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参考資料2 (PDF形式:32KB)
容器包装の分別収集等に要する 費用把握について ∼自治体におけるコスト計算の現状と課題∼ 監査法人トーマツ 森田祐司 1 ご説明の要旨 z z z z 自治体では何のためにコスト把握を行っている のか? 自治体においてはどのようにコスト把握が行わ れているのか? 自治体が行ったコストの集計結果は信頼しうる ものか? 信頼できるコスト算定のためにすべきことは何 か? 2 1 自治体におけるコスト把握の目的 z 予算執行状況の説明・集計 • z ごみ処理手数料の設定 • z 主として事業所から排出される廃棄物の収集処理に要する コスト負担を求めるためのコストを算定 業務改善・コスト削減 • z 議決予算どおりの行政活動を行ったかどうかを説明するた めに事業費を集計(現金主義) より効率的・効果的な廃棄物の収集処理を行うため現状要 しているコストを把握 環境省のアンケート • 調査項目に合致したコストを抽出 3 自治体におけるコスト把握の方法 その1 z 「予算執行状況の説明・集計」の場合 • 歳入・歳出を定めた予算どおり執行したことを説明す • ることが目的 多様な内容が現金の出入りの観点のみで区分され ている • 歳入:手数料・補助金・借金 • 歳出:給与・退職金・設備投資・借入元金返済、金利 • 現金の出入りのない費用は認識しない • 減価償却費 • 退職給付費用 現金主義 4 2 自治体におけるコスト把握の方法 その2 z 「ごみ処理手数料の設定」の場合 • • • 受益者負担の水準を決定するための基礎資料を提供することが目的 基本的には現金の出入りの観点で把握し、ごみの種類ごとに関係する コストを直課または配賦して算定している • • 一部の費用の認識が各自治体でまちまち ⇒議会との調整のうえ条例に定められるため、負担の範囲が異なる • • • 直課:委託料、薬品費など 配賦:人件費、減価償却費、金利など 金利、減価償却費 ⇒コストとして含めていない自治体も多い 退職給付費用 ⇒コストとして含めている自治体はほとんどない 国・都道府県からの補助金収入、資源ごみの売却収入の取扱い • コストのマイナスとして捉えている自治体はほとんどない 準発生主義 5 自治体におけるコスト把握の方法 その3 z 「業務改善・コスト削減」の場合 • より効率的・効果的な廃棄物の収集処理を行うた めの基礎資料を提供することが目的 • 全体的なコスト把握よりも部分的なコスト把握が行わ • z れるケースが多い 他自治体とのコスト比較が行われることもある 「環境省アンケート」の場合 • アンケートに回答することが目的 • 背景や利用目的を理解しないままに回答する可能性 があるため、誤った数値が記入されるおそれがある 目的に応じたコスト算定 6 3 自治体におけるコスト算定の課題 その1 z 現在行われているコスト算定は、企業会計(発生主義会計、 適切な原価計算)の観点から多少かけ離れた結果となって いる • コストの集計範囲が定められていない ⇒ 自治体ごとに集計範囲が異なる(例:減価償却費、管理部門 の人件費)ため、集計結果も自ずと異なる • コストの按分方法が定められていない ⇒ 人件費や減価償却費などの按分方法が定められておらず、重 量・容積・ 事業費金額など、さまざまな基準で按分されるため、 どの按分基準を採用するかで集計結果も大きく異なる • 耐用年数の決定方法が定められていない ⇒ 減価償却額を算出するもっとも重要な耐用年数の決定方法が 定められていないため、同種の施設や設備を使用しても算定結 果が異なる 7 自治体におけるコスト算定の課題 その2 • 自治体のごみ収集・処理の形態に幅がかなりある ⇒ 形態に適した基準でコストを把握する必要がある • 自治体担当者の理解の程度に差がある ⇒ コスト算定に用いる数値、アンケートに回答する数値 等の引用を誤ってしまい、集計結果等が大きく影響を受 ける 8 4 信頼できる事業別コストとは z z 現状の自治体会計制度の枠内においても「コスト算 定の課題」を克服できれば「信頼できるコスト算定」 は可能 「信頼できる」とは • • • 「事実」に基づいていること 自治体の恣意性が介入しない手続・基準で分類・集計・見 積算定されていること 適用される基準が各自治体間で統一されていること 9 コスト計算の事例と考えうる対処法 A 市 B 市 考えうる対処法 1 減価償却費 (議会との話し合いの中で税 負担すべきものであるとのこと から)コスト計算にまったく含め ていない 建設コストをコスト計算に含めてい るが、一定の耐用年数ではなく、 残存利用期間で算定している。 建設コストをコスト計算に含めると ともに、一定の耐用年数を用いて 算定する。 2 人件費(退 職コスト) 退職金支払時にコストとして認 識している。(現金主義) 退職コストは人件費コストの計算 上含めていない。 現金支払の有無にかかわらず、そ の期に負担すべきコストを認識す る。(発生主義) 3 コストの品 目別按分法 総額で把握しているのみであ り、まったく行われていない。 品目の重量によって按分している。 品目の容積(重量をベースにした 所定の換算後)によって按分する。 10 5 信頼できるコスト算定へ向けて z 事前に詳細な計算マニュアルを作成・配布することにより、 必要な数値等を把握しておき、後日報告できる体制を整 えておく • • z マニュアルに基づいた自治体職員研修の実施 • z 全国都市清掃会議「廃棄物処理事業原価計算の手引」や環境省が 実施したアンケートを参考に計算マニュアルを作成 事後での対応では、事務負担が大きくなるとともに、算定結果がばら つく可能性があり、かつ把握可能な数値等にも限界が出てくる 作成された計算マニュアルに基づくコスト算定の実習を交えた職員研 修を実施することにより、担当職員の理解を深める 外部検証(監査)制度の導入 • • コストが一定金額以上の自治体を対象とした監査制度の導入 分析的検討による異常値団体の検証 11 自己紹介 z 監査法人トーマツ本部パブリックセクターの責任者、公認会計士、公認情報システム監査人 民間企業業務 z 行政経営・公会計関連業務 z z z • • • 証券取引法に基づく上場企業の監査、商法に基づく会計監査、米国会計基準・監査基準に基づく財務諸表監査、株式公開支援、 企業買収(M&A)監査、情報システム(コンピュータシステム)監査、国際訴訟支援調査 地方自治体外部監査、住宅供給公社外部監査導入支援、行政評価システムの導入支援、自治体決算・行政目的別コスト計算 における企業会計手法の導入支援)、PFI導入に係る支援等 以下の各省庁・自治体研究会の委員等を歴任 • 【経済産業省】「官民パートナーシップ研究会」「研究開発資金研究会」他 • 【財務省】「財政制度等審議会専門委員」「地方公共団体向け財政融資のあり方に関する検討会」「独立行政法人会計基 準研究会」他 • 【総務省】NPM(ニューパブリックマネジメント)、行政評価、地方公営企業、地方独立行政法人他多数の研究会委員等、 総務省公営企業経営アドバイザー」 • 【国土交通省】「政策評価会」委員 • 【自治体】奈良県「政策評価検討委員会」、静岡県「公会計監査研究会」他 • 【その他】総合研究開発機構「NPM手法の地方自治体への導入に関する研究会」委員 主な著書等 • 『ペーパレス会計』『統計手法による分析的監査手続』『トータルシステムの基礎 第4巻 販売・人事システムの設計』『自治体監査 の実際』『資源会計−その意義と目的』『真の地方政府を目指して』『会計を読む事典』『自治体の行政評価と公認会計士の役割』 『公会計改革の動向』『行政評価導入マニュアルQ&A』『公務員・実務家のための公会計・監査用語辞典』『21世紀の行政モデ ル日本版PPP(公共サービスの民間開放)』 学会・協会活動等 • 日本公認会計士協会 本部公会計委員会 委員、地方公共団体監査特別委員会 委員、地方公共団体公会計基準専門部会 部 会長、近畿会 幹事、近畿会・社会公会計委員会 委員長を歴任 12 6