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JAWLAS 通信 32 - 日本ワイルドライフアート協会
日 本 ワ イ ル ド ラ イ フ ア ー ト 協 会 会 報 JAWLAS 通信 32 2012 年 5 月 1 日 発行 目 次 2012JAWLAS 日 本 ワ イ ル ド ライフアート協 会 展 作 品 募 集 項・・・・・・栗 林 菊 夫・・・・・・・ 2 新 会 員 自 己 紹 介 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 ワイルドライフ・アート と し て の 鳥 類 画 -―観 察 と 解 剖 学 的 視点から―・・・伊 地 知 栄 美・・・・・・・ 4 会 員 の 個 展 等 諸 活 動 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ 9 2012年2月1日~2012年2月29日のメーリングリストのまとめ ・・・・・・・石 田 比 奈 子・・・・・・・ 10 巨 星遠 望 (その2) ―― 垣 間 見 た 鳥 の 先 人 た ち の 思 い 出 ――・・・巻 島 克 之・・・・・・・ 12 2011年 度 第 6 回 理 事 会 議 事 録 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・松 田 蘭 子 ・・・・・・ 16 編 集 後 記 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ・・・・・・・・・・・・・ ・ 16 会 費 納 入 の お 願 い 前回本誌 31 号をお送りした際、振替えの払込取扱票を同封してお送りしま したが、これは 2012 年度の年会費の納入をお願いするためのものでした。特に説明をつけなかったため、怪 訝な思いをされた会員も少なくなかったことと思います。事務的な不手際お詫びいたしますとともに、改めて 下記により年会費の納入をお願いいたします。 2012 年度年会費 3 ,0 0 0 郵便振替口座記号番号 0 0 1 7 0 – 8 – 3 5 3 7 9 2 加入者名 円 日本ワイルドライフアート 協会 なお、 2012JAWLAS展(山脇展)に出品申し込みされる方は、なるべく同展出品料3000円と本年会費3000円計6000円を一緒に振り込んで くださるようお願いします。この場合、お手数ですが振替用紙の通信欄に、この旨ご記入してください。 1 2012JAWLAS 日本ワイルドライフアート協会展作品募集要項 栗林 ■ ワイルドライフアート協会展 菊夫 会期:2012年6月5日(火)~6月12日(火)(日曜は休館) ■ 会場:山脇ギャラリー(JR・地下鉄 市谷駅前徒歩1分) 午前11時~午後6時 ■ 申込締切:2012年5月7日(同封の申込ハガキで出品数など書き込んで送ってください) ・今回のワイルドライフアート協会 山脇展も、出品の申し込みは担当者に直接郵送してください。 申込宛先は「申込ハガキ」に担当・栗林菊夫の住所を刷り込んであります。 ・5日の初日午後5時より懇親会を行ないますので、申込ハガキに参加・不参加のどちらかに〇と、展 覧会の当番の欄に、希望日時を書き込んでください。 1.展覧会のテーマ:自由 2.出品点数と出品料 ・出品数:額を含めて1.5m以内・1~2点。小作品は5点まで ・出品料:3,000円(料金は同封の郵便振替用紙 口座番号:00170-8-353792 加入者名・日本ワイルドライフアート協会に振り込んでください) 3.作品搬入・6月5日(火)直接搬入は午前11時より(山脇学園入口に集まらないこと) ・宅配業者委託:クロネコヤマトの時間指定午前11時配達指定 (搬出で宅配業者委託の場合は、 着払いの伝票に住所と配達希望日時を書き込み、作品ケースに入れる) ・送先住所・山脇ギャラリー 102-0072 千代田区九段南 4-8-21 電話 03-3264-0427 ・展示作業など:6月5日午前11時集合、約2時間半で作品を展示し、午後1時半過ぎより展覧 会の公開を行いますので、出品者は遅れないようにお願いします。最終日の12 2 日は午後3時までに撤収作業を終えますので、ご協力ください。 ■ 注意:5日の展覧会開場は午後1時30分より 4.題名カード:出品する方は、「申込ハガキ」に出品数をお書きください。後日、必要な枚数を案内 ハガキと一緒に送ります。作品搬入時にカードに題名などを書き込んで、お持ちくだ さい。宅配業者委託の場合は、作品と一緒に送ってください。 ・記入内容については、作家の視点で自由にお書きください(来場者のためにも) 5.当番:午前11時からと午後2時からの1単位2人で1日4名の人が要り、延べ22名が最低の人 数で、みなさんのご協力をお願いします。先にも書きましたが、申込ハガキに書き込んでく ださい。よろしくお願いします。 6.作品の販売について:販売したい方は、題名カードに金額を判るように記入してください。作家の 連絡先は、受付で判るようにします。 7.その他:出品者には案内ハガキを30枚送ります。お問い合わせは、担当者までお願いします。 担当者連絡先:173-0024 板橋区大山金井町49-1 栗林菊夫 でんわ・Fax:03-3959-2072 メール:[email protected] 担当者:三浦裕子、小林ひろみ 新 会 員 自 己 紹 介 藤 田 信 雄 さ ん 横浜在住の藤田です。 私にとってワイルドライフアートとの最初の出会いは今から約40年前のカナダにおける留 学時代でした。 夏休みにカネデイアン・ロッキーやノースウエスト・テリトリーを旅する中で接した1960年代後半の大自然は、息をのむ程壮 大で私の生涯で最も衝撃的・感動的な出会いでした。 以来、イギリスに3年、アメリカに18年と長い海外ビジネス生活の中で、暇と機会を見つ けてはワイルドライフとの接点を求めて参りました。 中でもアラスカへは夏・冬と何度も足を運びました。 ノースカロライナ州に18年住む間 にアメリカ南部のワイルドライフ・アートと出逢い、自然とアートの素晴らしい関係に感動して写真と絵を始めたのは今から約17-8年前のこと です。 最初はアクリル画、後に透明水彩画の手習いを我流で始めました。 今年1月で古希を迎え、仕事も昨秋リタイヤ致しました。 これから は、好きなワイルドライフの旅と写真と絵に専念したいと思っております。 4月からJWLAS会員の末席に加えていただくことになりました。 先輩会員の皆様方にお目にかかれるのを心より楽しみにしております。 3 ワイルドライフ・アートとしての鳥類画 ――観察と解剖学的視点から―― 伊地知栄美 (大阪芸術大学大学院) ワイルドライフ・アートとは、北アメリカで 1960 年代から 70 年 アート協会」と名称を改め、現在ではプロ作家やアマチュア作家な 代にかけて成立した動物画のことである。ワイルドライフ・アート ど会員 120 名程が活動をしている。日本では協会自体が直接的な自 は単に動物を描くだけでなく、野生生物を生物学的、生態学的に精 然保護運動に関わっている段階には至っていないものの、作家個人 密精緻に描くことに特徴があり、芸術性と科学的な正確さの均等が のレベルでは、何かしらの自然保護団体に所属している人が多いの 求められるアートである。古くはジョン=ジェームズ・オーデュボ が特徴となっている。 ン(John James Audubon 1785-1851)やイギリスのジョン・グール 北アメリカでは狩猟雑誌や自然保護雑誌などで挿絵を描いていた ド(John Gould1804-81)などに代表されるような博物図譜の学術的 イラストレーターがワイルドライフ・アートを育てていったが、日 な流れと狩猟画の伝統、そして自然保護運動とも密接に関わりなが 本の場合は動物図鑑や科学絵本がその役割を果たしていると考えら ら発展して完成した。それまでの博物画は種の同定のため生物の形 れる。日本で活躍していた作家には、日本の三大鳥類図鑑の挿絵を 態的特徴のみの描写が重視されていたが、オーデュボンやグールド 描いた小林重三の他、研究者向けの専門書の挿絵や福音館書店で科 は動物単体だけでなく、動物の生息する環境も重視して描いている。 学絵本の中の動物絵本の挿絵を描いていた薮内正幸などがいる。 ワイルドライフ・アートと狩猟画の違いは狩猟画が人間の立場か 薮内正幸は、高校卒業後に福音館書店に就職して動物学の研究者 ら人間の活動を中心に描いているのに対し、ワイルドライフ・アー 向けの専門書の挿絵を描くために、最初の一年は国立科学博物館に トは純粋に野生に生息する動物の生命の営みを描くことにある。 所蔵されている動物の骨格標本のデッサンをひたすら続け、動物の 北アメリカではワイルドライフ・アートが安価なリトグラフとし 解剖学的な知識を身に付けた。休日は動物園に行き、その日に決め て売られ、その販売利益の一部を自然保護団体に寄付したり、アー た一種の動物の仕草や動きの観察を続けた。挿絵自体も動物学者今 ティスト自身も環境問題に対して強い発言権があるなど、自然保護 泉吉典の厳しい監修が入り、例えばカンガルーの絵を完成させるた 運動とも深く関わっているアートである。しかし、1980 年代頃には めに 870 枚も描き直して、やっと OK が出たというエピソードもある。 その商業的な性格から公共美術関係者から「単なる博物学的イラス このようにして、動物の解剖学や生態学、行動学的な知識を身に付 ト」として批判されたこともある 1。 けていった。その知識をもとにタブローとして制作された作品がワ 日本にこのワイルドライフ・アートがもたらされたのは、1980 年 イルドライフ・アートの特徴を備えた動物画となるのである。 代頃のことで、動物雑誌『アニマ』(平凡社)において「ワイルドラ 現在ではワイルドライフ・アートはアマチュア作家にも広く認知 イフ・アート」という言葉が紹介された。美術館での展覧会は 1995 され、動物学の研究者のもとで動物について学ぶ画家は少数派とな 年から 1996 年にかけてサントリーミュージアム[天保山]及びサン ったが、それぞれに動物を観察しながら作品制作をしており、様々 トリー美術館にて「ワイルドライフ・アート展̶カナダの大自然から な技法や視点からバリエーション豐かな作品が誕生している。 のメッセージ̶」と題して特別展が開催され紹介された。1994 年に 本作品では人の身近に生息するスズメを題材として取り上げ、ワ は日本で鳥を描く画家が集まり「野鳥を描く会」が発足し、1997 年 イルドライフ・アートを自分なりに定義して制作した。スズメの動 には主題を鳥以外の生物にも対象を広げて「日本ワイルドライフ・ きや仕草などは普段の観察からスケッチを行った。春はスズメの子 4 育てのシーズンであり、オスの求愛ソングやテリトリーを巡っての にも満たないといわれており、この時期にカラスや猫などの天敵に 喧嘩や巣作り、そして子育てと最もスズメが活発に活動しているシ 襲われ多くのヒナが命を落とす。 ーズンである。 本作品ではそのようなスズメの巣立ち後の様子を描写した。巣立 骨格標本と剥製は大阪市立自然史博物館に所蔵されている標本を ち雛に親鳥が給餌する姿は春には庭先や公園などでよく見かける様 見せてもらい、スケッチした。残念ながら、組立てられた骨格標本 子である。ヒナはまだ周りの危険を察知することができず、親のく は所蔵されておらず、見ることはできなかった。骨格標本は頭部を わえているエサに意識が集中している。しかし親は常に辺りを警戒 中心にデッサンをおこない、スズメの全体の比率や羽根の質感など し危険があればすぐにヒナを安全な場所へと誘導する。この作品で は剥製をスケッチしながら観察をした。その他、剥製ではわからな は親鳥が観察者である「私」の気配を感じ、羽を身体にぴったりと かった翼の構造などは鳥の形態図鑑や羽根図鑑などを利用し、模写 くっつけ、背伸びをして緊張した面持ちでこちらの様子を窺ってい をしつつ形態を把握するようにした。またスズメの生態にかんする る。これ以上この親子に近づけば、すぐにヒナを連れて飛び立ち逃 知識などは鳥類学者の佐野昌男や児童文学作家で鳥と人との関わり げるだろう。一見のどかに見えるスズメの親子の日常の情景にも、 を研究している国松俊英の著書を参考にした。 常に死の危険があることを表現した。 本画としての作品では、観察をした上で最も印象に残った生態を 注 1 ウォーラス・F.ウィルキンズ「カナダの「ワイルドライフ・ 描写した。スズメの巣立ち雛が羽根を震わせ、親鳥にエサをねだっ アート展」によせて」 ている様子を描いた。ヒナはまだ十分な飛翔能力がないまま巣立つ。 『ワイルドライフ・アート展̶カナダの大自然からのメッセージ̶』 巣立ち後は親鳥から給餌してもらいながら、自分でエサを捕る方法 サントリー ミュージアム[天保山]1995 年 や天敵から身を守る方法を学習していく。ヒナの一年生存率は 50% 藤原栄美様 意匠学会編『デザイン理論』57 号,2010 年 巻島克之 です 。 1. ワイルドライフアートの定義として次のように述べられていますが、こ ワイルドライフアートとしての鳥類画-観察と解剖学的視点からー」拝読 ういう定義が定着しているのでしょうか させていただきました。 ワイルドライフアートの美術史的研究を通じて、 a. JAWLAS の理論的背景の構築にいろいろと寄与されていることに、JAWLAS 会 b. 生物学的、生態学的に精密精緻に描くことが特徴、芸術性と科学的正確 員の一人として、お礼申し上げるとともに、深く敬意を表します。ところで、 さの均等が求められる 私の不勉強と日ごろからのワイルドライフアートというものに対する迷いと c. 現在ではワイルとライフアートは・・・さまざまな技法や視点から「バ いうか疑いもありまして、次のような疑問をもちましたので、ご教示願えれ リエーション豊な作品が誕生している」 ば幸いです。 というのは b.と c.とは矛盾するのではないでしょうか。 5 北米で 196,70 年代に成立した動物画 2. ワイルドライフアートが博物画、狩猟画、自然保護運動と関連しつつ発 以下がご指摘いただいた内容への返信です。 展したのという流れはあると思いますが、現在でも博物画(標本画)は、別世 この要旨は 2010 年の意匠学会大会にてパネル発表の内容 界に厳然と存在しているのではないでしょうか。オーデュボンが WLA の源流 を学会の紀要用にまとめたものです。パネル発表は作品(ス にあるとすれば、グールド図譜は標本画の源流をなすとでも言えるものでは ケッチ 2 作品とタブローとしての作品)を前にワイルドライ ないでしょうか。 フ・アートの概要を説明しました。研究発表とはまた違った 3. 小林重三も薮内正幸も立派な標本画家として尊敬していますが、はたし 扱いになります。紀要への要旨の文字数も限られているため、 て日本のワイルドライフアーチストとして称揚すべきものでしょうか。例え 省略が多すぎて文章に不明な部分も多かったと思います。 ば小林重三画伯の場合、その鳥や哺乳類の絵は誰でも納得するものですし、 また、それから多くの本を読んだり考察しましたので、解釈 三大鳥類図鑑の図版の作者として絶大な業績を残しておられますが、国松俊 も一部当時とは違った部分が出てきているかもしれません。 英著「鳥を描き続けた男」に小林は77才の時に始めて銀座の中央画廊で念 1-a 願の油彩の個展を開いたことが書かれています。このときの絵は相模の海辺 ワイルドライフ・アートは 19 世紀にその源流ができ(オーデ の絵で自由な奔放闊達な絵だったようで、国松氏は、細密な鳥の絵と奔放闊 ュボンが博物図譜にロマン主義的な描写を持たせた)、アーサ 達な海の絵と二つの異質な世界を描き分けられると褒めていますが、ひねく ー・F.テイトやランギウスらによってスポーツのイメージが れた私としては、細密の鳥の絵の桎梏を脱して奔放な海の絵の自由を獲得し 付加されました。 たのではないかと邪推します。細密画・標本画とアーツの二律背反の思いを 的な写実性の強い作品、ランギウスは印象派の影響を受けた 強くします。また薮内正幸氏の場合、今泉吉典博士の監修によってカンガル 作風と時代を反映したスタイルとなっております。 ーの絵を 870 枚も描き直したと書かれていますが、これでは動物学者に隷属 護運動と動物画との関わりが出てくるのも 19 世紀末頃から してしまってアーチストの存在はどうなるのでしょうか。この辺の考え方の です。 北米で 1960 年代から 70 年代にかけて成立した動物画 描画スタイルもテイトはトロンプルイユ 自然保 調整も必要なところと思います。それにしても 870 枚というのは一日に 10 このようにしてワイルドライフ・アートの基礎となる流れ 枚描くとして、ほぼ三ヶ月かかります。 今泉さんは、いわば薮内さんの恩師 ができ、20 世紀に入りワイルドライフ・アートは現代化した 的存在であったので育成する意味もあって藪内さんを相当厳しく指導したも のではないか、と考えております。 のと思われますが、870 枚も描きなおしたというのは表現がオーバーな気が の区分、そしてより深い自然保護思想との関わり、ロバート・ しますね。 ベートマンあたりから現代化が進み、現在に至っていると考 4. 後半は藤原さんの作品の制作意図や過程の解説になっていて、大変参考 えています。 スポーツのイメージと になりますが、この論文はどのようなところに発表されたものでしょうか。 論文で「北米で 1960 年代から 70 年代にかけて成立した」 私は、どうもワイルドライフアートというものに迷いを持っているもので と記述したのは、現代ワイルドライフ・アートの成立、とい すから、つい過激な質問を書きましたが、お許しください。 う意味合いで書いております。 巻島克之様 1-b お世話になっております 藤原(本名伊 地知)です。 論文を読んでくださり、ありがとうございま 科学的正確さと芸術性ーバリエーションの拡大 ワイルドライフ・アートの源流の一つが、 博物図譜にあ した。様々な鋭い(痛い?)ご指摘ありがとうございます! るため、科学的な正確さはある程度必要である、と考えてお 私自身、ワイルドライフアートについて考察の途中で発表 ります。ただこの点に関しまして、私自身の考えも曖昧なま していたところがあり、又自分自身が気がつかなかった問題 まとなっております。 もありました。勉強になり頭の中の整理ができました。また 正確さを指すのか、それとも描写は漫画のようであっても、 色々御指導のほど、よろしくお願いいたします! 生態や行動を的確に捉えることを指すのか…等です。それら 6 科学的正確さを解剖学的見地からの の解釈の違いが作家の個性として作品に反映されるものと思 た」です( Jonathan Elphick "Birds - the art of っております。 ornithology" p275)。逆に考えますとソーバーン以降 100 年 バリエーションの拡大は、主に描写スタイルのことを指し にわたって良いアーティストが出現しなかった、とも考えら ております。 ワイルドライフ・アート自体、まだ現在進行 れます。 形で発展しているアートであると考えております。 左右したのでしょうか。 デザイ ンやイラストレーションといった商業美術と伝統的な純粋芸 術といった枠組みはダダイズム以降すでになくなり、 3 これがイギリスのワイルドライフ・アート発展を 今後の研究課題としたいです。 動物学者と作家の関係 さら もちろん動物学者の指導の基に描かれたものはイラストレ に CG やメディアミックス型のアートが出てきており、表現媒 ーション(説明図)の域をでないと思います。しかし、重要 体・方法は広がる一方です。 つまりワイルドライフ・アー なのは動物の知識(形態や解剖学的から習性やしぐさなど) トに限らず、現代アートにおいて何が芸術であり何が芸術で であり、それを生かして作品を作ることであると考えていま ないのか、混沌としてきていると思われるのです。 す。 そこで 小林重三のワイルドライフ・アート的な作品の事例と 重要になるのが芸術を通じた価値観の共有にあると思います。 して、満蒙調査隊図譜(国立科学博物館蔵)の絵が挙げられ 「どのようにして」価値観を共有する作品を作り上げるか、 ます。 それが多様化してバリエーションが増えてきたのだと思いま http://research.kahaku.go.jp/database/zufu_db/manmou.h す。 tml 2 ており、単なる標本画の域を超えた表現となっております。 博物画の現在とグールドの図譜の流れ 博物図譜と狩猟画の流れに自然保護思想が加わり、現在の 動物単体ではなくその生息環境も含め、情緒的に表現し 当時のイギリスの水彩画の影響が見られて興味深いです。 ワイルドライフ・アートが完成したと考えておりますが、 も またアメリカの事例ですが、19 世紀末から 20 世紀初頭に ちろん、博物図譜や狩猟画が「変化」したわけではなく、そ かけて活躍した鳥類画家フェルテス(Louis Agassiz Fuertes) こから「分岐」してワイルドライフ・アートへと続いたと考 などは鳥類学者エリオット・クーズのもとで鳥類画を学んで えております。 おり、クーズの死後に作品のスタイルが大きく変化しており イギリスは興味深い流れを持っています。 当時、博物学 ます。博物画がワイルドライフアートへと変化して成立して の先進国であったイギリスが、何故ワイルドライフ・アート いく過程において、画家と学者の関わりは必要不可欠の要素 の発祥の地に成り得なかったのか、ここはまだ私自身の疑問 であったであったと思われます。 点でもあります。 グールドの図譜はイギリスで刊行され、 薮内さんはタブローとしての作品を残していませんが、そ その挿絵を描いていたジョセフ・ヴォルフなどは、後の世代 れに準ずるのが科学絵本の存在であると考えております。1-b のアーチボルト・ソーバーンに影響を与えております。 ソ でも書きましたが、すでに純粋美術とデザイン・イラストレ ーバーンは狩猟画のプリントだけでなく、 「英国鳥類図譜」な ーションの区分はなく、絵本もまたボローニャ国際絵本原画 ど優れた図譜を作成し、その本は小林重三に影響を与えまし 展に代表されるように芸術作品としての地位を確立しており た。 ます。 ソーバーンは創設されたばかりの英国王立鳥類保護協 そのため、科学絵本もまたワイルドライフ・アート 会で無償で絵を描きその売り上げを寄付するなどの活動もし の新しい形として成立するのではないでしょうか。 ています。 につきましては、まだまだ再考の余地がありそうです。 ソーバーンの本で気になる一文がありました「ソーバーン この点 カンガルーの 870 枚の描き直しは国松俊英氏の講演会にて の図譜の挿絵はそれから 100 年に渡って繰り返し使用され お話された内容です。ポプラ社から出版されている『カバが 7 ぼくのともだちだ』の「動物の生命のかがやきを描くー薮内 く伝えて行く必要性を感じました。 正幸―」にも記載されていたように記憶しております。下描 今後は博士論文の前に大学の紀要に論文を提出する予 きの段階での修正だったのかもしれません。 長々と失礼致しました。 巻島克之様 定です。 年一回の刊行の上、論文の査読もあるので、い 藤原栄美 つ記載できるかわかりませんが(汗) お世話になっております。藤原です。 ワイルドライフ・アート関連の本を読めば読む程、ど 今回の議論内容を、会報にのせて他の会員の皆様の考え のような作品がワイルドライフ・アートと定義できるのか、 もお伺いできれば幸いです。 スポーティング・アートとの違いは何であるか、などわか 大学院ではワイルドライフ・アートの研究をしているのが らなくなってきています。 私だけですので、中々そちらの方面から細かな議論ができ ちなみに主要に読んでいる本はこちらです↓ る人もいません。ゼミでは美術史という大きなくくりの中 http://www.amazon.co.jp/American-Wildlife-David-Ph- で進めています。 もちろん、今回私が発表したワイルド d-Wagner/dp/0977802868/ref=sr_1_3?ie=UTF8&qid=13267 ライフ・アートの概念は JAWLAS の現会員の作品や作風に 95984&sr=8-3 対して限定や排除するものではないと思っております。 持ち運ぶには重い本ですが、アメリカのワイルドライフ・ ワイルドライフ・アートの歴史や成り立ちなど再考できれ アートの歴史がわかる一冊です。 ば、と思っております。 紀要など、まとまりましたら、また読んでいただきたく思 パネル発表要旨が記載されている紀要は以下の号です。 います。最後になりましたが、今年もよろしくお願いいた 意匠学会編『デザイン理論』57 号,2010 年 します。 藤原栄美様 この意匠学会の大会は 2010 年に行われたもので、パネ 藤原栄美 [email protected] 巻島克之です。 ルでの発表をしました。まだ、ワイルドライフ・アートと いろいろとご教示有難うございました。これを契機にして、JAWLAS 会員間 いうジャンル自体知られていなかったので、ワイルドライ でも議論が深まると楽しいですね。藤原さんは美術史研究と実作を兼ねて精 フ・アートというものを私なりに解釈して概要を示した内 進されていて心強いですが、それでも大学院の美術史のゼミの中ではワイル 容となっております。 発表後の反応ですがやはり、ボタ ドライフアートという孤独の分野で奮闘されるご苦労もひとしおと思います。 ニカル・アートはご存知の方もワイルドライフ・アートは JAWAS の会員に実作はしないがワイルドライフアート研究を志す会員が増え ご存知ではなかったりと、まだまだ学会でも知名度は浸透 て藤原さんを側面から手助けできると良いのですが、現在そういう人が居て していないように思われました。 も入会出来ないのが残念です。教えていただいたワーグナーの「アメリカの 意匠学会は、建築から美術史、デザインなど分野が多岐 ワイルドライフアート」は立派な本ですが、大変高価な本ですし、私には英 にわたり、発表分野が大会開催校によって大きく偏ってし 語が読めないので購入は遠慮して図書館で眺めたいと思っています。 まうという問題も見受けられるような印象を受けました。。 いつの日か藤原さんも、日本の四条・円山派や狩野派の伝統絵画や本草学 大阪大学では建築、2010 年大会が行われた関東学院大 の挿画などから日本のワイルドライフアートの源流を見定め、更にそれから 学ではファッションデザインといった具合で、聴講者の専 近現代博物学・動物学の挿図とそれに通底するワイルドライフアートの流れ 門分野もそれに伴い偏っているようです。そのためか、絵 などを集大成した「アメリカンワイルドライフアート」に匹敵するような「日 画を扱った発表は他の発表者を含めて、強い関心を持って 本ワイルドライフアート史考」を書かれるようになることを切に祈ります。 頂けなかったのは残念でした。 そのためには JAWLAS の活動も更に活発化する必要がありますね。 何度か紀要などに論文を発表して絵画分野の方にも広 8 会 生きものと自然を描く 6 人展 員 の 個 展 等 諸 活 動 JAWLAS 東海地区の会員 秋田裕子 伊藤 真 小野向志 伴野重由 船田善弘 渡辺靖夫の 6 人展 会 期 2012年4月5日(木)~11日(水) 会 場 11:00~19:00(最終日 16:00 まで) ギャラリー チカシン 〒460-0003 名古屋市錦三丁目 16 番-10 号先 ℡ 052-962-4675 地下鉄「栄」駅東改札口または名鉄「栄恵町」駅より徒歩 2 分以内 「航跡」水野行雄艦船イラスト原画展 モデルアート社刊「艦船模型スペシャル」、学習研究社刊「太平洋戦史シリーズ」に 掲載された イラスト原画を展示します。 1999年8月「戦艦大和」海底探査のレポートも展示します。 会 期 2012年4月30日(月・祝)~5月5日(土・祝) 11:00~19:00(最終日は 17:00) オープニングパーティは」初日 17:00 会 場 銀座地球堂ギャラリー 東京都中央区銀座8-8-6銀栄ビル2階(1階は au 店舗) 資生堂、博品館並び。 電話03(3572)4811 東京メトロ「銀座駅」下車徒歩5分 東京メトロ・JR「新橋駅」下車徒歩5分 ワイルドライフアート4人展 “FOUR COLORS“ 由井(松田)蘭子(日本画)、関くみ子(磁器上絵付け)、井上忠司(アクリル画)、福原勝一(手描き友禅)の 4 人 4 色 自然の生き物からの感動をテーマに個性豊に表現した作品を展示 会 期 2012年4月9日(月)~15日(日) 11:00~18:00 9 日は 12:00 から/15 日は 14:00 まで 会 場 ギャラリー くぼた 別館 〒104-0031 東京都中央区京橋 2-7-11 ℡ 03-3563-0007 JR 東京駅八重洲口 10 分 地下鉄銀座線京橋駅 6 番出口 1 分 地下鉄浅草線宝町駅 A5 出口 2 分 IZUBI第 27 回 全国絵画公募展に松岡潤さんの作品「のぞみを紡ぐもの」が入選 この公募展は、静岡県伊東市などが主催する全国公募展で、今回は「希望」というテーマで、作品募集が行われ、 応募作品約 500 点から公開審査の結果 66 点が入選した。 「希望」というテーマから応募作品には東日本大震災に 関わるものが多く、松岡さん自身もオマージュを作品に込めたくて参加 したとのことである。 この入選作品は、伊豆の池田20世紀美術館で、 3 月 15 日~29 日まで展示された。なお、この公募展は隔年で行われてお り、詳細は HP などで知ることができる。 9 2012 年 2 月 1 日~2012 年 3 月 31 日のメーリングリストから 本稿は石田比奈子さんに纏めていただいたものを、編集担当が紙面の都合上適宜、削除、短縮、要約などを行って編集したものです。 ● こんにちは、小野です。大室 清さんの登録手続きを行いました。 くにお越しの際は・・・or お近くにお住まいのお知り合い等いらっしゃれ ・何かMLの利用に関してご意見がありましたら、ML上で発言するか、グ ば・・・宣伝・転送大歓迎です。 ループ管理者の連絡先 [email protected] までご連絡ください。 ● 東郷なりさ様 卒業展おめでとうございます。。卒業展の盛会をいのりま ・JAWLAS 会員の方が、メーリングリストへ参加希望をしている場合、 す。-- 巻島克之 [email protected] のアドレスを教えてあげてください。 ●山階鳥類研究所の平岡です。山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館 こちらでは、会員かどうかの確認ができないため、登録希望のメールを送る で出前トークをする、第 2 土曜日恒例の「テーマトーク」、2 月は下記の要領 時には、会員である旨を一言入れていただけると助かります。 で今週末です。メボソムシクイは、本州の高山に夏登りますと、「ゼニトリ、 ・グループ管理者の連絡先 [email protected]・グループページ ゼニトリ」と鳴くのが聞こえる、登山者の友ですが、それとは別に、 「ジジロ、 の URL http://groups.yahoo.co.jp/group/jawlas ジジロ」という囀りの鳥が、5 月~6 月といった時期に通過してゆくのが知ら (閲覧には、YahooID の登録が必要ですが、これまでの投稿内容を見ることが れていました。この鳥は従来、別亜種の「コメボソムシクイ」と言われるこ できます。)Hisashi Ono〓 とが多かったのですが、真相は不明でした。この点について究明し、メボソ ● 山階鳥類研究所の平岡です。お世話になっております。生前、JAWLAS の ムシクイの分類を見直したのが今回の演者の齋藤研究員の研究です。最近は 会員でいらっしゃったか、なかったかは存じあげないのですが、2001 年に 39 だいぶ彼の研究成果が浸透してきたようですが皆様はご存じでしょうか。 歳で亡くなられた、甲殻類等の細密画の杉浦千里さんの作品が、葛西臨海水 トークの正味は 30 分(その後に質疑応答あり)ですので、時間と電車賃をか 族園で展示されていることを知りましたのでご案内します。 けて我孫子まで遠くからいらっしゃると費用対効果の点でつらいかもしれま http://sites.google.com/site/chisatosugiura/ せんが、このようなメボソムシクイのお話にご関心がおありの方はぜひどう 博物画に観るエビとカニの美 2011 年 12 月 15 日~2012 年 2 月 28 日 ぞ。http://yamashina.blog.ocn.ne.jp/ 東京都葛西臨海水族園 第 10 回「メボソムシクイの謎を解く~3 種に分かれた同種の分類について~」 http://www.amazon.co.jp/gp/product/B006VXAC7G/ref=pd_lpo_k2_dp_sr_1? 【講師】齋藤武馬・山階鳥研自然誌研究室研究員 pf_rd_p 以上ご参考まで。 【日時】2 月 11 日(土・祝)13 時 15 分~ ※30 分のテーマトーク終了後、 【場 ● LOVE ネイチャー6 人展ご来場 御礼・・・大室 清 所】我孫子市鳥の博物館 2 階多目的ホール 先日はお忙しいところ「LOVE ネイチャー6 人展」にご来場頂き誠にありがと 【参加費】無料(入館料が必要です)【定員】各回とも先着 50 名 うございました。そして皆様から、各分野のコラボレーションによる展示作 【主催・問い合わせ先】山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥 品について、貴重なご感想ご批評を頂くことができました。それらは今後の の博物館(TEL. 04-7185-2212)イベント情報はこちら 制作活動にとって大きな励ましとなりました。私たち一同心から感謝してお http://www.yamashina.or.jp/hp/event/event.html ります。今後とも一層のご指導とご支援をよろしくお願い申し上げます。大 ●山階鳥類研究所の平岡です。羽箒を研究されていて、昨年の鳥学会大会で 室 清 は会員の重原美智子さん、渡辺靖夫さん、平岡の作品と一緒に羽箒を展示さ ● 金田光正 熊坂延子 下坂史郎 高田直子 田原英二 卒業展のお知らせ・・・東郷なりさ ご無沙汰しています。ついに卒 れた下坂玉起さんからの情報です。今回初公開で、図録や絵はがきにも印刷 業が目の前に迫り、学生生活に終止符を打とうとしている東郷です。あまり されておらず、その予定もないそうで、今回は貴重な機会のようです。 に遠い&ワイルドライフアートも関係がないので、宣伝するのもためらって 、茶会への招待 -三井家の茶道具- 2012 年 2 月 8 日(水)~4 月 8 日(日) しまうのですが、一応、わたしの卒業展のお知らせです。もし万が一、お近 http://www.mitsui-museum.jp/exhibition/index.html 鳥類真写図巻(ちょ 10 うるいしんしゃずかん) 渡辺始興(1683-1755)の写生図巻の傑作です。17 http://yamashina.blog.ocn.ne.jp/blog/2012/03/40_a744.html メートルに、63 種類の鳥類が描かれています。今回はそのうちから 6 メート 我孫子野鳥を守る会 40 周年記念講演会 ル程度の同じ画面が展示されるそうです。かの円山応挙が本図巻を模写した 「アホウドリ 絶滅の危機から回復へ」- 衛星追跡で判った行動圏 - 作品が、東京国立博物館に所蔵されています。 【日時】2012 年 3 月 18 日(日)13:30~15:00(受付 13:00~) ● 筧さん、山本@北九州です。JAWLAS 通信 31 号受け取りましたが、ただ 【講師】尾崎清明 山階鳥研副所長・保全研究室長 会費とだけ書かれた払込票が同封されていました。これは 2012 年度年会費の 【会場】千葉県手賀沼親水広場 水の館 3 階研修室(千葉県我孫子市) ことで、金額は3,000円でいいですね。ご確認下さい。山本昭生 ● 山 ※水の館のアクセス http://www.ckz.jp/shinsui/riyou.html 本様 説明不足で申し訳ありません。2012年会費3000円の振込納入 【定員】先着 150 名(入場無料) の事です。よろしくお願い致します。筧 ● 筧さん、了解です。いつもは 【主催】我孫子野鳥を守る会 【後援】我孫子市教育委員会 JAWLAS通信の中に説明が記載されているのに今回は見当たらなかった 【問合せ】我孫子野鳥を守る会事務局 染谷(Tel.04-7182-3972) ので不思議に思っていました。 山本昭生 我孫子野鳥を守る会のウェブサイト http://abikoyacho.org/ ● 山階鳥類研究所のイベント情報 伴です。会員の水野さんの個展が開催されるそうですのでお知らせい たします。本文『会員の諸活動』欄に掲載 http://www.yamashina.or.jp/hp/event/event.html ● 山階鳥類研究所ブログ トップ http://yamashina.blog.ocn.ne.jp/ 【トーク】ホオジロの個体変異と亜種について 山階鳥類研究所の平岡です。山階鳥類研究所の所員が我孫子市鳥の博物館で ● 山階鳥類研究所の平岡です。 ボストン美術館で、ペーパー・ズー(紙の 出前トークをする、第 2 土曜日恒例の「テーマトーク」、3 月は下記の要領で 上の動物園)という展示が 8 月まで行われているそうです。 今週末です。今回のテーマは地元千葉県の県鳥でもあるホオジロの個体変異 Paper Zoo February 7, 2012 - August 19, 2012 と亜種について、ところ変われば品変わる、東アジアに分布するホオジロが、 Gallery 170, Museum of Fine Arts, Boston 地域ごとにどう違うのか、また性別と年齢による違いはどうなのか、知識経 http://www.mfa.org/exhibitions/paper-zoo 験の豊富な茂田研究員がお話しします。トークの正味は 30 分(その後に質疑 ・紀元 1500 年~現代までの、動物界(鳥類、海産動物含む)の生物を題材と 応答あり)ですので、テーマにご関心がおありの方はぜひどうぞ。 した版画、絵画、写真 http://yamashina.blog.ocn.ne.jp/ ・レンブラント、オーデュボン、ピカソその他 30~40 点 ・2012 年 2 月 7 第 11 回「ホオジロの個体変異と亜種について」 日~8 月 19 日 【講師】茂田良光 山階鳥研保全研究室研究員 ちなみに生物が主たるテーマじゃないですがこっちも魅力的かもです。ジ・ 【日付】3 月 10 日(土) 【時間】13 時 15 分~ ※30 分終了後、質疑応答 アルア・オブ・ジャパン(日本の魅惑)というもので、日本美術に影響され 【場所】我孫子市鳥の博物館 2 階多目的ホール たアメリカの美術の展示とのことです。下記リンクの表紙のクジャクが素敵 【参加費】無料(入館料が必要です)【定員】先着 50 名 です。The Allure of Japan March 24, 2012 - December 31, 2012 【主催・問い合わせ先】山階鳥類研究所(TEL. 04-7182-1101)、我孫子市鳥 Gallery 231, Museum of Fine Arts, Boston の博物館(TEL. 04-7185-2212)イベント情報はこちら http://www.mfa.org/exhibitions/allure-japan http://www.yamashina.or.jp/hp/event/event.html ・1900 年前後に合衆国で日本ブームがあった。 ● 【講演会】「アホウドリ 絶滅の危機から回復へ- 衛星追跡で判った行動 ・この当時のアメリカのブームを反映する、アメリカの版画、ポスター、水 圏 -」山階鳥類研究所の地元、我孫子市にある「我孫子野鳥を守る会」は 1972 彩画、装飾品を展示する。 ・2012 年 3 月 24 日~12 月 31 日 年に創立された千葉県で最初の野鳥愛好団体です。同会の創立 40 周年を記念 見に行ければ行きたいけれど、なかなかこれだけのためにというわけにもゆ して、山階鳥研の尾崎清明副所長が講演します かないし、かといってついでがあれば、というようなついでもないし・・・ (笑) 11 巨 星 遠 望 (その 2) ―― 垣間見た鳥の先人たちの思い出 ―― 承 前 ―― ―― 巻 島 克 之 したものである。 前回鳥の先人として、中西悟堂、鷹司信輔、O.L オース 山階芳麿先生のお名前は JAWLAS の会員ならば山階鳥類 ティンについて、わずかに袖すり合わせた程のご縁をもと 研究所の名前とともに、誰でもご存知と思うが、そのご経 に昔の印象を書いた。それらは昭和 20 年代初期のことが 歴はご存じない若い会員も少なくないと思う。 中心で、それは恰も日本の鳥学というか鳥類学の戦後の復 私ごときが山階先生のご経歴を喋々するのはおこがま 活に燃えた時期でもあった。当時の先人の方々は戦災によ しいというか、礼を失することであろうが、勇を鼓してい る鳥類の文化資産の破壊・消滅に加え戦後の混乱、荒廃、 ろいろな資料から孫引きしてご紹介する。 窮乏のなかで、大変なご苦労をされた時期であった。 先生は明治 33 年(1900 年)7 月、山階宮家のご次男とし 今の会員の皆さんには、もう知られる事もなくなってし て誕生され、大正 9 年(1920 年)には臣籍降下されて山階 まった方も含めて、先達の方々について他生のご縁をたよ 候爵家をたてられた。 りに僅かな印象なりとも残していくのが馬齢を重ねた私 昭和天皇は1歳年下の従弟に当たられる。 のつとめとも感じているこの頃である。 皇族の常として当初は軍人の道を進まれたが、昭和 4 年 (1929 年)には幼時より望まれていた動物学を修めるため 山階芳麿先生のご講演 東京帝国大学選科に進み動物学を学ばれている。そして昭 前回の昭和 22 年 5 月 31 日にオースチン邸で行われた日 和 7 年春に渋谷南平台のご自邸の敷地内に山階家鳥類標 本鳥学会の総会の模様について続けさせていただく。 本館という研究室・標本室をされたが、これが現在の山階 この総会では山階芳麿先生が「雁鴨科の新分類法」につ 鳥類研究所の発祥であり、鳥類学研究の拠点として、また いて講演された。 鳥類保護・普及に重要な位置を占めていることは衆知のこ その講演の内容を一言で延べるのは難しいが、あえて要 とである。 約すれば動物はその種ごとに染色体の形質や数が異なっ 山階先生には多年の研究と膨大な資料に基づいて著さ ていることから、その相違する数や形態などの内容や雑種 れた普及の名著「日本の鳥類とその生態」第 1 巻、第 2 の不妊性の発現の度合いなどによって種の類縁の程度を 巻があるが、更に当時の鳥の分類に疑問をもたれ、鳥の細 知ることができる。 この細胞学的方法によって鳥類の分 胞内の染色体による分類の研究を進められていた。 類を行うという新しい考え方に基づいて得られた雁鴨科 昭和 22 年 5 月の鳥学会総会のご講演は、まさにその成 の新しい分類を提示したもので、従来形態中心で行われて 果に基づくものだったのである。 いた分類に新しい風を吹き込む画期的な内容であった。 その時の山階先生のすっきりとした姿勢と、やや甲高い 当時私は動物学や畜産学、育種学などの授業の中で染色 お声で話されていたお姿は、流石に高貴の出自を漂わせた 体のことを多少習っていた最中だったので興奮して謹聴 威厳に溢れていて、お話の内容とともに忘れ難い印象をう 12 けたものであった。 また話しは横道に入ってしまうが、高島先生は大変生真 当時の私としては、このような機会に巡り合った事だけ 面目な方で、研究分野は鳥類学だけでなく昆虫、哺乳類、 でも、その幸運に感謝せずにいられない。 蜘蛛類などきわめて幅広く、又沢山の学会や趣味の会の創 その後、昭和 24 年に、この染色体による分類の研究は 立にかかわり、幹事をひきうけて八面六臂の活躍をされ、 一冊の著書に纏められ北方社という出版社から出版され 後年早稲田大学講師になられたが、惜しくも55歳の若さ たが、今では記念碑的な書物として古書としても極めて高 で亡くなられた。 高島米峰のご長男と聞いていたが、私 価である。 は高島先生の生面目でありながら、やや風変わりな感じか 話はまた横道に逸れるが、2010 年日本哺乳類学会賞を ら高嶋易断の高嶋嘉右衛門の子息と早とちりして記憶し 受賞された元東京農業大学教授の土屋公幸先生は、学生の ていた。 それというのも、ある共同研究を学会発表する 頃この本にめぐり合い、その内容に触発されてネズミの染 際、その共同研究者が急病で出席できなったため、発表の 色体による分類をライフワークとされて、その研鑽された ときに、その共同研究者の担当部分は、その共同研究者の 結果が、一昨年の受賞に結実されたとのことであった。感 声色を使って発表したという、一風変わったエピソードを、 動がその場限りに終ってしまった鈍才の私にとっては、一 人から聞いていたからである。 冊の本からライフワークを定めて、その目標を達成された 高島米峰とは、高名な仏教社会学者で東洋大学長をされ 英才の努力と才能は羨ましい限りである。 た方だということを後で知り恥ずかしい思いをしたもの である。 戦後の日本鳥学会と高島春雄先生 当時の日本鳥学会では高島春雄先生が会計幹事のよう 大殿様 黒田長禮先生 な仕事をされていた。 そして毎回の例会や総会のたびに 当時(昭和 22 年頃)の日本鳥学会の例会や総会は山階鳥 痩躯から絞りだすような高いお声で、会費納入を出席者に 類研究所や虎ノ門の霞会館(旧華族会館)で開催されてい 訴えておられていた。 あの頃会費は幾らだったか記憶に て、会頭は黒田長 禮 先生が鷹司信輔先生の後を受けて就 無いが、それほど高くはなかったと思うのに、その徴収に 任されたばかりのころだった。 ながみち は大いに苦労されたらしい。事実、無収入の私には会費を 山階鳥研の例会でのこと、黒田先生は会場奥の机で開会 払うのが辛かったし、正直な話、会費が払えなくて自然退 までの間、端然と資料に目を通しておられた。見るからに 会となってしまったものである。 恐らく他の会員の方々 福岡 52 万石の大殿様の気品に溢れたお姿だった。 でも会費を納めるのが辛かった方が多かったのではない 私達下っ端会員は窓際で雑談していたが、私は傍にいた か、今となるとそんな想像をしてしまう程、当時、大抵の 先輩会員に「最近コガモが渡ってきたので見に行ったとこ 人がぎりぎりの生活をしていたのである。 ろ、雌ばかりだったが何故だろう」と気軽に質問した。 それにしても、そんな時代に会費を徴収して会を運営す ところが、その先輩会員は意地悪くというか、からかい る幹事さんのご苦労は、会費を払う側以上に大変だったと 心を起したのか、「鴨のことなら大専門家の黒田先生に直 思う。 あの頃物価は日々高騰するし、物資は窮乏してい 接教えていただけ」と言って会頭先生のところへ私を押出 て機関誌の用紙を調達するのにも想像を絶するご苦労を した。 されたようで、もともと研究者である高島先生の裏方とし けられた。 てのご苦労の程が偲ばれる。 先に先輩にした幼稚な質問を繰りかえした。 それに対し 13 先生は「ウンッ?」と不審そうにこちらに顔を向 引くに引けず緊張して直立不動で前に出て、 て、「カモ類はエクリプスといって、晩夏から初冬にかけ の密輸を図って検挙され侯爵の冷遇を停止された新聞記 て雄も雌と良く似た羽毛になるので、日本に渡ってきた当 事を見た記憶もあった。 初は全部のコガモが雌のように見える。」ということを若 阿波徳島藩は表高は 25 万石だが、藍その他の物産に富 造会員の無知を軽蔑することも、軽くあしらう風も無く、 み実高は 40 万石以上と言われ、明治以後も実業界でも発 懇切に説明してくださったのである。 展された裕福な名家で、十数年にわたる英国生活も父君か 現在なら秋の探鳥会などでリーダーの方が説明するよ ら命じられた法律学は放棄して、潤沢な仕送りの資金を鳥 うな事柄を、世界的な専門の学者、それも当時の感覚では 類研究それも絶滅鳥類とくにドードーの研究やアフリカ 世が世なら近づくことも出来ない大殿様から直に教わっ 探検に傾注して名を成し、帰国後は東南アジア特にフィリ たのだから自慢してもいいようなものだが、あの時の緊張 ッピンの鳥類調査などの探検調査を行っている。 感の方が強い記憶となって忘れ難い思い出となっている。 ドードー研究という鳥学分野ではやや異色な研究や、自 その頃、ご子息の黒田長久先生は 30 代前半の少壮鳥学 家用飛行機を駆使した未開地の探検などの果敢な行動、そ 者として GHQ の O.L オースティンの仕事を助けて東奔西走 の反面世俗的な醜聞にまみれた生活など、私達の想像を絶 されておられた。 鳥学会例会などに出席されても、首脳 する奔放不羈な人生も、昭和 28 年に 50 歳の若さで狭心症 の方々と打ち合わせをされると慌しく出掛けられたりし のため急逝されて終始符を打っている。 ていたが、その姿は長禮先生の大殿様の風格に対して、ま 私が鳥学会で美しい秘書それも何時も違う女性秘書を さに凛々しい若殿ぶりであった。 帯同されたダンディな姿を羨ましい思いでお見かけした ころは、彼は 40 代半ばの壮年期だったのである。 ダンディ蜂須賀正氏氏 下図の囲みは、日本野鳥の会の機関誌「野鳥」昭和 25 あの頃、鳥学会に出席されても、すぐ忙しそうにお出掛 年 1 月号の巻頭1頁の縮写コピーである。 まさうじ けになられる方に蜂須賀正 氏 氏がおられた。あえて蜂須 賀先生と言わないのは、その身のこなしや服装など先生と 呼ぶにはあまりにもダンディだったからである。 それに加えて、何時も洗練された美人秘書を帯同されて いて、若い会員の好奇と羨望の眼差しに囲まれていたから である。 蜂須賀家は人も知る阿波徳島藩 25 万石の藩主で明治に なって侯爵となった家柄である。 当時の蜂須賀正氏氏は 戦争中に侯爵の礼遇を停止され、更に爵位を返上した身だ ったと思う。にもかかわらず、そんなことは全然意に介し ない風であった。蕩児というのだろうか、風雲児というの だろうか、少年時代の不良生活から父君は将来家名を汚す 事を恐れて学習院中等科を終えると早々に英国留学に出 してしまったということを学習院時代の学友だった人か ら直接聞いた記憶もある。 また戦争中宝石だか白金だか 14 中西悟堂の依頼で載せた蜂須賀正氏氏の「絶滅鳥類の なしの生活用品と共にリュックサックに入れて逃げ回っ 話」で、モズの仮剥製らしいカットが表題よりも、また筆 たほど大切に思う本だったのである。 者名よりも大きく載っている。 この粗雑な絵は恥ずかし いわば本の上の恩師ともいえる内田清之助先生につい ながら私が描いたもので、乱暴に書かれた Max という署名 ては、鳥学会の例会の記録には同じ出席者として名前を列 が今と変わらずに見られるのは、他人には見苦しいと見ら ねていたのに、ここで書くよう機会には恵まれなかった。 れるかも知れないが、私には懐かしい。 今にして思えば、口惜しくもあり、今思えば誠に残念な思 このバランス感覚を欠いたレイアウトは、何となく気恥 いでいっぱいである。 ずかしいものの、この頁の取り合わせは、今となっては私 にとって誠に懐かしい記念であり、編集にあたった当時の ――最 後 に―― 編集者に感謝したい気持ちである。 若い会員の方々のため、巨星の面影を伝えるカットなど を挿入して、この拙い文章を補いたいと思ったが、適当な 書けなかった内田清之助先生 ものが中々見付からなかった。 わが国の近代鳥類学研究は 1912 年(明治 45 年)に日本鳥 それぞれの著書などには巻頭に著者の肖像写真が掲載 学会が東京帝国大学理科大学の動物学教室で飯島魁教授 されているが、そのような写真をここに無断で引用するの の指導をうけた鷹司信輔、内田清之助、黒田長禮の三氏が は恐れ多いことであり、何か良い写真はないかと探してい 飯島魁教授を擁して設立されたことによって組織的な第 たところ、やっとこの写真を見つけることができた。 一歩を印した。 初代会頭の飯島魁はイイジマムシクイなどの鳥に名前 を残しているが、むしろ鳥は専門外で海綿類や人体寄生虫 の研究が著名である。「動物学提要」というわが国の近代 動物学の基礎を築いた大著を出版し、多数の研究者を育成 しているが、大正 10 年に逝去されているので、私は勿論 お顔も拝したことはない。しかし鳥学会設立の 3 巨星 鷹 司信輔、黒田長礼、内田清之助のうちお二人については、 昭和 24 年日本生物地理学会記念大会の記念写真である。 すでに前稿及び本稿で触れたが、内田清之助先生について 前列向って右から山階芳麿、黒田長禮、蜂須賀正氏の三先 は触れることができなかった。 生が並んでおられ、2列目左端には高島春雄先生の顔も見 私が鳥のことを好きになり、鳥のことを多少なりとも知 える。 るようになったのは、中西悟堂の野鳥ガイドや数々の随筆 往時を偲び、誠に勝手ながら部分的に引用させていただ に親しんだことによることも勿論であるが、それより以上 いた。 に内田先生の脊椎動物大系鳥類、日本鳥類図説、鳥学講話 などの著書やその時々の随筆などによって勉強させてい 表題脇のカット及び右のカットは ただいた賜物である。 昭和 25 年ごろの「野鳥」誌にあった 特に「脊椎動物大系鳥類」は私にとって鳥類学の教科書 筆者の落書きカットで、懐かしさに であり、百科全書であった。 東京大空襲の時には、なけ 甘えて転載したものである。 15 2011 年度第 6 回理事会議事録 2012年 2月26日 参加者; 議題1 筧 栗林 田村 内藤 福原 巻島 松田 小林(オブザーバー) 役員会について 1.今までの理事、および監事は 名称を役員と改め、理事会は役員会とする。 以上のように規約を改正する。 2.役員間で 情報を徹底するために 役員の方は全員 OFFICER ML に加入してもらうよう働きかけることになった。 (監事のたぶき さんと和田さんにも加入してもらう。PC を使わない人には FAX 対応も考える) 3.HP 委員会の活動内容が不透明(浜中さん欠席のため詳細分からず)。 議題2 芳名帳 1. 前回議題となった芳名帳について栗林さんがいくつかのサンプルを提示。カード式はバラバラになりやすく管理が難しいので、 名前と住所(次回の案内希望者のみ)、コメントまたは連絡事項のみのシンプルなものとする。アンケートは何のために行うか目 的がはっきりしないしていないので今のところ行わない。 2.JAWLAS のロゴを入れられないか?(柳川さんに相談する) 3.芳名帳の管理は各展覧会の担当者が行い、次回の案内希望者には担当者が対応する。 4.芳名帳は3回(次回から数えて2回目)終了時まで担当者が保管し、その後破棄する。 5.入会希望者については筧さんに連絡するとともに入会要綱のコピー(制作済み)を核会場に配布する。 6.展覧会担当者はそれぞれ芳名帳用紙と入会要綱のコピーをもっていてください。 議題3 役員人事 1.会長を含む新役員人事については4月22日の役員会で、総会提案議題とともに審議することになりました。 2.渡辺靖夫氏、小林ひろみ氏の両名が新役員候補として推薦されました。 議題4 会員証 前回提案された会員証については、会員証を作る代わりに JAWLAS のロゴ入りの名刺(ご自身で名前を入れてコピーするように)を作って はどうかという案が出された。 以上 編集後記 文責 松田蘭子 本誌の「表紙をどうするか」では、いつも頭を悩ましている。展覧会の際の記念写真を表紙にする案は我ながら名案と思っていたが、この 案は年間3回しか使えないし、ややマンネリになった感もぬぐえない。苦労の種である。 本号では藤原栄美さんの論文を転載させて頂き、それに対す る質疑応答を掲載した。JAWLAS のこれから向う方向への模索の第一歩のつもりである。JAWLAS が標榜する日本のワイルドライフアートとは何か! JAWLAS の今後の在り方如何? など JAWLAS の新しい綱領を作るための静かな知的論争がこの通信の中で行われることを期待したい。 16