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平成28年度関東農政局「食育月間セミナー」(概要)
気軽に始める「食と農の体験」、そこから芽生える「もったいない」
1
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日時
平成28年6月27日(月)13:30から15:45
場所
さいたま新都心合同庁舎1号館講堂
(さいたま市中央区新都心 1-1)
参加者
413名
4 内容
【 講演 】
講師:上岡 美保氏(東京農業大学国際食料情報学部 教授)
テーマ:「食・農・環境の関わりと食育-食の循環や環境を意識しよう-」
本日は、「もったいない」という言葉が何
年か前に流行し、世界の共通する言葉となっ
ており、日本から世界へもっと広げていこう
という思いで、お話をいたします。「もった
いない」について、食品ロスや食品廃棄につ
いての現状、実態、なぜ減らさなければいけ
ないのか、減らすにはどうしたら良いのかに
ついて、考えていきたいと思います。
1 今、重視される食の循環・環境~食育基本法、食育推進基本計画~
食育基本法が 2005 年に成立し、10 年が経過しました。基本法ができると、
5年毎に、基本計画が立てられます。1番最初の基本計画には基本方針が7つ
あり、基本方針自体は現在も変わっていません。基本方針は、国民の心身の健
康の増進と豊かな人間形成、農の大事さや環境への配慮などからなり、第1次
食育推進基本計画(2006 年から 2010 年まで)は、とにかく国民に「食育」と
いう言葉の周知が中心でした。
2011 年から 2015 年の第2次食育推進基本計画は、第1次である程度国民に
周知されたことから、今度は実践的に行うということで、重点課題を3つとし、
①ライフステージに応じた間断ない食育、②生活習慣病の予防、③子供だけに
限らず友達や家族と共に食べる共食を重点課題として推進してきました。そし
て、2016 年度から第3次食育推進基本計画がスタートしました。
第1次から第3次計画まで、農林水産省は、無形文化遺産にもなりました和
食、日本型食生活の普及、そして、農林漁業体験活動の普及、地産地消などを
中心に推進しています。そして、国民の健康という面では、厚生労働省。子供
どもの教育の面では、文部科学省。主に、この3省を中心に、食品安全委員会
や、消費者庁、環境省等も協力して、食育推進基本計画が作成されており、そ
-1-
れら全体を総括するのが内閣府でした。先ほど、局長のお話にありましたが、
本年度から農林水産省が総括する役割を担っていくということで、農業の大切
さ、食の基本は農業、農業生産であり、今後、農水省の事業等、ますます農の
部分から食育を厚くしていけるのではないかと期待しています。
今年度から始まりました第3次食育推進基本計画では、5つの重点課題があ
げられ、①若い世代を中心とした食育の推進、②多様な暮らしに対応した食育
の推進、③健康寿命の延伸につながる食育の推進、さらには④今日のサブタイ
トルの「食の循環や環境を意識した食育の推進」というところで、新たに、フ
ードシステムの中に私たち消費者があることを意識するということが入りまし
たし、⑤食文化の継承に向けた食育の推進も追加され、全部で5つの重点課題
でスタートしました。具体的な目標値も、第2次計画の 11 項目から、5つの重
点課題のもとに 21 項目まで広がりました。
2 日本の食品廃棄の実態は?~わが国の食品廃棄物の排出量~
日本における年間の食料輸入総量は約 5,500 万トンです。日本の食料廃棄物
量は 1,704 万トンです。日本は、カロリーベース食料自給率が4割で、6割を
輸入に頼っているわけです。食品廃棄が輸入量の3割に相当します。食品廃棄
の量は、わが国の米の生産量(約 860 万トン)の約2倍に相当します。わが国
の食品廃棄物の排出量(約 1,700 万トン)のうち、事業系廃棄物は 819 万トン 、
家庭系は 885 万トンで半分以上は私達の家庭から出ているということです。
また、食べられるのに 640 万トンが捨てられ、事業系の場合は、焼却・埋立
てが約4割に対し、家庭系は 93.7%が焼却・埋立てされ、たくさんの CO₂ が
発生し、環境への負荷をかけています。再生利用は事業系の場合は、約6割が
再生利用(水素、メタンガス、あるいは飼料、肥料)されているのに対して家
庭では6%しかなく、いずれにしても、私たちが食べる物として加工したもの
を捨て、さらにこれを再利用することで非常に高価な飼料等を製造しているの
が現状です。2014 年におけるWFPの世界の食料援助量が約 320 万トンですの
で、私たちが食べられるのに廃棄している家庭系廃棄物量(312 万トン)とほぼ同
じくらいの数字です。
私たち、家庭での食品ロスの現状ですが、世帯あたりのロス率は 3.7%、だい
たい1人当たりに使われる食材1kg 当たりで捨てられているのは約 40g で、食
べ残しが多いのは単身世帯となっています。また、皮の厚剥きなどの過剰な除
去も原因です。これは、調理技術の伝承の点からも懸念されます。40g の中身
ですけれども、やはり多いのが野菜で半数ほどです。たくさん購入し、冷蔵庫
の中で腐らせてしまうということなどがあると思います。
3 食品ロスは何故出るのか?~ 日本の食生活変化と諸問題~
京都大学の先生が、捨てられたゴミの中から、ど
んなものが捨てられているのかと調べたところ、
「お買得」、「お徳用」など、ついつい買いこんだ
ものが、食品ゴミの4割として手つかずのまま捨て
られていました。家族4人の世帯ですと、年間約6
-2-
万5千円捨てているとの試算もあり、その金額を思うとなかなか無駄にするこ
とはできません。
では、こうしたロスがどうしてでるのか農林水産省の調査で、「なぜ、食品
を使わないで捨てたのですか」という質問には、鮮度が落ちた、腐敗した、カ
ビが生えた等が多いのですが、賞味期限・消費期限が切れたから捨てた、五感
で確認することもなく期限だけで捨てた、という人がいました。ちょっと驚き
なのが、食品が中途半端に残ったから捨てた、例えばニンジンの先っぽが余っ
たから捨てたといった人が 15%います。もう1つ、「なぜ、調理した料理を食
卓に出さずに捨ててしまったのですか」という質問に対しては、料理を作り過
ぎた、料理を失敗してしまったという回答がありました。調理技術の問題もあ
ります。そして、家族の中に、食事を摂らなかった人や調子が悪くて食べなか
った人がいるからという回答です。この結果に驚きを感じました。このように
食品ロスの問題は、私たちの食生活の中でも大きな問題です。
私たちの食生活は、「伝統的食生活」から「洋風化」、「外部化」にシフト
しています。「洋風化」というのは、米が減って畜産物が増えること、「外部
化」というのは、総菜を買ったり外食したりする割合が増えるということで、
私もお世話になっていますが、食品産業が発達し、洋風化や外部化の中では、
安い輸入農産物に頼らざるを得なくなり、こうしたフードシステムの中で、栄
養バランスの崩れ、生活習慣病の増加、小学生くらいの子供でも痛風及び糖尿
病予備軍が増えているそうです。
今日では、いつでも、どこでも、コンビニで食品が買え、食習慣が乱れ、個
人で異なる個食、みんなが忙しいために1人で食べる孤食が多くなりコミュニ
ケーションの欠如が起こっています。あるいは、食と農の距離が乖離し、消費
者に意識の薄れが見られ、それが、食品のロスにつながります。また、生産と
消費の距離が乖離すると、安全にも不安があります。安い輸入農産物は我々の
食生活レベルを保つためには必要ですが、やはり自給率が低下し、国内農業に
影響を及ぼしていきます。
地域の食文化 、祭りというのは農業を中心として、豊年祭、収穫祭等が行わ
れ、そこで、その時期に食べる行事食、伝統食を食べてきたということで、地
域の食文化だったり、地域の調理技術の伝承だったりが生まれてきたというこ
とです。
また、食料は、たくさんのエネルギーを使って輸入されているので、地球環
境への負荷があり、私たちの子や孫世代まで、本当に食料を安定的に供給でき
るのか、食料安全保障の問題にもつながっていきます。
ところで、私たちは、何のために、食べているのでしょうか。人間にとって
のおいしさとは何なのかというと、京都大学の味覚を研究されている伏木先生
によると、生理的に欠乏しているもの、子供のころから食べているもの、本能
が強く関与するもの、そういったものがおいしさのようです。そして、人間特
有のおいしさとは、情報であると言っています。これは、人間が感じるおいし
さというのは、これを食べても大丈夫だという情報のベースがあって、はじめ
-3-
て成り立つのです。したがって、安全の情報は最もおいし
いといえます。野生動物のように自分で獲物を捕って、口
に入れて命がけで判断しないので五感が鈍くなってきてい
ます。賞味期限が切れたとしても、五感を使って確かめる
ことをしなくなったことから、食品ロスの増加を招くこと
になり、そうした意味でも味覚教育の重要性を述べていま
す。例えば、賞味期限はおいしく食べることができる期限
で、期限が切れたからといって、すぐに捨てなくてもいい
ことを知っていれば、味見して、大丈夫だったら食べる。消費期限は、お弁当、
総菜など、短い期限のものですから、できれば期限を過ぎたら食べない方が良
いけれども、何時間かぐらいだったら食べても大丈夫のように、自分で確かめ
るということが大事です。
このように、食品ロスは、どうしてでるのかということは、フードシステム
が複雑に深化し、生産者と消費者の距離が大きく離れ、国内農業が縮小し、食
品産業が発達して便利ですが作る技術がなく、味とは関係なくリードしている
情報というおいしさというものを消費者が選択した結果です。
4 食品ロスは何故いけないのか?~消費者の視点から食料自給率を考える~
食品ロスはどうしていけないのでしょうか、やはり1番は「もったいない」
です。生産者の方が一生懸命作っている気持ちは、消費者と無関係ではありま
せん。食料自給率、そして、世界の中に併存する飢餓と飽食、理由としてこう
いったことがあります。食料面、農業面、環境面、多面的に影響しているとい
うこともありますし、個人のレベルから国レベル、地球レベルの問題にまでに
関わってきます。
「自給率は私には関係ないわ」と思われている方もいらっしゃるかもしれま
せんが、私たち消費者の立場から自給率を考えると国産品はどれだけあるかと
言うことです。これを考えると、自給率を上げるには2つの方法しかありませ
ん。つまり、国内生産量が一定ならば分母の国内消費を小さくするしかないし、
もう1つは消費量が増えていないのであれば生産量を上げれば良いということ
になります。
まず、1つ目の分母を小さくするには、食品ロスをなくすことで分母を小さ
くできる、食品ロスをなくすことで自給率が上がらないまでも、もしかしたら
消費者の力で少しでも止まらせることができるかもしれない、これは環境負荷
の軽減の面でも同じで、そのためには意識改革、食育が重要になってきます。
もう1つ、分母が一定で分子を増大させること、国産志向を増大させること
によって、「よし、皆さんが買ってくれるなら作るよ」というように誘発して
いくこと、そのためには、「地産地消」、「都産都消」あるいは「国産国消」
をしていくことが重要で、そのためには農業を知る、体験するという食育が重
要になってくると思っています。
5 食品ロスを減らすためには?~食品ロスを出さない取り組み~
食品ロスを減らすために私たちは、農業を体験したり、農家の方に聞いたり、
-4-
直売所に行くだけでもいいです。理解する、生産者を意識する、買いすぎない、
作りすぎない、消費期限・賞味期限以内に使い切る 、頑張って調理技術を習得
する、味覚を鍛える、人とのつながりを大切にすることではないかなと思いま
す。
私どもの所属している学科では、2年生になると1週間、農家の方にお世話
になり、泊まり込んで農業生産の実習を行います。その時の学生の感想では「普
段私達は食べられないと思って捨てている部分や腐ったから捨てようと思って
いらないと判断した部分が、実は可食部で、農家の方が大事に育ててくださっ
たものだと考えると、とてももったいない事をしているんだなと実感しました」
と答えています。まさに今日のテーマである「食と農の体験」そこから芽生え
る「もったいない」と言うことだなと思いました。頭でわかっていることと、
自分が実際に実行して、その大切さを実感、体験したことがリンクした時に、
意識が変わっていくんだなということ。体験や学び、知ることによる意識の変
化です。
また、日頃から楽しんで食品ロスをなくすことも重要です。1つは「フード
サルベージ」です。「サルベージ」つまり「すくう」という意味ですけれど、
使わない食材を持ち寄って、「面白く楽しく食べたらいいんじゃない」という
サルベージパーティーという考え方が最近あります。それから、長野県松本市
で始まった「3010運動」。残念ながら外食シーンでの食品ロスは、酒宴を
伴う部分で非常に高くなっています。例えば、乾杯して最初の 30 分は自席で料
理を食べましょう、最後の 10 分はもう1回戻って残った料理を食べましょうと
いうものです。
生産者は、地域とつながりや情報発信を行い、企業もどんどん地域とつなが
り、あるいはフードバンクの取組等にも協力し、一般企業でもCSR活動であ
るとか、地域の皆さんとのつながりという意味での協力が必要です。社会全体
としてもこういった教育の改革、もっと子供の頃から食育を実践するんだとい
うことも大事ですし、マスコミも消費者に対し正しい情報の発信によるつなが
りが大事かなと思っています。
最後になりますが、どうして食品ロスが出るのか、この現状を作り上げたの
は私たちのニーズだったのではないのかなということです。だとすれば、私た
ち消費者が意識を変えるということ、つまりは食育、食農教育をしていくこと
で変わっていくのではないかなと思っています。
【 事例紹介① 】
NPO 法人とうもんの会 理事長 名倉 光子氏
テーマ:体験から生まれる子どもたちの笑顔
1 とうもんの会
とうもんの会は地域に根ざした農家のお母
さん、工場を退職した人、現役で働く子供を
持ったお母さんなど、いろんな方が集まって、
-5-
今は 38 人で運営しています。とうもんの会が取り組んでいる事業は、田園空間
整備事業という国の事業で始まりました。とうもんの会は、自然観察部、農業
体験部、食体験部、総務部、それから直売所を支えてくれている生産者 330 人
の「恵みを伝える会」の5つの組織からなっています。
2 農業体験・自然観察・食体験
特産である落花生の収穫体験、ダイコン掘り、茶娘に扮して茶摘み体験、ジ
ャガイモ掘り、田植え・稲刈り体験、ミカン狩りがあります。ダイコン掘り体
験では、マンション住まいの方が「ダイコン切り干しはどう干すのですか?」
と言うので、「ザルに広げて破れたストッキングでもくくってベランダに干し
て、乾いたら冷凍しておくと旨味が増して美味しく食べられますよ」と言うと、
2、3か月経ってからお手紙をいただき、「あの時のダイコン切り干しが簡単
で美味しかったので、あれからダイコンの大安売りがあると2本、3本と買っ
て作り置きしています」ということでした。加工品を作る知恵さえあれば、食
が豊かになります。また、切り干しダイコンは、いろんな食材を使って料理が
できることも覚えてもらい良かったと思いました。
田んぼの生き物調査は、どんなものが生息しているか、10 年間、夏と秋に年
2回続けています。今の子供たちは田んぼで遊ばないので、生き物がいること
を知らないんです。だから、この体験を始めました。また、パイプラインに替
えたことで「入水路」がなくなってしまいました。そこで、生態系がどう変わ
るかも知りたかったので調査を進めています。毎回 80 人位の子供たちがワイワ
イ田んぼの中を探します。
食体験は、お米をひいて米粉に、大豆をひいてきな粉にします。お母さんが
「きな粉は大豆でできているんだ」と言っていました。子供たちがいろんな体
験をしています。
3 もったいないお化けがでるよ!
私がいつも会員に言っている言葉「もったいないお化けが出るよ」。カボチ
ャは煮るときに面取りをします。全部とっておいてグリーンのカボチャスープ
を作ります。1番だしを取ると鰹節が余ります。それを冷凍にして細かく切っ
てショウガの佃煮を作るときになまり節の代わりにそれを全部入れます。使い
切ってしまうことは「知識」ではなく、「知恵」だと思います。その知恵を授
けてくれるのは、言うまでもなく、自分より先に生まれて生きてきた方たちで
す。今、一年間の行事を調べて、その行事食の伝達のために月1回、定食をや
っています。是非続けていきたいと思います。
皆さんが商品として農産物を手に入れるものは、私たちが商品として出した
ものです。農家が農産物を作るには、3、4割は捨てなければなりません。「曲
がっているから」、「虫がついたから」、「半分痛んでいるから」、「形が悪
いから」、そういう理由で流通に乗らない農産物がたくさんあります。それを
なんとか流通に乗せて食べる工夫をしたいと思っています。そうしないと農家
は生き残れないのです。一つひとつにコストがかかっています。多くの農業者
が国産の農産物を作れるようになるためには、消費者の皆さんが「これでもい
-6-
いじゃん」、「いいよこれでも」、「十分食べられるし美味しいじゃん」と言
っていただける流通の仕組みを考えていただきたいと思っています。
そんな私たちの願いを叶えてくれる若者がいます。「近くにある大きな都市
のシャッター街をなんとか復活させよう」と大学生が動き出しています。そこ
の朝市に農産物を出させてもらっています。大学生の力で私たち農業者の思い
を都市部の皆さんに伝える活動を一緒に始めています。
私たちは、子供たちの笑顔と農家の皆さんと、それから地域の農村風景を守
りたい、これから先、この農村風景が次世代の子供たちにも受け継がれますよ
うに、農家の皆さんがここで生活して後継者が育ちますように、これからも先、
そのお手伝いをさせていただきたいと思っています。そんな意味では私たちと
うもんの会の活動は、これから先もバトンタッチをして、若い人たちも同じ思
いでつなげていってくれたらいいなと思っています。
「もったいないお化けが出るよ」と言いながら、いろんな調理方法で子供た
ちにおいしさを届ける。そしたらきっと子供たちは「もったいないから食べな
きゃいけないな」、「残しちゃいけないね」と学校給食の合い言葉になったり、
家庭での合い言葉になったりしてくれたらいいなと思っています。
【 事例紹介② 】
コープみらいCSR推進室 室長 岩佐 透氏
テーマ:おいしく食べてムダをなくそう!
コープみらいは、千葉県、埼玉県、東京都で生
協事業を展開しています。今日は「おいしく食べ
て、ムダをなくそう!」についてお話します。野
菜・果実は生鮮食品であって工業製品ではありま
せん。同じものは1つもなく、生産者、生産場所、
生産時期もそれぞれです。また、天候にも左右さ
れます。近年、地球温暖化の影響を口にする生産
者が増えています。昔と違って、セオリー通りに生産することが難しくなり、
臨機応変に生産対応することが求められています。また、資材や肥料の価格高
騰や人手不足も深刻です。このような状況の中、生産者が丹精こめて作った野
菜・果実を捨てるということは、生産、収穫、加工、流通にかかるエネルギー
や水も全てムダにしてしまうことになります。ゴミとして焼却すると CO₂ を
排出します。そして、何よりも生産者のこだわり、想い、苦労もすべて捨てて
しまうことになります。コープみらいでは、産地・生産者が市場には出荷でき
ないと判断し、捨ててしまう野菜・果実について、消費者に理由を説明してお
いしく食べていただく取り組みを進めています。
1 「ムダをなくそう、御三家」
ムダをなくそう、御三家とは、「不揃い」、「ハネッコ」、「天候被害果」
のことです。「不揃い」は、大小を混ぜて販売します。いわゆる、サイズミッ
-7-
クスです。例えば、トマト。生産者は売れ筋であるL、Mサイズになるように
生産しますが、大きいものや小さいものができます。それらを規格外だからと
いって捨ててしまうのは、もったいないことです。選別をしないのでサイズが
バラバラですが、味はほとんど変わらないお買得な商品です。「ハネッコ」は、
キズがあったり、形がいびつなものです。「天候被害果」は、台風や干ばつな
どによりキズがついたり色が悪かったりするものです。本来であれば、このよ
うな商品は無いほうがよいのですが、天候不順などの影響を受け残念なことに
年々取り扱いが増えています。このように産地の段階で捨ててしまうものを通
常品より安い価格で販売することで、生産者の収入は増え消費者は安く購入す
ることができます。どちらもハッピーな関係です。番外編として「畑まるごと
もぎっこトマト」という商品があります。通常、トマトは流通過程で熟してい
きますが、この商品は熟したところで収穫しますので、選別する時間が無く不
揃いのまま消費者にお届けしています。
2 セットして「ムダをなくそう」
数量限定の人気商品に、「産地支援セット」と「もったいないセット」があ
ります。「産地支援セット」は、豊作などにより産地で余ったものや台風など
天候の被害を受けた野菜や果実を、数種類セットしてお届けしている商品です。
「もったいないセット」は、販売段階で余った商品です。どちらもこれまで捨
てる対象になっていました。このようなセット商品は消費者に届くまで、何が
入っているのかわかりません。届いた段階でどんな料理に使うか考えますので、
頭の体操になると喜ばれています。また、これまで買ったことのない野菜や果
実が届き、試行錯誤をしながら食べることにもなります。料理のレパートリー
が増えて、おいしければ、また、購入して食べようということにもつながりま
す。
3 進化を続ける「ムダをなくそう」
ムダをなくす取り組みも、年々進化しています。「もったいないエコ作リー
フレタス」という商品があります。リーフレタスは、陳列の際の見た目やサイ
ズを調整するために外側の葉をむき、それだけを集めました。実は、この葉は
味が濃くてとてもおいしいです。次に、「国産ミニアスパラガスの根元だけ集
めました」という商品があります。ミニアスパラは穂先の長さを一定にカット
して出荷しています。カットした根元の部分を集めて販売しています。これも
多少筋っぽいところがありますが、甘くておいしいです。一番人気は「軸取れ
ちゃいました生しいたけ」という商品です。収穫や選別工程で軸が取れてしま
った生しいたけを集めたものです。サイズはバラバラですが、肉詰め料理には
最適です。これまで産地では当り前のように捨てられていたものを商品にする
ことで、消費者においしく食べてもらっています。番外編の「石渡君じゃがい
も」という商品は、千葉県房総食料センターの新規就農者の石渡君が作ったじ
ゃがいもです。名人が作ったじゃがいもと比較すると、多少見劣りするかもし
れません。しかし、新規就農者であること、そして農業にチャレンジしている
-8-
努力を消費者に伝え、様々な評価をいただくことで成長してもらい、その産地
の名人になってもらうように応援しています。
4 産直があるから~安心・信頼の輪 食卓を笑顔に、地域を豊かに~
コープは産直があるから、そして生産者と組合員とのつながりがあるから、
これまで紹介させていただいた「おいしく食べて、ムダをなくす」取り組みを
進めることができます。天候被害果など詳しく説明しなくても、消費者は生産
者の苦労を考え積極的に購入し、手作りを楽しみながら、おいしく食べること
で応援しています。何よりも信頼関係がベースになっています。コープみらい
は、これからも「もったいない」を合言葉に、規格外、余剰品などわけあり商
品を販売することで、生産者の育てた野菜・果実をムダなく利用する取り組み
を進めていきます。
【 事例紹介③ 】
東京ガス株式会社リビングマーケティング部「食」情報センター 真坂泰子氏
テーマ:「環境に配慮した食の自立」「五感の育成」
本日は、「環境に配慮した食の自立」と「五感
の育成」、いわゆるエコ・クッキングについて話
をします。私たちが生きていくために欠かせない
食そしてエネルギー、食は生きることの基本でエ
ネルギーは欠かすことのできない大切な資源で
す。食やエネルギーは現代社会が抱える様々な問
題を持っており、食とエネルギーが結びつく調理
を切り口にし、体験をすることでそれぞれの問題
解決を図ること、問題を理解することです。
1 エコ・クッキングについて
感性を磨き豊かに味わうための「五感の育成」、そして自ら気づき環境に優
しい行動がとれる「環境に配慮した食の自立」、この2つを合わせもって豊か
で環境に優しい食生活が実践できると考えています。
東京ガスでは、今から 20 年ほど前(1995 年)に「エコ・クッキング講座」
を開設し、2003 年には、「エコ・クッキング指導者養成講座」を開設し、全国
で幅広く講座を開設しています。エコ・クッキングの指導者は、現在、3,500
名を超えています。
食べ物は産地から店に並べられて、そして私たちの口に入るまで、様々なと
ころで色々なエネルギーが使われています。先ほど上岡先生から「第3次食育
推進基本計画」で地産地消、国産食材を使用しましょうという話がありました。
私たちが行っているエコ・クッキングにおいても、地産地消そして国産食材を
推進しています。更に、買い物から調理、食事、片付けにおいて、食やエネル
ギーを実践できる取組としてエコ・クッキングを行っています。それでは食材
が店頭に並ぶまでの栽培、運搬時におけるエネルギーの消費について考えてみ
-9-
ましょう。
2 豊かで環境に優しい食生活
(買い物のポイント)
① 旬の食材を選ぶということ、②地産地消を心がけるということ
旬とはご存じのとおり野菜や魚、果物が自然にたくさん採れる時期のこと
を言います。旬の食材はおいしくて栄養があります。1つの例を挙げますと、
トマトの旬は夏ですが、トマトは人気があり、今では温室栽培によって1年
中スーパーに並びいつでも食べることができます。ただし、栽培するときに
必要なエネルギーという観点からみると、温室栽培は旬のトマトに比べ約 10
倍のエネルギーが使われていることが分かっています。旬の時期においしく、
値が安いものを食べるということが大切ではないでしょうか。
(調理のポイント)
① 食材を無駄にしない
野菜の切り方などを工夫してみてください。ニンジンやダイコンなどをど
のように食べていますか?皮の部分はむいていますか?安心して食べられる
野菜は、たわしや手などでこすってきれいに洗って皮ごと食べてみてはいか
がでしょうか。ニンジンのへたの部分は包丁でサクッと切って落とされてい
ませんか?ブロッコリーの軸は食べていますか?キャベツの芯は?キャベツ
の芯は捨ててしまっている方が多いかもしれませんが、斜めに薄切りにして
スープの具材にしてみてはいかがでしょうか。野菜を丸ごと使うことを心が
けて切り方を工夫すると可食部分を約 10%増加することができ、逆に 10%生
ごみを減らすことができます。更に野菜によっては、皮の近くに栄養成分や
香り成分が多く含まれているので、こうしたことからも、食材を無駄なく使
うことが大切です。
②環境に優しい熱源を選ぶ
東京ガスが提供している都市ガスの主な成分は天然ガスで、燃やしたとき
に発生する CO₂ の量を比較すると、石炭を 100 とした場合、石油 80、天然
ガス 60 で、天然ガスは環境に優しくクリーンなエネルギーと言えます。
③エネルギーを上手に使う
皆さんは鍋の底に水滴が付いたまま、あるいは鍋が水でびちょびちょのま
ま火にかけていませんか?布巾などで水滴を拭きとることでガスの使用量を
2%減らし、また、CO₂ を削減することができます。鍋底から炎がはみ出て
いますと、エネルギーの上手な使い方とはいえません。鍋の底の大きさに合
った火加減にすることでエネルギーを大切に使うことができます。また、お
湯を沸かすときにはコンロに直接かけるのではなくて、熱効率の良い給湯器
を使ってもらうと更に省エネになります。また、鍋を火にかけるときは、ふ
たをすると、CO₂ を年間 7.3kg、ガスの使用量を年間約 15%減らすことがで
きます。
今、紹介した3つのことは、一つひとつは小さなことですが、積み重ねる
ことで大きな効果を生み出すことができます。
- 10 -
④省エネな調理法を工夫する
エコ・クッキングといっても、特別なメニューがあるわけではありません
が、日々の調理の中で少し工夫するだけで、エネルギーや水を節約して、お
いしく調理することができます。
「余熱調理」をして、エネルギーを無駄なく使って、また、グリルで魚や
野菜を焼いた時、グリル内の温度が大変高温になっているので、余熱を利用
するとエネルギーを無駄なく使うことができます。
1つの鍋での「段取り調理」は、まずは段取りを考え、味・香り・色など
影響の少ないものから調理をすることで、1つのフライパンや鍋で料理をす
ることができ、それぞれの調理器具を使い回すということで洗い物を減らす
こともできます。更に予熱を省けますのでエネルギーの節約につながります。
パスタを茹でる時、一緒に野菜を茹でる「同時調理」はいかがでしょうか。
さらにグリルで魚や肉を焼く時、付け合わせや副菜になる野菜も一緒に焼
くことができます。
⑤五感を使う
調理をする時には、味覚、聴覚、視覚、嗅覚、触覚の五感をフル活用する
ことで、さらに五感を磨くことができ、調理は調理技術を身につけるだけで
なく、五感を育てる場でもあると言えます。
そして、調理だけでなく食べる時にも是非、五感を使ってみてください。
作った料理をおいしく食べる・味合うことも大切です。食べられる量を盛り
付け、残さないことも大切です。そうすることで食品ロスを減らすことにも
つながります。
⑥片づけ
節水と水を汚さない工夫ですが、油でベトベトになった皿を重ねていませ
んか?重ねてしまうと皿の底の部分も油で汚れてしまいます。そこで古くな
ったTシャツなどを小さく切った古布を使い、皿や鍋などを拭き取ってから
洗うと汚れの8割を落とすことができます。パスタのゆで汁や米のとぎ汁な
どを使って、洗い桶を使うと節約できます。汚れの少ないものから順番に洗
うこともポイントです。
さらには排水口にゴミを溜めない、三角コーナーをやめることもポイント
です。チラシのゴミ入れを作ってゴミ箱として使い、タマネギなどの皮はも
ともと乾いているもので、排水口などに入れて上から水がたまるとゴミを増
やす原因となり、更に焼却するときに余計なエネルギーを使うことにもなり
ます。是非、ゴミは乾いた状態で捨ててください。
3 環境に配慮した食の自立
エコ・クッキングは、食生活の中で生活者として関われる、買い物、調理、
食事、片付けの中で、食やエネルギー、環境のことを考えて取組を行うことで
す。
東京ガスは、今後も豊かで環境に優しい食生活の実現を目指すために、食と
エネルギーが結びつく調理をとおして、食への結びつき、そして環境への取組
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として多くの方にエコ・クッキングを実践し勧めていきます。
【 意見交換 】
■コーディネータ- 上岡氏
お三方の素晴らしい取組を拝
聴し、食育の重要性、必要性を
改めて感じたところです。皆様
の素晴らしい取組の背景には、
ご苦労や工夫、又は、人を惹き
付ける、巻き込む努力などがあ
ったと思いますが、そのあたり
をお聞かせください。
○とうもんの会
名倉氏
とうもんの会がオープンしたのは平成 19 年4月
でした。はじめは、「ここは何をやるとこだ」と言
われ、知っていただくことに3年かかりました。石
の上にも3年とは本当のことだなと思いました。
その間、会員が非常に肩身を狭くして活動する状
態でした。本業の農業が忙しい時に、「今度こうい
う人が来るで、出てくれない?」とお願いした際、
旦那さんが、「こんな忙しいときにどこ行くだ、遊びに行ってるじゃない」と
言われていることがあり、私もその状態を何とかしなくてはと思い、多くの人
に認めていただく努力をし、その中で、「農林水産大臣賞(食と農林漁業の食
育優良活動表彰)の募集があるが、どうだ」との話で取り組み、大臣賞を受賞
したことで地域の人の目が変わってきました。「なかなかやるじゃん、おっか
さら」と。女性が農村社会でトップを張ることは生やさしいことではありませ
ん。「女ごときに何ができる」などという鉄砲電話もありました。そこは、家
族の支えをもらい仲間とスクラムを組んで9年間頑張ってきました。仲間があ
ったからこそ乗り越えられたのだと思います。
○コープみらい 岩佐氏
コープみらいとしては、「もったいないセット」
で不揃いのセットを作るのは面倒な事です。例え
ば、トマトの不揃いセットを作る場合、正規品だっ
たらL玉を2個、M玉なら3個というようにセット
すればよいということになりますが、不揃いの場合
グラム単位での販売となります。パッと見た目でグ
ラム合わせを行わなければなりません。最初はなかなかできずに苦労を重ねま
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したが、今は普通に淡々と行えるようになりました。
先ほど紹介しました「産地支援セット」、「もったいないセット」の場合、
生鮮食品は産地表示をして販売しなければならないルールとなっています。セ
ットする時、それぞれの農産物に産地を表示することは非常に手間のかかるこ
とで、それは逆にトレーサビリティとなって何かの農産物に問題があった時、
どの消費者が購入したか全部結びつくわけです。消費者のため、生産者のため
にこういった取り組みをさせていただいています。
○東京ガス
真坂氏
エコ・クッキング講座を開設し、約 20 年間、地道
にこの活動を実践してきました。是非、「エコ・クッ
キング」を知っていただき、それを実践していただく
ことで水やエネルギーの復元につなげてください。
そして、栄養士や調理師の資格を持っている皆様に
はエコ・クッキング指導者養成講座を受講し指導者に
なっていただき、さらに皆様に広げていっていただき
たいと思います。
■上岡氏
3人の先生から工夫や苦労のお話を伺いましたが、共通することは、良い取
組をするには地道に活動すること、手間や苦労はあるけれど周りの人の理解が
重要であることだと思います。地道にやっていくことが食農教育にとっても重
要なポイントになるかと思います。食農教育の効果について、興味のない方に
どのように興味を持っていただくかがひとつのポイントになると思います。
ここで、会場から3人の先生方にもう少しここは聞きたいと言うことやご質
問をお受けしたいと思います。
○「企業A」
とうもんの会の名倉さんにお聞きしたいのですが、当社は農家の方に対し、
機械だけではなく土作り、また、当社には調理師、栄養士もおりまして口に入
るところまで取り組んでおります。農業からアグリ全般にシフトしています。
食育を支える上での農業について、就農してもらう、ファーマーになっても
らうために若い人たちへのメッセージがありましたらお聞かせください。
○とうもんの会 名倉氏
若い人たちに農業をやりたい方はたくさんいらっしゃいますが、農家側に経
営力がないために雇用ができません。
私も農業者であり、その苦労は知っています。しかし、苦労のない仕事はあ
りません。ただ、苦労はありますがやりがいもあります。自然もあり、対人関
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係もそんなに煩わしさもありません。農業に興味があったら是非チャレンジし
てほしいです。人様の食べものを作ることは簡単なことではありません。でも、
自分の作ったものを「おいしいね、あんたの作ったものおいしいでいつも買っ
ていくだよ」と言われた時には代え難い喜びを感じると思います。私たちはそ
のような新規就農者を応援しています。
また、褒めていただくことが彼らを伸ばし、あるいは生きていく力となるこ
とと信じています。経営のサポートもさせていただき、例えば観光ツアーでお
呼びがあったときには、少しでも物が売れるように全部彼らの農場に案内しま
す。農場を見てもらってお客さんに褒めてもらって、高い値段で買ってもらっ
て帰ってもらう。これが彼らの1番の喜びになると思います。
ただ、諦めることと諦めない心が農家には必要です。天候不順でだめになっ
たときは諦めるしかない。でも、諦めない気持ちでその次を作り続けるという
2つの気持ちがないと農業は続きません。この2つの心を持って是非農業に携
わっていただけたらありがたいなと思っています。
○「大学2年生」
3点質問させていただきます。
1点目、学生からの立場として、私はもともと食に興味があり、地産地消な
ども個人的に勉強しているのですが、食に興味がない人、興味があったとして
も学生だけでなく社会人の方なども忙しいと意識が回らなくなると思います。
そういった方にどのようにアドバイスをしていったら
良いかをお伺いします。
2点目、とうもんの会の名倉様が話された、農業界における女性の立場の弱
さについてですが、以前に私も学校で、「農業を活発化させることは女性の立
場を上昇させる」と言うことを小耳にはさんだので、その点を含めて伺いたい
と思います。
3点目、上岡教授の資料のわが国の食料廃棄物の排出の内訳で「高価な飼料
・肥料・燃料」について詳しくお聞きしたいと思います。
■上岡氏
私の関係する3点目からご説明します。
「高価な飼料・肥料・燃料」について、私たちの食品として生産され、加工
された農畜産物を私たちが残すことは、ここまででもエネルギーや生産費用が
使われています。それを再生利用することはさらにコストがかかり、高い飼料
・肥料・燃料となるという意味です。
○とうもんの会 名倉氏
農村における女性農業者の立場ですが、キャリアウーマンの最初は女性農業
者だったと思います。よく「農家」といいますね、家業という家の仕事だった
んです。でも今は女性も職業として農業を選ぶ、仕事としてみると言うことに
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なってきました。農村における女性農業者の立場は正直まだまだのところがあ
ります。現に女性農業委員の数を3割にするという目標もまだそこまではでき
なくて、農業従事者の半分が女性であるにもかかわらず女性の意見はまだまだ
届かないのが現状です。私も農場にトイレをとの運動を 10 年もしてきました。
仕事場なのにトイレもないと言うのが現状です。そのような状況の中で女性が
農業に従事できるんだろうかということを含めて、私は農村問題として取り上
げていただきたいと思っています。
国としても施策はとっていただいています。女性が農業に携わるときの仕事
の条件、どんな役割を持って、休日がどれくらいあって、いくら給料がもらえ
てということを明記する家族経営協定です。それを進めるお宅は経営を伸ばし
ています。女性が力を発揮すると農業経営は伸びます。奥さんがしっかりして
いる農家には肥料や農薬を販売しても大丈夫 、奥さんがしっかりしていないと
危ないぞ、これは業者の常識です。したがって、女性の働き場所はもっともっ
と増えてきますし役割も増えてきます。今、6次産業化と言われていますが、
お母さんの力なしでは6次産業化はできません。女性の目線がとても大事にな
ってきますので、安心して女性が生きる場所はあると思います。
■上岡氏
まさに農村は女性によって支えられていると思います。
最後に質問の1点目、国の第3次食育推進基本計画でも重点課題として、若
い方の食育をどうしていくか、興味がない若い人たち、忙しい若い人たちにど
う興味を持ってもらうか、あるいはどう実践につなげるかというところで先生
方からお話いただきたいと思います。
○東京ガス 真坂氏
小さいうちから火や包丁を使わせていただきたいと思います。危ないからと
使わせないようにするとなかなか調理をしなくなりますし、調理をする楽しさ
を味わうことがなくなってしまいます。料理教室でも自分で作ったものは嫌い
な野菜でもおいしく食べられたとの声を聞きます。
是非、包丁や火などの安全な使い方をおうちの方や学校で教えていただき、
小さいうちから食に関わって調理をする、また、美味しく食べるということを
学んでいただければきっと興味のあるお子さんが成長して、また、食などに関
わっていくのではないでしょうか。
○コープみらい 岩佐氏
まずは、産地に行くことだと思います。産地に行き生産者の方とお話しする
ことで、一発でファンになります。是非、そういう機会を設けていただければ
と思います。コープみらいの場合は必ず新入社員は産地に行き、産地の手伝い
をし、土をいじり、生産者と話をします。会話し楽しみながらお互いの関係性
を持つことが大切だと思います。
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消費者も率先して国産を選んでいただきたいと思います。消費者が国産の美
味しい野菜、果物を選ばなければ生産者がいかに頑張ってもしようがないわけ
で、やはり産地に行って楽しむような機会が必要だと思います。
○とうもんの会 名倉氏
地産地消という言葉が先ほどから出ています。地面という字に産で、その土
地で消費すると言いますが、都会の人たちはできませんよね。私は地という字
を「知る」という字にして、産地を知り、消費者を知るという「知産知消」と
言う言葉を使います。スーパーに行くと農産物を作った生産者の写真がついて
いますよね。でも、私は逆です。農家が食べてくれる人を知ると生産者は一生
懸命作ります。「この人が食べてくれるんだから、おいしい物を作らなきゃ」。
だからお互いに知ることです。中学の修学旅行で農業体験がはやっていますが、
体験は中学で終わってしまうんです。高校教育でも大学教育でも農村に行って
そういうことを知ろうというコースがない。小学校の時は学校の畑でもサツマ
イモやジャガイモを作ったりしますが、大きくなるにつれてそれがなくなって
しまいます。
人間力を高める教育を是非行ってもらいたいと思います。人間力を高めるこ
とは生きることです。生きるために1番大切な食料を知ることだと思います。
そして、食料を作っている現場を見ていただくのと同時に風を感じてほしい、
そこに流れているが風が都会の風とどのように違うか、是非感じてほしいと思
います。それは、田んぼに水が入るとほんとに涼しくなると言うような農作業
と一体の自然・環境なんです。それを感じてほしいですね。そしたら、「田舎
へ行こう」と言う気持ちになると思います。
■上岡氏
先程から「地産地消」という言葉が出てきております。名倉先生から「地」
を「知」とするというお話でした。私たちは東京にいると「地産」は難しいわ
けですが、「知産地笑」、生産者や産地を知って「地消」は「地笑」と笑える
ようになるといいなと思います。
是非、皆さんも身近に始められる食農体験、そして「もったいない」を感じ
ていただいて、それをコミュニケーションしていただき、色々な方に広めてい
っていただきたいと思います。
(以上)
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