...

超高速・超並列ナノメカニクス

by user

on
Category: Documents
10

views

Report

Comments

Transcript

超高速・超並列ナノメカニクス
戦略的創造研究推進事業
ナノテクノロジー分野別バーチャルラボ
研究領域「高度情報処理・通信の実現に向けた
ナノファクトリーとプロセス観測」
研究課題「超高速・超並列ナノメカニクス」
研究終了報告書
研究期間 平成14年 11月~平成20年03月
研究代表者:川勝英樹
(東京大学生産技術研究所、教授)
1
1 研究実施の概要
(研究の構想)
背景:走査型トンネル顕微鏡(STM)や走査型力顕微鏡(AFM)は、探針状のプロー
ブを用い、その先端と試料に流れる電流や作用する力を計測・制御することに
よって原子オーダの分解能を達成している.前者は、電流を計測・制御してい
るため、原理的には、探針全体が微小である必要は無い.それに対し、走査型
力顕微鏡は、力の場を探針先端が感じたものを、カンチレバー全体の運動の変
化として捉えるため、カンチレバーの機械特性が顕微鏡全体の性能を支配する
重要な要素となる.カンチレバーで計測可能な力や質量は、カンチレバーの固
有振動数、Q 値が高いほど、また、バネ定数、温度が低いほど分解能が増す.カ
ンチレバーの小型化は、所定のバネ定数を維持した上で固有振動数を高めるこ
とが可能なため、一般的に有利に働く.
非常に小さいカンチレバーである、ナノカンチレバーを走査型力顕微鏡の力
検出部に使い、AFMの性能を飛躍的に高める、という発想は比較的古い.1
990年頃に、STM の発明者 H.Rohrer が提唱し、マドリッド大 N. Garcia が
計算を行っている.対象としたナノカンチレバーは、1965年に Mullins が
オスワルドライプニングにより実現されるとした、こけし状の頸部を有する金
属探針で、後に Vu Thien Bin が1969年頃に作製に成功したものであった.
後に、カーボンナノチューブを振動子として用いる構想も現れているが、いず
れも AFM 応用としては成果が得られていない.
微小カンチレバーを用いることにより、走査型力顕微鏡の性能が飛躍的に高め
られる可能性があるが、極めて重要な点は、ナノカンチレバーの実現とともに、
如何にそのカンチレバー自身の特性を生かした検出をするかという点である.
例えば、カーボンナノチューブや分子がナノメートル領域において感度の極め
て高い素子であっても、それらが受けている影響を増幅するか、置き換えるか
してマクロに計測可能なものとしなければ、検知可能なものとはならない.
目標:本研究は、走査型力顕微鏡の力検出素子をナノカンチレバーに近づけ、
かつ、その素子の特性を極力生かせる計測系を実現することにより、顕微鏡の
性能やカンチレバーの質量検出分解能を飛躍的に高めることを目標とする.ま
た、カンチレバーの微小化により可能となる高集積化を生かし、並列計測を実
現する.
実施方法:微小カンチレバーは小さく、その作動周波数は MHz から数100MHz
帯に存在する.そのため、それらの条件に対応した計測系を実現し、素子の特
性を生かすことが必要となる.この計測の課題に対し、AFM の主たる検出系であ
る、光てこ(N. Amer)や、光ファイバーホモダイン計測(D. Rugar)はレーザ
スポットが絞れない点、ホモダインである点で、適していないと考えた.いく
つかの試行錯誤の結果、ヘテロダインレーザドップラー計と、光熱振動励起を
用いることを思いついた.前者は、他の光学系と異なり、容易に回折限界まで
絞った光スポットを計測に用いることが可能で、また、ヘテロダイン法による、
高い SN 比が得られるという利点を有する.後者は、1990年頃、Umeda によ
2
り AFM に応用された技術である.計測の結果、100MHz 以上においても振動励
起可能である点、ピエゾ素子や表面弾性波素子の様に特定の色を有さない、と
いう利点を確認している.この組み合わせは,計測がヘテロダインのキャリア
周りで行われるため、ホモダイン計測の場合の様に、励起と計測が同一の周波
数で行われ、クロストークが生じるという問題点を原理的に有さない.
所定の機械特性を有する微小カンチレバーの実現は計測と平行する重要な課題
として進められた.カーボンナノチューブ、グラフェン、シリコンマイクロ加
工を研究対象とした.
研究概要:本研究プロジェクトで作製した複数の AFM は、すべて構想に基づく
光励振機能を有するヘテロダインレーザドップラー計を用いている.現在まで
に、少なくとも11台のドップラー計を試作し、その性能を改善した.1MHz 以
上で、サブ fm/√Hz 以下の優れた特性が得られている.
超高真空 AFM において、表記計測系を用いてカンチレバーの振動計測を行い、
それに基づき表面の可視化を行ったところ、以下のことが明らかにされた.
1)カンチレバーの等価剛性の高い、高次モードを用いると、28pm のカンチ
レバーの振動振幅でシリコンの原子分解能撮像が可能である.なお、19
95年には33nm、現在も数 nm の振幅が一般的には用いられている.
2)引力領域に探針を配置し、表面の原子を力により操作可能であることを示
した.
3)市販カンチレバーの3次モード(5MHz)を用いて、コリュゲーションハイ
トが数 pm しか無い、グラファイトの原子分解能撮像が可能であることを示
した.また、その過程において、STM と匹敵するか、凌駕するほどの SN 比
の高い像の取得を可能とした.
4)10pm オーダのラテラル振幅によって、シリコン表面の、横方向の力の場
のマッピングが可能であることを、実験と計算の両者から示した.これに
より、縦横両方の探針の位置微分により、表面の力の場が3次元的に計測
可能であることを示した.また、構想通り、微小振幅により、平均化効果
の極めて少ない、局所的計測が実現可能であることを示した.
同様の検出系を液中 AFM に適応したところ、以下のことが明らかにされた.
1)液中において、光励振、光計測によって、原子分解能が達成可能である.
2)雲母表面に水が常温であっても数層の結晶構造をなしており、また、その
構造が分のオーダで移動している様に見える.
3)カンチレバーの Q 値の極めて低い液中環境に適応した制御方法を実現し、
ミクロンオーダのステップ像と、原子分解能までの連続的ズームアップを
可能とした.この成果は、生体試料の観察など、高いダイナミックレンジ
の要求される試料の観察に不可欠である.
4)NaCl、KCl が飽和ブタノール中で変化している様を、ステップの移動として
捉えた.また、それぞれで原子分解能を達成した.
なお、液中 AFM については、H.Yamada、Hoogenboom が2005年に雲母の水中
撮像に成功している.水和構造の水平方向の結晶構造を可視化した例は他には
3
無い.
カンチレバーに関しては、
1)表面張力を用いた自己組み立て式カンチレバーを実現した.
2)シリコンの異方性エッチングを用いて、幅100nm 程度のナノワイヤから
構成される、コンプライアントかつ高周波のカンチレバーを実現した.
3)原子数10層からなるグラフェン薄膜をカンチレバーおよび、四隅を支持
した膜として実現し、光励振とドップラー計測でその振動を計測可能とし
た.
4)カンチレバーアレーを作製し、寸法が10ミクロンオーダの比較的大きい
ものでも fg 程度以下の分解能が得られることを示した.
なお、質量分解能に関しては、Roukes が、2005年にゼノン原子30個の質
量を計測したと報告している.こちらは,両持ち金属梁の振動を電気的に計測
したもので,AFM の構成ではない.
現時点で進行中の課題としては、
1)超高真空 TEMAFM を実現した.現在、その作動確認をはじめている.
2)超高真空 TEMAFM においてクラスターや分子を操作し、それに伴うカンチレ
バーの周波数変化から、質量分解能を同定する.
3)超高真空低温 AFM を実現した.現在、それを用いた、リアルタイム元素同
定の実験を準備している.
4)超高真空 TEMAFM においても、AFM による元素同定が可能であることを示し、
ビームによる同定と、AFM による同定を行う.
5)液中 AFM の性能をさらに高めるとともに、温度可変とし、今までに観察さ
れている水和層や、塩の溶解の、より動的な観察、水和層の構造同定を進
める.
6)探針と基板に拘束された液体分子は比較的長い緩和時間を有すると考えら
れるため、分子オーダの緩和時間を、カンチレバーを介した力学的計測で
計測可能とする.それにより、ソルベーションフォースの振動が見えたり
見えなかったりする原因や、界面での液体分子の振る舞いや構造を明らか
にする.表面力装置(SFA)で得られない知見を得る.
7)実現した微小カンチレバーを上記装置で使用し、力および質量検出の性能
向上を示す.
8)AFM 探針をアトムプローブのエミッターに有する装置を実現した.電解蒸発
のレートと、カンチレバーの周波数変化から、各種カンチレバーの質量分
解能をより定量的に明らかにする.
4
(科学技術への貢献)
計測系や励振系のノイズを大幅に低減すると共に,対応周波数を従来の1MHz
程度から,200MHzまでと,飛躍的に向上させた.それにより,1kN/m 程度
の,従来の10倍以上剛性の高いカンチレバーの振動モードを用いて,数10
pmの振幅による表面の3次元的力の場のマッピングや単原子マニピュレーシ
ョンに成功した.また,同様の技術を液中検出に用いることにより,各種塩の
可視化や,純水中の雲母表面に水分子が六角形状の格子構造を数層に渡って構
成していることを明らかにした.また,液中においても,MHz帯での撮像を行
うことにより,100kHz 程度では見えていない現象が確認されている.その
ことは,数nmのコンファインメントを受けている液体分子の緩和時間が,本
手法の機械的計測で計測可能な範囲にあることを示唆するもので,力学的スペ
クトロスコピーに繋がる可能性がある.本研究で実現した振動の計測と励振の
組み合わせは,100nm以下の幅のウイスカの振動計測にも適応され,幅が
100nmオーダのカンチレバーアレーの連続的周波数変化のモニタリングに
成功している.本手法は,液中AFMで得られる知見と併せて,低Q値液体中
での,高分解能物質検出に役立てられる.
本プロジェクトで実現した,光励振機能を有するヘテロダインレーザドップ
ラー計は,200MHzまでの周波数が計測可能なため,AFMの構成を維持
しつつ,原子から分子オーダの質量分解能を達成できる可能性がある.プロジ
ェクトを通じて11台のドップラー計を試作し,キャリアの安定化,周波数ノ
イズの低減,光路変動の能動抑制など,質量分解能を高めるための手法を示し
た.
本研究プロジェクトでは,AFMの可能性を高め,その画像の質をSTMに迫
るか凌駕するものとした.その構成を高い自由度を有するものとし,透過電子
顕微鏡,アトムプローブなどへの適応の可能なものとした.今までに示された
性能や,原子レベルの質量検出分解能,リアルタイム元素同定が標記装置にお
いて示されることが急務である.
5
2 研究構想及び実施体制
(1) 研究構想
(研究開始時に設定した目標)
1) 走査型力顕微鏡の高周波化
2) CNTやシリコンウイスカによるナノカンチレバーの実現とAFMへの応用
3) カンチレバーアレーによる並列計測
4) カンチレバーによる高分解能質量検出
5) 透過電子顕微鏡内走査型力顕微鏡の実現と,それを用いた質量変化検出
(5年間の研究計画の概要)
1) 走査型力顕微鏡の高周波化
必要な光学系の実現,ヘテロダインレーザドップラー計のキャリアの高安定化,
周波数ノイズの低減
2) CNTやシリコンウイスカによるナノカンチレバーの実現
追試性の高いカンチレバー作製方法の確立.実現されたカンチレバーの機械特性,
Q値測定,カンチレバー設計へのフィードバック
3) カンチレバーアレーによる並列計測
シリコンマイクロ加工によるアレーの実現,光走査による高速シリアル計測の実現,機
能化カンチレバーによるF1モータ分子の特定部位捕捉と周波数シフトの検出,質量
分解能同定.
4) カンチレバーによる高分解能質量検出
微小カンチレバーのQ値向上,付加質量の同定,計測,励振の低ノイズ化,計測系の
周波数ノイズの低減
5) TEMAFMの実現
TEMの実現,AFMの設計,ヨーク周辺の大気中実体模型のによるAFM単体作動
確認,質量分解能計測のためのTEM内AFMマニピュレーション.
(その後の展開により新しく生まれた目標)
1) 走査型力顕微鏡の高周波化
光学系の見直し
1kN/mオーダの,剛性の高いカンチレバーを真空中で光励振可能とするために,
励振と計測の光ファイバーを別々に用いる方式と,ファイバーを全て排除したものに変
更した.それにより,目安となる,2Åp−pの振幅を,より多くの高次モードや,微小カン
チレバーで実現可能とした.
また,AFMの特徴を生かした,リアルタイム元素同定を新たな目標と定めた.
液中への展開
光励振機能を有するヘテロダインレーザドップラー計は,励振が振動素子そのものに
作用するため,励振モードの精緻な選択や,極めてスプリアスの少ない励振が可能と
なる.その結果,探針先端を,試料の法線,もしくは接線方向に意図した方向と振幅
6
で位置変調させることが可能である.この特徴は液中で生かされると考え,2004年頃
から液中 AFM に着手した.カンチレバーアレーの物質検出を液中に展開する課程で,
液中ナノギャップの現象,検出への応用が重要性を増した.
小振幅化
AFM の高周波化はカンチレバーの高次モードや微小カンチレバーの使用によって実
現されたが,重要な点は,カンチレバーの剛性が,探針試料間力勾配の,100N/m 程
度よりも高く設定可能となり,それにより,振幅をゼロに外挿しても,カンチレバー振動
や探針が不安定になりにくくなった点である.高周波化,低振幅化,検出系の低ノイズ
化を平行して行い,極力少ない位置変調を用いたその場の計測を実現することが重
要度を増した.結果として,10pmオーダで,探針の縦および横方向の振動を用いた
多軸の力勾配同時計測が可能となった.
2) CNTやシリコンウイスカによるナノカンチレバーの実現とAFMへの応用
標記素子に加え,数原子層からなるグラフェンの振動子としての可能性に着目し,グラ
フェンカンチレバーや薄膜の光励振と振動検出に成功した.CNT と比べ,グラフェン
の方が成形し易いことに着目している.シリコンカンチレバーに関しては,微小化に伴
う低 Q 値化に対し,作製方法や,評価方法の研究が重要度を高めた.
3) カンチレバーアレーによる並列計測
カンチレバー支持部における干渉を低減することが問題となり,解決する加工方法を
実現した.光走査による高速シリアル計測が実現し,fgオーダの質量分解を確認した.
カンチレバーアレー作製と,計測に関して一応の成果を得た上で,カンチレバー一本
による性能向上や,液中ナノギャップにおける液体分子の挙動の理解へと研究の重
心が移った.シングルカンチレバーで得られた知見が,アレーにフィードバックされる
計画とした.
4) カンチレバーによる高分解能質量検出
カンチレバーの質量分解能が高くなればなるほど,どれほどの質量を付加したかどう
かを正確に知る必要がある.TEMAFM の実現と併せて,AFM 探針をエミッターとして
配置可能な,アトムプローブを実現した.これにより,探針からの物質の除去量を知っ
た上で,カンチレバーの質量変化を計測することが可能となる.また,CNT,グラフェン,
径10nm以下のシリコンウイスカなど,計測系を素子にカップルさせ,それらの振動変
化を直接知ることの困難な素子に対する研究のプラットフォームとしてもアトムプローブ
AFMを実現した.
5) TEMAFMの実現
多くの研究グループでTEM内原子分解能SPMが実現されていないことに鑑み,ヘ
テロダインレーザドップラー計の基準光を計測光と併せてヨーク近傍に導くための光
学設計変更を行った.TEM内でAFMの原子分解能を達成することも重要な成果と
なるため,質量検出と併せて,重要な目標として定めた.
7
(研究グループごとの分担)
特認助教西田周平が液中 AFM,大学院学生中川和久が超高真空 AFM を担当した.
CREST 研究員小林大が制御系を,東大助手星泰雄がデータ取得系を担当した.
AFM は試料との相互作用をマッピングするものなので,実験の解釈は,装置系,制御
系,データ取得系の密なディスカッションが不可欠であった.カンチレバーに関しては
東大大学院学生中川和久が実現し,各種装置でその評価が行われ,加工にフィード
バックされた.素子計測や撮像を通じて認識された問題点や,新たな課題は,メンバ
ー内と,メーカーにフィードバックし,共同の実験を通じて性能が向上された.
8
(2)実施体制
図1.研究チームの構成図
9
3 研究実施内容及び成果
本研究プロジェクトは,サブテーマごとに担当者を決め,複数の研究グループは設け
ていない.そのため,サブテーマごとに記載する.AFM は試料と探針の相互作用をマ
ッピングしているため,装置本体と,制御,検出系が密接に測定結果とその解釈に影
響する.個々に得られた知見が相互にフィードバックされる体制を整えた.
3.1 超高真空高周波低振幅 AFM(川井茂樹,中川和久,小林大)
(1)研究実施内容及び成果
≪実施方法・実施内容・成果に加え、成果の位置づけや類似研究と比較し、
何が優れているか、オリジナリティは何かをまとめて下さい。≫
(背景)走査型力顕微鏡(AFM)は,1987年に,走査型トンネル顕微鏡の発明
者の一人,G.Binnig が,スタンフォード大学 C.Quate 研究室において,Ch.
Gerber とともに発明した装置である.STM 発明の暫く後より,単原子オーダで,
STM 像に力が影響を与えていることを示唆する実験結果が得られており,それ
が AFM 発明の背景のひとつとなった.発明から暫くの間,原子分解能が AFM
で得られたと思われていたが,1990年代に入ると,有る程度の面積を有する探
針先端による周期像であることが明らかにされた.1992年頃,G.Binnig は,探
針試料間距離の制御を切った状態で,水の中でカルサイトを真の原子分解能
で観察することに成功している.制御に基づき原子分解能が真空中で得られた
のは,発明から10年近くを経た,1995年のことであった.その当時は,33nm
という,極めて大きな振幅が用いられており,その後,10年を経ても,なお,数n
mの振幅を用いることが一般的である.33nmという,振幅は,探針と試料に働
く短距離力の作用距離が僅か数オングストロームで有ることに比べ,極めて大
きく,非線形な場の中での振動子の挙動と,計測結果の解釈が10年間以上議
論されている.振幅をこの様に大きく設定せざるを得なかった理由は,用いられ
るカンチレバーが多くの場合40N/m程度のバネ定数を有し,表面の力勾配
よりもコンプライアントである点,ならびに,計測系のノイズが多く,比較的大振
幅にしないと周波数ノイズを実験に適したレベルまで下げられなかったためで
ある.
本研究では,AFMの有るべき姿を,従来の計測手法や,既存のカンチレバー
等力検出素子の形態に捕らわれることなく再考し,それを実現することとした.
理想としては,探針をほとんど位置変調させることなく,その置かれた場を3次
元的に計測すること,探針と試料の相互作用の選択の幅を広げ,その幅の中
で撮像や原子マニピュレーション,元素同定を行うこと,であった.
(カンチレバー) 自由振動を行う振動子の力や質量分解能は,その振幅,振
動数,Q値を高めるほど,また,バネ定数,温度を下げるほど高くなる.より小さ
い振幅で安定に撮像を行うためには,バネ定数の低いカンチレバーを用いるこ
とはできず,目安として,探針・試料間に生じうる力勾配の最大値100N/mよ
りも数倍から数10倍高めのものを用いる必要がある.力分解能の向上と,バネ
定数に掛かる条件から,有る程度の剛性を有するサブミクロンからミクロン大の
10
カンチレバーや,市販カンチレバーをその高次モードで用いることが選択され
た.なお,微小カンチレバー,ナノカンチレバーを用いてAFMの性能を向上す
る試みは比較的古く,1990年頃に,STMの発明者の一人,H.Rohrer が金属
探針がこけし状の頸部を有するもので,頭部の直径が100nm程度のものを用
いることを提案しており,マドリッド大のN.Garciaらが計算を行っている.このこ
けし状振動子は,1969年頃,フランス Vu Thien Binh が作製に成功したもので
ある.但し,著者の追試実験の結果,標記振動子は追試性が極めて悪く,また,
頸部が直ぐに壊れてしまうことを見出した.
(計測系)AFM のカンチレバーの振動検出は,従来,トンネル電流(G.Binnig),
光てこ(N.Amer),ホモダイン光ファイバー(D.Rugar)が用いられている.その中
で,光てこが最も一般的である.ホモダイン光ファイバーは,超高真空やクライ
オスタットの中で用いられることが多い.これら検出系の問題点は,1)焦点をあ
まり小さくできない点,2)ホモダイン計測である点,3)必ずしも高周波に適して
いない,という点である.試行錯誤の結果,本プロジェクトでは,ヘテロダインレ
ーザドップラー計と,光熱効果による励振を組み合わせることとした.ドップラー
計は,回折限界まで計測光を小さくすることができる上,ヘテロダイン法により,
キャリアに載せた僅かな信号を抽出できるという利点を有す.光熱効果によるカ
ンチレバー励振は,1992年頃,Umeda により AFM に応用されたものであり,励
振信号の飛び込みが問題とならない,ヘテロダイン計測との組み合わせが適し
ている.
本プロジェクトを通じ,1MHz以上で0.5fm/√Hz のノイズレベル,モデルによ
っては200MHzまでの計測帯域を実現している.また,計測と励振を2本の光フ
ァイバにわける手法や,それぞれを独立した光学系でカンチレバーに導く手法
が実現されている.
なお,関連する研究としては,H.Yamada が光てこの光強度変調を用いることに
より,ヘテロダイン法により計測帯域を MHzオーダまで高めた例や,光ファイバ
に凹面レンズを装着し,ファブリーペローを構成することにより感度を向上させ
た H.J.Hug の例,光てこの光強度を増し,高周波でレーザダイオードのドライブ
電流を変調し,光てこの SN 比を向上させた H.Yamada の研究が挙げられる.ま
た,高剛性力検出素子の例としては,F.Gissibl が,時計の音叉に金属探針を
装着し,その支持方向を選ぶことにより法線方向や接線方向の位置変調を行
った例がある.
H.Yamada の光てこは,簡便に SN 比を向上させ,計測帯域を広げられる点で
優れている.但し,光てこの原理上,レーザスポットをあまり小さくできないという
問題を有す.H.J.Hug のファブリーペロー式光ファイバー干渉計は,性能が数f
m/√Hz と優れているものであるが,レンズとファイバーの同軸性の保証が難
しい点,ヘテロダイン化が難しい点,が挙げられる.なお,光ファイバー式ホモ
ダイン計測において,回折限界までレーザスポットを微小化する手法や,ヘテ
ロダイン計測において,計測と励振のそれぞれを光学的に最適化する手法に
ついては交付期間内に JST から特許出願を行っている.
(AFM 作動)
複数台の AFM を,標記の光学系を組み込んで実現した.その結果,サブfm/
11
√Hz の,極めて低いノイズレベル,100MHzオーダの計測帯域を確認した.以
下の成果が世界に先駆けて得られた.
1) カンチレバーの振動モードを縦振動や横振動を生じるように選定し,探針の
位置変調を行ったところ,世界に先駆け,10pmオーダの振幅で表面の力勾
配が計測できることを示した(図3).
2) 1オングストローム程度のカンチレバー振幅で准安定な表面を可視化し,相
互作用の高い,低いを選択しながら撮像した(図2).
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
図2.(a)ヘテロダインレーザドップラー式AFM,(b)Si<111>7x7,(c)Si<111>
ーC(2x8),(d)Si<111>ーC(2x8)/√3x√3,(e)Si<111>1x1.振幅
は何れも1オングストローム程度.
3) 常温で,引力領域を用いてシリコンの単原子の操作に成功した(図4).
4) 市販カンチレバーの5MHzにおける3次モードを用いて,コリュゲーションハイ
トが数pm程度しかないグラファイトの原子分解能撮像を行った.この結果は,
kN/m オーダの硬い振動モードを用いて,試料垂直方向に強いボンドを有さ
ない試料の観察が可能であることを示している.
5) また,准安定な表面の可視化の実績を生かし,光てこ式ではあるが,ガリュウ
ム砒素表面の原子分解能撮像に成功し,その表面構造が,提唱されている
12
モデルの1つと合致することを示した.
6) 印象に過ぎないが,高次モードと,1Å振幅の組み合わせは,1次モード,n
mオーダの振幅と比べ,10倍程度探針の寿命が長いことが分かった.
(2)研究成果の今後期待される効果
オングストロームの振幅で,STMに迫るか,凌駕するほどの像が得られるように
なった.また,相互作用の程度を選ぶことにより,単原子操作を行うことが可能と
なった.10pmオーダの振幅で得られた像は N.Sasaki の計算結果と極めて良い
一致を示した.
今後,低振幅,高感度,低平均化効果という特徴を生かし,走査しながら同時
に元素同定を行うものが実現可能であると考えている.また,100MHzを超えた
周波数での振動計測が可能であることから,AFM カンチレバーで原子から分
子オーダの質量を計測パラメータとすることが可能となると考えている.
図3.(上図)探針をx方向に1.2オングストローム振動させ,その周波数シフトをプ
ロットしたもの,
(下図)シミュレーションによりx方向の力勾配を求めたもの.N.Sasaki
との共同研究.
13
図4.探針を試料との引力領域に配置し,表面の原子を隣のベーカントサイトに誘うこ
とにより,順次原子を移動させることが可能である.常温では初めての例である.
プロジェクト5年を経て,現時点で最適と思われる設計で計測と励振の手法を
組み込んだ AFM を図5に示す.この AFM は,基準光をカンチレバー近傍の光
プローブの中にまで導き,コモンモードによるノイズや振動成分を除去すると共
に,kN/mオーダの比較的高剛性のカンチレバーでも数オングストロームの振
幅が得られる様になっている.
図5.低温超高真空 AFM のチタン製軽量光プローブと,AFM ヘッドの上面図.左から,光
プローブ,カンチレバーホルダー,試料ホルダーが左右に並ぶ.
14
本形態の AFM は AFM の可能性を更に広げる要素を含んでいる.広く研究に
用いられると共に,実用化を通じ,社会にも貢献しうるものであると考えている.
3.2 液中 AFM(西田周平,小林大)
(1) 研究実施内容及び成果
光励振機能を有するヘテロダインレーザドップラー計は,各レーザをカンチレバー
に照射する対物レンズ越しに試料やカンチレバーの観察を容易に行うことができる.
優れたカンチレバーの振動計測性能と制御性,ならびに,光学観察の簡便性に鑑み,
本計測手法を液中 AFM に適応することを2004年ごろから考えた.この研究を通じ,
原子分解能液中 AFM を実現すると共に,J.Israelachivili の発明した SFA(Surface
force apparatus)では得られない,横方向の分解能や,高周波までの掃引による,力
スペクトロスコピーが可能になると考えた.図6に実現した液中 AFM の構成を示す.
図6.液中 AFM のヘッドと,全体構成.カンチレバーの振動発生には,自励を用いない
ことが本装置の特徴となっている.
2004年から2006年6月までの2年間近くは,市販カンチレバーの2次モード(1MH
z)を用いた自励による原子像が得られなかった.担当の西田,小林らが,自励で試料
のアプローチを行い,撮像を行う直前に他励に切り替える,という手法に変更したとこ
ろ,雲母,KCl,NaCl などの原子分解能像が容易に取得されるようになった(図7,図
8).また,縦方向位置変調だけでなく,横方向の位置変調でも良好な像が得られてい
る.特に,横方向の位置変調では,雲母上に数層の水分子が規則正しい4オングスト
ロープピッチの格子構造を為している様が可視化された.この構造は,あたかも分の
オーダで数10nm動いている様に見えた.横方向への位置変調を用いた撮像は,探
針と試料の間に捕捉された数層分の液体分子に対して与える擾乱が少なく,この様な
可視化に繋がっている可能性がある(図9).現在,観察された構造の同定と,その温
15
度依存性,フォースカーブの温度やバッファに対する依存性の計測を準備している
(図10).図10(b)に、図9で得られた像に氷のモデルとしての考察を加えたものを示
す。像が不鮮明な部分が、氷の結晶が完成している部分、白い輝点が整列している
部分は、氷の結晶の、横方向の連結が切れて、水分子が下層の格子構造の上に、正
六角形状のレジストリを保って孤立している部分に相当すると考えられる。図9の真ん
中の像上部で、白い輝点が一点だけ孤立しているものが見えるが、これは、水分子が
一個だけ下層の格子構造に孤立していることに相当すると考えられる。現在、温度可
変の液中 AFM2号機を作製し、温度を20度前後で変化させた場合の、表面の氷構造
の変化を可視化する実験を準備している。
(2)研究成果の今後期待される効果
液中 AFM による原子分解能は,2005年に H.Yamada が,2006年に Hoogenboom が
成功している.H.Yamada は水のフォースオシレーションを観察している一方,水と思
われる構造の可視化には成功していない.一方,我々は,突発的ピークはフォースカ
ーブ中に見られるものの,フォースカーブを安定して観察していないが,雲母上の水
の構造の可視化に成功している.今後,探針と試料の間の数 nm における,液体分子
の挙動,緩和時間,その計測,コントラストメカニズムを明らかにする.SFA がいままで
与えなかった知見を与え得ものとして,新しい研究手法,研究分野を創出しうるもので
あると考える.
16
図8.探針を縦に振った場合,2nm 程度のz方向変位に対して像が出続けた.フォース
カーブは大きなヒステリシスを示さず,探針がこの程度のz方向変位で不可逆に壊れる
ことは無かった.雲母そのものではなく,雲母表面の水の構造を見ていると考えられる.
図9.1オングストロームの横方向振幅で,3分間隔で撮像した純水中雲母表面に見ら
れる構造.あたかも分のオーダで靄が動いているかの様に見える.靄の中では,六角形
状に並んだ特徴点のコントラストが反転している.特徴点のピッチは4オングストロー
ム,層間ステップは約2.5オングストロームであった.
17
図10.(a)カンチレバーの捻れ振動1.02MHzを用いて,探針先端を1オングスト
ローム試料面方向に位置変調した場合のz距離と周波数シフトの関係.(1)に見られ
るプラトーは再現性がある.(2)に見られるピークは,突発的である.ソルベーショ
ンフォースによるものであるか,ノイズの飛び込みによるものであるか,検討を要する.
(b)格子構造が氷と仮定し、そのモデルを実験結果のラインプロファイルに重畳させ
て表示したもの。上側の図は上面図、下側は側面図。側面図左側は下層結晶面、右側は
一層上の結晶面、中央部は横方向の連結が切れて、水分子がそれぞれ下層結晶から上向
きに生えている様子を示す。今後、温度可変による平衡の変化の微視的観察を可能とす
る。
18
3.3 超高真空 TEMAFM,アトムプローブ AFM(中川和久,小林大)
(1) 研究実施内容及び成果
光励振機能を有するヘテロダインレーザドップラー計を用いてカンチレバー の振
動励起と検出を行う AFM を TEM 内に装着した(図11).振動に強い構造とするために,
下部ヨークの周辺に AFM の光プローブ,カンチレバーホルダー,試料ホルダーがアン
カリングする構造とした.集光レンズとしては,直径2mm以下のグリンレンズを使用し,
光学系を上下ヨークの間に挿入した.大気中でのAFM作動実験の結果,通常の非
球面レンズを用いた場合と同様の高い戻り光量が確認され,振動計測のSN比として
は,実績と同等の性能が得られることを確認した.光プローブには,基準光のリファレ
ンスミラーを配置し,光学経路中の振動をカンチレバーの振動として計測しないように
した.意図的に印加した,光路に対する縦,および横方向の1ミクロンの振動に対し,
本手法が有効であることを確認した.今までにTEM内SPMで良好な原子像が得られ
ていないことに鑑み,特に以下の点に留意した.
1) AFMの各要素をヨークに固定,ないし押しつけて振動的に一体化す
る.
2) カンチレバーの剛性を,期待される試料探針間力勾配よりも高いもの
とし,振幅が無い状態でも探針が試料に捕捉されることが無いように
した.
3) 基準光をカンチレバー近傍の光プローブまで導くことにより同相ノイズ
を除去すると共に,基準光路をピエゾ素子を用いて能動的に制御し,
1kHz以下の帯域で光路が見かけ上変化しないようにした.これによ
り,ヘテロダインに用いているキャリアのフィネスが大幅に改善され,
計測ノイズが低減されることが期待できる.
4) 本プロジェクトで実現された他のAFMと同様に,計測系ノイズの低減,
作動周波数のMHz化を行い,1オングストローム程度以下のカンチレ
バー振幅で作動可能なAFMとした.
5) 別途実験中の,リアルタイム元素同定機能を付加できる構成とした.
19
図11.(a)TEMAFM を大気中実験架台に固定したところ,(b)TEMAFMの光プ
ローブ,先端にグリンレンズが装着されている,(c)TEMAFMの光プローブを装
着したところ.全てのパーツは非磁性のチタンで加工された.
2007年9月,漸くTEMにAFMを装着した状態で真空漏れが無くなり,ビーム
を出す準備がほぼ整った.但し,成果を出す前にスクロールポンプがオーバーホール
の時期を迎えてしまい,その代替品を手配しているところである.
今までに,大きな不具合として,STEMの不良によるヨークの取り替え,観察室真空不
良による真空引きシークエンス変更と,一部手動化,走査用ボードの不良交換,真空
20
度の悪い状態でのイオンポンプの作動によるポンプのへたりが発生している.TEMは
小さいシステムではないが,作る以上,各要素が安定に作動するだけの信頼性と責任
感をメーカーに期待したい.
真空度が得られた時点で,以下の手順を予定している.
1) TEM, STEM, SEM の基本動作の確認.AFM探針や,AFM試料台上試料の観
察.
2) ドップラー計によるTEM内AFMの振動計測.自励系の構成と,TEMによる振
動の観察.
3) 試料近接による,フォースカーブの取得.
4) 一定周波数制御,ならびに,フォースカーブの極小点維持制御の実現.その際,
周波数ノイズ,変位ノイズを計測.ノイズの周波数スペクトラムとノイズ等価振幅を
評価.
5) 上記制御信号に含まれる各種ノイズスペクトラムの原因追求と排除.構造由来と
電気系由来の切り分け.各ノイズピークが得たい試料のコリュゲーションハイト以
下になるまで対策を行う.
6) 比較的相互作用が高く,撮像しやすいシリコン(111)面のAFM撮像.
7) コリュゲーションハイトが数pm程度しかない,グラファイトのAFM撮像とノイズ再
評価.
8) シリコンナノワイヤーの破断実験と,力計測.
9) C60やクラスターのAFM探針マニピュレーション.
10) マニピュレーションに伴うカンチレバーのDC的周波数シフトの検出
11) UHVAFMで別途有効性検証中の,高周波,低振幅AFMによる元素同定のT
EM内AFMによる実現.
(2) 研究成果の今後期待される効果
TEM内で,今まで程度以上の性能を有するAFMを実現し,近年高分解能化の著し
いビーム計測と,SPM計測の同時作動を実現する.ビームによる元素同定と,AFM
による元素同定を複合機において行う.また,TEM下で分子やクラスターのAFMマ
ニピュレーションを行い,有る程度既知の質量変化に対するカンチレバーのDC的周
波数変化を捉える.
他のグループに先駆けて,TEM内AFMによる原子分解能撮像,元素同定,質量検
出を実現したい.
明るい展望としては,該AFMはサブオングストローム程度の低振幅をMHzオーダで
用いており,いままで試みられた大振幅AFMのように,バンジージャンプ的に周期の
ほとんどは試料と探針の関係が分からない,というものではない.また,低振幅のため,
探針へのダメージが従来方法と比して小さい.制御中のノイズ成分の低減と,探針試
料間のアプローチルーチーン下での不可逆な探針変化が無いことを電気信号とTE
21
M像の両者から確認しつつ,成功に導きたい.なお,周辺機器がそろっているため,T
EMAFMヘッド自身は,問題有る場合,短時間でバージョンアップするつもりである.
ひとつ改良したい点は,用いているグリンレンズの色収差が大きいため,NAの比較的
大きな対物レンズで,上下極のそとからカンチレバーをねらえるものを光プローブの出
射部に取りつけたい.
3.4 微小カンチレバー(中川和久,小林大)
(1)研究実施内容及び成果
試作したヘテロダインレーザドップラー計は,2MHz近傍で最もノイズが小さ
くなる感度レンジがあるため,液中で撓みの1次モードがこの周波数近傍に存
在するものを実現した.また,固有振動数100MHzオーダのシリコンカンチレ
バー,ならびに,カンチレバーアレーを作製した.新規に作製したカンチレバー
やカンチレバーアレーは,酸化シリコンの犠牲層をプロセス最後に除去可能で,
カンチレバーのQ値を高め,個々の干渉を避ける構造となっている (図12,図
13).
追試性と量産性の点では,シリコンが勝るが,軽く,コンプライアントな構造物
として,グラフェンをシリコン構造物で支持し,光励振とドップラー計測が可能で
あることを確認している.CNTの場合,光学ターゲット無しに光学計測をするこ
とは困難であるが,グラフェンの場合,そのままで計測可能であることを確認し
た.グラフェンの機械的応用,センサ応用として,注目されている(F.Rose,
Nanotechnology, 2006).
22
図12.シリコンナノ細線を用いたカンチレバー)
23
図13.(a)シリコンナノ細線カンチレバー,(b)両持ち梁,(c)光励振と検出の評価用微
小両持ち梁アレー,(d)片持ち梁カンチレバーアレー,(e)光励振部の幅を大きく取ったカ
ンチレバー.
(2) 研究成果の今後期待される効果
大きなカンチレバーを用いた撮像の結果,一般的に,最大2Åp−pの振幅が得られる
24
ことが望ましいことが分かった.高周波カンチレバーにおいても,この条件が満たされ
るべきである.幅が100nm 程度のカンチレバーは,計測と励振の効率が高くないため,
よりNAの大きな対物レンズによる集光,励振部分の黒化など,吸収効率の向上を通
じた,振幅の確保が必要である.探針の良好な生成が確認されており,近い将来,10
MHz帯で作動するAFMが実現される.いままでの,高次モードを用いた例では,一
次モードを使用していなくとも,その熱雑音による振動は避けられなかった.微小カン
チレバーの実現に伴い,より探針と試料間距離が制御された系が実現される.なお,
微小カンチレバーの最近の例としては,H.Hug らのカンチレバー,Ando の用いている
液中AFMカンチレバーで,固有振動数800kHzから1MHz程度のものが挙げられ
る.
3.5 微小質量検出(六尾妙,中川和久)
(1) 研究実施内容及び成果
カンチレバーアレーにおいて,F1分子モータを付加質量として用いて,カンチレバー
の質量分解能を評価した.用いたカンチレバーは比較的大きなものであったため,振
動の高次モードの,1MHz程度の周波数を用いた.実験の結果,カンチレバー間の
干渉が存在し,Q値が低いことが分かった.その状態で,周波数ノイズから算定して,
1fg程度以下の分解能を確認した.カンチレバー間の干渉の問題に着目し,図13に
示したカンチレバーアレーでは,シリコンカンチレバーそれぞれが直接基板のシリコン
にアンカリングされる構造とした.それにより,干渉の問題が解決された.Q値計測と,
質量分解能の評価実験を予定している.米 Cornell 大の Craighead らは,1ag レベル
の質量分解能を報告しているが,その程度以上の分解能は比較的容易に得られると
考えられる.
Q値の高いカンチレバーの実現と併せて,質量分解能の計測と,その向上のために以
下の準備を行った.
1) ヘテロダインレーザドップラー計の改良.
11台のヘテロダインレーザドップラー計を実現した.その中で,キャリアの安定度とフィ
ネスを向上させるための方法として,以下の知見が得られた.(1)レーザの縦モード間
ビートは揺らぎが大きくて不適当である,(2)540MHzのAOMを2段カスケードにし,
単一の局発でドライブすることは,キャリアの向上に効果大である,(3)キャリアの安定
化に伴い,計測される速度信号のノイズフロアの低減が可能となった,(4)基準光を計
測箇所近傍にまで導くことにより,測定対象と,光学系本体との,光軸方向と光軸に直
交する方向の機械振動に対して感度の無い系を実現することができた.この成果を受
けて,(5)ピエゾ素子を用いて基準光の光路長を制御し,AOMのドライブ信号に対す
るフォトダイオードの検出するキャリアの位相の揺らぎを能動的に抑え,それによりキャ
リアの低周波数の安定度を向上させることができると考えている.現在,標記ドップラ
ー計を,新規に作製したTEMAFM,低温AFM,アトムプローブAFM(図14)の光
学系として実現している.
25
カンチレバーによる微小質量検出の分解能を評価するためには,質量変化量を別途
正確に知る必要がある.米 Caltech の Roukes らは,2mほど離した蒸着源から,オリフ
ィスを介した蒸着を振動子に行い,オリフィスの開閉にともない,一回の蒸着でゼノン
原子30個がカンチレバーに捕捉されるとしている.この方法では,概算で有る上に,
カンチレバー全体に質量変化ないしダンピング変化が生じることが避けられない.同
グループは近い将来,原子1個の検出を行うとしている.
これに対し,本プロジェクトでは,TEM内AFMによる探針先端への質量付与と併せ
て,アトムプローブAFMを用いた,電界蒸発に伴う質量変化を用いることを考えた.M
CP背後のアノードでイオンの飛来イベントをカウントすることにより,除去量と,カンチ
レバーの自励周波数との間の関係を求めることを計画している.
本件については,以下の手順を計画している.
1) FEM, FIM, AFM, TOF の基本動作確認.
2) ドップラー計と光励振によるカンチレバーの自励の実現.周波数ノイズの評価.カン
チレバーの高温アニーリングによるQ値向上の確認.
3) 周波数ノイズと振幅の関係の計測.
4) 作動周波数と周波数ノイズの関係の計測.
5) 電界蒸発過程のFIM観察.
6) MCP背後のアノードによる蒸発レートの計測.
7) 探針蒸発レートと周波数シフトの関係の計測,質量分解能の評価.
8) カンチレバーと計測系の向上.
9) 別途,CNT,グラフェン,ナノ細線等,光計測がまだ対応していない微小振動子の
振動計測を検討する.
(2)研究成果の今後期待される効果
液中AFMにおける物質検出は,Q値の低い環境であるため,直接質量変化を
周波数変化として求めるのではなく,ターゲット分子の捕捉に伴う,探針と試料
の間のナノギャップにおけるプローブ分子の変化を捉える.それにより,低Q値
環境での単分子捕捉認識が可能になると考えられる.そのために,液中AFM
による,微小ギャップ内の現象の解明を進める.
計測光と光励振光を,周波数に勾配を持たせたカンチレバーアレー上を順次
走査する方法が確立されているため,新規に作製したカンチレバーアレーで簡
便に ag オーダの質量分解能が得られると考えられる.この質量分解能が有れ
ば,抗生物質に対する耐性の短時間評価,DNAシークエンスのスクリーニング
が実現可能となる.
アトムプローブAFMは,探針の質量変化を定量的に評価しうる上に,探針先
端の観察,探針先端の物質同定を可能とする.AFMによる元素同定において,
探針側の評価は実験の追試性と,手法の信頼性を確保する上で必要である.
TEMAFM及び,アトムプローブAFMを通じて,
元素同定と,原子レベルの質量分解能の定量的評価が実現されれば,AFM
の適応範囲をさらに広げるものとなる.
26
基本的には,高NAの光学系により,100nm大の微小カンチレバーの高SN比
計測を実現し,AFMの構成を維持して目標を実現する.平行して,光学的振
図14.アトムプローブAFM,シリコン上に電極を固定した引き出し電極,引き出し
電極オリフィス.
動計測の困難な,微小振動子の振動を計測可能とすることは,微小振動子によ
る質量計測を実現する上で重要な課題である.光学的手法に依らない方法とし
ては,いくつか先行例があるが,1)SEMやSTEMなどの,絞られた電子線を
微小振動子に照射し,振動子の振動周波数や振幅を求める方法,2)FIMは
原理的にはエミッターの振動が拡大されない顕微鏡であるが,非線形な場の導
入により,エミッターの振動を多分割アノードの差分出力変化として捉えることの
可能性を調べる,などが挙げられる.
27
4 研究参加者
①川勝グループ
氏 名
所 属
役 職
研究項目
小林大
JST
CREST
研究員
走 査 型 力 顕 微 鏡 の 平成14年10月~
制御
西田周平
東京大学生 特 認 助
産技術研究 教
所
西森勇貴
香川大学
CREST
研 究 補
助員
星泰雄
東 京 大 学 生 助手
産技術研究
所
Franck Rose JSPS
JSPS 博
士 研 究
員
Pascal
CNRS
CNRS
Martin
博 士 研
究員
中川和久
東 京 大 学 大 博士3年
学院工学系
研究科
参加時期
液中 AFM
平成17年4月〜
液
中
UHVAFM
AFM, 平成19年4月〜
AFM のコントロール 平成14年10月〜
ソフトエウアの高度化
ナノカンチレバー、試 平 成 1 6 年 1 0 月 〜
料観察
平成18年9月
ナノカンチレバー、
DNA マニピュレーシ
ョン
ナノカンチレバー、
UHVAFM
、
TEMAFM、アトムプロ
ーブ AFM
レーザドップラー計、
光プローブ
レーザドップラー計
平成17年10月〜
平成18年9月
UHVAFM 撮像
平成14年10月〜
目黒栄
ネオアーク
開発
高野 修
ネオアーク
開発
北村真一
日本電子
川井茂樹
EMPA
櫻田武朗
ソニー
博 士 研 UHVAFM
究員
液中 AFM
水野博之
ユニソク
開発
TEMAFM, 低
AFM,
Atom probe AFM
28
平成18年4月〜
平成14年10月〜
平成14年10月〜
平成14年10月〜
平成18年10月
平成17年4月〜平
成19年3月
温 平成19年4月〜
5 招聘した研究者等
氏 名(所属、役職)
招聘の目的
滞在先
滞在期間
6 成果発表等
(1)原著論文発表
(国内誌 1 件、国際誌 19 件)
1. 川勝英樹, "百万本のカンチレバーと 100MHz までの原子間力顕微鏡", 精密
機械工学会誌, Vol.69, No.2, pp.178-182, 2003 年 2 月
2. D. Kobayashi, S. Kawai and H. Kawakatsu, "New FM Detection Techniques for
Scanning Probe Microscopy", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.7B,
pp.4566-4570, 2004 年 7 月
3. T. Mutsuo, T. Nakazawa, T. Niino, A. Yamamoto, B.-J. Kim, Y. Hoshi, K. Ikeda,
M. Michihata, H. Kawakatsu, "Fabricating Five Atomic Microscopes with an
Extremely Low Budget -A Student Project-", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43,
No.7B, pp.4615-4618, 2004 年 7 月
4. Y. Hoshi, T. Kawagishi, S. Kawai, D. Kobayashi, J.-G. Kim, Y.-H. Cho, S.
Takeuchi, B.-J. Kim, and H. Kawakatsu, "Observation of Self-Assembled
Monolayer Using the Lateral Resonance of the Cantilever in the Contact and
Noncontact Regions", Jpn. J. Appl. Phys., Vol.43, No.7B, pp.4533-4536, 2004
年7月
5. S. Kawai, S. Kitamura, D. Kobayashi, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "An
ultrasmall amplitude operation of dynamic force microscopy with second flexural
mode", Applied Physics Letters, Vol.86. p.193107, 2005 年 5 月
6. S. Kawai, D. kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "An
ultrahigh vacuum dynamic force microscope for high resonance frequency
cantilevers", Review of Scientific Instruments, Vol.76, p.083703, 2005 年 7 月
7. F.Rose, T.Ishii, S.Kawai, and H.Kawakatsu, "Non-Contact Atomic Force
Microscopy and Scanning Tunneling Microscopy of Coexisting Reconstructions
on Si(111)", e-Journal of Surface Science and Nanotechnology, Vol.3, p.258,
2005 年 10 月
8. S. Kawai, S. Kitamura, D. Kobayashi, and H. Kawakatsu, "Dynamic lateral force
microscopy with true atomic resolution", Applied Physics Letters, Vol.87,
p.173105, 2005 年 10 月
9. F.Rose, S.Kawai, T. Ishii, and H.Kawakatsu, "Scanning Tunneling Spectroscopy
29
10.
11.
12.
13.
14.
15.
16.
17.
18.
19.
and Topography of Si(111)-c(2x8)and Coexisting 7x7 and 2x1 Reconstructions:
Surface Electronic Band Structure", Physical Review B, Vol.73, p.045310, 2006
年1月
F. Rose, S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Low reactivity of molecular oxygen with
Si(111)-c(2×8)", Surface Science, Vol.600, No.1, pp.106-115, 2006 年 1 月
F. Rose, S. Kawai, T. Ishii, and H. Kawakatsu, "Scanning Tunneling
Spectroscopy and Topography of Si(111)-c(2x8) and Coexisting 7x7 and 2x1
Reconstructions: Surface Electronic Band Structure", Physical Review B,
Vol.73, No.4, p.045309, 2006 年 1 月
H. Kawakatsu, S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, "Atomic Force
Microscopy Utilizing SubAngstrom Cantilever Amplitudes", e-Journal of
Surface Science and Nanotechnology, Vol.4, pp.110-114, 2006 年 1 月
S. Kawai and H. Kawakatsu, "Atomically resolved dynamic force microscopy
operating at 4.7 MHz", Applied Physics Letters, Vol.88, No.13, p.133103,
2006 年 3 月
S. Kawai, F. Rose, T. Ishii, H. Kawakatsu, "Atomically resolved observation of
the quenched Si(111) surface with small amplitude dynamic force microscopy",
Journal of Applied Physics, Vol.99, No.10, p.104312, 2006 年 5 月
F. Rose, P. Martin, H. Fujita, H. Kawakatsu, "Adsorption and combing of DNA
on HOPG surfaces of bulk crystals and nanosheets: application to the bridging
of DNA between HOPG/Si heterostructures", Nanotechnology, Vol.17, No.13,
pp.3325-3332, 2006 年 6 月
S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Mechanical atom manipulation with small
amplitude dynamic force microscopy", Applied Physics Letters, Vol.89, No.2,
p.023113, 2006 年 7 月
S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Atomically resolved amplitude modulation
dynamic force microscopy with a high-frequency and high-quality factor
cantilever", Applied Physics Letters, Vol.89, No.1, p.013108, 2006 年 7 月
F. Rose, A. Debray, P. Martin, H. Fujita, and H. Kawakatsu, "Suspended
HOPG nanosheets for HOPG nanoresonator engineering and new carbon
nanostructure synthesis", Nanotechnology, Vol.17, No.20, pp.5192-5200, 2006
年9月
S.Kawai, F.Rose, T.Ishii, S.Tsukamoto, and H.Kawakatsu, "Dynamic force
microscopy study of the Ga-rich c(8x2) and As-rich c(4x4) reconstructions of
the GaAs(001) surface", Journal of Applied Physics, Vol.102, p.024307, 2007
年1月
20. F.Rose, H. Fujita and H. Kawakatsu, Real-time observation of FIB-created dots and
ripples on GaAs, Nanotechnology 19, 035301, 2008 年 1 月
(2)その他の著作物 (総説、書籍など)
1. H. Kawakatsu, Micromachines as Tools for Nanotechnology (Microtechnology
and MEMS), Springer 220 Edition, 2003.
30
2. 川勝英樹, "振動子の損失", ナノテクノロジー大辞典, 工業調査会, 2003 年 10
月
3. 六尾妙, 中澤友則, 新野俊樹, 山本晃生, 金範・, 星泰雄, 池田耕吉, 川勝
英樹, "20 万円で作る原子間力顕微鏡による結晶格子の観察", 生産研究,
Vol.55, No. 6, pp.13-15, 2003 年 11 月
4. 川勝英樹, "マイクロ・ナノ振動子", 光ナノテクノロジー, 丸善, p.52, 2005 年 4
月
5. 川勝英樹,表面物性工学ハンドブック,多探針 AFM,丸善,2006.
6. H.Kawakatsu , Applied Scanning Probe Methods V, Eds.: B. Bhushan, H. Fuchs,
S. Kawata,Springer, 1チャプター担当,2007
(3)学会発表(国際学会発表及び主要な国内学会発表)
① 招待講演
(国内会議 10 件、国際会議 31 件)
1) 川勝英樹(IIS)、"100万本のカンチレバーと100MHzまでのAF
M", 大学と科学シンポジューム, 2002 年 12 月
2) 川勝英樹, "ナノメカニクスの研究概要", 長野工業試験場研究会, 2003 年 1
月
3) H. Kawakatsu, "Millions of nanocantilevers and towards atomic force
microscopy up to 100 MHz", in Proc. of Japan-USA workshop on
Nanotechnology,Ithaka, USA, January 2003.
4) H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Millions of cantilevers and atomic force
microscopy up to 100 MHz, Nano2003+ Future, Tokyo, Japan, 2003.2.1
5) 川勝英樹, "100万本のカンチレバーを用いた物質センシングに向けて",
バイオチップシンポジューム, 2003 年 2 月
6) 川勝英樹, "ナノマシンの現状と展望", 日本学術振興会シンポジューム,
2003 年 3 月
7) H. Kawakatsu, "Millions of nanocantilevers and towards atomic force
microscopy up to 100 MHz", in Proc. of IIS-KIMM joint workshop on
micro/nano mechatronics, 2003 年 5 月
8) H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Towards atomic resolution lateral force
microscopy with a dither amplitude of one angstrom, NanoBali2,
International Tribology Workshop, Bali, Indonesia, 2003.7.7
9) H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Scientific Activities at Kawakatsu
Laboratory, EPFL-IIS Joint Workshop on Micro and Nano Mechatronics,
31
Lausanne, Switzerland, 2003.10.20
10)H. Kawakatsu, "Millions of cantilevers and Atomic force microscopy up
to 200 MHz", 科学研究費特定領域公開シンポジューム, 2003 年 10 月 27 日
11)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Millions of cantilevers and atomic force
microscopy up to 100 MHz,2003 International Microprocessing and
Nanotechnology Conference, Tokyo, Japan, 2003.10.31
12)川勝英樹, "百万本のカンチレバーと 200MHz までの原子間力顕微鏡", 光メ
カトロニクス公開シンポジューム講演資料集, p.52, 2003 年 11 月
13)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), マルチカンチレバーによる生体計測への試
み、日本顕微鏡学会研究部会「SPM による細胞の構造・機能・物性のインテ
グレーション」、2003.11.15
14)川勝英樹(IIS)、人工的に作製されたマルチアスペリティによる摩擦、日本
物理学会シンポジューム・アトムからジオ摩擦について、2004.3.2
8
15)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Heterodyne laser doppler interferometry
with an optical excitation function, and what it has enabled,Swiss-Japan
Nanoscience workshop, Nara, Japan (June. 2004).
16)H. Kawakatsu, "Atomic Force Microscopy up to 200 MHz", 学振研究会, 富
良野、日本、2004 年 7 月
17)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy up to 100 MHz,
第51回応物シンポジューム, Sendai, Japan (Sept. 2004).
18)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with subAngstrom
Amplitudes, 12th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy,
Atagawa, Japan (Dec. 2004).
19)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Ultrafast, Ultraparallel, Ultrasensitive
Cantilever Detection, Hokudai RIES Symposium, Sapporo, Japan (Dec.
2004).
20)S. Kawai(IIS), "Atomic Force Microscopy with SubAngstrom
Amplitudes",The 9th PNU-IIS Joint Workshop on Production Technology ,
Pusan, Korea, 2004 年 12 月
21)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with a Heterodyne
32
Laser Doppler Interferometer and Photothermal Excitation for in-Liquid
Imaging, STM05, Sapporo, Japan (July. 2005).
22)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with subAngstrom
Amplitudes, NANO05, Daejeon, Daejeon,Korea October 2005.
23)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with subAngstrom
Amplitudes, EPFL/IIS/KIMM joint workshop on Nanoscience and
Nanotechnology, Neuchâtel, Switzerland, October 2005.
24)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with subAngstrom
Amplitudes, ALC05, Kaehou, Hawaii USA, December 2005.
25)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy with subAngstrom
Amplitudes, IEEE-NanoSingapore2006, Singapore, January 2006.
26)H. Kawakatsu(IIS) Heterodyne laser Doppler interferometry of atomic
force microscopy, International Conference on Nanoscience and
Technology
(ICN+T2006),
July
30-August
4,
2006,
Basel,
Switzerland,2006-08-1
27)Hideki Kawakatsu (IIS) Mapping of lateral force gradient using
subangstrom amplitudes,Fifth ESF Nanotribology Workshop, Antalya ,
Turkey, 2006-9-27
28)Hideki Kawakatsu (IIS), Atomic Resolution Dynamic Mode Scanning Force
Microscopy, Discussions on Scanning Probe Methods, Basel, Switzerland,
2006-9-30
29)Hideki Kawakatsu(IIS), Heterodyne laser doppler interferometry for
Atomic Resolution Lateral Force Microscopy, JAPAN-USA-NSF Workshop on
Nanoscience, Tokyo, Japan, October 2006.
30)H. Kawakatsu(IIS-Univ Tokyo), Atomic Force Microscopy in Liquid,
EPFL/IIS/KIMM joint workshop on Nanoscience and Nanotechnology,
Tokyo,Japan, October 2006.
31)Hideki Kawakatsu(IIS), Heterodyne laser doppler interferometry for
Atomic Resolution Lateral Force Microscopy, JAPAN-Germany Workshop on
Nanoelectronics, Tokyo, Japan, November 2006.
32)Hideki Kawakatsu(IIS), Heterodyne laser doppler interferometry for
Atomic Resolution Lateral Force Microscopy, JAPAN-France Workshop on
33
Nano and Micro Science and Technology, Paris, France, February 2007.
33)川勝英樹(IIS) ラテラル力顕微鏡,日本物理学会,物性関係春期大会シンポ
ジューム予稿集,鹿児島,2007年3月18日
34)Hideki Kawakatsu (IIS) Dynamic mode lateral force microscopy,in Proc.
of the Hoi-An discussions 2007- International Nanotribology conference,
Hoi-An, Vietnam.2007-3-26
35)Hideki Kawakatsu (IIS) Giant features observed on mica in water by
lateral force microscopy, 6th ESF Nanotribology Workshop, Santa
Margherita di Pula, Italy, May 13-16, 2007.
36)Hideki Kawakatsu (IIS) Dynamic vertical and lateral force microscopy
1, Workshop on Nano and Micro Systems, Espoo, Finland 2007.6,15
37)Hideki Kawakatsu (IIS) Dynamic vertical and lateral force microscopy
2, Workshop on Nano and Micro Systems, Oulu, Finland 2007.6.17
38)Hideki Kawakatsu (IIS) Lateral and vertical dynamic force microscopy
in liquid and vacuum, 21st Century COE Workshop, Osaka, Japan, 2007.8.1.
39)Hideki Kawakatsu (IIS) Atomic resolution lateral force microscopy in
liquid and vacuum, International Conference on the Science of Friction,
Irako, Japan, 11 September, 2007
40)Hideki Kawakatsu (IIS) Atomic Force Microscopy,International Autumn
School on Nano and Micro Science and Technology, Tokyo Japan, October
1-5.
41)Hideki Kawakatsu(IIS), Atomic Force Microscopy in Liquid and Vacuum,
Japan-Tawan Workshop on Nano Science, Nano technology and Nano Education,
Tainan, December 2007 (2007).
② 口頭発表
(国内会議 12 件、国際会議 13 件)
1. 小林大, 佐谷大輔, 年吉洋, 藤田博之, 川井茂樹, 川勝英樹, "ナノ・カンチ
レバー・アレーによる細胞の力学特性測定へ向けた取り組み", 日本顕微鏡学
会第 59 回学術講演会発表要旨集. p.29, 2003 年 6 月 7 日
2. D. Kobayashi, S. Kawai, H. Kawakatsu, "A radio frequency circuitry for atomic
force microscopy up to 100 MHz", in Proc. of 12th International Conference on
Scanning Tunneling Microscopy/Spectroscopy and Related Techniques,
p.Mo-1-C4, 2003 年 7 月 22 日
34
3. 星泰雄, 川井茂樹, 小林大, 金長吉, 趙永学, 竹内昌治, 金範・, 川勝英樹,
"カンチレバーのねじれ固有振動を用いた自己組織化単分子膜の観察" 第 64
回応用物理学会学術講演会講演予稿集, No.2, p.606, 2003 年 8 月 31 日
4. 小林大, 川井茂樹, 年吉洋, 藤田博之, 川勝英樹, "高周波 AFM 用ナノカン
チレバーの製法", 第 64 回応用物理学会学術講演会講演予稿集, p.607, 2003
年 8 月 31 日
5. 小林大, 川井茂樹, 川勝英樹, "VHF 帯高周波 AFM の制御回路", 第 64 回
応用物理学会学術講演会講演予稿集, p.607, 2003 年 8 月 31 日
6. S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "Towards
non-contact and quasi non-contact atomic force microscopy at the first lateral
mode", 6th International Conference on Noncontact Atomic Force Microscopy,
Dingle, Ireland, 2003 年 9 月 1 日
7. H. Kawakatsu, "True atomic resolution lateral force microscopy", in Proc. of
Atomic Level Characterization 03, 2003 年 10 月
8. D. Kobayashi, S. Kawai, M. Nagashio, D. Saya, H. Toshiyoshi, H. Fujita, S.
Meguro, G.M Kim, M. van den Boogaart, J. Brugger and H. Kawakatsu,
"Atomic force microscopy up to 100 MHz and atomic resolution lateral force
microscopy", 4th International Symposium on Atomic Level Characterizations
for New Materials and Devices(ALC), 2003 年 10 月 4 日
9. 川井茂樹, 小林大, 北村真一, 目黒栄, 川勝英樹, "ダイナミックラテラルフォ
ース顕微鏡による Si(111)7x7 の観察", 京都大学基礎物理学研究所共同利用
研究会“摩擦の物理”, 2003 年 10 月 8 日
10. 星泰雄, 川井茂樹, 小林大, 金長吉, 趙永学, 竹内昌治, 金範・, 川勝英樹,
"ダイナミックラテラルフォース顕微鏡による SAM の観察", 京都大学基礎物理
学研究所共同利用研究会“摩擦の物理”, 2003 年 10 月 8 日
11. S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "Dynamic
lateral force microscopy with true atomic resolution", in Proc. of The 11th
International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.39, 2003 年 12 月 11
日
12. 六尾妙, 中澤友則, 新野俊樹, 山本晃生, 金範・, 星泰雄, 池田耕吉, 道端
正浩, 川勝英樹, "20 万円で作る原子間力顕微鏡による結晶格子の観察-学生
プロジェクト-", 第 51 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, No.1, p.464,
2004 年 3 月 30 日
13. 小林大, 川井茂樹, 川勝英樹, "近似ヒルベルト変換器を利用した非接触 AFM
用周波数検出回路", 第 51 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, No.2,
p.736, 2004 年 3 月 30 日
14. 川井茂樹, 小林大, 北村真一, 目黒栄, 川勝英樹, "100MHz までの超高真空
原子間力顕微鏡の装置開発", 第 51 回応用物理学関係連合講演会講演予稿
集, No.2, p.736, 2004 年 3 月 30 日
15. 星泰雄, 中澤友則, 六尾妙, 川井茂樹, 小林大, 年吉洋, 川勝英樹, "カンチ
レバー“ナノピアノ”の光学的励振および振動検出", 第 51 回応用物理学関係
連合講演会講演予稿集, No.2, p.738, 2004 年 3 月 30 日
16. 川井茂樹, 小林大, 北村真一, 目黒栄, 川勝英樹, "原子分解能ダイナミック
35
17.
18.
19.
20.
21.
22.
23.
24.
25.
ラテラルフォース顕微鏡", 第 51 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,
No.2, p.739, 2004 年 3 月 30 日
中澤友則, 六尾妙, 星泰雄, 川勝英樹, "液中におけるカンチレバ光励振",
第 51 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, No.2, p.738, 2004 年 3 月 30
日
S. Kawai, S. Kitamura, D. Kobayashi, and H. Kawakatsu, "Vertical and Lateral
Force Detection with a Megahertz Resonance Frequency Cantilever", in Proc.
of 7th international Conference on Noncontact Atomic Force Microscopy, p.25,
2004 年 9 月
T. Nakazawa, T. Mutsuo, S. Kawai, Y. Hoshi, H. Toshiyoshi, D. Kobayashi, K.
Nakagawa, M. Miyake, G. Hashiguchi, and H. Kawakatsu, "Towards sensing and
imaging with a photothermally actuated cantilever array", in Proc. of The 21st
SENSOR SYMPOSIUM, p.517, 2004 年 10 月
S. Kawai, S. Kitamura, D. Kobayashi, and H. Kawakatsu, "Ultra small amplitude
dynamic force microscopy with the second flexural mode of the cantilever", in
Proc. of The 12th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.53,
2004 年 12 月
D. Kobayashi, A. Higo, H. Toshiyoshi, H. Fujita, and H. Kawakatsu, "A
Fabrication Method of Nanocantilevers Using Silicon Direct bonding", in Proc.
of The 12th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.56,
2004 年 12 月
S. Kawai, T. Ishii, F. Rose, and H. kawakatsu, "Observation of the Si(111)7x7
and the quenched Si(111)`1x1` surface with the small amplitude of the second
flexural resonance", in Proc. of 8th International Conference on non-contact
Atomic Force microscopy (NC-AFM2005), p.132, 2005 年 8 月
S. Kawai, F. Rose, and H. Kawakatsu, "Ultra-small amplitude dynamic force
microscopy with amplitude down to 0.28 angstrom", in Proc. of International
Symposium on Surface Science and nanotechnology (ISSS4), p.11, 2005 年 11
月 14 日
F.Rose, S.Kawai, T.Ishii, and H.Kawakatsu, "NC-AFM and STM study of
coexisting Si(111)-c(2 × 8), 2 × 1, and 7 × 7", in Proc. of International
Symposium on Surface Science and Nanotechnology (ISSS-4), p.15, 2005 年 11
月 14 日
S.Kawai, N. Sasaki, H.-J. Hug and H.Kawakatsu, Mapping of lateral force
gradient field, NC-AFM, Antalya, Turkey, 2007.9.13
③ ポスター発表
(国内会議 3 件、国際会議 29 件)
1. S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "Towards
atomic resolution lateral force microscopy", in Proc. of 12th International
Conference on Scanning Tunneling Microscopy/Spectroscopy and Related
Techniques, p.Tu-Pos-34, 2003 年 7 月 22 日
2. D. Kobayashi, S. Kawai, M. Meguro, D. Saya, H. Toshiyoshi, S. Meguro, G. M.
36
3.
4.
5.
6.
7.
8.
9.
10.
11.
12.
13.
Kim, M. van den Boogaart, and H. Kawakatsu, "Optically addressing a large
number of cantilevers", in Proc. of 12th International Conference on Scanning
Tunneling Microscopy/Spectroscopy and Related Techniques, 2003 年 7 月 22
日
S. Kawai, D. Kobayashi, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "True atomic resolution
lateral dynamic force microscopy", in Proc. of 6th international Conference on
Noncontact Atomic Force Microscopy. p.63, 2003 年 9 月 1 日
D. Kobayashi, S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Radio Frequency Circuitry for
Atomic Force Microscopy up to 100 MHz", American Institute of Physics
Conference Proceedings, 2003 年末
T. Nakazawa, T. Mutsuo, Y. Hoshi, and H. Kawakatsu, "Optical Excitation of
Cantilever in Liquid", in Proc. of The 11th International Colloquium on
Scanning Probe Microscopy, p.103, 2003 年 12 月 11 日
Y. Hoshi, T. Nakazawa, T. Mutsuo, S. Kawai, D. Kobayashi, H. Toshiyoshi, and
H. Kawakatsu, "Nanopiano"" - An array of cantilevers for optical excitation and
measurement", in Proc. of The 11th International Colloquium on Scanning
Probe Microscopy, p.104, 2003 年 12 月 11 日
Y. Hoshi, S. Kawai, J.-G. Kim, Y.-H. Cho, S. Takeuchi, B.-J. Kim, D.
Kobayashi, and H. Kawakatsu, "Observation of self-assembled monolayer by
using lateral resonance of the cantilever", in Proc. of The 11th International
Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.105, 2003 年 12 月 11 日
S. Kawai, D. Kobayashi, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "A low temperature
ultra-high vacuum dynamic force microscope with heterodyne laser Doppler
interferometry", in Proc. of The 11th International Colloquium on Scanning
Probe Microscopy, p.106, 2003 年 12 月 11 日
D. Kobayashi, S. Kawai, and H. Kawakatsu, "New FM Detection Techniques for
Scanning Probe Microscopy", in Proc. of The 11th International Colloquium on
Scanning Probe Microscopy, p.106, 2003 年 12 月 11 日
T. Mutsuo, T. Nakazawa, T. Niino, A. Yamamoto, B. Kim, Y. Hoshi, K. Ikeda,
and H. Kawakatsu, "Making Five Atomic Force Microscopes for 200.000yen
each - A Student Project - ", in Proc. of The 11th International Colloquium
on Scanning Probe Microscopy, p.107, 2003 年 12 月 11 日
S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "An
ultra-high vacuum dynamic force microscope for a high resonance frequency
cantilever", in Proc. of The 12th International Colloquium on Scanning Probe
Microscopy, p.106, 2004 年 12 月
T. Mutsuo, T. Nakazawa, D. Kobayashi, H. Kawakatsu, "Optical Excitation of
Cantilever in Liquid with Q-Enhancement Control", in Proc. of The 12th
International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.107, 2004 年 12 月
T.Nakazawa, S. Kawai and H.Kawakatsu, "Development of a Dynamic Force
Microscope with Photothermal Excitation for Imaging in Liquids", in Proc. of
The 12th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.108, 2004
年 12 月
37
14. Y. Hoshi, and H. Kawakatsu, "Comparison between heterodyne laser
interferometer and crystal periodicity observed by friction force microscopy", in
Proc. of The 12th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy,
p.123, 2004 年 12 月
15. D. Kobayashi, S. Kawai, H. Kawakatsu, "Symmetrical Quadrature FM Detector
Equipped with Automatic Calibration", in Proc. of The 12th International
Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.124, 2004 年 12 月
16. 川井茂樹, 北村真一, 小林大, 川勝英樹, "撓み2次共振振動を使った微小振
幅撮像", 第 52 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, p.30p-YQ-9,
2005 年 3 月
17. 星泰雄, 川勝英樹, "摩擦力顕微鏡による結晶像とレーザ干渉計との比較",
第 52 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集, p.30p-YQ-10, 2005 年 3 月
18. 六尾妙, 中澤友則, 小林大, 川勝英樹, "マイクロカンチレバを用いた液中質
量検出の高感度化",,"第 52 回応用物理学関係連合講演会講演予稿集,
p.30p-YQ-14, 2005 年 3 月
19. V. Agache, B. Legrand, K. Nakamura, H. Kawakatsu, L. Buchaillot, H.
Toshiyoshi, D. Collard, and H. Fujita, "Characterization of vertical vibration of
electrostatically actuated resonators using atomic force microscope in
non-contact mode", Digest of Technical Papers TRANSDUCERS '05, Vol.2,
pp.2023-2026, 2005 年 6 月
20. A. Tixier-Mita, K. Nakamura, A. Laine, H. Kawakatsu, and H. Fujita, "Single
crystal nanoresonators at 100 MHz fabricated by a simple batch process",
Digest of Technical Papers TRANSDUCERS '05, Vol.2, pp.1388-1391, 2005 年
6月
21. S. Kawai, S. Kitamura, D. Kobayashi, and H. Kawakatsu, "Ultra-small amplitude
dynamic force microscopy with the second flexural mode of the cantilever", in
Proc. of The 13th International Conference on Scanning Tunneling
Microscopy/Spectroscopy and Related Techniques, p.Mon-Pos-63, 2005 年 7
月
22. S. Kawai, D. Kobayashi, S. Kitamura, S. Meguro, and H. Kawakatsu, "An
ultra-high vacuum dynamic force microscope for a high resonance frequency
cantilever", in Proc. of The 13th International Conference on Scanning
Tunneling Microscopy/Spectroscopy and Related Techniques, p.Tue-Pos-62,
2005 年 7 月
23. S. Nishida, D. Kobayashi, T. Sakurada, and H. Kawakatsu, "Atomic Resolution
Imaging in Water with the Second Flexural Mode using Optical excitation and
Doppler velocimetry", in Proc. of 9th International Conference on Non-Contact
Atomic Force Microscopy (Kobe, Japan), P1-31, 2006 年 7 月
24. S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Small amplitude dynamic force microscopy
operating at 4.7 MHz", in Proc. of 9th International Conference on
Non-contact Atomic Force Microscopy (Kobe, Japan), p.20, 2006 年 7 月
25. S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Atom manipulation on the Si(111)-(7x7) surface
with small amplitude dynamic force microscopy operating at room temperature",
38
26.
27.
28.
29.
30.
31.
32.
in Proc. of 9th International Conference on Non-contact Atomic Force
Microscopy (Kobe, Japan)", p.106, 2006 年 7 月
S. Kawai, and H. Kawakatsu, "Atomically resolved amplitude modulation
dynamic force microscopy with a high resonance and quality factor cantilever",
in Proc. of 9th International Conference on Non-contact Atomic Force
Microscopy (Kobe, Japane)", p.58, 2006 年 7 月
S. Kawai, H. Kawakatsu, "Small Amplitude Dynamic Force Microscopy
Operating at 4.7 MHz", in Proc. of International Conference on Nanoscience
and Technology (ICN+T2006, Basel, Switzerland), p.182, 2006 年 7 月
S. Kawai, N. Sasaki, K. Oshima, H. Kawakatsu, "Direct Detection of Lateral
Force Gradient Among Atoms", in Proc. of International Conference on
Nanoscience and Technology (ICN+T2006, Basel, Switzerland)", p.182, 2006 年
7月
T. Sakurada, K. Nakagawa, Y. Hoshi, S. Meguro, O. Takano, and H. Kawakatsu,
"Towards AFM in TEM using optical fiber-less laser Doppler velocimetry", in
Proc. of The 14th International Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.97,
2006 年 12 月
D. Kobayashi, S. Nishida, and H. Kawakatsu, "Phase-Locked
Forced-Oscillation AFM Controller", in Proc. of The 14th International
Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.99, 2006 年 12 月
K. Nakagawa, T. Sakurada, D. Kobayashi, D. Saya, G. Hashiguchi, and H.
Kawakatsu, "Single-crystal nano-wire cantilevers for scanning force
microscopy", in Proc. of The 14th International Colloquium on Scanning Probe
Microscopy, p.107, 2006 年 12 月
S. Nishida, D. Kobayashi, T. Sakurada, and H. Kawakatsu, "Atomic resolution
frequency-modulation atomic force microscopy in liquid using photothermal
excitation and laser Doppler velocimetry", in Proc. of The 14th International
Colloquium on Scanning Probe Microscopy, p.24, 2006 年 12 月
39
(4)特許出願
① 国内出願 (12件),海外出願(12件)
表1.JST 出願の特許一覧表
追記として,表1に記載した以外のもの
整理No. 出願No. 出願年月日
N021P05 2004-10
04.3.30
0735
発明者
川勝英樹
PCT 発明の名称
05/3/29 ナノギャップ列物質
補足検出同定手法お
よび装置
なし
複合ピエゾ素子を用
いた精密高速移動機
構
NO21P10 2004-15
0133
04.5.20
川勝英樹
NO21P11 2004-15
0134
04.5.20
川勝英樹
05/5/20
NO21P09 2004-14
4751
04.5.14 川井茂樹、
川勝英樹
05/5/12
NO21P08 2004-16
4833
04.6.2
川勝英樹
05/6/2
NO21P14 2004-31
4034
04.10.28
川勝英樹
済み
NO21P18 2004-35
2728
04.12.6
小林大,
川勝英樹,
年吉洋
05.3.2
川勝英樹
済み
05.3.2
川勝英樹
済み
06.7.31
小林大,
川勝英樹,
西田周平
川勝英樹
済み
NO21P19 2005-05
6754
NO21P20 2005-05
6753
N021P36
N021P@@
特願
2006-20
7297
済み
準備中
40
説明
マルチカンチレバー
アレーによる高感度
物質捕捉のため
TEMAFM等,マル
チプローブや光プロ
ーブの相互位置決め
のため
精密高耐荷重移動方 TEMAFM等,マル
法および装置
チプローブや光プロ
ーブの相互位置決め
のため
位相同期回路を用い 自励振動子の周波数
た高感度力・質量検出 検出の高度化のため
方法および装置
振動子の光励振Q値コ 液中で高いQ値を得
ントロール方法およ るための技術
び装置
デイジー型カンチレ スピンコートによる
バーホイールを有す カンチレバーアレー
の修飾と,回転型カン
る計測装置
チレバーアレーによ
る物質サンプリング
機械的振動子及びそ 10ミクロン以下の
の製造方法
カンチレバーの安定
した作製方法
光励振レーザドップ 光励振機能を有する
ラープローブ及びそ ヘテロダインレーザ
れを用いた測定シス ドップラー計の高度
化
テム
ホモダインレーザ干 超高真空用ホモダイ
渉計プローブ及びそ ンレーザプローブの
れを用いた変位計測 高性能化
システム
走査プローブ顕微鏡 主に,液中の低Q値環
装置
境で良好な作動を得
る手法
元素同定装置
単原子レベルで元素
同定を行う手法と装
置
川勝英樹,中村邦彦, “パラメトリック共振器およびこれを用いたフィルタ”, 東京大
学,松下電器産業共願,国内および PCT.
他1件,国内および PCT
(5)受賞等
①受賞
川勝英樹 日本学術振興会 2006年度 ナノプローブテクノロジー賞 “光励振機
能を有するヘテロダインレーザドップラー計による高周波低振幅原子間力顕微鏡の
実現”受賞日 2007年4月22日
川井茂樹 第1回東京大学大学院工学系研究科委員長賞 2005年度 “原子間
力顕微鏡の高周波化に関する研究”、受賞2006年3月
②新聞報道
③その他
7 研究期間中の主な活動(ワークショップ・シンポジウム等)
参 加 人
概要
数
2 0 0 7 年 9 International
伊 良 湖 , 80人
Local organizer, steering
月11日
Conference on the 愛知県
committee
Science of Friction
2006年10 Joint workshop on 東 京 , 及 25人
フ ラ ン ス CNRS, ス イ ス
月19日
Nano and Micro び
EPFL,ドイツ IMTEK,より
Science
and 軽井沢
参加者
Technology
年月日
名称
場所
8 研究成果の展開
(1)他の研究事業への展開
JST 独創モデル化による液中 AFM の実用化を計画している.交付済み、ないし交
付が決定されている他の研究事業はない.
(2)実用化に向けた展開
米サーモマイクロスコープが実用化、ライセンシングについて興味を持っている.
日本、ネオアーク株式会社、株式会社ユニソク、日本電子株式会社が実用化を希
望している.
光励振ヘテロダインレーザドップラー計は、JST 権利化試験事業、独走モデル化事
41
業を通じて立ち上がり、本プロジェクトを経てさらに高性能なものになっている.すで
に数台販売された.
液中 AFM に関しては、ネオアーク株式会社が来年度独創モデル化への申請を希
望している.
9 他チーム、他領域との活動とその効果
(1)領域内の活動とその効果
1) 市川研究グループのクラスタ作製のノウハウを知り、質量分解能計測の対象の
一つとしてクラスタを用いることを考えた.貴重な助言をいただいた.
2) いよ田研究チームより高分子3次元構造の試料の提供を受け、液中 AFM での
高分解能観察を試みた.結果としては、探針が試料に補足されてしまうせいか、
有意な像は得られなかった.作動周波数、バッファ、振幅等を変えることにより、
再挑戦する予定である.液中 AFM で生体膜などの比較的柔らかい試料を見る
ためのベンチマーキングを与えた貴重な交流である.
3) 木下研究室とサブナノメートルのステージ制御に関する実験を行った.他の分
野において、どのような分解能と周波数帯域での位置制御が求められているか
を知ることができた.また、新しく、堅牢性の高い変位計測システムを思いつくに
至った.
(2)領域横断的活動とその効果
特に共同研究に至った例はないが、DNA研究会に出席し、SPM 応用の観点から
同分野での課題を知ることができた.
10 研究成果の今後の貢献について
(1)科学技術の進歩が期待される成果
1) 超高真空での3次元の力のマッピングや、力による常温単原子操作が可能とな
った.今後、高速に意図した構造、配列の表面を人工的に作ることが可能となる
と期待できる.
2) MHz 帯、サブミクロン振幅で作動する走査型力顕微鏡を実現した.振幅が近距
離作用力の距離よりも小さく、周波数が高いため、複数の変調周波数を用いて
微分計測、2次微分計測を比較的短時間で実現することが可能である.それに
より、探針を走査しながら同時に元素同定を行うリアルタイム元素同定が可能と
なる.それが確立されると、真の意味での、カラーの走査型力顕微鏡像の取得
が可能となる.
3) 原子分解能走査型力顕微鏡が透過電子顕微鏡内で実現される.振幅が小さく、
常に探針先端が近距離作用力の範囲内に存在する本顕微鏡は、その作動原
理により、従来の大振幅原子間力顕微鏡よりも探針先端の不可逆な変化が生じ
にくい.実際、高次振動を用いると、探針の寿命が10倍程度長い.TEMAFM の
実現においては、探針試料間距離を一定に制御した状態で、その制御信号に
含まれるノイズのスペクトラムを調べる.その際、機械的ノイズや電気的ノイズが
計測したい試料のコリュゲーションハイト以下になるようにノイズ対策を行い、良
好な原子分解能像と TEM の作動を両立させる.ビームテクノロジーによる同定
と、AFM による同定が同時に可能となることが近い将来期待できる.
42
4) 液中 AFM により、表面の水和構造が動的に変化している様子や、ヘキサゴナ
ルな結晶構造をなしていることが明らかにされた.様々な表面や分子の水和を
可視化し、水和が機能や反応にどの様に寄与しているかを明らかにすることが
期待できる.新しい研究分野の創出に寄与すると考えられる.
5) 表面力装置(SFA、surface force apparatus)は表面近傍の液体分子や、拘束を
受けた液体分子に関する多くの知見を与えてきた.本研究で実現された高分解
能液中 AFM は、SFA では得られない横分解能での研究や周波数での計測を
可能とする.関連する分野での、新しい研究分野の創出に寄与すると考えられ
る.
6) 200MHz までの振動の計測のできる計測系の実現により、将来は200MHz まで
の振動を用いた計測が可能となる.様々な物質や、界面に拘束された分子の、
緩和時間を機械的手法により捉える、より動的な計測が可能となる.
7) アトムプローブ AFM や、TEMAFM において、200MHz までの振動子を用いる
ことが可能である.両者を用いて、定量的にカンチレバーの与える質量分解能
を評価することが可能となり、計測系とカンチレバーの相互のフィードバックを通
じて、原子オーダの質量分解能が実現され、AFM に質量という、新たな計測パ
ラメータが加わることとなる.
8) 液中 AFM で得られた知見から、液中カンチレバーアレーにおいて、どの様に微
量な物質を検出すべきかが明らかになった.液中高感度多種物質検出への応
用が期待される.
9) インターカレーデッドグラファイトで超潤滑に近い状態を実現した愛知教育大学
三浦教授と、pN オーダのラテラル摩擦の計測を共同で準備している。今後、本
プロジェクトで得られた成果が、様々な環境での、微小力や、擾乱を受けて失わ
れやすい構造の可視化に役立つと考えられる。
(2)社会・経済の発展が期待される成果
1) 本研究を通じ、AFM 像を STM 像に匹敵するか、それ以上のものにまで高めた.
同様に、液中 AFM においても、今まで可視化不能であった試料の高分解能可
視化や水和の可視化が可能となった.超高真空、液中の両方で、米有力メーカ
ーや、日本の複数のメーカーがライセンスに基づく新しい顕微鏡の実現を望ん
でいる.実用化を通じて、広く研究に役立つことが期待できる.
11 結び
(達成感と課題)
高剛性微小カンチレバーの低振幅、高周波数作動は探針により場を計測する上で
理に適っている.その実現のために、回折限界まで計測点を絞れるヘテロダインドッ
プラー計と光励起振を組み合わせ100MHz 以上での振動励起と計測を可能とした.
この手法はプロジェクト当初からの読みであったが、それが間違いではなかったことが、
10pm オーダでの3次元の力の場の計測、常温単原子マニピュレーションなどから示さ
れた.更なるカンチレバーの小型化と高周波化は必至であり、今後ともそれに対応す
43
る手法であると確信している.早期にリアルタイム元素同定 AFM を実現したい.
液中 AFM は、プロジェクト2年目に、計測系の性能に鑑み、可能であるとの予想を立
て、着手した.制御系を自励系から他励系に切り替えた2006年夏から矢継ぎ早に成
果が上がり、他の手法では困難もしくは不可能な、大きなステップ像と原子分解能の
両立や、水和の可視化を可能とした.液中 AFM の成果は当初の我々の期待を凌駕し
ている.得られた像や現象の解釈は、SFA が与えていなかった領域での現象の謎解き
への糸口であり、新たな理解、新たな分野創出に寄与できると考えている.
TEMAFM に関しては、本報告書を作成している2007年9月時点でまだ成果が出て
いない.全体予算の4割をあえて割いたテーマだけに、何としても従来の成果を凌駕
する成果を出したい.今までに何台も SPM を作製しているが、そのすべてが、第1回
目は上手く作動しない.成功への道筋は、まず第1に、探針を試料に近接させる際、
探針を壊さないことにある.探針試料間アプローチの終了時における、誤差信号、トン
ネル電流信号をシングルイベントオシロスコープで詳しく調べ、探針に不可逆なことが
起きていないかを調べる必要がある.第2に、探針試料間距離を制御した状態で、制
御信号に含まれるノイズ成分の振幅と周波数を調べ、一つずつその原因を同定し、除
去していくことにある.あらゆる周波数帯で、ノイズスペクトラムが計測したい試料のコリ
ュゲーションハイトを下回れば、自ずと原子分解能像が得られることとなる.幸い、本研
究で実現した、高剛性、低振幅を用いた AFM は、探針が常に試料から1オングストロ
ーム程度の所にあり、大振幅の、バンジージャンプ的 AFM と比して探針や試料を破壊
する危険が少ない.年度内に少なくとも説得力有る、明るい展望を得たい.
カンチレバーアレーによる液中計測、物質検出は、超並列ナノメカニクスを代表する
課題である.研究過程において、シングルカンチレバーだけでも課題が多く、また興
味ある謎解きが多数生じたため、アレーにおいて多くの成果を出すまでに至っていな
い.今後、液中 AFM で得られる知見を生かしたい.
(研究体制について)
自由な着想と、構想の短時間評価を目的として、複数の研究グループを設けなかった.
日常的に会うメンバーで方向付けと研究の実施を行った.ただし、ワークフォースの不
足を補うために、複数の企業に研究分担者を求め、装置の作製、納品に先立つ現地
での実験を行った.本プロジェクトの成果の中に、いくつかのブレークスルーがあり、そ
れらは多くの場合、研究メンバーのディスカッションや数10ヶ月同一の問題に伴に悩
まされた結果もたらされた.論文や、出願特許の連名はそれを物語っている.インスツ
ルメンテーションに関する、先駆的、機動力ある研究は比較的少数グループで行い、
物質観察やそれぞれの同定、謎解きはある程度の人数で手分けして行うのが効率が
良いと現在でも考えている.
(JST のサポートについて)
領域会議、領域横断会議は、研究面での情報交換を可能とし、ありがたいものであ
った.2次的効果としては、分野は違うものの、各課題の達成度を垣間みることができ
たため、自分の課題の達成度を他との比較において評価することができた.
JST からは、常に前向きのサポートを得ることができ、大変感謝している.報告書や計
画書のフォーマットが基本的に自由である点も高く評価したい.
44
(むすび)
現在、構成メンバー一同、成果を挙げるべく特に努力している.交付が今年度限りで
あることは残念であるが、終わりが近いだけに、多くの成果が出ることが期待される.
最後に,蒲生先生、アドバイザーの先生方、事務局の皆さんに深く感謝したい.
以上
45
Fly UP