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7章 インターネットと生活時間
7章 インターネットと生活時間 本章では、インターネットが余暇、睡眠、各種メディア利用、対面コミュニケーションなどに 費やす生活時間に与える影響について検討する。 7.1 インターネットと余暇、睡眠時間 7.1.1 家族、友人と過ごす時間 インターネット利用者と非利用者が家族、友人と過ごす時間を比較してみると、家族と過ごす 時間はインターネット非利用者の方が利用者よりも有意に長いのに対し、友人と過ごす時間はイ ンターネット利用者の方が非利用者よりも有意に長いという反対の関連がみられる(図 7.1.1)。 分 0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000 1459.30 家族と過ごす時間 1881.15 508.89 友人と過ごす時間 利用者 非利用者 305.50 (家族、友人いずれも、分散分析F検定で p<.001 有意) 図 7.1.1 インターネット利用有無と家族・友人と過ごす時間(分) 7.1.2 自由に使える時間 ふだん 1 日のうちに自分で自由に使える時間(休息、散歩、スポーツ、趣味などのレジャー活 動、音楽を聴いたり、テレビや新聞を見る時間などの合計)をインターネット利用者と非利用者 で比較してみると、図 7.1.2 のようになっている。 平日の自由時間は、インターネット非利用者の方が利用者よりも長いのに対し、休日の自由時 間はインターネット利用者の方が非利用者よりも有意に長くなっている(F 検定;p<.001) 。なぜ 平日と休日でインターネット利用有無によって自由時間に反対の関連がみられるのかという原因 は、はっきりしない。おそらく、インターネット非利用者には高齢者が多いために、平日の自由 時間が非利用者よりも多くなっていることが大きな要因になっていると思われる。 -69- 0 100 200 300 203.46 平日の自由時間 400 500 利用者 非利用者 261.95 429.97 休日の自由時間 393.21 図 7.1.2 インターネット利用有無と1日に使える自由時間(分) 7.1.3 睡眠時間 ふだん1日にとる睡眠時間をインターネット利用者と非利用者で比較してみると、図 7.1.3 に のようになっている。インターネット利用者は、非利用者にくらべると、睡眠時間が有意に短い という結果が得られている(分散分析;F 検定 p<.001)。これは、2000 年調査、2001 年調査と 同様の傾向である。 370 利用者 380 390 400 410 420 386.84 409.64 非利用者 図 7.1.3 インターネット利用有無と睡眠時間(分) 7.2 情報行動と同時並行的なインターネット利用 インターネットの普及に伴って、人々のメディア環境が多様化しつつある。その結果、ラジオ、 テレビ、電話、CDなど従来のメディアを利用しながらインターネットを同時並行的に利用する という「ながら」情報行動をとる人も少なくないと思われる。本調査では、その実態を調べるた めに、 「自宅でCDやラジオなどの音楽番組を聴きながら」 、 「テレビを見ながら」、 「電話で話をし ながら」、あるいは「家族や友人と話をしながら」同時にインターネットを利用することがどれく らいあるか、4項目について質問した。回答結果は図 7.2.1 に示すとおりである。 -70- よくある ときどきある 0% 20% CD、DVD、パソコンやラジオの音楽番組などで音楽を聴きながら 13.6 電話で話をしながら 1.2 9.3 家族や友人と話をしながら 9.3 40% 23.2 23.2 テレビを見(聞き)ながら あまりない 60% 21.2 26.4 無回答 80% 40.6 15.1 20.9 25.8 まったくない 33.3 66.4 17.4 100% 1.4 2 2.1 46.1 1.4 図 7.2.1 情報行動と同時並行的なインターネットの利用頻度(%) この中でもっとも利用頻度の高い同時並行的な情報行動は、 「テレビを見ながらインターネット を利用する」というもので、 「よく」 「ときどき」を合わせると約 50%の人が利用している。これ に次いで多いのは、 「CD、DVD、パソコンやラジオの音楽番組などで音楽を聴きながらインタ ーネットを利用する」というもので、36.8%の人が利用している。 「家族や友人と話をしながらイ ンターネットを利用する」人の割合はこれよりやや少なく 35.1%となっている。これに対し、 「電 話で話をしながらインターネットを利用している」人は 10.5%と少数にとどまっている。 性別に比較してみると、 「CD、DVD、パソコンやラジオの音楽番組などを聴きながらインタ ーネットを利用する」人は女性よりも男性の方がやや多い。逆に、 「家族や友人と話をしながらイ ンターネットを利用する」人は、男性よりも女性の方が多いという傾向がみられる(いずれもカ イ2乗検定;p<.05)。年齢別にみると、「テレビを見ながらインターネットを利用する」「家族や 友人と話をしながらインターネットを利用する」人の割合は、若い年齢層ほど高くなるという傾 向がみられる(カイ2乗検定;p<.05)。世帯年収別にみると、 「テレビを見ながらインターネット を利用する」人の割合は、年収の低い人ほど高いという傾向がみられる(カイ2乗検定;p<.01)。 7.3 PCインターネットがメディア利用や生活時間に与える影響 インターネットが各種メディア利用時間や対面コミュニケーションの時間に及ぼす影響を調べ るために、パソコンでインターネットを利用する前と現在を比べて、それぞれのメディア利用時 間がどの程度変化したかを自己評定で答えてもらった。図 7.3.1 は、その回答分布を示したもの である。 もっとも減少度が高かったのは「テレビを見る時間」で、少しでも減ったと答えた人がインタ ーネット利用者全体の 30.5%にも達している。「睡眠時間」が減ったという人が 29.1%でこれに 続いている。以下、 「本を読む時間」が減った人が 20.3%、 「新聞を読む時間」が減った人が 14.0%、 家族と対面で話す時間が減った人が 12.0%、友人と対面で話す時間が減った人が 8.2%の順とな っている。 それぞれのメディアの利用時間減少率を 2000 年調査、2001 年調査と比較してみると、図 7.3.2 のようになっている。テレビを見る時間の減少率は 2001 年に比べてやや低下している。睡眠時間 の減少率は 2000 年、2001 年に引き続いて低下しており、テレビ視聴時間の減少率を下回ること になった。減少率が 2001 年に比べて増加傾向を示しているのは、家族や友人との対面コミュニケ -71- ーションの時間である。 かなり減った 0% 少し減った 20% 変わらない 少し増えた 40% 60% かなり増えた 無回答 80% 100% 0.3 0.1 7.6 テレビをみる時間 22.9 1.7 67.1 1.3 0.1 5.7 新聞を読む時間 8.3 82.6 2 2.2 0.7 7 本を読む時間 13.3 2 74.6 0.2 0.2 睡眠時間 3.9 25.2 2 68.4 2.1 0.4 家族と対面で話す時間 1.4 10.6 83.7 1.7 1.9 0.5 友人と対面で話す時間 0.9 7.3 1.7 87.7 図 7.3.1 PC インターネットがメディア利用、コミュニケーション時間に及ぼす影響(%) (n=916) かなり減った f. 友人 e. 家族 d. 睡眠 c. 本 b. 新聞 a. テレビ 0 2002 2001 2000 2002 2001 2000 2002 2001 2000 2002 2001 2000 2002 2001 2000 2002 2001 2000 図 7.3.2 5 10 少し減った 15 20 7.6 25 30 35 22.9 9.8 9.3 22.7 22.8 5.7 4.5 8.3 11.6 3.7 7.1 7 13.3 5.5 5.6 16.1 12.1 3.9 5.8 25.2 25.9 5.6 27.5 1.4 10.6 1.7 1.3 8.5 8.8 0.9 1.6 7.3 6.2 1.3 6 PC インターネットがメディア利用、コミュニケーション時間に及ぼす影響(%) 3 年間の比較 2002 年(n=916)、2001 年(n=1,218)、2000 年(n=845) -72- 次に、PCインターネットの各種メディア利用時間への影響と性別、年齢、学歴など属性との 関連をみると、表 7.3.1 のようになっている。属性と有意な関連をもつ項目はほとんどない。唯 一、友人と対面で話す時間の減少が、男性よりも女性にやや多いという関連だけが認められた。 表 7.3.1 PCインターネットの他メディアへの影響と属性との関連性 性別 年齢 学歴 -0.003 0.022 0.017 n.s. n.s. n.s. 新聞を読む時間 0.055 0.006 -0.044 n.s. n.s. n.s. 本を読む時間 0.011 -0.002 -0.017 n.s. n.s. n.s. 睡眠時間 0.008 0.039 -0.017 n.s. n.s. n.s. 家族と対面で話す時間 -0.028 -0.042 0.008 n.s. n.s. n.s. 友人と対面で話す時間 -0.067 -0.01 -0.027 * n.s. n.s. 数値は順位相関係数 *** p<.001 ** p<.01 * p<.05 テレビをみる時間 年収 -0.003 n.s. 0.021 n.s. -0.001 n.s. -0.011 n.s. -0.022 n.s. 0.007 n.s. 表 7.3.2 はインターネットのさまざまな利用時間と、PCインターネットの他メディアへの影 響評価との間の関連性を順位相関係数によって分析した結果を示したものである。 自宅でインターネットを利用する時間、PCメール、携帯メールを利用する時間が長い人ほど、 「テレビをみる時間」「新聞を読む時間」「本を読む時間」「睡眠時間」「家族と対面で話す時間」 「友人と対面で話す時間」が減少している。チャットを利用する時間が長い人ほど、 「テレビを見 る時間」「新聞を読む時間」「睡眠時間」「家族と対面で話す時間」が減少している。「インスタン ト・メッセンジャーを利用する時間が長い人ほど、 「テレビを見る時間」 「新聞を読む時間」 「睡眠 時間」が減少している。掲示板を利用する時間が長い人ほど、「テレビを見る時間」「新聞を読む 時間」「本を読む時間」「睡眠時間」が減少している。 表 7.3.2 他メディアへの影響と各種インターネット利用時間の関連性 自宅インターネット PCメール PCウェブ チャット メッセンジャー掲示板 0.336 0.105 0.278 0.148 0.188 0.279 *** ** *** *** *** *** 新聞を読む時 間 0.207 0.119 0.186 0.129 0.134 0.139 *** *** *** *** *** *** 本を読む 時間 0.189 0.096 0.187 0.04 0.059 0.146 *** ** *** n.s. n.s. *** 睡眠時間 0.292 0.107 0.199 0.068 0.134 0.242 *** ** *** * *** *** 家族 と対面 で話 す時間 0.112 0.064 0.068 0.079 0.05 0.01 *** * * * n.s. n.s. 友人 と対面 で話 す時間 0.088 0.073 0.061 0.035 0.008 0.045 ** * * n.s. n.s. n.s. テレビを見 る時 間 数値は順位相関係数 *** p<.001 ** p<.01 -73- * p<.05