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PERIOPERATIVE ANAPHILAXIS MANAGEMENT

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PERIOPERATIVE ANAPHILAXIS MANAGEMENT
SPP-30-1 関川浩樹,佐藤慧,杉浦孝広
アナフィラキシーはIgE抗体を介する免疫学的アナフィラキシーと,IgE抗体を介さない非免疫学的アナ
フィラキシーに分けられるが,発症機序が明らかになるまですべての反応をアナフィラキシーとして扱
い治療を行う.
免疫学的アナフィラキシー(Immunologic anaphylaxis)
肥満細胞や好塩基球上には高親和性IgE抗体受容体が存在する.ここにIgE抗体が結合し多価のアレ
ルゲンとともに架橋されることで脱顆粒が起こりケミカルメディエーターが放出される.
非免疫学的アナフィラキシー(non-immunologic anaphylaxis)
薬剤,寒冷刺激や運動が肥満細胞を直接刺激して脱顆粒を起こす.
周術期に発生するアナフィラキシーは1/13000件,そのほとんどは麻酔導入時であり,迅速な診断と治療
が必要である.
*Kounis syndrome
アレルギー反応に起因した急性冠症候群をkounis症候群と呼ぶ
筋弛緩薬(54.0%):ロクロニウム(43.1%)やスキサメトニウム(22.6%)に多い.非免疫学的
機序や潜在的交差反応によって初回投与時にも発生する可能性がある
女性>男性,30代に多い,筋弛緩薬が第4級アンモニウムイオンを有するため、日常接する機会の多
い化学薬品(歯磨き粉、シャンプー)中の成分と交差反応を起こしやすいため
ラテックス(22.3%) :ハイリスクグループ(医療従事者,繰り返し医療を受けている患者,
ゴム製造業者,ラテックスアレルゲンとの交差抗原性を持つフルーツにアレルギーがある場
合)に注意が必要
抗菌薬(14.7%) :βラクタム系抗菌薬(ペニシリン系,セフェム系,カルバペネム系)
ペニシリンとセフェム系の交差反応は10%程度
局所麻酔薬:保存剤や血管収縮薬が原因であることが多い
輸血:血小板製剤1/8500,血漿製剤1/14000,赤血球製剤1/87000
造影剤
色素,鎮静薬,オピオイド,コロイド,硫酸プロタミン,クロルヘキシジン
 一般的にアナフィラキシーは皮膚粘膜症状が主であるが、呼吸器症状、循環虚脱によって複合的に判断される
 全身麻酔時に発生するアナフィラキシーは原因薬剤の静脈内投与によって、重篤な症状を呈することが多い
 循環虚脱や気管支痙攣のみの単独発現を認めることも多い(特に筋弛緩薬)
アナフィラキシーの重症度評価:RingとMessmerの4段階スケール
症状
Grade
皮膚粘膜症状のみ
紅斑,蕁麻疹,血管原性浮腫
1
多臓器症状
皮膚粘膜症状,気管支攣縮,低血圧
2
危機的多臓器症状
皮膚症状,不整脈,循環虚脱,気管支攣縮
3
心停止
心停止(⇒心肺蘇生へ移行)
4
ラテックスや抗生剤に多い
筋弛緩薬に多い
Grade3-4のアナフィラキシーでは,脈拍の消失・酸素飽和度の低下・気管支攣
縮による換気困難が初発症状となることが多い!
重症度予測(以下の所見が見られる場合には重症となる可能性が高い)
・症状発現までの時間が短い
・皮膚症状の欠落…循環不全に陥ると皮下の毛細血管が収縮し皮膚症状が欠落する
・徐脈の発生…血管内容量の減少によりBezold-Jarisch反射が引き起こされるため,常に頻脈とはならない
(奇異性徐脈の発生は麻酔中のアナフィラキシーの10%で起こる)
1次治療
原因の暴露中止,気道確保と酸素投与,十分量のエピネフリンを投与,手術中断
RingとMessmerの4段階スケール
Grade
1
2
3
4
症状
エピネフリン(成人)
皮膚粘膜症状のみ 紅斑,蕁麻疹,血管原性浮腫
5-20μg静注
多臓器症状
皮膚粘膜症状,気管支攣縮,低血圧
危機的多臓器症状 皮膚症状,不整脈,循環虚脱,気管支攣縮 100-200μg静注
心停止
心停止(⇒心肺蘇生へ移行)
1mg静注
エピネフリン(小児)
1-5μg/kg静注
5-10μg/kg静注
0.01mg/kg静注
 人員確保,緊急薬剤,静脈路の確保は必須(十分な輸液投与を行う必要がある)
 静脈路が確保できていなければエピネフリン筋注(成人:10μg/kg,<12歳:300μg, <6歳:150μg )
 エピネフリンはアナフィラキシー治療において在院期間,死亡率を減らすことができると証明された唯一の薬剤
でありアナフィラキシーの治療において第一選択薬
 エピネフリン投与が効果的であり,繰り返しの投与を有する場合には持続投与を行う
 心停止が起こった場合にはただちに心肺蘇生を行う
 状況に応じて観血的動脈圧測定や中心静脈路の確保を行う
β刺激薬の吸入(2-3パフ)
エピネフリンで症状が改善しない場合,ドパミンやノルエピネフリンを投与
観血的動脈圧測定や中心静脈路の確保
2次治療
抗ヒスタミン薬の投与(クロルフェニラミン5mg,ファモチジン20mg)
ステロイドの投与(デキサメタゾン0.1-0.4mg/kg,ハイドロコルチゾン2-4mg/kg)
Grade3-4のアナフィラキシーであれば手術中止,縮小の決定
二相性アナフィラキシーに備えて帰室病棟の選択+24時間モニタリング
 血圧維持のためバソプレシン2-5U投与,4%メチレンブルー1.5mg/kgの投与も考慮される
 β遮断薬やACE阻害薬服用患者でエピネフリン抵抗性の場合にはグルカゴン 1-5mgの投与を考慮
 H2受容体拮抗薬とH1受容体拮抗薬の投与は,単独で用いるよりも効果が得られるが,治療の主体ではない
ため危機的状況を脱してからでよい
 ステロイドは遷延性,二相性アナフィラキシーの予防目的で使用する
アナフィラキシーショックから離脱した後,循環動態・呼吸が不安定であれば手術を中止・短縮する
二相性アナフィラキシーを考慮し帰室病棟を選択,12-24時間モニタリングを行う
二相性アナフィラキシー
 0.4-20%の症例で発生するとされる
 Grade3-4のアナフィラキシーショック後のモニタリングは必須
 2次治療とされているGlucocorticoidは,二相性アナフィラキシーに効果があるかもしれない
血清トリプターゼ採血
試験管に注意!
 αトリプターゼは常時分泌されているが,βトリプターゼは肥満細胞内の顆粒に貯蔵され脱顆粒に
よって全身に放出される.ヒスタミン(15分)と異なり半減期が120分と長いため,発症後2時間以内
に採血すればよい.
 24時間後の採血を基準値としてトリプターゼの上昇を比較する
(免疫学的機序>非免疫学的機序)
 血清トリプターゼ>25μg/Lの場合は脱顆粒が行われたことが示唆され、アナフィラキシーが強く疑
われる
ロクロニウム投与から2分後にスガマデクスを投与しても皮膚反応を抑制で
きない
ロクロニウム投与から2分後にスガマデクスを投与してもロクロニウム単独投与と比較して皮膚反応を
抑制しない
ロクロニウムとスガマデクスを混合投与した場合には皮膚反応を抑制する
ロクロニウムと同時にスガマデクスを投与することは臨床的に不可能
現在のところ
ロクロニウムによるアナフィラキシーショックと判断される場合,スガマデクスは投与しない
第一選択は,従来通り十分量のエピネフリンを投与する
The role of sugammadex in the development and modification of an allergegic response to rocuronium: evidence from a cutaneous model.
Anaesthesia 2012, 67, 266-73
最も重要なことは再びアナフィラキシーショックを起こさないこと(本人への告知と回避)
原因物質の特定,機序の解明,代替薬剤の有無を判断
患者の不利益を避けるため不用意にアナフィラキシーと診断しない
以降のアナフィラキシーを予防すること
 原因物質の特定が困難である場合は,可能な限り原因の特定を行う
 予防目的で副腎皮質ステロイドや抗ヒスタミン薬を投与してもアナフィラキシーを防ぐことはできない
白血球ヒスタミン遊離試験
 原因薬剤を試験管内で添加し好塩基球活性化の程度を定量評価する
 ロクロニウムに対するアナフィラキシー検出は感度91%,特異度100%
交差反応
 筋弛緩薬同士の交差反応性を示す例は多く(60-80%),安全と思われる症例においても注意が必要で
ある
皮膚試験
 原因薬剤特定のために行うがアレルギー反応を引き起こす可能性あり
 偽陰性の結果が出ることを避けるため,アナフィラキシー発症後4週は経ってから行う
1次治療
原因の暴露中止,気道確保と酸素投与,十分量のエピネフリンを投与,
手術中断,人員の確保,静脈路の確保(十分な輸液),緊急薬剤の確保
Grade
症状
1
皮膚粘膜症状のみ
紅斑,蕁麻疹,血管原性浮腫
2
3
4
多臓器症状
危機的多臓器症状
心停止
皮膚粘膜症状,気管支攣縮,低血圧
皮膚症状,不整脈,循環虚脱,気管支攣縮
心停止(⇒心肺蘇生へ移行)
エピネフリン(成人)
エピネフリン(小児)
5-20μg静注
1-5μg/kg静注
100-200μg静注
1mg静注
5-10μg/kg静注
β刺激薬の吸入(2-3パフ)
エピネフリンで症状が改善しない場合,ドパミンやノルエピネフリンを投与
2次治療
抗ヒスタミン薬の投与(クロルフェニラミン5mg,ファモチジン20mg)
ステロイドの投与(デキサメタゾン0.1-0.4mg/kg,ハイドロコルチゾン2-4mg/kg)
Grade3-4のアナフィラキシーであれば手術中止,縮小の決定
二相性アナフィラキシーに備えて帰室病棟の選択+24時間モニタリング
再発予防
原因薬剤の特定(白血球ヒスタミン遊離試験、皮膚試験)
筋弛緩薬同士の交差反応性にも注意する
0.01mg/kg静注
• 2015 update of the evidence base: World Allergy Organization anaphylaxis guidelines. World
Allergy Organ J. 2015 Oct 28;8(1):32
• Anaphylaxis and Anesthesia: Anesthesiology 2009; 111:1141-50
• アナフィラキシーガイドライン 日本アレルギー学会
• 周術期におけるアナフィラキシー 主に筋弛緩薬について:麻酔 2011; 60: 55-66
• Kounis syndrome: an update on epidemiology, pathogenesis, diagnosis and therapeutic
management. Clin Chem Lab Med 2016 Mar 11
• The role of sugammadex in the development and modification of an allergenic response to
rocuronium: evidence from a cutaneous model. Anaesthesia 2012, 67, 266-73
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