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M&Aの動向と株式市場への影響

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M&Aの動向と株式市場への影響
今 月 の焦 点
国内経済金融
M&Aの動向と株式市場への影響
渡部
M&A は 7 年 で 2.5 倍 に 増 加
喜智
三角合併が 5 月解禁に
企 業 経 営 の グ ロ ー バ ル 化 は ヒ ト ,モ ノ ,
カネの個別経営資源のレベルにとどま
また,5 月には 1 年施行が延期され
ていた「三角合併」が解禁になる。
らない。トップ・マネジメントのレベ
図 2 の よ う に ,外 国 親 会 社 と そ の 存
ルでも着実に進行している。そうした
続 日本子会 社( 合併 法人 )お よびその
な か で ,企 業 の 合 併・買 収( 以 下 ,M&A)
子会社から交付された親会社株式に
の国内外の境目が低くなるとともに心
よ っ て 合 併 さ れ る 日 本 企 業( 被 合 併 法
理的障壁も小さくなりつつある。
人 )の 3 社 間 で 合 併 が 成 立 す る 図 式 か
1997 年 の 合 併 法 制 改 正 に 始 ま る 継
ら「三角合併」と呼ばれる。国内企業
続的な商法改正により企業結合や資
に よ る 株 式 交 換 は 99 年 の 商 法 改 正 に
本政策の方法の幅が広がったことな
伴いすでに認められるようになって
ど の 制 度 的 背 景 と ,株 式 持 合 の 崩 壊 や
い た が ,「 三 角 合 併 」 解 禁 に よ り , ①
企 業の事業 部門・グ ループ会 社の再編 ,
外 国 企 業 が ま ず 日 本 に 100% 子 会 社 を
および景気の長期低迷に伴う経営悪
設 立 し ,② そ の 子 会 社 が 日 本 企 業 を 合
化企業の増大など企業をめぐる環境
併 し よ う と す る 場 合 ,③ 日 本 企 業 株 主
変 化 を 受 け , わ が 国 の M&A は 増 加 を た
に合併対価として外国企業親会社の
どってきた。
株式を渡す仕組みが認められるよう
㈱ レ コ フ の 調 査 に よ れ ば ,1999 年 に
になった。
1097 件 で あ っ た M&A は 06 年 に は 2775
合併後の重要技術流出や会社解体
件 に増加し た。その なかでも ,国 内企
による利益狙いなどを警戒する声が
業 同 士 の M&A は 約 3 倍 に 増 え , 外 国 企
あり,財界からは合併決議の加重化
業による国内企業(以下,外−内)へ
(過半数の株主が出席して3分の2
の M&A も 1.3 倍 に 増 加 し て い る( 図 1)。
以上の賛成が必要な「特別決議」より
内−外
外-内
外-外
2,500
主 張 )や 合 併 親 会 社 の 上 場 規 定 ,さ ら
2775
2725
内-内
179
171
399
412
2211
に は 国 防・経 済 安 全 保 障 の 観 点 か ら 外
資による企業買収を包括的に規制す
206
2,000
1631
1602
1,500
1097
175
159
361
282
1728
1741
315
131
158
258
211
る 規 定 ( 米 国 に は 「 エ ク ソ ン ・フ ロ リ
オ 条 項 」が あ る )導 入 な ど の 論 議 が あ
2130
129
1,000
247
500
も 厳 格 な「 特 殊 決 議 」に す べ き と い う
図1 わが国の合併・買収動向(件数)
(件数)
3,000
1066
1189
1352
1352
2175
っ た 。結 果 的 に ,株 主 総 会 で の 議 決 要
1681
535
56
66
719
410
0
(暦年) 1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
日経テレコン(レコフ:マールM&A情報の件数検索:作成日ベース)から作成
2006
07 1-3
月 (3/23現在)
件 は ,「 特 別 決 議 」 と な っ た が , 三 角
合併の対価として株主に渡される株
式 な ど の 情 報 開 示 基 準( 上 場 等 の 必 要
図2 三角合併の仕組み(略図イメージ)
た , 株 価 ÷一 株 あ た り 純 資 産 ( 株 主 資
A社株を交付
親会社A
本 )( = P B R ) で あ る 。 も う 一 つ ( Y
軸 )は ,買 収 の 回 収 採 算 性( 回 収 期 間 )
の観点から見た,
(時価総額+保有する
設立
株 主
<日本>
子会社a
B社
合併
(合併法人)
子会社aが100%子
会社でA社株式の
みの交付であれば
課税繰り延べ
現 預 金 等 を 控 除 し た 純 債 務 ) ÷予 想 営
業 利 益 の 指 標 で あ る ( 図 3)。
図 を 見 る と , X が 1 倍 程 度 で Y が 10
会社B
倍以下度の銘柄が数多く存在すること
(被合併法人)
(農中総研作成)
性)は拡大された。
が分かる。Yが 5 倍以下という極めて
これまでも現金を合併対価とする
回収採算性の高いと思われる銘柄も少
方 式 は 認 め ら れ て お り ,三 角 合 併 の 解
なくない。これは,営業利益がすべて
禁 を 機 に , 外 国 企 業 に よ る M&A が ど れ
株主の手に残るわけではないものの,
だ け 増 加 す る か は ,防 衛 策 導 入 も 進 ん
買収に使った対価が 5 年という短期間
でおり,不透明である。だだし,企業
で回収できる可能性を示している。
経営者が株式価値の向上ための方策
さ ら に ,こ の よ う な 指 標 に 表 れ に く
を採ることが必要という意識変革が
い ブ ラ ン ド や 技 術 の 魅 力 的 で あ る 。ブ
迫られることは確かだろう。また,そ
ラ ン ド を 作 り 上 げ る 時 間 を 節 約 し ,販
れが株式相場の上昇材料となるので
売経路と顧客を獲得できるメリット
はないかという期待も大きい。
は 大きい。また ,一 連の基礎 研究― 開
発 技 術 − 生 産 技 術 と ,そ れ を 体 化 し た
多 い 割 安 銘 柄 ,ブ ラ ン ド や 技 術 も 魅 力
東 証 第 1 部 企 業( 金 融 関 連 を 除 く )に
絞って,割安な銘柄がどの程度あるか
人材と施設が国際的レベルにあるメ
ー カ ー は 規 模 を 問 わ ず ,日 本 に は 数 多
い。
を ,二 つ の 株 式 指 標 か ら 探 る 。一 つ( X
軸)は,株式資本(解散価値)と株価
(市場評価)の関係からの割安感を見
M&A が 経 営 資 源 の 有 効 活 用 に 作 用 し
「 株 主 価 値 」を 中 心 に 企 業 価 値 の 向 上
に 100% 結 び 付 く 保 証 は な い 。し か し ,
その可能性への期待ないしは企
図3 買収の割安指標
(倍)
業価値の評価見直しという観点
16
か ら ,株 式 投 資 や 投 資 家 心 理 に と
14
ってプラス材料となる側面があ
12
るだろう。
= ︵
Y
18
10
︶
÷
時
予
価
想
総
営
額
業
+
利
純
益
債
務
Y<5倍
5倍≦Y<10倍
10倍≦Y<17倍
8
6
4
2
Bloomberg(財務)データから農中総研
M&A が 経 済 と 雇 用 を 活 性 化 し ,
株 主 価 値 向 上 を通 じて株 式 市 場
での評 価 も増 大 するような好 循 環
が形 成 されることが望 まれる。
(07.03.23 現 在 )
0
0
1
2
3
4
5 6 7 8 9 10 11 12 13 14
(倍)
X=株価・純資産倍率
農林中金総合研究所
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