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スターリングエンジンを作ってみよう!

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スターリングエンジンを作ってみよう!
スターリングエンジンを作ってみよう!
~エネルギー変換の仕組み~
村田研究室
1.はじめに
日本では主に火力,水力,原子力の各エ
ネルギーを用いて発電機を回し発電して
いる.発電機は図 1 に示すようにコイルと
コイルの間で磁石を回転させ電気を発生
させている.電気は送電線を介して変電所
に送られ,そこからさらに各建物へと供給
されている(図 2 参照).各発電方法を簡
単に説明すると,
・ 火力発電は,石炭,石油や天然ガスな
どの燃料をボイラーで燃やしてつくら
れた高温,高圧の蒸気でタービンを回
して発電している.火力発電の場合は
この他にもディーゼルエンジンなどに
よる内燃機関を利用したり,灯油や軽
油を燃やした燃焼ガスによってタービ
ンを回して発電している.
・ 水力発電は水が落ちる力(=位置エネ
ルギー)を利用して水車によって発電
機を回し発電している.
・ 原子力発電は、原子炉の中でウランが
核分裂する際に発生する熱エネルギー
で高温・高圧の蒸気をつくり、タービ
ンを回して発電している.
現在,資源・環境問題の観点から太陽光発
電,風力発電,地熱発電,燃料電池など様々
なエネルギーを利用した発電が試みられ
ている.
図 3 に示すように,これらの発電の約
90%が熱エネルギーを熱機関によって電
気エネルギーに変換している.
図1
発電所
発電の仕組み
送電
各都市
エネルギー供給
図2
図3
電力供給
発電電力比率
2.熱機関ってなに?
熱機関とは熱エネルギーを消費して仕事を発生する機械をいう.熱機関の分類を表
に示す
往復動式:
ガソリンエンジン,ディーゼルエンジン
タービン式:
ガスタービン,ジェットエンジン
往復動式:
蒸気機関,スターリングエンジン
タービン式:
蒸気タービン
内燃機関
熱機関
外燃機関
熱機関は作動流体(ガス)への熱エネルギー供給方法により大別すると,内燃機関
と外燃機関に分類できる.
・ 内燃機関は作動流体がもつ化学エネルギーを燃焼によって熱エネルギーに変換す
るもので,燃焼ガス(作動流体)自身が機械を駆動させる.
・ 外燃機関は外部の熱源から熱交換器などを介して間接的に作動流体を加熱して作
動流体の熱エネルギーを高める.
また,仕事に変換する方法により往復動式とタービン式に分類できる.
・ 往復動式はレシプロエンジンに代表されるように,ピストンとシリンダによる機
構による直線運動からクランク機構によって回転運動を得る.
・ タービン式は作動流体による噴流によって羽根車を回転させ,回転運動を得る.
往復動式内燃機関は自動車などのエンジンや発電機など多方面で利用されている.
ピストンとシリンダによって構成される空間内で,作動流体の吸気,圧縮,燃焼,膨
張,排気の行程を繰り返す.このため動作が間欠的である.タービン式内燃機関は航
空機のジェットエンジンや発電機に用いられ往復動式内燃機関に比べ小型かつ高出
力を得ることができる.タービンは作動流体を圧縮機で圧縮,燃焼器で燃料を混ぜた
作動流体を燃焼させ,タービンで膨張させ仕事を得る.その動作は連続的に行われる.
往復動式外燃機関は蒸気機関車に用いられていた蒸気機関やスターリングエンジ
ンがあり,近年では蒸気機関はあまり用いられなくなったが,スターリングエンジン
は高効率が期待され利用方法が検討されている.タービン式外燃機関は火力発電所や
原子力発電所などに用いられている蒸気タービンなどがある.蒸気タービンはボイラ
から送られてくる高温高圧の蒸気が持つ熱エネルギーをタービンによって機械的仕
事に変換している.
現在,これらの熱機関によって得られるエ
ネルギーを有効利用するため,コージェネレ
ーションシステム(以下,コジェネと略す)
の開発が進められている.コジェネは 1 つの
燃料によって熱エネルギーと電気エネルギー
を同時に発生させるシステムで,電気エネル
ギーは電力として,熱エネルギーは給湯や冷
暖房に利用される.
3.タービンの仕組み
図4
蒸気タービン
ここでは蒸気タービンについて説明する.
蒸気タービンは,ボイラで発生した蒸気によ
タービン
って羽根車を回転させ動力を得る装置である.
2
蒸気タービンはノズル,羽根車,ケーシン
G
グ,回転軸によって構成される.蒸気はノズ
ボイラ
発電機
ルによって噴流に変えられ運動エネルギーに
3
変換され,羽根車によって機械仕事として回
海水など
転軸から動力を出力する.タービンのノズル
と羽根車の組み合わせのことを段と言い,図 4
復水器
1
の場合,3 段の蒸気タービンとなる.
4
ポンプ
蒸気タービンを含む蒸気サイクルでは作動
流体がどの様な過程(サイクル)を経て動作
図5 サイクル(ランキンサイクル)
しているか図 5 に示す.図に示すサイクルは
ランキンサイクルと呼ばれる.1→2 行程でボ
イラによって作動流体が加熱され高温高圧の
蒸気となる,2→3 行程のタービンで蒸気は膨
張し仕事をする.3→4 行程で復水器により冷
却され蒸気は凝縮し,4→1 行程のポンプによ
ってボイラに作動流体は押し込まれる.
現在の火力発電における蒸気タービンの入
口蒸気条件は,24MPa,500℃以上で,8 段
のタービンが用いられている.
それではタービンの祖先がどの様なものか
紹介する.今日残っている記録の中で最も古
いジェット(噴流)による反作用を利用した
ものはヘロン(ギリシャ,B.C.250 年)が考
案した,図 6 に示すような機械である.蓋の
図6 ヘロンによる蒸気タービン
閉じた容器(ボイラ)の中に水が入っており,
下から火で加熱して蒸気を発生させる.その蒸気が 2 本の垂直管を昇り,球形容器に
入った後,ノズルから蒸気が噴き出す.よって球形容器はジェットの反作用で回転す
る仕組みとなっている.
4.スターリングエンジンの仕組み
スターリングエンジンは,内部に封入し
た不凝縮性の作動流体(ガス)を加熱およ
び冷却することで動作する,閉じた系(ク
ローズドサイクル)の往復動式外燃機関で
ある.スターリングエンジンは 1816 年に
ロバート・スターリングによって発明され
た.その後は内燃機関に取って代わられ,
事実上姿を消した.しかし,近年環境問題
や省エネルギーへの対策が重要視され再
び注目を集め始めている.
スターリングエンジンの特徴は
1.
燃料を選ばない:外燃機関のため
図7 スターリングエンジン
液体燃料,固体燃料,廃熱,太陽熱.
(2 ピストン型)
など様々な燃料が利用できる.
2.
高効率:再生器の働きによって他
の熱機関に比べ高い熱効率を得るこ
とができる.
3.
低公害:シリンダ内部の圧力変化がなめらかで,騒音や振動が小さい.また,
加熱方法が連続燃焼のため燃焼制御が容易で排ガスをクリーンにできる.
図 7 に 2 ピストン型スターリングエンジンを示す.2 つのピストン,再生器,加熱
部,冷却部から構成される.加熱部で加熱された作動流体が膨張ピストンとシリンダ
で構成された高温側空間に送られ,冷却部で冷却された作動流体が低温側空間に送ら
れる.作動流体は加熱,冷却を繰り返すことになる.このとき再生器を取り付けるこ
とで,再生器で加熱側から冷却側へ移動する作動流体の熱を一時的に蓄え,再び冷却
側から加熱側へ作動流体が移動する際に,作動流体に熱を与え熱効率を向上させるこ
とができる.作動流体のサイクル中の高温側ガス温度と低温側ガス温度の差を大きく
とれば理論熱効率を高くすることができる.
理論熱効率=1-低温側ガス温度/高温側ガス温度
5.おわりに
以上のエネルギー変換の仕組み,熱機関の構造や原理を理解して,実際に簡単
な熱機関(スターリ ングエンジン)を製作し,動かしてみよう.
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