...

イ ギリス エジンバラ大学 Centre for Integrative Physiology

by user

on
Category: Documents
4

views

Report

Comments

Transcript

イ ギリス エジンバラ大学 Centre for Integrative Physiology
マイコース・プログラム活動報告書
学生番号:0601222270 氏名: 古郷 貴裕
研修場所: Genes and Development Group,
Centre for Integrative Physiology, University of Edinburgh
研修期間:2013/07/22~2013/10/04
1.エジンバラについて
昼間は思ったより寒くなく、日本で言う秋の初めくらいの気温でした。しか
し、夜になると少し肌寒くなりました。
八月はフェスティバルが行われており、街のいたるところで日本人パフォー
マーを含む、様々な国のパフォーマーが大道芸やステージをしており、平日は
毎日まわっても飽きませんでした。僕は 8 月中だけ来ていた京都府立医大の学
生や現地で仲良くなった日本人パフォーマーの方々と回ることができました。
また、夜にはお城の前の広場でミリタリー・タトゥーという有名なショーが行
われます。お金はかかりますが、必見です。
九月の第一日曜日の夕方に Fire work concert が行われます。参加会場の外
からも花火を見ることはできますが、せっかくの機会なのでチケットを買って
参加することをおすすめします。その日は開園 2 時間前に開場し、ピクニック
的なことをして開園を待つ、というのが一般的なようです。僕はそれを知らな
かったので、ただ座って待っていたら、隣にいた団体から声をかけていただき、
その団体に参加させていただきました。
このコンサートが終わると街は静かになりますが、すぐに新歓時期、freshme
n week が始まります。僕は剣道部と Japanese Society に参加し、平日は毎日
充実した時間を過ごすことができました。他にもパブなどでも現地の人々と交
流することはできましたが、部活に入ると現地の友達がたくさんできました。
また、剣道の道場の方にも連れて行っていただき、日本領事館で働いている方
など、現地の日本人の方々とも仲良くなることができ、より安心して生活する
ことができました。
日本人以外にも日本に興味を持っている人が多いので、その話題から入れば、
簡単に交流することができました。
街自体についてですが、空港や駅がとても便利なところにあったので、イギ
リス国内、国外共に気軽に旅行することができました。また、街はあまり大き
くなく、エジンバラ城とホリルード宮殿をつなぐ道を中心に古い街並みが続い
ており、京都とは比べものにならないほどきれいだという印象を受けました。
2.生活について
駅から徒歩 5,6 分、研究室から徒歩 3,4 分で治安がとてもいいエリアというと
ても便利なところにホームステイをさせていただきました。寮も借りることが
できるようでしたが、立地条件、費用ともにここの方が良かったです。また、
ここをインターネットでみつけたのですが、家賃は現地で現金手渡しという形
だったので、詐欺の心配もほとんどなく、安心してエジンバラへ行くことがで
きました。
ホームステイ先は一人の中年男性がホストファザーをしており、一人だけ受
け入れるという形でした。料理は自分で作らないといけませんでしたが、キッ
チンも調味料も自由に使っていいという事だったので、ほとんど不自由はあり
ませんでした。ただ、キッチンのすぐ外に火災報知機があったので、キッチン
の戸を完全に閉め、かつ換気扇をし、かつキッチンの窓を開ける、という状態
で料理をしないと火災報知機がなってしまう、という不便さはありました。何
度か扉が少し開いていて鳴らしてしまいました…。
3.研究室について
エジンバラ大学のジョージスクエアにある Hugh Robson Building の3階 A
ndrew Jarman 教授の研究室で Lynn Powell 先生に実験を教えていただきまし
た。
基本的に平日は朝9時半~5時まででしたが、実験の待ち時間などから昼食
休憩3,4時間の他、紅茶休憩等々の休みがありました。また、細胞や菌を扱
ったこともあり、朝9時半に来て菌をセットし、一晩放置するので、朝10時
には実験終了、といった日もありました。また、待ち時間はネットや観光など
自由に遊んでいていいよ、と言われました。研究室にはあまり人がいなかった
ので、休み時間をつぶすことができず、また研究棟に食堂が無かったので、各
自昼食を持ってきて作業をしながら昼食を食べる、というのが普通のようで、
昼食をみんなで食べるといった風習はありませんでした。そこで僕はよく8月
は食べ歩きできるものを昼食に買う、もしくは作り、フェスティバルを見なが
ら食べ、9月は友達と食べに出かけたり、夕方以降は忙しかったので部屋に戻
って家事をしたりしていました。このような自由な生活をしていても「働き過
ぎ」と言われたほどでした。
毎週金曜日(なおかつある程度人がいるとき)はラボのみんなが集まりケーキ
会、毎月最後の金曜日は研究棟でピザ会が行われ、研究室や研究棟の人々と交
流することができました。研究棟で働いている同世代(少し他の人々の方が年上
ですが)と知り合って、研究室が終わった後サッカーをしたりパーティーをした
りする機会もありました。
他の研究所へ行っていた人とは違い、ラボミーティングやプレゼンテーショ
ンはありませんでしたが、毎週教授とのディスカッションがあり、自分がして
いる実験とその結果、今後の予定について話し合う、という機会がありました。
研究室に日本人はいなかったので普段から英語の練習になりましたが、この時
が一番英語で話すのが大変だったと思います。
研究室内の英語についてですが、はじめは少しゆっくりと話してくださり、
慣れてきたら徐々に普通のスピードで話す、という事をしてくださったので、
とても助かりました。
4.実験について
Centre for Integrative Physiology で行った実験について簡単に報告させてい
ただきます。しかし、具体的な実験内容や実験結果は今後、エジンバラ大学の
方で論文として発表するかもしれないということで具体的には京都大学に提出
しないよう Lynn Powell 先生から指示がありましたので、ここでは提示できな
いことをご了承ください。
神 経 細 胞 の 分 化 に お い て 、 転 写 因 子 Atoh1 、 Ascl1 と 転 写 抑 制 因 子
Gfi1(senseless)の働きが重要である。哺乳類では Atoh1 は Inner ear hair cells
などの細胞に、Ascl1 は Olfactory neurons などの細胞に必要である。
Atoh1、Ascl1 は DNA に結合することで SUMO タンパクの転写をおこし、
SUMO シグナルを引き起こし、神経分化を促進する。これに対し、Gfi1 は DNA
に結合し、この転写を抑制することで神経分化を阻止する。(protein-DNA
reaction)しかし、Atoh1、Ascl1 と Gfi1 両方の存在下では Gfi1 が Atoh1、Ascl1
に結合し、その働きを促進し、SUMO タンパクの転写をより活性化する。
(protein-protein reaction)(下図参照)
Powell, LM et al., 2012, The SUMO Pathway Promotes bHLH Proneural Factor Activity via
a Direct Effect on the Zn Finger protein Senseless.
以上のことがここ最近、Lynn Powell 先生の研究で明らかになったので、この
protein-protein reaction についてのさらなる研究の一部を任された。またその
研究過程で、この SUMO に関する実験で用いられる DNA のライブラリーを作
成したり、実験過程で用いるキットや酵素などの既存のプロトコールでは失敗
する確率が高いのでその改善をしたりといったことなども任された。
以下、今回の研修の主となった実験について報告する。
1. 実験目的
上記のように転写因子 Gfi1 は Atoh1 と protein-protein reaction を起こすと
SUMO タンパクの転写を促進する。今回、その protein-protein reaction を起
こす、Gfi1 側の部位を特定する。
2. 実験方法
①pGL3p-R21 遺伝子の作成
1.ショウジョウバエから取り出した pGL4-R21 を制限酵素で切断し、電気泳動
を用いて pGL4 と R21 を分離する。
2. 環状の pGL3p を制限酵素で切断し、直鎖状にする。
3.脱リン酸化酵素を用いて pGL3p 遺伝子の末端のリン酸を除き、Ligase を用い
て環状の pGL3p-R21 を作成する。
4.制限酵素を用いた後の電気泳動で DNA を確認した後、菌に Transfection し
た後、培養して miniprep をする。
5. 制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで pGL3p-R21 をただしく作
れているかを確認する。
6.4 の菌をさらに培養し、Maxiprep でより高濃度の DNA サンプルを作成し、
制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで pGL3p-R21 をただしく集め
られているかを確認する。
②Gfi1 の mutant DNA 作成
1.Gfi1 遺伝子の、Atoh1 と protein-protein reaction を起こすポイントの候補を
それぞれ変異させる。
2.制限酵素を用いた後の電気泳動で DNA を確認した後、菌に Transfection し
た後、培養して miniprep をする。
3. 制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで mutant DNA をただしく
作れているかを確認する。
4.2 の菌をさらに培養し、Maxiprep でより高濃度の DNA サンプルを作成し、
制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで mutant DNA をただしく集め
られているかを確認する。
③Atoh1 DNA の準備
1. Gateway cloning を用いて Atoh1 DNA を準備する。
2. 菌に Transfection した後、培養して miniprep をする。
3. 3. 制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで Atoh1 をただしく準備
できているかを確認する。
4. 4.2 の菌をさらに培養し、
Maxiprep でより高濃度の DNA サンプルを作成し、
制限酵素を用いた後の電気泳動とシークエンスで Atoh1 をただしく集めら
れているかを確認する。
④細胞への導入
1. プレートに同数の細胞を撒き、それぞれに以下のように DNA を混ぜて細胞
に入れる。
サ
ン
プ R21 Gfi1WT Gfi1 mutant DNA 1 Gfi1 mutant DNA 2 Gfi1 mutant DNA 3 Gfi1 mutant DNA 4 Atoh1
ル
名
1 ○
2 ○
○
3 ○
○
4 ○
○
○
5 ○
○
6 ○
○
○
7 ○
○
8 ○
○
○
9 ○
○
10 ○
○
○
11 ○
○
12 ○
○
○
2. 一定時間経過したら Luciferase assay をし、分化のための DNA の転写具合
を見て、サンプル 1,2 以外の全ての Gfi1 がきちんと転写抑制をしていること
を確認する。
3. 1 の R21 を他の遺伝子に変えて同様の実験をする。また、Atoh1 の濃度も変
化させ、適切な Atoh1 の濃度を探す。また、2.の「一定時間」も変化させ、
適切な時間を探す。
3. 実験結果
Atoh1 の存在下では Gfi1 mutant DNA 1 を用いた場合、ほかの Gfi1 mutant
DNA を用いた場合と比べ、転写促進の程度が小さかった。
また、Atoh1 の存在下で Gfi1 WT を用いた場合、Gfi1 mutant DNA を用いた
場合に比べ、転写促進の程度が小さかった。
4. 考察
pGL3p-R21 は Atoh1 の結合部位をもたない DNA である。従って Atoh1 の影
響をあまり受けない。この条件下で Gfi1 mutant DNA 1 が他の Gfi1 mutant
DNA と同程度に転写抑制をしていたので、そのサンプルの質は十分だと考えら
れる。しかし、pGL3p-R21 とは違う、他の DNA を用いると、Atoh1 の存在下
では Gfi1 mutant DNA 1 を用いた場合、ほかの Gfi1 mutant DNA を用いた場
合と比べ、転写促進の程度が小さかったことから、Gfi1 mutant DNA 1 の変異
部は Gfi1 と Atoh1 が protein-protein reaction を起こす点であると考えられる。
しかし、Atoh1 の存在下で Gfi1 WT を用いた場合、Gfi1 mutant DNA を用い
た場合に比べ、転写促進の程度が小さかったので、このことを明言することは
できない。
Atoh1 の存在下で Gfi1 WT を用いた場合、Gfi1 mutant DNA を用いた場合に
比べ、転写促進の程度が小さかったのは、もともと保存されていた Gfi1 WT は
少し古かったこともあり、質が今回作成した Gfi1 mutant DNA に比べ、質が低
かったからだと考えられる。
今後、Gfi1 WT サンプルをもう一度作成し、反応を確認できれば、上記のよう
に結論付けることができる。
5.感想
今回、3 ヶ月弱という短い期間ではありましたが、研究生活をすることができ、
また、海外での生活を経験することができました。これまで、将来は医師にな
って日本で働くことしか考えていなかったので、将来のことを考えるのに良い
経験になりました。将来、臨床医を目指すか、研究医を目指すか、まだ決めて
いませんが、今回の経験を参考にしながら考えていきたいと思います。
また、今回の研修で英語の重要性を実感しました。さまざまな国からこられ
た方々がそれぞれ多少のなまりはあるもののみな英語で会話している、これま
で頭の中では当たり前だと思っていたものの、実際に目の当たりにすると驚き
でした。現地の人々と会話しているうちに僕もまだ十分ではないとは思います
が、ある程度はこれまで以上に英語で話すことができるようになったと思いま
す。これからも英語が必要になることがたびたびあると思うので、これからも
英語を上達できるよう、頑張っていきたいと思います。
最後になりましたが、僕を受け入れてくださった Andrew Jarman 教授、Lynn
Powell 先生をはじめとする Andrew Jarman 教授のラボのメンバー、そして
紹介してくださった Heck 教授、武田教授、京都工芸繊維大学でご指導くださっ
た山口教授、資金を支援してくださった芝蘭会、送り出してくださった両親、
そして現地で出会った様々な人々に心から感謝しています。本当にありがとう
ございました。
Fly UP