文化振興課
委託先
民間企業
業務内容
検討委員会を設置し、観光産業に活用できる文化資源の情報を収集し、
その活用及び発信方法を探るとともに、モニターツアーを実施し、その
実態調査等をもとに、本道の文化芸術と観光との連携についての検討を
行う。
業務目的
本事業は、文化だけでなく、観光や地域振興、産業振興等幅広い分野の
知識や経済効果分析等、高度な専門性が必要であるため、ノウハウを持
った民間の事業者へ委託することとする。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契(公募型プ
12,694,000 円
12,684,000 円
H17 まで)
ロポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
検討委員会開催費、モニターツアー費用、報告書作成費等の経費をもと
に積算されている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道文化振興条例では、道の責務として、文化振興施策の体系を明らかにし、
文化振興施策を総合的かつ効果的に推進すべきことが謳われている。本事業も同条
例に基づく事業の一環として位置付けられるものであり、道内の歴史的、文化的遺
産等の情報把握に努めるとともに、モニターツアーを実施し、その実態調査等をも
とに、本道の文化芸術と観光との連携についての検討を行うものである。
本事業を外部委託によったのは、文化、観光、地域振興、産業振興等幅広い分野
の情報収集、モニターツアーの実施、アートツーリズムがもたらす経済効果の分析
などにつき、民間のノウハウを利用することが効果的と考えられたからである。
本事業は、①道内の歴史的、文化的遺産等の情報収集を行うという面と、②実際
にモニターツアーを実施しそれを観光の観点から分析するという面との、複合的な
側面を有する事業である。このうち、①の側面だけであれば、各支庁のネットワー
ク等を生かして北海道独自の事業として遂行することも不可能ではなかろう。その
意味で、本事業は、情報収集と②の側面を融合させたところに特徴が認められると
ともに、この②の側面への評価が事業評価に結びつくと考えられる。
95
そこで、本件事業成果の検証が重要となるが、本事業の具体的成果物としては、
業務実施報告書 100 部及び電子媒体 1 部、同概要版 10,000 部及び電子媒体 1 部、文
化資源情報データ電子媒体 1 部の提出を受けている。そして、その利用方法として
は、概要版については関係各市町村、観光協会、道内大手観光団体、旅行業者など
に配布され、また、情報データについては北海道のホームページにおいて活用され
ている。
その成果を実質的に検証することは容易ではないが、文化振興のみならず、観光
振興の観点からも、今後とも十分に利用されることが望まれるところである。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評価入札
によることの可能性について後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、検討委員会開催費、
モニターツアー費用、報告書作成費等の経費をもとに積算されている。
このうち人件費については、研究員AからFまでのランクが設定されているが、
これは出納局手引による基準である。ただし、本件積算にあたって、なぜその各ラ
ンクの研究員を必要としたのか、なぜその人工数を必要と考えたか、についての判
断プロセスについて書面化されたものはない。
また、モニターツアー費用のうち、添乗員、参加者宿泊代、講演観覧料、チラシ
印刷、参加者食事代が市場調査によるとされているが、ヒヤリング調査での回答で
は、関連業者に対して電話照会を行って調査したということであった。しかし、そ
の調査経過は書面化されていない。
他でも述べているが、積算の項目ごとに積算基準、積算資料、積算判断のプロセ
スが明確にされる必要がある。
(提案事項)
委託料積算にあたって、評価が必要な項目(人件費におけるランク、人工の設定
等)については、その評価、判断プロセスを書面化することが望まれる。また、項
目ごとに積算調査経過を資料化することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、「事業の実施にあたっては、文化や観
光、地域振興、産業振興等幅広い分野の専門知識や、情報収集能力、アートツーリ
ズムがもたらす経済効果の分析力などとともに、柔軟な発想により創意工夫できる
企画力が不可欠である。
よって、これらの能力を有する複数の者から提案された企画内容に基づき業務実
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施能力などを評価することで、最も適した企画提案者を選定し業務を委託する」、と
されている。
本事業が単純な価格競争になじまない事業であり、よりよい企画を採用する必要
があることは理解できる。ただし、総合評価入札の導入も検討されるべき事項であ
るところ、この点の検討はなされていない。
(提案事項)
今後、同種業務を行う場合には、総合評価入札方式の導入可能性を検討すること
が望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており特に問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
アートツーリズム調査検討事業プロポーザル審査会設置要綱、プロポーザル審査
実施要領の定めが整備されている。公募型プロポーザルを行うにあたっての規定と
しては特段の問題は認められない。
なお、選定業者の決定方法としては、事務局から採点集計報告を受けたうえで、
プロポーザル審査会において、各企画の長所及び短所を討議するなど多くの意見を
聞き、各審査委員が共通認識に立った上で、最も適した企画提案を選定することと
されており、点数のみによる決定ではなく、一定の討議が予定されている。
また、本プロポーザルに関する「企画提案に係る説明書」では、提案内容の公表
が予定された記述があり、公表への配慮が認められる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査項目としては、①アートツーリズムに関する基本コンセプト 10 点、②業務
実施体制及び事業を担当する者 10 点、③検討委員の候補者 10 点、④検討委員会の
設置、開催 10 点、⑤道内の文化資源情報の収集・整理 20 点、⑥アートツーリズム
に係る経済的波及効果の調査 5 点、⑦モニターツアーのモデルコース 10 点、⑧モ
ニターツアーの実施方法 15 点、⑨報告書の作成 10 点の合計 100 点とされ、また、
それぞれについての評価基準が設定されている。
本事業の内容に沿って、業者選考にあたって必要と考えられる審査項目が網羅さ
れており、審査基準としては、特段の問題は見当たらない。ただし、このようにあ
る程度の客観性をもった基準の設定がなされているのであれば、総合評価入札の実
施も検討し得たのではないかと思料される。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
8 者からの企画提案があり、全件ヒヤリングを行って審査基準にしたがって採点
を行った上で、委員会における討議を経て、選定先が決定されており、審議の実質
が認められる
なお、本プロポーザル審査においては、その討議概要が記録化されており、議事
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録というまでの書類でないが、討議経過を検証するための資料が作成されている。
しかし、その記載内容を見るに、あたかも討議の中で業者名が特定されているか
のごとき発言がある。おそらくは、企画提案書中に当該業者の担当者の経歴等が記
載されていることから、業者名が推測されたのではないかと思われる。本来、プロ
ポーザル審査は、その公平性を保つために、企画提案業者名を伏して審査を行うこ
とが前提とされている。他方では、企画提案業者の信用度を審査するためには、担
当者の実績、経歴等も提案書の記載事項となり、ケースによっては、事実上、当該
提案業者名が推測されてしまう事態が生じ得る。この点は、プロポーザル審査に内
在する問題であるが、公平性、透明性が担保されてはじめて適正なプロポーザル審
査となることは常に留意されなくてはならない。
また、本討議概要だけでは、最終的な決定経過に関するやり取りが判然としない
が、結論としては、点数が第 1 位のものが選定されていること、その選定にあたっ
て実質的な討議が行われていることから、その選定自体に疑義を呈するものではな
い。しかし、他の事業についても言えることだが、選考経過の適正を担保する意味
でも、その審議経過は議事録として記録化されることが望まれる。
なお、本プロポーザル委員として北海道職員以外の外部委員は存在しない。
(提案事項)
プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、議事録を作成すべきである。議
事録は、その選定プロセスが明確化されなくてはならない。
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「北海道の自然の原点知床の姿」DVD 制作業務
(一)契約の概要
契約名
「北海道の自然の原点知床の姿」DVD 制作業務委託契約
担当部課
環境生活部自然環境課
委託先
特定非営利活動法人EnVision環境保全事務所
業務内容
知床の世界自然遺産登録を契機に、現在の姿が形成されるまでの知床の
移り変わり、現在の知床の姿等を収録したDVDを制作する業務。
業務目的
知床の世界自然遺産登録を契機に、北海道の自然を保全・再生し、未来
へ取り組んでいくことをアピールする必要があるため、現在の知床の姿
が形成されるまでの移り変わりをGISを利用したCGによるバーチャ
ルに再現するとともに、世界自然遺産に登録された現在の知床の姿を収
録し、さらに知床におけるナショナルトラスト運動の取り組み状況など
を収録した映像を制作することによって、北海道の自然の保全・再生に
ついて道民の意識を高めるための啓発資材として活用することを目的と
する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契(公募型プ
12,998,076 円
12,915,000 円
H17 まで)
ロポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
賃金、旅費、需用費、役務費、使用料及び賃借料等の経費をもとに積算
されている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
知床の世界自然遺産への登録を受け、北海道の自然を保全・再生し、未来へ取り
組んでいくことをアピールする事業である。
また、本事業の性質上、外部委託によることに問題は認められない。
成果の利用、検証としては DVD を 130 部制作し、関係町役場、支庁、関連機関、
各図書館、文化センター、科学館等に対して現在までに約 100 部を配布している。
また、航空会社、JR 北海道、千歳・女満別・オホーツク紋別空港各ターミナルビル
等に対し、放映依頼をしている。その他、北海道庁本庁舎でのパネル展や札幌市内
の小学校で開催した「しれとこ教室」において利用されている。
ただし、これら利用による具体的広報効果を検証する仕組みは特に存在しない。
(2)随意契約によることの妥当性
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本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評価入札
によることの可能性について後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、賃金、旅費、需用費、
役務費、使用料及び賃借料等の経費をもとに積算されている。
本件事業に要する人件費の基礎となる人員については、出納局手引に基づいて研
究のランクが設定され、1人当たりの単価についても、出納局単価表をもとに積算
されている。そして、ヒヤリング調査での回答では、事業内容の実質を踏まえて研
究員ランク及び人工の設定がなされたとのことであるが、その判断プロセスについ
ては、書面化されていない。その他の経費のうち、CG 制作費については、民間の関
連団体作成の映像制作費積算資料中、CG 二次元と CG 三次元の最低単価を参考に定
められている。また、自動車借り上げ料は、市場調査の一環として北海道が行った
他の事業での契約例が参考とされている。その他の経費についても、上記積算資料
や同種事業社のホームページ等での市場調査に基づいて積算されており、それぞれ
一とおりの客観資料を根拠としていると評価できる。
以上、本件業務の積算にあっては、実質的には特段の問題を指摘するには至らな
いが、作業員のランク設定、人区設定等評価が介在するものについては、可能な限
りその判断プロセスを書面化することが望まれる。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化す
ることが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、本事業の実施にあたっては、知床の自
然環境に係る映像や知床の原生的な自然をCGでバーチャルに再現する等を目的
としていることから、映像制作に係る専門的能力が必要であるため、受託者を決定
するにあたっては、高い業務処理能力を有する者を広く募集し、あらかじめ提出さ
れた企画提案書の内容に基づいて、その優劣を判断しなければならない、このこと
から公募型のプロポーザル方式によって受託者を決定することとする、とされてい
る。
よって、これらの能力を有する複数の者から提案された企画内容に基づき業務実
施能力などを評価することで、最も適した企画提案者を選定し業務を委託する、と
されている。
本事業が単純な価格競争になじまない事業であり、よりよい企画を採用する必要
があることは理解できる。ただし、総合評価入札導入の可能性も検討すべきである
100
と考えられるが、特にこの点は検討されていない。
(提案事項)
今後、同種の業務を行う場合には、総合評価入札方式の導入可能性を検討するこ
とが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており特に問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
「北海道の自然の原点
知床の姿」DVDの制作業務プロポーザル審査会設置要
綱、同企画提案審査実施要領の定めが整備されており、公募型プロポーザルを行う
にあたっての規定としては特段の問題は認められない。
本プロポーザルにおける選考業者決定方法は、①事務局は、審査委員から提出さ
れた企画提案書調書の結果を「企画提案審査調書集計表」に集計し、審査委員に報
告する、②報告後、プロポーザル審査会は、各企画について、その長所及び短所を
討議するなど多くの意見を聞き、各審査委員が共通認識に立った上で、その採用す
る企画を決定する、という内容である。なお、プロポーザル審査の透明性を高める
ため、審査要綱、要領あるいは企画提案指示書において、選考された企画に対する
公表についての定めをしているケースが少なからず存在するが、本件ではこの種の
規定はない。
(提案事項)
プロポーザル審査を行うにあたっては、審査要領、企画提案指示書等において、
選考された企画に関する公表についての規定を整備することが望まれる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査項目としては、①企画立案能力 40 点、②業務処理能力 20 点、③裁量点 10 点
とされ、さらに、審査ポイントとして、①については知床の過去から現在に至る知
見の豊富さ、GIS情報の使い方の能力、知床の原生的な自然に対する知見、ナシ
ョナルトラスト運動に関する知見、②については業務の実施体制・技術力、映像資
料の在庫の豊富さ、といった点が要素とされている。
業者選考にあたって必要と考えられる審査項目が網羅されており、審査基準とし
ては、特段の問題は見当たらない。ただし、かようにある程度の客観性をもった基
準の設定がなされているのであれば、総合評価入札の実施も検討し得たのではない
かと思料される。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
5社からの企画提案があり、全件ヒヤリングを行って審査基準にしたがって採点
を行った上で、委員会における討議を経て、選定先が決定されており、審議の実質
が認められ、質疑内容を記録した書類も存在する。
なお、審査委員会には北海道職員以外の外部委員は存在しない。
101
(9)その他
本件では、受託者の申請に基づいて、契約内容の変更(委託期間の延長)がなさ
れている。本来の納期は 2 月 28 日であるところ、3 月 24 日まで、約3週間の延長
がなされている。その理由は、収録を予定していたイベントの開催時期が遅いこと
が判明したことによる。すなわち、収録を予定していたイベントは、主に流氷シー
ズンで観光客が増加する時期に行われ、流氷の到達日や天候の影響を受けるため具
体的な開催日時が不明であったところ、当初想定していた 1 月下旬ないし 2 月上旬
にはイベントが行われないことが判明したということであった。
北海道は、この申請理由に正当性を認め、期間延長を応諾するとともに、納期遅
延に基づく違約金の徴収も行っていない。
確かに、流氷の到達時期が年によって異なり、自然条件を要因とする期間延長で
あることからすれば、
上記の判断自体には特段の問題は認められないものと考える。
ただし、延期申請がなされたのは、納期に近い 2 月 9 日であり、イベントの開催の
時期はより以前から調査することは可能であったものと思われる。
また、本件DVDの収録時間は約 10 分間を予定していたところ、完成したDVD
の収録時間は 16 分となっている。しかし、編集作業には北海道職員も関与し、カッ
トできない映像のチェックを行っていること、収録時間が長くなること自体は北海
道にとって不利益を生じるものではないこと、などから成果物としての問題性は認
められないと考える。
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9
民間テレビ放送等を活用したエイズ広報実施事業
(一)契約の概要
契約名
民間テレビ放送等を活用したエイズ広報実施事業委託契約
担当部課
保健福祉部疾病対策課
委託先
民間企業
業務内容
エイズ・HIV に関する民間テレビ放送を通じた広報の企画、制作、編集、
放送業務。
業務目的
道民に対してエイズ・HIV に関する正しい知識の一層の普及啓発を推進
し、HIV 感染のまん延防止を図るとともに、患者、感染者に対する差別
や偏見を解消することを目的とする。そのため、道民に広く普及してい
る民間テレビ放送等を活用して、エイズ・HIV に関する正しい知識の普
及活動を図る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H15
特命随契(公募型プロ 3,520,000 円
H17 まで)
積算額
委託金額
3,520,000 円
ポーザル)
H16
同
上
3,517,933 円
3,517,500 円
H17
同
上
3,519,653 円
3,519,600 円
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:放映時間帯と放映時間を前提とした放映料と制作費を合算し
て積算されている。
見積書の内容:内訳として制作費と TV オンエア費が記載されている
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、エイズ対策の一環として、予防啓発事業との位置付けで行われている
事業である。
事業の性質上、高度な企画・編集技術や専門的な知識を持つ業者に委託すること
が効果的であることから委託がなされている。
本件事業効果を具体的に検証するシステムは存在しない。
なお、本事業は、平成 18 年度からは凍結されている。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を行
って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。ただし、総合評価入札に
よることの可能性ついては後述する。
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(3)委託料算定根拠の妥当性
放映時間帯と放映時間を前提とした放映料と制作費を合算して積算されている。
このうち放映料については、企画提案の中から窺われるテレビ局の定める規程の
料金を前提にしている。ただし、道から直接テレビ局に規程の放映料を確認した経
過はない。現実的には、企画提案中に記載された基準に誤りはないと思われるが、
契約金額の積算は、あくまでも北海道自身が行うものであり、できるだけ自ら積算
根拠を調査する姿勢を失ってはならない。
また、制作費についても、北海道独自の積算は行われておらず、選考された企画
提案者の見積内容をそのまま積算金額としている。
このように、本件では、実質的には、道自身の調査、判断に基づく契約金額の積
算がなされていない。価格競争の存在しない随意契約において、契約金額の妥当性
は、積算方法の妥当性にかかっているとも言える。したがって、道自身の調査と評
価、判断による適正がなされる必要がある。
(提案事項)
委託料の積算にあたっては、項目ごとに道自らが直接調査するよう努めなければ
ならない。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、委託業者の選定にあたっては、効果的
な広報事業を企画・実施する能力等を考慮する必要があり、そのため、競争入札に
よることは適当でないことから、業者の総合的な業務処理能力が審査可能なプロポ
ーザル方式(公募型)を採用する、とされている。
本件業務の性質上、単純な価格競争になじまないことは理解できる。ただし、総
合評価入札の可能性も検討すべきであると考えられるが、特にこの点は検討されて
いない。
(提案事項)
総合評価入札への移行の可能性を検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており特段の問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
民間テレビ放送等を活用したエイズ広報実施事業企画提案審査会設置要領、同審
査要領が定められており、一定の規定整備はなされている。
また、企画提案説明書の中で、
「提出された企画提案は公正性、透明性、客観性を
期するために公表することがあります」と規定され、公表に対する一定の配慮が認
められる。
なお、本件審査要領の規定する選考業者設定方法は、
「企画提案の採否は、審査表
の得点等に基づき、審査会での審査により決定する」とされている。この趣旨をヒ
104
ヤリング調査の際に確認したところ、採点にて高得点を取得した者を選定するとい
う意味であり、審査会での実質的な審議は予定されていない、との回答であった。
もちろん、プロポーザル審査はできる限り、透明性、客観性が保たれなくてはなら
ず、点数による採点が最重要の位置を占めることは言うまでもないが、点数を踏ま
えた実質的な討議をも行うことが、プロポーザル審査の本質に合致すると思料する。
確かに、特殊な事情がない限り、最高得点を取得した者が選考されることになろう
が、そうであっても、実質的な討議を行うことによって、当該業者選定の妥当性を
担保する意味がある。このように、プロポーザル審査を行う場合、原則的には、点
数審査のみならず実質的な討議も行われることが望ましい。また、その実質的な討
議が恣意に流れないためにも、
討議経過については議事録が作成されるべきである。
(提案事項)
プロポーザル審査にあたっては、原則として、単純な点数集計だけではなく、点
数を踏まえた実質討議を行う旨の規定を整備することが望ましい。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査基準としては、①広報媒体 35 点、②広報内容 55 点、③業務処理体制 15 点と
なっており、さらに、①については広報媒体の選定、放送日時の選定、②について
はテーマ及び構成、対象者の設定、内容、といった項目に分類されておりそれぞれ
点数が割り振られている。
本業務の委託先を選定するにあたって必要な評価基準は網羅されていると考えら
れるが、他のプロポーザル方式にも共通する問題として、蓄積された実績を踏まえ
たよりよい基準作りが毎年検証されていかなければならないところである。しかし、
本業務においては、過去に採用された基準がそのまま踏襲し続けられており、基準
の検証がなされていない。
事業目的に即し、かつできるだけ客観化された基準を設定することは、総合評価
入札方式への途を拓くことにも繋がるものと考えられる。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
審査基準に基づいた審査の結果、最高点を採った業者を選定しているが、本件で
は、点数評価のみであり、点数を踏まえた実質的な審議はなされていない。
他で見てきたように、プロポーザル審査の中には、単純な点数計算ではなく、点
数を踏まえた実質的な審議を行っているケースが多い。
ケースによっては、点数のみで評価することで足りる事業もあり得ようが、プロ
ポーザル方式の本旨が「優秀な企画の選定」にあり、その審査がプロポーザル審査
委員会に委ねられているとすれば、点数評価が最も重要な要素であるとしても、最
終的な選定にあたっては、委員会において実質的な審議がなされるのが原則と考え
られる。また、そのような審議を経ることによって企画選定の妥当性が担保される
側面がある。
(提案事項)
プロポーザル審査においては、点数評価を踏まえた実質な討議を行うことが望ま
105
しい。プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、討議内容について、議事録
を作成すべきである。
106
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新たな周遊観光ルート形成のための調査業務
(一)契約の概要
契約名
新たな周遊観光ルート形成のための調査業務委託契約
担当部課
経済部観光のくにづくり推進室
委託先
民間企業
業務内容
主要観光エリアに隣接し、特色ある観光資源を有しているにもかかわら
ず、観光入込客数が少ないエリアについて、その認知度やエリアに対す
る観光客の満足度、ニーズなどを把握するため、アンケート調査を行な
うほか、モデルエリア内のドライブ環境の整備状況等の実地調査を行い、
観光入込客数が少ない要因を分析し、新たな周遊ルート形成のための検
証を行なう(調査エリアとして根室エリア、日高エリア)。
業務目的
北海道を訪れる観光客数は、平成 14 年度以降減少傾向にあり、今後、魅
力ある北海道観光の形成を図り、より多くの方々に北海道を訪れていた
だくためには、地域にある観光資源の磨き上げ等観光客のニーズにあっ
た周辺環境整備などの取り組みが必要である。このため、道内の主要観
光エリアに隣接し、特色のある観光資源を有しているにもかかわらず、
観光客入込客数が少ない状況にあるエリアをモデル的に選定し、当該エ
リアに関する認知度や満足度、観光客のニーズなどについて把握するた
めアンケート調査を行うほか、エリア内のドライブ環境や交通アクセス
の状況等について実地調査を行い、入込客数が少ない要因を分析すると
ともに、新たな周遊ルート形成のための検証を行なう。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契(指名型プ
15,278,376 円
15,246,000 円
H17 まで)
ロポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
指名型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
アルバイト賃金、需用費その他の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
世界自然遺産に登録された知床を要する根室エリア、全国有数の競走馬産地であ
る日高エリア事業の周辺地域への観光客の入込数を高めるべく調査を行い、新たな
周遊ルートを形成するための事業であり、業務の性質から、外部委託によることと
している。
成果の利用、検証としては、成果物としては、約 150 頁の調査報告書の提出を受
け、北海道内の各支庁、関連市町村、大手旅行会社等あてに合計 500 部を配布して
107
いる。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないもの
であるとき」に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポ
ーザル審査を行って随意契約を行うことには特段の問題は指摘できない。ただし、
総合評価入札によることの可能性ついては後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
契約金額の積算については、研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた
人件費、アルバイト賃金、需用費その他の経費をもとに積算されており、積算方法
は出納局手引に基づいている。ただし、具体的な業務に関して、どのランクの研究
員を何名必要とするか等については、過去の類似業務との比較や当該業務の難易正
当に鑑みて、担当者の判断において計算されることになる。そして、どういった考
え方に基づいて、具体的な金額積算を行ったかについてのプロセスは特に書面化さ
れていないケースが多く、本業務においても同様である。今後は、上記手引を基準
にするとしても、その基準を前提に、いかなる思考経過を辿って具体的な積算金額
が算定されたかにつき、そのプロセスを書面化し、積算の妥当性を検証できるよう
にすべきである。
なお、事業完成後に業者から提出された経費明細書の内訳と道の積算による内訳
には相当程度の齟齬がある。今後の同種事業の積算を適正に行う意味でも、本事業
に関わらず、当該事業に実際に有した日数、人員等を検証し、当初の積算が正しい
ものであったかどうかを検証することが望まれる。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化す
ることが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、近年の観光客の多様なニーズや道内観
光地の周辺環境の状況等北海道観光の実情に精通していることや、事業の性質上、
調査に関する専門的な知識、経験、企画力及び分析手法を有した業務遂行能力が不
可欠であり、金額の多寡をベースにした競争入札による契約にはなじまないこと、
があげられている。
単純な価格競争になじまない事業であり、よりよい企画を採用する必要があるこ
とは理解できる。しかし、本件事業は、アンケート調査、実地調査等を行って、現
状分析を行い、新たな周遊ルート形成のための報告書を作成する事業であり、事業
内容は、相当程度特定されており、企画如何によって、業務の内容に極端な違いが
生じる事業とはいえない。かかる意味で、総合評価入札によっての事業実施可能性
108
は検討に値するものと思料されるが、本件事業実施にあたって、総合評価入札導入
の是非についての検討はなされていない。
(提案事項)
今後、同種業務を行う場合には、総合評価入札方式への移行可能性を検討するこ
とが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
指名型のプロポーザル方式がとられており、その理由は、専門知識、経験、企画
力等に一定の能力を有した業者であることが必要であることによったものと考えら
れる。そして具体的には、①「北海道シンクタンク協議会」に加入していること、
または、
「シンクタンク年報(北海道地区)2005 年」
(総合研究開発機構編集)に掲
載されていること、②道内法人または道内に営業拠点を有する法人であること、が
指名先の選考基準とされている。
ところで、手続の透明性、公平性からすると、プロポーザル方式においても、公
募型が原則であり、指名型は、公募型により難いものに限定されるべきである。そ
して、指名型を用いた場合には、なぜ、公募型によることができなかったかという
点についての具体的根拠が必要であると考える。
これを本件ついてみるに、確かに、シンクタンク協議会は、地域の課題や観光の
実情を相当程度把握している機関と考えられ、同協議会への加入、あるいは上記年
報への掲載がなされている業者に一定の適性が認められることを否定するものでは
ない。しかし、本件業務内容からして、これら要件を満たしていない者の中にも、
よりより事業を構築できる者がいる可能性は少なからず存在する可能性もある。し
たがって、
「公募が原則」という理解に基づけば、本業務についても、プロポーザル
方式によるにせよ、公募型プロポーザル方式によったほうがより適切であったもの
と思料される。
この点、担当課からのヒヤリングによれば、本件業務遂行に要求される専門性、
技術性からして、上記要件は適切なものであり、公募によれば適性を欠く企画提案
が多く提出される可能性を危惧した旨の回答があったが、仮にそうであったとして
も、例えば、予備審査を行って対象業者を絞ることは可能であり、公募型を選択し
得ないほどの根拠足りえないものと考える。
(提案事項)
プロポーザル方式にあっては、公募型を原則とする運用を心がけられたい。
なお、公募により難く指名型プロポーザルによることとした場合は、その具体的
根拠を明示する必要がある。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
「新たな周遊観光ルート形成のための調査」プロポーザル審査会設置要領、新た
な周遊観光ルート形成のための調査業務プロポーザル審査要領の定めが整備されて
いる。
本件審査要領の定める選考業者決定方法は、
「事務局は、各個別企画提案審査調書
109
を集計した『企画提案審査調書集計表』を作成し、その結果を審査委員に報告する。
報告後、審査会は、各作品について、その調書・短所を討議するなど多くの意見を
聞き、各委員が共通認識に立った上で、採用する企画提案を決定する」とされてい
る。
なお、本審査要領、企画提案指示書等には選考された企画提案書の公表に関する
規定はなされてない。
(提案事項)
プロポーザル審査を行うにあたっては、審査要領、企画提案指示書等において、
選考された企画に関する公表についての規定を整備することが望まれる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査基準としては、①事業者の適格性 20 点、②企画提案の目的適合性 30 点、③
業務遂行手法の妥当性 20 点、④分析手法の適合性 30 点となっており、さらに、①
については受託能力、実施体制の確保、②については企画提案内容が事業目的に合
致しているか、アンケート等の調査方法等が的確か、事業目的に適った創意工夫が
あるか、③についてはモデルエリアに対する問題点が的確に把握できる内容になっ
ているか、ニーズに応じた社会資本整備の検証を行える内容となっているか、④に
ついては分析手法の明確性、目的に添った分析結果が得られる手法いなっているか、
報告書の構成の適切さ、といった項目に細分化されそれぞれの項目ごとに点数が割
り振られている。
本件事業遂行者の選定にあたって必要と考えられる審査項目が網羅されており、
審査基準としは、特段の問題は認められない。ただし、このようにある程度の客観
性をもった基準の設定がなされているのであれば、総合評価入札の実施も検討し得
たのではないかと思料される。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
審査要領にしたがって上位 6 作品を一次審査にて選出し、その後、ヒヤリングに
よる二次審査を経て、評価点が第1位のものを選考している。ただし、点数評価を
踏まえた実質的な討議はなされていない。
民間テレビ放送等を利用したエイズ広報業務に関する項目でも述べたが、プロポ
ーザル審査においては、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うことを原則とすべ
きであり、また、その討議経過については議事録を作成して明らかにしておくべき
である。
なお、本プロポーザル審査では、北海道職員以外の外部委員は参加していない。
(提案事項)
プロポーザル審査においては、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うことが望
ましい。
プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、討議内容について、議事録を作
成すべきである。
110
11
在宅就労支援モデル事業作成業務
(一)契約の概要
契約名
在宅就労支援モデル事業作成業務委託契約
担当部課
経済部雇用労政課
委託先
民間企業
業務内容
母子家庭の母親の就業機会を創出するために、モニター選定、環境整備、
研修の実施、在宅就労の実施、モデル事業の評価及び分析を行う事業
業務目的
母子家庭の母親は、子育てと生計の担い手という二重の負担を負っている
ことから、仕事と家庭の両立を実現することができる就業形態と考えられ
る在宅就労により、困難な生活形態にある母子家庭の母の就業の機会を創
出するため、研修とコーディネート機能を併せ持ったシステムの有効性及
びこのシステムにより母子家庭の母親の職業的自立による両立が図れる
ことを検証するため本業務を実施する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H17
特命随契(公募型プロ 13,000,000 円
H17 まで)
積算額
委託金額
12,705,000 円
ポーザル方式)
委託先選定の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅
費、需用費、使用料・賃借料その他の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:内訳についての記載がなされている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
子育てと生計の担い手という二重の負担を負っている母子家庭における母親が、
仕事と家庭の両立を実現するためには、在宅就労という形態が望まれることは理解
できるところであり、母子家庭における母親の在宅就労に関するモデル事業を行う
ことには一定の意義が見出される。
また、本業務は外部委託によっているが、母子家庭の実情への理解等社会福祉的
知識が必要であるとともに、情報関連技術に対する専門的知識、経験が必要となる
ことから、これら知識を有する民間業者への委託がなされている。
成果物としては、報告書及びその概要版の提出を受け、概要版を北海道内の各支
庁・市町村、福祉関連団体等へ配布している。ただし、配布後の利用状況の確認や、
成果の検証に関して、特段の業務は予定されていない。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
111
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評価入札
によることの可能性について後述する
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅費、需用費、使用
料・賃借料その他の経費をもとに積算されており、出納局手引を根拠とした積算と
なっている。
ただし、具体的な業務に関して、どのランクの研究員を何名必要とするか、経費
率をどう設定するについては明確な基準は存在せず、具体的な金額積算を行ったか
についてのプロセスは特に書面化されていない。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工数の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化
することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、①情報技術に関する専門的知識、経験
及び研修プログラムの実施が可能な企画力、サポート体制を有していることを確認
する必要があるため、②母子家庭に対する理解があるとともに、母子家庭における
在宅就労が可能な仕事を斡旋できる営業力及びサポート体制を有することを確認す
る必要があるため、③北海道における在宅就労による母子家庭の母親の職業的自立
の可能性及びシステムの継続的な運営についての分析手法を有することを確認する
必要があるため、とされている。
単純な価格競争になじまない事業であり、よりよい企画を採用する必要があるこ
とは理解できる。しかし、本件事業は、モニターを選定し、OA 機器を貸与するなど
して、実地作業を行わせるとともにそのサポートを行い、その結果の分析・検証の
うえで報告書を作成するという業務であり、事業内容は、相当程度特定されている。
したがって、抽象的な企画を求めるものではなく、総合評価入札によっての事業実
施可能性は検討に値するものと思料されるが、本件事業実施にあたって、総合評価
入札導入の是非についての検討はなされていない。
(提案事項)
今後、同種事業を行う場合は、総合評価入札方式への移行可能性を検討すること
が望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募をしており特に問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
在宅就労支援モデル事業作成業務プロポーザル審査会設置要綱、在宅就労支援モ
112
デル事業作成業務プロポーザル審査要領が定められている。
本審査要領の定める選考業者決定方法は、
「 審査票での得点や順位等に基づき審査
会での審議により決定する」とされている。
なお、本プロポーザル説明書では、
「公正性、透明性、客観性の確保を期するため、
提出されたプロポーザルを公表することができるものとします」と規定されており、
公表に関する一定の配慮がなされている。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
審査基準としては、①事業者の適格性 40 点、②企画提案の適合性 40 点、③分析
方法の妥当性 20 点の合計 100 点となっており、さらに、①については受託能力・履
行の確実性、専門的知識・ノウハウを有しているか、②については企画提案内容が
委託目的に合致しているか、企画提案の内容により委託目的を達することが可能か、
といった項目に分類されそれぞれ点数が割り振られている。
企画に対する評価項目としては必要な要素は網羅されており、一応の妥当性は認
められる。しかし、透明性、公平性の観点からは、プロポーザルの審査基準として
は可能な限り具体的、客観的なものが望ましい。その意味では、本件業務は相当程
度その内容が具体化されていることからすれば、例えばモニターの選定、環境整備
方法、研修内容、仕事へのサポート方法、評価・分析の方法等の項目をさらに具体
的に示したうえで、基準化することもできたのではないかと考えられる。
(提案事項)
今後、同種業務を行う場合は、より客観性、具体性のある審査基準の検討が望ま
れる。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
9 社からの企画提案があり全件ヒヤリングを行って審査基準に基づいた採点を行
った上で、プロポーザル審査委員会を開催し、結果、評価点が第 1 位のものを選考
しており、審査の判断自体に特段の問題は認められない。
なお、プロポーザル方式による選考は、最高点を獲得した業者を選考する場合で
あっても、点数評価に基づいて実質的な討議がなされる必要がある。
この点、本件業務に関する「在宅就労支援モデル事業作成業務プロポーザル審査要
領」おいても、
「プロポーザルの採否は、審査票での得点や順位等に基づき審査会で
の審議により決定する」とされている。しかるに、本件では、採点の最上位者を採
用することにつき、特段の討議がなされていない。結果として、当該企画が最も優
れているという判断が正当なものであったとしても、何らの討議もなく決定を行う
のは、プロポーザル審査のあり方として、不十分であるとの感は否めない。
なお、本事業が福祉関係と情報関係の両面に関する専門知識が必要な事業である
ことへの配慮から、それぞれに精通した外部委員2名をプロポーザル審査委員に選
任しており、この点は評価できる。
(提案事項)
プロポーザル審査においては、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うことが望
113
ましい。プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、討議内容について、議事
録を作成すべきである。
114
12
季節労働者再就職活動支援業務
(一)契約の概要
契約名
季節労働者再就職活動支援業務契約(A グループと B グループの2本立
ての契約である。
)
担当部課
経済部雇用労政課
委託先
民間企業(Aグループ)、民間企業(Bグループ)
業務内容
季節労働者が通年雇用化するために必要な資格や求職活動について、セ
ミナー・カウンセリングを実施する。
業務目的
道内の季節労働者数は、雇用労働者数の 6.2%、全国の季節労働者数の
56.5%を占めており、不安定な就労状況におかれ、収入も低位に止まっ
ている。今後も、公共事業費の削減が見込まれ、季節労働者を取り巻く
環境は一層厳しさを増すことが想定されることから、民間の再就職支援
会社を活用してセミナー・カウンセリングを実施し、意識啓発や通年雇
用化するために必要な資格や求職活動についてのアドバイスをすること
により、季節労働者の雇用の安定と通年雇用化の促進を図る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H16
特命随契(公募型プ 15,162,000 円(Aグループ)
H17 まで)
ロポーザル方式)
委託料額
14,413,418 円(Bグループ)
15,388,800 円(Cグループ)
H17
同
上
22,827,000 円(Aグループ)
22,099,350 円(Bグループ)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員ごとのランクの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
旅費、会場使用料、印刷費等の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:Aグループでは金額のほか企画指示書、企画提案書のと
おりとされ、Bグループでは金額のみ記載されている
(二)
監査結果
(1)委託の必要性・有効性
道内の季節労働者数は、雇用労働者数の 6.2%、全国の季節労働者数の 56.5%を占
めており、不安定な就労状況におかれ、収入も低位に止まっている。かような現状
を受け、北海道では平成 15 年 11 月に「季節労働者対策に関する取り組み方針」を
打ち出しているが、本事業もその一環として位置付けられるものである。
本事業を委託によったのは、全道 18 クラス、受講者約 9,000 人に対応するセミナ
ー、カウンセリングを行う必要があること、その内容も専門的知識、ノウハウが必
要であることを理由とする。
ところで、本事業は、A、B2つに分割され、異なる業者が委託先となっている
115
が、2 事業に分割する理由として、
「平成 17 年度季節労働者再就職活動支援業務実
施要領」では、①業務を二つに分割して事業規模を小さくすることにより、企画提
案に応じる業者が増え、優秀な企画提案が出される可能性が高くなること、②事業
終了後、事業効果を測定するにあたり、複数社の事業実績を比較することができる
ことから、より詳細に事業効果の分析ができること、③複数社が受託することによ
り、受託した事業者間で競争意識が働き、よりきめ細かな事業実施が期待できるこ
ととされている。
しかし、仮にかかる趣旨を生かすのであれば、事業数をさらに分割すべきではな
いか、との発想も生じ得る。そして、平成 16 年度では本事業はA、B、Cの3事
業とされていた。他方で、上記趣旨、特に②、③の趣旨を生かすのであれば、事業
成果の検証として、受託した各社の実績比較が詳細に検討されなくてはならないは
ずであるが、かかる観点から平成 16 年度の事業成果の検証はなされていない。
このような点からすると、何ゆえ、事業を分割したのか、また、平成 16 年には 3
事業とし、平成 17 年には 2 事業としたのかその理由が必ずしも判然としない。こ
の点、ヒヤリング調査において、事業分割の理由、事業数の変遷理由の経過を確認
したところ、
「平成 14 年時に『日本人材紹介事業協会』等の再就職支援業の団体に
問い合せ、北海道で事業実績のある業者名を確認し、これらの業者に対して実施し
たカウンセラーの人数の組織体制に係る聴取内容を参考に、平成 16 年度は 3 事業
に分割した。平成 17 年度では、平成 16 年度に本事業を受託した業者に対して、実
績を踏まえて対応可能性を確認し、2 事業に変更した」とのことであった。
以上からすると、事業分割の根拠として掲げられている②、③は実質的な理由に
はなっておらず、結局のところ、北海道に拠点を置く再就職支援会社の対応能力に
応じて事業数を設定したということになる。それ自体は理解できないことではない
が、後述の「プロポーザル方式によることとした判断の妥当性」の項でも検討する
とおり、本件は、変則的な事業形態であったことが認識されるべきである。
一者ではまかない切れない事業規模であったことが事業分割の理由なのである
から、翻って言うと、それだけの事業規模を設定する必要性があったのかが問われ
直さなければならない。また、変則的な形態をとった以上は、その事業成果は、よ
り高度なものが要求されることとなる。そうでなければ、事業分割を正当化するこ
とは難しい。この点、北海道における雇用状況からすると事業の必要性が高いこと
は否定できないであろう。他方、本件事業成果を見るに、北海道が本件受講者を対
象としたアンケート結果では、約 9,000 人中、約 700 人の通年雇用が実現している
とのことである。これを高度の成果を見ることができるかは評価の分かれるところ
であるが、あえて変則的な事業分割を行わなければならないほどに事業規模を大き
なものとして設定する必要まであったかどうかは疑問が残る。
なお、本事業は平成 18 年度で終了している。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
116
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員ごとのランクの単価に必要な人工数を乗じた人件費、旅費、会場使用料、
印刷費等の経費をもとに積算されている。
このうち人件費については、出納局手引を根拠とするものであるが、本件では研
究員A、研究員C、補助員が必要とされ、それぞれ人工数が設定されている。とこ
ろで、他業務での積算でも出納局手引によることが多いのはこれまでにも述べてき
たとおりであるが、最上位ランクである研究員Aの設定は、高度の専門性が認めら
れる場合に限って認められるものであると考えられる。しかるに、ヒヤリング調査
にあたって、研究員Aとされている根拠を確認したところ、道や国の制度、法的知
識など幅広い知識が必要であるからとの趣旨の回答があった。いずれにせよ、この
ランクの設定に関する判断プロセスが書面化されていない。かような疑問が生じた
ときのためにも、積算の思考プロセスは極力書面化されなくてはならないと考える。
また、会場使用料については他の道有施設の基準を用いており、実際に利用する
会場からは見積書を徴求していない。印刷費についても、前年度を踏襲しており平
成 17 年度の事業を遂行するにあたって新たな検証はなされていない。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工数の設定等)については、その評価、判断プロセスを書面化す
ることが望まれる。
また、委託料の積算は、可能な限り具体的資料に基づいて年度ごとに適正な積算
を行うよう努めるべきである。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、セミナー、カウンセリングの実施内容
により、事業効果が異なってくることから、事業者の実績、ノウハウ、カリキュラ
ム、実施体制等を総合的に勘案する必要があること、とされている。確かに、いか
なる手法でもって季節労働者の通年雇用実現に有効な方策を講じるかについては、
企画を募集して優れた企画提案者にこれを発注するということは理解できる。しか
し、先にも述べたとおり、本事業が 2 つに分割されていることは、本プロポーザル
のあり方にも影響する問題と考えられる。すなわち、本プロポーザルの募集にあた
っては、A、Bいずれかの事業にのみ応募できることとなっており、両方への応募
は認められていない。本件がそうであったと述べる趣旨ではないが、一般論として
は、事業者同士が相通じて、公募する事業対象をあえて違えるということもあり得
ないことではない。例えば、北海道内に当該事業を行うことのできる業者が 3 者し
か存在しない事業を、3 つに分割して公募した場合、各業者が意を通じれば、それ
ぞれが受託者となることとなり、あたかも仕事を分け合ったかの如き事態となる。
この例は、極論ではあるが、少なくとも、同内容かつ同時期に行う事業を分割して、
117
一方にしか応募できない形でのプロポーザルを行うということは、このような疑念
を道民に抱かせる契機になりかねないことを自覚することが必要である。
また、本件業務の性質上、単純な価格競争になじまないことは理解できないでは
ないが、総合評価入札の可能性も検討すべきであると考えられるところ、特にこの
点は検討されていない。
(提案事項)
同一内容の事業を分断してプロポーザル審査を行うこと自体を否定するものでは
ないが、そのような形態を執る場合には、慎重な考慮が必要である。
今後、同種業務を行う場合は、総合評価入札への移行可能性を検討することが望
まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており参加者の選考に自体に問題は認められない。ただし、本件で
はA、Bのいずれかにしか応募できないこととなっており、この点の問題は上記に
指摘したとおりである。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
季節労働者再就職活動支援事業委託に係る企画提案審査会設置要領、同企画提案
審査実施要領が定められており一応の規定の整備はなされている。公募型プロポー
ザルを行うにあたっての規定として特に問題は認められない。
ただし、これら要領及び公募者に対する公募要領では、選考された企画内容の公
表に関する規定がない。
なお、審査提案実施要領では、1次審査として、採点基準に基づいて書類選考を
行って上位 5 者を選定し、2 次審査として、ヒヤリング審査を行って採点をしたう
えで、審査資料に基づいて審査委員が協議によって採用案を決定する、という内容
の決定手続が規定されている。
(提案事項)
プロポーザル審査にあっては、審査要領、企画提案指示書等において、選考され
た企画に関する公表についての規定を整備することが望まれる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件では審査基準として、①事業者の適格性 30 点、②企画提案の目的適合性 40
点、③業務遂行手法の妥当性 30 点の合計 100 満点とされており、さらに①について
は事業者の企業内容からみた受託能力、実績からみた受託能力、人員・体制の妥当
性、契約履行の確実性といった観点から、②については本問題に関する知識・問題
意識、季節労働者の意識改革を促す内容になっているか、適切なアドバイスを行な
う内容になっているか、通年雇用関連目標値の設定が適切か、通年雇用が期待でき
る内容になっているかという観点から、③については事業の周知方法・受講者の募
集方法の妥当性、個人情報の管理の妥当性、通年雇用ヘ向けた取り組みの妥当性、
受講者数確保の方法の妥当性といった観点から、それぞれ細分化された基準となっ
118
ており、特段指摘する問題点は認められない。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
Aグループ、Bグループともに 2 者の応募があり、それぞれヒヤリング審査を行
って採点し、いずれも点数上位者を選定している。
ただし、具体的な討議はなされてないと思われ(少なくとも討議内容についての
詳細な議事録は存在しない。)、実質的には点数のみで業者選定がなされていると考
えられる。
これまでにも論じたとおり、よりよい企画を選定するというプロポーザル審査の
趣旨からすれば、実質的な討議を経た上で選定されるべきである。特に、本件では
事業分割のうえでのプロポーザルという変則的な形態が採られていることからして、
結論が変わらないとしても、点数第1位の業者が、真に優秀な企画であるかどうか
について、各委員が意見を出し合って確認する作業が必要であったと考えられる。
なお、本プロポーザル審査会には、外部委員が参加しており、この点では評価す
ることができる。
(提案事項)
プロポーザル審査においては、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うことが望
ましい。
プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、討議内容について、議事録を作
成すべきである。
119
13
中高齢者等再就職支援業務
(一)契約の概要
契約名
中高齢者再就職支援業務委託契約(A グループと B グループの2本立て
の契約である。)
担当部課
経済部雇用労政課
委託先
民間企業(A グループ)、民間企業(B グループ)
業務内容
ハローワークの求職登録者で受講申し込みを行なった概ね45歳以上5
5歳未満の中高齢者で失業期間が3か月以上の者を対象にセミナー・カ
ウンセリングを実施する。
業務目的
道内の失業者は依然と高水準で推移しているが、失業期間の長期化は本
人の就業意欲や能力の低下を招き、再就職を困難にする傾向があること
などから、失業期間を短縮させ、円滑な労働移動を促進することが必要
となっている。このため、市町村と連携し、全年齢の中でも、特に再就
職緊要度が高く生計の中心となる中高齢者等を対象に、再就職に必要な
求職活動のノウハウ等を提供するとともに、求職者の意識改革を行なう
ことにより、再就職を促進させるため、民間の再就職支援会社に委託し
て、再就職支援のためのセミナーやカウンセリグを実施する。
契約の推移
(H15 から
H17 まで)
年度
委託先選定方法
委託料額
H17
特命随契(公募型プロポ
ーザル方式)
26,143,913 円(A グループ)
28,308,000 円(B グループ)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクに必要な人工数を乗じた人件費、旅費、会場
使用料、印刷費等の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:グループ A、B ともに金額のみ記載されている
(二) 監査結果
(1)委託の必要性・有効性
道内の失業者は依然と高水準で推移しているが、全年齢の中でも、特に再就職緊
要度が高く生計の中心となる中高齢者等を対象に、再就職に必要な求職活動のノウ
ハウ等を提供するとともに、求職者の意識改革を行うことにより、再就職を促進さ
せるために本事業が行われている。
本事業を委託によったのは、全道各地でセミナー、カウンリングを行う必要があ
ること、その内容も専門的知識、ノウハウが必要であることを理由とする。
ところで、本事業はA、B2つに分割され、異なる事業者が委託先となっている。
2事業に分割する理由としては、先に見た季節労働者再就職活動支援業務と同様、
①業務を二つに分割して事業規模を小さくすることにより、企画提案に応じる業者
が増え、優秀な企画提案が出される可能性が高くなること、②事業終了後、事業効
120
果を測定するにあたり、複数社の事業実績を比較することができることから、より
詳細に事業効果の分析ができること、③複数社が受託することにより、受託した事
業者間で競争意識が働き、よりきめ細かな事業実施が期待できることとされている。
しかし、本事業においても、上記②、③の趣旨を生かすための事業評価の検証は
なされておらず、結局のところ、事業分割の根拠としては、北海道に拠点を置く雇
用促進関連事業者の対応能力に応じて事業数を設定したという以外にないと考え
られる。
となると、季節労働者再就職活動支援業務と同様に、一者ではまかない切れない
事業規模を設定したことの妥当性が問われなければならない。ところで、季節労働
者再就職活動支援業務では、約 9,000 人にのぼる受講者を対象としていたが、本事
業では、受講者数という点においてはその規模は小さく、実際の受講者はAグルー
プでは 187 人、Bグループでは 175 人に止まっている(なお、計画段階でもAグル
ープ 195 人、Bグループ 205 人とされている。
)。ただし、季節労働者再就職活動支
援業務でのセミナー等の開催回数が各1回であったのに対し、本事業ではA12 クラ
ス、B13 クラスを対象として各 4 回のセミナー等が開催されており、事業を分割す
るほどの事業規模となった理由は、受講者の数というよりも、クラスの設定、セミ
ナーの開催回数を含めたカリキュラムの設定の仕方にあったといえる。とすると、
果たして、事業分割しなければならないようなカリキュラムを設定する必要があっ
たのかが問われなければならないが、少なくとも、具体的な書類上の資料としては、
この点の疑問を解消するものは存在しない。
季節労働者再就職活動支援業務において述べたとおり、同内容かつ同時期に行わ
れる事業を分割してプロポーザル方式を実施することの変則性に鑑みた場合、その
疑念はさらに大きなものとなる。
なお、本事業は、平成 17 年度単年度で終了している。
(提案事項)
本件業務のように北海道の考え方如何によって事業規模が異なる業務にあっては、
当該事業規模とした根拠について、その判断プロセスを書面化する必要がある。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を行
って随意契約を行うことには特段の問題はない。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクに必要な人工数を乗じた人件費、旅費、会場使用料、印刷費等の
経費をもとに積算されている。
このうち人件費については、出納局手引を根拠とするものであるが、本件では研
究員C、研究員D、補助員が必要とされ、それぞれ人工数が設定されている。とこ
ろで、季節労働者再就職活動支援業務では、研究員A、研究員Cが設定されている。
121
ヒヤリング調査では、業務に要する専門知識に違いがあるとの趣旨の説明がなされ
たが、両事業における受託先に大きな能力の差は認められず、また、具体的業務内
容からしても、研究員ランクに大きな差を設けるべきほどの違いがあるとは思われ
ない。
また、会場使用料、印刷費についても、市場調査を行ったというのみであり、具
体的資料に基づく積算は行われていない。ところで、案内広告用のリーフレットに
ついて、季節労働者再就職活動支援業務では一枚あたりの単価が 20 円とされている
のに、本事業では 31 円とされており、この違いの根拠についても明確な説明はなか
った。いずれにせよ、一般論としても、同種事業の案内リーフレットであるから、
印刷費に違いが生じるような差を設ける実質的意味を見出すことは困難である。
委託料の積算にあたっては、予算に合わせた積算がなされたというような疑念が
生じることのないよう、事業ごと、項目ごとに積算基準、積算資料、積算判断のプ
ロセスは明確にされなくてはならない。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工数の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化
することが望まれる。
また、委託料の積算は、可能な限り具体的資料に基づいて年度ごとに適正な積算
を行うよう努めるべきである。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、厳しい雇用失業情勢の中、中高齢者求
職者の再就職に必要な意識改革、キャリアプランの設計、求職活動の目標設定等を
行うセミナー、カウンセリングを実施することとしているが、これらの実施内容に
より、事業効果(再就職率)が異なってくることから、事業者の実績、ノウハウ、
カリキュラム、実施体制等を総合的に勘案する必要があるため、されている。確か
に、いかなる手法でもって中高齢者の再就職に有効な方策を講じるかについては、
企画を募集して優れた企画提案者にこれを発注するということは理解できる。しか
し、本事業が 2 つに分割されていることとの関連では、疑念が生じ得ることは、季
節労働者再就職活動支援業務に関して述べたのと同様である。
また、本件業務の性質上、単純な価格競争になじまないことは理解できないでは
ないが、総合評価入札の可能性も検討すべきであると考えられるところ、特にこの
点は検討されていない。
(提案事項)
同一内容の事業を分断してプロポーザル審査を行うこと自体を否定するものでは
ないが、そのような形態を執る場合には、慎重な考慮が必要である。
今後、同種業務を行う場合には、総合評価入札への移行可能性を検討することが
望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
122
公募がなされており参加者の選考に問題は認められない。ただし、本件ではA、
Bのいずれかにしか応募できないこととなっており、この点の問題は上記に指摘し
たとおりである。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
中高齢者等再就職支援業務委託に係る企画提案審査会設置要領、同企画提案審査
実施要領が定められており、公募型プロポーザルを行うにあたっての規定としては
特に問題は認められない。
ただし、これら要領及び公募者に対する公募要領では、選考された企画内容の公
表に関する規定がない。
なお、審査提案実施要領では、1 次審査として、採点基準に基づいて書類選考を
行って上位 6 者を選定し(細かな点ではあるが季節労働者再就職活動支援業務では
上位 5 者となっている。)、2 次審査として、ヒヤリング審査を行って採点をしたう
えで、審査資料に基づいて審査委員が協議によって採用案を決定する、という内容
の決定手続が規定されている。
(提案事項)
プロポーザル審査にあっては、審査要領、企画提案指示書等において、選考され
た企画に関する公表についての規定を整備することが望まれる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①事業者の適格性 20 点、②企画提案の目的適
合性 40 点、業務遂行手法の妥当性 40 点の合計 100 点満点とされており、さらに、
①については、事業者の企業内容・事業実績から見ての受託能力、人員・体制、②
については、セミナーのカリキュラム、カウンセリングの実施内容等は適当か、セ
ミナーの講師、カウンセラーは適当か、受講者の職業適性の把握方法は適当か、再
就職の促進を図るための配慮がなされているか、③については、受講者の募集方法
は適当か、セミナー、カウンセリングの実施時期は適当か、カウンセリングを希望
しない者に対するカウンセリング受講の勧誘方法は適当か、カウンセリングで知り
得た個人情報の管理方法は適当か、開講場所と市町村との連携方法は適当か、とい
った項目が評価のポイントとなっている。
本件事業者選定にあたっての評価ポイントとして特に問題は認められない。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
Aグループにつき 4 者、Bグループにつき 2 者の応募があり、それぞれヒヤリン
グ審査を行って採点し、いずれも点数上位者を選定している。
ただし、具体的な討議はなされていないものと思われ、この点への指摘は季節労
働者再就職活動支援業務に関して述べたところと同様である。
なお、本プロポーザル審査会には、外部委員が参加しており、この点では評価す
ることができる。
(提案事項)
123
プロポーザル審査においては、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うことが望
ましい。
プロポーザル審査の透明性を担保するためにも、討議内容について、議事録を作
成すべきである。
124
14
農業・農村コンセンサス形成総合推進事業
(一)契約の概要
契約名
農業・農村コンセンサス形成総合推進事業委託契約
担当部課
農政部農村設計課
委託先
民間企業
業務内容
農業・農村の役割や多面的な機能について、道民の理解や関心を深める
ことを目的として、農業者と都市住民の架け橋となる情報誌を発行する
事業。
業務目的
情報誌制作にあたっては、道民の農業・農村に対する理解と関心が高ま
るよう、分かりやすく親しみのある紙面づくりが求められることから、
企画、デザイン、ビジュアル性などについて高度で専門的な技術が必要
である。このため、企画・編集、取材、印刷・製本まで制作にかかる業
務を一括して委託することとする。
契約の推移
年度
委託者選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H15
特命随契(公募型プロ
15,443,670 円
15,441,300 円
H17 まで)
ポーザル方式)
H16
同
上
15,262,567 円
15,255,450 円
H17
同
上
15,033,468 円
15,025,500 円
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:企画・編集・デザイン料、印刷製本費を市場物価に基づいて
積算している。
見積書の内容:金額のみ記載されている。
(二) 監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道において重要な産業である農業に対する道民の理解を深めることには大き
な意義があり、北海道農業・農村振興条例においても「道は、農業・農村に対する
道民の理解の促進のために必要な措置を講ずるものとする」と規定されている(同
条例第 20 条 1 項)。そして、北海道では、
「農業・農村コンセンサス形成総合推進事
業」を進めており、本事業も同推進事業の一環として、農業・農村に関する情報を
情報誌という形で道民に発信するものである。
また、本事業を遂行するにあたっては広範囲での取材が不可欠であり、事業の性
質上、企画力、編集力、技術力に優れた業者に委託することが効果的であることか
ら外部委託によっている。
成果の利用、検証であるが、本事業の成果物である情報誌は 2 万 1,000 部作成し、
都市・農村交流施設、道内金融機関、道立・私立図書館、道内公共宿泊施設その他
各関連施設等に配布するとともに、希望者に対し郵送も行っている。本件情報誌末
125
尾にはアンケートハガキが添付されており、各号ごとに約 400 から 500 通のアンケ
ートが回収されている。そして、担当課においてアンケート結果が集約され、次号
以下のテーマ設定に生かされるなど、成果の利用、検証がなされている。以上のと
おり、本件事業の成果の利用、検証には特段の問題は認められない。なお、アンケ
ート結果については、当該情報誌の制作という枠組みのみならず、北海道における農
業政策を検討するうえでの道民の生の声として、有効活用がなされることが望まれ
る。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
に該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を
行って随意契約を行うことには特段の問題はない。ただし、総合評価入札によるこ
との可能性については後述する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
企画・編集・デザイン料、印刷製本費を市場物価に基づいて積算している。そし
て、企画・編集・デザイン料については企画・立案、原稿作成、編集料、デザイン、
取材費その他の項目ごとに積算を行っており、その根拠として市場物価に関する資
料が添付され、積算のプロセスが理解できる。また、印刷製本費についても用紙代、
DTP パーツ作成料、製本費等の項目ごとに積算を行っており、同様にその根拠とな
る市場物価に関する資料が添付されている。また、諸経費率について財団法人経済
調査会作成の単価表が用いられ、特段の問題はない。
ただし、積算の個別項目として本文デザイン料については、積算資料では1枚
20,000 円以上とされているところ、40,000 円として設定されている。この点、本件
情報誌を見分したところでは、カラー写真等が多数用いられ表紙と遜色ない紙面構
成になっており、表紙に関する積算単価が 50,000 円であることからすれば、本文に
ついて上記の単価設定とされていること自体には特段の問題は認められないと考え
られる。しかし、20,000 円以上という単価基準をもとに、40,000 円という単価を設
定した評価・判断ブロセスについては、資料化しておくことが望ましいと考える。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目について
は、その評価・判断プロセスを書面化することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
本事業目的を達成するためには、事業の性質上、企画力、編集力、技術力に優れ
た業者に委託することが効果的であることは理解できるところであり、本事業が単
純な価格競争に馴染まないとの判断には正当性が認められると言ってよい。
しかし、本事業は平成 10 年から開始され、これまでに実績が蓄積されているこ
とから、審査基準をより客観化したうえで、総合評価入札への移行することも今後
126
の検討課題であると考える。なお、本事業実施にあたって総合評価入札導入の可能
性については検討されていない。
(提案事項)
総合評価入札方式への移行可能性を検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募がなされており参加者の選考につき、特に問題は認められない。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
平成 17 年度農業・農村コンセンサス形成総合推進事業に係る情報誌制作業務のプ
ロポーザル審査会設置要領、同プロポーザル審査要領が定められており、一定の規
定整備がなされている。
本審査要領における選定業者決定方法は、
「 各審査委員の提出した企画提案審査調
書をもとに、審査会で協議の上、委託業者を選定するものとする」と定められてい
る。
なお、企画提案に係る説明書において、「道は公表することが必要な場合には、提
出書類を使用することができることとします」と規定されており、
公表に関する配慮
がなされている。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①業務処理体制につき 10 点、②業務処理計画
10 点、
③企画内容 70 点、
④全体評価 10 点の配点をして合計 100 点満点としている。
そして、③については、制作意図の理解度、創造性・独創性、表現力の項目に分け、
それぞれに配点を行っている。
一応の評価ポイントは設定されており、否定的な評価をするまでには至らない。
しかし、上記審査基準は、いずれも抽象的な基準に止まっている面は否めない。ヒ
ヤリング調査における回答によれば、本審査基準は、本事業開始 2 年目から同一の
ものが用いられてきているとのことであるが、本事業は、平成 10 年からの継続業務
であり、蓄積された実績に基づいて、より事業目的に適った適切、かつ客観的な審
査基準を設定できないかどうか検証を重ねることが望まれる。
(改善事項)
過去の実績や他の同種業務を参考にするなどして、より具体的、客観的な審査基
準を設定し得ないかどうかを検討することが望まれる。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
9 社からの企画提案を受け、ヒヤリングを行ったうえで、各プロポーザル審査
委員が採点をして、後日、その採点の集約結果に基づいて、一定の討議をしたう
えで業者選定を行っており、審査の実質が認められる。
ただし、本プロポーザル審査では、点数の集計がなされた段階で、企画提案業
者の名前を審査委員に開示したうえで、討議がなされている。
127
(改善事項)
審査のあり方としては、選定業者決定に至るまで提案者名は伏せられるべきで
ある。
128
15
根室市道営住宅新築工事基本計画及び実施設計業務
(一)契約の概要
契約名
根室市道営住宅新築工事基本計画及び実施設計業務委託契約
担当部課
建設部住宅課
委託先
民間企業
業務内容
根室市道営住宅についての新築工事基本計画及び実施設計業務。
業務目的
事業の技術性・専門性から委託を行うもの。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H17 まで)
H17
特命随契(簡易型プロ 17,196,900 円
ポーザル方式)
委託先選定の
運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
プロポーザル(簡易型)
委託料の算定
積算方法:技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費を基
積算額
委託金額
17,115,000 円
礎に諸経費、特別経費等を加えて積算されている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
道民への安価な住宅の提供は道の重要な役割であり、公営住宅の需要は高い。本
事業は具体的には、子育て支援の観点からの根室市からの要請に基づくものである。
本業務を外部委託したのは、事業の技術性・専門性による。
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、簡易型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。なお、簡易型プロポー
ザルの内容、
その妥当性及び総合評価入札による可能性については追って指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
技師のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費を基礎に諸経費、特別経
費等を加えて積算されている。
人件費については、技師長、主任技師、技師 A 以下の各ランクを設定し、現況調
査分析、計画条件設定、事業検討その他の項目ごとに、各ランクの技師として必要
な人工数を定め、各単価を乗じて積算している。いかなるランクの技師を必要とす
るか、人工数を何人と設定するかの基準については、社団法人日本都市計画学会そ
の他作成の「地区開発、地区整備、団地計画業務及び報酬規準」に基づいている。
これによれば、設計対象となる物件の面積に応じてランク設定、人工設定の基準が
129
示されおり、本件事業でも同基準にしたがっている。よって、人件費積算における
技師のランク、人工については一定の基準にしたがっている点で客観性が担保され
ている。
その他の経費の算定についても、項目ごとにそれぞれの基準にしたがった積算が
なされており、特段の問題は認められない。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
設計業務にも企画要素があることを否定するものではないが、例えば広報業務等
と比較すれば客観的かつ詳細な仕様が明らかであり、より総合評価入札に馴染みや
すいと考えられる。したがって、本件においても、総合評価入札が検討されるべき
であったと思料される。しかし、本件では総合評価入札導入の可否は検討されてい
ない。
なお、
ヒヤリング調査での回答では、
北海道においても工事関連契約については、
総合評価入札への移行を検討しており、土木工事部門から始めて、建築工事部門、
そして設計部門にも総合評価入札への移行が進められつつあるとのことであった。
プロポーザル方式とはいえ契約類型としては随意契約であり、地方公共団体が行う
契約としては競争入札が原則であるという理解に立ち返り、早期に総合評価入札へ
の移行条件を整備することが望まれる。
(改善事項)
今後は同種契約につき、総合評価入札への移行が望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
北海道建設部が発注する建築設計に係る業務をプロポーザル方式にて実施するに
あたって統一規定として、
「プロポーザル(技術提案)方式による設計者等選定実施
要領」が定められている。そして、同要領では、公募型、標準型、簡易型の 3 類型
の規定がある。これによれば、公募型とは、あらかじめ設計業務の概要及び参加資
格等を公示して企画を募り、技術提案書の提出、かつ、ヒヤリングを行って審査す
る方式であり、標準型とは一定の条件を満足する設計者等から技術提案書の提出を
求め、かつ、ヒヤリングを行って審査を行う方式であり、簡易型とは一定の条件を
満足する設計者等から技術提案書の提出を求め、これを審査する方式である。すな
わち、標準型と簡易型は、指名型プロポーザル方式に位置付けられ、ヒヤリングを
経るか否かという点に違いがある。
プロポーザル審査実施にあたってどの類型を採用するかは、ヒヤリング調査の際
の回答によれば、対象となる物件ごとに類型化して定められているということであ
り、業務の難易度に応じているとのことである。この回答を前提にすると、比較的
簡易な設計業務については、高度な能力を要しないため、簡易型で足りるという発
想が背景にあると考えられる。
しかし、他でも述べているとおり、手続の透明性、公平性の観点からは、プロポ
ーザル方式にあっても公募型が原則とされるべきであり、業務内容が比較的高度で
ないことのみを理由として、類型的に指名型を採用することができるとすることに
130
は疑問がある。事業内容が比較的高度でないということは、委託可能な者が多く存
在する可能性を意味し、むしろ、広く公募することがより望ましい姿である。
(提案事項)
第一義的には総合評価入札への移行が望まれるところであるが、仮に、プロポー
ザル方式によるとしても、プロポーザル方式にあっては、公募型を推進する運用を
心がけられたい。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
上記「プロポーザル(技術提案)方式による設計者等選定実施要領」が整備され
ている。規定自体への指摘は上記のとおりである。
なお、本件に関する提案要請書では、業者特定後、一定期間評価結果とともに、
提案書を公開する旨が規定されており、公表の観点から評価できる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件における審査基準の概要は、①事業者の資格につき 10 点、②技術力につき
10 点、③業務実施方針及び手法につき 90 点を配点して合計 107 点としている。さ
らに、①については主任技術者、担当技術者の資格、②については管理技術者、主
任技術者の実績等を踏まえた技術力、③については業務の理解度、業務の実施方針
及び配置イメージ図、当該テーマに対する技術提案の項目に分類されている。
プロポーザル一般という枠組みからは、特段の問題を指摘する点はないが、より
客観的な基準の設定に基づいて総合評価入札の採用が望まれたことは上述のとお
りである。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
上記基準に基づく採点を踏まえた審査がなされており、簡易型プロポーザルとい
う枠組みで見た場合、特に指摘すべき問題点はない。
なお、プロポーザル審査委員として、大学より専門家を招いており、評価でき
る。
131
16
北方型住宅新展開の普及推進業務
(一)契約の概要
契約名
北方型住宅新展開の普及推進業務委託契約
担当部課
建設部建築指導課
委託先
民間企業
業務内容
新しい北方型住宅について、一般道民に分かりやすく周知し、広く普及
するため、普及啓発用ツールの制作及びイベント開催等を行う業務。
業務目的
「あったか、長持ち、ともに育む北の住まい」を新たな目標像とする「新
しい北方型住宅」について、一般道民に分かりやすく周知し広く普及を
図るため、多様なメディアの活用などによる効果的な広報・周知活動、
解説用パンフレットなどの普及啓発用ツールの制作及びイベント開催の
企画運営業務等について委託する。本事業は、多くの道民に対して、北
方型住宅の内容や「サポートシステム」などの「しくみ」について普及
啓発を図るものであり、高度な企画力や総合力・専門的な知識・技術な
ど多岐にわたる能力と経験が必要であるため、委託よる必要がある。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積算額
委託金額
(H15 から
H17
特命随契(指名型プロ
13,499,764 円
13,499,430 円
H17 まで)
ポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
指名型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、出
演者の報償費、旅費その他の経費を算出うえ、積算がなされている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
冬期間の厳しい気候条件にあった性能の住宅普及は北海道における年来の課題で
あった。北海道では、昭和 63 年から「北方型住宅」と銘打って住宅の質の向上を目
指す事業に取り組み、一定の成果をあげてきたが、平成 17 年からはワンラックアッ
プした「新しい北方型住宅」を目指す取り組みが開始され、本事業はその一環とし
て位置付けられるものである。
外部委託によったのは、多様なメディアの活用などによる効果的な広報・周知活
動、解説用パンフレットなどの普及啓発用ツールの制作及びイベント開催の企画運
営業務等については、民間のノウハウを活用することが有効であることを理由とす
る。
本件事業の効果としては、平成 17 年度では、新築住宅のうち「北方型住宅」とし
て登録された件数は 9 戸であり、登録数自体は多くはないが、平成 18 年度には 70
戸が登録され本事業による効果が徐々に浸透しているとの評価も可能である。
132
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、指名型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評価入札
による可能性については追って指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、出演者の報償費、旅
費その他の経費を算出のうえ積算がなされている。
このうち人件費については、出納局手引を根拠とするものであるが、本件では研
究員D以下のランク設定がなされ、それぞれ人工数が設定されている。この研究員
のランクの設定、必要な人工数の設定については、ヒヤリング調査での回答によれ
ば、北海道が過去に行った類似のイベント業務を参照したとのことであるが、その
判断プロセスについては、書類化されていない。他でも述べているとおり、積算に
あたって評価を要する項目については、なぜそのような評価、あてはめをしたのか
という判断プロセスを書類化することが望まれる。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件に
おけるランク、人工数の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化す
ることが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、多くの道民に対して、北方型住宅の内
容や「サポートシステム」などの「しくみ」について普及啓発を図るものであり、
高度な企画力や総合力・専門的な知識・技術など多岐にわたる能力と経験が必要で
あるため、価格の多寡による競争ではなく、
「プロポーザル方式」を採用し、効果的
な普及推進方策の内容などについて提案を求め、最も優れた提案を行った事業者と
随意契約する、とされている。
事業の性質上、単純な価格競争になじまないことは理解できるところであるが、
総合評価入札方式によることも想定し得るところ、本件では、この点は検討されて
いない。
(提案事項)
総合評価入札方式への移行可能性について検討することが望まれる。
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
本件では指名型にプロポーザル方式が採用されている。先にも述べたとおり、手
続の透明性、公平性からすると、プロポーザル方式においても公募型が原則とされ
るべきであり、指名型は公募型により難い場合に限定されるべきである。
133
ヒヤリング調査での回答によれば、本件プロポーザルを指名型とした理由として
は、初年度の事業であり、信頼性の高い業者に委託したかったことから、広告代理
店等への調査を行い、指名業者を設定したうえでのプロポーザルを実施したという
ことであった。
(提案事項)
プロポーザル方式にあっては、公募型を原則とする運用を心がけられたい。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
北方型住宅新展開の普及推進業務プロポーザル審査会設置要領、同企画提案書審
査要領が定められている。
この企画提案書審査要領では、プロポーザルの採否の決定方法として、「審査会
は、各委員から提出された審査表及び集計表をもとに、以下の基本方針に沿って、
その長所、短所等について討議し、プロポーザルの採否を決定する」としたうえで
「①最高点を付した審査委員の人数が、最も多い業者を第一順位とする。②上記①
において、最高点を付した審査委員が同人数の業者が複数あった場合は、全ての委
員の審査点の総合合計点が最も多い業者を選定する。③上記②においても同点数の
業者が複数あった場合は、委員長が決定する」と規定されている。
なお、今回確認した北海道で行われている他のプロポーザル方式では、
(生の点数
を順位点に引き直す作業は行うが)合計点数にしたがって順位を付けるものが多い
が、本採点方式では、
「最高点を付した審査委員の人数が最も多い業者を第一順位と
する」としているところに特徴がある。
なお、本プロポーザル応募要領では、提出された企画提案の公表に関する規定が
整備されている。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本件では、①業務処理体制 10 点、②業務処理スケジュール 10 点、③普及推進の
基本理念 20 点、④普及推進の具体的手法、⑤普及推進実施による効果予測 20 点、
⑥裁量点 10 点以内の合計 100 点満点とされ、さらに、①については全体的な運営体
制、総括責任者、業務担当者の業務実績、②についてはスケジュールの適正さ、業
務項目の網羅、③については「新しい北方型住宅」の基本理念への理解、整理、具
体的な理論構成が普及啓発に資するか、④については実施方法が基本的な考え方と
合致しているか、実施内容が効果的に普及につながるものとなっているか、必須事
項について効果的に不足なく盛り込まれているか、⑤については普及推進により効
果が及ぶ範囲内の考え方が適切か、効果予測の理論構成に矛盾等がないか、といっ
た点が採点のポイントとされている。
本プロポーザルにおいて、業者を選定するにあたって必要な審査ポイントが網羅
されていると考えられる。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
6 社からの企画提案を受け、全件ヒヤリングを行って採点し、これを集計した後
134
にプロポーザル審査委員会において討議のうえで選定業者を設定しており、審議の
実質が認められる。
なお、本件については、プロポーザル審査会議事録が作成され、審議内容が明確
にされており評価することができる。
135
17
北海道住情報共有化推進業務
(一)契約の概要
契約名
北海道住情報共有化推進業務委託契約
担当部課
建設部建築指導課
委託先
民間企業によるコンソーシアム
業務内容
総合的かつ信頼性のある適切な住情報を広く道民に提供するため、住情
報の分析、整理分類を行い、多くの道民にわかりやすく使いやすいホー
ムページを作成する。
業務目的
本道における住まいに関する多様なニーズに対応するため、道のほか、
住まい関わる関係団体等と連携し、住情報の共有化を図り、総合的かつ
信頼性のある適切な住情報を広く道民に提供する必要がある。そこで、
関係団体等で構成する外部委員会を設置し、多岐にわたる住情報の分析、
整理分類を行い、また、高齢者の入居を拒まない賃貸住宅情報など必要
な住情報の充実を図った上で、多くの道民にわかりやすく使いやすいホ
ームページを作成する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(H15 から
H17
特命随契(公募型プロ 3,500,700 円
H17 まで)
積算額
委託金額
3,465,000 円
ポーザル方式)
委 託 先 選 定 の 運用方針第3節(随意契約)関係1の(2)
理由
公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、
消耗品費、印刷製本費等の経費を算出のうえ、積算がなされている。
見積書の内容:金額のみ記載されている
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
本事業は、本道における住まいに関する多様なニーズに対応するためのものであ
る。
本事業を外部委託によったのは、本事業の内容が、関係団体等で構成する外部委
員会を設置し、多岐にわたる住情報の分析、整理分類を行い、また、高齢者の入居
を拒まない賃貸住宅情報など必要な住情報の充実を図った上で、多くの道民にわか
りやすく使いやすいホームページを作成するというものであり、専門技術、ノウハ
ウを有する民間への委託が有効と考えられたからである。そして、本事業の遂行に
は、住宅・建築に関する知識とホームページの作成という IT 関連技術の両方に専門
的な知識を必要とする点に特徴がある。
本事業の成果の検証としては、作成されたホームページへのアクセス件数がひと
つの指標となるが、現在月平均 1,800 件程度のアクセス件数があるとのことであり、
一定の効能は果たしていると評価できる。
136
(2)随意契約によることの妥当性
本業務においては、公募型プロポーザル方式を用いたことをもって、運用方針第
3節(随意契約)関係1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」に
該当するとして随意契約がなされている。一般論としては、プロポーザル審査を経
て随意契約を行うこと自体には特段の問題は認められない。ただし、総合評価入札
による可能性については追って指摘する。
(3)委託料積算根拠の妥当性
研究員のランクごとの単価に必要な人工数を乗じた人件費、消耗品費、印刷製本
費等の経費を算出のうえ、積算がなされている。
このうち人件費については、出納局手引を根拠とするものであるが、本件では、
「ポータルサイト作成」、「高齢者住宅情報コンテンツ作成」、
「リーフレット作成」
、
「関連資料作成」という業務ごと研究員のランクと人工数が定められ、研究員ラン
クごとの単価を乗じて人件費が積算されている。しかし、なぜそのランクとしたの
か、どうような考えから各人工数を設定したかについての判断プロセスは書面化さ
れていない。
他でも述べているとおり、積算にあたって評価を要する項目については、なぜそ
のような評価、あてはめをしたのかという判断プロセスを書類化することが望まれ
る。
また、印刷製本費については、過去の同種事業を参考にしたということであるが
具体的な積算資料は記録化されていない。
(提案事項)
委託料積算にあたって、金額算定のために評価・判断が必要な積算項目(人件費
におけるランク、人工数の設定等)については、その評価・判断プロセスを書面化
することが望まれる。
委託料積算はその項目ごとにその根拠を資料化することが望まれる。
(4)プロポーザル方式によることとした判断の妥当性
プロポーザル方式を採用する理由として、本業務は多岐にわたる関係団体等の住
情報を分析、再整理し連携体制を整え、また、必要な住情報の充実を図った上で多
くの道民にわかりやすいホームページを作成するもので、高度な企画力や総合力・
専門的な知識・技術など多岐にわたる経験と能力が必要であるため、価格の多寡に
よる競争ではなく「プロポーザル方式」を採用する、とされている。
本件事業が単純な価格競争になじまないことは理解できるところであるが、総合
評価入札方式によることも想定し得るところ、本件では、この点は検討されていな
い。
(提案事項)
今後、同種事業を行う場合は、総合評価入札方式への移行可能性を検討すること
が望まれる。
137
(5)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考の妥当性
公募型プロポーザル方式がとられており、特に問題は認められない。なお、上記
にも指摘したとおり、本事業は、住宅・建築に関する知識とホームページの作成と
いう IT 関連技術の両方に専門的な知識を必要とする点に特徴がある。そのため、本
件企画提案要請にあたっても、複数企業による連合体(コンソーシアム)も公募対
象者としている。
(6)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
北海道住情報共有化推進業務公募型プロポーザル実施要綱、同要領、同審査会設
置要領、同審査要領が定められている。公募型プロポーザルを実施するにあたっての
規定として、特に問題は認められない。
なお、本件業務プロポーザル審査要領では、プロポーザルの採否の決定方法とし
て、
「 審査会は、各委員から提出された審査票及びプロポーザル審査集計票をもとに、
次の基本方針に沿って、その長所、短所等について討議し、プロポーザルの採否を
決定する」としたうえで「①最高点を付した審査委員の人数が、最も多い業者を第
一順位とする。②上記①において、最高点を付した審査委員が同人数の業者が複数
あった場合は、全ての委員の審査点の総合計点が最も多い業者を選定する。③上記
②においても同点数の業者が複数あった場合は、委員長が決定する」と規定されて
いる。
すなわち、先に見た北方型住宅新展開の普及推進業務のプロポーザルと同様の規
定がなされている。この審査方法に関するコメントは、北方型住宅新展開の普及推
進業務で述べたとおりである。
また、本件プロポーザル実施要領では、選考された企画提案書を閲覧に供する旨
の規定があり、一定の公表規定の整備があり評価できる。
(7)プロポーザル審査基準の妥当性
本プロポーザル審査基準としては、①業務の実施体制等に関する評価 30 点、②
住宅ポータルサイトに関する基本的考え方の評価 50 点、③その他特筆すべき事項
に関する評価 20 点として、さらに、①についてはⅰ統括責任者及び実施責任者並
びに業務の実施体制に関する評価 10 点、ⅱ外部委員会の構成に関する評価 10 点、
ⅲ業務作業のスケジュールに関する評価 10 点、②についてはⅰインターネット上
における住情報提供の現状認識及びポータルサイトのあり方に関する評価 10 点、
ⅱ最適なカテゴリー分類に関する評価 10 点、ⅲ高齢者の入居を拒まない賃貸住宅
情報コンテンツに関する評価 10 点、ⅳトップページの提案に関する評価 10 点、ⅴ
サイトの管理運営に関する評価 10 点に細分化され、また、それぞれの項目の評価
ポイントが設定されている。
かかる審査基準は、本件事業にて委託先を選定するための必要十分なものと評価
できる。
ただし、相当程度、詳細な審査基準が設定されていることからすると、総合評価
138
入札の導入も検討し得たのではないかと考えられる。
(8)プロポーザル審査内容の妥当性
7 者からの企画提案を受け、全件ヒヤリングを行って採点し、これを集計した後
にプロポーザル審査委員会において討議のうえで選定業者を設定しており、審議の
実質が認められる。
なお、本件については、プロポーザル審査会議事録が作成され、審議内容が明確
にされており評価することができる。
また、本件プロポーザル審査会の審査委員として、外部委員((財)北海道建築
指導センター職員)が外部委員として参加しており、外部委員を審査委員としてい
ることについては評価できる。
139
三
小
括
以上、個別契約の監査を踏まえて、本章に関する小括を行う。
1
「代替性」の有無の判断について
本章総論にて述べたとおり、運用方針第3節(随意契約)関係の1の(2)
「契約の目
的物が代替性のないものであるとき」に該当することを根拠として随意契約を行うため
には、事業遂行可能な業者が特定されたケースでなければならない。その判断プロセス
としては、まず事業目的に沿って事業者選定の要件が設定され、そのうえで、当該要件
該当性の判断がなされ、その判断の結果、当該事業を行い得るものが1者しかいない、
という経過を辿る。
そこで、まず事業者選定の要件が正しく設定されているかどうかが問題となるが、本
監査の結果、
要件設定自体に明らかな問題があるケースは見受けられなかった。しかし、
継続事業にあっては、一旦設定された要件が常に正当であり続けるものではなく、事業
の必要からする事業規模の設定の仕方、技術進展等の社会基盤の変化その他の要因によ
って、事業者選定の要件を変更すべき場合もあり得る。かかる観点から、当該事業者選
定要件が適正であるか否かについては、年度ごと具体的に検証される必要がある。
次に、事業者選定要件該当性の判断についてであるが、本監査の結果、その判断評価
に疑問のあるケースが見受けられた。また、仮に判断自体は正しいにせよ、その評価、
判断プロセスについては、書面化するなどの方法で明確にしておく必要が認められると
ころ、この点、そのプロセスが書面上必ずしも明確でない契約が少なからず存在した。
また、北海道の行う契約は単年度契約が原則であり、
「代替性」の有無の判断について
は、年度ごとに個別、具体的に検証されなければならない。そして、
「代替性」の有無に
疑義が持たれるものについては、原則にしたがって競争入札に付されなくてはならない。
以上、
「代替性」の有無の判断に関しては、①年度ごとに事業目的に沿った事業者選定
要件となっているかどうかの検証がなされるべきである、②要件該当性の判断は年度ご
とに個別、具体的に検証されなければならない、③要件該当性を判断するためにいかな
る調査を行い、その調査結果いかなる理由に基づいて「代替性」なしと判断したのかと
いったプロセスについては、書面化のうえ明確にされる必要がある、④その判断に疑義
が持たれる場合は競争入札に付されなければならない。
2
契約金額の積算について
随意契約にあっては、北海道が契約金額の積算を行ったうえで予定価格調書を作成し、
当該事業者から提出された見積書の金額が、予定価格の範囲内であれば、その見積金額
に基づいて契約締結の運びとなる。そして、実際上、予定価格と見積金額が極めて近似
しているケースが多い。
競争入札では、価格競争によって契約金額の経済的合理性が担保される仕組みとなっ
ているが、随意契約では、競争の契機が存在しないため、契約金額の経済性、合理性を
保つためには、予定価格の基礎となる積算こそが重要である。
したがって、契約金額の積算にあっては、まずその積算基準が適正かつ明確であるこ
とが大前提であり、その基準への具体的適用についても、適正かつ合理的な判断がなさ
140
れなくてはならない。そして、適用の判断プロセスについて明確にすべく、書面化する
ことが望ましい。
また、継続している業務にあっては、蓄積された実績を踏まえて年度ごとに、より合
理的、経済的な積算をすることができないかを検証するという観点も重要と考える。そ
のためには、委託先がどのような積算を行っているか、事業完了後実際の作業内容と道
が行った積算とが整合しているか、等についての検証が意味を持つはずである。しかし、
実際は、委託先から提出される見積書には金額のみが記載され詳細内訳のないケースが
大半であり、また事業完了後の実績に基づく精算内訳書等の書類が提出されているケー
スもほとんど見受けられず(ただし、第4章にて論ずる概算払契約は除く)、上記の観点
からの検証はあまりなされていないと評価せざるを得ない。
以上、契約金額の積算に関しては、①適正かつ合理的な基準に基づく必要がある、②
基準への適用、特に、その適用にあたって評価が必要とされる事項については、その評
価、判断プロセスを書面化することが望まれる、③継続事業にあっては、委託先から見
積書の詳細内訳を徴取する、事業完了後精算内訳書を徴取するなどして、道の積算の適
正を検証し、できるだけ合理的、経済的な積算を行うべく、年度ごとに努力することが
望まれる。
3
プロポーザル方式の採否について
本章総論にて述べたとおり、北海道が行う事業の中には、単なる価格競争ではなく、
民間等のアイデア、ノウハウ等を活用して、事業内容についての企画を提案させて、よ
りよい事業の構築を図るべきものも存在する。その意味でプロポーザル方式に一定の積
極的な意味を見出すことができる。
しかし、もとより随意契約は例外であり、他方、企画要素を取り入れるのであれば、
総合評価入札方式という手法を用いることができるのであるから、企画競争が必要な事
業であっても、可能な限り総合評価入札方式によるべきである。
なお、プロポーザル方式の採否に関する個別の問題点として、特例政令の適用を受け
る契約について、プロポーザル方式を用いることができるかについても慎重な検討を要
する。
そもそも、法令の適用順序としては、特例政令に該当する契約については、施行令及
びこれに基づく財務規則、運用方針よりも特例政令が優先する。したがって、この場合、
特例政令に定められた要件を充足しなければ、
随意契約によることはできない。そして、
特例政令に定める随意契約をなし得る要件は、極めて限定的であり、特例政令第 10 条第
1 項第 1 号では、
「他の物品若しくは特定役務をもって代替させることができない芸術そ
の他これに類するもの又は特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等若し
くは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されているとき」とい
う要件が定められている。かかる要件との関係で、
「企画競争の結果『代替性』がないこ
ととなる」という判断経過を辿るプロポーザル方式を用いることが可能かどうか、とい
う問題が生じ得る。
この点、特例政令の適用を受ける契約であるという一事をもって、プロポーザル方式
の採用が否定されるとまでは考えられないが、特例政令による以上、例えば、同政令第
141
10 条第 1 項第 1 号との関係で言えば、
「芸術品」
「特許権等の排他的権利」
「特殊な技術」
に関連するような限定された業務でなくてはならない。
運用方針第3節(随意契約)関係の1の(2)
「契約の目的物が代替性のないものであ
るとき」との関係では、一般論としては、プロポーザル審査を経ることによって、
「代替
性なし」と判断することの正当性は維持されるが、上記の理由から、特例政令の適用を
受ける契約については同様の考えを取ることはできない。
以上、プロポーザル方式の採否に関しては、①現在プロポーザル方式にて実施してい
る事業についても、可能な限り総合評価入札方式に移行すべきである。また、②特例政
令の適用を受ける契約については、
「プロポーザル方式を経れば随意契約できる」という
理解は正しくなく、同政令に定める要件該当性を検討しなければならない。
4
提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考について
本章総論にて述べたとおり、企画提案させるものの選考方式としては、公募型と指名
型が存在する。この点、プロポーザル方式を行うにあたっては、手続の透明性、公平性
の観点から、公募型が原則とされるべきである。また、広く公募を行うことによって、
よりよい企画提案がなされる可能性も広がると考えることもできる。
本監査結果によれば、公募型を用いているケースが多く、概ね「公募が原則」という
考え方が浸透しているように見受けられるものの、各個別契約にて見たとおり、あえて
指名型を選択する格別の理由なく指名型によっているケースも散見された。
以上、提案を求める者の選考に関しては、公募型を原則とする運用を心掛けるべきで
ある。
5
プロポーザル審査に関する手続規定について
各個別契約に関して見てきたとおり、本監査の対象とした契約については、概ねプロ
ポーザル審査に必要な規定は整備されていたと考えることができる。ただし、各個別契
約において指摘したとおり、選考された企画に関する公表の規定を欠いているケースも
散見された。プロポーザル方式を用いるにあたっては、同方式採用の決定、提案を求め
る者の選考、審査手続及び審査基準の設定、審査の実施及び選考経過といった一連の過
程を通じて、公正かつ透明な手続が担保されなくてはならない。その意味でも、選考さ
れた企画についての公表の意義は大きい。
以上、プロポーザル審査に関する手続規定に関しては、選考された企画に関する公表
の規定を整備する必要があると考える。
6
プロポーザル審査基準について
プロポーザル方式が適正かつ公正なものであるためには、プロポーザル審査基準が明
確かつ適切なものであることが大前提であり、プロポーザル審査基準が不適切なもので
あった場合、最も優れた企画を選定するというプロポーザル方式の趣旨を没却すること
となる。
本監査の結果、審査基準自体が明らかに不適切なものは見受けられなかったが、基準
が抽象的なものに留まっていると思われるものも存在した。
142
また、
継続している事業を毎年プロポーザル方式にて行っているケース等においては、
漫然と前年の基準を踏襲するのではなく、蓄積された実績に基づいて、事業目的に沿っ
たより適切、明確、公正な基準を毎年吟味していく必要性がある。そして、その検証に
よって、審査基準の精度を高めることが、ひいては総合評価入札方式への移行につなが
ることになろう。
さらに、固有の問題として、
「プロポーザル方式に価格競争要素を取り入れること」に
ついても、積極的な検討が必要であると考える。確かに、プロポーザル審査は、
「企画競
争」をさせて、より優れた事業を構築するためのものであり、これまでそこに「価格競
争」を導入するという発想は、一部の例外的ケースを除いて存在しなかったものと思わ
れる。しかし、地方公共団体が行う契約にあっては、経済的合理性が追及されなければ
ならず、一般論としても、例えば甲乙付け難い企画があった場合に価格要素を全く考慮
しないことには疑問が残る。特に、プロポーザル審査において、企画提案を求めるとき
は、当該事業の予算額を提示して、その予算額の範囲内での企画提案をして欲しい旨を
要請する。とすると、企画提案者は、上限額が示されているのであるから、この上限額
の範囲内でよりよい企画を考えることになり、その企画内容の見積額は、いきおい予算
額と近接した額になる傾向は否定できない。すなわち、価格競争要素を取り入れていな
い現行のプロポーザル方式は、実質的には、ほとんど予算額をそのまま支出することを
前提としていることとなる。もちろん、契約金額の積算に関して述べたとおり、一方で
は、この予算額自体の積算が適正なものであることは極めて重要である。しかし、積算
の適正に努めることが大前提であるとしても、他方では、プロポーザル審査に価格要素
を取り入れることができれば、競争原理のもと、積算の適正化とは別の観点からの経済
的合理性を確保することにつながる。
実際に、個別契約の監査にて述べたとおり、平成 18 年度の広報誌「ほっかいどう」制
作業務においては、価格競争要素をプロポーザル方式に導入しており、価格面をプロポ
ーザル審査基準に加えて点数を割り振っている。同事業には、他に指摘すべき点もある
が、価格競争要素をプロポーザル方式に取り入れている点では、新たな試みとして大い
に評価できるところである。
なお、企画と価格の両面から競争を行うというのは、まさに総合評価入札方式の発想
である。
したがって、上記議論の前提として、総合評価入札方式によることができるのであれ
ば、これによるべきであることは言うまでもないが、プロポーザル方式による場合であ
っても価格競争要素を取り入れることを積極的に検討する必要がある。
以上、プロポーザル審査基準に関しては、①適正な審査基準の設定がプロポーザル審
査の妥当性を決する重要な要素であることを再認識し、特に、継続事業にあっては、蓄
積された実績を踏まえて、よりよい審査基準を吟味し、さらには、適正かつ客観的な基
準の設定に基づいて総合評価入札方式への移行を検討する必要がある。また、②プロポ
ーザル方式においても価格競争要素を導入してこの点を審査基準に加えることについて
積極的な検討が望まれる。
143
7
プロポーザル審査内容について
これまで述べてきた諸点が充足されたとしても、肝心のプロポーザル審査自体が、そ
の趣旨に沿って適正に行われなければ、プロポーザル方式の意義は失われる。その意味
で、プロポーザル審査内容が、適正かつ十分なものでなければならないことは言うまで
もない。個別契約に関して論じたとおり、北海道が行っているプロポーザル審査は、点
数のみで選定業者を決定する方式と、点数評価を踏まえた実質討議を踏まえて選定業者
を決定する方式とが存在するが、多くは後者の方式によっている。
確かに、判断の客観性という観点からは、点数のみでの決定方法そのものを否定する
ことはできない。しかし、優れた企画を選定するというプロポーザル方式の本来の趣旨
からすれば、単なる点数評価だけではなく、点数評価を踏まえて実質的な討議を行うこ
とを原則と考えるべきである。見方を変えれば、点数評価のみで足りるほど、基準が客
観化され、その判断に討議を差し挟む余地がないのであれば、総合評価入札方式が用い
られるべき類型であるとも言うことができる。
しかし、その実質討議が恣意に流れることがあってはならないのは当然であり、この
点を後日検証できるようにするためにも、討議内容については議事録を作成して明確化
しておくことが必要である。
また、プロポーザル審査会を構成する審査委員の選定も審査の実質を充実させるため
の大前提である。その意味では、審査委員として、北海道職員以外の外部委員を参加さ
せることには意義が認められる。個別契約の監査でも見たとおり、外部委員を参加させ
ているケースも存在するが、その比率は大きなものではない。また、どういったケース
に外部委員を参加させるかについての明確な基準も存在しない。確かに、外部委員を必
要とするか否かは、事業の性質にも関わる問題であるため、個別具体的な判断を要する
面があることから、一律の基準を設けることは容易ではなかろうが、少なくとも、一定
金額以上の契約については外部委員の参加を要する旨の定めは可能であると考えられる。
以上、プロポーザル審査内容に関しては、①プロポーザル審査会における討議内容に
ついては議事録を作成すべきであること、②一定金額以上の契約については外部委員を
参加させるなどの基準を策定すべきであること、を提言する。
8
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」という規定法について
以上が実質的側面についての小括であるが、運用方針第3節(随意契約)関係の1の
(2)に定める「契約の目的物が代替性のないものであるとき」という規定の仕方自体
も検討を要するものと考える。すなわち、
「目的物」とは、一般的な用語としては、動産、
不動産等の有体物を意味すると考えるのが素直な解釈である。そして、例外である随意
契約をなし得る場合を規定する以上、その文言は可能な限り一義的に解釈できるものに
すべきである。仮に、
「物」を有体物に限るとするならば、本条項を根拠に随意契約をな
し得る場合は、特殊の「物品」を調達するために相手方が特定されるようなケースが典
型となり、
「役務」を調達するケースが含まれないこととなってしまう。役務の調達が随
意契約によってなされるべきケースは多数存在し、もちろんこれを否定することはでき
ないが、そうであるならば、文言の解釈上、このような疑義を持たれないように改正す
ることが望まれる。
144
なお、国においては、会計法第 29 条の 3 第 4 項において、随意契約ができる場合のひ
とつとして「契約の性質又は目的が競争を許さない場合」が規定されているが、この解
釈として「旧大蔵省関係者等は…専売品の買入のほか、①契約の目的物件が特定の者で
なければ納入することができないものであるとき、②特殊の物品または特別の目的があ
るため買入先が特定され、または特殊の技術を要するとき、③契約の目的物が代替性の
ない特定の位置、構造または性質のものあるとき、④競争に付するときには、国におい
て特に必要とする物件を得ることができないとき、などがこれに該当するものとしてき
た」(碓井光明著「公共契約法講義」P201)。北海道における本規定は、上記のうち③の
みを参考にして制定されたとも考えられ、そのため本来規定すべき「役務」に関するも
のが、少なくとも文言表現上は抜け落ちてしまったのではないかとも思料される。
ちなみに、他府県においては、
「・当該地域に、業務の履行が可能な業者が1者に限定される場合
・特殊な設備、機器等の操作を要する業務であるため、業務の履行が可能な者が特
定される業務である場合
・アイデア、企画、デザイン等を必要とし、価格競争では成果を期待しにくい業務
である場合」
(宮城県
ガイドライン)
「・特定の設備、特殊な技術若しくは技能を有する者または設備・機器等の特殊性か
ら製造・設置した業者と契約しなければ、契約の目的を達することができないと
き
・アイデア、企画、デザイン等を必要とし、価格競争では成果を期待しにくい業務
であるため、技術提案型契約方式により契約するとき
・既存の情報処理システム等と密接不可分な関係にあるシステム(同一管理システ
ム)を構築する場合において、既存のシステム等の使用に著しく支障が生じるお
それがあるため、既存のシステム設計業者と契約するとき」
(岡山県
ガイドライ
ン)
といった規定が定められている例があり、参考になるものと考える。
以上、
「契約の目的物が代替性のないものであるとき」という規定について、解釈に疑
義が生じないように改正すべく検討する必要があることを提言する。
145
第3章
一
1
情報関連業務委託契約における随意契約についての監査結果
総論
北海道における情報関連業務委託契約の状況
(一)はじめに
これまでの行政情報化の取り組みや昨今の国による電子政府の構築計画に呼応し、
地方公共団体でも行政サービスへの IT(情報通信技術)の活用とこれにあわせた業
務や制度の見直しが要請され、北海道においても様々な情報システムが構築され、
運用されている。
情報通信技術の専門性から道の直接事業とすることは困難であるため、情報シス
テムの開発からその後の運用保守まで外部の民間会社等との間で業務委託契約が締
結されている。
第1章においても述べたが、情報関連業務委託契約は非常に高額な契約が多く、
さらに、基本設計からその後の運用保守まで同一の会社が契約の相手方となって何
年も継続していることも多い。また、他の随意契約と異なり、随意契約を認める根
拠規定として特例政令が適用されている契約が非常に多いというのが特徴的であっ
た。
まずは、北海道における情報関連業務委託契約を分析し、その概要を明らかにす
る。
なお、出納局調査による基礎資料において情報処理関連業務が分類されていたが、
その「情報処理関連業務」とは、電算システムの設計、プログラム作成、管理運用
業務、データ入力業務、入力データ変換業務、ホームページ作成業務など、道が行
う電算事務に伴う委託業務をいうとされており、その観点から監査人側で再度分析
し、また、各契約担当課からヒヤリングを行った結果、情報処理関連業務と推測さ
れるものを情報関連業務委託契約に含め、他方、明らかにこれにあたらないと思わ
れる契約を除外して、分析を行った。さらに、調査に要する時間的な関係から支庁
や道の出先機関などを除き、本庁の8部1局に限定して分析を行った。
(二)情報関連業務委託契約の概要分析
(1)入札による契約割合が低く、随意契約による契約割合が非常に高い。
情報関連業務委託契約を分析すると、その特徴として、情報関連以外の委託契
約に比べ、入札による割合が低く、随意契約による割合が非常に高いということ
である。その比較が後記の数字及びグラフである。
情報関連の契約は、金額にして約 98%が随意契約の方法によって行われており、
原則であるべき入札と例外であるべき随意契約が逆転していると言っても過言で
はない状況にあった。
また、情報関連業務委託契約では、わずか 90 件の随意契約で 44 億円の契約額
に至っており、最高契約額は 8 億 8,000 万円、平均契約額 4,928 万円という高額
な契約状況であった。
同じく情報関連の契約でも入札の場合、11 件で 9,231 万円、
146
最高契約額は 5,775 万円で、その他は 1,000 万円未満で、平均契約額は 839 万円
である。情報関連業務委託契約の高額契約は、ほとんどすべてが随意契約という
状況にあった。
【情報関連業務委託契約における入札と随意契約の比較(本庁8部1局)
】
件数
契約金額
101 件
11 件
90 件
10.89%
89.11%
情報関連契約
入札
随意契約
入札
随意契約
4,527,784,197 円
92,315,640 円
4,435,468,557 円
2.04%
97.96%
情報関連業務委託契約における入札と随意契約の件数割合
同契約における入札と随意契約の金額割合
入札
10.89%
入札2.04%
随意契約
97.96%
随意契約
89.11%
..
【情報関連業務委託契約以外 の契約における入札と随意契約の比較(本庁8部1局)】
件数
情報関連以外の契約
入札
随意契約
入札
随意契約
契約金額
508 件
179 件
329 件
35.24%
64.76%
5,643,176,714 円
1,180,348,921 円
4,462,827,793 円
20.92%
79.08%
情報関連以外の契約における入札と随意契約の件数割合
同契約における入札と随意契約の金額割合
随意契約
64.76%
随意契約
79.08
%
入札
35.24%
入札20.92
%
(2)基本システム開発業者が、その後の運用保守を随意契約により継続して行って
いる。
情報関連業務委託契約において、基本システムを開発した相手方との間でその
147
後の保守運用契約が随意契約により継続しているという状況があった。これにつ
いては、記録の保存の関係ですべて調査できなかったが、後記「二
個別契約」
の契約概要において示したとおり予定価格が 3,200 万円以上である 20 件の個別契
約のうち、基本システム開発業務委託契約を除く 17 件はすべて高額の委託契約が
何年も継続されていた(分社化などによる承継、
一部システム改修委託を含む。
)。
(3)
特例政令第 10 条第 1 項第 1 号、第 2 号を根拠とする随意契約割合が非常に高い。
情報関連以外の委託契約において、特例政令を根拠に随意契約を行っている契
約は 1 件しかなく、その余 507 件は施行令による随意契約であった。
ところが、情報関連業務委託契約においては以下の数字及びグラフのとおりで
あり、件数はわずか 13 件であるが、その契約額は 28 億円を超えており、契約額
の 63%を超え、非常に大きな割合を示していた。契約 1 件あたりの平均契約額も
2 億 1,593 万円と極めて高額な契約であり、施行令による随意契約の場合の 1 件
あたりの平均契約額 2,114 万円を大きく上回っていた。
【情報関連業務委託契約における随意契約の根拠規定の比較(本庁8部1局)】
根拠規定
情報関連契約(随意契約)
地方自治法施行令第167条の2
特例政令第10条第1項第1号、第2
号
地方自治法施行令第167条の2
特例政令第10条第1項第1号、第2
号
件数
契約金額
90 件
4,435,468,557 円
77 件
1,628,289,629 円
85.56%
36.71%
14.44%
63.29%
情報関連業務委託契約における随意契約の根拠規
定件数割合
特例政令
14.44%
2,807,178,928
13 件
円
同契約における随意契約の根拠規定の
金額割合
地方自治
法施行令
85.56%
特例政令
63.29%
地方自治
法施行令
36.71%
2
情報関連業務委託契約における随意契約根拠規定
前記1で述べたように、情報関連業務委託契約の多くが特例政令を根拠に随意契約
の方式がとられていることから、前提として法とその施行令、特例政令の関係やその
148
適用要件を理解しておく必要がある。ただし、本章で問題にする情報関連業務委託契
約の随意契約に必要な範囲内の説明に留める。
(一)法第 234 条第 2 項の委任
法第 234 条第 2 項は、同条第 1 項において、「売買、
・・・その他の契約は、一般
競争入札、・・・随意契約・・・の方法により締結するものとする。」としている規
定を受け、
「前項の・・・随意契約・・・は、政令で定める場合に該当するときに限
り、これによることができる。
」と規定している。
これにより、地方公共団体が随意契約をする場合は、法の委任を受けた政令の規
定がある場合に限って認められることになっている。
そして、随意契約ができる場合を定める政令は、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 1
号から第 9 号及び特例政令第 10 条第 1 項第 1 号から第 6 号である。
(二)施行令と特例政令の関係
上記二つの政令の相互の関係であるが、既に冒頭のイラスト図(10 ページ)でも
示したように、特例政令第 1 条は「この政令は、
・・・地方自治法施行令の特例を設
けるとともに必要な事項を定めるものとする。」としており、特例政令は、施行令に
優先する規定とされている。
そして、特例政令第 10 条第 1 項本文は「特定調達契約については、地方自治法施
行令第 167 条の 2 第 1 項第 5 号、第 8 号又は第 9 号の規定によるほか、次に掲げる
場合に該当するときに限り、
・・随意契約によることができる。」しており、特例政
令第 10 条第 1 項の例外要件に該当する場合に限り、随意契約が可能であり、これに
該当しない場合は随意契約をすることができず、入札によることになる。この場合、
下位規範である施行令第 1 号から第 4 号、第 6 号、第 7 号を根拠に随意契約をする
ことは認められない。
特例政令は、マラケシュにおける政府調達に関する協定を実施するための規定で
あり、一定額以上の特定調達契約に関しては、随意契約を認める例外要件をさらに
厳格に制限した特例政令の趣旨からすると当然のことである。
したがって、随意契約をしようとする場合は、特例政令の適用があるかを検討し、
適用される場合、特例政令による随意契約の可否を検討し、適用がない場合は施行
令による随意契約の可否を検討することになる。
(これまでの法と各政令の関係については後記フローチャートを参照されたい。)
(三)特例政令の適用される契約
以下のすべての要件に該当する契約は、特例政令の適用を受ける契約である。
①特定地方公共団体の締結する調達契約であること・・・都道府県等が物品等また
は特定役務の調達をするために締結する契約が該当する。
②特定調達契約に該当すること・・・本章で検討する「特定役務」の調達としては、
協定の附属書Ⅰ日本国の付表 4 に掲げるサービスに係る役務をいう(特例政令第
2 条)。その付表 4 に掲げられているサービスとしては、
「電子メール」
「情報及び
149
データベースのオンラインでの検索」
「電子データ交換」「情報及びデータのオン
ラインでの処理」
「電子計算機サービス及び関連のサービス」などが掲げられてい
る。
③予定価格が総務大臣の定める金額以上であること・・・金額は以下の表のとおり
である。
区
分
物品等の調達契約
額
32,000,000円
特定役務のうち建設工事の調達契約
特定役務のうち建設のためのサービス、エンジニアリ
ング・サービスその他の技術的サービスの調達契約
特定役務のうち右記以外の調達契約
2,430,000,000円
240,000,000円
32,000,000円
④特例政令第 3 条第 1 号から第 5 号に該当しないこと。
(四)特例政令による随意契約=特例政令第 10 条第 1 項第 1 号、第 2 号など
前記(四)の要件すべてに該当すると、特例政令の適用される契約となり、特例
政令第 10 条第 1 項各号の例外要件をクリアーしない限り、随意契約をすることがで
きない。本章の情報関連業務委託契約においては、特に第 1 号及び第 2 号の要件の
検討が問題になる。
(1)第 1 号は「他の物品等若しくは特定役務をもって代替させることができない芸
術品その他これに類するもの又は特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係
る物品等もしくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定
されているとき」と規定する。
本章で問題になるのは「特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品
等もしくは特定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されて
いるとき」に該当するかである。
この規定の解釈としては、関連文献では以下のとおり解説されている。
「特殊な技術に係る物品等もしくは特定役務」については、特別な技術者でな
ければ製造することができない製作品及び精密機械を買い入れる場合及び排他的
権利として法的保護を与えられるに至っていないものの高度あるいは特異で、か
つ、保有者が特定される技術を用いた調達が不可欠な場合等が考えられる。
また、
「当該調達の相手方が特定されているとき」とは、契約の相手方となるべ
き者が特定されている必要があり、物品を買い入れる場合にあってはその物品の
製造者が特定の一個人または一法人であってもこれを販売する者が複数ある場合
には該当しない。
(自治体契約研究会編著「詳解地方公共団体の契約」383 頁(ぎ
ょうせい、平成 15 年)
、小笠原春夫ほか編著「最新地方自治法講座 8 財務(2)」
173 頁(ぎょうせい、平成 17 年再版))
(2)第 2 号は「既に調達した物品等(以下この号において「既調達物品等」という。)
又は既に契約を締結した特定役務(以下この号において「既契約特定役務」とい
う。)につき、交換部品その他既調達物品等に連接して使用する物品等の調達をす
150
る場合又は既契約特定役務に連接して提供を受ける同種の特定役務の調達をする
場合であって、既調達物品等又は既契約特定役務の調達の相手方以外の者から調
達をしたならば既調達物品等の使用又は既契約特定役務の便益を享受することに
著しい支障が生ずるおそれがあるとき」と規定する。
この規定の解釈についても、関連文献では以下のとおり解説されている。
「既存のサービス」については、履行が既に完了したサービスは含まず、履行
が未だ完了していない提供継続中のサービスだけが該当すると限定的に解釈
するのが妥当と考えられる。既に調達している製品または設備の部品または附
属機器類等を先に供給を受けた者以外の者から調達する場合には調達経費が
多額になることも考えられ、このような場合には当該既契約特定役務の調達の
相手方から同種の特定役務を随意契約により調達できる。また、既契約特定役
務に連接して提供を受ける同種の特定役務の調達をする場合においては、当該
既契約特定役務の調達の相手方から同種の特定役務を随意契約により調達で
きる(前掲「詳解地方公共団体の契約」384 頁、同「最新地方自治法講座 8 財務
(2)」173 頁)。
(3)さらに、特例政令に関しては、平成 7 年 11 月 1 日付けで自治省行政局行政課長
から各都道府県総務部長宛に特例政令に関する運用上の注意事項が通知されてお
り(自治行第 84 号)
、本章に関するものを抜粋したものが下記のとおりである。
①規定の整備に遺漏のないよう格別の配慮をされたい。
②特例政令の適用対象となる特定調達契約は、その予定価格が適用基準額以上の
ものである。
③特定調達契約については、随意契約により契約を締結しようとする場合におい
ても内外無差別の原則に沿って、契約の相手方の適正な選定を行われたい。
④特例政令第 10 条第 1 項の規定により随意契約によることができる場合について
は、慎重に判断し、適正な運用を期されたい。
(4)以上のとおり、特例政令の適用になる特定調達契約に関しては厳格な要件に該
当する場合に限って随意契約を認めており、例外的であるべき随意契約をさらに
特例政令で限定的なものにしたと解すべきである。
この点、関連文献においても、随意契約の許容性については、政府間協定との
整合性を図るために、制度そのものが制限的であるほか、特例政令の規定も限定
して解釈すべきであるとされていると述べられている(碓井光明著「公共契約法
精義」255 頁(信山社、平成 17 年)において牧野治郎編「新・政府調達制度の手
引」95 頁(大蔵財務協会、平成 9 年)を引用)
。
(五)施行令による随意契約=施行令第 167 条の 2 第 1 項各号
特例政令の適用にならない契約については、施行令による随意契約の可否を検討
することになり、施行令の詳細については第 1 章で述べたとおりである。
151
...........
地方自治法 234 条第 2 項「前項の・随意契約・は、政令で定める場合に限りこれによることができる。
特例政令第 10 条第 1 項の定め
特例政令第 1 条において地方自治法施行令
による随意契約の検討
の 特 例と 定め て いる ので 優先 して 検 討す
る。
特定地方公共団体の締結す
る調達契約か
No
yes
特
特 例 政令 の検 討
例
後に行うこと
特定 調達契約に該 当するか=
政
協定 の附属書Ⅰ日 本国の付表
令
4 に 掲げるサービ スに係る役
の
No
務かなど
yes
No
適
地 方 自治 法施 行令
用
第 167 条の 2 第 1
さ
項第 1 号∼第 9 号
れ
による随意契約
な
い
予定価格は総務大臣の
契
約
定める額以上か
No
yes
政令を具体化
道 財 務規 則運 用方
針第 3 節関係で運
用
第 3 条 1 号∼5 号の適用
除外に該当しないか
yes
要件に該当す
No
特例政令が適用される契約
yes
No
特例政令第 10 条第 1 項の
るか
要件をクリアーするか
yes
特例政令第 10 条第 1 項第●号による随
意契約
152
随意契約不可
財務規則に よ
=入札
る随意契約
3
個別契約の監査の視点
前記1、2で述べた、北海道における情報関連業務委託契約状況とそれに適用され
ている特例政令等の根拠規定を前提に、以下、各論において道の情報関連業務委託契
約を個別に検討していくことにする。なお、各論で検討する個別契約は、平成 17 年
度の委託契約の中から情報関連と思われる契約で予定価格が 3,200 万円以上のもの
に限定した(後記一覧表記載のとおり)。
時間の関係で限定する必要があり、他方、そのように限定しても特例政令が適用さ
れる金額以上の契約を分析すればその他の契約も含めた全体の問題点をピックアップ
できると判断したからである。
(一)個別契約を監査する際の視点
(1)委託の必要性・有効性・経済性・効率性
情報処理システムは、道民の行政へのアクセスを容易にし、また、道庁内の行
政事務処理の円滑化・効率化ももたらすものであり、その専門性から開発業務や
運用保守業務を外部委託する必要性が認められる。それとともに、住民福祉実現
のための有効性も一般的には認め得るところである。
ただ、その一方で情報関連の契約は、前記1で述べたように非常に高額な契約
ばかりであり、道の財政負担も膨大なものになっている。道庁内におけるパソコ
ン整備状況の進展やIT技術の目覚しい進歩により個々のパソコンによる情報処
理能力が極めてアップしている状況下において、委託の必要性にも変化が生じて
いないかを検討すべきと考え、視点とした。
さらに、委託する必要性があったとしても、経済性・効率性の観点からは最小
限のコストにより最大限の利益を得る必要があるが、専門性ゆえに委託先に任せ
切りになり、経済性を疎かにしてはいないか、システムの心臓部を委託先に掌握
されてしまい、経済的とはいえないシステムでありながら、変更できずに高額な
委託費の支出を余儀なくされていないか、そのような点が非常に気になったこと
から、個別の契約を監査する際の着目点とした。
(2)随意契約によることの妥当性
特命随契の契約方法が、政令の規定に従い、入札の例外として厳格に要件該当
性の判断がなされ、その裏付も整っているような場合であれば何ら妥当性に問題
は無いと考える。
しかしながら、本章1の(二)で分析したように情報関連業務委託契約におい
ては随意契約による場合が約 98%に達し、入札はごくわずかという状況であり、
しかもその委託契約総額は 44 億円を超えるものになっている状況は、例外である
べき随意契約があまりに広範に利用され過ぎてはいないかという疑問が生じたこ
とから特に着目することとした。
例外であるべき随意契約が広範に適用される要因として、随意契約の根拠規定
の運用の仕方に問題はないか、特に情報関連の契約において特例政令に基づく随
意契約が多数あることは既に述べたが、それらの例外要件の解釈の仕方に問題が
153
ないか、それらに問題があって手続的に簡易な随意契約が多く利用されていない
か、という点も監査の視点とした。
また、入札の場合には、競争原理の中で相手方が決定され、手続きが適正であ
れば相手方選定過程の公平性・透明性は一定程度担保されるものと考える。とこ
ろが、特命随契の場合、最初から契約の相手方が 1 社に限定され、その選定過程
には道内部のチェックしか働かず、公平性・透明性を担保するものが制度的に乏
しい状況である。
したがって、恣意的な運用によらず特命随契の方法を選択しているか、その選
考理由の妥当性を裏付けるだけの客観的な調査、あるいは、資料が存在するのか
も非常に気になったところであることから、個別契約を監査する際の着目点とし
た。
(3)委託料の算定根拠の妥当性
入札の場合、原則として予定価格内の最低入札価格により委託契約が締結され
るが(最低制限価格制度などの例外はある。)、競争原理が働いているため、落
札金額が当該業務を行うための委託金額として妥当性を有するものとなる。そし
て、入札手続が厳格に定められているため(財務規則 143 条以下など)、それが
適正に履行される限り、公平性・透明性も一定程度担保されるものと考える。
他方、特命随契の場合、委託先は既に特定されており、委託金額について競争
原理が働かないため、見積額をもって直ちに妥当性 のある価格と判断する ことは
できない。
そして、特命随契の場合、委託先が 1 社であることからそもそも公平性は問題
にならず、また、見積額が予定価格の範囲内であれば契約するとのシステムにな
っており、委託金額の決定過程の透明性も入札の場合に比して劣るものである。
このような入札手続と随意契約の違いにもかかわらず、情報関連業務委託契約
においては、随意契約の方法による高額な契約がいくつも締結されていることは
既に述べたとおりであり、大きな財政負担をしていることから、道の側で適正な
積算が行われているのか非常に気になるところであった。
特命随契の場合、予定価格の範囲内の見積額であればそれが直ちに委託金額に
なるため、予定価格の根拠となる積算方法に妥当性があるかが非常に重要となっ
てくる(入札のように競争原理の中で妥当な価格が決定されない以上当然であろ
う。)。もしも、積算が契約の相手方の誘導により決定されたとすれば、そこには
利益を追求しようとする相手方の意向が当然含まれてくるところであり、積算の
妥当性・透明性が失われてくるだけではなく、相手方の予定する積算を根拠に予
定価格が設定され、それと同額またはわずかに下回る見積額で契約が成立するこ
とになり、委託金額の高止まりを招いてしまうことになってくるため、そのよう
な状況が無いか監査する必要性を感じた。
特に、情報関連の契約においては、委託契約の内容が専門的であるために、委
託先に依拠しがちではないかとの疑念もあり、道の積算がそのような状況に陥っ
ていないか、どのような積算根拠に基づいているのか、その根拠について裏付が
154
あるのか、委託先に依拠せずに独自の積算ができるようにする方法を講じている
かなどを調査する必要性を強く感じた。
以上の点から、委託料の算定根拠の妥当性を個別契約監査の際の視点とした。
(二)監査する個別契約一覧
以上の視点から下記の契約を「二
番
個別契約」において論ずる。
委託業務名
担当部課
震度情報ネットワークシステム改修業
総務部危機対策室防災消
務委託
防課
委託金額(単位:円)
号
1
2
3
総務部危機対策室防災消
防災対策支援システム開発業務委託
防課
総合文書管理システム運用・保守管理
業務
4
自動車税分配情報作成業務
5
道税総合情報処理システム電算処理業
務のうちオンライン業務・センタ処理業務
50,394,424
40,950,000
総務部法制文書課
67,977,000
総務部税務課
31,761,923
総務部税務課
650,273,925
入 力媒体作 成: ANK1字
0.39 円、漢字 1 字 1.56
円、1件 0.3 円。シー
リング業務:封かん 1
道税総合情報処理システム電算処理業
務のうちその余業務
件 3.5 円、
封入・封かん
総務部税務課
1 件 3.5 円。
コレートアンドデ
タッチャー処理 1 件 14 円。
CD-ROM 作成:マスタ 1 枚
15,500 円、コピー 1 枚
2200 円。プログラム作成 1
人工 574,000 円
6
7
住民基本台帳ネットワークシステム北
企画振興部地域振興室市
海道ネットワーク監視・保守業務
町村課
住民基本台帳ネットワークシステム用
サーバ機器等及び接続用ネットワーク
機器等管理運用業務
8
9
企画振興部地域振興室市
町村課
企画振興部IT推進室情
電子調達システム基本設計業務
報政策課
住民情報関連業務システム開発実証事
企画振興部IT推進室情
業
報政策課
155
320,664,005
32,634,000
40,293,750
92,400,000
10
11
12
13
14
15
16
企画振興部IT推進室情
電子申請システム運用保守業務
報基盤課
行政コミュニケーションシステム等運
企画振興部IT推進室情
用・保守管理業務
報基盤課
総合行政情報ネットワーク設備等保全
企画振興部IT推進室情
委託業務
報政策課
北海道総合行政情報ネットワークシス
企画振興部IT推進室情
テム再構築基本設計・実施設計業務
報基盤課
電子計算機で処理する業務委託
企画振興部IT推進室情
報基盤課
企画振興部IT推進室情
情報処理システム変更等業務委託
報政策課
医療関連業務電算化オンラインシステ
ム開発等業務
17
マリンネット北海道保守運用サポート
業務
18
北海道土木工事設計積算電算システム
及び入札契約総合管理システム運用業
務のうちシステム運用管理業務
北海道土木工事設計積算電算システム
及び入札契約総合管理システム運用業
務のうちプログラム修正業務
19
20
託業務
436,800,000
77,448,000
401,688,000
88,850,034
32,865,000
水産林務部水産振興課
32,508,000
建設部建設管理室技術管
理課
122,220,000
建設部建設管理室技術管
1 人工単価
理課
574,000 円
理課
財務会計トータルシステム業務処理委
337,365,000
保健福祉部疾病対策課
建設部建設管理室技術管
北海道公共事業電子情報化支援業務
58,950,360
出納局総務課
156
81,837,000
364,875,000
二
個別契約
1
震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約
担当部課
総務部危機対策室防災消防課
委託先
民間企業
業務内容
文部科学省設置の地震計が今年度更新されることに伴い、現在稼動してい
る道の震度情報ネットワークシステムにおいて必要となる既存ソフトウェ
アの改修及び機器更新を行い、震度情報のネットワークの維持を図る。
業務目的
地震発生直後における震度ネットワークによる市町村震度データは、市町
村、道及び防災関係機関において揺れの大きさから被害を推測し、迅速初
動体制を構築して応急対策を実施する上での重要な情報であり、当該ネッ
トワーク機能を維持し、もって震度情報を生かした応急対策に寄与するこ
とを目的とする。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(事業開始は H17
H17
特例政令による
積算額
50,846,250 円
委託金額
50,394,424 円
随意契約
年度)
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:本業務の履行にあたっては、システムの稼動を維持しつつ改修を進
める必要があり、現行システムに関する専門的技術的知識が要求される。
システムの重要性から万全の保守体制を図るために契約している保守点検
業務との深い連携のもとに行われる必要がある。
当該システムのプログラムを独自に開発した会社の業務を承継し(開発会
社は当該事業から撤退)、必要な情報が引き継がれている。
システムのプログラム改修には、開発当時及びそれ以来の保守点検業務に
おいて積み重ねられたシステムに関わる技術情報がないと対応できない。
これらに該当するのは委託先しかない。
委託料の算定
積算方法:技術者単価に各業務項目の工数を乗じた人件費と機器費用の合
算額に諸経費を加算して積算している。
見積書の内容:「一式」として提出され、内訳なし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:震度情報の迅速・確実な把握のためのシステム改修業務を委託する
必要性・有効性について特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:それまで道内の一部市町村しか震度情報を発表できなかったものを、
道内全市町村について震度情報を速報できるようにするためのシステム更新であ
157
り、道職員による対応が困難な専門分野に関わるものであるから、外部に委託す
ることに合理的な理由がある。
また、改修について国の予算付けもあることから、速やかに改修を行うことが
最も低コストで経済的であり、ネットワークにより情報を収集することが現状最
も効率的かつ有効性の高い方法でもある。このようなシステム構築を実現するた
めには外部の専門家に委ねることがより有効性のある方法と考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項 1 号により、随意契約が締結されているが、
特例政令に該当する特定調達契約か否か、1 号の例外要件該当性を判断するため
の明確な基準も用意されておらず、当該要件をクリアーすると判断した過程も曖
昧である。
(b)理
由:本契約が特例政令第 2 条第 3 号の付表 4 に掲げるどのサービスに係
る特定役務であるのか、記録上判断していない。
また、1 号の例外要件について、どのような基準で判断するかについては、具
体的なマニュアル等もなく、従来の震度情報ネットワークシステムのどのような
部分がどのように他の業者を排除する特殊技術性を持っているのか具体的に判断
を行っていない。
現用システムのプログラム改修には、開発業務に携わった業者の特殊技術(ノ
ウハウ等)の技術協力等が不可欠であると判断し、本業務の業者が選定されたと
ころであるが、具体的な特殊技術性の判断基準が必ずしも明らかにされていない。
(c)提案事項:①契約担当課の意識として、特例政令が平成 6 年のマラケシュの政
府調達に関する協定に基づくもので、内外無差別の原則、契約の透明性確保等を
目的とし、一定額以上の高額な契約のみが対象となっていること、財務規則上随
意契約が認められる場合以上に厳格な要件判断が必要であり、安易に例外要件に
該当するとの判断ができないことを共通認識とすることである。
②契約決裁上の仕組みとして、特例政令に関する理解を深めることが必要であり、
具体的には特定調達契約の内容、例外要件の意義、その判断基準、検証方法に関
する庁内のマニュアル等を作成したり、その研修により契約担当課と出納局指導
審査課の認識を共通にすべきである。また、特命随契の方法を選択したプロセス
の妥当性・公平性・透明性について、後日、検証が可能となるように、どのよう
な資料に基づき例外要件をクリアーしたのか記録として残すようにすべきである。
③そして、これらの改善を迅速に行うべきである。
特例政令が適用される契約は、一定額以上の高額な契約であり道が締結する主
要な契約に属しているのであるから、その契約手続きの透明性を確保することは
最優先課題とすべきである。
曖昧な判断での運用は内外無差別の原則と透明性の確保を目的とする特例政令
の趣旨を軽視することにつながるものとなる。
④提案事項の更なる詳細については、後述小括において論ずる。
158
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:①積算調書における改修業務の各業務項目の内容とそれに対応する
開発技術者の区分及び工数について、道の側に明確な基準もなく、裏付ける資料
もない。
②また、委託先が提出した見積書には「一式」と記載されているのみで、内訳書
も添付されていないため、委託先がどのような積算方法に基づいているのか全く
わからない。
③さらに、実際の改修にどの程度の人員が必要であったのかも把握できない。結
局、利益を追求する委託先の見積もりに準じており、積算の妥当性を根拠付ける
ものは見当たらない。
(b)理
由:担当課からのヒヤリング及び提出資料によると、まず、予算要求時
期に委託先から見積書の提出を受け、それに基づいて予算要求を行い、その後、
積算方法が間違っていたため積算形式を改めた(工事請負方式から委託方式へ)
とのことであった(積算額約 3 万円減少)
。担当課には情報関連契約の積算に精通
するものがおらず、委託先との打ち合わせと前年踏襲により積算されているとい
う状況であり、また、積算内容の詳細について明確な基準や裏付資料も無いとい
うことであった。
積算後の見積書提出時も道の仕組み上見積りの内訳を要求していないし、契約
終了後に工数の実態把握も行うことがないため、積算内容の妥当性を検証するこ
とは一切行われない。
このような状況下で委託先の見積もりに準じて積算が行われたとすれば、積算
の妥当性・透明性の根拠が失われることになるものと考える。
(c)提案事項:①契約担当課の積算に対する意識として、特命随契の場合、相手方
が 1 社であるから、積算にあたって相手方に依存すると、道の積算根拠の妥当性・
透明性が失われてしまうという認識を持つべきである。
競争入札の場合、複数の相手方の間で価格競争が行われるので、手続が適正に
行われる限り、最も低コストの価格が自ずと出てくるのであり、公平性・透明性
も担保されていることになる。それに対し 1 社との契約の場合、競争原理が働か
ないので、公平性・透明性が失われやすく、さらに、利益を追求する相手方に積
算を依存すると道の不利益となる積算内容に向かってしまうことが予想され、積
算の妥当性も失われていくのである。
②積算プロセスを明示し、積算根拠の妥当性を裏付ける資料を準備し、検証でき
る形で記録に残すようにすべきである。
このようにして残していかなければ、後日、説明責任を果たすことができなく
なってしまうであろうし、記録として残すことで、その後の契約についてもノウ
ハウとして利用し得るのである。
③情報システムの開発や運用に関する積算ノウハウを蓄積する、あるいは足りな
159
い部分を補う仕組みを速やかに作り上げ、道が独自に積算できるようにすべきで
ある。
④積算についても、詳細は後述小括において論じる。
160
2
防災対策支援システム開発業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
防災対策支援システム開発業務委託契約
担当部課
総務部危機対策室防災消防課
委託先
民間企業
業務内容
防災関係機関が所有する河川・道路等の計測情報・対策情報を収集解析す
るシステムの開発を行い、現在一部運用しているシステムとの連携を図る。
業務目的
防災関係機関が各々で管理、運用している防災情報を一元的に集約し、こ
れを共有化することにより、災害対策の迅速かつ包括的な実施を支援し、
住民等への直接的な防災情報等の提供を図る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
委託金額
(事業開始は H15
H15
特 命随 契( 財務規 則第
28,505,400 円
28,497,000 円
48,603,450 円
48,457,500 円
42,294,000 円
40,950,000 円
162 条運用方針第 3 節関
年度)
係 1 の(2)、公募型プロ
ポーザル契約)
H16
H17
特例政令による随意契約
同
上
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:平成 15 年度からの 4 ヵ年計画の 3 ヵ年目であり、システム設計思想
の統一やプログラムの細部にわたる整合を図るには、複数社のリレー方式
では困難が予想される。他社のシステムとの連携にはプログラム自体の解
析が必要であり、相当の人工や時間が必要であり、解析不可能な場合もあ
る。
したがって、システム開発業者がプログラム開発を行うことが確実なシス
テムの連携及び的確な運用を期待できる。
委託料の算定
積算方法:開発技術者単価に工数を乗じて積算。
見積書の内容:「一式」として提出され、内訳なし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:防災関係情報の迅速・確実な把握のためのシステム開発業務を委託
する必要性・有効性について、特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:防災関係機関の各防災情報を一元的に集約し、共有化するとともに
住民等への直接的な防災情報の提供を図ることを目的とした専門的なシステム開
発事業であり、道職員による対応が困難な専門分野に関わるものであるから、外
部に委託することに合理的な理由がある。
防災情報は、人命に関わる情報であり、正確かつ迅速であることが強く要請さ
れ、現状ではインターネットによるシステムを構築するのがこの目的を達成する
161
ために最も有効性、経済性の高いシステムであり、このようなシステム構築を実
現するためには外部の専門家に委ねることがより有効性のある方法と考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:前件1の契約同様、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号の例外要件をクリ
アーするかについて、基準が不明確であり、判断プロセスの裏づけがない。
(b)理
由:本契約は、当初、平成 15 年度に公募型プロポーザル方式により、当
該委託先が選定され、運用方針第 3 節関係 1 の(2)による特命随契がなされ、そ
の後は前記選定理由記載のとおりの理由に基づき、特例政令第 10 条第 1 項第 1
号により毎年随意契約の方式で委託されている(予定価格が 3200 万円以上となっ
たため特例政令適用)
。
特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る特定役務の調達の相手方が特
定されているような場合に、その相手方との特命随契が認められることになって
いるが、委託先を公募してプロポーザル方式で選定しているような場合、委託先
の技術はこの要件に該当するような特殊技術と言えるのか検討する必要があると
考えるが、検討していない。そもそもこの例外要件の意義、判断基準、検証方法
について明確なものが無く、担当課において主観的な判断によって個別に検討さ
れている状況と推測される。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:積算調書の工数内訳書の業務項目と工数について、委託先以外から
の調査に基づくものとのことであるが、資料が残っていない。また、委託先が提
出した見積書には「一式」と記載されているのみで、内訳書も添付されていない
ため、委託先がどのような積算方法に基づいているのか全くわからない。
結局、記録には、積算内容の妥当性を裏付けるような客観的資料は残っていな
い。
(b)理
由:積算方法について、担当課からのヒヤリングによると独自に業務項
目や工数を調査して積算しているとのことであったが、それらを示す資料は示さ
れていない。本件のシステムについて他に類例のないシステムであり、開発技術
者の創意工夫が必要とのことであり、独自調査の内容を確認しなければ積算の妥
当性を根拠付けることはできない(概数の聴取程度であれば、積算内容の妥当性
は低くなる。
)。委託先の見積もりの内訳があれば、それとの比較でも道の積算の
妥当性を判断できるところであるが、それもないためわからない。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
162
3
総合文書管理システム運用・保守管理業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
総合文書管理システム運用・保守管理業務委託契約
担当部課
総務部法制文書課
委託先
民間企業
業務内容
総合文書管理システムの下記運用・保守管理業務及びヘルプデスク業務
①構成管理業務・・システム構成管理、サーバ資源管理
②保守管理業務・・ハードウェア点検、OS及びソフトウェア等のアップデ
ート、文書管理システムパッケージのバージョンアップ
③運用管理業務・・システム稼動状態管理、システム運用業務、システムバ
ックアップ業務、停電時等の対応
④障害管理業務・・システム障害発生時の応急措置、原因究明、再発防止対
策
⑤安全性管理業務・・システムの監視、不正アクセス対策、ウイルス対策
⑥ユーザ等管理業務・・ユーザ管理、組織情報管理、管理者用アカウント管
理
業務目的
総合文書管理システムの運用・保守等に関する業務について、専門的知識を
有する事業者に委託することにより、電子道庁の基盤システムとしての信頼
性を確保し、安定的な運用を図ることを目的とする。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
委託金額
( 事業開始 は
H15
特例政令による
64,409,708 円
64,365,000 円
随意契約
H15 年度)
H16
同
上
63,149,368 円
63,148,680 円
H17
同
上
67,980,835 円
67,977,000 円
委 託 先 選 定 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
の理由
理由:総合文書管理システムは、障害等により予期せぬシステム障害が発生
すると、全庁的に大きな障害を来たすこと、システム内の情報は電子公文書
の原本であり、情報流出が許されないこと、など高度の信頼性とセキュリテ
ィを要する。
保守・運用の確実性、障害発生時の迅速な対応、システムに関する職員の問
い合わせへの対応など、システムに関する高度な技術とノウハウが必要であ
る。
これらを担えるのはシステム開発から一貫して行っている委託先である。
他業者に委託する場合、システムの理解と安定的な運用までに時間を要する
とともに信頼性が保証できない。既開発業者の保有する技術及びノウハウに
よる便益を享受することに著しい支障を生じるおそれがある。
委 託 料 の 算 積算方法:運用経費=各業務工数×SE 時間単価×諸経費 10%
定
ヘルプデスク人件費=工数×SE 時間単価
163
機器等保守料=機器保守料+ソフトウエア保守料
カスタマイズ経費=工数×SE 単価+登録情報数×文字単価
見積書の内容:「一式」として提出され、内訳なし。
その他
契約日付で一部業務を 2 社に再委託することが協議され、同日付で承認され
ている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:行政事務の迅速性・利便性等をアップする総合文書管理システムの
運用保守を外部に委託する必要性・有効性については特段指摘する問題点は認め
られない。
(b)理
由:全庁に跨る文書管理システムの専門性から道職員自らがシステムの
運用保守を行うことは困難を伴い、また、システムの中断は行政事務に支障をき
たすため、外部の専門家に委託する必要性があり、その方がより有効な行政事務
を実施できると考えられるからである。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:本契約では、特例政令第 10 条第 1 項 2 号により、随意契約している
が、例外要件について検討されているのか疑問があり、また、再委託がなされて
いることからも例外要件をクリアーしているのか疑問がある。
(b)理
由:①例外要件に関する決定書の記載を見ると、相手方以外への委託は、
移行までの間システムの停止を招き、道政へ著しい支障がある。他の業者への委
託には、多大な時間を要し、信頼性もなく、システムの理解もないのでその点で
も著しい支障があると記されているが、過去2年度にわたり遡ってみても理由書
の記載は前年度の内容をそのまま踏襲するもので、その理由について具体的な検
証がなされていない。
②例外要件に関し、担当課よりヒヤリングを行ったが、前提となる「既契約特定
役務」の内容についての具体的認識がなく、さらに例外の根拠要件である「著し
い支障が生じるおそれ」について、客観的基準もなく、検証していないとの回答
であった。そのような経緯に鑑みると、決定書の内容は、客観的な裏付けに基づ
くものとは言い難く、真に例外要件をクリアーしているのか疑問があると言わざ
るを得ない。
③さらに、本契約においては、契約日当日に委託先から2社への再委託承認申請
が出され、同日付で道の承認が出されている。
この点、過去2年度にわたり遡ってみても、既に同じ再委託先に下請けされて
おり、それぞれ再委託が予定済みという状況であった。
また、再委託理由についても過去2年度と同様「スタッフを重点的にプログラ
ムの確認作業に配置したいことから一部事務を委託する。
」「北海道の地場産業の
育成を促すため地元企業を活用する」
「システム運用・保守を速やかにまた正確に
行う必要から」という内容が記されている。
164
特例政令が相手方以外の業者から調達した場合に著しい支障が生じるおそれが
あることをもって、特定の相手方との随意契約を例外的に認めていることに鑑み
ると、
上記のような理由で再委託を認めることは許されないと言わざるを得ない。
相手方以外でも特定役務の調達が可能なのであれば、要件に該当しないであろう
し、相手方自ら業務ができず再委託が必要なのであれば、道への特定役務の提供
自体が難しかったのではないかとの疑念も生じるところである。さらに、相手方
のみが自社に都合の良い再委託先を選定する権限を有しており、その他の業者の
契約参入の機会を奪う結果にもなってしまうのである。
加えて、道は相手方と再委託先との契約内容を把握しておらず、前年と同じと
いう程度の認識しかなく、原則として再委託を禁止している委託契約書の内容に
違反していないか疑問が残るところでもある。
(c)
提案事項:①前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
②加えて、再委託される場合には、委託先と再委託先との契約書や業務処理要領
の提出を義務付け、その委託範囲を明確に把握した上で承認するか否かを判断す
るように制度を改めるべきである。特に、特例政令の例外規定による随意契約の
場合は、例外を認める要件に鑑み再委託を禁止するか、あるいは、極めて厳格に
判断すべきである。
これらが整備されないと、道の担当課でほとんどチェックすることなく委託先
の裁量により再委託を許しているとの批判を受けるおそれがあり、行政の公平性、
透明性が問われることになりかねない。そして、特例政令が適用される特定調達
契約に関しては、相手方が特殊な場合に限定して例外的に随意契約を許容してい
るのであるから、相手方が変更になる再委託の可否の判断は当然厳しくならざる
を得ない。
③さらに、将来的には、本件についてよりオープンなシステムで構築していくこ
とが望まれる。オープンなシステムとすることでシステム開発契約とシステム運
用保守契約を切り離して、それぞれ自由な競争を行うことが可能になり、契約手
続の公平性・透明性を担保することができる。
本件でもそうであるが、システムのノウハウがパッケージングされ相手方に握
られてしまっていることが、その相手方との随意契約をいつまでも継続せざるを
得ないジレンマを生んでいる。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
特に、再委託する場合は、特例政令による随意契約の要件と再委託理由とが不
整合とならないよう検討し直して当否を判断していくべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:委託料の積算について、前年踏襲、あるいは、委託先に依拠して算
出している部分が多分にあり、道が独自に毎年積算の見直しを行っていない。
そのような経緯で決定された積算に基づく予定価格に対し、その範囲内の見積
165
額であるからということで、ごくわずかに下回る委託金額で契約を締結している
点、真に適正な価格と言えるのか非常に疑問である。
また、採用している SE 単価(システム開発技術者1)が本件に見合うものであ
ったのかについても疑義がある。
(b)理
由:①本件契約では、上記契約の概要「委託料の算定」で記載したとお
りの積算方法により積算金額が決定されているが、見積額との差はごくわずかで
あり、しかも見積書はいずれも1度提出されただけである。
このように極めて積算額に近い見積書が提出されていることの理由について担
当課よりヒヤリングを行った。その結果、業務内容・業務量に毎年の変動が少な
いことのほか SE の工数が委託先の算出によっていること、システム機器の保守料
やソフトウェア単価については前年の契約内容を踏襲していること、カスタマイ
ズ経費も前年度の登録数を基準にしていること、SE 単価については一般的な積算
資料の技術者単価を使用していることを推測されていることなど、道側の積算額
がどの程度になるかを認識できるだけの基礎的な数字を委託先が認識しているた
めに、これほどまでに道の積算額に近い見積額が提示されたものと理解できた。
過去2年度の SE 工数はまったく同じであり、その後、本契約において 15%ほど
工数が増えているが、その増加の資料も一切残っておらず、委託先の算出によっ
て工数が増加したものと考えられる。その結果、その工数増加に対しても積算額、
見積額ともにわずかの差になるような金額が提示されている。
SE の工数が価格の大きな要素を占めているにもかかわらず、これが委託先の積
算のもと決定されているとすれば、通常は相手方の利益を多分に含んだ積算と推
測され、仮にそれが適正なものだとしても、誰の検証も受けておらず、積算に対
する信頼を得られないものと言わざるを得ない。
さらに、本件では予算要求時には道の積算基準単価を用い、それに高率の諸経
費や技術経費を乗じて計算しているのに対し、契約時の積算では市場価格による
単価を乗じて計算し、総額はほぼ同額のものとしている。この点担当課では予算
要求時は予算単価を用い、契約段階ではより市場価格に近い単価を用いるように
したとの回答であった。しかしながら、業務内容が変わっていないのに作業に対
応する工数が大きく変わっていることの理由も不明である。総額が予算で決まっ
ている中で単価が変更になったのでそれに計算をあわせるために工数を修正した
ものと言わざるを得ない。このような不自然な積算状況が平成 15 年度から続いて
いるようであり、特に問題意識なく前年踏襲しているだけである。
②道が独自に積算の見直しをするのであれば、
見積書の内訳や前年度の SE の稼
動実績などの報告を受けることが効果的であると考えられるが、道ではこれらを
とる仕組みが無いため行われていない。
ヒヤリングでは、毎年度の実際の SE の業務内容や工数について聞き取りを行っ
ているとのことであるが、その資料も無く、実際にそれが次年度以降の積算に反
映されていない。
③さらに、道の積算内容を見ると、人件費単価を積算資料の最も高額な開発技
術者1によっており、これは過去二ヵ年度も同様であった。
166
担当課によると、どのような業務内容に対し、どのようなレベルの技術者を配
置するかについてはマニュアルがない、システムの破綻を防止する必要があるこ
とから最高レベルの技術者を配置してもらうようにしているので、単価も最高額
で計算しているとのことであった。また、システム開発後もシステム管理技術者
単価ではなく、より高額なシステム開発技術者単価を採用していたことについて、
担当課では、機器のメンテナンス・公文書のセキュリティー確保・障害対応等の
保守にあたって、システムの根幹に係るネットワーク及びプログラムの設定を行
いながら保守運用を行っていく必要があり、システムの高度な知識及び技術を有
した者でなければ行うことができない業務であるため開発技術者単価を採用した
とのことであった。
しかしながら、システム破綻を防止するためにシステム開発技術者を配置しな
ければならないという根拠は見当たらない。システム開発とシステム運用・管理
の場面は異なるものであり、前者の役割は、システムの構成イメージ策定の中心
的役割を担い、システム開発計画の全体構想を行い、プロジェクト全体の管理を
行うことにあり、後者の役割は、システムの稼動を監督し、運用業務に関する支
援を行う、あるいは、サーバやネットワーク環境の設定を行い、システムの管理
を行うというものであるが(財団法人経済調査会「積算資料」技術者の役割につ
いてより抜粋)、本件ではシステム運用後の管理の場面であり、後者が妥当する場
面である。
仮に、担当課の述べるような事情があったとしてもそれは限定的なものに留ま
るのが通常であり、年数を経過するごとに習熟度が高まりその必要性も下がると
ころである。したがって、システム開発後何年間もシステム開発時と同様の単価
を支払い続けなければならないということにはならないのである。
そもそも本件では、実際の業務内容が常時システム開発と同視できる内容であ
ったという事情も認められない。
仮に、本件契約において、システム運用または管理技術者をもってあたらせた
場合、
積算資料によると開発技術者よりも月額 9 万円から 10 万円低コストになり、
年間 300 万円以上低い積算ということになる。
システム開発から委託先との契約を続けてきたこと、積算が前年踏襲で行われ
てきたこと、SE 工数が委託先の算出によっていたことなどからすると、システム
開発時の開発技術者単価がシステム運用後もそのまま利用されてきたのではない
かと推測される。
④本契約の積算においては、前年踏襲の積算を行い、委託先に依拠して算出し
ている部分があり、道が独自に積算している状況にあるか疑問が残る。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
また、積算に採用している SE 単価(システム開発技術者1)について、事業の
実態に合わせて検討する必要があると考える。
167
4
自動車税分配情報作成業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
自動車税分配情報作成業務委託契約
担当部課
総務部税務課
委託先
財団法人地方自治情報センター
業務内容
道路運送車両法第 6 条第 1 項の自動車登録情報から自動車税の賦課徴収の
ため必要とする情報を抽出し、ネットワーク配信データを作成する。
業務目的
自動車税の電子計算機による処理業務の円滑な運営を図るため、国土交通
省の自動車登録ファイルから自動車税の賦課徴収に必要な登録情報を抽出
し、ネットワーク配信データを作成する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(事業開始は S46
H13
特例政令による随
積
算
額
積算単価 13 円
委託金額
委託金額 13 円
意契約
年度)
H14
同
上
同
13 円
委託金額 13 円
H15
同
上
同
12 円
委託金額 12 円
H16
同
上
同
12 円
委託金額 12 円
H17
同
上
同
12 円
委託金額 12 円
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:国土交通省の自動車登録ファイルに記載されている自動車登録情報
のうち、自動車税の賦課徴収に必要な情報については総務省と国土交通省
の協議により、
(財)地方自治情報センターにおいて自動車登録ファイルか
ら全都道府県分を一括抽出し、各都道府県分ごとに分割の上、自動車税分
配情報として配布することとなっているため、情報提供を受けうる当該セ
ンターのみを委託先とする
委託料の算定
積算方法:単価については委託先からの通知に基づく。年間所要額は単価
に年間予定数量を乗じて積算。
見積書の内容:単価の記載のみで、内訳なし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:自動車税の確実な徴収のための本委託契約の必要性・有効性につい
て特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:自動車税の確実な徴収のためには自動車登録データを作成する必要
性が高いが、このデータを道が独自に収集することは困難であり、外部にデータ
作成を委託する必要性は高い。そして、これを最も低コストで遺漏なく有効に行
う方法は国土交通省の自動車登録ファイルの情報を得ることであるから、その業
務を委託する本委託契約の有効性も高いと言える。
168
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項 1 号による随意契約に相当性が認められる。
(b)理
由:自動車税を確実に徴収するためには、課税に必要な自動車登録情報
を、正確、迅速かつ遺漏なく入手する必要があるが、自動車登録情報は国土交通
省が唯一承認機関として認める財団法人地方自治情報センターにのみ提供される
特殊な情報である。したがって、特殊情報の調達先が委託先に特定されているこ
とから特命随契の方法が相当となる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:委託先からの金額通知に基づき委託料が決定されているが、委託先
が情報を提供する承認機関として国が唯一認める者であることから、やむを得な
い。
(b)理
由:全都道府県に対し、委託先の積算根拠に基づく情報単価が示されて
おり、道のみが異論を唱える余地がない。
169
5
道税総合情報処理システム電算処理業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
道税総合情報処理システム電算処理業務委託契約
担当部課
総務部税務課
委託先
民間企業
業務内容
道税総合情報処理システムにかかる下記業務を行う。
①オンライン業務
道内各支庁等との間の専用通信回線の設置及び道税総合情報処理システ
ム専用端末機を用いて行う各種照会に対する応答、各種データの集信及
び配信業務
②センター処理業務
③コンピュータの入力媒体作成業務
④コンピュータにより作成した納税通知書等を封かん及び封入・封かんす
る業務
⑤出力された帳票を帳合いし、裁断する業務
⑥コンピュータに保存されているデータの CD−ROM 作成業務
⑦コンピュータに係るプログラム作成等の業務
業務目的
道税を一元的に管理するシステムとして H2 年度にプロポーザル審査会に
より、開発業務の委託先事業者として選定し、H6 年度から導入した道税総
合情報処理システムの安定した運用と迅速な処理を行うため委託する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
( 事 業 開 始 は H6
H13
特例政令による
675,900,275 円+個別 674,490,600 円+個別単
随意契約
単価契約
年度)
H14
同
上
算
額
委託金額
価契約
676,826,053 円+個別 674,490,600 円+個別単
単価契約
H15
同
上
価契約
665,683,684 円+個別 663,868,800 円+個別単
単価契約
H16
同
上
価契約
665,831,479 + 個 別 単 662,363,100 円+個別単
価契約
H17
同
上
価契約
666,200,491 円+個別 650,273,925 円+個別単
単価契約
価契約
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:
(電算処理業務)①既契約業者
②当該システムは、道税の各種業務
を常に行っており、委託先を変更する場合は移行するためシステムを停止
することになるので業務に著しく支障をきたす。③システムの安定した運
用と迅速な処理には運用管理技術に習熟していることが必要。
該当するのは委託先だけである。
(入力媒体作成業務)機密性・安全性の確保、業務量に応じたキーパンチ
170
ャーを確保していることが必要。
調査の結果、道内における事業所が情報セキュリティマネジメントシステ
ムの認証を受け、業務量から積算したキーパンチャー数 38.73 人/日以上を
確保できるのは委託先だけである。
(シーリング業務・コレートアンドディタッチャー業務・CD−ROM作
成業務)電算処理業務付随の業務であり、機密性、安全性及び迅速な処理
の確保が必要であり、加工用特殊機械を保有していることが必要。
調査の結果、道内企業で札幌に事業所を有しており、情報セキュリティマ
ネジメントシステム(ISMS)の認証を受け、加工用特殊機械を保有してい
る企業は委託先だけである。
(プログラム作成業務)現行システムのプログラム修正等を迅速に行う必
要、安定した運用の確保することが必要。
システムを熟知し、現在委託している委託先がよい。
委託料の算定
積算方法:電算処理業務のうちオンライン業務・センター処理業務(コン
ピュータ賃借料+設備管理費+消耗品費)×一般管理費 10%+人件費(SE
単価×工数)+通信回線使用料
(電算処理業務のうちその余の契約)個別単価契約
見積書の内容:簡易な内訳書のみで詳細はなし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:道内各支庁等との間でオンラインにより道税に関するデータを総合
的に管理するための道税総合情報処理システムの電算処理業務委託の必要性につ
いて特段指摘する問題点はないが、経済性・効率性・有効性については最良の方
法であるとの判断にまでは至らなかった。
(b)理
由:記録及び担当課からのヒヤリングにより、道税総合情報処理システ
ムは、課税から納税、収納管理に至るまで道税を一括して管理し、道内各支庁等
をつなぐシステムである。このシステムで処理されるデータは、非常に広範かつ
多数のものであり、処理時期も限定されていること、処理のために専門的知識を
要することなどから道の直接事業として処理することは難しく、その電算処理を
外部委託する必要性があるものと思われる。
次に、本件契約は総額約 9 億円の契約であるが、6 割以上が大型汎用機を含む
機器関係や通信回線の使用料であり、その余が人件費である。大量な情報の迅速
な処理と超高速印刷が可能という点で大型汎用機の利用価値は残っているとは言
えるものの、大型汎用機による情報処理には一旦データを磁気化する作業、処理
命令を依頼し、その結果を帳票として受け取り、エラーチェックをしなければな
らないなどの作業があり、処理に時間がかかり、即時対応能力も劣るという問題
がある。IT技術の目覚しい進展の中で現状の大型汎用機による処理が、費用対
効果の点で最良と言えるのか疑問の余地が無いではない。
171
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:①まず、本件においては、根拠法令として特例政令第 10 条第 1 項 1
号と明記しているが、電算処理業務に関しては、1 号よりも 2 号による例外要件
の検討の方が相当と思われ、実際の道の理由付けを見ても 2 号についての判断を
しているようにもとれるが、その点の判断経過が曖昧である。
②前述1の契約同様、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号の例外要件をクリアーするか
について、基準が不明確であり、判断プロセスの裏付けがない。そして、個別の
業務について選定理由を述べているが、例外要件をクリアーしているかについて
も非常に問題がある。
(b)理
由:上記①について・・・本契約で、道は前記選定理由記載のとおりの
理由に基づき、特例政令第 10 条第 1 項第 1 号を根拠に随意契約を行うとしている。
1 号によるとすれば、特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等若
しくは特定役務の調達の相手方が委託先に特定されていることを理由付けなけれ
ばならない。
この点、電算処理業務における委託先選定理由を見ると、業者変更の場合の支
障を問題としており、これは 2 号の要件であり、1 号の要件である委託先の技術
の特殊性については検討されていない。
仮に 2 号の要件で判断するとしても、データ移行のためシステムを停止する場
合の支障の内容が具体的に検証されていない。抽象的な「著しい支障」が記録上
記されているだけである。過去 4 年度にさかのぼって理由書の記載を見ても、前
年度の抽象的な内容をそのまま踏襲するものとなっているで、その理由について
具体的な検証をしていない。
上記②について・・・1 号の要件について、選定理由書を見ても、あるいは、担
当課からヒヤリングを行っても、どのような基準により「特殊性」の判断を行っ
ているのか明らかでない。電算処理業務以外についても過去 4 年度にさかのぼっ
て理由書の記載を見ても、前年度の抽象的な内容をそのまま踏襲しているだけで、
具体的な検証をしていない。
唯一平成 17 年度の指名選考委員会の説明資料に、委託先だけしかできないとす
る根拠資料が提示されているが、その検討資料自体、事業所所在地を札幌近郊に
限定した上で要件該当性を判断しており、特例政令が内外無差別の原則を定めて
いる趣旨に反するものであると言わざるを得ない。1 号は、内外無差別の原則を
前提として、広く世界を見てもなお相手方の技術に排他的特殊性があり特定され
る場合に、その相手方と随意契約が認められるとするものである。例外判断の要
素はあくまでも技術の特殊性の有無であって、そこに事業所の所在地に関する要
素により相手方を絞り込むことは特例政令の趣旨を無視した要件設定となってし
まうのである。
その他の要件で「キーパンチャー雇用数」
「ISMS 認証取得事業者」
「加工用機械
保有」を委託先のみクリアーすると理由付けるが、いずれも 1 号の要件である特
殊な技術に係る物品等若しくは特定役務に該当するものとは言い難い。キーパン
チャーも多数存在し、ISMS 資格や加工用機械も委託先以外でも保有しているので
172
はないかと予想されるからである。
(c)
提案事項:①前述契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである
特に、その判断要件として、事業所要件を削除し、特例政令による随意契約の
要件との不整合が生じないよう検討し直すべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:①個別単価の一部に予定価格を超える見積もりが出たためにその分
の若干の減額を行っているが、その一方で電算処理契約の見積額を大幅に上乗せ
した(315 万円アップ)見積書の提出を受け、当該金額で委託契約を締結してい
るものがある。
②また、積算における人員数が実態に合致しているのか不明である。
(b)理
由:①について・・・H17.3.30 に委託先より見積書の提出を受け、その
内容は2件の業務単価が予定価格よりわずかに上回るものであったことから、見
積書の再提出となったものである。
ところが、本件では 2 日後に単価契約分を予定価格の範囲内に減額する再度の
見積もりが 2 度にわたり提出されただけではなく、電算処理業務費を初回の見積
もりより 315 万円もアップする見積書が提出され、特に見積もりの内訳書をとる
わけでなくこの金額をもって委託契約を締結しているのである。
この点、担当課へのヒヤリングでは、全てにおいて予定価格の範囲内であるか
らアップしても特段問題とせずに契約したものであった。
しかしながら、一般論として、このような場合は道にとって不利な契約を結ん
でいることとなるから、何ら検証を加えることなく、契約を締結することには問
題があると言わざるを得ず、今後、道の支出を抑える意識という点からも、予定
価格の範囲内にあるからといって単に契約を行うのではなく、見積金額が増額と
なった理由を確認し明らかにするべきものである。
②について・・・本契約では、記録の残る平成 13 年より毎年同じ人数のオペレー
ター等を予定し、これに各単価を乗じて積算している。これについては簡単な説
明がなされているが、その稼動実績を示すような資料も無く、実態に合致してい
るのか不明である。委託先からの見積書にも詳細な内訳書をとっていないため、
実際にどのような技術者が何人必要か、どの程度の経費を要すると委託先が考え
ているのか、記録上はわからない。
道の担当課からのヒヤリングでも前年を踏襲して算出しており、実態の把握は
していないとの回答を受けている。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内
容を充足する積算を行うよう努めるべきである。
173
特に、予定価格の範囲内であっても、一旦提出された見積書の金額が増額とな
っている場合については、そこに合理的な理由があるか確認の上、記録を残し、
単に予定価格の範囲内にあることのみををもって契約することのないようにする
べきである。
174
6
住民基本台帳ネットワークシステム北海道ネットワーク監視・保守業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
住民基本台帳ネットワークシステム北海道ネットワーク監視・保守業務委
託契約
担当部課
企画振興部地域振興室市町村課
委託先
財団法人地方自治情報センター
業務内容
住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)北海
道ネットワークの運用監視及び保守業務
業務目的
住基ネットは、全国の自治体を結ぶ大規模かつ利用頻度の極めて高い全国
的なネットワークであるため、常時システムの安定的な稼動が求められて
いる。運用監視及び保守業務において、ネットワークの安定稼動を常時確
保するため、ネットワーク機器の管理、IPアドレスの管理、ネットワー
クの負荷状況の定期的な管理、セキュリティ管理、障害管理等、内容が多
岐にわたり、かつ、ネットワーク上に異常が発生した場合、迅速な復旧処
理を求められ、道職員による対応が困難であることから外部委託を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(事業開始は H13
H13
特例政令による
積算額
委託金額
168,822,955 円
167,147,865 円
随意契約
年度から)
H14
同
上
330,033,495 円
329,933,354 円
H15
同
上
329,837,561 円
329,738,566 円
H16
同
上
325,124,049 円
325,026,598 円
H17
同
上
320,764,525 円
320,664,005 円
( 契 約 変 更 ① ( 契 約 変 更 後 ①
323,352,367 円、契約 323,352,367 円、契約変
変 更 ② 327,926,028 更②327,926,028 円)
円)
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:住基ネットは、性質上、常時システムの稼動の安定性が求められ、
北海道ネットワークの監視及び保守について、当該ネットワークを熟知
し、運用保守・管理業務のノウハウを有している業者に委託することが不
可欠である。
上記委託先は、H11 年 11 月に指定情報処理機関の指定を受け、住基ネッ
ト全般の構築、各都道府県ネットワーク整備等についての助言、情報の提
供等を行っており、住基ネット整備に必要な高度な技術と知識を有してい
るとともに監視・保守業務についても高度なノウハウを有している。H12
年 10 月に当時の自治省から住基ネット都道府県ネットワークの構築を受
託可能なのは住民基本台帳法に基づく排他的権利を有する指定情報機関
だけであるとの見解が示されている。
175
委託料の算定
積算方法: 市場調査と民間会社との契約約款に基づいた経常経費とその
1.5%相当の委託管理費の合計額
見積書の内容:「一式」として提出され、詳細は不明。
その他
民間業者に再委託している。
市町村合併に伴い、移設及び撤去経費、移設に伴うネットワーク機器の解
約料が年度途中で発生し、契約変更を2度行っている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:住基ネットの一部である北海道ネットワークを監視保守する業務を
委託する必要性・有効性について特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:住基ネットは改正住民基本台帳法に基づき、本人確認情報の提供や
住民基本台帳に関する事務処理などを行う制度であり、北海道ネットワークはそ
の全国システムの一部を担っている。そのためシステムの安定稼動は不可欠であ
り、全国のシステムと常に連携していることが必要である点に鑑みると、専門知
識を有する者が迅速に対応する必要性が極めて高く、これを道が直接事業として
行うことは困難であり、外部委託の必要性がある。また、業務に要するコスト面、
業務の効果面においても道職員自らが行うよりも、住基ネットの監視保守業務に
精通している者に業務委託することが最も低コストかつ効率的な業務遂行が期待
できる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:民間業者に再委託している点で、特例政令第 10 条第 1 項 1 号の要件
である特殊な技術に係る特定役務の調達先が委託先に特定されていると言えるか
どうか判断が難しいところである。
(b)理
由:委託先の(財)地方自治情報センターが、すべての都道府県のネッ
トワークシステムについて監視保守することができないことから、全国的に監視
保守業務のできる民間業者に再委託をしている。この点で特定役務の調達先とし
て委託先が相手方として特定されていると言えるのかどうか判断が難しいところ
である。
しかしながら、住基ネットシステム上の情報については、総務大臣が指定する
指定情報処理機関である委託先だけが唯一事務処理できる者とされている(平成
11 年 11 月 1 日自治省行政局振興課長通知)。したがって、委託先をもって、住基
ネット情報の事務処理という特殊な技術に係る特定役務を調達できる特定の者と
せざるを得ない。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:委託先の算定した積算額に基づいて道の積算額が決定されているが、
委託先が住基ネット情報の事務処理という特殊な技術に係る特定役務を調達でき
る特定の者であることからやむを得ない。
176
(b)理
由:全都道府県に対し、住基ネットに参加する自治体ごとにパターン化
して料金を積算したものを提示している。
統一した基準に基づき算出するもので、
道が積算内容に異論を唱える余地がない。
177
7
住民基本台帳ネットワークシステム用サーバ機器等及び接続用ネットワーク機器等
管理運用業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
住民基本台帳ネットワークシステム用サーバ機器等及び接続用ネットワー
ク機器等管理運用業務委託契約
担当部課
企画振興部地域振興室市町村課
委託先
民間企業
業務内容
住民基本台帳ネットワークシステム(以下「住基ネット」という。)用サー
バ機器等及びネットワーク機器等一式の保管管理、運用手引書に基づく操
作及び道の支持する作業の実施など
業務目的
住基ネット北海道ネットワークの管理者として道内の市町村の本人確認情
報の記録・保存及び関係機関への通知を行うためのシステム用サーバ機器
等及び住基ネット接続用機器等の管理運営業務を委託する。
契約の推移
(事業開始は H13
年度
委託先選定方法
積
H14
特例政令による
35,282,860 円
32,634,000 円
年度から)
算
額
委託金額
随意契約
H15
同
上
32,636,620 円
32,634,000 円
H16
同
上
32,636,620 円
32,634,000 円
H17
同
上
32,636,620 円
32,634,000 円
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
理由
理由:住基ネットは、利用頻度の高い全国的なネットワークであり、日々
異動データが送信されている。
他社と新規契約をする場合、移設作業等で 2 ヶ月以上の期間を要しネット
ワークの運用に支障が生じる。北海道サーバは 19 年 1 月に賃貸借期間が終
了するが、移設期間中に本人確認情報データの受信等の作業を妨げないよ
うにするには代替機を用意しなければならないが、極めて高度かつ専門的
なサーバのため市場流通性がなく、短期間のレンタルは不可能で、新たな
サーバを別に1台調達する必要が生じる。
そのために、従来からの委託先を事業者と選定する。
委託料の算定
積算方法:市場実勢価格により積算。
見積書の内容:見積書により「一式」として提出され、詳細は不明。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:住基ネット用サーバの管理運用業務委託の必要性及び有効性につい
て特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:住基ネットは改正住民基本台帳法に基づき、本人確認情報の提供や
住民基本台帳に関する事務処理などを行う制度であり、北海道サーバは住基ネッ
178
トからの情報を受信するシステムであり、その安定稼動が不可欠である点に鑑み
ると、専門知識を有する者が迅速に対応する必要性が極めて高く、これを道の直
接事業として行うことは困難であり、外部委託の必要性がある。また、業務に要
するコスト面、業務の効果面においても道職員自らが行うよりも、住基ネットの
管理運用業務に精通している者に業務委託することが最も低コストかつ効率的な
業務遂行が期待できる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項第 1 号の随意契約を認める例外要件について、
明確な基準も無く、当該要件を判断した経過も曖昧である。本件においては、根
拠法令として 1 号と明記しているが、1 号よりも 2 号による例外要件の検討の方
が相当と思われ、理由の記載も 2 号についての判断をしているようにもとれるが、
その点は曖昧である。
(b)理
由:担当課は、予定価格 3,200 万円以上の契約はすべて特例政令の処理
をするという認識であるが、例外要件について、特許権等の排他的権利若しくは
特殊な技術に係る特定役務の調達の相手方が特定されているか否かという前提に
基づく判断はされていない。
住基ネットからの情報受信に支障があるかが問題だとすれば、1 号よりも 2 号
に拠る方が相当であり、記録上は 2 号の要件該当性を判断しているようにもとれ
るが、理由に裏づけが無いのでその詳細は不明である。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
なお、平成 19 年度中に機器の更新が予定されているが、その際に契約方法につ
いて、入札も含め検討するとのことであり、適正な運用が期待される。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:委託先の積算に基づく金額により平成 15 年以降同じ内容で契約が更
新されており、前年を踏襲しているだけであるが、平成 15 年の委託先の積算に妥
当性があったのか不明であるとともに、その後、毎年の積算の検討が行われてい
ない点にも問題がある。
(b)理
由:平成 15 年以降の積算調書、見積書、予定価格調書の根拠資料は、い
ずれも同一のものであり、前年を踏襲していると見るほかない。
この点、積算に関するヒヤリングの結果、平成 14 年の契約時に複数の会社から
市場調査を行い、その平均額をとって積算調書を作成し、その範囲内の委託額で
契約していた。その翌年 15 年は、前年度積算額をかなり下回っていた委託先の積
算に基づき道の積算調書を作成し、その範囲内ということで前年契約額と同額で
契約を締結し、その後は前年どおり更新していたということであった。
平成 15 年の積算額は確かに前年度よりはかなり低い金額になっているが、果た
179
してその積算内容が適正なものであったか不明である。委託先にとっては前年と
同額であるから不利は無いであろうが、道にとって委託先の積算にそのまま依拠
することが相当であるのか自ら検証すべきであると思われるが、その検証の過程
は見えない。当初の積算より低額だからよいということにはならない。
その後は、前年の積算表と同じもの 1 枚が積算資料となっており、それ以外に
価格の検討が行われていないことからすると、毎年積算の見直しも行わず前年を
踏襲しているだけとみるのが相当である。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、管理運用業務契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げ
た内容を充足する積算を行うよう努めるべきである。
180
8
電子調達システム基本設計業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
電子調達システム基本設計業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報政策課
委託先
民間企業
業務内容
電子調達システムの基本設計、モデルシステムによる実地検証及び事業者
へのアンケート調査を行う。
業務目的
「電子道庁」実現の一環として、公共工事等における入札手続の電子化を
図ることにより、調達手続に係る受発注者におけるコスト縮減、事業執行
の迅速化・効率化及び入札の透明性の向上を図る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
(事業開始は H17
H17
特命随契
積算額
40,320,000 円
委託金額
40,293,750 円
年度から)
委 託 先 選 定 の 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
理由
理由:公募型プロポーザル
委託料の算定
積算方法:業務ごとの SE 単価に工数を乗じて算出した基本設計費及びモデ
ルシステムによる実地検証のための実地検証機器費、実験環境構築費によ
り積算
見積書の内容:基本設計の業務ごとの SE 単価に工数を乗じて算出した基本
設計費及びモデルシステムによる実地検証費、アンケート調査費、整備計
画案作成費、機器費用により積算
その他
公示関係:特例政令第 11 条に基づく公示を行い、随意契約によった理由と
して特例政令第 10 条第 1 項第 1 号を掲げている。
再委託関係:民間企業に再委託が行われている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について外部委託の必要性及び有効性について特段指
摘する問題点は認められない。
(b)
理
由:道の電子調達システムの基本設計とともに模擬的な電子入札を行い、
そこでの意見を基本設計に反映させる実地検証も行うには、公共工事の調達業務
の始まりから終わりまでのあらゆる面に精通するだけではなく、それらの情報や
作業が無駄なく効率的に流れていくようなシステムを構築することが必要とされ、
総合的な知識や柔軟な発想力が不可欠であり、その業務を道の直接事業とするこ
とは困難であり、外部に委託する必要性は高い。また、そのようなシステムの構
築には外部に委託する方がより有効性が高いと考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
181
(a)監査結果:①本契約は、特例政令の適用を受ける金額以上であり特命随契をす
る場合、特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件に該当するかを検討しなければな
らないが、特例政令の例外規定の解釈に誤りが見られ、特例政令第 10 条第 1 項各
号の検討がなされているとは言い難い。
②公募型プロポーザル方式で委託先を選定することにより特例政令第 10 条第 1
項第 1 号の例外要件をクリアーするかについて検討されていない。
なお、プロポーザル方式の内容については、公募方式、審査手続の整備、基準
の妥当性、審査内容の妥当性に大きな問題性は認められなかった。
③さらに、委託先から再委託されているが、特殊な技術の調達先が特定されてい
ることを理由に特例政令が随意契約を限定していることと再委託の当否について
検討されていない。
(b)理
由:①について・・・電子調達システム基本設計業務は、特例政令の適
用になる特定役務の調達契約に該当すると思われるが、そうであれば、特例政令
第 10 条第 1 項第 1 号の要件をクリアーするかを検討しなければならないところで
あるが、決定経過を見ると、運用方針により特命随契が可能と判断しているだけ
であり、特例政令による例外要件の検討がされていない。
この点、道は根拠規定として運用方針を掲げているが、実質的には特例政令に
該当するものと認識しており、特例政令に定める北海道公報への公示手続は行っ
ていると述べ、確かに特例政令第 10 条第 1 項第 1 号により特命随契する旨の公示
が行われている。
しかしながら、本章の総論2で述べたように、特例政令は第 1 条において、
「地
方自治法施行令の特例を設けるとともに必要な事項を定めるものとする。」とし
ており、施行令に優先する特別法であることを明示し、その上で特例政令第 10
条第 1 項第 1 号以下の例外要件を定めている。
したがって、特例政令の適用される特定調達契約については、一般法である施
行令よりも特例政令が優先的に適用になり、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 5 号、
第 8 号または第 9 号のみを明示し、第 1 号から 4 号、第 6 号、第 7 号を除外して
いることから、この除外規定である第 2 号(これを具体化する運用方針第 3 節関
係 1 の(2)
)を根拠に特命随契の締結はできない。
本契約は特例政令による例外要件に該当するかの判断を欠いていたと言わざる
を得ず、また、特例政令と運用方針との相互関係の解釈に関し誤りがあったと言
わざるを得ない。
②について・・・特例政令第 10 条第 1 項第 1 号により、特許権等の排他的権利若
しくは特殊な技術に係る特定役務の調達の相手方が特定されているような場合に
その相手方との特命随契が認められることになっているが、委託先を公募してプ
ロポーザル方式で選定する場合、委託先の技術は要件に該当するような特殊技術
と言えるのか検討する必要があると考える。この点、本契約は上記の視点から検
討していない。
③について・・・さらに、再委託する場合にも特許権等の排他的権利若しくは特
殊な技術に係る特定役務の調達の相手方が特定されていると言えるのか疑念が生
182
じるところである。少なくとも委託先以外の相手方が存在するのであり、文理解
釈的には例外にあたらないのである。
委託先による総合的な指揮監督の下にあるとの理由で、委託先の関連会社に再
委託をしているが、プロポーザル審査の対象になり、審査をパスしたのはあくま
でも委託先であり、再委託先ではない。しかも、再委託の内容について特段吟味
していない状況では委託先に決定した意味がなくなってしまう。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:基本設計に関する人工所要額の算出根拠の詳細が曖昧である。業務
とそれに対応する SE の必要人数、SE 単価の各数字についての説明が不十分で、
実態に合致しているのか判然としない。
(b)理
由:基本設計に関する人工所要額の算出根拠は、担当課責任者が適当な
情報関連業者等に口頭聴取する方法などで積算したというもので、記録上残され
ているものではなく、事後的な検証は困難である。委託先からの見積書には内訳
が添付されておらず、設計にどの程度の人員の SE を委託先が予定していたのかわ
からない。また、基本設計後に実際にどの程度の SE が開発に当たり必要であった
か事後的な報告も受けていない。いずれも道の側で要求していないからである。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
183
9
住民情報関連業務システム基本設計業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
住民情報関連業務システム開発実証事業業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報政策課
委託先
民間企業
業務内容
① プログラム開発委託業務:ソフトウエア機能検討委託業務と統括委託業務の成
果を元にWeb化や共同利用のために必要となる機能を中心に選定ソフトウ
エアの改修を行う業務
住民情報関連業務の「住民基本台帳」
「外国人登録」
「印鑑登録」「選挙人名簿」
の4業務のうち、道は「外国人登録システム」と「選挙人名簿システム」の開
発を担当する。
②利用実証実験:LGWAN接続によるシステム運用の確認及び評価を行う。北
海道内市町村における住民情報関連業務システムの操作性、機能性、他の評価
確認を支援し、評価シートを回収/分析する。
業務目的
(財)地方自治情報センター(LASDEC)の助成を受け、高知県と北海道が連携し
て市町村業務の基幹システムである住民情報関連業務の共同利用型のシステムを
高いセキュリティを確保したシステムとして効率的に構築していく。
構築にあたって、高知県が実施した概略設計をもとにシステムの開発実証を行い
「ソフトウエア機能検討」と「統括」、
「プログラム開発」、「利用実証実験」の4
業務に分割して実施する。このうち、道が「プログラム開発」と「利用実証実験」
の2業務を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
(事業開始は
H17
特命随契
92,999,445 円
委託金額
92,400,000 円
H17 年度から)
委 託 先 選 定 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
の理由
理由:LASDECから北海道との統合連携システム(HARP)を介したデー
タ連携の実現が前提条件となっており、統合連携システム(HARP)を経由し
たデータ連携を行うためのノウハウを所有しているのは、H15 年度総務省の「複
数市町村等共同アウトソーシング・システム開発事業」で開発した統合連携シス
テム(HARP)のノウハウを引き継ぐ委託先のほか存在しない。他に代替性の
ないものであることから委託先を選定。
委 託 料 の 算 積算方法:プログラム開発分=業務ごとの SE 単価に工数を乗じて算出。利用実証
定
実験=業務ごとの SE 単価に工数を乗じて人件費とハードおよびソフトの機器費
用の合算
見積書の内容:内訳に関する資料なし。
その他
公示関係:特例政令第 11 条に基づく公示を行い、随意契約によった理由として特
例政令第 10 条第 1 項第 1 号を掲げている。
再委託関係:契約直後、18.1.10 に2社に再委託され、翌日それを承諾している。
184
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について外部委託の必要性及び有効性について特段指
摘する問題点は認められない。
(b)理
由:平成 15 年 4 月総務省が「複数市町村等共同アウトソーシング・シス
テム開発実証事業」を公募し、そこで道が選定され、全国の自治体が利用できる
電子自治体の基盤システム構築を図るための事業が本件事業である。専門的なシ
ステムの構築を高知県の選定した業者と連携する必要があり、道の直接事業とす
ることは困難であり、また、外部委託する方がより有効に事業目的を達し得ると
考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:①前件の電子調達システム基本設計業務委託契約(2)の監査結果
①で述べたと同様の指摘をする。本契約も、特例政令の適用を受ける金額以上で
あり、特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件に該当するかを検討しなければなら
ないが、特例政令の例外規定の解釈に誤りが見られ、特例政令第 10 条第 1 項各号
の検討がなされているとは言い難い。
②さらに、前件の電子調達システム基本設計業務委託契約(2)の監査結果③で
述べたと同様の指摘をする。委託先から再委託されているが、特殊な技術の調達
先が特定されていることを理由に特例政令が随意契約を限定していることと再委
託の当否について検討されていない。
(b)理
由:前件の電子調達システム基本設計業務委託契約の(2)の理由①お
よび③で述べたと同様の理由である。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:問題性を指摘する点はない。
(b)理
由:本件の費用は宝くじ収入事業であり、その統括は高知県が行ってい
るため、積算について道が主導的に行う状況にないとのことである。
185
10
電子申請システム運用保守業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
電子申請システム運用保守業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報基盤課
委託先
民間企業
業務内容
電子申請サービス:申請者が電子申請を行うために必要な機能、職員が申
請データの内容を確認する機能及び管理機能等、電子申請に必要な一連の
サービスを提供する。
サポートサービス:データセンター内にヘルプデスクを設置し、電子申請
サービスに係る故障対応など電子申請サービスの利用者をサポートするた
めのサービスを提供する。
運用保守サービス:システムの運用保守、障害対応等電子申請サービスの
運用に必要な一連のサービスを提供する。
業務目的
H15 年度に構築し、H16 年度に機能拡充を行った電子申請システムの円滑
な運用及び安定稼動のために必要な電子申請サービス、サポートサービス
及び運用保守サービスの委託を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
(事業開始は H16
H16
特例政令による
52,516,800 円
52,516,800 円
58,972,200 円
58,950,360 円
年度から)
算
額
委託金額
随意契約
H17
同
上
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
理由
理由:委託先は道の申請業務全体の電子化を担った事業者であり、現シス
テムのノウハウを有している。委託事業者を変更する場合、運用形態やネ
ットワークなどの設計変更、再構築が必要なほか、長時間運用を停止しな
ければならない。
以上の理由から、本業務に必要な遂行体制を整えているのは委託先のみで、
他の業者では代替できない。
委託料の算定
積算方法:業務ごとの SE 単価に工数を乗じて算出したシステム運用保守費
及びデータセンター等の利用料の合算額により積算
見積書の内容:月別内訳表のみでその詳細は不明。
その他
3社に再委託されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について、外部委託する必要性については特段指摘す
る問題点はないが、システムの利便性拡充のためのコストの点で経済性に検討の
余地があった。
なお、その後、新たな電子申請システムの開発により低コスト化が図られてい
186
る。
(b)理
由:電子申請システムは、平成 15 年に開発され、平成 16、17 年と運用
されてきているが、システムの安定稼働は不可欠であり、専門知識を有する者が
運用保守を行っていく必要性が極めて高く、この業務を道が直接事業として行う
ことは困難であるから外部委託の必要性がある。
他方、この電子申請システムが広く道民の利用しやすいシステムとなっていく
ためには、できるだけ多くの行政手続の申請が可能となり、利便性の拡充が図ら
れていくことが必要であり、外部委託することによりそれが低コストで実現され
ることで経済性を充たしていくことになる。
ところが、本システムにおいては、道の取り扱う 3,000 を超える行政手続のう
ち 42 の手続きを扱えるに留まっており、申請できる手続をシステム内に拡大する
には 1 件あたり 10 から 20 万円のプログラム変更コストがかかることから、経済
的なシステムと言えるのか、その運営保守にかける委託費用と効果のバランスを
検討する必要があった。
この点、道においても既に本システムの問題性を把握し、平成 17 年度に別シス
テムを基盤とする新たな電子申請システムを開発し、本システムの運用保守契約
は、平成 17 年度をもって終了している。平成 18 年度から新たな電子申請システ
ムの運用保守委託契約が締結され、このシステムにおける申請手続拡充のための
プログラム変更コストは、従前の 8 分の 1 程度とのことであり、低コスト化が実
現されている。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の「著しい支障が生じるおそれ」につ
いて、根拠は決定書に記されているが、そもそも当該政令における「著しい支障
が生じるおそれ」とは一体どの程度の支障を示すものなのかという前提認識が曖
昧である。また、具体的にどのような経過で要件に該当すると判断したのかその
検証経過も十分に確認できない。さらに、委託先から3社に再委託されているが、
委託先以外から調達する場合の著しい支障のおそれを理由に委託先が限定されて
いることと再委託の是非について検討されていない。
(b)理
由:①特例政令が、内外無差別の原則を適用する政府調達に関する協定
を実施するために定められたものであること、随意契約によることができる場合
を具体的かつ厳格な内容で定めていることに鑑みると、
「著しい支障が生じるおそ
れ」についてもかなりレベルの高い支障発生のおそれが必要と考えられるが、そ
のような前提認識をもって要件該当性を判断しているとの経緯が認められない。
②委託先以外より調達した場合の支障の程度について具体的にはどの程度のもの
なのか検証していない。
③3 社に再委託されているということは、その部分については委託先以外からも
調達し得る可能性があるとも解され、2 号の要件との関係を検討する必要がある
と思われるが、その点の検討も無く、再委託の内容も把握していない。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
187
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
特に、再委託する場合は、特例政令による随意契約の要件と再委託理由とが不
整合とならないよう検討し直して当否を判断していくべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:道の積算は、道が独自に積算したとは考えられず、算定根拠の妥当
性に疑問が残る。
(b)理
由:委託業務処理要領においては 2 人工となっているにもかかわらず、
実際には処理増加分の人件費 0.5 人工が加算された見積額が提示され、その内容
に沿う積算調書が作成されていること、事前に委託先よりどの程度の経費増加に
なるかを聴取し、それにあわせていること、その結果として見積書と予定価格の
金額がごくわずかしか違わないことなどから、道が委託先から聴取した見積額を
そのまま道の積算額として定めていると考えられる。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
188
11
行政コミュニケーションシステム等運用・保守管理業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
行政コミュニケーションシステム等運用・保守管理業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報基盤課
委託先
民間企業
業務内容
行政コミュニケーションシステムの
①運用管理②運用管理支援③ネットワーク回線監視④LGWAN アクセス回線
監視⑤定期点検⑥ウィルス対策等ソフト更新・サポート⑦機器保守
業務目的
行政情報化計画に基づき行政事務の効率化、高度化、行政サービスの向上
を図るための基盤として整備した、行政情報化基盤ネットワーク、行政情
報コミュニケーションシステム及びインターネットシステム、並びに北海
道高速情報通信基盤システム、総合行政ネットワークの安定稼動を確保す
ることを目的とする。
契約の推移
年度
積
算
額
委託金額
法
(事業開始は H10
年度から)
委託先選定方
H12
特例政令によ
448,389,091 円
447,086,850 円
る随意契約
H13
同
上
460,092,408 円
459,758,943 円
H14
同
上
470,494,812 円
468,086,565 円
H15
同
上
410,599,162 円
406,516,320 円
H16
同
上
354,058,219 円
343,794,780 円
H17
同
上
366,502,500 円
337,365,000 円
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
理由
理由:行政情報化基盤ネットワーク及び北海道高速情報通信基盤システム
は、全道の機関を結ぶ大規模かつ様々なメーカーの機器・ソフトウエアで
構成される全庁的なネットワークであり、行政情報コミュニケーションシ
ステムやインターネットに利用されている。
運用保守管理については、ネットワークの安定稼動を確保するため、ネ
ットワーク機器の管理、IP アドレスの管理、ネットワークの負荷状況の定
期的管理、セキュリティ管理、障害管理など内容が多岐にわたる。
さらに、ネットワーク上の異常発生の場合、原因が回線なのかそれ以外
なのかの切り分けを行って回復処理まで行う。
行政事務に不可欠なシステムであり、4月1日から安定運用する必要が
ある。
従来の委託先(民間会社)は、本システムの設計及び工事監理、インタ
ーネットシステムの設計、行政情報コミュニケーションシステムの監督業
務など、システムの運用・保守管理に一貫して従事し、システムのノウハ
ウを有する唯一の者である。
189
この従来の委託先から必要な設備、担当 SE 等ネットワーク全般に関する
一切の営業を譲り受ける会社であり、従来の委託先の条件を充足するのは
委託先だけである。
他の業者に委託する場合、システムの構成等について公開する必要があ
るが、セキュリティ上問題があり、公開できない。
委託料の算定
積算方法:機器費用は個別の機器費用に保守料率、保守期間を乗じて積算
している。SE 業務については、SE 単価に作業工数を乗じて積算している。
上記両者の合算額により積算
見積書の内容:内訳の添付なし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について外部委託の必要性及び有効性について特段指
摘する問題点は認められない。
(b)理
由:行政情報コミュニケーションシステムは、全道の機関を結ぶもので
あり、情報の迅速な伝達、情報共有、通信コストの節約など様々な行政事務に利
用され、非常に重要なシステムであり、その安定稼動が要請されるため、その運
用・保守管理は不可欠である。システムの専門性から道が直接事業として行うこ
とは困難であり、外部委託の必要性があり、その方がより有効にシステムを機能
させることができると考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の「著しい支障が生じるおそれ」につ
いて、根拠は決定書に記されているが、そもそも当該政令における「著しい支障
が生じるおそれ」とは一体どの程度の支障を示すものなのかという前提認識が曖
昧である。また、契約前のどの時期に、具体的にどのような経過で要件に該当す
ると判断したのかその検証経過も十分に確認できない。
(b)理
由:前件の電子申請システム運用保守業務委託契約の(二)
(2)(b)
理由①、②に同じ。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:道が独自に積算しておらず、算定根拠の妥当性に疑問が残る。
(b)理
由:道へのヒヤリングおよび積算資料から、契約の2週間ほど前に道か
ら委託先に対し見積書の作成を依頼し、その提出を受け、その後、作業時間につ
いて前年度実績を基にヒヤリングを行い、
見積内容の妥当性の確認を行った結果、
作業人数が確定したという積算経緯の説明を受けた。
190
この点について検証したが、道の積算資料に添付されている工数一覧表は妥当
性の確認を行ったとされるが、委託先の提出した一覧表をそのまま添付しており、
また、ヒヤリングの経過は残されていない。妥当性の確認については、第三者で
はなく委託先から出されたものを使用しており、積算根拠が十分とはいえない。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
191
12
総合行政情報ネットワーク設備等保全委託契約
(一)契約の概要
契約名
総合行政情報ネットワーク設備等保全委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報政策課
委託先
民間企業
業務内容
①総合行政情報ネットワーク設備の回線監視業務
ステムの回線監視業務
②道税総合情報処理シ
③ダム情報システム回線監視業務
④総合行政情
報ネットワーク設備の保守点検業務 ⑤電話交換設備の保守点検業務 ⑥
本庁舎における電話交換取扱業務 ⑦道税総合情報処理システムの保守点
検業務
業務目的
⑧ダム情報システムの保守点検業務
北海道総合行政情報ネットワーク設備の効果的運用を図るため保守点検業
務を委託し、適切な維持管理を行う。
契約の推移
年度
(事業開始は S56
H12
特命随契
492,794,274 円
491,400,000 円
H13
同
上
488,386,500 円
488,145,000 円
H14
同
上
489,764,100 円
486,150,000 円
H15
同
上
471,468,900 円
471,450,000 円
H16
同
上
451,236,450 円
450,975,000 円
H17
同
上
437,747,100 円
436,800,000 円
年度から)
委託先選定方法
積
算
額
委託金額
委 託 先 選 定 の 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
理由
理由: 北海道総合行政情報ネットワークは、障害発生時に原因解明、復旧
までを確実かつ、より迅速に対応することが求められる。
本ネットワークを構成する通信設備は、通信機器メーカー3 社の機器が
有機的に接続され一つのシステムを構成しているため、いずれの設備にも
精通しているとともに、故障発生の場合には、3 社それぞれの特許部分に
係る技術的な支援や各社間の装置に亘り発生する機器障害に対し、ネット
ワーク全体としての対応が必要になる場合など、3 社の技術的な助言、措
置方法などの支援が確実に得られる業者であることが必要。この基準を満
たすのは委託先しかない。
委託料の算定
積算方法:人工単価に工数を乗じた直接人件費に直接物品費、業務管理費、
一般管理費を上乗せして積算している。
見積書の内容:見積の内訳なし。 3 回にわたり順次提出されている。
その他
契約日に多数の社外技術者に再委託を行っている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について外部委託の必要性及び有効性について特段指
192
摘する問題点は認められない。
(b)理
由:本件業務は、災害対策基本法の要請から整備された道の防災行政無
線ネットワーク設備(日常的には行政事務の連絡方法として使用)を保全するも
ので、人命に関わるネットワークの安定稼動の要請は強いものがあり、保全業務
の必要性がある。それとともに保全業務は道内全域に及び、かつ、専門的技術が
必要なため道の直接事業とすることは困難であり、外部委託の必要性も認められ、
そのような能力を有する外部の者に委託することがシステムを最も有効に稼動さ
せることになる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:運用方針によって随意契約をしたことにつき、問題があると指摘す
る事項はない。
(b)理
由:
(ア)まず、特例政令の適用になる特定役務の調達契約に該当するか
について、担当課は出納局に問い合わせ、政令の予定する付表 4 の「サービス」
に係る役務に該当しない旨判断している。
業務の大部分が各種装置の点検や回線の監視業務であり、明確に付表 4 のどの
「サービス」に該当するというものがない。
(イ)次に、運用方針によって「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
との要件判断を行っている。ヒヤリングによると、電波法の規定により無線局の
定期検査の実施があるため登録点検事業者に認定されたものである必要があり、
また、通信機器メーカー3 社の機器がネットワークを構成しているため、その 3
社の機器すべての点検に精通しているものが望ましく、この条件を充足するもの
が委託先しかいないということであった。この点、各メーカー関連の機器点検業
者間で競争入札を行い委託する可能性がないのか疑問がないではないが、各メー
カーの機器の特殊性、相互の機器の関係を理解することは委託先以外では困難も
予想され、委託先をもって随意契約の相手方としたことに問題があると指摘する
ほどではないと考える。毎年、登録点検業者の認定の有無を客観的資料に基づい
て判断しているとのことであり、検証も行われている。
なお、契約日に多数の社外技術者に業務の再委託を行っているが、個別点検業
務の技術者であり、個別には代替性あるとしても、ネットワーク全体の保全とい
う目的に関しては委託先のみがなし得るものと考えられる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:業務の内容と技術者の資格についての対応関係について、根拠が必
ずしも明確とは言えない。
(b)理
由:単価や経費率については国土交通省監修の積算基準における道の数値
の平均的なものを採用しており、
また、
歩掛についても 3 社から見積もりを取り、
その最低値を採用しており、客観的な資料を根拠にしている点で妥当なものと解
されるが、業務内容と技術者の資格区分については、資格者の一般的業務内容は
示されているが、
その業務に当該技術者をあてはめた根拠が必ずしも明確でない。
193
なお、本件では 2 度にわたり見積もりの減額を委託先に求めており、ほぼ適正な
資格区分で技術者を配置して積算していたものと推測される。
(c)改善事項:保全委託業務を継続していく場合、業務の内容と技術者の資格につい
ての対応関係を客観的に明らかにしていくべきである。
194
13
北海道総合行政情報ネットワークシステム再構築基本設計・実施設計業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
北海道総合行政情報ネットワークシステム再構築基本設計・実施設計業務
委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報基盤課
委託先
民間企業
業務内容
基本設計:基本設計に係る要件調査、システム基本機能の作成、工事設計
のための要件調査、運用計画作成のための要件調査、基本設計書の作成
実施設計:概要及び基本仕様の作成、仕様書の作成、工事図面・運用図面
の作成、積算書の作成、実施設計書の作成
業務目的
北海道総合行政情報ネットワークについて、防災機能の信頼性を維持し、
地上系 60MHz の代替回線への移行及び各種ネットワーク機器の老朽更新等
を効率よく行うとともに、構築経費や維持経費の軽減を図った再構築を行
うため最新の情報通信技術を取り入れた、基本設計及び実施設計を作成す
る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
(事業開始は H17
H17
特命随契
77,494,428 円
委託金額
77,448,000 円
年度から)
委 託 先 選 定 の 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
理由
理由:公募型プロポーザル方式
委託料の算定
積算方法:人工単価に工数を乗じた直接人件費に直接物品費、業務管理費、
一般管理費を上乗せして積算している。
見積書の内容:見積書の内訳書の添付なし。
その他
現地調査業務について4社に再委託
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件委託業務について外部委託の必要性及び有効性について特段指
摘する問題点は認められない。
(b)理
由:北海道総合行政情報ネットワークは、道の防災行政無線および日常
的には行政事務の連絡手段として利用されており、その必要性は極めて高いもの
であるが、現在、地上系 60MHz の代替回線への移行及び各種ネットワーク機器の
老朽更新等が迫られており、これを効率よく行うとともに、構築経費や維持経費
の軽減を図った再構築を行う必要性がある。この事業については道の現状を把握
しつつ新たな発想に基づく提案が必要であることから外部の専門業者に委託する
必要性があり、かつ、その方が有効な提案を期待できる。
また、このネットワーク構築には 200 億円以上の費用がかかっており、従来の
195
設備をできる限り生かしながら最も低コストで効率的に再構築する必要性が高い
ことに鑑みると、その基本設計・実施設計業務委託経費として本件程度の費用を
投じても経済的合理性の点では妥当なものと考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:基本設計および実施設計業務について、公募型プロポーザル方式に
より選定した業者と運用方針第 3 節関係 1 の(2)による特命随契を行っていること
について、特段指摘する問題はないが、現地調査業務まで含め代替性がないもの
として特命随契をしたことについては問題がないとは言えないと考える。
(b)理
由:
(ア)まず、特例政令の適用になる特定役務の調達契約に該当するか
について、担当課は出納局に問い合わせ、政令の予定する付表 4 の「サービス」
に係る役務に該当しない旨判断している。
委託業務の内容を検討したが、行政ネットワークを再構築するために必要な設
備やその設置計画の立案を委託するものであり、明確に付表 4 のどの「サービス」
に該当するというものがない。
(イ)次に、運用方針によって「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
との要件判断を行っている。本件では、平成 16 年度に再構築のための調査検討業
務をプロポーザル方式により本件委託先に依頼し、それに基づき基本計画書が提
出されている。本件は、さらにその基本計画に基づき、基本設計及び実施設計を
委託するもので、この部分については、事業の性質上、企画力、技術力に優れた
業者に委託することが効果的であり、単純な価格競争には馴染まないものである。
プロポーザル方式により選定された業者の提案内容は、基本計画を実現するため
に最良のものと判断されたものであるから他者が代わり得るものではないと考え
られ、上記の要件をクリアーするものと考えられる。
(ウ)しかしながら、本件では、委託契約の一部である現地調査業務を 4 社に再
委託しており、道へのヒヤリングによると、現地調査業務について業務量が膨大
であることから委託先が再委託をすることについて了解済みであったとのことで
ある。
現地調査については、本庁から各支庁に対する実施依頼書が出されており、そ
の内容から見て、どうしても委託先と技術的な関連のある特定の会社でなければ
なしえないほどの業務とは本件では認定できず、もし、そのような特殊な業務で
あればプロポーザルの審査においても重要な審査項目となってくるところである
がそのような状況は認められない。現地調査業務は、委託先からの再委託によら
なくても、別途、道と現地調査業務の委託を受けた業者が、委託先の具体的な指
示を受けた上で行うことも可能であると考えられる。
とすると、現地調査業務についてもこれを当然に代替性が無いものとして特命
随契をすることに問題性を感じる。現地調査業務を本件委託業務の内容から切り
離して個別に入札等の方法により契約することも可能であったのではないか、そ
の検討が必要だったのではないかと考える。
もともと調査業務を履行できる業者は複数存在するのであるから、それらの会
196
社による競争原理が働くことでコストの削減が可能である。委託先に再委託先を
自由に選定させることは、委託先と関係のない業者の参入の機会を元から奪うも
ので道の事業委託の公平性、透明性を失わせるものである。また、価格競争の中
で委託先と道が直接契約する場合と委託先を経由して再委託する場合とでは、通
常、後者の方が競争も無く、中間マージンも想定されることから委託額が高額に
なってしまうおそれがある。本件では、現場調査業務に費やす費用がかなりの部
分を占めることから、コスト削減のためにも分離して別途発注することも検討さ
れなければならなかったのではないかと考える。
(c)提案事項:もともと再委託が予定されているものについては、その部分を分離
して別途契約することができないか検討するようにすべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:道独自の積算が行われているのか疑問がある。
(b)理
由:担当課からのヒヤリングによると、予算要求時の段階で委託先に作
業項目と SE 区分及び工数の見積りを出してもらっているとのことであるが、
積算
調書に積算根拠の裏付けとなる資料が添えられておらず、道がどの程度の積算を
行っているかが判然としない。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(4)本件では、プロポーザル方式による事業者選定方法が採られているが、その選考
過程について、以下検討する。
(a)提案を求める者(プロポーザルに参加させる者)の選考範囲の相当性
公募がなされており、参加者の選考に問題は認められない。
(b)プロポーザル審査に関する手続規定の整備状況及びその妥当性
本事業遂行にあたって、北海道総合行政情報ネットワークシステム再構築基本
設計・実施設計業務概要、同基本計画書、同プロポーザル説明書、同プロポーザ
ル審査会設置要領、参加表明書作成要領、企画提案書作成要領、同プロポーザル
審査要領を整備している。
審査手続の公平性が各所で配慮されており、特に問題性は認められなかった。
(c)プロポーザル審査基準の妥当性
システムの基本設計および実施方策に70%が配分され、その他評価ポイント
も本業務を行うために必要な項目と認められ、審査基準として相当性がある。
(d)プロポーザル審査内容の妥当性
外部の市町村委員を審査会のメンバーとし、審査要領に基づく評価がなされて
おり、客観的な判断がされているものと思われる。事業者として、道のプロポー
ザル審査に適合した者であり、選択の相当性は認められる。
197
14
電子計算機で処理する業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
電子計算機で処理する業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報基盤課
委託先
民間企業
業務内容
①電子計算機器の操作②事後処理(コレートアンドデタッチャー処理)③処
理物件の授受及びメール便の運行④磁気テープ及び専用帳票の管理・保管⑤
消耗品の発注・管理⑥技術的支援
業務目的
当該業務は、道の電算処理業務に伴う機械処理等を運用するものであり、こ
れまで 24 時間体制で行っている。この業務を適正かつ効率的に行うためには
電子計算機に関する高度な技術と知識及び技術水準の確保が必要である。こ
れらを確保するためには、人事・労務管理上、委託により行うことが効果的
かつ経済的であることから、業務委託を行う。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
( 事 業 開 始 は H9
H14
特例政令による 465,841,138 円
委託金額
465,381,000 円
随意契約
年度から)
H15
同
上
436,843,127 円
436,800,000 円
H16
同
上
422,285,605 円
422,184,000 円
H17
同
上
402,363,048 円
401,688,000 円
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
理由
理由:道の電算処理業務に伴う機械処理等を運用するものであり、継続的か
つ確実に電子計算処理が行われる必要があることから、電子計算機に関する
高度な技術や有事及び障害に対する対応、また、セキュリティへの対応をは
じめとする安全性、信頼性の確保が必要である。
委託先は、既存システムの専門的知識及びノウハウを有し、障害発生時速や
かに対応できる者である。また、情報セキュリティマネジメントシステム(I
SMS)適合性評価制度、JISQ15001 に基づくプライバシーマーク認定を受
け、セキュリティポリシーを策定するなど社内規定の整備や従業員教育に力
を入れており、安全性・信頼性が高い業者である。
他の業者に委託する場合、大型汎用機の導入等環境設定に相当な期間、多大
な経費や作業を要すること、実際の運用に係るノウハウがなくトラブル多発
が懸念される。
委託料の算定
積算方法:人工月単価に必要人数を乗じたオペレータ経費・システム運用管
理費に、マシン使用料等の機器使用料、消耗品費、動力費・コンピュータ室
料等を積算して算出している。
見積書の内容:見積書には内訳書の添付なし。
198
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:大量な情報の処理が要求される事務について、大型汎用機による処
理の必要性・有効性は認められる。しかしながら、大量処理の要請が大きくない
情報の処理業務について大型汎用機による処理委託が必要か、またその有効性に
ついても疑問がある。
(b)理
由:大型汎用機は大量の情報を処理し、高速印刷を行うのに優れている
ことから、人事関係や福祉関係など、処理期間が限定され、大量な情報を扱わな
ければならないような業務においては委託の必要性・有効性は高い。
しかしながら、大型汎用機による情報処理には一旦データを磁気化する作業、
処理命令を依頼し、その結果を帳票として受け取り、エラーチェックをしなけれ
ばならないなどの作業があり、処理に時間がかかり、即時対応能力も劣るという
問題がある。
道が業務処理を委託している業務には情報が大量でないもの、迅速性がそれほ
ど要求されないものも多数含まれており、それらについては大型汎用機による処
理委託の必要性が低く、そのマイナス面を考慮すると有効性も低いと言わざるを
得ない。パソコンやサーバによる情報処理能力が格段に進歩している最近の状況
においては、これらによる情報処理を行う方が、即時に情報処理ができ、より有
効性が高いと言える。
(c)提案事項:道においても、処理を依頼している情報の中に、大型汎用機による
情報処理よりもパソコン等による情報処理の方が優れているものがあるとの認識
だが、庁内の各部課ごとに業務処理を委託しているために、委託を続けるかは個
別各部課の判断に委ねられているとのことであり、委託業務の内容を見ると全庁
的な見直しを早急に進め、委託経費を減らす必要がある。行政事務の迅速性・即
時処理能力を高めるとの要請からも急がれるべきである。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の「著しい支障が生じるおそれ」につ
いて、根拠は決定書に記されているが、そもそも当該政令における「著しい支障
が生じるおそれ」とは一体どの程度の支障を示すものなのかという前提認識が曖
昧である。また、具体的にどのような経過で要件に該当すると判断したのかが必
ずしも明らかでない。
(b)理
由:①特例政令が、内外無差別の原則を適用する政府調達に関する協定
を実施するために定められたものであること、随意契約によることができる場合
を具体的かつ厳格な内容で定めていることに鑑みると、著しい支障が生じるおそ
れについてもかなりレベルの高い支障発生のおそれが必要と考えられるが、その
ような前提認識をもって要件該当性を判断しているとの経緯が認められない。過
去の年度記録を見ても、前年の決定書の業者選定過程の記載をそのまま引用して
おり、特に毎年検討することなく前年踏襲されていたのではないかと推測され、
特例政令に関する前提認識が曖昧若しくは希薄であったことが窺える。
199
②委託先以外より調達した場合の支障の程度について具体的にはどの程度のもの
なのか検証していない。
③本件業務は、具体的に著しいレベルの支障が生じるおそれがあったか不明であ
る。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:マシンや回線設備使用料、動力費や室料については積算根拠が示さ
れている。システム運用管理公印管理に要する技術者とその人員数について、概
ね根拠を理解できる。
(b)理
由:標準 CPU タイムの占有率調整が平成 11 年から 13 年の平均値である
点、少しデータが古いとの印象を持つものの、マシン使用料や回線設備使用料な
どについて詳細な算出根拠が付されており、積算の妥当性を判断できる程度には
準備されていると思われる。
運用管理費など人件費部分についても、それぞれの技術者の業務内容が明示さ
れ、最低限各業務 1 名は人員を要すると考えられ、妥当性を理解できる。業務実
績についても、1 名の担当者が行う事業について、日々業務が完了していること
を確認している状況であることから、事後的に稼働状況も把握していると同視で
きる。
(4)その他―公報について
監査結果:特例政令 11 条、道の規則 11 条により公示が要求されているが、北
海道公報への公示を行っていない。なお、本件については、平成 17 年度定期監査
において指導事項となっており、平成 18 年度において是正されている。
200
15
情報処理システム変更等業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
情報処理システム変更等業務委託契約
担当部課
企画振興部IT推進室情報政策課
委託先
民間企業
業務内容
①システム分析∼現状の事務処理システムを調査・分析し、情報処理システム開
発構想を作成する。
②システム設計∼分析結果に基づき、最適な情報処理システムの基本設計及び詳
細設計をする。
③プログラム設計∼システム設計に基づき処理プロセスの設計及びプログラムご
とに処理の詳細を作成する。
④プログラム作成∼プログラム仕様書に基づき効率的で運用保守しやすいプログ
ラムを作成し、実行可能な状態にする。
⑤プログラム修正∼プログラム修正説明書に基づき当該プログラムを修正、実行
可能な状態にし、プログラム仕様書を修正する。
業務目的
道の行政事務を汎用大型コンピュータで電子計算処理している業務(80 業務)に
係る既存システムの変更等を行う。当該業務処理には、専門的知識及びノウハウ
が必要とされるため経済性・効率性から委託する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
( 事 業 開 始 は H9
H14
特例政令による 単価 598,000 円
委託金額
単価 597,000 円
随意契約
年度から)
H15
同
上
単価 597,000 円
単価 596,000 円
H16
同
上
単価 582,000 円
単価 581,000 円
H17
同
上
単価 574,000 円
単価 574,000 円
委 託 先 選 定 の 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
理由
理由: 汎用大型コンピュータを利用して情報処理を行う既存システムのプログラ
ム修正及びシステム運用等についての委託であり、情報処理システムの業務を停
滞させることなく的確に行わなければならない。
この点、委託先は、既存システム開発業者であり、システムを熟知している。過
去の実績を勘案するとプログラム修正等が的確に行われる。プログラム処理に異
常が発生した場合、内容を切り分け、速やかに対応し復旧させることが必要であ
り、既存システム開発業者である当該委託先が専門的知識を有している。必要な
設備を有し、H16.3 にSE・プログラマーを 450 名有しているので経営規模的適
性があり、経営内容も良好である。他の業者に委託する場合、既存システム全体
の把握、プログラム稼動のための環境設定に相当な期間と経費を要するので経済
的でない。システム障害等の発生を未然に防止するとともに障害発生時には迅速
な対応が可能となり、事務の停滞を生じさせない。
業者
201
以上の要件を満たす唯一の
委託料の算定
積算方法:予算単価表のプログラマー単価による。
見積書の内容:見積書には内訳書の添付なし。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:前件で検討した電子計算機で処理する業務委託契約に付属し、シス
テム変更を委託する業務であるが、業務委託の必要性に大きな問題は無いと考え
るが、大型汎用機を利用することの経済性について検討すべきではないかと考え
る。
(b)理
由:大量の情報を処理し、高速印刷を行うのに今なお大型汎用機の必要
性があり、その大型汎用機上のシステムの変更も庁内各課の要請に応じて行う必
要がある。これらは専門的な知識を持って迅速に行う必要があるので外部に委託
していく必要性はあるものと考える。行政事務の迅速な処理が道民生活に貢献す
るところは大きく、システム変更業務の有効性に特段の問題は感じなかった。
ただ、大型汎用機の不便なところもあり、今後大型汎用機から他の情報システ
ムへの移行も十分に考えられることから、コストをかけてシステム変更をするこ
とによる効果も検討しながら進める必要がある。
(c)提案事項:前件の電子計算機で処理する業務委託契約で述べたところと同様、
システム変更業務についても検討すべきである。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:前件で検討した電子計算機で処理する業務委託契約に付属し、シス
テムの変更を同一の民間業者に委託している契約である。
前件同様、特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の「著しい支障が生じるおそれ」につ
いて、根拠は決定書に記されているが、そもそも当該政令における「著しい支障
が生じるおそれ」とは一体どの程度の支障を示すものなのかという前提認識が曖
昧である。また、具体的にどのような経過で要件に該当すると判断したのかその
検証経過も確認できない。
(b)理
由:①特例政令が、随意契約によることができる場合を具体的かつ厳格な
内容で定めていることに鑑みると、著しい支障が生じるおそれについてもかなり
レベルの高い支障発生のおそれが必要と考えられるが、そのような前提認識をも
って要件該当性を判断しているとの経緯が認められない。
過去の年度記録を見ても、前年の決定書の業者選定過程の記載に SE とプログラマ
ーの人数のみ変更を加えただけであとはそのまま引用しており、特に毎年検討す
ることなく前年踏襲されていたのではないかと推測され、特例政令に関する前提
認識が曖昧若しくは希薄であったことが窺える。
②前件の契約同様、委託先以外より調達した場合の支障の程度について具体的に
はどの程度のものなのか検証していない。
③前件の契約同様、具体的に著しいレベルの支障が生じるおそれがあったか不明
である。
202
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:委託単価の算出方法について、その算出根拠が委託業務を処理する
対価として相当なものか不明である。
また、単価契約を締結した後、業務終了後に実際必要とした工数等の把握が行
われていないため、契約した工数の妥当性が裏付けられない。
(b)理
由:情報政策課が作成した SE 単価表に基づいているが、この単価表自体
の信頼度もわからず、委託業務の内容と価格の相当性についても明確でない。
担当課からのヒヤリングによると、個別単価に見込みの工数を乗じて変更業務
を委託するということであるが、業務完了後、仕様に従った納品がなされれば実
際にどの程度の工数を要したか特に報告を受けるわけでもないとの回答であった。
実際にどの程度の工数がかかったか報告を受ける必要がないとの認識であった。
それが予定していた工数と同じであれば委託金額の妥当性のひとつの裏づけとな
っていくと思われるが、そのようなものはなく、結局、システム変更で委託した
金額の妥当性を裏付ける根拠が記録上何もないということになる。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
(4)その他―公報について
監査結果:特例政令 11 条、道の規則 11 条により公示が要求されているが、北
海道公報への公示を行っていない。なお、本件については、平成 17 年度定期監査
において指導事項となっており、平成 18 年度において是正されている。
203
16
医療関連業務電算化オンラインシステム開発等業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
医療関連業務電算化オンラインシステム開発等業務委託契約
担当部課
保健福祉部疾病対策課
委託先
民間企業
業務内容
①電算化システム内に、個別システム(ア、精神医療費公費負担支援シス
テム、イ、特定疾患医療費公費負担支援システム、ウ、ウイルス性肝炎進
行防止対策及び橋本病重症患者対策医療費公費負担支援システム)を開発
する。②「電算化システム機器仕様書」に定める電子計算機器へのインス
トール、電算化システム周辺機器への設定を行う。
業務目的
本庁と道立保健所において、年間 10 万件を超える特定疾患や精神医療等に
係る医療受給者証等を交付するため平成 11 年度から「医療関連業務電算化
オンラインシステム」を整備、業務を行っているが、平成 18 年度より障害
者自立支援法の一部が施行されることや、システム導入後 6 年が経過しソ
フトの老朽化が著しいことなどから新たなシステム開発が必要。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
(事業開始は H17
H17
特命随契
34,858,372 円
委託金額
32,865,000 円
年度から)
委 託 先 選 定 の 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による特命随契
理由
理由:①H18 年 4 月施行の障害者自立支援法に基づく精神医療費をはじめ、
特定疾患医療費、ウイルス性肝炎進行防止対策・橋本病重症患者対策医療
費の公費負担制度に精通していること。②公費負担に係るシステム構築に
関する知識及び技術を有し、かつ既存の電算化システムの内容に精通して
いること。③公費負担事務のうち精神医療費を除く医療費公費負担事務に
ついては道の事務であるが、道立保健所のない札幌・小樽・函館・旭川の
各市においては、道と委託契約を締結し窓口及び審査業務を行っている。
なかでも受給者の36%を抱える札幌市では患者情報を一部電算化してお
り、開発にあたっては情報の共有化を踏まえた設計を行う必要があること
などが求められ、これらの条件を有する事業者は、既存の電算化システム
を開発するとともに札幌市の電算化についても受託している委託先しかな
い。
委託料の算定
積算方法:各工程に必要な人工数に技術者単価を乗じたものを全工程で合
算。
見積書の内容:「一式」として提出され、詳細は不明。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:特定疾患患者等の医療費関連業務を処理するためのシステム開発を
204
委託するもので、その必要性及び有効性について特段指摘する問題点は認められ
ない。
(b)理
由:従来のシステムの老朽化への対応及び肝炎及び橋本病に対する新対
策と直近に迫る障害者自立支援法施行への対応のためにシステム開発の必要性が
あり、その専門性からも外部委託の必要がある。また、まとめてシステム開発す
ることで一元的処理が可能になり、効率性、経済性に優れていると思われる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:本契約は、特例政令の適用を受ける金額以上であるが、特命随契を
する場合、特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件に該当するかを検討しなけれ
ばならないが、これを怠っている点で手続上問題がある。
ただし、本契約については、仮に特例政令の例外要件の判断を行った場合、2
号の要件に該当し特命随契が許容される可能性もある事案と考えられ、内容的に
も直ちに問題とまでは指摘しない。
(b)理
由:本契約は、特例政令第 2 条第 1 項第 3 号協定の附属書Ⅰ日本国の付
表 4 に掲げる情報及びデータのオンラインでの検索ないしは処理に該当する特定
役務を調達する契約であって予定価格が 3,200 万円以上であるので特例政令が適
用になる契約である。したがって、特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件に該当
する場合でなければ特命随契をすることができないのである。決定書によると、
運用方針第 3 節関係 1 の(2)を根拠に特命随契を決定しており、特例政令第 10
条第 1 項各号の例外要件に該当するかの判断を欠いていることは明らかである。
担当課からのヒヤリングにおいても失念してしまった旨述べられていた。
既に前述8電子調達システム基本設計業務委託契約(二)
(2)
(b)①で述べ
たとおり、施行令よりも特例政令が優先的に適用になり、特例政令の適用される
特定調達契約に該当するとなると、もはや運用方針第 3 節関係 1 の(2)を根拠
とする随意契約ができないことになる。
本件では、予算流用前の契約(=予定価格 3,200 万円未満で特例政令の適用が
無い。)について指名選考委員会の審査を経ているが、予算流用が認められ、予定
価格が 3,200 万円以上の契約を締結することになっているのであるから、運用方
針の適用では随意契約ができなくなり、特例政令による随意契約の可否を改めて
審査する必要があったのにこれを怠ったと言わざるを得ない(判断する要件も異
なり手続的に予算流用前の審査を代用することはできないと解する。)。
手続的には問題があるものの、仮に特例政令の例外要件に該当するかを判断し
た場合、2 号の要件をクリアーする可能性があるのではないかと考える。
患者データの共有ということが、円滑な業務の遂行には不可欠であるところ、
委託先は、患者の 36%を抱える札幌市の委託を受け、その他の小樽市・函館市・
旭川市についても道の委託を受けていることからすると、他の業者を選定する場
合、相互の連携が必要になり、既存の役務を調達するのに著しい支障をきたす可
能性は否定できない。
(c)提案事項:前述契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
205
(2)、
(c)の改善提案に同じである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:積算のうち開発技術者数や作業行程の根拠が不十分である。
(b)理
由:開発技術者数と作業行程について精通者から聴取したとされている
が、担当課によると1社だけであり、記録上そのプロセスが確認できない。
担当課からのヒヤリングでは、時間的余裕が全くなかったため委託先からも工
数の概数を聴取しているとのことであるが、見積書には具体的に内訳書の添付を
求めていない。また、担当課においてシステム開発の委託費用算定のノウハウが
不十分という状況もあった。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の改善提案に同じである。
(4)その他
(a)監査結果:北海道公報への公示を行っていない。
(b)理
由:特例政令 11 条の要求する公示を失念している。
(c)提案事項:特例政令に関する案件の処理マニュアルを作成し、チェックを行う。
206
17
マリンネット北海道保守運用サポート業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
マリンネット北海道保守運用サポート業務委託契約
担当部課
水産林務部水産振興課
委託先
民間企業
業務内容
マリンネット北海道のシステム保守運用管理及び運用サポート業務
業務目的
各水産試験研究機関の研究情報の共有化・一元化の実現による高度で効率的な
技術開発や、漁海況速報等の提供による漁業者の操業コストの低減を図るため
にマリンネット北海道を整備した。当該システムの円滑な運用を維持するため
保守・運用サポート業務を委託する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
委託金額
( 事 業開 始は
H13
特命随契
38,210,940 円
36,225,000 円
H11 年 度 か
H14
同
上
34,403,224 円
34,020,000 円
ら)
H15
同
上
33,825,315 円
33,600,000 円
H16
同
上
33,460,502 円
33,075,000 円
H17
同
上
32,511,675 円
32,508,000 円
委 託 先 選 定 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
の理由
理由:マリンネット北海道は、15 のサブシステムと多数の機器が接続された全
道に広がる複雑・大規模なネットワークシステムである。システムを円滑に保
守・運用し、また使用者への適切・迅速なサポートを効率的・経済的に行うた
めに、システムの設計・開発に携わり、システムの内容を熟知し、また、全道
に多数のサービスセンターが配置されている必要がある。
これらの業務を行えるのは委託先だけである。他社に委託する場合システム調
査・分析に多大な経費や時間を要する(比較表の添付あり)。
委 託 料 の 算 積算方法:年間対応時間に初級 SE 単価を乗じた人件費に、諸経費、技術経費を
定
加算した費用と直接経費の合算による。
見積書の内容:見積書のみで詳細はない。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件システム運用サポート業務を委託する必要性及び有効性につい
て特段指摘する問題点は認められない。
(b)理
由:水産試験研究機関の研究情報の共有化・一元化の実現による高度で
効率的な技術開発や、漁海況速報等の提供による漁業者の操業コストの低減を図
ることは道の水産事業拡充にとって重要であり、そのためのシステム開発事業で
あるが、
道内の多数の機関をネットワーク化するには専門的な知識が必要であり、
道の直接事業としては困難を伴うもので外部委託することに理由が認められる。
マリンネット北海道ネットワークシステムに多数の機関が参加していること、
207
そこで共有されるデータが道内の水産業の振興に大きな効果をもたらしているこ
とに鑑みると、費用対効果に見合うものであり、外部に委託する方がより道民へ
の行政サービスを有効に果たすものであると思われる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:①形式的には運用方針に基づく随意契約としているが、実質的に特
例政令第 10 条第 1 項第 2 号の要件判断を行い、これを充足しているとの点につ
いて、手続的に特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の審査が行われていたとは認め難
い。
②ただし、実質的に特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の要件に該当するかという点
については、要件を明示し、どのように該当しているのかという判断経過が必ず
しも明らかとはいえないが、比較設計書を作成し、委託先以外から調達した場合
に現状の 1.4 倍の経費がかかるとされており、これほどの経費の増加があるとす
ればこれをもって便益享受に著しい支障があると判断することも可能であって
直ちに随意契約によったことが不適当とまでは言えないと考える。
(b)理
由:上記①について・・・本契約は、特例政令第 2 条第 1 項第 3 号協定
の附属書Ⅰ日本国の付表 4 に掲げる情報及びデータのオンラインでの検索ないし
は処理に該当する特定役務を調達する契約であって予定価格が 3,200 万円以上で
あるので特例政令が適用になる契約である。したがって、特例政令第 10 条第 1
項各号の例外要件に該当する場合でなければ特命随契をすることができないの
である。決定書によると、運用方針第 3 節関係 1 の(2)を根拠に特命随契を決
定しており、特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件に該当するかの判断を欠い
ていることは明らかである。
この点、担当課からのヒヤリングを行ったところ、平成 8 年の基本計画の段階
から特例政令の適用される特定調達契約に該当する契約であることを認識し、特
例政令第 10 条第 1 項第 2 号の例外要件を充たすことから特命随契としていたこ
と、上記例外規定に該当する場合、運用方針第 3 節関係 1 の(2)による特命随
契ができると判断し、決定書その他の書類には根拠規定として運用方針を記して
いたとのことであった。
しかしながら、既に前述8電子調達システム基本設計業務委託契約(二)
(2)
(b)①で述べたとおり、施行令よりも特例政令が優先的に適用になり、特例政
令の適用される特定調達契約に該当するとなると、もはや運用方針第 3 節関係 1
の(2)を根拠とする随意契約ができないことになるのであるから、決定書に運
用方針により随意契約と記すこと自体誤りと言わざるを得ない。
根拠規定にできない規定を決定書など審査書類に記し、実質的に特例政令の例
外要件の判断を行ってきたとのことであるが、記録上からは判断が行われていた
と認めることはできない。運用方針による随意契約を認める場合と特例政令によ
る随意契約の場合とでは要件も異なり、より後者の方が厳格な要件と解されるの
で、前者の要件を判断しているだけでは後者の要件判断を行ったことにはならな
い。
208
また、本契約では、指名選考委員会や出納局のチェックを受けているわけであ
るが、運用方針を根拠にしていればそのレベルの要件判断を行うのであり、その
根拠規定を無視して記載されていない特例政令の要件該当性を実質的に判断する
などということは考え難い。もしそうであれば、根拠規定を訂正するなどの処置
が当然とられるところである。
以上のとおりであるから、手続的に特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の審査が行わ
れていたとは認め難い。
上記②について・・・手続的には問題があるが、実質的に本件サポート委託業務
が特例政令第 10 条第 1 項第 2 号の要件に該当するかを判断する場合、比較設計書
が作成され、その内容を見ると、他の業者にシステムサポート業務を委託すると
システムの調査分析費の増加により現状の 1.4 倍もの経費がかかるとのことであ
る。これほどの経費の増加があるとすれば、既存の便益を享受することに著しい
支障があるとして 2 号に該当すると判断することも可能であり、そうであれば直
ちに随意契約を不適当とまで言えないことになる。本件では、調査分析費用につ
いて、どのような経緯で算出されたものか根拠が不明であり、それがないので明
確な結論を出すことはできない。
(c)
提案事項:①前述契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
特に、運用方針を根拠とすることは法令の適用を誤っていることになるので速
やかに見直す必要がある。記載だけの問題とすれば、それも改善して特例政令に
よる随意契約であることを明示して審査に付すべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:①前年を踏襲する積算であり、毎年見直しをしている経緯は見えな
い。
②人件費単価、諸経費及び技術経費の割合について適用基準や根拠が明確でない。
(b)理
由:上記①について・・・H15 から H17 の人件費及び間接費は、単価と
経費率が下がった以外は工数も同じで、前年の積算表をそのまま利用しているだ
けである。委託先から提出された見積書について内訳書をとることもなく、実際
にどの程度の SE が必要であったのか、事後報告も受けていない。毎年予測に基づ
いて工数を決定しているが、実情を把握していないために、実情に合わせた予測
数値の変更もされていない。
上記②について・・・人件費単価として初級 SE 単価積算表を用いている。この
積算表は他の情報関連の契約時にも利用されているが、この積算表を毎年作成す
る企画振興部からの事情聴取によると、大型汎用機によるシステム保守運用の際
に使用するものとして作っているとのことであった。本件はサーバを中心に全道
の端末をつなぐシステムであり、大型汎用機によるシステムと異なるものであっ
209
て、直ちに利用できるか検証を要するものである。
次に、諸経費として人件費総額の 35%を加算し、その合計額にさらに技術経費
として 15%を加算している。この割合は、総務部財政課が毎年予算を積算する際
に使用する単価表にある「調査研究業務委託料における研究員単価等」に基づく
とのことである。
しかしながら、本契約における業務内容は、ネットワークの監視、故障に伴う
再インストール作業など、情報関連の業務の中では軽易な作業であり、初級 SE
レベルで対応可能な業務であって、調査研究という要素は見出し難く、調査研究
業務における経費率が当てはまるとは言い難いと思われる。業務内容からはむし
ろこの割合を下回るべきと思料する。そもそも、初級 SE 単価表では諸経費 10%、
管理費 10%を定めているが、本件では一方でこの単価表を採用しておきながら、
諸経費、管理費の部分のみ採用せずに、上記の高い割合を乗じて計算している。
何倍もの経費率を適用しなければならない根拠は不明である。
担当課からのヒヤリングでは、単価表は様々存在し、経費率の適用については
明確な基準は無く、算定根拠の妥当性に疑問が残る。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)
、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充足
する積算を行うよう努めるべきである。
さらに、契約時に利用している単価表について適用基準を明確化し、その根拠
も説明できるようにすべきである。
210
18
北海道土木工事設計積算電算システム及び入札契約総合管理システム運用業務委
託契約
(一)契約の概要
契約名
北海道土木工事設計積算電算システム及び入札契約総合管理システム運用業務
委託契約
担当部課
建設部建設管理室技術管理課
委託先
民間企業
業務内容
北海道土木工事設計積算電算システム及び入札契約総合管理システムに関する
次の業務を委託する。
①ネットワーク運用管理業務②サーバ運用管理業務③クライアント運用管理業
務④積算及び入札契約データ運用管理業務⑤本システムに必要なソフトウエア
運用管理業務⑥各種データのバックアップ業務⑦単価管理システム運用管理業
務⑧システム利用者の問い合わせ、障害時の窓口業務⑨障害時における通信事
業会社等との相互連絡調整業務⑩上記処理に係るシステムメンテナンス業務⑪
プログラム修正業務
業務目的
北海道土木工事設計積算電算システム及び入札契約総合管理システムの根幹部
であるセンタサーバ群の運用業務に関するもので、積算処理、入札データ処理
が正常に行えるようハード・ソフト双方からサポートする。
契約の推移
年度
委託先選定方法
( 事 業開 始は
H14
特 例 政 令 に よ る 121,520,700 円
算
額
委託金額
120,960,000 円
随意契約
H14 年 度 か
ら)
積
H15
H16
同
同
上
上
122,867,850 円+プロ 120,960,000 円+プログ
グラム修正業務
ラム修正業務
1人工単価 597,000 円
1人工単価 596,000 円
127,497,300 円 + 同 126,756,000
582,000 円
H17
同
上
582,000 円
123,067,350 円 + 同 122,220,000
574,000 円
円 + 同
円 + 同
574,000 円
委 託 先 選 定 特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約
の理由
理由:北海道土木工事設計積算電算システム及び入札契約総合管理システムは
ネットワークを構成しているが、本業務は、システム運用管理の根幹部である
センタサーバ群の運用業務に関するもので、積算処理、入札データ処理が正常
に行えるようハード・ソフト双方からサポートすることが重要。また、入札契
約に係わるデータを取り扱うことから、守秘性、確実性及び継続性が要求され
るため安全対策が必要であり、かつ、業務の性格上、所在地は札幌市にあるこ
とが望ましい。
委託先は、経済産業省からシステムの総合的な管理運用を一括して継続的に提
供できる企業であるという「SO 認定」及び機密保持や災害などに万全の対策を
211
備える「ISMS 事業所認証」の認定を受けていることから、H2 年度以降の運用業
務の委託についてはこの業者と随意契約を結んでいる。この運用業務を他の新
規業者に委託することになると、システムの理解と運用に莫大な時間と経費が
かかり、また、システムの運用に障害をきたす恐れがあることから、
開発段階から両システムに携わりシステムの内容及び業務に精通している委託
先のノウハウを有効に活用する方が新規業者より経済性・確実性・迅速性で優
れている。
委 託 料 の 算 積算方法:システム運用管理業務について、北海道土木工事設計積算電算シス
定
テムはサーバ等の機器使用料に運用管理費(技術者単価に工数を乗じる)を合
算して積算。
入札契約総合管理システム運用業務について、運用管理費(技術者単価に工数
を乗じる)に光熱費等を合算して積算。
見積書の内容:見積書のみで詳細はない。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:システムの運用業務を委託する必要性及び有効性について特段指摘
する問題点は認められない。
(b)理
由:土木工事の設計積算システムは、複雑な工事積算を効率的に行うた
めのものであり、入札契約総合管理システムは、業者情報を共通データベース化
することで入札の透明性・客観性・公平性を向上させるためのものである。
システムの重要性に鑑み、円滑な運用を図る必要があり、また、電算処理に関
する専門的知識も必要であることから道による直接事業は困難と考えられ、外部
委託する必要性があり、その方がより有効な運用が確保できる。
積算の効率化によるコスト削減効果が期待できること、業者情報のデータベー
ス化によって入札手続の透明性等を確保すべき要請が大きいことからすると、当
該システムの円滑な運用は不可欠であり、その運用のために相応の委託経費がか
かることにも合理的な理由があると考えられる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:本件では、特例政令第 10 条第 1 項第 2 号を根拠に随意契約を行って
いるが、同号の要件である「著しい支障が生ずるおそれ」をどのような基準に基
づいて具体的に判断しているのかそのプロセスが記録上明らかではなく、それを
客観的に裏付ける資料がない。また、要件該当性の判断に際し、
「所在地は札幌市
にあることが望ましい。」という地域を限定する要素やSO認定など資格要素を盛
り込んでいるなど相当とはいえない。
(b)理
由:①特例政令第 10 条第 1 項第 2 号は「著しい支障が生ずるおそれがあ
るとき」としているが、特例政令が一定額以上の特定調達契約に限って施行令の
特例を設けているものであること(特例政令第 1 条)
、その他の 1 号、3 号ないし
6 号の例外規定が厳格かつ具体的に要件を定めていることとの均衡を考えると、
212
施行令第 167 条の 2 第 1 項及び運用方針第 3 節関係 1 の(2)による特命随契の場
合よりも 2 号の場合は厳格な基準で要件判断する必要があると解される。
記録上も、また、担当課からのヒヤリングにおいても、上記のような解釈をも
って判断していることが確認できなかった。
契約担当課から出された案件を審査する指名選考委員会においても指名選考基
準「契約の目的物に代替性がないもの」との特記事項が記されており、これは道
の運用方針による随意契約を判断する基準であり、より厳格であるべき特例政令
の例外要件を判断しているとは言い難い状況であった。
決定書の選考理由では、新規業者に委託する場合、システムの理解と運用に莫
大な時間と経費がかかり、また、システムの運用に障害をきたす恐れがあると記
されているが、抽象的なもので、実際にどの程度のものか裏付ける資料は何も無
く、果たして検討されているのか疑問であり、単に前年度の決定書をそのまま踏
襲しているものと感じる。
②また、本件では業者選定理由の中で
「所在地は札幌市にあることが望ましい。」
としているが、特例政令は内外無差別を原則としており、例外要件を判断する際
に事業所の所在場所を特定の場所に限定する要素を盛り込むことは相当でない
(入札の場合であるが、特例政令第 5 条は入札資格に事業所の場所的な限定を加
えることを禁止するもので内外無差別を原則とすることを示している。)
。
履行条件として特定の地域での業務を限定すること(障害時には、本庁からの
連絡後1時間以内に対処できることなど)は可能と考えられるが、所在地は札幌
市にあることが望ましい(選定理由の記載からは、何の所在地を示すものか不明
確であるが、通常は事業所所在地と解釈するであろうし、選定された委託先の所
在地も札幌市であるから、事業所所在地を示すものと判断する。
)というような、
事業所の所在場所を限定するような要素を選定理由に盛り込むことは相当ではな
いと考える。
③さらに、委託先について、「SO 認定」や「ISMS 事業所認証」を受けていること
から平成 2 年度より随意契約をしているとの理由を記しているが、ヒヤリングの
結果、前者の資格については 58 社、後者の資格に至っては 1,863 社が当該資格を
保有しており、委託先をもって特別な会社とする根拠にはならないにもかかわら
ず、それをもって選定理由の一つにしていることは、相当とはいえない。
(c)提案事項:前述契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(2)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:今後、契約が継続する場合、上記提案事項に掲げた内容を充足する
よう努め、随意契約によった根拠に疑問が生じないようにすべきである。
さらに、上記に不相当と指摘した業者選定理由を再度検討し、改めて、特例政
令第 10 条第 1 項第 2 号の要件を充足するかを判断すべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:前年に倣って積算が行われており、業務の実態を裏付ける資料がな
213
い状況で委託料が算定されている。
(b)理
由:積算書の技術者の資格、員数や数量などは前年の積算書の数字を引
用し、そこに当該年度の SE 単価を乗じているため、委託先も概ね積算内容を把握
でき、それに近い金額の見積書により委託契約が締結されている。
技術者の員数については、サーバとそれに対する技術者の配置が示されている
が、裏付ける資料が無い。委託先がどのように配置するのか、見積書の内訳や実
際の配置報告などがあれば知ることもできるが、道の手続上要求していないため
それも把握できない。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
214
19
北海道公共事業電子情報化支援業務委託契約
(一)契約の概要
契約名
北海道公共事業電子情報化支援業務委託契約
担当部課
建設部建設管理室技術管理課
委託先
財団法人北海道建設技術センター
業務内容
CALS/EC 実証フィールド実験(情報共有・電子納品)に関する計画の策定、実
験手引書の作成、説明会等の技術支援、実験効果の検証、システムの運用管理
を行う業務。
業務目的
公共事業において従来紙で交換されていた情報を電子化し、インターネットを
活用して、品質・技術レベルの向上、コスト縮減など公共事業の効率化を図る。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
委託金額
( 事 業開 始は
H15
特命随契
30,072,000 円
28,854,000 円
H15 年 度 か
H16
同
上
68,775,000 円
68,638,500 円
ら。
)
H17
同
上
83,527,500 円
81,837,000 円(後日増額変更
82,383,000 円)
委 託 先 選 定 運用方針第 3 節関係 1 の(2)による随意契約
の理由
理由:建設業務のプロセスに十分精通し、CALS/EC 実証フィールド実験の経過
を熟知していることが必要であり、また、受発注者の情報交換を支援すること
から実験で使用している工事施工情報共有システムに精通していなければなら
ない。
委託先は、技術職員専門研修、積算システム研修などの各種研修事業の実施、
各種調査研究事業の実施を通じ公共事業の円滑な執行を支援するなど建設業務
プロセスを習熟している。唯一 H15、H16 年度と道の CALS/EC 実証フィールド実
験の支援業務を受託し、実験の内容、経過を十分理解しており、また、受託の
中で工事施工情報共有システムの運用管理を行い、システムの内容についても
十分精通している。積算ネットワークを利用した積算委託業務、H16年度北
海道公共事業電子情報化支援業務、市町村への積算支援などの事業を実施する
など、データの性質上必要な中立性公平性が確保されている。積算システム、
新技術システムの運営やネットワーク技術者の採用など十分なIT技術を有し
ている。
以上より委託先を選定。
委 託 料 の 算 積算方法:直接人件費(単価×工数)、直接経費(情報共有ソフトリース料、旅
定
費交通費など)
、諸経費(直接人件費の 100%)
、技術経費(直接人件費+諸経
費の 30%)以上の合算により積算
見積書の内容:見積書のみで詳細はない。
その他
再委託が行われている。
再委託先:民間企業
再委託内容:ASP方式による情報共有ソフトウエアの使用と環境整備
215
再委託理由:実証実験において、自社サーバ、ソフトウエアでの運用と第三者
でのサーバ、ソフトウエアでの運用(ASP)を比較検討することを求めてい
るため、特定のASP環境を使用することが必要となる。
再委託先は、国土交通省での実績も十分あり、ASP業務を遂行するにおいて
支障がない。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件業務を委託する必要性及び有効性について特段指摘する問題点
は認められない。
(b)理
由:従来、書面で交換されていた公共事業に関する情報を電子化し、イ
ンターネットを活用しようとするもので、コスト削減などの面で実施が望まれる
事業であり、その専門性から道による直接事業は困難であるから外部委託の必要
性はあるものと考える。
本契約は国土交通省が推進する cals/ec 実証フィールド実験を実際に行う作業
であり、専門的知識を有する者による履行が最も有効かつ効率的である。公共事
業情報を電子情報化することで、公共事業に関わる業者への情報提供を効率的に
行うことができ、また、多くの住民に対し、迅速かつ理解しやすい形で情報提供
が可能になるという効果もある。これらを考慮すると事業委託の有効性にも合理
的な理由があるものと考える。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:運用方針第 3 節関係 1 の(2)
(契約の目的物に代替性がないこと)
による随意契約を締結しているが、他に代替できる業者がいるのかいないのか検
討されておらず、その資料も無い。また、委託先に限定する根拠についての裏付
資料が検証できる形で添付されていない。
(b)理
由:理由書において、委託先が望ましいとの理由は示されているが、他
に当該業務をできるものがいるのかいないのかは検討されていない。代替性がな
いというには、委託先が優れているということを述べるだけではなく、他にその
ような業者がいないということも検討する必要があるのである。
また、委託先について、業務の習熟度や実績が記されているが、これを裏付け
る資料が記録として添付されていないなど、行政手続きの透明性を確保する処理
が行われているかを示す書類が残されていないという点で問題がある。
(c)提案事項:運用方針による随意契約を認める場合のマニュアルを作成し、その
中で判断基準と検討項目、その判断プロセスの妥当性を疎明する資料を明示し、
統一的な運用を図るべきである。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関し
ては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(d)改善事項:今後、契約を継続する場合、上記提案事項を充足するよう努めるべ
216
きである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:諸経費・技術経費の割合が高率となっているが、国土交通省の調査
による基準に基づくものであり、特段問題であるとの指摘事項はない。
(b)理
由:直接人件費・直接経費のほかに、直接人件費の 1.6 倍の諸経費・技
術経費が別途かかることについて、道の調査研究業務委託における諸経費・技術
経費と比較しても大きく異なっているところである。しかしながら、道では国土
交通省の調査に基づく積算資料を根拠にしており、相応の根拠に基づくものとい
える。
217
20
財務会計トータルシステム業務処理委託契約
(一)契約の概要
契約名
財務会計トータルシステム業務処理委託契約
担当部課
出納局総務課
委託先
民間企業
業務内容
委託先の所有する設備と道の施設とを委託先の設置する専用回線で接続し、下
記の業務を行う。
①システムの保守運用管理業務
②ホストコンピュータ処理業務
③メール運行業務
業務目的
財務会計トータルシステムの業務処理を行うホストコンピュータについて、民
間資源(知識・技術)の活用等による業務処理の効率化から、専門業者の施設・
設備を利用し、機器操作、システム保守管理を含め、システムの業務処理を一
括して委託する。
契約の推移
年度
委託先選定方法
積
算
額
( 事 業開 始は
H13
特 例 政 令 に よ る 401,287,045 円
委託金額
400,449,000 円
随意契約
H7 年度から)
H14
同
上
386,934,070 円
385,345,800 円
H15
同
上
385,102,030 円
385,035,000 円
H16
同
上
375,564,460 円
374,535,000 円
H17
同
上
365,712,303 円
364,875,000 円
委 託 先 選 定 特例政令第 10 条第 1 項第 1 号による随意契約
の理由
理由:システムの安定稼動を維持するため、システム全体を熟知していること、
障害発生の場合、発生原因を的確に把握し、かつ迅速な復旧が図られるよう万
全の保守体制が整備されていること、業務執行上のシステム改善が必要な場合
にプログラム内容を直ちに理解し容易に対応できること、緊急の業務対応を可
能とし、本庁舎から近距離に事務所及び財務会計トータルシステムの業務処理
機能を持つホストコンピュータを備えている施設があることが必要であるが、
これを充足するのは委託先である。
委 託 料 の 算 積算方法:機器・回線・コンピュータ室使用料に動力費、消耗品費を加算した
定
ものに、オペレータ・メール運行経費、システム保守管理経費を合算している。
見積書の内容:見積書のみで詳細はない。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
(a)監査結果:本件業務処理事業の委託の必要性・有効性については特段指摘する
問題点を認められないが、より経済的なシステムへの移行には制約がある。
(b)理
由:平成 7 年にシステムが全面稼動し、一般会計及び特別会計(企業会
218
計を除く)について、本庁、支庁及び部局(道立学校、警察署等の地方部局を除
く)を対象とし、予算執行、歳入及び歳出その他の事務を扱うシステムである。
財務会計事務を効率的かつ迅速に処理するもので、その専門性から外部委託の必
要度は高く、全庁的に利用されており、円滑な行政サービスを実現するためのシ
ステムの有効性は認められる。
ただし、プログラムの中心にある財務会計システムパッケージプログラムにつ
いては委託先に著作権があり、それがシステム変更についての制約となり、より
費用対効果に見合うシステムへの変更が制約されている。
(c)提案事項:システムの中核となる大型汎用機が 5 年を経過し、老朽化している
ために平成 20 年度を目途にシステムの見直しが必要という状況にあり、既に、汎
用機方式からオープンシステムへの移行による導入コストの削減を検討している
とのことである。
システムの見直し時期に合わせ、システムのライフサイクル全体を判断して最
も経済的かつ効果的なシステムがどのようなものか検証することが期待される。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)監査結果:特例政令第 10 条第 1 項第 1 号に基づく随意契約によることについて
特段指摘する問題点はない。
(b)理
由:平成 3 年にプロポーザル方式により、本システムの基本設計を 5 社
が競い合い、現在の委託先が最も高い評価を獲得して基本設計を行い、その後、
詳細設計を行い、平成7年から全面稼動している。
本システムは、委託先が著作権を有する財務会計システムパッケージプログラ
ムにより運用しているため、
「 特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術に係る特
定役務の調達をする場合において、当該調達の相手方が特定されているとき」に
該当すると考えられる。
(c)提案事項:当面、著作権の関係で委託先を現状のままとすることはやむを得な
いところである。しかしながら、将来的なシステム変更時期には、委託先に著作
権があるようなシステムの構築をできる限り回避し、オープンなシステムを基盤
とする財務会計システムを構築し、業務処理委託契約が情報処理業者間の自由な
価格競争を経て発注されるようにすべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)監査結果:平成 13 から 15 年の保守管理業務量は、前年の時間数を踏襲しただ
けで実態に基づいているとは言い難いが、平成 16 年、17 年と保守管理業務量の
減少によりシステム保守管理経費が減額になっており、実態を反映する傾向を感
じるが、その裏付けは不十分である。
(b)理
由:平成 7 年度の全面稼動時の業務処理委託後、当初の委託料について、
大きな業務内容の変更が無い限り、前年を踏襲する積算が行われていたとのこと
であり、平成 13 年から 15 年までは保守管理業務量の時間数は全く同じであり、
単価で保守管理経費が異なるだけで、実態を反映しているとは言い難いところが
219
あった。
この点平成 16 年、17 年はその業務量が減っており、17 年においては、システ
ムの簡易な変更に要する業務時間数が減ったことから Web 方式移行への調査研究
業務を委託先に依頼しており、実態が反映されている状況が一部窺えた。ただ、
16 年以降の大幅な業務処理時間数の減少について、実態を反映していることを裏
付けるような資料が十分にない。そのような資料が提示されることで委託料の積
算が妥当な根拠に基づくものと理解できるのである。
(c)提案事項:前記契約1の震度情報ネットワークシステム改修業務委託契約(二)、
(3)、
(c)の提案事項に同じである。
(d)改善事項:運用保守契約を継続していく場合、上記提案事項に掲げた内容を充
足する積算を行うよう努めるべきである。
220
三
小括
以上、個別契約の監査を踏まえて、本章に関する小括を行う。
1
委託の必要性・有効性について
(一)問題の小括
各論で検討した 20 件の契約に関し、事業自体の必要性や事業を外部に委託する必
要性について、特段、問題になるような契約はないと判断した。
電子道庁化を推し進める上で必要な情報システムの開発と、そのシステムの円滑な
運用・保守・管理は、不可欠な業務であると考えられるからである。
しかしながら、委託業務が、
道民への行政サービスとして有効かつ効率的なものか、
最低限のコストで行われ、経済性が充たされているかという観点から、いくつかの問
題点を各論において指摘した(契約 3、5、10、14、15)
。
システム自体が利用しにくく、
道民への有効な行政サービスになっていなかったり、
システムの利用率が上がらず、そのために高額な委託費用をかけることが不経済であ
ったり、また、IT 技術の目覚しい進展に対し、従前のシステムを利用し続けることが
非効率的であったり、コストに見合っていなかったりという問題点であった。
(二)原
因
このような問題が生じた背景には、(1)システム自体の問題、(2)システム利用
者の問題、さらには(3)システムを簡単には変更できないという問題、があると考
える。
(1)システム自体の問題(契約 3、5、10、14、15)
システム自体の使い勝手が悪ければ、道民も道職員も利用しようとしないのは当
然であり、利用しないにもかかわらず運用コストをかければ経済性は落ちていく。
また、IT 技術の進展に伴い、システム自体が陳腐化したり、パソコンその他の情報
処理の方法に移行することで従来のシステムの利用が低下し、経済性が落ちていく
こともある。
また、情報処理システムが極めて専門的で、十分なノウハウが道の側に備わって
いなかったこと、出来上がった情報システムを実際に運用してみなければわからな
い部分も多分にあったこと、情報処理技術革新が目覚ましくコスト回収以前にシス
テムが陳腐化したり、より効率的な技術が開発されていくことなどが問題を生じさ
せる背景であったと考えられる。
情報システム構築の流れは地方自治体に共通するものであり、しかもそのスピー
ドが速いこと、ノウハウの蓄積が難しかったこと、設計段階では予想しない問題点
が運用段階で生じる情報システムの特殊性があること、IT 技術の目覚しい進展によ
るシステムの陳腐化は避けられないことを考えると、このような問題が生じること
もやむを得ないところではある。
(2)システム利用者の問題(契約 3)
システムが構築されても、その利用が躊躇されるような場合、費用に見合った効
221
果が出ないことになり、経済性は低下する。
(3)システムを簡単には変更できないという問題(契約 14、15)
システムに問題があるのであれば抜本的にシステムを変更すべきであるが、それ
が容易に変更できないため、非効率、不経済なシステムを利用し続けなければなら
ず、問題が解消されない。
システム開発には莫大な予算が費やされているため、多少の問題性があっても、
これを変更するときのさらなる財政支出や既に支出したコスト回収を図る必要もあ
ることを考慮すると、多少の問題性があっても現状のシステムを継続せざるをえな
い。現状の道の逼迫した財政状況では莫大な支出を伴うシステム変更は困難である。
このような財政的な問題だけではなく、情報処理システム特有の問題として、一
旦システムが開発されそれが運用され出すと、その後のシステム変更は行政サービ
スの空白を生むことになるため極力避けなければならない。変更するにしても、シ
ステムの心臓部に該当する部分について契約相手方の特殊なノウハウが絡んでいる
と、契約相手のそれを他者が利用することができない、あるいは、分析のために費
用と時間を要すると言った問題があり、このようなブラックボックス化に阻まれ、
システムの変更は容易なものでなくなっている。
(三)改善事項
情報処理関連業務委託契約をいかに効率的、かつ、経済的なものとしていくか、道
民への行政サービスとして有効性のあるものとしていくか、これらについて検討する
必要性があると考える。
現在行われている委託契約を直ちに変更する事などは行政サービスの継続性確保の
点で到底不可能であるから、今後情報関連機器のリース期間の終了など大きな変更を
要する時期にあわせシステムの再構築を検討する中で考えていくべき課題である。
具体的な検討課題として考慮すべき点は以下のとおりである。
(1)道の業務内容を分析し、情報処理システムに求める範囲や内容を明確にする
なぜなら、業務内容の分析が甘いと出来上がったシステムが道の要求水準に達せ
ず、使い勝手が悪くなったり、運用中の不具合が生じたりするなどの問題を発生さ
せるからである。
業務内容の分析を厳格に行うことがどのようなシステムを構築するかの基礎にな
るのであるからこれを疎かにすべきではなく、詳細な仕様要求書の作成が必要であ
る。これを作成するには専門的ノウハウが必要である。道の業務内容分析の精通者
と情報システムの精通者の結束体制を作る必要がある。道内部にこれらの精通者が
いなければ、外部専門家による補佐を求めることも必要となってくるであろう。
相応の費用と手間がかかることが予想されるが、情報処理システムに要する費用
の大きさやそれが一旦起動した後の変更が容易ではないことを考えると、事前準備
が最も重要と認識すべきである。
222
(2)システムのライフサイクルを評価し、費用対効果の分析を行う
なぜなら、同一委託先との間で、基本設計、詳細設計、運用保守が別々に契約さ
れ、単年度での経費として処理されると、システムのライフサイクル全体で継続契
約としてコスト計算した場合と比較して割高なものになってしまい、費用対効果が
悪化する可能性がある。
システムのライフサイクルを分析することで、当該システムにかけることができ
るコストの限界点を画することができるとともに、コスト回収のために何年システ
ムを利用することが相当か、その後のシステム開発の予定を探ることなども可能に
なると考える。
(3)情報処理システムのライフサイクルすべてを検証するために、早急に専門的視点
でシステムをチェックできる体制作りを検討する必要がある
なぜなら、計画段階からシステム廃止まですべての場面を検証するため、チェッ
ク体制が整っていないと、情報処理システムの開発、運用状況に問題がないか、経
済性を充たしているかなどのチェックが不十分になってしまうからである。
そこで、庁内のすべての情報処理システム全体を専門的視点でシステムをチェッ
クすることのできる体制作りを検討すべきである。
(4)情報処理システムに汎用性のあるオープンなシステムを採用し、基本システムの
開発とその後の保守運用が不可分なものにならないようにする
なぜなら、これまでのように委託先にシステムの中核的部分のノウハウを掌握さ
れ、特定のシステムに拘束されてしまうことは、非効率・不経済なシステムでも、
保守運用契約をいつまでも継続せざるを得ない状況になってしまうからである。汎
用性のあるオープンなシステムを採用することで開発後の保守運用契約が基本シス
テム開発者に独占されることもなくなり、競争による委託先選定も可能になる。ま
た、他者への移行可能性があることで、委託先にも契約を継続するための企業努力
(委託料やサービスの見直しなど)を促すことができるのである。
また、オープンシステムとすることで引継ぎに要する手間も軽減され、行政事務
への影響も最小限にとどまることも期待できる。
結局は、オープンでないシステムにより、委託先に何年もの間拘束され、委託先
の見積額に近い価格で委託し続けるか、それとも、拘束のないオープンなシステム
により、価格競争の中で委託先を決めていくかの選択である。
道の調達契約の公平性・透明性を確保する点では後者が妥当であることは言うま
でもない。
新規のシステム開発の場合はもちろん、現状のシステムをリニューアルする場合
には、オープンな標準に基づく開発を前提にした総合評価入札についても検討すべ
きである。
このようなシステム開発とその後の保守点検業務等が不可分にならないように見
直すようにとの指摘は、総務省から道の総務部長宛に通知されていることでもある
(18.8.25 総行行第 129 号「公共調達の適正化について」総務省自治行政局行政課
223
長から各都道府県総務部長宛)
。
(5)自治体相互協力によるシステム開発によってコストダウンを図る
なぜなら、道だけの開発ではなく、国による開発、複数自治体の相互協力による
開発の方が費用を節約できるとともにリスクも分散できるからである。
現在も国が費用を負担し、
自治体にシステム開発の提案を行わせる方式がとられ、
道も高知県とともに共同参画でシステム開発事業をおこなっている。
今後も自治体間で相互に協力して、システム開発や利用を行いコストダウンを図
るべきである。
2
随意契約によることの妥当性について
(一)問題の小括
各論で検討した 20 件の契約において、契約の相手方選択方法として問題があるもの
を、その問題点ごとに分類すると以下のとおりになる。
特例政令第 10 条第 1 項各号による随意契約
①特例政令の適用遺漏・・・・・・・・・・・・・契約 8、9、16、17
②特例政令の例外要件を充たしていないおそれ・・契約 3、10、18
③特例政令該当性判断基準や判断過程が曖昧・・・契約 1、2、3、5、7、10、
11、14、15、18
運用方針による随意契約
④随意契約の範囲に問題・・・・・・・・・・・・契約 13
⑤該当性判断基準や判断過程が曖昧・・・・・・・契約 19
上記に示したとおり、本章で監査した 20 件の契約のうち,実に 16 件の契約につい
て、相手方選択方法に問題点があると指摘することとなった。特に、特例政令が適用
されるべきであるのにこれを怠った①の各契約については問題が大きいと言わざるを
得ない。
(二)原
因
(1)特例政令の理解度不足
これが、上記(一)の問題が生じた主要原因であり、重大である。
特例政令に関する各論で個別に述べたように担当部課の特例政令に関する理解度
が低く、誤解をしている部課もあった。出納局において、特例政令施行後に説明を
行い、その後も毎年研修を行っているとのことであったが、それが不十分だったこ
とも理解度不足の原因の一つであると言わざるを得ない。
各論の 20 件の契約はすべ
て出納局の審査を受けているが、上記①適用遺漏についても審査をパスしている点
で、審査側の理解度も不足していたことが上記(一)のような問題発生の原因と言
える。
(2)特例政令を適用する契約において、随意契約を可とする判断基準が、道の財務規
則による随意契約の場合とレベルが異なるとの認識が不十分である
224
このような理解があるために、要件該当性判断が、運用方針による場合と同
じレベルで特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件を判断するため、緩やかな判断と
なっている。その結果、上記②、③の問題に至っている。
(3)特例政令第 10 条第 1 項各号の例外要件について、その意義の理解や判断基準が
曖昧なままである。プロポーザル方式による場合、再委託する場合にも特に要件
との関係を意識して判断していない
このような状況のため、要件該当性判断が緩くなってしまっており、その結果、
上記②、③の問題に至っている。
(4)特例政令や運用方針によって随意契約を決定した根拠資料が残されていない
随意契約は、政令の例外要件に該当する場合に特に認められるのであるから、そ
の要件該当性を判断した根拠が必要であるが、その根拠について資料が残されてい
ないために判断に客観性が認められない原因となっている。
前年の理由付をそのまま書き写したような理由書が決定書に添付されており、そ
もそも毎年の契約ごとに要件該当性の判断資料は準備されていないと考える方が実
態に合致していると思われる。
(三)改善事項
特例政令の適用される随意契約は、道の随意契約の中で金額的に上位を占めるもの
ばかりであり、非常に重要な契約である。そうであるにもかかわらず上記に述べたよ
うな問題を抱えたまま、特例政令による随意契約を継続することは極めて問題である
と言わざるを得ず、改善は急務である。
具体的な検討課題として考慮すべき点は以下のとおりである。
(1)特例政令の制定経緯を理解し、重要性を再確認することを全庁的に行う
特例政令が、一定額以上の高額な特定調達契約のみを限定し、それらについては
運用方針により随意契約が認められる場合以上に厳格な要件を定めているという制
定経緯を理解しておくことが大前提である。
この適用を誤ると、最悪、政令の根拠なしに随意契約を締結することになり法第
234 条第 2 項に違反することになるのであり、しかも、高額な契約しか対象になら
ないことを考えると、改善の必要性・緊急性はさらに増すと言わざるを得ない。
(2)特例政令を理解するためのマニュアルの完備とその周知徹底
担当部課からのヒヤリングでは、特例政令に関するマニュアルや資料もなく、前
年踏襲ですべてが取り扱われてしまっているという回答をする部課が多かった。こ
のような状況下においては、まず、本章の総論で示したフローチャートのような特
例政令の位置付を理解するものを準備する必要がある。
さらに、契約担当者に意識しろと指示するだけでは、継続的かつ普遍的なものに
なってこないため、共通認識を持つことのできる詳細なマニュアルを至急準備する
225
必要がある。フローチャートをさらに枝分かれする形で作成するなど、具体的に判
断プロセスが分かるようなものにすべきである。特例政令自体はそれほど多くの条
文を有するものではなく、ポイントさえおさえればそれほどの負担なくできあがる
ものと考える。特例政令による随意契約の金額が年間 28 億円にも達していることを
考えれば速やかに着手する必要がある。
(3)特例政令における随意契約の例外要件の判断基準・検証方法等の明確化
マニュアル等を作成し、その判断プロセスが統一化されていくとしても、個々の
要件の判断基準が明確化していなければ、要件該当性が恣意に流れてしまうおそれ
もあり、そうなると特例政令が随意契約の範囲を絞り込んだ意味が無くなってしま
う。
そこで、特例政令の例外要件をどのような基準で判断すべきか、その検証方法と
してどのような根拠が必要か検討する。
(a)特例政令第 10 条第 1 項第 1 号について
(ア)要件の意義
第 1 号の要件で情報処理関連契約に関連して問題になるのは、
「 特許権等の排
他的権利若しくは特殊な技術に係る物品等もしくは特定役務の調達をする場合
において、当該調達の相手方が特定されているとき」という部分である。
この規定部分の解釈としては、
「特許権等の排他的権利若しくは特殊な技術」、
「相手方が特定」という文言からも明らかなとおり、①調達する役務が特許権
等の排他的権利や特殊な技術にかかるものであること②その役務の調達先が特
定の者に限定され、他にいないことが必要と考えられる。
情報処理関連契約にあてはめるとすると、システム開発の場合は、特許権等
の排他的権利や特殊な技術に関わるシステムであること、その技術を供給でき
るものが特定の相手方に限定されており、他に相手方を探すことができないこ
とが必要である。また、システムの運用保守の場合、運用保守業務が特許権等
の排他的権利や特殊な技術に関わるものであること、その運用保守業務ができ
る者が特定の相手方に限定されており、他に相手方を探すことができないこと
が必要である。
(イ)要件該当性の判断
では、その要件該当性の判断はどのようなレベルの判断か、どのような根拠
に基づいて行うのかが問題になる。判断する者の主観的な判断だけでは足りな
いことはもちろんであるが、さらにどの程度の客観性を有する判断である必要
性があるか、根拠はどの程度必要とするかは重要な点である。なぜなら、いか
に厳格な要件を定めてもその該当性判断を緩やかに、あるいは曖昧にすれば、
厳格に定めた意味がなくなってしまうからである。
特例政令の例外要件について、どの程度の客観性が必要かについて、明示す
る文献等は見当たらなかったが、随意契約が入札の例外であること、特例政令
の制度趣旨及び例外要件が特に厳格に定められたこと、行政手続の公平性や透
明性が確保されなければならないこと、特例政令が適用される契約が一定額以
226
上の高額契約に限られることに鑑みると、広く一般住民の目から見て、排他的
な権利や特殊な技術に関わるものであること及び調達先が特定の者しかいない
というレベルの客観性があって初めて例外要件に該当すると考える。
そして、そのような客観的な判断を行ったと言えるためには、それを裏付
けるだけの根拠資料が必要である。特定の者が特殊な技術を持っていること
が公知の事実にでもなっていない限り、何も根拠なしに、要件に該当すると判
断することはできないところである。特殊性など要件を吟味できるだけの根拠
資料に基づいてはじめて技術が特殊であることや特定の者しか有していないこ
とを判断できるのである。
それ故、特段根拠資料もなく、担当部課の決定書において特殊であるとか、
唯一の業者であると記載されても、それが一般住民の目から見てもそうである
のか、どんな根拠に基づいてそのように判断したのか見えてこないために、曖
昧であるとの指摘になってくるのである。
要件該当性の判断について、各論においてプロポーザル方式の場合や再委託
の場合の問題性を指摘した(契約 8、9)
。運用方針による場合はともかくとし
て、特例政令においては例外要件が厳格に規定されている以上、プロポーザル
方式によったからといって、要件該当性の判断が不要になるものではなく、客
観的に見て、委託の相手方が特殊な技術を有するか、限定されているのかとい
う要件を充たすかを検討する必要がある。
この点、出納局からの回答によると、プロポーザル方式による選定手続は随
意契約の予備手続であり、プロポーザル方式により選定した者との契約が特例
政令第 10 条第 1 項 1 号に該当する場合は、随意契約によることも可能と解する
との回答を受けており、同様の理解であった。
したがって、プロポーザル方式による選定をしただけで、その後に、相手方
との契約について、特段、特例政令の例外要件該当性を判断していなければ、
これもまた判断の遺漏あるいは曖昧さを指摘されてしまうのである。むしろ、
このようなケースでは特命随契とせずに、総合評価入札の方式をとることが望
ましいと考える。
さらに、再委託の場合、当初の委託先に限定されるという上記(ア)の②の要
件に該当しなくなるのが通常であるから、原則として特例政令による随意契約
はできないものと考える。
この点、出納局は、特例政令第 10 条第 1 項 1 号を根拠に随意契約をした場合
にあっては、特に、随意契約によることとした理由と不整合とならないよう留
意する必要があるとの回答があった。
特例政令第 10 条第 1 項 1 号で随意契約とする理由は、役務の調達先が特定の
者に限定されるということであるから、不整合とならないよう留意すれば、通
常は再委託ができないとの結論に達するはずである。
(ウ)要件該当性判断の根拠資料
それでは、どのように根拠資料を用意して、客観的判断を根拠づけるか。
情報処理関連契約においては元々ノウハウに乏しいため、その根拠資料を用
227
意することが容易ではないということは担当部課からのヒヤリングを通じて感
じるところであった。
しかしながら、前述(イ)で述べたように特例政令の制度趣旨や行政手続の
公平性や透明性を確保しなければならないという要請などに鑑みると、根拠資
料が用意できず、例外要件を客観的に判断できないような場合には随意契約は
回避すべきではないかと考える。原則に戻って入札をおこなうべきであり、価
格競争だけで相手方を決められないような場合には総合評価入札の方法による
ことで、価格以外の要素も加味できるのであり不都合はないものと考える。
また、根拠資料を収集することが容易ではないことはわかるが、検討次第に
よってはそれも可能ではないかと考える。
例えば、根拠資料として、文書による特許権の証明を得たり、特殊な技術で
あることを複数の業界関係者から取得するなどの方法も考えられる。あるいは、
相手方から他の会社にはない特殊な技術を有する唯一の会社であることの疎明
資料を得て、これを道の側で吟味する方法も考えられるのではないか。
(b)特例政令第 10 条第 1 項第 2 号について
(ア)要件の意義
第 2 号の要件で、本章の情報処理関連契約に関連して問題になるのは、
「既契
約特定役務につき、既契約特定役務に連接して提供を受ける同種の特定役務の
調達をする場合であって既契約特定役務の調達の相手方以外の者から調達した
ならば既契約特定役務の便益を享受することに著しい支障が生ずるおそれがあ
るとき」という部分である。
この規定の解釈としては、①既に契約を締結した特定役務について、引き続
きその役務を調達しようとする場合であること、②既に調達している相手方以
外から調達した場合、その特定役務の便益を享受するのに著しい支障が生じる
おそれがあることが必要と考えら、特に後者②の「著しい支障が生じるおそれ」
の有無の判断がポイントとなる。
(イ)要件該当性の判断
では、その「著しい支障が生じるおそれ」の有無の判断はどのようなレベル
の判断か、どのような根拠に基づいて行うのかについては、第 1 号の場合と同
様、広く一般住民の目から見て、著しい支障が生じるおそれがあると判断がつ
くというレベルの客観性があって初めて例外要件に該当すると考える。
そして、そのような客観的な判断を行ったと言えるためには、それを裏付け
るだけの根拠資料が必要である。支障の著しさを吟味できるだけの根拠資料に
基づいて判断していることで、はじめて客観性のある判断になるのである。
それ故、特段根拠資料もなく、担当部課の決定書において著しい支障が生じ
るおそれがあると記載されても、それが一般住民の目から見てもそうであるの
か、どんな根拠に基づいてそのように判断したのか見えてこないために、曖昧
であるとの指摘になってくるのである。
第 2 号の要件該当性の判断について、各論において再委託の場合の問題性を
228
指摘した(契約 3、10)。
他の者から調達した場合に著しい支障が生じるおそれがあることをもって既
契約先との特命随契が認められているにもかかわらず、再委託するということ
は、他の者からも調達可能と考え得るし、また、役務提供のために他の者に再
委託しなければならないとなると、既契約先が既契約特定役務を供給できるの
かも疑問になるところであり、第 2 号による随意契約を認めた理由と不整合と
ならないよう留意すれば、通常は再委託ができないとの結論に達するはずであ
る。
(ウ)要件該当性判断の根拠資料
第 2 号においても「著しい支障が生じるおそれ」があるとの要件について、
どのように根拠資料を用意して、客観的判断を行ったかを根拠づけることにな
る。
情報処理システムの運用・管理・保守業務の委託契約を継続していく場合
に、第 2 号を根拠にして随意契約が行われることが多いが、その場合の「著し
い支障」として考えられるものとしては、他者に任せた場合、情報処理システ
ムが使用不能になってしまったり、そうはならなくてもシステムの内容を把握
するために時間と多額の費用がかかることなどによって情報処理システムの停
滞を招くことであり、一時も行政事務を止めることのできない道にとっては著
しい支障となる。
このような著しい支障が生じるおそれを客観的に根拠づけるものとしては、
既存の情報処理システムが特殊で、他者では運用等の業務を代替できないとす
る資料、既存の情報処理システムを理解するために要する時間と経費を算出し
た資料などが考えられる。
今回監査を行った 20 件の契約の中でも既存の委託先以外に運用等の業務を
委託した場合の経費の増額がどの程度であるのかを算出し、それを根拠資料と
していた契約が見受けられ、費用的に著しい支障が生じることを示す資料と認
められた。
上記のような著しい支障が生じるおそれがあるという客観的資料が提出され
れば、第 2 号を根拠にした随意契約が認められる。
(4)要件該当性の根拠資料を決定書とともに記録化し、要件の検討は毎年行う
根拠資料が準備されてもそれが記録として保管されていなければ、実際に根拠に
基づく判断がされたのかわからなくなってしまうのでこれを記録化することが必要
である。また、担当部課においても記録化されていれば後日の参考資料としても利
用することが可能となる。
さらに、契約が継続されていく場合でも道においては単年度契約が原則となって
いるのであるから毎年特例政令の例外要件を検討すべきである。
(5)随意契約に至った個別の理由を詳細に公表する。随意契約に関する統計数字を詳
細に公表する
229
(a)随意契約に至った個別の理由の公表
随意契約が入札の例外であり、その透明性を確保する上では、随意契約を選択
した個別理由を公表すべきであるが、さらに、特例政令により随意契約に至った
場合、特例政令第 11 条は特定調達契約の公示を義務づけ、この政令の委任を受け
た道の「物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める規則」第 11 条において相
手方を決定した日の翌日から 72 日以内に北海道公報に公示をすることとその記
載事項を定めている。
その中で「随意契約による場合にはその理由」
(上記規則第 11 条第 2 項第 8 号)
と規定している。現在、理由の記載としては特例政令の何号によるかという条項
の記載のみで、それ以上の理由は示されていない。
しかしながら、特例政令により随意契約に至った場合、道の決定書に記載され
ている個別の理由の公表も行うべきである(もちろん前記(3)
(4)の改善がな
された後のものであることが大前提)
。
なぜなら、①上記第 8 号の規定は、
「随意契約による場合にはその理由」と規定
するものであり、根拠条項のみと規定せず、むしろ「その理由」とある以上、条
文の文言的にも決定書にある選定理由を公表してはじめて理由を公表したことに
なると解される。②特例政令は政府調達協定を実施するための規定であり、調達
契約における内外無差別の原則、手続の透明性確保を目的とするものである。ま
た、特に限定的な要件に該当する場合に限って随意契約を認めている(特例政令
第 10 条第 1 項第 1 号から第 6 号)。かかる制度趣旨や規定ぶりからすると、特例
政令によるとした詳細な理由まで公表してはじめてその役割を果たすものと考え
られる。例外的に認められている随意契約について、根拠規定のみ公表されただ
けであれば、実際にどのような特殊性があってその契約相手と契約したのか、ど
のような著しい支障が生じると判断して契約したのかわからず、真に内外無差別
の原則が守られているのか判断できず、手続に透明性あるものとは言い難い。③
仮に詳細な内容を公表したとしても道や企業の秘密に属するものまで公表するの
でなければ公表範囲を拡大することによる影響は生じない。
(b)随意契約に関する統計数字を詳細に公表する
今回随意契約を監査対象として選択し、監査を行ったところ、
随意契約の件数、
金額をはじめて知るところとなった。情報関連業務の委託契約においては、例外
的である随意契約が圧倒的に多いという状況は違和感を覚えるものであるが、統
計数字を知って初めて感じたものである。毎年、統計数字を調査し、公表するこ
とにより具体的な状況を把握できるようになるのである。
国からも随意契約に関する統計の作成が求められているのは(18.8.25 総行行
第 129 号「公共調達の適正化について」総務省自治行政局行政課長から各都道府
県総務部長宛)、同様の視点によるものと解される。
3
委託料の算定根拠の妥当性について
(一)問題の小括
各論で検討した 20 件の契約について、委託料の算定根拠の問題として指摘した点を
230
小括すると以下のとおりとなる。
問題点の指摘がなかったのは一部の契約であり、その他の多くの契約に共通する問
題点として、①積算方法に明確な基準がなかったり、それを裏付ける積算資料がない
こと、②委託相手先の積算に準拠したり、③前年踏襲の積算が繰り返され、契約年度
毎の積算がされていないこと、などがあげられた。
その他、個別の契約で特に問題があったのは、大幅に見積額がアップした見積書の
再提出を受け、その金額で契約しているものであり、合理的な理由の説明もなく、道
にとって不利な契約を締結している点で問題があることを指摘した(契約 5)
。
特命随契の場合、競争原理が全く働かないため、委託金額の妥当性やその決定プロ
セスの透明性について問題になること、さらに、情報関連の契約においては契約内容
が専門的であるため道の積算が委託先に依拠していないか、根拠に基づいて積算がさ
れているかが問題になると考えていたところ、まさにそうした点で問題があった。問
題のない契約は、特殊な事情があり、委託金額が固定されてしまっているような契約
だけであり、それ以外の契約で問題があったことからすると、各論で検討した以外の
特命随契にも同様の問題があるのではないか懸念される。
上記①から③の問題点があるとき、道の行った積算の内容について、妥当性がなく
なり、また、決定プロセス自体の透明性が失われるおそれも出てくるのである。
(二)原
因
(1)情報処理契約の内容が非常に専門的であるにもかかわらず、契約担当部課に積算
に精通する者がいない
業務内容について精通していても、それを処理するシステムの開発やそのシステ
ムの運用・保守等の内容については、ノウハウが不十分なため、どのような業務内
容に対し、どのようなレベルの技術者が、何人必要かという判断が十分にできず、
その結果、前年の積算内容をそのまま踏襲したり、曖昧な積算内容になってしまっ
たり、委託相手先に積算方法を頼ってしまう状況が生まれている。委託相手先に依
拠することは利益を追求する相手方の積算内容に限りなく近づいてしまい、積算内
容の妥当性は失われ、しかも道と委託相手先の間だけで行われ、公表されないので
あるから積算過程の透明性も失われてしまうのは当然である。
(2)積算に必要な根拠資料を蓄積するシステムができていないし、その意識も希薄で
ある
建設部など発注業務の多い部においては、膨大な積算資料を準備し、契約ごとに
詳細な積算を行っている。これに対し、情報処理関連の契約については、各部課と
も十分な積算資料を集めていない。
たとえば、見積書の内訳を要求していないので、委託相手先が当該業務を行うの
にどのような積算を行っているのか把握しておらず、内訳書の必要性があまり認識
されていない部課もあった。
また、委託契約が締結された後、実際に当該業務にどの程度の技術者が必要であ
ったのかということがあまり意識されていないが、委託した業務内容について、道
231
が積算で予定していたものと実態とで相違はないのか、事後的な実態把握によって、
その後の同種の契約についての積算資料となっていくことも期待できるものと考え
る。
さらに、実際に契約担当者が積算時に使用した資料(第三者から聴取した積算情
報など)も、その担当者の個人的な資料となっているだけで、記録化することをし
ていないために、後日の検証に使用できず、また、次年度以降の積算資料として蓄
積されていない。
(3)内部に情報処理契約の算定根拠の妥当性に関して専門的にチェックする部署がな
く、不足する情報関連契約に関する知識を補充するための外部の精通者を活用す
るシステムもない
情報処理関連契約に関する知識が不足しているのであれば、それを補う必要性が
あるが、そのための連携活用システムもない。
(4)情報処理システムの運用保守契約の特殊性
情報処理システムが一旦稼動し始めると、システムの停止は行政事務の停止を意
味するため、契約担当部課ではシステムの運用保守に必要な契約を怠りなく継続し
ていかなければならないという強い拘束を受けることとなる。その場合、運用保守
契約は、毎年ほぼ同じ内容で継続されることが多いため、特段の変更がない限り、
前年度の積算方法を踏襲して積算してしまう傾向が強いという特殊性がある。
(三)改善事項
情報処理関連契約について、委託料算定根拠の妥当性・透明性を確保していくこと
が急務であり、そのためには前記(二)の原因を解消していくことが必要であり、一
言で言うと、道の側で委託相手先に頼らずに自ら積算できるノウハウを蓄積する仕組
みが不可欠である。言うは易し、行うは難しかもしれないが、情報関連の契約が随意
契約の方法で行われることが非常に多く、しかもその契約額が高額であることを考え
ると、積算についてのノウハウが不十分な現状をこのままにしておくことはできない
(改善できない場合、随意契約によることを避け、総合評価入札などの方法によるべ
きである。)
。
そこで、仕組みとして考えられるものを以下に提案する。
なお、この提案を道のシステムの中で実際に実行できるのか、どの程度の手間がか
かるのか、十分検証した上で提案するものではないことを予め述べておく。ほとんど
ノウハウが蓄積されていない状況を打破するために何か方策はないかという観点で検
討したものであって、より良い改善案があれば以下の提案に拘る必要は全くないこと
を付言しておく。
(1)積算過程を明示し、
基礎となる人工数や単価、
機器価格を裏付ける資料を添付し、
記録化する。資料を添付できない場合、備考欄に理由を記載する。これらの作業
を毎年の契約ごとに行う
232
現状、積算過程が明示されていなかったり(まとまった人工数だけの記載など)、
内容を裏付ける資料があったりなかったりで、果たして積算の検討が毎年行われて
いるのか客観的にはわからない。
そこで、上記のような作業をすることにより積算が行われていることを客観的に
示せるとともに、後日の検証、ノウハウの蓄積も可能となる。
これまでに比べ契約手続が煩雑になることは明らかであるが、相手が 1 社の特命
随契の場合、入札のように競争の中で価格が決まり、自ずと透明性・妥当性が担保
されるわけではないから、積算過程を明示し、裏づけ資料を添付することでその金
額の透明性や妥当性を担保していくしかないのである。
(2)見積書に詳細な内訳書を添付させる
現状、道の仕組みでは見積書の内訳をとっていないが、民間企業間では見積書の
内訳は当然であり、その内容を吟味することも当たり前のことである。
今後は見積書に詳細な内訳書の添付を求め、これを類型化するなどして積算のノ
ウハウとすべきである。そのような見積書の蓄積が今後のその他の契約についても
積算のノウハウになっていくことは間違いないところである。上記改善提案(1)
で述べた積算の裏付資料との比較もできるようになるのである。
さらに、見積書の提出時期であるが、道の随意契約の実態を調査する中で判明し
たことであるが、契約日かその数日前に提出されているものが大部分である。この
ような時期に見積書が提出されたのでは詳細な内訳書が添付されていても内容を吟
味する時間も無く、次年度以降のノウハウとはなっても当該契約に生かすことはで
きない。見積内容を吟味するために必要な期間を確保できるよう前もって見積書を
提出させるようにすべきである。
(3)契約年度終了後に事後報告書の提出を求める
契約終了時の事後報告として、実際にどの程度の人員や機器が必要であったかの
報告書を委託相手先から求める。
現状、道の仕組みでは委任または準委任契約の場合、収支積算書を徴することに
なっているが、請負契約の場合には収支積算書は不要となっている。そして、シス
テムの運用保守契約を請負契約と扱い、収支積算書は不要との考え方をしている。
そもそも、システムの運用保守契約が請負契約に属するか疑問のあるところであ
るが、その議論はともかく、仕組みとして、実際にシステムの運用保守のいかなる
業務に、どの程度のレベルの SE が、何人必要であったのか、どの程度の機器が必要
であったのかという結果報告を求めるべきである。
これにより、システムの運用保守に必要な実数の把握が可能になるのであり、次
年度以降の積算資料として利用できるとともに他の契約のためにノウハウとして蓄
積できるのである。現実問題としても、システムの運用保守の場合、システムの習
熟度がアップすることで実際の運用保守の必要性が下がることも十分予想されるの
であり、漫然と毎年同じ人数の SE を必要として積算することもなくなるのではない
かと予想される。
233
(4)一定額以上の契約(例えば、特例政令が適用になる特定調達契約)の積算時、外
部の第三者に積算に関する意見を聴取することの制度化について検討すべきであ
る
情報関連の契約の積算に関しては専門的知識が要求され、しかも案件ごとにシス
テムも異なることから専門家でも容易ではないことは明らかである。
これまでも、担当部課において個別の情報源を持って積算に関する意見を聴取す
る作業が行われており、望ましいことである。しかしながら、それらの知識が担当
者レベルに留まり、しかも担当者の手控え程度でしか残らず、職員の異動とともに
消えていく状況にあるというのが現実である。
あらゆる契約に積算意見を求めることは困難であるとしても、特例政令の適用に
なる特定調達契約(予定価格 3200 万円以上)については、積算内容の妥当性、客観
性を担保するために積算に関する第三者の具体的な意見聴取を制度化し、記録に残
していくことも必要であり、できない制度ではないと考える。意見聴取のための費
用や時間がかかったとしても、高額契約に限定して、その積算の妥当性を担保する
ためのものだとすればバランスを失しないと考える。
(5)特例政令第 10 条第 1 項第 2 号による随意契約について、単年度計算ではなく、
ライフサイクルコストを吟味し、適正な減額ができないか検討すべきである
上記(1)から(4)と全く異なる視点であるが、第 2 号による随意契約を厳格
に要件審査し、その結果、随意契約が認められたとすれば、特段の事情がない限り、
その委託相手先との契約は次年度以降も継続することになるはずである。そうだと
すれば、その委託金額積算に際し、当該システムのライフサイクルを考慮し、複数
年の委託契約を前提にした積算を検討する必要があるのではないか。単年度の契約
に比べ、通常複数年契約となればコストの軽減が図られることが予想されるのであ
るから、軽減されるコストに見合った減額ができないか、コストダウンの可能性を
模索する必要性を感じる。
委託相手先も第 2 号による随意契約が継続されることを想定しているのであるか
ら、ライフサイクルを考慮した複数年分のコストを元に減額しても想定内のものと
考えられる。ライフサイクルコストについては国も考慮しているところであり、他
の自治体も含め、同様の考え方が広がることで減額も当たり前のものとなってくる
可能性は十分にあるものと考える。
234
第4章
その他の随意契約についての監査結果
一
総論
1
はじめに
(一)監査対象とした契約
第2章では「契約の目的物が代替性のないものであるとき。」
(運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(2)
)を、第3章では情報関連業務委託契約における随意契約を、そ
れぞれ監査対象としてきたが、第4章ではこれら以外の随意契約(以下、
「その他の随
意契約」という。
)を監査対象としている。
「その他の随意契約」については、施行令第 167 条の 2 の 2 号の「その性質、目的
が競争入札に適さないもの」の具体化として運用方針第 3 節(随意契約)関係に規定
されている。今回の監査では、その他の随意契約について、運用方針第 3 節(随意契
約)関係の各規程の制度趣旨に則った運用が行われているか否かについて重点的に検
証した。また、平成 16 年度においては随意契約であったが、平成 17 年度においては
競争入札に移行している契約についても監査対象とした。
当該契約を検証することは、
「原則としての競争入札、例外としての随意契約」という位置付けの整理に重要な意
味を持つと考えたからである。
(二)監査の視点
「その他の随意契約」については、以下の事項を監査の視点としており、これら以
外に指摘すべき事項がある場合は必要事項を指摘している。
(1)委託の必要性・有効性
例えば、特殊の技術または特殊な設備等を必要とする事業、あるいは、高度の専
門的な知識を必要とする調査、研究等については、当該事業を北海道が直接実施す
るよりも、外部委託して実施させることの方が効率的である。そこで、当該事業を
効率的に遂行するために、当該事業を委託しているか否かが重要となる。
(2)随意契約によることの妥当性
契約の方法は競争入札が原則であり、随意契約はあくまでも例外である。したが
って、施行令第 167 条の 2 の 2 号「その性質、目的が競争入札に適さないもの」を
具体化した運用方針第 3 節(随意契約)関係の各規定の制度趣旨に則った運用がな
されることにより、例外である随意契約の運用が正当化される。そこで、運用方針
第 3 節(随意契約)関係の各規定の制度趣旨に則った運用がなされているか否かの
検証が重要となる。
(3)委託料の算定根拠の妥当性
委託の場合、業務の処理に見合う対価は必要であり、その内訳も十分に説明でき
るものでなければならない。そのためには、できる限り具体的な標準作業量、標準
処理時間、標準給与等の把握が必要である。そこで、標準単価、標準作業量、標準
235
処理時間等委託料の積算根拠となる数値の算定根拠の合理性、
客観性が重要となる。
(4)契約内容変更の妥当性
委託契約書には、
「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の内容の一部を
変更し、またはその全部若しくは一部を中止することができる。この場合において、
甲(北海道)は、乙(受託者)に対し書面により通知するものとし、委託料の額又
は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議して書面によりこれを定めるも
のとする。」という業務内容の変更に関する条項がある。すなわち、委託契約上、業
務内容に変更があった場合に、委託料の変更が認められている。
一方、記録を見ると、例えば、電力料金の変動や委託先における職員異動及び給
与改定等による委託料の変更が、業務内容の変更を根拠に行われていた。そこで、
委託料の変更の根拠の妥当性を検討した。
(5)再委託の妥当性
再委託とは、受託者がその受託した業務の全部または一部の処理を第三者に委任
し、または請け負わせることをいう。当該委託契約が受託者の当該業務に関する技
術的、経済的能力を信頼し、受託者自らが履行に当たるべきことを前提として締結
されたものであり、これを受託者が勝手に第三者に再委託することは信義誠実の原
則に反する行為となること、及び、業務内容によっては秘密性のあるものもあるた
め、再委託は原則として禁止されている。
北海道においては、①委託業務をそのまま全部再委託する場合②委託業務の主要
な部分を再委託する場合③本来、独立した業務として委託できるものを数件まとめ
て委託した場合において、そのうち 1 件以上の業務を全部再委託する場合について
は、再委託を承認できないことになっている。そして、①再委託の必要があると認
められ②(ケースに応じ)再委託させようとする第三者が受託者の総合的な指揮・
監督の下に置かれ③業務を遂行させる上で当該第三者が技術的、経済的能力から判
断して再委託させても契約の履行を確保するのに支障を来さないとき、に限り再委
託が認められることになっている。そこで、再委託をしている場合が、再委託を禁
止している場合に該当しないか否か、再委託の承認に際して 3 つの要件が検討され
ているか否かが重要となる。
2 監査の対象とした「その他の随意契約」の類型、制度趣旨及び特に重視した監査の視点
(一)国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む)又は地方公共団
体(地方独立行政法人を含む。)若しくは慈善のため設立された救済施設と契約(政
令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く)をするとき(運用方針
第 3 節(随意契約)関係 1(9)
)
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定は、国または地方公共団体若しくは身体障害
236
者福祉法(昭和 24 年法律第 283 号)の定めにより国、都道府県、市町村等が設置
する身体障害者更生援護施設のような慈善のために設立された救済施設について
は、その公益性と事業促進の見地から随意契約によることができることとしたも
のである。
<特に重視した監査の視点>
随意契約によることの妥当性。すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1
(9)を契約根拠としている随意契約については、当該業務が公益性と事業促進の
見地から実施されるものであるか否かが重要となる。
(二)法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくはその連会
の存立を援助するため、これらの設立目的に基づく事業について契約(政令第 167
条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く)をするとき(運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(11)
)
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定は、当該団体が利益の追求を目的とする団体
ではないことから、これらの団体と直接契約をするときは、概ね一般の市価より
低価であろうことが期待され、営利を目的とする団体に比べて有利であること、
また、
たとえ営利を目的とする団体と契約した場合と同質同価であったとしても、
営利を目的とする団体に優先して契約の相手方とすることがその存立を援助する
ことになることなどから随意契約によることができることとしたものである。
<特に重視した監査の視点>
①
随意契約によることの妥当性。すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係
1(11)を契約根拠としている随意契約については、一般的にみて営利会社等
と契約するよりも有利であるか否か及び契約の相手方が存立を援助する必要
がある団体か否かが重要となる。
②
随意契約によることの妥当性との関連で以下の点についても検討する。
道は施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随契)に該当しない福祉政策目
的による随意契約を運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を根拠に行って
いる。運用方針の上位規範である施行令において、契約主体、対象契約が限定
されている以上、福祉関係施設等との随意契約は、施行令第 167 条の 2 第 1 項
第 3 号(特定随契)のみが適用されるとするのか、あるいは、施行令 2 号(こ
れを具体化した運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
(11)
)を根拠として、
施行令 3 号の規定に該当しない福祉政策目的による随意契約を行うことが可能
であるのかが問題となる。
(三)庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く)に委託するとき(運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(17)
)
237
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定は、庁舎の清掃、寮の賄等を事業として行っ
ていない個人に対して委託契約することは給与的性格を有することから、(価格)
競争によって相手方を決定することはなじまないので、随意契約によることがで
きることとしたものである。
<特に重視した監査の視点>
随意契約によることの妥当性。すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1
(17)については、対象としている業務自体が本来、競争に付すべき業務である
ことから、雇用的性格が認められる場合や業務遂行上、高度の信頼関係が必要と
される場合等特殊ケースに限定して運用されることにより随意契約が正当化され
る規定である。したがって、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(17)を契約根
拠としている随意契約が、
このような特殊ケースに該当するか否かが重要となる。
(四)委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難いものを
委託するとき(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
)
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定は、委任または準委任に属する契約であって
も(価格)競争によることができるものとそうでないものとがあることから、両
者を区別する必要性があったこと及び平成11年以前における改正前運用方針
(=施設の管理、庁舎等の警備または寮等の賄を現に委託している者に継続して
委託しようとするとき。)のように単に継続して委託することのみをもって随意契
約することは適切でないと判断したことから、契約の内容または性質が(価格)
競争になじまないものを(当該契約の履行に)最も適した者に委託する場合に限
り随意契約できるものとしたものである。
ここで、「競争により難い。
」とは、他に履行可能な者がいる場合であっても、
価格競争(競争入札)によると技術その他の条件が北海道にとって不利となる場
合など、契約の内容または性格が競争になじまないことを意味するとの説明であ
った。
<運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)の規定の仕方の問題点>
運用方針第 3 節(随意契約)関係の各号が定められた趣旨は、施行令 167 条の
2 第1項第 2 号の「競争入札に適しないもの」が明確でないため類型を具体化し
随意契約の選択の運用に疑義が生じぬようにしたものである。
しかしながら、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が文言上この趣旨を
全うしているかについては疑問がある。
すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)における「競争により難
いもの」という文言と施行令の「競争入札に適しないもの」という文言はほぼ同
義語であり、「競争により難いもの」という文言から「競争入札に適しないもの」
238
を具体化した契約類型を判断することは困難である。また、「委任又は準委任」
という文言も請負や売買などを排除するという意味しかなく、積極的に具体的な
契約類型を定める文言とはいえない。
このため、「試験研究、訴訟事務」という文言を手がかりにして、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(18)の文言解釈を推し量るほかない。
まず「試験」や「研究」の場合、学問的、科学的、技術的な見地から、高度の
専門的能力を持つ者や特殊な設備を備える者でないと「試験」や「研究」を遂行
できない場合があり、履行可能な業者が一者とまでは言えないにしても少数に限
定されてくることが考えられる。競争入札よりも北海道の有する種々の情報によ
った方が、複数の履行可能な業者の中から、より信頼性が高く、より精度のある
結果が得られる者を選定することができることがある。
次に、「訴訟事務」の場合、訴訟法その他法律及び訴訟実務に精通しており、
かつ、弁護士等の資格を有する者でないと「訴訟事務」を遂行できないことから、
やはり限定された者の中から選定されなければならない。さらに、それらの中で
も経験、能力、信頼性、相手方の意向等を考慮し、より事業遂行に相応しい相手
方を選定する必要から、競争入札によるよりも北海道の入手し得る種々の情報を
基に選定するほうが望ましいと考えられる。
このように考えると、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)の文言から読
み取れる契約類型は、「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信
頼性等を考慮し、当該業務に最もふさわしい相手方を選定するため、競争入札で
は相手方選定の目的を達成できない場合」を指すと解される。
<特に重視した監査の視点>
随意契約によることの妥当性。すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1
(18)を契約根拠としている随意契約が、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
の文言上から読み取れる契約類型に該当するか否かの検証が重要となる。
(五) その他特に知事が必要と認める契約をするとき(運用方針第 3 節(随意契約)関係
1(19)
)
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定による特例は、特例中の特例として個別審議
により知事の承認を得べきものとして定められたものである。すなわち、運用方
針において、
「その性質又は目的が競争入札に適しないもの。
」が具体的にどのよ
うな場合であるかをすべて列記することが事実上困難であることから、この規定
をおき、各号列記以外の事案が生じた場合において個別具体的に判断することと
したものである。
239
<特に知事が必要と認める契約の事例>
特例承認事例
特例承認された理由
国(建設省:現国土交通省)が策定した計画 当該建設工事は、当該建設工事本来の目的以
に基づく時期別原価調査を行うため、夏期に 外に、通年施行のために冬期間工事の資料を
おいて施行した工事と同工種、同量、同一地 得るという別途の目的もあり、かつ、その施
域及び同一技術で施行する冬期工事の契約 行が同一業者によって行われることにより、
の相手方を、夏期工事の施工業者とした。
適期施工工事と冬期間工事との比較等のた
めのより正確な資料を得られる。
魚道工事の施工に必要な仮道、資材置き場等 当該工事は、治山事業により築造した堰堤に
用地の所有会社が、当該工事の受注を強く望 魚道を設けようとするものであり、工事用地
んでおり、当該用地を使用(借用)しなけれ そのものは道有地(一部分のみ私有地)で問
ば施工が不可能であった。
題ないが、当該工事を施工するために必要な
仮道、仮設物用地、資材置場用地の確保に当
たり、当該用地の所有権者が地元建設業者で
あり、かつ、当該工事の受注に意欲を有して
いることから、競争により他の業者に発注す
ることは困難である。
道外企業の本道への進出促進(企業誘致)の 当該道外企業は、苫小牧東部工業地区への進
観点から、道内に進出した企業の製品を優先 出を近く正式に立地表明する予定であるが、
的に使用する。
同社が本道に進出した場合、本道経済への波
及効果は頗る大きい。したがって、同社の事
業を奨励することは、北海道産業の発展に資
することが大であると認められる。
建築物の設計(基本設計、実施設計)及び工 基本設計業務、実施設計業務及び工事監理業
事監理について、次に掲げる建築物(設計、 務の委託契約には、設計、意匠等の創造性や
意匠の創造性等を要するものを除く。
)以外 技術力等を必要とするものもあるため、価格
の建築物。
による競争がなじまない場合がある。特に、
・ 工場、車庫、市場、倉庫及びこれらに類 工事監理業務委託については、実施設計の受
すると認められるもの
託者が当該設計の意図及び内容に精通する
・ 共同住宅の用に供する建築物のうち、標 ことから契約の性質が競争になじまない。
準的な形態と認められるもの
・ 建築物に付帯する設備及び外構に係る
もの
<特に重視した監査の視点>
随意契約によることの妥当性。すなわち、この規定による特例は、特例中の特
例という性格から拡大した運用は認められない。したがって、当該業務が特に知
事が必要と認める契約に該当するとした契約担当者の判断の妥当性の検証が重要
となる。
240
(六) 時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)
<制度趣旨>
出納局の説明によると、この規定は、時価に比べ著しく有利な価格で契約でき
る見込みがある場合には、競争入札の方法による利益よりも随意契約による利益
の方が大きいため随意契約によることができることとしたものである。
<運用方針が示す具体例>
①
契約の相手方が道の必要とする物件を多量に所有し、又は道の施行する工事
につき使用する材料を当該工事現場付近に多量に所有するため、他の者に比し
て有利な価格で契約をすることができるとき。
②
特殊な機械等を有する業者に、時価に比して有利な価格で発注できるような
とき。
<特に重視した監査の視点>
随意契約によることの妥当性。すなわち、運用方針第 3 節(随意契約)関係 4
を根拠に随意契約をする場合、時価及び時価との比較対象となる価格が客観的に
把握されていることが重要となる。
(七) 「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
(運用方針第 3 節(随意契約)関
係 1 の(2)
)を適用していたが、平成 17 年度から指名競争入札に移行したケース
<特に重視した監査の視点>
指名競争入札によることの妥当性。すなわち、当該業務を随意契約から競争入
札へ移行したことについての契約担当者の判断の妥当性が重要となる。
3
個別検討の対象としたその他の随意契約一覧
契約
番
類型
号
運用方針第
3 節(随意
1
幌別硫黄鉱山抗排水処理業務委託契約
2
都市計画基礎調査業務委託契約
契約)関係
1(9)
運用方針第
3 節(随意
契約)関係
1(11)
1
2
委託業務名
担当部課
経済部
資源エネルギー課
建設部
都市計画課
北海道庁本庁舎(地下2階から7階まで清 総務部
掃業務委託契約
総務課
マイクロフィルム作成業務委託契約
総務部
法制文書課
241
委託金額
(単位:円)
275,596,000
14,345,000
88,725,000
52.50
(単価契約)
契約
番
類型
号
運用方針第
3 節(随意
1
契約)関係
1(17)
運用方針第
3 節(随意
契約)関係
1(18)
2
1
委託業務名
担当部課
北海道職員子弟寮(尚学寮)管理業務委託 総務部
契約
職員厚生課
北海道職員子弟寮(真澄寮)管理業務委託 総務部
契約
職員厚生課
北海道保健福祉情報センター管理運営業務 保健福祉部
委託契約
総務課
2
北海道福祉人材センター運営事業委託契約
保健福祉部
地域福祉課
3
介護知識・技術等普及促進事業委託契約
4
発達障害者支援センター事業委託契約
5
6
保健福祉部
地域福祉課
保健福祉部
障害者保健福祉課
北海道観光物産センター管理運営業務委託 経済部
契約
商業経済交流課
北海道若年者就職支援センター(通称ジョ 経済部
ブカフェ北海道)運営業務委託契約
雇用対策課
委託金額
(単位:円)
4,298,400
4,298,400
23,452,848
75,720,750
44,381,400
24,575,000
14,621,343
50,223,500
運用方針第
3 節(随意
契約)関係
1(19)
運用方針第
3 節(随意
契約)関係
4
指名競争入
札
1
北海道立栽培水産試験場改築工事監理業務 水産林務部
委託契約
水産振興課
1
釧路管理区林相図作製業務委託契約
2
空知管理区林相図作製業務委託契約
1
本庁舎西側昇降機保守点検業務委託契約
2
本庁舎東側昇降機保守点検業務委託契約
3
別館庁舎昇降機保守点検業務委託契約
242
水産林務部
道有林課
水産林務部
道有林課
総務部
管財課
総務部
管財課
総務部
管財課
13,125,000
1,197,000
3,192,000
7,459,200
5,544,000
5,922,000
二
個別契約
国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。)
又は地方公共団体(地
方独立行政法人を含む。)若しくは慈善のため設立された救済施設と契約(政令第 167 条の
2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く。
)をするとき。
(運用方針第 3 節(随意契約)
関係 1(9)
)
1
幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務委託契約
担当部課
経済部資源エネルギー課
委託先
壮瞥町
事業内容
幌別硫黄鉱山から流出する抗廃水(PH1.8)は、処理水量が毎分約 4.0 ㎥
の強酸性であり、公共水域から洞爺湖へ流入することから、抗廃水を薬
剤にて中和処理し放流することにより、公共水域の水質汚濁を防止する。
事業目的
公共用水域の水質を改善して健康で安全な地域を創出するとともに、確
実に中和処理を実施して公共水域の水質汚濁を防止することが当該事業
の目的である。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
積算額
委託金額
選定方法
H15
特命随契
273,506,050 円
273,506,050 円
H16
同
上
274,436,000 円
274,436,000 円
H17
同
上
275,596,000 円
275,596,000 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
当該業務の実施にあたっては幌別硫黄鉱山の事情に精通するとともに臨
機の対応と組織力を兼ね備えた地元壮瞥町に委託することが適当であ
る。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
委託料の算定
積算方法:壮瞥町の管理費、抗廃水処理業務に関する直接工事費、共通
仮設費、現場管理費、一般管理費をもとに積算されている。
その他
業務の大部分を民間業者に再委託している。
契約変更が 4 回行われている。
243
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務について、北海道の直営とせず委託することとした
理由が明示されていなかったので、その理由を契約担当者に質問したところ、北海
道の直営とした場合、業務に精通した人員を配置することができないこと及び監督
業務等に係る経費が高くなることから委託している、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(改善事項)
今後、委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委
託理由を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)当該契約は、
「国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む。
)
又は地方公共団体(地方独立行政法人を含む。)若しくは慈善のため設立された救
済施設と契約(政令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く。)を
するとき。」
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
)を根拠とする地方公共団
体である壮瞥町との契約なので、公益性の見地から随意契約によっているか否か、
の検証が重要となる。
(b)委託先選定の理由は、
「幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務は、処理水量が毎分約 4.0
㎥の強酸性であり、薬剤による中和処理を行っている。当該業務は、公共用水域
の水質を改善して健康で安全な地域を創出する業務であり地域にとって最も身近
で重要であるとともに、確実に中和処理を実施しなければならない業務である。
」
ことから「業務の実施にあたっては同鉱山の事情に精通するとともに臨機の対応
と組織力を兼ね備えた地元壮瞥町に委託することが適当である。
」ということであ
る。
事業の公益性と委託理由の関係について質問したところ、①当該事業は、既に
発生している鉱害が環境に与えるマイナス部分を従前の状態に戻す公益的事業と
しての性格を持つこと②地域住民の生活にとっては身近で重要な業務であること
から、日常管理は、地元市町村の管理下で実施することが望ましいこと③地元市
町村の場合、災害や事故の発生時における迅速な対応が可能になることから、
「業
務の実施にあたっては同鉱山の事情に精通するとともに臨機の対応と組織力を兼
ね備えた地元壮瞥町に委託することが適当である。」
と判断した、
との回答を得た。
公益性との関係で壮瞥町を委託先として選定したことについては、問題ないも
のと判断した。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)委託料は壮瞥町の管理費(人件費、共済費、旅費、需用費、役務費、使用料及
び賃借料、備品購入費)、抗廃水処理業務に関する直接工事費(労務費、資材費、
244
直接経費、脱水ケーキ運搬費、産業廃棄物処理費)
、共通仮設費(運搬費、仮設費、
役務費、技術管理費)
、現場管理費、一般管理費をもとに積算されている。
資材費(薬剤、油類)
、直接経費(電気料金)、脱水ケーキ運搬費、仮設費(消
耗機材費)は過去の実績値に基づき見積もっており、実際発生額が見積もり額を
超過した場合は、
当該超過額が過大な使用・購入により発生したものでない限り、
契約内容の変更手続により当該超過分を委託料に追加計上している。
( 契約内容の
変更については、
(4)契約内容変更の妥当性について述べる。)
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、北海道建設部作成歩
掛を使用し、また歩掛等にないものは過去の実績、市場価格の動向等を勘案して
積算している、との回答を得た。また、標準単価、標準作業量、標準処理時間等
積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資料の提示を求めたところ、そのよう
な資料は作成していない、との回答を得た。標準単価、標準作業量、標準処理時
間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残
しておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(b)壮瞥町に管理費(人件費、共済費、旅費、需用費、役務費、使用料及び賃借料、
備品購入費)として 11,500,000 円が支払われている。契約担当者の説明では、壮
瞥町職員が週 4 日間現地に赴くとのことであったが、営利会社等が当該管理業務
を実施した場合と比較することにより、当該見積金額の妥当性を検証していない。
(改善事項)
(a)標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎
年度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用す
る場合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(b)営利会社等から見積書を徴収するなどして、営利会社等が当該管理業務を実施
した場合と比較することにより、当該見積金額の妥当性を検証することが望まれ
る。
(4)契約内容変更の妥当性
当該委託契約においては、4 回の設計変更の結果、委託費が 16,201,500 円増額さ
れている。設計変更の理由及び内容は、以下のとおりである。
245
変更理由及び変更内容
第1回
①電力料金改定による電力使用料の引き下げ及び電力基本料金の引き上げ(トー
タルでは引き下げ)
②採掘跡地内の管理用道路陥没による道路維持費及び運搬費の発生
第2回
設備の老朽化に伴う設備費の発生
第3回
①薬剤使用量見直しによる資材費の減少
②加圧脱水装置不具合発生による設備診断費の発生
③消耗機材使用量見直しによる消耗機材費の増加
第4回
①薬剤使用量見直しによる資材費の減少
②脱水ケーキ運搬量見直しによる運搬費の減少
③廃棄物処理数量見直しによる産業廃棄物処理費及び産業廃棄物運搬費の増加
④降雪量見直しによる除雪費の増加
⑤加圧脱水機故障による定期整備費の減少
⑥濾布使用量見直しによる設備費の増加
⑦加圧脱水機故障による設備費の発生
⑧シックナー上澄み水路破損による設備費の発生
⑨非常用自家発電機不具合発生による設備費の発生
⑩中和棟薬剤室ドア劣化破損による設備費の発生
⑪抗廃水処理設備損壊による設備費の発生
⑫消耗機材使用料見直しによる消耗機材費の増加
⑬処理場整備業務増加による処理場整備費の増加
当該委託費増額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、委託契約書
第 12 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、との回答を得た。
委託契約書第 12 条 1 項には「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の内容の
一部を変更し、又はその全部若しくは一部を中止することができる。この場合におい
て、甲(北海道)は、乙(壮瞥町)に対し書面により通知するものとし、委託料の額
又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議して書面によりこれを定めるも
のとする。」とある。
設計変更の理由及び内容を見ると、少なくとも、電力料金改定による電力使用料の
引き下げ及び電力基本料金の引き上げ(トータルでは引き下げ)は、委託業務の内容
変更の結果発生したものではなく、電力料金自由化に伴う北海道電力の料金改定の結
果発生したものなので、委託業務の内容変更には該当せず、委託契約書第 12 条 1 項を
根拠に委託料の金額変更を行うのは適切ではないものと考える。
そもそも、委託契約書第 4 条には、「ただし、第 16 条の規定による精算の結果、乙
(壮瞥町)の実支出額が、委託料の額に満たないときは、当該実支出額をもって委託
料の額とする。」とあることから、電力料金改定による電力料の減額分は、委託料の精
算手続により最終的には北海道に返納されることとなり、契約変更をしなくても支障
は生じないはずである。
(改善事項)
246
予定数量の増減などに伴い、契約金額のみを変更する場合にあっては、業務項目の
追加や業務処理方法の変更などの「委託業務の内容変更」とは別な条項を設けて処理
すべきと考える。
(5)再委託の妥当性
北海道が壮瞥町に委託している幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務のうち、壮瞥町が行う
事務処理及び抗廃水処理に係る管理業務を除いた抗廃水処理業務については、地元業
者に再委託されているが、再委託料が 246,015,000 円(契約変更前)であり、委託料
のほとんどを占めることから、
「委託業務の主要な部分を再委託する場合は、委託業務
の全部又は一部の再委託を承諾できないケースに該当する。」
(出納局手引 P62)とい
う再委託の禁止要件に該当するのではないかという疑問が生じた。
この点について、契約担当者に質問したところ、①抗廃水処理場の運転は、24 時間
継続して行わなければならず、壮瞥町が自ら当該業務に当たることは無理であること
②幌別硫黄鉱山抗廃水処理業務の壮瞥町と地元業者との役割分担は以下の表のとおり
であるが、安全な生活環境を保持するために適正な中和処理業務が行われるよう汚水
の水質・水量の変化に対応した適切な薬剤の使用や中和作業の確認等壮瞥町が担当す
る管理監督業務が当該業務の主要な部分である、という回答を得た。
委託業務内容
中和処理施設の運営業務
壮瞥町の担当業務
地元業者の担当業務
(管理・監督)
(作業・労務等)
・汚水の水量・水質の変化に ・中和処理施設の運転及び監
対応して適切 な薬剤添加量
視
を決定すること
・中和作業の確認
・異常時の対応・指示
中和処理施設 等の維持管理 ・中和処理施設等の維持管理
・施設機器等の点検・補修
業務
中和処理計画の作成業務
・薬剤使用計画や施設機器等
なし
の更新計画等 中和処理計画
の作成
・各月毎の薬剤使用等の中和
処理実施結果 に伴う中和処
理変更計画の作成
水質管理
・原水及び放流水等の採水時
・原水及び放流水等の採水
の立会による確認
・各工程における水質の確認
・分析結果の報告
・分析結果の確認
上記(2)随意契約によることの合理性において述べたように、①当該事業は、既
247
に発生している鉱害が環境に与えるマイナス部分を従前の状態に戻す公益的事業とし
ての性格を持つこと②地域住民の生活にとっては身近で重要な業務であることから、
日常管理は、
地元市町村の管理下で実施することが望ましいこと③地元市町村の場合、
災害や事故の発生時における迅速な対応が可能になること、を考慮すると、再委託は
止むを得ないものと考える。
ただし、出納局手引 P62 において、再委託を承諾できる場合とは、①再委託の必要
があると認められ②(ケースに応じ)再委託させようとする第三者が、受託者の総合
的な指揮・監督の下に置かれ③業務を遂行させる上で当該第三者が技術的、経済的能
力から判断して、再委託させても契約の履行を確保するのに支障を来さないとき、に
限り認められると記載されている。したがって、この 3 つの要件を検討したうえで、
再委託の可否を決定しなければならない。
(改善事項)
再委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾することのないよ
う再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで再委託を承認することが
望まれる。
248
2
都市計画基礎調査業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
都市計画基礎調査業務委託契約
担当部課
建設部都市計画課
委託先
札樽圏広域都市計画協議会
事業内容
都市計画基礎調査業務委託契約
事業目的
当該事業は、都市計画である「整備、開発及び保全の方針」や区域区分
等の第 6 回見直し(H23 年度予定)のための基礎資料を得ることを目的
とする。
契 約 の 推 移 年度
委託先選定方法
積算額
(H16 から H17
H16
特命随契
17,817,000 円
17,817,000 円
まで)
H17
同
14,345,000 円
14,345,000 円
上
委託金額
H15 年度において当該業務は実施されていない。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
本調査は国勢調査その他指定統計調査等に基づいて行うもので、この調
査の特殊性から当該関係市町で構成する広域都市計画協議会と委託契約
を締結する。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
委託料の算定
積算方法:直接人件費、直接経費をもとに積算されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
都市計画基礎調査業務委託契約について、北海道の直営とせず外部委託すること
とした理由を契約担当者に質問したところ、都市計画基礎調査のデータソースとし
て使用する固定資産課税台帳等を所有するのが関係市町であることから、当該関係
市町に委託する方が経済的であり、事務処理の迅速化、効率化を確保できることか
ら外部委託している、との回答を得た。
委託理由については特に問題ないものと判断した。ただし、記録上、当該業務を
委託した理由が明示されておらず、第三者に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
委託先選定の理由は、
「本調査は国勢調査その他指定統計調査等に基づいて行うも
249
ので、この調査の特殊性から当該関係市町で構成する広域都市計画協議会と委託契
約を締結する。」というのが選定理由である。
ここで、調査の特殊性の内容がわからなかったので、契約担当者に質問したとこ
ろ、調査の特殊性とは、都市計画基礎調査のデータソースとして使用する固定資産
課税台帳等を所有するのが関係市町であること、との回答を得た。
調査の特殊性から当該業務は公益性を有するので、公益性の関係で随意契約する
ことは問題ないものと判断する。
次に、当該業務の委託先である札樽圏広域都市計画協議会との契約が地方公共団
体との契約に該当するのかという疑問が生じた。
そこで、契約担当者に札樽圏広域都市計画協議会との契約が地方公共団体との契
約に該当するのか否かを質問したところ、同協議会の構成員は、北海道、札幌市、
小樽市、江別市、石狩市、北広島市、当別町、南幌町であり、同協議会との契約は、
実質的には同協議会との構成員との契約なので、地方公共団体との契約に該当する
と判断した、との回答を得た。
札樽圏広域都市計画協議会との契約が地方公共団体との契約に該当するという考
えを理解することはできるが、契約の相手方の名義を札樽圏広域都市計画協議会で
はなく、構成員である市町とすることを検討することが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は、直接人件費(建築確認申請の家屋データからの調書作成、データ入力、
コーディング)、直接経費(印刷製本費)をもとに積算されている。積算根拠も明確
であり、契約担当者の恣意性が介入する余地は比較的少ないものと判断する。
250
法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくはその連合会
の存立を援助するため、これらの設立目的に基づく事業について契約(政令第 167 条の 2
第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く。)をするとき。(運用方針第 3 節(随意契約)
関係 1(11)
)
1
北海道庁本庁舎(地下 2 階から 7 階まで)清掃業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道庁本庁舎(地下 2 階から 7 階まで)清掃業務委託契約
担当部課
総務部総務課
委託先
社会福祉法人北海道母子寡婦福祉連合会
事業内容
北海道庁本庁舎(地下 2 階から 7 階まで)清掃業務
事業目的
庁舎の維持及び職員の執務環境等の向上を図る。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
積算額
委託金額
選定方法
H15
特命随契
103,044,900 円
103,000,000 円
H16
同上
96,233,550 円
96,231,000 円
H17
同上
88,782,750 円
88,725,000 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
当該法人は、社会福祉事業法の規定に基づき設立された非営利法人で
あり、道内母子及び寡婦家庭の福祉向上を図ることを目的としているこ
とから、道の行政上からも保護育成を図る必要がある。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)
委託料の算定
積算方法:直接人件費、直接物品費、業務管理費、一般管理費等、特別
清掃費及び衛生消耗品費等の経費をもとに積算されている。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
その他
契約情報の公表手続
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
当該事業を外部委託する理由を契約担当者に質問したところ、当該事業を遂行す
るためには庁舎清掃に関する専門知識、経験が必要であるが、北海道職員は庁舎清
掃に関する専門知識、
経験を有していないため外部委託している、
との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
251
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)当該事業の委託先の選定基準が明示されていなかった。
法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人または組合若しくはそ
の連合会の存立を援助するため、これらの設立目的に基づく事業について契約を
するときに随意契約が認められている理由は、当該団体は本来営利を目的とする
団体ではないので、当該団体を契約の相手方とするときは営利会社を契約の相手
方とするよりも一般的に金額的に有利であることが期待されること及び概ね同質
同価であれば営利会社に優先して当該団体を契約の相手方とすることが当該団体
の存立を援助することになるからである。したがって、委託先の選定基準として
は、当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするよりも金
額的に有利であること及び当該団体の存立を援助する必要性があることの 2 つが
必要と考える。
(b)次に、委託先が上記選定基準を満たすか否かが問題となる。
当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするよりも金額
的に有利であることの判断をしていない。
また、当該団体の存立を援助する必要性があることの判断について契約担当者
に質問したところ、
「当該法人は、社会福祉事業である北海道母子福祉センターの
経営のほか、市町村母子会の育成指導、全道母子寡婦福祉大会の開催など、道内
の母子家庭及び寡婦の福祉の向上に多大の役割を担っている。また、母子家庭等
に対する生活資金、奨学資金の貸付を行っているほか、公益事業として道庁内及
び道立施設内の清掃業務、病院内保育所等の受託経営を行っており、これにより
多数の母子家庭の雇用創出に寄与している。
「母子及び寡婦福祉法」において、就
職を希望する母子家庭の雇用の促進を図る機関として母子福祉団体が福祉事務
所・公共職業安定所とともに位置づけられ、雇用促進に当該団体が果たす役割が
重要となってきている。さらに、「母子及び寡婦福祉法」においては、「地方公共
団体は、母子家庭及び寡婦の福祉を増進する責務を有する。」と規定されていると
ころである。以上のように、当該団体は法の趣旨にも沿った事業を実施している
ものでもあり、道としては当該団体の存立を援助する必要があるものである。
」と
の回答を得た。
当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするよりも金額
的に有利であるか否かを検討せずに、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)
を根拠に随意契約をすることは、制度趣旨に反するので適切ではない。
また、上記の当該団体の存立を援助する必要があるか否かの判断は政策目的に
よる判断であるが、それだけでは、特定の団体に契約が集中してしまい、他の団
体との間で公平性を欠くおそれがある。
252
(c)当該契約については、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)ではなく、施
行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号または第 4 号に規定する特定の者を相手方として
同規定に基づき随意契約の方法により締結する契約(特定随意契約)に該当する
のではないかという疑問が生じた。
ここで、特定随意契約の概要を示すと以下のとおりになる。
施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号または第 4 号に規定する特定の者を相手方と
して同規定に基づき随意契約の方法により締結する契約(特定随意契約)は、以
下の場合に行うことができる。
<施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定によるもの>
(ア)次に掲げる障害者に対する職業訓練や授産を行う施設において製作された
物品を買入れる契約をするとき。
①身体障害者福祉法(昭和 24 年法律第 283 号)第 29 条に規定する身体障害
者更生施設又は同法第 31 条に規定する身体障害者授産施設(身体障害者福
祉工場設置運営要綱(「身体障害者福祉工場の設置及び運営について」(昭
和 47 年 7 月 22 日付け社更第 128 号厚生省社会局長通知)に基づく身体障
害者福祉工場を含む。
)
②精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(昭和 25 年法律第 123 号)第
50 条の 2 第 3 項に規定する精神障害者授産施設又は同条第 5 項に規定する
精神障害者福祉工場
③知的障害者福祉法(昭和 35 年法律第 37 号)第 21 条の 6 に規定する知的障
害者更生施設又は同法第 21 条の 7 に規定する知的障害者授産施設
(知的障
害者福祉工場設置運営要綱(「知的障害者福祉工場の設置及び運営につい
て」
(昭和 60 年 5 月 21 日付け厚生省発児 104 号厚生省事務次官通知)に基
づく知的障害者福祉工場を含む。)
④小規模作業所(障害者基本法(昭和 45 年法律第 84 号)第 2 条に規定する
障害者の地域における作業活動の場として同法第 15 条第 3 項の規定により
必要な費用の助成を受けている施設をいう。)
(イ)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(昭和 46 年法律第 68 号)第 41
条第 1 項に規定するシルバー人材センター連合または同条第 2 項に規定する
シルバー人材センターから役務の提供を受ける契約をするとき。
(ウ)母子及び寡婦福祉法(昭和 39 年法律第 129 号)第 6 条第 6 項に規定する母
子福祉団体が行う事業でその事業に使用される者が主として同項に規定する
配偶者のない女子で現に児童を扶養しているもの及び同条第3項に規定する
寡婦であるものに係る役務の提供を当該母子福祉団体から受ける契約をする
とき。
<施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定によるもの>
(エ)新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者として、別に定める手
続により知事の認定を受けた者が当該母子福祉団体から受ける契約をすると
き。
253
北海道庁本庁舎(地下 2 階から 7 階まで)清掃業務委託契約の内容は、母子福
祉団体からの役務提供に該当するので、契約根拠として施行令第 167 条の 2 第 1
項第 3 号を適用しなければならない。母子福祉団体からの役務提供について運用
方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を契約根拠とするのは適切ではない。
(d)当該契約については、建築物の清掃サービスでありかつ予定価格が 32,000,000
円以上であることから、政府調達協定が適用されて随意契約ができないのではな
いかという疑問が生じた。
この点に関して、出納局に質問したところ、政府調達協定に定める適用除外及
び調達手続の特例政令で定める随意契約の適用範囲等の項目には福祉団体または
公益法人等の直接の記載がないが、①政府調達協定に定める適用除外条項におい
て、弱者保護の観点から慈善団体から提供されるサービスに関する措置を採るこ
とを妨げるものではないとされていること②慈善団体の定義は政府調達協定上明
らかではなく、日本国における統一的な見解も示されていないことから、政府調
達協定の制定当初から、慈善団体に該当する者との契約であれば、政府調達協定
の適用除外として特命随契する余地はあるものと考えた、との回答を得た。
ここで、政府調達協定第 23 条第 2 項において、この協定の適用除外が以下のよ
うに規定されている。
「この協定のいかなる規定も、締約国が公衆の道徳、公の秩序若しくは公共の
安全、人、動物若しくは植物の生命若しくは健康若しくは知的所有権の保護のた
めに必要な措置若しくは心身障害者、慈善団体若しくは刑務所労働により生産さ
れる産品若しくは提供されるサービスに関連する措置を講ずること又はこれらの
措置を実施することを妨げるものと解してはならない。ただし、これらの措置が
同じ条件の下にある国の間において恣意的若しくは不当な差別の手段となるよう
な態様で又は国際貿易に対する偽装した制限となるような態様で適用されないこ
とを条件とする。
」
北海道母子福祉団体が政府調達協定に定める慈善団体に該当すると類推解釈し
たことの妥当性については、今後の事例の集積の結果を待って判断せざるを得な
いものと考える。
(改善事項)
施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号または第 4 号と運用方針第 3 節(随意契約)
関係 1(11)との関係を理解したうえで、当該契約については、今後は、契約根
拠としては施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号を適用するべきである。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)単価については月刊「積算資料」に、また、労務数量については庁舎等清掃業
務積算標準取扱い(平成 17 年 2 月 22 日)に基づき積算されており、契約担当者
の恣意性が介入する余地は比較的少ないものと判断する。ただし、経費率につい
ては一定の幅があるが、当該経費率を適用した契約担当者の判断根拠は不明であ
254
る。
(b)委託先から徴取した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容が不明であるた
め、積算額の妥当性を事後的に検証することができない。
(改善事項)
(a)経費率には一定の幅があるので、当該経費率を適用した契約担当者の判断根
拠を明確にしておくことが望まれる。
(b)積算額の妥当性を事後的に検証するため、単価及び数量の明細がわかるよう
に記載した見積書の内訳書の提出を求めることが望まれる。
(4)契約情報公表の実施状況の妥当性
北海道庁本庁舎(地下 2 階から 7 階まで)清掃業務委託契約は特定随意契約に該
当するため、契約担当者は、以下の事項を公表しなければならない。
(ア)当該契約に係る発注の見通しについて、次に掲げる事項を公表する。公表した
事項に変更があったときも同様とする。
①契約の名称及び数量
②契約を締結する時期
③契約の相手方の選定方法
(イ)特定随意契約を締結しようとするときは、あらかじめ、次に掲げる事項を公表
する。
①契約の名称及び数量
②契約を締結する時期
③契約の相手方の選定方法及び選定基準
④公募に応じた者の中から契約の相手方を選定する場合にあっては、次に掲げる
事項
・応募する者に必要な資格
・応募の方法及び期限
(ウ)特定随意契約を締結したときは、速やかに、次に掲げる事項を公表する。
①契約の名称及び数量
②契約を締結した年月日
③契約の相手方の氏名及び住所(契約の相手方が法人である場合にあっては、そ
の名称、主たる事務所の所在地及び代表者の氏名)
④契約金額
⑤契約の相手方を選定した理由
当該契約については、
(2)随意契約によることの妥当性において述べたように、
契約根拠として施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随意契約)を適用すべきと
ころ、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を適用しているため、契約の名称、
契約の相手方、契約金額、契約決定年月日のみが公表されているに過ぎず、地方公
共団体の契約方法の原則である機会均等、透明性及び公正性を確保するために契約
情報を公表するという制度趣旨に鑑みると、公表手続上、重大な瑕疵があるものと
考える。
255
(改善事項)
特定随意契約に該当する契約については、特定随意契約の公表手続を実施するべ
きである。
256
2
マイクロフィルム作成業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
マイクロフィルム作成業務委託契約
担当部課
総務部法制文書課
委託先
社会福祉法人北海道リハビリー
事業内容
マイクロフィルム作成業務
事業目的
保存文書のマイクロフィルム化を進め、書庫の保存スペースを確保する
とともに文書記録の保存期間の長期化を図る。
契約の推移
(H15 から H17
年度
委託先
選定方法
積算額
委託金額
まで)
H15
特命随契
56 円 11 銭
55 円 65 銭
H16
同上
54 円 18 銭
52 円 50 銭
H17
同上
52 円 78 銭
52 円 50 銭
当該契約は単価契約(1 コマ当たり)である。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
① 存立の援助をする必要性があること。
② 一般事業者と比較した場合、概ね同質同価の成果品を得ることが可能
であること。
③ 関係法令等において特別な取扱いがなされている法人であること。
④ 指名競争入札に参加できない法人であること。
⑤ 能力と実績を有する法人であること。
<委託先の選定理由>
存立の援助が必要と認められる非営利法人で、唯一本業務を行うことが
可能な法人であるため。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)
委託料の算定
積算方法:1 コマ当たりの撮影料と検索データ作成単価からマイクロフ
ィルム 1 コマ当たりの作成単価を積算している。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
当該事業を外部委託する理由を契約担当者に質問したところ、当該事業を北海道
の直営とした場合は、職員1人を専従させる必要性があるが、当該職員の給与水準
を勘案すると、直営よりも外部委託の方が金額的に有利となることから直営ではな
く外部委託とした、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
257
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人または組合若しくはそ
の連合会の存立を援助するため、これらの設立目的に基づく事業について契約を
するときは、当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とする
よりも金額的に有利であること及び当該団体の存立を援助する必要性があること
の判断の客観性、合理性が重要な意味を持つ。
先ず、当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするより
も金額的に有利であることの判断について契約担当者に質問したところ、別のマ
イクロフィルム作成業務については指名競争入札を実施しているが、社会福祉法
人北海道リハビリーとの契約金額は当該指名競争入札による落札金額よりも安い
金額であるとの回答を得た。
次に、当該団体の存立を援助する必要性があることの判断について契約担当者
に質問したところ、平成11年4月20日付け地域福祉課長通知(「当該法人は、
社会福祉事業を行うことを目的として設立された非営利法人であり、身体障害者
で雇用されることが困難な者等を入所させて必要な訓練を行い、かつ、職業を与
え自活させることを目的とした身体障害者授産施設の経営を行っている。この授
産施設は、印刷事業が主要な授産事業であり、身体障害者の自立更生のために必
要な技術の教育を行い、これまで事業実績の向上に努めてきたところであり、施
設の設立目的に合致しているものである。今後においても、身体障害者の雇用確
保・自立促進の観点から、印刷事業の継続が不可欠であり、安定的な運営の確保
が身体障害者の自立更生に資するとともに、勤労意欲を向上させ、ひいては当該
法人の運営基盤の安定に寄与するものであることから、北海道において施設存立
を援助する必要があるものである。」)
に基づき判断を行っているとの回答を得た。
上記の当該団体の存立を援助する必要があるか否かの判断は政策目的による判
断であるが、それだけでは、特定の団体に契約が集中してしまい、他の団体との
間で公平性を欠くおそれがある。
(b)当該契約については、身体障害者更生施設からの役務提供であることから、施
行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号または第 4 号に規定する特定の者を相手方として
同規定に基づき随意契約の方法により締結する契約(特定随意契約)には該当し
ないため、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を根拠に随意契約を行って
いる。
そこで、特定随意契約以外に授産施設等との随意契約が認められるのかという
疑問が生じたので、その旨出納局に質問したところ、特定随意契約の規定の制定
以前から行っていた「存立援助を目的とした非営利法人との契約」は、特定随意
契約とは別個に認めている、との回答を得た。
258
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)及び(11)については、施行令第 167
条の 2 第 1 項第 3 号(特定随契)との関連で検討すべき点を含んでいるものと考
える。
施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随契)は、地方公共団体における福祉
関係施設等への支援という政策目的達成のため、平成 16 年 11 月に新たに設けら
れた規定であるが、同条項では、無限定に福祉関係施設等との間の随意契約を認
めているものではない。同条項においては、どのような施設が契約の相手方とな
り得るか、また、どういった契約が対象となるか、という点につき明文上、具体
的に規定されている。
すなわち、
「契約の相手方となり得る主体」については、身体障害者福祉法に基
づく身体障害者更生施設、身体障害者授産施設をはじめとした各種法令に根拠を
持つ施設ないし団体が列挙され、また、
「対象契約」については、精神障害者授産
施設等との間でなし得る契約として「物品の買入れ」が、高齢者支援団体や母子
福祉団体等との間でなし得る契約として「役務の提供」が規定されている。
他方、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)では、「・・・慈善のため設立
された救済施設と契約をするとき」と定められ、また、運用方針第 3 節(随意契
約)関係 1(11)では「・・・営利を目的としない法人又は組合・・・の存立を
援助するため、これらの設立目的に基づく事業についての契約をするとき」と規
定されており、文言上は、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随契)のよう
な契約の主体、対象契約についての限定が認められない。
そこで、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随契)と運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(9)及び(11)との関係をいかに捉えるべきかが問題となる。
運用方針の上位規範である施行令において、契約主体、対象契約が限定されて
いる以上、福祉関係施設等との随意契約は、施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の
みが適用され、これに該当しない福祉政策目的による随意契約は認められないと
の見解もあり得る。この見解によれば、契約の主体、対象契約を限定していない
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
(11)は、施行令の趣旨に合致しないと
評価される可能性もある。
しかし、他方で、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)
(11)は、施行令第 2
号「その性質又は目的が競争入札に適しないもの」の具体化である。そして、こ
の「競争入札に適しないもの」の中には、もとより、福祉政策目的に基づく契約
も含まれ得る。そのため、施行令 3 号において限定した形で福祉政策目的に基づ
く随意契約の根拠が示されたからといって、これとは別に施行令 2 号(これを具
体化した運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)(11))を根拠として、施行令 3
号の規定に該当しない福祉政策目的による随意契約を行うことが可能であるとい
う見解もあり得る。また、施行令 3 号に該当しない限り、福祉政策目的実現のた
めの随意契約は認めないとの考えは、現実にそぐわない面もある。
ところで、施行令 3 号の新設に関連して、平成 16 年 11 月 10 日付けで各都道府
県知事宛に「地方自治法の一部を改正する法律等の施行について」と題する通知
が総務省自治行政局長から出され、機会均等、透明性及び公平性を確保するため
259
の手続を各地方公共団体において整備するよう指示がなされている。
他方、同日付けの厚生労働省による都道府県障害福祉施設主幹部(局)長宛の文
書では、
「・・・・現行の法令の範囲内で、各自治体の判断により、授産施設等におけ
る役務の提供も随意契約の対象とされることが望ましい」と記載されており、施
行令 3 号によれば明文上は認められないはずの授産施設等による「役務の提供」
に関する随意契約をも、認めるかの内容となっている。
このように、施行令 3 号に該当しない福祉政策目的による随意契約を許容する
かどうかについて、国の各省庁間でも、必ずしも統一した見解が示されておらず、
事態の混乱の原因の根本は、この点にあるとも言える。これらの事情を考えると、
当該契約を随意契約によったことは不適切とまでは言えない。
(改善事項)
当該団体の存立を援助する必要があるか否かの判断については、政策目的以外
に、定量的な判断基準(例えば、当該団体における契約全体に占める北海道の契
約の割合や当該団体の財政状況等)を設けることで、他の団体との間に公平性を
欠かないように配慮することが望まれる。
(3)委託料の算定根拠の妥当性
(a)1 コマ当たりの撮影料と検索データ作成単価からマイクロフィルム 1 コマ当た
りの作成単価を積算しているが、1 コマ当たりの撮影料を積算する過程で、大量
発注であること及び見積徴収の相手方が社会福祉法人であることを勘案して値引
きしているが、当該値引き率の算定根拠が不明である。
(b)検索データ作成単価を積算するうえで、職務内容、技術力を勘案し、高卒 3 年
程度の経験を要するという理由から道職員 1 級 10 号棒をもってキーパンチャーの
人件費を算出しているが、高卒 3 年程度の経験を要する技術者の一般的な給与水
準と比較して、当該見積金額が妥当であることを確認すべきものと考える。
(c)委託先から徴取した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容が不明であるた
め、積算額の妥当性を事後的に検証することができない。
(改善事項)
(a)値引き率の算定根拠を明示すべきである。
(b)積算額の妥当性を事後的に検証するため、単価及び数量の明細がわかるよう
に記載した見積書の内訳書の提出を求めることが望まれる。
260
庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く。)に委託するとき。
(運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(17)
)
1
北海道職員子弟寮(尚学寮)管理業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道職員子弟寮(尚学寮)管理業務委託契約
担当部課
総務部職員厚生課
委託先
個人
事業内容
北海道の管理する子弟寮(尚学寮)施設及び物品等の管理、入寮者の食
事の調理並びにその他必要な事項
事業目的
地方勤務職員の経済的な負担の軽減や不安などを解消し、職務能率の向
上を図る。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
積算額
委託金額
選定方法
H15
特命随契
4,382,400 円
4,382,400 円
H16
同上
4,371,600 円
4,371,600 円
H17
同上
4,298,400 円
4,298,400 円
(注)H16 年度に前任者から当該個人に契約者が変更となっている。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
① 子弟寮(尚学寮)の管理業務を円滑かつ効率的に行うため、施設内に
24 時間常駐(住込み)可能な者
② 簡易な修繕などに迅速に対応できる知識、経験や賄い経験を有し、入
寮者の生活指導や相談等にも対応できる者
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす者は、当該個人のみである。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(17)
委託料の算定
積算方法:単価(厚生労働省の「平成 15 年賃金構造基本統計調査」の職
種別給与額等に基づき算出されている。
)と職種別時間(業務処理時間を
職種割合の加重平均値で按分している。)に基づき積算されている。
その他
委託業務の事後管理
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
当該事業を外部委託することの合理性について契約担当者に質問したところ、施
設内に 24 時間常駐(住込み)するという変則的な勤務条件であること及び北海道職
員の給与水準を勘案すると直営より外部委託の方が金額的に有利となることから外
部委託とした、との回答を得た。
261
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(改善事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)
「その性質又は目的が競争入札に適しないもの。」の具体化として、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(17)を制定した趣旨を出納局に質問したところ、運用方
針第 3 節(随意契約)関係 1(17)は、契約しようとする業務を事業として行っ
ていない者に対する委託であり、その委託料も所得税法上、源泉徴収を行う必要
があるように給与的性格を有していることから、
(価格)競争によって契約の相手
方を決定することになじまないので、
「 その性質又は目的が競争入札に適しないも
の。」の具体化とした、との回答を得た。
庁舎の清掃、寮の賄については専門の業者が多数存在することから、積極的に
競争に付すべき業務と考える。しかしながら、例えば、寮の賄いの場合、施設内
に 24 時間常駐(住込み)するという点で雇用的性格を否定することができないこ
と及び寮生との間に高度の信頼関係が成立しなければ寮母としての役割を果たす
ことはできないこと等を考慮すると競争入札になじまない点があるから、当該契
約について随意契約をすることを否定することはできないものと考える。
ただし、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(17)については、対象としてい
る業務自体が本来、競争に付すべき業務であることから、今後も、雇用的性格が
認められる場合や業務遂行上、高度の信頼関係が必要とされる場合等特殊ケース
に限定して運用されるよう留意して欲しい。
(b)選定基準を満たす者が当該個人のみであるという結論に至った契約担当者の判
断のプロセスが明示されていないことから、契約担当者の主観的判断に基づき随
意契約の相手方が選定されたのではないかという疑問が生じる。
(改善事項)
第三者に対して客観的な説明がつくように、契約担当者の判断の結果のみでな
く、当該判断に至ったプロセスを明示することが望まれる。
(3)委託料の算定根拠の妥当性
単価の算出については、厚生労働省の「平成 15 年賃金構造基本統計調査」の職種
別給与額等に基づいており、特に問題はない。一方、職種別時間については算出根
拠が不明である。
(改善事項)
標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年度、その見直しをするこ
とが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記
録として残しておくことが望まれる。
262
(4)委託業務の事後管理の妥当性
委託業務終了後は、受託者から実績報告書を徴収し、検査をする必要があるが、
委託業務終了後の管理が行われていなかった。
(改善事項)
業務日報を作成させ定期的に検査することが望まれる。
263
2
北海道職員子弟寮(真澄寮)管理業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道職員子弟寮(真澄寮)管理業務委託契約
担当部課
総務部職員厚生課
委託先
個人
事業内容
北海道の管理する子弟寮(真澄寮)施設及び物品等の管理、入寮者の食
事の調理並びにその他必要な事項
事業目的
地方勤務職員の経済的な負担の軽減や不安などを解消し、職務能率の向
上を図る。
契約の推移
年度
業者選定方法
積算額
委託金額
(H15 から H17
H15
特命随契
4,382,400 円
4,382,400 円
まで)
H16
同
上
4,371,600 円
4,371,600 円
H17
同
上
4,298,400 円
4,298,400 円
(注)H16 年度に前任者から当該個人に契約者が変更となっている。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
① 子弟寮(真澄寮)の管理業務を円滑かつ効率的に行うため、施設内に
24 時間常駐(住込み)可能な者
② 簡易な修繕などに迅速に対応できる知識、経験や賄い経験を有し、入
寮者の生活指導や相談等にも対応できる者
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす者は、当該個人のみである。
<随意契約の契約根拠>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1 の(17)
委託料の算定
積算方法:単価(厚生労働省の「平成 15 年賃金構造基本統計調査」の職
種別給与額等に基づき算出されている。
)と職種別時間(業務処理時間を
職種割合の加重平均値で按分している。)に基づき積算されている。
その他
委託業務の事後管理
(二)監査結果
北海道職員子弟寮(尚学寮)管理業務委託契約についてと同一である。
264
委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難いものを委託
するとき。(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18))
1
北海道保健福祉情報センター管理運営業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道保健福祉情報センター管理運営業務委託契約
担当部課
保健福祉部総務課
委託先
社会福祉法人北海道社会福祉協議会
事業内容
①独立行政法人福祉医療機構が運営する福祉保健医療情報ネットワーク
システム(「WAMNET」
)の地方センター業務
②北海道として独自に保健福祉関係情報を収集し、ホームページよりそ
の情報を提供する「保健福祉情報北海道」の管理運営業務
事業目的
保健福祉情報の収集及び管理を進め、多様化する道民の保健福祉ニー
ズに的確に対応するため、保健福祉関連情報を市町村及び保健福祉関係
機関・団体等に提供するとともに、公開できる情報を広く道民に供する
ことを目的とする。
契約の推移
(H15 から H17
まで)
年度
委託先
契約額
確定額
返納額
選定方法
H15
特命随契
29,314,354 円
29,298,561 円
15,793 円
H16
同
上
26,352,379 円
26,245,411 円
106,968 円
H17
同
上
23,993,385 円
23,452,848 円
540,537 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
① WAMNET の運用に必要なハード、ソフトの整備が整う者であること。
② 保健福祉に関し全道規模のネットワークを有する者であること。
③ 保健福祉に関する専門的知識・経験を有し、さらに情報収集・提供に
関する能力があること。
④ データベース等の情報の入手について、市町村、社会福祉協議会、社
会福祉施設、福祉機器関連企業、保健福祉関係団体の協力により円滑
に実施できる者であること。
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす者は、社会福祉法人北海道社会福祉協議会
のみである。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
委託料の算定
積算方法:管理費、事業費をもとに積算されている。
その他
委託先における人事異動及び給与改定等を理由に契約変更が行われてい
る。
265
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道保健福祉情報センター管理運営業務委託契約について、北海道の直営とせ
ず委託することとした理由が明示されていなかったので、その理由を契約担当者に
質問したところ、当該事業を外部委託する理由は、①全道的なネットワークを通じ
て情報が収集できること、また、情報提供システム管理運営に関する経験を有して
いることから、直営で実施する場合よりも経済的に優れていること(経済性の確保)
②道民の福祉活動を推進するために、社会福祉法に基づき設置している全道的な団
体であり、住民サービスの平等性・公平性は十分確保されること(行政責任と住民
サービスの確保)③当該職員はシステムに関し専門的知識を有しており情報提供シ
ステム業務の経験もあることから、迅速かつ効果的に事務処理を行うことができる
こと(事務処理の迅速化、効率化の確保)④公共性、公益性を持つ団体であり、個
人情報の取り扱いに関し秘密保持を確保することができること(個人情報の保護保
持)である、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由に関しては、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、北海道保健福祉情報センター管理運営業務が競争によ
り難い業務であるか否かを個別具体的に検討していなかった。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に
質問したところ、当該業務については、準委任に属する契約であり、競争に付す
ことにより、契約金額が有利である相手方を選定しても、①WAMNET の運用に必要
なハード、ソフトの整備が整う者であること②保健福祉に関し全道規模のネット
ワークを有する者であること③保健福祉に関する専門的知識・経験を有し、さら
に情報収集・提供に関する能力があること④データベース等の情報の入手につい
て、市町村、社会福祉協議会、社会福祉施設、福祉機器関連企業、保健福祉関係
266
団体の協力により円滑に実施できる者であること、という WAMNET の運用に必要な
条件が満たされない場合、かえって契約の目的物が達成し得ないことから競争に
なじまないものであると判断した、との回答を得た。
当該業務の内容を整理すると以下のようになる。
区分
具体的内容
独立行政法人福祉医療機構が運営する福 ・中央センターとの連絡調整
祉 保 健 医 療 情 報 ネ ッ ト ワ ー ク シ ス テム ・利用機関への研修等による WANMET の普及啓
(「WAMNET」
)の地方センター業務
発
・電子掲示板及び電子ファーラムの情報管理
北海道として独自に保健福祉関係情報を ・保健福祉関係情報の収集及び入力更新(制
収集し、ホームページよりその情報を提供 度・施策情報等 8 項目、約 12000 件)
する「保健福祉情報北海道」の管理運営業 ・保健福祉関係機関との連絡調整
務
上表のように、当該業務は、データベースの管理、情報の収集・入力、連絡調整
が主たる内容であることから、当該業務が上記(a)で述べた「限られた高度の専
門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさわしい相手
方を選定する必要があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該当すると判
断することはできない。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第 3
節(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定されるべきものと
考える。
(提案事項)
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用すること
が望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関し
ては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は管理費(人件費、事務運営費)、事業費(情報収集費、情報入力・更新費)
をもとに積算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、そのような資料は作成していない、との回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
267
(提案事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(4)契約内容変更の妥当性
当該委託契約においては、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会にお
ける人事異動及び北海道に準じた給与改定等による人件費の減額により、委託費が
1,810,229 円減額されている。
そこで、当該委託費減額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、
当該契約における人件費については、見込額として当初予算に計上し、同額を当初
契約から人件費分として契約書に記載しているところ、北海道の予算事務上、年度
内に当該年度のより精度の高い見込みを積算し、当初予算額を変更しているため、
委託契約書第 11 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、
との回答を得た。
委託契約書第 11 条 1 項には、「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の
内容の一部を変更し、又はその全部もしくは一部を中止することができる。この場
合において、甲は、乙(社会福祉法人北海道社会福祉協議会)に対し書面により通
知するものとし、委託料の額又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議
して書面によりこれを定めるものとする。
」とあるが、委託業務の内容変更に伴って、
委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会における職員異動等による人件費
の変更があったわけではないことから、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉
協議会における職員異動及び給与改定による人件の減額は、委託業務の内容変更に
は該当せず、
委託契約書第 11 条 1 項を根拠に委託料の金額変更を行うのは適切では
ないものと考える。
そもそも、委託契約書第4条には、「ただし、第 15 条の規定による精算の結果、
乙(社会福祉法人北海道社会福祉協議会)の実支出額が、委託料の額に満たないと
きは、当該実支出額をもって委託料の額とする。」とあることから、委託先である社
会福祉法人北海道社会福祉協議会における職員異動及び給与改定による人件費の減
額分は、委託料の精算手続により最終的には北海道に返納されることとなり、契約
変更をしなくても支障は生じないはずである。
(提案事項)
年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、当該支出見込額に見合
った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、その旨を明記することが望ま
れる。
268
2
北海道福祉人材センター運営事業委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道福祉人材センター運営事業委託契約
担当部課
保健福祉部地域福祉課
委託先
社会福祉法人北海道社会福祉協議会
事業内容
① 福祉人材センター運営事業
② 福祉人材バンク運営事業
事業目的
社会福祉事業従事者及び社会福祉事業に従事しようとする者の就業の
援助、研修の企画及び実施、社会福祉事業経営者に対する相談等を行う
ことにより、豊かな人間性を備えた資質の高い福祉人材を確保するとと
もに、これら人材の専門的知識・技術及び意欲を高め、もって住民のニ
ーズに対応した適切な福祉サービスを提供していくことを目的とする。
契約の推移
年度
委託先
(H15 から H17
まで)
確定額
返納額
選定方法
H15
特命随契
82,855,500 円
82,855,500 円
−円
H16
同
上
80,922,450 円
80,597,510 円
324,940 円
H17
同
上
75,720,750 円
75,720,750 円
−円
委託先 選定の
理由
契約額
<委託先の選定基準>
①
社会福祉法第 93 条の規定により、社会福祉事業に関する連絡及び援
助を行うこと等により社会福祉事業従事者の確保を図ることを目的と
して設立された社会福祉法人であること。
②
道内全ての福祉職従事希望者を対象とし、各地で事業を実施するこ
とから、広域性を備えた者であること。
③
職業紹介・斡旋の許可・指導を行う地元ハローワークや施設経営者、
介護者などの有識者と容易に連携が図れること。
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす者は、社会福祉法人北海道社会福祉協議会
のみである。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
委託料の算定
積算方法:人件費、事務費、事業費、バンク運営費をもとに積算されて
いる。
その他
委託先における人事異動及び給与改定等を理由に契約変更が行われてい
る。
業務の一部が 6 市社会福祉協議会(函館市、旭川市、釧路市、帯広市、
北見市、苫小牧市)に再委託されている。
269
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
福祉人材センター運営事業及び福祉人材バンク運営事業について、北海道の直営
とせず外部委託することとした理由を契約担当者に質問したところ、北海道の直営
とした場合、北海道の職員では業務の専門性に対応することができないと判断した
ため外部委託としている、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、福祉人材センター運営事業及び福祉人材バンク運営事
業が競争により難い業務であるか否かを個別具体的に検討していなかった。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に
質問したところ、当該業務については、準委任に属する契約であることから、競
争に付すことにより、契約金額が有利である相手方を選定しても、かえって契約
の目的物が達成し得ないことから競争になじまないものであると判断した、との
回答を得た。
当該業務の内容を整理すると以下のようになる。
区分
業務
具体的内容
福祉人材 1.福祉人材無料職業紹介事業の実 平成 12 年 10 月 2 日社援第 2233-2 号厚生省
センター 施
社会・援護局長通知「都道府県福祉人材セン
運営事業
ター等で行う無料職業紹介事業の取り扱い
について」により実施する。
270
区分
業務
具体的内容
2.社会福祉事業に従事しようとす 社会福祉施設関係者等の参加も求め、就職説
る者に対する説明会、講習会等の実 明会等を実施し、求職者等に対し福祉に関す
施
る事業の概要、求人内容等を説明する。また、
求職者が社会福祉施設等を訪問する機会を
設定する。
社会福祉施設等での就労経験のある者であ
って、再就労の意欲のある者に対して広く呼
びかけ、必要な福祉に関する新しい知識・技
術の修得のための講習会等を実施する。
市町村社会福祉協議会等と協力し、住民のニ
ーズに即した知識・技術や、福祉の仕事に関
する講座を開催するとともに、各種研修会等
の企画や講師の紹介等に関する援助を行う。
3.社会福祉事業従事者の確保に関 社会福祉事業の人材確保の現状と今後の動
する調査研究の実施
向についての情報収集及び調査研究を行う。
4.社会福祉事業従事者に対する研 社会福祉事業従事者に対し、必要な知識及び
修の企画及び実施
専門技術等に関する研修の企画及び実施を
行う。
5.福祉人材確保相談事業
社会福祉事業経営者に対し、社会福祉事業従
事者の確保に関する相談に応じ、基本指針に
規定する措置の実施に関する技術的事項に
ついて必要な援助を行う。
6.福祉に関する啓発・広報事業の 福祉サービスに関する理解と関心を高め、社
推進
会福祉を目的とする事業への就労を促進す
るための啓発・広報事業を行う。
7.その他社会福祉事業従事者の確
保に資する事業の実施
福祉人材 1.福祉人材無料職業紹介事業の実 平成 12 年 10 月 2 日社援第 2233-2 号厚生省
バンク運 施
営事業
社会・援護局長通知「都道府県福祉人材セン
ター等で行う無料職業紹介事
業の取り扱いについて」により実施する。
2.福祉サービスに関する啓発・広 地域住民に対し、福祉サービスに対する理解
報事業の推進
と関心を高め、社会福祉を目的とする事業へ
の就労を促進するための啓発・広報事業を行
う。
3.その他社会福祉事業従事者の確
保に資する事業の実施
271
上表のように、当該業務は、無料職業紹介事業の実施、説明会・講習会の企画・
実施等を主たる内容とするものであり、当該業務が、上記(a)で述べた「限られ
た高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさ
わしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該
当すると判断することはできない。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第 3 節
(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定して運用されるべき
ものと考える。
(提案事項)
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用すること
が望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関し
ては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は人件費、事務費(使用料及び賃借料、役務費、需用費、旅費)
、事業費(運
営委員会開催経費、福祉人材バンク連絡会議開催経費、福祉人材就労斡旋費、福祉
職場就職説明会費、潜在福祉マンパワー活用講習会開催経費、ステップアップ講習
会開催経費、人材確保調査研究事業費、人材確保相談事業費、啓発・広報事業費)
、
バンク運営費(人件費、管理費、事業費(福祉人材就労斡旋事業費、啓発・広報事
業費)
)をもとに積算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、単価については道の予算単価を使用し、作業量及び処理
時間については前年の実績に基づき積算しているため、標準的な数値は使用してい
ない、との回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その設定が必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(提案事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(4)契約内容変更の妥当性
当該委託契約においては、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会にお
ける職員異動及び給与改定による人件費の増額により、委託費が 131,250 円増額さ
れている。
272
そこで、当該委託費増額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、
当該契約における人件費については、見込額として当初予算に計上し、同額を当初
契約から人件費分として契約書に記載しているところ、北海道の予算事務上、年度
内に当該年度のより精度の高い見込みを積算し、当初予算額を変更しているため、
委託契約書第 11 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、
との回答を得た。
委託契約書第 11 条 1 項には、「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の
内容の一部を変更し、又はその全部もしくは一部を中止することができる。この場
合において、甲は、乙(社会福祉法人北海道社会福祉協議会)に対し書面により通
知するものとし、委託料の額又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議
して書面によりこれを定めるものとする。
」とあるが、委託業務の内容変更に伴って、
委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会における職員異動等による人件費
の変更があったわけではないことから、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉
協議会における職員異動及び給与改定による人件費の増額は、委託業務の内容変更
には該当せず、委託契約書第 11 条 1 項を根拠に委託料の金額変更を行うのは適切で
はないものと考える。
(提案事項)
年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、当該支出見込額に見合
った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、その旨を明記することが望ま
れる。
(5)再委託の妥当性
(a)北海道が社会福祉法人北海道社会福祉協議会に委託している北海道福祉人材
センター運営事業のうち福祉人材バンクの運営業務を、社会福祉法人北海道社
会福祉協議会が各市社会福祉協議会(函館市、旭川市、釧路市、帯広市、北見
市、苫小牧市)に再委託をしている。
当該再委託については、①福祉人材センターが行う事業(無料職業紹介事業、
啓発・広報事業、福祉職場説明会、潜在福祉マンパワー活用講習会、人材確保
調査研究事業、人材確保相談事業)のうち、無料職業紹介事業、啓発・広報事
業等を福祉人材センターと各福祉人材バンクの地区割により行うこと②本事業
は、福祉人材センターと福祉人材バンクが一体となって運営されることを前提
としているものであり、本来独立した業務として委託できるものではないこと、
から北海道が再委託の禁止をしている項目に該当しない、との理由で承認され
ている。
しかし、委託先選定の理由が「選定基準を満たす者が社会福祉法人北海道社
会福祉協議会のみである。
」ことから、選定理由と矛盾が生ずるのではないかと
いう疑問が生ずる。
出納局手引 P62 において、再委託を承諾できる場合とは、①再委託の必要が
あると認められ、②(ケースに応じ)再委託させようとする第三者が、受託者
の総合的な指揮・監督の下に置かれ、③業務を遂行させる上で当該第三者が技
術的、経済的能力から判断して、再委託させても契約の履行を確保するのに支
273
障を来さないときに限り認められると記載されている。したがって、この 3 つ
の要件を検討したうえで、再委託の可否を決定しなければならない。
(b)再委託先である 6 市社協(函館、旭川、釧路、帯広、北見、苫小牧)におけ
る平成 17 年度福祉人材バンク求人求職取扱状況は以下のとおりである。
求人
計
求職
男
女
紹介
計
計
就職
男
女
相談
計
計
函館市福祉人材バンク
276
1,067
2,918
3,985
151
9
44
53
2,586
旭川市福祉人材バンク
339
252
467
719
71
7
26
33
737
釧路市福祉人材バンク
175
236
554
790
86
11
30
41
1,681
帯広市福祉人材バンク
150
269
688
957
96
8
16
24
2,105
北見市福祉人材バンク
215
1,107
2,292
3,399
122
8
47
55
6,659
53
166
242
408
21
3
8
11
491
1,208
3,097
7,161
10,258
547
46
171
217
14,259
苫小牧市福祉人材バンク
合計
他の福祉人材バンクに比較して苫小牧市福祉人材バンクの利用状況が低い
にも関わらず、再委託料は各市社会福祉協議会一律に 6,273,750 円である。
(改善事項)
(a)再委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾する
ことのないよう再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで
再委託を承認することが望まれる。
(b)福祉人材バンクの利用状況も勘案したうえで、再委託料を積算すること
が望まれる。
274
3
介護知識・技術等普及促進事業委託契約について
(一)契約の概要
契約名
介護知識・技術等普及促進事業委託契約
担当部課
保健福祉部地域福祉課
委託先
社会福祉法人北海道社会福祉協議会
事業内容
① 運営委員会の開催
② 介護知識・技術等普及促進事業の実施
事業目的
高齢者の生活の質の確保を図り、高齢者を地域全体で支える意識の
啓発等を図るため、広く地域住民に対し、介護に関する意識啓発や介
護知識・技術の普及を行うとともに、介護予防や生活支援に関する情
報提供等を行うことを目的とする。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
契約額
確定額
返納額
選定方法
H15
特命随契
43,206,450 円
43,206,450 円
−円
H16
同
上
44,382,450 円
44,382,450 円
−円
H17
同
上
44,381,400 円
44,381,400 円
−円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
①道内全ての住民を対象とし、各地で事業を実施することから、広域
性を備えた団体であること。
②介護知識を十分把握し、研修や介護情報の提供に関する業務を適正
に行えること。
③施設面において、研修室、介護実習室、相談室、情報処理室及び交
流談話室が整備されていること。
④福祉用具に関する情報を全国に向け発信している(財)テクノエイ
ド協会や介護関係有識者と容易に連携が図られること。
⑤市町村や在宅介護支援センターの研修等に適切な指導・助言が行え
ること。
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす団体は、社会福祉法人北海道社会福祉協
議会のみである。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
委託料の算定
積算方法:中央センター及びブランチごとに人件費、管理費、事業費
をもとに積算されている。
その他
委託先における人事異動及び給与改定等を理由に契約変更が行われ
ている。
業務の一部が社会福祉法人釧路市社会福祉協議会に再委託されてい
る。
275
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
介護知識・技術等普及促進事業について、北海道の直営とせず外部委託すること
とした理由を契約担当者に質問したところ、北海道の直営事業とした場合、北海道
の職員では業務の専門性に対応することができないと判断したため外部委託とした、
との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、介護知識・技術等普及促進事業が競争により難い業務
であるか否かを個別具体的に検討していなかった。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に
質問したところ、当該業務については、準委任に属する契約であることから、競
争に付すことにより、契約金額が有利である相手方を選定しても、かえって契約
の目的物が達成し得ないことから競争になじまないものであると判断した、との
回答を得た。
当該業務の具体的内容は以下のとおりである。
業務
具体的内容
1.高齢者の生活支援のための意識啓発
・高齢者介護に関する意識の啓発
・介護の基礎知識を習得するための講習会
・介護知識・技術の情報提供
2.高齢者介護に関する知識・技術の付与研
276
修
3.福祉用具・住宅改修活用広域支援事業
・福祉用具・住宅改修関係専門家の登録・活
用
・専門家による広域的な事業者協議会の開催
・高齢者等に対する福祉用具のフィッティン
グ、相談、紹介等
・福祉用具製造事業者等への利用情報等の還
元
上表のように、当該業務は、講習会や協議会の実施等を主たる内容としている
ので、当該業務が、上記(a)で述べた「限られた高度の専門的な技術、能力を
持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要
があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該当すると判断することはで
きない。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定して運用される
べきものと考える。
(提案事項)
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用するこ
とが望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関
しては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は中央センター及びブランチごとに人件費、管理費(介護実習・普及セン
ター運営委員会費、職員旅費、事務費、備品購入費等)、事業費(研修費、啓発事業
費、福祉用具・住宅改修活用広域支援事業費)をもとに積算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、単価については道の予算単価を使用し、作業量及び処理
時間については前年の実績に基づき積算しているため、標準的な数値は使用してい
ないとの回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(提案事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
277
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(4)契約内容変更の妥当性
当該委託契約においては、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会にお
ける職員人件費の増額により、委託費が 325,500 円増額されている。
そこで、当該委託費増額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、
当該契約における人件費については、見込額として当初予算に計上し、同額を当初
契約から人件費分として契約書に記載しているところ、北海道の予算事務上、年度
内に当該年度のより精度の高い見込みを積算し、当初予算額を変更しているため、
委託契約書第 11 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、
との回答を得た。
委託契約書第 11 条 1 項には、「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の
内容の一部を変更し、又はその全部もしくは一部を中止することができる。この場
合において、甲は、乙(社会福祉法人北海道社会福祉協議会)に対し書面により通
知するものとし、委託料の額又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議
して書面によりこれを定めるものとする。
」とあるが、委託業務の内容変更に伴って、
委託先である社会福祉法人北海道社会福祉協議会における職員異動等による人件費
の変更があったわけではないことから、委託先である社会福祉法人北海道社会福祉
協議会における職員異動及び給与改定による人件費の増額は、委託業務の内容変更
には該当せず、委託契約書第 11 条 1 項を根拠に委託料の金額変更を行うのは適切で
はないものと考える。
(提案事項)
年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、当該支出見込額に見合
った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、その旨を明記することが望ま
れる。
(5)再委託の妥当性
北海道が社会福祉法人北海道社会福祉協議会に委託している介護知識・技術等普
及促進事業のうち、釧路市に設置の地域介護実習・普及センター(=ブランチ)で
の業務が社会福祉法人釧路市社会福祉協議会に再委託されている。
当該再委託については、①再委託するブランチは、北海道介護実習・普及センタ
ーに設置している介護実習・普及センター運営委員会で決定された事業計画に基づ
き、道東圏域(オホーツク圏、十勝圏、釧路・根室圏)の研修事業及び啓発普及事
業を実施するものであり、受託者である社会福祉法人北海道社会福祉協議会の総合
的な指揮・監督の下に置かれることとなること②再委託するブランチは当該事業を
遂行する上で、技術的、経済的能力から判断して、再委託させても契約の履行を確
保するのに支障を来さないと認められることから北海道が再委託の禁止をしている
項目に該当しない、との理由で承認されている。
しかし、委託先選定の理由が「選定基準を満たす者が社会福祉法人北海道社会福
祉協議会のみである。
」ことから、選定理由と矛盾が生ずるのではないかという疑問
が生ずる。
278
出納局手引 P62 において、再委託は、①再委託の必要があると認められ②(ケー
スに応じ)再委託させようとする第三者が、受託者の総合的な指揮・監督の下に置
かれ③業務を遂行させる上で当該第三者が技術的、経済的能力から判断して、再委
託させても契約の履行を確保するのに支障を来さないとき、に限り認められると記
載されている。したがって、再委託の必要性についても検討したうえで、再委託の
可否を決定しなければならない。
(改善事項)
再委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾することのな
いよう再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで再委託を承認する
ことが望まれる。
279
4
発達障害者支援センター事業委託契約について
(一)契約の概要
契約名
発達障害者支援センター事業委託契約
担当部課
保健福祉部障害者保健福祉課
委託先
社会福祉法人侑愛会
事業内容
①発達障害者及びその家族に対する相談支援
②発達障害者及びその家族に対する療育支援
③発達障害者に対する就労支援
④関係施設及び関係機関等に対する普及啓発及び研修運営委員会の開催
⑤関係施設・関係機関の連携
事業目的
自閉症等の特有な発達障害を有する障害児(者)に対する支援を総合的
に行う地域の拠点として、発達障害に関する各般の問題について発達障害
児(者)及びその家族等からの相談に応じ、適切な指導または助言を行う
と共に、関係施設との連携強化等により、発達障害児(者)及びその家族
等に対する地域における総合的な支援体制の整備を推進し、発達障害児
(者)及びその家族等の福祉の向上を図ることを目的とする。
契約の推移
(H15 から H17
まで)
年度
委託先
契約額
確定額
返納額
選定方法
H15
特命随契
24,024,014 円
23,974,014 円
50,000 円
H16
同
上
24,547,000 円
23,882,055 円
664,945 円
H17
同
上
24,575,000 円
24,575,000 円
−円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
①発達障害者等に対する効果的な支援が図られるよう、自閉症児施設、知
的障害児(者)施設等に附置し運営することとされていることから、自閉
症児施設、知的障害児(者)施設等を経営している法人等であること。
②発達障害者等の支援に関する十分な知見を有している法人等であるこ
と。
③発達障害者等の支援に当たり、夜間・緊急時の対応や、行動障害の症状
がみられる場合など一時的な受け入れ等が必要となることから、自閉症児
施設、知的障害児(者)施設等を経営している法人等であること。
④全道域をカバーして事業を実施できる体制を有する法人等であること。
<委託先選定の理由>
上記選定基準の全てを満たす団体は、社会福祉法人侑愛会のみである。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
委託料の算定
積算方法:事務費、事業費をもとに積算されている。
その他
全道圏域をカバーすることが難しい状況になったこと及び国庫補助基準
単価の変更を理由に契約変更が行われている。
280
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
発達障害者支援センター事業について、北海道の直営とせず外部委託することと
した理由を契約担当者に質問したところ、発達障害者支援センター事業を実施する
にあたって必要な要件は、①発達障害についての専門的な知見・経験②緊急時の対
応機能③一時保護機能(強度行動障害への対応)④発達障害の特性に着目した個別
支援プログラムのノウハウ⑤人事体制(専門職の配置)⑥ライフスタイルに応じた
支援体制であるが、これらの要件の全てを満たす北海道立の施設は存在しないため、
北海道の直営とする場合は、これらの要件の全てを満たす施設を新たに建設しなけ
ればならないが、北海道の財政状況を勘案すると困難であり、委託した方が経済的
であると判断した、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、発達障害者支援センター事業が競争により難い業務で
あるか否かを個別具体的に検討していなかった。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に
質問したところ、
当該業務については対人的要素が大きいこと、当該業務遂行上、
人材やネットワークを活用する必要があることから、競争により難いと判断した、
との回答を得た。
当該業務の具体的な内容は以下のとおりである。
281
業務
具体的内容
1.発達障害者等への支援
(1)発達障害者及びその家族に対し、専門 ・発達障害に関する各般の問題について、
的にその相談に応じ、または助言を行う。
発達障害者等からの相談に応じ、適切な指
導または助言をするとともに情報提供を行
う。
・発達障害者等に対する相談支援は、来所
または訪問による面談のほか、電話または
インターネット等の情報通信機器を用いた
相談などを実施することとし、地域の発達
障害者のニーズや相談内容に応じて弾力的
な対応を図る。
(2)発達障害者等に対し、専門的な発達支 ・発達障害者及びその家族に対する療育相
援を行う。
談を実施し、家庭での療育方法に関する指
導または助言並びに情報提供を行うととも
に、必要に応じて、発達障害者等の医学的
な診断及び心理的な判定を行う。その際、
児童相談所、心身障害者総合相談所及び医
療機関等と連携を図る。
・知的障害児施設、知的障害者更生施設及
び保育所等に入所している発達障害者に対
する発達支援に関する指導または助言を行
う。
(3)発達障害者に対し、就労の支援を行う。 ・就労を希望する発達障害者に対し、就労
に向けて必要な相談等による支援を行うと
ともに、必要に応じて公共職業安定所等の
労働関係機関との連携を図る。
(4)一時保護が必要なケースへの対応
・夜間等の緊急時や行動障害により、一時
的な保護が必要となった場合には、センタ
ー及び地域センターの受託法人若しくは連
携している障害児施設等において一時的な
保護を行う。
2.市町村への対応
・市町村が行う発達障害児の早期発見、早
期の発達支援及び発達障害者の地域での生
活支援に必要な各種事業に対し、専門的に
協力、または助言を行う。
・市町村が関係機関と連携しながら行う地
域の支援体制整備に対し、専門的に協力、
または助言を行う。
282
業務
3.関係機関等との連携
具体的内容
・発達障害者等に対して医療、保健、福祉、
教育、就労等の各分野の支援が総合的に提
供されるよう、関係機関及び民間団体との
密接な連携を図るとともに、必要な連絡調
整を行う。
・センター及び地域センターは、担当する
圏域における発達障害者等に対する総合的
なサービスのあり方や支援体制を検討する
ため、自閉症児施設等、保健福祉事務所、
心身障害者総合相談所、教育委員会、地域
障害者職業センター、公共職業安定所、医
療機関、障害者総合相談支援センター、北
海道、市町村及び家族団体等により構成さ
れる連絡協議会を定期的に開催するととも
に、その内容を速やかに北海道に報告する。
・関係機関等において医療、保健、福祉、
教育、就労等に関する業務に従事する者に
対し発達障害についての情報提供及び研修
を行う。
4.センター及び地域センターの相互連携
・センター及び地域センターは、相互に連
携及び情報交換を行うとともに、センター
間で定期的に協議を行う等、適切な協力関
係を確保する。
5.住民に対する理解啓発
・発達障害の特性及び対応方法等について
解説したわかりやすいパンフレット、チラ
シ等を作成し、関係機関や地域住民に配布
することなどにより、発達障害についての
普及啓発を図り理解の促進に努める。
当該業務の具体的内容から、当該業務の遂行上、ある程度の専門性が必要であ
ることは理解できるが、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(9)が予定している
ような高度の専門性を持ち合わせていないと当該業務を遂行できないとまで言い
切ることはできない。なぜならば、受託者自身が高度の専門性を持ち合わせてい
なくても、専門機関との連携により業務遂行が可能となるからである。したがっ
て、当該業務については、上記(a)で述べた「限られた高度の専門的な技術、
能力を持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定す
る必要があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該当すると判断するこ
とはできない。
283
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定して運用される
べきものと考える。
(c)社会福祉法人侑愛会を委託業者として選定する基準の1つに、全道域をカバー
して事業を実施できる体制を有する法人等であるという基準があるが、
(4)契約
内容変更の妥当性の箇所で述べるように、全道圏域をカバーすることが難しい状
況にあることを理由に、発達障害者地域センターを設置して、当該発達障害者地
域センターと委託契約を締結していることから、そもそも社会福祉法人侑愛会は
当該選定基準を満たしていなかったのではないかという疑問が生じた。
この点について、契約担当者に質問したところ、当初は全道圏域をカバーして
事業を実施できる体制を有するものと判断したが、
業務量が急速に拡大したため、
結果的に全道圏域をカバーして事業を実施することができなくなった、との回答
を得た。
契約にあたって、契約担当者は、社会福祉法人侑愛会が委託先の選定基準の全
てを満たすという判断を慎重に行うべきであったものと考える。
(提案事項)
(a)運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用
することが望まれる。
(b)選定基準の全てを満たす者か否かの判断は慎重に行うことが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は事務費(人件費、庁費)
、事業費(関係機関への情報提供、関係機関職員
へのコンサルテーション、連絡協議会・サービス調整会議等の開催・参加、関係職
員の研修、医療機関との連携に係る費用)をもとに積算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、単価については道の予算単価を使用し、作業量及び処理
時間については前年の実績に基づき積算しているため、標準的な数値は使用してい
ない、との回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(提案事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(4)契約内容変更の妥当性
284
(a) 発達障害者及びその家族に対する相談・情報提供等の専門的支援及び各市町村・
関係機関の体制整備の支援については、従来、発達障害者支援センター(平成 14
年度設置。社会福祉法人侑愛会(上磯郡上磯町)に委託)1 ヶ所で行ってきたが、
全道圏域をカバーすることが難しい状況にあることから、その機能を地域的に展開
していくための方策として、道北・道東方面をカバーするため、平成 17 年度から
発達障害者地域センターを道内 2 ヶ所(社会福祉法人旭川旭親会、社会福祉法人帯
広福祉協会)に設置することとなった。この結果、北海道は、発達障害者地域セン
ター(社会福祉法人旭川旭親会、社会福祉法人帯広福祉協会)と委託契約を締結し
た。
また、北海道発達障害者支援センター(社会福祉法人侑愛会)は、保健福祉事務
所の圏域のうち石狩、渡島、檜山、後志、空知、胆振、日高の圏域を、発達障害者
道北地域センター(社会福祉法人旭川旭親会)は、上川、留萌、宗谷の圏域を、発
達障害者道東地域センター(社会福祉法人帯広福祉協会)は、網走、十勝、釧路、
根室をそれぞれ担当することになったが、北海道発達障害者支援センター(社会福
祉法人侑愛会)は、担当する圏域に関わりなく、困難ケースへの支援、センター及
び地域センターの相互連携のとりまとめ、地域センター職員に対する研修、住民啓
発用パンフレットや共通資料等の企画を担う、というようにその役割が一部変更と
なったことから、委託業務の変更契約が行なわれている。
契約担当者に対して、当該契約内容変更の契約上の根拠を質問したところ、発達
障害者地域センターの設置に伴い、①困難ケースへの支援②センター及び地域セン
ターの相互連携のとりまとめ③地域センター職員に対する研修④住民啓発用パンフ
レットや共通資料等の企画といった業務が、北海道発達障害者支援センターの業務
内容に追加されていることから、当該契約内容変更は、委託契約書第 10 条 1 項(業
務内容変更等)に基づいて行った、との回答を得た。
ヒヤリングをした限りにおいて、当該契約変更に関しては、特に問題ないものと
判断した。
(b)当該委託契約においては、当初、委託料の積算は、平成 16 年度の国庫補助基準単
価(月額 2,045,610×12 ヶ月=24,547,000 円)により行っていたが、平成 17 年度
の国庫補助基準単価(月額 2,047,990×12 ヶ月=24,575,000 円)が国から示された
ため、委託料の額が 28,000 円増額されている。
そこで、当該委託費増額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、
委託契約書第 10 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、
との回答を得た。
委託契約書第 10 条 1 項には、「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の
内容の一部を変更し、又はその全部もしくは一部を中止することができる。この場
合において、甲は、乙(社会福祉法人社会福祉法人侑愛会)に対し書面により通知
するものとし、委託料の額又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議し
て書面によりこれを定めるものとする。」とあるが、委託業務の内容変更の結果、国
庫補助基準単価が増額したわけではないことから、国庫補助基準単価の増額は、委
託業務の内容変更には該当せず、委託契約書第 10 条 1 項を根拠に委託料の金額変更
を行うのは適切ではないものと考える。
285
(提案事項)
年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、当該支出見込額に見合
った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、その旨を明記することが望ま
れる。
286
5
北海道観光物産センター管理運営業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道観光物産センター管理運営業務委託契約
担当部課
経済部商業経済交流課
委託先
社団法人北海道観光連盟
事業内容
① 北海道の観光の紹介、宣伝及び観光案内
② 北海道の観光宣伝のための催事の開催
事業目的
北海道の観光及び道産品に関する総合情報センターとして来道観光客及
び道民に対し、観光情報の提供や道産品の紹介・宣伝等を行うことを目
的とする。
契約の推移
年度
(H15 から H17
委託先
契約額
確定額
返納額
選定方法
まで)
H15
特命随契
14,697,869 円
14,697,869 円
−円
H16
同
上
14,693,460 円
14,693,460 円
−円
H17
同
上
14,693,460 円
14,621,343 円
72,117 円
H16 の契約額及び確定額については、H17 定期監査時の委託料調によった。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
北海道観光物産センターの設置に向けて「北海道観光物産センター検討
協議会」が検討した結果、観光部門の委託先は社団法人北海道観光連盟、
物産部門の委託先は社団法人北海道貿易物産振興会が望ましいとの結論
が出ている。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
委託料の算定
積算方法:維持管理費、人件費をもとに積算されている。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道観光物産センター管理運営業務について、北海道の直営とせず外部委託す
ることとした理由は、記録上、北海道観光物産センターは、北海道の観光及び道産
品に関する総合情報センターとして来道観光客及び道民に対し、観光情報の提供や
道産品の紹介・宣伝等を行うことを目的に平成元年に設置したものであるが、北海
道観光物産センターの機能が多岐にわたっていることから、十分なノウハウを持っ
ていない道がこれらの業務を行うことは無理であること、である。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。
287
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、北海道観光物産センター管理運営業務が競争により難
い業務であるか否かを個別具体的に検討していない。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に
質問したところ、業務遂行上、観光に関する専門的知識と情報を必要とすること
から、競争により難い業務であると判断した、との回答を得た。
当該業務の具体的内容は、①道産品の紹介、宣伝②道産品の紹介、宣伝のため
の催事の開催③道産品に関する流通情報の提供④本道観光の紹介、宣伝及び観光
案内⑤観光宣伝のための催事の開催⑥受託箇所の保守、清掃業務である。
当該業務の遂行上、観光に関する知識と情報が必要となることは理解できるが、
それが、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定する高度の専門的知識
に該当すると判断することはできない。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定して運用される
べきものと考える。
(提案事項)
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用するこ
とが望まれる。
なお、本件契約の相手方は北海道の関与団体であるが、関与団体との契約に関
しては、本報告書第4章小括においてまとめて指摘する。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は維持管理費(共通管理費、光熱水費、清掃料)、人件費をもとに積算され
ている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、そのような資料は作成していない、との回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
288
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(改善事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
289
6
北海道若年者就職支援センター(通称ジョブカフェ北海道)運営業務委託契約につい
て
(一)契約の概要
契約名
北海道若年者就職支援センター(通称ジョブカフェ北海道)運営業務
委託契約
担当部課
経済部雇用対策課
委託先
社団法人北海道雇用開発協会
事業内容
①支援センターの円滑な運営を図るための管理及び調整
②支援センターの運営に係る備品の借入れ
③若年者能力開発支援事業の実施
④施設の維持・管理
⑤その他の業務
事業目的
34 歳以下のフリーター、若年無業者等を対象に、総合的な就職支援サ
ービスをワンストップで提供する「北海道若年者就職支援センター」
を設置し、運営に関する業務を円滑かつ効果的に実施することを目的
とする。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
契約額
概算額
選定方法
H16
H17
特命随契
同
上
確定額
返納額
A
B
A-B
33,602,735
33,602,000
32,173,878
1,428,122
円
円
円
円
51,018,737
51,018,000
50,223,500
794,500
円
円
円
円
当事業は、H16 から開始したものであるので、H15 のデータはない。
委 託 先 選定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
本道において、雇用対策に関する公益法人等は、社団法人北海道雇用
開発協会以外になく、平成 16 年度より同社団に業務を委託しているこ
とから、平成 17 年度においても随意契約としこれを選定する。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第3節(随意契約)関係1(18)
委託料の算定
積算方法:人件費、事務費等、清掃費、事務機器賃借料、助成金等を
もとに積算されている。
その他
助成金の支給予定額が予想を上回ったことを理由に契約変更が行われ
ている。
業務の一部が民間業者に再委託されている。
290
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
北海道若年者就職支援センター管理運営業務について、北海道の直営とせず外部
委託することとした理由を契約担当者に質問したところ、
「 若年者のためのワンスト
ップサービスセンター事業実施要領」において、
「若年者地域連携事業は、地域の関
係者と連携した若年者に対する職業意識形成支援関係事業等の実施を地域の適切と
認められる団体に委託するものである。」とのことから外部委託している、との回答
を得た。
当該業務については、外部委託することが事業実施の前提条件となっていること
から、当該業務を委託することは問題なしと判断する。ただし、記録上、当該業務
を委託した理由が明示されておらず、第三者に対する説明資料としては不十分であ
る。
(改善事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)総論で述べたように、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定してい
る契約類型は、
「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を
考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手
方を選定し難い場合」を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、
訴訟事務以外に調停、登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定
の業務に限定されるものと考える。
したがって、当該業務が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定して
いる契約類型に該当するか否かについての契約担当者の判断の妥当性の検証が重
要となる。
(b)記録上、契約担当者が、北海道若年者就職支援センター運営業務が競争により
難い業務であるか否かを個別具体的に検討していない。
そこで、当該業務が競争により難い業務であると判断した理由を契約担当者に質
問したところ、担当部課では、平成 16 年度において、当該契約の契約根拠を運用方
針第 3 節(随意契約)関係 1(2)で起案していたが、北海道出納局の指導により、
契約根拠を運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)に変更したものであり、平成
17 年度においても、前年度踏襲で、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)を適
用したものである。
当該業務の具体的内容は以下のとおりである。
291
業務
具体的内容
1.支援センターの円滑な運営を図るた センター長 1 名、運営要員 2 名を採用の上、支援
めの管理及び調整
センターに配置し、業務の管理及び調整を行う。
2.支援センターの運営に係る備品の借 支援センターの運営に必要な什器備品を北海道
入れ
経済部と協議の上、予算の範囲内で借り上げ、支
援センターに設置し、適正に管理する。
3.若年者能力開発支援事業の実施
34 歳以下のフリーター、若年無業者等のスキルア
ップを支援するため、就職に有利な資格を取得す
るために要した費用の一部を助成する「若年者能
力開発支援助成金」に係る事務を別に定める「若
年者能力開発支援事業実施要領」に基づき実施す
る。
4.施設の維持・管理
上記1から3の業務を遂行するために必要な施
設の維持・管理に関する業務を行い、清掃につい
ては、三井生命札幌共同ビル指定の清掃事業者で
ある北日本ビル管理株式会社へ清掃業務の委託
を行う。
5.その他の業務
上記1から4の他、北海道及び北海道が設置した
「北海道若年者就職支援センター運営協議会」に
おいて、支援センターに必要と認められる業務を
行う。
上表のように当該業務の内容は管理運営及び若年者能力開発支援事業の実施で
あり、当該業務が、上記(a)で述べた「限られた高度の専門的な技術、能力を
持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要
があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該当すると判断することはで
きない。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1(18)が対象とする業務は特定業務に限定して運用される
べきものと考える。
(提案事項)
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定業務に限定して運用するこ
とが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は人件費、事務費等(電話料、郵送料、書籍費、印刷費、消耗品費、光熱
水費等)、清掃費、事務機器賃借料、助成金等(助成金、広告掲載費等)をもとに積
算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、過去の実績、市場価格
292
の動向、北海道の財政状況等を勘案して積算している、との回答を得た。また、標
準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値の算定根拠がわかる資
料の提示を求めたところ、一部資料については作成していないとの回答を得た。
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。
また、それらの数値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残し
ておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用され続けるおそれがある。
(改善事項)
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、毎年
度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値を継続して適用する場
合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(4)契約内容変更の妥当性
当該委託契約においては、若年者能力開発支援助成金の支給予定額が予算額を上
回る見込みとなったことから委託費が 10,428,000 円増額されている。
そこで、当該委託費増額の契約上の根拠について契約担当者に質問したところ、
委託契約書第 10 条 1 項に基づき委託内容の一部変更手続を行った、
との回答を得た。
委託契約書第 10 条 1 項には「甲(北海道)は、必要がある場合は、委託業務の内
容の一部を変更し、又はその全部もしくは一部を中止することができる。この場合
において、甲は、乙(社団法人北海道雇用開発協会)に対し書面により通知するも
のとし、委託料の額又は委託期間を変更する必要があるときは、甲乙協議して書面
によりこれを定めるものとする。」とあるが、委託業務の内容変更の結果、若年者能
力開発支援助成金の支給額が増額したわけではないことから、
若年者能力開発支援助成金の支給額の増額は委託業務の内容変更には該当しない
ので、
委託契約書第 10 条 1 項を根拠に委託料の金額変更を行うのは適切ではないも
のと考える。
(改善事項)
予定数量の増減などに伴い、契約金額のみを変更する場合にあっては、業務項目
の追加や業務処理方法の変更などの「委託業務の内容変更」とは別な条項を設けて
処理すべきと考える。
(5)再委託の妥当性
北海道が社団法人北海道雇用開発協会に委託している北海道若年者就職支援セン
ター(通称ジョブカフェ北海道)運営業務のうち、清掃業務については、社団法人
北海道雇用開発協会が入居している三井生命札幌共同ビル指定の清掃業者である北
日本ビル管理株式会社に再委託されている。
契約担当者の説明によると、当該再委託については、北海道若年者就職支援セン
ター委託業務処理要領の第 3 の 4 において、
「 前各号の業務を遂行するために必要な
施設の維持・管理に関する業務を行い、清掃については三井生命札幌共同ビル指定
の清掃業者である北日本ビル管理株式会社へ清掃業務の委託を行う。」と記載されて
293
いることを根拠に承諾されている、とのことであった。
出納局手引 P62 において、再委託は、①再委託の必要があると認められ②(ケー
スに応じ)再委託させようとする第三者が、受託者の総合的な指揮・監督の下に置
かれ③業務を遂行させる上で当該第三者が技術的、経済的能力から判断して、再委
託させても契約の履行を確保するのに支障を来さないとき、に限り認められると記
載されている。
(改善事項)
再委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾することのな
いよう再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで再委託を承認する
ことが望まれる。
294
その他特に知事が必要と認める契約をするとき。
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(19))
1
北海道立栽培水産試験場改築工事監理業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
北海道立栽培水産試験場改築工事監理業務委託契約
担当部課
水産林務部水産振興課
委託先
民間業者
事業内容
北海道立栽培水産試験場改築工事監理
事業目的
北海道立栽培水産試験場改築工事の各工事が設計図書に従い適正に履行
されるよう監理することが当該事業の目的である。
契約の推移
年度
委託先
積算額
委託金額
選定方法
H17
特命随契
13,845,300 円
13,125,000 円
当該事業は工事監理であり H17 年度単年度の事業である。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
「建築物の設計・監理業務に係る委託契約の取り扱いについて」におい
て、工事監理業務において、実施設計業務を委託した場合は、原則とし
て当該実施設計の受託者を相手方とすることとされている。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(19)
委託料の算定
積算方法:直接人件費、諸経費、技術経費、現場管理経費をもとに積算
されている。
見積書の内容:見積金額のみの記載であり、具体的内容は不明である。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
当該事業を外部委託する理由について契約担当者に質問したところ、北海道立栽
培水産試験場のような特殊建築物は、建物の意匠性(デザイン、色彩など)
、空調・
照明機器や医療設備など高度な専門知識が必要であること②材料・施工検査、施工
計画書類の確認、図面チェック等に係る業務量が膨大であることから、外部委託に
より専門的な知識を持つ設計者の活用と事務量の軽減とを図っている、との回答を
得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(提案事項)
295
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)この規定による特例は、特例中の特例という性格から拡大した運用は認められ
ない。したがって、当該業務が特に知事が必要と認める契約に該当するとした契
約担当者の判断の妥当性の検証が重要となる。
(b)北海道立栽培水産試験場改築工事監理業務は特殊建築物である北海道立栽培水
産試験場の工事監理であり、
特に知事が必要と認める契約の事例の1つである「建
築物に係る設計(基本及び実施とも)については、創造性、芸術性、企画力、技
術力等が求められていること、また、建築物の工事監理は、その設計の意図及び
内容に精通している必要があること等から、これらの契約はすべてが競争入札に
なじむものではないとして、当該契約における契約の相手方の選定方法の取扱い
を定めたもの。」に該当する。
(c)
「建築物の設計・監理業務に係る委託契約の取扱いについて」において、工事監
理業務において、実施設計業務を委託した場合は、原則として当該実施設計の受
託者を相手方とすることとされている。北海道立栽培水産試験場改築工事監理業
務においても、当該民間業者が実施設計の受託者であったことから、契約の相手
方として選定している。
当該契約について、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(19)を適用して随意
契約をすることについては問題ないものと考える。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は直接人件費、諸経費、技術経費、現場管理経費をもとに積算されている。
委託料の積算根拠について契約担当者に質問したところ、国(国土交通省)の設
計料算定基準に準拠した「営繕工事設計監理業務委託料算定基準」に基づき算定し
ているとの回答を得た。契約担当者の判断が介入する余地は比較的少ないものと考
える。
しかし、委託先から徴取した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容が不明で
あるため、積算額の妥当性を事後的に検証することができない。
(提案事項)
積算額の妥当性を事後的に検証するため、単価及び数量の明細がわかるように記
載した見積書の内訳書の提出を求めることが望まれる。
296
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき。
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)
1
釧路管理区林相図作製業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
釧路管理区林相図作製業務委託契約
担当部課
水産林務部 森林環境室 道有林課
委託先
民間業者
事業内容
前回作成から 5 年を経過し、更新を必要とする釧路管理区林相図作製業
務
事業目的
林相図(道有林の林班界地況、林況、制限林の種類、道路、その他施設
等を表したもの)を作成して、道有林の整備管理計画編成及び各種事業
計画の立案、実行に役立てる。
契約の推移
年度
委託先選定方法
H17
有利随契
積算額
1,309,350 円
委託金額
1,197,000 円
当該事業は 5 年に一度行われるものなので、H16 年度と H15 年度のデー
タはない。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
①当該業者は、本年度作成を予定している釧路管理区の林相図作製業務
を過去に委託した実績のある他の民間業者から、平成 16 年 3 月 12 日に
北海道における地図の受託調整に係る調査・編纂・製図・製版・印刷業
務等の営業譲渡を受けており、本年度作製予定の釧路管理区相林図作製
に係る北海道が保有していない版等(道有林野内の等高線図の版や人工
林等を示す版等)を保有し、これを利用できるため、新たに作成する場
合と比較して著しく有利な価格で契約を締結する見込みがある。
―設計金額の比較―
在版利用の場合の積算
新規作成の場合の積算
1,309,350 円
2,443,350 円
差額
1,134,000 円
②林相図作製には基本図、林相図及び地形図を縮図、編集する特殊な技
術と緻密な作業が必要である。今回契約を締結しようとする業者は、林
野関係の図面作業に多くの経験を有している従業員についても、譲渡日
において引継いでいることや、これまでも一貫して道有林の林相図作製
に関わってきていることから、複雑な林相図作製には十分熟達し、良質
の成果品を期待できる。
③林相図は各センターで冬期間に積雪を利用して効率的・集中的に行っ
297
ている森林調査時に常時携帯するため、年内に作成する必要があるが、
当該業者は定められた期間に確実に契約が履行できることが期待でき
る。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 4
委託料の算定
積算方法:直接費と間接費(=直接費の 30%)をもとに積算されている。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・合理性
当該事業を外部委託する理由について契約担当者に質問したところ、林相図は膨
大な情報量を書き入れた精密な地図であるが、林相図作製の設備・技術は専門業者
のみが有するものであり、そのような設備・技術を持たない北海道が林相図を作製
することはできないため外部委託している、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(改善事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)随意契約によることの妥当性
(a)運用方針第 3 節(随意契約)関係 4 を根拠として随意契約をする場合、時価と
有利な価格とが客観的に把握されていることの検証が重要となる。
(b)時価に比して著しく有利か否かについては明確な根拠が必要となるので、著し
く有利か否かについての判断基準を契約担当者に質問したところ、水産林務部と
しては、時価より 40%以上安い金額で調達できる場合を著しく有利であると判断
しているとの回答を得た。著しく有利か否かの判断基準を一律に定めることは適
切ではないので、時価より 40%以上安い金額で調達できる場合を著しく有利であ
ると判断しているのであれば、その根拠を明確にした上で当該基準を継続して適
用することが重要となる。
(c)当該契約においては、在版利用の場合の林相図の設計金額と新規作製の場合の
林相図の設計金額(時価)とを比較して、1,134,000 円(46.4%)だけ時価より
も安く調達することができることを理由に、当該民間業者を委託先に選定してい
る。
ここで、在版利用の場合の林相図の設計金額と新規作成の場合の林相図の設計
金額(時価)との客観性が重要な意味を持つ。何故ならば、在版利用の場合の林
相図の設計金額と新規作成の場合の林相図の設計金額(時価)とに客観性がない
場合、時価に比して著しく有利であるか否かの判断に恣意性が介入するおそれが
あるからである。
298
そこで、在版利用の場合の林相図の設計金額と新規作製の場合の林相図の設計
金額(時価)の根拠を契約担当者に質問したところ、両方とも契約担当者が自ら
積算したものである、との回答を得た。
契約担当者が自ら積算した在版利用の場合の林相図の設計金額は客観性のある
価格とはいえないし、市場調査によらない新規作製の場合の林相図の設計金額も
客観性のある時価とはいえないものと考える。
したがって、契約担当者が自ら積算した在版利用の場合の林相図の設計金額と
新規作製の場合の林相図の設計金額(時価)とを比較して、1,134,000 円(46.4%)
だけ時価よりも安く調達することができるという判断は客観性が乏しく適切では
ないものと考える。
(提案事項)
「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのある
とき。」
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)を契約根拠とする場合は、時価に
比して著しく有利な価格であるか否かの判断については、
客観性を付与するため、
市場調査、第三者の鑑定評価及び業者からの見積徴収等に基づくことが望まれる。
(3)委託料算定根拠の妥当性
(a)委託料は直接費(計画準備費、基図版作製費、製版費、印刷費、材料費)と間
接費(=直接費の 30%)をもとに積算されている。積算根拠は明確であり、契約
担当者の恣意性が介入する余地は比較的少ないものと考える。しかし、時価と比
較して著しく有利か否かを判断する際の在版利用の場合の林相図の設計金額とし
ては、契約担当者が自ら算定しているため、客観性の面から適切ではない。
(b)委託先から入手した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容は不明であるた
め、積算額の妥当性を事後的に検証することができない。
(提案事項)
積算額の妥当性を事後的に検証するため、単価及び数量の明細がわかるように
記載した見積書の内訳書の提出を求めることが望まれる。
299
2
空知管理区林相図作製業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
空知管理区林相図作製業務委託契約
担当部課
水産林務部 森林環境室 道有林課
委託先
民間業者
事業内容
前回作成から 5 年を経過し、更新を必要とする空知管理区林相図作製業務
事業目的
林相図(道有林の林班界地況、林況、制限林の種類、道路、その他施設等
を表したもの)を作成して、道有林の整備管理計画編成及び各種事業計画
の立案、実行に役立てる。
契約の推移
年度
委託先選定方法
H17
有利随契
積算額
3,289,650 円
委託金額
3,192,000 円
当該事業は5年に一度行われるものなので、H16 年度と H15 年度のデータ
はない。
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
特に明示されていない。
<委託先選定の理由>
①当該業者は、本年度作成を予定している空知管理区の林相図作製業務を
過去に委託していることから、北海道が保有していない版等(道有林野内
の等高線図の版や人工林等を示す版等)を保有し、これを利用できるため、
新たに作成する場合と比較して著しく有利な価格で契約を締結する見込
みがある。
―設計金額の比較―
在版利用の場合の積算
新規作成の場合の積算
3,289,650 円
8,467,200 円
差額
5,177,550 円
②林相図作製には基本図、林相図及び地形図は縮図、編集する特殊な技術
と緻密な作業が必要である。今回契約を締結しようとする業者は、林野関
係の図面作業に多くの経験を有していることや、これまでも一貫して道有
林の林相図作製に関わってきていることから、複雑な林相図作製には十分
熟達し、良質の成果品を期待できる。
③林相図は各センターで冬期間に積雪を利用して効率的・集中的に行って
いる森林調査時に常時携帯するため、年内に作製する必要があるが、当該
業者は定められた期間に確実に契約が履行できることが期待できる。
<随意契約の根拠規定>
運用方針第 3 節(随意契約)関係 4
委託料の算定
積算方法:直接費と間接費(=直接費の 30%)をもとに積算されている。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
300
(二)監査結果
釧路管理区林相図作製業務委託契約についてと同一内容である。
301
「契約の目的物が代替性のないものであるとき。」(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1
の(2)
)を適用していたが、平成 17 年度から指名競争入札に移行したケース
1
本庁舎西側昇降機保守点検業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
本庁舎西側昇降機保守点検業務委託契約
担当部課
総務部管財課
委託先
民間業者
事業内容
本庁舎西側昇降機保守点検業務
事業目的
効率的に行政を進めるため、常に、使いやすく利用しやすい状態に庁舎
等を保つ。
契約の推移
年度
(H15 から H17
まで)
委託先
積算額
委託金額
選定方法
H15
特命随契
9,977,100 円
9,775,500 円
H16
同上
9,394,350 円
9,392,250 円
H17
指名競争入札
省略
7,459,200 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
① オーチス製のエレベーター故障時に迅速に対応できる者であること。
② 24 時間体制で保守可能でかつ保守点検契約の履行が可能な者である
こと。
③ エレベーター検査資格者を有し、エレベーターの保守を行うことがで
きる者であること。
④ 官公庁、民間を問わず、過去 2 年間において同種同規模の業務実績が
あり、全て誠実に履行されていること。
⑤ エレベーター整備技術者を 5 名以上有していること。
⑥ 受注意欲を有していること。
<委託先選定の理由>
指名競争入札の結果、予定価格の範囲内で最低の価格で入札した。
<契約根拠規定>
施行令第 167 条(指名競争入札)
委託料の算定
積算方法:直接業務費、業務管理費、一般管理費等をもとに積算されて
いる。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
(二)監査結果
(1)委託の必要性・有効性
当該事業を外部委託する理由について契約担当者に質問したところ、当該事業を
外部委託する理由は、ベヤリングやギアの保守、部品交換等は専門的な分野である
302
ため、北海道の直営で保守管理を行うことは不可能であるため外部委託している、
との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、委託理由については、特に問題ないものと
判断した。ただし、記録上、当該業務を委託した理由が明示されておらず、第三者
に対する説明資料としては不十分である。
(改善事項)
委託理由について第三者に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由
を明示することが望まれる。
(2)指名競争入札によることの妥当性
当該契約については、H16 年度までは、
「契約の目的物が代替性のないものである
とき。」
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1 の(2))を適用していたが、H17 年度
から指名競争入札に移行している。
そこで、指名競争入札によるか随意契約によるかの判断基準について契約担当者
に質問したところ、当該事業については、契約に先立って受注意欲調査を毎年実施
しているが、H16 年度までは、エレベーターの設置業者以外に受注意欲を示す者が
いなく、また、同種同規模の業務実績がある者もいなかったため、エレベーターの
設置業者と随意契約を結んでいた。しかし、H17 年度は、エレベーターの設置業者
以外に保守専門業者が受注希望を出してきたため 2 者による指名競争入札を実施し
た、との回答を得た。
ヒヤリングを実施した限りにおいて、指名競争入札によるか随意契約によるかの
判断については、特に問題ないものと判断した。
(3)委託料算定根拠の妥当性
委託料は直接業務費(人件費、物品費)、業務管理費、一般管理費等(直接業務費
と業務管理費との合計額の 25%)をもとに積算されている。積算根拠も明確であり、
契約担当者の恣意性が介入する余地は比較的少ないものと判断する。
303
2
本庁舎東側昇降機保守点検業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
本庁舎東側昇降機保守点検業務委託契約
担当部課
総務部管財課
委託先
民間業者
事業内容
本庁舎東側昇降機保守点検業務
事業目的
効率的に行政を進めるため、常に、使いやすく利用しやすい状態に庁舎
等を保つ。
契約の推移
(H15 から H17
年度
委託先
選定方法
積算額
委託料額
まで)
H15
特命随契
8,313,900 円
8,056,440 円
H16
同上
7,805,700 円
7,653,240 円
H17
指名競争入札
省略
5,544,000 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
①三菱電機製のエレベーター故障時に迅速に対応できる者であること。
②24 時間体制で保守可能でかつ保守点検契約の履行が可能な者であるこ
と。
③エレベーター検査資格者を有し、エレベーターの保守を行うことがで
きる者であること。
④官公庁、民間を問わず、過去 2 年間において同種同規模の業務実績が
あり、全て誠実に履行されていること。
⑤ エレベーター整備技術者を 5 名以上有していること。
⑥受注意欲を有していること。
<委託先選定の理由>
指名競争入札の結果、予定価格の範囲内で最低の価格で入札した。
<契約根拠規定>
施行令第 167 条(指名競争入札)
委託料の算定
積算方法:直接業務費、業務管理費、一般管理費等をもとに積算されて
いる。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
(二)監査結果
本庁舎西側昇降機保守点検業務委託契約についてと同一内容である。
304
3
別館庁舎昇降機保守点検業務委託契約について
(一)契約の概要
契約名
別館庁舎昇降機保守点検業務委託契約
担当部課
総務部管財課
委託先
民間業者
事業内容
別館庁舎昇降機保守点検業務
事業目的
効率的に行政を進めるため、常に、使いやすく利用しやすい状態に庁舎
等を保つ。
契約の推移
(H15 から H17
年度
委託先
選定方法
積算額
委託金額
まで)
H15
特命随契
8,320,200 円
8,246,700 円
H16
同上
7,812,000 円
7,794,360 円
H17
指名競争入札
省略
5,922,000 円
委 託 先 選 定 の <委託先の選定基準>
理由
①三菱電機製のエレベーター故障時に迅速に対応できる者であること。
②24 時間体制で保守可能でかつ保守点検契約の履行が可能な者であるこ
と。
③エレベーター検査資格者を有し、エレベーターの保守を行うことがで
きる者であること。
④官公庁、民間を問わず、過去 2 年間において同種同規模の業務実績が
あり、全て誠実に履行されていること。
⑤ エレベーター整備技術者を 5 名以上有していること。
⑥受注意欲を有していること。
<委託先選定の理由>
指名競争入札の結果、予定価格の範囲内で最低の価格で入札した。
<契約根拠規定>
施行令第 167 条(指名競争入札)
委託料の算定
積算方法:直接業務費、業務管理費、一般管理費等をもとに積算されて
いる。
見積書の内容:見積金額のみの記載で具体的内容は不明である。
(二)監査結果
本庁舎西側昇降機保守点検業務委託契約についてと同一内容である。
305
三
小括
以下、
「その他の随意契約」の類型ごとに、
「 二 個別契約」で問題となった点を小括する。
ただし、委託理由の合理性については、
「その他の随意契約」の全ての類型に共通する提
案事項であるので、重複を避けるために最初に述べる。
1
委託理由の合理性について
記録上、当該業務を委託した理由が明示されていなかった。委託理由について第三者
に対する客観的な説明がつくように、記録上、委託理由を明示することが望まれる。
2
契約類型ごとの小括
(一)国(特別法の定めるところにより設立される独立行政法人を含む)又は地方公共団
体(地方独立行政法人を含む)若しくは慈善のため設立された救済施設と契約(政
令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く)をするとき(運用方針
第 3 節(随意契約)関係 1(9)
)
(1)委託料算定根拠の妥当性について
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。また、それらの数値を継続して適用する場合は、
その算定根拠を記録として残しておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用
され続けるおそれがある。標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠とな
る数値に関しては、毎年度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数
値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれ
る。
(2)契約内容変更の妥当性について
委託業務の内容変更を伴わない委託料の変更が、委託業務の内容変更を根拠に行
われていた。年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、契約金額を
変更し、当該支出見込額に見合った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、
その旨を明記するべきものと考える。
(3)再委託の妥当性について
再委託を承認できる要件を満たすか否かの検討が十分になされていなかった。再
委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾することのないよ
う再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで再委託を承認すること
が望まれる。
(二)法律の規定に基づき設立された営利を目的としない法人又は組合若しくはその連合
会の存立を援助するため、これらの設立目的に基づく事業について契約(政令第 167
条の 2 第 1 項第 3 号の規定に該当するものを除く)をするとき(運用方針第 3 節(随
306
意契約)関係 1(11)
)
(1)随意契約によることの妥当性について
(a)当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするよりも金額
的に有利であること及び当該団体の存立を援助する必要性があること、という選
定基準が明示されていないことから、当該選定基準を満たすので当該団体を委託
先として選定したという契約担当者の判断のプロセスが明らかでなかった。委託
先の選定基準を明示することによって、当該選定基準を満たすので当該団体を委
託先として選定したという契約担当者の判断のプロセスを明らかにすることが望
まれる。
(b)契約にあたっては、当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手
方とするよりも金額的に有利であることの検証がなされていなかった。契約にあ
たっては、当該団体を契約の相手方とした方が営利会社を契約の相手方とするよ
りも金額的に有利であることを検証することが望まれる。
(c)当該団体の存立を援助する必要があるか否かの判断が政策目的により行われて
いるが、それだけでは、特定の団体に契約が集中してしまい、他の団体との間で
公平性を欠くおそれがある。当該団体の存立を援助する必要があるか否かの判断
については、政策目的以外に、定量的な判断基準(例えば、当該団体における契
約全体に占める北海道の契約の割合や当該団体の財政状況等)を設けることで、
他の団体との間に公平性を欠かないように配慮することが望まれる。
(d)特定随意契約(施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号又は第 4 号)に該当する契約
が運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を根拠に行われていた。この結果、
当該契約について特定随意契約としての公表が行われていなかった。
(2)委託料算定根拠の妥当性について
(a)経費率については一定の幅があるが、当該経費率を適用した契約担当者の判断
根拠は不明である。当該経費率を適用した契約担当者の判断根拠を明確にしてお
くことが望まれる。
(b)委託先から徴取した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容が不明のため、
積算額の妥当性を事後的に検証することができない。積算額の妥当性を事後的に
検証するため、単価及び数量の明細がわかるように記載した見積書の内訳書の提
出を求めることが望まれる。
(3)契約情報公表の実施状況の妥当性について
契約根拠として施行令第 167 条の 2 第 1 項第 3 号(特定随意契約)を適用すべき
ところ、運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(11)を適用しているため、契約の名
307
称、契約の相手方、契約金額、契約決定年月日のみが公表されているに過ぎず、地
方公共団体の契約方法の原則である機会均等、透明性及び公正性を確保するために
契約情報を公表するという特定随意契約の公表制度の趣旨に鑑みると、重大な瑕疵
がある
特定随意契約に該当する契約については、特定随意契約の公表手続を実施しなけ
ればならない。
(三)庁舎の清掃、寮の賄等を個人(事業者を除く)に委託するとき(運用方針第 3 節(随
意契約)関係 1(17)
)
(1)随意契約によることの妥当性について
選定基準を満たす者が当該個人のみであるという結論に至った契約担当者の判断
のプロセスが明示されていないことから、契約担当者の主観的判断に基づき随意契
約の相手方が選定されたのではないかという疑問が生じる。第三者に対して客観的
な説明がつくように、契約担当者の判断の結果のみでなく、当該判断に至ったプロ
セスを明示することが望まれる。
(2)委託料算定根拠の妥当性について
職種別時間については算出根拠が不明である。標準処理時間等積算の根拠となる
数値に関しては、毎年度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数値
を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれる。
(3)委託業務の事後管理の妥当性について
委託業務終了後は、受託者から実績報告書を徴収し、検査をする必要があるが、
委託業務終了後の管理が行われていなかった。業務日報を作成させ定期的に検査す
ることが望まれる。
(四)委任又は準委任に属する契約のうち、試験研究、訴訟事務等競争により難いものを
委託するとき(運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)
)
(1)随意契約によることの妥当性について
(a)運用方針第 3 節(随意契約)関係 1(18)が予定している契約類型は、
「限られ
た高度の専門的な技術、能力を持つ者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふ
さわしい相手方を選定する必要があり、競争入札では相手方を選定し難い場合」
を意味するものと考える。そして、具体的には、試験研究、訴訟事務以外に調停、
登記、鑑定、評価、設計、医療、診断、仲介斡旋等の特定の業務に限定されるも
のと考える。
当該業務の内容から、当該業務が「限られた高度の専門的な技術、能力を持つ
者の中から信頼性等を考慮し、当該業務にふさわしい相手方を選定する必要があ
り、競争入札では相手方を選定し難い場合」に該当すると判断することはできな
308
い。
当該契約を随意契約とすることを直ちに否定するものではないが、運用方針第
3 節(随意契約)関係 1( 18)が対象とする業務は特定の業務に限定されるべきで、
当該契約については、他の規定による運用を検討すべきものと考える。運用方針
第 3 節(随意契約)関係 1(18)は、特定の業務に限定して運用することが望ま
れる。
(b)委託業者として選定する基準の1つに、全道域をカバーして事業を実施できる
体制を有する法人等であるという基準があるが、契約直後に、全道圏域をカバー
することが難しい状況にあることを理由に、発達障害者地域センターを設置して、
当該発達障害者地域センターと委託契約を締結している。理由は、当初は全道圏
域をカバーして事業を実施できる体制を有するものと判断したが、業務量が急速
に拡大したため、結果的に全道圏域をカバーして事業を実施することができなく
なったからである。
契約にあたって、契約担当者は、委託先の選定基準の全てを満たすという判断
を慎重に行うべきであったものと考える。
(2)委託料算定根拠の妥当性について
標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠となる数値に関しては、本来、
毎年度、その見直しが必要である。また、それらの数値を継続して適用する場合は、
その算定根拠を記録として残しておかないと、算定根拠が曖昧なまま継続して適用
され続けるおそれがある。標準単価、標準作業量、標準処理時間等積算の根拠とな
る数値に関しては、毎年度、その見直しをすることが望まれる。また、それらの数
値を継続して適用する場合は、その算定根拠を記録として残しておくことが望まれ
る。
(3)契約内容変更の妥当性について
(a)委託業務の内容変更を伴わない委託料の変更が、委託業務の内容変更を根拠に
行われていた。年度内に当該年度のより精度の高い支出見込額を積算し、当該支
出見込額に見合った委託料の支出を行うのであれば、委託契約書上、その旨を明
記するべきものと考える。
(b)予定数量の増減などに伴い、契約金額のみを変更する場合にあっては、業務項
目の追加や業務処理方法の変更などの「委託業務の内容変更」とは別な条項を設
けて処理すべきと考える。
(4)再委託の妥当性について
(a)再委託を承認できる要件を満たすか否かの検討が十分になされていなかった。
再委託をする場合、発注者として受託者を選定した際の理由と矛盾することのな
いよう再委託することの効率性、合理性等を十分考慮したうえで再委託を承認す
309
ることが望まれる。
(b)
(再委託先である)他の福祉人材バンクに比較して苫小牧市福祉人材バンクの利
用状況が低いにも関わらず、再委託料は各市社会福祉協議会一律に 6,273,750 円
である。福祉人材バンクの利用状況も勘案したうえで、再委託料を積算すること
が望まれる。
(五)
その他特に知事が必要と認める契約をするとき(運用方針第 3 節(随意契約)関
係 1(19))
(1)委託料算定根拠の妥当性について
委託先から徴取した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容が不明であるため、
積算額の妥当性を事後的に検証することができない。積算額の妥当性を事後的に検
証するため、単価及び数量の明細がわかるように記載した見積書の内訳書の提出を
求めることが望まれる。
(六)
時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあるとき
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)
(1)随意契約によることの妥当性について
当該契約における、在版利用の場合の林相図の設計金額(=時価と比較対象とな
る価格)と新規作成の場合の林相図の設計金額(=時価)は、市場調査によらない
で契約担当者が自ら積算したものであり、客観性のある時価とはいえない。
このため、在版利用の場合の林相図の設計金額(=時価と比較対象となる価格)
と新規作成の場合の林相図の設計金額(時価)とを比較して、時価と比して著しく
有利であるという判断は客観性が乏しく適切ではない。
したがって、在版利用の場合の林相図の設計金額(=時価と比較対象となる価格)
と新規作成の場合の林相図の設計金額(=時価)とに客観性がないにもかかわらず、
「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあると
き」
(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)を契約根拠とする随意契約を締結するこ
とは適切ではない。
「時価に比して著しく有利な価格で契約を締結することができる見込みのあると
き。」(運用方針第 3 節(随意契約)関係 4)を契約根拠とする場合、時価に比して
著しく有利な価格であるか否かの判断については、客観性を付与するため、市場調
査、第三者の鑑定評価及び業者からの見積徴収等に基づくことが望まれる。
(2)委託料算定根拠の妥当性について
委託先から入手した見積書は見積金額のみの記載で具体的内容は不明であるため、
積算額の妥当性を事後的に検証することができない。積算額の妥当性を事後的に検
証するため、単価及び数量の明細がわかるように記載した見積書の内訳書の提出を
310
求めることが望まれる。
(七) 「契約の目的物が代替性のないものであるとき」
(運用方針第 3 節(随意契約)関
係 1 の(2)
)を適用していたが、平成 17 年度から指名競争入札に移行したケース
随意契約から競争入札への移行したケースにおいては、随意契約であった場合と
比較して契約金額が下がっている。品質・安全を犠牲とすることなく競争性を確保
する努力を継続することが望まれる。
3
関与団体との随意契約について
本章において道の関与団体を相手方とする随意契約については、いずれも運用方針 18
号を根拠としているが、運用方針 18 号の規定の仕方については本章の総論にて指摘した
とおりである。
ところで、関与団体を相手方とする契約は第 2 章、第 3 章にも散見するので、関与団
体との契約に関する留意点を指摘しておく。
ここで、関与団体とは、次のいずれかに該当する団体をいう。
① 道が資本金等(基本財産(道が出捐する基金を含む。)または資本金をいう。)に出
資または出捐している団体。
② 道の補助金等(補助金、負担金(指定管理業務に係る負担金を除く。)、交付金及び
委託料(随意契約による委託契約に係るものに限る。)をいう。)の総額が団体の歳
出規模の2分の1以上の団体。
③ 道職員を派遣している団体。
④ 職員を対象とする福利厚生事業を行う団体。
(なお、道は、道立施設の指定管理業務を行う団体のうち、出資または出捐のみで人的・
財政的関与のない団体は、指定管理業務を行う間に限り、非関与団体として扱ってい
る。)
道では、関与団体に関しては、平成 18 年 2 月に「関与団体見直し計画」を策定し、平
成 17 年度を起点に平成 21 年度までを同計画の推進期間としているところである。
同計画の「計画策定の趣旨」にあるように、今日の道財政がこれまで経験したことの
ない未曾有の危機的な状況にある中で、多様な道民サービスや社会経済情勢の変化に的
確に対応していくためには、これまで以上にスピード感を持って設立意義など薄れた団
体の統廃合、団体への財政的・人的関与の縮減による団体の一層の自立化に向けて、更
に厳しい見直しの推進が必要な状況となっている。
上記趣旨に基づき、同計画には、1.団体の統廃合等、2.補助金等の縮減、3.派
遣職員の引揚げ、4.出資金の引揚げ等、5.委託の見直し、という「見直し項目」が
定められている。
5.委託の見直しでは、行政サービスの担い手も多様化してきている中で、「官から
民へ」という流れを加速する観点から、団体への委託業務についても競争性の導入を検
討していくという考え方に基づき、委託事業については、関連法令に基づき競争入札に
より委託先を決定するものであるが、競争の困難なものに限り随意契約で委託先を決定
311
できることになっているため、委託事業の内容を精査し競争性の導入を検討するととも
に、人件費の積算などについては、業務の複雑さや専門性の度合い、業務量などを考慮
しながら、類似の民間事業者の給与体系等を踏まえた算定方法について検討することが
明記されている。
関与団体との委託契約に関しては、この「関与団体見直し計画」を踏まえると一般の
随意契約以上に厳格な運用が必要なものであるが、道の関与団体に対する業務の委託に
ついては、ヒヤリングによると、平成16年度では金額ベースで 99.9%が随意契約によ
る発注となっている状況にある。現在の北海道の施策遂行上の見地からも、その業務の
特殊性・専門性に応じて、競争が確保できる発注方式を早急に検討すべきである。
また、それによりがたい場合については、その理由等について公開していく必要があ
るということは言うまでもない。
ちなみに、国においても公益法人等との契約に関し平成 18 年 8 月に行われた「公共
調達の適正化に関する関係省庁連絡会議」において、「公益法人等との随意契約の適正
化について」が取りまとめられ、競争性のない随意契約の見直しが行われ、競争入札等
や企画競争・公募への移行を進めているところである。
4
最後に
「その他の随意契約」についても、随意契約は例外であるにも関わらず安易に運用さ
れているという印象を得た。随意契約は例外であるという意識を強く持つとともに、運
用方針第 3 節(随意契約)関係の各規定の制度趣旨を逸脱しないように、その厳格な運
用が望まれる。
312
第5章
一
北海道における随意契約の公表制度について
はじめに
開かれた行政を実現するため、北海道の活動に関する情報は、北海道民に広く公表さ
れなければならないことは言うまでもない。
日本国憲法の大原則である国民主権や知る権利の保障の議論を持ち出すまでもなく、
行政情報の開示は、民主主義国家にとって欠くべからざるものである。国民・住民の積
極的かつ具体的な行政の監視と行政への参加なくしては、公正、透明な政治、行政を確
保することはできず、行政情報の開示はその基盤となるものである。また、今日は、こ
れまでになく行政の透明性が強く求められている時代であると言える。
特に、随意契約に関する情報は、競争というフィルターを通さずに契約締結に至るも
のであるから、恣意に流れる危険を内包しており、道民に批判の機会を与え、道民によ
る監視を図るという観点から、その情報を積極的に公表することには重要な意義が認め
られる。
そこで、本監査では、北海道における随意契約の公表制度の現状を調査し、また、国
や他の地方公共団体における公表の実情とも比較したうえで、その問題点を整理し、改
善提案を行うこととした。
二
北海道における随意契約の公表制度の状況
1
随意契約の「公表」に関する法令について
施行令では、一般競争入札により契約締結を行う場合、施行令 167 条の 6 第 1 項によ
り、
「入札に参加する者に必要な資格、入札の場所及び日時、その他入札について必要な
事項」を公告することが義務付けられている。ちなみに、公告とは、
「国、地方公共団体
などの公的機関が特定の事項を広く、
利害関係者や一般のものに知らせること」であり、
本章においては、公表と同義と解して差し支えない。
これに対し、随意契約(指名競争入札も同じであるが)に関しては、施行令上は、公
告が義務付けられていない。
随意契約に関し、法令上、公表が義務付けられるのは以下の 2 つである。
(一)
「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」による公表
上記「適正化法」
(便宜上、略称で呼ぶ)は、公共工事の入札等に関し談合等の不祥
事の発生が相次ぎ、国民の信頼を確保する必要があることから、平成 12 年 8 月の3党
合意に基づき定められ、平成 13 年 4 月より施行された。
同法では、公共工事に関し入札、契約の過程の透明性を確保し、国民、住民の監視
可能性を高めるため、同法第二章「情報の公表」第 7 条第 8 条において、入札及び随
意契約につき、発注見直しに関する事項及び入札、契約の過程に関する事項並びに内
容に関する事項の公表を定めている。
適正化法の施行令である「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施
313
行令」
(便宜上、
「適正化令」と呼ぶ)が定められている。適正化令により、公共工事
の随意契約については、閲覧所またはインターネットを利用し、契約の相手方、工事
名、工期、契約額、相手方選定の理由の公表を義務付けている。
北海道ではこれらの法令を受け、後述のとおり、通達により様式等を定めている。
(二)
「特例政令」による公表
第1章、第 3 章で報告したとおり、特例政令に該当する契約については、特例政令
第 11 条により、入札に限らず、随意契約によった場合も公示を義務付けている。
北海道では「物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める規則」
(平成 7 年 12 月
28
日北海道規則第 92 号)を定め、北海道公報に必要事項を公示している。
2
北海道の財務規則、通達による随意契約の公表制度
(一)
「特定随意契約」に関する公表
特定随意契約に関しては、施行令においては、特に公表を義務付ける規定はないが、
第 3 章でも一部報告したとおり、施行令第 16 条の 2、1 項 3 号、4 号の制定にあたっ
て、総務省の通知(平成 16 年 11 月 10 日総行行第 143 号)により特定随意契約の公表
に関する規則を設ける必要がある旨、都道府県知事宛に通知されていた。
これを受け財務規則第 162 条の 3 により、発注見直し及び契約締結前後の公表の規
則が定められている。
(二)上記以外の公表
その他、全庁的に定められた公表としては、平成 10 年 3 月 16 日出納局長通達であ
る「入札結果等の公表の取扱について」による公表がある。
出納局からのヒヤリングによれば、北海道が平成 6 年度から行われていた公共工事
等に係る公表通達に準じて、平成 10 年度より公共工事以外の入札結果等の公表を行う
ことにしたものである。
(三)公表に関する根拠規定の整理
上記の(一)(1)(2)、(二)(1)(2)の4つの公表制度に関する根拠法令、対象契約を整
理したものが次頁の一覧表である。
以下では、同一覧表の順に沿って、実例を示しつつ北海道の公表方式を述べていく。
314
法 令 等 名
〔公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に基づく公
表〕
(表は出納局作成)
対象とする契約等
・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律
(平成12年11月27日法律第127号)
次に掲げるもの
(1) 国、特殊法人等又は地方公共団体が発注する建設工事
(以下「工事」という。
)で、予定価格が250万円を超える
もの
・工事等に係る発注見通しに関する事項の公表について
(2) 設計、測量、地質調査その他の工事に係る委託業務で、
(平成13年3月29日建情第2326号農政部長、水産林務
予定価格が100万円を超えるもの。
部長、建設部長、出納局長連名通達)
・公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律施行令
(平成13年2月15日政令第34号)
・工事等に係る入札及び契約の状況等に関する事項の公表について
(平成13年3月29日建情第2328号農政部長、水産林務
部長、建設部長、出納局長連名通達)
〔特定調達契約に関する公表〕
・政府調達に関する協定(署名1994年4月15日)
次の区分に応じた額以上の額であるもの
(1) 物品等の調達契約
3,200万円
・地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政 (2) 特定役務のうち建設工事の調達契 約24億1,000万円
令
(3) 特定役務のうち建築のためのサービス、エンジニアリ
(平成7年政令第372号)
ング・サービスその他の技術的サービスの調達契約
2億4,000万円
・物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める規則
(4) 特定役務のうち上記以外の調達契約
3,200万円
(平成7年12月28日北海道規則第92号)
※平成18年度及び平成19年度の両年度に締結される調達契
・物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める要領の制定につい
約について適用。総務省告示(平成18年総務省告示第40
て
(平成8年3月6日付け局総第689号出納局長通達)
号)において定めている。
〔特定随意契約に関する公表〕
・地方自治法施行令第167条の2第1項第3号及び第4号
① 身体障害者更生施設、身体障害者授産施設、精神障害者
授産施
設、精神障害者福祉工場、知的障害更生施設、知的障害者
授産施設又は小規模作業所において製作された物品を普
通地方公共団体の規則で定める手続により買い入れる契
約
② シルバー人材センター連合又はシルバー人材センター
から普通地方公共団体の規則で定める手続により役務の
提供を受ける契約
③ 母子福祉団体が行う事業で、その事業に使用される者
が主として配偶者のない女子で現に児童を扶養している
もの及び寡婦であるものに係る役務の提供を、当該母子
福祉団体から普通地方公共団体の規則で定める手続によ
り受ける契約
④ 新商品の生産により新たな事業分野の開拓を図る者と
して普通地方公共団体の長の認定を受けた者が新商品と
して生産する物品を、普通地方公共団体の規則で定める
手続により買い入れる契約
・北海道財務規則第162条の3
・特定随意契約に係る事務取扱要領の制定について
(平成17年4月1日付け局総第2855号出納局長通達)
〔上記以外の公表〕
・入札結果等の公表の取扱いについて
(平成10年3月16日付け局総第788号出納局長通達)
売買、貸借、請負その他の契約で、財務規則第162条の2
の規定による随意契約及び財務規則運用方針第3節関係1の(1)、 (4)
から(8)、(14)、(15)、(17)又は(18)による随意契約を除い
たもの。
315
3
北海道における公表方式について
(一)公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律に基づく公表
上記適正化法の公共工事に関する契約の公表については、通達により下記の所定様
式によって行われ、一般競争入札、指名競争入札、総合評価入札、随意契約のそれぞ
れの種別に対応し必要事項を記載することとなっている。
当該様式に従い記入されたものを各入札担当の部署、出先機関において、閲覧場所
に備え置くこととしている。
(抜粋)
○
工事等に係る入札及 び契約の状況等に 関する事項の公 表について
(平成 13 年 3 月 2 9 日建情第 2328 号農政部長、
水産林務部長、建設部長、出納局長連名通達)
記
2
公表事項及び時期
(2) 入札及び契約の状況関係
ウ 随意契約の場合(政令第 167 条の 2 第 1 項第 8 号の規定による場合 を除く)
契約締結後、 速やかに公表する事項
a 契約の相手方の商号又は名称及び住所
b 工事等の着手の時期及び完成(完了)の時期
c 工事等の概要
d 契約金額
e 予定価格
f 契約の相手方を選定した理由
3 公表方法
(2) 入札及び契約の状況関係
閲覧所において、別記様式を標準として閲覧に供するものとする。
別記様式
入札及び契約状況表
番
号
工事(委託業務)名
入札公告 指名通知日
平成 年 月 日
予 定 価 格
入札書比較価格
円
入札参加資格者名
(指名業者名)
場所
入札執行日時 平成 年 月 日 時 分
一般競争入札
最低制限価格 低入札価格調査基準価格
円
円
円
入札金額(単位:円)
摘 要
第1回
第2回
第3回
参加資格要件
種別
指名理由
随契理由
執行理由
総合評価
競争入札 落札基準
落札理由
低入札 落札理由
価格調査 調査結
制 度 果概
要
資格不適格業者
(非指名業者)名
理 由
契約金額
期間
場 所 種別
∼
契約変更 理 由
内 容
契約者名
住所
契約金額
期間
概 要
∼
概 要
落札価格は、上記の入札金額に消費税及び地方消費税相当額を加算した金額となります。
注 1 入札金額は、必要に応じ「無効」、「辞退」等を記載すること。 2 摘要欄には、「落札 落札率○○.○%」、「不落随契」等の記載をすること。 3 落札率は、小数点以下第2位を四捨五
入して記載すること。 4 不要な欄等については、抹消して使用すること。 5 この様式は、工事等の内容に応じ、適宜変更して使用すること。
316
(二)特例政令に該当する契約に関する公表
(1)特例政令に該当する契約は、前述のとおり、特例政令第 11 条により随意契約も
含めて公示することが義務づけられており、北海道では規則により、契約決定の翌
日から 72 日以内に、北海道公報に掲載することを義務づけている。
北海道の規則の該当条文は以下のとおりであり、契約内容、契約日、契約金額、
相手方名、随意契約によった理由等が記載される。
(抜粋)
そ
○
物品等又は特定役務の調達手続きの特例を定める規則(平成 7 年 12 月 26 日
北海道規則第 92 号)
(落札者の公示)
第11条
契約担当者等は、特例政令第 11 条の規定による公示ついては、落札者又 は随意契約の
相手方を決定した日の翌日から起算して 72 日以内に、北海道公報により しなければならない。
2
前項の公示においては、次に掲げる次項を記載するものとする。
(1)
落札又は随意契約に係る物品等又は特定役務の名称及び数量
(2)
特定調達契約に関する事務を担当する組織の名称及び所在地
(3)
落札者又は随意契約の相手方を決定した日
(4)
落札者又は随意契約の相手方の氏名及び住所
(5)
落札金額又は随意契約にかかる契約金額
(6)
契約の相手方を決定した手続
(7)
一般競争入札又は指名競争入札によることとした場合には、第 4 条第 1 項の規定に
より読み替えて適用される財務規則第 144 条の規定による公告又は第 5 条第 1 項の公
示を行った日
(8)
随意契約による場合にはその理由
(9)
その他必要な事項
317
(2)また、北海道公報の記載内容は、公報発行後一年間は、北海道のホームページに
掲載されており、特例政令に該当する随意契約の契約内容、契約日、契約の金額、
相手方、契約理由等はインターネットによっても閲覧可能となっている。
なお、随意契約によった理由については、公示の一例のとおり、特例政令の適用
条文が示されるのみであり、具体的な理由はこれによっては判断不能である。
北海道広報における公表の特例政令の随意契約の公示例を掲載する。
平成17年4月22日付北海道公報第1666号47頁
北海道告示第327号
次のとおり随意契約の相手方を決定した。
平成17年4月22日
北海道知事
1
橋
はるみ
随意契約に係る特定役務の名称及び数量
防災対策支援システム開発業務
2
高
一式
随意契約の相手方を決定した日
平成17年4月1日
3
4
随意契約の相手方の氏名及び住所
(1)
氏
名
(略)
(2)
住
所
(略)
随意契約に係る契約金額
40,950,000円
5
契約の相手方を決定した手続
随意契約
6
随意契約によった理由
地方公共団体の物品等又は特定役務の調達手続の特例を定める政令(平成7
年政令第372号)第10条第1項第1号の規定による。
7
契約に関する事務を担当する組織の名称及び所在地
(1)
名
称
北海道総務部危機対策室防災消防課
(2)
住
所
札幌市中央区北3条西6丁目
318
(三)特定随意契約に関する公表
施行令第 3 号、4 号の特定随意契約については、北海道では、財務規則 162 条の 3
により、契約の発注見通し、契約の内容、契約の締結状況を公表することとし、また、
事務取扱要領をもって次の 2 つの様式を定めている(様式は次頁のとおり)
。
「契約の内容」と「契約の締結状況」に関する書式は、一つで両方を兼ねている。
公表方法は、契約担当者の定めた場所にて閲覧に供するものとされている。
また、本庁では、平成 17 年度に特定随意契約の公表実例はない。
特定随意契約に係る事務 取扱要領(抜粋)
第3
1
契約の発注の見通し に関する事項の公 表
(2)
公表事項
別記様式 1 に掲げる事項に ついて、公表する ものとする。
(3) 公表方法
公表事項を記載した別記様式 1 を契約担当者等が定めた場所において、閲覧に供することに
より公表するものとする。
(4)
公表期間
当該公表の日から、当該年度の 3 月 31 日まで、公表するものとする。
2
契約の内容に関する事項の公表
財務規則第 162 条の 3 第 2 項の規定により契約の内容に関する事項を公表するときは、次によ
り行うものとする。
(2)
公表事項
別記様式 2 の上欄に掲げる事項について、公表するものとする。
(4)
公表期間
当該公表の日から、3 の(4)の規定による当該契約の締結状況に係る事項の公表期間が終了す
る日まで、公表するものとする。ただし、公表の期間が経過した後、1 年間は、閲覧の要求に応
ずるものとする。
3
契約の締結状況に関する事項の公表
(2) 公表事項
別記様式 2 の下欄に掲げる事項について、公表するものとする。
(4)
公表期間
当該公表の日から、3 月間とする。ただし、公表の期間が経過した後、1 年間は、閲覧の要
求に応ずるものとする。
319
別記様式1
○○年度随意契約による 発注予定の契約情 報
年
月
日現在
地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 167 条の2第1項第○号の規定に基づき随意契約の方法によ
り発注を行う予定の契約に係る情報を次のとおり公表します。
なお、内容については、公表時における概要であり、今後変更となる場合があります。
実施機関名
当初
買 い 入 れ る 物 品 又は 提 供 を 受 け
る役務の名称及び数量
変更
当初
契約を締結する時期
変更
当初
契約の相手方の選定方法
変更
当初
その他
変更
別記様式2
随意契約により締結する契約の内容等
年
月
日
地方自治法施行令(昭和 22 年政令第 16 号)第 167 条の2第1項第○号の規定に基づき随意契約の方法
により締結する契約の内容を次のとおり公表します。
実施機関名
買い入れる物品又は提供を受
ける役務の名称及び数量
契約を締結する時期
契約の相手方の選定方法
契約の相手方の選定基準
応募する者に必要な資格
応募の方法及び期限
その他
上記(○年○月○日付け記号番号により公告した)契約の締結状況を次のとおり公表します。
年
月
契約を締結した年月日
契約の相手方の氏名及び住所
契約金額
契約の相手方を選定した理由
320
日
(四)上記以外の公表
(1)上記(一)から(三)以外の一般の随意契約の公表は、平成 10 年 3 月 16 日付、出納
局長通知によって、以下の要領にて行うこととなっている。
委託の随意契約の大部分は(一)から(三)以外のものであり、結局多くの委託契約の
公表はこの方法によって行われることとなる。
(2)公表の対象契約については、前記出納局通知 1 項(2)のとおり、一定の範囲内で公
表の例外を定めている。
運用方針(1)については秘密性があるため、同(8)は外国での契約であるため、ま
た、同(4)、(5)、(6)、(14)、(15)については収入原因行為であることを理由に除外
している。
同(17)の個人の清掃、
賄い業務については給与的性格があること、
同(18)の試験、
研究、訴訟事務等については、相手方との信頼関係によること等が除外した理由と
の説明であるが、何故、各理由が公表の対象とならないのか必ずしも判然としない
面がある。
(3)通知 4 項のとおり、公表の場所については、担当部課の定めた場所にて閲覧に供
するとされている。
本庁各部では、閲覧室を設けている部はなく、結局、別紙第 2 号様式を各担当課
でファイリングの上保管し、公開閲覧の要求があればこれに応じる態勢を取ってい
る。
また、実際に道庁本庁舎内の各課の窓口まで赴き、閲覧を希望する道民は極く少
数であり、有効に活用されているとは言い難い。
(4)同様式についての通知の抜粋と公表様式記載例は次頁以下のとおりである。
321
(抜粋)
○
入札結果等の公表の取扱いについて
平成 10 年 3 月 16 日
局総第788号
各部長、各種委員会事務局長、議会事
務局長、各部局長、各地方部局長あて
出納局長
1
公表の対象
公表の対象は、売買、貸借、請負その他の契約とする。ただし、次に掲げる場合において、随意
契約によることとしたものについては、この限りでない。
(1) 予定価格が北海道財務規則(昭和 45 年北海道規則第 30 号。以下「財務規則」という。
)第
162 条の 2 に定める随意契約によることができる金額である場合
(2) 北海道財務規則の運用方針(昭和 45 年 4 月 1 日付け局総第 230 号総務部長、副出納長通達
「北海道財務規則の運用について(依命通達)」
)第 3 節(随意契約)関係の1の(1)、(4)∼
(8)まで、(14)、(15)、(17)又は(18)の規定に該当する場合
3
公表の時期及び方法
(1) 略
(2)
略
(3) 随意契約によることとした場合(施行令第 167 条の 2 第 1 項第 8 号の規定による場合は除く。
)
契約締結後、速やかに 2 の(3)に掲げる事項を別記第 2 号様式に記載し、公表するものとす
る。
4
公表の場所
契約を締結する部長等、部局長又は地方部局長が定めた場所において閲覧に供するものとする。
5
公表の期間
公表の期間は、当該公表の日から 3 月間とする。ただし、公表の期間が経過した後、1 年間は、閲
覧の要求に応ずるものとする。
322
別記第 2 号様式
随
契約の名称
意
契
約
結
果
書
アートツーリズム調査検討事業実施業務
契約 の 相 手側
株式会社○○○○○
契 約 金 額
12,684,000円
契約締結年月日
平成17年6月2日
323
三
国及び他府県のインターネット利用による公表状況
1
国においては、平成 16 年に起きた社会保険庁の金銭登録等の調達に関する収賄事件
を契機に、随意契約の透明化の必要性が認識され、平成 17 年 2 月 25 日付、財務省主計
局長の通達により、ホームページ掲載により随意契約を公表することとしている(ただ
し、
少額随意契約、国の行為を秘密にする必要がある場合は除外している)
。
参考までに財務省通達の該当箇所を以下に掲載する。
財計第 407 号
平成 17 年 2 月 25 日
各省各庁会計課長等
殿
財務省主計局長
随意契約に関する事務の 取扱い等について
(2) 公表の内容
契約担当官等は、上記(2)の 公表において、公表 対象随意契約に関 し、次の各号に掲げる 事項を記載するも
のとする。
① 随意契約に係る物品 等又は特定役務の 名称及び数量
② 契約担当官等の氏名 並びにその所属す る部局の名称及 び所在地
③ 随意契約を締結した 日
④ 随意契約の相手方の 氏名及び住所
⑤ 随意契約に係る契約 金額
⑥ 随意契約によること とした理由
⑦ その他必要な事項
なお、会計法第 29 条の 3 第 4 項の規定による随意契約に係る随意契約に よることした理 由については、
単に根拠条文を引用する のみではなく、具 体的な理由を簡 潔に記載するもの とする。
公表は別紙 1 又は別紙 2 の様式によることとする。
2
上記国の公表状況については、平成 18 年 8 月 25 日付、総務省からの各都道府県総務
部長宛通知により、各都道府県に周知されている。
執行第 129 号
平成 18 年 8 月 25 日
各都道府県総務部長
殿
総務省自治行政局行政課 長
公共調達の適正化につい て
標記の件については、
「公共調 達の適正化に向 けた取り組みにつ いて(通知)」
(平成 18 年 3 月 13 日付け総
行行第 27 号、国総入企第 26 号)及び「随意契約の適正 化等について」
( 平成 18 年 6 月 28 日総行行第 96 号)
において、国 における 取組をお 知らせし たところ ですが、 今般、国に おける入 札及び契 約に係る 取扱い及び
情報の公表等 について 、現在に までに取 り組んで きた措置 等も含め、 別添のと おり定め られまし たので、貴
都道府県における適正化 の更なる推進に向 けた取組の参考 に資するため送付 いたします。
また、貴都道府県内の市 町村に対しても、 別添資料につい て周知方よろしく お願いいたします 。
3
国の省庁のみでなく他府県においても、外部監査人がインターネットで検索した限り
324
では、少なくとも京都府において、インターネットを利用し、国と同じく随意契約選択
の理由を含め、随意契約に関する公表を行っている。
次頁以下に、各省庁、京都府等の公表実例を一部掲載する(ただし、住所、個人名等
は割愛している)。
【ホームページ記載例】
<法務本省>
調達件名及び数量
オンライン登記申
請システムの機能
改善等のための登
記情報システム仕
様変更一式
契 約担当 官等の
氏 名並び にその
所 属する 部局の
名称及び所在地
支 出請負 行為担
当官
法 務省大 臣官房
会計課長○○○
契 約 を
締 結 し
た日
契約の相 手
方の氏名 及
び住所
契約金額(円) 随意契約によることとした理由
平 成 17
年 12 月
22 日
○○社
85,020,579
契 約担当 官等の
氏 名並び にその
所 属する 部局の
名称及び所在地
支 出負担 行為担
当官
消 防庁総 務課長
○○○
契 約 を
締 結 し
た日
契約の相 手
方の氏名 及
び住所
契約金額(円) 随意契約によることとした理由
平 成 18
年 6 月 20
日
○○協会
理事長○ ○
○
31,421,250
契約業者は、本システムの開発
及び運用管理に携わった業者で
あり、他社が作業を行った場合
には、現在稼動中のシステムに
支障が生じることになるため。
<消防庁>
物品又は役務の名
称及び数量
「代表的な構造を
有する浮き屋根に
係る合理的な改修
方法の提案」に関
する役務
325
本事業は、①平成 17 年度から 2
ヶ年度にわたり調査検討するも
のであり、検討途中で委託先を
変更することは調査検討の遂行
に著しい支障を来たし、目的の
達成が不可能となること、②地
震対策として屋外貯蔵タンクの
浮き屋根の改修が必要とされ、
また、その改修期限が設けられ
ており、浮き屋根の合理的な改
修方法を早急にとりまとめるこ
とが求められていること、から
当該調査検討が終了する平成 18
年度末まで左記契約の相手方に
継続して契約を行うことが、事
業を適切に遂行し必要な成果を
得るために必要不可欠であるた
め。
(会計法第 29 条の 3 第 4 項)
<北海道総合通信局>
物品又は役務の名
称及び数量
契 約担当 官等の
氏 名並び にその
所 属する 部局の
名称及び所在地
支 出負担 行為担
当官
北 海道総 合通信
局長○○○
契 約 を
締 結 し
た日
契約の相 手
方の氏名 及
び住所
契約金額(円) 随意契約によることとした理由
平 成 18
年4月3
日
○○社
3,749,000
短波監視施設を構成している機
器類及びこれらを制御運用する
ソフトウェア類は、納入業者で
ある○○社により開発製造され
た極めて特殊なシステムであ
り、保守点検においてもシステ
ム全体を把握している○○社以
外に対応することが不可能であ
ることから同社と随意契約す
る。
支 出負担 行為担
当官
北 海道総 合通信
局長○○○
平 成 18
年4月3
日
○○社
2,570,400
当初一般競争入札を実施したも
ので、同機器を継続して借り入
れるものであるため、○○社と
随意契約する。
契約内容
契 約事務 を担当
する組織の名称
契 約 を
締 結 し
た日
契約の相 手
方の氏名 及
び住所
契約金額(円) 随意契約によることとした理由
平 成 18 年 度
ラ ジ オ 公 報 番組
「 KyotoPrefectur
e Public Line」の
製作及び放送業務
の委託
広報課
平 成 18
年4月1
日
○○社
17,010,000
平成 18 年度短波
監視施設の保守点
検業務請負契約
電子複写機賃貸借
契約
<京都府>
府内全域を網羅する電波エリア
を持ち、府内向けの情報提供に
重点を置く FM 放送局は、府内で
は○○社だけであること、又、
制作業務については生放送でタ
イムリーな情報を提供する番組
であり、放送業務と一体化して
いることから、契約の性質又は
目的が競争入札に適さないた
め。
(施行令第 167 条の 2 第 1 項
第 2 号該当)
なお、特定随意契約に関する公表については、一部の他府県や、地方都市(例えば本
道内では旭川市など)もホームページによる公表制度を取り入れている(本道の状況は、
本章二の3の(三)のとおりである)
。
326
四
北海道における公表制度の問題点と改善提案
1
上記二にて見たとおり、北海道において全庁的に統一的な規定に基づいて行われてい
る公表制度は、①「公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律」による公表、
②特例政令に該当する契約に関する公表、③特定随意契約に関する公表、④平成 10 年 3
月 16 日付出納局長通知に基づく公表の 4 制度である。
このうち、①から③は、これら公表制度の対象となる契約類型が限定されており、そ
の意味では、北海道における随意契約に関する一般的な公表制度は④の出納局通知に基
づく公表と言うことができる。
2
ところで、今日における行政情報の開示は、住民の請求に基づいて行う「情報公開」
に留まるものではなく、行政自らが積極的にその保有する情報を「公表」することが求
められていると言える。
ここで「公表」の定義を確認するに、新自治用語辞典(新自治用語編纂会編)による
と、「公表」とは、
「国又は地方公共団体が一般国民若しくは一定の地域の住民又は不特定多数の人々が
知ることのできるように、一定の事項を発表することをいう。公示、告示のように
決まった発表の形式はなく、官報への掲載、新聞への掲載、掲示場における掲示、
刊行物による発表等、一般の人々に周知できる方法」
とされている。
そして、今日の行政に求められている公正性、透明性を踏まえて、かかる定義どおり
の公表を行っていると言えるためには、単に住民が「見るための努力をすれば見ること
のできる状況」にあればいいというものではなく、「いつでも簡単に見ることのできる
状況」になくてはならない。公表制度の充実の鍵は、いかにより多くの道民に対し、よ
り簡易かつ速やかな方法で随意契約の情報を提供できるかという点に尽きる。
かかる観点からすると、北海道の公表状況は、十分に機能しているとは言い難い。す
なわち、公共工事に関する随意契約や特例政令に該当する契約を除いた大多数の随意契
約については、二3(三)(四)で述べたとおり、各担当課で必要に応じ閲覧提供する
に留まっている。
つまり、道民が当該内容を知るためには、わざわざ、本庁各部、或いは支庁、出先機
関へ赴き、特に閲覧室を設けていない場合は、各課の部屋へ入り職員に対し公表希望の
要件を告げ、ようやく実現するという仕組みとなっているのである。
このような「公表」制度は、情報公開制度としてはともかくとして、随意契約の「公
表」という観点からは不十分であると言わざるを得ない。
3
公表方式の点もさることながら、実際に公表されている情報内容が十分なものでなけ
れば、公表制度の趣旨は没却されてしまう。随意契約に関して言えば、なぜ、当該契約
が随意契約によったのかとの点につき、単に根拠法令を示すだけでなく、その実質的な
理由の詳細が示されなければならない。理由の詳細が具体的に示されなければ、そもそ
も、道民が、随意契約によったことの当否を判断することはできず、住民による行政監
327
視という公表制度の趣旨が全うされないこととなってしまう。
この点、北海道における随意契約に関する公表内容は、一般的な公表制度である出
納局通知に基づく公表では、単に契約の名称、契約の相手方、契約金額、契約締結年
月日という 4 情報が示されているのみである。これではただそのような随意契約を締
結した事実があったことしかわからず、なぜ、随意契約によることとしたのかその判
断理由が全く分からない。他の公表制度においても、随意契約を行った根拠法令が示
される程度であり、随意契約によった理由の詳細が示される体裁になっていない。
これに対し、上記三で見たとおり、国や京都府等の例では、随意契約によることと
した理由が相当程度詳細に公表されている。少なくとも、この程度の情報が公表され
なければ、実質的な公表と言えない。
4
以上を踏まえて、改善提案を述べる。
(一)まず、第一に、監査人としては、ホームページ掲載を利用した公表を行うべきと考
える。
近年のインターネットの普及が著しいことを考えると、既に国の各省庁で行ってい
るように、ホームページ等の利用による公表が、最少の費用で最大の効果が上がるも
のであり、これに向けて取り組む時期にきている。
出納局が、二3(四)記載の通知により公表制度設けた時期は平成 10 年であるが、
近年のインターネット、パソコンの普及率はめざましいものがあり、今後さらに広が
りを見せることが予想されるのであるから、多数の住民に情報を提供し透明性を高め
る方策としては、ホームページ上の公表は正に時代に即したものである。
北海道においても、かかる情勢も踏まえ、前述のようにホームページによる公表に
早急に取り組むべきである。
(二)第二に公表内容を充実させる必要があると考える。特に、随意契約によった(入札
によらなかった)理由も一般道民が理解できるように、相当程度、詳細かつ具体的に
記載する必要がある。この点の公表がなされてはじめて、随意契約によったことの妥
当性について、道民に批判の機会を与えることとなり、これなくしては、随意契約を
公表する実質的意味が全うされない。
328
Ⅲ
包括外部監査の結果に添えて提出する意見
本外部監査の結果に添えて次のとおり意見を提出する。
1
随意契約の厳格な運用について
地方公共団体の契約は、入札が原則であることを再確認するとともに、随意契約、特
に特命随契の選択は、より厳格な判断の下になされるような仕組み作りに取り組む必要
がある。
今日ほど行政の契約手続の透明性が求められている時代はなく、国の各府省において
も平成 18 年 6 月に随意契約の見直し計画を策定し、
随意契約が真に止むを得ないものを
除き、一般競争入札等へ移行することとしている。
北海道においても、これまで以上に道民の目線に立って真にやむを得ないものに限り
随意契約の選択が許されるという視点をもつべきである。
第 2 章ないし第 4 章の各小括においてに報告したように、上記視点に立った場合、随
意契約選択するに至った検討が必ずしも十分であることの確認できない例が多々ある。
以下の具体的方策を検討する等随意契約選択の運用をより厳格にし、これを随意契約、
特に特命随契によった契約については可能な限り入札手続を取るように取り組む努力を
する必要がある。
2
随意契約の判断過程の記録化及びその程度について
入札不可能ないしは困難な事由があるのであれば、記録は随意契約を選択するまでの
判断が適切であることを明確に検証できるように、当該事由を具体的に明記するととも
に、その判断の基礎となる事実及び事実調査の過程、判断の過程等を関連資料と共に記
録化することを確認する必要がある。
3
前年度と同じ相手方と随意契約する場合の留意点
前年度と同じ相手方と随意契約を行う際には、連続して入札手続を選択しないのであ
るから、道民に対し、より詳細な説明責任を負うとの認識を持つことが重要である。
前年度の判断を単に踏襲することなく、新たに当該年度の視点に立って、相手方を選
定するに至るまでの調査・検討を十分に行い、当該年度の選択過程を記録に留め、安易
な判断で随意契約が継続化しないような運用を確立する必要がある。
4
総合評価入札制度への移行について
これまでプロポーザル方式により随意契約を選択したようなケースについては、入札
原則との視点に立ち返り、総合評価入札方式による入札手続によることはできないのか
を丹念に検討し、可能な限り総合評価入札を選択するようにすべきである。
また、総合評価入札を行えない場合はその理由を記録化し、今後の検討課題を明らか
にしておく必要がある。
329
5
プロポーザル方式について
総合評価入札手続が困難な事情があり、プロポーザル方式によらざるを得ない場合で
あっても、公募型を原則とするなど可能な限り手続の公正さ、透明性等に配慮して行う
べきである。
また、事業内容によっては、プロポーザル方式であっても、現在の道のおかれた財政
状況を念頭に置き、価格競争要素を取り入れる余地のものがあれば積極的に取り入れ、
最大の成果を求めつつ少しでもコスト削減の余地がないかを検討した上で、手続を進め
る必要がある。
その他、第 2 章小括で報告したとおり、審査手続、審査基準、外部委員の参加方法等
を検討し、より合理的かつ公正性、透明性の高い方法を追求する努力をするべきである。
6
情報システムの調達について
情報システムの調達については、第 3 章総論に報告したように、システムの設計開発
業者がそのまま保守・管理に移行する場合が多く、その結果、長年にわたって同一業者
と特命随契を続けざるを得なくなる傾向にある。
したがって、システム開発、設計時にあたっては互換性を十分に検討して行う必要が
ある。
また、導入する情報処理システムと、導入により合理化される事務との関連及び経済
効率等を丹念にチェックし、ライフサイクルコストを考慮の上、きめ細かく将来コスト
等を検討するなどして十分なコスト計算をしておく必要がある。
7
特例政令の研修等について
特例政令に関しては、第 2 章、第 3 章のとおり、各部の理解が十分とは言えず、随意
契約選択の判断過程に疑問のあるケースが多数あった。
適切な運用を図るため、研修を行いあるいはマニュアルを策定する等して北海道全体
の特例政令に関する理解を深める必要がある。
8
随意契約の公表方法の見直し
随意契約の公表は、今日ではインターネットを利用した方法が簡易かつ透明性確保に
適しており、北海道においてもホームページによる公表に向け取り組むべきである。
公表に際しては、契約内容のみでなく、その随意契約ないしは相手方選択の具体的理
由も合わせて公表し、入札手続を選択しなかった事情を明らかにしておく必要がある。
対象契約の金額、除外する範囲等については、国の例等も参考にし、例外の範囲は必
要最小限の範囲内にすべきである。
また、年度ごとに北海道の全体的な契約金額、契約件数、入札との対比など統計的数
値を公表するなどし、道民に対する説明責任を果たすべきである。
9
運用方針の見直し検討について
本報告書第 1 章、第 2 章のとおり、北海道の特命随契の多くは、
「当該業務を行うの
に求められる特別な技術を有する者が一者であること」や「当該業務を行う能力を有す
330
る業者が地域内に他に存在していないこと」などを理由として入札が行われなかったも
のである。
しかし、これらの典型例に対応する類型は運用方針の中にはなく、それらを運用方針
2 号に当てはめており、施行令を具体化し、曖昧な運用がなされないようにしたそもそ
もの趣旨を没却させるおそれがある(第2章1参照)。
第 4 章 1 で報告したとおり、運用方針 18 号についても、具体的にどのような契約類
型が該当するのか、文言上明確になっているとはいい難い。
上記の点及び、運用方針は制定より既に 30 年以上経過していることもあり、整理、見
直しを検討する必要があると思われる。
10
積算の合理性確保について
随意契約の場合、競争原理が働かず、契約金額について、ややもすると相手方の求め
る金額に流されやすい傾向があり、これに一定の歯止めをかけるためには、適正な積算
が要求される。
他方、委託契約の場合、業務内容が画一的、定型的でない場合が多く、市場価格の把
握に困難を伴う面もある。
上記を踏まえ、以下の方策等を検討の上、積算の合理性、経済性を追求するよう方法
を検討する必要がある。
①
相手方からは常に詳細な内訳のある、見積書や収支報告書を求め、同種、
同等の事例の集積を図るなどして、積算資料をより充実させる。
②
また、情報関連契約のように、専門性を要するものについては、ある一
定程度の金額を超えるものについて第三者の専門家のアドバイスを受けた
上で積算を行う。
③
毎年度、積算の合理性を高める努力をするとともに、必ず積算の算定根
拠、資料は記録化する。
11
その他
各個別契約に関する改善が必要と考えられる事項についてはⅡ監査の結果第 2 から 4
章の各論、小括の該当箇所にて報告したとおりである。
331
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