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システムの パフォーマンス指標

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システムの パフォーマンス指標
自治体CIO育成研修
システムの
パフォーマンス指標
総務省
システムのパフォーマンス指標
この単元の構成と目的
1
システム運用におけるパフォーマンス管理
2
パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
ここでの目的は、システム運用におけるパフォーマンス管理の必要性を確認する
ことです。パフォーマンス管理を通して、システム運用の現状を把握し、利用者に
適切なサービスを継続的に提供するための対策を実施するために必要な情報の取得
を行う方法を学びます。併せて、より適切な投資でシステム運用を実施するための
情報取得についても学びます。
また、パフォーマンス管理システムの構築と測定方法・評価方法の概要を理解す
ることで、実際にパフォーマンス管理を実施する際の内容を学びます。
最後に、自団体のサービス向上のための施策について検討するための観点を紹介
します。
*ここでいう利用者は、職員及び住民を指します。
自治体CIO育成研修
1
1 システム運用でのパフォーマンス管理
ここでのテーマと課題
◆システム運用でのパフォーマンス管理の目的を理解します。
併せて、パフォーマンス管理の実施手順を理解します。
【
解
説
】
自団体のシステムが利用者に適切なサービスを実施しているか、また、サービスが適
切な投資で実施されているか。こうした視点でシステム運用の現状を把握し、適切な対
策を実行するために、システム運用でのパフォーマンス管理は重要となります。
◆システム運用でのパフォーマンス管理の目的
・自団体のシステムは、適切な状況で運用されているのか?
・過剰なシステム投資の状態になっていないか?
システムは組織における生命線(インフラ)であり、その状態を自団体内できちんと
把握する必要があります。人が健康診断や人間ドックによって健康状態を定期的に判断
するように、システムも稼動状況や容量などを定期的に確認していなければ、突然利用
停止などが発生し、サービスの提供ができなくなるおそれがあります。
そのため、システム運用において、しっかりとしたパフォーマンス管理(仕組みの構
築、指標の設定、評価)の確立が重要となってきます。
自治体CIO育成研修
2
1 システム運用でのパフォーマンス管理
◆パフォーマンス管理の実施手順
システム運用のパフォーマンス管理は、稼働データを採取・蓄積して使用状況を把握
すると共に、システム開発や設備計画へ反映させてコンピュータの適正稼働を保持する
ことを目的としています。
ここでは、改めて、パフォーマンス管理を行うために実施すべき項目と手順を示しま
す。
手順1
設定すべき指標の明確化
・利用者が求めるサービスのレベル(一般的には、SLAの締結等で明文化されるケ
ースが多い)に併せて、システムとして遵守すべき項目を明確化します。
手順2
管理対象の明確化
・手順1で明確化した項目を遵守するために、システムとして管理すべき対象(ハー
ドウェア、ソフトウェア、通信ネットワーク、システム運用サービス等)を明確化
します。
手順3
閾値の設定及び測定方法(スパン、内容)の決定
・手順2で明確化された管理対象別に、閾値、測定方法(実施のスパン、内容)を
決定します。
手順4
パフォーマンスの測定と報告書の作成及び情報の保存
・決定されたスパン、内容に従い、パフォーマンスを測定します。
・測定された内容について評価を行い、報告書の確認を行います。
併せて、取得した情報の保存を行います。
★補足
*閾値・・・ここでは、その限界値のこと。
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3
1 システム運用でのパフォーマンス管理
手順5
パフォーマンスの評価及び対策の実施
・報告書の分析を行います。
併せて、SLAを設定している場合は、その内容に基づく報告についても、分析を
行います。
分析の結果を反映し、システム改善(システムチューニング、実装等)、投資改善
を実施します。
以下の図は、システム改善を実施している、ある自治体の作業関連図です。
システム
システム
設定
設定
システム実装
システム実装
・・
投資改善
投資改善
分析
分析
測定・監視
測定・監視
リソース利用
リソース利用
の閾値
の閾値
サービス
サービス
レベルの
レベルの
閾値
閾値
サービスの
サービスの
例外レポート
例外レポート
リソース利用
リソース利用
例外レポート
例外レポート
パフォーマンス管理
パフォーマンス管理
データベース
データベース
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2 パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
ここでのテーマと課題
◆パフォーマンス管理を実施する際のシステム構築方法、測定方法、評価
方法を理解します。併せて、パフォーマンス管理の方法を理解します。
【
解
説
】
◆パフォーマンスの測定方法にあたって
システム運用管理者は、リソースの効率利用とサービス改善のためメインフレーム
中心の時代からパフォーマンスデータを採取し、活用してきました。
特に分散システムの展開以降は、サーバなどの管理対象台数の増加やシステムの多
様化が進み、パフォーマンスデータの収集作業には多くの労力を必要としていました。
また、最近では、SLAに基づくサービスレベルの設定値から、その結果を統計的
に測定又は評価する手法が求められるようになってきています。このような中で、今
後のネットワーク化の進展では、更にパフォーマンスデータの収集を工夫する他、蓄
積した膨大なパフォーマンスデータの中から有用なデータを選択し、随時に分析可能
な管理手法が必要になってきています。
それでは、どのような管理手法をとるとよいかについて、現状を踏まえた上で考え
てみたいと思います。
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5
2 パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
◆パフォーマンス管理システムの現状
従来のパフォーマンス管理では、稼働データとして、
①コンピュータ設備の稼働開始・終了時刻、使用率
②業務システム別の開始・終了時刻、リソースの使用量、プリント枚数
などについてシステム運用管理担当者が、毎日記録・集計して報告していました。
これらのパフォーマンスデータの採取は、当初は手作業で行なっていましたが、コン
ピュータのOS等で記録されるログデータから様々な稼働データを自動採取するように
なってきました。
それにより、このパフォーマンスデータの採取方法では、以下のような問題点が存在
しています。
①標準化への対応遅れ
設備増や多様化したシステムからのデータ採取のファイル様式、コードの標準化、
採取不能分への対応等
②技術力の低下、人材不足
膨大な稼働データから問題点を絞り込み、問題を発見するための技術力への対応等
③各部門の役割が不明確
システムにかかわるそれぞれの部門が稼働データを迅速に共有する運用環境、管理
手順への対応等
これらの問題点について、今後のパフォーマンス採取及び管理では解決することが求
められるといえます。
★補足
*コードの標準化・・・対象となる設備やシステムに対して、管理しやすいように一定の
ルールに基づきコード(管理番号)を付与すること
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2 パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
◆今後のパフォーマンス管理システムとパフォーマンスの測定方法
パフォーマンス管理では、管理対象や管理項目を明確にして、必要な稼働データを採
取して蓄積する必要があります。
今後はネットワーク化の進展により、更に管理対象の増大が予想されるほか、リソー
ス間の機能連係や共有、階層化など、システム構成が複雑化すると思われれます。その
理由としては、大きく以下3点にあると考えられます。
①機能分散型のシステム構築の拡大
データベースやアプリケーション、Webサーバ等
②負荷分散を目的とした形態の増加
ロードバランサ、ブレードサーバ、グリッドコンピューティング等
③ネットワークの横断的な汎用ソフトの使用拡大
セキュリティ対策での認証管理、共用DB等
このような状況は、ユーザの運用管理側からみると、従来のような単純なリソース及
び業務システム単位の縦割りの統計管理だけでは、ネットワーク全体の稼動状況の把握
が益々困難になっていくことを意味しています。
それでは、具体的にどのような観点で改善していくかについて考えていきます。
★補足
*ロードバランサ・・・負荷分散装置(処理の負荷を特定のシステムに集中させずに制御
する装置)
*ブレードサーバ・・・高密度な環境を提供するサーバー製品。CPUやメモリー、ハード
ディスクなどを1枚の薄い形状のブレード(刃物、または刀身と
いった意味)に収め、電源や冷却ファンなどを共通化することで、
物理的なスペースを減らすことができるようになる
*グリッドコンピューティング・・・CPU資源を共有し、コンピュータの資源を効率的に
利用するシステム
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2 パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
(1)柔軟な稼働管理方式への移行
今後のシステム環境の変化に対し、円滑な対応並びに稼動状況の的確な把握が行える
ように、運用管理部門だけでなく、システム開発部門、メーカ及びソフト開発ベンダの
協力を得ながら、次のような観点による柔軟な稼働管理方式へ移行していく必要がある
と思われます。
①管理対象の変化への迅速な対応
例)サーバの増加、設置場所の変更等の発生時に迅速に情報を反映
等
②稼動データの階層的・相関的な把握
例)稼動データの定期的収集とデータベース化
等
③管理ルールの制定
例)測定方法、報告方法等のルールの制定
等
④各種の様式・コードの標準化
例)報告資料の様式、内容の決定と遵守、
管理対象を一定のルールで標準化し、コード管理
等
これにより、稼働データの採取、有用な稼働データの選択、随時の統計処理などが関
係部門の連携のもとで可能になっていくものと思われます。
(2)庁内標準化による稼働データの一元管理
パフォーマンス統計管理を効率的に行っていくには、稼働データの採取、蓄積、選択、
統計及びグラフ表示までを一元管理する必要があります。
そのため、効率的にパフォーマンス統計管理を行う上において、組織自身での標準化
による部門間の役割分担の見直しは不可欠なものとなります。
最近では、
①パソコンによる表計算ソフトなどの活用
②各種市販の稼働管理ツールの活用
なども考えられますが、「組織間で稼働データを共有するためのルール及び標準化」
自体をいかに推進できるかが、パフォーマンス統計管理におけるポイントになります。
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2 パフォーマンス管理の測定方法・評価方法
(3)パフォーマンス管理の改善
パフォーマンス管理そのものでも、以下のような改善が今後必要になると考えられま
す。
①必要なデータを的確に採取できる仕組みの構築
パフォーマンス管理を行う上で、リソース(CPU、回線等)からみた稼動状況
及び個々のアプリケーションから見た使用状況が必要となってきます。また、分析
においては、それぞれについて単独で見るのではなく、相関関係を把握することが
重要です。
分析に必要な項目として、使用率、処理件数、処理時間などがあげられますが、
システム別に必要なデータについては、開発を行う時にあらかじめ決定し、仕様に
盛り込むことが必要となってきます。
②ルールの明確化
パフォーマンス管理については、それぞれ管理する項目ごとでどの部門が行うか
を明確にする必要があります。明確にしないことで、採取若しくは分析が行えなく
なっている状態は回避しなければならないためです。
さらには、データを横断的に分析するために、データを採取するための仕組みの
統一化、データに記載される項目の標準化、分析方法の標準化などが求められると
考えられます。
また、それぞれの部門がデータを的確にもれなく選択できるようにするために、
採取の方法、データを抽出する方法、データを表示する方法等のルール作りも今後
必要となってくるでしょう。
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2 パフォーマンスの設定・測定方法・評価方法
◆パフォーマンス評価の方法
実際にパフォーマンス評価を行うにあたり、技術的な観点からパフォーマンス評価手
法をまとめると、下記の通り分類できます。
1)経験則
今まで蓄積されてきた限界値などに基づいた予測を行います。
2)線形解析
各種統計手法を利用し、収集されたパフォーマンスデータの特性(ピーク値や平
均値等)を判定し、その特性を活かして予測を行います。
3)待ち行列
待ち行列技法を活用し、数学的に待ち時間などを求めます。
4)シミュレーション
業務の特性に従ったパターンで、各種リソースの使用状況や待ち時間などを求め
ます。
5)ベンチマーク
実際の業務での負荷テストを行います。
1)、2)については自団体内での対応、その他は外部業者の協力が必要となってく
るでしょう。
新規システムの稼動時又は既存システムの統合などいずれの場合でも、最適なパフォ
ーマンス評価方法を利用することにより、サービスレベルの予測は可能であると言えま
す。
★補足
*待ち行列技法・・・処理の待ち時間を定量的に求める統計方法
*待ち時間・・処理が実施される準備が整った後に、実際に処理が開始されるまでに
費やす時間
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この単元での課題を考える
課題を考える
◆現在のパフォーマンス管理状況を確認する
現在、自団体で管理しているパフォーマンス測定又は評価を行っているものについて
どのようなものがあるか。
【
事前学習課題7 】
この単元のポイントを参考に、現在、自団体でパフォーマンス指標を測定又は評価して
いるものについて記入してください(最大3つ)。実施していない場合は、実施しない若
しくは実施できない理由を記入してください。
「事前学習課題07:様式」に記入
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