...

『蘭蕉再世録』と『心中宵庚申」 における愛`情成就の方法

by user

on
Category: Documents
2

views

Report

Comments

Transcript

『蘭蕉再世録』と『心中宵庚申」 における愛`情成就の方法
Hosei University Repository
271
『蘭蕉再世録』と『心中宵庚申」
における愛`情成就の方法
「天定」と「心中」モチーフを中心に-
山田恭子
1.はじめに
『蘭蕉再世録』(')には精神文化研究院所蔵本(精文研本)(塾〕とソウル大学校中
央図書館所蔵本(ソウル大本)(3)の二種類がある。両方とも筆写本であるが,精
文研本は巻と一と巻之二に分かれており,後記に筆写者の記録(1)が残ってい
る。ソウル大本は巻之この途中以降が脱落しており,内容から見ても精文研本
のほうが善本である(5)。
また北朝鮮には『丑ヱスル117191二(閲蕉再世奇縁録)』と題する異本(北朝
鮮本)(6)がある。内容は『蘭蕉再世録』とほぼ同じであり,既に活字本となっ
ている(7)。それによると作者は未詳で,18世紀以前の成立と推定される(8)。
『蘭蕉再世録』は古代中国の長編叙事詩『孔雀東南飛朏)に登場する劉蘭芝
と焦仲卿が,嫁いびりによって離縁させられ,自殺した悲話を基に創作された。
しかしその内容は,華111道士の真道覧先生によって,死んだ蘭芝と仲卿が,大
未皇帝の娘の文成公主('0)と宰相家の一人息子の楊仁好として生まれ変わり,軒
余曲折の未,めでたく結ばれるストーリーとなっている。また分量も叙事詩で
ある『孔雀東南飛』とは比較にならないほど多い。従って,『蘭焦再世録』は『孔
篭東南飛』を基に創作したとはいえ,その内容や分量の点からみて,かなり独
自性のある鰍案小説であるといえよう('')。
ところで,夫婦離別の悲話を扱った同時代の日本の作品として,浄瑠璃本の
『心中宵庚申』がある。これは享保7年(1722)4月にあった実話('2)を基にし
ており,姑によって離縁させられた八百屋半兵衛夫婦が心中するストーリーで
ある。
Hosei University Repository
272
両作品は夫婦の意思に反する離縁を発端に創作されているが,『蘭蕉再世録』
は「天定」によって,『心'11宵庚申』は「心中」によって,その愛情を成就し
ている。また,「天定」と「心'11」は日朝各々の古典作品にはみられない特殊
なモチーフである(い)。そこで本稿では,これらのモチーフを中心に,両作品に
おける愛情成就の方法について考察したい。
2.「天定」モチーフー『蘭蕉再世録』の愛情成就の方法について-
「天定」については,11i「代lll国の「天が運命を定める」という思想と深いか
かわりを持つ。また『詩絲』「大雅・大明」では,文王の結婚を祝した字句「文
王の初載,天之が合を作す」があるが,これなどはその典型であるといえる('1)。
その一方で,愛情成就の方法として「天定」が)Ⅱいられた背景には,天定配
匹婚の始祖であるく首露一許黄張>婚などの神婚説話が挙げられる。<首露一
許黄玉>婚は,駕洛国の筒鱗王が天定配匹を探していた際,神夢を得た許黄玉
の父王と母后が娘を船に乗せて首露王のもとに送った,という話から由来す
!:くそも
る。船に乗ってし、く途''1,公主は蒸聚と蟠桃を探して,ようやく首露王に出会え
るのだが,この蒸棗と蟠桃は11|'(''1界の果実で,ネIll聖なiIlI物を意味するという('5)。
このような神話のパターンは,古典小説の天降型の神物による結縁方式(結
縁予兆→初合→分離一再合→天上界帰属)('61と相応ずるもので,『蘭蕉再世録』
にも当てはまるといえる。『1M1蕉再世録』の場合,「初合」は前世のことになっ
ているが,生まれ変わった後には,神物ともいえる「孔雀詩」によって「再合」
し,鹸後に真道覧先生のために廟を建てて,そこを訪れるからである。
従って,「天定」は古代''1国思想や,韓国のネIll話に見られる神婚説話からの
|杉響が考えられるが,『lMl礁再'1t録」の場合,神物だけではなく,主人公の科
挙試験の壮元及第も,二人が再び結ばれる承要な役削を果たしている。この点
において,『闘蕉再枇録』はより世俗的であるといえる。一般に神物によって
結ばれる場合,壮元及第は主人公の非凡さとノj斌を立証してくれるだけに過ぎ
ない。しかし「蘭蕉再11t録」では,神物が盗まれたことで,壮元及第がその代
わりとしての役割を果たしているのである('7)。
さらに『蘭蕉再世録』の「天定」には,「幻4k」u洲》という前提がある点で,神
iiliとは異なる。劉1Mi芝とAMl1IIlllは,前世の恨みをIliljらすため,真道覧先生の手
ljlきで天皇上帝に会おうとするのであるが,その途IlJで世尊から慈悲を施さ
Hosei University Repository
『蘭蕉再11t録」と『心'11宵庚巾」における愛情成就の方法273
れ,大宋皇帝の公主と宰相家の一人息子に生まれ変わるのである。これは仏教
の輪廻転生説を背景にしており,多分に道仏習合的であるといえよう('1川。
また,「天定」を愛情成就の方法としたのは,封建社会において抑圧された
愛情を合理化し,両班の理念を反映させるためであったといえる(20)。そもそも
親の意にそぐわぬ愛情を成就させるということは,不孝を犯すことであり,『蘭
蕉再世録』では,それを「幻生・天定」によって回避しているのである(21)。そ
のことは次の場面をみれば明らかである。
前世の罪や欠陥もなかったが,人世に生まれてくる時,導く者がおらず,
父母を選んで生まれてこなかったゆえに,寛死する厄にあったわけで,今
世でのお前の父母は賢明だから間違いは起きないはずだ(22)。
引用文は真道覧先生が主人公の仁好に「孔雀詩」の由縁を説明した際の言葉
であるが,これを見ると,「天定」によって,賢明な父母と出会い,二人の因
縁が前世のように阻まれないとある。
また,次の引用文は,二人が再び結ばれた後,仁好が公主に対していった言
葉であるが,「皇恩」(2:、への感謝と,父母に対する「孝意」だけで始終しており,
夫婦の愛情との間に,前世の如き葛藤が生じないようになっているのである。
私はまだ年端も行かず,学問も十分でなく性質が浅薄であるのに,いた
ずらに科挙に合格したので,行き届かぬ点が多く,皇恩に報いることがで
きないのではと憂慮しています。(中略)天恩(21)至極であるので,生きて
いる間は,孝意を全うなさり,宿世の奇縁が再び結ばれるからには,公主
は孝意に力をいれ,仁を篤くなさり,前世の恨をなくして皇恩に背くこと
のないようにしてください(鞠)。
つまり,『蘭蕉再世録』の愛`情成就は,「幻生・天定」という方法が用いられ
ることによって,両班たちの理念ないし儒教道徳の規範に沿ったもとなり,そ
れだけ実際的な意味が弱化し観念化されている(26)。これは作品の後記にもある
ように,「勧善懲悪」の反映であり,また「積善の家に必ず余慶あり,積不善
の家に必ず余狭有り」といった福善禍淫思想(”とも深いかかわりをもつといえ
よう。
Hosei University Repository
274
3.「心中」モチーフー『心中宵庚申』の愛情成就の方法について-
「心中」はもともと「男女の中,懇切入魂の舵び,二心なき処をあら}よすし
るしをいふなり」(28)とあるように,男女の二心なきことを印として,女が男に
指,爪,髪,誓紙などを送ったことをいった。しかし,後には男女がともに
あいたいとIと
「相対死」(29)することを専ら指すようになった。また「心中」は,往々}こして
遊女と行うのが普通で,当時の人々にとって,その見方は決して肯定的なもの
ではなかった(3m。
『色道大鏡』を著した藤本箕山は,「むかしよりよき女郎の死ぬるものにあ
らず,おほくは端傾城の業也」(:Ⅱ)とし,西鶴も『好色二代男』巻八の「流れは
何の因果経」で,「この思い死にをよくよく分別するに義理にはあらず,情に
はあらず,皆,不自由より無常にもとづき,是非のさしづめにて,かくはなれり,
其のためしには,残らずはし女郎の仕業なり」(32)としている。また,近松自身,
「世間多い心中も金と不孝に名を流し,恋で死ぬるは一人もない」(:13)と,心中
が真実の愛とは程遠いものであったことを認めているのである。にもかかわら
ず,近松作品に見られる「心中」は,たいてい男女の愛情が非常に重視されて
おり,また『心中宵庚申』にみられる「心中」も,夫婦の真撃な愛情の結果に
よる行為だったといえよう。
そもそも男女の純粋な愛情の結露としての「心中」を文学作品として描いた
のは,近松以前の作家には見られないことであった。たとえば,西鶴の『好色
五人女』に登場する男女の最後は,捕えられ処刑されたのであって,「心中」
といえるものでは決してなかった。
それではなぜ近松は「心中」を愛情成就の方法としたのか。それは『心中宵
庚申』で,心中する前の半兵衛が,お干世に向かって言った言葉に示されてい
る。
くぃなjb
なうお千世。この毛醗を毛蕊とな恩はれそ。二人が--所にのりの花。紅
IifDす
いPDI【んとくちよ.〕
の蓮と観ずれば,‐--蓮托生頼みあり。(中略)サアサア観念,最後の念仏
怠りやるな(中略)千世は合掌手を合せ,光明遍照十方世界,念仏衆生摂
取不捨,南無阿弥|佗仏…。!)
Hosei University Repository
『蘭蕉111世録』と『心'11宵庚「'1』における愛情成就の方法275
いT、」1人たく'-1.-)
ここに登場する「-蓮托生」とは,死後,極楽浄土で,同じ蓮華の上に生ま
れかわることを意味し,この時代の心中していく男女の最大の願いでもあっ
た(35)。これらの来世で生まれかわり夫婦になるという考え方の根本には,日本
人の精神生活に影響を与えた浄土思想の存在がある。日本では平安末期以降,
源信の『往生要集』によって,現世で阿弥陀仏を心に念じれば,来世は極楽浄
土に往来できるとする考え方が広まっていき,後には中世から近世の日本人の
未来観の土台をつくった(:16)。従って「心中」が男女の愛情を成就させる方法と
なったのには,こうした'三|本的仏教観によるところが大きい。
ところで,以上のような宗教的な理由とともに「心中」は「武士的気質で死
を軽んじる殉死的考え」とも直結している(37)。『心中宵庚申』の男主人公であ
る半兵衛は,もと武士だったが,成人してから八百屋伊右衛門の養子となった
人物で,作中でも「古を捨てばや,義理も思うまじ」というふうに,武士の義
理を重んじていた(;'8)。
また,『心中宵庚申』の「上之巻」には,半兵衛の弟を恋い慕う侍のうち,
ただ1人を選ぶため,弟に死装束をさせ,あの世で添う者を問う場面がある。
このような部分は,話の本筋からは離れているようにみえるが,実は主人公の
武士気質と深いかかわりを持っており,「心中」とはそのような武士気質と同
時に,彼らの間で行われていた「衆道(男色)」とも決して無関係ではないこ
とを示唆している。
「衆道」は戦場で生死を共にし,主従の関係や義兄弟の契りをかわした武士
の間で盛んに行われた。また封建時代の武家社会では,女性は子孫を繁栄させ,
家を守る役目を果たす者であり,男性にとって真剣に恋する対象ではなく,あ
る意味では,「衆道」こそが今の恋愛感覚に近いものであったと思われる(39)。
さらに「衆道」は,義理を重んじた武士道における恋として,近松作品の男女
の仲に影響を及ぼし,特に町人の作家たちにおいては「端傾城の業」「義理に
とふめ
はあらず,情にはあらず」とし、われた「心中」を,その精神而において止揚さ
せる役割を果たした。そしてそれは遂に,家という制度で縛られることになっ
た町人の夫婦の仲にまで及んだのである。まことに「心中」が文学においてそ
の真骨頂を見せるようになったのは,武士出身であった近松によるところが大
きいといわねばなるまい。
従って,「心中宵庚申」における「心中」は,武士の義理や,そこから派生
した生死を共にする「衆道の契り」が男女の仲にも適応されたものといえる。
Hosei University Repository
276
そして,このような武士道の適応は,『蘭蕉再世録」において,支配者階級で
ある両班たちの理念が男女の愛情関係に反映されたことと相通ずるものがあ
る。
4.まとめ
以上,『蘭蕉再世録』と『心中宵庚申』における愛情成就の方法について考
察した。その結果,両作品に見られる「天定」と「心中」は宗教的な思想や,
当時の支配者階級の精神と強く結びついていることが分かった。
「天定」の場合,あの世(天上界)から二人の結縁を約束されるという形で,
また「心中」の場合,この世(地上界)の苦悩を解脱し成仏することで,それ
ぞれの愛情を成し遂げている。更に『蘭蕉再世録』では主人公が,「幻生」よっ
てあの世とこの世を行き来し,二次元の世界が存在するが,『心中宵庚申』の
主人公たちは,この世に存在するのみである。
これらは福善禍淫思想や輪廻転生説をもつ『蘭蕉再世録』と,成仏思想をも
つ『心中宵庚申」の違いと関わりがあると思われる。すなわち,『蘭蕉再世録』
の場合,玉皇上帝のいる天上界で来世の処遇が決まり,幻生して地上界に戻る
が,『心中宵庚申』の場合,成仏そのものが「-蓮托生」への道であり目的となっ
ているので,幻生して再び地上界に戻る必要はないのである.さらに,成仏は
俗世での因果因縁を全て断ち切ることを意味しており,日本の古典作品に二次
元の世界が存在しないのも,これらのことと深く関わっているといえよう(do)。
また,両作品において,「天定」や「心中」を愛情成就の方法としたのは,
当時の支配者階級であった両班や武士たちの理念が,男女の愛情関係に反映さ
れた結果であるといえる。『蘭蕉再世録』の「天定」による愛情成就は,封建
社会において抑圧された愛情を合理化し,「皇恩」に報い「孝意」を尽くすこ
とを強調している。一方で『心中宵庚申』の「心中」によるそれは,「衆道」
に見られる武士道的な愛が男女関係に及んだものであり,それが究極的には,
お互いの忠誠(U)を誓い合う行為になったといえよう(12)。
『蘭蕉再世録」のあらすじ
1.ある日,華山道士の真道覧先生は,春の美しい景色を見にいき,林の'1J
で墓を見つけた。墓には,焦仲卿と妻蘭芝の「菟死之墓」とあり,その前
Hosei University Repository
『蘭蕉再11t録」と『心''1宵庚1Mにおける愛情成就の方法
277
で鴛鴛が悲しそうに泣いていた。
2.真道覧先生は華山神霊を呼び,二人の魂をつれてくると,美しい男女が
悲しみに沈み,目には涙をためていた。
3.真道覧先生は二人のために,その恨みを玉皇上帝に告げて何とかしよう
とする。三人は飛皇上帝に謁見するため,仙官仙女たちと共に朝会に参席
するが,その途中で諸仏を引き連れた釈迦世尊に出会う。
4.真道覧先生は釈迦世尊に事情を話し,仏の慈悲を受けられるように頼む。
5.二人は釈迦世尊の前で恨めしい前世の事情を話す。釈迦世尊は二人を再
び生き返らせ,縁を結ばせるようにする。
6.真道覧先生は,13年後に再び出会うことを約束し,二人は礼をして去る。
7.真道覧先生は諸仙と玉皇上帝に朝会した後,山に帰り,松林を見渡すと,
愁雲は消え,物悲しい景色ではないので,感嘆せずにはいられなかった。
8.名門宰相家の楊丈喜の藤夫人が,夢を見て懐雄し仁好を生む。自分の息
子を養子にして財産相続しようとしていた従兄弟の楊正喜は不安に思う。
しかし楊文喜が仁盗を仁好と分け隔てなく実子のようにかわいがるので安
堵する。その一方で柳皇后は,夢中で蘭之と出会った後に懐姫し,文成公
主を生む。
9.ある日,丈御使が楊文喜宅を訪れ,仁好の新柳詩を見て,その才能に驚く。
楊文害は成長した仁好の縁談を考え始める。
10.ある日,仁好は藤夫人の懇願で,白雲寺に行くが,道中で青衣童子(仙童)
に導かれ,真道覧先生と出会う。そして「孔雀詩」を渡され,蘭芝との因
縁を知る。仁好は「孔雀詩」の話を両親に告げ,以後は縁談が来ても断る
ようになる。
11.美しく成長した文成公主が,誕生祝に父帝から下賜された書院で「孔雀
詩」を発見する。それを見ながらいつの間にか眠りについた公主は,夢の
中で真道覧先生の使いの白衣童子と出合い,「孔雀詩」の因縁を知る。皇
帝と皇后はその話を聞いて,夢のお告げ通り,「孔雀詩」の因縁を持つ楊
氏家門の者を公主の婿とするように命じる。
12.慶鎮の娘,慶小姐が15歳になり,文才があり容貌も美しい婿を探して
いた。ある日,慶鎮は楊文喜宅を訪れた際,仁好の書籍を朗読する声を聞
き驚くが,その姿を見ることは出来なかった。
13.陽文喜は,楊正喜の誕生日に祝いの贈物を届けるため,仁好と仁盗を楊
Hosei University Repository
278
正喜宅に送る。その道中で仁好を見た慶小姐は,一目で気に入る。慶鎮は
仁好と慶小姐の縁談を進めるために,まず楊正害にそのことを頼む。しか
し楊正喜は,年長の仁盗を差し置いて,仁好の縁談話を進めることに気が
進まなかった。
14.楊正喜の家では,仁盗が仁好から聞いた「孔雀詩」の話をし,無理な縁
談である事を告げる。すると,その妻である呉氏は,姉の呉貴妃から聞い
た公主の「孔雀詩」の話と一致することに驚く。そして仁盗と公主を結婚
させたいという欲心から,仁好と慶小姐を結び付ける策略を思いつく。
15.楊正喜は楊文喜宅に行き,仁好と慶小蛆の結婚を勧める。しかし楊文喜
は,仁好の意向もあるので,天命を待つことにするとして体よく断る。楊
正毒は慶鎮に「孔雀詩」の話を知らせ,策略を使って仁好と結婚するよう
に勧める。慶小姐の兄は,慶小姐に仁好の絵を描かせ,画中の人物と前世
からの因縁があったと伝える。
16.楊正喜は楊文喜に,慶小姐こそが蘭芝の生まれ変わりであると嘘をつき,
慶家から送られて来た絵を見せる。楊文喜はそれを見て喜ぶが,仁好は冷
静な態度で,詳細を調べた後に正式な婚約をすることを勧める。
17.一方,仁盗は仁好の持っていた「孔雀詩」を盗み出し,呉貴妃を通して
皇帝と謁見する。しかし仁盗の器量を見た皇帝は,公主の婿になるほどの
人物ではないと悟る。事を知った楊文喜は心穏やかでなく,慶小姐との縁
談を完全に取りやめる。
18.皇帝が仁盗の文才を見るために試験することを決めると,呉貴妃はその
旨を呉氏に伝える。仁盗一人だけ試験するのでは,あらがばれると判断し
た楊正喜は,婚約破棄で仁好一家を憎んでいた慶鎮と組み,科挙試験を行
なうよう皇帝に進言する。皇帝の命令で科挙試験の日が決まり,慶鎮は試
験官となった。そして楊正喜は試験問題をあらかじめ知らせるよう慶鎮に
頼む。
19.範御使,柳枢密,文御使の三公が楊正喜宅を訪れ,仁盗の詩才を試す。
仁盗は仁好の新柳詩を自分のものと偽って三公に見せるが,文御使が盗作
であることをひそかに見破る。三公はその足で楊文喜宅に行き,仁盗が仁
好の新柳詩を剰窃したことを告げ,科挙試験の出題について,楊正害らの
不正を心配しながらも,仁好に科挙試験を受けるよう勧める。
20.柳枢密は偵察のために,召使いの遺風を送り込む。道風は酒や食べ物を
Hosei University Repository
『蘭蕉ilj世録』と『心ll11Iil災11'』における愛情成就の方法
279
持って,慶家の下男の親戚を装い度家に入りこむ。そして後苑に行くふり
をして門の後ろに隠れ,楊正喜と慶鎮の話を聞く。楊正喜はあらかじめ科
挙試験の問題を知らせるように慶鎮に言い含め,慶鎮は試験用の詩題を下
男に渡す。二人のたくらみを知った遡風は下男が酒に酔っている間に,そ
れを盗んで柳枢密に渡す。
21.皇帝の夢に仙童が現れ,公主の婿はよくよく調べ,天縁に違わぬように
し,前世の恨を更に加えることのないようにと,天のお告げを述べる。科
挙試験の当日,皇帝は自ら問題を出す。思わぬ番狂わせに鶴曙する仁盗と
は対照的に,仁好は首席で合格する。
22.その後,楊文富は親戚の仕業だからといい,諸公に陽正喜の悪事を容赦
してくれるように頼む。呉氏もまた,夫の命だけは助けてくれるよう,楊
文喜に懇願する。範,柳,文の三公が遺風から得た証拠を挙げ,白雲寺の
和尚を呼び,寺を訪れたのは仁盗ではなく仁好であった事を告げる。「孔
雀詩」の持ち主は仁好であることが判明し,楊正喜親子と慶鎮親子の罪が
問われ,獄につながれる。
23.仁好の上訴文によって,その人徳と文才に感嘆した皇帝は,楊正富親子
と慶鎮親子を赦免する。出獄した:楊正嵩親子は感謝するどころか,いまだ
結婚できないことを恨みに思う。
24.公主が皇帝と皇后に会い,仁好は公主と共に「孔雀詩」の由来を語らい
感慨にふける。
25.仁好は仁盗と慶小姐との結婚を斡旋し,二人は結婚と同時にソウルを離
れ,全羅道に行く。
26.仁好と公主が婚礼を挙げ,お礼参りのため白雲寺に行き,真道覧先生の
ために廟を立てる。二人の問に五男一女が生まれ,子々孫々繁栄する。年
を取り俗世を厭う楊文喜は義賢廟で懲らし,道士がその話の一部始終を記
録して伝えた。
《注》
(1)『蘭蕉再世録』の解題が救っている本に『可1号ヱ副土豊さM1フドルセ皿(ヱユ人},
1997,262頁)があるが,内祥はソウルの韓国文化社から1996年に影印発行され
たスドij曾訳『赴主ス11ノH1フ1割尋』(『可'21子己1Clそごn1Qi子ぞノ〈1103』是卦ご国11舎菩訂書
惑人},詞91:赴号是豆1人},1996)とトリじである。そのほか題口だけが救っている
ものには『諺文古詩(フト慧本)』。1号等等87の「lrI菱刈191」と,Couranl886の「咄
Hosei University Repository
280
王蝿1コ|包号(鴬烏再世奇縁録)」がある。垂亘|号『ヱ乱上智91千ス}豆善ノ<131割
全智是剋忍具』(召是獣,2000)128頁参照。『蘭蕪再世録』の研究に関しては,
いまだこれといったものがなく,それほど知られていない作品である。
(2)精文研本『出茎寒|ノW1号』は1冊84帳の醜写本で,1帳に約30行,28~30字程
度の文字が書かれている。〈1J茎刹'Uil暮せ'二1丑>,〈1.峯引会LdU:旱ロト矧号ユICI
剣>,〈uHl菱界1'W1尋忍ス1.|〉の順に筆写されており,〈n.主界円二週ス|望〉は,本
稿の後記に付した『lMi蕉再11t録』のあらすじ1~7まで,〈1J三界1÷1.守早ロ開号
ユ1℃'三|〉は8~10まで,〈吐主零1A11号翅ス1.1〉は11~26までに該当する。
(3)ソウル大本は題名が「『蘭蕉再世録』初」となっている。1冊72帳の筆写本で,
1帳に約20行,15~17文字程度の文字が書かれており,〈ud主弓1科二週ス|望>,〈IJP
茎孑1ノド11号劃スlL1〉に分かれている。〈H1墓孑|'Cl尋剋ス|望〉はあらすじの1~10
まで,〈1.二尋例暑剋スlL1〉は11~15までで,以下が欠落している。最初に「咄
主導1畳子ノW121劃二斗」,岐後にもまた「干引21月二斗」と記録されていること
から,9歳の子供が難写したと思われる。
(4)企凰是守旱ロ}亭詞子。|己}す。}しルqlo1昨d首'」1割岑斗g1Rl含豊二剣曾ス|
己}芋u耆剖利'すCl叶豊wlI=1言ヱ劃き詞昔ス1.1[二}剰牡21司三さ}割るし14
叫菅cElノリbl〒ユ督叫司号己121塁。1ヰヱ…ニエ斗小説は腸駒鳥後編作として,こ
の世に伝わるもので,賢者と悪人がこれで分かるであろう。後者を懲戒し,悪を
遠ざけ贋に努めよう。家「|iの本があまりにもないので,物足りなさに筆写してや
り,娘や主人に見せようとして書いたものである。(166頁)以下,本文は全て糀
文研本による。頁数は本文賎初から付けたもので,和訳と共に全て筆者による。
作'11人物の漢字名も全て筆者の任意による。
(5)ソウル大本では精文研本の65~68頁(34~35帳)に該当する部分で2箇所脱
落している。しかし内容は納文研本とほぼ一致しており,同じ系統の祖本から筆
写されたと思われる。
(6)北朝鮮本『赴萎スル11フ1尅喜』は活字本で,〈剋星計理型舎割判・さ11劃>,〈寸旱ロト等
号フ|>,巻之二,巻之三の111Nになっている。〈n三割・曾忍舎弓誹舌11割〉はあらすじ
の1~7まで,〈寸旱ロ1号署フ|〉は8~16まで,巻之二は15~21まで,巻之三
は22~26までに該当する。ス周曾訳,前掲書参照。
(7)北朔鮮本の場合,納文研本と比鮫した場合,部分的に文章の一部分が抜けたり,
単語が異なったりする。後半部で,柳枢密が遁風から科挙試験の題を渡され憤慨
する場面や,公主が持っている「孔雀詩」について楊鮒馬が尋ねる場面では,鞘
文研本の文章がむしろかなり縮約されている印象を受ける。しかし,内容の大筋
は同じであり,どちらがネ'1本に近いかは現段階でははっきりしない。
(8)『穀主スリノサ1フ1割尋』は,ili典文学遺産を体系的に発捌調査した際に対する我々の
党の方針として,令国的範|)Nにて古典小説資料を収集整理する過程で,新しく発
見した作品である。作IflIは作家未詳の国文小説で,現在3巻からなる蕊写本が伝
わる。成立年代もやはり未詳であるが,内容から見て1811t紀以前の創作であると
推定される。ス|劉曾訳,前掲書,1頁参照。和訳は全て茶者による。
(9)『蘭礁再世録」では「孔雀詩」と記されている。内容については内田泉之助『古
詩源」」(漢詩大系第4巻,東京:集英社,1959)の171~194頁にある和訳参照。
Hosei University Repository
『蘭礁再肚録』と『心'1'宵庚巾』における愛情成就の方法
281
(10)精文研本とソウル大本は「是倒子寺」,北朝鮮本では「是忍号手」となっている。
(11)内容に関しては,元雑劇で,未・金以前に存在した「慶寿MiI」の一つ,「金安寿」
と称される「鉄拐李度金童王女雑劇」の影響も考えられる。特に両作品は,主人
公たちが夫婦として生まれ変わる点と,|(I|'仙の訪れが誕生祝の際だという点で,
互いに共通している。そのあらすじは以下のとおりである。蟠桃会の席」二,金童,
王女が俗念を起こしたので,西王母は詞として二人を人間界に生まれ変わらせる。
女真族の家庭に生まれた二人,金安寿と童嬬MIMはやがて夫婦となり裕福な生活を
送っている。一方,西王母は彼らの罪ももはや償われたとし,鉄拐李を派遣して
二人を度脱し,仙界に連れ戻すこととする。嫡蘭の誕生日の宴席に現れた鉄拐李
は,人界を捨てて仙界に帰すように説教するが,二人とも耳を貸さない。そこで
道術を使って先ず嫡蘭を済度し,ついで安寿を度脱する。二人は天界に帰し,酉
玉母に請われるままに女真人得意の歌舞を披露する。そこへ八仙女も登場して歌
い舞う。(中鉢J1:量『中国の祭祀と文学』東求:創文社,1989,318頁)以上のよ
うに「鉄拐李度金堂玉女雑劇」の女主人公童蛎蘭は,誕生|]の宴席に現れた鉄枌
李から前世を知らされる一方,『剛蕉再世録』においても,文成公主が誕生祝の後
で,真道覚先生の使いの白衣童子と{'1台い「孔雀詩」の因縁を知らされる。この
ことから両作品は何らかの受容関係があるものと考えられる。「鉄拐李度金童王女
雑劇」は明初の質仲名の作,Wllで,戚晉叔編『元曲選』第三冊(北京:「h華書局,
1958,1093~1106頁)に収録されている。減晉叔(1550~1620)の名は懲絢,字
を晉叔という。漸江長興の人で,刀暦8年(1580)に進士となる。その伝は銭謙鑑
の『列朝詩集』七丁に詳しい。『元曲選』には二極の自序が冠せられている。うち
「万暦附蒙蝋關之歳春」二巳'三|書干西湖僧舎」と署するものは万暦43年(1615)であ
り「万暦丙辰春上巳日若下里人滅腎叔書」と箸するものは翌44年(1616)であるこ
とから,この頃成立したといえる。(吉川幸次郎『元雑劇研究』東京:岩波書店,
1948,43~44,86~87頁)
(12)『伝記作替』(拾遺上)によると,半兵衛の養父が嫁の千世を口説いたことから,
養母が仕方なく,嫁の身持ち家風に合わずとして,千世の伯母の所に預けたこと
になっている。その後,千・'1tはまたⅡ平び戻されるが,養父は義理にせまって半兵
衛に暇を出し,二人は情死したとある。結局のところ,『心中宵庚巾』では,なぜ
離縁されたか原因がはっきり書かれていない。liiilじ時期に紀海音によって脚本化
された『心Ⅲ」二つ腹帯」では,千11tの派手好きが離縁の原因となっている。また,
八百屋の養父母の性格を正反対にして趣向をとったことには種々の理由があった
ことと思われ,『伝記作書』では「浄瑠璃に書く時には老婆を悪人にせぬ時は憎み
増さぬ故にや」と言っているが,これは理由にならない。ただ考えられることは,
突説をそのままを作品化すれば,姑が善人で,舅が好色漢のため嫁千世を1-I説く
ことになり,これは義理のllll柄とはいいながら,親子の色事となり,当時の劇場
では上演が困難であったであろう。このため世間に例の多い姑と嫁との不和に趣
1イリしたと思われる。藤井乙男『近松11t話物語全集』下巻(東京:富111房,1942)
413~415頁。横山正校注・訳者『浄瑠璃集」(日本古典文学全集45,東京:小学
館,1971)28~29頁。
(13)情死として,それぞれ別に死ぬやり方は見られるが,日本のように男女がlilじ
Hosei University Repository
282
場所でもろともに死ぬという場合はないと思われる。中国作品である『孔雀東南
詩」の場合も,夫婦の反抗を称えるもので,日本のような心''1劇としての評価は
なされていない。向井芳樹「『孔雀東南飛』と『心中宵庚申』‐日中の夫婦の心中劇」
(『|可志社国文学』33号,京都:同志社国文学会,1990)5頁。
(14)古代中国人は人と人と関係を取り結ぶ原因を「天」に帰していた。先秦~漢代
には,まだ相関関係や仏教的な因果関係としての「縁」が用いられず,その代替
観念として「天」(天命)という言葉が用いられた。『詩経』には「縁」の字が全
く見当たらず,「論語』を初めとする諸子の書にも,相関関係を表す「縁」字を見
いだすことはできない。後漢末の作品である『孔雀束南飛』には「縁」の字があ
らわれるが,相関関係の「縁」すなわち再び関係を取り結ぶ「てづる」「機会」「きっ
かけ」の意であって,仏教的な因果関係の意味合いを持つものではない。これに
反して日本で使う「縁」は当初から仏教用語として伝来し,平安時代半ばごろに
定着したものである。また『|M1蕉再世録』に頻出する「天縁」は,清代の奇伝や明・
清無名氏の奇伝の題目によくH'てくるもので,『蘭蕉再世録』の作者はこれらの小
説によく通じていた人物であったと思われる。古'1|島洋介『叢刊・日本の文学13
「縁」について-中国と日本一』(東京:新典ネ|:,1990)34~40,74,114~115
頁参照。
(15)梁恵蘭『朝鮮朝奇逢類小説研究』(以会文化社,1995)53~56頁。『三国遺事』
巻この「駕洛国記」の内痛は以下のとおりである。妾是阿瞼施国公主也姓許名黄
玉年二八実在本国時今年五月中父王与皇后顧妾而語日“爺嬢一昨夢中|司見
皇天上帝謂日駕洛国元君首露者天所降而抑御大宝乃神乃躯惟其人乎且以新
莅家邦未定匹偶卿聯須遣公主而配之,,言詑升天形開之後‘`上帝と言其猶在耳
IfK於此而忽辞親向彼乎”往突妾也浮海返尋於蒸策移天篦赴於蟠桃蜂首敢I囚竜
顔是近王答日“朕生而頗聖先知公主自遠而届下原有納妃之請不敢従涛今也淑
質自鎌砂躬多幸',(『三国遮事』駕洛医|記建武二十四年戌申七月二十七日)
(16)上掲書,30頁。
(17)上掲書,112~113頁。壮元及第による愛情成就は,両班と妓女の愛情関係など,
身分の差がある男女関係のときによくみられるパターンであり,神物による愛情
成就よりは,現実的価値志向を表すものといえる。
(18)死んだものが再び生き返ること「還生」,姿形を変えて生まれ変わることを「幻
生」という。日本では「幻生」のことを「転生」というのが一般的である。「幻生」
も「転生」と深い関係にあるが,「転生」の如き多環論ではなく,-度だけ生まれ
変わる一環論をパターンとするところにその特徴がある.成賢塵『韓国小説91構
造斗実相』(嶺南大学校出版部,1981)41頁。
(19)天上界では玉皇上帝が般商iIlIとして君臨しており,極楽浄二|このイメージはない
が,実際に2人を救済したのは世尊であり,観音菩薩の姿もみられる。また,死
者の魂が成そうとして成し得なかった生前の事々を語るという点で砺歌的要素も
含まれている。さらに儒教の「福善禍淫思想」とも関係することから,結局は巫
儒仏道などの諸宗教の影響が考えられる。「福善禍淫思想」については,本稿の注
の27を参照。止掲書,42~43頁参照。金束旭・李佑成・張徳順・搬珍源『韓国
の伝統思想と文学』(韓国文化選替8,東京:成叩書房,1983)13頁。
Hosei University Repository
『蘭礁再'1t録』と『心''1宵庚巾』における愛情成就の方法283
(20)神物によって結ばれる場合,大礼の規範を拒否する行為とし,「礼教に対して間
接否定を表したもの」とする見解がある。(梁恵蘭,前掲書,160頁)しかし,『蘭
蕉再世録』の場合,既に夫婦であったことから,礼教とはljM係がないといえよう。
(21)『心中宵庚申』も姑去りされたお千lU:をいったん家に入れ半兵衛が離縁すること
によって,養母に対する孝を果たしおり,また心IPすることで,「灰になっても帰
るな(463頁)」という千11tの父親との約束も果たすことになっている。しかし,
心中する際に半兵術が口にした言葉「養子になって十六年以降(中略)死のうと
せしも以」二五度,恨みある中にもそなたに縁組,せめての愛さを晴らせしに,そ
れさへ添はれぬやうになり,死ぬる身までなり下る(479~480頁)」からは養父
母への素よりは,養子としての苦労も語られており,「孝意」だけで始終している
『1Mj蕉lIjllt録」とは異なる。またお干世の言葉「わしも病者な父様を,先に送る
がじゆん菜をかへって鍵き目見せまする,これも何故,相生のまつ茸故(478頁)」
からは,孝以上に夫婦愛を貫こうとする決意が見られる。鳥越文蔵・山根為雄・
長友千代治・大橋正叔・阪口弘之校注・訳『近松111】左衛IwI]全集2』(新編古典文学
全集75,東京:小学館,1998)以下,『心111宵灰申』の引用は全て本書による。
(22)萢引王|斗司昔。|矧冬991科1.11世利qru曹司判刮旱里菖蛮宣loEl斗ス1昊
這ヨヱヱ割÷すIE割告wlL}人1斗号兆'1.11セュヨ旱具剣冒すL11忌翅。1矧
十己|升(41~43頁)
(23)「皇恩」に関しては「鉄拐李座金童玉女雑劇」第二折にも「感皇恩」という項目
が存在する。蛾晉叔編,前掲書,1097頁。
(24)北朝鮮本では全て「皇恩」となっている。
(25)茸制名目上利41二三劃.是。|生亭ユ1菅ヱ骨豊。1剰叫・菅>Ll皀斗言。1三獣コマl
剰す'=lu41土言す。1割・各豊科回習う}¥詮す‐に}(中略)團名。1呼号盲人ト
ョユ度|玄91量牡祉訓育人|ユ会''1コ'91畳'二1.人|例刻'す人'し1号守亡互引冒詞二人’
二91晉昊刃し'す人ト忍ノcil宣言箇人'す工尋名誉科U己''二1普斗土矧(136頁)
(26)召望望「矧人}そご}・oIL1qldFErolicismg1忍フルi)](『Cl号計」28,赴号。1そ可動,
1973)9頁。
(27)積善之家必有余慶積不善之家必有余狭(『周易』「文言伝」〉成賢慶,前掲書,
37頁。こうした中国伝統思想はもとは道教から起源するものであるが,後に孔子
によって経書として儒教にもとりいれられ,さらには仏教の因果応報説を理解す
る際にも用いられた。増尾IllI一郎・丸111宏編『道教の経典を読む』(東京:大脩館
書店,2001)41~42頁。福水光imrl『道教と日本思想』(東京:徳間書店,1985)
96頁。
(28)『色道大鏡』巻六「心11コ部」(野間光腫編『完本色道大鏡」水都:友'11文庫,
1961,503頁)『色道大鏡』は藤本箕111の箸で,1678年10月初撰本が成立。
#」。。}こ・Cl二;S
(29)心I|』のことを公には「相対死」といった。享保7年(1722)12月に心中事件の文
芸化を厳寵に取り締まる法令を出し,享保8年(1723)2月には「相対死」の禁令
が下った。諏訪春雄『心中-その詩と真実』(東;11(:毎日新聞社,1977)230~
231頁。
(30)I会谷昭彦「丙鶴の心中観」〔『西鶴論の週辺』東京:三弥井書店,1988,127~
131頁)
Hosei University Repository
284
(31)『色道大鏡』巻十五「雑談部」(野間光展編,前掲響,503頁)
(32)富士昭雄校注『好色二代田・西鶴諸匡|ぱなし・本朝二十不孝』(新日本古典文学
大系76,東京:岩波書店,1991)238頁。『好色二代男(諸艶大鑑)』は1684年4月,
池田屋三郎刊。
(33)近松門左術111『長町女腹切』上と巻(鳥越文職校注・訳『近松門左衛門集2』
日本古典文学全集44,東京:小学館,1975,173頁)
(34)鳥越文蔵ほか校注・訳,前掲書,480~481頁。
(35)一蓮托生といったイメージも,日本人の考え11Iしたものではなかったかとみな
される。諏訪春雄,1iii褐書,173~174頁参照。
(36)上掲書,224頁。『往生要集』は求法思想の商まりから生じた書物であるが,人々
極楽浄土への希求とともに,地獄にたいする鮮烈なイメージを描いたもので,後
の日本人の死生観とも大いに関わった。
(37)心中が行われた理由には,宗教的および武士道的理由,夫人の貞操問題,社会
組織での義理人情のしがらみ,などが挙げられる。また,町人社会における家の
問題,遊郭制度の問題もその原因となった。上掲書,227~232頁。しかし「心'11」
を,金に困った「端傾城の業」ではなく,男女の真蕊な愛情ゆえの結露として描
いたのには,武士階級出身であった近松によるところが大きく,これによって「心
’1』」は義理と人情ゆえの葛藤としてとらえられるようになり,多くの者の感銘を
呼んだのである。さらに『心[11宵庚申』では,夫鮪}の心iiiを描いたことで,社会
的に問題視されるところとなり,その後,年を経ずして心中物に対する幕府の禁
令が出たと考えられる。
(38)徳富蘇峰著・平泉澄校訂『近11日本|珂民史元禄時代世相篇』(講談社学術文庫
565,東京:講談社,1982)385~407頁。
(39)17世紀には,玄人の若衆や役者など,庶民の間でもl隔広い形で男色が流行った。
井原西鶴『男色大鑑』巻七の「女方もすなる土佐日記」(松田修ほか校注・訳『井
原西鶴全集』新編古典文学全集67,東京:小学館,1996)を見ると,役者などに
心中立てをして切指したり,時には死ぬ者もいたのである。
(40)日本のiii典作品では成仏できない場合,怨霊となってこの世に現れることが多
い。その一方で,中国作11lbの影響を受けたものに関してはこの限りではなく,天
上界と地上界の二次元の世界が存在する。『椎南子』の「桓峨奔月」の故事を踏ま
えた『竹取物語』をはじめ,「長恨歌』,『西遊記』,「水耕伝』などをもとにした翻
案による作品がその例である。また,宝永2年(1625)に錦文流が著した『当11t乙
女織」(『近世文芸叢書』第四小説二,東京:図書刊行会,1910,112頁)の序文に
は「伝へllil<天上界なるべし」とある。
(41)ここでいう「忠誠」とは,『葉隠』にみられるような「没我的忠誠」である。小
池喜明『葉隠一武士と奉公』(講談社学術文庫1386,束蝋:講談社,1999)290頁。
(42)よく韓国の古典では男女のIllIを「三生の因縁」とし,前世,現世,来世の縁と
するが,日本の場合は「二世の契り」としており,現世と来世だけである。また,
親子は一世訳夫婦は二世,主従は三11tといわれ,夫婦関係より主従関係が菰んじ
られた゜(『日本女性史人物総覧』別冊歴史読本事典シリーズ30,東京:新人物性
来社,1996,45頁)これは『源平醗衰記』巻二十六「忠蝋婦人」に「これも誠に
Hosei University Repository
『蘭蕪再世録』と『心[#'背皮12Mにおける愛情成就の方法
285
二枇の契りにや」(『源平蝋衰記(四)』古典研究会耀響第二期〈国文学),東京:
古典研究会,1973,121頁)とその例があり,その後の江戸文学,特に西鶴の作
IH11などにもよく出てくる表現である。夫婦関係以上に主従UM係が寵んじられたこ
とは,武士的な伝統から来ているものと思われる。
('二ljIリI比較文学・Tl7ヶ谷教養教育センター兼任識iili)
Fly UP