Comments
Description
Transcript
『人の支配』と『法の支配』
◆ワークシート◆ 『高校生の新現代社会 −共に生きる社会をめざして− 初訂版』p.98〜99 作業② 人権獲得の流れと日本の歴史を比較するためのワークシート 人権の獲得と法の支配 問 2 次の年表の空所 西暦 1 〜 問 1 次の文章を読み、空所 1 〜 9 日本の歴史 源頼朝が征夷大将軍に任ぜられ鎌倉に幕府を開く。 1215年 に適語を補いましょう。 近代民主主義の発展過程は人々が基本的人権を獲得する過程そのものです。国家の権力を制限するはじま りは、13世紀イギリスの 1 に求められます。この時代、国家の権力は国王が握っていましたから、国 家の権力を制限することは国王の権力を制限することでした。 1 は国王と貴族の間に取り交わされた 文書であり、広く国民を視野に入れたものではありませんが、 1 において国王の権力が制限されたこ とが、近代民主主義の発展にとって出発点になったと考えられます。 17世紀のイギリスで 著し、自然状態を「 は社会契約説にたった政治論を展開します。 2 3 は『リヴァイアサン』を 2 」状態とし、人々は自分たちの生命や財産を守るために全員で契約を結んで自 然権を統治者にゆだねるべきだとしました。 は社会契約説に立ちながらも最終的に専制政治を正当 2 化してしまったところに限界があるといえます。同じく社会契約説にたつ 4 は、国家は人々の権利を 守るために設けられたと考え、専制政治に反対し議会を擁護しました。 4 は『市民政府二論』を著 し、その思想は名誉革命を正当化し、アメリカ独立革命を正当化しました。 4 の思想はイギリスの権 利章典やアメリカのバージニア権利章典、アメリカ独立革命にみてとれます。さらに18世紀フランスでは 5 が『社会契約論』を著し、社会契約説にのっとり国家権力の根拠に社会契約を求めました。 国家は一般意思を実現するものであり人民による を主張しました。 6 5 5 は、 は自然状態を完全に自由 と平等が実現していたと考えたことから「自然にかえれ」と呼びかけました。 に適語を補いましょう。 人権獲得の流れ 1192年 作業① 人権獲得の流れの基礎を定着させるためのワークシート 5 1 1603年 徳川家康が征夷大将軍に任ぜられ江戸に幕府を開く。 1688年 元禄元年 1689年 権利章典 1772年 1776年 田沼意次が老中に就く。 バージニア権利章典 2 1787年 松平定信が寛政の改革に取り組む。 1789年 3 1863年 ゲティスバーグの演説 1868年 明治維新 1889年 4 1890年 が公布される。 教育勅語が発せられる。 1900年 治安警察法が制定される。 1919年 ワイマール憲法 1925年 普通選挙法と治安維持法が制定される。 1946年 5 1948年 世界人権宣言 1966年 国際人権規約 が公布される。 市民革命というとき、イギリスの名誉革命、アメリカ独立革命、フランス革命をさします。いずれの革命 解答欄 1 2 でも人権宣言が発せられ、そこでは国家権力から個人が束縛されない自由がうたわれました。 つまり、 財産権、 3 4 生命・身体の自由、思想・信教の自由などを内容とする 7 が確立したと考えられます。さらに、その 後の市民社会の発展とともに人々が政治に参加する権利が認められるようになり参政権が確保されるように なります。しかし、経済社会の発展は貧困や失業などのあらたな不自由や不平等をもたらしました。これら の問題を解決し、すべての人々に人間らしい生活を保障するには、国家が積極的に経済や社会に介し、貧し い人々や社会的弱者を支える必要があるという 定した憲法は1919年の 9 です。 7 から を保障する考えが生まれました。 8 8 8 を最初に規 に至る人々の長きにわたる人権獲得の努力は日本 5 作業③ 法の支配と人の支配を理解するためのワークシート 問 3 教科書p.99の説明と図②(右図)を見ながら、次の文章の空所 国王や独裁者が自ら法を制定し、その法に基づいて権力を行使 国憲法にも引き継がれています。日本国憲法は日本の憲法ではありますが、そこに掲げられている精神は人 し、国民を支配するのが「 類の普遍的価値であり、日本国憲法第97条で述べられているように「人類の多年にわたる自由獲得の努力 に基づいてはいるものの、その法は国民もしくは国民の代表者が制 の成果」なのです。 定し、その法にはいかなる人や機関も例外なく拘束されるしくみが 「 2 」です。「 1 1 2 3 4 は17世紀にイギリスで民主政治の基本的原理として確立しました。 7 8 9 に適語を補いましょう。 1 」が実現されれば国 民の基本的人権を守る政治が行われることになります。「 2 2 」からは国民の基本的人権を守る政治が 解答欄 1 2 それ以来、 「 〜 」です。一方、権力の行使は法 生まれるかどうかはわかりませんが、「 5 6 1 2 」 」は国家権力から国民の権利や自由を守るより どころとされています。 解答欄 1 2 2 現代社会へのとびら 2010年度1学期号 付録③ 問 4 「法の支配」について次の事例にそくして、下の①〜⑥の手順で考えてみましょう。 人権の獲得と法の支配 指導上の留意点・解答 ①次の事例を読みましょう。 全国公民科・社会科教育研究会授業研究委員会 事例:今日、わたしたちは、社会を構成する一員である以上、法律には従わなければなりません。しかし、そ の法律によって、私たちが不利益を被る場合があるとします。私たちにとって不都合な法律であるとし ても、その法律には従わなければならないのでしょうか。 ②この事例について考えられる立場として次の二つがあることを確認しましょう。 立場Ⅰ:正当な手続きに従って定められた法律である以上、私たちにとって不都合な内容であったとしても従 わなければなりません。 ありません。 ③あなたはこの二つの立場のどちらを支持しますか。次のいずれかを○で囲みましょう。また、その理由を 書きましょう。 ( その理由→ ④他の人の意見を聞いて、それぞれの立場を支持する理由の要点を書きとめましょう。 ( ( 立場Ⅰを支持する理由→ 立場Ⅱを支持する理由→ ) ) ) ⑤改めて考えてみて、あなたはどちらの立場を支持しますか。次のいずれかを○で囲みましょう。また、そ の理由を書きましょう。 支持する立場: 立場Ⅰ 立場Ⅱ (いずれかを○で囲みましょう。) ( その理由→ ⑥これまでの作業を振り返り、③と⑤を比較し、それぞれの立場と理由を確認しましょう。 ( 社会の決まりごとは多くの人々にとって必要と考えられ 作業①は、人権獲得の流れの基礎を定着させるための ワークシートです。教科書の本文と上の表を見ながら、 文意を読みとり、考えながら空所補充をしていきます。 解答する用語は平易です。知識を問う内容ではあります が、読解を伴い、思考力や判断力も養うようになってい ます。 るから定められている場合がほとんどですが、高校生に とっては不都合なこともあるでしょう。あるいは、都市 部に住む人々にとっては納得がいくことであっても非都 市部に住む人々にとっては納得がいかないこともあるで しょう。給与所得者にとって都合のよいことも自営業者 にとっては不都合なこともあるでしょう。立場をかえて 考えることができれば新たなものの見方や考え方ができ るはずです。多面的に見て多角的に物事を考える大切さ がわかれば十分です。さらに、③では立場と理由を問う ことになりますが、正解が一つに決まっているわけでは ありません。いずれの立場をとろうともその理由づけが できていることが大切です。もちろん理由づけが誤って いる場合は授業者による一定の指導や助言が必要になり ますが、ここでは生徒が自分の力で考えてワークシート に書いたというところを評価したいところです。加えて、 ④で他の生徒の意見を聞いて大事だと思うところを書き とめる仕かけを用意しました。授業者の判断で、③の内 容を発表させてもよいですし、グループで討議してもよ いですし、近くに座っている生徒同士で意見を見せ合っ たり話し合わせたりしてください。いずれの方法でも有 効です。生徒に何らかのコミュニケーションをとらせる ことが大切です。 発展学習としては「法の支配」と「法治主義」につい て考えさせることが考えられます。なぜなら「法の支配」 は法がどのようにしてつくられたかを重視しますが、 「法 治主義」は必ずしもそれを重視しないという対比をとお して「法の支配」と民主政治を考えさせることができる からです。「法の支配」がイギリスで発達した考えであ るからこそ、法が国民代表によりつくられたことを重視 しますが、ドイツで発達した「法治主義」の考えは法が どのようにしてつくられたかということよりも権力の行 使が法にのっとっているかを重視しています。近代民主 政治を試行錯誤しながら発達させたイギリスと、すでに 存在している政治制度をモデルとしながら自国の近代化 をめざすドイツとの違いが読みとれるはずです。 作業② 立場Ⅱ:正当な手続きに従って定められた法律であっても、私たちにとって不都合な内容であれば従う必要は 支持する立場: 立場Ⅰ 立場Ⅱ (いずれかを○で囲みましょう。) 作業① 作業②は、人権獲得の流れと日本の歴史を比較するた めのワークシートです。中学校で学んできた社会科の知 識やすでに日本史を学習している生徒であればその復習 もかねて、人権獲得の歴史を日本の歴史と比較すること で、発展過程の違いを認識してもらうことをねらいとし ます。あくまで「現代社会」としての作業なので、ヨーロッ パにおける人権獲得のできごとが日本の歴史ではいつご ろのできごとなのかを確認する程度で十分と考えます。 生徒によっては、日本における人権獲得が遅れているこ とを感じるでしょうし、近代化というものがヨーロッパ 中心の見方であることを感じるでしょう。基礎基本を重 視するなら空所補充だけで十分ですし、学習が進んでい る生徒が対象であれば作業の過程で気づいたことを発言 させて、授業者がコメントを加えることも大切です。生 徒の実態にあわせて活用したい作業です。 作業③ 作業③は法の支配と人の支配を理解するためのワーク シートです。問3では、教科書の説明と欄外の図「②人 の支配から法の支配へ」を見ながら空所を補充すること で「人の支配」と「法の支配」を確認します。用語自体 はきわめて平易ですが、文章を読むことで「人の支配」 と「法の支配」への理解が深まることになります。 次に、問4はたんなる作業ではなく、生徒が意見を述 べたり、意見を比較したりできるよう工夫してあります。 授業者が展開したい授業内容にそくして、生徒に発言さ せながら、あるいはワークショップ形式で活用してくだ さい。事例は抽象的です。生徒の実態にあわせて、この「事 例」に当てはまる具体例を考えさせることも大切です。 解答例 ) ) 問1 1 :マグナカルタ 2 :ホッブズ 3 :万人の万人に対する闘争 4 :ロック 5 :ルソー 6 :直接民主制 7 :自由権 8 :社会権 9 :ワイマール憲法 問2 1 :マグナカルタ 2 :アメリカ独立宣言 3 :フランス人権宣言 4 :大日本帝国憲法 5 :日本国憲法 問3 1 :人の支配 2 :法の支配 問 4 ③立場ⅠとⅡでいずれかが正解ということではありま せん。選んだ立場と理由とが有機的に関連づけられて いればよしとします。 例 立場Ⅰ→理由:法律は社会秩序を保つ役割をもってお り、内容を問う以前に法律に従う義務 を私たちは負っているから。 例 立場Ⅱ→理由:そ もそも法律は私たちの権利を守り、 幸福を実現するためのものであるか ら、実質を伴わない法律は存在意義を もたないから。 ④〜⑥ 略