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超大型研削盤用平坦度測定装置の開発
群 馬 県 立 産 業 技 術 センター研 究 報 告 (2012) 超大型研削盤用平坦度測定装置の開発 細谷肇・横山靖・高橋勇一* Investigation of a flatness measurement method for surface grinding machine Hajime HOSOYA, Yasushi YOKOYAMA, Yuichi TAKAHASHI テーブル長が 4 m を超える 様な大型の研削盤 の 場合、テーブルの平坦度はオートコ リメータ を使用し、複数回の測定結果を繋ぎ 合わせるな どの方式で測定している。さらに、そのテー ブ ルの動的な動きの平坦度を 計測するとなると、良い方法が現状では見当た らない。そこで、こ れまで開発を進めてきた 、加工機の真直 度を画 像処理により測定する方法 を適用し、大 型の研 削盤の平坦度を測定する方 式の開発を実施し た 。 キーワード:研削盤、平坦 度、測定、画像処 理 In case of large grinding machine that has an over 4 m length table, the flatness of the table is measured by means of multiple measurements to use autocollimator. For dynamic flatness measurement of the moving table, there is no suited measurement method. Therefore we investigate new flatness measurement method, which is applied image processing straightness measurement technique, which we investigated. Keywords:Grinding machine, Flatness, Measurement, Image processing 1 はじめに の加工時のテーブルの動きとは異なるとい う課題がある。 一般的に研削盤は、テーブ ルを動作させた そこで、従来の方式が持 つ課題を解決可 場合のテーブルの上下方向の精度が重要で 能な新規の測定方式として 、画像測定を利用 ある。図 1 に示す様にテー ブルがうねって動 した方式の開発を行ってい る。 作する場合、すなわち平坦度が悪い 場合、研 昨年度は、実際の加工機に高速度カメラ、 削した部品の表面は波打っ た形となり、面の または、CCD カメラを取り 付け、それぞれ後 精度が低下することとなる。したが って、テ 処理とリアルタイム処理で の真直度算出を ーブルの動作の平坦度を測定する必要があ る。しかし、この平坦度を測定する方法は、 特にテーブル長が 4 m を超 えるような、大型 テーブルの 移動方向 の研削盤の場合にはオートコリメータで測 Z 定した結果を繋ぎ合わせる などしかなく、良 い方法がない。また、この 場合の測定は、テ 平坦度 ーブルは停止した状態での 測定であり、実際 計測係 *生 産 シ ス テ ム 係 図 1 研削盤の移動テーブル の平坦度 -4- 試みた。その結果求まった 真直度は 75 µm で 3 真直度算出実験 あり、目標とする 1 µm を達成することは出 来なかった。そこで、本年度はその要因と思 本年度の研究では、実際の 加工機に高速度 われる光量ムラを減らして測定を行うこと カメラを取り付け、平坦度の算出を試みた。 で、改善を試みた。 加工機は㈱岡本工作機械製 作所製の 4 m 研削 盤の UPG306NC(図 3)とし、高速度カメラは、 2 画像測定方式 Phantom miro2 にニコン製 のマクロレンズと 接写リングを取り付けて使用した。照明は、 本提案方式では、図 2 の様 に加工機の加工 照明ムラを低減させるために、オプテック ヘッド部分にカメラを設置 し、加工テーブル ス・エフエー㈱製のリング 照明 OPR-S70-43W 上をカメラが移動している 最中に、このカメ を使用した。測定対象であ るストレートエッ ラで加工テーブル上に設置したストレート ジは、長さが 1.6 m の物と し研削盤上に設置 エッジの側面の画像を取得 する。取得した画 した。ストレートエッジの 真直度は 3 µm 以 像に映っているストレートエッジ表面上の 内であることが分かってい る。 傷や模様などの画素中の移 動を追跡し、その 測定中の様子を図 4 に示 す。高速度カメラ 結果からテーブルの移動ベクトルを算出し、 の画像の分解能は 640×480 dot であり、い 平坦度に変換するものであ る。 わゆる VGA である。撮影に当たって は、加工 機の加工テーブルの移動速 度は、隣り合う画 像どうしの重なりが 94 %以 上となるようにし テーブルのうねり に追従できる棒 た。高速度カメラで撮影した画像は、各コマ を JPEG 画像に変換し、それぞれのコマ毎に 処理を行った。画像処理に おけるトラッキン グには、日本ナショナルイ ンスツルメンツ製 の Vision 開発モジュール 中の pyramid-based 側面の画像を撮影解析 Lucas and Kanade の Optical Flow アルゴリ 図 2 平坦度測定の提案方式 ズムを使用した。 今回、リング照明下で撮影 した画像を図 5 に示す。昨年度のスポット 照明下で撮影した 図 6 の画像と比較すると、明るさのバラツキ カメラ 照明 ストレートエッジ 図 3 ㈱岡本工作機械製作所 製 4m 研削盤 図 4 測定中の様子 -5- について検討した。 図 5 のリング照明の場合 、図 6 のスポット 照明に対して、照明の非対 称性は改善されて いるが、やはりまだ、中心部分と周囲部分の 間で明るさには違いがみら れる。この明るさ のバラツキが、測定精度を 低下させる主要因 である可能性があるため、フィルター処理に 図 5 リング照明での画像 てバラツキを改善すること とした。具体的に は、元画像に対して、FFT 処理を行い周波数 領域に変換した。そして、低周波成分に対し てマスクを掛けた後、逆 FFT 処理を行った。 本、処理を行った 前後の画像を図 8、および、 図 9 に示す。図 8 と図 9 は、全く同じコマの 画像である。処理前の図 8 では明らかに中心 部が暗く、周囲が明るくな っているが、図 9 図 6 スポット照明での画像 では全体的に均一な明るさ となっている。 この明るさのバラツキ補正をトラッキン グの画像処理プログラムに組込み平坦度算 出を行った。その結果を図 10 に示す。テー ブルの移動速度とカメラの 撮影速度は、図 6 の場合と同じである。精度は 12 µm であり、 9 µm 明るさの補正を行わない画 像に対しての精 図 7 リング照明下での平坦 度算出結果 図 8 リング照明での画像(処理前) が改善されていることが分 かる。このリング 照明下で最も精度良く測定出来た条件の結 果を図 7 に示す。テーブルの移動速度は 3 m/min であり、カメラの撮影速度は 100 fps である。測定結果は 9 µm であり、昨年度の スポット照明下での結果の 75 µm と比較し、 大きく測定精度が向上して いる。しかし、目 標に到達していない為、さ らなる精度向上策 図 9 リング照明での画像(処理後) -6- (2) リ ン グ 照 明 下 で の 画 像 で の 明 る さ の バ ラ ツキを更に低減するため 、FFT 処理を行い 低周波数成分を除去した。その結果、明 るさのバラツキは無くせたが、平坦度の 精度向上は図れなかった。 (3) 今 後 の 精 度 向 上 の 為 に は 、 画 像 の ト ラ ッ キングアルゴリズムの変更が必要ではな 12 µm いかと考えられる。 図 10 明るさ補正有での平 坦度算出結果 度向上は図れなかった。このため、更なる精 度向上に対しては、別の要 因を考える必要が ある。隣り合う画像間のオ ーバーラップは今 回の測定では 94 %以上確保 しているため、そ の要因ではないと考えられる。したがって、 トラッキングアルゴリズムの能力不足では ないかと考えられる。今後は、このアルゴリ ズムを現在使用している Optical Flow 以外 のものに変更した場合についても検討を進 めて行きたい。 4 まとめ 超大型の研削盤のテーブ ルの動的な平坦度 を、加工機に取り付けたカ メラでテーブル上 に設置したストレートエッ ジの表面を撮影し た画像を元に算出する方式 の開発を行った。 本研究では、以下の結果が 得られた。 (1) 実 際 の 大 型 加 工 機 に カ メ ラ を 取 り 付 け て 撮影する際に使用する照明をスポット照 明からリング照明に変更した結果、画像 の明るさのバラツキが低減し、平坦度の 算出精度が 75 µm から 9 µm に大幅に向上 した。 -7-