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平成16年度
特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書
小売業商標のサービスマークとしての登録及び
コンセント制度導入に対応する審査の在り方に関する
調査研究報告書
平成17年3月
財団法人
知的財産研究所
【お知らせ】
2002年(平成14年)7月3日に決定された知的財産戦略大綱において、従来の
「知的所有権」という用語は「知的財産」、「知的財産権」に、「工業所有権」という用語
は「産業財産」、「産業財産権」に、それぞれ改めることとなりました。本報告書におい
ても、可能な限り新しい用語を使用しております。
※法律名や組織名については、一部従来の用語のまま使用しております。
要約
Ⅰ.コンセント制度、小売業サービスマーク導入検討の背景
企業活動においてブランド価値の創造が重要な課題となっており、ブランド価値を象徴
的に伝達する手段である商標を保護する商標法の在り方について、産業構造審議会知的財
産政策部会商標制度小委員会で制度全般について議論を進めている。その議論の中で、特
に「小売業商標のサービスマークとしての取扱いを検討する」及び「類似及び混同を生ず
るおそれに係る審査について、コンセント制度を検討する」に関しては、現行の審査運用
の在り方と密接に関係するものであることから慎重な検討が必要とされている。
そこで、本調査研究では委員会を組織し、小売業商標のサービスマークとしての登録や
コンセント制度の導入、及び、現行の審査運用についての具体的な見直しの必要性につい
て議論した。
Ⅱ.コンセント制度の導入の検討
1.コンセント制度導入についての検討課題
検討事項
日本におけるコンセント制度はどうあるべきか。
1.法制化により導入する場合
(a)コンセントは、どのような権利に基づくものか。
(b)「類似であるが登録をする」のか。「非類似として登録する」のか。
(c)4条1項11号以外の相対的理由についても認めるのか。
(d)同一でも、登録を認めるのか。
(e)コンセントがあった旨を登録原簿等に明示する必要があるか。
(f)コンセントと審査官の判断の関係をどのように整理するのか。
(g) 同意をした商標権者以外の者も、拒絶理由通知で引用された商標権の存在による
異議申立てや無効審判請求はできないとするか。
(h)同意をした商標権者又は第三者が、同意をした商標権者の所有するほかの商標権の
存在による異議申立てや無効審判請求は可能か。
(i)4条1項11号に限定してコンセント制度を導入した場合、コンセントにより登録
になった後で、同じ商標権を引用してほかの理由で異議申立てや無効審判請求をする
ことは可能か。
(j)甲の登録商標A、甲のコンセントを得た乙の登録商標A’がある場合、甲又は乙が、
それぞれ自己の登録商標と類似のものを使用した場合はどうなるのか。
(k)甲の登録商標A、甲のコンセントを得た乙の登録商標A’がある場合、甲がA及び
A’の両商標に類似するA”の商標を出願したときは、A”はA’の存在により拒絶
i
されるか。
(l)甲の登録商標A、甲のコンセントを得た乙の登録商標A’がある場合、AにもA’
にも類似する商標であるとする拒絶理由を通知された丙の出願商標A”が登録を受け
るためには、甲及び乙のコンセントが必要か。
(m)甲の登録商標A、甲のコンセントを得た乙の登録商標A’がある場合、甲は乙に対
して、又は、乙は甲に対して、それぞれの登録商標の使用に対して、排他権の行使は
できないということを明記するのか。
(n)コンセントの提出は、いつでも可能とするか。
(o)コンセントの出願係属中の取下げや登録後の撤回は可能か。
(p)「対価」の問題に対する対応策はあるか。
(q)コンセント制度により類似商標の併存登録になることによる弊害防止のための具
体的な対策を考えるべきか。
(r)コンセント制度導入に消極的な業界もあるが、法制化の際に配慮は必要か。
(s)事実上完全型であれば、運用でも十分可能ではないか。
2.運用により導入する場合
(a)コンセントがあることで登録する場合、非類似で登録する建前でよいか。
(b)引用商標権者のコンセントを最大限に尊重するという審査運用は可能か。
3.その他
(a)同意書の取扱い。
(b)コンセントを交渉中なので審査を猶予して欲しいという上申書があった場合の取
扱い。
(c)類似商品・役務審査基準の見直しや、全類指定出願の排除等の不使用商標対策等の
施策の必要性。
(d)商標の補正で要旨変更の基準を緩和して欲しいとの要望についての考え方。
(e)商標ブローカー対策。
2.検討課題に対する意見
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
1. (a)コンセントは、先行権利者の商標排他権に基づく。
(b)11号とコンセントの関係は「類似であっても混同を生ずるおそれがない」という
建前。したがって、法改正が必要。
(c)コンセントは相対的拒絶理由に該当する先行権利の全てに認めるべき。
(d)同一商標・同一商品(役務)については、
「混同を生ずるおそれがある」として、
登録は認められない。
(e)公報に公示し、登録原簿にも記載すべき。
ii
(f)コンセントが提出されて登録される場合でも、コンセントの必要性を明確にするた
め、審査官は、再度、類否判断をし、その結果に基づいて審査手続を進めるべき。
(g)−(i)異議申立てや無効審判請求は可能。
(j)甲又は乙は、お互いに排他権を行使することは可能。
(k)商標A”は、登録商標A’の存在を理由に拒絶。
(l)甲、乙のそれぞれからコンセントを得なければ拒絶。
(m)明記する必要はない。
(n)コンセントの提出はいつでも可能。
(o)登録査定後は撤回できない。
(p)対価を要求しうるか否かは、経済界における慣行に従って判断すべき。
(q)24条の4、52条の2の適用を考える。
(r)特段の配慮は必要ない。
(s)完全型をとる場合、運用では対処できない。
2. (a)非類似で登録。
(b)審査基準に明記することは可能だが、その徹底化が図れるかが問題。
3. (a)コンセントは、発行者の代表権限のある者の記名、押印のある書面によりなされる
べき。
(b)審査の猶予期間に、一定の制限を設ける。しかし、コンセントは最終的には登録査
定時にあればよいとすることは必要。
(c)「類似商品・役務審査基準」の見直し、指定商品・役務の記載の在り方は、コンセ
ント制度と関係なく、積極的に進めるべき。
(d)見直しが必要。
(e)要はモラルにあり、商標制度の適正な運用に係っている。
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
1. (a)コンセントとは先願商標権に基づく同意。
(b)出所の混同を生ずるおそれがなく非類似とされるべき商標について、取引の実情を
もっとも反映する当事者の意見を考慮し、登録を認めるのが本制度の趣旨。
(c)4条1項11号のみ。
(d)任意の2つの商標が、社会通念上同一の範囲にある場合はコンセントがあっても登
録されるべきでない。
(e)(f)コンセントの有無の公開・明示を求める。
(g)異議申立てや無効審判請求はできない。同意をした商標権者以外の者については、
異議申立てや審判請求を行うこと自体は可能とする意見有り。
(h)異議申立てや無効審判は可能。
iii
(i)異議申立てや無効審判請求はできない。同意をした商標権者以外の者については、
異議申立てや審判請求を行うこと自体は可能とする意見有り。
(j)甲又は乙はそれぞれ排他権の行使が可能。
(k)別途、乙からコンセントを得ない限り、登録商標A’の存在により拒絶される。
(l)丙の出願商標A”は、甲及び乙からコンセントを受けなければ登録は取得できない。
(m)明記は必要ない。
(n)コンセントの提出はいつでも可能とすべき。
(o)出願係属中のコンセントの取下げは可能。
(p)対価を求めてはならない旨の規定は不要。
(q)24条の4及び52条の2に相当する手当てを考えるべき。
(r)コンセントを与えなければ済む問題。
(s)商標法の趣旨に沿い、かつ実効性を確保した制度の実現が可能であれば、法制化に
は固執しない。
2. (a)コンセントがあることによって、混同の生ずるおそれがないと判断できるものにつ
いては登録するという考え方に賛成。
(b)審査基準での明記は最低限必要。
3. (a)同意書は必要最小限の情報のみを求める簡便なフォーマットを希望。
(b)合理的期間であれば猶予を認めるべき。
(c) 類似商品・役務審査基準の見直しは随時行うべき。又、全類指定の排除等、不使
用商標対策も検討は必要だが慎重を要す。
(d)慎重な検討を要望。
(e)特に本制度導入に際して設けるべき必要性は見いだせない。
(3)委員会での主な意見
1. (b)「類似するが混同のおそれがないから登録する」について
現行法で類似するが混同しないという解釈は成り立たない。この場合は法改正をせ
ざるを得ない。
「非類似で登録する」について
形式的には類似するかもしれないが混同のおそれはない。だから非類似という理論
を取りうるのではないか。非類似だから登録するなら問題ない。
(d)商標同一かつ商品(役務)同一の場合はコンセントがあっても登録を認めない。
(o)登録になったら、確定してしまうため、コンセントは撤回できない。
3.外国におけるコンセント制度
(1)コンセントを認めない法域:オーストリア等
iv
(2)(ⅰ)
「留保型コンセント制度」を採用する法域:(法制化)ノルウエー等、
(運用)アメリカ等
(ⅱ)「完全型コンセント制度」を採用する法域:イギリス等
(3)絶対的拒絶理由の審査しか行わない法域:OHIM 等
4.我が国におけるコンセント制度の導入について
(1)コンセント制度導入の考え方
(ⅰ)コンセント制度導入の趣旨
コンセント制度は、商標の類否判断について、取引の実情に合わせてより適正な判断を
確保するため、職権主義のもとで行われる審査官の審査を補完するものとして導入すべき。
(ⅱ)コンセント制度の内容
①混同を生ずることが明らかな以下の商標は、コンセントがあっても登録を認めない。
(a)引用の商標権と指定商品(役務)も同一で、商標も同一(社会通念上同一と認めら
れる商標を含む)の場合
(b)引用の登録商標が周知・著名商標である場合
②コンセントは、商標法第4条第1項第11号のみ認める。
(2)コンセント制度のモデルケース
(ⅰ)審査官をどの程度拘束することとするのか。
純粋な完全型及び純粋な留保型の折衷案である「準完全型」
(コンセントがあった場合に
は(1)(ⅱ)①(a)、(b)の場合を除き全て登録する)が現実的な解決法。
(ⅱ)法律上明文化すべきか。
①運用による準完全型
審査基準等により統一した運用によって、コンセントがあった場合に、
(1)
(ⅱ)①(a)、
(b)の場合を除き全て登録。登録の考え方は、
引用商標権者のコンセントがあった場合には、
『出願商標は、引用商標と非類似と推定して登録する』。
②法制化による準完全型(混同概念導入型)
法律に「コンセントがあった場合には、(1)(ⅱ)①(a)、(b)の場合を除き全て登録す
る」旨を明記する方法で、現行商標法の4条1項11号の規定の中に「混同の概念」を導
入した上で準完全型のコンセントに関する規定を設ける。登録の考え方は、引用商標権者
のコンセントがあった場合には、
『出願商標は、引用商標とは類似であっても混同を生じな
いものとして登録する』。
(3)コンセント制度検討の方向
(ⅰ)本委員会では、まず、
「運用による準完全型」で行うこととし、その後、不都合が出
v
てくるような場合に、改めて法改正を含めて検討するという意見が多数を占めた。
法制化(混同概念導入型)については、
「混同を生ずるほどに類似」という概念が商標法
全体に導入されることになるのであれば、コンセント導入の法制化もスムーズになしうる
ため、この場合は「法制化による準完全型(混同概念導入型)」も取り得る。
(ⅱ)コンセント制度の運用に関しての必要な検討
①コンセント交渉のための特別な期間は設ける必要はない。
②コンセントがあった旨の情報は、公報、IPDL等で開示すべき。
③同意書の内容は、
「出願に係る商標の登録について同意する」旨で足りる。
(ⅲ)コンセント制度の導入に併せて必要な検討
①類似商品・役務審査基準の見直しを行うべき。
②第3条第1項柱書の運用の強化を図るべき。
Ⅲ.小売業商標のサービスマークへの拡大の検討
1.小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討課題
検討事項−1
(1)小売りサービスの内容、及び、いかなるものとして登録するのか
(a)商標法上の商品・役務は「独立して商取引の目的たり得べきもの」という要件が
必要か。
(b)特定の店舗内における商品の品揃え等の顧客に便宜を図るためのサービス自体が、
近年、独立した経済価値のある役務として認め得る状況が形成されてきているといえ
ないか。
(c)役務の具体的な内容は、
「特定の商品の品揃え、陳列等、顧客の便宜を図るための
サービス」であって、「商品の販売」は含まないでよいか。
(d)インターネット等を利用した「顧客の便宜を図るためのサービス」も同様に考え
られるか。
(e)「総合小売業」のみか、「単品小売業」もか。
(f)法改正は必要か。
(g)経過措置は必要か。
(2)小売業商標のサービスマークとしての指定役務の表示の在り方の検討
(a)「小売り」に係るいかなる権利をサービスマークとして認めるのか。
(b)「小売りサービス」に「商品の販売」を含まない場合、役務の適切な表示は、ど
うあるべきか。
(c)指定役務の表示は、どうあるべきか。
(d)小売業商標に係る指定役務の表示に関する具体的運用案の提示
検討事項−2
vi
「商標権に係る商品・役務の指定の在り方」と「商標の定義」・「商標の使用の定義」との
関係等の検証
(4)商標の使用が問題になったとき、商品商標とサービスマークとでは立証の仕方に相違
があるか。
(5)小売業商標のサービスマークとしての登録に関して、保護対象を「総合小売り」のみ
ならず「役務といえるもの」は全て対象とすることはできるのか。
検討事項−3
(1)登録を認める小売業商標に係る役務同士の類似関係の整理
2.検討課題に対する意見
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
検討事項−1
(1) (a)小売りサービスの本質は、
「顧客の商品購入の便宜を図るための品揃えというサー
ビスを提供すること」と考えられ、その対価はそのサービスの提供を受ける個々の消
費者が支払う商品購入価額に上乗せされていると考えれば、小売りサービスは「他人
のために行う便益の提供であって、それ自体が商取引の目的」となっていると考えら
れる。
(c)「商品を販売する」ことは、有償で顧客に商品を譲渡することであり、
「小売りする」
サービスは、有償で顧客に対する商品購入の便宜を提供するサービスである。
(d)インターネット等を利用した「顧客の便宜を図るためのサービス」も(c)と同様。
(e)総合小売業と個別商品の小売業とを商標登録の指定役務とした場合、差別する必
要はない。
(2) (a)小売りサービスを「顧客の商品購入の便宜を図るための品揃えというサービス」
と解すれば、登録された商標に与えられる権利の範囲は、係るサービスの範囲になる。
(b)−(d)「∼の小売り」「∼の卸売り」という表示は認められるべき。
検討事項−2
(4)商標が商品商標である場合とサービスマークである場合とで、当該標識が指定商品に
使用されているのか、役務に使用されているのかの確認に差異はない。
(5)「商品の小売り」の本質は、「顧客の商品購入の便宜のために商品の品揃えをする」
ということであり、これは「総合小売り」に限られるものでない。
検討事項−3
(1)商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあり、役務に類似するものの範
囲には商品が含まれることがあることは、商標法に定められているところである。審査
の場においては、4条1項11号ではなく、15号適用の問題と考えられ、それをもっ
て処理されている。小売りサービスと商品との関係も、同様に考えてよい。
vii
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
検討事項-1
(1) (a)2条1項2号の括弧書きは、
「小売業商標」を役務商標として理解する可能性を排
除するものではない。
(b)「小売業商標」は、各種商品の品揃え、陳列、接客等を中心とした顧客への労務
又は便益を識別し選択するための標識として、通常の役務商標と何ら変わりのない出
所表示機能、品質保証機能、広告宣伝機能といった商標の基本的機能を果たしており、
小売業者に係る信用が化体する役務商標として保護に値する財産的価値を十分有し
ている。「独立取引性」とは商標がある行為について使用されたときにその行為を表
象する商標として保護に値する財産的価値を有するか否かという観点から弾力的に
とらえても実質的に問題ない。
(c)「小売り」という役務の内容は、
「商品の販売に当たり、当該商品を販売する者に
より提供される品揃え、陳列、接客等顧客の購入の便宜を図るためになされる一連の
サービス」。
(d)インターネット等の提供形態においても「商品の販売に当たり、品揃え、陳列、
サイバー空間の特質を利用したユニークな接客等顧客の購入の便宜を図るためにな
される一連のサービス」がある。
(e)まずは「総合小売り」のみ法上の役務として登録を認めるでもいい。
(f)小売業商標を役務商標として登録を認めるとした場合に2条1項の改正の可否に
ついては、現行のまま2条1項2号で十分読めるし、また、これに起因した使用の定
義(2条3項)の改正も必要ではない。ただし、確認的に「小売り」を商標法上の役
務として扱う旨の規定を置くことは、検討に値する。
(g)経過措置については、その対象を「総合小売り」に限り、また、解釈論で解決で
きるのであれば、商標法施行規則別表の改正をもって、その他特段の措置は必要ない。
(2) (c)単なる「小売りサービス」のみの表示には反対であるが、
「小売り」の用語の点に
ついては議論する必要を感じない。
(d)総合小売りサービスの表示例としては、①「AにおけるB」、②「AによるB」の
態様が考えられ、①の場合、Aへの挿入例は「百貨店」等、特定の単品商品を想起し
ない販売店の名称であればよく、Bへの挿入例は「他人の便宜のために各種商品を揃
え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図るサー
ビス」等で十分である。②の場合、Aへの挿入例は「カタログ販売」等、特定の単品
商品を想起しない販売方法の名称であればよく、Bへの挿入例は①と同様。
検討事項-3
(1)「総合小売り」のみ法上の役務として登録を認めるのであれば、クロスサーチの必要
もないと割り切ってもいい。
viii
(3)委員会での主な意見
検討事項−1
(1) (a)「小売りサービスに独立の商取引性の要件を認める場合、小売りサービスは通常
考えられている独立の商取引対象とは言えないので、運用で割り切って考えてしまう
か、それが無理ならば、法改正するしかない。」等の意見があった。
(b)「日本のブランドを高め、経営の資源として考えることが知財推進計画で言われ
ているところなので、その観点から保護すべきものなのかどうかの議論をしても良い
のではないか。コンビニエンスストアで品揃えがいいとかいうのも確かに価値のある
ようなサービスだし、そこで使っている標章というのは保護しなくてはいけない。ま
た、三越で買えば真正品がいつでも買える、また、包み紙にオーソリティーがあると
いったようなことに期待している。それであれば、そこにも価値を認めていいのでは
ないか。」等の意見があった。
(c)「小売りサービスのサービスマークとして認めるところのポイントは、買い物の
ために品を揃えたりというところにサービスの本質があるということである。国際的
なサービスの記載の仕方に沿って、販売を外したらいい。
」
「小売りサービスが販売を
含むか含まないか、どちらでもよい。法改正の要否だけが問題である。実態的には変
わらない。」等の意見があった。
(d)「ニーズだけでいくのであれば総合小売りだけでいい」等の意見があった。
検討事項-3
(1)「百貨店の小売りサービスについては、小売りサービスと商品商標との類否判断は、
販売を含めるか、含めないかとは関係なしに、類否判断をする必要がない」
「商品との類
否判断は、小売りサービスに販売を含めるか否かに関係なしに、本来はやる必要がある」
等の意見があった。
3.外国における小売業サービスマーク
(1)小売りサービスを役務として認めない国:ドイツ等
(2)小売りサービスを役務として認める国
①「小売りサービス」という広い指定役務を認める国:オーストラリア等
②「百貨店」
「百貨店の小売りサービス」「特定商品の小売りサービス」という小売り
サービスに係る分野や形態表示を認めている国:アメリカ等
③ニース国際分類第8版に記載されている表示「他人の便宜のために各種商品を揃え
(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」
と記載する国:イギリス等
ix
4.小売業商標のサービスマークとしての登録について
(1)商標法上の役務について
商標法上の役務については、
「独立して商取引の目的たり得べきもの」
であることが必要。
(2)小売りサービスの独立性
小売りサービスを商標登録の対象とするためには、
『法で「商標法上の役務」として扱う』
という法改正対応による考え方が適当。
(3)小売りサービスの内容(「販売」を含むか否か)
小売りサービスとして保護して欲しいというニーズがあるのは、
「品揃え、陳列等」であ
ること、
「小売りサービスには、販売も含まれる」という考え方をとると、これまで販売標
識として位置付けてきた商品商標に係る商標権との整理が困難になることから、
『商標登録
の対象とする「小売りサービス」とは、商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入
の便宣の提供のみである』の考え方が適当。
(4)総合小売りサービスのみか、単品小売りサービスもか。
小売りサービスとしての商標登録のニーズは、
「総合小売りサービス」のみであることか
ら、まず「総合小売りサービス」のみの保護でスタートすべきで、このような方向性の適
否をパブリックコメントに付すことが適当。
(5)小売りサービスに係る役務商標と商品商標との審査上の類否判断
総合小売りサービスのみが商標登録の対象であれば、商品商標との類否は不要。
(6)小売りサービスに係る役務商標同士の審査上の類否判断
「総合小売りサービス」のみの保護を考える場合、
(ⅰ)全ての総合小売りサービス同士
を類似の扱いにするという考え方と、
(ⅱ)同じ総合的な小売りサービスであっても、その
内容によって非類似と整理する必要もあるという考え方がある。
(7)指定役務としての表示例
小売りサービスの指定役務表示は、商品商標との混乱を生ぜしめないように、「小売り」
の用語は使用せずに、例えば「商品の購入の便宜の提供」等の用語を使用すべき。なお、
「総合小売りサービス」の具体的表示を検討する際は、
「総合小売りサービス」として認め
うる具体的な範囲について、今後検討していく必要がある。
(8)施行日
「小売りサービス」についての国際分類の注釈が変更される国際分類第9版の発効に合
わせて、平成19年1月1日(の出願)から施行することが適当。
(9)経過措置の必要性
商標登録の対象を「総合小売りサービス」のみとした場合で、
「小売りサービスには販売
は含まない」
、
「審査上は、小売りサービスに係る役務商標と商品商標間の類否判断は不要」
という考え方で整理するのであれば、最小限の経過措置で済み、大掛かりな経過措置は必
要ないと考えられるが、具体的な内容については、今後検討していく必要がある。
x
Ⅳ.まとめ
本委員会では、コンセント制度の導入及び小売りサービスのサービスマークとしての登
録の可能性について、議論を行い、以上のような結論に至った。残された課題は、コンセ
ント制度に関しては、不使用商標問題について、
「全類指定」の排除だけでは到底解消でき
ないので、別の不使用商標対策を考える必要があること、準完全型コンセント制度の前提
ともいわれる「類似商品・役務基準」の見直しの検討(短期間で、コンピュータシステムを
含む大変な作業とコストを伴うため、このようなロードを特許庁に求めることが可能かど
うか等の検討)等であり、小売りサービスに関しては、小売りサービスの標識に係る商標
権の効力範囲及びみなし侵害となる範囲、商標法 50 条の商標の使用の範囲といった制度の
根幹に係わる部分、指定役務としての表示例、経過措置の必要性の有無についての運用上
の問題等である。
xi
はじめに
我 が 国 の 現 行 商 標 法 は 、昭 和 3 4 年 に 公 布 さ れ て 以 来 、登 録 商 標 の 使 用 義 務 の
強 化 、サ ー ビ ス マ ー ク 登 録 制 度 の 導 入 、ニ ー ス 協 定 、商 標 法 条 約 、マ ド リ ッ ド 協
定 議 定 書 等 の 諸 条 約 へ の 参 加 等 、内 外 情 勢 に 対 応 す べ く 数 次 の 改 正 を 重 ね て き た
が 、 近 年 の 情 報 技 術 の 活 用 に よ る IT 化 社 会 の 急 速 な 進 行 、 経 済 の グ ロ ー バ リ ゼ
ー シ ョ ン 化 に 伴 う 企 業 活 動 の 国 際 化 等 に よ っ て 、益 々 の 迅 速・的 確 な 審 査 が 求 め
られ、また、制度の国際的ハーモナイゼーションの要請が高まっている。
一 方 、産 業 構 造 審 議 会 知 的 財 産 政 策 部 会 法 制 小 委 員 会( 平 成 1 3 年 1 2 月 )に
お い て も 、「 商 標 や 使 用 の 定 義 な ど の 基 本 的 な 問 題 、 国 際 調 和 に 適 っ た 制 度 の 在
り 方 に つ い て 見 直 し を 進 め る こ と が 必 要 」 と す る 提 案 が な さ れ 、 ま た 、「 知 的 財
産 推 進 計 画 2 0 0 4 」( 平 成 1 6 年 5 月 ) の 中 で も 「 2 0 0 4 年 度 も 引 き 続 き 、
魅 力 あ る デ ザ イ ン や ブ ラ ン ド を 活 用 し て 、よ り 価 値 の 高 い 製 品・サ ー ビ ス を 提 供
す る 環 境 を 整 備 す る た め の 具 体 的 方 策 に つ い て 、商 標 制 度 の 在 り 方 を 含 め 検 討 し 、
2 0 0 5 年 度 ま で に 結 論 を 得 る 。」 こ と が 提 案 さ れ て い る 。
さ ら に 、平 成 1 5 年 6 月 、産 業 構 造 審 議 会 知 的 財 産 政 策 部 会 商 標 制 度 小 委 員 会
に お い て 、ブ ラ ン ド 戦 略 の 拡 大 に 柔 軟 に 対 応 し た 商 標 制 度 の 在 り 方 に つ い て の 審
議 が 開 始 さ れ 、「 小 売 業 商 標 の サ ー ビ ス マ ー ク と し て の 取 扱 い 」 及 び 「 コ ン セ ン
ト 制 度 」に 関 し て も 一 度 議 論 さ れ て い る 。こ れ ら の 項 目 は 現 行 の 審 査 運 用 の 在 り
方と密接に関係するものであることから、慎重な検討が必要とされている。
こ の よ う な 状 況 の も と 、 特 許 庁 よ り 調 査 研 究 事 業 の 委 託 を 受 け 、「 小 売 業 商 標
のサービスマークとしての登録及びコンセント制度導入に対応する審査の在り
方に関する調査研究委員会」を組織し、検討課題に対して、議論を行った。
本 報 告 書 は 上 記 調 査 研 究 委 員 会 の 議 論 を ま と め た も の で あ る 。本 報 告 書 が 、我
が国における小売業商標のサービスマークとしての登録及びコンセント制度の
導入を実現する上で、参考になれば幸いである。
最 後 に 、本 調 査 研 究 の 遂 行 に 当 た り 、御 指 導 、御 協 力 い た だ い た 委 員 の 方 々 を
は じ め 、御 協 力 を い た だ い た 関 係 者 に 対 し て 、こ の 場 を 借 り て 深 く 感 謝 す る 次 第
である。
平成17年3月
財団法人
知的財産研究所
「小売業商標のサービスマークとしての登録及び
コンセント制度導入に対応する審査の在り方に関する調査研究」
委員会名簿
委員長
土肥
一史
委員
青栁
飯田
馨
恭久
井上
工藤
鈴木
茶園
松尾
本宮
吉田
内山
一橋大学大学院国際企業戦略研究科
教授
東京高等裁判所知的財産第一部 判事
日本知的財産協会 商標委員会 委員長代理
(日本電信電話株式会社知的財産センタ 担当課長)
由里子 神戸大学大学院法学研究科 教授
莞司
東京都立大学法科大学院 教授
雅博
日本知的財産協会 商標委員会 委員長
(株式会社日立製作所知的財産権本部商標センタ 部長代理)
成樹
大阪大学大学院高等司法研究科 教授
和子
中村合同特許法律事務所 弁護士・弁理士
照久
日本弁理士会 商標委員会 委員長
(岡部国際特許事務所 弁理士)
隆
株式会社三越業務部 営業法務・自店監査担当部長
誠治
(財)知的財産研究所 主任研究員
オブザーバー
脇本 眞也
田代 茂夫
小川 宗一
森吉 正美
小林 和男
芦葉 松美
酒井 福造
原田 信彦
小林 裕子
矢澤 一幸
赤星 直昭
末武 久佳
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
特許庁
事務局
内山
三阪
田口
(財)知的財産研究所
(財)知的財産研究所
(財)知的財産研究所
誠治
幸浩
昌浩
審査業務部 部長
審査業務部商標課 課長
審査業務部商標課商標制度企画室 室長
審査業務部商標課商標審査基準室 室長
審査業務部商標課商標国際分類管理室 室長
審査業務部商標課 商標審査企画官
審査業務部商標課 課長補佐(前)
審査業務部商標課 課長補佐
審査業務部商標課商標制度企画室 審査官
総務部総務課制度改正審議室 商標制度係長
総務部技術調査課 商標動向係長
審判部審判課 課長補佐(前)
主任研究員
主任研究員
研究第二部長
目次
要約
はじめに
委員会名簿
Ⅰ.コンセント制度、小売業サービスマーク導入の検討の背景・・・・
1
1.調査研究の趣旨
2.コンセント制度に関する議論の整理
3.小売業商標のサービスマークに関する議論の整理
4.商標制度の検討の背景・状況
Ⅱ.コンセント制度の導入の検討・・・・・・・・・・・・・・・・・
4
1.コンセント制度導入についての検討課題
2.検討課題に対する意見
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
(3)委員会での主な意見
3.外国におけるコンセント制度
4.我が国におけるコンセント制度の導入について
(1)コンセント制度導入の考え方(前提)
(2)コンセント制度のモデルケース
(3)コンセント制度検討の方向
Ⅲ.小売業商標のサービスマークへの拡大の検討・・・・・・・・・・
1.小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討課題
2.検討課題に対する意見
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
(3)委員会での主な意見
3.外国における小売業サービスマーク
4.小売業商標のサービスマークとしての登録について
(1)商標法上の役務について
(2)小売りサービスの独立性
( 3 ) 小 売 り サ ー ビ ス の 内 容 (「 販 売 」 を 含 む か 否 か )
(4)総合小売りサービスのみか、単品小売りサービスもか
47
(5)小売りサービスに係る役務商標と商品商標との審査上の類否判断
(6)小売りサービスに係る役務商標同士の審査上の類否判断
(7)指定役務としての表示例
(8)施行日
(9)経過措置の必要性
Ⅳ.まとめ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
84
1.これまでの経過
2.コンセント制度
3.小売りサービス
4.残された課題
Ⅴ.資料編
*
89
資料編Ⅰ
Ⅰ章に関する資料・・・・・・・・・・・・・・・・・・
資料編Ⅱ
Ⅱ 章 に 関 す る 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 107
資料編Ⅲ
Ⅲ 章 に 関 す る 資 料 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 167
本報告書は、委員会での議論を受けて各委員と事務局が執筆している。
各章の執筆分担は以下の通りである。
Ⅰ
Ⅱ.1、
事務局
2 .( 3 )、
3、
4
事務局
Ⅱ . 2 .( 1 )
本宮
照久
Ⅱ . 2 .( 2 )
鈴木
雅博
Ⅲ.1、
2 .( 3 )、
3、
4
事務局
Ⅲ . 2 .( 1 )
本宮
照久
Ⅲ . 2 .( 2 )
飯田
恭久
Ⅳ
土肥
一史
Ⅰ.コンセント制度、小売業サービスマーク導入の検討の背景
1.調査研究の趣旨
企業活動においてブランド価値の創造が重要な課題となっており、ブランド価値を象徴
的に伝達する手段である商標を保護する商標法の在り方について、産業構造審議会におい
て制度全般について議論を進めている。その議論の中において、特に「小売業商標のサー
ビスマークとしての取扱いを検討する。」及び「類似及び混同を生ずるおそれに係る審査に
ついて、コンセント制度を検討する。」に関しては、現行の審査運用の在り方と密接に関係
するものであることから慎重な検討が必要とされている。
したがって、本調査研究では、小売業商標のサービスマークとしての登録やコンセント
制度の導入、及び、現行の審査運用についての具体的な見直しの必要性について調査研究
を行う。
2.コンセント制度に関する議論の整理
「コンセント制度」に関する調査研究は、
「平成15年度知財研調査研究報告書(産業財
産権分野の制度
(商標制度)改正に係る調査研究)
」の44頁∼50頁にまとめられている。
(参考資料Ⅰ−1[91頁∼97頁]参照)
平成15年度産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会において、
「コンセント
制度」に係るテーマは第3回及び第5回に議論された。
<概要>
「コンセント制度」について
「コンセント制度」の導入の是非の検討は、平成8年法改正の延長線上にたち、登録
後の商標権の自由な処分(移転)が認められている状況の下、それを単に審査段階にお
いても認めてしまわざるを得ない状態であると考えて単純に導入してしまって問題は
ないという考え方がある一方、商標制度の全体的枠組みに影響するものであり、商標法
の目的、登録主義と使用主義、審査主義と無審査主義などの問題とからめて議論しなけ
れば導入はできないという考え方もあり、そのような中でなされた。
第3回商標制度小委員会において、「同一」「類似」「混同」を確認する具体的枠組み
の在り方等について議論がなされ、更に議論を行っていくものの「日本の現状において
は異議待ち審査はふさわしくなく、現行の審査制度は維持すべきである。コンセント制
度は導入してほしい。」旨の意見が多かったことが確認された。
そして、コンセント制度については、「混同を生ずるおそれを職権審査で一律に判断
することは困難であるため、これを補完するものとして、また、審査主義を前提としつ
−1−
つ迂遠な手続を回避する方法として、コンセント制度が導入されるべきであるとの意見
が複数の委員からあった。また、コンセントを導入する場合、先の商標権者が同意をし
た旨の証明があれば、当該商標の存在を理由とする登録拒絶理由の審査を一切行わない
ことを要望するとの意見が出された。一方、上記の審査を一切行わないと、当事者が合
意をしても需要者が商品・役務について混同を起こす場合を排除できない可能性があり、
慎重に対応する必要があるとの意見もあった。」とまとめられている。
さらに、第5回商標制度小委員会においては、今回の商標制度の見直しにおいて検討
が求められている多くの事項、具体的にはコンセント制度の導入、小売業商標のサービ
スマークとしての取扱い、防護標章制度の在り方等は、商標の制度的枠組みの在り方と
大きく関連する事項である点も考慮し、我が国商標制度の枠組みを他の国・地域の制度
と比較し、その長所・課題を踏まえた上で、相対的拒絶理由の判断の在り方と使用状態
の判断の在り方を中心として制度的枠組みの在り方について検討がなされた。その議論
において、第3回と同様に大方は相対的拒絶理由に関する異議待ち審査制度の導入には
反対であったが、一部委員から該制度導入に賛成としつつ相対的拒絶理由中著名商標や
同一商標の関連は職権審査で良いのではないかとの意見があった。
3.小売業商標のサービスマークに関する議論の整理
「小売業商標のサービスマークとしての登録」に関する調査研究は、
「平成15年度知財
研調査研究報告書(産業財産権分野の制度(商標制度)改正に係る調査研究)」の117頁
∼120頁にまとめられている。(参考資料Ⅰ−1[98頁∼101頁]参照)
平成15年度産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会において、
「小売業商標
のサービスマークの登録」に係るテーマは第4回に議論された。
<概要>
「小売業商標のサービスマークとしての取扱い」について
小売業商標のサービスマークとしての取扱いについては、小売業商標をサービスマー
クとして登録するという基本的な方向性については異論がなかったが、具体的な実施に
当たっては、どの範囲までの小売業商標をサービスマークとして認めるか、小売業商標
と他の商品商標又は役務商標との類似や混同のおそれをどのように審査するのか、小売
業商標をサービスマークとして導入するためには法改正することも必要ではないか、等
の点については更に検討が必要であるとされている。
4.商標制度の検討の背景・状況
(1)我が国の現行商標法は、昭和34年に公布され、以来、登録商標の使用義務の強化、
−2−
サービスマーク登録制度の導入、ニース協定、商標法条約、マドリッド協定議定書等の諸
条約への参加など、内外情勢に対応すべく数次の改正を重ねてきたところ、近年の情報技
術の活用によるIT化社会の急速な進行、経済のグローバリゼーション化に伴う企業活動
の国際化等によって、益々の迅速・的確な審査が求められ、また、制度の国際的ハーモナ
イゼーションの要請が高まっている。
そのような状況において、我が国の法律改正の必要性に関しては、産業構造審議会知的
財産政策部会法制小委員会(平成13年12月)においても、
「商標や使用の定義などの基
本的な問題、国際調和に適った制度の在り方について見直しを進めることが必要」とする
提案がなされている。また、知的財産戦略大綱(平成14年7月)の中でも、
「魅力あるデ
ザインやブランドを活用して、より価値の高い製品・サービスを提供する環境を整備する
ための具体的方策について、意匠制度、商標制度の在り方を含め検討し、2005年度(平
成17年度)までに結論を得る。」ことが提案され、平成15年7月8日に決定された「知
的財産推進計画」において具体的な要請が記載されている1。(なお、その見直しとして平
成16年5月27日に決定された「知的財産推進計画2004」においても同様の内容が
記載されている。)
(2)上記(1)でも述べたとおり、現行商標法は、昭和34年制定以来、平成3年、8
年など数次の一部改正がなされてきているが根本的な改正はなされてきておらず、抜本的
に見直す時期にきているのではないかとの指摘もあり、平成14年度特許庁産業財産権制
度問題調査研究(財団法人知的財産研究所への委託)の一つとして「21世紀の商標制度
構築に向けた調査研究」と題して現行商標法を改正するに当たっての検討課題の整理・議
論を行うことなどを経て、平成15年6月26日から「産業構造審議会知的財産政策部会
商標制度小委員会」において、ブランド戦略の拡大に柔軟に対応した商標制度の在り方に
ついての審議が始まった。その後、同小委員会は、平成16年7月13日までに7回開催
され、制度全般について議論を進めてきている。その審議において、大別して、(a)「定義」
関連、(b)「商標権」関連、(c)「審査の在り方」関連、の種々の項目が検討されてきた。
開催当初予定されていた検討項目については、一通り議論され、ある程度方向性が定まっ
たものもあるものの具体的には更に検討を進めていかなければならない項目も多く残され
ている。小委員会では、第7回からの議論を二巡目の議論と位置付け、一巡目で検討した
項目を掘り下げる議論や取り扱っていない項目の検討を行っていく予定となっている。
産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会において、
「コンセント制度」に係る
テーマは第3回及び第5回、
「小売業商標のサービスマークとしての登録」に係るテーマは
第4回にそれぞれ議論された。(概要詳細は、参考資料Ⅰ−2参照)
1
魅力あるブランドを活用して、より価値の高い製品・サービスを提供する環境を整備するための具体的方策について、
商標制度の在り方を含め検討し、2005年度までに結論を得る。
−3−
Ⅱ.コンセント制度の導入の検討
1.コンセント制度導入についての検討課題
(1)実際の混同を生ずるおそれの有無を職権審査で判断することの困難性、混同を生ず
るおそれがあるかどうかの判断について当事者である商標権者の意思を尊重することの妥
当性、及び、商標登録出願をいったん引用商標権者に譲渡し、権利化後に譲り受ける迂遠
な手続の回避等の観点を踏まえて、ユーザーからの希望の強いコンセント制度(先の商標
権者が同意をした場合は、その商標の存在を理由として登録を拒絶しない制度)を導入す
る方向で、その具体的な制度設計を検討する。
(注1)
(注2)
(2)コンセント制度については、
「完全型による場合」
と「留保型による場合」
が考えられるところ、ユーザーからの希望の強い現行の職権による審査主義を維持しつつ、
それぞれについて導入するとすればどのような仕組みが考えられ、その場合どのような問
題点やその解決策があるのかを検討する。
(注1)完全型コンセント制度
先の商標権者が同意をした旨の証明があれば、当該商標の存在を理由とする登録拒
絶理由の審査は行政庁の側で一切行わないとする制度
(注2)留保型コンセント制度
商標権者の同意がある場合であっても、審査官が審査を全く行わないのではなく、
同意があることを参酌しつつ「類似」や「混同を生ずるおそれ」の存在の有無につい
て審査を行うこととする制度
(3)具体的な検討を行っていく上で、次の事項をどのように考えるのか。
○「類似である」とする審査官の判断が結果的に必ずしも維持されるとは限らないこ
ともあること
○コンセントがあれば登録するとは、
「類似であるが登録する」ということなのか、
「類
似でないから登録する」ということなのか。
検討事項−1
コンセント制度導入における問題点の整理(相対的拒絶理由の判断の在り方との関係)
本制度を導入するためには、その前提として、現行の相対的拒絶理由に対する職権審査
の判断の在り方に係る基本的問題の整理及びそれらに係る問題点に対する検討を行ってお
く必要があると考えられる。
そこで、特に、以下の事項について、議論・検討を行う。
−4−
(1)審査における商標及び商品・役務の類似判断の在り方について
(a)商標法第4条第1項において、第10号、第11号、第13号及び第14号に使用
されている「類似」
、第15号に使用されている「混同を生ずるおそれ」の用語は、概念と
しての説明は明確(明確ではないという見解があるのかもしれない。
)であっても、その判
断について客観性をもたせることはかなりの困難を伴うものであり、その判断に的確性を
もたせられるように絶えず努力がなされているにすぎないものであるのではないか。
ちなみに、審査官による判断の統一化、審査の適正及び促進化を期すために特許庁が定
めた内規として「商標審査基準」
「類似商品・役務審査基準」が作成され、公表され、運用
がなされてきている。
(b)商標法第4条第1項第10号ないし同第15号における「類似」や「混同を生ずる
おそれ」についての現実の審査は、いわゆる「一般的・抽象的出所の混同のおそれ」によ
り判断されているところ、個別具体的な実情を考慮することにより結果が相違してくるこ
ともあり得る。
(c)いずれにしても、登録査定・拒絶査定の結果については、その一部が出願人又は第
三者により不服請求などなされ、審判更には訴訟を経て異なる結論が出されることもある。
このように、審査における判断はそれが絶対的なものではないのではないか。
(2)審査における「類似」と「混同を生ずるおそれ」の関係の整理
そもそも、
「類似」と「混同を生ずるおそれ」は、どのような関係にあると整理すべきか。
著名商標になって非類似の商品・役務にまで出所の混同が生じ得るというケースを除け
ば、類似とは出所の混同の生ずるおそれのあるものをいい、逆に、出所の混同の生ずるお
それのあるものは類似である(出所の混同の生ずるおそれのないものは類似とはいえない)
という考え方、すなわち、一般的・抽象的な「混同を生ずるおそれ」の範囲は、
「類似」の
範囲と同一のものであるという考え方は、妥当であるか否か。
(注)「商標の類似」及び「商品の類似」についての有名な判決として、「商標の類否
は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所につき
誤認混同が生ずるおそれがあるか否かによって決すべきである。」(最高裁昭 43.2.27
しょうざん事件判決)
、
「指定商品が類似のものであるかどうかは、・・・それらの商品に
同一又は類似の商標を使用するときは同一営業主の製造又は販売にかかる商品と誤認
される虞があると認められる関係にある場合には、・・・類似の商品にあたる」(最高裁
昭 36.6.27 橘正宗事件判決)がある。
−5−
(3)「類似商品・役務審査基準」の見直しの必要性の有無
類似商品・役務審査基準が、実態と必ずしも合致していないこと(例えば、
「第9類
動車用シガーライター」と「第12類 自動車」とが類似と扱われている、「第9類
尺」と「第16類
自
計算
文房具類」とが類似と扱われている等)が、コンセント制度導入の要
望の一つになっているのであるならば、そもそもこの基準を見直すことによって、コンセ
ント制度は不要ということになるのか。それとも、コンセント制度さえ導入すれば、継続
性との関係で、この基準の内容自体は変更しない方がいいのか。あるいは、この基準の見
直しもコンセント制度の導入も必要ということなのか。
○
類似商品・役務審査基準を作成し使用している国は極めて少ないものの、我が国
では、それなりに定着し、一定程度、公平性、透明性、統一性ある審査運用が実現で
きているのではないかと考えられるが、そもそもこのような基準自体をどのように評
価するのか。
(4)拒絶理由通知と拒絶査定・登録査定の在り方及びその問題点(引用商標の妥当性、
及び「類似商品・役務審査基準」の利用の在り方などについて)
○ 類似商品・役務審査基準について、今後とも存置し、継続して運用をするとした場
合、何か運用上改善すべき点はあるか。
○ コンセント制度は、主として、4条1項11号の拒絶理由が通知された場合の対応
策であると考えられるが、現行の4条1項11号に関する審査実務において、類似商
品・役務審査基準以外で何か問題点はあるか。その問題点を解決する方策は、どのよ
うなものがあるか。
検討事項−2
日本におけるコンセント制度はどうあるべきか(法定なのか、運用なのか)
コンセント制度はいかなるものと考えるのか。すなわち、本検討を行うことは、日本に
おいて導入する「コンセント制度」の定義を導くことにほかならない。
コンセント制度については、文献等において、様々な説明がなされてきている。例えば、
(a)
「引用の商標を所有する先登録商標権者の同意があれば、それと類似する商標を他人
に登録することを認める制度」、
(b)
「先登録の商標権等が存在しても、その商標権者等の同意があれば、同一又は類似す
る商品等について同一又は類似する商標を他人に登録することを斟酌する制度」
、
(c)
「審査官では把握しきれない具体的出所混同の可能性について、当事者(先願登録商
標の権利者)の判断を参酌することで、そのおそれがないと認められる商標について登録
−6−
への道を開く制度」、
(d)
「出願された商標が形式的には既存の他人の登録商標の類似範囲に当たるとして拒絶
の対象となる場合に、既存の登録商標の権利者が実際には混同が生じないものとして同意
(コンセント)した範囲であれば、出願された商標の登録を認める制度」
などがある。
その説明の中で使用されている「類似」、「混同を生ずるおそれ」
、「混同」などの概念を
考慮しつつ、制度を法制化により導入する場合と運用により導入する場合とを想定して、
具体的な検討を行う。
検討事項−3
コンセント制度導入の具体案の提示
検討事項の1及び2の検討をとおして、参考資料Ⅱ−1に示した「コンセント制度導入
の具体案」について、その可否、修正、補足、理論付けを行い、本制度導入に係る運用部
分と法改正部分の抽出をも行う。
●コンセント制度導入における具体的検討項目(検討事項−2関係)
1.制度を法制化により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置付け及び導入の範囲)
(a)4条1項8号の括弧書きには「承諾」が使用されているが、「コンセント(同意)」
は、どのような権利に基づく「同意(承諾)」となるのか(例えば、4条1項8号の「承諾」
は、「人格権」に基づくものである。)。
(b)類似であるとして拒絶理由を通知した場合において、コンセントがあれば、
「類似で
あるが登録をする」
(非類似として登録するわけではない)という建前になるのか。それと
もコンセントがあったということは、当事者が混同を生ずるおそれがないと判断した結果
なのであろうから、類似ではないとして登録する建前になるのか。仮に、
「類似ではあるが
登録をする」とする建前をとる場合、「類似ではあるが登録を併存させてもよい。」という
理屈はどのように整理するのか。
「類似ではあるが、混同を生ずるおそれがない」という考
え方なのか。
(「類似」と「混同の生ずるおそれ」の関係についての考え方の整理は、
「検討
事項−1」で行う。)
(c)
「コンセント」は、4条1項11号以外にも、すべての相対的理由について認めるこ
−7−
ととするのか。それとも、相対的理由の中でも認めるものと認めないものを作るのか。
(d)同一又は極めて近似しているものであっても、コンセントがあれば、登録をするこ
とにするのか。
(注)コンセントがあれば、商標同一・商品(役務)同一の場合でも、他人に登録を
認めることとするのは、使用権(25条)の重複登録となるので、少なくとも同一の
場合は法制上も無理なのではないか。台湾商標法(23条13号)のコンセント制度
のように、「商標及び商品・役務が共に同一の場合を除く。」とする方法はあり得る。
◎類似の商標1であるが登録する考え方の問題
(e)法上のコンセントがあったことにより、類似の商標の併存登録を認めるということ
にするのであれば、コンセントがあった旨を登録公報、登録原簿等で明示する必要がある
ということとなるのか。
(注)商標調査時の類否判断の便宜のため、非類似だから登録になったのか、類似だ
がコンセントがあったので登録になったのかを明確にして欲しいというユーザーから
の要望がある。
(注)4条1項8号の「承諾」については、登録公報や登録原簿等には明示されない
こととのバランスをどう考えるか。
(注)登録公報等へ記載する事項は、コンセントがあった旨だけでよいか。当該引用
商標の登録番号や同意した商標権者の氏名等も必要か。
(注)複数のコンセントによって登録になる場合、又は、複数の商品・役務を指定し
ている出願については、コンセントにより登録になった商品・役務と非類似のものと
して登録になった商品・役務とが混在する場合も想定されるところ、登録公報等への
記載が複雑になるという懸念はないか。
(f)登録公報等に掲載するということになると、コンセントは、原則として審査官から
の拒絶理由通知に基づいて行われるものであるところ、
「類似である」という審査官の判断
が結果的に必ずしも正しいものとは限らないこともあることとの関係をどのように整理す
るのか。すなわち、手続的にはコンセント制度を利用した形で登録になった場合、一応類
似であるという推認が可能ではあるが、もともと非類似というべきものもあり得るのでは
ないか。出願人も、非類似とは思っていても、形式的にコンセントを得た方が高い確率で
1
「類似の商標」
:ここでいう「類似の商標」には、商標が同一又は類似であってそれに係る指定商品・役務が類似であ
る場合と、商標が類似であってそれに係る指定商品・役務が同一である場合が含まれるものとする。
−8−
登録になるというのであれば、審査官の心証を覆すために意見書で非類似である旨を縷々
述べるよりも、コンセントを得る方を選択するということも少なくないのではないか。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、異議申立て及び無効審判と
の関係)
(g)同意をした商標権者以外の者も、拒絶理由通知で引用された当該商標権の存在をも
って、異議申立てや無効審判の請求をすることができないこととするのか。
(h)同意をした商標権者又はそれ以外の者が、同意をした商標権者の所有するほかの商
標権の存在をもって異議申立てや無効審判の請求をすることについては、可能とするのか。
(同意書に具体的な商標権を特定する必要性の有無の問題とも関連する。
)
(i)4条1項11号に限定してコンセント制度を導入した場合、コンセントにより登録
になった後で、同じ商標権を引用してほかの理由(例えば、4条1項15号)で異議申立
てや無効審判請求をすることは認めることとするのか。
(j)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’」がある場合におい
て、甲又は乙(さらには、甲又は乙から使用許諾を受けた者)が、それぞれ自己の登録商
標と類似のものを使用した場合にはどうなるのか。お互いに禁止権(37条1号)の権利
行使は可能となるのか。特に、甲(又は甲から使用許諾を受けた者)は、上記コンセント
の存在を抗弁として、乙による権利行使を免れることを可能とするのか。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、その後の出願との関係)
(k)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’」がある場合におい
て、甲がA及びA’の両商標に類似するA”の商標を出願したときは、A”はA’の存在
により拒絶されることとするのか。それとも、上記コンセントの存在を抗弁として登録さ
れることとするのか。
(l)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’」がある場合におい
て、このAにもA’にも類似する商標であるとする拒絶理由(4条1項11号)を通知さ
れた丙の出願「商標A”
」が登録を受けるためには、甲及び乙のコンセントが必要となるの
か。その場合、甲がコンセントを承諾したのに、乙がコンセントを拒否したらどうするの
か。乙の「A’」はそもそも甲のコンセントで登録になったのであるから、甲のみのコンセ
−9−
ントだけで足りるということにするのか。
(m)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’」がある場合におい
て、甲は乙に対して、又は、乙は甲に対して、それぞれの登録商標の使用に対しては、排
他権の行使はできないということを明記することとするのか。
◎手続的な問題
(n)コンセントの提出は、出願が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再
審に係属している場合には、いつでも可能とするのか。
(o)コンセントは、出願係属中に取り下げることや登録後に撤回することを可能とする
のか。いずれの場合も、その旨を明記することとするのか。また、認めないこととする場
合の理由付けはどのようなものとなるか。
(注)4条1項8号の「承諾」については、明文の規定はないが、査定前の撤回が可
能である。(最高裁 H16.6.8 判決)
◎その他の問題(公益的な配慮の問題を含む。
)
(p)コンセント制度の導入に際しては、
「対価」の問題を懸念する声があるが、何か対応
策はあるか。例えば、
「コンセントをするに際しては、対価を求めてはならない」旨の規定
は必要か。また、そのような規定を法定することは可能であるのか。
(q)コンセント制度により類似商標が併存登録になることによる弊害防止のために、ど
のような具体的な対策を考えるべきか。
(r)紛らわしい商品名による投薬ミスの問題を抱える製薬業界のように、コンセント制
度導入には消極的な業界もあるが、
法制化の際に何らかの配慮は必要か。制度はあっても、
利用しなければよいという整理だけで十分か。また、ビジネス上の関係で、コンセントの
申し込みがあった場合に断れず、意に反してコンセントをするケースも懸念されるが、特
段の配慮は不要か。
(s)事実上完全型(審査基準上に明記し、運用上の統一を図る。)であれば、法制化せず
とも、運用でも十分可能なのではないか。
−10−
2.制度を運用により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置付け及び導入の範囲)
(a)類似であるとして拒絶理由を通知した場合、コンセントがあることによって、類似
ではない(混同の生ずるおそれがない)と判断できるものについては、登録する建前にな
るとの考え方でよいか。
(b)ユーザーニーズに十分応えるため、さらには、審査官の類否判断のばらつきを増大
するおそれを防ぐという観点などからも、引用商標権者のコンセントを最大限に尊重する
という審査運用(すなわち、原則として、コンセントがあれば、類似ではない(混同の生
ずるおそれがない)として登録する。)をする(審査基準上、その旨を明記する。)ことは
可能か。
(c)同一又は極めて近似しているものであれば、コンセントがあっても、拒絶をすると
いうことでよいか。
(d)
「コンセント」は、4条1項11号以外にも、すべての相対的理由について認めるこ
ととするのか。それとも、相対的理由の中でも認めるものと認めないものを作るのか。
◎情報の開示の必要性の有無の問題
(e)公報や登録原簿には、コンセントによって登録されたものである旨を明記する必要
はないということでよいか。
3.その他、完全型及び留保型に共通の検討事項など
(a)同意書についての取扱い(同意書の文面、引用商標権者の印鑑等)は、どうするか。
例えば、現行4条1項8号の承諾書と同様の扱いで問題はないか。同意書の真正の担保の
ために、当事者間の契約書等を提出させる等は必要ないか、それとも、詐欺の行為の罪(第
79条)で十分か。
(b)コンセント制度を導入すると、審査の遅延に繋がるという懸念も指摘されていたが
(平成8年改正時)
、これに対してはどう対応したらよいか。例えば、コンセントを交渉中
なので審査を猶予して欲しいという上申書があった場合の取扱いは、どうすべきか。審査
−11−
の猶予について期限を設けること等は必要か。
(c)コンセント制度を導入するに際しては、極力、ユーザーが同制度を利用しなくても
すむような施策を講じるべき必要はないか。例えば、
「類似商品・役務審査基準」の見直し
(検討事項−1)や、いわゆる「全類指定出願」の排除等の不使用商標対策等の施策は必
要ないか。
(d)出願商標の態様を少し変更すれば、先行商標の商標権者からコンセントを得やすく
なるというケースも想定されるので、商標の補正についての要旨変更の基準を緩和して欲
しいとの要望があるが、これについてはどう考えたらよいか。
(e)コンセント制度導入に際して、商標ブローカー対策(例えば、ブローカーによるコ
ンセントの乱発や高額な対価等)は、何か考えておく必要があるか。
−12−
2.検討課題に対する意見
「1.コンセント制度導入についての検討課題」に対する日本弁理士会商標委員会、及
び日本知的財産協会商標委員会の議論の結果を本委員会で報告していただいた。その意見
を以下の「日本弁理士会商標委員会の意見」及び「日本知的財産協会商標委員会の意見」
に示す。本委員会で行った議論については「委員会での主な意見」にまとめた。
また、各委員会の意見をまとめた一覧表を参考資料Ⅱ-2に示す。
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
●コンセント制度導入における具体的検討項目(検討事項-2関係)
1.制度を法制化により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置付け及び導入の範囲)
(a)4条1項8号の括弧書きには「承諾」が使用されているが、
「コンセント(同意)」は、どのよう
な権利に基づく「同意(承諾)」となるのか(例えば、4条1項8号の「承諾」は、
「人格権」に基づく
ものである。
)。
回答:コンセント(同意)は、先行権利者の商標排他権に基づいてなされるものと考える。
(b)類似であるとして拒絶理由を通知した場合において、コンセントがあれば、「類似であるが登録
をする」(非類似として登録するわけではない)という建前になるのか。それともコンセントがあった
ということは、当事者が混同を生ずるおそれがないと判断した結果なのであろうから、類似ではないと
して登録する建前になるのか。仮に、
「類似ではあるが登録をする」とする建前をとる場合、
「類似では
あるが登録を併存させてもよい。」という理屈はどのように整理するのか。
「類似ではあるが、混同を生
ずるおそれがない」という考え方なのか。
(「類似」と「混同の生ずるおそれ」の関係についての考え方
の整理は、「検討事項-1」で行う。
)
回答:現在の『類似』に関する審査の在り方(
「商標審査基準」
「類似商品・役務審査基準」
をガイドラインとする審査)、コンセントの性格(当事者間で混同が生じないと判断
したからコンセントが出される)等を考慮すると、11号とコンセントの関係は「類
似であっても混同を生ずるおそれがない」という建前になると考えられる。したがっ
て、コンセント制度を導入するに当たっては、立法化(法改正)が必要ということ
になる。
-13-
(c)「コンセント」は、4条1項11号以外にも、すべての相対的理由について認めることとするの
か。それとも、相対的理由の中でも認めるものと認めないものを作るのか。
回答:コンセントは相対的拒絶理由に該当する先行権利のすべてに認めるべきである。
(d)同一又は極めて近似しているものであっても、コンセントがあれば、登録をすることにするのか。
(注)コンセントがあれば、商標同一・商品(役務)同一の場合でも、他人に登録を認めること
とするのは、使用権(25条)の重複登録となるので、少なくとも同一の場合は法制上も無理な
のではないか。台湾商標法(23条13号)のコンセント制度のように、
「商標及び商品・役務が
共に同一の場合を除く。」とする方法はあり得る。
回答:同一商標・同一商品(役務)について、コンセントが提出されることは通常考えら
れないが、仮にそのようなコンセントが提出された場合には、
「混同を生ずるおそれ
がある」として、登録は認められないと考えるべきである。ただし、コンセント制
度を有効に機能させるためには、いわゆる同一範囲は狭く解釈されなければならな
いと考える。これは、我が国における指定商品等の記載の在り方とも関連するとこ
ろであるが、この記載の在り方については、更に、現在認められている「包括的な
表示」やいわゆる指定商品の「全類指定」への対処策(例えば、3条1項柱書の拒
絶を厳格に適用する等)が早急に講じられなければならないと考えるところである。
◎類似の商標1であるが登録する考え方の問題
(e)法上のコンセントがあったことにより、類似の商標の併存登録を認めるということにするのであ
れば、コンセントがあった旨を登録公報、登録原簿等で明示する必要があるということとなるのか。
(注)商標調査時の類否判断の便宜のため、非類似だから登録になったのか、類似だがコンセン
トがあったので登録になったのかを明確にして欲しいというユーザーからの要望がある。
(注)4条1項8号の「承諾」については、登録公報や登録原簿等には明示されないこととのバ
ランスをどう考えるか。
(注)登録公報等へ記載する事項は、コンセントがあった旨だけでよいか。当該引用商標の登録
番号や同意した商標権者の氏名等も必要か。
(注)複数のコンセントによって登録になる場合、又は、複数の商品・役務を指定している出願
については、コンセントにより登録になった商品・役務と非類似のものとして登録になった商品・
1
「類似の商標」
:ここでいう「類似の商標」には、商標が同一又は類似であってそれに係る指定商品・役務が類似であ
る場合と、商標が類似であってそれに係る指定商品・役務が同一である場合が含まれるものとする。
−14−
役務とが混在する場合も想定されるところ、登録公報等への記載が複雑になるという懸念はない
か。
回答:コンセントがあったことにより登録された事実は、公報に公示し、登録原簿にも記
載すべきである。そして、公示・登録事項はコンセントを与えた先行権利を特定で
きるものとすべきである。
なお、4条1項8号の「承諾」も同様にするのが望ましい。
(f)登録公報等に掲載するということになると、コンセントは、原則として審査官からの拒絶理由通
知に基づいて行われるものであるところ、「類似である」という審査官の判断が結果的に必ずしも正し
いものとは限らないこともあることとの関係をどのように整理するのか。すなわち、手続的にはコンセ
ント制度を利用した形で登録になった場合、一応類似であるという推認が可能ではあるが、もともと非
類似というべきものもあり得るのではないか。出願人も、非類似とは思っていても、形式的にコンセン
トを得た方が高い確率で登録になるというのであれば、審査官の心証を覆すために意見書で非類似であ
る旨を縷々述べるよりも、コンセントを得る方を選択するということも少なくないのではないか。
回答:コンセントが提出されたときには、登録されることになるが、その場合であっても、
本来的にコンセントが必要であったか否かを明確にするため(権利範囲の明確化に
も繋がる)、審査官において、再度、類否判断をし、その結果に基づいて審査手続を
進めるべきである。このことは、類否判断の徹底化に資するものである。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、異議申立て及び無効審判との関係)
回答:コンセント適用により登録された場合であっても、通常の商標権と区別するような
取扱いは必要ないと考える。この考え方は、3条2項の適用により登録された商標
権について、通常の商標権と区別した取扱いをしていないことと同じである。この
考えに基づいて、以下の(g)ないし(m)について、回答する。
(g)同意をした商標権者以外の者も、拒絶理由通知で引用された当該商標権の存在をもって、異議申
立てや無効審判の請求をすることができないこととするのか。
回答:異議申立てや無効審判の請求自体は可能である。ただし、コンセントが無効となる
ような場合を除き、その申立てや審判請求は、「理由なし」(登録維持の決定や請求
棄却の審決)になると考えられる。
−15−
(h)同意をした商標権者又はそれ以外の者が、同意をした商標権者の所有するほかの商標権の存在を
もって異議申立てや無効審判の請求をすることについては、可能とするのか。(同意書に具体的な商標
権を特定する必要性の有無の問題とも関連する。)
回答:異議申立てや無効審判の請求は可能である。なお、そのような主張を認めるか否か
は、その後の審判の審理に委ねられることになる。
(i)4条1項11号に限定してコンセント制度を導入した場合、コンセントにより登録になった後で、
同じ商標権を引用してほかの理由(例えば、4条1項15号)で異議申立てや無効審判請求をすること
は認めることとするのか。
回答:異議申立てや無効審判の請求は可能である。なお、そのような主張を認めるか否か
は、その後の審判の審理に委ねられることになる。
(j)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’
」がある場合において、甲又は乙
(さらには、甲又は乙から使用許諾を受けた者)が、それぞれ自己の登録商標と類似のものを使用した
場合にはどうなるのか。お互いに禁止権(37条1号)の権利行使は可能となるのか。特に、甲(又は
甲から使用許諾を受けた者)は、上記コンセントの存在を抗弁として、乙による権利行使を免れること
を可能とするのか。
回答:甲又は乙は、お互いに排他権を行使することは可能である。
したがって、甲が乙にコンセントを与えた場合であっても、当該コンセントの存
在を抗弁として、乙による権利行使を免れるものではない。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、その後の出願との関係)
(k)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’
」がある場合において、甲がA及
びA’の両商標に類似するA”の商標を出願したときは、A”はA’の存在により拒絶されることとす
るのか。それとも、上記コンセントの存在を抗弁として登録されることとするのか。
回答:商標A”は、登録商標A’の存在を理由に拒絶されることになる。
(l)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’
」がある場合において、このAに
もA’にも類似する商標であるとする拒絶理由(4条1項11号)を通知された丙の出願「商標A”」
が登録を受けるためには、甲及び乙のコンセントが必要となるのか。その場合、甲がコンセントを承諾
−16−
したのに、乙がコンセントを拒否したらどうするのか。乙の「A’」はそもそも甲のコンセントで登録
になったのであるから、甲のみのコンセントだけで足りるということにするのか。
回答:甲、乙のそれぞれからコンセントを得られなければ登録され得ない。
(m)甲の「登録商標A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標A’
」がある場合において、甲は乙に
対して、又は、乙は甲に対して、それぞれの登録商標の使用に対しては、排他権の行使はできないとい
うことを明記することとするのか。
回答:明記する必要はない。
◎手続的な問題
(n)コンセントの提出は、出願が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に係属して
いる場合には、いつでも可能とするのか。
回答:コンセントの提出はいつでも可能とすべきである。
(o)コンセントは、出願係属中に取り下げることや登録後に撤回することを可能とするのか。いずれ
の場合も、その旨を明記することとするのか。また、認めないこととする場合の理由付けはどのような
ものとなるか。
(注)4条1項8号の「承諾」については、明文の規定はないが、査定前の撤回が可能である。
(最高裁 H16.6.8 判決)
回答:登録査定後はコンセントの撤回はできないとするのが良いと考える。登録後も撤回
できるとすると、権利が不安定なものになるとともに、既に使用をしていた場合の
手当て等も考慮しなければならなくなるからである。
◎その他の問題(公益的な配慮の問題を含む。)
(p)コンセント制度の導入に際しては、
「対価」の問題を懸念する声があるが、何か対応策はあるか。
例えば、「コンセントをするに際しては、対価を求めてはならない」旨の規定は必要か。また、そのよ
うな規定を法定することは可能であるのか。
回答:コンセントの発行に対し対価を要求しうるか否かは、経済界における慣行にしたがっ
−17−
て判断すべきである。既に商標使用の分野では、先行権利者が出願人に代わり商標
登録し、しかる後にライセンスバックやアサインバックする手法が採られているが、
これらの場合と同様に考えるべきである。ただし、諸外国におけるコンセントにつ
いては、対価を求めないのが普通であるから、何らかの形でこの点を指導するよう
なことは必要と思われる。
(q)コンセント制度により類似商標が併存登録になることによる弊害防止のために、どのような具体
的な対策を考えるべきか。
回答:24条の4、52条の2の適用を考えるべきである。
(r)紛らわしい商品名による投薬ミスの問題を抱える製薬業界のように、コンセント制度導入には消
極的な業界もあるが、法制化の際に何らかの配慮は必要か。制度はあっても、利用しなければよいとい
う整理だけで十分か。また、ビジネス上の関係で、コンセントの申し込みがあった場合に断れず、意に
反してコンセントをするケースも懸念されるが、特段の配慮は不要か。
回答: 特段の配慮は必要ないと考える。
(s)事実上完全型(審査基準上に明記し、運用上の統一を図る。)であれば、法制化せずとも、運用
でも十分可能なのではないか。
回答:完全型をとる場合、相対的拒絶理由の適用の有無は、運用では対処できないと考え
る。
2.制度を運用により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置付け及び導入の範囲)
(a)類似であるとして拒絶理由を通知した場合、コンセントがあることによって、類似ではない(混
同の生ずるおそれがない)と判断できるものについては、登録する建前になるとの考え方でよいか。
回答:このような建前になると思われる。
運用で対処という場合には、コンセントが提出されたときには、
「混同は生じない
(つまり、
『類似』ではない)→11号には該当しないので登録する」という考え方
を採らざるを得ないと思料する。そして、そのためには、15号を「混同を生ずる
−18−
おそれがある商標」を排除するための包括規定としてとらえるとともに、11号(先
行権利との類似)は混同を生ずるおそれのある商標の具体例を規定したものととら
え、かつ11号の『類似』を最高裁判所の判断の内容で考える必要があると思われ
る。
(b)ユーザーニーズに十分応えるため、さらには、審査官の類否判断のばらつきを増大するおそれを
防ぐという観点などからも、引用商標権者のコンセントを最大限に尊重するという審査運用(すなわち、
原則として、コンセントがあれば、類似ではない(混同の生ずるおそれがない)として登録する。)を
する(審査基準上、その旨を明記する。)ことは可能か。
回答:審査基準に明記することは可能と思えるが、この基準は法律に優位するものではな
いので、その徹底化が図れるか、という点が問題であると考える。
また、基準で明記した場合であっても、無効審判での争いの対象となるという点
は依然として残ることになる。
(c)同一又は極めて近似しているものであれば、コンセントがあっても、拒絶をするということでよ
いか。
回答:上記1(d)と同様に考えるべきである。
(d)「コンセント」は、4条1項11号以外にも、すべての相対的理由について認めることとするの
か。それとも、相対的理由の中でも認めるものと認めないものを作るのか。
回答:上記1(c)と同様に考えるべきである。
◎情報の開示の必要性の有無の問題
(e)公報や登録原簿には、コンセントによって登録されたものである旨を明記する必要はないという
ことでよいか。
回答:運用で対処する場合には、コンセントにより登録されたものである旨を明記する必
要はないという結論に至ると考えられるが、
「コンセントの提出あり」等を参考情報
として載せること等を検討すべきである。
−19−
3.その他、完全型及び留保型に共通の検討事項など
(a)同意書についての取扱い(同意書の文面、引用商標権者の印鑑等)は、どうするか。例えば、現
行4条1項8号の承諾書と同様の扱いで問題はないか。同意書の真正の担保のために、当事者間の契約
書等を提出させる等は必要ないか、それとも、詐欺の行為の罪(第79条)で十分か。
回答:コンセントは、発行者の代表権限のある者の記名、押印のある書面によりなされる
べきであり、当該書面には、出願番号と共に、コンセントの対象たる相手方の商標
及びこれを使用する具体的な商品・役務が明示され、発行者がそれに基づいてコン
セントを発行する自己の登録商標を記載し、発行者は当該書面に記載された出願商
標が当該書面に記載された商品・役務に登録され、使用されることに異議なく同意
する旨の記載がなされていることが必要と考える。
(b)コンセント制度を導入すると、審査の遅延に繋がるという懸念も指摘されていたが(平成8年改
正時)、これに対してはどう対応したらよいか。例えば、コンセントを交渉中なので審査を猶予して欲
しいという上申書があった場合の取扱いは、どうすべきか。審査の猶予について期限を設けること等は
必要か。
回答: 審査の猶予期間に、一定の制限を設けることはやむを得ないことと考える。しかし、
コンセントは最終的には登録査定時にあればよいとすることは必要である。
(c)コンセント制度を導入するに際しては、極力、ユーザーが同制度を利用しなくてもすむような施
策を講じるべき必要はないか。例えば、「類似商品・役務審査基準」の見直し(検討事項−1)や、い
わゆる「全類指定出願」の排除等の不使用商標対策等の施策は必要ないか。
回答:
「類似商品・役務審査基準」の見直し、指定商品・役務の記載の在り方(いわゆる「全
類指定出願」の排除、指定商品・役務の包括表示を認めない等)は、コンセント制
度と関係なく、積極的に進めるべきである。また、商品・役務にあっては、日々新
しいものがでており、類似・非類似の判断も取引状況のいかんにより変化するもの
であるので、
「類似商品・役務審査基準」は、固定させるべきものではなく、適時適
切な見直しを図るべきである。
なお、不使用商標対策を講じ、コンセント制度を機能させるためには、不使用取
消審判に係る請求人の費用負担の軽減も図られるべきである。現在、一つの登録(又
はその登録の一部)に対して不使用取消審判を請求する場合、
「区分」という概念の
下に、
「区分数」に応じた審判手数料が徴収されているが、不使用取消審判において
は、取消を求める「請求に係る商品」という概念の下、その立証活動がなされるも
−20−
のであり、その中には、
「区分」という概念は何らでてこないものである。にもかか
わらず、審判手数料の徴収は「区分」単位でなされており、このことは請求人に過
度の負担を強いるものである。したがって、不使用商標の排除により一層の促進を
図り、コンセント制度を機能させる(本当にコンセントが必要な場合のみのコンセ
ントとするため)には、不使用取消審判における請求人の費用負担の軽減が図られ
て然るべきであると考える。
(d)出願商標の態様を少し変更すれば、先行商標の商標権者からコンセントを得やすくなるという
ケースも想定されるので、商標の補正についての要旨変更の基準を緩和して欲しいとの要望があるが、
これについてはどう考えたらよいか。
回答: 出願商標の補正に関する現在のプラクティスは、あまりにも硬直しており、コンセ
ント制度と関係なく、見直しが必要である。
(e)コンセント制度導入に際して、商標ブローカー対策(例えば、ブローカーによるコンセントの乱
発や高額な対価等)は、何か考えておく必要があるか。
回答:商標ブローカーは、どのような制度を考えても、存在し得る。要はモラルにあり、
商標制度の適正な運用に係っていると思われる。
(本宮
照久)
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
(ⅰ)検討事項-2
①コンセント制度を法制化により導入する場合の具体的検討
当協会ではコンセント制度とは、審査官では把握しきれない具体的出所混同の可能性に
ついて、当事者(先願登録商標の権利者)の判断を参酌し、そのおそれがないと認められ
る商標について登録への道を開く制度と考えている。
当協会は必ずしも法制化によるコンセント制度(以下、「本制度」という。)の導入に固
執するものではないが、各検討項目については下記のとおり考える。
-21-
(a)
コンセントはどのような権利に基づくものか
本制度の導入を検討する上で、その位置付け、すなわち、本制度を導入する根拠・理由
が重要と考えるが、コンセントがどのような権利に基づき認められるのかについては必ず
しも明らかではない。この点、例えば法第 4 条第1項第 8 号において他人による「承諾」
についての規定があるが、これは「人格権」に基づくものとされている。
審査・登録主義を採用する我が国商標法の規定にかんがみるに、私人である先願商標権
者がこれに類似する他人の商標出願の登録にコンセント(同意)する権利を有するかにつ
いては疑義なしとはできない。しかし、コンセントの本質について考えてみるに、先願商
標権者が自らの禁止権を行使しないことを他人に約するものと理解することができる。し
たがって、コンセントとは先願商標権に基づく同意と考えることができるのではないだろ
うか。
(b)
「類似であるが登録」か「非類似としての登録」か
法第 4 条第1項第 10 号、11 号、15 号の審査において、その要件となる「類似」
、「出所
混同」などは、取引の実情を考慮したうえで行うものとされており、審査官は審査基準の
下で客観的・専門的な観点からこれら出所混同のおそれの有無等について判断している。
しかし、審査は審査官による職権探知を基本にしていることから、取引の実情の把握に
はおのずと限界があり、審査官にとっては非常に困難な要求であろうことも想像に難くな
い。そこで、取引の実情に関して最も実態を把握していると考えられる当事者(先願登録
商標の商標権者)の意見が審査に反映されることで、現行の審査制度の補完を目指すのが
本制度の導入を求める主な理由である。
すなわち、本来、出所の混同を生ずるおそれがなく非類似とされるべき商標について、
取引の実情を最も反映する当事者意見を考慮し、登録を認めるのが本制度の趣旨と考えて
いる。
なお、「類似」と「混同」の概念については法律上定義されておらず、必ずしも明確では
ないが、最高裁判例2、及び「混同」に関する法第 4 条第 1 項第 15 号の規定が「類似」に
関する同 11 号の包括規定と位置付けられる現行法の下では、「類似であるが混同は生じな
い」との考え方は採れないと思われる。ただし、少数ではあるが、審査実務においては、
「類似するが混同のおそれがない」場合が現実には存在し、かかる場合には、コンセント
により、登録が認められるケースもあり得るとする意見があったことを付記する。
2
「氷山事件」判例(最高裁43年2月27日
民集22巻2号399頁)
−22−
(c)
コンセントの適用について
コンセントの適用対象となる拒絶理由については、法第 4 条第 1 号第 11 号のみを考えて
いる。同第 10 号及び 15 号は、11 号と同様に先の他者商標の存在を理由とする私益的拒絶
理由であり、コンセントの適用対象にすべきとの考えもあるが、これら規定の適用に際し
ては、類似や出所混同のみならず、周知・著名性も考慮されるため、その性格上コンセン
トに馴染み難いと考える。また、周知・著名商標に係る先願商標権者自らが、稀釈化を招
くおそれのあるコンセントを認めるケースは極めてまれと考えられるため、適用対象とす
る実益も見いだせない。
(d)
同一又は極めて類似している商標の扱い
任意の二つの商標が、社会通念上同一の範囲にある場合はコンセントがあっても登録さ
れるべきでないと考える。上記のとおり、コンセント制度とは出所の混同のおそれがない
ことを理由に登録を認めるものと考えており、
「社会通念上同一の範囲」
(法第 50 条第1項
括弧書きと同範囲を想定)にある場合には、出所の混同のおそれは否定し得ないと思われ
るためである。
(e) (f)
公報・登録原簿等での明示の必要性について
商標の採択は、通常、事前の商標調査により、登録の可能性及び他社権利との抵触性が
検討された上で決定される。そうした検討において、先行商標の出願履歴は重要な判断材
料となる。
コンセントによる登録商標は、主として、他人の先願登録商標に類似するとの拒絶理由
通知を受けた案件が考えられるが、類似するとの拒絶理由通知は結果的に必ずしも正しい
とは限らないケースがある。また、そもそも、先願権利者からコンセントを得るまでもな
く意見書等により拒絶理由が覆っていたであろうケースもあり得るため、コンセントの有
無を公開することに実益がないとの考えも可能である。しかし、こうした審査の限界を認
識した上で、当協会として、本制度が導入される場合には、コンセントの有無を公開・明
示を求めている。ユーザーにとって、コンセントの提出によって審査官の判断が覆った可
能性があるという事実は、商標採択のリスク判断を行う上で極めて重要な情報と考えるか
らである。
なお、明示される媒体として、登録原簿、公報、特許庁ホームページの電子図書館が考
えられるが、特にこだわらず、いずれかの媒体に明示されればよいと考える。
−23−
(g) (h) (i)
異議申立て・無効審判
コンセントによる登録商標に対して、同意をした商標権者以外の者が、拒絶理由通知で
引用された商標権の存在をもって異議申立てや無効審判請求をすることも想定される。ま
た、同じ商標権を引用して他の理由(例えば法第 4 条第 1 項第 15 号)で異議申立てや無効
審判請求を行うことも想定される。
本制度を設ける以上、実効性の確保のためには、同意をした商標権者が異議申立てや無
効審判請求することは、信義則に反しできないと考える。しかし、審査制度の補完という
本制度の導入趣旨をかんがみると、コンセントを参酌して審査官が登録を認めることと、
その登録に対して第三者が無効審判を請求できるということは別次元の話であり、申立て
や請求自体を制限すべきでないとの意見があることを付記する。
なお、同意した商標権者の所有する他の商標権の存在をもって行う異議申立てや無効審
判請求については、当然、これを制限することはできないと考える。ただし、
「同意した商
標権者の所有する他の商標権」が同意した際の先願登録商標と社会通念上同一である場合
には、上記同様、請求等できないと考える。
(j)
先願登録商標とコンセントによる登録商標のそれぞれに類似する商標
コンセントは取引の実情にかんがみて、先願商標権者が出所の混同が生じるおそれがな
いと判断した結果与えるものである。すなわち、コンセントは特定の後願商標について与
えられるものであり、別の商標についてはコンセントの対象外と解するのが適当である。
したがって、先願登録商標とコンセントによる登録商標のそれぞれに類似する商標が他
人により使用された場合、お互いに登録商標を有している以上、それぞれ禁止権の行使は
可能と考える。
(k) (l) (m)
コンセントによる登録
上記(j)同様の考えにより、コンセントは個別に取得する必要があると考える。
したがって、甲の「登録商標 A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標 A’」がある場合
において、甲が A 及び A’の両商標に類似する「商標 A’
’」を出願した場合、別途、乙から
コンセントを得ない限り、登録商標 A’の存在により拒絶されることとなろう。
また、
「登録商標 A」
「登録商標 A’」に類似するとの拒絶理由通知(法第 4 条第 1 項第 11
号)を受けた丙の出願「商標 A’
’」は、別途の手段で拒絶理由を解消できない限り、甲及
び乙からコンセントを受けなければ登録は取得できないこととなる。
なお、甲の「登録商標 A」、甲のコンセントを得た乙の「登録商標 A’」がある場合におい
−24−
て、甲及び乙はそれぞれの登録商標の使用に対して排他権の行使はできないと考える。す
なわち、コンセントは出所混同のおそれがないことを当事者が認めた結果であるからであ
る。したがって、明記は必要ないと考える。
(n) (o)
コンセントの提出
コンセントの提出は、出願が審査、登録異議の申立てについての審理、審判又は再審に
係属している場合には、いつでも可能とすべきと考える。また、登録後のコンセントの撤
回については異論があるが、少なくとも、出願係属中のコンセントの取下げは、可能とす
ることを求める。
(p)
コンセントの対価
コンセントに係る対価については、私的自治の問題であり、対価を求めてはならない旨
の規定は不要と考える。
(q)
類似商標が並存登録になることによる弊害防止のための対策
法第 24 条の4及び 52 条の 2 に相当する手当てを考えるべきである。
(r)
特定の業界に対する法制上の配慮
コンセントを与えなければ済む問題と思われ、業界単位でコンセントの利用制限を設け
るのは合理的でないと考える。ただし、仮に特定の業界に固有の事情がある場合、商標法
とは別の法律でコンセントが規制されることまで否定するものではない。
(s)
法制化について
当協会は本制度の実現を求めるものであるが、商標法の趣旨に沿い、かつ実効性を確保
した制度の実現が可能であれば、法制化には固執しない。
②
制度を運用により導入する場合の具体的検討
(a) (b)
コンセントの位置付け
−25−
コンセントがあることによって、混同の生ずるおそれがないと判断できるものについて
は登録するという考え方に賛成する。
なお、引用商標権者のコンセントを最大限に尊重するという審査運用(すなわち、原則
としてコンセントがあれば類似ではない(混同の生ずるおそれがない)旨を審査基準上明
記すること)の「可否」については、当協会の判断すべき事項ではないと考える。ただし
運用によりコンセント制度を導入する場合にはその実効性をどのように確保するかが問題
であり、審査基準での明記は最低限「必要」と考える。
(c) (d) (e)
上記(ⅰ)(c) (d) (e)と同様。すなわち、社会通念上同一の範囲にあるものはコンセン
トがあっても登録されるべきでないと考える。また、コンセントは法第 4 条第 1 項第 11
号についてのみ認めるとすべきと考える。
コンセントによって登録されたものである旨は公開情報として開示されることを希望す
る。
③その他
(a)
同意書の扱い
同意書は必要最小限の情報のみを求める簡便なフォーマットを希望する。具体的には譲
渡証の構成が参考となろう。
(b)
審査の猶予
拒絶理由通知に対し、コンセント交渉中であることを理由に審査期間の猶予を求める上
申書があった場合には、合理的期間であれば猶予を認めるべきであろう。ただし、審査遅
延を防止するため、猶予については期限を設けることが必要と考える。
(c)
コンセント制度導入に際しての見直し
類似商品・役務審査基準の見直しは随時行うべきと考える。すなわち、本制度導入を求
める声が高まった背景には、審査における商品・役務の類否判断に対する不満があると認
識している。類似商品・役務審査基準は審査における類否判断を絶対的に拘束するもので
はないとはいえ、審査における影響力は大きく、取引の実情等ビジネス環境の変化に応じ
−26−
随時適正化させる必要があると考える。
また、全類指定の排除等、不使用商標対策の検討も必要である。しかし、著名商標の保
護の観点によるブローカー対策としての網羅的権利化等、不使用商標であっても必ずしも
悪と決め付けられない場合もあり、不使用商標対策については慎重に検討すべきである。
(d)
商標の補正についての要否変更の基準緩和
大文字・小文字間の変更は認めるべきとの意見があるが、従前の基準を越えた緩和まで
求めることはかえって商標制度を歪めるとの意見もあり、慎重な検討を要望する。
(e)
ブローカー対策
使用許諾についても起こり得る問題であり、特に本制度導入に際して設けるべき必要性
は見いだせない。
(ⅱ)検討事項−3
3.コンセント制度導入における実務運用の具体案(参考資料Ⅱ−1
108頁参照)
④コンセントにより登録になった商標権の効力
通常に登録になったものと同様と考える。
なお、検討事項−3 のその余の項目は上記(ⅰ)における意見との重複となるため、記載
は省略する3。
(鈴木
3
資料1に「コンセント導入にあたっての検討」を示す。
−27−
雅博)
審査の補完
→
留保型
→
コンセントの形態
-28-
→
→
完全型
(但し、25条との
関係から同一は
除く。)
法改正
運用
(法改正不要)
コンセント導
入の方法
・非類似であるから登録するとの
立場。(審査官は当初、類似する
としたが、非類似であると考え直
す)
・コンセントを法制化すると条文
の書き振りにもよるが、非類似で
あるから登録するとの考え方は
採りにくい(4-1-8号:承諾があっ
たとしても他人の肖像には変わ
り無い)
・類似であっても登録するとの
立場
・相対的拒絶理由の存在意義
は私益の保護との割り切り
・苦労してコンセントを取得しても登録
されるとは限らない
・コンセントは、いわゆる「取引の実
情」を考慮する際の一判断要素と足り
得るのか注1
・審査基準に規定しても法定の効力
要件を加重できないのではないか
・運用では結局のところ従来と変わら
ないのではないか(分りにくい)
・なぜ、類似であっても登録商標の権
利者が同意すれば登録できるかの根
拠が不明
・1条の趣旨と齟齬はないか
・「類似するが混同しない」との考え方
は、現行では採り得無い
・異議待ち審査への移行の虞(但し、
これに関しては杞憂に過ぎないとの意
見もあり)
・法改正不要、(意見書の一
部としての位置づけ)
・審査主義を維持する立場と
の整合性
・導入している他国の形態の
ほとんどが運用・法制化は別
として、留保型である
・審査官を当事者の判断で拘
束できる(必ず登録される)
・現行においても分離・分割
移転を利用することで、類似
の商標権を他人が取得でき
ることと比較しても、矛盾はな
い。
コンセントにより登録
することの意味合い
デメリット等
(疑問点)
メリット等
(合理的な側面)
JIPA商標委員会
注2: 「同一」、「類似」については条文上、明確な規定は無い。橘正宗事件(商標の類似、商品の類似)、氷山事件(商標の類似)において、
「商標が類似のものであるかどうかは、その商標を或る商品につき使用した場合に、商品の出所について誤認混同を生ずる虞があると認められるものであるかどうかというこ
とにより判定すべき」(橘正宗事件)、「商標の類否は、対比される両商標が同一又は類似の商品に使用された場合に、商品の出所に誤認混同を生ずるおそれがあるか否かに
よって決すべきであるが、それには、そのような商品に使用された商標がその外観、観念、称呼等によって取引者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すべく、
しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり、その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする。・・・その他取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤
認混同をきたすおそれの認めがたいものついては、これを類似商標と解すべきではない。」(氷山事件)
②について
コンセント導入の主たる理由が迂遠な手続きの回避等現行の手続き面の煩雑さを改善するとのことであれば、求める形態としては完全型での導入であり、その場合、運用
では無理なため法改正が必要となる。
但し、なぜ、権利者が同意すれば「類似であっても登録する」ことができるのかとの根本的な疑問が払拭できない。なお、「類似であるが混同は生じない」からであるとの考え
方は、「類似」の概念が法定されていない以上、最高裁の判例注2をみても、採り得無いと思われる。
①について
コンセントを現行審査を補完するものと位置づけ、その導入を希望するのであれば、当然に留保型での導入となり、その場合は運用で対応可能(法改正の必要は見出せな
い)と思われる。また、審査主義の維持を主張する立場とも整合性が図れる。なお、先のJIPAの意見書とは不整合はあるものの、「事実上完全型」での運用ができるのであれ
ば大筋で矛盾するものではない。(当事者が「yes」といえば何でもいいと言うわけではない。)
参考資料Ⅱ-1は、この考えをベースに置きながら、「事実上完全型」での「留保型」の実施の可能性を検討するもの(①、②の折衷案?)と思われる。
コンセントの導入にあたっては、上記の2つの考え方に大別できるのではないか。
② 分離・分割移転など
迂遠な手続き等の
回避
注1:工業所有権審議会商標問題小委員会報告書(H.7.5)抜粋
・・・私人間における任意の契約(同意書)のみを持って、客観的
に具体的出所混同を生じるか否かを判断することは困難である。
①
コンセント導入を希望す
る主たる理由
コンセント導入にあたっての検討
資料1
(3)委員会での主な意見
(ⅰ) 1.(b)「類似であるが登録」か「類似ではないとして登録」か
①「類似するが混同のおそれがないから登録する」について
・ 客観的に「類似はするが混同はしない」という場合のコンセントは、私人が決めること
になるので「類似はするが混同はしない」というものと違うものが入ってくることがあり
うることが前提となる。理念系としてこのような考え方をとるのはよいが、それしかコン
セントを認めないということはあまり意味がない。この場合は留保型にするほかない。完
全型にすると、私人間で決めてしまうことになり、客観性を担保するものが何もないこと
になってしまう。理念系として本来そういうものを救うためにコンセント制度を導入する
のはわかるが、いったん導入した以上は、それ以外のものが入ってくることは否定できな
くなる。つまり、承諾があれば審査せずに登録するのであれば、
「類似であっても登録する」
というのと同じである。弊害の防止の問題とコンセントを導入した場合にどういう規定を
するか別に考えないといけない。
・現行法で類似するけれども混同しないという解釈は成り立たない。この場合は法改正を
せざるを得ない。商標法第4条の改正が必要である。
という意見があった。
②「非類似(類似でない)で登録する」について
・ 氷山印事件3の判例より、出所の混同さえなければ非類似と考える。
・ 拒絶で類似と書いたものを、意見書を出せば非類似となることがある。コンセントもそ
れと同じと考えられないか。
・ 形式的には、類似するかもしれないが混同のおそれはない。だから非類似だという理論
を取りうるのではないか。裁判所は混同のおそれのないものは非類似としている。非類似
だから登録するなら問題ない。
という意見があった。
③類似と混同について
3
最判昭和 43 年 2 月 27 日民集第 22 巻第 2 号 339 頁
−29−
・ 第4条1項11号の類似という考え方の整理は、最高裁の判決等(氷山印事件等)によ
ると、出所の混同を生ずるおそれのあるものが類似、類似のものは出所の混同を生ずるお
それがあるという対の関係、イコールの関係にあると理解をしている。類似であっても混
同のあるものは除くと、類似と混同の概念が違うということになってしまう。
という意見に対して、
・第4条1項15号で言っている「出所の混同を生ずる場合」と11号で判断基準として
いる「出所の混同を生ずるおそれ」とでは判断基準が違う。11号は類似としか考えてい
ない。類似の中でも実質的に混同が生ずるものだけが除かれているのだということを今ま
で考えたことがない。類似というのは、類似の概念であくまでも判断されるものだと認識
している。類似の中でも、例えば訴訟の中で、類似していると一般的・抽象的に判断する
と特許庁では言っている。そう判断をしたものについて、訴訟で上がってきたときに、現
実には混同は生じませんよという反証ができることになると、今までの訴訟のやり方と
ちょっと違ってくる。現実の裁判では、混同を生じるのかどうかの判断まではしていない。
一般的・抽象的に誤認・混同を生ずるかという判断基準と、15号の誤認・混同を現実に
生ずるかどうかという判断基準とは違うという認識でいる。
・ 「類似であるけれども、登録していい」という立場であっても混同のおそれがないから
コンセントを出す。類似概念と混同概念とは違うと考える。
という意見があった。
(ⅱ)
1.(c)コンセントを4条1項11号以外の相対的理由について認めるか
・商標法第4条1項10号における周知性の強さは、全国どこでも知られているというよ
うな、広い周知性まで要求しておらず、周知性がどの程度及んでいるかという点で、かな
り問題がある。そういう意味では職権審査の補完で、当事者がお互いにいいといえば登録
を認めてもよいので、10号についてはコンセントの対象に入れてもいいのではないか。
先使用権のときの周知性は、登録のときよりも狭くていいという議論がされている。それ
は一般的に肯定されているので、10号については、コンセントがあってもいいのではな
いか。
という意見に対して
・10号の場合、全国周知の場合もあるし、近県数県での周知の場合もある。つまり、広
−30−
い周知と狭い周知の両方含むわけである。コンセントが問題になるのは狭い周知だけのこ
となので、それを法文に書くのは難しいのではないか。また、近県数県の場合でも、使用
している関係上、それが潜在的に広がるという可能性もある。だから、コンセントの対象
としては11号だけでいいのではないか。
という意見があった。
(ⅲ)
1.(d)同一であっても、コンセントがあれば、登録をすることにするのか
基本的には商標が同一でかつ商品(役務)が同一の場合はコンセントがあっても登録を
認めない。
ただし、以下に示すような意見があった。
・マークが似ていても(商品が「類似商品・役務審査基準」上類似ではあるが)商品が違
う場合、商品が違うから混同は生じない。そこで、コンセントが出される。ただし、日本
の場合には登録商標の指定商品が広い範囲でとれるため、後から出願した方が幾ら狭い範
囲で、つまり、A、B、Cというものがあったとき、先願はAは使っているが、Cは使っ
ていないのでそのCの範囲で登録を望んだとしても、一応原簿上は登録が残っているため、
そこのところでコンセントをもらって、それを提出したとしても基本的には同一商品だと
いうことで、拒絶される関係に当然なってくる。そういう意味で不使用をかければいいで
はないかという話もあるが、例えば2年以内であればコンセントをもらって、不使用をか
けなくてもそれを提出すればオーケーというような形も考慮していかないといけないので
はないか。全部が具体的な商品同士であれば、ある意味では同一商品に関しての同一商標
のコンセントというのはあり得ない。ただし、今の登録の原簿上はそのスタイルにはなっ
ていないのではないか。
・ 商標同一・商品同一で使っていないところをコンセントするという場合、同一・同一で
の登録は認めないので、商品の同一をはずし、同一でなくすことになる。同一をはずすの
は査定時までであり、はずさないでおいていくのは認めない。しかしながら、この場合、
相手方に頼んで放棄書を出して権利抹消登録してもらう必要があるので抵抗が大きくなる。
よってこの場合、コンセント制度は機能しないと考える。
・商標の同一・類似と商品の同一・類似は法律で分けて規定している。一緒にして考える
と混乱が生じる。特に、商品に関しては、同一に幅があり、また、類似幅も広い。その商
品の同一・類似の幅を変えないで導入しようとすると大変である。区分の中にいろいろな
商品があることも問題である。審査基準、類似の範囲の見直しが必要である。
−31−
(ⅳ)1.(e)コンセントの明示
・ コンセントがあったことを公表してもらいたいというのは、非類似だから登録されたの
か、類似でもコンセントがあるから登録されたのかを見分けたいためだけと考える。この
場合、公表が本当に必要なのかどうか疑問がある。似ているような立場の商標があるとき、
両方とも特許庁で登録された。一方は、コンセントをもらって登録されているのに、他方
は、それと同じくらい非類似の幅があるのにコンセントなしに登録されているとか、かえっ
て調査して迷ってしまって難しくなるのではないか。だから、別に公表しなくてもよいの
ではと考える。
・包袋に入っているのだから同じだとは思うのだが、コンセントの公表は使い方によって
は禁反言等に利用されるのではないだろうか。
という反対意見に対して、
・ 調査をするときに、本来、なぜこの商標が登録になっているのかがわからないときがあ
る。その事情が、結局コンセントであった場合、それを調べてたどり着かない限りわから
ない。コンセントが公表されている場合、公表を見て、本来だと、これは登録にならない
ようなものがなぜ登録になったのか、それが全部住みわけられる。そういう意味で公表さ
れたほうがよいと考える。
という意見があった。
(ⅴ)1.(o)コンセントの撤回について
・登録になったら、確定してしまうため、コンセントは撤回できないと考える。例えば、
優先権主張は、登録になったり、係属になったりすると取り下げができないから。
という意見があった。
−32−
3.外国におけるコンセント制度
日本における「先願又は先登録商標との抵触に係るコンセント制度」を検討するに当た
り、諸外国のコンセント制度の状況についてまとめる。
平成13年度の知的財産研究所の調査研究1では、世界 28 法域(アメリカ、欧州共同体
商標意匠庁(OHIM: Office for Harmonization in the Internal Market)、イギリス、ド
イツ、フランス、オーストリア、ベネルックス、カナダ、デンマーク、イタリア、ノルウ
ェー、スペイン、スウェーデン、スイス、中国、香港、インド、インドネシア、韓国、マ
レーシア、シンガポール、タイ、オーストラリア、ニュージーランド、アルゼンチン、イ
スラエル、メキシコ、ロシア)に対してコンセント制度の実施状況に関する海外調査を行
った2。
この調査研究では、先願又は先登録商標との抵触に係るコンセント制度において、
(1)コンセントを全く認めない法域。
(相対的拒絶理由の審査は行っているが、コンセ
ントによる拒絶理由の克服を全く認めない法域(国))
(2)相対的拒絶理由の審査を行い、コンセントによる拒絶理由の克服を認める法域(国)
。
(3)絶対的拒絶理由の審査しか行わないため、いわば「隠れた」コンセント制度が採
用されていると評価できる法域(国)。(絶対的拒絶理由(商標が識別力を持つか否
か等)しか審査しないため、相対的拒絶理由(先願商標があるか、先願商標と混同
を起こすか否か等)に関しては、異議申立ての手続を行うことにしており、したが
って、後願商標の存在を知りながら異議申立てを行わないことは、黙示のコンセン
トを与えているといえる。これが「隠れた」コンセントとしての機能である。)
の三つの法域に分類し、更に、(2)を
(ⅰ) コンセントがあっても混同のおそれがない場合に限って登録を認めるとする
「留保型コンセント制度」を採用する法域(国)
(ⅱ) コンセントさえあれば相対的拒絶理由の克服を認める「完全型コンセント制度」
を採用する法域(国)
に、分類した3。調査対象国を法域ごとに分類すると、
(1)コンセントを全く認めない法域
○オーストリア、アルゼンチン、中国、韓国、インドネシア、タイ
(2)
(ⅰ)「留保型コンセント制度」を採用する法域
1
「商標の保護対象等に係る国際調和に関する調査研究報告書」(平成 13 年度特許庁工業所有権制度問題調査報告書)
((財)知的財産研究所、2001 年 3 月)
。
2
知財研平成 13 年度報告書・前掲注(1)177 頁。(参考資料Ⅱ-3、4参照)
3
知財研平成 13 年度報告書・前掲注(1)177 頁。(参考資料Ⅱ-3、4参照)
−33−
○法制化:ノルウェー、スペイン、シンガポール、スウェーデン(スウェーデン
は(3)に移行を検討)
○運用:アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、香
港、インド、マレーシア、イスラエル、ロシア
(ⅱ)「完全型コンセント制度」を採用する法域
○法制化:イギリス、デンマーク(デンマークでは 99 年以降、実務は(3)の絶
対的拒絶理由に基づいてのみ審査)
(3)絶対的拒絶理由の審査しか行わない法域
○OHIM、ドイツ、フランス、イタリア、スイス、ベネルックス
となる。
なお、平成 13 年度の調査研究以後の改正として、
①
インドにおいて、1999 年商標法が 2003 年 9 月に施行され、
(完全型)コンセント制
度が法制化された。
②
香港において、イギリス 1994 年商標法に準拠した商標法(2000 年 5 月改正)が 2003
年 4 月に施行され、運用の留保型コンセント制度から法制化された完全型コンセント
制度に移行した。
また、上記 28 法域以外で、コンセント制度を採用していなかった台湾が、商標法を改
正(2003 年 5 月改正、11 月施行)し、(完全型)コンセント制度を法制化している。
上記 29 法域(台湾含む)に加えて、その他の外国の先願又は先登録商標との抵触に係る
コンセント制度の実施状況を文献4ならびに各国商標法5,6,7で調査した。(参考資料Ⅱ-5参
照)
商標法を調査して、コンセント制度を法制化していると考えられる国は、以下の通りで
ある。(参考資料Ⅱ-6に条文を示す。)
(ⅰ)「留保型コンセント制度」
バルバドス、フィンランド、ギリシャ、インド、ノルウェー、ポルトガル、シンガポ
ール、スリランカ、スペイン、スウェーデン
①
シンガポール商標法では、コンセントがある場合、登録官の裁量により、商標を
登録することができる。これらと同様な法制を取っているのがバルバドス、スリ
4
5
6
7
E. Horwitz, “World Trademark Law and Practice” Matthew Bender, 1982 to date
「外国工業所有権法令集」(AIPPI 日本部会)
「知的財産法令集(CD-ROM 版)」(日本国特許庁、2002 年版)
各国特許庁(商標庁)ウエブサイト
−34−
ランカである。
②
ギリシャ商標法では、コンセントがある場合には、類似商標で、公共の利益に反
し、かつ公衆に混乱を引き起こすおそれがある場合を除いて登録が認められる。
スペインが同様な法制を取っている。
③
ノルウェー、スウェーデン、フィンランド等の商標法ではコンセントがある場合、
その他の障害がないことを条件に登録を認めている。
(ⅱ)「完全型コンセント制度」
イギリス、香港、台湾、インド、ベリーズ、ブルガリア、チェコ、
(デンマーク)、エ
ストニア、ハンガリー、アイスランド、アイルランド、マケドニア、モルドバ、ポー
ランド、ルーマニア、スロバキア、南アフリカ、スーダン
①
イギリス商標法では、コンセントがあれば「商標同一、商品又は役務同一」の場
合であっても登録される。同様な法制を取っているのは、香港、ベリーズ、チェ
コ、(デンマーク)、エストニア、ハンガリー、アイルランド、マケドニア、モル
ドバ、スロバキア等である。
②
台湾商標法では、コンセントがあれば「商標及び商品又は役務が同一の場合を除
いて」登録される。同様な法制を取っているのは、インド、ブルガリア、ポーラ
ンド等である。
参考として、諸外国の Letter of consent の例を参考資料Ⅱ−7に示す。
−35−
4.我が国におけるコンセント制度の導入について
我が国においてコンセント制度を導入するとした場合における、本委員会の制度設計の
考え方、運用等の整理は以下のとおりである。
(1)コンセント制度導入の考え方(前提)
我が国がコンセント制度を導入するに際しては、どのような型の制度を導入するにして
も(すなわち、完全型か留保型か、又は法制化か運用かを問わず)、次のような考え方を前
提とする。
(ⅰ)コンセント制度導入の趣旨(目的)
コンセント制度は、商標の類否判断について、取引の実情に合わせてより適正な判断を
確保するため、職権主義のもとで行われる審査官の審査を補完するものとして導入すべき
である。
4条1項11号の拒絶理由が通知された場合、商標登録を得るために、実務上、当該商
標登録出願により生じた権利を引用商標権者に一度譲渡して商標登録を得た上で、再譲渡
(分離・分割移転)を行う等の迂遠な手続が利用されることがあるが、ユーザーにはこの
ような迂遠な手続を取らなくても商標登録を得たいとのニーズがあり、コンセント制度導
入は、こうしたニーズに応えることになる。しかし、出所の混同を防止して商取引の秩序
の確立・維持を図ることが、商標制度の基本的な考え方であることにかんがみると、コン
セント制度の導入の趣旨(目的)は、商標の類否判断について、取引の実情に合わせてよ
り適正な判断を確保するため、職権主義のもとで行われる審査官の審査を補完するものと
解することが相当であり、迂遠な手続の回避は、コンセント制度を導入した結果生ずる反
射的効果と位置付けられる。
(ⅱ)コンセント制度の内容
①上記の趣旨から見て、混同を生ずることが明らかな商標については、コンセントがあっ
ても登録を認めないこととすべきである。
そうすると、コンセントがあれば無条件で審査官を拘束しすべて登録をするという、い
わゆる純粋な「完全型」の採用はありえない。
したがって、少なくとも、次のような商標は、出所の混同を生ずることが明らかなので、
コンセントは認めるべきではない。
−36−
(a)引用の商標権とは、指定商品(役務)も同一で、商標も同一(社会通念上同一と認
められる商標を含む)の場合
(b)引用の登録商標が周知・著名商標である場合
(ただし、この場合であっても、グループ企業(関連企業)の関係にあるときには、
商標法で規制しようとする混同自体が生じないので、(a)でいう同一商品(役務)に
ついての同一商標の場合以外は、コンセントを認めることとする。まさに、このよう
なケースがコンセントを認めるべき典型的事例といえるものである。)
②コンセントは、商標法第4条第1項第11号についてのみ認めるのが適当である。
相対的拒絶理由のうち、第4条第1項第10号、第12号及び第15号は既に引用の登
録商標の周知・著名性が確立されたものを対象とするものであること、第13号はそもそ
も引用の商標権が存在しないこと、第14号は本人も含めて重複登録の排除規定であるこ
とから、いずれもコンセントの対象外とする。
(なお、第10号についてはコンセントの対
象とすべきとの意見も一部にあったが、
「類似商品・役務審査基準」を取引の実情を反映し
たものに見直すこととするのであれば、第11号のみでよいということとなった。)
(2)コンセント制度のモデルケース
(ⅰ)審査官をどの程度拘束することとするのか。
上述のように、商標制度の目的から見て、コンセントがあれば無条件で審査官の判断を
拘束しすべて登録をするという、いわゆる純粋な「完全型」の採用はありえない。
一方、コンセントがあっても審査官が類似である(出所の混同を生ずるおそれがある)
と判断をした場合には登録を認めないこととする、いわゆる純粋な「留保型(審査官裁量
型)」は、現行の商標制度やその運用(法目的、類似と混同との関係、審査主義等)とは矛
盾がないという点でメリットがあるものの、すべて審査官の裁量に委ねられる(審査官の
判断を全く拘束しない)ので、出願人が引用商標の商標権者と交渉をしてコンセントを取
得しても登録されるとは限らず、結局のところ、従来と変わらないということになるので
あれば、必ずしもユーザーニーズに合致しないというデメリットがある。
そうしてみると、諸外国には完全型や留保型を採用する国もあるものの(下記<参考>
参照)、我が国においては、商標制度の目的及びユーザーニーズ等を考慮すると、純粋な完
全型及び純粋な留保型は、いずれも必ずしも適当とはいえず、両者の折衷案としてのいわ
ゆる「準完全型」(すなわち、コンセントがあった場合には、上記(1)(ⅱ)①(a)、(b)
の場合を除き、すべて登録することとするスキームをいう。
)が現実的な解決法である。
−37−
<参考>
完全型を採用する国の例
英国商標法(5条(5))
「先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を与えた場合には、この条のい
かなる規定も、その登録を妨げるものではない。」
台湾商標法(23条1項13号)
「同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願された商標と同一又は類似
であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるもの。但し、当該登録商標又は先
に出願された商標の所有者がその出願に同意するときは、この限りでない。
(互いの商標及び使用
にかかる指定商品又は役務が共に同一である場合を除く)。」
留保型を採用する国の例
スペイン商標法(12条(2))
「ただし、同一又は類似の商品、サービス又は事業活動についての先の商標又は商号の出願又は
登録と類似する商標は、出願人が先の登録の所有者の真正な書面による同意書を提出し、かつ、
必要があれば混同の危険を防止する適切な措置を講じた場合は、登録することができる。」
シンガポール商標法(8条(6))
「先の商標の所有者又はその他の先の権利の所有者が登録に同意を与える場合、登録官は自己の
裁量により、商標を登録することができる。」
(ⅱ)法律上明文化すべきか。
コンセント制度の内容を「準完全型」にすることを前提にして論を進めると、さらに、
これを運用で行う方法と、法律上に明文化して行う方法があり得る。
いずれの方法も、上記(1)
(ⅱ)①(a)、(b)の場合以外は審査官の判断を拘束するとい
う点で内容を同じくするものの、コンセントがあったことにより登録する場合の考え方の
整理を異にする。
①運用による準完全型
これは、法制化を行わず、運用によって、コンセントがあった場合には、上記(1)
(ⅱ)
①(a)、(b)の場合を除きすべて登録することとするものである。
その場合において登録をするときの考え方は、引用商標権者のコンセントがあった場合
−38−
には、
『出願商標は、引用商標とは非類似と推定して登録する』というものである(資料2、
資料3(1)参照)。これを、審査基準等により統一した運用を行うのである。
<メリット>
(a) 法改正を待たずに、直ちに施行可能である。
(b) 現行の商標制度やその運用(法目的、類似と混同の関係、審査主義等)との矛盾
がない。
(c) ユーザーのニーズに合致し、譲渡・再譲渡を利用する、いわゆる迂遠な手続を回
避することもできる。
<デメリット>
審査基準等に、例えば、「コンセントがあった場合には、上記(1)(ⅱ)①(a)、
(b)の場合を除き、出願商標は引用商標とは非類似(混同を生ずるおそれがない)と
推定することとする」と書くだけでは、必ずしも全審査官の統一した運用の実現可能
性を懸念する声がある。
②法制化による準完全型
これは、法律に、「コンセントがあった場合には、上記(1)(ⅱ)①(a)、(b)の場合を
除きすべて登録する」旨を明記する方法である。
なお、これには、現行商標法の4条1項11号の規定自体は改正をしない「現行11号
型」と、4条1項11号の規定の中に類似の概念の他に混同の概念を入れる改正をする「混
同概念導入型」がある。
a.現行11号型
現行商標法の4条1項11号の規定をそのままにした上で、準完全型のコンセントに関
する規定を設けるものである。
その場合において登録をするときの考え方は、引用商標権者のコンセントがあった場合
には、『出願商標は、引用商標とは類似であっても登録する』という整理である。
<メリット>
(a) 法律で明記されているので、審査官を当事者の判断で拘束でき、必ず登録するこ
とが担保される。
(b) ユーザーのニーズに合致し、譲渡・再譲渡を利用する、いわゆる迂遠な手続を回
避することもできる。
<デメリット>
(a) 「類似ではあっても、引用登録商標の権利者が同意さえすれば、登録を可能とす
る」という考え方は、「需要者の利益保護」を目的の一つに掲げる商標法(1条)
の趣旨と整合性がとれない。
−39−
(b) 現行の4条1項11号の適用にあたり、「類似ではあるが混同を生じない」とい
う考え方は、商標・商品の類似は商品の出所の混同を生ずるおそれがあるかどう
かで判断すべきとする最高裁判決(氷山判決、橘正宗判決)やその他数多くの東
京高裁判決で示されている考え方とは齟齬がある。
(c) コンセントがあったことによる商標登録の法的効果等に関して、法律上漏れなく
整理・手当て(例えば、コンセントの法的性格、原簿・公報への掲載、当該引用
商標権又は引用商標権者所有の他の商標権に基づく異議申立てや無効審判請求の
認否、併存することとなる類似の両商標権間の効力、類似商標の併存による弊害
防止措置等々)をすることが必要となり、しかも、その際には、コンセントがあ
ったことにより登録された場合において、必ずしも、本願と引用の商標・商品が
類似であるとはいえないものも結果的にありうることとの整理もしなければなら
ない。
また、法改正型に固執すると、法律審議の場において上記問題がすべて明確に
クリアできなければ、結果的にコンセント制度を導入すること自体が見送りとさ
れる事態も予想される。
(d) 一部、無審査主義を導入することを法で明記することとなるが、これは本来的に
は現行の職権による審査主義とは矛盾する考え方であるとの指摘もあるところ、
場合によっては、この矛盾解決のために、ユーザーの多くが反対する異議待ち審
査制度導入の議論が再燃する懸念もある。
b.混同概念導入型
現行商標法の4条1項11号の規定の中に「混同の概念」を導入した上で(
「類似」の概
念を「類似」と「混同」に分け、例えば、
「混同を生じさせるほどに類似するもの」とか「類
似であって混同を生じさせるおそれがあるもの」のごとく規定する。
)、準完全型のコンセ
ントに関する規定を設けるものである。
その場合において登録をするときの考え方は、引用商標権者のコンセントがあった場合
には、
『出願商標は、引用商標とは類似であっても混同を生じないものとして登録する』と
いうものである(資料3(2)参照)。
<メリット>
(a) 法律で明記されているので、審査官を当事者の判断で拘束でき、必ず登録するこ
とが担保される。
(b) ユーザーのニーズに合致し、譲渡・再譲渡を利用する、いわゆる迂遠な手続を回
避することもできる。
(c) 前出最高裁判決との関係では、類似と混同の概念を別のものにすることによって、
類似でも登録できることの根拠が規定できる。
−40−
<デメリット>
(a)コンセントがあったことによる商標登録の法的効果等に関して、法律上漏れなく
整理・手当て(例えば、コンセントの法的性格、原簿・公報への掲載、当該引用
商標権又は引用商標権者所有の他の商標権に基づく異議申立てや無効審判請求の
認否、併存することとなる類似の両商標権間の効力、類似商標の併存による弊害
防止措置等々)をすることが必要となり、しかも、その際には、コンセントがあ
ったことにより登録された場合において、必ずしも、本願と引用の両商標・商品
が類似であるとはいえないものや、混同を生じさせるおそれがあるとはいえない
ものも結果的にありうることとの整理もしなければならない。
また、法改正型に固執すると、法律審議の場において上記問題がすべて明確に
クリアできなければ、結果的にコンセント制度を導入すること自体が見送りとさ
れる事態も予想される。
(b) 一部、無審査主義を導入することを法で明記することとなるが、これは本来的に
は現行の職権による審査主義とは矛盾する考え方であるとの指摘もあるところ、
場合によっては、この矛盾解決のために、ユーザーの多くが反対する異議待ち審
査制度導入の議論が再燃する懸念もある。
(c) 4条1項11号の規定中に、「混同」の概念を持ち込むことにより、商標法全体
への影響が大きい。
(3)コンセント制度検討の方向
(ⅰ)
「運用による準完全型」を検討すべきである。
以上のように、コンセント制度については、いろいろな型のスキームが考えられる中で、
ユーザーニーズ及び法制上の実現可能性を考慮すると、
「運用による準完全型」と「法制化
による準完全型(混同概念導入型)
」の二つの型を検討すべきと考えられる。
本委員会では、運用でも、ある程度ユーザーニーズに応えられることを考えると、必ず、
法改正をしなければならないとする説明は困難なので、運用で行うこととし、その後、不
都合が出てくるような場合には、改めて法改正を含めて検討することがよいのではないか
ということで、
「運用による準完全型」を支持する意見が多数を占めた。審査基準では、統
一した運用を危惧する声もあるが、その運用内容についての庁内外への周知、さらには、
産業構造審議会(知的財産政策部会商標制度小委員会)の答申への明記等により、統一し
た運用の徹底化は可能であると思われる。
(ちなみに、商品の形状についての立体商標の識
別性の審査基準の厳格化が実現できているのも、その旨を明記した同答申の存在の効果が
−41−
大きい。)
なお、法制化(混同概念導入型)については、コンセント制度導入のためのみに、新た
な概念を導入する改正は困難かもしれないが、現在、商標権の効力範囲について、「類似」
と「混同を生ずるおそれ」の概念整理についての議論も行われてきているところ、例えば、
「混同を生ずるほどに類似」とか「類似であって混同を生ずるおそれがあるもの」という
ような概念が商標法全体に導入されることとなるのであれば、コンセント導入の法制化も
スムーズになしうるのではないかということで、考え方としては、
「法制化による準完全型
(混同概念導入型)」もあり得るとされた。
(ⅱ)コンセント制度の運用に関して必要な検討を行う。
①コンセント交渉のための特別な期間は設ける必要はない。
現行の審査運用で行われている譲渡交渉等の猶予期間(3ヵ月程度)と同じ取扱いとす
るのが適当である。
②コンセントがあった旨の情報は、参考情報として何らかの方法(公報、IPDL等)で
開示すべきである。
③同意書の内容は、「当該出願に係る商標の登録について同意する」旨で足りると解する。
提出されるべき同意書における同意の内容(文言)については、多くの諸外国の運用が
そうであるように、
「当該出願に係る商標の登録について同意する」旨で足り、本願商標と
引用商標とが「非類似である」とか、
「出所の混同を生ずるおそれはない」等とまでの記載
を求める必要はないと考える。
(ⅲ)コンセント制度の導入に併せて必要な検討を行う。
コンセント制度は、ユーザーの強いニーズとの関係で導入するものであるところ、同制
度は、本来は職権審査主義とは矛盾するものとの指摘があることや、ユーザーにとっても
コンセントの交渉をすること自体は負担になりうることをも考慮すれば、同制度を導入し
た場合であっても、ユーザーがなるべく利用しないで済むに越したことはないので、その
ような方策も併せて検討すべきである。
①類似商品・役務審査基準の見直しを行うべきである。
ユーザーの中には、
「類似商品・役務審査基準を実態に合わせた形に見直しをするのであ
れば、コンセント制度はなくてもいい。」という声すらあり、その意味で、類似商品・役務
−42−
審査基準の取引の実情に合わせた見直しを行うべきである。
②第3条第1項柱書の運用の強化を図るべきである。
商標法は、第3条第1項柱書で、使用の意思のない商品・役務についての商標登録は認
めないという考え方を示しているところ、審査運用でもこの考え方を徹底すべきである。
すなわち、商標登録出願に際しては、一つの出願(同一料金)で、同じ商品及び役務の区
分であれば、幾つでも商品・役務が指定できることとなっているために、多くの出願は、
「類似商品・役務審査基準」等に例示として掲げられている商品・役務を、その使用の意
思の有無とは関係なくすべて指定してくる(いわゆる「全類指定」
)というのが通例である。
その結果、他人の先行商標との抵触が多くなってくるのである。
第3条第1項柱書の運用で、このような使用の意思のない商品・役務を含む全類指定等
を排除することができれば、その結果、コンセント制度の利用も少なくて済むこととなる
のではないかと思われる。
−43−
資料2
運用による準完全型の考え方
1. 商標法上、侵害成立要件だけでなく、登録阻却要件においても、商標及び商品(
「役
務」については、考え方が同じなので、ここでは説明の便宜上省略)の「類似」の範
囲とは、
「商品の出所の混同を生ずるおそれ」のある範囲というべきであり(参考:最
高裁氷山判決、橘正宗判決)、さらに、これも本来的には、商標法の目的が商品の出所
について実際上の混同の防止を図り、商品流通秩序の確立・維持を図ることにあるこ
とからすれば、
「個別的・具体的な商品の出所の混同を生ずるおそれ」であるというべ
きである。
2.
しかしながら、登録阻却要件(4条1項11号)における「商標及び商品の類似」
の範囲は、次の理由により、
「一般的・抽象的な商品の出所の混同を生ずるおそれ」
(す
なわち、
「商標の類似とは、対比される両商標が同一・類似の商品について使用された
とすれば出所の混同を生ずるおそれがある関係にあるもの」、「商品の類似とは、対比
される両商品に同一・類似の商標を使用したとすれば出所の混同を生ずるおそれがあ
る関係にあるもの」)で足りるものと解されている。
(1) 特許庁という事実探求能力の相対的に低い行政機関が、大量の商標登録出願への迅
速な対応を迫られるときに、ある程度、取引の経験則に基づいた形式的な判断が要
請されることは、当然のことである。
(2) また、我が国においては、使用主義ではなく、登録主義の下において、類否判断の
対象となる出願商標と引用の登録商標がともに実際上使用されているという事案は
極めて少ないのが実情であるから、現実に混同を生ずるおそれがあるか否かの判断
はしようとしてもできない(すなわち、そのような判断をする必要もない)ケース
が圧倒的ということになる。
したがって、実際上は、審査段階における類否判断のほとんどのケースは、
「個別
的・具体的な商品の出所の混同を生ずるおそれのある範囲」と「一般的・抽象的な
商品の出所の混同を生ずるおそれのある範囲」とが一致しているということもでき
る。
3.
さりながら、審査において、取引の経験則に基づき一般的・抽象的な商品の出所の
混同を生ずるおそれがあるとして、類似と判断(推定)したものであっても、職権を
もって調査をし、個別的・具体的な取引の実情(例えば、当該商品についての需要者
の範囲、流通経路、商標を構成する文字の採択傾向、商標の称呼又は外観を重視した
−44−
商取引等の現実の取引状況)を知り得た結果、当該比較の対象となっている特定の商
標・商品間では、個別的・具体的には出所の混同を生ずるおそれがないと判断できた
場合には、非類似と判断(推定)すべきは当然のことである。
4.
ところで、審査官が4条1項11号の拒絶理由を通知するに際して引用した登録商
標についての商標権者が、本願商標を登録することに同意した場合には、本願商標を
登録することにおいて最大の利害関係者といえる引用商標権者が同意(混同を生ずる
おそれがないことを前提として)しているのであるから、これを個別的・具体的な取
引の実情の一として最大限尊重すること、すなわち、現実の取引状況の下では、個別
的・具体的な出所の混同を生ずるおそれはないものとして、非類似と判断(推定)す
ることとすることについては、特段の問題はないものと考えられる。
5.
なお、非類似と判断(推認)して登録した場合において、仮に、結果的に類似と判
断されるような場合があったとしても、実際上問題となるようなことは起こらないも
のと考えられる。すなわち、企業行動として、同業の他企業が使用している商標と同
一又は類似の商標の使用は避ける(手垢の付いた商標は使用しない)のが一般的であ
ると言われているので、コンセントをした場合、コンセントをした方の者は、通常は
使用しないと考えられるし、また、商標ブローカーの場合でも、ブローカー自身は使
用しないことを考えると、実際に混同を生ずるような事態は生じないといえるからで
ある。さらに、グループ企業の場合は、商標法で規制しようとする混同自体が生じな
いといえるからである。
−45−
-46-
非類似商標
4条1項11号の対象
類似商標
:他人の商標登録出願
(2)法制化による準完全型
(混同概念導入型)
非類似商標
4条1項11号の対象
類似商標
:他人の商標登録出願
(1)運用による準完全型
コンセントがあれば、類似であっても混同を生じないものとし
て登録可
コンセントがあっても、混同があるので、登録不可
同一
類似であって、混同を生ずるおそれのある範囲
(取引の実情に基づく)
類似であって、混同を生ずるおそれがあると、
審査上推定する範囲
コンセントがあれば、個別的・具体的混同がないものと判断
し、非類似と推定して、登録可
コンセントがあっても、個別的・具体的混同があるので、登録不
可
同一
個別的・具体的混同(現実の取引の実情に基づく類似の範囲)
一般的・抽象的混同(審査上、類似と推定する範囲)
〈類似と混同の考え方 〉
資料 3
Ⅲ.小売業商標のサービスマークへの拡大の検討
1.小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討課題
近年、総合スーパー(量販店)やコンビニエンスストア等が急速に全国的展開を見せて
いる中で、これらの特定の店舗内における商品の品揃え、陳列等の顧客に対する便益自体
をサービスとして、商標登録の対象にしてほしいというユーザーの要望1が高まってきてい
ること、店頭看板等の商標もそのようなサービスの識別標識として機能していること等を
背景として、
「小売業商標をサービスマークとして登録する制度」を導入する方向で、その
具体的な制度設計を検討する。
具体的な検討を行っていく上で、「Retail store services(小売店サービス)」・「Retail
services(小売りサービス)
」・「小売り」の用語をどのように考えるのかが重要である。
検討事項−1
(1)小売業商標に係る役務の特定
小売業商標とサービスマーク、役務(サービス)及びサービスマークの使用との関係等
を明らかにするとともに、いわゆる「小売りサービス」はいかなる内容なのかを検討する。
そしていかなるものとして登録するのかを検討する。
具体的な検討事項
(a)商標法にいう「役務」とは、
「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商
取引の目的たりうべきもの」と解されているが、ここでいう「小売業商標」は、この概念
に本当に該当しないのか。そもそも、商標法上の商品・役務はなぜ「独立して商取引の目
的たりうべきもの」という要件が必要なのか。逆に、商標法にいう「役務」の解釈は本当
に正しいのか。「Retail store services(小売店サービス)」・「Retail services(小売り
サービス)」と「小売り」は指定役務として見た場合、同じ意味として議論できる用語なの
か。
(参考1)これまでの我が国の「小売り」に対する考え方
商標法第2条第1項で商標について「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡す
る者がその商品について使用するもの」及び「業として役務を提供し、又は証明する
者がその役務について使用するもの(前号に掲げるものを除く。)」と定義している。
小売業者が使用するマークは、業として商品を譲渡すること、すなわち、商品の販
1
参考資料Ⅲ−1
−47−
売を行う者がその商品に使用する標識であるから商品商標であり、サービスマークで
はない。
なお、商品の販売に際して行う商品の品揃え、商品の陳列ないし管理等は、通常は
その商品の販売に付随して行われるものであって、それ自体が取引の対象となるもの
ではないので、商標法上の役務とはみないとの立場をとっている。
(参考2)
「特許庁編
工業所有権法逐条解説
第16版」より抜粋
<商品>
商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう。
<役務>
他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引たりうべきも
のをいう。
(b)特定の店舗内における商品の品揃え、陳列等の顧客に便宜を図るためのサービス自
体が、近年、独立した経済価値のある役務として認め得る状況が形成されてきているとい
えないか。そして、これをもって、独立して商取引の目的たりうるものといえないか。
(c)当該役務の具体的な内容は、
「特定の商品の品揃え、陳列等、顧客の便宜を図るため
のサービス」であって、「商品の販売」は含まないという整理でよいか。
ここでいう、
「顧客の便宜を図るためのサービス」には、他にどのような内容のサービス
が考えられるか。例えば、「接客」「地方発送の取次ぎ」「贈答用の包装」「店内の雰囲気」
「商品の真正性」等はどうか。
(d)現実の売場がある場合だけでなく、インターネット、テレビ、カタログを利用した
「顧客の便宜を図るためのサービス」も、同様に考えられるか。
(e)
「総合的な小売業」
(百貨店、コンビニエンスストア等)のみ認めるのか、
「単品の小
売業」(靴屋、洋服屋等)も認めるのか。この場合、具体的に、「総合小売り」と「単品小
売り(特定小売り)」とを区別することはできるのか。
(f) 法改正は必要か。
・第2条第1項「商標の定義」の規定は、改正する必要があるのか。
・その他の規定(例えば、「使用」の定義等)の改正は必要があるのか。
・商標法施行規則別表の第35類に、例示するだけでは足りないのか。
・法律改正をしなければならないとすれば、どのような規定振りにすればよいか。
・「ESPRIT事件」の高裁の判断では「(小売りサービスを役務とみるかどうかは)
立法論でなければ解決されない」趣旨の判断が示されたが、現行法規の解釈の下でも、
「小売業」を「役務」と解釈する余地は残されているのではないかと考える。
(12年
−48−
度知財研調査研究:内外商標法における商標登録要件の解釈及び運用に関する調査研
究報告書)
(g) 経過措置は必要か。
・現行法でも小売業の商標をサービスマークとして保護することは可能ということであ
れば、特段の経過措置は不要でよいか。
(ちなみに現在、国際商標登録出願(マドプロ案件)の審査では、「retail service」
等の表示は認めていないものの、
「the bringing together, for the benefit of others,
of a variety of
goods (excluding the transport thereof, enabling customers to
conveniently view and purchases those goods」等の表示は認めている。)
・ 第35類で登録を認める役務名称の例示を国際分類第9版への対応として改正予定2
(平成19(2007)年1月1日施行)の商標法施行規則別表の改正に盛り込むことのみ
により経過措置も設けずに解決を図ることはできないか。
・現行法では保護できないとすれば、どのような経過措置が適当か。
(2)商標権の特定と指定役務の表示の在り方
小売業商標の指定役務とその他の指定商品・指定役務の表示とのバランスを考慮しつつ、
小売業商標のサービスマークとしての指定役務の表示の在り方を検討する。
具体的な検討事項
(a)
「小売り」に係るいかなる権利をサービスマークとして認めるのか。どのような指定
役務の名称で登録すれば、他人との権利が問題となった場合、権利範囲が曖昧でないと言
えるか。
(登録しようとしている商標は、何と何を識別するためにあるのかを考えたときに
商品・役務をどう指定することにより最善の商標権となりうるのかという問いに真正面か
ら答えられることを一番に考えるべきではないのか。)
(b)
「小売りサービス」には「商品の販売」を含まないのであれば、当該役務の適切な表
示は、どうあるべきか。
あたかも「商品の販売」を意味するような「∼の小売り」とか「∼の卸売り」という表
示は認めないということでよいか。
(c)
「総合的な小売業」
(百貨店、コンビニエンスストア等)のみ認めるのか、
「単品の小
2
参考資料Ⅲ−2
−49−
売業」
(靴屋、洋服屋等)も認めるのかの検討を踏まえ、それらの指定役務の表示は、どう
あるべきか。
(d)小売業商標に係る指定役務の表示に関する具体的運用案の提示
指定役務の表示として、「(A)における(B)」の形を基本として採用する。
(ア)(A)への挿入許容例
①百貨店、②スーパーマーケット、③コンビニエンスストア、
④ディスカウントストア、⑤DIY、⑥ドラッグストア、⑦衣料品店、
⑧食料品店、⑨家電量販店、⑩酒類量販店、⑪日用品店、
⑫その他、特定商品を固定的に想起しない販売店の種類の総称
(イ)(B)への挿入許容例
①「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、
かつ、購入するために便宜を図るサービス」
②「小売りサービス」(不適当と考えられる場合、「各種商品の提供」などはどうか)
(ウ)基本形「(A)における(B)」と同等に考えられるもの
①「メールオーダーによるカタログを通じた各種商品の小売りサービス」
②「電気通信手段によるカタログを通じた各種商品の小売りサービス」
③「テレビショッピングによる各種商品の小売りサービス」
④「メールオーダーによるカタログを通じた各種衣料品の小売りサービス」
⑤「電気通信手段によるカタログを通じた各種食料品の小売りサービス」
⑥「テレビショッピングによる各種日用品の小売りサービス」
⑦その他、基本形と同等に考えられるもの
検討事項−2
「商標権に係る商品・役務の指定の在り方」と「商標の定義」・「商標の使用の定義」と
の関係等の検証
(1)小売業商標のサービスマークとしての登録、「電力(電気エネルギー(Electrical
energy))」の商品商標としての登録3などの検討は、「商標権に係る商品・役務の指定の在
3
WIPO第19会期ニース国際分類専門家委員会(2003.10.2∼10)において、「Electrical energy」の表示が国際分類
第9版のアルファベット順一覧表の第4類に掲載されることが決定している(2007.1.1 発効)。なお、平成14(2002)年度の知
財研調査研究委員会において「電気を商品として扱うこと」も検討がなされており、委員会での意見として、『「電気エ
ネルギー」を商品とした商標を採用することについては、特に異論は聞かれなかった。以下に具体的な意見を記載する。
・
電気エネルギーをそのまま商品として取り扱う産業も想定され、商品の対象となるのは明らかであり、したがって電気
エネルギーを商品として扱うことに異論はないが、電気エネルギーの「使用」(商標法2条3項における「使用」)のと
らえ方は考える必要がある。また、商標の使用の定義を見直すことは必要であると思われるが、
「電気」を商品として認
めるだけのために商標法の使用の定義規定を改正する必要はなく、
「電気」の商品商標は、発電所、電線、伝票等に付さ
−50−
り方」と「商標の定義」
・「商標の使用の定義」との関係という視点から研究・検討するこ
とはできないか。登録する商標(標章)が商標権としていかなる指定商品・指定役務になっ
ていれば、侵害訴訟等(審判も含む。)の紛争処理において権利者及び第三者が的確にそれ
を適用できるといえるのかということを追求することにほかならないのではないか。
(2)「電力」の問題で見たとき、サービスマーク(第39類「電気の供給」)として登録
することは「電力を供給するシステム」に対して商標が使用されており(線的又は集合的
な使用)、商品商標(第4類「電気エネルギー」)として登録することは「電気」そのもの
に対して商標が使用されている(点的な使用)ことになっているのではないか。
(3)
「小売業」で見た場合、商品を小売りする行為に使用する商標が「各種商品を供給す
るシステム」を表示するものとなっているのか、個々個別の「商品」を表示するものとなっ
ているのかによってサービスマークなのか商品商標なのか決せられるのではないか。商標
権の争いにおいてどちらの方が的確に戦えるのか(管理のしやすさも考慮)という議論で
もあると考えられる。いくつかの特定商品の小売りであれば、実際その小売業のマークは
商品との結びつきも強いものであり、商品商標で十分対応でき、かつ、立証が簡単である
ということになっているのではないか。だからといって、
「特定商品の小売りに関する商標
がただちにサービスマークとして登録できない。」と言えるものでもないのではないか。
(4)商標の使用が問題になったとき、商品商標とサービスマークとでは立証の仕方に相
違(点的な使用と線(集合)的な使用)があるのではないか。要するに、サービスマークに
おける「商標の使用」とはいかなるものなのかを明確化する必要があり、それによりサー
ビスマークで登録した方が適当であるものが明確になるのではないか。
(5)上記の検討により、小売業商標のサービスマークとしての登録に関して、保護対象
をいわゆる「総合小売り」のみならず、
「役務といえるもの」はすべて対象とすることはで
きるのか。「役務といえるもの」とは、商標法上の「商品」「役務」がいかなるものなのか
はっきりすれば概念的には特定され、出願人がその意思で出願しているかどうかは指定役
務の表示により判断されるものであるとすることは可能か。
検討事項−3
(1)小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係(類否判断を含む。)
れることが想定されるが、そのような行為は2条3項8号における使用と考えればよいのではないか。』と報告されてい
る。
−51−
登録を認める小売業商標に係る役務同士の類似関係はどのように整理するのか。また、現
行の役務と商品との類否判断も考慮しつつ小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類
似関係の在り方について検討を行う。
具体的な検討
(a)どのような小売業の商標をサービスマークとして保護するのか(
「総合的な小売業」
だけでなく「単品の小売業」も認めるのかどうか)にもよるが、審査上の商品・役務の類
否判断は、どうすべきか。すべて認めるとした場合、審査上、総合的な小売りサービスと
単品の小売りサービス間の類否、総合的な小売りサービスと商品間の類否、単品の小売り
サービスと商品間の類否についての判断は、どうすべきか。
(b)品揃え等の顧客に対する「サービス」と販売の対象となる「商品」とは、その内容
において全く別異のものという整理はできないか。少なくとも審査上は、非類似扱いでも
いいという考え方はどうか。
(c)品揃え等の顧客に対するサービスについて商品との類否判断を必要だとすると、審
査におけるバランス上、その他の商品・役務間についても広く類否の判断をすべきか。
(2)相対的拒絶理由の判断の在り方(現行の職権審査の運用改善の方向性)
コンセント制度における「検討事項−1」で掲げた検討事項の他に本課題における検討事
項はあるか。あれば、それらについての検討を行う。
−52−
2.検討課題に対する意見
「1.小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討課題」に対する日本弁
理士会商標委員会、及び日本知的財産協会商標委員会の議論の結果を本委員会で報告して
いただいた。その意見を以下の「日本弁理士会商標委員会の意見」及び「日本知的財産協
会商標委員会の意見」に示す。本委員会で行った議論については「委員会での主な意見」
にまとめた。
また、各委員会の意見をまとめた一覧表を参考資料Ⅲ-3に示す。
(1)日本弁理士会商標委員会の意見
●小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討事項
近年、総合スーパー(量販店)やコンビニエンスストア等が急速に全国的展開を見せている中で、こ
れらの特定の店舗内における商品の品揃え、陳列等の顧客に対する便益自体をサービスとして、商標登
録の対象にしてほしいというユーザーの要望が高まってきていること、店頭看板等の商標もそのような
サービスの識別標識として機能していること等を背景として、「小売業商標をサービスマークとして登
録する制度」を導入する方向で、その具体的な制度設計を検討する。
具体的な検討を行っていく上で、「Retail store services(小売店サービス)」・「Retail services
(小売りサービス)」・「小売り」の用語をどのように考えるのかが重要である。
検討事項-1
(1)小売業商標に係る役務の特定
小売業商標とサービスマーク、役務(サービス)及びサービスマークの使用との関係等を明らかにす
るとともに、いわゆる「小売りサービス」はいかなる内容なのかを検討する。そしていかなるものとし
て登録するのかを検討する。
具体的な検討事項
(a)商標法にいう「役務」とは、「他人のためにする労務又は便益であって、独立して商取引の目的
たりうべきもの」と解されているが、ここでいう「小売業商標」は、この概念に本当に該当しないのか。
そもそも、商標法上の商品・役務はなぜ「独立して商取引の目的たりうべきもの」という要件が必要な
のか。逆に、商標法にいう「役務」の解釈は本当に正しいのか。「Retail store services(小売店サー
ビス)」・「Retail services(小売りサービス)」と「小売り」は指定役務として見た場合、同じ意味と
して議論できる用語なのか。
(参考1)これまでの我が国の「小売り」に対する考え方
商標法第2条第1項で商標について「業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商
-53-
品について使用するもの」及び「業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用
するもの(前号に掲げるものを除く。)」と定義している。
小売業者が使用するマークは、業として商品を譲渡すること、すなわち、商品の販売を行う者が
その商品に使用する標識であるから商品商標であり、サービスマークではない。
なお、商品の販売に際して行う商品の品揃え、商品の陳列ないし管理等は、通常はその商品の販
売に付随して行われるものであって、それ自体が取引の対象となるものではないので、商標法上の
役務とはみないとの立場をとっている。
(参考2)
「特許庁編
工業所有権法逐条解説
第16版」より抜粋
<商品>
商取引の目的たりうべき物、特に動産をいう。
<役務>
他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引たりうべきものをいう。
回答:商標法における「役務」を「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商
取引の目的たりうべきもの」と解した場合、小売りサービスの本質は、
「顧客の商品
購入の便宜(顧客のニーズに応じ、高級品、実用品、特殊用途の商品、ベビー商品、
LLLサイズの商品など、顧客の希望する商品を取り揃え、商品の選択・購入の便
宜)を図るための品揃えというサービスを提供すること(又は、∼のための品揃え
をして、顧客に販売するというサービスを提供すること)」と考えることができ、
その便宜提供に対する対価は、そのサービスの提供を受ける個々の消費者が支払う
商品購入価額に上乗せされるコミッション(販売により得られる利益)であると考
えることができる。このように考えれば、小売りサービスは、
「他人のために行う便
益の提供であって、それ自体が商取引の目的」となっていると考えられる。
また、「小売店サービス(Retail Store Services)」というも「小売りサービス
(Retail Services)」というも、提供されるサービスは、上記の意味において同じで
あるが、
「小売り(Retail)」という場合には、
「販売(譲渡)」に重きがおかれること
になると思われる。
(b) 特定の店舗内における商品の品揃え、陳列等の顧客に便宜を図るためのサービス自体が、近年、
独立した経済価値のある役務として認め得る状況が形成されてきているといえないか。そして、これを
もって、独立して商取引の目的たりうるものといえないか。
回答:上記コメント(a)参照
(c) 当該役務の具体的な内容は、
「特定の商品の品揃え、陳列等、顧客の便宜を図るためのサービス」
であって、「商品の販売」は含まないという整理でよいか。
ここでいう、「顧客の便宜を図るためのサービス」には、他にどのような内容のサービスが考えられ
−54−
るか。例えば、「接客」「地方発送の取次ぎ」「贈答用の包装」「店内の雰囲気」「商品の真正性」等はど
うか。
回答:「商品の販売」と「小売りサービス」とは、別異の概念である。
「商品を販売する」ということは、単に、有償で、顧客に商品を譲渡するというこ
とであり、
「小売りする」というサービスは、有償で、顧客に対する商品購入の便宜
を提供する(又は、∼を提供した上で販売する)というサービスである。したがっ
て、その行為が、現実の売り場で行われようと、インターネット販売、テレビショ
ッピング、カタログ販売を利用する場合であろうと、
「商品を有償で譲渡」というこ
とに主眼をおけば、それは「販売」であり、「顧客に対する商品購入の便宜の提供」
に主眼をおけば、それは「サービス」である。
また、「顧客の便宜を図るためのサービス」には、ここで例示されている「接客」
「地方発送の取次ぎ」
「贈答用の包装」
「店内の雰囲気」
「商品の真正性」等も含まれ
ると考えられるが、小売りサービスのとらえ方いかんにより、これらは付随的なサ
ービスになると思われる。
(d)現実の売り場がある場合だけでなく、インターネット、テレビ、カタログを利用した「顧客の便
宜を図るためのサービス」も、同様に考えられるか。
回答:上記(c)で述べたように、現実の売り場がある場合だけではなく、インターネット、
テレビ、カタログを利用した「顧客の便宜を図るためのサービス」も同様に考えら
れるものである。
(e)
「総合的な小売業」
(百貨店、コンビニエンスストア等)のみ認めるのか、
「単品の小売業」
(靴屋、
洋服屋等)も認めるのか。この場合、具体的に、
「総合小売り」と「単品小売り(特定小売り)」とを区
別することはできるのか。
回答:上記のように考えれば、百貨店、コンビニエンスストア等の総合小売業と、靴屋、
洋品店等の個別商品の小売業とを、商標登録の指定役務としてみた場合、差別する
必要はないと考える。
(f) 法改正は必要か。
・第2条第1項「商標の定義」の規定は、改正する必要があるのか。
・その他の規定(例えば、「使用」の定義等)の改正は必要があるのか。
・商標法施行規則別表の第35類に、例示するだけでは足りないのか。
−55−
・法律改正をしなければならないとすれば、どのような規定振りにすればよいか。
・「ESPRIT事件」の高裁の判断では「(小売りサービスを役務とみるかどうかは)立法論でな
ければ解決されない」趣旨の判断が示されたが、現行法規の解釈の下でも、「小売業」を「役務」
と解釈する余地は残されているのではないかと考える。
(12年度知財研調査研究:内外商標法に
おける商標登録要件の解釈及び運用に関する調査研究報告書)
回答:法改正(商標法自体の改正)が必要か否かという点については、意見が分かれると
ころであり、この点については、
① サービスマーク導入時に、このような役務が潜在的に含まれていたか否か、
② 含まれているとした場合に、政策的観点からその登録を認めなかったのか否か、
という点をいかに考えるかにより、その結論が異なってくると思われる。
(g) 経過措置は必要か。
・現行法でも小売業の商標をサービスマークとして保護することは可能ということであれば、特段
の経過措置は不要でよいか。
(ちなみに現在、国際商標登録出願(マドプロ案件)の審査では、「retail service」等の表示は
認めていないものの、「the bringing together, for the benefit of others, of a variety of
goods (excluding the transport thereof, enabling customers to conveniently view and
purchases those goods」等の表示は認めている。)
・第35類で登録を認める役務名称の例示を国際分類第9版への対応として改正予定(平成19
(2007)年1月1日施行)の商標法施行規則別表の改正に盛り込むことのみにより経過措置も設けず
に解決を図ることはできないか。
・現行法では保護できないとすれば、どのような経過措置が適当か。
回答:経過措置が必要か否かという点は、上記法改正の必要性と併せて検討されなければ
ならない問題であるが、法改正を必要とするときには、経過措置も当然に必要とな
るはずであり、法改正が必要ないとしたときには、経過措置も必要ないということ
になると思われる。
なお、経過措置を設けるとした場合、現在マドプロ出願において既に認められて
いる「∼の陳列・品揃え」についての登録をどのように扱っていくのか、その調整
を図る(明確にする)必要があると思われる。
(2)商標権の特定と指定役務の表示の在り方
小売業商標の指定役務とその他の指定商品・指定役務の表示とのバランスを考慮しつつ、小売業商標
のサービスマークとしての指定役務の表示の在り方を検討する。
−56−
具体的な検討事項
(a)「小売り」に係るいかなる権利をサービスマークとして認めるのか。どのような指定役務の名称
で登録すれば、他人との権利が問題となった場合、権利範囲が曖昧でないと言えるか。(登録しようと
している商標は、何と何を識別するためにあるのかを考えたときに商品・役務をどう指定することによ
り最善の商標権となりうるのかという問いに真正面から答えられることを一番に考えるべきではない
のか。)
回答:小売りサービスを「顧客の商品購入の便宜(顧客のニーズに応じ、高級品、実用品、
特殊用途の商品、ベビー商品、LLLサイズの商品など、顧客の希望する商品を取
り揃え、商品の選択・購入の便宜)を図るための品揃えというサービス(又は、∼
のための品揃えをして、顧客に販売するというサービスを提供すること)」と解す
れば、登録された商標に与えられる権利の範囲は、かかるサービスの範囲になると
考えられる。
(b)「小売りサービス」には「商品の販売」を含まないのであれば、当該役務の適切な表示は、どう
あるべきか。
あたかも「商品の販売」を意味するような「∼の小売り」とか「∼の卸売り」という表示は認めない
ということでよいか。
(c)
「総合的な小売業」
(百貨店、コンビニエンスストア等)のみ認めるのか、
「単品の小売業」
(靴屋、
洋服屋等)も認めるのかの検討を踏まえ、それらの指定役務の表示は、どうあるべきか。
(d)小売業商標に係る指定役務の表示に関する具体的運用案の提示
指定役務の表示として、「(A)における(B)」の形を基本として採用する。
(ア)(A)への挿入許容例
①百貨店、②スーパーマーケット、③コンビニエンスストア、④ディスカウントストア、⑤DIY、
⑥ドラッグストア、⑦衣料品店、⑧食料品店、⑨家電量販店、⑩酒類量販店、⑪日用品店、
⑫その他、特定商品を固定的に想起しない販売店の種類の総称
(イ)(B)への挿入許容例
①「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)
、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入す
るために便宜を図るサービス」
②「小売りサービス」(不適当と考えられる場合、「各種商品の提供」などはどうか)
(ウ)基本形「(A)における(B)」と同等に考えられるもの
①「メールオーダーによるカタログを通じた各種商品の小売りサービス」
②「電気通信手段によるカタログを通じた各種商品の小売りサービス」
③「テレビショッピングによる各種商品の小売りサービス」
④「メールオーダーによるカタログを通じた各種衣料品の小売りサービス」
−57−
⑤「電気通信手段によるカタログを通じた各種食料品の小売りサービス」
⑥「テレビショッピングによる各種日用品の小売りサービス」
⑦その他、基本形と同等に考えられるもの
回答(b)、(c)、(d):
前述のように、小売りサービスは、単なる「商品の販売」とは次元の異なった別
異の概念である。したがって、両者の概念が明確になっている限り、
「∼の小売り」
「∼の卸売り」という表示は認められるべきであり、具体的な指定役務の表示とし
ては下記が適当ではないかと考える。
・各種商品の総合小売業
百貨店
スーパーマーケット
ディスカウントストア
コンビニエンスストア
etc.
・個別商品の小売業
食料品小売業
家電製品小売業
酒類小売業
日用品小売業
家庭用薬剤小売業
etc.
・メールオーダー、テレビショッピング、インターネット販売
例
:メールオーダーによる(個別商品)の小売業
検討事項−2
「商標権に係る商品・役務の指定の在り方」と「商標の定義」
・
「商標の使用の定義」との関係等の検証
(1)小売業商標のサービスマークとしての登録、「電力(電気エネルギー(Electrical energy))」の
「商標権に係る商品・役務の指定の在り方」と「商標の定義」
・
「商
商品商標としての登録1などの検討は、
1
WIPO第19会期ニース国際分類専門家委員会(2003.10.2∼10)において、「Electrical energy」の表示が国際分類
第9版のアルファベット順一覧表の第4類に掲載されることが決定している(2007.1.1 発効)。なお、平成14(2002)年度の知
財研調査研究委員会において「電気を商品として扱うこと」も検討がなされており、委員会での意見として、『「電気エ
ネルギー」を商品とした商標を採用することについては、特に異論は聞かれなかった。以下に具体的な意見を記載する。
・
電気エネルギーをそのまま商品として取り扱う産業も想定され、商品の対象となるのは明らかであり、したがって電気
エネルギーを商品として扱うことに異論はないが、電気エネルギーの「使用」(商標法2条3項における「使用」)のと
−58−
標の使用の定義」との関係という視点から研究・検討することはできないか。登録する商標(標章)が
商標権としていかなる指定商品・指定役務になっていれば、侵害訴訟等(審判も含む。)の紛争処理に
おいて権利者及び第三者が的確にそれを適用できるといえるのかということを追求することにほかな
らないのではないか。
回答:現行商標法における商標の定義は、立法技術の観点のみから定義されており、経済
社会における商標の概念から乖離したものとなっている。また、商標の使用の定義
も、現在の予見を越えた将来のすべての態様を網羅したものとはなっていない状況
にあると思われる。このような観点から「商標の定義」
「商標の使用の定義」は別途
改正が検討されているところであるが、この問題と、小売りサービスをサービスマ
ーク登録の際の指定役務として認めるか否かとは別異の問題であると考えられる。
(2)
「電力」の問題で見たとき、サービスマーク(第39類「電気の供給」)として登録することは「電
力を供給するシステム」に対して商標が使用されており(線的又は集合的な使用)、商品商標(第4類
「電気エネルギー」)として登録することは「電気」そのものに対して商標が使用されている(点的な
使用)ことになっているのではないか。
回答:
「電気の供給」
(39類)についてのサービスマークの登録と「電気エネルギー」
(4
類)についての商標の登録との関係は、
「小売りサービス」についてのサービスマー
クの登録と小売りされる「商品」についての商標の登録との関係と同じである。
「電
気の供給」というサービスと「電気エネルギー」という商品は、別異の範疇に属す
るが、商標使用の場において共通するので、同一の商標が使用された場合には、混
同を生ずるおそれがあり、その場合には、異議申立て等において、混同のおそれを
個別的に審査すべきものと考える。また、このことは侵害の判断に際しても同様に
考えられると思われる。
要は、指定する(現に使用する)商品・役務を明確に指定(表示)することが大
切であって、サービスマークの登録をすべきか、商品商標の登録をすべきかの問題
ではないと考える。
(3)
「小売業」で見た場合、商品を小売りする行為に使用する商標が「各種商品を供給するシステム」
を表示するものとなっているのか、個々個別の「商品」を表示するものとなっているのかによってサー
らえ方は考える必要がある。また、商標の使用の定義を見直すことは必要であると思われるが、
「電気」を商品として認
めるだけのために商標法の使用の定義規定を改正する必要はなく、
「電気」の商品商標は、発電所、電線、伝票等に付さ
れることが想定されるが、そのような行為は2条3項8号における使用と考えればよいのではないか。』と報告されてい
る。
−59−
ビスマークなのか商品商標なのか決せられるのではないか。商標権の争いにおいてどちらの方が的確に
戦えるのか(管理のしやすさも考慮)という議論でもあると考えられる。いくつかの特定商品の小売り
であれば、実際その小売業のマークは商品との結びつきも強いものであり、商品商標で十分対応でき、
かつ、立証が簡単であるということになっているのではないか。だからといって、「特定商品の小売り
に関する商標がただちにサービスマークとして登録できない。」と言えるものでもないのではないか。
回答:小売りサービスを「各種商品を供給するシステム」ととらえる考えは妥当ではない
と思料する。
「システム」は、
「組織、制度、系統、体系」等を意味する語(広辞苑)であって、
例えば「防火・防煙システム」にあっては、監視テレビ、煙感知器、スプリンクラ
ー、防煙扉,中央制御盤等の各種商品を「防火・防煙」という目的のために有機的
に組み合わせて機能させる手段・方法を総称する表現であり、
「集合した商品が一体
となってある目的のために機能する商品群」とも理解することができる。
また、
「商品を供給するシステム」という場合、このシステムは構築された商品の
効率のよい流れを意味するものであり、
「小売り」を商品のメーカーから消費者に至
る流通段階において把握すると、
「小売り」は商品が消費者に渡る最終の段階に位置
するに過ぎず、したがって、「小売りサービス」を「各種商品を供給するシステム」
と把握するには無理があると考える。
前述のように、
「小売りサービス」の本質は「顧客の商品購入の便宜のために商品
の品揃えをするというサービス(又は、∼の品揃えをして、顧客に販売するという
サービス)」であるから、「小売りサービス」について登録された商標は、「小売り」
される個々の商品について登録された商標とは、明らかに異なった保護分野の商標
であると考えられ、したがって、小売りサービスに関して、
「各種商品を供給するシ
ステム」というような概念を取り入れて、
「総合的な小売り」と「特定商品の小売り」
とを別異に取り扱うとするのは妥当ではないと思われる。
(4)商標の使用が問題になったとき、商品商標とサービスマークとでは立証の仕方に相違(点的な使
用と線(集合)的な使用)があるのではないか。要するに、サービスマークにおける「商標の使用」とは
いかなるものなのかを明確化する必要があり、それによりサービスマークで登録した方が適当であるも
のが明確になるのではないか。
回答:商標の使用を「商標は自他商品・役務を識別する機能を有し、その目的のために商
品・役務に使用される標識であって、この意味における商標を自他商品・役務を識
別するために商品・役務について使用する行為」と解すれば、それが商品商標であ
る場合とサービスマークである場合とで、当該標識(マーク)が指定商品に使用さ
−60−
れているのか、役務に使用されているのかの確認に差異はないものと考える。
(5)上記の検討により、小売業商標のサービスマークとしての登録に関して、保護対象をいわゆる「総
合小売り」のみならず、
「役務といえるもの」はすべて対象とすることはできるのか。
「役務といえるも
の」とは、商標法上の「商品」「役務」がいかなるものなのかはっきりすれば概念的には特定され、出
願人がその意思で出願しているかどうかは指定役務の表示により判断されるものであるとすることは
可能か。
回答:サービスマークの登録の対象となる「商品の小売り」の本質は、
「顧客の商品購入の
便宜のために商品の品揃えをする(又は、∼の品揃えをして、顧客に販売する)」
ということであり、これは「総合小売り」に限られるものではないので、この内容
を充足する場合には、それらはサービスマークとして保護されるべきものと考える。
検討事項−3
(1)小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係(類否判断を含む。)
登録を認める小売業商標に係る役務同士の類似関係はどのように整理するのか。また、現行の役務と
商品との類否判断も考慮しつつ小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係の在り方について
検討を行う。
具体的な検討
(a)どのような小売業の商標をサービスマークとして保護するのか(「総合的な小売業」だけでなく
「単品の小売業」も認めるのかどうか)にもよるが、審査上の商品・役務の類否判断は、どうすべきか。
すべて認めるとした場合、審査上、総合的な小売りサービスと単品の小売りサービス間の類否、総合的
な小売りサービスと商品間の類否、単品の小売りサービスと商品間の類否についての判断は、どうすべ
きか。
(b)品揃え等の顧客に対する「サービス」と販売の対象となる「商品」とは、その内容において全く
別異のものという整理はできないか。少なくとも審査上は、非類似扱いでもいいという考え方はどうか。
(c)品揃え等の顧客に対するサービスについて商品との類否判断を必要だとすると、審査におけるバ
ランス上、その他の商品・役務間についても広く類否の判断をすべきか。
回答:小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係
商品に類似するものの範囲には役務が含まれることがあり、役務に類似するもの
の範囲には商品が含まれることがあることは、商標法に定められているところであ
る(2条5項)。そして、審査の場においては、4条1項11号(類似)ではなく、
15号(混同)適用の問題と考えられ、それをもって処理されているが、このこと
−61−
に特に問題が生じているとは思われない。したがって、小売りサービスと商品との
関係も、同様に考えて良いものと思料する。
なお、具体的な類似関係(類否判断)については、一つの手法として、小売りサ
ービスは、それが総合的小売り(百貨店、コンビニエンスストア等)であろうと、
特定商品の小売り(家電製品小売業、酒類小売業、日用品小売業等)であろうと、
テレビショッピング等であろうと、第一義的には互いに類似するものとして取り扱
い、具体的事案において混同を生じない場合は、共に登録するという、取扱いが考
えられる。ただ、現行の類似群しばりの中でこのような手法を採ることが妥当かと
いう問題(この場合には、その前提となる「類似群」から検討する必要)があると
思われるので、この点については、今後更に検討する必要があると考える。
(本宮
照久)
(2)日本知的財産協会商標委員会の意見
(ⅰ)小売業商標に係る役務の特定
我が国の商標法(以下、
「法」という。)では、第2条第1項で「商標」について「業と
して商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用するもの」及び「業
として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用するもの(前号に掲げるも
のを除く。
)」と定義している。このことから、小売業について使用する商標(以下、
「小売
業商標」という。)は、業として商品を譲渡する者、すなわち、商品の販売を行う者がその
商品に使用する標識であるから商品商標であり、役務商標(「サービスマーク」と同義)で
はないとの考え方が定説となっている。また、商品の販売に際して行う商品の品揃え、陳
列、接客等は、通常、その商品の販売に付随して行われるものであって、それ自体が独立
して取引の対象となるものではないので、法上の役務とは見ないとの立場をとっている。
①
法第2条第1項との関係
法第2条第1項第1号及び第2号括弧書きの規定振りから、小売業商標は商品商標であ
って役務商標ではないと断ずることは疑問なしとはいえない。法文上も第1号、第2号は
それぞれ「商品について」使用するもの、
「役務について」使用するもの、としており、こ
の「ついて」に大きな意味があると考える。すなわち、小売業商標が商品商標か役務商標
なのかの判断にあたっての本質は、当該商標(例えば、「三越」とか「LAWSON」
)が表象す
る対象(プライベートブランド商品は除く。)は「商品」であるのか、「役務」であるのか
であって、「商品の譲渡」だから「商品商標」との帰結はあまりに拙速なとらえ方であり、
−62−
本項の意味するところを見誤るばかりか、そのようなとらえ方は小売業者のみならず当該
商標に接する需要者の通常の認識からも外れたものといわざるを得ないのではないか。需
要者をして、商標「三越」を銀座三越の店舗で販売されている個々の商品の出所表示とし
て認識するなどということはないであろう。
ちなみに、この「ついて」の持つ意義に関しては、網野誠博士もその著書の中で次のよ
うに記しておられる。(但し、下線は筆者が付したもの)
「(略)現行法の下においては、営業として販売等の行為をなす者のみならず、
「業と
して」商品を譲渡する者がその商品について標章を使用する場合にも、商標の使用とい
うことになる。したがって、酒造業者がマッチや手拭を広告用に配る場合においても、
反復・継続性が認められる限り、「業として」マッチや手拭を譲渡する者であり、それ
らの商品に自己の清酒を指定商品とする登録商標を付しても、マッチや手拭について同
一の登録商標がある限りは、マッチや手拭の商標でもあるから、これらの商標の侵害と
なる説がある。広告用の物品を広告のために配る行為も、業として譲渡するといわざる
を得ない場合が多いであろう。しかしながら、商品の概念も標章を使用する者との関係
において相対的に決められるべきものであり、また、マッチ等を無償で広告用に配る場
合、それが酒造業者にとって商品の譲渡といえるかどうかを法の文字解釈にとらわれず
社会通念により判断するならば、通常の場合は、上述のような場合はマッチや手拭は商
品と解すべきではないだろう。また、かりに商品であるとしても、マッチや手拭に付さ
...
れた「白峰」の商標は、清酒について使用されるものであり、マッチや手拭についての
使用ではないから、これらのものについて商標の使用をしたとはいえないのではなかろ
うか。(略)」2
これはもちろん、小売りサービスの役務性についての議論と直接的には関係のないもの
ではあるが、法第2条第1項の「ついて」のもつ意義を考えるうえで、参考となるもので
ある。
なお、法第2条第1項第2号の括弧書きにより、役務商標から商品商標が除かれる結果、
商品商標に該当しさえすれば、役務商標では有り得ないと考えられ易いが、これは、例え
ば、シティホテルなどで宿泊客用に部屋に備えている当該ホテルのロゴマークの入ったバ
スローブやバスタオル(以下、「バスローブ等」という。
)などを考える際にその意味合い
を理解するものではないだろうか。
宿泊客用に部屋に備えてあるバスローブ等は法上の「商
品」ではなく、法第2条第3項第5号の「役務の提供の用に供する物(役務の提供にあた
りその役務の提供を受ける者の利用に供する物を含む。以下同じ。)」である。一方、これ
らのバスローブ等は同ホテル内のロビー等の売店で「商品」として販売もされている。同
じバスローブ等であっても部屋に備えているのは
「役務の提供の用に供する物」
であって、
2
網野誠『商標〔第4版〕』146 頁(有斐閣、平成 10 年)
−63−
売店の方は「譲渡の対象となる商品」であり、すなわち前者に付されたロゴマークは「役
務商標」であり、後者に付されたロゴマークは「商品商標」である。言い換えると、部屋
のバスローブ等に付されたロゴマークは役務商標であって、商品商標ではない、また、売
店のバスローブ等に付されたロゴマークは商品商標であって、役務商標ではない、同括弧
書きはこのようなケースに対応すべく、置かれた規定と理解すべきものと考える。よって、
第2条第1項第2号の括弧書きは、
「小売業商標」を役務商標として理解する可能性を排除
するものではない。
②
「独立取引性」との関係
次に、「独立取引性」の点であるが、「小売業商標」は、その機能に着目すると、そこで
販売されている商品についての識別標識としてではなく、各種商品の品揃え、陳列、接客
等を中心とした顧客への労務又は便益を識別し選択するための標識として、通常の役務商
標と何ら変わりのない出所表示機能、品質保証機能、広告宣伝機能といった商標の基本的
機能を果たしており、小売業者に係る信用が化体する役務商標として保護に値する財産的
価値を十分有しているといえるのではないだろうか。確かに一般論としては「独立して商
取引の目的たりうべきもの」との解釈は受け入れられやすいのであろうが、何が独立であ
って、何が付随であるかの区別は実は結構難しい。現行法においても財物が介在する「飲
食物の提供」
、「デザインの考案」といった役務を考えてみると「素材の調達及び調理→調
理した料理(財物)の譲渡」
、
「デザインの考案→デザインの施された作品(財物)の譲渡」
といった全体を一連の行為としてとらえ、対価の面でも前者と後者を切り分けることなく
(また、そのことに何の疑問を抱くこともなく)、保護対象としている。このような実情を
考えるに、
「独立取引性」とは商標がある行為について使用されたときにその行為を表象す
る商標として保護に値する財産的価値を有するか否かという観点から弾力的にとらえても
実質的に問題ないものと考える。
以上、①、②で述べたように「小売り」は現行法下においても保護に値するに十分な役
務性を有していると評価することが可能であるし、そして「小売業商標」は法技術上も役
務商標として登録されうるものと考える。
③
第三者による侵害行為への対応
第三者による侵害行為への対応といった面においても、小売業商標を役務商標としてそ
の登録を認めた方が権利者の利益に資することができると思われる。
まず、小売業商標の使用の典型例として、店舗名称を店舗自体や看板などに大きく表示
し、遠くからも視認できるように掲げるなどがあるが、無権原の小売業者によるこれらの
使用に対しては、これらの表示をそこで取り扱われる(販売される)各種商品との関係で
−64−
とらえるよりも、
「小売り」という役務に係る表示ととらえる方が理解しやすいと思われる
し、権利行使の場面においても所有する個々の商品商標との関係で主張・立証する必要も
ないことから容易である。
また、例えば、ある小売店が有名百貨店のロゴマーク又はこれに類似した標章の付され
た包装紙(汎用的なもの)や手提げ袋を用いて顧客に各種商品を販売していると仮定しよ
う。
当該有名百貨店が商標権を根拠にこれらの行為をやめさせようした場合、商品商標と役
務商標ではどちらの方が使い勝手が良いだろうか。
汎用的な包装紙や手提げ袋は、特定の商品との結びつきが希薄であることから法第2条
3項にいう「商品の包装」といえるか心なしか疑問がある。また、これら第三者が使用し
ている包装紙や手提げ袋自体はその態様からして法にいう「商品」ではないから、紙や紙
製品に係る登録商標では正面きって侵害を主張しにくいのではなかろうか。
一方、汎用的な包装紙や手提げ袋を「小売り」という役務の提供の用に供する物である
ととらえることは一般的に無理なくできることから、当該行為は役務商標の使用にあたる
として、侵害を主張しやすいと思われる。
④
「小売り」という役務の具体的内容
ここでの主たる論点は、当該役務の具体的内容として「商品の販売」
(=商品の譲渡)を
含むのか、含まないのかということであるが、権利範囲を画すことでもあり、重要事項で
あることは理解できるものの、
「含む」、
「含まない」の結論いかんにより、法第2条第1項
の改正の要否及び商品とのクロスサーチの必要性の大小に直結するとの意見には疑問があ
る。
確かに、「商品の販売」は含まないと整理したほうが、「法第2条第 1 項の改正は不要、
また、商品商標とのクロスサーチの必要性も小さい」とロジカルに説明しやすいのかもし
れない。しかしながら、小売業に従事する者の意識や一般消費者の感覚からすると、権利
の内容として「商品の販売」は含まないということが果たして違和感なく受け入れられる
のか、言い換えると「取引の実情」と「机上の理屈」とで無用な隔たりができてしまわな
いであろうか。また、商品商標と現実に混同するか否かは、机上での「商品の販売」を含
む、含まないの整理に関係ない。仮に権利の内容として「商品の販売」を含まないとした
ところで、現実には小売業者は商品の販売を行うわけで、まったく意味のない話である。
また、法第2条第1項との関係については、先に①で述べたとおりであり、現行のままで
も同条同項第2号で小売業商標は読める。
したがい、「商品の販売」(=商品の譲渡)を含むのか、含まないのかについては、争点
とする実益が乏しく、当該役務が単に販売行為そのものを意味するものではないことはも
ちろんだが、仮に、
「商品の販売」を含まないとした場合に小売業に係るいかなる態様の商
−65−
標が除外されるのか観念できないし、除外されるものがないのであれば、何のために商品
の販売を含むか否かを問題にしているのか理解できない。
よって、
「小売り」という役務の具体的内容については、指定役務の表示は別として、大
まかに「商品の販売にあたり、当該商品を販売する者により提供される品揃え、陳列、接
客等顧客の購入の便宜を図るためになされる一連のサービス」ととらえることでよいので
はなかろうか。
⑤
インターネット販売、テレビショッピング、カタログ販売について
現実の売り場を有しないこれらの提供形態においてもそこにはリアル世界と同様に「商
品の販売にあたり、品揃え、陳列、サイバー空間の特質を利用したユニークな接客(注文
の仕方、代金の支払い、商品の受け渡し)等顧客の購入の便宜を図るためになされる一連
のサービス」が当然にあるものと考える。
⑥
保護の対象は「総合小売り」のみか、「単品小売り」もか
保護の対象となる小売りとして「総合小売り」
(百貨店、コンビニエンスストア等)のみ
とするか「単品小売り」
(靴屋、眼鏡屋等)も認めるかの問題がある。そもそも両者を明確
に区別し、線引きすることができるのかという問題もあるが、その点は指定役務の具体的
表示との関係で後述することとする。なお、ここでいう「単品小売り」とは、単一の商品
であれ複数のブランド(製造元)の商品を扱っている小売業者(例えば、
「メガネスーパー」
など)を想定している。
「単品小売り」であれ、そこには当然に、品揃え、陳列、接客等顧客の購入の便宜を図
るためになされる一連の保護すべきサービスがあり、
「総合小売り」と区別する理論的根拠
は何ら見当たらないが、ユーザーニーズ、商品商標とのクロスサーチの問題、制度導入に
よる実質的効果(総合小売りの場合、商標取得やその後の維持管理の面で導入の貢献度が
大きい)
、審査実務上の便宜等を総合的に考えると、差し当たり「総合小売り」のみ法上の
役務として登録を認めるということでもいいのではないだろうか。
⑦
法改正の必要性について
小売業商標を役務商標としてその登録を認めるとした場合に法第2条第1項の改正が必
要か否かについては、①、③で述べたように現行のまま同条第1項第2号で十分に読める
と考えるし、また、これに起因した使用の定義(法第2条第3項)の改正も必要とは思わ
れない。
しかしながら、
「ESPLIT 事件3」の東京高裁判断では、小売りを役務と認めるか否かは立
3
東京高判平成 13・1・31、知的財産権裁判例集、平成 12 年(行ケ)105 号
−66−
法論でなければ解決されない趣旨の判断が示されたこと(なお、同判決は審決に違法性は
ない、すなわち、単に審決の判断を誤りとすることはできない旨、判示したに過ぎないと
の見解もある。)、また、同判決は平成13年1月31日と比較的新しいこともあって、何
の法律的手当てなしに解釈論のみで本当に大丈夫かと問われると判断が司法の場に委ねら
れた場合、正直、不安でもある。
そこで、確認的に「小売り」を商標法上の役務として扱う旨の規定を置くことは、検討
に値するものと思われる。
⑧
経過措置について
経過措置の必要性については⑦の法改正の要否と併せて検討されるべき性格のものであ
るが、事前の周知活動が十分になされ、仮にその対象を「総合小売り」に限り、また、解
釈論で解決できるとのことであれば、商標法施行規則別表の改正をもって、その他特段の
措置は必要ないのかもしれない。
なお、周知・著名な「総合小売り」に係る商標は仮に第三者からの出願があったとして
も法第4条第1項第10号又は15号でその登録を阻却できるものと思われる。
⑨
施行日
法改正を伴うと否とを問わず、
「小売りサービス」についての国際分類の注釈が変更され
る国際分類第9版の発効に合わせて、平成19年(2007 年)1月1日から施行することで
よいだろう。
(ⅱ)商標権の特定と指定役務の表示の在り方
①
商標権の特定
「小売り」に係るいかなる権利をサービスマークとして認めるのか、すなわち、どのよ
うな指定役務の表示とすれば権利範囲が明確となるかの点については、
(ⅰ)④で述べた当
該役務の具体的内容である「商品の販売にあたり、当該商品を販売する者により提供され
る品揃え、陳列、接客等顧客の購入の便宜を図るためになされる一連のサービス」をベー
スにしつつ、既にその登録を認めている各国の表示例などを参考に決めればよいことと考
える。
なお、その際、商品商標(販売標)との混乱を生ぜしめないように「小売り」の用語は
使用しないこととしたらどうかとの提案がなされているが、顧客による「購入」という行
「原告の上記主張は、立法論としては格別、我が国の現行商標法の解釈論として、商品の小売から成る本願商標の指定
役務の役務該当性を否定した審決の判断を誤りとする根拠とはならないものというべきである。」
−67−
為は、小売業者が行う「販売(小売り)」という行為があって成り立つ、いわば一対の関係
に立つものであり、「購入」の用語を認める一方で、「小売り」や「販売」の用語は認めな
いというのは理解しがたい。したがい、筆者としては、単なる「小売りサービス」のみの
表示には反対であるものの、特段「小売り」の用語の点については先に述べたと同様、議
論する必要を感じない。
②
指定役務の表示例
総合小売りサービスの表示例としては、①「(A)における(B)
」、②「(A)による(B)」
の態様が考えられる。
①の場合、(A)への挿入例としては、「百貨店」「スーパーマーケット」「コンビニエン
スストア」
「ディスカウントストア」
「家電量販店」
「日用雑貨品店」等、特定の単品商品を
想起しない販売店の名称であればよい(確かに、「単品小売り」の例として挙げた「靴屋」
であってもブーツ、パンプス、スニーカー、革靴、運動靴等様々な種類の靴を扱っており、
「特定の商品を想起しない」との見方もあるかも知れないが、社会通念上、
「靴屋」を「総
合小売り」と観念することはないだろう。)と考える。なお、「特定の単品商品を想起しな
い」ということであれば、「衣料品店」「食料品店」「酒類量販店」
「ドラッグストア」等も
考えられるが、「百貨店」「スーパーマーケット」「コンビニエンスストア」「ディスカウン
トストア」などと比べるとこれらを同列に「総合小売り」と呼ぶには抵抗感がある。(B)
への挿入例としては「(顧客による)各種商品の購入に当たっての便宜の提供」「他人の便
宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)
、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するため
に便宜を図るサービス」等で十分であろう。なお、単に「各種商品の品揃え」では保護対
象たる当該役務の具体的内容に照らし、言葉足らずの感がある。
②の場合、(A)への挿入例としては、「メールオーダー」「テレビショッピング」「イン
ターネット」
「カタログ販売」等、特定の単品商品を想起しない販売方法の名称であればよ
いと考える。(B)への挿入例としては①と同様に考えればよい。
単品小売りについては、(ⅰ)⑥との関係から省略する。
③
商品商標との類否判断とクロスサーチの必要性
(ⅰ)⑥にも関連するが、差し当たり「総合小売り」のみ法上の役務として登録を認め
るということであれば、小売業商標と個々の商品商標との結びつきは分散されて比較的希
薄であること、サービスマーク導入時において実施しなかったことによる大きな弊害も聞
いていないことなどからすれば、審査における商品商標との法第 4 条 1 項 11 号の判断の必
要性は小さく、したがってクロスサーチの必要もないと割り切ってもいいであろう。
(飯田
−68−
恭久)
(3)委員会での主な意見
(ⅰ) 検討事項−1(1)(a)独立要件について
・ 商標法第2条1項2号に、
「業として役務を提供し」と書いてあるが、これをどう解釈
するか。普通、この「業として」というのは、一般的に、継続的に対価を得て顧客に役務
を提供することと考えられ、対価を得て顧客に役務を提供することは、その役務が独立し
た役務であることが前提にある。取引の対象になるものは独立性を有すると考える。しか
しながら、小売店で個々の物の販売がされる場合には、そこにサービスがついているとい
う場合でも、顧客と店との間では、物について取引がなされているという認識が一般的で
あって、物に一つのサービスが付加されたものを買っているということは余り認識されて
いない。物は対価を伴って取引されるわけだが、その対価の中に原価以外のコスト部分と
適正利潤部分がある。小売りサービスによる利益部分、対価部分は、恐らくは両当事者間
では適正利潤なり原価以外のコストの面に含まれているというのが一般的ではないか。そ
うすると、小売店で物の売買がされる場合は、サービスの提供が仮にコミッションとして
価格に上乗せされているとしても、それは独立の取引の対象になっているとは言えないの
ではないか。
・
独立して商取引の対象となり得るか、否かという議論についていえば、独立して商取
引の対象になるかどうかという場合には二つの場合が考えられる。すなわち、サービスの
提供を受ける側との関係で独立して取引の対象となるという場合と、サービスを提供する
側同士で品揃え等のサービスが一つの経済的価値を持っていて、それを使わせたり、使わ
せなかったりすることに一つの独立的な経済価値を認める場合の二つがある。ここで問題
になっているのは、サービスを受ける側との関係で、独立の取引の対象になるかどうかと
いうことである。その場合に、少なくともサービスを受ける側との関係で、独立した取引
対象になっているかどうかという観点から考えると、日本の社会の中では、このようなこ
とが社会通念にまでなっているというのはかなり難しいのではなかろうかという感じがす
る。
・
商標法2条1項1号と2号との関係は、商品の販売を含むかどうかである。しかしな
がら、独立取引性の要件が問題になっているとすると、商品の販売を含むかどうかは、実
は関係ない話だと考える。含むとしても、そのサービスに独立取引性がないとすれば、結
論は同じとなるからである。だから、1号、2号とか小売りサービスの中に販売まで含む
かどうかという問題と、小売りサービスに独立取引性の要件を考えるかどうかということ
は、別問題である。問題は、独立の商取引性の要件を認めるかどうかだが、認めるとする
と、小売りサービスは通常考えられている独立の商取引対象とは、言えない。だから、何
とか割り切ってそう考えてしまうか、解釈では無理とか運用では無理ということであれば、
−69−
法改正することしかないのではないか。
等の意見があった。
(ⅱ)検討事項−1(1)
(b)
「商品の品揃え、陳列が独立して商取引の目的たりうるかど
うか」について
・
コンビニエンスストアでは陳列などがノウハウになっておりサービスマークであって
もよいのではないか。
・
品揃えや顧客の販売に係る便宜をコアにしてその部分に権利を認めた方が良いという
のが小売業商標を保護するかどうかというところの議論で出てきたことが発端である。そ
れが独立して商取引の目的たりうべきものかどうかの観点で考えてしまうとその対価があ
るかないかの話になり堂々巡りになる。日本のブランドを高め、経営の資源として考える
ことが知財推進計画で言われているところなので、その観点から保護すべきものなのかど
うかの議論をしても良いのではないか。そういう意味からすると、コンビニエンスストア
で品揃えがいいとか、夜に行っても買えるというのも確かに価値のあるようなサービスだ
し、そこで使っている標章というのは保護しなくてはいけないと考える。また、三越で買
えば真正品がいつでも買える、また、包み紙にオーソリティーがあるといったようなこと
に期待している。それであれば、そこにも価値を認めていいのではないかという考え方も
ある。
等の意見があった。
(ⅲ)検討事項−1(1)
(c)
「小売りサービスが商品の販売(譲渡)を含むか否か」につ
いて
・
コンビニエンスストアの業務において、ここからここまでがサービス業だ、ここから
売るところはサービス業から外すというように業務を途中で切ることは、難しいのではな
いか。やはり揃えてから売るところまで考えないといけないのではないか。
・
商品について使用するのか、役務について使用するのか。それは需要者の認識で判断
していく必要がある。100 円ショップを考えた場合、売っているものについて、例えば 100
円ショップの商標がついた包み紙を使っていても、それは需要者の目から見たときに、包
まれている商品の品質とかを表するものとして機能しているかというと、そうは考えられ
なくて、むしろ 100 円で何でも買えるというその店で買った、その役務の提供を受けた印
として使っているように認識されるのではないか。そうすると、同じ販売でも、販売とい
−70−
うのがたまたま商標法第2条第1項2号についても入ってくるかもしれないが、1号には
当たらない販売業務というサービスを提供している場合があり得るのではないかと考える。
・
小売りサービスは、物を当然販売する。販売してはいけないのではなくて、販売はす
るが、サービスのサービスたるゆえんはどこにあるかということである。商品の販売その
ものは今まであったわけで、サービスマークとして認めるところのポイントは、こういう
買い物のために品を揃えたり云々というところにサービスの本質があるということである。
国際的なサービスの記載の仕方に沿って、販売を外したらいいと考える。
・
小売りサービスが販売を含むか含まないか、どちらでもよい。法改正の要否だけが問
題である。実態的には変わらない。
・ アメリカは、Retail store services の中に販売は入っているかという質問に対して、
販売は入っていない、それは「商品商標」という回答である。また、主要国の中で、販売
が入っているという回答してきた国はない。諸外国では、小売りは Retail store services、
Retail services という表示で通っている。その表示が一体何なのかということで、いろ
いろな質問を諸外国にした。もしかしたら store とか store services という文言がついて
いるところに意味があるのではないか。Retail store services と小売りは同じ意味とし
て議論できる用語なのかというのはそういう意味である。我々、日本語で小売りといって
しまうと、販売とか譲渡が入ると考えるが、他国がやっているのは、単なる retail ではな
くて、Retail store services である。その意味でちょっと違う。諸外国では販売は入っ
ていないということで理解されていると考えられる。あくまでも販売は入っていない。こ
こで Retail store services で保護しようとしているのは、顧客に商品選択の便宜の提供、
と考えると、整理がしやすい。
等の意見があった。
(ⅳ)検討事項−1(1)(e)「総合小売りのみか」について
・ 百貨店とかコンビニエンスストアとか、総合的な小売りというところは基本的にはニー
ズは高い。ただ、単品の小売りを認めろという意見は、総合小売りを認めて、単品小売り
は認めないという理屈の整理が難しいということだろうと考える。商品の品揃えとか陳列
ということを保護するようになれば、当然単品の商品を扱っている店舗でも、その種の保
護すべきサービスはあり得るということである。本当にニーズだけでいくのであれば総合
小売りだけでいいのかもしれない。
・ 不使用の問題もあるが、総合小売りか単品小売りかということは、単純にどちらかを認
めるという問題だけではなくて、クロスサーチの問題や、経過規定や、既存の小売店に及
ぼす影響とか、そういうことを総合的に見て考えて決めなければいけないだろう。
−71−
等の意見があった。
(ⅴ)検討事項-3(1)小売りサービスと商品の類否について
・ 「小売りサービスに販売を含める、あるいは含めない」ということと、
「小売りサービ
スと商品商標との類否判断をする、しない」は関係ない。百貨店の小売りサービスについ
ては、販売を含めようが、含めまいが、小売りサービスと商品商標との類否判断は、販売
を含めるか、含めないかとは関係なしに、類否判断をする必要がないと考える。例えば、
小売りサービスというのを商標法に「販売も含める」として入れたとした場合、百貨店で
販売している100、200の商品との間で類否判断をしなければいけないのかというと、
そんなことをする必要はない。それは百貨店のサービスとして与えられているもので、例
えばそこで衣服が販売されたとして、では、衣服の商品商標との類否判断をしなければい
けないかというと、それはする必要はない。もしそこで混同が生じるおそれがあると考え
るのであったら、
「販売まで含めない」場合であっても、類否判断をやらなければいけない
ということになると考える。ただし、単品小売りの場合は類否判断の必要性はでてくるだ
ろう。
また、保護する指定役務を「販売を含まない小売りサービス」としたところで、現実に
その業者は販売するわけだから、単に人為的に販売を外すという概念規定をしても、それ
によって必要性が小さくなるということは、おかしい。実態的には販売が含まれるわけだ
から、どのように概念規定するかとは無関係に、類否判断をしなければいけないのだった
ら、しなければいけない。しなくていいのだったら、しなくていいということになると考
える。
という意見に対して、
・商品との類否判断は、小売りサービスに販売を含めるか否かに関係なしに、本来はやる
必要があると考える。
という反対意見もあった。
−72−
3.外国における小売業サービスマーク
日本における小売業商標のサービスマークへの拡大を検討するに当たり、諸外国の小売
業のサービスマークの状況についてまとめる。
アメリカ(1958年から小売りサービスを役務として登録を認可)1、カナダ、アジア
の数カ国は従来から小売りサービスを独自の役務として認めていた。さらに、1997年
発効のニース協定に基づく商品・サービスの国際分類[第7版]において「他人の便宜のた
めに各種商品を揃え(運搬を除く)
、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜
をはらうこと」が第35類に含まれた。このため、国際的に小売りサービスを役務として
認めるという方向が検討されてきており、
「小売りサービス」を独立した役務として認める
国が増えてきた。ただし、
「この類には特に次のサービスを含まない」として「主たる業務
が商品の販売である企業、すなわちいわゆる商業に従事する企業の活動」となっていると
記載されている以上、小売業は役務と見なされないという明白な解釈が取られる国々も存
在する2。
OHIM においては、1996年3月に採択した審査基準では、小売りサービスを指定役務
として認めていなかったが、OHIM 審査官によって「他人の便宜のために各種商品を揃え(運
搬を除く)顧客がこれらの商品を見、かつ、購入する為に便宜を図ること、商業的及び広
告的目的でホールやショールームで展示する機構」
(第35類)を指定役務とする出願を拒
絶査定されたケース(Giacomelli/Sport 事件)で、第2審判部が「活動分野又は小売業が
関連する特定商品が示されれば、係るサービスは登録されうる」との考えのもと、審査官
の決定を否定する決定を下し、それ以後、実務を変更している 3 。また、イギリスでも
2000年 8 月より、実務を変更し、
「小売りサービス」を登録すべき役務の対象とするこ
とを明示している4。また、日本商標協会の29カ国及びベネルックス、OHIM に対する「小
売りサービスを指定役務とする商標登録」についてのアンケート調査(2002 年度)5によ
ると、大半の国が小売りサービスを役務として登録すると答えており、小売りサービスを
役務として登録しないと答えた国は、ドイツ、フランス、ギリシャにとどまっている。
以上のように、諸外国においては、小売りサービスを役務として認める国が、増えてい
る。これらの国々において「小売りサービス」を指定する場合、表示として以下のような
形態がある。
①
「小売りサービス」というような広い指定役務を認める。
1
「産業財産権分野の制度(商標制度)改正に係る調査研究報告書」(平成 15年度特許庁工業所有権制度問題調査報告
書)((財)知的財産研究所、2004 年 3 月)110 頁
2
「内外商標法における商標登録要件の解釈及び運用に関する調査研究報告書」(平成 12年度特許庁工業所有権制度問
題調査報告書)((財)知的財産研究所、2000 年 3 月)56 頁
3
知財研平成 12 年度報告書・前掲注(2)61 頁
4
知財研平成 12 年度報告書・前掲注(2)62 頁
5
日本商標協会誌第 47 号別冊資料(2003 年 2 月)
(参考資料Ⅲ-4、5 参照)
−73−
② 「百貨店」
「百貨店の小売りサービス」
「特定商品の小売りサービス」のように、小
売りサービスに係る分野や形態を表示する。
③
ニース国際分類第8版(2002 年発効)に記載されている表示「他人の便宜のために
各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便
宜をはらうこと」と記載する。
①の「小売りサービス」を認めている国はオーストラリア、デンマーク、フィンランド
等である。
アメリカでは①の表示は、認めておらず、②の「百貨店」や商品を具体的に表示した「小
売りサービス」が認められている。
(③の表示も認めているが、あまり用いられていない。
)
同様に②(又は②と③)の表示を認めているのは、香港、韓国、台湾、マレーシア、シン
ガポール等であり、③のみの表示を認めているのがイギリス、トルコ、アルゼンチン等で
ある6。
また、「商品の販売」自体が役務と認められるかということも検討課題の一つである。
2003年に特許庁が行ったアメリカ、イギリス、フランス、スイス、ノルウェー5カ国
へのアンケート調査7によれば、小売りサービスを役務として認めていないフランスを除く、
4カ国のうち、
「商品の販売」自体を役務と認めると回答した国は、ノルウェーのみであっ
た。一方、アメリカは「商品を販売する行為」は、アメリカの判例法の下でサービスとは
考えられていないという回答であり、また、アメリカ特許商標庁(USPTO:United States
Patent and Trademark Office)の Web ページの「Trademark Acceptable Identification of
Goods & Services(商品・役務の商標受理可能識別)」サイトにおいて「Retail」を含む表
示の全類サーチをすると、「042
Retail sale of [indicate specific goods, e.g.
cosmetics, housewares, lingerie] by means of home parties(
「第42類
ホームパー
ティーの手段による(化粧品、家庭用品、下着等の)小売り販売」)」が削除されており、
そのノートに『販売(selling and sales)はアメリカ商標法及びニース協定のいずれにお
いてもサービスとして認められていない。』と記述されている8。
「小売りサービス」と商品との相互間でのサーチに関しては、アメリカ、イギリス、ノ
ルウェーが行う、スイスが行わないという回答を得ている9。
6
7
8
9
前掲・注(5)
参考資料Ⅲ-6
参考資料Ⅲ-7
前掲・注(7)
−74−
4.小売業商標のサービスマークとしての登録について
商品商標の使用行為として扱われている「商品の販売」とは別途、いわゆる小売りサー
ビス(商品の品揃え、陳列等、需要者に対する商品購入の便宣の提供)という役務につい
て商標登録を認めることとする場合における、本委員会における制度設計の考え方、運用
等の整理は以下のとおりである。
(1)商標法上の役務について
いわゆる小売りサービスについて使用する商標を、商標登録の対象とするためには、こ
の小売りサービス自体が商標法上の役務たりうるものでなければならないことは当然のこ
とである。
一般的には、商標法上の役務とは、
「他人のために行う労務又は便益であって、独立して
商取引の目的たりうべきもの」と解されているものの(特許庁編「工業所有権法逐条解説」
等)、商標法上には「役務」についての定義規定がないこともあって、議論の中でも、「独
立して商取引の目的たりうべきもの」
(独立性)の要件は、必ずしも必要ないのではないか
とする意見もないわけではなかったところ、議論の前提としてその考え方を明確にしてお
く必要があるという認識の下で、当委員会では、次のように整理した。
商標とは、商取引の対象となる商品や役務について使用する識別標識であるところ、商
品や役務が商取引の対象となりうるのは、そもそもそれらが独立性を有するからこそであ
る。また、商標が自他商品・役務識別機能を果たし得るのは、独立して商取引の対象とな
りうる商品や役務に限られると言うこともできるのではないか。
してみると、商標法上の「役務」とは、単に「他人のために行う労務又は便益」である
に止まらず、これが独立性をも有すべきであること、すなわち「独立して商取引の対象(目
的)たりうべきもの」であるべきは当然のことと言うべきである。
ちなみに、商標法上の役務が「独立して商取引の対象たりうべきもの」であることは、
平成3年にサービスマーク登録制度を導入した際の立法者の意図でもあり(特許庁編「工
業所有権法逐条解説」第16版1045頁)、数多くの裁判例の示すところであって、これ
を否定する裁判例は存しない。
したがって、商標法上の役務については、「独立して商取引の目的たりうべきもの」(独
立性)であることが必要であり、これを前提として、以下の論を進めることとする。
(2)小売りサービスの独立性
以上によれば、小売りサービスを商標法上の役務として扱うためには、小売りサービス
−75−
自体が独立性を有するということが必要ということになる。
そこで、小売りサービスを商標登録の対象とするには、次のように、解釈運用で「独立
性を有する役務」として扱うとする(案1)と、法で「商標法上の役務」として扱うとす
る(案2)が考えられる。
(案1)「独立性を有する役務」として扱う考え方
近年において、総合スーパーやコンビニエンスストア等の店頭等に掲げられている標識
は、店内における商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供という役
務について、自他役務識別機能を果たしているという実情がある(例えば、全く同一の商
品なのに、A店ではなくB店で購入すること等)ことにかんがみると、この品揃え、陳列
等の顧客に便宣を図るための役務自体が、独立した経済価値のある役務、すなわち、独立
して商取引の対象たりうる役務として認め得る状況が形成されているといえる。
なお、一般的には、独立して商取引の対象たりうべきものは、対価を伴うものというこ
とができるところ、小売店で商品の売買がされる場合において、この小売りサービスによ
る対価部分は、需要者の認識のいかんにかかわらず(商品の販売価格に接した需要者は、
その商品を購入するに際して、商品の原価、小売りサービスの対価、適正利潤等が、それ
ぞれいくらかなどということは意識することはないのが通常である)
、販売価格に当然に包
含されているとみるのが自然といえる。
したがって、多くの諸外国と同様、解釈運用で、小売りサービスを「第 35 類」に属する
「独立性を有する役務」として扱うことは可能である。
(案2)
法で「商標法上の役務」として扱う考え方
今日においても、未だ、商品の品揃えや陳列等の小売りサービスは、商品の販売に付随
する役務であって、独立して商取引の対象たりえないとする考え方を維持せざるを得ない
とした上で、この小売りサービスについての商標登録を認める制度設計を考えるのであれ
ば、小売りサービスを商標法上の役務(独立して商取引の対象たりうる)として扱うため
の、いわばブリッジ規定(例えば、
「小売りサービスは商標法上の役務とみなす」又は「商
標法上の役務には小売りサービスを含む」等の規定)を新設する法改正によって対応する
以外にはない。
そして、そのようにすれば、
「商品及び役務の区分」についても、第35類に所属する役
務として扱うことが可能となる。
(ちなみに、考え方としては、小売りサービスについて、商標法上独立性のない役務と
して例外的に登録を認める旨の規定を設けた上で、独立性のない役務の保護のための新し
い区分(例えば「第46類」)を設けること等による対応も考えられないわけではないが、
商標制度の国際的ハーモナイゼーションとの関係でも問題があり、内外のユーザーにとっ
−76−
て不都合を生ずることは明らかであるので、現実的ではないと思われる。)
以上のように、二案が考えられるところ、
(案1)の解釈で割り切る考え方も、諸外国が
そうであるように一理あるとは思われるものの、東京高裁判決(シャディ判決、ESPR
IT判決)における「立法論としては格別、我が国の現行商標法の解釈論としては無理」
である旨の指摘との関係や、後述するように経過措置を設ける必要性との関係でも問題が
ないわけではないことをも考慮すると、(案2)の法改正対応による考え方が適当である。
なお、
(案1)を支持する意見もあったが、確認的であれば、法律に規定を設けること自
体には反対しないということであった。
したがって、
「商標法上の役務には小売りサービスを含む」という規定であれば、創設的
にも、確認的にも解釈することが可能なので、
(案1)、
(案2)のいずれをとるにせよ、こ
のような趣旨の規定の新設という法改正をする方向で検討をするという考え方については、
異論がなかった。
〔参考〕法改正イメージ(案)
商標法第2条第1項第2号
業として役務(小売りサービスを含む)を提供し、又は証明する者がその役務について使用を
するもの(前号に掲げるものを除く。)
(注)用語として、「小売りサービス」の語を使用することの適否については、後述。
(3)小売りサービスの内容(「販売」を含むか否か)
次に、商標登録の対象とする「小売りサービス」とは、どのような内容のものとして扱
うこととするのかが論点となるところ、これについては、次のように、商品の品揃え、陳
列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供のみであるという(案1)と、これに加えて、
これに伴う販売という行為も含むものであるという(案2)が考えられる。
(案1)「小売りサービスには、販売は含まれない」とする考え方
小売りサービスは、商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供のみ
であって、販売という行為は含まないとする考え方である。
すなわち、小売りサービスを独立性のある役務として商標登録の対象とすることとした
場合でも、
「商品に係る商標権」から見ると、当該商品の品揃え等は従前どおり販売に付随
する独立性のない行為であると同様に、逆に、
「役務(商品の品揃え等)に係る商標権」か
ら見た場合には、
「商品の販売」は商品の品揃え等に付随する独立性のない行為であるとす
る考え方である。お互いに、一方を「主」と見て、他方を「従」と見る関係である。
−77−
ちなみに、以上のような考え方が可能であれば、販売について使用する商標は商品商標
であり、販売を除く役務について使用する商標は役務商標という整理が可能となるので、
現行法商標法の第2条第1項の第1号及び第2号(「商標」の定義)、並びに同条第3項(
「使
用」の定義)の改正は不要となろう。
また、片や「販売」を含み、片や「販売」を含まずということであれば、その内容にお
いて切り分けが可能となるので、小売りサービスに係る役務商標と商品商標について、審
査上の類否判断を行う必要性は、相対的に低くなるものと思われる。
〔参考〕米国での取り扱い
米国でも、「retail
store
services」の表示は認めているが、「selling」や「sales」は認め
ていない。
「Selling and sales are not service under the US Trademark Act or the Nice Agreement
the primary beneficiary of selling or sales is the seller.
acceptable in the retail chain(e.g., retail stores,
Language
since
describing services
distributorships, on-line retailing)
should be used instead of selling or sales.」(USPTO ホ−ムページ)
(案2)「小売りサービスには、販売も含まれる」とする考え方
小売りサービスは、商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供だけ
でなく、販売という行為も含むとする考え方である。
すなわち、商品の品揃え、陳列等の需要者に対する商品購入の便宣の提供は販売のため
に行うものであり、販売という行為とは一連不可分のものであり、切り分けることができ
ないという考え方に基づくものである。
ちなみに、この考え方で行くとすると、商標法上「販売」については、商品商標でも役
務商標でも登録可能とすることとするか、又は、今後は全て役務商標としてのみ登録可能
とすることとする必要が生じることとなるので、現行法商標法の第 2 条第1項の第1号及
び第2号、並びに同条第3項の改正が必要ということになろう。
また、商品商標でも役務商標でも登録可能とするということであれば、いずれも「販売」
を含むということとなるので、商品商標と小売りサービスに係る役務商標について、審査
上の類否判断を行う必要性は、相対的に高くなるものと思われる。
以上のように、二案が考えられるところ、そもそも小売りサービスとして保護して欲し
いというニーズがあるのは、
「販売」とは別途の、従来販売に付随するといわれてきた「品
揃え、陳列等」であること、
(案2)の「小売りサービスには、販売も含まれる」という考
え方をとると、これまで販売標識として位置付けてきた商品商標に係る商標権との整理が
困難になるという懸念があること等をも考慮すると、
(案1)の「小売りサービスには、販
−78−
売は含まれない」という考え方が適当である。
ちなみに、この考え方でいく場合、
「販売」は「小売りサービス」についての商標権の使
用権(第25条)の範囲には含まれず、禁止権(第37条第1号)の範囲に含まれるか否
か(類似か否か)はケースバイケースということになろう。
なお、
「販売を含むか否か」ということと「小売りサービスに係る役務商標と商品商標間
の類否判断の必要性」とは関係がないのではないかという意見も一部にあった。
(4)総合小売りサービスのみか、単品小売りサービスもか
小売りサービス(需要者に対する商品購入の便宣の提供)には、「総合小売りサービス」
(百貨店、総合スーパー、コンビニエンスストア等で、多種多様な商品を扱うもの)と「単
品小売りサービス」
(眼鏡店、時計店等の専門店で、いわゆる特定の商品を扱うもの)があ
りうるところ、考え方としては、前者のみを商標登録の対象とする(案1)と、両者とも
商標登録の対象とする(案2)が考えられる。
(案1)「総合小売りサービス」のみを商標登録の対象とする考え方
実体的に見た場合、「単品小売りサービス」、すなわち単品(場合によっては、それと関
連する商品(例えば、眼鏡であれば、眼鏡クリーナーや眼鏡ケース等)も含む。
)の品揃え
等は、当該単品商品の販売と一連不可分的で結び付きが強いものであって、独立性を認め
にくい役務であるのに対して、
「総合小売りサービス」すなわち多種多様な商品の品揃え等
は、さまざまな種類や性質の商品を取り扱っているということ自体に本来的性格が見いだ
せるものであり、取り扱っている商品のうちの一単品商品ごと又はそれらの販売との結び
付きが弱いものであって、それ自体で独立性を認め得る役務といえるので、「総合小売り
サービス」のみを商標登録の対象とすべきとする考え方である。
ちなみに、
「総合小売りサービス」のみを商標登録の対象とすることとした場合には、そ
の役務商標と商品商標とは、それらが表すものが、前者はさまざまな種類や性質の商品を
取り扱っているということ自体であるのに対して、後者は特定の単品商品自体についてで
あって、その内容を異にするので、審査上の類否判断を行う必要性は低くなるものと考え
られる。
(案2)「総合小売りサービス」だけでなく、
「単品小売りサービス」についても商標登録
の対象とするとする考え方
商品の品揃え等の行為自体は、「総合小売りサービス」だけでなく、
「単品小売りサービ
ス」にも多かれ少なかれあるので、一方のみ認めて他方は認めないとするその線引きが必
ずしも明確ではないので、
「総合小売りサービス」を商標登録の対象とするのであれば、
「単
−79−
品小売りサービス」についても同じ扱いにすべきとする考え方である。
ちなみに、
「単品小売りサービス」についても商標登録の対象とすることとした場合には、
その役務商標と、同一の商品についての商品商標とは、その行為内容において密接性・近
接性を有するので、審査上の類否判断を行う必要性は高くなるものと考えられる。
以上のように、二案が考えられるところ、
「総合小売りサービス」のみを商標登録の対象
とした場合、
「総合小売りサービス」のみについて、運用上独立性を認めたり、商標法上の
役務として扱うことが立法上も可能かという解決しなければならない課題は残るものの、
小売りサービスとしての商標登録のニーズは、
そもそも総合小売りサービスのみであって、
単品小売りサービスについての保護のニーズはない上に、ニーズのない保護のために、制
度や運用を複雑なものにすること(例えば、商品商標との類否判断、単品小売りサービス
に係る役務商標間の類否判断、無限にあり得る「○○(単品)の小売りサービス」の願書
上の多数記載への対処等)は避けるべきという観点から、まずは、ユーザーニーズのある
「総合小売りサービス」のみの保護でスタートすることとすべきであり、このような方向
性の適否をパブリックコメントに付することが適当である。
(5)小売りサービスに係る役務商標と商品商標との審査上の類否判断
小売りサービスを商標登録の対象とする場合、小売りサービスに係る役務商標と商品商
標との審査における類否判断の要・不要は、前述の「小売りサービスは『販売』をその内
容に含むのか否か」
、「総合小売りサービスのみでなく単品小売りサービスも認めるのか否
か」の組み合わせにより、次のように考えられる。
(販売を含むか)
(総合小売りのみか)
(商品商標との類否判断)
①
販売を含まず+
総合小売りのみ
⇒
必要性低い
②
販売を含まず+
総合小売り・単品小売り
⇒
必要性低い、又は
単品小売りのみ必要性高い
③
販売を含む
+
総合小売りのみ
⇒
必要性高い
④
販売を含む
+
総合小売り・単品小売り
⇒
必要性高い
すなわち、上記の組み合せにおいて、小売りサービスには、その内容として「販売は含
まれない」という整理が可能であれば、基本的には、当該役務商標と商品商標との類否判
断の必要性は低くなり、逆に、
「販売は含まれる」という整理にするのであれば、基本的に
は、当該役務商標と商品商標との類否判断の必要性は高くなる。ただし、
「販売は含まれな
い」と整理する場合であっても、
「単品小売りサービス」については、当該役務商標と当該
小売りサービスに係る商品についての商標との類否判断は、審査上も必要とすべきという
−80−
考え方もありうる。
上記(3)
、(4)で述べたとおり、ユーザーニーズ、商標審査制度の円滑な運用等を勘
案して、①「小売りサービスには販売は含まない」かつ「総合小売りサービスのみを商標
登録の対象とする」という考え方でよいということであれば、
「小売りサービスに係る役務
商標と商品商標間の類否判断の必要性は低い」ということになる。少なくとも、審査上は
類否判断を不要としてもいいと解される。
なお、
「販売を含むか否か」ということと「小売りサービスに係る役務商標と商品商標間
の類否判断の必要性」とは関係がないのではないかという意見が一部にあったことは前記
したとおりであるが、このように主張する者も、単品小売りサービスを商標登録の対象と
することとするのであれば、商品商標との類否判断は必要とする立場である。
したがって、いずれにしても、総合小売りサービスのみを商標登録の対象とするのであ
れば、商品商標との類否は不要とする考え方については、異論がなかった。
(6)小売りサービスに係る役務商標同士の審査上の類否判断
小売りサービスについては、総合小売りサービスだけでなく単品小売りサービスをも保
護しようというのであれば、これらのサービスに係る役務商標同士の類否判断は、
「商品の
購入の便宜の提供」を共通にする点において全て類似するとすべきとする考え方や、取り
扱う商品によっては類似しないのではないかとする考え方等があり得る。
(案1)小売りサービスに係る役務商標同士は全て類似とする。
総合小売りサービス同士を類似扱いとするだけでなく、小売りサービスは、いずれのサー
ビスもその内容である「商品の購入の便宜の提供」という面では共通であるので、総合小
売りサービスであると単品小売りサービスであるとを問わず、審査上は全て類似と取り扱
う(類似商品・役務審査基準上、同一の類似群とする。)とする考え方である。
(案2)小売りサービスに係る対象商品によっては非類似とする。
総合小売りサービスと単品小売りサービスとは、その性格を異にするので、これを非類
似扱いとすることはもとより、単品小売りサービス同士も、当該小売りサービスに係る商
品によっては、その購入の便宜の提供の内容も同一ではないので、審査上は非類似と取り
扱う(例えば、類似商品・役務審査基準上、商品の類似群の数に相当する数の類似群を設
ける。)とする考え方である。
上記(4)で整理したように、まずは「総合小売りサービス」のみの保護を考える場合
−81−
であっても、
(ⅰ)すべての総合小売りサービス同士を類似の扱いにするという考え方と、
(ⅱ)同じ総合的な小売りサービスであっても、その内容(例えば、
「家電量販店における
各種商品の購入の便宜の提供」や「食料品店における各種商品の購入の便宜の提供」)によっ
て整理をする必要もあるという考え方もあり得る。
(7)指定役務としての表示例
商標登録制度の円滑な運用に資するためには、小売りサービスの指定役務の具体的な表
示方法についても、検討をする必要がある。
まずは、小売りサービスの指定役務の表示は、総合小売りサービスと単品小売りサービ
スを区別するためにも、
「○○小売りサービス」と具体的に小売りの内容を記述すべきであ
り、単なる「小売りサービス」のみの表示は、認めるべきではない。
また、商品商標(販売標)との混乱を生ぜしめないように、
「小売り」の用語は使用せず
に、例えば「商品の購入の便宜の提供」等の用語を使用すべきである(例えば、総合小売
りサービスなら、「スーパーマーケットにおける各種商品の購入の便宜の提供」
、単品小売
りサービスなら、「靴の購入の便宜の提供」等)。
上記(4)で整理したように、「総合小売りサービス」のみの保護を考えるのであれば、
例えば、「∼における各種商品の購入の便宜の提供」「∼における各種商品の品揃え」等と
いう表示になろう。
(例)
「百貨店における各種商品の購入の便宜の提供」
「コンビニエンスストアにおける各種商品の購入の便宜の提供」
「テレビショッピングによる各種商品の購入の便宜の提供」
「メールオーダーによるカタログを通じた各種商品の購入の便宜の提供」
なお、「総合小売りサービス」の具体的表示を検討するに際しては、
「総合小売りサービ
ス」として認めうる具体的な範囲(「百貨店」
「スーパーマーケット」
「コンビニエンススト
ア」等だけでなく、
「家電量販店」
「酒類量販店」
「食料品店」
「衣料品店」等も認めるのか)
についても、今後検討していく必要がある。
(8)施行日
「小売りサービス」についての国際分類の注釈が変更される国際分類第9版の発効に合
わせて、平成19年(2007 年)1月1日(の出願)から施行することが適当である。
−82−
(9)経過措置の必要性
仮に、
「総合小売りサービス」のみを商標登録の対象とすることとしても、従来にない新
しい役務の保護をスタートさせるわけであるから、何らかの経過措置を考える必要がある。
その場合、前記したように、
「小売りサービスには販売は含まない」
、
「総合小売りサービ
スのみを商標登録の対象とする」
、「審査上は、小売りサービスに係る役務商標と商品商標
間の類否判断は不要」という考え方で整理するのであれば、最小限の経過措置で済むので
はないか。サービスマーク制度導入時のような大掛かりな経過措置は必要ないのではない
かとも考えられるが、具体的な内容については、今後検討していく必要がある。
−83−
Ⅳ.まとめ
1.これまでの経過
昭和 34(1959)年に成立した現行商標法は、その後数次の改正を経て、市場秩序の維持
を担い現在に至っているが、インターネットの登場など法制定時には想定されていなかっ
た技術が現れるなど、商標を取り巻く環境の実質的変化や、技術的創作成果物保護制度で
ある特許法から準用規定を設けるなど、法形式的な理由から、制度の全体的な見直しの必
要性がつとに指摘されていた。更に、知的財産戦略大綱において、
「魅力あるブランドを活
用して、より価値の高い製品・サービスを提供する環境を整備するための具体的方策につい
て」、2005 年度末までに結論を得るよう求められたことをも受け、平成 15(2003)年 6 月、
産業構造審議会知的財産政策部会商標制度小委員会は、商標制度の在り方に関する検討を
開始した。
検討の対象は、商標機能論の再検討、商標及び標章の使用の概念の見直し、現行審査主
義の下での商標の登録要件の在り方、著名商標の保護など、さまざまな問題に及んでいる
が、なかでもコンセント制度の導入及び小売りサービスのサービスマークとしての登録の
可能性に関する問題は、商標審査実務に多大な影響を及ぼすところから、これらの問題を
格別に切り出して、本委員会において検討することとなったものである。
2.コンセント制度
2003 年末の商標登録最終番号、4,737,741 から見て、相当数の商標登録が現在なお「生
きている」と想像されるが、そのほとんどが使用されていないともいわれている。この結
果、商標登録出願をしても、先行の登録商標と抵触する可能性が少なくなく、使用されて
いない登録商標が競争制限的に作用することが容易に想像できる。この場合、後願の商標
について商標登録を受けるためには、不使用取消審決を受けて先の商標登録を取り消す方
法と、先の商標登録を受けている者に後願の商標登録出願に係る商標の商標登録を受けて
もらい、登録後商標権の移転を受ける方法がある。コンセント制度は、これら二つの方法
に加え、第三の方法の選択を利用者に可能とするものであり、利用者に優しい商標制度を
実現する観点からも好ましいものということができる。
コンセント制度を採用するにしても、商標制度の制度目的を損なうものであってはなら
ないのは当然である。商標制度の目的は、商標の保護を通じて「商標を使用する者の業務
上の信用の維持を図り、もって産業の発達に寄与し、あわせて需要者の利益を保護するこ
と」にあるから、商標の利用者の利益と同時に、需要者・一般消費者の利益をも考慮する
ことが求められる。このような前提に立って、問題はどのような制度設計とするかという
-84-
ことである。
この点について、本委員会は、コンセント制度の対象範囲を商標法 4 条 1 項 11 号に限定
して導入するよう求めている。4 条 1 項 10 号についても、対象範囲とすべきではないかと
いう意見もあったが、需要者・一般消費者の利益に反するおそれがあり、商標利用者の利
益からのみ判断すべきではなかろう。商標利用者の利益は、同号に関して「類似商品・役務
審査基準」の見直しを通じて図ることも可能であろうからである。
コンセント制度の導入において留意すべきことは、先に述べた商標制度の目的に照らし、
商標法 4 条 1 項 11 号の商標の類似判断を、取引の実情に合わせより適切に行わしめ、職権
主義で行われる審査官の審査を補完するためのものだという点である。この観点からは、
コンセントが仮にあっても審査官が、商標法 4 条 1 項 11 号の類似があると認める場合には、
審査官はコンセントに拘束されず、当該出願を拒絶することができなければならないはず
である。いわゆる留保型のコンセント制度である。しかし、それでは、出願人が先行登録
商標の保有者と交渉してコンセントを得ても、それは徒労に終わる結果を認めるものであ
り、商標利用者の利益の考慮に欠けるところとなる。このような商標制度の制度目的及び
商標利用者のコンセントをめぐる利益を考慮し、商標法 4 条 1 項 11 号における類似につい
ては審査官がコンセントの存在を運用上最大限尊重するという仕組み、いわゆる準完全型
コンセント制度の導入が望ましいということになろう。
ただ、この準完全型コンセント制度を、商標法上明確化を図って実現するか、運用によ
り実現するかについては議論があろう。これまで、我が国の商標法には、コンセント制度
の採用がなかったのであるから、行政の透明性の観点からは、商標法上においても明確化
を図ることは十分考えられるところである。同時に、考えておくべきことは、商標法 4 条
1 項 11 号の、商標の類似とは「商品の出所の混同を生ずるおそれ」のある範囲とする、最
高裁判決(氷山判決:最判昭和 43 年 2 月 27 日民集 22 巻 2 号 399 頁)が存在していること
である。このことを考慮し、商標法 4 条 1 項 11 号の規定に、類似概念と別に、混同の概念
を導入する法改正を行い、類似ではあっても、コンセントにより混同のおそれのないと判
断される場合には、相対的拒絶事由は解消される可能性を明確にしておくことによって、
商標法と従前の判例理論との整合性を図りつつ、コンセント制度の導入を社会的に明確に
することは理由のあるところだと思われるからである。
しかし、本委員会の多数は、運用による準完全型のコンセント制度の導入を図るべきで
はないかという結論に達した。商標利用者のニーズに可及的速やかに応える必要がある、
という認識を優先した。法制度化による場合には、産業構造審議会知的財産政策部会商標
制度小委員会の委員会報告がまとまるのが 2005 年度末であるため、そこから法改正のため
の具体的検討が始めるとすると、商標利用者に当分の間不便を強いることにならざるを得
ない。運用によることで、直ちに施行可能になるという現実的な判断を優先しつつ、別途、
コンセント制度の採用の周知を図り、その運用の統一性を確保するため商標審査基準等で
−85−
の明確化を通じて、透明性と同時に統一的なコンセント制度の運用を実現するよう求める
こととしたものである。
3.小売りサービス
小売りサービスの標識を役務に関する商標として商標登録を認める制度の検討において、
もっとも議論となったのは、
「役務」概念に対するこれまでの理解との整合性の問題と、小
売りサービスの範囲のとらえ方の問題であった。
商標法は、平成 3 年の一部改正により、役務に関する商標保護制度を設けている。ここ
でいう「役務」とは、
「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目的た
りうべきものをいう」と説明されている(特許庁「工業所有権法逐条解説[第 16 版]」1045
頁)。また、裁判例においても、「商品の譲渡に伴い、付随的に行われるサービスは、それ
が、それ自体にのみ着目すれば、他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場
において独立した取引の対象となっていると認められない限り、商標法にいう『役務』に
は該当しないものと解するのが相当である」と明確に判示されている(シャディ事件判決:
東京高判平成 12 年 8 月 29 日判時 1737 号 124 頁)。委員会における議論の経過においては、
独立性の要件を必須のものではない、とする意見もないではなかったが、これは到底採用
できるものではないところから、小売りサービスに役務性を認めて商標登録を認める場合、
役務の独立性の問題は所与の前提問題とする必要があるという認識に立って、本委員会の
議論を行った。また、同時に、この問題と密接に関係する問題として、更に検討の前提と
して明確にする必要があったのは、小売りサービスとはどのようなものをいうのか、特に
商品の販売を含む概念なのか否か、という問題であった。
小売りサービスを、商品の販売まで含むとする理解は、
「小売り」サービスという概念へ
の社会一般の理解には添いやすい。小売りサービスは、商品の品揃え、陳列等を通じての
需要者に対する商品購入の便宜の提供までをいい、その先の商品の販売は商品商標の保護
によるという理解が、商標法 2 条 1 項 1 号及び 2 号の規定内容には整合するにしても、不
使用取消審判制度を始め他の商標法諸規定とも一致するか否かは、なお検討することが必
要である。ただ、米国での取り扱いを見ると、
「retail store services」の中に、
「selling」
や「sales」の概念が含まれるものでないことが明記されており、こうした外国での切り分
け方は、わが国の商標実務が国際的なそれから乖離したものとなることを避けるためにも、
考慮されなければならない。
また、このような理解は、
「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の
目的たりうべき」サービスでなければならないという独立性の要件とも整合しよう。近時、
同じ商品ではあっても、特定の店舗における商品を購入しようとする消費者ニーズをみる
とき、百貨店やコンビニエンスストアにおける商品の品揃えや陳列に信頼をおき、それら
−86−
の店舗に使用されている標識がこのようなサービスの識別を行っている、という状況が伺
えるからである。このようなサービスは独立した役務として、独立した取引の対象となっ
ており、そこでの対価は商品販売価格に含まれているとみることはさほど困難ではない。
以上のような理由から、本委員会は、販売行為を含まない小売りサービスについて、役
務商標登録制度を拡大する方向で、所要の法改正を行いつつ、検討を進めるべきであると
の意見に達した。この場合において、あらゆる小売りサービスを対象として検討すること
も考えられたが、百貨店やコンビニエンスストアのような総合小売りにおける小売りサー
ビスを当面その対象とすることとした。これは、現実の主要なニーズはこのような総合小
売りサービスについてのものであることと、単品小売りサービスもその対象とした場合に
予想される商品商標とのクロスサーチに伴う運用上の影響の大きさなどを考慮した結果で
ある。家庭電化製品あるいは食料品といった分野の大規模小売りサービスから、単品小売
りサービスまで、幅があるものの、残された領域についての小売りサービスについては、
利用者のニーズを見つつ、今後、時期を得て検討されるべきであろう。
4.残された課題
本委員会は、コンセント制度の導入及び小売りサービスのサービスマークとしての登録
の可能性の問題について、集中的に議論を行った。しかし、足りないところも少なくない。
コンセント制度の導入を必要とする状況の一端を作り出している不使用商標問題について、
本委員会は商標法 3 条 1 項柱書きの運用の強化を求めているが、そこでの「全類指定」の
排除だけで、この問題が到底解消できるものではない。登録主義を採用する以上、避けが
たいともいえる不使用商標対策については、別に考えることが必要であろう。また、準完
全型のコンセント制度の前提ともいわれる「類似商品・役務基準」の見直しも、短い期間の
中で、コンピュータシステムを含む大変な作業とコストを伴う。このようなロードを特許
庁に求めることの意味も考えておく必要があったかもしれない。
小売りサービスの標識を役務商標と認める制度の検討においても、本委員会のそれは、
足りないところがあったことを認めざるを得ない。小売りサービスの標識に係る商標権の
効力範囲及びみなし侵害となる範囲、商標法 50 条の商標の使用の範囲といった制度の根幹
に係わる部分から指定役務としての表示例をどのようにするのか、あるいは経過措置の必
要性の有無についての運用上の問題まで、詰めた議論ができなかったからである。しかし、
これらは次のステージで議論されればよいものともいえる。本委員会においては、問題点
の所在を明らかにする、という点においてその責めの一端を果たし得たのではないか、と
今となっては考えたい。
最後になるが、この場を借りて、本委員会での議論に熱心に参加していただいた委員の
方々に感謝するとともに、特許庁審査業務部商標課商標制度企画室の協力に深い感謝の意
−87−
を表すものである。本委員会報告書が、今後の商標制度の検討に当たり、さまざまに活用
にされることを祈る次第である。
(土肥一史)
−88−
Ⅴ.資料編
資料編Ⅰ
Ⅰ章に関する資料
参考資料Ⅰ-1
産業財産権分野の制度(商標制度)改正に係る調査
研究報告書(抜粋)
参考資料Ⅰ-2
産業構造審議会知的財産政策部会第6回商標制度小
委員会の資料2(抜粋)
-89-
参考資料Ⅰ−1
されていない商標を根拠として登録異議申立てを認めるのは適切でないとの考え方がある。
平成 15 年度 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書
登録異議申立て等に際してその証拠となる商標の使用を要件とした場合には、登録異議申
産業財産権分野の制度(商標制度)改正に係る調査研究報告書(抜粋)
立人等はその使用についても立証しなければならない可能性もあり、その負担も増加する
とも考えられる。同時に、登録異議申立てが増加すれば、審理を行う特許庁の負担も増加
すると考えられる。
なお、欧州等においては、他人の商標の登録を監視する調査会社に依頼することによっ
て、監視負担の軽減が図られているとも考えられるが、費用的負担は生ずると考えられる。
(2)
コンセント制度との関係
ここで、コンセント制度についても検討を加えておきたい。まず、コンセント制度とは
どのようなものであるかは諸説115があるが、本報告書においては、先登録の商標権等が存
在しても、その商標権者等の同意があれば、同一又は類似する商品等について同一又は類
似する商標を他人に登録することを斟酌する制度とする。
コンセント制度を我が国の商標制度に導入すべきかどうかについての検討は、平成 8 年
商標法改正時に検討がされた。また、2001 年度116及び 2002 年度117に知的財産研究所で調
査研究して報告を行っている。
このような状況で、現行の制度においては先行商標等との関係では、コンセント制度は
認められていないが、導入を求める声も多い。2003 年 9 月に開催された産業構造審議会知
的財産政策部会商標制度小委員会においても、産業界及び日本弁理士会からコンセント制
度導入に賛成する意見が多く出された118。これに対して、出所混同が生じた場合に需要者
の利益がどのような形で保護されるのかを懸念する意見119も出されたが、導入反対を明言
する意見は出されていない。
(ⅰ)
平成 8 年商標法改正時の検討
平成 8 年商標法改正時の検討では、次の四つの理由から導入が見送られた120。
115
例えば、特許庁総務部総務課工業所有権制度改正審議室編『平成 8 年改正
年)90 頁。
116
117
工業所有権法の解説』(発明協会、1996
知財研平成 13 年度報告書・前掲注(8)77 頁。
知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)46 頁。
118
産業構造審議会知的財産政策部会第 3 回商標制度小委員会議事録
(http://www.jpo.go.jp/shiryou/toushin/shingikai/t_mark_gijiroku03.htm)。
119
髙部委員(東京地方裁判所判事)の発言は、次のような趣旨である。「コンセント制度に対して積極的な意見が多い
ようだが、同意が得られれば、同じ類の中で別々の人に権利が与えられることになる。その場合の需要者の利益はどの
ような形で保護をされるのか。つまり、出所混同が生じるのではないかと思うが、そのあたりの担保は何かあるのか。」
120
知財研平成 13 年度報告書・前掲注(8)90 頁。なお、この記載は「工業所有権審議会商標問題検討小委員会報告書」
−91−
① コンセントの提出された際に一般的出所の混同に関する審査(第 4 条第 1 項第 11 号)
を行わないこととすると、公衆の利益を保護するためには、具体的な出所混同の審査(第
4 条第 1 項第 15 号)が重要とならざるをえないところ、具体的出所混同の有無については
特許庁が判断資料を入手するのは容易ではなく、厳密に審査すれば処理の大幅な遅延を招
き、他方、簡便な審査にとどめれば具体的混同のおそれの生ずる商標の登録を認めること
になりかねない。
② コンセント制度を導入した場合、拒絶理由通知を受けた時点でその引用商標の権利者
と交渉を始めることになるが、コンセントの交渉の時間がかかると審査処理が遅延しかね
ない。例えば、第一回目の拒絶理由通知に対する通常の応答期間内までにコンセントが提
出される可能性は低いと考えられ、仮に応答期間内にコンセントが提出されない場合に拒
絶査定を打つと、審判の段階で拒絶査定が覆ることとなる。そうなると交渉がまとまるま
で審査がストップし審査処理が遅延しかねない。
③ 我が国の類似の範囲は諸外国に比べて狭く、コンセント制度が機能する余地は少ない。
④ 類似商標を先行登録商標権者の下でいったん登録し、それを譲り受ければ、権利の取得
は可能であり、また、時代の要請に合わせて商標を変更することにより発展させていくこ
とが、けり合いにより妨げられるとすれば、そもそも類似商標の移転は行われないはずで
あり、そのようなリスクの救済を考える必要はない。
(ⅱ)
2001 年度の知的財産研究所における検討
前述の 2001 年度知財研調査研究ではアンケート調査も行っており、コンセント制度の必
要性については、必要が 39%、不要が 25%、どちらともいえないが 33%そして無回答が 3%
という結果になっているが、海外においてコンセント制度を利用したことがある回答者に
ついては、そのうちの 71%が必要と回答している。
この 2001 年度知財研調査研究121では、以下のようにコンセント制度をその対象によって
三つに分け、さらに①についてはさらに細かく分けている。
① 先願又は先登録商標との抵触に係るコンセント
(a)コンセントを全く認めない法域122
(b)相対的拒絶理由の審査を行い、コンセントによる拒絶理由の克服を認める法域
(b-1)
「留保型コンセント制度」
コンセントがあっても混同のおそれがない場合に限っ
(工業所有権審議会商標問題検討小委員会、1995 年 5 月)68 頁の記載をまとめたものである。
121
知財研平成 13 年度報告書・前掲注(8)77 頁。
122
報告書では「海外調査対象の 37 法域のうち、我が国と同様、コンセントを一切認めないのは、アルゼンチン、中国、
インドネシア、タイのわずか 4 か国にとどまり、先進欧米諸国にはみいだされない」としている。
−92−
て登録を認めるとする法域123
(b-2)
「完全型コンセント制度」
コンセントさえあれば相対的拒絶理由の克服を認める
法域124
(c)絶対的拒絶理由の審査しか行わないため、いわば「隠れた」コンセント制度が採用さ
れていると評価できる法域125
② 未登録周知商標との抵触に係るコンセント
③ 他人の氏名との抵触に係るコンセント
これらのうち、③についてのコンセントは既に我が国でも認められている126。①及び②
のコンセントについては認められていない。
(ⅲ)
2002 年度の知的財産研究所における検討
2002 年度知財研調査研究127の際には、コンセント制度の導入には賛成の意見が多かった
が、審査遅延を生ずる懸念や需要者の混同防止対策については十分な検討が必要であると
いうことが全体としての意見であり、個々の意見としては次のものが出された。
① コンセント制度導入の是非に関して
(a)商品・役務が類似するとされ登録が認められない商標でも、取引の実情から見ると混同
しないような商標も多く存在すると考えられ、このような商標の登録を助ける制度として
コンセント制度は有効ではないか。
(b)また、商標の使用者は、商品・役務の重要度によって使用する商標の類似範囲は異なる
とみなしている(重要な商品・役務の商標の類似範囲は広い、重要でないものは狭いとみ
なしている。
)。コンセント制度は、このように使用者側からすると異なる商標の類似の範
囲を当事者間で調整するのに有効な制度ではないか。
(c)コンセントと同様に分離移転で権利取得が可能である為、コンセント制度は必要ないと
いう意見があるが、拒絶理由で権利者の異なる複数の先行商標が引用された時には、全て
123
報告書では、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、オーストリア、スペイン、スウェーデン、
(ノ
ルウェー)といった欧米先進国を始め、メキシコ、香港、インド、マレーシア、シンガポールも数えることができると
している。
124
125
イギリスである(第 5 条(5))。
報告書では、欧州共同体のほか、ドイツ、フランス、スイス、ベネルクス、デンマークが挙げられるとしている。
126
第 4 条第 1 項第 8 号で、他人の氏名等につき、「その他人の承諾を得ているものを除く」と規定されており、他人の
承諾を得ていれば商標登録が可能であることを規定している。
127
知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)56 頁。
−93−
の商標権を共有にしてから分離移転するなど非常に煩雑な手続が必要になるが、コンセン
ト制度の導入により、このような場合でも権利化の手続が容易になる。
② コンセント制度導入に対する懸念に関して
商標権者自身の不利益になるようなコンセントを認めることは考えられず、コンセント
を行った結果、商品の出所について誤認混同が生じてしまうような場合はほとんど発生し
ないと考えられるが、ブローカーのような権利を悪用するような存在も考慮しておく必要
があるのではないかという意見があった。
③ コンセント制度の制度自体に関して
(a) 審査遅延につながらないように、コンセントの提出時期(拒絶理由通知時、審判請求
時等)、期間を適切に定める必要がある。
(b) 現在、
「要旨変更」が非常に厳格で、商標の補正はほとんど認められていないが、コン
セント制度を導入した際に、コンセントの中で補正を認めるようにすれば、よりコンセン
ト制度の運用が上手くいくのではないか。
(c) コンセント制度は、制度化せず運用で行っている国も多く存在し、我が国でも、コン
セントの結果、混同のおそれがないと判断できるものであれば非類似とするという運用(留
保型)が可能ではないか。
(ⅳ)
コンセント制度の検討について
コンセント制度については、このように過去において検討されており、導入を求める声
が多い。ところが、仮に相対的拒絶理由を異議待ち審査とした場合には、その制度設計に
よっては、コンセント制度を導入した場合と同様の効果を有することとなる。すなわち、
前述の「『隠れた』コンセント制度」となり、コンセントが明示的に与えられなくても、先
の権利者にコンセントの意思があれば、登録異議申立てや無効審判請求を行わないという
形で、結果的にコンセントを与えたことと同じ効果を有することになる。
したがって、異議待ち審査制度についての検討を行う際には、コンセント制度の導入も
視野に入れた検討を行うことが望ましいと考えられる。
(3)
今後の検討について
前述のような問題点について、検討を行う必要があると考えられるが、仮に異議待ち審
−94−
査制度を採用する場合には、様々な選択肢が考えられるため、下記のような点についても
具体的に検討することが必要ではないかと考えられる。
すなわち、前述したように我が国商標法における第 4 条第 1 項第 8 号、第 10 号から第
15 号、第 17 号及び第 19 号を相対的拒絶理由と考えた場合に、そのすべてを異議待ち審査
にするという考え方もあり得ると思われるが、その中の特定の場合には職権による審査を
行うことも考えられる。したがって、異議待ち審査とした場合に予測される影響を踏まえ
て、個々の条文の内容を検討することが必要であると考えられる。
(ⅰ)
先行する商標と同一の商標が、同一の商品等について出願された場合の取り扱い
先行する商標と同一の商標が同一の商品等について登録された場合には、混同を生ずる
おそれが高いと考えられる。同一性だけの判断であれば、審査の範囲も限定的であり判断
の負担もそれほど大きくないという考え方もあり得ると思われる。したがって、先行する
商標と同一の商標が同一の商品等について出願されたものであるかについては職権審査を
行い、その出願を拒絶し得るという考え方も選択肢の一つであると思われる。
(ⅱ)
周知商標と同一又は類似の商標が同一又は類似の商品等について出願された場合
の取り扱い
周知商標についても、それと同一又は類似の商標が同一又は類似の商品等について登録
された場合には、混同を生ずるおそれが高いと考えられる。したがって、周知商標と同一
又は類似の商標が同一又は類似の商品等について出願されたものであるかについては職権
審査を行い、その出願を拒絶し得るとすることも考えられる。
周知性を獲得した商標については強い保護が与えられるべきとの考え方によれば、その
ような制度を採用することも考えられるが、どのような場合に「周知」と認めるかという、
周知性の認定が難しいという問題がある。
(ⅲ)
登録異議申立制度の取り扱い
2002 年度の知的財産研究所における検討128では、商標権の付与前の異議申立制度の検討
を求める声129もあり、異議待ち審査制度を採用する場合には、商標権付与前の異議申立制
度とすることについても、議論の余地があるものと考えられる。
128
129
知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)259 頁。
この際の意見としては「不完全な権利の設定には問題があると思われる」というものである。
−95−
(ⅳ)
登録異議申立て又は無効審判における審理範囲の取り扱い
登録異議申立て又は無効審判において、どのような範囲を審理するかについて、検討す
る必要があると思われる。なお、現在の登録異議申立制度や無効審判においては、職権に
よって、申立て以外の理由について審理することや判断のための証拠を補充することが認
められている。
この点、欧州共同体においては、異議申立て及び無効の申請においても、相対的拒絶理
由についての手続きに関しては、当事者によって準備された事実、証拠及び主張並びに求
められた救済についての審査に制限されることが規定されており(第 74 条(1)
)、当事者
間での主張等についてのみを判断する手法を採っている。次に述べるような需要者の利益
保護等の公益的な観点をどこまで考慮すべきかいう問題と併せて検討するべきであると考
えられる。
(ⅴ)
混同が生じる場合の担保措置
相対的拒絶理由を有していても登録が認められるため、その登録商標の使用により混同
を生ずることも考えられる。したがって、需要者の利益保護等の観点からそのような事態
が生じる場合の担保措置について検討すべきであると考えられる。
現行制度においては、類似関係にある商品等に係る商標権であっても、分割移転は認め
られており(第 24 条の 2 第 1 項)、公益的な観点からの事後的な誤認混同防止のための担
保措置として、混同防止表示請求(第 24 条の 4)、商標取消審判(第 52 条の 2)が規定さ
れている。
相対的拒絶理由を有しながら、登録異議申立て等がされずに商標権が存続している場合
でも、公益的な観点から混同防止表示請求や商標取消審判等の措置を可能とすることは望
ましいと考えられる。現在規定されている商標権者及び使用権者の誤認・混同に基づく取
消審判(第 51 条、第 53 条)でも一定の対応は可能と考えられるが、同一商標が同一商品
等に使用された場合にも取消を認めるように規定することが必要となる場合も考えられる。
(ⅵ)
コンセント制度との関係
前述のように相対的拒絶理由の異議待ち審査制度とコンセント制度とは深く関係するた
め、その関係を検討した上で、規定を検討する必要があると思われる。
また、相対的拒絶理由の異議待ち審査制度を導入せずに、コンセント制度だけを導入す
る場合も、コンセントの結果で商標登録を受けた場合は、公益的な観点からの事後的な誤
−96−
認混同防止のための担保措置について、現状の制度に加えて新たに規定を設ける必要性が
あるかという点について検討すべきであると考えられる。
−97−
Ⅶ.
その他の調査項目
その他に、商標法改正に当たっての検討項目として挙げられているものがあるが、以下
の問題については過去に議論や報告が行われてものもあり、本調査研究においては補足的
に調査を行ったものである。
1.
(1)
小売業のサービスマーク
小売業の商標の役務商標としての登録
「小売サービス」を指定役務として商標登録を受けることを認めるべきかという問題が
ある。この問題についての過去の議論及び報告について以下に示すとともに、本調査研究
においては、それらを補足するために、米国における状況について調査を行った。
(2)
我が国商標法における小売業の商標の取り扱い
我が国では、
「小売サービス」を指定役務として、商標登録を受けることはできないとさ
れている。理由は「小売サービス」は商標法にいう「役務」には該当しないとされている
ためである。
商標法上、
「役務」とは「他人のために行う労務又は便益であって、独立して商取引の目
的たりうべきものをいう305。」とされている。
「商品の譲渡に伴い、付随的に行われるサービスは、それが、
シャディ事件判決306では、
それ自体のみに着目すれば、他人のためにする労務又は便益に当たるとしても、市場にお
いて独立した取引の対象となっていると認められない限り、商標法にいう「役務」には該
当しないものと解するのが相当である。」と判示されている。
また、エスプリ事件判決307では、シャディ事件判決と同様の判断をして、さらに「小売
はあくまでも商品の販売を目的とするものであって、原告の主張する付随サービスは、商
品の販売を促進するための手段の一つにすぎないというべきであり、現に、商品の小売に
おいて、商品本体の価格とは別にサービスの対価が明示され、独立した取引としての対価
の支払が行われているものではない。この点につき、原告は、これらのサービス活動は商
品価格に上乗せされている旨主張するが、仮に、そのような上乗せが事実上されていると
305
306
307
特許庁逐条解説・前掲注(28)1045 頁。
東京高判平成 12・8・29、判時 1737 号 124 頁、平成 11 年(行ケ)390 号。
東京高判平成 13・1・31、判時 1744 号 120 頁、平成 12 年(行ケ)105 号。
−98−
しても、商品本体の価格とは別に対価が支払われることのないものである以上、サービス
自体が独立して取引の対象となっているものとはいえない。」と判示している。
したがって、小売業者が、商品の譲渡の際や広告を行う際に使用する商標について、商
標登録を受けるためには、取り扱う商品の全てを指定商品として商標登録を受ける必要が
ある。
(3)
今までに行われた議論及び報告
「小売サービス」を指定役務として商標登録を受けることを認めるべきかという問題に
ついては、従来から議論がされている。平成 3 年商標法改正308によって、サービスマーク
登録制度が採用されたが、その以前から要望がある。1977 年(昭和 52 年)4 月の社団法人
日本フランチャイズチェーン協会他から特許庁長官宛に提出された要望書309には、サービ
スマークの登録制度確立についての要望であるが、その中には「サービス・マークの保護
は、サービスを受ける一般消費者、特に連鎖化事業やチェーンストア・システムの恩恵を
うける一般消費者の利益を増進することにもなります。」と記載されており、これは小売業
についての保護も意識したものと考えられる。
この問題についての具体的な議論として下記のものがある。
①2001 年 12 月に報告310がなされた産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会におい
て「国際的には、デパート、コンビニエンスストア等の小売業についてサービスマークを
認める方向にあるので、我が国でもこれを認める方向で検討すべきとの意見があった。
」と
いう議論がされている。
②知的財産研究所においては、1989 年度311、2000 年度312及び 2002 年度313に諸外国の動向
も含めた調査研究が行われている。
③2000 年度に日本弁理士会商標委員会は、小売業を独立した役務と認めるべきかについて
検討を行っている314。ここでは、「国際的状況、及び、小売業者の商標の本質からすれば、
308
平成 3 年法律第 65 号。改正法のうち、役務を指定した商標登録を認めることに係る改正規定の施行日は 1992 年 4
月 1 日である。
309
石川義雄監修『サービスマークの話−サービスマークの紹介と制度化への展望−』(東洋法規、1985 年)354 頁。こ
の書はサービスマーク登録制度導入以前のものであるが、昭和 20 年代以降のサービスマークの保護制度についての検討
経緯がまとめられている。
310
「産業構造審議会知的財産政策部会法制小委員会報告書」(2001 年 12 月)41 頁。
311
「サービスマーク登録制度により保護されるサービスに関する基礎研究報告書」(平成元年度特許庁工業所有権法制
度問題研究報告書)((財)知的財産研究所、1990 年 3 月)92 頁。
312
313
知財研平成 12 年度報告書・前掲注(7)55 頁及び 140 頁。
知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)33 頁。
314
日本弁理士会平成 12 年度商標委員会「小売業を独立した役務と認めるべきか」パテント Vol.54 No.12(日本弁理士
会、2001 年)37 頁。
−99−
小売業者がその業種を識別する商標は役務商標であって、これを役務商標として登録し保
護を図ることが最も望ましい方策である。」としている。
④2003 年 2 月に結果が公表された日本商標協会による調査315は、小売サービスについての
商標保護について、諸外国の弁護士・弁理士等に質問状を送り、29 か国とベネルクス及び
OHIM から受領した回答を整理したものである。
(4)
米国における状況
OHIM 及びイギリスにおける取り扱いについては、前述の報告316によって明らかにされて
いるため、本調査研究では、米国において小売業のサービスマークの登録が認められるよ
うになった時期と具体的な登録例について調査を行った。
まず、米国において、サービスマークの保護がされるようになったのは、ランハム法の
施行以降のことである317。
そして、「商品の小売商人(retailers of merchandise)」にサービスマークの登録が始
められたのは、1958 年 2 月頃からであるとされている318。
米国において、小売サービスに係る標章の登録例として下記がある。
①標章「FOODLINER」が「RETAIL GROCERY SERVICES」について 1958 年 2 月 4 日に登録され
た(出願日は 1956 年 11 月 1 日、登録番号は 0658159)。
②標章「EAGLE」が「RETAIL GROCERY STORE SERVICES」について 1958 年 6 月 24 日に登録
された(出願日は 1956 年 9 月 20 日、登録番号は 0663589)。
③標章「PEOPLES」が「RETAIL DRUG STORE SERVICES」について 1960 年 5 月 17 日に登録さ
れた(出願日は 1959 年 7 月 10 日、登録番号は 0697908)。
④標章「U.S. MERCHANDISE MART」が「RETAIL DEPARTMENT STORE SERVICES」について 1960
年 5 月 17 日に登録された(出願日は 1959 年 8 月 17 日、登録番号は 0697909)。
⑤標章「BEN FRANKLIN」が「RETAIL VARIETY STORE SERVICES」について 1961 年 5 月 9 日
に登録された(出願日は 1960 年 1 月 18 日、登録番号は 0715184)。
⑥標章「WESTORE」が「HOME FURNISHING STORE SERVICES」について 1961 年 11 月 21 日に
登録された(出願日は 1958 年 6 月 4 日、登録番号は 0724332)。
⑦標章「STYLE CREST」が「RETAIL FURNITURE STORE SERVICES」について 1963 年 6 月 18
日に登録された(出願日は 1959 年 12 月 23 日、登録番号は 0751430)
。
⑧標章「THE HATCHET SHOPPE FREDERICKSBURG VIRGINIA」が「GIFT SHOP SERVICES」につ
315
316
317
318
「日本商標協会誌
第 47 号別冊資料」(日本商標協会、2003 年)1 頁。
平成 12 年知財研報告書・前掲注(7)61 頁。
In re Radio Corp. of America, 98U.S.P.Q.157(C.C.P.A. 1953).
In re John Breuner company, 136U.S.P.Q.94(T.T.A.B. 1963).
−100−
いて 1964 年 1 月 21 日に登録された(出願日は 1962 年 6 月 14 日、登録番号は 0763673)。
⑨標章「SUNSET HOUSE」が「RETAIL MAIL ORDER DEPARTMENT STORE SERVICES」について
1964 年 5 月 26 日に登録された(出願日は 1963 年 4 月 26 日、登録番号は 0770530)。
(5)
まとめ
前述した米国に代表されるように、小売サービスに係る商標登録は諸外国においてもこ
れを認める国が多く319、また、我が国制度においては、小売業者からも登録を認める制度
を導入することを歓迎する声があり320、反対する声も特に見当たらない。
そのため、小売サービスに係る商標登録は認める方向で検討すべきと考えられるが、以
下の課題が考えられるため、弊害が生じないように制度設計を行う必要があると考えられ
る321。
①「小売サービス」というような広い指定役務を認めると、広すぎる権利範囲の商標権や
権利範囲が明確でない商標権が生まれるおそれがある。したがって、指定役務の範囲を他
の現状認められている商品・役務表示とのバランスを考慮して設定する必要がある。
②商品商標との間で混同が生ずる場合があると考えられる。審査段階でクロスサーチを行
う必要があるのかどうか、行う場合は多くの分類とのクロスサーチが必要となり、審査負
担が大きくなる。行わない場合には、混同が生じた場合の担保措置を検討する必要がある。
2.
(1)
団体商標制度
団体商標制度について
我が国では団体商標制度は、平成 8 年商標法改正322によって導入がされた(第 7 条)
。団
体商標とは、
「事業者を構成員に有する団体がその構成員に使用させる商標であり、商品又
は役務の出所が当該団体の構成員であることを明らかにするものである」と定義されてい
る323。
団体商標の保護については、パリ条約324において義務付けられているが、平成 8 年改正
以前は、使用許諾制度によって実質的な保護が図られていた。
319
320
321
322
323
324
日本商標協会誌第 47 号別冊資料・前掲注(315)。
知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)204 頁。
例えば、知財研平成 14 年度報告書・前掲注(9)144 頁には、この問題への具体的対応案が示されている。
平成 8 年法律第 68 号。
特許庁平成 8 年改正解説・前掲注(115)175 頁。
パリ条約 7 条の 2 で団体商標の保護が規定されている。
−101−
参考資料Ⅰ-2
産業構造審議会知的財産政策部会第6回商標制度小委員会の資料2(抜粋)
第1
総則関係
3.小売業・卸売業の商標のサービスマークとしての保護(第4回小委員会)
【背景】
流通産業の発達により、小売業や卸売業のように複数の商品を取り扱うこと自体にブラ
ンドとしての魅力を有する場合が一般的になっていることから、小売業や卸売業の商標を
サービスマークとして保護すべきではないかとの指摘がある。
【論点】
(1)小売業や卸売業の商標をサービスマークとして認めることについてどう考えるか。
(2)仮に小売業・卸売業の商標をサービスマークとして登録する場合、小売業・卸売業
のサービスの具体的内容はどのようなものとして特定するのか、また、商品商標とサ
ービスマークとの「類似」、「混同を生ずるおそれ」については、審査・審判において
審理の対象とする必要はないか、全て調査の対象とすべきか、あるいは、個別事例に
おいて判断すべきか。
【小委員会における意見】
(1)小売業商標のサービスマークとしての取扱いについては、小売業商標をサービスマ
ークとして登録するという基本的な方向性については異論がなかった。
(2)ただし、具体的な実施に当たっては、どの範囲までの小売業商標をサービスマーク
として認めるか、小売業商標と他の商品商標又は役務商標との類似や混同のおそれを
どのように審査するのか、小売業商標をサービスマークとして導入するためには法改
正することも必要ではないか、等の点についてはさらに検討が必要であることが確認
された。
第2
商標権の効力範囲
2.商標の「類似」と「混同を生ずるおそれ」の関係の整理(第3回小委員会)
【背景】
商標が商品・役務の出所表示機能を有するものであること及び商標の動態的な変化の特
徴に鑑み、商標法の重要な目的が商品・役務の出所の混同の防止であることを踏まえると、
商標法で保護する商標権の効力範囲を画する概念としては、従来の「類似」という形式的・
技術的な概念よりも、「混同を生ずるおそれ」の概念を中心に規定する方が適切ではないか
との指摘がある。
【論点】
(1)商標登録の拒絶理由(第4条第1項第10号~第15号)の規定は以下のいずれに
-102-
よることが適当か。あるいは他の整理があるか。
①商標登録の拒絶理由を「類似」ではなく「混同を生ずるおそれ」を中心に整理して
規定する。
②審査における拒絶理由においては、現行制度と同様、商標が使用されない段階にお
いても客観的な判断が容易である「類似」を中心に規定を整理する。
(2)権利侵害行為の規定においては、「類似」ではなく「混同を生ずるおそれ」を中心に
規定を整理することについてどう考えるか。
【小委員会における意見】
(1)商標法第4条第1項の規定振りから見れば、「類似」は「混同を生ずるおそれ」があ
ることが前提ではないかとの意見や、特に侵害の場面では、「混同」又は「混同を生ず
るおそれ」があるかどうかで判断すべきではないかとの意見があった。
(2)また、類似の概念は登録主義の観点から必要であり、審査においては、一般的・抽
象的観念で形式的に判断すべきという意見や、商標権の効力範囲をどのように考える
か等の観点から、「同一」、「類似」、
「混同を生ずるおそれ」を議論すべきではないかと
の意見もあった。
第3
商標制度の枠組みの在り方
2.審査の在り方(第3回及び第5回小委員会)
【背景】
商標の識別力は登録後の使用の状況により変化しうるものであり、使用されない段階に
おいて商標間に存在する混同のおそれの有無を全て判断することは困難であることを踏ま
え、審査において何を判断するか、その後の審判・訴訟において何を判断するか、制度の
目的である「商標の使用をする者の業務上の信用の維持」に照らして最も適した枠組みを
改めて考える必要があるとの指摘がある。
【論点】
(1)「絶対的拒絶理由」について現行制度と同様、全ての出願について職権審査をする一
方、「相対的拒絶理由」については、出願人以外の他の権利者から異議申立てがあった
場合に行政庁が判断する、いわゆる異議待ち審査を導入することについてどう考える
か。
(2)現行制度と同様、
「相対的拒絶理由」についても全ての出願について職権審査する場
合であっても、運用等において改善すべき点があるか。
【小委員会における意見】
(1)「相対的拒絶理由」に関する異議待ち審査制度については、以下のような理由から、
現行の職権審査制度のメリットの方が異議待ち審査制度のメリットよりも大きいとの
意見が多かった。
①現行の職権審査の抽象的な判断手法は特に問題はなく、職権審査は残すべきであ
-103-
る。
②企業規模とは無関係に審査主義による安定した権利付与と安心した権利行使がで
きることを希望する。
③ユーザーは異議待ち審査となれば監視費用や異議・審判等の事後的負担も増加す
る。
④「商標選択の自由」を増やすのであれば無駄な出願を減らし登録時に不要な商品・
役務を減縮補正するよう促すべきであり、異議待ち審査では不使用対策に繋がら
ない。
(2)一方、相対的拒絶理由の審査は、本来、出所の混同を生じるものの登録を許さない
ために行われるべきであるが、現行制度では出願件数が多い等の事情により形式的な
審査となっていることを踏まえると、取引の実情を一番良く知っている当事者同士の
主導に委ねる異議待ち審査制度にするのも一つの選択肢であるとの意見があった。
(3)また、相対的拒絶理由について異議待ち審査制度を導入する場合であっても、登録
が拒絶されるべきことが明確である同一商標や周知・著名商標については職権審査と
してはどうかという意見もあった。
(4)なお、出願人による「商標選択の自由」が商標法の目的から直ちに導き出せるかに
ついては疑問を呈する意見もあった。
3.コンセント制度の導入(第3回小委員会)
【背景】
(1)商標は使用により識別性の程度が変わるものであり、混同を生ずるおそれを職権審
査で一律に判断することは困難である。商標が互いに混同を生ずるおそれがあるかど
うかは当事者である商標権者の方が熟知しており、敏感である。また、商標登録出願
を一旦引用商標権者に譲渡し、権利化後に譲り受ける迂遠な手続が行われている実態
がある。
(2)このため、先の商標権者が同意をした場合は、その商標の存在を理由として登録を
拒絶しない制度(コンセント制度)を導入すべきとの指摘がある。
【論点】
以下のいずれかの制度の導入についてどう考えるか。
①先の商標権者が同意をした旨の証明があれば、当該商標の存在を理由とする登録拒絶
理由の審査は行政庁の側で一切行わない制度
②全てを当事者の同意に委ねると、消費者一般の利益を害するおそれがあることから、
先の商標権者の同意がある場合であっても、行政庁が審査を全く行わないのではなく、
同意があることを参酌しつつ「類似」や「混同を生ずるおそれ」の存在の有無につい
て審査を行うこととする制度
【小委員会における意見】
-104-
(1)混同を生ずるおそれを職権審査で一律に判断することは困難であるため、これを補
完するものとして、また、審査主義を前提としつつ迂遠な手続を回避する方法として、
コンセント制度が導入されるべきであるとの意見が複数の委員からあった。
(2)また、コンセントを導入する場合、先の商標権者が同意をした旨の証明があれば、
当該商標の存在を理由とする登録拒絶理由の審査を一切行わないことを要望するとの
意見が出された。
(3)一方、上記の審査を一切行わないと、当事者が合意をしても需要者が商品・役務に
ついて混同を起こす場合を排除できない可能性があり、慎重に対応する必要があると
の意見もあった。
-105-
資料編Ⅱ
Ⅱ章に関する資料
参考資料Ⅱ-1
コンセント制度導入の具体案の提示
参考資料Ⅱ-2
コンセント制度導入における検討課題に対する意見
(一覧表)
参考資料Ⅱ-3
世界各国のコンセント制度の実施状況一覧
参考資料Ⅱ-4
世界各国のコンセント制度の実施状況
参考資料Ⅱ-5
世界各国のコンセント制度
参考資料Ⅱ-6
コンセントに関する世界各国の商標法条文等
参考資料Ⅱ-7
Letter of consent の 例
-107-
参考資料Ⅱ-1
●コンセント制度導入の具体案の提示(検討事項-3関係)
1.審査運用の一環としてコンセント制度を導入する考え方
(1)現行審査主義を維持して的確な審査を行っていく上で、画一的と言われる審査
運用の一定の補完のためにコンセント制度を導入する必要であるのではないか。
(2)登録主義の下、一般的・抽象的な概念を持って審査することは仕方がないもの
であると共に妥当なものである。しかしながら、使用のされ方などにより相対的な
商標の認知度は変化するものであるところ、利害がもっとも存在する引用商標に係
る者の同意書は長期的な登録関係についても考慮されたものと見ることができ、登
録を行う判断に十分利用するに値するものであるとの考え方を明確化する。
(3)現行の登録主義、審査主義を基本とする商標制度の存在理由は、特許庁(審査
官)が混同の生じるおそれがある商標を排除した上で、全国的な排他権をあらかじ
め付与することにより、事業の拡大や使用の促進を保証するとともに、簡易・迅速
な救済を図ることを目的とするところにある(商標の占有領域の確保を主要な目的
とする商標法)ともいわれている。その考え方の下、コンセント制度を我が国に導
入する考え方として、「審査主義・登録主義の制度のもと、審査官では把握しきれ
ない、又は、査定時点では把握できない実際の出所の混同を生ずるおそれの可能性
について、当事者(先願登録商標の権利者など)の判断・意見を参酌することで、
そのおそれがないと認められる商標について登録への道を開く。」というものを明
確化する。
2.コンセント制度導入イメージ案
(1)現行における商標法第4条第1項第10号ないし同第15号の概念
現行商標法第4条第1項第10号ないし同項第15号の関係については、「1
5号は、・・・10号から14号までの規定に関する総括条項である。」(逐条解
説)とあるように明確な条文構成として規定されている。
<商標法第4条第1項第10号ないし同第15号の概念図>
4条1項15号
10号
12
号
11号
-109-
13
号
14
号
(2)コンセント制度の導入イメージについて
上記(1)の商標法第4条第1項第10号ないし同第15号の概念を踏まえ、
コンセント制度を審査運用として導入するイメージとして、同法第4条第1項中、
「類似」「混同を生ずるおそれ」の存在する号のうち「10号、11号及び13
号ないし15号」を対象としたものについて、引用商標をもつ者の意見(同意)
を当該出願の査定に利用する場合を考える。
4条1項15号
10号
12
号
11号
13
号
14
号
A
B
同意有り
←同意有り
同意有り
上図の点線は、「類似」「混同を生ずるおそれ」の判断に客観的な絶対性がない
というイメージを表現したものである。
Bラインは、上記(1)の概念図(理論上)の実線部分に当たり、Aラインは
それより内側に存在することを想定する。
実際に、同意書が提出された場合、図の「同意有り」部分について、Aライン・
Bラインの認定を行わず、当該出願の「類似」又は「混同を生ずるおそれ」に該当
する範囲は、引用商標のその範囲から見てBラインの外側であるとして登録査定を
行う。
3.コンセント制度導入における実務運用の具体案
(1)拒絶理由通知を行い、意見書(同意書を添付)の提出があった場合、同意書が
適正であれば、次の場合を除いてすべて登録査定をする。
<同意書の提出があっても登録できない場合>
●商標が同一であって、商品・役務が同一である関係にあるもの(「同一」の運用基準は別
に定める。「商標の同一」については、商標法第50条に規定の「社会通念上同一と認め
られる商標」とすることが適当と考える。)
(説明)使用すれば明らかに混同を生ずるようなものまで本制度により登録できるわけで
はないことは法目的からして明らかである。
(2)「コンセント交渉中につき待ってほしい。」旨の上申書などへの対応について
は、現行の「譲渡交渉中につき待ってほしい。」旨の上申書などと同様に行う。
(3)「コンセントにより登録」の場合であっても、審査の判断資料になっただけと
いう考え方であるので、法的には、公報、登録簿などに記載するような手当は何ら
必要がない。
(4)コンセントにより登録になった商標権の効力は、通常に登録となったものと同
等である。
-110-
(b)類似であるとし
て拒絶理由を通知した
場合において、コンセ
ントがあれば、「類似
であるが登録をする」
(非類似として登録す
るわけではない)とい
(a)4条1項8号の
括弧書きには「承諾」
が使用されているが、
「コンセント(同意)」
は、どのような権利に
基づく「同意(承諾)」
となるのか(例えば、
4条1項8号の「承諾」
は、「人格権」に基づ
くものである。)。
≪個別意見≫
・先願商標権。同意書=両当事者間での商標権
者が持つ禁止権の不行使を約するものと理解
している。よって「商標権」に基づくと考える。
・商標法に照らした場合に、先願商標権者にこ
れに類似する他人の商標出願の登録に同意す
る権原があるか否かについては、確かに疑問が
ある。
・(そもそも「同意」が何の権利に基づくのかを
明確にする必要があるのか不明だが)「同意」
は「利害関係を有する者」としての立場に基づ
くものと考える。それがどのような権利に基づ
くのかは不明。もっとも「利害関係」は、審査
官が類似と考える「先行商標権」を所有するこ
とにより発生するので間接的には「商標権」に
基づくと思える。
・一般的・抽象的類似にはあたるが個別具体的
ではないものと判断するという情報提供的な
性格のものであると考えるので、特に権利に基
づく手続と思わない。
・考える必要なし。
≪まとめ≫諸意見がありました。
(a)類似であるが登録する。
(b)
(審査基準上、一般的・抽象的には)類似
であるが、(具体的・実質的考慮において)類
似でない(=誤認混同が生じない)ので登録
(c)類似でないので登録する。
(d)条文の規定振りにもよるが、例えば 4-1-8
≪まとめ≫諸意見がありました。
(a)先願商標権
(b)先願商標権利者に同意権があるか疑問
(c)利害関係を有するものとしての立場
(d)考える必要なし
別紙3
検討事項-2
1.制度を法制化により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置づけ及び導入の範囲)
日本知的財産協会商標委員会の意見
現在の『類似』に関する審査の在り方(「商
標審査基準」「類似商品・役務審査基準」をガ
イドラインとする審査)、コンセントの性格(当
事者間で混同が生じないと判断したからコンセ
ントがだされる)等を考慮すると、11号とコ
ンセントの関係は「類似であっても混同を生ず
るおそれがない」という建前になると考えられ
コンセント(同意)は、先行権利者の商標排
他権に基づいてなされるものと考える。
日本弁理士会商標委員会の意見
コンセント制度導入における検討課題に対する意見(一覧表)
①類似するが「混同のおそれがないから登録す
る」
・現行法で類似するけれども混同しないという
解釈は成り立たない。法改正せざるを得ない。
4 条の改正が必要。
・客観的に「類似はするが混同はしない」とい
う場合にコンセントを出す。これは、私人が決
本委員会の意見
参考資料Ⅱ-2
-111-
-112-
う建前になるのか。そ
れともコンセントがあ
ったということは、当
事者が混同を生ずるお
それがないと判断した
結果なのであろうか
ら、類似ではないとし
て登録する建前になる
のか。仮に、「類似で
はあるが登録をする」
とする建前をとる場
合、「類似ではあるが
登録を併存させてもよ
い。」という理屈はど
のように整理するの
か。「類似ではあるが、
混同を生ずるおそれが
ない」という考え方な
のか。(「類似」と「混
同の生ずるおそれ」の
関係についての考え方
の整理は、「検討事項
-1」で行う。)
号の例に習うとすれば、「類似であるが登録す る。したがって、コンセント制度を導入するに
当たっては、立法化(法改正)が必要というこ
る」との意味合いになる。
とになる。
≪個別意見≫
・当事者が混同を生ずるおそれがないと判断し
た結果なのであろうから、類似ではないとして
登録する建前。この考えが採れるか不明だが、
ここで「類似」は審査基準上の類似(とされる)
と考え、(審査基準上、一般的・抽象的には)
類似であるが、(具体的・実質的考慮において
類似でないので)登録を並存させる。
・法制化により例えば 11 号にコンセントを導入
(4 条 1 項 8 号の例に倣って)した場合は、
「類
似であるが登録をする」の意になる。8 号の場
合、他人の承諾があったとしても「他人の肖像」
であることに違いはない。よって、11 号の場
合も類似であることに変わりはないのではな
いか
・出所の混同を生じないので、個別具体的には
類似にあたらないとするから、11 号の拒絶理
由を回避できるとの考えでよいのではないか。
・現行の類似商標登録の分離移転は、24 条 4 項
の規定から考えると、「類似するが分離移転を
認める」の考えと理解する。登録前のコンセン
トもこの考え方に沿って「類似するが登録す
る」のでは。
・「類似」はあくまで審査基準上類似。「類似」
と「混同の生ずるおそれ」の関係は従来どおり
のとらえ方でよい。(「混同」なければ「類似」
なし)
・「商標審査基準」中にも、「商標の類否の判断
は、商標が使用される商品又は役務の主たる需
要者層…その他商品又は役務の取引の実情を
考慮し、…」とある。コンセントは、取引の実
情に詳しい者の意見によってその点を補完す
るもの。なお、コンセントは審査段階の話なの
で、判断されるのは「一般的・抽象的な混同を
生じるおそれ」となり、審査段階で「具体的出
所の混同のおそれ」を判断することは現行法下
では無理だと考えている。
・類似であるが登録をする。理屈は登録後の分
離移転が可能なことと同じ。「類似」というの
めることなので違うものがはいってくること
がありうることが前提となる。理念系としてこ
のような考え方をとるのはよいが、それしかコ
ンセントを認めないということはあまり意味
がない。この場合は留保型にするほかないと思
われる。完全型にすると、私人間で決めてしま
うことになり、客観性を担保するものが何もな
いことになってしまうのではないかという疑
問がある。理念系として本来そういうものを救
うためにコンセント制度を導入するのはわか
るが、いったん導入した以上は、それ以外のも
のが入ってくることは否定できなくなる。つま
り、承諾があれば審査せずに登録するのであれ
ば、「類似であっても登録する」というのと同
じようになる気がする。弊害の防止の問題とコ
ンセントを導入した場合にどういう規定をす
るか別に考えないといけない。
②非類似で登録
・氷山事件→出所の混同さえなければ非類似。
・現行 4 条の法則から考えたとき、10 号~15 号
で見ると「混同なければ類似なし」。
・拒絶で類似と書いたものを、意見書を出せば
非類似となる。それと同じと考えられないか。
・形式的には、類似するかもしれないが混同の
おそれはない。非類似だという理論を取りうる
のでは。裁判所は混同のおそれのないものは非
類似。非類似だから登録するなら問題ない。
・混同なり類似なりの概念を分けてきちんと整
理した上で法制化している国はどの程度ある
のか疑問。
③類似と混同について
・「類似であるけれども、登録していい」という
立場であっても混同のおそれがないからコン
セントを出す。類似概念と混同概念とが食い違
う。類似と混同の概念は違うと思う。不競法で
は別。
・類似=混同は最高裁判決のみ。防護標章を無
くしたので、類似と種々の混同を両方もうけな
いと問題があると思う。イギリスの法律では、
類似、同一、類似と書いていて、そこに混同と
いうものを入れている。それによって種々の混
-113-
は一般的、抽象的なもので、あらゆる状況を想
定すれば混同を生ずるおそれはあるが、同意書
が得られたものは実際には混同を生じない状
況であることが推認されるので、需要者に不利
益はなく、登録を認める。
同が生じる場合に侵害になるといって別にな
っている。
・「混同が生じるほどに類似する」とは別。類似
を全部出所混同で縛って「混同が生じるほどに
類似する」のように解釈するのは間違いだと思
う。類似というのは混同を生じることを類似と
言われている。類似の内容、範囲を考える必要
がある。11 号で出所の混同だけで類似を片付
けるのでなく、同一類似だから出所の混同が生
じる。
・商標の類似判断は必ずフィクションが入って
くるので、法律判断のときにはフィクションで
やらないとしょうがない面がある。最終的には
出所の混同の防止、商品識別機能を生かしてい
くこと、その目的を達成するために特許庁の審
査機関、審判機関および裁判機関はフィクショ
ンを使ってやっている部分がかなり多いと思
われる。このような実務の実態に照らし合わせ
ると、4 条 1 項 11 号に関して、類似と混同と
の概念の違い等を議論することがどれほど意
味があるのか疑問。
・4 条 1 項 11 号と 15 号は別にしておいたほうが
よい。
・
「混同と類似の概念をどう考えるか」は運用で
いくのか、法制化でいくのかということに大き
くかかわってくる。しかたなく運用にした場
合、次に混同、類似の概念について整理をしな
おし、あらたにまた考える。
④法改正その他
・今の法改正論は「ぶつかる」ところを全部見
て直すことだと思う。そうでないと変えないと
ころに矛盾が起きるようになってしまっては
困るのでそれはいじることだと思う。
・コンセント制度を作る場合、今までのものと
は考え方の違いが出てくるので、立法したほう
がはっきりすることにならないか。
・審議会のほうでコンセントは入れてもいいけ
れども、ほかはそんなにいじる気がないという
のだったらあまり大風呂敷を広げて議論して
もしかたがない。
→ 審議会は 3 年くらいの時間を十分かけて
-114-
(d)同一又は極めて
近似しているものであ
っても、コンセントが
あれば、登録をするこ
とにするのか。
(注)コンセントがあ
れば、商標同一・商品
(役務)同一の場合で
も、他人に登録を認め
ることとするのは、使
用権(25条)の重複
登録となるので、少な
くとも同一の場合は法
(c)「コンセント」
は、4条1項11号以
外にも、全ての相対的
理由について認めるこ
ととするのか。それと
も、相対的理由の中で
も認めるものと認めな
いものを作るのか。
全面的に見てみましょうということでスター
トしている。
・来年の国会に間に合うようなものを今考えて、
その後、商標権の効力その他をみな考え直すと
いっているので、さしあたりはやらないので
は。
・商標の定義、使用の定義は大きな問題なので、
そこを飛ばしては絶対いけない。
コンセントは相対的拒絶理由に該当する先行
・商標法第 4 条 1 項 10 号における周知性の強さ
≪まとめ≫
権利の全てに認めるべきである。
は、全国どこでも知られているというような、
・基本的に 11 号で十分という意見
広い周知性まで要求しておらず、周知性がどの
程度及んでいるかという点について、かなり問
≪個別意見≫
題がある。そういう意味では職権審査の補完
・11 号に限る。
で、当事者がお互いにいいといえば登録を認め
・企業ニーズとしては 11 号で十分であるとの認
てもよいので、10 号についてはコンセントの
識である。
(10 号、15 号の場合は、コンセント
対象に入れてもいいのではないか。先使用権の
をもらう相手方の特定上の問題もあるのでは)
ときの周知性は、登録のときよりも狭くていい
・現行の類似商標登録の分離移転が、特に条件
という議論がされている。それは一般的に肯定
を定めずに認められていることを考えると、特
されているので、10 号については、コンセン
に 4 条 1 項 11 号に限定する理由もないと考え
トがあってもいいのではないか。
るが、実質的には 11 号だけで十分かもしれな
→10 号の場合、全国周知の場合もあるし、近
い。
県数県での周知の場合もある。つまり、広い周
・11 号だけで良い。15 号は 10~14 号に該当す
知と狭い周知の両方含むわけである。コンセン
るものが除かれるので、11 号に該当するが、
トが問題になるのは狭い周知だけのことなの
例外的に登録を認めるコンセント制度におい
で、それを法文に書くのは難しいのではない
ては 15 号を対象とする必要はない。なお、同
か。また、近県数県の場合でも、使用している
意書が送付された場合に例外的に認めるとい
関係上、それが潜在的に広がるという可能性も
うことは、4 条 5 項として規定すれば良い。
ある。だから、コンセントの対象としては 11
号だけでいいのではないか。
・同一・同一で使っていないところをコンセン
同一商標・同一商品(役務)について、コン
≪まとめ≫
トするという考え方もある。ただし、同一・同
・社会通念上同一の範囲にあるものは、コンセ セントが提出されることは通常考えられない
一はだめ。商品の同一をはずし、同一でなくす。
ントがあっても登録しないというのが大方意 が、仮にそのようなコンセントが提出された場
合には、「混同を生ずるおそれがある」として、 はずすのは査定時まで。はずさないでおいてい
見。
くのはだめ。
登録は認められないと考えるべきである。ただ
・同一・同一では、レター・オブ・コンセント
し、コンセント制度を有効に機能させるために
≪個別意見≫
を書く、放棄書を出して権利抹消登録するとい
・商標及び商品又は役務のトータルとして=商 は、所謂同一範囲は狭く解釈されなければなら
う必要がでるので抵抗が大きくなる、よってコ
標として、社会通念上同一の範囲にあるもの ないと考える。これは、我が国における指定商
ンセント制度が機能しない
品等の記載の在り方とも関連するところである
は、コンセントがあっても登録しない。
・同一の包含関係でなく、①健康食品で、加工
・派生課題として想定されるのが、
「商品及び役 が、この記載のあり方については、更に、現在
食品と○○と○○を主原料とする○○はオー
務が同一の場合」には、包含関係(例:「電気 認められている「包括的な表示」や所謂指定商
バーラップしない、②包括概念で書いてあっ
通信機械器具」と「TV」)を含むか否か。私見 品の「全類指定」への対処策(例えば、3条1
-115-
考えるが、審査基準自体の見直しが必要。
・実務担当者の意識として、同一の範囲にある
ものは、ランセンス・譲渡で、非類似として主
張できるものはコンセントで対応するという
基準になればやりやすいと思う。
・少なくとも同一人に対しても認めていない同
一の範囲については認めない。同一人に対して
登録を認めているものに関しては、迂遠手続で
登録可能となるので、認めても良いのでは。
制上も無理なのではな
では包含関係は同一。商標が社会通念上同一
いか。台湾商標法(2
で、商品又は役務が包含関係にある場合は、ラ
3条13号)のコンセ
イセンスや分割譲渡による対応で良いと考え
ント制度のように、
「商
るため。「類否商品・役務審査基準」における
標及び商品・役務が共
包含関係に異論があれば、同基準の見直しを要
に同一の場合を除く。」
望することとなる。
とする方法はあり得
・商品・役務の包含関係は「類似」と見れば良いと
る。
項柱書の拒絶を厳格に適用する等)が早急に講
じられなければならないと考えるところであ
る。
て、片方が含まれるような形で書いてあるが両
者の文言が一致していなければ同一とみない、
等の前の権利をいじらないで、後ろからきたほ
うが具体的であれば虫食い状態になるような
見方が考えられないか。
・書換えのときに、前の登録の指定商品で具体
的に書いてなければ、書換えのときに具体的な
商品への書換えはできない。そういうようなガ
イドラインも多分出ていると思う。書換えはあ
くまでも前の権利範囲に入っていたとか、入っ
ていなかったかの問題なので、その扱いは類似
のテクニックの問題とはちょっと違うと思う。
・加工食品と書いてあっても、相手方企業が「す
し、弁当」しか売っていない。こちらが「サプ
リメント」であるとき同意書がもらえると思
う。同一範囲が狭く解釈されなければならない
と考え、これがある。これは、どうやっていく
のか?何かそういうようなことがないと、現実
に非常に難しくなる。
→そこをスルーするような仕組みは考えられ
ないか?
・審査負担が増大しないように、同意書を出す
人が立証すればよい。同意書をもらう人が提出
する際に、現実には類似しない。だから同意書
をもらっているということを出す。まず同意書
をもらう前に相手方のものを調査する。「現実
には、長い間こういう分野しかやっていない。
うちの分野はこういうもので違う。だから同意
者をもらえると交渉する。」そこで同意書をも
らえばそれをいえばいいのでは。今まではそれ
でも無理して消してもらうのに非常に苦労し
ているわけだが、そうやって違うことがわかる
ならば消してもらわなくてもすみませんか。
→ダブルパテントになりませんか。
→同一範囲をどうみるかによると思う。
・加工食品で「おすし」しかやっていない人か
らサプリメントでコンセントをもらった場合、
加工食品の方の同一性の範囲からサプリメン
トを除くような仕組みがあればよい。
・特定の商標との関係での利用状況の関係で商
品の同一の幅が広くなったり狭くなったりす
-116-
るのは何か変。権利が変わったようになってし
まう。
・コンセント制度があっても、本当に必要なと
ころはうまくいかないのでは。
・商標権の譲渡を受けるようなことは、個別的
に権利を譲り受けるかどうかということをや
るわけだから、権利が不安定になりますか?そ
の幅がどれだけあるかというのは、まさにその
権利を譲り受ける方が見て譲り受けることに
はならないか?
→ちょっと視点をかえれば、どこかに併存して
しまうわけだから、権利は不安定になる。
・商品の同一のところで、例えば片方が餃子で
片方がシューマイ、このようなものもコンセン
トを認めるのであれば、完全型で法改正して、
その場合は類似であっても登録するのだ。相対
的拒絶理由は利益の保護と割り切るという意
見が知財協内にあった。資料2-3の7から8
ページ当たりにでていることまでやるとなる
と運用では無理。
・同じマークで商品が餃子とシュウマイ。限り
なく混同の可能性が高いということ。でもユー
ザーの皆さんは、こういうものにはコンセント
しないといっている。こういうものにもコンセ
ントがでるとなると、考え方を変えなければい
けない。
・商標の同一・類似と商品の同一・類似は法律
で分けて規定している。一緒にして考えると混
乱が生じる。
・マークが似ていても(商品が「類似商品・役
務審査基準」上類似であはるが)商品が違う場
合、商品が違うから混同は生じない。そこで、
コンセントが出されるのではないか。
・日本の場合には登録商標の指定商品が広い範
囲でとれるわけであって、後から来る方が幾ら
狭い範囲で、A、B、CでAは使っていて、C
は使っていないけれどもとはいうものの、一応
原簿上は登録は残っているわけですから、そこ
のところでコンセントをもらって、それを提出
したとしても基本的には同一商品ですよねと
いうことで、それはけられる関係に当然なって
-117-
を登録公報、登録原簿
等で明示する必要があ
るということとなるの
か。
(注)商標調査時の類
否判断の便宜のため、
非類似だから登録にな
ったのか、類似だがコ
ンセントがあったので
登録になったのかを明
確にして欲しいという
ユーザーからの要望が
ある。
(注)4条1項8号の
「承諾」については、
登録公報や登録原簿等
には明示されないこと
とのバランスをどう考
えるか。
(注)登録公報等へ記
載する事項は、コンセ
≪個別意見≫
・審査基準上は類似とされているにもこだわわ
らず、実際的・具体的検討において非類似であ
ると当事者が考えたことを明示するために公
報に記載する。このような事例が積み重ねられ
ることにより、審査基準も変わることが期待さ
れる。
・法上のコンセントにより、本来、類似である
のに 11 号の適用除外となったものであるの
か、そもそも非類似で登録になったものである
かは、8 号のそれと異なり、一般的に判断が難
しいことも多々あることから、コンセントの旨
(それだけでよい)を明示することに意味はあ
る。
・非類似だから登録との立場をとると、
「コンセ
ントによる登録」は「意見書で拒絶理由を克服
した登録」と同じといえる。そのため、原簿等
への記載は不要との考えも発生する。他方、商
◎類似の商標であるが登録する考え方の問題
(e)法上のコンセン ≪まとめ≫
トがあったことによ
・類似の商標の並存登録を認めるという立場を
り、類似の商標の併存
取るわけではないが、公報、原簿、IPDLの
登録を認めるというこ
いづれでも良いのでコンセントがあったこと
とにするのであれば、
は公に明示してもらいたい。
コンセントがあった旨
コンセントがあったことにより登録された事
実は、公報に公示し、登録原簿にも記載すべき
である。そして、公示・登録事項はコンセント
を与えた先行権利を特定できるものとすべきで
ある。
なお、4条1項8号の「承諾」も同様にする
のが望ましい。
・コンセントがあったことを公報、原簿、IPDL
等に載せることは可能。やる必要があればやれ
る。
・公表してもらいたいというのは、非類似だか
ら登録されたのか、類似でもコンセントがある
から登録されたのかを見分けたいわけでしょ
う。公表が本当に必要なのかな。手間の割には
どうかな。どういう風にうまく使えるのかな。
・公表は使い方によっては禁反言等に利用され
るのでは。包袋に入っているのだから同じだと
思うが。
・似ているようなものがあるとき、特許庁で登
録された。こっちの場合は、コンセントがあっ
たとか、それも特許庁がどう考えているかわか
らないであるものは、それと同じくらいな非類
似の幅があるのに登録されたとか、かえって調
査して迷ってしまって難しくなるのではない
か。だから、別に公表しなくてもよいのでは。
・調査をするときに、本来、何でこれが登録に
なっているのかな。それがわからないと難しい
部分があって、その事情は、結局コンセントが
あったからだ。それを調べてたどり着かない限
りわからない。要はある程度ぱっと見て、何で
これが登録になっていて、本来だと、これは登
くる。そういう意味で不使用をかければいいで
はないかという話もあるが、例えば2年以内で
あればコンセントをもらって、不使用をかけな
くてもそれを提出すればオーケーというよう
な形にならないと、やっぱりそこも考慮してい
かないといけないのではないか。だから、全部
が具体的な商品同士であれば、ある意味では同
一商品に関しての同一商標のコンセントとい
うのはあり得ない。ただ、今の登録の原簿上は
そのスタイルにはなっていないのではないか
と思う。
・商品に関しては、同一に幅があり、また、類
似幅も広い。その商品の同一類似の幅を変えな
いで導入しようとすると大変。区分の中にいろ
いろな商品があることが問題。審査基準、類似
の範囲の見直しが必要である。
-118-
(f)登録公報等に掲
載するということにな
ると、コンセントは、
原則として審査官から
の拒絶理由通知に基づ
いて行われるものであ
るところ、「類似であ
る」という審査官の判
断が結果的に必ずしも
正しいものとは限らな
いこともあることとの
関係をどのように整理
するのか。すなわち、
手続的にはコンセント
ントがあった旨だけで
よいか。当該引用商標
の登録番号や同意した
商標権者の氏名等も必
要か。
(注)複数のコンセン
トによって登録になる
場合、又は、複数の商
品・役務を指定してい
る出願については、コ
ンセントにより登録に
なった商品・役務と非
類似のものとして登録
になった商品・役務と
が混在する場合も想定
されるところ、登録公
報等への記載が複雑に
なるという懸念はない
か。
≪個別意見≫
・審査官は、審査基準に従い、抽象的・一般的
に判断し、コンセントを与えた方は、個別・具
体的に検討して非類似・誤認混同を生じないと
標調査を行う上でコンセントの有無はかなり
役立つ情報。したがって、下記の理由付けはど
うか?「審査官は類似/当事者は非類似」との
認識に基づく登録であるため、コンセントがな
ければ登録にならなかったといえる。すなわ
ち、通常の登録とは位置付けが異なる。JIPA
は「ユーザーフレンドリーな制度への変革」を
求めており、商標調査の精度・便宜を高めるた
め、コンセントがあった旨はわかるようにして
おきたい。
(注)8 号の承諾とのバランス=同意の根拠が人格
権に基づくため、コンセントと同列に論ずる必
要はない。
(注)記載事項=コンセントに係る引用商標の
登録番号は有用と考える。ただし登録権者の氏
名までは不要。
(注)複数のコンセントにより記載が複雑にな
ったとしてもやむを得ないのではないか?
・コンセントをとったからといって、審査基準
を変更するほど全ての案件について、この類否
判断を適用できるとはせず、あくまで当個別案
件についてのみ一般的な類似概念を覆す事情
があったという事実を公にするために公報記
載を要望したい。
・類似群コード、ウィーン分類コードのように
「参考情報」としてコンセントの有無だけでも
公報等に掲載してもらいたいと考える。
・IPDL で分かれば良い。
≪まとめ≫
審査官は一般的・抽象的なだけでなく具体的に
誤認混同のおそれがあるかも審査すべきとはさ
れていても、後者に限界があることを理解して
いる。その上で、ユーザーは審査官による事前
審査制度を望んでいる。コンセントの提出(個
別・具体的判断)によって、当初の審査官の判
断が変わっても良いのではないか。
コンセントが提出されたときには、登録され
ることになるが、その場合であっても、本来的
にコンセントが必要であったか否かを明確にす
るため(権利範囲の明確化にも繋がる)、審査
官において、再度、類否判断をし、その結果に
基づいて審査手続を進めるべきである。このこ
とは、類否判断の徹底化に資するものである。
録にならないようなものそれが全部住みわけ
られる。そういう意味で公表されたほうがよい
と考える。
-119-
とができないこととす
るのか。
≪個別意見≫
・出来ない。
・同じ理由に基づいては実質できない。
(できた
としても、コンセントがあるからということで
11 号の適用除外となった(法定)わけである
から、門前払い(却下)になる。)
判断しているものであり、審査官による審査の
限界を分かった上で、コンセント制度の導入を
求めているのであるから、審査官の判断と当事
者の判断が異なってもかまわない。ユーザーと
しては、審査基準上は類似のおそれがあるが、
具体的・個別的考慮において誤認混同が生じな
いと判断されたことを公報又は公の情報とし
て知りたい。
・現行の類似商標登録の分離移転も、同様の問
題を抱えているはず。特許庁はどのように整理
しているのか逆に聞いてみたい。
・意見書で抽象的議論をするより、先願権利者
からコンセントを得ようする選択をするのは
ユーザーであり、それにより、コンセントを得
られるか得られないかのリスクを背負うので
あるから、左記場合が生じてもかまわない。
・非類似のものもあっても良い。整理する必要
なし。
・コンセントがなければ拒絶査定や拒絶審決の
理由となっていたはずの引例についてのみ公
示することを要望する。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、異議申立て及び無効審判との関係)
コンセント適用により登録された場合であっ
ても、通常の商標権と区別するような取り扱い
は必要ないと考える。この考え方は、3条2項
の適用により登録された商標権について、通常
の商標権と区別した取り扱いをしていないこと
と同じである。この考えに基づいて、以下の(g)
乃至(m)について、回答する。
(g)同意をした商標 ≪まとめ≫
異議申立てや無効審判の請求自体は可能であ
権者以外の者も、拒絶 出来ないという意見が大半であるが、申立て又 る。ただし、コンセントが無効となるような場
理由通知で引用された は請求すること自体は認めた上でその主張は認 合を除き、その申立てや審判請求は、「理由な
当該商標権の存在をも
めないのが良いとの意見あり。
(登録維持の決定 し」(登録維持の決定や請求棄却の審決)にな
って、異議申立てや無
ると考えられる。
又は請求棄却)
効審判の請求をするこ
制度を利用した形で登
録になった場合、一応
類似であるという推認
が可能ではあるが、も
ともと非類似というべ
きものもあり得るので
はないか。出願人も、
非類似とは思っていて
も、形式的にコンセン
トを得た方が高い確率
で登録になるというの
であれば、審査官の心
証を覆すために意見書
で非類似である旨を
縷々述べるよりも、コ
ンセントを得る方を選
択するということも少
なくないのではない
か。
-120-
(i)4条1項11号
に限定してコンセント
制度を導入した場合、
コンセントにより登録
になった後で、同じ商
標権を引用して他の理
由(例えば、4条1項
15号)で異議申立て
(h)同意をした商標
権者又はそれ以外の者
が、同意をした商標権
者の所有する他の商標
権の存在をもって異議
申立てや無効審判の請
求をすることについて
は、可能とするのか。
(同意書に具体的な商
標権を特定する必要性
の有無の問題とも関連
する。)
≪個別意見≫
≪個別意見≫
・理論上は可能であるものの、同意をした趣旨
からすると社会通念上同一の商標権では、不可
能とすべきではないか。
・コンセントは当該引例商標とは非類似である
旨の意思表示。引例以外の商標との間で 11 号
が問題となるおそれはあるので理論上「可能」
だが、社会通念上同一の商標権では不可とすべ
き。ただし審査で見落とされて拒絶理由通知の
引例に挙がっ ていない類似 商標に基づく 異
議・無効審判まで不可とするのは権利者に酷と
いえる。
・同意をした者は不可としても、第三者は可能
とせざるを得ないのではないかと考える。
異議申立てや無効審判の請求は可能である。
≪まとめ≫
認めないという意見が多いが、申立て又は請求 なお、そのような主張を認めるか否かは、その
自体は認めざるを得ないが請求内容は認めない 後の審判の審理に委ねられることになる。
とするとの意見もある。
(登録維持の決定又は請
求棄却)
・法改正を指向するのであれば「出来ない」と
すべき。
・現行の類似商標登録の分離移転で登録された
類似商標に対し、異議申立てや無効審判請求が
特に制限されていないので、コンセントについ
ても同様に制限すべきではないと考える。でき
るということにしておいて審決でこのような
請求を排除すれば、そのうち誰もしなくなると
考える。
・法律上できないとすることには違和感がある。
異議申立て期間を過ぎても申立てを行なう者
はいるわけで、その場合と同じ扱いではないの
か。
異議申立てや無効審判の請求は可能である。
≪まとめ≫
理論上は可能であるが、
“同意をした商標権者の なお、そのような主張を認めるか否かは、その
所有する他の商標権”というのが同意した際の 後の審判の審理に委ねられることになる。
先願商標と社会通念上同一の商標権では、≪事
実上≫不可能とすべきではないかという意見が
大半
-121-
・今日の 11 号と 15 号の運用を斟酌するに、11
号は商品:同一 or 類似、商標:同一 or 類似の
場合であることから、15 号よりもより出所混
同のおそれが高いものと考えられることから、
認めない。
・コンセント制度の実効性を確保するという見
地から「認めない」
・同じ商標権という前提であれば、同意をした
者の引例商標に基づく異議、無効審判は認めな
いとしていただきたい。
・登録後の第三者による 11 号や 15 号に基づく
異議・無効も可能と考える。只、資料に記載さ
れている「請求できない」という意味が「これ
ら理由に基づき請求しても、原則その請求は認
められない」ということなら了承できる。留保
型を前提とすれば、当事者の意見を尊重して審
査官が登録することと、その登録に対して第三
者が無効審判を請求できることとは、別の話に
なると思う。無効審判を請求しても、ほとんど
認められないことになると思うが、門前払いは
いかがなものか。
(j)甲の「登録商標 ≪まとめ≫
甲又は乙は、お互いに排他権を行使すること
A」、甲のコンセント お互いに禁止権の行使は可能との意見が大半
は可能である。
を得た乙の「登録商標
したがって、甲が乙にコンセントを与えた場
A’」がある場合にお
合であっても、当該コンセントの存在を抗弁と
≪個別意見≫
いて、甲又は乙(さら
・コンセントは限定的に与えられるであろうか して、乙による権利行使を免れるものではない。
には、甲又は乙から使
ら、類似のものについてはさらに当事者間での
用許諾を受けた者)が、
コンセントが必要ではないか。
それぞれ自己の登録商
標と類似のものを使用 ・本件については、登録後の類似商標の分離移
した場合にはどうなる
転における場合と同様な扱いになるものと思
のか。お互いに禁止権
われる。(裁判実務はどうなのか?)
(37条1号)の権利 ・コンセント対象外の商標権に基づく禁止権の
行使は可能となるの
行使は理論上「可能」。(h)との整合性を考え
か。特に、甲(又は甲
る必要はあるが、
コンセントは非類似を前提と
から使用許諾を受けた
しているのだから、
互いに類似となってしまう
者)は、上記コンセン
場合には、禁止権行使可能とすべき。
トの存在を抗弁とし
て、乙による権利行使 ・コンセントは原則として、同一とみなされる
を免れることを可能と
範囲の商標の使用・登録に対して同意するもの
するのか。
で、類似商標の使用に対しては禁止権に基づく
権利行使可能ということでよいと思う。実務ベ
ースでは、使用態様を特定した当事者間の契約
や無効審判請求をする
ことは認めることとす
るのか。
-122-
(l)甲の「登録商標
A」、甲のコンセント
を得た乙の「登録商標
A’」がある場合にお
いて、このAにもA’
にも類似する商標であ
るとする拒絶理由(4
条1項11号)を通知
された丙の出願「商標
A”」が登録を受ける
ためには、甲及び乙の
コンセントが必要とな
るのか。その場合、甲
がコンセントを承諾し
たのに、乙がコンセン
トを拒否したらどうす
るのか。乙の「A’」
はそもそも甲のコンセ
ントで登録になったの
であるから、甲のみの
コンセントだけで足り
るということにするの
か。
を得た乙の「登録商標
A’」がある場合にお
いて、甲がA及びA’
の両商標に類似する
A”の商標を出願した
ときは、A”はA’の
存在により拒絶される
こととするのか。それ
とも、上記コンセント
の存在を抗弁として登
録されることとするの
か。
≪個別意見≫
・甲及び乙のコンセントが必要。”その場合、”
以下のケースは、甲のみのコンセントでは拒絶
理由は解消されないとすべき。コンセントは契
約当事者間での合意事項で、対世的効果はない
と考える。
≪まとめ≫
甲及び乙のコンセントが必要という意見が大半
≪個別意見≫
・拒絶されるものとする。
・当事者間で A”についてのコンセント・合意が
必要。
・拒絶される。なお、コンセントは非類似を前
提としているため、甲の「A”」が乙の「A’」に
「類似」する場合(商品・役務も類似)、コン
セントの対象外となる。
・上記各ご意見に賛成。Aと A’が非類似となっ
たのは個別具体的な事情を勘案したからで、A”
のケースには必ずしも適用できないと考える。
甲、乙のそれぞれからコンセントを得られな
ければ登録され得ない。
を締結しておくことが安全策になろうか?
・この点について海外の実務では各社契約レベ
ルで対応されているのではないだろうか?
・お互いに禁止権の行使は可能。
◎コンセントにより登録された商標権に係る問題(主として、その後の出願との関係)
(k)甲の「登録商標 ≪まとめ≫
商標A”は、登録商標A’の存在を理由に拒
A」、甲のコンセント 拒絶されるとの意見が大半
絶されることになる。
-123-
(n)コンセントの提
出は、出願が審査、登
録異議の申立てについ
ての審理、審判又は再
審に係属している場合
には、いつでも可能と
するのか。
(o)コンセントは、
出願係属中に取り下げ
ることや登録後に撤回
することを可能とする
のか。いずれの場合も、
その旨を明記すること
とするのか。また認め
ないこととする場合の
理由付けはどのような
ものとなるか。
(注)4条1項8号の
「承諾」については、
明文の規定はないが、
査定前の撤回が可能で
ある。
(最高裁 H16.6.8
判決)
◎手続的な問題
(m)甲の「登録商標
A」、甲のコンセント
を得た乙の「登録商標
A’」がある場合にお
いて、甲は乙に対して、
又は、乙は甲に対して、
それぞれの登録商標の
使用に対しては、排他
権の行使はできないと
いうことを明記するこ
ととするのか。
≪個別意見≫
・コンセントを与えた時点での合意内容に反す
る客観的事情がある場合は、出願係属中に取り
下げることや登録後に撤回することを可能と
する。いずれの場合も、その旨を明記すること
とする。
・(コンセントの法制化が前提の問いであるが)
出願係属中のコンセント取り下げは可能とし、
≪まとめ≫
出願係属中に取り下げることや登録後に撤回
(登録後については、反対意見もあり)するこ
とを可能とし、いずれの場合も、その旨を明記
するとの意見が多い
≪個別意見≫
・いつでも可能とする。
・係属中であればいつでもOK。
≪まとめ≫
いつでも可能との意見
≪個別意見≫
・一律・自動的に排他権の行使は出来ないとす
るのは好ましくない。コンセントを与えた時の
合意事項違反があった場合の配慮
・本件については、登録後の類似商標の分離移
転における場合と同様な扱いになるものと思
われる。(明記しない。)
・明記する必要はない。すなわち、コンセント=
非類似として登録されたのだから排他権の行
使はいうまでもなく不可。登録後に問題になる
こともあろうが、その場合は類似商標の分離移
転における場合と同様。
・商標権の場合、特許権と違って、自己の登録商
標の使用であれば他社商標権の侵害となるこ
とはない(過誤登録であっても、無効となるま
では自由に使用可能。)ので明記の必要なし。
≪まとめ≫
明記する必要なしとの意見が大半
登録査定後はコンセントの撤回はできないと
するのが良いと考える。登録後も撤回できると
すると、権利が不安定なものになると共に、既
に使用をしていた場合の手当て等も考慮しなけ
ればならなくなるからである。
コンセントの提出はいつでも可能とすべきで
ある。
明記する必要はない。
・登録になったら確定してしまうため、撤回は
できないと考える。例えば、優先権主張は、登
録になったり、係属になったりすると取り下げ
ができない。
-124-
(q)コンセント制度
により類似商標が併存
登録になることによる
弊害防止のために、ど
のような具体的な対策
を考えるべきか。
声があるが、何か対応
策はあるか。例えば、
「コンセントをするに
際しては、対価を求め
てはならない」旨の規
定は必要か。また、そ
のような規定を法定す
る事は可能であるの
か。
≪個別意見≫
・実質的に誤認混同が生じた場合、24条の4
コンセントの発行に対し対価を要求しうるか
否かは、経済界における慣行に従って判断すべ
きである。既に商標使用の分野では、先行権利
者が出願人に代わり商標登録し、しかる後にラ
イセンスバックやアサインバックする手法が採
≪個別意見≫
・必要でない。
(私的自治の問題との整理しかあ られているが、これらの場合と同様に考えるべ
きである。ただし、諸外国におけるコンセント
り得ないのではないか?)
・非類似の範囲にまで対価を要求する環境が世 については、対価を求めないのが普通であるか
の中に形成されるのは望ましくないと考るが、 ら、何らかの形でこの点を指導するようなこと
法的規制が可能なのかという点については考 は必要と思われる。
えが及ばない。
24条の4、52条の2の適用を考えるべき
≪まとめ≫
24条の4又は52条の2に相当する規定を手 である。
当てするとの意見が大半(ただし、運用の場合
は規定のしようがない)
その旨を法に明記する。もちろん、他の法律に
反する場合、取り下げが認められない場合も有
り得る。コンセントの前提となった契約への違
反行ためが登録後に起こることが想定される
ため、登録後のコンセント撤回についても「可
能」とせざるを得ない。法律の明記も必要と考
えるが、その規定方法については判断つかない
(取消・無効理由とすれば済むか?)。
・登録後の場合については、コンセントを与え
た事実は撤回しなくとも、相手の権利が消えれ
ば済むのであれば、その合意内容に反した事実
を持って権利無効とするという手当てがあれ
ばよいのではないかと考える。
・登録後はできない。コンセントの内容として
いわゆる「はだかのコンセント」を想定してい
るわけであり、特許庁がその具体的内容に立ち
入らないことから、合意内容に反する行為は単
に債務不履行の問題として、不法行為法に基づ
く、損害賠償で対応すべき問題ではないか。な
お、当該登録商標の類似の範囲で故意に不正使
用をした場合には、51 条の取消審判で対応で
きる。
◎その他の問題(公益的な配慮の問題を含む。)
(p)コンセント制度 ≪まとめ≫
の導入に際しては、
「対 「コンセントをするに際しては、対価を求めて
価」の問題を懸念する はならない」旨の規定は不要
-125-
(s)事実上完全型(審
査基準上に明記し、運
用上の統一を図る。)
特段の配慮は必要ないと考える。
題はあらゆる場面において発生し得るので、法
律上は 52 条の 2 同旨の規定、及び実際上は顧
客への信用維持をセーフネットとして制度運
用することは不合理とはいえない。商標法の中
でも、登録商標の分離移転にて発生し得る問題
といえる。
・投薬ミスの問題は、登録商標をどのように病
院内で使用するかという使用管理の問題とし
て、業界規制や商標法以外で議論してはどうか
と思う。(投薬時の識別力は商標が本来機能す
ることを期待されている場面ではないように
思う。)
完全型をとる場合、相対的拒絶理由の適用の
≪まとめ≫
意見が分かれた。法制化又は運用のいづれでも、 有無は、運用では対処できないと考える。
少なくとも“事実上の完全型”を求めるとの意
(r)紛らわしい商品
名による投薬ミスの問
題を抱える製薬業界の
ように、コンセント制
≪個別意見≫
度導入には消極的な業
・コンセントを与えなければ済む問題とも考え
界もあるが、法制化の
られ、業界ごとに対応を異にすることには反
際に何らかの配慮は必
対。弊害が生じると罰則があることになってい
要か。制度はあっても、
れば、自社の利益を犠牲にしてコンセントを与
利用しなければよいと
いう整理だけで十分
える場合はあることは想定しにくい。
か。また、ビジネス上 ・業界固有の特別事情がある場合、コンセントを
の関係で、コンセント
制限しても良いと考える。ただし、それはあく
の申し込みがあった場
まで商標法とは別の法律で実現できる場合に
合に断れず、意に反し
限る。商標法の中で業界を分けた規定が並存す
てコンセントをするケ
るのかは甚だ疑問。また、意に反するコンセン
ースも懸念されるが、
トについてはこれを否定できないが、同様の問
特段の配慮は不要か。
又は52条の2に相当する手当てをする。それ
以上の罰則は商標法の中に設ける必要はない
と考える。他の法律に触れる場合は当該の法律
で罰すれば良い
・類似ではないという立場をとっているので、
「類似商標が併存登録になる」という質問の表
現が気になる。誤認混同を生じた原因に特別の
不正目的が無いのに、コンセントを与えた当事
者(読みが甘かったともいえる?)が、混同防
止表示請求できるということについて問題は
ないか?
≪まとめ≫
特段の配慮は不要との意見が大半。
・4条1項11号におけるコンセントにおいて、
商標同一、商品(役務)同一の場合を除いて全部
登録するようなことを運用で可能なのか。(審
-126-
見が大半。
(a)法制化→完全型
(b)法制化→留保型(留保型の場合は、法制
化する必要を感じないとの意見あり)
(c)運用→留保型
(d)運用→留保型(内部規則により事実上の
完全型を実現)
(e)法制化する場合の具体的条項を示すと共
に、両者のメリット・デメリットを明確にして
もらわないと判断出来ない。
(f)当面、事実上完全型の運用で様子を見て、
不備があれば、法制化
≪個別意見≫
・法制化する場合、運用で済ます場合のメリッ
ト・デメリットを明示してもらいたい。
・可能と考える。
・完全型コンセントを指向するのなら法制化を
求めざるを得ないのではないか?例えば、(g)
は運用では実現できないのでは?
・とりあえず法制化する場合の条文案を見てみ
たい。法制化するまでのつなぎは運用でやると
いう案はだめか?
・法制化が必要と考える。現行の類似商標登録
の分離移転と同程度の商標法上の手当てをし
ないとコンセント導入の効果が生じない(不確
定なコンセントよりも商標法上明確に担保さ
れている登録後の分離移転を指向する)おそれ
があると考える。
・
「類似であるが登録をする」という表現を選ん
でいるので、法制化しないと無理がありそう。
あくまでも例外措置ということで、運用で処理
できるという考え方もないこともないが。
・運用→留保型の立場だが、具体論としてギョ
ウサとシュウマイのコンセント(同一類似群内
でのコンセント)まで認めるのであれば、法制
化は必要と考える。
2.制度を運用により導入する場合の具体的検討
◎基本的問題(コンセントの位置づけ及び導入の範囲)
(a)類似であるとし ≪まとめ≫
て拒絶理由を通知した 運用によるコンセントを指向する場合を想定し
であれば、法制化せず
とも、運用でも十分可
能なのではないか。
このような建前になると思われる。
運用で対処という場合には、コンセントが提
査官を拘束することを運用でしばることが可
能か。)
-127-
(d)「コンセント」
は、4条1項11号以
外にも、全ての相対的
理由について認めるこ
(b)ユーザーニーズ
に十分応えるため、さ
らには、審査官の類否
判断のばらつきを増大
するおそれを防ぐとい
う観点などからも、引
用商標権者のコンセン
トを最大限に尊重する
という審査運用(すな
わち、原則として、コ
ンセントがあれば、類
似ではない(混同の生
ずるおそれがない)と
して登録する。)をす
る(審査基準上、その
旨を明記する。)こと
は可能か。
(c)同一又は極めて
近似しているものであ
れば、コンセントがあ
っても、拒絶をすると
いうことでよいか。
場合、コンセントがあ
ることによって、類似
ではない(混同の生ず
るおそれがない)と判
断できるものについて
は、登録する建前にな
るとの考え方でよい
か。
≪個別意見≫
・良い
・同一商標を引用した拒絶理由通知に、コンセ
ントは受け付けない旨を記載してはどうか?
・「同一」は良いと思います。「極めて近似」は社
会通念上同一であれば良いと思う。それ以外は
登録すべきと考える。
≪まとめ≫
運用によるコンセントを指向する場合を想定し
ての回答としては“11 号”のみ。
≪まとめ≫
運用によるコンセントを指向する場合を想定し
ての回答としては“良い”が大半
≪個別意見≫
・ユーザー団体である JIPA が答えるべき問題か
不明だが、可能と思われる。
・可能かもしれないが、望ましくないと考える。
法制化による完全型を希望する。
≪まとめ≫
(a)運用型に賛成意見者は可能との考え。
(b)法制化に賛成意見者は、なぜ運用であれ
ば同意書が出ただけで可能となり、法制化でそ
れが実現できないのか現状の説明では十分に
納得できないとの意見。
≪個別意見≫
・良い
・運用であっても「類似だが登録する」の考え方
で対応すべきと考える。
ての回答としては“良い”が大半
上記1(c)と同様に考えるべきである。
上記1(d)と同様に考えるべきである。
審査基準に明記することは可能と思えるが、
この基準は法律に優位するものではないので、
その徹底化が図れるか、という点が問題である
と考える。
また、基準で明記した場合であっても、無効
審判での争いの対象となるという点は依然とし
て残ることになる。
出されたときには、「混同は生じない(つまり、
『類似』ではない)→11号には該当しないの
で登録する」という考え方を採らざるを得ない
と思料する。そして、そのためには、15号を
「混同を生ずるおそれがある商標」を排除する
ための包括規定としてとらえると共に、11号
(先行権利との類似)は混同を生ずるおそれの
ある商標の具体例を規定したものととらえ、且
つ11号の『類似』を最高裁判所の判断の内容
で考える必要があると思われる。
-128-
鑑等)は、どうするか。
例えば、現行4条1項
8号の承諾書と同様の
扱いで問題はないか。
同意書の真正の担保の
ために、当事者間の契
約書等を提出させる等
は必要ないか、それと
も、詐欺の行為の罪(第
79条)で十分か。
(b)コンセント制度
を導入すると、審査の
遅延に繋がるという懸
念も指摘されていたが
(平成8年改正時)、
これに対してはどう対
応したらよいか。例え
ば、コンセントを交渉
≪個別意見≫
・期限を設けることが好ましい。最終拒絶まで
コンセントを出す機会を認めるとしたら、かな
りの期間にわたって同意書を提出する時間が
≪まとめ≫
期限を設けるとの意見が大半
≪個別意見≫
・簡単な同意書フォーム(譲渡証のイメージ)
を提出する。
・契約書の提出までは不要と考える。
≪個別意見≫
・必要。
(ただし、あくまで参考情報としての位
置づけ)
・特許庁の運用に係る内容を原簿・公報に載せ
ることが法律上問題ないのか判断つかず。何ら
かの手段で簡単にわかれば良いので IPDL でも
良い
3.その他、完全型及び留保型に共通の検討事項など
(a)同意書について ≪まとめ≫
の取扱い(同意書の文 簡単な同意書フォーム(譲渡証のイメージ)を
面、引用商標権者の印 提出するとの意見が大半。
ある旨を明記する必要
はないということでよ
いか。
≪個別意見≫
・11 号のみとする。
(企業ニーズとしては 11 号
で十分であるとの認識)
・現行の類似商標登録の分離移転が、特に条件
を定めずに認められていることを考えると、特
に4条1項11号に限定する理由もないと考
えるが、実質的には11号だけで十分かもしれ
ない。
◎情報の開示の必要性の有無の問題
(e)公報や登録原簿 ≪まとめ≫
には、コンセントによ 公報にはこだわらないが公開情報として開示さ
って登録されたもので れることを望む意見が大半。
ととするのか。それと
も、相対的理由の中で
も認めるものと認めな
いものを作るのか。
審査の猶予期間に、一定の制限を設けること
はやむを得ないことと考える。しかし、コンセ
ントは最終的には登録査定時にあればよいとす
ることは必要である。
コンセントは、発行者の代表権限のある者の
記名、押印のある書面によりなされるべきであ
り、当該書面には、出願番号と共に、コンセン
トの対象たる相手方の商標及びこれを使用する
具体的な商品・役務が明示され、発行者がそれ
に基づいてコンセントを発行する自己の登録商
標を記載し、発行者は当該書面に記載された出
願商標が当該書面に記載された商品・役務に登
録され、使用されることに異議無く同意する旨
の記載がなされていることが必要と考える。
運用で対処する場合には、コンセントにより
登録されたものである旨を明記する必要はない
という結論に至ると考えられるが、「コンセン
トの提出あり」等を参考情報として載せること
等を検討すべきである。
・留保型運用でいったとき審査の一資料なので
公表はできるのか?
→あくまでも参考情報だがやれないことはな
い。
-129-
・コンセント制度を導入する前に審査基準、類
「類似商品・役務審査基準」の見直し、指定
似の範囲を見直してほしい。非常に広い分類と
商品・役務の記載の在り方(いわゆる「全類指
狭い分類がある。それを適切に特許庁で分類し
定出願」の排除、指定商品・役務の包括表示を
ていつも枠を作っているが、いくら直したっ
認めない等)は、コンセント制度と関係なく、
て、また何年かすると変わっていくわけであ
積極的に進めるべきである。また、商品・役務
る。そういう意味で、なくせるものはなくして
にあっては、日々新しいものがでており、類似・
ほしい。
(大きい区分はどこの国にもあるので、
非類似の判断も取引状況のいかんにより変化す
るものであるので、「類似商品・役務審査基準」 短冊をはずすということ。)
→ 区分内は類似で、他類間は非類似という扱
は、固定させるべきものではなく、適時適切な
いですか?
見直しを図るべきである。
→ 大きい区分のところと小さな区分があり、
なお、不使用商標対策を講じ、コンセント制
大きなところに入ってしまえば損だというわ
(特にハウスマーク)の保護の観点から信頼できる審 度を機能させるためには、不使用取消審判に係
け。
査を行うこと、短期間で商標を決めざるを得な る請求人の費用負担の軽減も図られるべきであ
いビジネスの実態がある限り、不使用商標=悪 る。現在、一つの登録(又はその登録の一部)
に対して不使用取消審判を請求する場合、「区
とは決め付けられない。
・ハウスマークの保護は著名商標の保護として、 分」という概念の下に、「区分数」に応じた審
不使用商標の肯定につながらないような制度 判手数料が徴収されているが、不使用取消審判
を検討し、使用する予定もないのに非類似の短 においては、取消を求める「請求に係る商品」
冊まで含め不当に幅広くとって他者の採択の という概念の下、その立証活動がなされるもの
であり、その中には、「区分」という概念は何
余地を狭めている不使用商標は悪とすべき。
・審査基準の見直しは必要と考える。特に「薬 らでてこないものである。にもかかわらず、審
剤」、「電子応用機械器具」のような包括概念の 判手数料の徴収は「区分」単位でなされており、
扱いを見直すべき。全類指定に関しては特別な このことは請求人に過度の負担を強いるもので
ある。したがって、不使用商標の排除により一
措置は不要と考える。
・施策を講じるのは良いが、それが完成するま 層の促進を図り、コンセント制度を機能させる
でコンセント制度がおあずけになるのは好ま (本当にコンセントが必要な場合のみのコンセ
しくない。並行して考え始めるのは良いが、そ ントとするため)には、不使用取消審判におけ
の結論を待たずにコンセント制度を導入すべ る請求人の費用負担の軽減が図られて然るべき
き。不使用商標対策としては、不使用取消審判 であると考える。
あるのであるから、審査・審判の各段階では期
限を設けてスムースに審査を行なってもらい
たい。
・審査遅延を防止する意味で期間を設けるのは
妥当。しかしある程度の期間(2ヶ月程度?)
は必要。通常の場合、わざわざ非類似であるこ
とを表明するのは、引例の商標権者にとってイ
ンセンティブが働かないと考えられ、実質コン
セントは貰えなくなるおそれがあるため。
・CTMのCooling-Offの期間(異議
についてだが)を考えると2カ月程度が妥当か
と考える。
≪まとめ≫
不使用商標対策等の施策は必要とは考えるが、
すべてを同時に行なう必要はなく、準備のそろ
ったもの、特にコンセント制度の導入は先行し
て始めてもらいたいとの意見。
(c)コンセント制度
を導入するに際して
は、極力、ユーザーが
同制度を利用しなくて
もすむような施策を講
じるべき必要はない
か。例えば、「類似商
品・役務審査基準」の ≪個別意見≫
見直し(検討事項-1) ・併せて検討すべき。
や、いわゆる「全類指 ・類似商品・役務審査基準の見直しは検討すべ
定出願」の排除等の不
き。しかし、全類指定の排除等の不使用商標対
使用商標対策等の施策
策は、慎重に検討すべき。すなわち、著名商標
は必要ないか。
中なので審査を猶予し
て欲しいという上申書
があった場合の取扱い
は、どうすべきか。審
査の猶予について期限
を設けること等は必要
か。
-130-
(e)コンセント制度
導入に際して、商標ブ
(d)出願商標の態様
を少し変更すれば、先
行商標の商標権者から
コンセントを得やすく
なるというケースも想
定されるので、商標の
補正についての要旨変
更の基準を緩和して欲
しいとの要望がある
が、これについてはど
う考えたらよいか。
≪個別意見≫
・ユーザーの立場からは、社会通念上同一の範
囲であれば基 準を緩和して もらった方が 良
い?
・要旨変更の問題があるため、社会通念上同一よ
りは狭い範囲となると考える。大文字・小文字
間の変更、それ以外では文字間スペースを空け
る/詰めるくらいか?
・コンセントを得やすくするかどうかは、個別
に使用態様に関する契約で対応したらいいの
では?
・コンセント制度のために要旨変更の基準を変
えることはないと考える。
・外観類似や結合商標の称呼類似の範囲が変わ
る可能性があり、先願主義下、問題が出てくる
危険性があるので、緩和しないほうが良いので
は。なお、商品の補正については、一度狭めた
ものを出願時のものまで広げられるようにし
たほうが良いと思ったことはあるが、商標の補
正については基準を緩和したほうが良いと思
ったことはない。
≪まとめ≫
特に必要ない。
の費用を安くしてほしい(審判費用は被請求人
の負担とするとしていても普通は被請求人に
要求しないので、例えば、請求時55000円
支払って、答弁書の提出なく取り消された場合
は、40000円返してくれる。答弁書を提出
する場合は権利者は40000円支払い、40
000円は勝ったほうに戻ってくるなど。←た
だし、企業活動を妨害するために多量の不使用
取消審判を請求する者が現れる危険性ありと
の指摘があった)。更に不使用取消審判にかか
る時間を短縮し、早く取り消せるようにしてほ
しい。
≪まとめ≫
従前の要旨変更にならない程度の緩和は認めて
もらいたいとの声もあるが、コンセント制度導
入のためにこれを超えた緩和までは望まないと
の意見が多い。
商標ブローカーは、どのような制度を考えて
も、存在し得る。要はモラルにあり、商標制度
出願商標の補正に関する現在のプラクティス
は、あまりにも硬直しており、コンセント制度
と関係なく、見直しが必要である。
-131-
コンセント導入を希望する主たる理由:①審査
の補完(留保型、非類似で登録)と②分離・分
割移転など迂遠な手続等の回避(完全型、類似
であっても登録)の2つがある。
度は変化するものであ
るところ、利害がもっ
とも存在する引用商標
に係る者の同意書は長
期的な登録関係につい
ても考慮されたものと
見ることができ、登録
≪個別意見≫
・運用でする場合、法制化してする場合のメリ
ット・デメリット・問題点をある程度明確にし
てもらわないとどちらが良いのか判断しづら
い。
【別紙-4】
1.審査運用の一環としてコンセント制度を導入する考え方
(1)現行審査主義を ≪まとめ≫
維持して的確な審査を 意見が分かれた。法制化又は運用のいづれでも
行っていく上で、画一 “事実上の完全型”を欲している点は一致
的といわれる審査運用
(a)法制化→完全型
の一定の補完のために
(b)法制化→留保型(留保型の場合は、法制
コンセント制度を導入
化する必要を感じないとの意見あり)
する必要であるのでは
(c)運用→留保型
ないか。
(2)登録主義の下、 (d)運用→留保型(内部規則により事実上の
一般的・抽象的な概念
完全型を実現)
を持って審査すること (e)法制化する場合の具体的条項を示すと共
は仕方がないものであ
に、両者のメリット・デメリットを明確にして
ると共に妥当なもので
もらわないと判断出来ない。
ある。しかしながら、
(f)当面、事実上完全型の運用で様子を見て、
使用のされ方などによ
不備があれば、法制化
り相対的な商標の認知
コンセントを導入する
理由
その他
ローカー対策(例えば、
の適正な運用に係っていると思われる。
ブローカーによるコン ≪個別意見≫
セントの乱発や高額な ・現状で、使用許諾する場合も同じ状況であり、
対価等)は、何か考え
特に必要ないのではないか。
ておく必要があるか。
・①が基本
②は①から起こってきたもの
・ただし、②の意見も知財協内では根強い意見
・②は真っ当な理由には感じない
・
「類似であっても登録する中身は、使っていな
いから混同しない、だから、登録しても良いと
いうことか。」
現行今登録するに当たって、実施の使用の事
実は必要としないわけだから、コンセントのと
き使っていないから混同がないという理屈で
登録してしまうのはおかしい。権利範囲との関
係において出所の混同のおそれがあるかどう
かを判断すべき。
-132-
いては何によって「明確化」するのか?(審査
基準?)。個人的にはコンセントは「類似である
が登録する」の考えのため、
(2)、
(3)の考え
方には馴染めない。
・1.
(1)多くは、迂遠手続の回避のために導
入を要望しているのでは?
を行う判断に十分利用 ・商標法第1条は、①商標使用者の業務上の信
するに値するものであ
用の維持と②需要者の利益保護を同列で扱っ
るとの考え方を明確化
ている以上、法制化により、コンセントを導入
する。
しコンセントがあった場合には当該拒絶理由
(3)現行の登録主義、
は見なくていいとすることは1条の目的規定
審査主義を基本とする
との齟齬が生じることにはならないか。参考ま
商標制度の存在理由
でに15号の 適用に関する 東京高裁の判 決
は、特許庁(審査官)
(H13.8.9 東京高裁平成 13(行ケ)15 商標権行
が混同の生じるおそれ
がある商標を排除した
政訴訟事件)であるが、この中で、
「商標法は,
上で、全国的な排他権
商標の保有者が,商標の出所表示機能,品質保
をあらかじめ付与する
証機能,広告宣伝機能により,自己の商品に対
ことにより、事業の拡
する信用ないしグッドウィルの維持拡張をし,
大や使用の促進を保証
その業務上の信用の維持を図るということを
するとともに、簡易・
目的とすると同時に,需要者の利益を保護する
迅速な救済を図ること
ことをもその目的として掲げているのであり
を目的とするところに
(商標法1条),ある商標が他人の表示との関
ある(商標の占有領域
の確保を主要な目的と
係で取引者・需要者に不利益をもたらすことに
する商標法)ともいわ
なる「混同」を生ずる場合には,たとい,当該
れている。その考え方
他人の同意があったとしても,商標法4条1項
の下、コンセント制度
15号が適用され,当該商標の登録を認めるこ
を我が国に導入する考
とはできないと解すべきである。」と判示して
え方として、「審査主
いる。
義・登録主義の制度の
→したがって、最大限にコンセントを尊重する
もと、審査官では把握
審査運用による導入が好ましいと考える。
しきれない、又は、査
定時点では把握できな ・
『コンセント制度を我が国に導入する考え方と
い実際の出所の混同を
して、「審査主義・登録主義の制度のもと、審
生ずるおそれの可能性
査官では把握しきれない、又は、査定時点では
について、当事者(先
把握できない実際の出所の混同を生ずるおそ
願登録商標の権利者な
れの可能性について、当事者(先願登録商標の
ど)の判断・意見を参
権利者など)の判断・意見を参酌することで、
酌することで、そのお
そのおそれがないと認められる商標について
それがないと認められ
登録への道を開く。」というものを明確化す
る商標について登録へ
の道を開く。」という
る。』
ものを明確化する。
・(1)については異論なし。(2)、(3)につ
-133-
・A ライン・B ラインは審査官の頭の中の話なの
か、運用上登録を2つのレベルに分けるつもり
なのか不明。
・図の意味がよくわからないので、コメントな
し。
・図が意図する内容がよく理解できないが、現
行の類似商標登録の分離移転と同様にコンセン
トも「類似するが登録をする」と考えるので、コ
ンセントによってBラインの外側になることは
ないと考える。
このような理解でよいとすると、基本的には賛
成であるが、仮に拒絶理由通知に対し、何ら反
論をせずにコンセントのみを提出してきた出願
案件について、登録査定を行った場合には、結
局、
「B ラインにより登録査定を行ったことを認定し
た」ことと同義ではないのか?
を添付)の提出があっ
た場合、同意書が適正
であれば、次の場合を
除いてすべて登録査定
をする。
≪個別意見≫
・基本的に賛成
・賛成。商品・役務の同一については1-(d)、
2-(c)の検討結果を反映したものとすべきと
3.コンセント制度導入における実務運用の具体案
(1)拒絶理由通知を ≪まとめ≫
行い、意見書(同意書 基本的に賛成。
(2)コンセント制度
の導入イメージについ
て
上記(1)の商標法
第4条第1項第10号
ないし同第15号の概
念を踏まえ、コンセン
ト制度を審査運用とし
て導入するイメージと
して、同法第4条第1
項中、「類似」「混同
を生ずるおそれ」の存
在する号のうち「10
号、11号及び13号
ないし15号」を対象
としたものについて、
引用商標をもつ者の意
見(同意)を当該出願
の査定に利用する場合
を考える。
うに明確な条文構成と
して規定されている。
2.コンセント制度導入イメージ案
(1)現行における商 「A ライン・B ラインの認定を行わず」の意味の解釈に
標法第4条第1項第1 ついては、
0号ないし同第15号 ①拒絶理由通知時において、
「・・・ただし、引
の概念
用商標の所有者のコンセントがあった場合には
現行商標法第4条第
この限りではない。」といったような拒絶理由通
1項第10号ないし同
項第15号の関係につ 知書中に書かない。
い て は 、 「 1 5 号 ②あくまで、コンセントは類否判断の1材料と
「コンセントがあったから登
は、・・・10号から の位置づけから、
14号までの規定に関 録」との判断ではなく、総合的な審査の結果と
する総括条項である。」 して登録した。
(逐条解説)とあるよ との理解でよいか?
-134-
(4)コンセントによ
り登録になった商標権
の効力は、通常に登録
となったものと同等で
ある。
<同意書の提出があっ
ても登録できない場合
>
●商標が同一であっ
て、商品・役務が同一
である関係にあるもの
(「同一」の運用基準
は別に定める。「商標
の同一」については、
商標法第50条に規定
の「社会通念上同一と
認められる商標」とす
ることが適当と考え
る。)
(説明)使用すれば明
らかに混同を生ずるよ
うなものまで本制度に
より登録できるわけで
はないことは法目的か
らして明らかである。
(2)「コンセント交
渉中につき待ってほし
い。」旨の上申書など
への対応については、
現行の「譲渡交渉中に
つき待ってほしい。」
旨の上申書などと同様
に行う。
(3)「コンセントに
より登録」の場合であ
っても、審査の判断資
料になっただけという
考え方であるので、法
的には、公報、登録簿
などに記載するような
手当ては何ら必要がな
い。
≪個別意見≫
・公報に記載してもらいたい。
(ただし、あくま
で参考情報としての位置づけ)
・原簿・公報が無理なら IPDL に記載して欲しい。
・記載必須としてほしい。
・参考情報としての記載を希望する。
≪まとめ≫
通常に登録となったものと効力は同等という点
では意見が一致しているが、コンセントを取消
す事態になった場合、登録も無効とすべきとの
意見と、いったん登録された以上維持されると
の意見に分かれる。
≪まとめ≫
公報にはこだわらないが IPDL には記載してもら
いたいという強い要望が多い。
≪個別意見≫
賛成であるが、合理的期限を設ける。
≪まとめ≫
基本的に賛成。
考える。同一人が出願しても拒絶されるような
同一商標の場合にはもちろん拒絶する必要が
あると思うが、現在迂遠手続で権利取得できる
ものについては、登録することにしても、需要
者にとっては状況は変わらず、当事者にとって
は手続が楽になるので認めても良いのでは?
そうすれば、社会通念上同一かどうかの判断も
必要なくなり、審査負担も減るというメリット
もある。
-135-
≪個別意見≫
・異論なし。
・コンセントは審査の判断材料の一つとの位置
づけであり、「コンセントがあったから登録」
という建前では無い以上、コンセントが撤回さ
れても登録取消とはできない。
・コンセントをもらうに際して、個別に使用態
様などを契約していたのに、それに違反する商
標態様(権利上は同一の範囲に入るとする)で
使用した結果、混同を生じた場合、運用ベース
の話だと、登録は保護され続けるということだ
とすれば問題ありと考える。
・賛成。なお、引用商標への禁止権行使が制限
されることについては、明文化しないとして
も、審判・訴訟の判断で配慮されるべきと考え
る。
・効力は通常に登録になったものと同等。
-136-
○
インド
運用
法制
運用
運用
運用
運用
運用
法制
法制
法制
法制
法制
法制
運用
法制
法制
法制 OR 運用
-
第8条
-
第12条(8)
(2003.4.4施行)
第23条1項13号
(2003.11.28施行)
1999年法 第11条(4)
第12条
(2003.9.15施行)
-
第14条
第12条(2)
第14条
TMEP§1207.01
第5条(5)
第15条(5)
条文
留保型
留保型
留保型
留保型
留保型
留保型
留保型
留保型
完全型
完全型
留保型
留保型
留保型
留保型
完全型
完全型
留保型 OR 完全型
出展:平成13年度知財研調査研究 「商標の保護対象等に係る国際調和に関する調査研究報告書」より(一部データ追加)
×
×
○
○
×
○
○
×
○
○
○
○
コンセント制度
(11号に関する)
○
相対的拒絶理由なし
○
相対的拒絶理由なし
相対的拒絶理由なし
×
相対的拒絶理由なし
×
○
(1999年以降は絶対的拒
絶理由に基づいてのみ審
相対的拒絶理由なし
○
○
○
(相対的拒絶理由なしに移
行予定)
相対的拒絶理由なし
×
○
台湾
スイス
中国
香港
インドネシア
韓国
マレーシア
シンガポール
タイ
オセアニア オーストラリア
ニュージーランド
その他
アルゼンチン
イスラエル
メキシコ
ロシア
アジア
米国
OHIM
英国
ドイツ
フランス
オーストリア
ベネルクス
カナダ
デンマーク
欧米
イタリー
ノルウエー
スペイン
スウェーデン
国名
地域
世界各国のコンセント制度の実施状況一覧
参考資料Ⅱ-3
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
米国
OHIM
英国
独国
-137-
-
全出願の10%がコンセントを利用と推定
資料及びその他の情報 判例
商標審査手続便覧
-
コンセントにより権利は影響を受けない
(地理的制限が発生する場合あり)
個人の氏名に関係し商標審判部が関与した
コンセントは公報と登録証に掲載
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
-
コンセントの存在は、標章が公けになっ
た時、登録簿に記入される時、明記され
る
全出願の5%位が、コンセントを利用と
推定
コンセントにより権利所有者の権利は影
響なし
-
-
-
-
-
-
オフィスアクションから通常3~6ヶ
月、延長が認められる
-
-
公衆の混同が、コンセント後もさらに懸念
-
-
-
-
コンセントの使用はドイツの商標実務に
は関係ない
-
絶対的な拒絶理由に対して効果ないが、
相対的理由に対して解消する
拒絶のオフィスアクションに応じ出願人
が提出
利点:実際の市場の現実に適合
欠点:市場における混同
先行商標権利の所有者が合意した場合
は、類似又は同一の商標は登録可能(9
4年商標法第5条)
コンセントを認める 混同の可能性分析で、コンセント契約を重
くみる最近の判例あり
範囲
-
未登録・周知商標 未登録である周知商標のコンセントが必要
な場合がある
の取扱
-
コンセント制度は実施していない(先行
登録商標に基づく職権審査は実施してい
ない)
-
利点:実際の事業上の利益に適合
欠点:消費者の混同と標章の希釈化
先行登録商標のコンセント(運用)
拒絶のオフィスアクションに応じ出願人が
拒絶解消のケース 提出
メリット・デメリット
制度有無
小項目
運 コンセントを提出し される場合は審査官が拒絶。
ても認めない場合
オフィスアクションから6ヶ月、理由によ
用 提出期間
り延長は可能である。
概
要
大項
目
世界各国のコンセント制度の状況 (平成13年度知財研調査研究 「商標の保護対象等に係る国際調和に関する調査研究報告書」より)
参考資料Ⅱ-4
-138-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標
の取扱
拒絶解消のケース
メリット・デメリット
制度有無
小項目
資料及びその他の情報
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
運 コンセントを提出し
ても認めない場合
用 提出期間
概
要
大項
目
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
コンセントは有名な氏名を使用する商標に適
用可能。(8号のみ)
オーストリア
-
-
-
コンセントの使用はフランスの商標実務には関
係ない
仏国
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
コンセントの使用はベネルクスの商標実務に
は関係ない
ベネルクス
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
カナダ商標法9条により規定されている。(8
号のみ)
カナダ
-139-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標
の取扱
拒絶解消のケース
メリット・デメリット
制度有無
小項目
商標庁が提供した標章の先使用者情報に基づき
コンセントをとる場合がある
出願人が将来の紛争が回避できる
99年以降コンセントは実務に関係していな
い。
デンマーク
資料及びその他の情報
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
標章が公告されるときは明記されず、登録簿で
コンセントの公示
は明記される。
方法
運 コンセントを提出し
ても認めない場合
商標庁からの情報後、約4ヶ月以内にコンセン
用 提出期間
トを得て提出
概
要
大項
目
コンセントにより権利は影響を受けない
自発的なコンセントを特許庁は認めない
コンセントは公報に明記されない
-
-
審査官の拒絶理由を受け取ってから3ヶ月間
-
コンセント契約の存在は公報に公告される
か、登録された時明記される。
審査官の抵触通知を受け取ってから1ヶ月と
延長1ヶ月の2ヶ月間
類似または同一の商品/役務について同一の
標章は、コンセントがあっても拒絶
商標法によって保護されている公益に基づく
拒絶を回避できない。
-
未登録商標の事例は商標庁は今のところない
適切なコンンセントは先行の商標権者の公証
された許可書が必要
未登録の周知商標がある場合、出願人はその
所有者の許可を得る必要がある。
-
実質的類似のため拒絶される標章を、コンセ
ントにより登録可能にできる
商標法は先行の既存商標の所有者のコンセン
トに基づいて登録を許可する。(第12条
(2))
スペイン
-
先行の既存商標の所有者のコンセントを条件
に同一の標章の登録を許可する
ノルウェー商標法はコンセントを認めている
(第14条)
ノルウェー
-
-
先行の既存標章の所有者のコンセントはイタ
リーの実務には関係ない。出願は相対的な拒
絶理由に基づいて審査されない。
イタリー
-140-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
出願人は先行商標を審査官から引用された後
未登録商標は出願審査で考慮れないので、周知
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標 商標のコンセント必要ない。
の取扱
資料及びその他の情報
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
コンセント契約の存在は公報に公告時、登録時
とも明記されない。
コンセントは無条件であり、譲渡権はコンセン
ト契約のより影響を受けない。
-
-
-
コンセントの登録簿
コンセントに基づく登録である旨、政府公
報、登録簿に記載される
標章登録の判断に関係なければ考慮されず
レターオブコンセントの提出期間はない。拒
絶理由への応答は通常6ヶ月。
-
-
登録局から明確な回答なし
コンセントは混同の可能性の一証拠に過ぎ
ず、決定は登録官の自由裁量である。
-
-
登録局から明確な回答なし
大衆が標章間で混同しないと登録官が判断し
た場合、コンセントにより拒絶が解消する。
利点:審査において登録官を補助する
欠点:大衆の混同が生じるケースもある
旧法
コンセント制度は商標法では規定なし。出願
人は拒絶理由を克服するため、引用権利者か
らコンセントを得られる
-
-
-
コンセントの使用はスイスの商標実務には関
係ない
先行商標所有者のコンセントにより登録が許
可。絶対的理由の審査への移行を検討中、将来
コンセント制度なくなる。
コンセントにより登録の拒絶を克服できる。
スイス
スウェーデン
拒絶解消のケース に、自発的にコンセントをうる。
メリット・デメリット
制度有無
小項目
提案標章の使用が何らかの大衆を害すると特許
運 コンセントを提出し 庁が判断すれば拒絶可能
ても認めない場合
オフィスアクションに応答期間は10週間、延
用 提出期間
長期間20週間
概
要
大項
目
引用された権利者が登録に同意した場合に
は、登録官は登録出願を拒絶する自由裁量の
権限を有さない。
引用された権利者が登録に同意した場合に
は、登録官は登録出願を拒絶する自由裁量の
権限を有さない。
利点:引用拒絶を克服し、登録官は出願標章
の登録を許可しなければならない。
欠点:大衆の混同が生じ、公益を損なわれる
おそれあり。
新法 (2003.4.4施行)
2002年TMOの第12条(8)は出願人は引用された
権利者によるコンセントに基づいて引用拒絶
を克服できる。
香港
-141-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標
の取扱
拒絶解消のケース
メリット・デメリット
制度有無
小項目
資料及びその他の情報
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
運 コンセントを提出し
ても認めない場合
用 提出期間
概
要
大項
目
周知商標の取り扱いは99年商標法で規定さ
れているので今後の課題である。
流通経路が異なる等、問題の標章が本質的に
異なる商品の場合有効
標章の混在が生じるとみなした場合は、登録
官の自由最良により容認しない
レターオブコンセントの提出期間はない。拒
絶理由への応答は通常3ヶ月。
コンセントにより権利は影響を受けない
非抵触商標の権利者のコンセントを登録官は
考慮せず
コンセントに基づいて容認されたという事実
は公告公報では述べられない。
-
-
-
-
-
-
-
コンセントレターの見本
大衆が混同しないと登録官が判断した合、コ
ンセントにより拒絶が解消する。
-
-
利点:通常の状況で拒絶される標章の登録欠
点:業界・大衆の心理の混同
インド
1958年法
1999年法(2003.9.15施行)
コンセント制度は商標法では規定なし。出願 コンセント制度の規定
人は拒絶理由を克服するため、引用権利者か 第11条(4)、第12条
らコンセントを得られる
-
コンセント制度は中国で不採用
中国
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
コンセント制度はインドネシア商標法によっ
て保護されない。
インドネシア
-142-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標
の取扱
拒絶解消のケース
メリット・デメリット
制度有無
小項目
資料及びその他の情報
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
運 コンセントを提出し
ても認めない場合
用 提出期間
概
要
大項
目
公報および登録簿にコンセントの下で登録さ
れた商標として公示される。
拒絶理由の約15%程度がレター・オブ・コン
セントを提出。
レターオブコンセントの見本
-
コンセントの下の商標権は限定される。権利
者との合意条件による限定
公示されず
コンセントにより権利は影響を受けない
-
登録官がコンセントを容認するまで
-
引用に対応期間は2ヶ月、延長可能
-
事例は確認されていない。
先登録商標の権利者等が登録に同意した場
合、登録官は拒絶を解消できる。
要求されないコンセントは無視される可能性
が高い
混同のおそれが高ければ、登録官は拒絶する
-
タイ
-
-
-
-
-
-
-
-
-
商標法によって規定されている。
コンセント制度は採用されていない。
(第8条に規定、第27条にコンセントがないこ
とを前提とした登録商標の侵害となる行為を
扱っている。)
利点:先登録商標による拒絶理由を克服でき
る
欠点:業界・大衆の混同
シンガポール
-
コンセントがあっても、出願の容認は登録官
の自由裁量である
引用商標所有者からのレターオブコンセント
提出した時
1976年商標法によって規定されていな
い。登録局の実務上限定的に使用されてい
る。(運用)
マレ-シア
-
-
-
-
コンセント制度は韓国商標法によって保護され
ない。
韓国
-143-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
実務上コンセントが得られた場合ほとんどの
出願の登録を容認
未登録商標は審査で引用されない。
登録官は引用商標所有者からのレターオブコン
実務上未登録または周知商標の所有者からのコ
コンセントを認める 官は拒絶理由を取り下げない
範囲
同一商標、商品・役務が同じである場合、登録
未登録・周知商標 ンセントは、留意されない。
の取扱
資料及びその他の情報 標法第44条(3)が関連
商標庁はコンセントの数字を把握せず 商
コンセントによる権 権利の価値についてコンセントの影響はない
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントに対する直接的言及は公報に記載さ 登録簿にコンセントが注釈される
コンセントの公示 れない
方法
コンセントの期間はないが、登録査定まで、
出願日から1年という制限がある
引用商標との混同または誤認のおそれがある
時はコンセントの基でも拒絶される
審査段階の類似商標を引用した拒絶理由を克
服できる
1953年商標法19条で規定されている。
(8号のみ、11号は運用)
ニュージランド
利点は出願人が先行商標による拒絶理由克服、
欠点は公衆の混同の可能性
商標法はコンセント制度の規定ないが、コンセ
ントの提供は先行商標による拒絶理由の際考慮
される。(運用)
オーストラリア
拒絶解消のケース セントにより拒絶理由を解除
メリット・デメリット
制度有無
小項目
上記のようなケース
運 コンセントを提出し
ても認めない場合
審査の日から15ヶ月間、さらに6ヶ月間の延
用 提出期間
長可能
概
要
大項
目
-
-
-
-
-
-
-
-
-
-
コンセントに基づく登録は、出願人が事業体
の名称または著名な個人の氏名を登録しよう
とする場合のみ認められる。(8号のみ)
アルゼンチン
標章が医薬品を識別する時は厳しい審査がな
され、公益上2件の標章が共存できないと判
断した場合、コンセントは認められない。
実務としては、コンセントは頻繁に提出され
ており、先行登録商標の拒絶を克服できる
ケースが多い。
イスラエルの商標法にはコンセントに関する
規定はない。(運用)
イスラエル
-144-
コ
ン
セ
ン
ト
制
度
制度
先行の標章による商標庁の拒絶理由克服する
ためのコンセントの規定はない。但し、実務
では考慮される。(運用)
先行の既存商標の所有者のコンセントに基づき
登録が許可される。(8号のみ規定、11号は運
用)
出願人が出願と共にコンセント契約を提出する場合 先行の標章により商標庁が拒絶した場合、出
ロシア連邦
メキシコ
コンセントを認める
範囲
未登録・周知商標
の取扱
問題の標章が同一でない場合のみである。
に出願人が提出する場合の二通り。
コンセント契約を条件とする標章の移転は、契約の
特定の条項に応じてコンセントの存在により影響を
受ける場合がある。
コンセント契約は標章間に混同の可能性が生じない
ことを述べる必要はないが、実際にはそうするもの
が多い。
コンセント契約の存在は、標章が公報で公告に
なった時、登録簿に記入された時にも明記され
ない。
一旦登録になると、その決定が最終登録とみな
資料及びその他の情報 されて、登録は登録後の混同に基づいては覆さ
れない。
コンセントによる権
利範囲の差
混同の恐れのない
コンセントの取扱
い
コンセントの公示
方法
審査官はコンセント契約があっても、出願商
標を拒絶する裁量を有する。
拒絶解消のケース と、審査官から拒絶があった時それを克服するため 願人が提出
メリット・デメリット
制度有無
小項目
拒絶通知に対して期間中に回答しない場合は出
運 コンセントを提出し 願は放棄されたものとみなされる。
ても認めない場合
出願人は拒絶の通知から反駁に最高4ヶ月の期
用 提出期間
間が与えられ、コンセント契約を求めていれ
ば、最高8ヶ月与えられる。
概
要
大項
目
-145-
クロアチア
キューバ
チェコ共和国
カナダ
チリ
中国
コロンビア
OHIM
バーミューダ
ブラジル
英領バージン群島
ブルガリア
ベネルクス
ベラルーシ
ベリーズ
アフガニスタン
アルバニア
アルジェリア
アルメニア
アンドラ
アルゼンチン
オーストラリア
オーストリア
アゼルバイジャン
バーレーン
バングラデッシュ
バルバドス
国名
○
×
○
-
×
○
○
-
×
○
○
○
○
○
○
×
*5○
○
○
○
○
○
-
×
×
-
○
×
-
-
除去
先出願チェック
○
○
○
×
×
○
○
-
○
×
×
×
×
*6×
×
×
×
×
○
×
○
*4×
×
○
○
-
○
-
-
×
○
×
×
×
×
○
×
-
有無
条文
法制
法制
運用
法制
法制
運用
運用
完全
完全
留保
完全
留保
留保
完全
-
備考
-
*2 第6条 同一商品または同一サービスに対して他の権利者または出願者
に登録または出願された先願商標と同一である場合、標章は登録簿に登
録されない;先願商標権者または出願者が登録簿に後願商標の登録に
書面で同意した場合、これは適用されない。
*3
*3
*3
*1
*1
*6 相対的理由に基づく審
査なし
*3 第12条 その他の拒絶事由
*5 同一は除く
(4) 先の標章の標章権者の同意がある場合は,(1)2.及び(3)の規定は適
用しない。
*3 -
*1 第 8 条 登録不能標章:類似性
( 2 )この法律の下で標章を登録することができるかどうかを決定する上で
上掲(1)(b), (c),(d)又は(e)にいう他人であってその権利が当該標章がこ
の法律の下で登録されるとするならば,害せられ又は害せられるおそれ
のあるものの登録に対する承諾は,当該標章の登録を許すために斟酌す
ることができる。
*3 *2 第37条(6) 先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に
同意を与えた場合には,この条のいかなる規定も,その登録を妨げるもの
ではない。
*1 *4 相対的理由に基づく審
査なし
*2
*2
*3
*3
*3
*1 -
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
×
×
○
×
-
に影響
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
世界各国のコンセント制度
参考資料Ⅱ-5
-146-
グアテマラ
ハイチ
ホンジュラス
○
×
○
○
○
○
○
○
エストニア
ギリシャ
○
○
○
○
○
*8○
除去
○
○
○
○
○
×
○
先出願チェック
○
○
×
○
○
○
○
に影響
○
×
×
○
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
ガザ
グルジア
ドイツ
フランス
ドミニカ共和国
エクアドル
エジプト
エチオピア
フィンランド
デンマーク
国名
○
○
*10×
*9×
○
*7○
有無
条文
留保
完全
完全
法制
留保
法制 完全
法制
法制
運用
備考
*1 -
*1 第 8 条 商標登録の拒絶に係る相対的事由
2 )同じ種類の商品又はサービスを指定するために他の者の名義で登録
された又は登録出願された先の商標と同一の若しくは混同を生じさせる程
に類似した又は関連している商標。ただし,当該他の者が当該登録につ
いて書面による同意を与えた場合はこの限りでない。
3 )異なる種類の商品又はサービスを指定するために他の者の名義で登
録された又は登録出願された先の商標と同一の若しくは混同を生じさせる
程に類似した又は関連している商標であって,消費者に誤解を生じさせ,
かつ,その結果他の者の商標の名声を不当に利用し又はその識別性を
害する虞があるもの。ただし,当該他の者が当該登録について書面によ
る同意を与えた場合はこの限りでない。
4 )登録されているか否かを問わず,他の者に属する商品の商標又は標
記であって,商標登録出願の受領日又は優先日において産業財産の保
護に関するパリ条約第 6 条の 2 の意味において工ストニア共和国で周知
のもの。ただし,当該他の者が当該登録について書面による同意を与え
た場合はこの限りでない。
5 )他の者に属する商号と同一の又は混同を生じさせる程に類似した商標
であって,当該商号が,商標登録出願の受領日又は優先日の前に商業
登録簿に記録されており,かつ,当該商業登録簿に注記された当該他の
者の活動分野に,登録出願が行われた商品及びサービスが含まれてい
るとき。ただし,当該他の者が当該登録について書面による同意を与えた
場合はこの限りでない。
*3 第4条(4) 先行商標に類似してはいるものの同一ではない商標は,かか
る先行商標の所有者がその登録に同意した場合に限り登録が認められ
る。なお,かかる同意は条件付とすることができ,またこれを商標委員会
に提出することを要する。ただし,かかる同意が公共の利益に反し,かつ
公衆に混乱を引き起こす虞があると商標委員会が判断する場合は登録
は認められない。
*2 *3 -
*3 -
*3 第14条 (4)乃至(9)については,その他の項目に反さないことを条件に,関
係の権利者が同意するならば商標の登録が認められるものとする。
*2 -
*10 相対的理由に基づく
審査なし
*9 相対的理由に基づく審
査なし
*8 同一・同一は除く
*3 第15条(5) 先願商標又は先願の他の商標権者が後願商標の登録に同意 *7 1999年以降は相対的
している場合は,商標の登録が,(1)乃至(4)の規定に基づいて排除される 理由に基づく審査を行って
ことはない。
いない
*1 -
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
-147-
○
×
○
○
○
×
○
ケニア
クウェート
ラトビア
レバノン
×
*15○
×
*16×
×
×
○
○
日本
ヨルダン
カザフスタン
○
*13○ *14○
○
*12×
×
○
○
○
○
○
×
○
○
イスラエル
イタリア
×
×
*11○ *11○
-
○
○
に影響
○
○
○
-
インドネシア
イラン
イラク
アイルランド
○
○
除去
有無
条文
運用
法制
法制
法制
法制
法制
運用
留保
完全
完全
完全
完全
完全
完全
*3 -
*1 -
*3 *2 *2 -
*3 -
*1 *3 第10条 登録拒絶の相対的理由
(6) 先の商標の商標権者又はその他の既得権の権利者が当該登録につ
いて同意する場合は,本条において商標の登録について妨げるものはな
い。
*3 -
*2 第11条 登録拒絶の相対的理由
( 4 ) 本条の規定は,先の商標又は他の先の権利の所有者が登録に同意
する場合における商標の登録を一切妨げるものではない。その場合,登
録官は,第12条の規定による特別の事情があるものとして当該標章を登
録することができる。
第 12 条 善意の競合使用等の場合の登録
善意の競合使用の場合又は登録官が相当と認めるその他特別の事情が
ある場合には,登録官は,同一又は類似の商品若しくはサービスに係り
(当該商標が登録済か否かを問わず) 2 人以上の商標の所有者による登
録について,登録官が適当と認める条件及び制限があればそれを付し
て,許可することができる。
*2 第14条 第4項乃至第8項の規定にかかわらず、商標権者あるいはその他
の権利者の同意が与えられた場合、標章は登録することができる。
*2 第12条 登録の相対的拒絶理由
(8)先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を
与えた場合には,この条のいかなる規定も,その登録を妨げるものではな
い。
*3 第7条 承諾書
(1)先の権利の商標権者が後願の標識の登録に対して承諾している場合
は,その標識については,第4条及び第5条に従って商標保護を拒絶する
ことはできない。
(2)承諾書は,十分な証拠となる公文書又は私文書として作成された場合
は有効とする。
(3)承諾書は,錯誤,詐欺又は脅迫を理由とする契約の回避のための法
律行為に関する民法典の規定によって争うことができる。その承諾書は,
取り下げることができず,裁判所の判決をもって代えることもできない。
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
○
○
○
先出願チェック
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
アイスランド
インド
ハンガリー
香港
国名
*16 相対的理由に基づく
審査なし
*13 類似の場合、
*14 同一は除く
*15 混同のおそれがある
場合は束縛されない
*12 相対的理由に基づく
審査なし
*11 同一は除く
備考
-148-
○
×
○
×
○
○
×
○
○
○
○
○
×
×
-
○
○
×
×
○
○
○
×
○
○
○
○
○
○
○
○
-
○
○
モナコ
モロッコ
ミャンマー
ナミビア
オランダ領アンティル
ニュージーランド
ニカラグア
ナイジェリア
ノルウェー
パキスタン
パプアニューギニア
パラグアイ
ペルー
フィリピン
ポーランド
ポルトガル
カタール
ルーマニア
○
○
-
○
○
○
○
○
○
○
×
○
○
○
○
×
○
-
○
○
○
○
×
○
○
×
○
○
法制
法制
法制
法制
運用
運用
法制
完全
留保
完全
留保
留保
留保
完全
完全
○
○
法制
○
留保
メキシコ
モルドバ
運用
○
-
○
-
○
-
-
-
○
*1
*3
*3
*2
*3
*2
*2
-
*3 第7条 第6条の規定に記載される商標であっても,先の商標権者又は著
名商標権者の明示的同意がある場合には,登録される。
第133条 保護が第169条(1)(i)の下で終了した場合又は先の権利の権利
所有者が、後願商標に対して保護の権利を承諾する同意を与えた場合、
第132条(1)(iii)の規定は適用されない
*3 第189条 その他の拒絶理由
(2) 商標であって,先の登録商標と紛らわしい程に類似しているが,指定
商品又はサービスの品質について公衆に誤解を生じさせことにはならな
いと思われるものについて,その登録の許可を得るためには,先の登録
についての権利者及び,該当する場合は,その排他的実施権者の許諾を
得ることを必要とする。ただし,これは関連の契約において別段の定がな
い場合に限る。
*1
*3
*3
*2
*3 第14条 ただし,第 1 段落( 4 )乃至( 8 )に掲げた場合において,先使用
権者が承諾し,かつ登録に他の障害がないときは,登録を行うことができ
る。
*1 -
*1 *1 -
*2 -
*3 *2 第7条(9) 第3項及び4項を条件として類似とみなされる商標は権利保有
者の当該標章の登録に熟議された同意がある場合には登録することがで
第127条 相対的拒絶理由
本条の下で商標保護からの排除の根拠は、先出願の出願者又は先行権
利の保有者によってのみ発動されることができる。
*1 -
○
完全
○
-
運用
×
○
-
に影響
有無
条文
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
×
○
×
×
-
除去
先出願チェック
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
レソト
リビア
リベリア
リヒテンシュタイン
リトアニア
マカオ
マレーシア
マルタ
マケドニア
国名
備考
-149-
○
○
×
○
スワジランド
×
スーダン
スペイン
韓国
スリランカ
○
○
○
スロベニア
スロバキア
南アフリカ
?
*17○
*18○
除去
×
○
○
先出願チェック
○
○
○
-
○
?
に影響
○
○
○
×
○
○
○
○
○
有無
条文
法制
法制
法制
法制
法制
法制
運用
運用
完全
留保
留保
完全
完全
留保
留保
完全
備考
*3 第12条( 2 ) ただし,同一又は類似の商品,サービス又は事業活動につ
いての先の商標又は商号の出願又は登録と類似する商標は,出願人が
先の登録の所有者の真正な書面による同意書を提出し,かつ,必要があ
れば混同の危険を防止する適切な措置を講じた場合は,登録することが
できる。
*3 第8条 登録の制限
(2)利害を有する第三者の同意がある場合を除くほか,次に掲げる標章
は,登録することができない。
(a)有効に優先権を主張した者の出願中の標章又はその登録を受けた標
章で同一の商品若しくは当該商標の使用が公衆を欺罔するおそれのある
その他の商品にかかるものを公衆を欺罔するおそれのある方法で模倣す
る標章,
(b)第三者に属する標章でこの国において広く知られているものの公衆を
欺罔するおそれのある方法をもってするその全部又は一部分の複製,模
倣,翻訳若しくは転写を構成する標章,
(c)第三者の権利を侵害し又は不正競争防止法に違反する標章。
*3 *3 第100条 第三者の権利を理由として認容不可能な標章
(2) 登録官は,(1)(a)乃至(e)の規定を適用する上で(1)にいう第三者が当
該標章の登録に同意した事実を斟酌しなければならない。
*2 *2 第3条(2) 先願商標権者または先願優先権を持つ同一標章の出願者が
後願標章の登録に書面による同意を与える場合、第1項の規定は、適用
*1 第10条 登録することができない商標
(14) 第 14 条の規定に従うことを条件として,他人の所有する登録商標と
同一の標章,又は,それと類似するために,登録を求めている商品若しく
はサービス及びその商標が登録されている商品若しくはサーピスと同一
若しくは類似の商品若しくはサーピスについての使用が欺瞞若しくは混同
を生ずるおそれがある標章。ただし,その商標の所有者がその標章の登
録に対し同意する場合は,この限りでない。
( 15 )第 14 条及び( 16 )の規定に従うことを条件として,他人の先願に係
る標章と同一の標章,又は,それと類似するために,登録を求めている商
品若しくはサービス及び当該先の出願がなされている商品若しくはサービ
スと同一若しくは類似の商品若しくはサービスについての使用が欺瞞若し
くは混同を生ずるおそれがある標章。ただし,当該先の出願をした者がそ
の商標の登録に対し同意する場合は,この限りでない。
*3 *17 同一は除く
*3 第8条 登録拒絶の相対的理由
*18 同一は除く
( 6 )先の商標の所有者又はその他の先の権利の所有者が登録に同意を
与える場合,登録官は自己の裁量により,商標を登録することができる。
*3 -
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
×
○
-
○
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
ロシア
サンマリノ
サウジアラビア
シンガポール
国名
-150-
ヨルダン川西岸地区
イエメン
ユーゴスラビア
ザイール
ジンバブエ
×
○
*22○
○
○
○
×
○
○
○
○
×
○
○
×
○
×
○
○
○
○
-
○
○
×
○
○
○
○
-
タイ
トリニダード&トバゴ島
チュニジア
トルコ
トルクメニスタン
タークス・カイコス諸島
ウクライナ
アラブ首長国連邦
英国
米国
ウルグアイ
ウズベキスタン
ベネズエラ
ベトナム
○
○
シリア
台湾
○
○
○
○
○
○
×
○
○
×
○
-
○
×
×
○
○
×
○
×
○
○
*21×
*20×
×
スイス
に影響
*19○
除去
有無
条文
運用
法制
法制
法制
運用
留保
完全
完全
留保
完全
*20 相対的理由に基づく
審査なし
*19 相対的理由に基づく
審査なしに移行予定
備考
*2 *1 -
*1 *1 *3 -
*3 *1 *3 第5条 登録の相対的拒絶理由
( 5 ) 先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を
与えた場合には,この条のいかなる規定も,その登録を妨げるものではな
い。
*3 TMEP§1207.01
*3 -
*22 混同を生じない程度
の類似の場合
*2 第23条1項13号 同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商 *21 旧法
標又は先に出願された商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤
認混同を生じさせるおそれがあるもの。但し、当該登録商標又は先に出願
された商標の所有者がその出願に同意するときは、この限りでない。(互
いの商標及び使用にかかる指定商品又は役務が共に同一である場合を
除く)
*3 -
*3
*3 第14条 もっとも,第1段落(4)乃至(9)並びに第2段落及び第3段落に規定
する事情においては,関連する権利の所有者が同意を与え,かつ第1段
落の規定によるその他の障害がないときは,登録をすることができる。
*1 外国工業所有権法令集(AIPPI)より
*2 各国特許庁Web-siteより((財)知的財産研究所仮訳))
法制/ 留保/ *3 2002年版知的財産法令集(日本国特許庁)より
コンセント制度
○
先出願チェック
E.Horwitz, "World Trademark Law and
Practice"(Matthew Bender, LexisNexis)より
(-:記載なし)
コンセント
コンセント
登録官による
制度
先登録/
引用 登録官
スウェーデン
国名
参考資料Ⅱ-6
コンセントに関する世界各国の商標法条文等(出展は参考資料Ⅱ-5参照)
1.留保型コンセント制度
① バルバドス商標法(1984.1 改正、1985.1 施行)
第 8 条(登録不能標章:類似性)
( 2 )この法律の下で標章を登録することができるかどうかを決定する上で上掲(1)(b), (c),
(d)又は(e)にいう他人であってその権利が当該標章がこの法律の下で登録されるとするな
らば,害せられ又は害せられるおそれのあるものの登録に対する承諾は,当該標章の登録
を許すために斟酌することができる。
② フィンランド商標法(1995.12 改正、1996.4 施行)
第 14 条 (4)乃至(9)については,その他の項目に反さないことを条件に,関係の権利者が
同意するならば商標の登録が認められるものとする。
③ ギリシャ商標法(1994.9 改正、1994.11 施行)
第 4 条(4) 先行商標に類似してはいるものの同一ではない商標は,かかる先行商標の所有
者がその登録に同意した場合に限り登録が認められる。なお,かかる同意は条件付とする
ことができ,またこれを商標委員会に提出することを要する。ただし,かかる同意が公共
の利益に反し,かつ公衆に混乱を引き起こす虞があると商標委員会が判断する場合は登録
は認められない。
④ ノルウエー商標法(1996.12 改正、1997.1 施行)
第 14 条 ただし,第 1 段落( 4 )乃至( 8 )に掲げた場合において,先使用権者が承
諾し,かつ登録に他の障害がないときは,登録を行うことができる。
⑤ ポルトガル工業所有権法(1995.1 改正、1995.6 施行)
第 189 条(2) 商標であって,先の登録商標と紛らわしい程に類似しているが,指定商品又
はサービスの品質について公衆に誤解を生じさせことにはならないと思われるものについ
て,その登録の許可を得るためには,先の登録についての権利者及び,該当する場合は,
その排他的実施権者の許諾を得ることを必要とする。ただし,これは関連の契約において
別段の定がない場合に限る。
⑥ シンガポール商標法(2001 改正、2001.4 施行)
第 8 条(登録拒絶の相対的理由)
( 6 )先の商標の所有者又はその他の先の権利の所有者が登録に同意を与える場合,登録
官は自己の裁量により,商標を登録することができる。
⑦ スリランカ知的財産法(2000 改正)
第 100 条(2) 登録官は,(1)(a)乃至(e)の規定を適用する上で(1)にいう第三者が当該標章の
登録に同意した事実を斟酌しなければならない。
⑧ スペイン商標法(1999.5 改正、1999.5 施行)
第 12 条( 2 )
ただし,同一又は類似の商品,サービス又は事業活動についての先の商標
又は商号の出願又は登録と類似する商標は,出願人が先の登録の所有者の真正な書面によ
-151-
る同意書を提出し,かつ,必要があれば混同の危険を防止する適切な措置を講じた場合は,
登録することができる。
スウェーデン商標法(1996.12 改正、1996.1 施行)
第 14 条 もっとも,第 1 段落(4)乃至(9)並びに第 2 段落及び第 3 段落に規定する事情にお
いては,関連する権利の所有者が同意を与え,かつ第 1 段落の規定によるその他の障害が
ないときは,登録をすることができる。
-152-
2. 完全型コンセント制度
① 英国 1994 商標法(1994.10 施行)
第 5 条 登録の相対的拒絶理由
( 5 ) 先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を与えた場合には,こ
の条のいかなる規定も,その登録を妨げるものではない。
② 香港商標法(2000.5 改正、2003.4 施行)
第 12 条 登録の相対的拒絶理由
(8)先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を与えた場合には,こ
の条のいかなる規定も,その登録を妨げるものではない。
③ 台湾商標法(2003.5 改正、2003.11 施行)
第 23 条 1 項 13 号 同一又は類似の商品又は役務における他人の登録商標又は先に出願さ
れた商標と同一又は類似であり、関連する消費者に誤認混同を生じさせるおそれがあるも
の。但し、当該登録商標又は先に出願された商標の所有者がその出願に同意するときは、
この限りでない。
(互いの商標及び使用にかかる指定商品又は役務が共に同一である場合を
除く。)
④ インド 1999 年商標法(2003.9 施行)
第 11 条(登録拒絶の相対的理由)
( 4 ) 本条の規定は,先の商標又は他の先の権利の所有者が登録に同意する場合における商
標の登録を一切妨げるものではない。その場合,登録官は,第 12 条の規定による特別の事
情があるものとして当該標章を登録することができる。
第 12 条(善意の競合使用等の場合の登録)
善意の競合使用の場合又は登録官が相当と認めるその他特別の事情がある場合には,登録
官は,同一又は類似の商品若しくはサービスに係り(当該商標が登録済か否かを問わず) 2
人以上の商標の所有者による登録について,登録官が適当と認める条件及び制限があれば
それを付して,許可することができる。
⑤ ベリーズ商標法(2000.7 改正、2000.12 施行)
第 37 条(6) 先行商標又はその他の先行の権利の所有者が商標の登録に同意を与えた場合
には,この条のいかなる規定も,その登録を妨げるものではない。
⑥ ブルガリア商標法(1999.9 改正、1999.12 施行)
第 12 条(4) 先の標章の標章権者の同意がある場合は,(1)2.及び(3)の規定は適用しない。
⑦ チェコ商標法(No.441/2003、2004.4 施行)
第 6 条 同一商品または同一サービスに対して他の権利者または出願者に登録または出願
された先願商標と同一である場合、標章は登録簿に登録されない;先願商標権者または出
願者が登録簿に後願商標の登録に書面で同意した場合、これは適用されない。
⑧ デンマーク商標法(2000.12 改正、2001.1 施行)
第 15 条(5) 先願商標又は先願の他の商標権者が後願商標の登録に同意している場合は,
商標の登録が,(1)乃至(4)の規定に基づいて排除されることはない。
-153-
⑨ エストニア商標法(2001.6 改正、2001.10 施行)
第 8 条(商標登録の拒絶に係る相対的事由)
2 )同じ種類の商品又はサービスを指定するために他の者の名義で登録された又は登録出
願された先の商標と同一の若しくは混同を生じさせる程に類似した又は関連している商標。
ただし,当該他の者が当該登録について書面による同意を与えた場合はこの限りでない。
3 )異なる種類の商品又はサービスを指定するために他の者の名義で登録された又は登録
出願された先の商標と同一の若しくは混同を生じさせる程に類似した又は関連している商
標であって,消費者に誤解を生じさせ,かつ,その結果他の者の商標の名声を不当に利用
し又はその識別性を害する虞があるもの。ただし,当該他の者が当該登録について書面に
よる同意を与えた場合はこの限りでない。
4 )登録されているか否かを問わず,他の者に属する商品の商標又は標記であって,商標
登録出願の受領日又は優先日において産業財産の保護に関するパリ条約第 6 条の 2 の意
味において工ストニア共和国で周知のもの。ただし,当該他の者が当該登録について書面
による同意を与えた場合はこの限りでない。
5 )他の者に属する商号と同一の又は混同を生じさせる程に類似した商標であって,当該
商号が,商標登録出願の受領日又は優先日の前に商業登録簿に記録されており,かつ,当
該商業登録簿に注記された当該他の者の活動分野に,登録出願が行われた商品及びサービ
スが含まれているとき。ただし,当該他の者が当該登録について書面による同意を与えた
場合はこの限りでない。
⑩ ハンガリー商標法(1997.7 施行)
第 7 条(承諾書)
(1)先の権利の商標権者が後願の標識の登録に対して承諾している場合は,その標識につい
ては,第 4 条及び第 5 条に従って商標保護を拒絶することはできない。
(2)承諾書は,十分な証拠となる公文書又は私文書として作成された場合は有効とする。
(3)承諾書は,錯誤,詐欺又は脅迫を理由とする契約の回避のための法律行為に関する民法
典の規定によって争うことができる。その承諾書は,取り下げることができず,裁判所の
判決をもって代えることもできない。
⑪ アイスランド商標法(No.45/1997、1997.6 施行)
第 14 条 第 4 項乃至第 8 項の規定にかかわらず、商標権者あるいはその他の権利者の同
意が与えられた場合、標章は登録することができる。
⑫ アイルランド商標法(1996.3 改正、1996.7 施行)
第 10 条(6) 先の商標の商標権者又はその他の既得権の権利者が当該登録について同意す
る場合は,本条において商標の登録について妨げるものはない。
⑬ マケドニア工業所有権法(2002.6 改正、2003.7 施行)
第 127 条 相対的拒絶理由
本条の下で商標保護からの排除の根拠は、先出願の出願者又は先行権利の保有者によって
のみ発動されることができる。
⑭ モルドバ商標法(2003.11 改正、2004.1 施行)
第7条(9) 第3項及び4項を条件として類似とみなされる商標は権利保有者の当該標章
の登録に熟議された同意がある場合には登録することができる。
-154-
⑮ ポーランド工業所有権法(2000.1 公布、2001.8 施行)
第 133 条 保護が第 169 条(1)(i)の下で終了した場合又は先の権利の権利所有者が、後願商
標に対して保護の権利を承諾する同意を与えた場合、第 132 条(1)(iii)の規定は適用され
ない。
⑯ ルーマニア商標法(1998.4 改正、1998.7 施行)
第 7 条 第 6 条の規定に記載される商標であっても,先の商標権者又は著名商標権者の明
示的同意がある場合には,登録される。
⑰ スロバキア商標法(No.577/2001)
第 3 条(2)(1)の規定は,先の商標の所有者又は同一の標識について先の優先権をもって
なされる登録出願の出願人による後の標識の登録に対する書面上の同意がある場合は適用
されないものとする。
⑱ 南アフリカ 1993 年商標法
第 10 条 登録することができない商標
( 14 )第 14 条の規定に従うことを条件として,他人の所有する登録商標と同一の標章,
又は,それと類似するために,登録を求めている商品若しくはサービス及びその商標が登
録されている商品若しくはサーピスと同一若しくは類似の商品若しくはサーピスについて
の使用が欺瞞若しくは混同を生ずるおそれがある標章。ただし,その商標の所有者がその
標章の登録に対し同意する場合は,この限りでない。
( 15 )第 14 条及び( 16 )の規定に従うことを条件として,他人の先願に係る標章と同
一の標章,又は,それと類似するために,登録を求めている商品若しくはサービス及び当
該先の出願がなされている商品若しくはサービスと同一若しくは類似の商品若しくはサー
ビスについての使用が欺瞞若しくは混同を生ずるおそれがある標章。ただし,当該先の出
願をした者がその商標の登録に対し同意する場合は,この限りでない。
⑲ スーダン商標法(1969 年改正、1969.9 施行)
第 8 条(登録の制限)
(2)利害を有する第三者の同意がある場合を除くほか,次に掲げる標章は,登録することが
できない。
(a)有効に優先権を主張した者の出願中の標章又はその登録を受けた標章で同一の商品若
しくは当該商標の使用が公衆を欺罔するおそれのあるその他の商品にかかるものを公衆を
欺罔するおそれのある方法で模倣する標章,
(b)第三者に属する標章でこの国において広く知られているものの公衆を欺罔するおそれ
のある方法をもってするその全部又は一部分の複製,模倣,翻訳若しくは転写を構成する
標章,
(c)第三者の権利を侵害し又は不正競争防止法に違反する標章。
-155-
3.留保型コンセント制度:米国商標審査手続便覧
Trademark Manual of Examination Procedures (TMEP) - 3rd Edition, Revision 2, May
2003 (USPTO)(商標審査手続便覧 第3版 改訂2版 2003 年 5 月)
((財)知的財産研究所仮訳:
「産業財産権分野の制度(商標制度)改正に係る調査研究報告書」
(平成 15 年度
特許庁工業所有権制度問題調査報告書)
((財)知的財産研究所、2004 年 3 月)242 頁)
1207.01 (d) (ⅷ) 同意書
一般に「同意書」という語は、一方の当事者 (例えば同一の標章又は類似の標章の登録出願人) が標章を使
用及び/又は登録することに反対当事者 (例えば先行する登録名義人) が同意した場合、若しくは他の当事者
が同一の標章又は類似の標章を使用及び/又は登録することにそれぞれの当事者が同意した場合を指す。
商標法第 2 条 (d) に基づいた登録の拒絶を克服するため、又は登録の拒絶が予期される場合、出願人とし
ては同意書を提出する方法が考えられる。同意書を提出した場合、審査官は契約書及び記録に含まれる他の
一切の証拠について吟味し、混同を生ずるおそれについて判定する。審査官は同意書を提出するよう働きか
けてはならない。
同意の形式は様々であり、これが交わされる状況も無限に多い。しかしながら、第 2 条 (d) が言及してい
る混同を生ずるおそれに関係する他のあらゆる重要な事情とともに、ある一つの要因について考慮しなくて
はならない。In re N.A.D. Inc., 754 F.2d 996, 224 USPQ 969 (Fed. Cir. 1985)。
In re E. I. Du Pont de Nemours & Co., 476 F.2d 1357, 1363, 177 USPQ 563, 568 (C.C.P.A. 1973) におい
て米国関税特許控訴裁判所は以下のように述べている。
「市場での使用方法について最も熟知しており、混同を避けることに最も関心のある人々が混同を避ける
目的で契約を交わした場合、この事実は証拠として明らかに重要である。このように直接利害関係のある人々
が混同されないと主張している場合、少なくとも主観的には混同が生ずるとする見解を維持することは困難
である。混同を生ずるおそれがあるのではないかという単なる推測では、現場にいる人々の提出した混同を
生ずるおそれがないとする議論の余地のない証拠を覆せる可能性は低い」
。
単なる「むき出しの」同意ではない同意書の場合、通常は、混同を生ずるおそれが存在しない理由、及び
/又は公衆が混同するのを回避するために両当事者が交わした取り決めが詳細に述べられている。In re
Permagrain Products, Inc., 223 USPQ 147 (TTAB 1984) (契約する際に混同を回避する狙いで市場を限定し
なかったため、その同意書が「裸である」と認定された)。
連邦巡回控訴裁判所は、同意書をかなり重視すべきであり、十分な理由なく、すなわち他の要因に基づい
て混同を生ずるおそれがあると明白に認定せざるを得ない場合を除き、特許商標庁が真正の利害関係当事者
に代わって混同を生ずるおそれについて判断を下すべきではないことを明らかにしている。Amalgamated
Bank of New York v. Amalgamated Trust & Savings Bank, 842 F.2d 1270, 6 USPQ2d 1305 (Fed. Cir.
1988)、Bongrain International (American) Corp. v. Delice de France Inc., 811 F.2d 1479, 1 USPQ2d 1775
(Fed. Cir. 1987)、そして In re N.A.D. Inc., 754 F.2d 996, 224,USPQ 969 (Fed. Cir. 1985)。
In re Mastic Inc., 829 F.2d 1114, 4 USPQ2d 1292 (Fed. Cir. 1987) (出願人が標章を取引上は使用していな
く、同意書に矛盾する記載が含まれていたため、登録の同意を得ていたにもかかわらず、登録の拒絶を支持
した) と比較せよ。
審査官は適切な同意書を極めて重視すべきである。出願人と登録名義人とが信頼性のある同意書を交わし
ている場合、審査官は、混同を生ずるおそれに関する自らの判断を介入させるべきではなく、またあらゆる
点を考慮すると、混同を生ずるおそれに関する認定に決定的な影響を及ぼすような要因はこれ以外に存在し
ない。
同意書は、
「同時使用 (concurrent use) 」契約書とは異なる。
「同時使用」という言葉は、登録に対する地
域的な限定を意味する技術的な用語である。同時使用については TMEP §§1207.04 et seq.を参照。
-156-
参考資料Ⅱ−7
( To be typed onto the headed paper of ABC Company )
イギリス
Letter of Consent
Date: September 29 , 2004
Address
XYZ Company
Dear Sirs,
UK Part of International Registration No.
“ A’B’C’ “
of XYZ Company
As the proprietor of British Registration No.
for the mark “
hereby consent to the use and registration of the trademark “
of International Registration No.
A’B’C’
ABC
“ we
“, the subject
, in respect of the following goods or similar
goods as may be limited or otherwise adjusted by the UK Registry, in the course of
examination of the UK part of this International registration.
Class 7: Metal and plastics working machines, in particular numerically controlled
plotters as parts of machines for processing of metallic and non-metallic
flexible-joint and rigid-joint materials.
Class 9: Plotters, in particular plotters for drawing; digitizers, apparatus for graphical
data processing for the input and output of geometrical data for graphics,
cartography and navigation, in particular computer peripherals; measuring
and controlling apparatus and calculating machines for plotters; surveying
apparatus and instruments.
Class 16: Writing and drawing boards.
Yours faithfully,
ABC Company
Signature
−157−
オーストラリア
[LETTER TO BE TYPED ON LETTERHEAD OF ABC Company]
[DATE]
XYZ Company
Address
Dear Sirs,
XYZ Company
Australian Trade Mark Application No.:
“ XYZ
“
-andLetter of consent by ABC Company
As owner of Trade Mark Registration No.
in Class 9, we hereby consent to the use
and registration of the marks in the above trade mark application in respect of the goods
specified in that application, provided the goods exclude “cameras including video cameras,
digital cameras and film cameras and films and recording media for cameras”.
Yours faithfully,
ABC Company
Signature
−158−
( Letterhead of ABC Company )
ノルウェー
CONSENT DECLARATION
The undersigned, ABC Company
Registration No.
A’B’C’
ABC
, Tokyo, Japan, owner of Iranian Trademark
, consents to use and registration of the trademark
as depicted below, applied for registration under Iranian Trademark
Application No.
, by XYZ Company
goods in class l6.
MARK
( Photocopy)
Place / date
Name and signature:
Title:
Firm:
−159−
, Norway, covering
フィンランド
DRAFT
To be retyped on the letterhead
of ABC Company
LETTER OF CONSENT
We the undersigned, ABC Company, Country
Community Trademark Registrations No.
ABC
, owners of the
hereby consent to the
registration and use of the mark A’B’C’ in Finland in the name of A’B’C’ Company,
Country
,according to trademark application No.
following goods in
class 12.
Class 12:
Snowmobiles and structural parts therefor.
Place and date
Signature
−160−
in respect of
スウェーデン
(Letterhead
of ABC Company)
LETTER OF CONSENT
We the undersigned, ABC company
No.
ABC
Japan, proprietor of Community Trade Mark
, hereby declare that we have no objections to XYZ Company
, Japan, obtaining registration in Sweden of the trademark A’B’C’, as per trademark
application No.
in respect of the goods “snowmobiles and structural parts therefor” in
class 1 2.
Place and date
ABC Company
Signature
Name
−161−
UAE
( Letterhead of ABC Company)
XYZ Company
Address
February 25, 2002
Re:
XYZ
United Arab Emirates
XYZZ
United Arab Emirates
Dear Sirs:
We, ABC Company
of Trademark application No.
and XYZZ
, hereby consent to registration
and
No.
for, respectively,
XYZ
in the United Arab Emirates with respect to
pillows, cushion and bumper guards for furniture in International Class 20.
We understand these applications are in the name of
XYZ Company.
Very truly yours,
ABC Company
Signature
−162−
EU
(To be typed onto the headed paper of ABC Company)
XYZ Company
Address
Dear Sirs
LETTER OF CONSENT
We, ABC Company
ABC
German registration no.
, are the registered proprietors of Benelux trade mark registration no.
, French registration number
ABC
and
ABC
We hereby consent to the use and registration of A’B’C’
by XYZ Company
In the European Community in respect of handheld electronic translators.
Yours faithfully
Signed for and on behalf of ABC Company
Signature
−163−
コスタリカ
[TO BE TYPED ON HEADED NOTEPAPER OF ABC Company
AND SIGNED BY AN AUTHORIZED OFFICER OF THE COMPANY]
TRADE MARK APPLICATION “ A’B’C’ “ IN THE NAME OF XYZ Company
IN CLASS 24
As proprietors of Costa Rica Trade Mark Registration No.
ABC
registered on December 18,
1998 we hereby consent to the use and registration of the Trade Mark Application A’B’C’
in Class 24 in respect of the following specification goods:
Textile and textile goods; bed and table wear; towels and cloths; flannels, wash
mitts and face cloths, sheets and blankets, duvet covers, bed covers, pillow covers,
table covers, table mats, coasters, napkins, blinds, curtains, drapes, furnishing
cover.
Yours faithfully
ABC Company
Signature
−164−
香港
Date:
The Registrar of Trade Marks
Hong Kong
TRADE MARK CONSENT
1.
We, ABC Company
following Hong Kong Trade Mark Registration:Trade Mark
Registration No.
Filing Date
Class
Goods
2.
:
:
:
:
:
, are the registrant of the
ABC
9
television
receivers,
radio
recorders
with
players,
calculators,
cassette
electric
We are aware of the following Hong Kong Trade Mark Application in the name of
XYZ Company
:Trade Mark
Application No.
Filing Date
Class
Goods
:
:
:
:
:
A’B’C’
9
Class 9
scientific, nautical, surveying, photographic,
cinematographic,
optical,
weighing,
measuring,
signalling,
checking
(supervision), life-saving and teaching
apparatus and instruments; apparatus and
instruments for conducting, switching,
−165−
transforming, accumulating, regulating or
controlling
electricity;
magnetic
data
carriers, recording discs; automatic vending
machines
and mechanisms for coinoperated
apparatus;
cash
registers,
calculating machines, data processing
equipment
and
computers;
fireextinguishing
apparatus.
3.
We hereby consent to XYZ Company
registering the following Trade Mark in Hong Kong:
Trade Mark
Application No.
Filing Date
Class
Goods
:
:
:
:
:
using and
A’B’C’
9
Class 9
scientific, nautical, surveying, photographic,
cinematographic,
optical,
weighing,
measuring,
signalling,
checking
(supervision), life-saving and teaching
apparatus and instruments; apparatus and
instruments for conducting, switching,
transforming, accumulating, regulating or
controlling
electricity;
magnetic
data
carriers, recording discs; automatic vending
machines
and mechanisms for coinoperated
apparatus;
cash
registers,
calculating machines, data processing
equipment
and
computers;
fireextinguishing
apparatus.
SIGNED for and on behalf of
ABC Company
By
Full Name :
Position :
−166−
資料編Ⅲ
Ⅲ章に関する資料
参考資料Ⅲ-1
「小売り」のサービスマークに対する業界のヒアリ
ングまとめ
参考資料Ⅲ-2
国際分類注釈の変更点
参考資料Ⅲ-3
小売業商標をサービスマークとしての登録について
の検討課題に対する意見(一覧表)
参考資料Ⅲ-4
「小売り」について各国の取扱表(1)
参考資料Ⅲ-5
「小売り」について各国の取扱表(2)
参考資料Ⅲ-6
「小売り」についての各国のアンケート結果
参考資料Ⅲ-7
Trademark Acceptable Identification of Goods & Services
[RETAIL] (USPTO)
-167-
参考資料Ⅲ-1
「小売り」のサービスマークに対する業界のヒアリングまとめ
項番
日時
1
2003/07/11
13:00~15:00
業界名称
意見
電子情報技術産業 小売業は営んでいないため特に意見なし。外国出願については、各
協会
社とも小売商標をとっているため、国際調和の観点からは導入した方
が便利となる。
2
2003/07/17
15:00~17:30
日本化学繊維協
小売りのサービスを認めると、流通業者は1つ登録を取ればいいが、
会、日本紡績協会 我々は商品についての登録の他にさらにもう1つ登録をとらなければ
ならなくなる。繊維の企業では、原料と完成品とのバッティングの問題
の他に、小売りとのバッティングも入ってくるとなると頭がいたい。 国
際商標登録出願の指定商品の表示の基準が緩い。国内出願なら6条
の対象になるものでも登録になっている。例えば、「小売り」も登録に
なっていると聞いている。
3
2003/09/24
14:00~15:00
(社)日本専門店協 現在は商標を複数の区分で取らなければならないので手間が係る。
会
商号との関係で、商号と商標で同じもので商売をしている専門店が多
い。しかし、この頃、ブランド名で商売する傾向にあるが、ブランドで商
標が取れるのか。現在のように複数類取らずに、1類のみで済むので
あれば、費用も安く済むので合理的で助かる。
また、現在、衣類だけ販売している店はあまりない。トータル的に、バ
ンドバック、アクセサリー等販売しているのが通常。
今の登録制度であれば、衣類、バック、アクセサリーの場合、3類につ
いて出願しなければならないが、1類ですむのであれば、とても助か
る。
また、例えば、販売している商品を拡大するときも、後に、バック、アク
セサリーについて商標出願して権利が取れないなどということがなく
なるので助かる。
4
2003/09/26
11:00~12:00
日本百貨店協会
35類の小売業ですべてが保護されるのであれば、ありがたい。個別
の商品について更新しなくてもいいから、手間も費用も省くことが可能
となることはありがたい。商標を防御の観点から取っていた区分につ
いて、小売業が登録を認められたことにより、もし、今まで取っていた
商品商標について取らなくなったらどうなるのか。やはり、金には替え
られないものがあるのではないか。おそらく、「小売」が35類に認めら
れても、商品商標の類については、ある程度期間、更新登録をしてい
くであろう。
商品を集合体として販売する場合には1つの類だけ登録すればいい
ので賛成できる。35類があるから他類(商品分類)が抑制できるかは
疑問。類似の範囲に35類が出てこられたらどうしようもない。個別の
商品を取り扱っていない百貨店にとっては35類だけとればよいと考え
るのではないか。流れとしては良いと思う。ただし、捨てた商品分類が
とても怖い。だから、既登録の商品区分を捨てることはしないと思う。
もちろん、35類も取ると思う。先ほど説明した、戦略広場などは35類
だけでもいいと思う。
-169-
「小売り」のサービスマークに対する業界のヒアリングまとめ
項番
日時
5
2003/09/26
14:00~15:00
業界名称
意見
Sコンビニエンスス 現在、各区分毎に商標登録を行っている状態であり、これは手間が
掛かり、管理が非常に大変。小売業が「小売」の分類に入れば、現在
トア
35,000品種について160個もの商標登録があるが、これがおよそ
第1回目
6個位の商標登録にまとまり非常に助かる。最近はモノとサービスと
の区分が難しくなってきている。モノを売ること+α=小売りサービス
になってる。Sコンビニエンスストアでは電力使用料支払いサービスの
分野の範囲が拡大してきている。時代背景としてサービス重視になっ
てきている。ただ、特許庁の立場に立つとメーカーと小売りが一緒に
なった場合にはどうなるのか。識別性の問題等で困るのではないだろ
うか。
将来的にひとつで足りるのは非常に楽である。最近では「カルフール」
のように商標登録をしない小売りもあるようだが。今回のように特許
庁が小売業のことを考えてくれることは非常にうれしい。悲願であっ
た。
スーパーD
「小売」をサービスマークに入れることは、昔からの悲願。現在は、対
象の商品はすべて商標登録していかなくてはならないことが問題。一
定の範囲で全部取ろうとすると類似関係が出てくるので、どうしても一
部取れない商品区分が出てくる。その部分については、使用許諾を
受けてすべての区分が取れるよう努力している。商標の登録、更新に
多額のコストが掛かる。35類の1区分で済むのであれば非常に助か
る。商標を使用するものとしては「店舗名称、売場名称、インターネッ
ト、通販、セール名称」。商標権者として望む権利は、①「小売」の役
務で権利を独占できること。②第三者に不使用審判に対しても対抗で
きること。「小売」のサービスマークを導入するにあたり留保して欲しい
点は、①「小売」の指定役務で登録した商標権者は「小売」という役務
において独占権を有すること。②「商品商標」と「小売」の権利範囲を
明確にすること。③「小売」役務追加に当たって特例措置を設けるこ
と。(サービスマークを導入した時と同様の措置が必要。)
6
2003/10/01
10:00~11:00
7
2003/10/01
14:00~15:00
日本知的財産協会 ●知財協としては、メーカーが多いので、「小売り」にはあまり関心が
高くない。ただし、インターネット等において仮想店舗で商品を販売す
ることが行われている現状があり、このようなバーチャルな「小売り」
については、関心があることから、いろいろな角度からの「小売り」の
検討は必要だと思っている。
●ニース協定でも「小売り」については、各国バラバラな対応をとって
おり、認めている国もあれば、日本のように認めていない国もある。必
ずしも導入しなければならないものではないと思う。
●「小売り」をサービスマークとして認めることについて法律を改正す
る必要はないと思う。政令・省令でも対応できるのではないか。
●役務とはなにかということであるが、転々流通するのが商品という
解釈があるが、よく見かける光景として、駅前でティッシュを配ってい
るがこれはどう考えるのか。このティッシュについている商標は配られ
た後、無償でも商標として機能するのではないか。
また、おまけでも大量に配布すれば、そこについている商標は、商標
として機能するのではないか。
商標法上の「商品」「役務」は時代に応じて変更すればよいものであっ
て、役務を独立、有償と理解しなくても識別標識として機能していれば
役務として認めてもいいのではないか。
●小売りを導入する場合、例えば、百貨店のみ対象になるということ
はなく、すべての小売業を対象とすべきである。また、区別する必要も
ないと思う。
8
2003/10/02
10:00~13:30
Sコンビニエンスス 個人的な考えとして、総合小売りは他の分類とサーチする必要がな
い。また、「小売り」で35類を取るには余りにも範囲が広すぎるため、
トア
具体的な冠(コンビニエンスストアによる小売り、洋服の販売(卸売業
第2回目
を除く。)を付けて「小売り」として登録した方がよいのではないかと考
える。
-170-
「小売り」のサービスマークに対する業界のヒアリングまとめ
項番
日時
9
2003/10/14
11:00~12:20
業界名称
意見
(社)日本食品特許 ● 日本食品特許センターのメンバーには小売業者は入っていない
センター
が、反対の声はない。
● 小売りには、百貨店やメガネ屋、靴屋等があると思うが、表記の方
法が気がかりである。
● 食品業界では、インターネット上での健康食品の販売が行われて
いるが、実際第35類の「商品の販売に関する情報の提供」で、小売
業のサービスがカバーされているのか疑問の声もあり、サービスマー
クとして認めて欲しいという意見もある。
● 条文(定義)に小売を入れる法改正をするのか。
● 役務と商品は類似する(2条5項)との規定もあるので、類似すると
いう考えには賛成できる。但し、影響も大きいので当方としてもよく検
討したい。
10
2003/10/15
14:30~15:40
化粧品メーカー
具体的に「・・・の小売り」という風に表示させるということか。現行の
サービスマーク導入時には「リース」の取扱いの問題があったが、そ
れと同様の問題点があるということだろうか。全体の流れとして、小売
りを認める、という方向は理解できる。
11
2003/10/16
10:10~11:15
電機メーカー
認めるべきだと思う。その他特にコメントなし。
12
2003/11/20
14:00~15:50
(社)日本専門店協 私のところは、アパレルであり、自分のところで製品も作っている。専
会
門店だと商品のほか35類でとらなければならないのであれば、「小
売」をサービスマークとして登録するメリットはない。「小売」の登録が
できるとなったとき、今までの商品の権利との関係はどうなるのかが
問題である。
百貨店と単品を扱う店との境が難しい。「小売」がサービスマークで登
録できれば歓迎するが、いろいろと問題がある。
「小売」が35類の役務で採択される場合、導入時において商品で権
利を持っている者と新規出願者が競合した場合には、前者を優先登
録する等の方策を考慮して欲しい。
現行制度の下では、「小売」業者の人は自分の商標を守るために必
要なら1類から34類に登録するという対応を継続してよいということ
か。それは、無駄にはならないということで良いか。
13
2004/03/17
14:00~15:00
T百貨店
百貨店がどうして「小売り」から抜かれるのか、ということについては
商標が何であるかという側面が問題となってくる。商標とは商品につ
けるものであるばかりでなく、看板や、包装紙等にも使用している。ど
こまで商品商標の使用を及ばせるかの問題である。百貨店はオリジ
ナル商品が少なく、様々なものを販売しているが、現在の解釈では商
品商標の使用として認められている。実際問題としても客は商品値札
にT百貨店と書いてあるかどうかでT百貨店を認識しているのでなく、
という店、すなわち場所としてT百貨店等百貨店を認識している。現
在、T百貨店では全分類での商標権を取得しているが、実際、鉄鋼に
ついての商標権など本当に必要かどうかが疑わしいものもある。しか
し、商標権を取らなかったら取らなかったで、第三者に商標権を取得
される心配も生じるだろう。百貨店としてサービスマークもあるので、
商品に直接ついているのが、商品の使用かサービスマークのどちら
になるのかという境界線を厳格に引いていただきたい。オールマイ
ティーの制度がひとつ(35類)増えたところで我々にとっては何も変ら
ない。「小売り」をサービスとして認めるだけの先行導入は良くない。
商品との関係で商標権が守られるのではなく、「小売り」というサービ
スで、すべての商標権が認められる制度にして欲しい。
-171-
「小売り」のサービスマークに対する業界のヒアリングまとめ
項番
日時
14
2004/03/31
13:30~14:30
業界名称
意見
Sコンビニエンスス ○権利範囲 今までは、特許庁から1から34類の商品で商標を取
ればいいだろうと言われていたが、サーチにかけるエネルギーやコス
トア
トもかかる。そもそも、商品は転々流通するものであり、コンビニエン
第3回目
スストアで行っているサービスはそれとは異なるものである。小売
サービスについては、使用の範囲(対象範囲)を「看板、扉、壁面、
袋、ギフト用包装紙、値札、領収書等の取引書類、ちらし(広告)」と限
定すれば、既存の商品・役務商標と棲み分けができるのではないか。
サービスの出所(でどころ)をはっきりさせるものに限定することによ
り、出所の混同が防げるのではないか。クロスサーチの必要はないの
ではないか。「小売りサービス」を第35類で登録を得てもそれが著名
商標でない場合は取り扱う商品の類での登録を防げないことが考え
られるが、出所の混同が起きそうな場合には、第24条の4の「混同防
止表示請求」のような規定を設けて守ることができないか。事後的な
措置となるが仕方がない。
○小売の表示方法 小売サービスの役務表示については、業態限
定をすると良いのではないか。例えば「百貨店としての小売」。イギリ
スのような「…取り揃え…」という方法もまさに業務を表しているので、
良いだろう。
○ 商品商標の権利範囲との境界 「小売」が導入された場合、たとえ
ばコンビニで販売されている商品へ使用されている商標が、商品商標
か役務商標なのかは、消費者の視点で判断すべきである。
○ その他 昔は、コンビニはナショナルブランドの商品を並べていた
が、今は50% 以上プライベートブランドの商品(お弁当等)を並べて
いる。「Sコンビニエンスストア」ブランドについては、コンビニにしか使
わせていない。物流には別のマークを使う。アメリカの本家でも、50
坪(日本なら35坪)程度のものは「Sコンビニエンスストア」で、エキス
プレス用の店は「クイック○○」というブランドである。「Sコンビニエン
スストア」の商標を全国で使用できるようにするために、商標権以外
に商号を全国で押さえるのには苦労した。海外でも苦労している。
-172-
-173-
This class does not include, in particular:
-the activity of an enterprise the primary function of
which is the sale of goods, i.e., of a so-called commercial
enterprise;
-services such as evaluations and reports of engineers
which do not directly refer to the working or management of affairs in a commercial or industrial enterprise
(consult the Alphabetical List of Services).
-the bringing together, for the benefit of others, of a
variety of goods (excluding the transport thereof),
enabling customers to conveniently view and purchase
those goods;
-services consisting of the registration, transcription,
composition, compilation or systematization of written
communications and registrations, and also the exploitation or compilation of mathematical or statistical data ;
-services of advertising agencies and services such as
the distribution of prospectuses, directly or through the
post, or the distribution of samples. This class may
refer to advertising in connection with other services,
such as those concerning bank loans or advertising by
radio.
This class includes, in particular:
第35類
技術者による評価及び報告のような,商業若しくは工業に
従 事す る 企 業 の運 営 又 は 管 理 に直 接 関 係 の ない サー ビス
(サービスのアルファベット順の一覧表参照)
この類には,特に,次のサービスを含まない。
主たる業務が商品の販売である企業,すなわち,いわゆる
商業に従事する企業の活動。
広告代理店が行うサービス並びに案内書の直接の又は郵
便による配付及び商品見本の配付のようなサービス。この類
は,他のサービスに関連する広告,例えば,銀行貸付に関す
る広告又はラジオによる広告について適用する。
通信又は登録に係る文書の記載,転記,作成,編集,整理及
び数学的又は統計的な資料の作成又は編集を行うサービ
ス。
他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く),顧客が
これらの商品を見,かつ,購入するために便宜を図ること。
この類には,特に,次のサービスを含む。
を主たる目的とするもの及び広告事業所であって,すべて
の種類の商品又はサービスに関するあらゆる伝達手段を
用いた公衆への伝達又は発表を主に請け負うものが提供
するサービスを含む。
第35類には,主として,人又は組織が提供するサービスであ
って,
(1) 商業に従事する企業の運営若しくは管理に関する援助又
は
(2) 商業若しくは工業に従事する企業の事業若しくは商業機
能の管理に関する援助
注釈
広告
事業の管理
事業の運営
事務処理
《国際分類第 8 版》
Class 35 includes mainly services rendered by persons
or organizations principally with the object of :
(1) help in the working or management of a commercial
undertaking, or
(2) help in the management of the business affairs or
commercial functions of an industrial or commercial
enterprise,
as well as services rendered by advertising establishments
primarily undertaking communications to the public,declar
ations or announcements by all means of diffusion and conc
erning all kinds of goods or services.
Explanatory Note
Advertising;
business management;
business administration;
office functions.
CLASS 35
国際分類注釈の変更点
削
除
変
更
Under “This Class does not include, in particular:”
Delete: “- the activity of an enterprise the primary
function of which is the sale of goods, i.e., of a so-called
commercial enterprise;”
「この類には、特に、次のサービスを含まない。」の、
「主たる業務が商品の販売である企業、すなわち、いわゆ
る商業に従事する企業の活動。」を、削除する。
GTP-23-7
Under “This Class includes, in particular:”
Replace: “- the bringing together, for the benefit of
others, of a variety of goods (excluding the transport
thereof), enabling customers to conveniently view and
purchase those goods;”
with: “ - the bringing together, for the benefit of
others, of a variety of goods (excluding the transport
thereof), enabling customers to conveniently view and
purchase those goods; such services may be provided
by retail stores, wholesale outlets, through mail order
catalogues or by means of electronic media, e.g., trough
web sites or television shopping programmes.”
「この類には、特に、次のサービスを含む。」の、「他人の
便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)顧客がこれら
の商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること。」を、
「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)顧客
がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図るこ
と。当該のサービスは、小売店、卸売店、カタログの郵便
による注文、またはウェブサイトまたはテレビのショッピン
グ番組などの電子メディアによって提供される場合があ
る。」に置き換える。
CE-003(GB-017 HR-002)
《国際分類第 9 版》
参考資料Ⅲ-2
日本弁理士会商標委員会の意見
本委員会の意見
(a)商標法にいう「役
務」とは、「他人のため
にする労務又は便益で
あって、独立して商取引
の目的たりうべきもの」
と解されているが、ここ
でいう「小売業商標」は、
この概念に本当に該当
しないのか。そもそも、
商標法上の商品・役務は
なぜ「独立して商取引の
目的たりうべきもの」と
いう要件が必要なのか。
逆に、商標法にいう「役
務」の解釈は本当に正し
いのか。「Retail store
services(小売店サービ
ス)」
・
「Retail services
(小売りサービス)」と
「小売り」は指定役務と
して見た場合、同じ意味
として議論できる用語
なのか。
(参考1)これまでの我
が国の「小売り」に対す
る考え方
商標法第2条第1項で
商標について「業として
商品を生産し、証明し、
又は譲渡する者がその
商品について使用する
もの」及び「業として役
務を提供し、又は証明す
る者がその役務につい
て使用するもの(前号に
掲げるものを除く。)
」と
定義している。
商標法における「役務」を「他人のために行
う労務又は便益であって、独立して商取引の目
的たりうべきもの」と解した場合、小売りサー
ビスの本質は、
「顧客の商品購入の便宜(顧客の
ニーズに応じ、高級品、実用品、特殊用途の商
品、ベビー商品、LLLサイズの商品など、顧
客の希望する商品を取り揃え、商品の選択・購
入の便宜)を図るための品揃えというサービス
を提供すること(又は、~のための品揃えをし
○独立要件について
・2条1項2号に、
「業として役務を提供し」と
書いてあるが、これをどう解釈するか。普通、
この「業として」というのは、一般的に、継続
的に対価を得て顧客に役務を提供することと
考えられ、対価を得て顧客に役務を提供するこ
とは、その役務が独立した役務であることが前
提にあると思う。取引の対象になるものは独立
性を有すると考える。そうすると、この「役務」
は、商取引の目的たりうべきもの、すなわち、
て、顧客に販売するというサービスを提供する
独立性を有する役務というものと解される。弁
こと)」と考えることができ、その便宜提供に対
理士会の検討結果のところでは、商標法の役務
する対価は、そのサービスの提供を受ける個々
を、独立して商取引の目的たりうべきものと解
の消費者が支払う商品購入価額に上乗せされる
釈した場合であっても、小売りサービスは成り
コミッション(販売により得られる利益)であ
ると考えることができる。このように考えれば、 立つのではないか、それ自体、商取引の目的に
なっていると考えられると書いてある。しかし
小売りサービスは、
「他人のために行う便益の提
≪参考個別意見≫
ながら、例えば小売店で個々の物の販売がされ
供であって、それ自体が商取引の目的」となっ
・2条1項1号は「業として商品を生産し、証 ていると考えられる。
る場合に、そこにサービスがついているという
明し、又は譲渡する者がその商品について使用
のでも、顧客と店との間では、物について取引
ま た 、「 小 売 店 サ ー ビ ス (Retail Store
をするもの」(傍点は筆者)と「ついて」とな Services)」というも「小売りサービス(Retail
がなされているという認識が一般的であって、
っており、「商品に使用をする」とはなってい Services)」いうも、提供されるサービスは、上
物に1つのサービスが付加されたものを買っ
ないことから、そもそも小売が1号に該当し、 記 の 意 味 に お い て 同 じ で あ る が 、「 小 売 り
ているということは余り認識されていない。物
したがって2号には該当しないとの解釈は誤 (Retail)」という場合には、「販売(譲渡)」に
は対価を伴って取引されるわけだが、その対価
りではないか。「三越」や「ダイエー」といっ 重きがおかれることになると思われる。
の中に原価以外のコスト部分と適正利潤部分
た標章が「その商品について」使用するもので
がある。小売りサービスによる利益部分、対価
はないことは明らかである。
(但し、PB 商品は
部分は、恐らくは両当事者間では適正利潤なり
除く)
原価以外のコストの面に含まれているという
・形式的には、接客、品揃え、陳列サービスは
のが一般的ではないかと思う。そうすると、小
個々に独立の取引の対象となっていないから
売店で物の売買がされる場合は、サービスの提
左記役務の解釈には含まれないとの考え方は
供が仮にコミッションとして価格に上乗せさ
あり得る。小売業商標の場合は、商品の小売に
れているとしても、それは独立の取引の対象に
際して提供する上記サービスのトータルでこ
なっているとはいえないのではないかとは考
れら役務を提供する自他役務識別商標となっ
えるのだが、そういう観点から、この記載部分
≪まとめ≫
「独立取引性」は必ずしも要件とする必要は
ない。(「小売業商標」の機能に着目すると、そ
こで販売されている商品についての識別標識で
はなく、接客や品揃え、陳列等を中心とした小
売業者自身のサービスを識別し選択するための
標識であり、通常の役務商標と何ら変わりない
出所識別機能、品質保証機能、広告宣伝機能と
いった商標の基本的機能を果たしており、小売
業者に係る信用が化体するものであるから役務
商標として保護すべき。)
「Retail store services(小売店サービス)
」
「Retail services(小売りサービス)」と「小
売り」が同じ意味かどうかは定義次第なので明
言はできない。
検討事項-1
(1)小売業商標に係る役務の特定
小売業商標とサービスマーク、役務(サービス)及びサービスマークの使用との関係等を明らかにするとともに、いわゆる「小売りサービス」はいかなる
内容なのかを検討する。そしていかなるものとして登録するのかを検討する。
具体的な検討事項
日本知的財産協会商標委員会の意見
小売業商標をサービスマークとしての登録についての検討課題に対する意見(一覧表)
参考資料Ⅲ-3
-174-
-175-
小売業者が使用するマ
ークは、業として商品を
譲渡すること、すなわ
ち、商品の販売を行う者
がその商品に使用する
標識であるから商品商
標であり、サービスマー
クではない。
なお、商品の販売に際し
て行う商品の品揃え、商
品の陳列ないし管理等
は、通常はその商品の販
売に付随して行われる
ものであって、それ自体
が取引の対象となるも
のではないので、商標法
上の役務とはみないと
の立場をとっている。
( 参 考 2 )「 特 許 庁 編
工業所有権法逐条解説
第16版」より抜粋
<商品>商取引の目的
たりうべき物、特に動産
をいう。
<役務>他人のために
行う労務又は便益であ
って、独立して商取引た
りうべきものをいう。
ていることから「独立した取引の目的」要件は
緩和ないしは考えないで保護を認めても良い
のではないか。
・「小売業商標」が定義されていない以上、「こ
の概念」に該当しないか否かとの議論は不毛で
はないか?
・小売業商標に財産的価値を認めてこれを保護
しようという気運があることが本検討の発端
なのではないか?そうであれば「この概念」に
属するように「小売業商標」を定義づけるか、
それが無理なら法律を変えるということでは
ないか。
・
「独立」要件については、例えば「飲食物の提
供」、
「デザインの考案」といった役務について
も、
「飲食物の調理→調理した料理の譲渡」、
「デ
ザインの発案→発案したデザイン(商品)の譲
渡」といった全体を連続した行為としてとら
え、また、対価の面でも前者と後者を切り分け
ることなく、保護の対象としている実態もある
ことから、必ずしも「独立」要件が必要とは思
われない。
・小売りに係る役務とは「不特定多数の需要者
に対して他者の商品・役務を購買する場を提供
するサービス」と定義してはどうか。そうする
と「業として役務を提供し、又は証明する者が
その役務について使用をするもの」という定義
にも合致するのでは。
は理解できなかった。
→弁理士会として、独立の役務で考えるのであ
れば、今の取引性なりが当然問題になってくる
と思う。そうすると、どこにそれを求めるかと
いうと、個々のそれぞれのサービス、例えば品
揃えなり陳列なり接客なり、地方発送だとか領
収証の発行だとかにしか求めようがないと考
える。商品で考えれば、それは商品を売るとな
ったときの付随サービスになってしまう。そう
すると、その辺を単体で1個1個見るのではな
くて、小売りというそこのところの、いわば事
業体として見たときにどうなのかというとこ
ろで独立性を求めないと、独立役務要件は満た
さないのではないかということで考えた次第
である。
・独立して商取引の対象となり得るか、否かと
いう議論についていえば、独立して商取引の対
象になるかどうかという場合には2つの場合
が考えられる。すなわち、サービスの提供を受
ける側との関係で独立して取引の対象となる
という場合と、サービスを提供する側同士で品
揃え等のサービスが一つの経済的価値を持っ
ていて、それを使わせたり、使わせなかったり
することに一つの独立的な経済価値を認める
場合の2つがある。ここで問題になっているの
は、サービスを受ける側との関係で、独立の取
引の対象になるかどうかということである。そ
の場合に、サービスを提供する側同士の間で品
揃え等のサービスが独立の経済的価値を持つ
かどうかということは、よくわからないが、少
なくともサービスを受ける側との関係で、独立
した取引対象になっているかどうかという観
点から考えると、日本の社会の中では、このよ
うなことが社会通念にまでなっているという
のはかなり難しいのではなかろうかという感
じがする。
・仮に小売りのサービスマークを認めることに
なったときに、独立要件が求められたら、商標
法にいう小売と商標法上認められない小売り
が出てくる。小売りというのは、付随するサー
ビスとして独立性が認められないものと認め
-176-
られるもの。そうすると、50 条当たりの取消
審判との関係でいうと、小売りというサービス
でないものについて使用していることになる。
それだと、えらく混乱が生ずる。
→そこのところも、今の商品商標の登録の問題
と、今、それが役務商標になったときの問題と、
そこのところの、要は取消審判で使用と認めら
れる、認められないが、そういう意味では分か
れてしまうわけ。そこのところは、1号、2号
の関係ではないですけれども、商品商標でも役
務商標でも使用として認められるような状況
というか、それをある程度つくっていくという
か、明示するというか、そういう形をとらない
と、今の1号、2号とも関連してくると思うの
ですけれども、そこは検討しなければいけない
だろうということで同じような形で出ている。
・法改正なしで仮にこういうことがいくとした
とき、恐らく東京高裁は判断を変えない。でも、
法的から見て、ああ、変わったのだなと思われ
るところがあれば、裁判所は変えるだろうと思
うが、そこのあたりが少し透明感がないような
話になってしまうような気がする
・2条1項1号と2号との関係は、商品の販売
を含むかどうか。しかしながら、独立取引性の
要件が問題になっているとすると、商品の販売
を含むかどうかは、実は関係ない話だと思う。
含むとしても、そのサービスに独立取引性がな
いとすれば、結論は同じだから。だから、1号、
2号とか小売りサービスの中に販売まで含む
かどうかという問題と、小売りサービスに独立
取引性の要件を考えるかということは、実は別
問題だと思う。問題は、独立の商取引性の要件
を認めるかどうかだが、認めるとすると、小売
りサービスは通常考えられている独立の商取
引対象とは、恐らくちょっといえないと思う。
だから、何とか割り切ってそう考えてしまう
か、それがちょっと解釈では無理とか運用では
無理ということであれば、あえてこれは特に含
むのだというようなことを法改正することし
かないのではないかと思う。
・シャディの判決からいうと、独立要件は要ら
-177-
(b)特定の店舗内にお
ける商品の品揃え、陳列
等の顧客に便宜を図る
ためのサービス自体が、
≪まとめ≫
「独立して商取引の目的たり得る」との意見
が大半
上記コメント(a)参照
ないのではないかという説もあるが、(私はち
ょっと違うと思っているが)独立要件を外した
らどうかというところも議論してもらったら
どうか。
→独立要件を外すのは、現行法のもとでもとい
う意味ですね。
→そういう説もあって、だから、シャディ事件
の特許庁と裁判所がおかしいというのもあっ
たのではないか。
→現行飲食物の提供とかデザインの考案とか
というのがある。例えば飲食物の提供である
と、調理して、調理した料理を譲渡する行為を
いうわけだが、私たちがお金を払うときに、そ
れは調理してくれたことに対して払っている
のか、調理してでき上がった料理をもらうとき
の対価として払っているのかというのは、そう
明確に切り分けできるわけでなく、一連の行為
としてとらえているのだろうと思う。デザイン
の考案にしたってそうだと思う。そうすると、
独立要件が本当に必要なのかどうかというの
が、現在においてもちょっと疑問があるのでは
ないか。
・
「独立して」という文言は法律には書いていな
い。
・付随的なものは従来認めない、含めない、考
えでずっと来たことから、そういうものを法改
正とは関係なく、運用だけで簡単にやって良い
ものかどうか。
・マドプロ出願に関しては、35類の注釈の表
示「the bringing together, ~」の形で認め
ているが、これはどうとらえて認めているの
か。独立した商取引として考えられるので認め
ているのかどうか。
→注釈のこの表示であれば35類に含めると
いうことになっているところ、そのままの表示
なものですから現実には通っているというこ
と。
・コンビニでは陳列などものすごいノウハウに
なっておりサービスマークであってもよいの
ではないかと思うが、百貨店だとわかりにく
い。百貨店の場合、サービスに対価があるかと
-178-
(c)当該役務の具体的
な内容は、「特定の商品
の品揃え、陳列等、顧客
の便宜を図るためのサ
ービス」であって、「商
近年、独立した経済価値
のある役務として認め
得る状況が形成されて
きているといえないか。
そして、これをもって、
独立して商取引の目的
たりうるものといえな
いか。
≪まとめ≫
役務商標として保護すべき実態は、単に「商
品の販売」ではなく、そのために提供される便
益であるという考え方には賛成。
「商品の販売」を含まないという整理でよいか
≪参考個別意見≫
・あえて、商品の販売(譲渡)と切り分けて観
念する必要は感じない。
「商品の販売」と「小売りサービス」とは、
別異の概念である。
「商品を販売する」ということは、単に、有償
で、顧客に商品を譲渡するということであり、
「小売りする」というサービスは、有償で、顧
問われると、商品の単価があってサービスの単
価ありということにはならない。切り分けてい
るわけではない。一体包装紙で三越は何を担保
するのかというと、品質、適正な表示、あるい
は品質がふさわしい、他人の権利を侵害してい
ない商品を置いてある、そのような顧客サービ
スとなっている。商品に関し、三越に来て買っ
た以上は三越の責任。
・お中元なんかを考えると、三越の包み紙を買
いに行っているようなところもある。
・マークが表象している対象は何なのかの視点
での検討はしっかりやらなくてはならない。
・品揃え・陳列等のサービスがあるサービス業
者において、逆に個別商品商標というのがある
のかないのかの観点があり、それは残るのでは
ないか。
・品揃えや顧客の販売に係る便宜をコアにして
その部分に権利を認めた方が良いというのが
小売業商標を保護するかどうかというところ
の議論で出てきたことが発端。それが独立して
商取引の目的たりうべきものかどうかの観点
で考えてしまうとその対価があるかないかの
話しになり堂々巡りになる。日本のブランドを
高め、経営の資源として考えることが知財推進
計画などでいわれているところなので、その観
点から保護すべきものなのかどうかの議論を
しても良いのではないか。そういう意味からす
ると、コンビニで品揃えがいいとか、夜に行っ
ても買えるというのも確かに価値のあるよう
なサービスだし、そこで使っている標章という
のは保護しなくてはいけないのかなと思う。三
越で買えば真正品がいつでも買える、また包み
紙にオーソリティーがあるといったようなこ
とに期待している。それであれば、そこにも価
値を認めていいのではないかという考え方に
なる。
○商品の販売(譲渡)を含むか否か。
・弁理士会の中では、①品揃え等をして他人の
便宜に供するためのサービス、そこまでを小売
りだという考え方と、②そういう揃えるのは最
終的に小売りをする、そこが最後にあるわけな
-179-
品の販売」は含まないと
いう整理でよいか。
ここでいう、「顧客の
便宜を図るためのサー
ビス」には、他にどのよ
うな内容のサービスが
考えられるか。例えば、
「接客」「地方発送の取
次ぎ」「贈答用の包装」
「店内の雰囲気」「商品
の真正性」等はどうか。
客に対する商品購入の便宜を提供する(又は、
ので、その販売まで含む、(売った後のアフタ
ーサービスも入る)の2つに大きく考えが分か
~を提供した上で販売する)というサービスで
れている。
ある。したがって、その行為が、現実の売り場
・コンビニでやっていることは、ここからここ
で行われようと、インターネット販売、テレビ
まではサービス業、ここから売るところはサー
ショッピング、カタログ販売を利用する場合で
ビス業から外すというのは、全体としてとらえ
あろうと、「商品を有償で譲渡」ということに
る以外にないと思う。その業務が今、問題にな
主眼をおけば、それは「販売」であり、「顧客
≪参考個別意見≫
っているのだから、その業務を途中で切ること
・時間的な制約や空間的な制約の面で顧客に便 に対する商品購入の便宜の提供」に主眼をおけ
は、難しいのではないか。やはり揃えてから売
宜を図っている。(いろいろなお店に出向くこ ば、それは「サービス」である。
るところまでいってしまわないといけないの
また、「顧客の便宜を図るためのサービス」
となく、限られた時間の中で商品を選択し、購
ではないか。
には、ここで例示されている「接客」「地方発
入することができる。)
・小売業を営まない者にとっては、
「商品の販売」 送の取次ぎ」「贈答用の包装」「店内の雰囲気」 ・販売を含む、含まないというのは、含んだら
は含まないとした方がうまく棲み分けができ 「商品の真正性」等も含まれると考えられるが、 どうなるのか、また、含まなかったらどうなる
のかというのが、よくわからない。含まないと
るのだと思う。しかし、販売を含まないと、小 小売りサービスのとらえ方いかんにより、これ
しても、結局、販売する行為が2条1項1号に
売業者は結局商品商標も持たざるを得ないの らは付随的なサービスになると思われる。
該当するといえば、全部そこに入ってきてしま
ではないか?そうだとすると本制度の意義が
うわけ。だから、今、小売業商標として問題に
薄れることにはならないか?
なっているものは、1号を何とか考えない限り
・「顧客の便宜を図るためのサービス」には、挙
は、結局、同じことということではないか。1
げられているものの他「アフターサービス、価
号と2号の重複部分を全く排除しなければい
格、立地、対応の速さ、駐車場の広さ」等々も
けないということからそうやっているわけで、
考えられる。
重複部分が一部分でもあれば、常に1号の方に
・ディスプレイの考案を行う役務も存在すると
いってしまってくるということか?
思われるので、これとは区別される必要があ
→そういう理解。
る。
・小売業での役務の提供、つまり、品揃えして
・いかなる小売業者も購入者に何らかの便宜を
どうとかこうとか商品を仕入れも違うから安
図っているのであり、
「商品の販売を含まない」
くなるとかいろいろある、そこの部分だけは2
とした場合に小売業に係るいかなる態様の商
号でいって、売る行為の方は分離して1号に入
標が除外されるのか理解できない。除外される
れるか。今も独立なんていう言葉がないけれど
ものがないのであれば、何のために商品の販売
も、仮に入れないとすると、主体の方は2号で
を含むかどうかを問題にしているのか理解で
いって、最後のところだけ1号でやるというの
きない。当該役務が販売行為そのものを意味す
か。
るのではないということについては賛成。
→第2条1項2号の括弧書き「前号に掲げるも
のを除く」を取りさえすれば、問題ないと思う。
→一番いいのは1号から譲渡を取ればいいの
ではないか。括弧書きを取るなんていう間接的
にやらないで。
→生産は別の人だけれども、それを買ってき
て、自分の商標をつけて自分の商品として売る
人が、それは商品商標であることは明らかなの
で、その人のものは商品商標として保護してあ
どうかについては次のように意見が分かれた。
a)そもそも切り分けて観念する必要はない
b)「商品の販売を含む」とすると商品商標との
区別が不明確となるので、
「商品の販売は含まれ
ない」とすべき
-180-
げなければいけない。だから、譲渡がきいてく
るというか、意義があるところはあると思う。
・商品について使用するのか、役務について使
用するのか。それは需要者の認識で判断してい
く。100 円ショップを考えた場合、売っている
ものについて、例えば 100 円ショップの商標が
ついた包み紙を使っていても、それは需要者の
目から見たときに、包まれている商品の品質と
かを表するものとして機能しているかという
と、そうは考えられなくて、むしろ 100 円で何
でも買えるというその店で買った。その役務の
提供を受けた印として使っているように認識
されるのではないかと思う。そうすると、同じ
販売でも、販売というのがたまたま2号につい
ても入ってくるかもしれないが、1号には当た
らない販売業務というサービスを提供してい
る場合があり得るのではないか。
・何も譲渡、譲渡といわなくても、役務を全体
として見れば、役務を提供して、その役務につ
いて使用するもの、小売りしたところだけを取
り上げなくたって、分離しなくたっていいと思
う。2号でいうのだっていいはず。
・これは2つに分けて商標の定義をしているた
め。産構審の話では、商標の定義を1つ置くだ
けという考えもでている。僕はそういう立場で
はないのだけれども、何かそういうような話も
あるということになると、ここがまとまってし
まうと、そういうこともあり得るわけ。
・法律の改正をするかどうかというよりも、小
売りサービス業をどういうものとしてとらえ
るかというのが一番重要。そういうものも入る
ように定義を変えてもいいし、別にこれだって
構わないと思う。それはまたちょっと話は別
で、小売りサービス業をどういうふうにとらえ
るかというのが問題。売るところまで一緒にと
らえないと、何か分けるのはおかしいような気
がする。
・顧客力と販売力と商品力の3つの力を三越と
しては考えている。商品力というのは、個々の
取り入れた商品に三越というプライベートブ
ランドをつけるか、あるいはそのほか三越が企
-181-
画した商標登録をしているようなブランドを
つけていくか。これは三越として責任を持って
販売していこうというPB戦略のものもある。
顧客力は当たり前のことだが、お客様をセグメ
ントしたり、あるいは拡大していったりという
ふうなこと。最後に残っている販売力。この販
売力が落ちている店は淘汰されていってしま
う。ここが一番問題になっている。だから、百
貨店の中ではこの3つプラス接客が基本理念
であり、分けるわけにはいかない。個々の商品
にマークをつけるというより、グループで名前
をつけることが最近よくある。この売り場の名
称とか、この売り場が戦略商品、戦略売場にな
っている。個々の商品の奥行きは大したことな
いが、面としては非常に広がりを持っている。
そういったものにつけていくところは、個々の
商品が、例えば衣料品であったり、ハンドバッ
グであったり、化粧品とかアクセサリーであっ
たり、いろいろな既定商品の類があるのだが、
そういったものに対しては1つの何かまとま
りでやっていく。(昨年の特許庁のから意見が
あったらというときに)そういうところに小売
りサービス業というのを三越としてはとらえ
られないかなと思った。だから、それは商号三
越というのではなくて、1つのそういう売場名
称として小売りサービスというものが1つ認
められれば、25 類、16 類、18 類と 14 類とか、
あるいはその中にショッピングが入っていっ
た場合は、お菓子、パンがあって、30 類とか
29 類、そういうもろもろの商標を取得してい
く煩わしさが緩和されるのかなというふうな
ことも去年は考えてみた。
→売場単位とかという意味は、商品の品揃えと
か購入の便宜とか、そこまでの話ではなくて、
そこをもちろん含むのだけれども、品揃えと
か、商品の選択とか、顧客に対する陳列の仕方
とか、そこまではもちろん含むけれども、そこ
からもう1つ先の物を売るところもイメージ
するわけですね。
・小売りサービスは、物を当然販売する。販売
してはいけないのではなくて、販売はするが、
-182-
サービスのサービスたるゆえんはどこにある
かということである。商品の販売そのものは今
まであったわけで、サービスマークとして認め
るところのポイントは、こういう買い物のため
に品を揃えたり云々というところにサービス
の本質があるということである。国際的なサー
ビスの記載の仕方に沿って、販売を外したらい
いと考える。
・小売りサービスが販売を含むか含まないか、
どちらでもよい。法改正の要否だけが問題であ
る。実態的には変わらない。
・アメリカは、Retail store services の中に販
売は入っているかという質問に対して、販売は
入っていない、それは「商品商標」という回答。
また、主要国の中で、販売が入っているという
回答してきた国はない。諸外国では、小売は
Retail store services、Retail services と
いう表示で通っている。その表示が一体何なの
かということで、いろいろな質問を諸外国にし
た。もしかしたら store とか store services
という文言がついているところに意味がある
のではないか。Retail store services と小売
は同じ意味として議論できる用語なのかとい
うのはそういう意味。(弁理士会さんはちょっ
と誤解されているよう)我々、日本語で小売と
いってしまうと、販売とか譲渡が入ると考える
が、よその国がやっているのは、単なる retail
ではなくて、Retail store services。その意
味でちょっと違う。諸外国では販売は入ってい
ないということで理解されていると考えられ
る。あくまでも販売は入っていない。ここで
Retail store services で保護しようとしてい
るのは、顧客に商品選択の便宜の提供、と考え
ると、物すごく整理がしやすい。
・譲渡を含めるかどうかということだが、ここ
は多くの委員が一定の流れの中でとらえてい
るというか、少なくとも利用者としては、販売
の提供の直前までの品揃えとかそこまでだけ
ではなさそうな意見が多いような気がする。だ
から、ここの委員会がどういうまとめ方をする
かわからないが、少なくとも声からすると、そ
-183-
(d)現実の売り場があ
る場合だけでなく、イン
ターネット、テレビ、カ
タログを利用した「顧客
の便宜を図るためのサ
ービス」も、同様に考え
られるか。
(e)
「総合的な小売業」
(百貨店、コンビニエン
スストア等)のみ認める
のか、「単品の小売業」
(靴屋、洋服屋等)も認
めるのか。この場合、具
体的に、「総合小売り」
と「特定小売り」とを区
上記(c)で述べたように、現実の売り場がある
場合だけではなく、インターネット、テレビ、
カタログを利用した「顧客の便宜を図るための
サービス」も同様に考えられるものである。
≪まとめ≫
「単品の小売業」についても認めるとの意見
が大半。
・(単品小売りの場合)裁判所は、かなり厳しく
上記のように考えれば、百貨店、コンビニエ
商標は需要者に対する出所の誤認混同を防ぐ
ンスストア等の総合小売業と、靴屋、洋品店等
のが目的ではないかということで、クロスサー
の個別商品の小売業とを、商標登録の指定役務
としてみた場合、差別する必要はないと考える。 チはやるのが必要だということと、条文上は類
似する関係になるわけだから、法律を無視して
≪参考個別意見≫
もらっては困るということもあり、幾ら特許庁
・単一の商品の場合は複数のブランド(製造元)
がクロスサーチをやらなくても、裁判所に行っ
に係る商品を扱っている必要はある。
≪まとめ≫
同様に考える。
ういう声が聞こえるということ。
→商品の販売を一部に含むが、販売のところは
付随的なものだから、その形もあり得る。
→そういうこと。だから、2号で、今のままで
もいける。
・この図でいうと、商品の販売は小さくて、実
際には付随的に行われるbのところが多い、こ
ういう(3)のようなイメージかなと思ってい
た。斜線は付随的にというか、サービスの部分。
商品の譲渡の部分が斜線のない部分だと思う
のだが、皆さんのお話を聞くと、こういうよう
なところでこういうサービスもある、cを見る
ということに聞こえる。
→cというのは、商標から見たときにはそんな
ようなに見える。だから、それで権利をとった
ときに、権利はどこまでですかというと、斜線
のbのところ。今までの商品と商品に付随する
役務との関係が全く逆転した形ではないか。
→そうだろうと思う。だから、そこのところを、
商品の譲渡のところで権利をとりたい人は商
品商標をとられると思う。だから、それはどう
いう権利の行使をしたいのか、そこで分かれて
くるような気がする。商品を譲渡するというの
は、要するに提供しているそういう状況は全部
含むわけだから、そこの部分の権利行使はでき
るわけ。品揃えとか説明とか、説明なんかも当
然入る。
-184-
別することはできるの
か。
・
「総合小売り」と「特定小売り」とに明確な区
別が可能かは不明。
たらやるぞといっている。
→いや、それはちょっと違う。つまり、2条の
5項は、商品と役務の間では類似関係で含まれ
ることがあるものとする。だから、絶対にしな
ければいけないとかなんとかというわけでは
ない。私自身はクロスサーチの問題が当然出て
くると思うので、差し当たりは総合的な小売業
だけに限ってもいいのではないか。単品の小売
業と総合的な小売業を区別する理論的根拠は
ないが、実務上の審査上の便宜から差し当たり
総合的な小売業についてのみ、そういうサービ
スマークを認めるということはあってもいい。
これは政策的な問題で、そこは弾力的に考えれ
ばいいと思っている。
・知財協で議論になったのは、総合小売りの場
合に不使用取消をどう考えるかという点がち
ょっと議論になって、例えばほうきを買ったと
したときに、総合小売りで不使用取消がかかっ
たときに、ほうきを除くでほかが生きるのでな
くて、総合小売りである程度のものがちゃんと
そろっていない以上、不使用取消がかかった
ら、権利そのものがなくなるのだろうという格
好にした方がいいのではないか。その辺がちょ
っと議論になった。だから、総合小売りといっ
ている以上、ある程度ちゃんと物がそろってい
て初めて総合小売なのだろう。ある商品を扱っ
ていないときに、不使用がかかったら、そこを
除くと括弧で落ちるだけでは、それはいけない
のではないの。だから、総合小売りというと、
では、最低これとこれとこれと、ある程度あれ
しなければいけないねとか、そういうのがちょ
っと議論になっている。総合小売りと、単品と
いったら1つの種類でもいいということ。分け
られないことはないのでしょうけれども、で
は、総合って何なのだろうということが議論に
なってきてしまう。
→総合といったからといって、すべてのものと
考えると、ほうきがなかったらだめということ
になりそうだが、弁理士会がおっしゃってい
る、百貨店だとかスーパーマーケット、ディス
カウントストアというような形で表記するこ
-185-
とを認めれば、常識的に考えて、このぐらいそ
ろっていればというふうなことで落ちつくと
思う。総合といったって、常識的にある程度判
断されるのではないかなという気がする。
・ここはユーザーニーズが一番重要。八百屋さ
んは、商品商標をとっていたら、小売りサービ
スでとり直すだけではないか。1個だけで何の
問題もない。ところが、百貨店とかは、大きく
取得、維持管理に貢献する。ユーザーニーズを
できればいいのではないか。
・百貨店とかコンビニとか、総合的な小売りと
いうところは基本的にはニーズは高い。ただ、
単品の小売りを認めろという意見は、総合小売
りを認めて、単品小売りは認めないという理屈
の整理が難しいかなということだろうと思う。
商品の品揃えとか陳列ということを保護する
ようになれば、当然単品の商品を扱っている店
舗でも、その種の保護すべきサービスはあり得
るということ。本当にニーズだけでいくのであ
れば総合小売だけでいいのかもしれない。
・総合小売の場合は、現在既に商品商標をとっ
ている場合が多いと考えていい。ところが、単
品の場合はとっていない場合が相当ある。つま
り、パン屋とか八百屋とか、そういうところで
商品商標をとっているのはまずないと思う。そ
うすると、単品小売までやるとなると、当然サ
ービスマークを入れるときのように、経過規定
を相当整理しないと、かなり混乱することはあ
りえる。つまり、使っていない小売屋があって、
後からとった、ぶつかっただの何だのというこ
とになってくると、かなり混乱することがある
けれども、総合小売の場合、既に商品商標をと
っているので、そういう混乱は相当少ない。
・サービスマークができたころには、今度登録
されますといって、随分経済的な面も考えて、
相当な宣伝が行われたようだが、それは事実上
の問題だから何ともいえないが、そんなに心配
しなくても、今とっていない人は、むしろとら
なくても大丈夫ですよといえば、私はそういう
宣伝をした方がいいと思う。それから、百貨店
で今まで商品商標をとっているからいいでし
-186-
(f)法改正は必要か。
・第 2 条第 1 項「商標の
定義」の規定は、改正す
る必要があるのか。
・その他の規定(例えば、
「使用」の定義等)の改
正は必要があるのか。
・商標法施行規則別表の
第 35 類に、例示するだ
けでは足りないのか。
・法律改正をしなければ
ならないとすれば、どの
ような規定振りにすれ
ばよいか。
・「ESPRIT事件」
の高裁の判断では「(小
売りサービスを役務と
みるかどうかは)立法論
でなければ解決されな
い」趣旨の判断が示され
たが、現行法規の解釈の
下でも、
「小売業」を「役
務」と解釈する余地は残
されているのではない
かと考える。(12年度
知財研調査研究:内外商
標法における商標登録
要件の解釈及び運用に
関する調査研究報告書)
(g)経過措置は必要
か。
≪まとめ≫
混乱を避けるため、経過措置が必要との意見
≪参考個別意見≫
・35 類への例示で足りる。
・ESPRIT 事件でも「一般に小売業においては、
店舗設計や商品展示がそれ自体顧客に対する
便益の提供という側面を有しており、また、店
員による接客サービスも、それ自体としては顧
客に対する労務又は便益の提供に当たるとい
うことができる。」と判示していることからも
役務ととらえることは可能と考える。
≪まとめ≫
定義規定については、小売の問題の観点から
は、改正の必要はないと考える。
ただし、経過措置の導入のために政省令以外
に商標法の改正が必要であれば別。
経過措置が必要か否かという点は、上記法改
正の必要性と併せて検討されなければならない
法改正(商標法自体の改正)が必要か否かと
いう点については、意見が分かれるところであ
り、この点については、
①サービスマーク導入時に、このような役務が
潜在的に含まれていたか否か、
②含まれているとした場合に、政策的観点から
その登録を認めなかったのか否か、
という点をいかに考えるかにより、その結論が
異なってくると思われる。
ょうといっているが、新しいところがとろうと
するととれない。あちこちにもう商品商標があ
って。私はそれ自体が1つ問題だと思う。もう
たくさんとられてしまっていて入れない。ほか
の国ではとっているのだが、日本では商標がと
れないというのがある。
・不使用の問題なんかもあるが、総合小売りか
単品小売りかということは、単純にどちらかを
認めるという問題だけではなくて、クロスサー
チの問題や、そういう経過規定や、既存の小売
店に及ぼす影響とか、そういうことを総合的に
見て考えて決めなければならんだろう。
-187-
≪参考個別意見≫
・経過措置等の特段の手当てをせずにある日突
然登録を認めるのであれば、混乱や無用な係争
が生じないようルール作りと事前説明が必要
ではないか
・既制度への影響・小売業商標出願同士での調
整要否について検討の上、不要ということであ
れば経過措置に固執するものではない。
・既存の小売業者の保護の観点からも経過措置
が必要
が多かった。
問題であるが、法改正を必要とするときには、
経過措置も当然に必要となるはずであり、法改
正が必要ないとしたときには、経過措置も必要
ないということになると思われる。
なお、経過措置を設けるとした場合、現在マ
ドプロ出願において既に認められている「~の
陳列・品揃え」についての登録をどのように扱
っていくのか、その調整を図る(明確にする)
必要があると思われる。
(2)商標権の特定と指定役務の表示の在り方
小売業商標の指定役務とその他の指定商品・役務の表示とのバランスを考慮しつつ、小売業商標のサービスマークとしての指定役務の表示の在り方を検討する。
具体的な検討事項
(a)「小売り」に係る ≪まとめ≫
小売りサービスを「顧客の商品購入の便宜(顧
いかなる権利をサービ
客のニーズに応じ、高級品、実用品、特殊用途
検討事項1(2)(d)にて検討
スマークとして認める
の商品、ベビー商品、LLLサイズの商品など、
のか。どのような指定役
顧客の希望する商品を取り揃え、商品の選択・
≪参考個別意見≫
務の名称で登録すれば、
購入の便宜)を図るための品揃えというサービ
・国際商品分類や小売りサービスを役務として
他人との権利が問題と
ス(又は、~のための品揃えをして、顧客に販
認めている国の規定を参考として検討するが、
なった場合、権利範囲が
「○○○の商品小売販売に際して、係る商品の 売するというサービスを提供すること)」と解
曖昧でないといえるか。
・現行法でも小売業の商
標をサービスマークと
して保護することは可
能ということであれば、
特段の経過措置は不要
でよいか。
(ちなみに現在、国際商
標登録出願(マドプロ案
件)の審査では、
「retail
service」等の表示は認
めていないものの、
「the
bringing together, for
the benefit of others,
of a variety of goods
(excluding the
transport thereof,
enabling customers to
conveniently view and
purchases those goods」
等の表示は認めてい
る。)
・第35類で登録を認め
る役務名称の例示を国
際分類第9版への対応
として改正予定(平成1
9(2007)年1月1日施
行)の商標法施行規則別
表の改正に盛り込むこ
とのみにより経過措置
も設けずに解決を図る
ことはできないか。
・現行法では保護できな
いとすれば、どのような
経過措置が適当か。
-188-
前述のように、小売りサービスは、単なる「商
品の販売」とは次元の異なった別異の概念であ
る。したがって、両者の概念が明確になってい
る限り、「~の小売り」「~の卸売り」という
表示は認められるべきであり、具体的な指定役
務の表示としては下記が適当ではないかと考え
る。
すれば、登録された商標に与えられる権利の範
囲は、係るサービスの範囲になると考えられる。
(靴屋、洋服屋等)も認
めるのかの検討を踏ま
え、それらの指定役務の
表示は、どうあるべき
か。
(d)小売業商標に係る
指定役務の表示に関す
≪まとめ≫
賛成意見が多かったが、取り扱う商品を具体
・各種商品の総合小売業
百貨店
い。「商品の販売」を含まないとするのは、実
スーパーマーケット
態に照らした場合にむしろ不自然な感すらあ
ディスカウントストア
る。
コンビニエンスストア etc.
・1(c)同旨。
「小売りから商品の販売を除く
のは不自然」に賛成する反面、「商品の販売」
を含めると既制度への影響が懸念される。これ ・個別商品の小売業
食料品小売業
を解決する為に、①自ら製造する商品を販売す
家電製品小売業
る行為、他人の製造する商品を販売する行為、
酒類小売業
に分けることはできないか?また、②小売りと
日用品小売業
は、
「商品の販売」と「商品の品揃え、陳列等、
家庭用薬剤小売業 etc.
顧客の便宜を図る為のサービス」とが渾然一体
となっており、単なる商品の販売とは別物と解
・メールオーダー、テレビショッピング、イン
することは無理か?
(c)
「総合的な小売業」 ≪まとめ≫
ターネット販売
(百貨店、コンビニエン
例 :メールオーダーによる(個別商品)
「総合的な小売業」と「単品の小売業」とを
スストア等)のみ認める 特に区別する必要はない。指定役務の表示につ
の小売業
のか、「単品の小売業」
いては検討事項1(2)(d)にて検討
(登録しようとしてい
品揃え、陳列等、顧客の便宜を図るためのサー
る商標は、何と何を識別
ビス」程度のかなり限定した記載を要求する。
するためにあるのかを
考えたときに商品・役務
をどう指定することに
より最善の商標権とな
りうるのかという問い
に真正面から答えられ
ることを一番に考える
べきではないのか。)
(b)
「小売りサービス」 ≪まとめ≫
には「商品の販売」を含
役務商標として保護する対象は「商品の販売
まないのであれば、当該
に係る便益等の提供」と考えるので、それがわ
役務の適切な表示は、ど
かるような表現にすべき。
うあるべきか。
単に「~の小売り」
「~の卸売り」は認めない
恰も「商品の販売」を意
ことでよいとの意見が大半
味するような「~の小売
り」とか「~の卸売り」
≪参考個別意見≫
という表示は認めない
ということでよいか。
・
「商品の販売」を含まないとする必要は感じな
-189-
る具体的運用案の提示
指定役務の表示として、
「(A)における(B)」
の形を基本として採用
する。
(ア)(A)への挿入許
容例
①百貨店、②スーパーマ
ーケット、③コンビニエ
ンスストア、④ディスカ
ウントストア、⑤DIY、
⑥ドラッグストア、⑦衣
料品店、⑧食料品店、⑨
家電量販店、⑩酒類量販
店、⑪日用品店、⑫その
他、特定商品を固定的に
想起しない販売店の種
類の総称
(イ)(B)への挿入許
容例
①「他人の便宜のために
各種商品を揃え(運搬を
除く)、顧客がこれらの
商品を見、かつ、購入す
るために便宜を図るサ
ービス」②「小売りサー
ビス」(不適当と考えら
れる場合、「各種商品の
提供」などはどうか)
(ウ)「(A)における
(B)」と同等に考えら
れるもの
①「メールオーダーによ
るカタログを通じた各
種商品の小売りサービ
ス」②「電気通信手段に
よるカタログを通じた
各種商品の小売りサー
ビス」③「テレビショッ
ピングによる各種商品
の小売りサービス」④
「メールオーダーによ
るカタログを通じた各
種衣料品の小売りサー
ビス」⑤「電気通信手段
によるカタログを通じ
≪参考個別意見≫
・単に「小売り」は不可とすべき
・取り扱う商品を具体的に表示させたうえで、
該当する商品商標とのクロスサーチを行うべ
き
的に示すべきとの意見もあった(知財協商標委
員会はメーカーが多く、商品商標と同一又は類
似の小売商標が登録・使用されると商品商標の
希釈化、誤認混同が生じるおそれがあることを
懸念する意見があった)。小売商標を使用してい
る小売関係業界の要望・生の声を再確認したい
との意見もあった。
-190-
きないか。登録する商標
(標章)が商標権として
いかなる指定商品・指定
役務になっていれば、侵
害訴訟等(審判も含む。)
の紛争処理において権
利者及び第三者が的確
にそれを適用できると
いえるのかということ
を追求することにほか
ならないのではないか。
(2)「電力」の問題で ≪まとめ≫
見たとき、サービスマー
質問の背景がわかりづらく、的確な回答がま
ク(第39類「電気の供
とめられない。
給」)として登録するこ
とは「電力を供給するシ
ステム」に対して商標が
使用されており(線的又
は集合的な使用)、商品
商標(第4類「電気エネ
ルギー」)として登録す
ることは「電気」そのも
のに対して商標が使用
されている(点的な使
用)ことになっているの
ではないか。
「電気の供給」(39類)についてのサービ
スマークの登録と「電気エネルギー」(4類)
についての商標の登録との関係は、「小売りサ
ービス」についてのサービスマークの登録と小
売りされる「商品」についての商標の登録との
関係と同じである。「電気の供給」というサー
ビスと「電気エネルギー」という商品は、別異
の範疇に属するが、商標使用の場において共通
するので、同一の商標が使用された場合には、
混同を生ずるおそれがあり、その場合には、異
議申立等において、混同のおそれを個別的に審
査すべきものと考える。また、このことは侵害
の判断に際しても同様に考えられると思われ
る。
検討事項-2
「商標権に係る商品・役務の指定の在り方」と「商標の定義」・「商標の使用の定義」との関係等の検証
(1)小売業商標のサー ≪まとめ≫
現行商標法における商標の定義は、立法技術
ビスマークとしての登
質問の背景がわかりづらく、的確な回答がま の観点のみから定義されており、経済社会にお
録、「電力(電気エネル とめられない。
ける商標の概念から乖離したものとなってい
ギ
ー
(Electrical
る。また、商標の使用の定義も、現在の予見を
energy))」の商品商標
越えた将来の全ての態様を網羅したものとはな
としての登録などの検
っていない状況にあると思われる。このような
討は、「商標権に係る商
観点から「商標の定義」「商標の使用の定義」
品・役務の指定の在り
は別途改正が検討されているところであるが、
方」と「商標の定義」・
「商標の使用の定義」と
この問題と、小売りサービスをサービスマーク
の関係という視点から
登録の際の指定役務として認めるか否かとは別
研究・検討することはで
異の問題であると考えられる。
たた各種食料品の小売
りサービス」⑥「テレビ
ショッピングによる各
種日用品の小売りサー
ビス」
-191-
(4)商標の使用が問題
になったとき、商品商標
とサービスマークとで
は立証の仕方に相違(点
(3)「小売業」で見た
場合、商品を小売りする
行為に使用する商標が
「各種商品を供給する
システム」を表示するも
のとなっているのか、
個々個別の「商品」を表
示するものとなってい
るのかによって役務商
標なのか商品商標なの
か決せられるのではな
いか。商標権の争いにお
いてどちらの方が的確
に戦えるのか(管理のし
やすさも考慮)という議
論でもあると考えられ
る。いくつかの特定商品
の小売りであれば、実際
その小売業のマークは
商品との結びつきも強
いものであり、商品商標
で十分対応でき、かつ、
立証が簡単であるとい
うことになっているの
ではないか。だからとい
って、「特定商品の小売
りに関する商標がただ
ちにサービスマークと
して登録できない。」と
はいえないのではない
か。
≪参考個別意見≫
≪まとめ≫
特に異論なし
≪参考個別意見≫
・ある標章が表象する対象はいったい何である
のかの観点で考えれば足りるのではないか。も
っとも、表象する対象が「役務」に値しないも
のであれば、その標章は役務商標足り得ないこ
とは自明である。(町内商店街にある魚屋とか
肉屋、駄菓子屋(今、あるかは知りませんが)
の屋号)
・商品商標で十分対応でき立証が簡単であると
は限らない。場合によっては、役務商標として
の保護が必要な場合もあるのではないか。
・何ら具体的ではないが特段異論もない。
・小売りに係る役務を商標法上の役務と認める
のであれば、ある商標が商品商標なのかどうか
は、商品について(商品を表象するものとして)
使用されているのか、小売りに係る役務につい
て(小売りに係る役務を表象するものとして)
使用されているのかによって決せられ、単品の
小売りであっても両者は判然と区別できると
考える。「商品商標で十分対応でき、立証が簡
単」かどうかについては一般化は無理。小売り
に係る役務を表象する商標が、それとして(商
品商標ではなく役務商標として)適正に保護を
受けることが可能になるのなら、権利行使も適
正にできるようになるとしかいいようがない。
≪まとめ≫
概ね異論はないが、個別の争いの問題を強引
に一般化して論じることは誤解を招くおそれが
あるので、全面的に賛成ということではない。
要は、指定する(現に使用する)商品・役務
を明確に指定(表示)することが大切であって、
サービスマークの登録をすべきか、商品商標の
登録をすべきかの問題ではないと考える。
小売りサービスを「各種商品を供給するシス
テム」ととらえる考えは妥当ではないと思料す
る。
「システム」は、「組織、制度、系統、体系」
等を意味する語(広辞苑)であって、例えば「防
火・防煙システム」にあっては、監視テレビ、
煙感知器、スプリンクラー、防煙扉,中央制御
盤等の各種商品を「防火・防煙」という目的の
ために有機的に組み合わせて機能させる手段・
方法を総称する表現であり、「集合した商品が
一体となって或る目的のために機能する商品
群」とも理解することができる。
また、「商品を供給するシステム」という場
合、このシステムは構築された商品の効率のよ
い流れを意味するものであり、「小売り」を商
品のメーカーから消費者に至る流通段階におい
て把握すると、「小売り」は商品が消費者に渡
る最終の段階に位置するに過ぎず、したがって、
「小売りサービス」を「各種商品を供給するシ
ステム」と把握するには無理があると考える。
前述のように、「小売りサービス」の本質は
「顧客の商品購入の便宜のために商品の品揃え
をするというサービス(又は、~の品揃えをし
て、顧客に販売するというサービス)」である
から、「小売りサービス」について登録された
商標は、「小売り」される個々の商品について
登録された商標とは、明らかに異なった保護分
野の商標であると考えられ、したがって、小売
りサービスに関して、「各種商品を供給するシ
ステム」というような概念を取り入れて、「総
合的な小売り」と「特定商品の小売り」とを別
異に取り扱うとするのは妥当ではないと思われ
る。
商標の使用を「商標は自他商品・役務を識別
する機能を有し、その目的のために商品・役務
に使用される標識であって、この意味における
商標を自他商品・役務を識別するために商品・
実は知財協商標委員会の中で、どっちの権利で
登録の方が、例えば三越というマークを守りや
すいのかという観点で議論した。例えば、ある
スーパーなりが包装紙だけを三越さんと同じも
のを使ってくるんでいる。手提げ袋とかやって
いたときに、それをどっちの商標権がある方が
守りやすいのかといったときに、それは役務商
標の方が当然守りやすいのだろう。要するに、
汎用的な包装紙だとか汎用的な手提げ袋といっ
たものを、全くの三越さんと関係のないスーパ
ーなりがそれを用いてお客さんにサービスとい
うか、商品を最終的に渡していたときには、三
越さんがそれをやめさせようとする場合に、不
正競争防止法ではなくて商標法でやろうとした
場合に、どっちの方がやりやすいのかといった
ら、それは役務商標で権利として認められてい
た方がやりやすいだろう。汎用的な包装紙なり
手提げ袋は、商品商標との関係でいったときに、
一体どの商品商標になるのかというのはわから
ないと思う。包装紙なり手提げ袋は、三越さん
が役務を提供する際に、提供の用に供するもの
と理解した方が、他人に対してやめなさいと、
商標権の侵害で攻撃する場合にやりやすいので
はないか。そんなような議論もあった。
-192-
≪参考個別意見≫
・「商品」「役務」の定義規定は不要。
・可能かと問い掛けるより、可能にする方策を
提案して欲しい。
・商品本体、パッケージ、商品の宣伝物以外の
ところで、小売のために使用していることが分
かる資料(例えば、特徴ある陳列の中に吊看板
で商標を使用されていることを示す写真)で良
いのではないか
・小売りの場合、
「商標の使用」ととらえる事例
を例示してあげることは有益と考える。例え
ば、店舗または店舗から突出した看板への表
示、商品棚や店舗内の壁への表示、レシートへ
の表示、チラシ広告
≪まとめ≫
小売業商標の役務商標としての登録に関し
て、保護対象は「総合小売り」のみならず、
「役
務といえるもの」は全て対象とするべきであり、
出願人の意思は指定役務の表示により判断され
るべきものである。
サービスマークの登録の対象となる「商品の
小売り」の本質は、「顧客の商品購入の便宜の
ために商品の品揃えをする(又は、~の品揃え
をして、顧客に販売する)」ということであり、
これは「総合小売り」に限られるものでないの
で、この内容を充足する場合には、それらはサ
ービスマークとして保護されるべきものと考え
る。
役務について使用する行為」と解すれば、それ
が商品商標である場合とサービスマークである
場合とで、当該標識(マーク)が指定商品に使
用されているのか、役務に使用されているのか
の確認に差異はないものと考える。
ビスと単品の小売りサ
検討事項-3
(1)小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係(類否判断を含む。
)登録を認める小売業商標に係る役務同士の類似関係はどのように整理するのか。また、現行
の役務と商品との類否判断も考慮しつつ小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類似関係の在り方について検討を行う。
具体的な検討事項
(a)どのような小売業 ≪まとめ≫
小売業商標に係る役務と他の商品・役務との類 ○小売りサービスと商品の類否について
の商標をサービスマー
・
「小売りサービスに販売を含める、あるいは含
「単品の小売業」も保護を認めるという意見 似関係
クとして保護するのか が大半。
めない」ということと、「小売りサービスと商
商品に類似するものの範囲には役務が含まれ
(「総合的な小売業」だ
品商標との類否判断をする、しない」は関係な
審査上の商品・役務の類否関係については、 ることがあり、役務に類似するものの範囲には
けでなく「単品の小売
い。百貨店の小売りサービスについては、販売
非類似とすべきとの意見が多かったが、取り扱 商品が含まれることがあることは、商標法に定
業」も認めるのかどう
を含めようが、含めまいが、小売りサービスと
められているところである(2条5項)。そし
う商品を明記した上で、該当する商品商標とは
か)にもよるが、審査上
商品商標との類否判断は、販売を含めるか、含
の商品・役務の類否判断 類似とすべきとの意見もあった。また、上記2 て、審査の場においては、4条1項11号(類
めないかとは関係なしに、類否判断をする必要
「各種商品を供給するシステム」 似)ではなく、15号(混同)適用の問題と考
は、どうすべきか。全て (3)にいう、
認めるとした場合、審査 の一部として最終的に「商品の販売」といった えられ、それを以って処理されているが、この
がないと考える。例えば、小売りサービスとい
上、総合的な小売りサー 行為がなされる為、従来の役務商標と商品商標
うのを商標法に「販売も含める」として入れた
ことに特に問題が生じているとは思われない。
(5)上記の検討によ
り、小売業商標のサービ
スマークとしての登録
に関して、保護対象をい
わゆる「総合小売り」の
みならず、「役務といえ
るもの」は全て対象とす
ることはできるのか。
「役務といえるもの」と
は、商標法上の「商品」
「役務」がいかなるもの
なのかはっきりすれば
概念的には特定され、出
願人がその意思で出願
しているかどうかは指
定役務の表示により判
断されるものであると
することは可能か。
的な使用と線(集合)的
な使用)があるのではな
いか。要するに、サービ
スマークにおける「商標
の使用」とはいかなるも
のなのかを明確化する
必要があり、それにより
サービスマークで登録
した方が適当であるも
のが明確になるのでは
ないか。
-193-
との関係がより密接になっている点の配慮も必
要とする意見があった。
≪参考個別意見≫
・そもそも表象する対象が異なることから、基
本的に非類似でよい。異議申立や無効審判で事
後的に個別に判断すればいい。
≪まとめ≫
類否判断は原則不要と考えるので、回答なし
したがって、小売りサービスと商品との関係も、
同様に考えて良いものと思料する。
なお、具体的な類似関係(類否判断)につい
ては、一つの手法として、小売りサービスは、
それが総合的小売り(百貨店、コンビニエンス
ストア等)であろうと、特定商品の小売り(家
電製品小売業、酒類小売業、日用品小売業等)
であろうと、テレビショッピング等であろうと、
第一義的には互いに類似するものとして取り扱
い、具体的事案において混同を生じない場合は、
共に登録するという、取り扱いが考えられる。
ただ、現行の類似群しばりの中でこのような手
法を採ることが妥当かという問題(この場合に
は、その前提となる「類似群」から検討する必
要)があると思われるので、この点については、
今後更に検討する必要があると考える。
とした場合、百貨店で販売している 100、200
の商品との間で類否判断をしなければいけな
いのかというと、そんなことをする必要はな
い。それは百貨店のサービスとして与えられて
いるもので、例えばそこで衣服が販売されたと
して、では、衣服の商品商標との類否判断をし
なければいけないかというと、それはする必要
はない。もしそこで混同が生じるおそれがある
と考えるのであったら、「販売まで含めない」
場合であっても、類否判断をやらなければいけ
ないということになると考える。ただし、単品
小売りの場合は類否判断の必要性はでてくる
だろう。
また、保護する指定役務を「販売を含まない
小売りサービス」としたところで、現実にその
業者は販売するわけだから、単に人為的に販売
を外すという概念規定をしても、それによって
必要性が小さくなるということは、おかしい。
実態的には販売が含まれるわけだから、どのよ
うに概念規定するかとは無関係に、類否判断を
しなければいけないのだったら、しなければい
けない。しなくていいのだったら、しなくてい
いということになると考える。
・商品との類否判断は、小売りサービスに販売
を含めるか否かに関係なしに、本来はやる必要
があると考える。
≪参考個別意見≫
・品揃え等の顧客に対するサービスについて商
品との類否判断を必要だとすると、審査におけ
るバランス上、その他の商品・役務間について
も広く類否の判断をすべきということになる
かもしれないが、現行は、商品と役務の類否判
断をほとんど行なっていないのであるから、小
売りについても同様でいい。
(2)相対的拒絶理由の判断の在り方(現行の職権審査の運用改善の方向性
コンセント制度における「検討事項-1」(5頁)で掲げた検討事項の他に本課題における検討事項はあるか。あれば、それらについての検討を行う。
≪まとめ≫
特になし
(c)品揃え等の顧客に
対するサービスについ
て商品との類否判断を
必要だとすると、審査に
おけるバランス上、その
他の商品・役務間につい
ても広く類否の判断を
すべきか。
全く別異のものという
整理はできないか。少な
くても審査上は、非類似
扱いでもいいという考
え方はどうか。
≪参考個別意見≫
・単品小売りと商品の類否関係については判断
つかず。10・15 号の審査を厳格にするという
ことで商品商標との類似は無しと割り切って
も良いと思う
・商品とは原則は非類似であるものとするが、
4条1項15号について従来よりも積極的に
審査を行うべき。特に単品商品の小売りに係る
商標と、当該商品に係る商標は混同をおこしや
すい。(「REGAL 靴店」「OMEGA 時計店」
「PCシ
ョップアップル」等々)
(b)品揃え等の顧客に ≪まとめ≫
対する「サービス」と販
原則、非類似扱いでもよいとの意見が多かっ
売の対象となる「商品」 たが、類似とすべきとの意見もあった(理由は
とは、その内容において
上記)
ービス間の類否、総合的
な小売りサービスと商
品間の類否、単品の小売
りサービスと商品間の
類否についての判断は、
どうすべきか。
-194-
メールオー
ダー・電子
ショッピング
等・表示例
・On-line retail store services featuring
[INDICATE field or type of goods]](○○に関
するオンライン小売ストア)
・Mail order services featuring [indicate
specific field, e.g. magazines, clothing, jewelry]
(特定分野(例:雑誌、衣服、宝飾品)に関する
メールオーダーサービス)
・Computerized on-line retail services in the
field of [indicate field of goods](○○に関する
コンピュータオンライン小売サービス)
等
・Retail sales services via electronic
commerce / via global communication
networks (Internet) / Telemarketing(電子商
取引/世界通信ネットワーク(インターネット)/
電話勧誘販売による小売販売サービス)
等
台湾
・農、畜、水産物の小売り
・食品、飲料の小売り
・布地、衣服、服飾品の小売り
・家具及び架設品の小売り
・金属及び家庭日常品の小売り
・化学製品の小売り
・薬品、化学品の小売り
・文教、娯楽用品の小売り
等
・デパート
・スーパーマーケット
・コンビニエンスストア
・スーパー・ストア
・ショッピングセンター
○(1998年4月)
35類
・The bringing together, for the benefit of
データ未入手
others, of a variety of goods, enabling
customers to conveniently view and purchase
those goods from a clothing and accessories
catalogue by mail order or by means of
telecommunications(メールオーダー又は電気
通信手段により、衣料品カタログから、他人の
便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれら
の商品を見、かつ、購入するために便宜を図
ること)
等
・The bringing together, for the benefit of
others, of a variety of goods, enabling
customers to conveniently view and purchase
those goods in a retail clothes store(小売衣
料店において、他人の便宜のために各種商品
を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入
するために便宜を図ること)
等
・The bringing together, for the benefit of
others, of a variety of goods, enabling
customers to conveniently view and purchase
those goods in a department store(デパートメ
ントストアにおいて、他人の便宜のために各種
商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、
購入するために便宜を図ること)
等
英国
出典 ①商標における採択可能な商品・役務表示マニュアル(米国特許商標庁ホームページ)
②第3回JPO-OHIM審査官会合(平成13年10月10日 於:JPO)資料
③内外商標法における商標登録要件の解釈及び運用に関する調査研究報告書
④商標審査基準(台湾経済部智慧財産局編:財団法人交流協会訳)
⑤英国における商標のクロスサーチリストガイド(英国特許庁ホームページ)
⑥日本商標協会誌第47号別冊資料(平成15年2月10日)
日本商標協会
財団法人 知的財産研究所
財団法人 交流協会
A)総合小売(デパートメントストア等)の場合、 原則として混同の可能性は低い。ただし、各商 A)総合小売(デパートメントストア等)の場合、 原則として非類似。出所につき同一又は関連
1類から34類までの商品についても先願につ 標が同一又はほとんど同一であり、市場に定 35類のみサーチ。
するものと誤認しやすい場合には類似と判
類
いて標章の類否をサーチ。ただし、同一及び 着しているとき等、特殊な場合を除く。
B)特定小売(例:小売衣料店)の場合、特定商 断。
極めて類似の場合のみ類似と判断。
品の類(例:衣服)についてもサーチ。
否
小売・商品 B)特定小売(例:小売衣料店)の場合、特定商
C)総合小売(スーパーマーケット等)の場合、
関
品の類(例:衣服)についてもサーチ。
29類~33類(食料品・アルコール飲料)につい
係
てサーチ
総
合
/
特
定
小
売
・Retail services of a department store(デ
パートメントストア小売サービス)
・Retail services of a supermarket(スーパー
マーケット小売サービス)
等
・Retail shop featuring [indicate specific field, ・Retail services in respect of food and
e.g. gifts, flowers](○○(例:贈物、花)に関す beverages(飲食物に関する小売サービス)
る小売店)
等
・Retail
stores
[indicate
specific
type
or
field,
特定小売
e.g. clothing, camera](○○(例:衣服、カメラ)
(特定専門 に関する小売ストア)
店等)
等
ントストア
等)・表示例
・Retail department store services(小売デ
パートメントストアサービス)
・Retail convenience store(小売コンビニエン
総合小売 スストア)
(デパートメ 等
採択の可否
(導入時期)
OHIM
○(1958年登録例あり)
○(2001年3月)
○(2000年10月)
35類(当初42類で採択していたが、1998年か 35類(Retail services(小売サービス))の表示 35類
ら35類に移動)
で採択
米国
「小売り」について各国の取扱表(1) (産業構造審議会 知的財産政策部会 第4回商標制度小委員会 参考資料1 H15.10.20)
参考資料Ⅲ-4
⑤類否:
商品「玩具」
×役務「玩
具に関する
小売り」
⑥類否:
「食品に関
する小売
り」×「百貨
店に関する
小売り」
⑦類否:
「婦人服に
関する小売
り」×「紳士
服に関する
小売り」
⑧サーチの ⑨「インターネッ ⑩「通信販 ⑪「卸売り」
ト販売」への 売」への適 への適用
範囲:
用
「小売りサー 適用
ビス」×「商
品」
香港
△
○
○(35)
×
○
NA
○
○
○
○
○
○
○
韓国
○
○ △(35/36)*3
×
×
×
△*4
×
○
×
△*3
△*3
△*3
マレーシア
△
○
○(35)
×
○
○
○
×
○
○
○
○
○
フィリピン
△
○
○(35)
×
○
NA
○
○
○
○
○
○
○
シンガポール
○
○
○(35)
×
○
△商品+注
○
×
○
×
○
○
○
台湾
△
○
○(35)
×
○
不要
×
×
○
×
×
×
○
タイ
△
○ ○(35/42)*5
×
○
○
○
○
○
○
○
○
○
ベトナム
△
○
○(35)
○
NA
NA
○
○
○
○
○
×
○
オーストラリア
○
○
○(35)
○
NA
NA
×
△個別判断
○
○
○
○
○
ニュージーランド
△
○
○(35)
×
○
×
○
×
○
○
○
○
○
オーストリア
○
△
○(42)
×
×
○
相対審査無 表示不的確
○
○
○
○
○
デンマーク
○
△
○(35)
○
NA
○
○
△個別判断
○
△個別判断
×
×
×
イギリス
○
○
○(35)
×
×
○
○
○
○
○*6
○
○
×
フィンランド
○
○
○(35)
○
NA
NA
×
○
○
×
○
○
×
フランス
○
△
△(35)
×
×
△商品+注
○
NA
NA
相対審査無
×
×
×
ドイツ
○
△
×
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
ギリシャ
○
○
×
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
NA
ハンガリー
○
○
○(35)
×
○
NA
○
表示不的確
○
○
△③参照
○
×
ノルウェー
○
○
○(35)
×
○
NA
○
△個別判断
○
○
○
○
○
ポーランド
○
○
○(35)
×
×
○
○
△個別判断
○
○
○
○
○
ポルトガル
○
○
○(35)
×
○
○
○
○
○
×異議
○
○
○
スペイン
○
△
○(35)
○
○
不要
○
△個別判断
○
○
○
○
○
スイス
○
×
○(35)
○
NA
NA
○
○
○
先行調査無
○
○
○
トルコ
○
○
○(35)
×
×
○
×
×
×
○
×
×
×
ベネルクス
○
△
○(35)
×
○
NA
○
○
○
×
○
○
○
OHIM
△
△
○(35)
○
○
不要
判例確立待 判例確立待 判例確立待
×
○
○
○
カナダ
×
○
○(分類無)
×
○
NA
○
×
○
分類制度無
○
○
○
メキシコ
○
○
○(42/(35))
○
○
×
○
×
○
○
○
○
○
アメリカ合衆国
○
○
○(35)
NA
○
NA
○
○
○
○
○
○
○
アルゼンチン
△
○
○(35)
×
×
○
○
×
○
×
○
○
○
南アフリカ
△
○
○(35)
○
○
NA
○
○
○
○
○
○
○
※この表は日本商標協会誌第47号別冊資料(H15.2.10)に基づき、その後、若干の調査結果を加え特許庁が作成したものです。
*1:○は加盟国、△は未加盟だが国際分類採用、×は未加盟。
*2:○は方式、顕著性、先行商標審査全て、△は方式、顕著性のみ、×は方式のみを審査(出典:特許行政年次報告書2001年版)。
*3:韓国の審査実務上、「小売りサービス」の表示は認められない。小売りサービスに係る商品を具体的列挙が必要。「食品及び飲料販売代行業」「百貨店運営業」「オンライ
ン及び通信販売によるめがねの販売代行業」等の表示は認められる。
*4:法文上は、商品・役務間の類否判断することになっているが、実務上審査していない。
*5:第42類「○○(商品)に関する小売りのための管理」「○○に関する卸売りのための管理」の表示は容認。「小売り」「卸売り」と同等役務と当局判断。
*6:商品×小売り(35類)間のクロスサーチを廃止する提案が出されている。
④用語:
③用語:
ニース 審査の ①「小売り」の ②用語:
加盟国 有無 役務での採択 「小売りサー 「商品分野・ 「35類注釈」
販売形態+
の可否(類) ビス」
*2
*1
小売りサービ
ス」
「小売り」について各国の取扱表(2) (産業構造審議会 知的財産政策部会 第4回商標制度小委員会 参考資料2 H15.10.20)
参考資料Ⅲ-5
-195-
「小売り」についての各国のアンケート結果
参考資料Ⅲ-6
*
米国
質問項目
1.「役務」を定義する規定の有無
a)存在する場合、その規定内容
b)存在しない場合、実務上又は判例上の「役
務」の解釈
サービスマークについては商標法第1127条に規定されているが、何が「役務」を構成する
かについては定義されていない
以下の基準が何が「役務」を構成するかを導き出している:①サービスが実際の行為であ
ること②他人の要請による、又は他人の利益に供するものであること③出願人の商品の
販売やそれに関するサービスでないこと
判例:Canadian Pacific Limited, 754 F.2d 992, 224 USPQ 971 (Fed. Cir. 1985); Betz
Paperchem, Inc., 222 USPQ 89 (TTAB 1984); Integrated Resources, Inc., 218 USPQ 829
(TTAB 1983); Landmark Communications, Inc., 204 USPQ 692 (TTAB 1979)
[TMEP1301.01参照]
2.(「役務」の定義又は解釈との関係について)「小
売りサービス」のどの面が「役務」に該当するか
小売業者によって行われるサービスには、店において商品の情報を提供したり、他人の便
宜のために各種商品を揃え、顧客が商品を見、かつ、選ぶために便宜を図る行為も含ま
れると考えられる。
・小売りに付随したもの(商品の取り揃えや購入 商品を販売する行為(the act of selling)は、アメリカの判例法の下ではサービスとは考えら
の便利さなど)を役務として認めるのか
れていない。
・商品の販売自体が役務と認められるのか
3.審査実務において認められる「小売りサービス」
に関して以下の具体的表示は認められているか
ⅰ)「小売りサービス」
(Retail Service)
認めない(小売りサービスのどの面のサービスであるかを表示しないと認められない。)
小売店サービス(retail store services)、小売りアウトレット店サービス(retail outlet
services)、卸売業者サービス(wholesale diatributorship services)などとした場合は認めら
れる。
ⅱ)「百貨店」
(Department Store)
認められる
ⅲ)「特定商品の小売り」
(Retailing of [spetial goods])
どの面のサービスか、どの商品かを具体的に表示しなければ認められない
ⅳ)「卸売り」
(Wholesale trade)
概念が大きすぎる表示であり、何のサービスか曖昧なため、認められない
ⅴ)「通信販売」
(Mail-order service/teleshopping)
商品を特定すれば認められる
ⅵ)「免税店」
(Duty-free shops)
商品を特定すれば認められる
ⅶ)「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客が
これらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図 商品を特定すれば認められる
ること」
(しかし、USPTOが認めているのがより明確で分かり易く、簡潔な表示であることから、この
(The bringing together, for the benefit of others, of a
表示はあまり用いられていない)
variety of goods enabling customers to conveniently
view and purchase those goods)
4.「小売りサービス」と商品が互いに類似と判断さ
れることがあるか
a)サーチを行う
b)訴訟における事例(TMEP1207.01(a)(ii)より抜粋)
・Hyper Shoppes (Ohio) Inc., 837 F.2d 463, 6 USPQ2d 1025 (Fed. Cir. 1988)
a)審査実務における小売りサービスと商品との (小売り食料雑貨店及び一般販売店サービスについての「BIGG'S」の登録商標が、家具
についての商標「BIGGS」について、混同を生ずるおそれがあるとされた)
相互間でのサーチ
b)訴訟における事例
・H.J. Seiler Co., 289 F.2d 674, 129 USPQ 347 (C.C.P.A. 1961)
(ケータリングサービスについての商標「SEILER」が、燻製保存肉についての商標
「SEILER'S」について、混同を生ずるおそれがあるとされた)
・Azteca Restaurant Enterprises, Inc., 50 USPQ2d 1209 (TTAB 1999)
(メキシコ料理レストランについての「AZTECA MEXICAN RESTAURANT」の商標が、メキ
シコ食材についての商標「AZTECA」について、混同を生ずるおそれがあるとされた)
・Golden Griddle Pancake House Ltd., 17 USPQ2d 1074 (TTAB 1990)
(レストランについての「GOLDEN GRIDDLE PANCAKE HOUSE」の商標が、食卓用シロッ
プについての商標「GOLDEN GRIDDLE」について、混同を生ずるおそれがあるとされた)
・Mucky Duck Mustard Co. Inc., 6 USPQ2d 1467 (TTAB 1988)
(マスタードについての「MUCKY DUCK」の文字とアヒルの図形からなる商標が、レストラ
ンについての「THE MUCKY DUCK」の文字とアヒルの図形からなる商標について、混同を
生ずるおそれがあるとされた)
・U.S. Shoe Corp., 229 USPQ 707 (TTAB 1985)
(婦人服小売店及び被服についての「CAREER IMAGE」の商標が、制服についての商標
「CREST CAREER IMAGES」について、混同を生ずるおそれがあるとされた)
5.「小売りサービス」に関して、以下の場合は商標
の使用と認められるか(百貨店の商標の場合)
ⅰ)広告・宣伝での使用
使用といえる
ⅱ)取引書類への表示
請求書への表示であれば使用といえる。契約書への表示は顧客の要請に基づくものでな
いから使用とはいえない。
ⅲ)店の看板
使用といえる
ⅳ)包装紙又は買い物袋への表示
使用といえる
ⅴ)小売りに係る商品に付した表示
使用といえる(実際の形態による)
-196-
「小売り」についての各国のアンケート結果
*
英国
質問項目
1.「役務」を定義する規定の有無
a)存在する場合、その規定内容
なし
b)存在しない場合、実務上又は判例上の「役
務」の解釈
商標法においては何が「役務」であるかについて定義されていない。
審査実務においては、役務とはある者から他者へ提供されるあらゆる行為と考えられてい
る
2.(「役務」の定義又は解釈との関係について)「小 審査実務については、「実務変更サーキュラー(PAC)」 13/00 及び 「実務変更公告(PAN)」
2/02 参照
売りサービス」のどの面が「役務」に該当するか
百貨店が、他人の商標が付された商品のみ扱っている場合、商品について商標を出願し
・商品の販売自体が役務と認められるのか
ても登録を認められない。
この場合、「百貨店において、他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品
・小売りに付随したもの(商品の取り揃えや購入 を見、かつ、購入するために便宜を図ること」であれば登録は認められる。
の便利さなど)を役務として認めるのか
また、逆に、製造者が小売りについて商標を登録することは認められない。
3.審査実務において認められる「小売りサービス」 審査実務については、「実務変更サーキュラー(PAC)」 13/00 及び 「実務変更公告(PAN)」
2/02 参照
に関して以下の具体的表示は認められているか
認められる表示の例;
「百貨店において、他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、か
ⅰ)「小売りサービス」
つ、購入するために便宜を図ること」
(Retail Service)
「スーパーマーケットにおいて、他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商
品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」
「小売り衣料品店(小売り酒店/小売り電気店/小売り薬局/小売り家具店)において、
ⅱ)「百貨店」
他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために
(Department Store)
便宜を図ること」
ⅲ)「特定商品の小売り」
「テレビショッピングチャンネルを通じて、他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこ
(Retailing of [spetial goods])
れらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」
「メールオーダー又は電気通信手段により、洋服及びアクセサリーのカタログにおいて、他
ⅳ)「卸売り」
人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便
(Wholesale trade)
宜を図ること」
ⅴ)「通信販売」
「スポーツウェア及びスポーツグッズの販売を専門とするインターネットウェブサイトにおい
(Mail-order service/teleshopping)
て、他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するため
に便宜を図ること」
ⅵ)「免税店」
「一般的商業のインターネットウェブサイトにおいて、他人の便宜のために各種商品を揃
(Duty-free shops)
え、顧客がこれらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」
(PAC13/00より抜粋)
ⅶ)「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客が 登録官は、第35類の注釈「他人の便宜のために各種商品を揃え(運搬を除く)、顧客が
これらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図
ること」
(The bringing together, for the benefit of others, of a
variety of goods enabling customers to conveniently
view and purchase those goods)
これらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図ること」の表示を、「小売り業の性質」
及び(小売り業の性質から明らかでない場合には更に)「市場部門」が示されることを条件
として、受け入れる。そのような表示が示されていない場合には、(中略)拒絶理由が出さ
れる。
デパート、スーパーマーケット、ハイパーマーケット、コンビニエンスストアの場合、広範
な商品を扱うことが明らかなため、市場部門を限定することなく認められる。
4.「小売りサービス」と商品が互いに類似と判断さ
れることがあるか
a) サーチを行う
(詳細は「2002年、英国における商標のクロスサーチリストガイド」(PAN 11/02) 参照)
(PAN 11/02より抜粋)
・第35類「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がデパート、テレビショッピング番
a)審査実務における小売りサービスと商品との 組、雑貨インターネットウェブサイト、メールオーダーカタログにおいてそれらの商品を見、
かつ購入するために便宜を図ること」の役務については、第35類のみサーチし、商品区
相互間でのサーチ
分についてはサーチしない。
・「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客が専門小売り系列販売店(専門店、メール
オーダーカタログ、インターネットウェブサイト等を含む。)においてそれらの商品を見、か
つ購入するために便宜を図ること」の役務については、第35類及び、同一の商品/役務
に関しては、該当する商品区分で選択的にサーチを行う。
・「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客がスーパーマーケット、コンビニエンススト
ア等においてそれらの商品を見、かつ購入するために便宜を図ること」の役務について
は、食料品及びアルコール飲料の販売は、これらの業種の基礎であり、自社ブランド商品
を有していることも多いことから、第35類に加えて、第29~33類についてサーチされる
べきである。
・《商品及びその他の役務区分について》
例:第3類・・・様々な、せっけん;非薬用品(皮膚、頭皮及び身体用);シャンプー;衛生剤;
b)訴訟における事例
化粧品を揃える、専門小売販売店の標章について、第35類をサーチ
第44類・・・様々な、眼鏡、フレーム、コンタクトレンズ、レンズ、サングラス、ケースを揃
える、専門小売販売店の標章について、第35類をサーチ
b) なし
(参考として、「商品に関する使用」についての見解が示されている判例の紹介あり)
5.「小売りサービス」に関して、以下の場合は商標
の使用と認められるか(百貨店の商標の場合)
ⅰ)広告・宣伝での使用
ⅱ)取引書類への表示
百貨店のサービスについて使用といえる。
v)は自らの商標を付した商品を販売する場合も考えられるため、サービスについてだけで
なく、商品についての使用ともいえる。
ⅲ)店の看板
ⅳ)包装紙又は買い物袋への表示
ⅴ)小売りに係る商品に付した表示
-197-
「小売り」についての各国のアンケート結果
*
質問項目
1.「役務」を定義する規定の有無
フランス
スイス
ノルウェー
a)存在する場合、その規定内容
なし
なし
b)存在しない場合、実務上又は判例上の「役
務」の解釈
「役務」は他人の利益のため
に行うものであり、「販売」や
「製造」などは役務として認め
られていない
ニース国際分類第
35類~第45類に
おける定義と一致
している
―
なし
認めない
認めない
認める
・小売りに付随したもの(商品の取り揃えや購入
認めない
の便利さなど)を役務として認めるのか
認めない
―
「靴及び洋服の小
売り販売」など、商
品を特定した表示
は認められる
2.(「役務」の定義又は解釈との関係について)「小
売りサービス」のどの面が「役務」に該当するか
・商品の販売自体が役務と認められるのか
3.審査実務において認められる「小売りサービス」
に関して以下の具体的表示は認められているか
ⅰ)「小売りサービス」
(Retail Service)
認めない
認める
ⅱ)「百貨店」
(Department Store)
認めない
認めない
ⅲ)「特定商品の小売り」
(Retailing of [spetial goods])
認めない
認める
ⅳ)「卸売り」
(Wholesale trade)
認めない
認めない
ⅴ)「通信販売」
(Mail-order service/teleshopping)
認めない
認めない
ⅵ)「免税店」
(Duty-free shops)
認めない
認めない
ⅶ)「他人の便宜のために各種商品を揃え、顧客が
これらの商品を見、かつ、購入するために便宜を図
認める(商品の特定が必
ること」
(The bringing together, for the benefit of others, of a 要)
variety of goods enabling customers to conveniently
view and purchase those goods)
認める
4.「小売りサービス」と商品が互いに類似と判断さ
れることがあるか
(「小売りサービス」は役務
として認められていないた
め回答不可)
a)審査実務における小売りサービスと商品との
相互間でのサーチ
行わない
行う
b)訴訟における事例
あり
不明
5.「小売りサービス」に関して、以下の場合は商標
の使用と認められるか(百貨店の商標の場合)
ⅰ)広告・宣伝での使用
ⅱ)取引書類への表示
ⅲ)店の看板
ⅳ)包装紙又は買い物袋への表示
ⅴ)小売りに係る商品に付した表示
(「小売りサービス」は役務 ―(スイス商標法第 不明(小売りに関
する商標の不使用
として認められていないた 11条参照)
め回答不可)
(参考:スイス商標 について未だ判例
がないため)
法第11条)
「標章の対象であ
る商品及びサービ
スは、明確に指定
されていなければ
ならない。」
*
「ニース国際分類に関する第19会期専門家委員会」(2003.10.1~10)に
おいて、議場外で各国出席者に対して行ったアンケートの結果
-198-
参考資料Ⅲ−7
United States Patent and Trademark Office
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No. Class
Description
Status
Effective
Date
Type Note Trilateral
1
016
Non-magnetically encoded prepaid purchase cards for
[indicate use, e.g., allowing users to transfer financial
value on-line via retail computer networks]
A
01 Jun 01
G
N
2
035
Business management consulting with relation to
strategy, marketing, production, personnel and retail
sale matters
A
20 Jul 04
S
N
3
035
Business research services, namely providing
analysis of retail data on specific business locations
A
01 Mar 05
S
N
4
035
Commercial consultancy in the field of the retail sale
of fish and crustaceans
A
01 Nov 04
S
N
5
035
Computerized on-line retail store services in the field
of [indicate field of goods]
M
01 Feb 04
S
Y
6
035
Direct response retail services by means of
infomercials in the field of [indicate type of goods sold]
A
01 Oct 01
S
N
7
035
On-line retail store services featuring [INDICATE field
or type of goods]]
M
02 Jan 97
S
N
8
035
On-line retail store services featuring downloadable
pre-recorded music and video
A
01 Jul 04
S
N
9
035
Promoting the goods and services of others through
informercials played on customer point of purchase
television monitors in retail stores
A
01 Jun 01
S
N
10
035
Promoting the goods and services of others by means
of operating an on-line shopping mall with links to the
retail web sites of others
A
01 Jul 01
S
N
11
035
Providing information about and making referrals in
the field of consumer products and services for retail
services concerning products, services, events,
activities, attractions and facilities in particular
geographic locations
A
01 Oct 04
S
N
12
035
Retail [indicate type or field, e.g. clothing, camera,
department] stores
M
02 Jan 97
S
N
13
035
Retail apparel stores
M
02 Jan 97
S
N
14
035
Retail automobile parts and accessories stores
M
02 Jan 97
S
N
15
035
Retail bakery shops
M
02 Jan 97
S
Y
16
035
Retail candy stores
A
01 Jul 04
S
N
-199-
T
17
035
Retail clothing boutiques
M
02 Jan 97
S
N
18
035
Retail clothing stores
M
02 Jan 97
S
N
19
035
Retail consignment stores featuring [indicate specific
field, e.g. clothing]
M
02 Jan 97
S
N
20
035
Retail consignment stores in the field of [indicate
specific field, e.g. clothing]
M
02 Jan 97
S
N
21
035
Retail convenience stores
M
02 Jan 97
S
N
22
035
Retail delicatessen services
A
12 Apr 99
S
N
23
035
Retail department stores
M
02 Jan 97
S
N
24
035
Retail discount store services in the field of (indicate
field of goods offered)
A
01 Mar 03
S
N
25
035
Retail discount store services in the field of (indicate
field of goods, e.g., consumer electronics, clothing,
general consumer merchandise, food)
A
01 Mar 03
S
N
26
035
Retail drug store services
A
12 Apr 99
S
N
27
035
Retail drug stores
M
02 Jan 97
S
N
28
035
Retail florist shops
M
02 Jan 97
S
N
29
035
Retail fruit stands
M
02 Jan 97
S
N
30
035
Retail fur stores
M
02 Jan 97
S
N
31
035
Retail furniture stores
M
02 Jan 97
S
N
32
035
Retail gasoline supply services [just gasoline pumps]
M
02 Jan 97
S
N
33
035
Retail gift shops
M
02 Jan 97
S
N
34
035
Retail grocery stores
M
02 Jan 97
S
N
35
035
Retail grocery stores featuring phone-in orders
M
02 Jan 97
S
N
36
035
Retail jewelry stores
M
02 Jan 97
S
N
37
035
Retail lawn, garden and nursery stores
A
04 Sep 01
S
N
38
035
Retail music and record stores
M
02 Jan 97
S
N
39
035
Retail outlets featuring [indicate specific type or field]
M
02 Jan 97
S
N
40
035
Retail pharmacy services
A
12 Apr 99
S
N
41
035
Retail services by direct solicitation by sales agents in
the field of [indicate specific field]
A
12 Apr 99
S
N
42
035
Retail shop window display arrangement services
A
02 Apr 91
S
N
43
035
Retail shops featuring [indicate specific field, e.g. gifts,
flowers, baked goods]
M
02 Jan 97
S
N
44
035
Retail shop-at-home party services in the field of
[indicate specific field]
M
02 Jan 97
S
N
45
035
Retail sporting goods stores
M
02 Jan 97
S
N
46
035
Retail store services, available through computer
communications and interactive television, featuring
[INDICATE SPECIFIC field or type of goods]
M
02 Jan 97
S
N
47
035
Retail store services featuring convenience store
items and gasoline
A
02 Jan 97
S
N
48
035
Retail store services featuring a wide variety of
consumer goods of others
A
01 Jun 01
S
N
49
035
Retail store services in the field of [indicate field of
goods] featuring a bonus incentive program for
customers
A
04 Sep 01
S
N
50
035
Retail store services featuring telecommunications,
electric and utility services of others
A
01 Jul 04
S
N
51
035
Retail store services featuring telecommunications
service plans and telecommunications service
activation
A
01 Nov 04
S
N
-200-
T
52
035
Retail stores [indicate specific type or field, e.g.
clothing, camera, department]
M
02 Jan 97
S
N
53
035
Retail television stores
M
02 Jan 97
S
N
54
035
Retail tire stores
M
02 Jan 97
S
N
55
035
Retail variety stores
M
02 Jan 97
S
N
56
035
Temporary retail stores set up on-site at schools to
provide shopping facilities for students
A
04 Sep 01
S
N
57
036
Providing multiple payment options by means of
customer-operated electronic terminals available onsite in retail stores
A
20 Feb 96
S
N
58
042
Home parties (Retail sale of [indicate specific goods,
e.g. cosmetics, housewares, lingerie] by means of)
D
01 Oct 94
S
Y
59
042
Parties (Retail sale of [indicate specific goods, e.g.
cosmetics, lingerie, housewares] by means of home)
D
01 Oct 94
S
Y
60
042
Retail sale of [indicate specific goods, e.g. cosmetics,
housewares, lingerie] by means of home parties
D
01 Oct 94
S
Y
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-201-
NOTE of No.60 (削除された項目 No.60 のノート)
042 Retail sale of [indicate specific goods, e.g. cosmetics, housewares, lingerie] by
means of home parties
Selling and sales are not service under the US Trademark Act or the Nice Agreement
since the primary beneficiary of selling or sales is the seller. Language describing services
acceptable in the retail chain (e.g., retail stores, distributorships, on-line retailing) should
be used instead of selling or sales.
(和訳)
「第42類
ホームパーティーの手段による(化粧品、家庭用品、下着等の)小売り販売」
販売(selling and sales)はアメリカ商標法及びニース協定のいずれにおいてもサービスとして認
められていない。販売の利益を受ける主たる者が販売者だからである。こうした表示の代わりに、
小売りに関連したサービスを説明するような表示(小売り店、卸売業、オンラインによる小売り
等)であれば認められる。
-202-
平成 16 年度
特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書
小売業商標のサービスマークとしての登録及び
コンセント制度導入に対応する審査の在り方に関する
調査研究報告書
平成 17 年 3 月
財団法人
〒102-0083
知的財産研究所
東京都千代田区麹町 3-4
トラスティ麹町ビル 3 階
電話
03-5275-5285
FAX
03-5275-5323
http://www.iip.or.jp
E-mail
[email protected]
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