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救急疾患 息切れの患者を見たら

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救急疾患 息切れの患者を見たら
第20回
モーニングレクチャー
救急疾患
息切れの患者を見たら
平成24年10月25日
呼吸器内科
濱田 千鶴
呼吸困難の鑑別(1)

急性の呼吸困難

慢性の呼吸困難
呼吸困難の鑑別(2)
救急外来で大事なことは
「いかに早く診断をつけるか」
「命に関わる疾患を見逃さないか」
診察ポイント
<3ステップ>
①問診・身体所見・バイタル
②聴診所見
③血液・ガス所見、画像所見




呼吸困難を見たら、まずSpO2を見ながら酸素投与
CBC・生化・凝固・ガス・胸写・ECGはルーチンで良い
「息切れ」「呼吸困難」は自覚症状
呼吸不全を伴わない場合、胸痛・胸部不快感・動悸・
心因性など他の症状を訴えている可能性も考える
呼吸不全の程度がひどければ手動換気や気道確保・挿管
①問診・身体所見のチェックポイント
<問診>
 異物誤嚥
⇒ 気道異物
 薬物内服後、蜂さされ、発疹
⇒ アナフィラキシー
 糖尿病・腎不全
⇒ アシドーシス
遮断薬
⇒ 心不全、気管支喘息

⇒ 心不全、気管支喘息
 心疾患既往・気管支喘息既往
⇒ COPD
 Heavy smoker
⇒ 急性喉頭蓋炎
 ひどい咽頭痛
<身体所見>
 呼気延長・口すぼめ呼吸
⇒ COPD、気管支喘息
 頚静脈怒脹
⇒ 心不全、COPD
 坐位で改善・浮腫
⇒ 心不全
 泣いている若い女性
⇒ 過換気症候群
 やせた若い男性、胸郭運動左右差
⇒ 気胸
②聴診のチェックポイント





Fine crakle
Coarse crackle
Wheeze
心雑音
呼吸音減弱・左右差
⇒
⇒
⇒
⇒
⇒
間質性肺炎
肺炎
COPD、気管支喘息、心不全
心不全
気道異物、気胸、胸水
<喘鳴の鑑別>
気管支喘息
左心不全
COPD
右心不全
労作時
急性喉頭蓋炎
(上気道狭窄)
呼吸困難
夜間から
明け方
呼気が主
夜間
就寝中
呼気・吸気
呼気
吸気
胸部XP
異常なし
呼吸器内科
過膨脹
滴状心
呼吸器内科
頚部XPで評価
コンサルト
心拡大
肺うっ血
循環器科
発作時間
耳鼻科
連続性ラ音
断続性ラ音
③血液・ガス・画像所見


炎症反応の有無や酸塩基平衡は疾患の鑑別だけでなく重症
度判定に有用
正常画像を知らないと異常はわからない!!
救急画像症例(1)
COPD
心不全
救急画像症例(2)
左気胸
肺炎(左下葉)
肺炎以外で頻度の高い救急呼吸器疾患
・気管支喘息
・COPD急性増悪
・間質性肺炎
気管支喘息の病態
喘息発作重症度
呼吸困難
動作
喘鳴 動くと苦しい 普通
小発作
苦しいが横
やや困難
になれる
中発作
苦しくて横 かろうじ
になれない て歩ける
大発作
苦しくて動
けない
歩行不能
会話困難
SpO2(%) PaO2
PEF
治療
β2刺激薬吸入
96%∼ 正常
80%∼
テオフィリン薬
β2刺激薬吸入
96%∼ 正常
80%∼
テオフィリン薬
β2刺激薬吸入反復
テオフィリン点滴
ステロイド点滴
91∼95% 60mmHg∼ 60∼80%
酸素
(エピネフリン皮下注)
(抗コリン薬吸入)
β2刺激薬吸入反復
テオフィリン持続点滴
∼90% ∼60mmHg ∼60% ステロイド点滴反復
酸素
(エピネフリン皮下注)
帰宅可※
帰宅可※
改善すれば帰宅可※
改善しなければ入院
入院
会話不能
大発作の治療に加え
呼吸減弱 体動不能
挿管・人工呼吸
重篤 チアノーゼ 錯乱
ICU
∼90% ∼60mmHg 測定不能
(気管支洗浄)
呼吸停止 意識障害
(全身麻酔)
失禁
※帰宅させる場合は,再発作予防としてプレドニゾロン30mg 5日間を処方
喘息?と思ったら
<まず問診>
・いつからか、どの程度動けるか
・現在の喘息治療薬と使用状況
・喘息の入院歴
・既往歴
・薬物アレルギー
・増悪原因(解熱剤内服や感染の有無)


救急外来で気管支喘息の確定診断はできない
喘息症状既往や明らかな呼気wheezeがあれば喘息を疑う
※大発作の場合は聴診上サイレントのことも!!.
喘息治療(1)
<治療例>
メプチン0.3ml + 生食1ml 吸入
リンデロン4mg + 5%TZ100ml点滴




SpO2 95%を保つように酸素投与
ソルコーテフやプリドールでも良いが、アスピリン喘息
は悪化することがあるので注意
テオフィリン単独はあまり効かない
ボスミン皮下注は緊急でない限り使う機会はない
喘息治療(2)
<帰宅時処方例>
メプチンエアー100吸入
プレドニゾロン5㎎錠 4-6錠



分2×3日分
呼吸器感染がある場合は適宜抗生剤を処方
解熱剤はアセトアミノフェンの方が無難
中高年では吸入手技を確認
帰宅させる前に…
・発作を繰り返していると大発作や喘息死のリスク上昇
・成人喘息はまず治らない
・発作時どうするかではなく発作を起こさないことが大事
・数日中にかならずかかりつけ医や呼吸器内科受診を
帰宅させてはいけない喘息症例

Wheezeの消失とは関係ない!!
・大発作以上
・中等度以上の発作を短期間に繰り返している
・ SpO2低下
・治療後も呼吸苦が全く改善しない、臥位で寝れない
※高齢者、重症感染、合併症、独居などは適宜判断
呼吸器内科call
COPDの病態
一回換気量の制限
収縮効率の低下
呼吸仕事量増大
COPDの診断・急性増悪

COPDは呼吸機能検査で診断、救急外来でできない
喫煙歴・慢性的な(労作時)呼吸困難感・画像から疑う
※重度COPDではサイレントチェストのことも!!

急性増悪のほとんどは感染、時々気胸

パルスオキシメーターだけでなく必ず血液ガスを確認

酸素投与はSpO2 90%前後目標に
ナルコーシスに備えてサイドにバッグバルブマスクを置く
帰宅させてはいけないCOPD症例

COPD急性増悪は基本的に入院
・症状の顕著な増悪
・明らかな呼吸不全の悪化
SpO2 90%以下、 Ph<7.35のアシドーシス、PCO2の増加
・意識レベル低下
・重症呼吸器感染、気胸など危険性の高い肺合併症
※高齢者、合併症、独居などは適宜判断
呼吸器内科call
COPD急性増悪の治療(1)
1)NPPVや挿管の適応があるか
<急性期NPPVの適応>
①高度の呼吸困難
②薬物・酸素療法に反応不良
③吸気補助筋の著しい活動性、奇異性呼吸
④呼吸性アシドーシスかつ高二酸化炭素血症
※挿管の適応はNPPVの除外基準(呼吸停止・分泌物多など)の場合と
NPPVを許容できない場合
2)感染の合併
起因菌は肺炎球菌、モラキセラ、レジオネラが多い
注射用β‐ラクタム系薬/β‐ラクタマーゼ阻害薬、
第3・4世代セフェム、カルバペネム、ニューキノロン推奨
COPD急性増悪の治療(2)
4)右心不全の合併は?
頚静脈怒張・浮腫があれば心echoで確認
右心不全合併時には利尿薬
5)ステロイドの併用
経口PSL 30-40 mg/dayを1-2週間
重症例ではmPSLl80-160mg/day静注やミニパルス
※増悪時の外来処方
外来でも大丈夫かな?
と思ったら…
気管支拡張薬の増量
プレドニゾロン経口
去痰剤
ペニシリン系・ニューキノロン系抗菌剤
間質性肺炎の病態
間質性肺炎の診断

fine crackleを聴くには背側

原因については救急外来では分からない

肺の荒廃が進行している場合、増悪していても画像は良く
分からないこともある

間質性肺炎の急性増悪は救命できないことも多く、挿管し
ないことも多い
帰宅させてはいけない間質性肺炎症例

呼吸不全がある症例は原則入院
・呼吸不全(SpO2<90%)がある
・LDH高値
・重症呼吸器感染
※高齢者、合併症、重症感染、独居などは適宜判断
呼吸器内科call
まとめ

呼吸困難を見たら、まずSpO2を見ながら酸素投与

血液ガス・採血(CBC・生化・凝固)・胸写・ECGはルーチン
でして良い

「息切れ」「呼吸困難」は自覚症状
問診・身体所見をしっかり!!
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