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論文紹介

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論文紹介
論文紹介
高精細映像再生に向けたホログラムメモリー信号処理アルゴリズム
映像情報メディア学会誌,Vol.68,No.8,pp.J348­J357(2014)
木下延博,室井哲彦,石井紀彦,上條晃司,菊池 宏,清水直樹
次世代の光記録技術として注目されているホログラムメモリーは,2次元データ配列(ページデータ)を一括して記録,再生
する光情報記録システムである。ホログラムが記録された媒体へ読み出し用のレーザー光を照射すると,回折現象により再生
光が得られる。再生光にはページデータのパターンが重畳されており,これをイメージセンサーで撮影したのち,データ領域
特定,シンボル抽出,デインターリーブ,誤り訂正の順に信号処理を行うことで元のデータを復元できる。今回,撮影された
再生光が一種の画像であることに着目し,画像処理に特化したGPU(Graphics Processing Unit)を用いる再生信号処理アル
ゴリズムを新規に開発した。各処理段をパイプライン化(直列化)して実装することにより,95Mbps以上のスループット
(単位時間あたりの情報処理量)を確認した。次に,28MByteの高精細映像データを384個のページデータに変換し,これらを
ホログラムとして記録した。このホログラムをすべて再生した結果,ビット誤りを生じることなく映像再生されることを確認
した。
LDPC符号とBCH符号の連接符号を適用する集合分割8PSK符号化変調の性能改善
電子情報通信学会論文誌B,Vol.J97­B,No.8,pp.648­659(2014)
鈴木陽一,橋本明記,松崎敬文,田中祥次,木村武史,土田健一
衛星放送を利用したスーパーハイビジョンなどの大容量伝送の実現に向けて,従来技術である集合分割法を適用した8PSK
(8 Phase Shift Keying)符号化変調に着目し,シンボルを構成するビットごとにLDPC(Low Density Parity Check)符号の
符号化率を調整することにより,伝送性能が最も良くなる符号化率の組合せを有するLDPC符号とBCH(Bose­Chaudhuri­
Hocquenghem)符号の連接符号を設計した。また,8PSK符号化変調の集合分割の方法として,最小ユークリッド距離の拡大
を伴う集合分割法と,最小ユークリッド距離の拡大は伴わずに一番大きいユークリッド距離に位置する信号点の数を減少させ
る集合分割法の2種類の分割法に対して符号設計を行った。本手法の有効性を確認するために,計算機シミュレーションによ
り,白色雑音モデルおよび12GHz帯衛星伝送路を模擬したモデルの両方において所要C/N(Carrier to Noise ratio)を算出し
た。そして,現行の衛星デジタル放送の伝送方式であるARIB STD­B44に対して,本手法の周波数利用効率と所要C/Nの改
善量を定量化することにより,現行方式よりも所要C/Nの改善が可能な伝送方式の設計に資することを示した。
Development of a Multilink 10Gbit/sec Mapping Method and Interface
Device for 120Frames/sec Ultrahigh−Definition Television Signals
SMPTE Motion Imaging Journal,Vol.123,No.4,pp.29­38(2014)
添野拓司,西田幸博,山下誉行,日下部裕一,船津良平,中村友洋
フレーム周波数120Hzを含む超高精細度テレビジョン方式(UHDTV:Ultra High Definition Television)の映像パラメーター
が,ITU­R(International Telecommunication Union ­ Radiocommunication Sector)Rec. BT.2020として勧告化された。
すでに規格化されていたUHDTV用のインターフェースは,フレーム周波数が60Hz以下の信号にしか対応していないため,フ
レーム周波数120Hzに対応した新たなインターフェースの開発が求められている。本論文では,120Hzのフレーム周波数を含
むさまざまなUHDTV映像信号を複数の10Gbit/secのストリームに分割するマッピング方式について報告する。本マッピング
方式によるインターフェースは小型・低消費電力であることが求められるため,1チャンネル当たり10Gbit/secの信号伝送が
可能なパラレルファイバー光トランシーバーを用いて,UHDTVの機器間を接続するインターフェース装置を試作した。信号
伝送実験の結果から,10Gbit/secごとに分割してマッピングされたUHDTV映像信号が伝送可能であることを確認した。
Low−voltage−operation Avalanche Photodiode Based on n−gallium Oxide/
p−crystalline Selenium Heterojunction
Applied Physics Letters,Vol.104,No.24,pp.242101.1­242101.4(2014)
為村成亨,菊地健司,宮川和典,大竹 浩,久保田節
カメラの高精細化・高フレームレート化に伴う感度低下の問題を抜本的に解決するために,低い印加電圧で電荷増倍が可能な
光電変換膜を積層した,新しい高感度固体撮像素子の実現を目指し,研究を進めている。今回,可視光全域にわたり高い吸収
係数を有する結晶セレンを光電変換膜に用い,ガラス基板上にセル構造(光電変換膜を上下の電極で挟んだ簡易な構造)を試
作し,光電変換特性を評価した。p型半導体(電荷を運ぶキャリアに正孔が使われる半導体)である結晶セレンに対して,ワ
イドギャップ半導体(シリコンなどと比較してバンドギャップの大きな半導体)である酸化ガリウムをn型半導体(電荷を運
ぶキャリアに電子が使われる半導体)としてpn接合を形成し,外部電極からの注入電荷を阻止することで,暗電流(光を当
てないときにも流れる電流)の大幅な低減に成功した。暗電流の抑制は,同時に,光電変換膜への安定した電界の印加を可能
とし,結晶セレンにおいて,約20Vの外部印加電圧でアバランシェ電荷増倍(膜内で加速された電荷が衝突を繰り返し,次々
と新たな電荷を生成する現象)が生じ,100%を超える高い外部量子効率(入射した光子の数と生成された電荷の数の比)が
得られることを初めて実証した。また,スズ添加により,酸化ガリウム中のキャリア濃度の制御を行い,結晶セレン側に効率
良く空乏層(感度領域)を広げることで,更に低電圧での駆動が可能となった。今回の結果は,将来の超高精細放送の時代に
おける高感度カメラの実現に向けた大きな一歩となる。
NHK技研 R&D/No.149/2015.1
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