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西別川再生をめざす人たち(『ノースアングラーズ』98年秋号)
、 、 猶1下 釣り人だから見えてくる北海道の今 一助正地A2樫 川や海、森や湖に触れる穏会が多い釣り人は、 動植物たちの次に、環境の変化に 敏感でいられる存在なのかもしれない. だからこそ、できること、 やらなければならないことがある…… 四1回 、 、 … 、 鯵 戦後、国後島から引き揚げてきた吉太 を子どもたちが捕まえていたね﹂ マスが遡ってきて暴れるんだけど、それ の大木で鰯蒼としていた。浅瀬にサケや ﹁河口の近くに中洲があって、ヤナギ を与えてくれたのが西別川だった。 それで牛舎やサイロを造る。多くの恵み になると馬そりで西別川の砂利を運び、 がら山菜やキノコを採る。父母たちは冬 ったヒサ子さんが述懐する。子守をしな 中流部の西春別地区の農家で生まれ育 が遊んでいたもんですよ﹂ た丸木橋の下には、イトウやホッチャレ したね。ナラの大木を倒して父親が作っ だし、浅瀬にはカラス貝やヤマベがいま 川で、喉が渇くとみんなでガブガブ飲ん ﹁子供の頃、先生が連れていくのが西別 夫婦のお宅を訪れて、話を聞いた。 運動﹄のリーダー格のヒサ子さん︵釘︶ 漁協婦人部が取り組む﹃お魚殖やす植樹 って直販する大橋吉太郎さん︵聖と、 漬けと呼ばれる独特の方法で塩ザケを作 別海町の浜別海地区で、漁業の傍ら棚 である。 規模化で牛の糞尿問題も起きているため 進んで土砂が入りやすくなり、酪農の大 に入る辺りから汚れを増す。草地開発が 上流部は清流を誇る西別川も、別海町 ものである。釣り人の姿も多い。 ても、森に囲まれたこの辺りは清流その れる。大雨が降って下流部が茶色く濁っ 昆虫の成育に適したバイカモが川面に揺 孵化場に近い西別川の源流部は、水生 き水に由来するらしい。 にある水産庁の孵化場付近で噴出する湧 泉.ある・川︶﹂といわれ、標茶町虹別 は、アイヌ語の﹁ヌ・ウシ・ペッ︵温 室湾に注ぐ流長万、の西別川。その語源 摩溺深騨織漸蕊 取り戻し た い … ある。根釧パイロットファーム事業︵聡 .......=.哉今..■...− I かつて の 清流を 郎さんが話す、当時の河口部のようすで 心が麺“力1'12 113心1M…wも ◆ 年入植開始︶、新酪農村事業︵粥年着工︶ たくさんの恵みを与えてくれた西別川のようすを賭す大棡さん夫婦 島 貞 鰹 岬 紗 曜 画 憩 ‘ R 勝 h 潅 ? 『 写真・文o滝川康治(ルポライター・下川町在住) 釣り人だから見えてくる北海道の今 血 愚 懲 ﹄..。〃 0.■100.1Ⅱ010111凸1い恥日中L■14Ⅱ140b8Jq1卜fFIqiI4Il 、 K < も M画Z F 9 . . J 凸軋 認 窓 蚕坐訂 夢 = と続いた酪農の規模拡大路線によって、 西別川はかつての清流を失った。だから、 ﹁パイロットファームの時代までの西別 川に戻して、みんなで考えよう﹂と、吉 太郎さんはこれまでずっと主張してき も〆 たことがありません砦 。一 撃情報鐸聞鯲需産卵床を捜して てみ みた たけ けれ れ だが、ここ数年へ︾諭つ淀の清流を取り戻 される形で、別海町は馴年から﹁魚を育 別海町営育成牧場の中にあった。 象徴する場所が、シカルンナイ川流域の 工事などが互いに関連している。それを 開発や河畔林の伐採、糞尿の流入、河川 沸職誹蝿縦鋳鯛蝿澱識匪蕊 溺灘Ⅷ鯏溌踊矧緬釧 魚や貝が棲みづらくなった一のは、草地 摘する。 蝿蕊誰胤這這繕 した。これほど魚影のは見面として機能しているかどうか、洗いな 胴訟峠諏銅訓おす必要がある﹂ に、﹃たまに見︾私一駅が伽﹄↑いう感じでど、見つからなかった。西別川が保護水 ・ た。︲I!︲︲;li#IIj1j1#IJ ヒサ子さんら婦人部員が火付け役に一な!’ った植樹運動は、町ぐる一みの取り組みに一 発展している。酪農の拡犬一に儘フ川の汚一 れを反省する機運も高まりうつある。し かし、清流を取り戻寺憲でには、まだま だ長い時間がかかりそうである。 一叩叩叩哩●謡●︾ いなかった。一 小宮山さんによると、これ蜂幼生の ときにヤマメやニジマスのエラに寄生し ないと生存できない、川真珠貝分生態と サ篭謹轤鮴蕊 学芸員︶は今年4月、3日間かけて西別 関係がある、という。つまり、昔は源流 一 川支流のシカルンナイ川︵保護河川︶の 源流部から本流までを調査した。が?小 宮山さんが目視できたのはニジマスとア だけが生息している訳である。一 部付近にも生息していたサクラ尋スが絶 滅した可能性が高く、成長した川真珠貝 1− 1− 今は全流鍾霧姿瀬睡雍ない。イ イト トウ ウの目 ﹄■叩■叩叩■唖■唖■器醒■話叩叩︾砧叩■恥叩■︾■︾叩岬■︾■叩叩叩酔叩蠅。■■唖特﹄■︵叩岬■需咄■■■叫唖■叩.。■︾■■叩■■唖■■叩■■﹄︾﹄■叩■■︾︾■︾︾■■■■叩■■叫曲■器■叩■唖雑叩■■■。 くが が、 、 近に二顎鐘競鋤遜濤謝いた、とと 聞聞く ﹁釦年ほど前にはオンネベッ川や虹別付 謬葱柔発崎一軍鯵たんたる状況詫鳶洗麺︽ お鐘灘耀溌識湾ネベッ川睦鰯管流点郷織一 下流切一西別川氷系鮭、清爽刷洲など一蔀 を脇轆認織睡坪Ⅲに櫛窪謹紙溌蝉宥⋮蕊 ﹁臆かゆ線篭河川なら漁加護識剰巍藩切︽ 質調査結果︵郵年の数値︶によると、根 ↓ 室管内では糞尿や化学肥料などに起因す 一 地元の人によると、このあたりは昭和 弾説 ⑩年代には近寄るのも怖いくらい霞蒼と 当幌川の順。硝酸態窒素や糞便性の大腸 川をトップに床丹川、茶志骨川、春別川、 年の間に道路工凄や河川醗纏が符なおれ 菌群は、管内にあるサ毎.マス増殖河川 る硝酸態窒素濃度のワースト5は、西別 たところもある評河畔林を伐り倒し、コ この夏には、別海町内の水産加工会社の の支流や源流部からも検出されている。 した森で、ワラビ採りの穴場だったらし ンクリート3面張卿の髄岸篭施暇一て立派 イクラ製品によ一る⑥157汚染が発生し な橋を架け諭−1事業主体は根室支庁と いう。圭砂の流入もひどい。西別川沿い た。酪農地帯の真ん中で起きた事件なだ けに、気掛か剛な話である。 に植樹をLながら母支流では旧態依然の 工事、なんともチグハグな光景だ。 西別州流域では、この㈹識年間多額 の罷算を投じて農政主導型の大型酪農郷 づくりが進められた。別海町は乳牛の飼 育頭数、草地面積とも日本一の規模に達 している。そうした拡大路線の末に、多 くの酪農家は多額の負債や糞尿問題など を抱え、もう一方では自然環境の悪化が る 毒旧年前、漁協婦人部の人たちが西別川 モ 娠や床丹川の近くで始めた植樹運動に触発 カ バイむ森づくり事業﹂に取り組んでいる。西 や 蕊 苗木を植えて河畔林を再生させる試み だ。扣年間で103ヘクタールが目標で、 この5年間に弱ヘクタールほどの植樹を 終えた。 離農跡地を町が買い取り、上流から中 流に向かって毎年2∼5万本ずつ植えて きた。毎年6月に植樹祭を開いていて、 今年は農漁業や建設業団体、釣り愛好グ ループなどから160人が参加した。会 場の一角は漁協婦人部の﹁お魚殖やす植 樹運動﹂のために提供される。 ﹁町が取り組むようになって、すごくう れしかったし、農家の人と一緒に植えた ものだけれど、︵森をつくる︶意識とし 時には涙が出てきました。数は微々たる ての広がりが心強いんです﹂ そう話すのは、植樹のきっかけをつく 町農林課では、﹁いろんな団体が興味 った大橋ヒサ子さんである。 をもってきて、植樹祭の参加希望者は地 たがって用地確保が難しくなる、と悩ん えている﹂と言いつつ、下流にいくにし G 凸 凸 ■ h & = . 二 . 一 一 一 , I 鴬 チダモ、ミズナラなどの広葉樹を中心に、 心"呪…ll4 115心 " 汎 噌 わ 庵 邪蝿 鰯 別川の両岸釦mに、ニレやハンノキ、ヤ ている小宮山さん 蕊 ソ レ ク 各地の川を歩いてサケ科の魚の生態を胴べ ョ.■■.■■.=■■■畦■■■.■■■■.■.■■■:■■..■■.■■■:■■.■.■.■.:.■.■.■■.:■■L■.:■■■■..■ 少し古い数字になるが、漁業団体の水 妄講試み 源蕊瀦蓬剰鯛鵠 薑胤再生にむけた 少なくなっている 蕊 説 呼fドーI臘誓涛壜動が寮にな⋮て謹潅・ ︾ 蕊流域で広がる 西別川のニジマス。最近では小型化が進み、大型の個体は 職発潅感誇 い︾。今は広大な牧場と癒雌、ここ112 草 進んでしまった。 毎毎F 少 でいた。これからが植樹活動の真価が問 われるところだろう。 アイヌの人たちが﹁コタン・コロ・カ ムイ︵村を司る神︶﹂と畏敬の念をこめ て呼んだシマフクロウが棲める環境づく りをめざす人たちもいる。喫年に虹別地 区の住民有志らで設立した﹃虹別コロカ ムイの会 ﹄ で 、 精 力 的 な 活 動 を 続 け て い る。 ﹁わたしたちの原点はシマフクロウを守 ること。それには森と川、魚がなければ なりませ ん 。 木 を 植 え て 、 本 別 海 ま で シ マフクロウが行き来できるようにした い。﹁酪農も漁業も一緒になって西別川 を守ろう﹂って話をしているんですよ﹂ て、少しだけれど河口から旧師くらいま 会長の舘定宣さん︵弱︶が力を込める。 シマフクロウの巣箱かけや虹別の中心部 内に住む会員の松本修さん︵翌は、 ﹁西別川の魅力は川藻が茂って湧水があ ること。釣り人には憧れの川で、孵化場 の下は川に入ると心が洗われる。でも、 昔は夕方になるといくらでも釣れたオシ ョロコマが、ずいぶん減った﹂と話し、 これからも地元の人や漁業者と連携し て、地道な活動を通じて西別川をきれい にしようとしていた。 してもらうのが目的とか。最終日に10 いうのではなく、弾き語りのなかで理解 50人近くが訪れた。口先で環境問題を 今年は源流から下流まで5会場に合計9 別川流域コンサート﹂を開催している。 釣り人のマナーについて﹁家族連れが一 が好きな副会長の高沢俊一さん︵幅︶は、 イトもあったとか。フライフィッシング ミが集まり、なかには釣りバリのついた それぞれ1トン車に山になるほどのゴ ありようを見つめなおす好機になった。 挫するのだが、この取水問題は西別川の や漁業・自然保護団体の反発にあって頓 年ほど前に浮上した。結局、流域の住民 く11という道開発局と同町の計画が5 釧繊鶏轄霧誌 00円の会費で植樹祭をやって、漁協が 番悪くて、ゴミを捨てたりして親が悪い ープ﹁スプリング・クリーク﹄は、﹁虹 道東一円をフィールドにした釣りグル いいのだろうIlら 実らせるためには、どんな道筋を描くと 動の輪は静かに広がっている。それらを って、西別川に清流を甦らそうとする活 その後も、前出のさまざまな試みによ 海の幸を提供してごちそうを出す。流域 見本を見せている。年配者には乱猿気味 川の清掃もやっている。 別コロカムイの会﹄と連携して植樹や看 1“ 岬 # …1 Lt孔凹凸■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 保護河川を見直し、上流までサケが遡 ﹁バイカモは自然のバロメーター。清掃 、.01︲’’11hF皇ⅡⅡ0︲l■口 板の設置などに取り組んでいる。標茶町 ることを考えてみてはどうだろうか。 原因に目をむけつつ、一人ひとりができ にくい環境に変わってきた。環境悪化の 川改修エ事によって、淡水魚などが棲み この地方の河川は、酪農関連事業や河 ていくだろう。 んでいけば、一河川環境も少しずつ回復し を積極的に応援するlそんな方向に進 せていく。行政は農業関係者の取り組み は種極的に木を植えて、河畔林を再生さ りに努める。川のそばに迫った牧草地に ころでも、微生物群を利用した堆肥づく 少し しず ずつ つ転 転換 換し して てい いく く。 。大 大規 規模 模化 化し したと 少 この地方の酪農を、こうしたやり方に で、〃マイペース醸鹿〃と呼ばれる。 く、土・牛・人がともに健康になれるの いる人が多い。環境に対する負荷も少な ンよりずっとゆとりのある暮らしをして 農のようでもあるが、都会のサラリーマ 量は減るものの低コストですむ。昔の酪 適正規模を追求した経営は、牛乳の生産 熟堆肥にして草地に還元する。こうした 体にして牛を飼い、生産される糞尿は完 外国産の輸入飼料に頼らずに放牧を主 ヒ ン ト が あ る 、 と思う。 て る。 。私 私は は、 、そこに川の再生に向けた てい いる する経営が、根釧地方のあちこちで育っ ち切り、風土に根ざした酪農を創ろうと 今、規模拡大と環境劣化の悪循環を断 つながっているからである。 の酪農のあり りよ よう うが が、 、河 河川 山環境と密接に けでは、西別川は甦えらない。基幹産業 が、漁業者や釣り人が見方を変えるだ 合い方をアドバイスしていた。 るといいのではないか﹂と患川との付き 111︲l︲III0ll0jⅡⅡⅡⅡ1ⅡⅡ,凸]■Ⅱ囚?111111111■010Ⅱ甲lⅡⅡⅡOFJpD←j■l■110口︲l︲ロ■TIll︲0.11J,Bill・Iロー■︲6 llllIl のときに見ると、一時期よりは増えてい コンサートの実行委員会ごとに、西別 の人も多いようだ﹂と言う。 のようすを話してくれた。・ いる、副会長の大橋勝彦さん︵“︶が川 で釦年近くドナルドソンの養殖をやって 漁業をしながら支流のシュワンベッ川 会員数は娼人。うち4割ほどが地元以外 鯛年からは、シンガーソングライタ どに取り組んできた。 植する活動を皮切りに、毎年春の植樹な でバイカモが戻ってきでいたね﹂ (幽年3月) の交流ムードが高まっている。 ー・しらいみちよさんの弾き語りで﹁西 保護河川や 酪農の 問いなおしを や にあった大木200本を西別川沿いに移 聡を育む森づくり事案」(今年6月の植樹祭) の人たちで、共感の輪が広がっている。 FIL■IIlIIlIll141’111.■B11111qllll︲ll11lI1 西別川の両岸釦mに河畔林を再生させる 一 一 一 . ■ 二 . ■ 』 』 . ー 一 岫伽儘懲 111 る川にしていくことを実現できないだろ うか。漁業の大橋吉太郎さんは、﹁今、 漁業者には保護河川に対する異論はない けれど、サケの生態を考えると、河口近 くに捕猿場を設置するよりも、上流に戻 に注いで、海のプランクトンを培養する。 していくべきだ。きれいな淡水が根室湾 西別川の豊かな水遥や水質があるから、 釣り人も楽しめるlそうした相互理解 ができれば、源流近くで捕護するサイク ルになるのではないか。漁業者・釣り 人・住民が調和して、いろんな魚を自然 体で楽しめるよう見直してもいい﹂と、 多くの人が西別川の恵みを受けるように していく道を提案する。 つぶさに川を歩く小宮山さんも、﹁実 ない無駄な水面をつくってはいないか、 際には釣りもできない、子供は川に入れ 保護水面として機能しているのかどう かll洗いなおす必要がある。サクラマ スが再生産できる川にするように、釣り 人の関心を向けていくことも大切でしょ う。数を釣らないと川に行った気がしな い日本人の価値観を変えて、﹁川を眺め て帰ってくる﹂という自然観を身につけ 川のそばまで…が迫るところもある 釣り人だから見えてくる北海道の今