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連続暗黒飼育幼若雌ラットに及ぼす飼料中タンパク質レベルの影響 The
連続暗黒飼育幼若雌ラットに及ぼす飼料中タンパク質レベルの影響 The Effect of Dietary Protein Levels on Growing Female Rats Kept under Continuous Darkness 人間栄養学研究科 人間栄養学専攻 07-0905 額賀詠子 現在、社会活動の多様化により生活リズムが乱されがちである。交替勤務者など、社会 環境により生活リズムが撹乱された人は、食欲不振や欠食が生じ摂取栄養量の不足をきた すことが知られている。すなわち、生活リズムと生体リズムの不一致が生体の恒常性維持 機能を崩壊させ、生体に何らかの悪影響があると考えられる。そこで、基礎研究として、 生活リズム攪乱モデル実験系である連続暗黒環境下で飼育した幼若雌ラットを用い、実験 を行った。 これまでの研究では、連続暗黒環境下飼育幼若雄ラットの摂食リズムが乱れること、雄 性器発育が低タンパク質飼料により著しく抑制され、食事たんぱく質を増加させることに よって回復されることなどが報告されている。 本実験では、Fischer 系幼若雌ラット3週齢を用い、予備飼育後、タンパク質含量の異 なる2種類(10%又は、30%カゼイン食)の飼料を給与し、連続暗黒環境下で飼育して、 主要臓器重量、大腿骨、血漿中エストロゲン濃度、窒素出納実験に及ぼす飼育環境、飼料 組成の影響を調べた。実験Ⅰでは飼料中リン量が異なる場合、実験Ⅱでは飼料中リン量を 同量とした場合の実験を行った。 その結果、雄ラットでは影響がみられなかった一般臓器重量は、雌ラットで飼育環境の 影響が強く示され、連続暗黒飼育により、実験Ⅰでは肝臓、脾臓重量が低値を示し、実験 Ⅱでは肝臓、腎臓、脾臓重量が低値を示した。さらに、飼料組成の影響は肝臓、腎臓、脾 臓でみられ、低タンパク質食で低値を示した。また、雌ラットの子宮・卵巣重量は飼育環 境の影響がみられ、連続暗黒飼育で低値を示した。さらに、卵巣重量は飼料組成の影響が みられ、高タンパク質食で高値を示した。これらの結果から、子宮重量では、飼料中タン パク質量が光の有無による生殖器官への影響を軽減、あるいは増幅することは期待できな いと考えられた。しかし、卵巣重量は飼料中タンパク質量が光の有無による影響を軽減、 あるいは増幅することができると考えられる。大腿骨生骨重量は飼育環境、飼料組成両要 因の影響がみられなかった。しかし、大腿骨脱脂骨重量は連続暗黒飼育で低値を示した。 すなわち、大腿骨粗脂肪量が連続暗黒飼育で増加することが示された。血漿中エストラジ オール濃度は連続暗黒環境で低値を示した。エストラジオールはエストロゲンの一つであ り生理活性が強く、生殖器や骨に影響を与えるため、更なる研究が必要である。窒素出納 は飼育環境による影響がみられ、タンパク質吸収率・保留率が連続暗黒飼育で低値を示し た。さらに、飼料組成による影響もみられ、高タンパク質食を摂取することでタンパク質 吸収率は高値、保留率は低値を示した。以上のことから、光の有無による影響を軽減、増 幅させる栄養素の種類と、量を研究する上で、栄養素代謝を調べることは重要であると考 える。 今後、飼料組成と連続暗黒環境の関係をさらに詳細に研究したいと思う。本実験の結果 は、女性の深夜労働には、 十分な配慮が必要になり得ることを示唆していると考えられる。