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Diabetes Care from the USA ∼米国CDE事情∼ 連載第2回
(5) 第 374 号 2009 年 (平成 21 年)5 月 5 日発行(毎月 1 回 5 日発行)昭和 53 年 3 月 22 日 第三種郵便物認可 ISSN 0913-3380 連載第2回 Diabetes Care from the USA ∼米国CDE事情∼ ●松本 絵理 筑波大学比較文化学類卒業 1993年渡米、 モントレーペニンスラカレッジ卒業RN※1)取得 サンホゼ州立大学修士課程修了(看護学修士) CDE、NP※2)、FNP※3)、 BC-ADM※4)取得 元CCCAADE※5)会長、 CHOMP※6)でCDEとして活躍中 米国カリフォルニア州在住 2 糖尿病専門の ナース・プラクティショナー 医師の目となり耳となる CDE るべく患者同士の経験や感情の分かち合 め、保険の種類は数多く、複雑な保険制 いを奨励している。最初は自信のなかっ 度を理解することも仕事の一環である。 た患者が、他の患者の話を聞くことによっ 1973 年に発足した AADE(American サンフランシスコから約 2 時間南へ下る 私のように個人やグループ経営のクリ て「あの人にできるんだったら、私にもで Association of Diabetes Educators)は、 と、美しい海岸線とゴルフとジャズで有 ニックで働くCDEは多い。医師は内分泌 きそう」と思ってくれるほど嬉しいことは いまや会員1万 5,000人以上である。毎年 名なモントレーに着く。渡米して16 年の私 科系に限らず、家庭医や一般内科医の場 ない。また、ユーモアを重視した笑いの 開催されるNational Meeting には、6,000 は、そこで CDEとして、また NPとして、 合も多い。私のようなミドルレベルの NP 絶えないクラス作りにも励んでいる。そ ∼1万人のCDE が集まり、CDE 同士の結 ※ 7) 病院と外来のクリニックの両方で働いてい や PA の資格をもっている者は、薬の のほか病院の主催で毎月無料の糖尿病セ 束の固さを確認している。各州や地域の る。クリニックは、内科医と家庭医を合わ 処方と調節ができ、また糖尿病など病気 ミナーを行ったり、学校や教会に赴いて AADE 支部も活発で、私が 2008 年に会 せて医師15人とNP 3人の構成だが、ここ の診断を下すこともできる。一方、RN や 糖尿病のスクリーニングをすることもある。 長 を 勤 め た C C C A A D E( C a l i f o r n i a ちなみに病院外来の糖尿病教育機関は、 Central Coast AADE)は、会員も 100 名 ※ 8) の CDE は薬の処方はできないが、 で糖尿病を専門としているのは私だけなの RD で、私の患者の80%は糖尿病患者である。 クリニックや病院であらかじめ医師の定 ほとんどが ADA 糖尿病教育ナショナル 前後で、CDE同士の交流や隔月の勉強会、 ほとんどの患者は内科医か家庭医を主治 めたプロトコールに従うことで、ある程度 スダンダードを満たしている。 新たなCDEの養成などにも力をいれてい 医としているが、糖尿病の管理は私が行っ 薬の調節ができるところも多い。RNは血 このほかユニークなCDE の活躍の場と る。私が CDE になったのも、たまたまこ ている場合が多い。患者への説明や教育 糖測定器やインスリンなどの注射、インス して、ワシントン州の知り合いの CDE は、 のような勉強会に参加して、CDE になる に時間がかかる糖尿病管理を、CDE/NP リンポンプの指導が主な仕事である。RD 人の集まるスーパーで糖尿病クラスを開い ように勧められたからである。 である私が一手に引き受け、医師の負担 は食事療法の指導が主であるが、州によっ ている。過疎地域や貧困なコミュニティを を軽減している。忙しい医師なら3カ月に ては、RNとRDの役割がオーバーラップし 専門に訪問教育するCDEもいるなかで、 り向き合って教育/カウンセリングできる 一度しか患者のフォローができない場合で て、RDが薬の調節をするところもある。い テキサス州のCDEは主に糖尿病の発病率 ことや、その成果、アウトカムを目の当た も、私なら毎週フォローし、患者教育がで ずれにしろ多忙な医師に代わって、患者 の高い先住民の居留地を訪問して、糖尿 りにできること、また医師の負担を軽減 きる。最初は少し懸念をもっていた医師も、 をこまめにフォローでき、医師の目となり 病の教育と予防に力を注いでいる。アリ でき、チームとして働けること、比較的 徐々に糖尿病の管理を任せてくれるよう 耳となるCDE は、クリニックや病院でも ゾナ州やその他の州のCDEたちは独立し 独立して自分の知識と判断を駆使できる になった。医師の 1 人は患者のカルテに 欠かせない存在となっている。 て、グループや個人のCDEのみで経営す ことなどがあげられる。 「Diabetes → Eri」 とだけ書くほどである。 患者は、診断されたばかりの方もいれば、 もう数年も私が糖尿病の管理をしている方 糖尿病教育システム 日本との違い もいる。新規の患者の場合、45 ∼ 60 分か 病院での糖尿病教育に関して、日本と けて、糖尿病の概要、血糖測定の仕方、食 の大きな違いは患者の入院期間がかなり CDEの仕事の醍醐味は、患者とじっく る教育施設をもち、地域の医療施設から さまざまな文化と触れ合い、いくつも の患者を紹介してもらい活躍している。 の障害を克服しながらアメリカの CDE は 多種多様な文化のなかで 活躍の場を広げる 活躍の場を広げつつある。前途に問題、 課題はたくさんあるが、それはまた別の 機会に紹介したい。 る つぼ 広いアメリカは人種と文化の坩堝である。 事療法、運動療法、経口薬もしくはインス 短いことだろう。新規の糖尿病患者で血 リンの教育を行い、その後血糖値が安定 糖値が 500 mg/dLでも半日か 1日で退院 宗教、慣習、食生活、伝統的な治療法な するまで頻繁にフォローする。フォローの させられることもある。「教育入院」はな どを、ある程度心得ておくこともCDE の アポイントメントは15∼30分である。CDE く、入院中の教育の機会はごく限られてお 仕事である。カリフォルニア州の私たち としてつねに最新の糖尿病の薬剤とデバ り、必要に応じて外来の教育機関に引継 の患者層は 3分の 1 が白系、3 分の 1 がヒ イスを勉強しているので、どのデバイスが ぎをする。外来は個人とグループ教育に スパニック系(中南米、主にメキシコ)、 いいか医師からアドバイスを求められるこ 分かれ、個人教育の場合、30 分から 1 時 残りの 3 分の 1 はアジア系(日本、フィリ ともある。NPとしても働いているため糖尿 間の面接で、糖尿病教育以外にもストレ ピン、インドなど) 、中近東系である。ま 病ではない患者の場合は、健康診断から、 スの原因などをカウンセリングすることも たアメリカには国民健康保険制度がないた 婦人科の検査、高血圧、高脂血症の管理 ある。グループクラスの場合、先生から生 など、普通の家庭医と同じような範囲で働 徒へという一方的な教育ではなく、 「エ き、必要に応じて担当の医師に相談する。 ンパワーメント」のコンセプトを使って、な JDRF(Juvenile Diabetes Research Foundation :小児型糖尿病調査基金)が毎年行う ウォーキングにて。モントレーの海岸沿いを CDE、MD、患者が一緒に歩く。 最前列の中央、犬の右隣が松本先生 ※ 1)Registered Nurse :アメリカ正看護師資格保持者。 ※ 2)Nurse Practitioner :医師と看護師の中間的な資格 であり、高度看護師の様な資格。 ※ 3)Family Nurse Practitioner :家庭 NP ※ 4)Board Certified in Advanced Diabetes Management :高度糖尿病療法士 ※ 5)California Central Coast AADE :カリフォルニア 中央海岸部 AADE 支部 ※ 6)Community Hospital of the Monterey Peninsula ※ 7)Physician Assistant :準医師。医師のアシスタント として外科を含む診療業務を助ける専門職。 ※ 8)Registered Dietitian :栄養士 第9回 大阪糖尿病患者教育担当者研修会(ODES) ■日 時:2009年7月18日(土) 午前9時50分∼午後5時 ■会 場:大阪国際交流センター(大ホール) 大阪市天王寺区上本町8-2-6 TEL 06-6772-5931 (代表) ■プログラム(一部抜粋): 特別講演「21世紀の糖尿病医療の希望と挑戦 −医療スタッフの役割−」 演者:東京大学大学院医学系研究科糖尿病・代謝内科 教授 門脇 孝 先生 座長:大阪警察病院 小杉 圭右 教育講演Ⅰ「高齢者の運動療法」 演者:大阪産業大学人間環境学部スポーツ健康学科 田中 史朗 先生 教育講演Ⅱ「糖尿病外来におけるチーム医療と看護師の役割 −アクションリサーチの手法を用いて−」 演者:兵庫県立大学看護学研究科 野並 葉子 先生 教育講演Ⅲ「糖尿病食事療法 −炭水化物をめぐる話題−」 演者:清水クリニック 清水 孝郎 先生 ディベート型ワークショップ「あなたならどっち?こんな場面、 どうしますか?」 ■申し込み・問い合わせ先:〒553-0003 大阪市福島区福島4丁目2番78号 大阪厚生年金病院内大阪糖尿病協会顧問医会ODES事務局 TEL 06-6441-5451 E-mail:odes@hcc6.bai.ne.jp(問い合わせ) 但し、電話でのお問い合わせは、月・火・水の13:00 ‐ 17:00の間にお願いします。 その際、必ず大阪糖尿病協会顧問医会ODES事務局とお申し出下さい。 ※<第1群>:看護の研修単位 日本糖尿病教育・看護学会 申請中 ※<第1群>:日本病態栄養学会 申請中 ※<第1群>:日本臨床検査技師会 申請中 ※<第2群>:糖尿病療養指導研修単位 申請中