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「漂白剤の性質と使い方」:その3「シミ抜きの場合」
「ネオドライへの誘い」:「FAQ⇔データベース」 「漂白剤の性質と使い方」:その3「シミ抜きの場合」 1)「最後の手段」 「シミ抜きにおける漂白剤の使用」は、いろいろな「シミ抜き剤」を使 っても除去できなかったとき、 「最後の手段」として用いるのが常道となっ ています。このことは、 「使わないで済むなら、使いたくない」という強い 意志を含んでいます。 このことは拙著「誰でも成功するシミ抜き術」にも記しましたが、 「漂白 剤」は「その他のシミ抜き剤」に比べ「染色への危害」が発生する可能性 を常にはらんでいるからです。 従って、「漂白剤」を使用するからには、「絶対に遵守すべきルール」が あります。 2)「遵守すべきルール」 ☆ 「漂白剤」を使用する前に、必ず「生地の染色堅牢度」の簡易テスト (テスト法は、 「誰でも成功する・・・」参照のこと)を予め実施して 安全性を確認すること。 「脱色や退色」があるなら、 「シミ抜き不可能」とするか、 「色補正」 に回すか、顧客の意向を確かめてから作業することになる。 ☆ 「次亜塩素酸ソーダ」は、原則「使用禁止」とする。 その理由は、2つある。1つは、顧客が着用中の不注意により「家庭用 塩素系薬剤(漂白剤、殺菌剤、かび取り剤など)」を付着させ、それに よる脱色や変色がドライクリーニング後に発生しクレームになる事例 があまりにも多発しており(※)、その原因がクリーニング側でないこ とを証明する必要がある。そのとき、 「自らが使用していない事実」を 明かすのが最も賢明であり、ゆえに「使用禁止」を提案している。 (※)詳しくは、拙著「頻発事故事例解説27」を参照してください。 もう1つの理由は、 「酸素系漂白剤」でシミ抜き目的はおよそ達成で きるし、こちらの方が「繊維に安全」 「染色にも、より安全」であるか ら、あえて「次亜塩素酸ソーダ」にこだわる必要がないから、である。 ☆ いずれの「漂白剤」も、「加温」は「漂白作用」をスピードアップする が、その「効果と安全性」に関していえば「早ければ良い」というもの ではない。同様に、必要以上に「高濃度で使えば良い」というものでも ない。それぞれの「最適条件」で処理すること。 3)「よくある疑問・質問に答える(FAQ)」(シミ抜き篇) 質問・疑問 1 回答例 ウールや絹製品に「過炭酸ソ 毛や絹製品には、「過酸化水素」がお薦めである。 ーダ」使用で黄変する。酢酸 中和で復元するが、 その場合、アンモニアなどでアルカリ性にする と漂白作用は促進するが、ここでも「黄変」の可 「過酸化水素」に替えるべき 能性があるので、水で希釈して3%液のままで漂 か? 白する。 但し、処理に1∼3時間を要す。 2 「過炭酸ソーダ」を使った すすぎや中和のあとも「漂白」が進行するのは、 後、十分すすいで「酢酸中和」 「完全にすすげていない」からと思う。 するが、漂白がさらに進行し て脱色に至ることがある。 それでも中和すべきか? 「過炭酸ソーダ」はアルカリであり、 「アルカリ は濯ぎ難い」ことを念頭に、さらに十分すすいで ほしい。 「酢酸中和」はすべきである。 3 「過酸化水素」をアルカリ浴 「過酸化水素」は、オキシフル濃度(有効酸素3%) で使用するときの、「過酸化 で使用するのが有効かつ安全であることを先輩か 水素の適正濃度」と「適正な ら学んでいる。 アンモニア濃度」は? 「アンモニア」は 0.1%水溶液(pH10)程度 をお薦めしたい。因みに、家庭用の「過酸化水素」 の場合は、アルカリ性合成洗剤との併用を薦めて いるが、この場合もpH10 程度になっている。 4 「過炭酸ソーダ」の適正使用 濃度は? 先に記したように、「過炭酸ソーダ」水溶液の 漂白はアルカリ浴「過酸化水素」漂白と同じ反応 であるから、 「適正濃度」も有効酸素3%が基準に なる。 「過硼酸ソーダ」の有効酸素は約 10.5%である から、粉末1gを水 2.5cc で溶かせば「約3%」 となる。 5 「過硼酸ソーダ」 「過炭酸ソーダ」と「過硼酸 それほど、こだわる必要はないが、 ソーダ」の使い分けは? の方が「結果良し」の確率が高い、との経験測が ある。 (次ページに「続く」) 続)「よくある疑問・質問に答える(FAQ)」(シミ抜き篇) 質問・疑問 6 「過炭酸ソーダ」に「過酸 回答例 その効用は、よくは分からない。経験的に「良い」 化水素」を混ぜて使ってい 結果がでたのであろう。 るのを見かける。 その意味と問題点は? 考えられる効果としては、「有効酸素濃度」をア ップできることであろうか。 しかし、効果もさることながら、「安全第一」の ためには、あまりの高濃度は控えた方が良い。 7 「過炭酸ソーダや過酸化 見た目には分からなくとも、「酸化漂白」が過剰 水素」で処理したあと、さ に行われる心配がある。その結果は、「繊維破壊」 らに「過マンガン酸カリ」 につながっている。 処理する、どうか? 8 「効果より安全」を優先して、対応してほしい。 「ハイドロサルファイ 1)注意事項 ト」の正しい使い方は? ☆「金属」との接触を避けること (容器、ファスナー、ピン、金属繊維、ラメな ど) ☆「増量絹」「含金染色品」などに使用しないこ と。 ☆「酸」と「加温」が反応を促進する。 2)使い方 ☆ 使用濃度:4∼5%液 40∼50℃ 10∼30分 ☆ ウエットスチームで完全に すすぐこと(残臭を確認)。 ☆ そのあと「サワー」 <参考> 「酸素系漂白剤」の使用法につき、 「家庭用商品」の表示が参考になると思いますの で、下記(花王品の場合)しておきます。 (1) 家庭用酸素系漂白剤(粉末タイプ) 成分:過炭酸ナトリウム、界面活性剤、アルカリ剤(炭酸塩)、 漂白活性化剤、水軟化剤、安定剤、酵素 液性:アルカリ性 使用法:1g/3リットル(0.3%液)、浸け置き 30 分∼2時間 (2) 家庭用酸素系漂白剤(ジェルタイプ) 成分;過酸化水素、界面活性剤 液性:酸性 使用法:2ml/2リットル(0.7%液) 浸け置きは洗濯洗剤と一緒に 30 分∼2時間